(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24D 3/00 20220101AFI20221206BHJP
F24D 3/18 20060101ALI20221206BHJP
F24F 11/86 20180101ALI20221206BHJP
F24F 11/65 20180101ALI20221206BHJP
【FI】
F24D3/00 S
F24D3/18
F24F11/86
F24F11/65
(21)【出願番号】P 2019096785
(22)【出願日】2019-05-23
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(73)【特許権者】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】上田 真典
(72)【発明者】
【氏名】大西 豊
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健一
(72)【発明者】
【氏名】若林 徹
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-024199(JP,A)
【文献】特開2005-016881(JP,A)
【文献】特開平09-152176(JP,A)
【文献】特開平06-331158(JP,A)
【文献】特開2001-235208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/00
F24D 3/18
F24F 11/86
F24F 11/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調対象空間の室内空気と冷媒との熱交換を行う室内熱交換器を備えた室内機と、
前記空調対象空間の床面を加温する床暖房端末と、
冷媒通路と水通路とを備え、前記冷媒通路内の前記冷媒と前記水通路内の水との熱交換を行う水冷媒熱交換器、前記冷媒と外気との熱交換を行う室外熱交換器、及び、圧縮機を備えた室外機と、
前記空調対象空間内の室温の設定を行う設定手段を備えた、前記室内機を操作するための第1リモコンと、
前記床暖房端末を操作するための第2リモコンと、
を有し、
前記水冷媒熱交換器の前記水通路と前記床暖房端末とを湯水配管によって環状に接続して湯水循環回路を形成し、前記室内熱交換器、前記水冷媒熱交換器の前記冷媒通路、前記室外熱交換器、及び、前記圧縮機を冷媒配管で接続して冷媒循環回路を形成して、前記室内機により室内空気を加熱する温風暖房運転と前記床暖房端末により前記床面を加温する床暖房運転との連動運転を実行可能な空調システムにおいて、
前記室温に関し予め定められた複数の温度区分と、各温度区分に対応して予め定められ、前記湯水循環回路を介し前記床暖房端末に供給する湯水の温度レベルと、の相関に基づいて、前記設定手段により設定された設定室温に対応
する前記湯水の
前記温度レベルを決定する温度レベル決定手段と、
前記温度レベル決定手段により決定された前記湯水の前記温度レベルに応じて、対応する目標戻り温度又は目標往き温度を決定する、目標温度決定手段と、
前記湯水循環回路を流れる前記湯水の温度が、前記目標温度決定手段により決定された前記目標戻り温度又は前記目標往き温度になるように、前記圧縮機の回転数を制御する圧縮機制御手段と、
を有することを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記湯水循環回路は、
前記水冷媒熱交換器の前記冷媒通路からの熱で加温された前記水通路内の湯水を前記床暖房端末へ導入する往き管路と、
前記往き管路を介し導入され前記床暖房端末で放熱した前記湯水を、当該床暖房端末から還流させる戻り管路と、
を備え、
前記空調システムは、さらに、
前記戻り管路における前記湯水の戻り温度を検出する戻り温度検出手段
又は前記往き管路における前記湯水の往き温度を検出する往き温度検出手段を有し、
前記目標温度決定手段は、
前記温度レベルと、各温度レベルに対応して予め定められた前記目標戻り温度又は前記目標往き温度と、の相関に基づいて、前記温度レベル決定手段により決定された前記湯水の前記温度レベル
に対応する
前記目標戻り温度
又は前記目標往き温度を決定
し、
前記圧縮機制御手段は、
前記戻り温度検出手段により検出された前記戻り温度
又は前記往き温度検出手段により検出された前記往き温度が、前記目
標温度決定手段により決定された前記目標戻り温度
又は前記目標往き温度になるように、前記圧縮機の回転数を制御する
ことを特徴とする請求項
1記載の空調システム。
【請求項3】
前記温度レベル決定手段により決定された前記湯水の前記温度レベルに対し、所望の補正値を設定し、この補正値による補正を行う温度レベル補正手段を有し、
前記目標温度決定手段は、
前記温度レベル補正手段により補正後の前記温度レベルに応じて、
前記目標戻り温度又は前記目標往き温度を決定する、
ことを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記補正値は、
前記第1リモコン又は前記第2リモコンを介した操作に基づき設定される、固定値である
ことを特徴とする請求項
3記載の空調システム。
【請求項5】
前記室内機は、
前記空調対象空間の実室温を検出する室温検出手段を有し、
前記補正値は、
前記室温検出手段により検出される前記実室温と前記設定室温との差に応じて、可変に設定される
ことを特徴とする請求項
3記載の空調システム。
【請求項6】
前記連動運転は、
前記圧縮機の起動後、前記床暖房運転を行うことなく前記温風暖房運転を行う第1段階と、前記第1段階による前記対象空間内の室温の上昇に応じて、前記床暖房運転と前記温風暖房運転とを並行して行う第2段階と、前記第2段階による前記対象空間内の室温の上昇に応じて、前記温風暖房運転を行うことなく前記床暖房運転を行う第3段階と、を含む複数の段階により実行され、
前記第3段階において、前記温度レベル決定手段が決定した前記湯水の前記温度レベルに対して前記温度レベル補正手段が前記補正値を用いた補正を行い、前記補正後の前記温度レベルに応じて、前記圧縮機制御手段が前記圧縮機の回転数を制御する
ことを特徴とする請求項
3乃至請求項
5の何れか1項に記載の空調システム。
【請求項7】
前記補正値が設定された後前記連動運転が終了するまでの適宜のタイミングにおいて、その時点における前記補正値を記憶する補正値記憶手段と、
前記連動運転の終了後、新たに前記連動運転が開始されて前記第3段階へ移行する際、前記補正値記憶手段に記憶された前記補正値を読み出す補正値取得手段と、
をさらに有し、
前記温度レベル補正手段は、
前記温度レベル決定手段により決定された前記湯水の前記温度レベルに対し、前記補正値取得手段により読み出された前記補正値を用いて補正を行い、
前記目標温度決定手段は、
前記温度レベル補正手段により補正後の前記温度レベルを用いて、
前記目標戻り温度又は前記目標往き温度を決定する、
ことを特徴とする請求項
6記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、室内機の温風暖房運転と床暖房端末の床暖房運転との連動運転を行う空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の空調システムにおいては、特許文献1記載のように、床暖房端末と室内機との連動運転時において、ユーザが床暖房端末への温水の温度レベルを設定すると、室内機の温風暖房能力が自動的に調整され、対応する室温が実現されるものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来のものにおいては、ユーザが前記温水の温度レベルを設定することで、対応する室温となるように室内機が制御される。しかしながら、通常、ユーザが調整したいのは室温であり、前記従来の手法では、ユーザにとって自分が設定した温度レベルが室温にすると何度に相当するのか分からず、感覚的に調整しにくい。そのため、ユーザは、前記連動運転の際に、自分の思い通りの暖房感を得ることが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では、空調対象空間の室内空気と冷媒との熱交換を行う室内熱交換器を備えた室内機と、前記空調対象空間の床面を加温する床暖房端末と、冷媒通路と水通路とを備え、前記冷媒通路内の前記冷媒と前記水通路内の水との熱交換を行う水冷媒熱交換器、前記冷媒と外気との熱交換を行う室外熱交換器、及び、圧縮機を備えた室外機と、前記空調対象空間内の室温の設定を行う設定手段を備えた、前記室内機を操作するための第1リモコンと、前記床暖房端末を操作するための第2リモコンと、を有し、前記水冷媒熱交換器の前記水通路と前記床暖房端末とを湯水配管によって環状に接続して湯水循環回路を形成し、前記室内熱交換器、前記水冷媒熱交換器の前記冷媒通路、前記室外熱交換器、及び、前記圧縮機を冷媒配管で接続して冷媒循環回路を形成して、前記室内機により室内空気を加熱する温風暖房運転と前記床暖房端末により前記床面を加温する床暖房運転との連動運転を実行可能な空調システムにおいて、前記室温に関し予め定められた複数の温度区分と、各温度区分に対応して予め定められ、前記湯水循環回路を介し前記床暖房端末に供給する湯水の温度レベルと、の相関に基づいて、前記設定手段により設定された設定室温に対応する前記湯水の前記温度レベルを決定する温度レベル決定手段と、前記温度レベル決定手段により決定された前記湯水の前記温度レベルに応じて、対応する目標戻り温度又は目標往き温度を決定する、目標温度決定手段と、前記湯水循環回路を流れる前記湯水の温度が、前記目標温度決定手段により決定された前記目標戻り温度又は前記目標往き温度になるように、前記圧縮機の回転数を制御する圧縮機制御手段と、を有するものである。
