(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両、車両制御装置の動作方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20221206BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20221206BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20221206BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20221206BHJP
【FI】
B60W30/10
G08G1/16 C
B62D6/00
B60W40/06
(21)【出願番号】P 2019106479
(22)【出願日】2019-06-06
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100166648
【氏名又は名称】鎗田 伸宜
(74)【代理人】
【識別番号】100168284
【氏名又は名称】菅原 英夫
(72)【発明者】
【氏名】江口 敦央
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-083578(JP,A)
【文献】特開2012-084038(JP,A)
【文献】特開2013-242670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
B62D 6/00- 6/10
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を制御する車両制御装置であって、
道路の区画線を検出する区画線検出部と、
前記道路の道路境界を検出する道路境界検出部と、
前記区画線からの逸脱を抑制する第1の逸脱抑制制御及び前記道路境界からの逸脱を抑制する第2の逸脱抑制制御を実施する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記車両から前記区画線に基づく所定位置までの横方向距離に応じて前記第1の逸脱抑制制御を実施し、前記車両が
現在位置から前記道路境界に基づく所定位置に到達するまでの時間に応じて前記第2の逸脱抑制制御を実施し、
前記制御部は、前記横方向距離が閾値以下となった場合に前記第1の逸脱抑制制御を実施し、
前記車両が前記現在位置にいた時からの経過時間が、前記時間よりも短い時間閾値に達した場合に前記第2の逸脱抑制制御を実施し、
前記制御部は、前記第1の逸脱抑制制御と前記第2の逸脱抑制制御との両方の制御を実施しながら走行するように前記車両を制御することを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記区画線と前記道路境界との距離が所定距離以上である場合に、前記第1の逸脱抑制制御及び前記第2の逸脱抑制制御を実施することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記道路の形状を検出する形状検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記道路の曲率が閾値以下である場合に、前記第1の逸脱抑制制御及び前記第2の逸脱抑制制御を実施することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記道路が直線道路である場合に、前記第1の逸脱抑制制御及び前記第2の逸脱抑制制御を実施することを特徴とする請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記区画線検出部により検出された区画線に基づいて車線幅を算出し、前記車線幅が所定値以上である場合に、前記第1の逸脱抑制制御及び前記第2の逸脱抑制制御を実施することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、(1)前記車両の速度と、(2)前記車両の方向角と、(3)前記車両から、前記方向角に沿った線と前記道路境界に基づく所定位置との交点までの距離とに基づいて、前記車両が前記所定位置に到達するまでの時間を算出することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の車両制御装置を備えることを特徴とする車両。
【請求項8】
車両を制御する車両制御装置の動作方法であって、
道路の区画線を検出する区画線検出工程と、
前記道路の道路境界を検出する道路境界検出工程と、
前記区画線からの逸脱を抑制する第1の逸脱抑制制御及び前記道路境界からの逸脱を抑制する第2の逸脱抑制制御を実施する制御工程と、を有し、
前記制御工程では、前記車両から前記区画線に基づく所定位置までの横方向距離に応じて前記第1の逸脱抑制制御を実施し、前記車両が
現在位置から前記道路境界に基づく所定位置に到達するまでの時間に応じて前記第2の逸脱抑制制御を実施し、
