(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】媒体搬送装置、画像処理システム、制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B65H 7/02 20060101AFI20221206BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20221206BHJP
H04N 1/04 20060101ALI20221206BHJP
H04N 1/387 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B65H7/02
B65H5/06 M
H04N1/12 Z
H04N1/387
(21)【出願番号】P 2019053560
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】荒井 雄太
(72)【発明者】
【氏名】金谷 真悟
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-189260(JP,A)
【文献】特開2003-087500(JP,A)
【文献】特開2010-095367(JP,A)
【文献】特開2002-356248(JP,A)
【文献】特開昭60-065668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/02
B65H 5/06
B65H 5/22
B65H 7/00-7/20
B65H 29/12-29/24
B65H 43/00-43/08
H04N 1/04-1/207
H04N 1/38-1/393
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する搬送ローラを駆動するモータと、
前記搬送ローラにより搬送される媒体を撮像して入力画像を生成する撮像部と、
前記モータを制御して前記搬送ローラを回転させる制御部と、
パルス幅が前記モータの回転速度に応じて変化するパルス信号を出力する信号出力部と、
前記撮像部が媒体の読取中に、前記搬送ローラが媒体を搬送する際の負荷変動に基づいた前記パルス幅の変動を検出して、前記搬送ローラが搬送する媒体の厚さを判定する判定部と、
媒体の厚さが変化した領域に対応する前記入力画像内の領域を補正する画像補正部と、
を有することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記パルス幅が所定の閾値を超えた最初のパルス信号の前記パルス幅に基づいて、媒体の厚さを判定する、
請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記判定部によって判定された媒体の厚さが所定厚さ以上である場合、前記制御部は、媒体の厚さが前記所定厚さ未満である場合よりも前記搬送ローラの回転速度を遅くするように前記モータを制御する、
請求項1又は2に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記判定部は、媒体の厚さに基づいて媒体の種類を推定し、
前記制御部は、推定された媒体の種類が厚さの異なる複数の領域を有する種類である場合、厚さの異なる複数の領域を有する種類でない場合よりも前記搬送ローラの回転速度を遅くするように前記モータを制御する、
請求項1~3の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項5】
前記モータはDCモータであり、
前記制御部は、前記パルス幅が指令値に追従するように前記DCモータの回転速度を制御する、
請求項1~4の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記撮像部が媒体の読取を開始する前に前記パルス幅の変動を検出して媒体の厚さを判定する、
請求項1~5の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項7】
前記撮像部は、前記判定部によって判定された媒体の厚みに応じて、媒体の読取タイミングを変更する、
請求項1~
6の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項8】
前記画像補正部によって補正された前記入力画像から、所定の領域を切り出す切り出し部を更に有する、
請求項
1~7の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項9】
媒体搬送装置と、情報処理装置とを有する画像処理システムであって、
前記媒体搬送装置は、
媒体を搬送する搬送ローラを駆動するモータと、
前記搬送ローラにより搬送される媒体を撮像して入力画像を生成する撮像部と、
前記モータを制御して前記搬送ローラを回転させる制御部と、
パルス幅が前記モータの回転速度に応じて変化するパルス信号を出力する信号出力部と、
前記撮像部が媒体の読取中に、前記搬送ローラが媒体を搬送する際の負荷変動に基づいた前記パルス幅の変動を検出して、前記搬送ローラが搬送する媒体の厚さを判定する判定部と、を有し、
前記情報処理装置は、媒体の厚さが変化した領域に対応する前記入力画像内の領域を補正する画像補正部を有する、
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項10】
前記画像補正部は、媒体が搬送される際の負荷変動により前記入力画像に伸縮が生じる領域を補正す
る、請求項9に記載の画像処理システム。
【請求項11】
モータにより、媒体を搬送する搬送ローラを駆動
し、
撮像部により、前記搬送ローラにより搬送される媒体を撮像して入力画像を生成し、
制御部により、前記モータを制御して前記搬送ローラを回転さ
せ、
信号出力部により、パルス幅が前記モータの回転速度に応じて変化するパルス信号を出力
し、
前記撮像部が媒体の読取中に、前記搬送ローラが媒体を搬送する際の負荷変動に基づいた前記パルス幅の変動を検出して、前記搬送ローラが搬送する媒体の厚さを判定
し、
媒体の厚さが変化した領域に対応する前記入力画像内の領域を補正する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
媒体を搬送する搬送ローラを駆動するモータと、
前記搬送ローラにより搬送される媒体を撮像して入力画像を生成する撮像部と、前記モータを制御して前記搬送ローラを回転させる制御部と、パルス幅が前記モータの回転速度に応じて変化するパルス信号を出力する信号出力部と、を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、
前記撮像部が媒体の読取中に、前記搬送ローラが媒体を搬送する際の負荷変動に基づいた前記パルス幅の変動を検出して、前記搬送ローラが搬送する媒体の厚さを判定
し、
