IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱農機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-作業車両の排気ガス排出構造 図1
  • 特許-作業車両の排気ガス排出構造 図2
  • 特許-作業車両の排気ガス排出構造 図3
  • 特許-作業車両の排気ガス排出構造 図4
  • 特許-作業車両の排気ガス排出構造 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】作業車両の排気ガス排出構造
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/00 20100101AFI20221206BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20221206BHJP
   F01N 13/16 20100101ALI20221206BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F01N13/00 Z
F01N13/08 Z
F01N13/16
B60K13/04 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019058856
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020159266
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】錦織 昇
(72)【発明者】
【氏名】足立 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 春樹
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-169615(JP,U)
【文献】実開昭55-165913(JP,U)
【文献】特開平7-139346(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0128578(US,A1)
【文献】実開昭55-108211(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/00
F01N 13/08
F01N 13/16
B60K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン搭載台(3)に搭載されるエンジン(E)をボンネット(4)で覆うと共に、前記エンジン(3)側から突出パイプ部(12c)と屈曲部(12a)と縦向きのテール排気部(12b)とを形成したテールパイプ(12)を介して、ボンネット(4)の側方上方に向けて排気ガスを排出するに、該テールパイプ(12)の外周を筒状の遮熱カバー(16)で覆う作業車両の排気ガス排出構造において、
前記テール排気部(12b)の上部外周に所定長さのエアー導入路(13a)を有するディフューザ部(13)を構成すると共に、ディフューザ部(13)下方と突出パイプ部(12c)側を覆う下部カバー筒部(16f)の筒内周下部側に、該下部カバー筒部(16f)に溜まる留り水の漏れ出しを規制する堰き止め部材(25)を設けることを特徴とする作業車両の排気ガス排出構造。
【請求項2】
前記堰き止め部材(25)を、耐熱性及びクッション性を有するスポンジ状の合成樹脂からなる耐熱クッション材によって、方形状断面をなす帯状体として形成すると共に、その底面側を貼着手段によって筒内周下部側に付設する請求項1記載の作業車両の排気ガス排出構造。
【請求項3】
前記耐熱クッション材からなる方形状断面の帯状体からなる堰き止め部材(25)を、複数の堰き止めピース(25a),(25b)となるように分割形成すると共に、隣接する堰き止めピース(25a),(25b)の端部を重合させて筒内周下部側に付設する請求項2記載の作業車両の排気ガス排出構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、ボンネットで覆われるエンジンからの排気ガスを機外に排出する作業車両の排気ガス排出構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行機体に搭載されるエンジンをボンネットで覆うと共に、エンジン側から突設されるテールパイプ(排気管)に、突出パイプ部と屈曲部と縦向きのテール排気部とを形成し、前記ボンネットの側方上方に向けて排気ガスを排出すると共に、テールパイプの外周を上部カバー筒部と下部カバー筒部とからなる筒状の遮熱カバー(排気管カバー)で覆う作業車両の排気ガス排出構造が既に公知である。(例えば、特許文献1)