【0007】
また、請求項3では、前記湯水循環回路は、前記水冷媒熱交換器の前記冷媒通路からの熱で加温された前記水通路内の湯水を前記床暖房端末へ導入する往き管路と、前記往き管路を介し導入され前記床暖房端末で放熱した前記湯水を、当該床暖房端末から還流させる戻り管路と、を備え、前記空調システムは、さらに、前記戻り管路における前記湯水の戻り温度を検出する戻り温度検出手段又は前記往き管路における前記湯水の往き温度を検出する往き温度検出手段を有し、前記目標温度決定手段は、前記温度レベルと、各温度レベルに対応して予め定められた前記目標戻り温度又は前記目標往き温度と、の相関に基づいて、前記温度レベル決定手段により決定された前記湯水の前記温度レベルに対応する前記目標戻り温度又は前記目標往き温度を決定し、前記圧縮機制御手段は、前記戻り温度検出手段により検出された前記戻り温度又は前記往き温度検出手段により検出された前記往き温度が、前記目標温度決定手段により決定された前記目標戻り温度又は前記目標往き温度になるように、前記圧縮機の回転数を制御するものである。
【0008】
また、請求項4では、前記温度レベル決定手段により決定された前記湯水の前記温度レベルに対し、所望の補正値を設定し、この補正値による補正を行う温度レベル補正手段を有し、前記目標温度決定手段は、前記温度レベル補正手段により補正後の前記温度レベルに応じて、前記目標戻り温度又は前記目標往き温度を決定するものである。
【0009】
また、請求項5では、前記補正値は、前記第1リモコン又は前記第2リモコンを介した操作に基づき設定される、固定値であるものである。
【0010】
また、請求項6では、前記室内機は、前記空調対象空間の実室温を検出する室温検出手段を有し、前記補正値は、前記室温検出手段により検出される前記実室温と前記設定室温との差に応じて、可変に設定されるものである。
【0011】
また、請求項7では、前記連動運転は、前記圧縮機の起動後、前記床暖房運転を行うことなく前記温風暖房運転を行う第1段階と、前記第1段階による前記対象空間内の室温の上昇に応じて、前記床暖房運転と前記温風暖房運転とを並行して行う第2段階と、前記第2段階による前記対象空間内の室温の上昇に応じて、前記温風暖房運転を行うことなく前記床暖房運転を行う第3段階と、を含む複数の段階により実行され、前記第3段階において、前記温度レベル決定手段が決定した前記湯水の前記温度レベルに対して前記温度レベル補正手段が前記補正値を用いた補正を行い、前記補正後の前記温度レベルに応じて、前記圧縮機制御手段が前記圧縮機の回転数を制御するものである。
【0012】
また、請求項8では、前記補正値が設定された後前記連動運転が終了するまでの適宜のタイミングにおいて、その時点における前記補正値を記憶する補正値記憶手段と、前記連動運転の終了後、新たに前記連動運転が開始されて前記第3段階へ移行する際、前記補正値記憶手段に記憶された前記補正値を読み出す補正値取得手段と、をさらに有し、前記温度レベル補正手段は、前記温度レベル決定手段により決定された前記湯水の前記温度レベルに対し、前記補正値取得手段により読み出された前記補正値を用いて補正を行い、前記目標温度決定手段は、前記温度レベル補正手段により補正後の前記温度レベルを用いて、前記目標戻り温度又は前記目標往き温度を決定する、ものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明の請求項1によれば、湯水循環回路により湯水が供給される床暖房端末の床暖房運転と、冷媒循環回路により冷媒が供給される室内機の温風暖房運転との、連動運転を行うことができる。
その際、ユーザは、暖房の強弱調整を、室内機を操作するための第1リモコンによって行うことができる。すなわち、第1リモコンに備えられている設定手段によりユーザが室温の設定を行うと、温度レベル決定手段により、その設定室温に対応して床暖房端末への湯水の温度レベルが決定される。そして、圧縮機制御手段により、その決定された湯水の温度レベルに応じて、室外機に備えられた圧縮機の回転数の制御が行われる。この結果、圧縮機から導入される冷媒との熱交換により加温された温水が供給される床暖房端末の床暖房能力が調整される。
以上のように、本発明においては、室内機と床暖房端末とが連動運転を行うとき、ユーザが第1リモコンを用いて室内機に対し室温の設定をするだけで、床暖房端末の床暖房能力が、自動的に、前記室温設定に対応した適切な強さに制御される。
これにより、ユーザが床暖房端末への前記温度レベルを設定することで室内機の温風暖房能力が自動的に調整される従来手法に比べ、ユーザが感覚的に調整しやすく、自分の思い通りの暖房感を得ることができる。
【0014】
また、請求項2によれば、温度レベル決定手段が温度レベルを決定する際、相関記憶手段に予め記憶された、設定室温の温度区分と温度レベルとの相関を参照することで、簡単な演算で迅速かつ確実に前記温度レベルを決定することができる。
【0015】
また、請求項3によれば、ユーザの設定室温に対応した前記温度レベルに応じて目標戻り温度が決定され、圧縮機の回転数は、床暖房端末からの戻り管路における湯水の戻り温度が、前記目標戻り温度となるように制御される。これにより、床暖房端末の床暖房能力を、ユーザによる前記室温設定に対応した強さに確実に調整することができる。
【0016】
また、請求項4によれば、例えば空調対象空間まわりの断熱・気密構造、床構造、床暖房端末周囲のマットの種類、床暖房敷設率等による各端末固有のばらつきや、ユーザの個人的な好み、等を補正値として組み込んで温度レベルの補正が行われる。そして補正された温度レベルを用いて圧縮機の回転数が制御されることにより、さらにきめの細かい調整を行って良好な暖房感を得ることができる。
【0017】
また、請求項5によれば、補正値を固定とすることにより、ユーザの個人的な好みに合った安定的な補正を確実に行うことができる。
【0018】
また、請求項6によれば、設定室温と実室温との差に応じて補正値を可変とすることにより、時事刻々と変動する空調対象空間の状況に応じて、臨機応変に床暖房能力の的確な調整を行うことができる。
【0019】
また、請求項7によれば、圧縮機の起動後、空調対象空間がまだ暖まっていない状態では床暖房運転を行うことなく温風暖房運転が行われ(第1段階)、その後室温の上昇に応じて床暖房運転と温風暖房運転とが並行して行われる(第2段階)。さらにその後、室温が十分に上昇し安定したら、温風暖房運転が停止されて床暖房運転のみが行われる(第3段階)。そして、この状態において、前記した設定室温に対応して決定される温度レベルの補正、及び、その補正された温度レベルに応じた前記圧縮機の回転数制御が行われる。以上の結果、連動運転が安定状態となり床暖房運転のみが行われているときに、床暖房端末の床暖房能力を適切な強さに確実に制御することができる。
【0020】
また、請求項8によれば、連動運転の際に用いられた前記補正値が、当該補正値が設定された後連動運転が終了するまでの適宜のタイミングにおいて補正値記憶手段に記憶される。その後、さらに連動運転が開始され前記の安定状態となる際に、前記記憶された補正値が読み出されて用いられる。これにより、過去の連動運転時の補正値の実績値を確実に用いることができるので、当該過去の連動運転時と同様の適切な床暖房能力を容易かつ確実に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態の空調システム全体の回路構成図
【
図7】床暖房リモコンにおいてエアコン・床暖房連動設定画面において連動運転を設定するまでの画面遷移を表す図
【
図9】エアコン設定温度の温度区分と各区分に対応する床暖房端末への湯水の温度レベルとの相関、及び、前記温度レベルと目標戻り温度との相関、を表すテーブル図
【
図10】連動運転が行われる場合の動作シーケンスの具体例を表す図
【
図11】連動運転時において室外機制御部及び室内機制御部が実行する制御手順を表すフローチャート図
【
図12】連動運転時において室外機制御部及び室内機制御部が実行する制御手順を表すフローチャート図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を
図1~
図12に基づいて説明する。
【0023】
本実施形態の空調システム1全体の回路構成を
図1に示す。
図1に示すように、空調システム1は、空調システム1の熱源である室外機4と、室内機17と、床暖房端末27と、を有している。本実施形態では、床暖房端末27は、室内機17が設けられた部屋と同一の部屋の床に敷設されており、室内機17と床暖房端末27は同じ部屋の室内(空調対象空間)に併設されている。
【0024】
<加熱循環回路>