媒体の厚さが変化した領域に対応する前記入力画像内の領域を補正する、
ことを前記媒体搬送装置に実行させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項13】
媒体を搬送する搬送ローラを駆動するモータと、前記搬送ローラにより搬送される媒体を撮像して入力画像を生成する撮像部と、前記モータを制御して前記搬送ローラを回転させる制御部と、パルス幅が前記モータの回転速度に応じて変化するパルス信号を出力する信号出力部と、前記撮像部が媒体の読取中に、前記搬送ローラが媒体を搬送する際の負荷変動に基づいた前記パルス幅の変動を検出して、前記搬送ローラが搬送する媒体の厚さを判定する判定部と、を有する媒体搬送装置と通信接続する情報処理装置の制御プログラムであって、
媒体の厚さが変化した領域に対応する前記入力画像内の領域を補正する、
ことを前記情報処理装置に実行させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項14】
媒体を搬送する搬送ローラを駆動するモータと、
前記モータを制御して前記搬送ローラを回転させる制御部と、
パルス幅が前記モータの回転速度に応じて変化するパルス信号を出力する信号出力部と、
前記搬送ローラが媒体を搬送する際の負荷変動に基づいた前記パルス幅の変動を検出して、前記搬送ローラが搬送する媒体の厚さを判定し、媒体の厚さに基づいて媒体の種類を推定する判定部と、を有し、
前記制御部は、推定された媒体の種類が厚さの異なる複数の領域を有する種類である場合、厚さの異なる複数の領域を有する種類でない場合よりも前記搬送ローラの回転速度を遅くするように前記モータを制御する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項15】
媒体を搬送する搬送ローラを駆動するモータと、前記モータを制御して前記搬送ローラを回転させる制御部と、パルス幅が前記モータの回転速度に応じて変化するパルス信号を出力する信号出力部と、を有する媒体搬送装置の制御方法であって、
前記搬送ローラが媒体を搬送する際の負荷変動に基づいた前記パルス幅の変動を検出して、前記搬送ローラが搬送する媒体の厚さを判定し、媒体の厚さに基づいて媒体の種類を推定し、
前記制御部は、推定された媒体の種類が厚さの異なる複数の領域を有する種類である場合、厚さの異なる複数の領域を有する種類でない場合よりも前記搬送ローラの回転速度を遅くするように前記モータを制御する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項16】
媒体を搬送する搬送ローラを駆動するモータと、前記モータを制御して前記搬送ローラを回転させる制御部と、パルス幅が前記モータの回転速度に応じて変化するパルス信号を出力する信号出力部と、を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、
前記搬送ローラが媒体を搬送する際の負荷変動に基づいた前記パルス幅の変動を検出して、前記搬送ローラが搬送する媒体の厚さを判定し、媒体の厚さに基づいて媒体の種類を推定する、ことを前記媒体搬送装置に実行させ、
前記制御部は、推定された媒体の種類が厚さの異なる複数の領域を有する種類である場合、厚さの異なる複数の領域を有する種類でない場合よりも前記搬送ローラの回転速度を遅くするように前記モータを制御する、
ことを特徴とする制御プログラム。
【請求項17】
媒体搬送装置と、情報処理装置とを有する画像処理システムであって、
前記媒体搬送装置は、
媒体を搬送する搬送ローラを駆動するモータと、
前記搬送ローラにより搬送される媒体を撮像して入力画像を生成する撮像部と、
前記モータを制御して前記搬送ローラを回転させる制御部と、
パルス幅が前記モータの回転速度に応じて変化するパルス信号を出力する信号出力部と、
前記搬送ローラが媒体を搬送する際の負荷変動に基づいた前記パルス幅の変動を検出して、前記搬送ローラが搬送する媒体の厚さを判定する判定部と、を有し、
前記情報処理装置は、媒体が搬送される際の負荷変動により前記入力画像に伸縮が生じる領域を補正する画像補正部を有する、
ことを特徴とする画像処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体搬送装置、画像処理システム、制御方法、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機において、画像を形成するシートの厚さは、画像形成条件に影響を及ぼすため、画像形成前にシートの厚さを知りたいという要望がある。
【0003】
例えば、特許文献1のシート搬送装置は、シートの搬送経路が屈曲する部分の内周側に設けられる搬送ローラと、搬送ローラを回転駆動させる駆動手段と、駆動手段により搬送ローラの回転速度を制御する駆動制御手段と、を備える。そして、このシート搬送装置は、シートの搬送速度、搬送ローラの半径及び搬送ローラの回転速度に基づいて、シートの厚さを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
イメージスキャナ等でも、原稿等の媒体が搬送ローラを通過するときの負荷変動によって画像の読取条件が変化する場合があるため、原稿の読取前又は読取中に媒体の厚さを知りたいという要望がある。
【0006】
本発明は、搬送される媒体の厚さを簡素な構成で検出することが可能な媒体搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る媒体搬送装置は、媒体を搬送する搬送ローラを駆動するモータと、モータを制御して搬送ローラを回転させる制御部と、パルス幅がモータの回転速度に応じて変化するパルス信号を出力する信号出力部と、搬送ローラが媒体を搬送する際の負荷変動に基づいたパルス幅の変動を検出して、搬送ローラが搬送する媒体の厚さを判定する判定部と、を有する。
【0008】
本発明の一側面に係る画像処理システムは、上記の媒体搬送装置と、情報処理装置とを有する画像処理システムであって、媒体搬送装置は、搬送ローラにより搬送される媒体を撮像して入力画像を生成する撮像部を更に有し、情報処理装置は、媒体が搬送される際の負荷変動により入力画像に伸縮が生じる領域を補正する画像補正部を有する。
【0009】
また、本発明の一側面に係る制御方法は、媒体を搬送する搬送ローラを駆動するモータと、モータを制御して搬送ローラを回転させる制御部と、パルス幅がモータの回転速度に応じて変化するパルス信号を出力する信号出力部と、を有する媒体搬送装置の制御方法であって、搬送ローラが媒体を搬送する際の負荷変動に基づいたパルス幅の変動を検出して、搬送ローラが搬送する媒体の厚さを判定する。
【0010】