前記制御工程では、前記横方向距離が閾値以下となった場合に前記第1の逸脱抑制制御を実施し、
前記車両が前記現在位置にいた時からの経過時間が、前記時間よりも短い時間閾値に達した場合に前記第2の逸脱抑制制御を実施し、
前記制御工程では、前記第1の逸脱抑制制御と前記第2の逸脱抑制制御との両方の制御を実施しながら走行するように前記車両を制御することを特徴とする車両制御装置の動作方法。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1乃至6の何れか1項に記載の車両制御装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両、車両制御装置の動作方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の乗員に対する支援の一例として車線からの逸脱防止技術が知られている。特許文献1は、車線距離と車速により車線離脱時間を予測して車線離脱か否かを判定することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、道路境界及び区画線のそれぞれに対して適応的な車両制御を行うことが難しいという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、道路境界及び区画線のそれぞれに対して適応的な車両制御を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、車両を制御する車両制御装置であって、
道路の区画線を検出する区画線検出部と、
前記道路の道路境界を検出する道路境界検出部と、
前記区画線からの逸脱を抑制する第1の逸脱抑制制御及び前記道路境界からの逸脱を抑制する第2の逸脱抑制制御を実施する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記車両から前記区画線に基づく所定位置までの横方向距離に応じて前記第1の逸脱抑制制御を実施し、前記車両が現在位置から前記道路境界に基づく所定位置に到達するまでの時間に応じて前記第2の逸脱抑制制御を実施し、
前記制御部は、前記横方向距離が閾値以下となった場合に前記第1の逸脱抑制制御を実施し、前記車両が前記現在位置にいた時からの経過時間が、前記時間よりも短い時間閾値に達した場合に前記第2の逸脱抑制制御を実施し、
前記制御部は、前記第1の逸脱抑制制御と前記第2の逸脱抑制制御との両方の制御を実施しながら走行するように前記車両を制御することを特徴とする車両制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、道路境界及び区画線のそれぞれに対して適応的な車両制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】実施形態に係る区画線及び道路境界と車両との位置関係の説明図。
【
図3】実施形態に係る車両、区画線及び道路境界の周辺の拡大図。
【
図4】実施形態に係る車両制御装置が実施する処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでするものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴うち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両制御装置のブロック図であり、車両1を制御する。
図1において、車両1はその概略が平面図と側面図とで示されている。車両1は一例としてセダンタイプの四輪の乗用車である。
【0011】
図1の本実施形態に係るECU20が実施する処理の手順を説明する。車両制御装置は、制御ユニット2を含む。制御ユニット2は車内ネットワークにより通信可能に接続された複数のECU20~29を含む。各ECUは、CPUに代表されるプロセッサ、半導体メモリ等の記憶デバイス、外部デバイスとのインタフェース等を含む。記憶デバイスにはプロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納される。各ECUはプロセッサ、記憶デバイスおよびインタフェース等を複数備えていてもよい。
【0012】
以下、各ECU20~29が担当する機能等について説明する。なお、ECUの数や、担当する機能については適宜設計可能であり、本実施形態よりも細分化したり、あるいは、統合することが可能である。
【0013】
ECU20は、車両1の自動運転に関わる制御を実行する。自動運転においては、車両1の操舵と、加減速の少なくともいずれか一方を自動制御する。また、ECU20は、車両1の運転支援に関わる制御も実行可能である。運転支援には、例えば、前走車との適切な車間距離を維持しながら追従走行し、運転者の運転負荷を軽減するアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)や、車線(区画線)からの逸脱を抑制する逸脱抑制制御などがある。アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)では主に加減速を自動制御し、逸脱抑制制御では主に操舵操作を自動制御する。
