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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】洗車機
(51)【国際特許分類】
   B60S 3/04 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
B60S3/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019092322
(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公開番号】P2020185916
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000103138
【氏名又は名称】エムケー精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】酒井 陽三
(72)【発明者】
【氏名】竹内 龍司
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-001032(JP,A)
【文献】特開2001-310710(JP,A)
【文献】特開2004-001598(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0060150(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014117167(DE,A1)
【文献】特開2000-118363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体フレームに、自動車の上面位置を検出する第1車体検出手段と自動車車体を洗浄する洗浄手段とを前側から後側にかけてこの順に備え、自動車の先端が前記第1車体検出手段より本体フレームの後側に乗り入れられた状態で洗車を開始及び終了する洗車設定を有する洗車機であって、前記第1車体検出手段と洗浄手段の間に、自動車車体の上面位置を検出する第2車体検出手段を備えたことを特徴とする洗車機。
【請求項2】
前記本体フレームの走行位置を検出する位置検出手段と、該位置検出手段と前記第1車体検出手段及び第2車体検出手段の検出結果に基づいて自動車車体の上面車形データを作成する車形検出手段とを備え、該車形検出手段は、自動車の先端が前記第1車体検出手段より本体フレームの後側に乗り入れられた状態で洗車を開始及び終了する洗車設定のときに、前記第1車形検出手段と第2車体検出手段の間の自動車車体の上面車形データを第2車体検出手段の検出結果に基づいて作成することを特徴とする上記請求項1記載の洗車機。
【請求項3】
前記車形検出手段は、自動車の先端が前記第1車体検出手段より本体フレームの後側に乗り入れられた状態で洗車を開始及び終了する洗車設定のときに、前記第1車形検出手段の検出結果に基づいて自動車車体の上面形状を検出する第1車形データと、前記第2車形検出手段の検出結果に基づいて自動車車体の上面形状を検出する第2車形データとを作成し、作成した第1車形データと第2車形データとを比較して自動車の変化を検出する機能を備えたことを特徴とする上記請求項2記載の洗車機。
【請求項4】
前記車形検出手段は、自動車の先端が前記第2車体検出手段より本体フレームの後側に乗り入れられた状態で洗車を開始及び終了する洗車設定のときに、前記第2車形検出手段の検出結果に基づいて前記第2車体検出手段より本体フレームの後側に乗り入れられた自動車車体の上面形状を推定する機能を備えたことを特徴とする上記請求項2又は3記載の洗車機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車を跨ぐように門型に形成した洗車機本体を走行して、自動車の車体に洗車処理を施す洗車機に関し、限られたスペースでの洗車を実現する洗車機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られる洗車機は、門型に形成した洗車機本体を床面に敷設した左右の走行レールに沿って往復走行し、走行レールの間に停車した自動車の車体面に洗浄・乾燥の処理を施すものである。洗車機本体には、車形センサ・トップノズル・サイドノズル・トップブラシ・サイドブラシが前方から後方にかけて順次配置されており、洗車機本体の前進に伴う往行時に、車形センサにより自動車の上面輪郭形状を検出しながら、検出した上面輪郭形状に沿ってトップブラシとサイドブラシを制御して車体を洗浄する洗浄処理を実行し、洗車機本体の後進に伴う復行時に、検出した上面輪郭形状に沿ってトップノズルとサイドノズルを制御して車体を乾燥する乾燥処理を実行する。