また、本発明の一側面に係る制御プログラムは、媒体を搬送する搬送ローラを駆動するモータと、モータを制御して搬送ローラを回転させる制御部と、パルス幅がモータの回転速度に応じて変化するパルス信号を出力する信号出力部と、を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、搬送ローラが媒体を搬送する際の負荷変動に基づいたパルス幅の変動を検出して、搬送ローラが搬送する媒体の厚さを判定することを媒体搬送装置に実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、搬送される媒体の厚さを簡素な構成で検出することが可能な媒体搬送装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る画像処理システム1の一例の構成図である。
【
図2】媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【
図3】モータ131の回転速度を測定するためのエンコーダ132から出力されるパルス信号の波形の例を模式的に示す図である。
【
図4】媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
【
図5】記憶装置150及びCPU160の概略構成を示す図である。
【
図6】制御部161によるモータ131の制御処理を説明するための図である。
【
図7】媒体の先端部が搬送ローラを通過するときの負荷変動により、エンコーダ132から出力されるパルス信号のパルス幅が変動する様子を示す図である。
【
図8】媒体の先端部が搬送ローラを通過するときの負荷変動により、エンコーダ132から出力されるパルス信号のパルス幅が変動する様子を示す他の図である。
【
図9】媒体が搬送ローラを通過するときの負荷変動により、エンコーダ132から出力されるパルス信号のパルス幅が変動する様子を示す更に他の図である。
【
図10】媒体読取処理の例を示すフローチャートである。
【
図11】読取前処理の例を示すフローチャートである。
【
図12】
図10のステップS109における入力画像の補正処理について説明するための図である。
【
図13】他の実施形態に係る媒体搬送装置100における処理回路270の概略構成を示す図である。
【
図14】他の実施形態に係る情報処理装置200の概略構成を示すブロック図である。
【
図15】他の実施形態に係る情報処理装置200における記憶装置及びCPUの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一側面に係る媒体搬送装置について図を参照しつつ説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0014】
図1は、実施形態に係る画像処理システム1の一例の構成図である。画像処理システム1は、媒体搬送装置100及び情報処理装置200を備える。
【0015】
媒体搬送装置100は、媒体を搬送させながら媒体の画像を撮像するイメージスキャナ等である。媒体は、用紙、厚紙、カード、冊子又はパスポート等である。媒体搬送装置100は、ファクシミリ、複写機、プリンタ複合機(MFP、Multifunction Peripheral)等でもよい。なお、搬送される媒体は、原稿でなく印刷対象物等でもよく、媒体搬送装置100はプリンタ等でもよい。情報処理装置200は、サーバ、パーソナルコンピュータ、多機能携帯端末、携帯電話等である。媒体搬送装置100及び情報処理装置200は、相互に接続されている。
【0016】
媒体搬送装置100は、下側筐体101、上側筐体102、載置台103、排出台104、操作装置105及び表示装置106等を備える。
【0017】
上側筐体102は、筐体の上部の一例であり、媒体搬送装置100の上面を覆う位置に配置され、媒体つまり時、又は媒体搬送装置100内部の清掃時等に開閉可能なようにヒンジにより下側筐体101に係合している。
【0018】
載置台103は、樹脂部材により形成され、搬送される媒体を載置可能に下側筐体101に係合している。載置台103は、媒体の載置面が媒体搬送装置100の設置面に対して傾くように設けられている。排出台104は、排出された媒体を保持可能に下側筐体101に係合している。
【0019】
操作装置105は、ボタン等の入力デバイス及び入力デバイスから信号を取得するインタフェース回路を有し、利用者による入力操作を受け付け、利用者の入力操作に応じた操作信号を出力する。表示装置106は、液晶、有機EL(Electro-Luminescence)等を含むディスプレイ及びディスプレイに画像データを出力するインタフェース回路を有し、画像データをディスプレイに表示する。
【0020】
図2は、媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【0021】
媒体搬送装置100内部の搬送経路は、第1媒体検出センサ111、複数の給送ローラ112a、b、複数のブレーキローラ113a、b、複数の第1搬送ローラ118a、b、複数の第2搬送ローラ119a、b、第2媒体検出センサ120、第1撮像装置121a、第2撮像装置121b、複数の第3搬送ローラ122a、b及び複数の第4搬送ローラ123a、b等を有している。
【0022】
以下では、給送ローラ112a及び112bを総じて給送ローラ112と称する場合がある。また、ブレーキローラ113a及び113bを総じてブレーキローラ113と称する場合がある。また、第1搬送ローラ118a及び118bを総じて第1搬送ローラ118と称する場合がある。また、第2搬送ローラ119a及び119bを総じて第2搬送ローラ119と称する場合がある。また、第1撮像装置121a及び第2撮像装置121bを総じて撮像装置121と称する場合がある。また、第3搬送ローラ122a及び122bを総じて第3搬送ローラ122と称する場合がある。また、第4搬送ローラ123a及び123bを総じて第4搬送ローラ123と称する場合がある。
【0023】
下側筐体101の上面は、媒体搬送路の下側ガイド107aを形成し、上側筐体102の下面は、媒体搬送路の上側ガイド107bを形成する。以下では、媒体搬送路の上流とは媒体搬送方向A1の上流のことをいい、下流とは媒体搬送方向A1の下流のことをいう。
【0024】
第1媒体検出センサ111は、給送ローラ112及びブレーキローラ113の上流側に配置される。第1媒体検出センサ111は、接触検出センサを有し、載置台103に媒体が載置されているか否かを検出する。第1媒体検出センサ111は、載置台103に媒体が載置されている状態と載置されていない状態とで信号値が変化する媒体検出信号を生成して出力する。
【0025】
給送ローラ112は、下側筐体101に設けられ、載置台103に載置された媒体を下側から順に給送する。ブレーキローラ113は、上側筐体102に設けられ、給送ローラ112に対向して配置される。
【0026】