前記室外機4は、冷媒を流通させる冷媒側の流路7b(冷媒通路に相当)と水側の流路7a(水通路に相当)とを有し、高温高圧の冷媒と床暖房端末27への湯水とを熱交換する凝縮器として機能する水冷媒熱交換器7と、回転数可変の循環ポンプ34と、を備えている。すなわち、前記水冷媒熱交換器7の前記水側の流路7aと前記床暖房端末27とが湯水配管としての往き管28(往き管路に相当)及び戻り管29(戻り管路に相当)によって環状に接続され、湯水循環回路としての加熱循環回路33が形成されている。
【0025】
水冷媒熱交換器7から床暖房端末27に向かって延びる前記往き管28の途中には、1つの往きヘッダ30が設けられている。往き管28のうち往きヘッダ30より上流側部分は、1つの共通往き管28aとして構成され、水冷媒熱交換器7にて加熱された温水(不凍液等を含む水以外の循環液であってもよい。以下同様)が供給される。そして、往き管28のうち往きヘッダ30より下流側部分は複数(図示の例では4本)の個別往き管28bに分岐している。分岐した個別往き管28bには、それぞれ開閉弁である熱動弁31が付設されている。
【0026】
前記往き管28と同様に、床暖房端末27から水冷媒熱交換器7に向かって延びる戻り管29の途中には、1つの戻りヘッダ32が設けられており、戻り管29のうち戻りヘッダ32より上流側部分は、複数(ここでは4本)の個別戻り管29bに分岐している。そして、戻り管29のうち戻りヘッダ32より下流側部分は、1つの共通戻り管29aとして構成され、個別戻り管29bを介して導入された温水が水冷媒熱交換器7へと戻される。
【0027】
なお、本実施形態では、説明を簡略化するため、1つの床暖房端末27が接続された例を示しているが、上記のように分岐した4本の個別往き管28bそれぞれに床暖房端末27を接続(すなわち4台接続)としてもよい。
【0028】
前記循環ポンプ34は、前記共通戻り管29aの途中に設けられ、前記水側の流路7aを介し前記戻り管29からの湯水を前記往き管28へ流通させつつ、床暖房端末27の湯水を循環させる。共通戻り管29aのうち循環ポンプ34の上流側には、温水を貯留し加熱循環回路33の圧力を調整するシスターン35が備えられている。前記戻り管29の前記個別戻り管29bのそれぞれには、前記水冷媒熱交換器7の前記水側の流路7aに流入する湯水の戻り温度としての入水温度T1を検出する、入水温度センサ123(戻り温度検出手段に相当)が設けられている。
【0029】
<冷媒循環回路>
一方、室外機4から前記室内機17にかけて、前記水冷媒熱交換器7における熱交換(詳細は後述)によって前記床暖房端末27内の湯水を加熱可能な冷媒循環回路130が設けられている。前記冷媒循環回路130は、主ヒートポンプ回路部130Aと、床暖側ヒートポンプ回路部130Bと、空調側ヒートポンプ回路部130Cと、を含んでいる。
【0030】
<主ヒートポンプ回路部>
前記主ヒートポンプ回路部130Aは、前記冷媒の流路となる冷媒配管11を備えており、冷媒を圧縮する圧縮機5と、四方弁6と、前記冷媒と外気との熱交換により凝縮器又は蒸発器として選択的に機能する室外熱交換器としての空気熱交換器10とが、前記冷媒配管11によって接続されている。なお、空気熱交換器10は、例えばフィンチューブ式の熱交換器であり、当該空気熱交換器10に外気を通じるための室外ファン9が設けられている。
【0031】
詳細には、前記冷媒配管11は、圧縮機5の吐出側となる配管部11aと、床暖房運転時(後述の
図5等参照)等において前記四方弁6を介し前記配管部11aに接続される配管部11bとを含んでいる。
【0032】
また前記冷媒配管11は、前記圧縮機5の吸入側となる配管部11cと、床暖房運転時(後述の
図5参照)等において前記空気熱交換器10の圧縮機5側(言い替えれば前記床暖房運転時等における出口側、以下同様。後述の
図5等参照)を前記四方弁6を介し前記配管部11cに接続する配管部11dと、前記空気熱交換器10の反圧縮機5側(言い替えれば前記床暖房運転時等における入口側、以下同様。後述の
図5等参照)に接続される配管部11eとを含んでいる。
【0033】
前記四方弁6は4つのポートを備える弁であり、前記冷媒配管11のうち(冷媒主経路を構成する)前記配管部11b,11d用の2つのポートのそれぞれに対して、残りの前記配管部11a,11c用の2つのポートのいずれを接続するかを切り替える。前記配管部11a,11c用の2つのポートどうしは、ループ状に配置された前記配管部11a,11cからなる冷媒副経路によって接続されており、この冷媒副経路上に前記圧縮機5が設けられている。例えば四方弁6は、後述する
図5の状態に切り替えられた場合は、前記圧縮機5の吐出側である前記配管部11aを前記水冷媒熱交換器7の入口側である前記配管部11bに連通させる。その一方、後述する冷風冷房運転の実行時には、前記配管部11aを前記空気熱交換器10側である前記配管部11dに連通させる。
【0034】
<床暖側ヒートポンプ回路部>
前記床暖側ヒートポンプ回路部130Bは、前記冷媒の流路となる冷媒配管125を備えており、前記水冷媒熱交換器7の前記冷媒側の流路7bが、前記冷媒配管125に接続されている。
【0035】
詳細には、前記冷媒配管125は、前記配管部11bから分岐して接続されるとともに、反配管部11b側が前記水冷媒熱交換器7(詳細には前記冷媒側の流路7b)の入口側に接続される配管部125bと、前記水冷媒熱交換器7(詳細には前記冷媒側の流路7b)の出口側に接続される配管部125cとを含んでいる。前記配管部125cは、全閉機能付きの膨張弁8を備えており、膨張弁8より下流側で、前記配管部11eに連通している。
【0036】
<空調側ヒートポンプ回路部>
前記空調側ヒートポンプ回路部130Cは、前記冷媒の流路となる冷媒配管126を備えており、前記冷媒と室内空気との熱交換により凝縮器又は蒸発器として選択的に機能する室内熱交換器14が前記冷媒配管126に接続されている。室内熱交換器14には、前記室内熱交換器14に室内空気を通じるための室内ファン18が設けられている。室内ファン18の作動により送られる室内空気が室内熱交換器14にて熱交換され、熱交換により加熱または冷却された空気が室内に供給される。
【0037】
前記空調側ヒートポンプ回路部130Cにおいて、詳細には、前記冷媒配管126は、前記配管部125b同様、前記配管部11bから分岐して接続されるとともに、反配管部11b側が前記室内熱交換器14の温風暖房運転時等における入口側(後述の
図6等参照)に接続される配管部126aと、前記配管部125cと同様に一方側が前記配管部11eに連通するとともに、反配管部11e側が前記室内熱交換器14の温風暖房運転時等における出口側(後述の
図6等参照)に接続される配管部126bと、を含んでいる。前記配管部126aは、前記配管部11bと前記室内熱交換器14との間の連通を開閉可能な二方弁16を備えており、前記配管部126bは、全閉機能付きの膨張弁15を備えている。二方弁16は、空調側ヒートポンプ回路部130Cを循環する冷媒の流れを、開弁することで流通可能状態とし、また、閉弁することで遮断状態とする。
【0038】
なお、前記の圧縮機5、四方弁6、空気熱交換器10、室外ファン9、二方弁16、膨張弁8,15、水冷媒熱交換器7等は、前記室外機4に設けられている(
図1の破線参照)。
【0039】
<冷媒・各種検出信号等>
前記冷媒循環回路130内には、冷媒として例えばHFC冷媒や二酸化炭素冷媒等の任意の冷媒が用いられ、ヒートポンプサイクルを構成している。そして、前記主ヒートポンプ回路部130Aの前記冷媒配管11において、前記配管部11aには、圧縮機5から吐出される冷媒吐出温度Toutを検出する吐出温度センサ120が設けられている。このセンサ120の検出結果は、室外機4に設けられた室外機制御部44に入力される。室外機制御部44は、主にCPU、ROM、RAM等を備えたマイクロコンピュータで構成され、後述のように室外機4内の各種センサ、室内機制御部20、床暖房リモコン36等からの信号を受けて、空調システム1の動作を制御する。
【0040】
また、前記空調側ヒートポンプ回路部130Cの前記冷媒配管126に関して、前記室内熱交換器14には、空調対象空間の室内温度Tr(実室温に相当)を検出する室内温度センサ19(室温検出手段に相当)が設けられている。このセンサ19の検出結果は、室内機17に設けられた室内機制御部20に入力され、さらに適宜、室外機4に設けられた前記室外機制御部44へも入力される(室内機制御部20を介し受信しても良いし、センサ19から直接受信してもよい)。
【0041】
そして、前記室外機4の前記室外機制御部44と、前記室内機17の前記室内機制御部20とは、互いに通信可能に接続されており、前記各センサの検出結果に基づき、相互に連携しつつ、前記室外機4内の各機器・アクチュエータの動作を制御する。特に、前記四方弁6、前記二方弁16、及び前記膨張弁8,15の開閉動作や開度を制御し、冷媒の流れる経路を切り替えることにより、前記床暖房端末27により前記空調対象空間の床面を加温する床暖房運転、前記室内機17により前記空調対象空間の室内空気を加熱する温風暖房運転、前記床暖房運転と前記温風暖房運転とを互いに連動して行う連動運転(詳細は後述)、前記室内機17により前記空調対象空間の室内空気を冷却する冷風冷房運転、等を選択的に実行することができる。
【0042】
<室内機リモコン>