上記排気ガス排出構造は、エンジン始動時にエンジン側及びテールパイプ内に結露等によって生じる黒い水滴が溜まる留り水を、排気口から外部に排出することなく堰き止める堰き止め部材を設けると共に、テールパイプの下側(突出パイプ部側)に水抜き孔を設けることにより、酸化触媒の化学作用等で多く生ずる場合の黒い水の排出を行いながら、排気管の排気口からの外部飛散を防止するように排ガス排出装置を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-159788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示されるトラクタの排気ガス排出装置は、上記排出口に設けられる水滴堰き止め部材としての水滴堰き止め環部で水滴を堰き止めて排気口からの外部排出を抑制し排気管の内部に溜めながら、排気管の温度上昇とともに溜った黒い水を蒸発させると共に、蒸発しない留り水は水抜き孔から逐次排出するため、エンジン始動時の黒い水滴が排気口から外部に排出されてボンネットやキャビンを汚すような状況を防止する利点がある。
然しながら、この排気ガス排出構造は、テールパイプの内部に環状の水滴堰き止め部材を追加部品としてネジ止め構造又は機械加工等によって付設して構成するため、堰き止め部の付設作業が煩雑になると共に製造コストが嵩むことになる。
またテールパイプの基部側に水抜き孔を設ける排ガス排出装置は、水抜き孔から排出落下する留り水が風向き等によってはボンネットを汚し易い欠点があると共に、特に工場出荷後に運転休止時間が長い状態で保管されたトラクタが、顧客引き渡し時に試運転が行われる際等には、エンジン始動所期の排ガス背圧によって留り水が水抜き孔から勢いよく逆流排出し易いため、近隣のボンネット等を汚し易い問題もある。
一方、上記排気ガス排出構造は、テールパイプの外周を多数の通気孔(放熱孔)を穿設した排気管カバーによって単に覆う構造であるため、高温状態に加熱される排気管カバーは、メンテナンス作業等を行う際に火傷を伴い易い欠点があることから、排気管カバーの高温加熱が抑制されるディフューザ部を備える方式の排気ガス排出構造と、上記のような欠点を解消できる堰き止め構造にすることが課題になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明は、第1に、エンジン搭載台3に搭載されるエンジンEをボンネット4で覆うと共に、前記エンジン3側から突出パイプ部12cと屈曲部12aと縦向きのテール排気部12bとを形成したテールパイプ12を介して、ボンネット4の側方上方に向けて排気ガスを排出するに、該テールパイプ12の外周を筒状の遮熱カバー16で覆う作業車両の排気ガス排出構造において、
前記テール排気部12bの上部外周に所定長さのエアー導入路13aを有するディフューザ部13を構成すると共に、ディフューザ部13下方と突出パイプ部12c側を覆う下部カバー筒部16fの筒内周下部側に、該下部カバー筒部16fに溜まる留り水の漏れ出しを規制する堰き止め部材25を設けることを特徴としている。
第2に、堰き止め部材25を、耐熱性及びクッション性を有するスポンジ状の合成樹脂からなる耐熱クッション材によって、方形状断面をなす帯状体として形成すると共に、その底面側を貼着手段によって筒内周下部側に付設することを特徴としている。
第3に、耐熱クッション材からなる方形状断面の帯状体からなる堰き止め部材25を、複数の堰き止めピース25a,25bとなるように分割形成すると共に、隣接する堰き止めピース25a,25bの端部を重合させて筒内周下部側に付設することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に係る発明によれば、エンジン搭載台に搭載されるエンジンをボンネットで覆うと共に、前記エンジン側から突出パイプ部と屈曲部と縦向きのテール排気部とを形成したテールパイプを介してボンネットの側方上方に向けて排気ガスを排出するに、該テールパイプの外周を筒状の遮熱カバーで覆う作業車両の排気ガス排出構造において、前記テール排気部の上部外周に所定長さのエアー導入路を有するディフューザ部を構成すると共に、ディフューザ部下方と突出パイプ部側を覆う下部カバー筒部の筒内周下部側に、該下部カバー筒部に溜まる留り水の漏れ出しを規制する堰き止め部材を設けることにより、