【0003】
このような洗車機では、車形センサで自動車の形状を検出するため、自動車の前端が車形センサよりも手前になるように停車させて洗車を実行することが望ましいが、大型車の洗浄に対応するには洗車機本体の走行範囲が長くなってしまい、走行レールの敷設による設置スペースが広くなることから、洗車機の設置を断念するケースが見られた。
【0004】
こうした課題に対処し、特許文献1では、自動車をできるだけ洗車機本体に乗り込ませた状態で停車させ、洗車機本体の走行範囲を短くする構成を提案している。この特許文献1は、洗車機本体の前側に自動車の上面位置を検出する車体センサを設けるとともに、洗車機本体における自動車の乗り入れ方向に一定間隔で複数の自動車進入検知スイッチを設け、自動車進入検知スイッチで自動車の進入を検知する毎に車体センサで自動車の上面位置を検出していき、車体センサよりも洗車機本体の後側に乗り入れられる自動車車体の車形データを作成している。これにより、自動車の先端が洗車機本体の車体センサよりも乗り入れられた状態で洗車を開始/終了する洗車設定が実行でき、洗車機本体の走行範囲を短くすることができる。
【0005】
しかしながら、自動車進入検知スイッチで自動車を検知するタイミングは、自動車を運転するドライバーの操作に依存するため、停車位置を乗り越えてバックする等のイレギュラーな操作が行われると、正確な車形データを作成することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-16728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、省スペース化を実現しながら、広範囲の車形データを作成することができる洗車機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために本発明は、本体フレームに、自動車の上面位置を検出する第1車体検出手段と、自動車車体を洗浄する洗浄手段とを前側から後側にかけてこの順に備え、自動車の先端が第1車体検出手段より本体フレームの後側に乗り入れられた状態で洗車を開始及び終了する洗車設定を有する洗車機であって、第1車体検出手段と洗浄手段の間に、自動車車体の上面位置を検出する第2車体検出手段を備えた。
【0009】
本体フレームの走行位置を検出する位置検出手段と、該位置検出手段と第1車体検出手段及び第2車体検出手段の検出結果に基づいて自動車車体の上面車形データを作成する車形検出手段とを更に備え、車形検出手段は、自動車の先端が第1車体検出手段より本体フレームの後側に乗り入れられた状態で洗車を開始及び終了する洗車設定のときに、第1車形検出手段と第2車体検出手段の間の自動車車体の上面車形データを第2車体検出手段の検出結果に基づいて作成する。
【0010】
また、車形検出手段は、自動車の先端が第1車体検出手段より本体フレームの後側に乗り入れられた状態で洗車を開始及び終了する洗車設定のときに、第1車形検出手段の検出結果に基づいて自動車車体の上面形状を検出する第1車形データと、第2車形検出手段の検出結果に基づいて自動車車体の上面形状を検出する第2車形データとを作成し、作成した第1車形データと第2車形データとを比較して自動車の変化を検出する機能を備えた。
【0011】
更に、車形検出手段は、自動車の先端が第2車体検出手段より本体フレームの後側に乗り入れられた状態で洗車を開始及び終了する洗車設定のときに、第2車形検出手段の検出結果に基づいて第2車体検出手段より本体フレームの後側に乗り入れられた自動車車体の上面形状を推定する機能を備えた。
【発明の効果】
【0012】
本発明の洗車機によれば、本体フレームの前側に設けた第1車体検出手段と洗浄手段の間に、第2車体検出手段を備えたので、自動車の先端が本体フレームの第1車体検出手段より後側に乗り入れられた状態で洗車を開始及び終了する洗車設定を実行しても広範囲の車形データを作成することができ、安全な洗車を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】洗車機の外観図である。
図2】洗車機の平面図である。
図3】洗車機の側面図である。
図4】普通車の乗り入れ状態を示す説明図である。
図5】ワンボックス車の乗り入れ状態を示す説明図である。
図6】ドア回避部Aの実施態様を示す説明図である。