ここで、前記室内機17は、この例ではワイヤレスリモコンとして構成される室内機リモコン21(第1リモコンに相当)によって操作可能である。すなわち、この室内機リモコン21の送信部(図示せず)と室内機制御部20の受信部(図示せず)とは、赤外線等により無線通信を行い、室内機リモコン21の送信部から室内機制御部20の受信部への一方向通信により情報の伝達を行う。室内機リモコン21の送信部より発信された信号を、室内機制御部20の受信部で受けると、室内機制御部20では、室内機リモコン21から送られてきた情報を読み取り、指示された制御を行う。なお、室内機制御部20は、前記室外機制御部44との間で制御信号S11のやり取りを行い双方向通信により情報の伝達を行うことができ、室外機制御部44は、室内機リモコン21から送信される制御信号S1に対応する情報も室内機制御部20を介して取得可能である。
【0043】
前記室内機リモコン21は、室内機17に対して、室内に温風を供給する前記温風暖房運転を実行させる暖房スイッチ22と、室内機17に対して、室内に冷風を供給する冷風冷房運転を実行させる冷房スイッチ23と、温風暖房運転または冷風冷房運転を停止させる停止スイッチ24と、温風暖房運転または冷風冷房運転時に室内温度を設定する、すなわちエアコン設定温度Tconを設定するための設定手段としての室内温度設定スイッチ25と、前記エアコン設定温度Tconや各種運転状態を表示する表示部26と、室内機17に対しタイマーによる運転を指示するためのタイマースイッチ45と、を備えている。
【0044】
前記暖房スイッチ22が操作され温風暖房運転が実行されているとき、または前記冷房スイッチ23が操作され冷風冷房運転が実行されているときは、表示部26には前記エアコン設定温度Tconや運転状態等が表示されている。また、前記停止スイッチ24が操作され温風暖房運転または冷風冷房運転が停止されたときは、表示部26の前記エアコン設定温度Tconや運転状態に関する表示は消え、非表示状態となる。
【0045】
<床暖房リモコン>
また、前記床暖房端末27は、この例ではワイヤードリモコンとして前記室内の壁面に取り付けられる、床暖房リモコン36(第2リモコンに相当)によって操作可能である。床暖房リモコン36は、前記室外機制御部44との間で制御信号S2のやり取りを行い双方向通信によりの情報の伝達を行うことができる。これにより、床暖房リモコン36は、室内機17の作動情報(運転中か停止中かなど)を取得可能である。
【0046】
<床暖房リモコンの詳細>
図2に示すように、床暖房リモコン36は、表示部37と、床暖房端末27の運転開始・停止を指示するための運転/停止スイッチ38と、床暖房端末27に対しタイマーによる運転を指示するためのタイマースイッチ39と、床暖房端末27の運転態様(通常モード・セーブモード等)の切替を指示する運転切替スイッチ40と、画面表示を1つ前の画面に戻すための戻るスイッチ41と、メニュー/決定スイッチ42と、上下左右方向への十字キー43と、が備えられている。また、図示を省略しているが、床暖房リモコン36には、床暖房端末27の動作制御や、各種の表示を行うための、CPUや記憶手段としてのメモリ等が内蔵されている。
【0047】
表示部37は、前記CPUの制御により、複数の設定画面(後述の画面100~101)を切替可能に表示することができる。すなわち、表示部37は、
図2(a)に示す例では、空調システム1全体に係わる設定を行うための全体設定画面100を表示している。また、
図2(b)に示す例では、表示部37は、室内に設けられた前記床暖房端末27の運転開始・停止設定を含む、床暖房端末27に係わる設定を行うための端末設定画面101を表示している。
【0048】
このとき、表示部37に表示される各設定画面100~101の上部の右端寄りには、全体設定画面100を選択するための、「メイン」表記のタブTMが上方へ突出するように設けられている。また、各設定画面100~101の設定画面100~101上部の左端には、端末設定画面101を選択するための「A」表記のタブTAが設けられている。十字キー43等を介し、タブTM、TAのいずれかを操作することにより、操作されたタブTM、TAを備えた設定画面100~101を表示することができる。
【0049】
<室外機制御部・室内機制御部の機能概要>
前記室外機制御部44及び前記室内機制御部20は、詳細な図示を省略するが、それぞれ、各種のデータやプログラムを記憶する記憶部と、演算・制御処理を行う制御部とを備えている。
【0050】
室外機制御部44の機能的構成を
図3に示す。
図3に示すように、前記室外機制御部44は、前記四方弁6を制御する四方弁制御部44Aと、前記圧縮機5の回転数を制御する圧縮機制御手段としての圧縮機制御部44Bと、前記膨張弁8,15の開度を制御する膨張弁制御部44Cと、前記循環ポンプ34の回転数を制御するポンプ制御部44Dと、床暖房レベル設定部44Eと、前記二方弁16の開閉を制御する二方弁制御部44Fと、を機能的に備えている。なお、各機能部の制御・処理内容の詳細については後述する。
【0051】
室内機制御部20の機能的構成を
図4に示す。
図4に示すように、前記室内機制御部20は、主として、前記室内ファン18の回転数を制御する機能を備える。なお、制御・処理内容の詳細については後述する。
【0052】
前記したように、本実施形態の空調システム1は、床暖房運転、温風暖房運転、冷風冷房運転、床暖房運転と温風暖房運転との連動運転等の各種運転を選択的に実行することができる。以下、各運転の詳細を順次説明する。
【0053】
<床暖房運転>
まず、
図5を用いて、床暖房運転について説明する。この
図5に示す床暖房運転時においては、前記四方弁制御部44Aにより、前記四方弁6は、前記配管部11aを前記配管部11bに連通させると共に前記配管部11cを前記配管部11dに連通させる位置に切り替えられる。また前記二方弁制御部44Fにより、二方弁16が閉じ状態に切り替えられる。さらに前記膨張弁制御部44Cにより前記膨張弁8が開き状態かつ前記膨張弁15が全閉状態に制御される。
【0054】
この結果、圧縮機5の吐出側の配管部11a→配管部11b→配管部125b→水冷媒熱交換器7の冷媒側の流路7b→配管部125c(膨張弁8)→配管部11e→空気熱交換器10→配管部11d→圧縮機5の吸入側の配管部11cの冷媒経路が形成される。これにより、凝縮器として機能する水冷媒熱交換器7において、流路7bを流れる冷媒からの熱で流路7aを流れる水が加熱され、床暖房端末27内へ高温水(加熱水)が供給され、空調対象空間の床面を加温する。
【0055】
<温風暖房運転>
次に、
図6を用いて、温風暖房運転について説明する。この
図6に示す温風暖房運転時においては、前記四方弁制御部44Aにより、前記四方弁6は、前記床暖房運転と同じ側に切り替えられる。また前記二方弁制御部44Fにより、二方弁16が開き状態に切り替えられる。さらに前記膨張弁制御部44Cにより前記膨張弁8が全閉状態かつ前記膨張弁15が開き状態に制御される。
【0056】
この結果、圧縮機5の吐出側の配管部11a→配管部11b→配管部126a→室内機17の室内熱交換器14→配管部126b(膨張弁15)→配管部11e→空気熱交換器10→配管部11d→圧縮機5の吸入側の配管部11cの冷媒経路が形成される。これにより、凝縮器として機能する室内熱交換器14において冷媒が室内空気と熱交換して熱を放出し、空調対象空間の空気を加熱する。
【0057】
<リモコンによる連動運転の実行可否の設定>
前記したように、本実施形態では、室内機17による温風暖房運転と床暖房端末27による床暖房運転とを互いに連動して運転する前記連動運転を実行することができ、前記床暖房リモコン36によって前記連動運転を行うか否かを設定することができる。
【0058】
その際には、前記
図2に示した構成の床暖房リモコン36において、ユーザが前記した適宜のスイッチ又はキーを操作を行うことで、前記表示部37に、
図7(a)に示すメインメニュー画面102が表示される。このメインメニュー画面102には、「タイマー設定」ボタン、「節電設定」ボタン、「消費電力量」ボタン、「オプションメニュー」ボタン、等が備えられている。図示のように、前記十字キー43の操作で「オプションメニュー」ボタンが選択された状態で、前記メニュー/決定スイッチ42が押下されると、表示部37は、
図7(b)に示すオプションメニュー画面103へ移行する。
【0059】
図7(b)に示すオプションメニュー画面103には、「日時設定」ボタン、「表示設定」ボタン、「エアコン・床暖房連動」ボタン、「消灯時間設定」ボタン、等が備えられている。図示のように、前記十字キー43の操作で「エアコン・床暖房連動」ボタンが選択された状態で、前記メニュー/決定スイッチ42が押下されると、表示部37は、
図7(c)に示すエアコン・床暖房連動設定画面104へ移行する。
【0060】
図7(c)に示すエアコン・床暖房連動設定画面104には、「連動ON」ボタンと、「連動OFF」ボタンとが設けられており、いずれか1つのボタンを選択した状態で前記メニュー/決定スイッチ42が押下されることで、前記連動運転の実行又は不実行が確定する。図示の例では、「連動ON」ボタンが選択された状態で前記メニュー/決定スイッチ42が押下され、前記連動運転の実行が確定した状態を表している。このように床暖房リモコン36の操作によって連動運転の実行が確定した状態で、前記室内機リモコン21の前記暖房スイッチ22が押下されることで、前記連動運転が開始される。すなわち、連動運転の実行が確定した状態では、前記室内機リモコン21により、室内機17の運転開始操作を行うことができると共に、床暖房端末27の運転開始操作を行うこともできる。前記連動運転の実行が設定された場合、前記連動運転の開始を実行できるのは室内機リモコン21のみとなり、床暖房リモコン36からは前記連動運転を開始できないようにされる。なお、前記連動運転の実行・不実行の設定を、床暖房リモコン36ではなく、室内機リモコン21により実行できるようにしてもよい。その場合、例えば室内機リモコン21に連動運転スイッチを設け、「前記連動運転の実行の設定」と「連動運転の開始」とをこの連動運転スイッチの1回の操作によって行えるようにしてもよい。