エンジン始動時における排ガス排出装置は、下部カバー筒部内の留り水を排ガス流によってエアー導入路を介し下部カバー筒部内に移動し該下部カバー筒部内の留り水と混合させ、前記排ガス吐出流と共に筒端側に移動し一時的に排出しようとするが、これを下部カバー筒部の筒内周下部側に沿って付設されている堰き止め部材が堰き止めると共に、エンジンの運転に伴って筒端から吸い込まれて形成される吸気流の風圧により、堰き止め状態にある留り水は吸気流方向に押し戻し移動されながら、内部の昇温加熱により蒸発しディフューザ部のエアー導入路を介して排ガスと共にチムニの排気口から速やかに排出される。
従って、この排ガス排出装置をえる作業車両は、運転休止時間が長い状態で保管された後のエンジン始動時等においても、留り水の下部カバー筒部からの逆流排出を無くすことができるため、ボンネット等の汚染を簡単に防止することができる。
請求項2に係る発明によれば、堰き止め部材を、耐熱性及びクッション性を有するスポンジ状の合成樹脂からなる耐熱クッション材によって、方形状断面をなす帯状体として形成すると共に、その底面側を貼着手段によって筒内周下部側に付設することにより、
帯状体として形成される耐熱クッション材からなる堰き止め部材は、テールパイプに可及的に近接した高さにすることができるので、高さによる堰き止め性能を十分に発揮しながら突出パイプ部側と下部カバー筒部との間の通気間隔を悪戯に大きくすることなく最小的な通気間隔にでき、エンジン運転中の下部カバー筒部からの吸気流に伴う風圧と突出パイプ部側の放熱により、留り水の速やかな蒸発を促進し留り水による汚染を、簡潔で安価な構成によって防止することができる。
請求項3に係る発明によれば、耐熱クッション材からなる方形状断面の帯状体からなる堰き止め部材を、複数の堰き止めピースとなるように分割形成すると共に、隣接する堰き止めピースの端部を重合させて筒内周下部側に付設することにより、
所定の分割堰き止め長さと本数からなる各堰き止めピースは、下部カバー筒部の断面形状に適応した短い長さで筒内周下部側への貼付け作業を行い易くすることができると共に、複数の堰き止めピースを効率よく堰き止める留り水誘導パターンを選択自由にできるため、留り水の堰き止め及び蒸発作用を向上し易くすることができ、且つ曲げ難さを有している難曲げタイプの堰き止め部材でも、重合する各分割堰き止め部材及び筒内周下部側との大きな隙間をなくす配置が容易になり水漏れのない貼着作業を能率よく遂行できる等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明を適用したトラクタの側面図である。
図2】排ガス排出装置をキャビン側に設置する構成を示す前方斜視図である。
図3】排ガス排出装置の構造を示し、(a)は正面視の全体断面図であり、(b)は下部カバー筒部側の構成を示す拡大側面図である。
図4】排ガス排出装置を分解した構造を示し、(a)は正面視の分解斜視図であり、(b)は背面視の分解斜視図である。
図5】遮熱カバーの構成を示し、(a)はその正面図であり、(b)は下部カバー筒部の形状と堰き止め部材の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示す作業車両としてのトラクタ1は、左右一対のクローラ方式の走行装置2に支持される機体フレーム(エンジン搭載台)3と、該機体フレーム3の前側に設置されるエンジンEをカバーするボンネット4と、その後方にキャビン5で囲われる操縦部6等を設置し、走行機体の後方に耕耘装置等の作業機を取付支持する昇降リンク等からなる作業ヒッチ部7を備えている。
尚、上記エンジンEとキャビン5とは、機体フレーム3に対しそれぞれ異なる防振構造を介してマウント設置されている。
【0009】
先ず、排気ガス排出構造の概要を図2図4を参照し説明すると、排ガス排出装置10は、図4(b)に示すようにエンジンEのガス排出部に突設される排ガスパイプ11に対し、継手パイプ部11aを介して後方向きに接続されるテールパイプ12と、該テールパイプ12の中途部から屈曲部12aを介して縦向きに形成されるテール排気部12bに対し、ディフューザ部13を構成しながら縦向きに外付けされるチムニ14と、図3に示すように、ボンネット4の外方に横向きに突出されるテールパイプ12の突出パイプ部12c側からチムニ14の上方側を通気路Rを形成して覆う遮熱カバー16と、該遮熱カバー16の基部端に設置される堰き止め部17等から構成している。
【0010】
次に、各構成部品の詳細構造及び組立の態様について図2図5を参照し説明する。