第1撮像装置121aは、撮像部の一例であり、媒体搬送方向A1と直交する主走査方向に直線状に配列されたCCD(Charge Coupled Device)による撮像素子を備える縮小光学系タイプのラインセンサを有する。また、第1撮像装置121aは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された撮像信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第1撮像装置121aは、後述するCPUからの制御に従って、搬送された媒体の裏面を撮像した入力画像を生成して出力する。
【0027】
同様に、第2撮像装置121bは、撮像部の一例であり、主走査方向に直線状に配列されたCCDによる撮像素子を備える縮小光学系タイプのラインセンサを有する。また、第2撮像装置121bは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された撮像信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第2撮像装置121bは、後述するCPUからの制御に従って、搬送された媒体の表面を撮像した入力画像を生成して出力する。
【0028】
なお、媒体搬送装置100は、第1撮像装置121a及び第2撮像装置121bを一方だけ配置し、媒体の片面だけを読み取ってもよい。また、CCDの代わりにCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)による撮像素子を備える等倍光学系タイプのCIS(Contact Image Sensor)を利用することもできる。
【0029】
載置台103に載置された媒体は、給送ローラ112が
図2の方向A2、即ち媒体給送方向に回転することによって、下側ガイド107aと上側ガイド107bの間を媒体搬送方向A1に搬送される。ブレーキローラ113は、媒体搬送時、方向A3、即ち媒体給送方向の反対方向に回転する。給送ローラ112及びブレーキローラ113の働きにより、載置台103に複数の媒体が載置されている場合、載置台103に載置されている媒体のうち給送ローラ112と接触している媒体のみが分離される。これにより、分離された媒体以外の媒体の搬送が制限されるように動作する(重送の防止)。
【0030】
媒体は、下側ガイド107aと上側ガイド107bによりガイドされながら、第1搬送ローラ118と第2搬送ローラ119の間に送り込まれる。媒体は、第1搬送ローラ118及び第2搬送ローラ119がそれぞれ方向A4及び方向A5に回転することによって、第1撮像装置121aと第2撮像装置121bの間に送り込まれる。撮像装置121により読み取られた媒体は、第3搬送ローラ122及び第4搬送ローラ123がそれぞれ方向A6及び方向A7に回転することによって排出台104上に排出される。第1搬送ローラ118、第2搬送ローラ119、第3搬送ローラ122、及び第4搬送ローラ123は、搬送ローラの一例である。
【0031】
図3は、モータ131の回転速度を測定するためのエンコーダ132から出力されるパルス信号の波形の例を模式的に示す図である。エンコーダ132は、信号出力部の一例である。
【0032】
モータ131は、第1搬送ローラ118、第2搬送ローラ119、第3搬送ローラ122、及び第4搬送ローラ123を回転させて媒体の搬送動作を行う。エンコーダ132は、モータ131の回転速度に応じてパルス幅Tが変化するパルス信号Pを出力する。例えば、光学式エンコーダは、多数のスリット133(光の透過穴)が形成され且つモータ131の回転に従って回転するように設けられた円板134と、その円板134を挟んで対向するように設けられた発光器135及び受光器136とを有する。
【0033】
例えば、
図3に模式的に図示されたエンコーダ132は、発光器135の発する光を受光器136がスリット133から受光している間は相対的に大きい信号値(High)を出力し、発光器135の発する光が円板134により遮られている間は相対的に小さい信号値(Low)を出力する。即ち、パルス信号Pのパルス幅Tは、発光器135と受光器136の間にスリット133が存在する期間の長さを示し、モータ131の回転速度に応じて変化する。便宜上、
図3には12のスリット133を有する円板134を図示したが、実際の円板134は数百のスリット133を有する。
【0034】
図4は、媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
【0035】
媒体搬送装置100は、前述した構成に加えて、駆動装置130、インタフェース装置142、記憶装置150及びCPU(Central Processing Unit)160、処理回路170等を更に有する。
【0036】
駆動装置130は、CPU160からの制御信号によって、モータ131を駆動して、給送ローラ112、第1搬送ローラ118、第2搬送ローラ119、第3搬送ローラ122、及び第4搬送ローラ123を回転させて媒体を搬送させる。なお、駆動装置130は、給送ローラ112、第1搬送ローラ118、第2搬送ローラ119、第3搬送ローラ122、及び第4搬送ローラ123のそれぞれを、別個のモータにより回転させてもよい。
【0037】
インタフェース装置142は、例えばUSB等のシリアルバスに準じるインタフェース回路を有し、情報処理装置200と電気的に接続して入力画像及び各種の情報を送受信する。また、インタフェース装置142の代わりに、無線信号を送受信するアンテナと、所定の通信プロトコルに従って、無線通信回線を通じて信号の送受信を行うための無線通信インタフェース装置とを有する通信部が用いられてもよい。所定の通信プロトコルは、例えば無線LAN(Local Area Network)である。
【0038】
記憶装置150は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。また、記憶装置150には、媒体搬送装置100の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納される。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶装置150にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)等である。
【0039】
CPU160は、予め記憶装置150に記憶されているプログラムに基づいて動作する。なお、CPU160に代えて、DSP(Digital Signal Processor)、LSI(Large Scale Integration)等が用いられてもよい。また、CPU160に代えて、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等が用いられてもよい。
【0040】
CPU160は、操作装置105、表示装置106、第1媒体検出センサ111、第2媒体検出センサ120、撮像装置121、エンコーダ132、駆動装置130、インタフェース装置142、記憶装置150及び処理回路170等とバス180を介して接続され、これらの各部を制御する。CPU160は、駆動装置130の駆動制御、撮像装置121の撮像制御等を行い、入力画像を取得し、インタフェース装置142を介して情報処理装置200に送信する。