【0061】
<連動運転>
前記のようにして実行される前記連動運転(但し、詳細には後述の「立上げ運転2」の状態である)を、
図8を用いて説明する。この連動運転時においても、前記四方弁制御部44Aにより、前記四方弁6は、前記床暖房運転と同じ側に切り替えられる。また、前記二方弁制御部44Fにより、二方弁16が開き状態に切り替えられる。さらに前記膨張弁制御部44Cにより前記膨張弁8及び前記膨張弁15が開き状態(詳細には後述の吐出制御が行われている)に制御される。
【0062】
この結果、冷媒経路は、圧縮機5の吐出側の配管部11a→配管部11bを経て2つに分かれ、一方は、配管部125b→水冷媒熱交換器7の冷媒側の流路7b→配管部125c(膨張弁8)を経て配管部11eに至り、他方は、配管部126a→室内熱交換器14→配管部126b(膨張弁15)を経て前記配管部11eへと合流する。その後の経路は、配管部11e→空気熱交換器10→配管部11d→圧縮機5の吸入側の配管部11cとなる。
【0063】
これにより、水冷媒熱交換器7における流路7aの水の加熱による床暖房端末27の床暖房運転と、室内熱交換器14からの熱の放出による室内機17の温風暖房運転とが並行して実行される。
【0064】
<ユーザの暖房調整時の課題>
前記のようにして室内機17による温風暖房運転と床暖房端末27による床暖房運転とを連動運転するとき、ユーザによる暖房能力の調整が行われる場合がある。その際、前記従来技術のように、例えばユーザが床暖房リモコン36を用いて前記床暖房端末27へ供給される温水の温度レベルを設定することで、その温度レベルに対応する室温となるように前記室内機17の温風暖房能力が自動的に制御される、という手法も考えられる。
【0065】
しかしながら、通常、ユーザが調整したいのは前記室内機17の温風暖房により実現される前記空調対象空間の室温である。前記従来技術と同様の前記手法では、ユーザにとって自分が設定した温度レベルが室温にすると何度に相当するのか分からず、感覚的に調整しにくい。そのため、ユーザは自分の思い通りの暖房感を得ることが難しい。
【0066】
<本実施形態の手法の概要>
そこで、本実施形態では、上述とは逆に、連動運転の際にユーザが室内機リモコン21により前記室内機17におけるエアコン設定温度Tconを設定することで、その設定されたエアコン設定温度Tconに対応する床暖房能力となるように前記床暖房端末27が制御されるものである。
【0067】
<室外機制御部の詳細>
前記本実施形態の手法を実現するための、前記室外機制御部44に設けられる機能の詳細を、前記
図3により説明する。前記したように、室外機制御部44は、四方弁制御部44Aと、圧縮機制御部44Bと、膨張弁制御部44Cと、ポンプ制御部44Dと、床暖房レベル設定部44Eと、二方弁制御部44Fと、を機能的に備えている。
【0068】
<四方弁制御部>
前記四方弁制御部44Aには、前記室内機制御部20を介した、前記室内機リモコン21からの運転指示に対応する運転情報(温風暖房運転、冷風冷房運転、連動運転等のうちいずれの運転開始及び運転停止を指示する前記制御信号S11)と、前記床暖房リモコン36からの運転指示(床暖房運転の運転開始及び運転停止を指示する前記制御信号S2)と、が入力される。四方弁制御部44Aは、それら運転情報及び運転指示に応じて、実際に空調システム1をどのような運転態様(床暖房運転、冷風冷房運転、温風暖房運転、連動運転等)で運転するかを決定し対応する運転情報を、圧縮機制御部44B、膨張弁制御部44C、ポンプ制御部44D、二方弁制御部44F、床暖房レベル設定部44Eに出力するとともに、室内機制御部20にも前記制御信号S11として出力する。また四方弁制御部44Aは、上記決定された運転態様に対応する制御信号を四方弁6へ出力し、四方弁6を切り替える。
【0069】
<床暖房レベル設定部>
前記床暖房レベル設定部44Eには、前記室内温度センサ19により検出された前記室内温度Trと、前記室内機制御部20を介した、前記室内機リモコン21により設定された前記エアコン設定温度Tconと、が入力される(直接入力される場合のほか、前記の間接的な入力も含む。以下同様)。床暖房レベル設定部44Eは、相関記憶部44E1(相関記憶手段に相当)と、温度レベル決定部44E2(温度レベル決定手段に相当)と、補正値記憶部44E3と、温度レベル補正部44E4と、目標戻り温度決定部44E5(目標戻り温度決定手段に相当)と、を備え、連動運転の際に、入力された前記室内温度Tr及び前記エアコン設定温度Tconに応じて、前記床暖房端末27から前記水冷媒熱交換器7の前記水側の流路7aに流入する湯水の目標戻り温度Taを決定する。
【0070】
すなわちまず、前記相関記憶部44E1には、
図9(a)に示すような、室内機リモコン21による前記エアコン設定温度Tconの設定値(設定室温)の複数の温度区分と、各温度区分に対応する床暖房端末27への湯水の温度レベルと、の相関が記憶されている。この例では、エアコン設定温度Tconが28℃以上30℃以下の場合は温度レベルが9、エアコン設定温度Tconが26℃以上28℃未満(図示では便宜的に「27-26」と記載)の場合は温度レベルが8、エアコン設定温度Tconが25℃以上26℃未満(図示では便宜的に「25」と記載。以下同様)の場合は温度レベルが7、エアコン設定温度Tconが24℃以上25℃未満の場合は温度レベルが6、エアコン設定温度Tconが23℃以上24℃未満の場合は温度レベルが5、エアコン設定温度Tconが22℃以上23℃未満の場合は温度レベルが4、エアコン設定温度Tconが21℃以上22℃未満の場合は温度レベルが3、エアコン設定温度Tconが20℃以上21℃未満の場合は温度レベルが2、エアコン設定温度Tconが17℃以上20℃未満の場合は温度レベルが1、のように予め定められている。
【0071】
また、前記相関記憶部44E1には、
図9(b)に示すような、床暖房端末27への前記温度レベルと、前記目標戻り温度Taと、の相関も記憶されている。この例では、前記温度レベルが9の場合は前記目標戻り温度Taが45℃、前記温度レベルが8の場合は前記目標戻り温度Taが43℃、前記温度レベルが7の場合は前記目標戻り温度Taが41℃、前記温度レベルが6の場合は前記目標戻り温度Taが39℃、前記温度レベルが5の場合は前記目標戻り温度Taが38℃、前記温度レベルが4の場合は前記目標戻り温度Taが36℃、前記温度レベルが3の場合は前記目標戻り温度Taが35℃、前記温度レベルが2の場合は前記目標戻り温度Taが34℃、前記温度レベルが1の場合は前記目標戻り温度Taが32℃、のように予め定められている。
【0072】
前記温度レベル決定部44E2は、前記のように入力されたエアコン設定温度Tconに対し、
図9(a)の相関を適用して、対応する前記温度レベルLsを決定する。なお、この温度レベルLsの決定は、例えば連動運転の開始時において行われる。また、
図7(d)に示すように、前記のエアコン・床暖房連動設定画面104において、このときのエアコン設定温度Tconの値(この例では20℃)と、対応する温度レベルLsの値(この例ではレベル2)と、を表示するようにしてもよい。なお温度レベルLsの値については、後述の補正を行った後の値を表示するようにしてもよい。
【0073】
本実施形態では、このようにして決定された温度レベルLsに基づき、前記床暖房端末27の床暖房能力の制御が行われる。その際、例えば前記空調対象空間まわりの断熱・気密構造や、床構造や、床暖房端末27周囲のマットの種類、床暖房敷設率等による各端末固有のばらつきを補正したり、ユーザの個人的な好み、等を反映するために、前記温度レベル補正部44E4によって前記温度レベルLsの補正が行われる。
【0074】
すなわち、温度レベル補正部44E4は、前記温度レベルLsに対し適宜の補正値αを加えたLs+αを、補正後の温度レベルLsとする。この補正値αの値は、本実施形態では、時事刻々と変動する空調対象空間の状況に応じて、前記エアコン設定温度Tconと前記室内温度Trとの差に応じて可変とされる(詳細は後述)。
【0075】
そして、前記のようにして補正値αを用いて補正された温度レベルLsに対し、前記目標戻り温度決定部44E5が、前記
図9(b)に示した相関を適用して、対応する前記目標戻り温度Taを決定する。なお、補正をする必要がない場合は、前記目標戻り温度決定部44E5は、
図9(a)の相関により決定された温度レベルLsを用いて、前記目標戻り温度Taを決定する。なお、後述の立上げ運転1、立上げ運転2、立上げ運転3の場合は実質的に補正は行われず(言い替えれば補正値α=0とされ)、
図9(a)の相関により決定された温度レベルLsを用いて、前記目標戻り温度Taが決定される。こうして決定された目標戻り温度Taは、前記圧縮機制御部44Bへと出力される。なお、補正値記憶部44E3については、後述する。
【0076】