図7】左サイドノズル6の構造を示す説明図である。
図8】制御系を示すブロック図である。
図9】普通車の洗車動作を示す説明図である。
図10】仮想車形データの作成方法を示す説明図である。
図11】車形データの作成イメージを示す説明図である。
図12】別の車形データの作成イメージを示す説明図である。
図13】追加乾燥の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施態様について図面を基に説明する。図1は洗車機の外観図、図2は平面図、図3は側面図である。
1は本体フレームで、左右一対のレール2・2上を往復走行し、レール2・2間に停車される自動車Cを跨ぐように移動する。3,4・4は車体の洗浄をはかる回転ブラシで、3は自動車Cの上面に沿って昇降動作し、主に車体上面を洗浄するトップブラシ、4・4は自動車Cの側面に沿って開閉動作し、車体側面および車体前後面を洗浄する左右一対のサイドブラシである。5,6・6は車体の乾燥をはかるブロワノズルで、5は自動車Cの上面に沿って昇降動作し、主に車体上面を乾燥するトップノズル、6・6は主に車体側面を乾燥する左右一対のサイドノズルである。
【0015】
7はレール2・2上を走行する本体フレーム1の車輪で、左右の前輪7aと後輪7bを合わせて四輪で構成され、左右の前輪7aにそれぞれ走行モータ8・8を連係して駆動輪とし、左右の後輪7bを従動輪としている。一方の走行モータ8の出力軸には、走行エンコーダ9が設けられ、本体フレーム1が単位距離走行する毎にパルス出力する。尚、走行エンコーダ9は、従動輪や計測専用の車輪に取り付けても良い。10は走行スイッチで、レール2・2の後方端に取り付けたドッグ11aと前方端に取り付けたドッグ11bでスイッチングし、本体フレーム1の走行限界を検出する。
【0016】
12は第1車体検出装置で、サイドノズル6よりも前方の本体フレーム1に配置され、複数の発光素子を上下に配列した発光部12aと、同発光素子と対をなす複数の受光素子を上下に配列した受光部12bとを自動車を幅方向に挾んで対向させ、各発光素子・受光素子間で形成される光軸が自動車の車体によって遮られたのを検知して車体の上面位置を検出するものである。
【0017】
13は第2車体検出装置で、トップノズル5とトップブラシ3の間の本体フレーム1に配置され、複数の発光素子を上下に配列した発光部13aと、同発光素子と対をなす複数の受光素子を上下に配列した受光部13bとを自動車を幅方向に挾んで対向させ、各発光素子・受光素子間で形成される光軸が自動車の車体によって遮られたのを検知して車両を検出して車体の上面位置を検出するものである。尚、第2車体検出装置13は、第1車体検出装置12よりもトップブラシ3に近いため、トップブラシ3からの飛散水の影響を受けやすい。そのため、第1車体検出装置12に比べ、発光素子の発光レベルを高め、受光時の透光/遮光を判断するしきい値レベルを下げるよう調整することが望ましい。
【0018】
本体フレーム1内のレイアウトは、前方から後方にかけて、第1車体検出装置12・サイドノズル6・トップノズル5・第2車体検出装置13・トップブラシ3・サイドブラシ4の順に配置されている。この本体フレーム1は、図4・5に示すように、走行スイッチ10がドッグ11aでスイッチングするポジションP1から、ドッグ11bでスイッチングするポジションP2までの走行範囲Sで往復走行を行い、通常、ポジションP1に待機して走行を開始し、走行範囲S内に停車した自動車Cに洗車処理を施すものである。
【0019】
この洗車機で洗車処理を行うには、本体フレーム1がポジションP1にあるときに自動車の前端が第1車体検出装置12よりも前方にあり、本体フレーム1がポジションP2に来たときに自動車の後端がサイドブラシ4の後方になる走行範囲Sを設定することが望ましい。一方、本体フレーム1が整備工場の認証指定基準に定められる建屋スペース(幅4m×長さ8m)に設置されるような場合、車長が5m以上ある自動車を洗車するには、本体フレーム1の走行範囲Sが制限されるため、自動車の前端を本体フレーム1内に乗り入れてから洗車処理を実行する必要がある。このとき、普通車であれば、図4に示すように、自動車を乗り入れた状態で運転席のドアが本体フレーム1と干渉することがないため、乗降に影響はないが、ワンボックス車のようにボンネットがない車種であれば、図5に示すように、自動車を乗り入れた状態で運転席のドアが本体フレーム1と干渉するため、乗降することが困難となる。
【0020】