上記チムニ14はその背面側の上下に突出するフレームブラケット19を、前記キャビン5の前フレーム5aに対する取付け間隔を有して設けており、且つチムニ外周の適所に突設した複数のカバーブラケット20に、遮熱カバー16の内面対向部位をボルト締結によって、ブラケット高さの通気間隔を有した取付けを可能にしている。
【0011】
そして、チムニ14の取付け態様は、エンジンE側に継手パイプ部11aとエンジン側ブラケット12dによって固設されるテールパイプ12のテール排気部12bに対し、所定の上下長さと外嵌め間隔を有してチムニ14を挿入支持することにより、該チムニ14の筒下端からエアーをスムーズに効率よく導入可能にするエアー導入路13aを形成したディフューザ部13を構成できるようにしている。
つまり、チムニ14は、前記上下のフレームブラケット19を前フレーム5aにボルト締結することにより、ディフューザ部13を簡単に構成できるようにしている。
【0012】
一方、図4で示すように実施形態の遮熱カバー16は、正面視で各L字状をなすように2分割形成される外側カバー16aと内側カバー16bとからなり、両者は内凹部を上記各カバーブラケット20にボルト締結し、対向する各縦側カバー部6cの前後対向辺を重ね合わせた箇所を複数のボルトによって締結することにより、チムニ14の外周に通気可能な遮熱間隔Sを形成する正面視逆L字状の筒状体を構成できるようにしている。(図3
【0013】
図示例の遮熱カバー16は、外側カバー16aと内側カバー16bとを接合した状態において、8角形状断面の剛体筒構造になるように製作され、且つ突出パイプ部12cに上下側に8角形の平坦面を対向するように取付けることにより、全体として縦向きのテール排気部12bとチムニ14側とを覆う上部カバー筒部16eと、ボンネット外方で突出パイプ部12c側を覆う横向き筒状の下部カバー筒部16fとを一連に構成するようにしている。
【0014】
上記外側カバー16aは、縦側カバー部6cに連なり横向き樋状に形成される下側カバー部16dの内端部に沿って後述する構成による堰き止め部17を設置している。
また内側カバー16bは縦側カバー部16cの基部側に、キャビン5のフロント窓ガラス5bに設けられるワイパ21の先端部と正面視でラップする位置に、ワイパ通過部22を切欠手段によって冷却用外気を取入れ可能に凹入形成し、この下部側に横下向き樋筒状をなす下側カバー部16dを一体形成するようにしている。
【0015】
また両カバーの縦側カバー部6cは、その組立時に前記下側のフレームブラケット19を突出させる開口部16gを切欠形成している。
そして上側の下側カバー部16dと下側の下側カバー部16dとの組付けによって横向き筒状をなす下部カバー筒部16fの筒端23は、図3,図4に示すように下り外向き傾斜面を有して形成することにより、ボンネット4の天板部4aから外側に向けて拡開状の斜面になる側壁部4bに沿って近接セットできる筒端形状にしている。
【0016】
これによる排ガス排出装置10は、遮熱カバー16の下側の筒端23とボンネット4の側壁部4bとの間に、雨水の侵入を抑制しながら筒内への外気の取入れを妨げることなく、且つ筒内に溜まる留り水の排出も可能にする隙間Hを形成している。
また組立てられる排ガス排出装置10は、キャビン5の左前隅側に纏まりよく設置されると共に、ワイパ21の先端側は前記ワイパ通過部22を通過させて起立姿勢にできるので、キャビン窓等の清掃時やワイパ21等のメンテナンス作業を容易にすることができる。
【0017】
次に、堰き止め手段17について図3,図4,図5を参照し説明する。図示例の堰き止め手段17は、前記ディフューザ部13の外気導入路Rを構成する遮熱カバー16を多角形又は円形状をなす筒部にすることができ、図示例の外気導入路Rは8角形状の断面をなす筒体にしている。
そして、この筒体部分は、上下対称断面形状で2分割することが可能な樋形状の上側カバー部16eと下側カバー部16dとの組立てによって形成される。
一方、堰き止め部材25は、耐熱性及びクッション性を有するスポンジ状の合成樹脂からなる耐熱クッション材によって方形状断面をなす帯状体として形成し、且つ図示例の堰き止め部材25は、その底面側を筒内周面に対し両面テープ又は接着剤等の貼着手段によって設置可能にしている。
【0018】
そして、筒内で留り水の流下及び吹き出しを規制する堰き止め部材25の堰き止め位置は、図5(b)に示すように、上向きの樋形状をなす下側カバー部16dの筒端23から内方側(外気流入方向の下手側)に向けて、水の滞留距離Lを有した所定位置の筒内周下部側に沿って付設するようにしている。
これによる堰き止め手段17は、筒内の留り水が稀に堰き止め部材25を乗り越えたとしても、当該乗り越え水を筒端23から直接的に落下させることなく、滞留距離Lを有する滞留筒面によって一旦受け止めた状態で薄く広げ蒸発を促進しながら少量の緩慢流下をさせるようにしている。