前記圧縮機制御部44Bには、前記室内温度センサ19からの前記室内温度Trと、前記室内機リモコン21で設定された前記エアコン設定温度Tconと、前記入水温度センサ123により検出された前記入水温度T1と、前記目標戻り温度決定部44E5で決定された目標戻り温度Taと、が入力される。圧縮機制御部44Bには、床暖房端末27の床暖房能力に対応する目標回転数を決定する床暖目標回転数決定部44B1と、室内機17の温風暖房能力に対応する目標回転数を決定するエアコン目標回転数決定部44B2と、が備えられている。
【0077】
前記床暖目標回転数決定部44B1は、前記入水温度センサ123からの前記入水温度T1が、前記床暖房レベル設定部44Eの前記目標戻り温度決定部44E5により入力された目標戻り温度Taとなるような(言い換えればT1とTaとの差が0になるような)、圧縮機5の目標回転数を決定する。前記エアコン目標回転数決定部44B2は、前記室内温度Trが、前記エアコン設定温度Tconとなるような(言い換えればTrとTconとの差が0になるような)、圧縮機5の目標回転数を決定する。
【0078】
圧縮機制御部44Bは、前記のようにして四方弁制御部44Aから入力される前記運転情報や、前記エアコン設定温度Tconや、前記室内温度Trに基づき、前記床暖目標回転数決定部44B1で決定された目標回転数、及び、前記エアコン目標回転数決定部44B2で決定された目標回転数のうちいずれか一方を、最終的な前記圧縮機5の回転数Nc(制御値)として決定し、圧縮機5へと出力する(詳細は後述)。
【0079】
膨張弁制御部44Cには、前記吐出温度センサ120により検出された前記冷媒吐出温度Toutが入力される。膨張弁制御部44Cは、前記四方弁制御部44Aからの前記運転情報に応じて、前記冷媒吐出温度Toutが所定の一定値となるように、膨張弁8,15の開度をフィードバック制御する(いわゆる吐出制御)。この例では、膨張弁8,15は、互いに同一の開度となるように膨張弁制御部44Cによって制御される。すなわち、前記膨張弁制御部44Cは、前記冷媒吐出温度Toutが低すぎる場合は膨張弁8,15の開度を閉じる方向に制御し、冷媒吐出温度Toutが高すぎる場合は膨張弁8,15の開度を開く方向に制御する。
【0080】
前記ポンプ制御部44Dには、前記室内温度センサ19からの前記室内温度Trと、前記室内機リモコン21で設定された前記エアコン設定温度Tconとが入力される。ポンプ制御部44Dは、前記四方弁制御部44Aからの前記運転情報に応じて、前記循環ポンプ34の目標回転数Npを決定し、これを用いて前記循環ポンプ34の回転数を制御する(詳細な制御内容は後述)。
【0081】
二方弁制御部44Fには、前記室内温度センサ19からの前記室内温度Trと、前記室内機リモコン21で設定された前記エアコン設定温度Tconとが入力される。二方弁制御部44Fは、前記四方弁制御部44Aからの前記運転情報に応じて、前記二方弁16の開閉動作を制御する(詳細な制御内容は後述)。
【0082】
なお、前記四方弁制御部44Aによる前記運転態様の決定及び運転情報の生成は、前記室内機制御部20で行っても良い。この場合は、室内機制御部20から、決定された運転態様に対応した前記運転情報が室外機制御部44に入力され、その入力された運転情報に応じて四方弁制御部44A、圧縮機制御部44B、膨張弁制御部44C、ポンプ制御部44D、床暖房レベル設定部44E、二方弁制御部44Fが各種制御を行う。
【0083】
<室内機制御部の詳細>
室内機制御部20には、前記
図4に示すように、前記室外機制御部44を介した、前記床暖房リモコン36からの運転指示に対応する運転情報(床暖房運転の運転開始及び運転停止を指示する前記制御信号S11)と、前記室内機リモコン21からの運転指示(温風暖房運転、冷風冷房運転、連動運転等のうちいずれの運転開始及び運転停止を指示する前記制御信号S1)と、前記室内温度センサ19により検出された前記室内温度Trと、前記室内機リモコン21により設定された前記エアコン設定温度Tconと、が入力される。室内機制御部20は、それらに応じて、前記エアコン設定温度Tcon及び前記室内温度Trを室外機制御部44へ出力するとともに、前記制御信号S1に対応する運転情報を前記制御信号S11として前記室外機制御部44へ出力する。また室内機制御部20は、前記室内ファン18に対し、前記室内温度Tr及びエアコン設定温度Tconに応じた目標回転数N1に対応した駆動制御信号を出力し、これによって室内ファン18の回転数を制御する(詳細な制御内容は後述)。
【0084】
<連動運転時における動作シーケンスの具体例>
実際に、前記空調システム1が停止している状態から起動されて前記連動運転が行われる場合の、動作シーケンスの具体例を、
図10に示す。
【0085】
図10において、この例では、時間t0において空調システム1は停止状態にあり、前記室内温度センサ19により検出される前記室内温度Trが6℃であり、前記圧縮機5及び前記循環ポンプ34は停止状態にある。また、前記膨張弁8,15はともに全開状態になっており、前記二方弁16は全閉状態となっている。
【0086】
その後、時間t1で、前記のような床暖房リモコン36及び室内機リモコン21の操作によって連動運転の開始指示がされると、圧縮機制御部44Bの制御により圧縮機5が起動され運転開始される。なお、図示の例では、前記エアコン設定温度Tconは20℃に設定されている。このときの圧縮機5の回転数は、圧縮機制御部44Bの前記エアコン目標回転数決定部44B2による、室内温度Trとエアコン設定温度Tconとの差に基づく目標回転数(図中では「AC指示」と略示)を用いて制御される。また膨張弁制御部44Cにより、前記膨張弁8は閉じ状態に近い所定の小開度に制御される一方、前記膨張弁15の開度は所定の初期開度に制御された後、前述の吐出制御によって制御される。また前記二方弁制御部44Fにより、前記二方弁16は開き状態に制御される。なお、前記ポンプ制御部44Dにより循環ポンプ34は停止されている。これにより、
図6に示したものとほぼ同様に、前記床暖房端末27による床暖房運転は行われず前記室内機17による温風暖房の単独運転が行われる(第1段階に相当する立上げ運転1)。
【0087】
時間t1からの前記温風暖房単独運転で前記空調対象空間が加温されて室内温度Trが上昇し、時間t2においてエアコン設定温度Tconと室内温度Trとの差が8℃となる(この例では室内温度Tr=12℃)と、前記立上げ運転1から立上げ運転2(第2段階に相当)へ移行する。すなわち、膨張弁制御部44Cにより、前記膨張弁8の開度は所定の初期開度に制御された後前述の吐出制御により制御され、前記膨張弁15の開度も同様に前記所定の初期開度に制御された後、吐出制御によって制御される。また引き続き前記二方弁16は開き状態に制御される一方、前記ポンプ制御部44Dにより循環ポンプ34が最大回転数(例えば4000rpm)で駆動される。またこのときの圧縮機5の回転数は、圧縮機制御部44Bの前記エアコン目標回転数決定部44B2による目標回転数と前記床暖目標回転数決定部44B1による目標回転数(図中では「床暖房指示」と略示)とのうち、大きいほうを用いて制御される。すなわち、前記エアコン目標回転数決定部44B2による目標回転数は、室内温度Trとエアコン設定温度Tconとの差に基づき前記の手法で決定される目標回転数であり、前記床暖目標回転数決定部44B1による目標回転数は、前記エアコン設定温度Tconに基づき決定された前記温度レベルLsに対応する前記目標戻り温度Taと、前記入水温度T1と、の差に応じて、前記の手法により決定された目標回転数である。これにより、
図8に示したものとほぼ同様に、前記床暖房端末27による床暖房運転と前記室内機17による温風暖房運転とが並行して行われる。
【0088】
時間t2からの前記床暖房運転及び前記温風暖房運転の併用で前記空調対象空間が加温されて室内温度Trがさらに上昇し、時間t3において室内温度Trとエアコン設定温度Tconとの差が3℃となる(この例では室内温度Tr=23℃)と、前記立上げ運転2から立上げ運転3へ移行する。すなわち、引き続き、前記膨張弁8及び膨張弁15の開度が吐出制御によって制御され、前記二方弁16が(閉じられることなく)開き状態に制御され、循環ポンプ34が最大回転数で駆動される。その一方、このときの圧縮機5の回転数は、前記床暖目標回転数決定部44B1によって前記の手法で決定された目標回転数を用いて制御される。また特に、前記室内機制御部20により、前記室内ファン18の回転数が所定の微風状態(モニタリング送風)に制御される。これにより、前記床暖房端末27による床暖房運転と、前記室内機17によるわずかな温風暖房運転(温風微暖房)とが並行して行われ、現在の室温を保持するような動きとなるが、図示のように前記空調対象空間が十分に温まりまた室内ファン18がほぼ停止し室内機17からの室内への加温がほとんど行われないことから室内温度Trの上昇は止まり、わずかに低下しはじめる。
【0089】
前記のようにして時間t3で前記立上げ運転3に移行した後、所定の経過時間△T(この例では△t=10分)が過ぎた時刻t4になると、前記立上げ運転3から安定運転(第3段階)へと移行する。すなわち、膨張弁制御部44Cにより、前記膨張弁8の開度は所定の初期開度に制御された後前述の吐出制御により制御され、前記膨張弁15の開度は全閉状態に制御される。また、前記二方弁制御部44Fにより、前記二方弁16は閉じ状態に制御される。なお、引き続き、圧縮機5の回転数は、前記床暖目標回転数決定部44B1により前記の手法で決定された目標回転数を用いて制御され、循環ポンプ34は最大回転数で駆動され、前記室内ファン18の回転数は所定の微風状態に制御される。これにより、前記室内機17による温風暖房運転は停止され、前記床暖房端末27による床暖房の単独運転が行われる。