【0041】
CPU160は、第1媒体検出センサ111、第2媒体検出センサ120、及びエンコーダ132から出力される信号を、バス180を介して受信する。第1媒体検出センサ111、第2媒体検出センサ120、及びエンコーダ132のそれぞれは、アナログデジタル変換回路を有しているが、各センサとCPU160の間にアナログデジタル変換回路を設けてもよい。
【0042】
処理回路170は、撮像装置121により撮像された画像に所定の画像処理を実行し、画像処理が実行された画像を記憶装置150に格納する。なお、処理回路170の代わりに、DSP、LSI,ASIC又はFPGA等が用いられてもよい。
【0043】
図5は、記憶装置150及びCPU160の概略構成を示す図である。
【0044】
図5に示すように、記憶装置150には、制御プログラム151、画像取得プログラム152、判定プログラム153、画像補正プログラム154、及び切り出しプログラム155等が記憶される。これらの各プログラムは、プロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールである。CPU160は、記憶装置150に記憶された各プログラムを読み取り、読み取った各プログラムに従って動作する。これにより、CPU160は、制御部161、画像取得部162、判定部163、画像補正部164、及び切り出し部165として機能する。
【0045】
図6は、制御部161によるモータ131の制御処理を説明するための図である。制御部161は、モータドライバ137を制御してモータ131を駆動する。モータ131は、DCモータである。また、モータドライバ137は、例えば、制御部161により指定される速度となるような所定の電圧をPWM(Pulse Width Modulation)変調してモータ131に出力するモータドライバ回路とすることができる。なお、モータドライバ137は、モータ131に統合されてもよい。
【0046】
制御部161は、モータ131の回転速度が、予め設定された電圧値等の指令値に追従するように、モータ131をフィードバック制御する。制御部161は、エンコーダ132から出力されるパルス信号の周期を所定のフィードバック制御周期毎(例えば、500ns毎)に取得し、周波数を電圧に変換した電圧値が、指令値と一致するようにモータドライバ137を制御している。なお、エンコーダ132はモータ131の回転軸に取り付けられているので、モータ131の回転速度に対応したエンコーダパルスを出力する。DCモータは、低コストで、更に速度調整を簡易に行うことができるが、負荷変動等の外的要因によって回転速度が変化してしまう。しかしながら、上記のフィードバック制御により、所定期間後には、指令値に応じた回転速度となるように制御することが可能である。
【0047】
図7(a)及び
図7(b)は、媒体の先端部が搬送ローラを通過するときの負荷変動により、エンコーダ132から出力されるパルス信号のパルス幅が変動する様子を示す図である。
【0048】
図7(a)は、給送ローラ112により給送される媒体D1の先端部が、第1搬送ローラ118と第2搬送ローラ119の間に送り込まれようとしている状態を示している。このとき、第1搬送ローラ118は方向A4に回転し、第2搬送ローラ119は方向A5に回転しており、第1搬送ローラ118及び第2搬送ローラ119が媒体D1の先端部を噛みこむときの負荷変動によって、モータ131の回転速度が変動する。
【0049】
図7(b)は、エンコーダ132から出力されるパルス信号のパルス幅が、モータ131の回転速度に応じて変動する様子を示している。
図7(b)の横軸は時間を示し、
図7(b)の縦軸はパルス信号の電圧の大きさを示している。
【0050】
媒体D1が第1搬送ローラ118と第2搬送ローラ119の間に送り込まれる前の時刻t0において、エンコーダ132から出力されるパルス信号のパルス幅は、制御部161によりモータ131の回転速度がフィードバック制御により一定に保たれているため、概ね一定のパルス幅T0を維持している。
【0051】
時刻t1において、第1搬送ローラ118及び第2搬送ローラ119が媒体D1の先端部を噛みこむと、負荷変動によりモータ131の回転速度が遅くなり、パルス信号P1のパルス幅は所定の閾値Ttを超えてパルス幅T1となる。時刻t1においてパルス信号P1のパルス幅がパルス幅T1に変化しても、直ぐにはフィードバック制御が掛からないので、モータ131の回転速度はしばらく元には戻らず、したがってパルス幅もしばらくパルス幅T1のままとなる。
【0052】
図7(b)の例では、所定のフィードバック制御周期後の時刻t2において、エンコーダ132から出力されるパルス信号のパルス幅が、再び元のパルス幅T0に戻されている。
【0053】
このように、エンコーダ132から出力されるパルス信号のパルス幅は、第1搬送ローラ118及び第2搬送ローラ119が媒体D1の先端部を噛みこむときの負荷変動によって一時的に変動するが、フィードバック制御により変動前のパルス幅に戻る。
【0054】
搬送路の上側に配置された第2搬送ローラ119、第2撮像装置121b、及び第4搬送ローラ123は、上方へ移動可能に設けられており、搬送中の媒体D1の厚さに合わせて上方へ移動する。第1搬送ローラ118及び第2搬送ローラ119によって第1撮像装置121a及び第2撮像装置121bの読取面の下に送り込まれた媒体D1は、第1撮像装置121a及び第2撮像装置121bによって読み取られる。
【0055】
第1撮像装置121a及び第2撮像装置121bが媒体D1を読取中に、媒体D1の先端部が第3搬送ローラ122及び第4搬送ローラ123を通過するときも同様に、負荷変動によりパルス信号のパルス幅が変動する。また、媒体の後端部が、第1搬送ローラ118、第2搬送ローラ119、第3搬送ローラ122、及び第4搬送ローラ123を通過するときも同様に、負荷変動によりパルス信号のパルス幅が変動する。
【0056】
図8(a)及び
図8(b)は、媒体の先端部が搬送ローラを通過するときの負荷変動により、エンコーダ132から出力されるパルス信号のパルス幅が変動する様子を示す他の図である。
図8(a)及び
図8(b)は、
図7(a)及び
図7(b)と比べて、媒体D2が媒体D1より厚くなっている。
【0057】
図8(a)に示すように媒体D2の厚さが大きいと、第1搬送ローラ118及び第2搬送ローラ119が媒体D2を噛みこむときの負荷変動がより大きくなる。この結果、
図8(b)に示すように、時刻t1において、第1搬送ローラ118及び第2搬送ローラ119が媒体D2の先端部を噛みこむときにモータ131の回転速度がより遅くなり、パルス信号P2のパルス幅はパルス幅T1よりも大きいパルス幅T2となる。
【0058】