そこで本発明の洗車機では、本体フレーム1の前面から内面に至るコーナー部に、運転者が自動車の運転席ドアを開けて乗降できるようにドアと干渉する箇所を面取りもしくは凹陥させたドア回避部Aを形成している。本体フレーム1は、水平枠1aと左右脚枠1b・1cとで門型に形成しており、左右脚枠1b・1cのうち、右ハンドルの運転席ドアと対面する左脚枠1bにドア回避部Aを形成している。それにより、本体フレーム1は、左脚枠1bの前面幅が右脚枠1cの前面幅よりも幅狭となるため、左脚枠1bの前面には、洗車機の洗車開始/停止、洗車メニュー選択等の基本操作を可能とした操作パネル14が設けられ、右脚枠1cの前面には、集計/メンテナンス等の洗車管理操作を可能とした管理パネル15が設けられる。むろん、操作パネル14に管理機能を持たせることもできる。
【0021】
ドア回避部Aは、平面視で右ハンドルの自動車の運転席ドアと対面する左脚枠1bの前面から内面に至るコーナー部をL型に切り欠いた形状で形成され、ボンネットが短い車種の自動車を乗り入れたときに運転席からの乗降を可能にする。ドア回避部Aにおいて、運転席ドアを開いたときに、ドアが接触する可能性のある箇所には緩衝材Mが設けられる。尚、ドア回避部Aの形状は、図6(a)のように、C面状に三角型に切り抜いた形状や、図6(b)のように、四角型に切り抜いた形状でも良く、ワンボックス車のようにボンネットが短い車種において乗降に必要なドアの開放角度θ(=30~40°)を確保するものであればよい。また、左ハンドルが多い環境においては、右脚枠1c側にドア回避部Aを設けることもでき、更に、左右脚枠1b・1cのどちらにもドア回避部Aを設けることもできる。尚、ドア回避部Aの内面壁に操作パネル14や管理パネル15を設けるようにしてもよい。
【0022】
ドア回避部Aには、第1車体検出装置12の発光部12aと、左サイドノズル6が設けられる。左サイドノズル6は、右サイドノズル6よりも車体から離れる位置に設けられることになるため、待機位置と乾燥位置まで進退する機能を備えている。ここで、待機位置はドア回避部Aの内側面位置であり、乾燥位置は左脚枠1bの内側面位置となる。
【0023】
図7は左サイドノズル6の構造を示す説明図である。
左サイドノズル6は、送風口を有するノズル体16と、このノズル体16を自動車側面に対して接離自在に進退するノズル進退装置17と、ノズル体16と車体との接触を未然に防ぐための接触検知装置18とを備える。
【0024】
ノズル体16は、上面に送風ブロワ(図示しない)と連通する可撓性のダクトホース19が接続される接続筒20を備え、本体フレーム1の内面側にノズル長にわたって送風口21を開口している。これにより、送風ブロワ19から供給される高圧風が送風口21から車体側面に吹き付けられる。
【0025】
ノズル進退装置17は、先端をノズル体16に連係したエアシリンダ22と、進退を案内するガイドフレーム23とを備え、エアシリンダ22へのエアの供給でノズル体16をガイドフレーム23に沿って移動する。尚、ノズル体16の駆動手段は、エアシリンダに限らず、モータ等でも置き換えできる。
【0026】
接触検知装置18は、特に詳細に図示しないが、ノズル体16の上面に取り付けた上ブラケットに水平に取り付けられる上支持アームと、ノズル体16の下面に取り付けた下ブラケットに水平に取り付けられる下支持アームと、上支持アームの先端に取り付けた上端支持体と下支持アームの先端に取り付けた下端支持体との間に、上下端を回動自在に支持された状態で取り付けられる検知バーと、上支持アームと上下平行になるように上端支持体に取り付けられる作動板と、作動板の接近・離間を検出する上ブラケットに取り付けられた近接スイッチとから構成されている。上支持アームと下支持アームは、バネ等の弾性部材からなり、検知バーをサイドノズル6の進退方向の先行する側に位置させ、検知バーが車体に接触することで変位し、連動する作動板が近接スイッチから離間することで車体接触を検出するものである。これは、本出願人が提案している特許5624483号と同様である。
【0027】
24・25はタイヤ停止板で、本体フレーム1がポジションP1にいる際に自動車を所定の停車位置に停車させる目安となるよう床面に設置されている。タイヤ停止板24は、自動車の乗り入れ方向に対して奥側に設けられ、主に普通車の停車位置を与える。タイヤ停止板25は、自動車の乗り入れ方向に対して手前に設けられ、主に軽自動車やワンボックス車の停車位置を与える。尚、目安ラインを床面に表示したり、車種毎に細かく分けたりしても良い。このタイヤ停止板24・25は、停車させた自動車の前端からトップブラシ3が作用できる位置に設定される。
【0028】