【0090】
そして、この安定運転の状態においては、前述の可変となる補正値を用いた温度レベルLsの補正が行われる(後述の
図12のフローのステップS85,S95参照)。すなわち、このときの補正値は、時々刻々と変化しうる前記室内温度Trと前記前記エアコン設定温度Tconとの差に応じて、可変に設定される。この結果、前記のように徐々に低下していた室内温度Trが下げ止まり、前記エアコン設定温度Tconとほぼ同一となってそれ以降はその温度で安定する。
【0091】
なお、図示を省略しているが、前記安定運転の状態において、何らかの理由により室内温度Trが低下し、エアコン設定温度Tconと室内温度Trとの差が3℃に達したら、前述の立上げ運転2へ移行するものである(後述の
図12のステップS70参照)。
【0092】
<制御手順>
前記の手法を実現するために、前記連動運転時において前記室外機制御部44及び前記室内機制御部20によって実行される制御手順を、
図11及び
図12のフローチャートにより説明する。
図11において、前記のようにして連動運転が開始されると、まずステップS10において、前記立上げ運転1が開始され、前記室内機17による温風暖房の単独運転が行われる。
【0093】
その後、ステップS15で、室内機リモコン21によって設定されているエアコン設定温度Tconと、室内温度センサ19によって検出されている室内温度Trとの差Tcon-Trが8℃以下であるか否かが判定される。8℃を超えていれば判定が満たされず(S15:NO)、前記空調対象空間がまだ温まっていないとみなされてループ待機し、前記立上げ運転1が続行される。8℃以下(8℃又は8℃よりも小さな値)になったら判定が満たされ(S15:YES)、前記空調対象空間がある程度温まってきたとみなされてステップS20に移行する。
【0094】
ステップS20では、前記立上げ運転2が開始され、前記床暖房端末27による床暖房運転と前記室内機17による温風暖房運転とが並行して行われる。
【0095】
その後、ステップS25で、前記Tcon-Trが-3℃以下であるか否かが判定される。-3℃を超えていれば判定が満たされず(S25:NO)、前記空調対象空間がまだ十分には温まっていないとみなされてループ待機し、前記立上げ運転2が続行される。-3℃以下(-3℃又は-3℃よりも小さな値)になったら判定が満たされ(S25:YES)、ステップS30に移行する。
【0096】
ステップS30では、前記立上げ運転3が開始され、前記床暖房端末27による床暖房運転と前記室内機17による微暖房運転(室内ファン18が微風状態)とが並行して行われる。
【0097】
その後、ステップS35で、前記ステップS30が終了後、前記所定の時間△T(この例では△t=10分)が経過したか否かが判定される。10分が経過したらこの判定が満たされ(S35:YES)、ステップS40に移行する。
【0098】
ステップS40では、前記安定運転が開始され、前記室内機17による温風暖房運転は停止され、前記床暖房端末27による床暖房の単独運転が行われる。
【0099】
その後、ステップS45で、室内機リモコン21により、前記連動運転終了の指示がなされたか否か、が判定される。終了指示がなされれば判定が満たされ(S45:YES)、圧縮機5等の状態を初期状態(前記時間t0における状態)とするための所定の終了処理を行うとともに、この時点での前記補正値αを、前記室外機制御部44の前記床暖房レベル設定部44Eに備えられている補正値記憶部44E3(補正値記憶手段に相当)に記憶し、このフローを終了する。
【0100】
一方、前記ステップS45において前記連動運転終了の指示がなされなければ判定が満たされず(S45:NO)、ステップS55に移行する。ステップS55では、前記ステップS40で安定運転へ移行後、(このステップS55で行う判定が)最初の判定であるか否か、が判定される。最初の判定である、すなわち、前記のように空調システム1が起動された後に立上げ運転1→立上げ運転2→立上げ運転3を経て最初に安定運転となった場合には判定が満たされ(S55:YES)、前回までの空調システム1の運転において前記ステップS50において補正値記憶部44E3に記憶済の前記補正値αを読み出し、ステップS65に移行する。なお、このステップS60で実行する処理が、各請求項記載の補正値取得手段として機能している。前記ステップS55において前記最初の判定ではなかった場合には判定が満たされず(S55:NO)、直接ステップS65へ移行する。
【0101】
ステップS65では、前記Tcon-Trが3℃を超えているか否かが判定される。3℃を超えていれば判定が満たされ(S65:YES)、前記空調対象空間が何らかの理由で冷えてきたとみなされてステップS70に移行し、この時点での補正値αを補正値記憶部44E3に記憶した後、前記ステップS20に戻って前記立上げ運転2へと移行する。一方、ステップS65でTcon-Trが3℃以下であれば判定が満たされず(S65:NO)、ステップS75に移行する。
【0102】
ステップS75では、前記ステップS35から前記ステップS40への移行、すなわち安定運転への移行から30分が経過したか、若しくは、前回の(このステップS75で行う)判定から30分が経過したか否か、が判定される。安定運転への移行から30分経過しておらず、かつ、前回判定から30分も経過していない場合は判定が満たされず(S75:NO)、前記ステップS45へ戻って同様の手順を繰り返す。一方、安定運転への移行から30分経過しているか、若しくは、前回判定から30分経過していた場合は判定が満たされ(S75:YES)、ステップS80へ移行する。
【0103】
ステップS80では、前記Tcon-Trが2℃を超えているか否かが判定される。2℃を超えていれば判定が満たされ(S80:YES)、床暖房能力が不足気味であるとみなされてステップS85に移行し、この時点での補正値αの値に1が加えられ、前記ステップS45に戻って同様の手順を繰り返す。
【0104】
一方、ステップS80で、前記Tcon-Trが2℃以下であれば判定が満たされず(S80:NO)、ステップS90へ移行する。ステップS90では、前記Tcon-Trが-2℃未満であるか否かが判定される。-2℃未満(-2よりもさらに小さい値)であれば判定が満たされ(S90:YES)、床暖房能力が過剰気味であるとみなされてステップS95に移行し、この時点での補正値αの値から1が減じられ、前記ステップS45に戻って同様の手順を繰り返す。ステップS90で-2℃以上(-2であるかそれよりも大きい値)であれば判定が満たされず(S90:NO)、床暖房能力は概ね過不足なく適正であるとみなされて、補正値αを増減することなくそのまま前記ステップS45に戻って同様の手順を繰り返す。
【0105】
なお、前記のステップS75からステップS80への移行で分かるように、前記ステップS80,S90での判定に基づくステップS85,S90での補正値αの増減調整は30分を周期として実行されるものである。
【0106】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の空調システム1によれば、湯水が供給される床暖房端末27の床暖房運転と、冷媒が供給される室内機17の温風暖房運転との、連動運転を行うことができる。その際、ユーザは、暖房の強弱調整を、室内機17を操作するための室内機リモコン21によって行うことができる。すなわち、室内機リモコン21に備えられている室内温度設定スイッチ25によりユーザがエアコン設定温度Tconの設定を行うことで、床暖房レベル設定部44Eの温度レベル決定部44E2により、そのエアコン設定温度Tconに対応して床暖房端末27への湯水の温度レベルLsが決定される。そして、圧縮機制御部44Bにより、その決定された湯水の温度レベルLsに応じて、圧縮機5の回転数の制御が行われる。この結果、圧縮機5から導入される冷媒との熱交換により加温された温水が供給される床暖房端末27の床暖房能力が調整される。
【0107】
以上のように、本実施形態においては、室内機17と床暖房端末27とが連動運転を行うとき、ユーザが室内機リモコン21を用いて室内機17に対するエアコン設定温度Tconの設定をするだけで、床暖房端末27の床暖房能力が、自動的に、前記エアコン設定温度Tconの設定に対応した適切な強さに制御される。これにより、ユーザが床暖房端末への前記温度レベルを設定することで室内機の温風暖房能力が自動的に調整される従来手法に比べ、ユーザが感覚的に調整しやすく、自分の思い通りの暖房感を得ることができる。
【0108】
また、本実施形態では特に、相関記憶部44E1に、エアコン設定温度Tconに関し予め定められた複数の温度区分と、各温度区分に対応する温度レベルLsと、の相関が記憶されている。温度レベル決定部44E2が温度レベルLsを決定する際には、相関記憶部44E1に予め記憶された前記相関を参照することで、簡単な演算で迅速かつ確実に前記温度レベルLsを決定することができる。
【0109】