【0019】
また図示例の堰き止め手段17を構成する樋状の下側カバー部16dは、樋面(筒内周面)26が周方向に4等分された位置で折り曲げる屈曲部26aが形成され、これにより平坦な樋底になる底面26bと、その前後両側に上向きに屈曲して形成される上向き斜面26cと、これに連なり起立形成される立上面26dが形成される。
そして、実施形態の堰き止め部材25は、例えば1本の長い方形状断面をなす耐熱クッション材からなる帯状体を、各平坦面幅と同等又はやや長い堰き止め長さに切断することにより、底面26b用の堰き止めピース25aと上向き斜面26c用の堰き止めピース25bとを簡単に形成することができるようにしている。
【0020】
これによる堰き止め手段17は、図5(b)に示すように、堰き止めピース25aを前記滞留距離Lを有する位置の底面26bに貼着し、次いで、その左右のピース側面に接当させた状態で堰き止めピース25b,25bを貼着することにより、筒軸心方向に斜交しつつ一連に繋がった状態の堰き止め部材25にすることができる。
この場合の各堰き止めピース25a,25bは前記貼着姿勢において、各端部(切断面)が側面視で重合したラップ代を有するように設置することが望ましく、且つこのラップ箇所27は、底面26bと上向き斜面26cとの間の屈曲部26aの谷部内面に密着した状態にし易くすることができる。
【0021】
そして、所定長の堰き止め部材25を複数に分割して長さを短くした堰き止めピース25aと堰き止めピース25bとは、その端部が接当重合するラップ箇所(接続部)27を屈曲部26aの谷部に位置させて、両者間に生じようとする隙間をラップ代を有して水密的に塞ぐことができると共に、各貼着面の長さ中途部にも隙間を伴うことのない貼着作業を簡単且つ能率よく行うことができる。
【0022】
また上記構成による排気ガス排出構造によれば、従来型の遮熱カバーのように、環状の水滴堰き止め部材を不要にし、且つカバー内取付け加工や堰き止め機械加工等を必要としないので、簡潔で安価な構成にすることができる。
そして、耐熱クッション性を有する帯状の堰き止め部材25を所定長に切断すると共に、筒内周に沿って単に貼り付けるだけの簡単な作業によって付設作業を能率よく行うことができる利点等もある。尚、堰き止めピース25a,25bは、必要により予め所定の分割長さに成形製造することもできる。
【0023】
次に、上記構成される排気ガス排出構造の使用態様及び作用等について説明する。
このトラクタ1の排気ガス排出構造は、遮熱カバー16の縦向きの上部カバー筒部16e内で、テール排気部12bの上部外周に対しチムニ14を所定長さのエアー導入路13aを有して外嵌するディフューザ部13を構成し、且つ遮熱カバー16の突出パイプ部12c側を覆う下部カバー筒部16fの内周面に沿って、筒部内から留り水の漏れ出しを規制する堰き止め部材25を付設した堰き止め部17にしている。
【0024】
これにより、エンジンEが始動されるその初期において、テール排気部12bから排出される排ガスは、背圧として働くチムニ14内のエアーを急激的に押圧する結果、排ガスとチムニ内エアーがエアー導入路13aを介して逆流し、下部カバー筒部16f内のエアーを筒端23から吐出させようとする吐出流を一時的に形成するように作用することになる。
【0025】
つまり、上記エンジン始動時には、基部側に水抜き孔を有しないテールパイプ12側に存在する留り水が、排ガス流によってエアー導入路13aを介し下部カバー筒部16f内に水滴として移動し、該下部カバー筒部16f内で水滴により生じている留り水と混合し、一時的な前記排ガス吐出流と共に筒端23側に移動し排出されようとするが、水の滞留距離Lを有して下部カバー筒部16fの筒内周下部側に沿って付設されている堰き止め部材25の高さ(厚さ)によって堰き止められることになる。
【0026】
次いで、エンジンEが上記始動開始を経て継続運転になることに伴い、筒端23から流入する吸気流は安定した強い風圧になって、堰き止め状態にある留り水を吸気流方向に押し戻し移動しながら、排ガス排出装置10内の昇温加熱により蒸発を促進し、ディフューザ部13のエアー導入路13aを介し排ガスと共にチムニ14の排気口から速やかに排出することになる。
【0027】
従って、実施形態の排ガス排出装置10を備えるトラクタ1は、特に運転休止時間が長い状態で保管されている、例えば、工場出荷時から店頭保管を経て顧客に引き渡しされる際の試乗運転に伴うエンジン始動においても、前記長期保管に伴い生じた留り水の下部カバー筒部16fからの逆流排出を皆無にするため、顧客の眼前でのボンネット汚染の失態等の防止もすることができる。