このような洗車機で洗車を受ける際、自動車を本体フレーム1の前方より進入させ、所定の停車位置に乗り入れたら自動車から降車し、操作パネル14で希望する洗車コースを選んでスタートさせる。本体フレーム1の走行範囲Sが制限される設置状況では、車種によって停車位置が異なる。
【0029】
洗車する自動車が普通車であれば、図4に示すように、タイヤ停車板24で与える停車位置に停車させる。普通車の場合、この停車位置に停車させた状態で自動車の前方が本体フレーム1内に乗り入れられるが、運転席のドアが本体フレーム1内に入り込むことはないため、降車に影響はない。
【0030】
また、洗車する自動車が軽自動車のように車長の短い車種であれば、タイヤ停車板25で与える停車位置に停車させることで、運転席のドアが本体フレーム1内に入り込むことはないため、降車に影響はない。
【0031】
一方、洗車する自動車がワンボックス車のように車長が長くボンネットが短い車種であれば、図5に示すように、タイヤ停車板25で与える停車位置に停車させる。ワンボックス車の場合、この停車位置に停車させた状態で自動車の前方が本体フレーム1内に乗り入れられたときに、運転席のドアが本体フレーム1内に入り込むことになるが、ドア回避部Aにより運転席ドアを開くことができるため、降車が可能になる。
【0032】
図8は制御系を示すブロック図である。
26は洗車制御部で、走行エンコーダ9・走行スイッチ10・第1車体検出装置12・第2車体検出装置13・操作パネル14・管理パネル15・洗車駆動部27が接続され、操作パネル14で受け付けた洗車コースに従い、予めプログラムされたシーケンスを実行する。洗車制御部26には、走行エンコーダ9のパルス信号から本体フレーム1の走行位置を検出する走行検出部28と、走行エンコーダ9のパルス信号をトリガに第1車体検出装置12・第2車体検出装置13を駆動して自動車の上面位置を検出する車形検出部29と、走行検出部28と車形検出部29の検出結果から車形データを作成する車形データ作成部30と、車形データを記憶するデータ記憶部31と、車形データに沿って洗車処理装置を制御する動作制御部32とを備えている。
【0033】
洗車制御部26では、走行エンコーダ9からのパルス信号を受けて、走行検出部28で本体フレーム1の走行位置を検出するとともに、車形検出部29で車体の上面位置を検出し、車形データ作成部30で本体フレーム1の走行位置と車体の上面位置とを対応させて車形データを作成してデータ記憶部31に記憶し、車形データに基づいて動作制御部32でブラシなどの洗車処理装置を制御する。
【0034】
続いて、洗車動作について説明する。洗車コースとして、例えば1往復洗車を選ぶと、本体フレーム1の往行でブラッシング洗浄が実行され、復行でブロー乾燥が実行される。洗車が開始すると、まず左サイドノズル6の車体検知装置18で停止した自動車が洗車可能な車幅範囲であるか、片寄った位置に停車されていないかを検出するため、左サイドノズル6を乾燥位置まで延出する。このとき、左サイドノズル6の接触検知装置18で車体を検知すると、本体フレーム1の走行を中止し、ノズル進退装置17によるサイドノズルの後退を行い、未然に車体とサイドノズル6との接触を防止する。
【0035】
以下、図9を用いて普通車を洗車処理する動作について説明する。
普通車を洗車処理する場合、タイヤ停車板24で与える停車位置に停車させる。自動車の前端は、第2車体検出装置13よりも本体フレーム1内に乗り入れられるため、自動車の前方部に各車体検出装置12・13では車形検出できない車形不検出部Sが生じることになる。この車形不検出部Sに対して、トップブラシ3を作用させるため、この車形不検出部Sの車体について仮想車形データd1を作成する。
【0036】
図10に示すように、車形不検出部Sの仮想車形データd1は、トップブラシ3の中心垂直線YLと第2車体検出装置13の中で車体を検出せずに透光となる受光素子のうち、最も下にある受光素子13Rnの水平線XLとの交点Piから所定高さh下の点Pyと、第2車体検出装置13の中で車体を検出せずに透光となる受光素子のうち、最も下にある受光素子13Rnとを結んだ直線SLを仮想の上面輪郭として記憶する。
【0037】
本体フレーム1の往行に伴い、第1車体検出装置12と第2車体検出装置13で自動車の上面形状を検出する車形検出処理と、この処理で作成された車形データに基づいてトップブラシ3を昇降制御し、サイドブラシ4・4を開閉制御して車体をブラッシング洗浄する洗浄処理が実行される。
【0038】