【0014】
ECU21は、電動パワーステアリング装置3を制御する。電動パワーステアリング装置3は、ステアリングホイール31に対する運転者の運転操作(操舵操作)に応じて前輪を操舵する機構を含む。また、電動パワーステアリング装置3は操舵操作をアシストしたり、あるいは、前輪を自動操舵するための駆動力を発揮するモータや、操舵角を検知するセンサ等を含む。車両1の運転状態が自動運転又は運転支援の場合、ECU21は、ECU20からの指示に対応して電動パワーステアリング装置3を自動制御し、車両1の進行方向を制御する。
【0015】
ECU22および23は、車両の周囲状況を検知する検知ユニット41~43の制御および検知結果の情報処理を行う。検知ユニット41は、車両1の前方を撮影するカメラであり(以下、カメラ41と表記する場合がある。)、本実施形態の場合、車両1のルーフ前部でフロントウィンドウの車室内側に取り付けられる。カメラ41が撮影した画像の解析により、物標の輪郭抽出や、道路上の車線の区画線(白線等)を抽出可能である。
【0016】
検知ユニット42は、Light Detection and Ranging(LIDAR:ライダ)であり(以下、ライダ42と表記する場合がある)、車両1の周囲の物標を検知したり、物標との距離を測距する。本実施形態の場合、ライダ42は5つ設けられており、車両1の前部の各隅部に1つずつ、後部中央に1つ、後部各側方に1つずつ設けられている。検知ユニット43は、ミリ波レーダであり(以下、レーダ43と表記する場合がある)、車両1の周囲の物標を検知したり、物標との距離を測距する。本実施形態の場合、レーダ43は5つ設けられており、車両1の前部中央に1つ、前部各隅部に1つずつ、後部各隅部に一つずつ設けられている。
【0017】
ECU22は、一方のカメラ41と、各ライダ42の制御および検知結果の情報処理を行う。ECU23は、他方のカメラ41と、各レーダ43の制御および検知結果の情報処理を行う。車両の周囲状況を検知する装置を二組備えたことで、検知結果の信頼性を向上でき、また、カメラ、ライダ、レーダといった種類の異なる検知ユニットを備えたことで、車両の周辺環境の解析を多面的に行うことができる。
【0018】
ECU24は、ジャイロセンサ5、GPSセンサ24b、通信装置24cの制御および検知結果あるいは通信結果の情報処理を行う。ジャイロセンサ5は車両1の回転運動を検知する。ジャイロセンサ5の検知結果や、車輪速等により車両1の進路を判定することができる。GPSセンサ24bは、車両1の現在位置を検知する。通信装置24cは、地図情報や交通情報を提供するサーバと無線通信を行い、これらの情報を取得する。ECU24は、記憶デバイスに構築された地図情報のデータベース24aにアクセス可能であり、ECU24は現在地から目的地へのルート探索等を行う。
【0019】
ECU25は、車車間通信用の通信装置25aを備える。通信装置25aは、周辺の他車両と無線通信を行い、車両間での情報交換を行う。
【0020】
ECU26は、パワープラント6を制御する。パワープラント6は車両1の駆動輪を回転させる駆動力を出力する機構であり、例えば、エンジンと変速機とを含む。ECU26は、例えば、アクセルペダル7Aに設けた操作検知センサ7aにより検知した運転者の運転操作(アクセル操作あるいは加速操作)に対応してエンジンの出力を制御したり、車速センサ7cが検知した車速等の情報に基づいて変速機の変速段を切り替える。車両1の運転状態が自動運転又は運転支援の場合、ECU26は、ECU20からの指示に対応してパワープラント6を自動制御し、車両1の加減速を制御する。
【0021】
ECU27は、方向指示器8(ウィンカ)を含む灯火器(ヘッドライト、テールライト等)を制御する。
図1の例の場合、方向指示器8は車両1の前部、ドアミラーおよび後部に設けられている。
【0022】
ECU28は、入出力装置9の制御を行う。入出力装置9は運転者に対する情報の出力と、運転者からの情報の入力の受け付けを行う。音声出力装置91は運転者に対して音声により情報を報知する。表示装置92は運転者に対して画像の表示により情報を報知する。表示装置92は例えば運転席正面に配置され、インストルメントパネル等を構成する。なお、ここでは、音声と表示を例示したが振動や光により情報を報知してもよい。また、音声、表示、振動または光のうちの複数を組み合わせて情報を報知してもよい。更に、報知すべき情報のレベル(例えば緊急度)に応じて、組み合わせを異ならせたり、報知態様を異ならせてもよい。
【0023】
入力装置93は運転者が操作可能な位置に配置され、車両1に対する指示を行うスイッチ群であるが、音声入力装置も含まれてもよい。
【0024】