このように、媒体が搬送ローラを通過するときのパルス信号のパルス幅の変動の大きさは、搬送される媒体D1、D2の厚さによって異なる。したがって、媒体搬送装置100は、媒体D1、D2が搬送される際の負荷変動によるパルス信号のパルス幅の変動に基づいて、媒体D1、D2の厚さを判定することができる。
【0059】
図9(a)及び
図9(b)は、媒体が搬送ローラを通過するときの負荷変動により、エンコーダ132から出力されるパルス信号のパルス幅が変動する様子を示す更に他の図である。
図9(a)及び
図9(b)は、
図7(a)及び
図7(b)と比べて、媒体D3が、例えば写真を含むページを開いて読み取るパスポートのように、厚さの異なる複数の領域を有している点が異なる。
【0060】
図9(a)に示す媒体D3は、厚さの異なる領域を有する媒体の一例であり、相対的に厚さが薄い(図中の左側の)第1の領域と、相対的に厚さが厚い(図中の右側の)第2の領域を有している。
図9(a)は、媒体D3の薄い第1の領域が、第1搬送ローラ118と第2搬送ローラ119の間を通過した後、媒体D3の厚い第2の領域が、第1搬送ローラ118と第2搬送ローラ119の間に送り込まれようとしている状態を示している。
図9(a)に示す状態では、第1撮像装置121a及び第2撮像装置121bが、媒体D3の薄い第1の領域を読取中である。
【0061】
媒体D3の薄い第1の領域が第1搬送ローラ118と第2搬送ローラ119の間を通過する時刻t0~時刻t2におけるパルス信号の波形は、パルス幅がパルス幅T3であることを除いて
図7(b)と同じである。
【0062】
その後、時刻t3において、第1搬送ローラ118及び第2搬送ローラ119が媒体D3の厚い第2の領域を噛みこむと、負荷変動によりモータ131の回転速度が遅くなり、パルス信号P3のパルス幅はパルス幅T3よりも大きいパルス幅T4となる。その後、時刻t4において、パルス信号のパルス幅は、フィードバック制御によって再びパルス幅T0に戻される。
【0063】
このように、媒体D3が厚さの異なる複数の領域を有する場合でも、媒体搬送装置100は、エンコーダ132から出力されるパルス信号のパルス幅の変動に基づいて、媒体の厚さが変化したことを検出することができる。
【0064】
図10は、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。以下、
図10に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置150に記憶されているプログラムに基づき、主にCPU160により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。
図10に示す動作のフローは、定期的に実行される。
【0065】
まず、制御部161は、駆動装置130を駆動して給送ローラ112を回転させ、載置台103に載置された媒体の給送を開始する(ステップS101)。
【0066】
次に、制御部161は、撮像装置121が媒体の撮像を開始する前に、エンコーダ132から出力されるパルス信号のパルス幅が所定の閾値Ttを超えて変動したか否かを判定する(ステップS102)。パルス信号のパルス幅が変動した場合、制御部161は、読取前処理を実行する(ステップS103)。読取前処理については後述する(
図11参照)。
【0067】
次に、画像取得部162は、第2媒体検出センサ120から出力される信号の信号値が、媒体が存在しないことを示す値から媒体が存在することを示す値に変化したときに、媒体の先端が第2媒体検出センサ120の位置を通過したと判定する。そして、画像取得部162は、撮像装置121に媒体の読取を開始させる(ステップS104)。
【0068】
次に、制御部161は、撮像装置121が媒体を読取中に、エンコーダ132から出力されるパルス信号のパルス幅が所定の閾値Ttを超えて変動したか否かを判定する(ステップS105)。パルス信号のパルス幅が変動した場合、制御部161は、パルス信号のパルス幅が変動したときに撮像された撮像信号の入力画像上の位置を記憶装置150に記憶しておく(ステップS106)。
【0069】
次に、制御部161は、媒体が撮像装置121の読取面を通過したか否かを判定する(ステップS107)。例えば、制御部161は、第2媒体検出センサ120から出力される信号の信号値が、媒体が存在することを示す値から媒体が存在しないことを示す値に変化した後、所定期間が経過すると、媒体が撮像装置121を通過したと判定する。制御部161は、媒体が撮像装置121を通過するまで、ステップS105~ステップS107を繰り返す。
【0070】
媒体が撮像装置121を通過すると、画像取得部162は、撮像装置121に媒体の読取を終了させて、入力画像を取得する(ステップS108)。
【0071】
次に、画像補正部164は、入力画像を補正して、補正画像を生成する(ステップS109)。入力画像の補正処理については後述する(
図12(a)参照)。
【0072】
次に、切り出し部165は、画像補正部164によって生成された補正画像から、媒体の領域又は媒体上の所定の領域を切り出し(ステップS110)、一連の処理を終了する。所定の領域を切り出す処理については後述する(
図12(b)参照)。
【0073】
図10の例では、媒体搬送装置100側で、画像補正処理及び所定の領域を切り出す処理を行っているが、画像補正処理及び/又は所定の領域を切り出す処理を情報処理装置200で実行する様にしても良い。この場合、制御部161は、入力画像及び/又は補正画像と、後述する媒体の厚さ情報、負荷変動があった領域の情報とを、インタフェース装置142を介して情報処理装置200へ送信することとなる。なお、媒体搬送装置100では、入力画像のみを生成し、画像補正処理及び所定の領域を切り出す処理は行わない様にしても良い、即ち、
図10のステップS109及びS110は省力するようにしても良い。
【0074】
図11は、
図10のステップS103における読取前処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0075】
判定部163は、媒体が搬送される際の負荷変動に基づいたパルス幅の変動を検出して、媒体の厚さを判定する(ステップS201)。例えば、判定部163は、
図7(b)に示したように、パルス幅が所定の閾値Ttを超えた最初のパルス信号P1のパルス幅T1に基づいて、媒体の厚さを判定することができる。そのために、判定部163は、例えば、パルス幅とそのパルス幅に対応する媒体の厚さとを互いに関連付けて記憶したテーブルを記憶装置150に予め記憶しておき、そのテーブルを参照して媒体の厚さを判定してもよい。このテーブルは、事前に媒体の厚さを変えて実施された搬送処理の実測値等に基づいて作成される。
【0076】
次に、制御部161は、判定部163によって判定された媒体の厚さに基づいて、媒体の種類を推定する(ステップS202)。判定部163は、例えば、媒体の厚さとその媒体の厚さに対応する媒体の種類とを互いに関連付けて記憶したテーブルを記憶装置150に予め記憶しておき、そのテーブルを参照して媒体の種類を推定してもよい。このテーブルは、事前に媒体の種類を変えて実施された搬送処理の実測値等に基づいて作成される。