車形検出処理では、図11に示すように、第1車体検出装置12から第2車体検出装置13までのエリアAについて、本体フレーム1の走行位置と第2車体検出装置13の透光/遮光結果に基づいて車形データd2を作成し、第1車体検出装置12以降のエリアBについて、本体フレーム1の走行位置と第1車体検出装置12の透光/遮光結果に基づいて車形データd3を作成する。これにより、車形不検出部Sの仮想車形データd1と、エリアAの検出車形データd2と、エリアBの検出車形データd3とを合成して1つの車形データd4を作成する。
【0039】
尚、図12に示すように、第2車体検出装置13でエリアAを含むエリアA+Bの範囲で車形データd5を作成し、第1車体検出装置12で作成されるエリアBの車形データd3と対比することで、両データに差が生じた場合に自動車が動かされた・トランクが開いた等の状況を検出することができる。
【0040】
次に、本体フレーム1の復行に伴い、検出した車形に沿ってトップノズル5を昇降するとともに、左サイドノズル6を乾燥位置まで延出し、車体に高圧風を吹き付けて車体面をブロー乾燥する。ブロー乾燥において、左サイドノズル6は、ノズル進退装置17を介して右サイドノズル6の取付位置である右脚枠1aの内側面位置と同レベルの乾燥位置まで延出しており、車体側面に対する左右の乾燥性能は差が生じない。本体フレーム1が待機位置に達すると、トップノズル5と左サイドノズル6を待機位置まで戻して洗車を終了する。
【0041】
普通車の場合、本体フレーム内に乗り入れられた自動車の前方部にトップノズル5とサイドノズル6・6からの送風が十分に作用せず乾燥不足部Wが生じる。その乾燥不足部Wへの対処として、希望に応じ、一旦自動車を所定距離後進させて本体フレーム1から乗り出し、乾燥不足部Wを追加乾燥する機能を備えている。
【0042】
追加乾燥は、図13に示すように、作業者が自動車を第1車体検出装置12で車体が非検出になる位置まで後進させてから操作パネル14で選択できる。尚、第1車体検出装置12で車体が非検出になったことを報知する表示灯33等を設けることが望ましい。
【0043】
追加乾燥が開始すると、自動車の前端位置が第2車体検出装置13よりも後方にある場合、乾燥不足部Wの車長方向における長さxは、第1車体検出装置12から第2車体検出装置13までの距離Lに、第2車体検出装置13からサイドブラシまでの距離aからサイドブラシが自動車の前面に接触するまでに本体フレーム1が走行した距離bを引いた距離(a-b)を加えた距離L+(a-b)よりも短くなる。よって、追加乾燥のために本体フレーム1が往行する距離は、第1車体検出装置12が自動車の前端位置を検出してから、距離L+(a-b)にトップノズル5の位置を加味した+α分走行させれば足りる。本体フレーム1が距離L+(a-b)+α往行した後は、上記したとおり、第1車体検出装置12で検出した自動車の上面形状に基づいてトップノズル5を車体上面まで下降させ、本体フレーム1の復行に伴い、上面形状に沿ってトップノズル5を昇降するとともに、左サイドノズル6を乾燥位置まで延出し、車体に高圧風を吹き付けて自動車の前方部をブロー乾燥する。
【0044】
このように、追加乾燥において、本体フレーム1の走行距離を、乾燥不足部Wの車長方向における長さxに合わせて効率良く行うことで、無駄な走行が少なくなり、洗車時間を短縮することができる。
【0045】
尚、この追加乾燥は、各洗車コースに一体的に登録しておき、洗車処理後に一旦停止し、自動車を後進させた後に再スタートさせて実行するようにしても良い。この場合、自動車に乗ったまま操作できるよう、無線操作を行えるようにしても良い。また、追加乾燥は、乾燥済みの車体面に水滴を飛ばさないよう、本体フレーム1の往行時には行わないが、本体フレーム1を上記範囲(トップノズル5が車体前端からルーフスタートまで移動する範囲)において2往復以上させる場合は、その限りではない。
【0046】
本発明は以上に構成されるものであるが、本体フレーム内に装備される洗車処理装置の種類は特に限定されるものではなく、車体側面下部をブラッシングするロッカーブラシを設けたり、安全装置として車幅センサを設けたりしても良い。また、この1往復洗車以外にも洗車機を2往復・3往復させて様々なニーズに応じた洗車動作をさせることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 本体フレーム
3 トップブラシ
4・4 サイドブラシ
5 トップノズル
6・6 サイドノズル
12 第1車体検出装置
13 第2車体検出装置
24・25 タイヤ停止板
A ドア回避部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13