またディフューザ部13を備える排ガス排出装置10は、ボンネット4に近接する筒端23側から吸い込む吸気流によってテールパイプ12を基部側から直接的に冷却すると共にチムニ14も冷却するため、メンテナンス作業時の接触に伴う火傷も抑制することができる等の特徴がある。
【0028】
そして、耐熱クッション材によって帯状体として形成される堰き止め部材25は、その耐熱性によりテールパイプ12に可及的に近接した高さにすることができるので、高さによる堰き止め性能を十分に発揮しながら突出パイプ部12c側と下部カバー筒部16fとの間に形成される通気間隔をことさら大きくするムダをなくし、最小レベルの通気間隔にできるため、エンジン運転中の下部カバー筒部16fからの吸気流に伴う強い風圧と突出パイプ部12c側の放熱により、留り水の速やかな蒸発を促進することができる。
【0029】
またクッション性を有する堰き止め部材25は、トラクタ1が通常の走行作業を行う際の、テールパイプ12と遮熱カバー16との相対的振動時には両者は接当しない高さ(通常非接当高さ)で付設されるが、高い段部の乗り越え走行時に稀に生ずる機体バウンド等による大振動時には、堰き止め部材25が突出パイプ部12c側とクッション性を有して接当することができるので、下部カバー筒部16fの外気導入路Rを徒に大きくして吸気風力を弱くすることなく、且つ排ガス排出装置10のコンパクト化も図ることを可能にしている。
【0030】
さらに、所定の分割堰き止め長さと本数で形成してなる各堰き止めピース(分割堰き止め部材)25a,25bは、下部カバー筒部16fの筒内周下部側への貼着を短い長さで貼付け作業を行い易くすることができると共に、複数の堰き止めピース25a,25bを前記留り水誘導パターンを有して留り水の堰き止め及び蒸発作用を向上させることができると共に、高耐熱性能部材加工によって製作される物性として曲げ難さを有している難曲げタイプの堰き止め部材25でも、これを分割形成した分割堰き止め部材25a,25bは図5(b)で前記したように大きな隙間をなくした堰き止め配置が、
望の堰き止め配置パターンが自由にでき、水漏れ防止性能を高めながら貼着作業部材25でも、これを分割形成した分割堰き止め部材25a,25bは図5(b)で前記したように大きな隙間をなくした堰き止め配置が所望の堰き止め配置パターンによって自由にでき、水漏れ防止性能を高めながら貼着作業も能率よく遂行できる利点がある。
【0031】
また分割堰き止め部材25a,25bは、図5(b)に実線で示す態様に限ることなく、例えば下部カバー筒部16fが円筒状である場合には、長い1本の堰き止め部材25をリング状に貼着することができる他、その筒内周下部側に堰き止めピース25aと堰き止めピース25bを付設する際に、両者は図5(b)に2点鎖線で示すように、先端を接合させながら平面視でヘ字状をなすように貼着させる留り水誘導パターンにすることもでき、この場合には前記したものと同等以上に、筒底に多く溜まる留り水を両側に振り分け状に誘導移動させて低水位にすることができるので、エンジン始動時における留り水の安易な堰乗り越えを安定的に防止することができる。
【0032】
尚、それでも稀に堰き止め部材25を乗り越える場合の乗り越え水は、乗り越え時に滞留距離Lを有する板面幅に沿って広く拡散しながらして移動する間に蒸発するか、又は筒端下部から飛散することなくボンネット4から離れた位置に垂れ下がり状に落下するので、ボンネット4の汚染を回避し易くすることができる。
また堰き止め部材25の切断誤差や曲げ谷部の形状によって、前記ラップ箇所27又は筒内周に隙間を生ずるような場合には、別の接着剤又は充填部材を適宜利用することができると共に、必要により行う堰き止め部材25の張替え交換作業も簡単且つ容易に遂行することができる。
また図示例の遮熱カバー16は、チムニ14を覆うために下部カバー筒部16f側から長い上部カバー筒部16eを設けたが、これに限ることなくチムニ14又はテールパイプ12に応じた短い長さでディフューザ部13を覆うように構成してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 トラクタ(作業車両)
3 機体フレーム(エンジン搭載台)
4 ボンネット
12 テールパイプ
12a 屈曲部
12b テール排気部
12c 突出パイプ部
13 ディフューザ部
13a エアー導入路
14 チムニ
16 遮熱カバー
16e 上部カバー筒部
16f 下部カバー筒部
25 堰き止め部材
25a,25b 堰き止めピース
E エンジン
図1
図2
図3
図4
図5