【0077】
次に、制御部161は、判定部163によって推定された媒体の種類が、例えば写真を含むページを開いて読み取るパスポートのように、厚さの異なる複数の領域を有する種類であるか否かを判定する(ステップS203)。ステップS202及びS203における媒体の種類の推定及び厚さの異なる領域を有する種類の推定は、後述する画像補正処理(
図12(a)参照)及び所定の領域を切り出す処理(
図12(b)参照)に利用することができる。
【0078】
ステップS203において厚さの異なる複数の領域を有する種類ではないと判定された場合、制御部161は、判定部163によって判定された媒体の厚さが所定厚さ以上であるか否かを判定する(ステップS204)。
【0079】
媒体の種類が厚さの異なる複数の領域を有する種類である場合、又は、媒体の厚さが所定厚さ以上である場合、制御部161は、媒体の搬送速度が遅くなるようにモータ131を制御する(ステップS205)。これにより、
図9(a)に示したように、媒体の読取中において、媒体の厚さが変化する境界部が第1搬送ローラ118、第2搬送ローラ119、第3搬送ローラ122、及び第4搬送ローラ123を通過するときの負荷変動が低減される。また、厚い媒体が、第1搬送ローラ118、第2搬送ローラ119、第3搬送ローラ122、及び第4搬送ローラ123によって搬送される際の負荷変動が低減される。なお、一旦遅延された媒体の搬送速度は、対象の媒体の搬送が完了した時点などの適当なタイミングで、元の搬送速度に戻されるように制御部161によって制御される。
【0080】
次に、制御部161は、搬送速度が遅くなったことに応じて、媒体の読取タイミングを変更する(ステップS206)。具体的には、画像取得部162が、撮像装置121が媒体を予め決められた周期毎に幅方向に走査して取得したライン画像の内、実際の入力画像の形成に利用するライン画像を取得するタイミングを変更して、媒体の搬送速度が遅くなっても入力画像が搬送方向に伸長しないように制御している。例えば、通常の搬送速度の場合、撮像装置121が取得したライン画像を全て利用して入力画像を形成するのに対して、搬送速度を遅くした場合、撮像装置121が取得したライン画像の内、3本に1本のライン画像のみを利用して(間引いて)入力画像を形成するようにする。
【0081】
媒体の種類が厚さの異なる複数の領域を有する種類ではなく、且つ、媒体の厚さが所定厚さ未満である場合、制御部161は、読取前処理を終了する。
【0082】
図12(a)は、
図10のステップS109における入力画像301の補正処理について説明するための図である。
【0083】
媒体が第1搬送ローラ118、第2搬送ローラ119、第3搬送ローラ122、及び第4搬送ローラ123を通過するときの負荷変動によって、媒体の搬送速度が変動すると、入力画像301には伸縮等の歪みが生じる。
図12(a)は、媒体が搬送される際の負荷変動によって入力画像301に生じる歪み311、312、321、322、331、332の例を示す。
【0084】
歪み311、312は、それぞれ、媒体の先端部が、第1搬送ローラ118と第2搬送ローラ119の間、第3搬送ローラ122と第4搬送ローラ123の間、に送り込まれるときの負荷変動により生じるものである。
【0085】
また、歪み321、322は、それぞれ、媒体の後端部が、第1搬送ローラ118と第2搬送ローラ119の間、第3搬送ローラ122と第4搬送ローラ123の間、から抜けるときの負荷変動により生じるものである。
【0086】
また、歪み331、332は、それぞれ、媒体の厚さが変化する境界部が、第1搬送ローラ118と第2搬送ローラ119の間、第3搬送ローラ122と第4搬送ローラ123の間、を通過するときの負荷変動により生じるものである。
【0087】
画像補正部164は、入力画像301に生じた歪み311、312、321、322、331、332を、例えば、
図11のステップS202において媒体の厚さから推定された媒体の種類に基づいて補正する。例えば、画像補正部164は、媒体の種類と、その種類の媒体を読み取った場合に入力画像301に歪みが生じる領域と、その領域を補正するための伸縮率とを互いに関連付けて記憶したテーブルを、記憶装置150に予め記憶しておく。このテーブルは、事前に媒体の種類を変えて実施された読取処理の実測値等に基づいて作成される。そして、画像補正部164は、そのテーブルを参照して、その種類の媒体を読み取った場合に入力画像301に歪みが生じる領域を、その領域を補正するための伸縮率で伸縮して入力画像301を補正してもよい。
【0088】
また、画像補正部164は、
図10のステップS106において記憶した、パルス信号のパルス幅が変動したときに撮像された撮像信号の入力画像301上の位置の情報を参照し、厚さが変化した領域に対応する入力画像を補正するようにしてもよい。これにより、入力画像の歪みがより正確に補正される。
【0089】
図12(b)は、
図10のステップS110における所定の領域を切り出す処理について説明するための図である。
図12(b)に示す画像は、画像補正部164によって補正された補正画像302の例である。
図12(b)に示す補正画像302では、
図12(a)に示した歪み311、312、321、322、331、332が補正されることで、媒体の領域303の境界、及び、例えばパスポートの写真領域のような所定の領域304の境界が明確になっている。また、パスポートに記載されるMRZ(Machine Readable Zone)のような、OCR(Optical Character Recognition)等によって読み取り可能な所定の領域305の境界も明確となる。これにより、切り出し部165は、明確になった媒体の領域303、及び、所定の領域304、305を正確に切り出すことができる。
【0090】
以上のように、媒体搬送装置100は、媒体を搬送する搬送ローラを駆動するモータ131と、モータ131を制御して搬送ローラを回転させる制御部161と、パルス幅がモータ131の回転速度に応じて変化するパルス信号を出力する信号出力部と、を有する。そして、判定部163は、搬送ローラが媒体を搬送する際の負荷変動に基づいたパルス幅の変動を検出して、搬送ローラが搬送する媒体の厚さを判定する。これにより、媒体搬送装置100は、搬送される媒体の厚さを簡素な構成で検出することができる。
【0091】
また、判定部163は、パルス幅が所定の閾値を超えた最初のパルス信号のパルス幅に基づいて、媒体の厚さを判定する。これにより、媒体搬送装置100は、搬送される媒体の厚さを、少ない演算量で高速に算出することができる。
【0092】