ECU29は、ブレーキ装置10やパーキングブレーキ(不図示)を制御する。ブレーキ装置10は例えばディスクブレーキ装置であり、車両1の各車輪に設けられ、車輪の回転に抵抗を加えることで車両1を減速あるいは停止させる。ECU29は、例えば、ブレーキペダル7Bに設けた操作検知センサ7bにより検知した運転者の運転操作(ブレーキ操作)に対応してブレーキ装置10の作動を制御する。車両1の運転状態が自動運転又は運転支援の場合、ECU29は、ECU20からの指示に対応してブレーキ装置10を自動制御し、車両1の減速および停止を制御する。ブレーキ装置10やパーキングブレーキは車両1の停止状態を維持するために作動することもできる。また、パワープラント6の変速機がパーキングロック機構を備える場合、これを車両1の停止状態を維持するために作動することもできる。
【0025】
<制御例>
続いて、ECU20が実行する車両1の制御について説明する。ECU20はECU22および23から車両1の周囲状況(例えば、道路の区画線、道路境界、対向車、物標など)に関する情報を取得し、取得した情報に基づきECU21、ECU26および29に指示して、車両1の操舵、加減速を制御する。例えば、ECU20は、区画線や道路境界から車両1が逸脱することを抑制する逸脱抑制制御を実施する。
【0026】
図2は、本実施形態における車両1の逸脱抑制制御の説明図である。201は第1の区画線、202は第2の区画線(中央線)、203は第3の区画線である。204及び205は、道路境界である。道路境界204及び205は、道路の高さよりも上方に存在する立体物(例えばガードレールや縁石)であってもよい。或いは、必ずしも立体物であるとは限らず、道路の高さと同じ高さの境界であってもよい。206は、第1の区画線201と第2の区画線202とにより規定される車両1の走行車線である。207は、第2の区画線202と第3の区画線203とにより規定される車両200の走行車線(対向車線)である。また、208及び209は歩道を示している。
【0027】
図2の例では、車両1は、矢印210に沿って、第1の区画線201から道路境界204の側への逸脱が抑制された逸脱抑制制御が実施された状態で走行している。本実施形態では、第1の区画線201に対する第1の逸脱抑制制御と、道路境界204に対する第2の逸脱抑制制御を実施しながら走行する。
【0028】
図3は、本実施形態に係る、車両1、第1の区画線201及び道路境界204周辺の拡大図である。301は、第1の区画線201(点Q)から車両1(点P)までの距離を示している。なお、第1の区画線201の位置は、第1の区画線201と第1の走行車線206との境界位置である点Qの位置に限られず、第1の区画線201に基づく所定位置であってもよい。例えば、第1の区画線201と路側帯との境界位置である点Rの位置であってもよいし、これらの間の任意の位置であってもよい。さらには、点Rよりも路側帯側にずれた位置であってもよい。なお、車両1の位置を示す点Pの位置は図示の例に限定されない。車両1の他の場所でもよいし、車両1から所定距離離れた位置であってもよい。
【0029】
302は、車両1(点S)から、車両1の中心線と道路境界204との交点Tまでの距離を示している。なお、道路境界204の位置は、路側帯と道路境界204との境界位置である点Tの位置に限られず、道路境界204に基づく所定位置であってもよい。例えば、道路境界204と歩道208との境界位置である点Uの位置であってもよいし、これらの間の任意の位置であってもよい。さらには、点Tよりも路側帯側にずれた位置であってもよい。なお、車両1の位置を示す点Sの位置は図示の例に限定されない。車両1の他の場所でもよいし、車両1から所定距離離れた位置であってもよい。
【0030】
ECU20は、車両1(例えば点P)から第1の区画線201に基づく所定位置(例えば点Qや点Rなど)までの横方向距離に応じて、第1の区画線201に対する第1の逸脱抑制制御を実施する。例えば、横方向距離が閾値以下となった場合に、第1の区画線201に対する第1の逸脱抑制制御を実施する。
【0031】
また、ECU20は、車両1(例えば点S)が道路境界204に基づく所定位置(例えば点Tや点Uなど)に到達するまでの時間に応じて、道路境界204に対する第2の逸脱抑制制御を実施する。到達するまでの時間は、車両1の方向角αと、距離302と、車両1の速度(車速)とに基づいて算出することができる。方向角αは、走行車線を基準とした車両1の向きを示す。第2の逸脱抑制制御では、車両1の車速や方向角が考慮されているので、より精度の高い処理を行うことができる。第1の区画線201については区画線の外側も舗装されていることもあり、過剰作動防止を優先するために多少の逸脱は許容されるが、道路境界204については区画線よりも外側であり、またガードレールや縁石である場合もあることからより逸脱は抑制されるべきである。従って、道路境界204に対してはより精度のよい到達時間に基づく制御を行い、区画線に対しては処理が速い横方向距離に基づく制御を行う。
【0032】
<処理>
続いて、
図4のフローチャートを参照して、本実施形態に係る車両制御装置実施する処理の手順を説明する。
【0033】
ステップS401において、ECU20は、ECU22および23から取得した車両1の周囲状況に関する情報に基づいて、道路の区画線を検出する。ステップS402において、ECU20は、ECU22および23から取得した車両1の周囲状況に関する情報に基づいて、道路境界を検出する。ステップS403において、ECU20は、ECU26から、車速センサ7cが検知した車両1の車速情報を取得する。