また、本実施形態では特に、エアコン設定温度Tconに対応した温度レベルLsに応じて目標戻り温度Taが決定され、圧縮機5の回転数は、床暖房端末27からの湯水の前記入水温度T1が、前記目標戻り温度Taとなるように制御される。これにより、床暖房端末27の床暖房能力を、ユーザによるエアコン設定温度Tconに対応した強さに確実に調整することができる。
【0110】
また、本実施形態では特に、前記空調対象空間まわりの断熱・気密構造や、床構造や、床暖房端末27周囲のマットの種類、床暖房敷設率等による各端末固有のばらつきや、ユーザの個人的な好み等を補正値αとして組み込んで温度レベルLsの補正が行われる。そして補正された温度レベルLsを用いて圧縮機5の回転数が制御される。これにより、さらにきめの細かい調整を行って良好な暖房感を得ることができる。なお、その際、前記補正値αの値について、所定の快適範囲内となるように、上限や下限を設けてもよい。
【0111】
また、本実施形態では特に、補正値αは、室内温度センサ19により検出される室内温度Trとエアコン設定温度Tconとの差に応じて、可変に設定される。これにより、時事刻々と変動する空調対象空間の状況に応じて、臨機応変に床暖房能力の的確な調整を行うことができる。
【0112】
また、本実施形態では特に、圧縮機5の起動後、空調対象空間がまだ暖まっていない状態では床暖房運転を行うことなく温風暖房運転が行われ(立上げ運転1)、その後室内温度Trの上昇に応じて床暖房運転と温風暖房運転とが並行して行われる(立上げ運転2)。さらにその後、室内温度Trが十分に上昇し安定したら、温風暖房運転が停止されて床暖房運転のみが行われる(安定運転)。そして、この状態において、前記したエアコン設定温度Tconに対応して決定される温度レベルLsの補正、及び、その補正された温度レベルLsに応じた圧縮機5の回転数制御が行われる。以上の結果、連動運転が安定状態となり床暖房運転のみが行われているときに、床暖房端末27の床暖房能力を適切な強さに確実に制御することができる。
【0113】
また、本実施形態では特に、連動運転の際に用いられた前記補正値αが、当該連動運転の終了の際に補正値記憶部44E3に記憶される。その後、さらに連動運転が開始され前記安定状態となる際に、記憶された補正値αが読み出されて用いられる。これにより、過去の連動運転時の補正値αの実績値を確実に用いることができるので、当該過去の連動運転時と同様の適切な床暖房能力を容易かつ確実に実現することができる。なお、この例では、補正値αは連動運転の終了の際に補正値記憶部44E3に記憶されたが、これに限られない。要は、補正値が設定された後でかつ連動運転が終了するまでの、適宜のタイミングにおいて補正値記憶部44E3に記憶されれば足りるものである。
また、特に、前述のように補正値αを可変に設定し、時事刻々と変動する空調対象空間の状況に応じて床暖房能力な調整する場合には、上記のような補正値記憶部44E3への記憶→その次の運転時に読み出して使用、を繰り返すことで、いわゆる学習機能を持たせ、床暖房能力の最適化を図ることができる。これにより、例えば空調対象空間となる各部屋ごとに快適性の条件を確実に補正できるので、より快適性を担保しやすくなる。また、毎回学習させることで季節変動にも対応できるので、例えば中間期(春期、秋期)、冬期における駆体全体の冷え込み等にも対応し、快適性を維持することが可能となる。
【0114】
<その他変形例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
【0115】
例えば、上記実施形態においては、補正値αの値を、前記エアコン設定温度Tconと前記室内温度Trとの差に応じて可変としたが、これに限られない。すなわち、補正値αの値を、例えば前記室内機リモコン21や床暖房リモコン36でのユーザの手動操作によって固定的に設定してもよい。例えば通常の人よりも寒がりなユーザ、冷え性であるユーザ等の場合は、α=1あるいは2、等と設定することができ、逆に通常の人よりも暑がりなユーザ等の場合は、α=-1あるいは-2、等と設定することができる。なお、例えばこの手動設定モードの場合には、デフォルトとして補正値α=0に設定されていてもよい。
【0116】
この場合、
図12のフローにおけるステップS75からステップS95が省略され、ステップS65の判定が満たされない場合にはそのままステップS45へ戻る。またこの場合、前記のようにして連動運転が終了するとき(
図12のステップS50参照)や安定運転から立上げ運転2へ移行するとき(
図12のステップS70参照)には、その時点でユーザにより(固定的に)設定されている補正値αが補正値記憶部44E3へと記憶される。そして、次回の連動運転時に安定運転に移行後の初めての判断時(
図12のステップS60)には、その記憶された補正値αが読み込まれて使用される。この場合、補正値αを固定とすることにより、ユーザの個人的な好みに合った安定的な補正を確実に行うことができる。
【0117】
また、それまでは前述の手法で補正値αが可変に設定されておりそのときの値が連動運転終了時に補正値記憶部44E3へと記憶されている状態で、その後の連動運転開始時に補正値αを前記のように手動操作で固定的に設定するように変更する場合には、前記補正値記憶部44E3に記憶された補正値αはリセットされて0になるようにしてもよい。逆に、それまでは前述の手法で補正値αが手動操作で固定的に設定されておりそのときの値が連動運転終了時に補正値記憶部44E3へと記憶されている状態で、その後の連動運転開始時に補正値αを前記のように可変に設定するように変更する場合にも、上記と同様、前記補正値記憶部44E3に記憶された補正値αはリセットされて0になり、その補正値α=0から
図12に示すフローに沿って補正値αの増減調整が行われるようにしてもよい。
【0118】
また、前記実施形態においては、前記水冷媒熱交換器7の入口側(流入側)の戻り管29に前記入水温度センサ123を設け、検出された温水の前記入水温度T1に応じて、前記圧縮機5の回転数を制御する、いわゆる戻り温度制御を行ったが、これに限られない。すなわち、前記水冷媒熱交換器7の出口側(流出側)の前記往き管28にセンサを設けて、このセンサにより検出された温水の往き温度が所定の目標往き温度になるように前記圧縮機5の回転数を制御する、いわゆる往き温度制御を行ってもよい。
【0119】
さらに、前記実施形態における前記二方弁16を、閉止機能付きの膨張弁で置き換えても良い。また、前記膨張弁8,15に代え、減圧器としてエジェクターを用いても良いものである。
【0120】
また、前記実施形態では、熱源機として、空気熱交換器10に冷媒を通じる一方で外気を送風する室外ファン9を有し、熱源としての外気と前記冷媒とが熱交換される、空気熱源式のヒートポンプである前記室外機4を使用した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、熱源機を、熱源側熱交換器に対して水や不凍液が供給されそれらの液体と冷媒とが当該熱源側熱交換器において熱交換する構成のものとしてもよい。
また、地中又は比較的大容量の水源中に熱源側熱交換器を設け、この熱源側熱交換器で前記地中又は前記水源と冷媒とが熱交換する構成のものとしてもよい。さらには、前記地中又は前記水源の熱を用いたヒートポンプ回路と空気熱を用いた別のヒートポンプ回路とを備えた複合熱源型の構成としてもよい。
さらには、熱源側熱交換器において前記冷媒と熱交換できるものであれば、前記液体や前記外気や前記水源に代えて、それ以外のもの(例えば、発煙、排煙、各種高温ガス等を含む気体や、熱砂、塵埃、各種粒子等を含む流動固体)を熱源側熱交換器に通じたり、太陽光、反射光、その他輻射等による熱を熱源側熱交換器に供給して用いる構成としても良い。
【0121】
なお、以上において、
図3、
図4に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0122】
また、
図11、
図12に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0123】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0124】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0125】
1 空調システム
4 室外機
5 圧縮機
7 水冷媒熱交換器
7a 水側の流路(水通路)
7b 冷媒側の流路(冷媒通路)
9 室外ファン
10 空気熱交換器(室外熱交換器)
11 冷媒配管
14 室内熱交換器
17 室内機
18 室内ファン
19 室内温度センサ(室温検出手段)
20 室内機制御部
21 室内機リモコン(第1リモコン)
25 室内温度設定スイッチ(設定手段)
27 床暖房端末
28 往き管(往き管路、湯水配管)
29 戻り管(戻り管路、湯水配管)
33 加熱循環回路(湯水循環回路)
34 循環ポンプ
36 床暖房リモコン(第2リモコン)
44 室外機制御部
44B 圧縮機制御部(圧縮機制御手段)
44E1 相関記憶部(相関記憶手段)
44E2 温度レベル決定部(温度レベル決定手段)
44E3 補正値記憶部(補正値記憶手段)
44E5 目標戻り温度決定部(目標戻り温度決定手段)
123 入水温度センサ(戻り温度検出手段)
125 冷媒配管
126 冷媒配管
130 冷媒循環回路
T1 入水温度
Tcon エアコン設定温度
Tout 冷媒吐出温度
Tr 室内温度(実室温)
α 補正値