また、判定部163によって判定された媒体の厚さが所定厚さ以上である場合、制御部161は、媒体の厚さが所定厚さ未満である場合よりも搬送ローラの回転速度を遅くするようにモータ131を制御する。これにより、厚い媒体が、第1搬送ローラ118、第2搬送ローラ119、第3搬送ローラ122、及び第4搬送ローラ123によって搬送される際の負荷変動が低減される。
【0093】
また、制御部161は、推定された媒体の種類が厚さの異なる複数の領域を有する種類である場合、厚さの異なる複数の領域を有する種類でない場合よりも搬送ローラの回転速度を遅くするようにモータ131を制御する。これにより、媒体の読取中において、媒体の厚さが変化する境界部が第1搬送ローラ118、第2搬送ローラ119、第3搬送ローラ122、及び第4搬送ローラ123を通過するときの負荷変動が低減される。
【0094】
また、制御部161は、パルス幅が指令値に追従するようにDCモータの回転速度を制御する。これにより、フィードバック制御によって媒体の搬送速度が安定する。また、ステッピングモータを用いる場合よりも静粛性が向上し、消費電力が低減される。
【0095】
また、判定部163は、撮像部が媒体の読取を開始する前にパルス幅の変動を検出して媒体の厚さを判定する。これにより、媒体搬送装置100は、撮像装置121が媒体の撮像を開始する前に、媒体の搬送速度を遅くしたり、媒体の読取タイミングを変更したりすることができる。
【0096】
また、撮像部は、判定部163によって判定された媒体の厚みに応じて、媒体の読取タイミングを変更する。これにより、制御部161は、媒体が厚い場合に、媒体の搬送速度が遅くなって入力画像が高さ方向に伸長することが抑制される。
【0097】
また、判定部163は、撮像部が媒体の読取中にパルス幅の変動を検出して媒体の厚さが変化した領域を検出し、画像補正部164は、判定部163が検出した厚さが変化した領域に対応する入力画像を補正する。これにより、入力画像の歪みがより正確に補正される。
【0098】
また、切り出し部165は、画像補正部164によって補正された入力画像から、所定の領域を切り出す。これにより、補正により明確になった媒体の領域、及び、所定の領域が正確に切り出される。
【0099】
上述の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならない。すなわち、本発明は、その技術思想又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0100】
図13は、他の実施形態に係る媒体搬送装置における処理回路270の概略構成を示す図である。処理回路270は、媒体搬送装置100の処理回路170の代わりに使用され、CPU160の代わりに、媒体読取処理、判定処理及び画像補正処理を実行する。処理回路270は、制御回路271、画像取得回路272、判定回路273及び画像補正回路274等を有する。なお、これらの各部は、それぞれ独立した集積回路、マイクロプロセッサ、ファームウェア等で構成されてもよい。
【0101】
制御回路271は、制御部の一例であり、制御部161と同様の機能を有する。画像取得回路272は、画像取得部の一例であり、画像取得部162と同様の機能を有する。判定回路273は、判定部の一例であり、判定部163と同様の機能を有する。画像補正回路274は、画像補正部の一例であり、画像補正部164と同様の機能を有する。
【0102】
また、
図14は、他の実施形態に係る情報処理装置200の概略構成を示すブロック図である。媒体搬送装置100と情報処理装置200とを有する画像処理システム1において、媒体搬送装置100の画像補正部164及び切り出し部165と同等の機能を、情報処理装置200が有してもよい。情報処理装置200は、インタフェース装置242、記憶装置250、及びCPU260等を有する。
【0103】
インタフェース装置242は、例えばUSB等のシリアルバスに準じるインタフェース回路を有し、媒体搬送装置100と電気的に接続して入力画像及び各種の情報を送受信する。また、インタフェース装置242の代わりに、無線信号を送受信するアンテナと、所定の通信プロトコルに従って、無線通信回線を通じて信号の送受信を行うための無線通信インタフェース装置とを有する通信部が用いられてもよい。所定の通信プロトコルは、例えば無線LANである。
【0104】
記憶装置250は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。また、記憶装置250には、情報処理装置200の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納される。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶装置250にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM、DVD-ROM等である。
【0105】
CPU260は、予め記憶装置250に記憶されているプログラムに基づいて動作する。なお、CPU260に代えて、DSP、LSI、ASIC、FPGA等が用いられてもよい。CPU260は、インタフェース装置242、記憶装置250等と接続され、これらの各部を制御する。CPU260は、画像を、媒体搬送装置100からインタフェース装置242を介して受信し、媒体搬送装置100の画像補正部164、及び切り出し部165と同様の処理を実行し、処理した画像を記憶装置250に格納する。
【0106】
図15は、他の実施形態に従った情報処理装置200の記憶装置250及びCPU260の概略構成を示す図である。本実施形態では、媒体搬送装置100の代わりに、情報処理装置200が画像補正処理を実行する。
【0107】
図15に示すように、記憶装置250には、受信プログラム251、画像補正プログラム252、及び切り出しプログラム253等の各プログラムが記憶される。これらの各プログラムは、プロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールである。CPU260は、記憶装置250に記憶された各プログラムを読み取り、読み取った各プログラムに従って動作する。これにより、CPU260は、受信部261、画像補正部262、及び切り出し部263として機能する。
【0108】
受信部261は、インタフェース装置242を介して媒体搬送装置100から入力画像を受信する。画像補正部262は、入力画像を補正して、補正画像を生成する。切り出し部165は、補正画像から、媒体の領域又は媒体上の所定の領域を切り出す。
【0109】
本実施形態に従った画像処理システムも、上記した各効果と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 画像処理システム、100 媒体搬送装置、112 給送ローラ、113 ブレーキローラ、121 撮像装置、130 駆動装置、131 モータ、132 エンコーダ、161 制御部、162 画像取得部、163 判定部、164 画像補正部、165 切り出し部、200 情報処理装置。