【0034】
ステップS404において、ECU20は、検出された区画線からの逸脱を抑制する逸脱抑制制御を実施する。具体的には、ECU20は、車両1から第1の区画線201に基づく所定位置(例えば
図3の点Qや点Rなど)までの横方向距離(例えば
図3の距離301)に応じて、第1の区画線201に対する第1の逸脱抑制制御を実施する。例えば、横方向距離が閾値以下となった場合に第1の逸脱抑制制御を実施するようにする。
【0035】
ステップS405において、ECU20は、検出された道路境界からの逸脱を抑制する逸脱抑制制御の実施タイミングを決定する。具体的には、ECU20は、車両1が道路境界204に基づく所定位置(例えば
図3の点Tや点U)に到達するまでの時間に応じて、道路境界204に対する第2の逸脱抑制制御を実施する。その際、ECU20は、ECU22および23から取得した車両1の周囲状況に関する情報に基づいて車両1の方向角(走行車線を基準とした車両1の向き、例えば
図3の方向角α)を算出し、方向角に沿った線と道路境204との距離を算出する。そして、ステップS403で取得された車両1の速度情報に基づいて、車両1が道路境界204に基づく所定位置に到達するまでの時間を算出する。例えば、経過時間が、算出した時間に基づく閾値(算出した時間よりも短い時間)に達した場合に、道路境界204に対する第2の逸脱抑制制御を実施するようにする。以上が
図4の一連の処理である。
【0036】
以上説明したように、本実施形態では、区画線に対する逸脱抑制制御では横方向距離に基づく制御を行い、道路境界に対する逸脱抑制制御では到達時間に基づく制御を行う。これにより、区画線に対しては車速や区画線に対する車両の向きなどを考慮せずに横方向距離に基づいて逸脱抑制制御を行うので、逸脱抑制制御の過剰作動を防止できる。また、道路境界に対しては車速や道路境界に対する車両の向きなど考慮した逸脱までの予測時間基づいて逸脱抑制制御を行うため、より精度よく逸脱を防止することができる。従って、道路境界及び区画線のそれぞれに対して適応的な車両制御を実現することができる。
【0037】
[変形例]
なお、上記実施形態では、区画線に対する逸脱抑制制御では横方向距離に基づく制御を行い、道路境界に対する逸脱抑制制御では到達時間に基づく制御を行う例を説明したが、当該制御は、区画線と道路境界との距離が所定距離以上である場合に実施してもよい。区画線と道路境界との当該距離は、例えば道路幅方向の距離である。これにより、区画線を逸脱した後の余裕幅が大きい場合にのみ制御を適用することができるため、区画線から逸脱しても、ある程度余裕がある状況下で適切な制御を行うことが可能となる。
【0038】
また、上記実施形態の当該制御は、道路の曲率が閾値以下である場合に実施してもよい。例えば直線道路に近いほど道路境界や区画線の検出精度が高くなるので、走行の余裕度も高くなり、走行の余裕度が高い状況下で適切な制御を行うことが可能となる。また、道路の曲率が閾値以下である場合に道路を直線であると判定するようにし、直線道路であると判定された場合に、当該制御を行うようにしてもよい。なお、道路の曲率は、ECU20が、ECU22および23から取得した車両1の周囲状況に関する情報に基づいて、或いは、検出された区画線又は道路境界の情報に基づいて、道路の形状を算出して取得することができる。
【0039】
また、上記実施形態の制御は、検出された区画線に基づいて車線幅を算出し、車線幅が所定値以上である場合に実施してもよい。車線幅がある程度広ければ、走行の余裕度も高くなり、走行の余裕度が高い状況下で適切な制御を行うことが可能となる。
【0040】
<その他の実施形態>
また、各実施形態で説明された1以上の機能を実現するプログラムは、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給され、該システム又は装置のコンピュータにおける1以上のプロセッサは、このプログラムを読み出して実行することができる。このような態様によっても本発明は実現可能である。
【0041】
<実施形態のまとめ>
1.上記実施形態の車両制御装置は、
車両(例えば1)を制御する車両制御装置であって、
道路の区画線(例えば201)を検出する区画線検出部(例えば20、22、23)と、
前記道路の道路境界(例えば204)を検出する道路境界検出部(例えば20、22、23)と、
前記区画線からの逸脱を抑制する第1の逸脱抑制制御及び前記道路境界からの逸脱を抑制する第2の逸脱抑制制御を実施する制御部(例えば20)と、を備え、
前記制御部は、前記車両から前記区画線に基づく所定位置(例えばQ、R)までの横方向距離(例えば301)に応じて前記第1の逸脱抑制制御を実施し、前記車両が前記道路境界に基づく所定位置(例えばT、U)に到達するまでの時間に応じて前記第2の逸脱抑制制御を実施する。
【0042】
この実施形態によれば、道路境界及び区画線のそれぞれに対して適応的な車両制御を実現することができる。
【0043】
2.上記実施形態の車両制御装置では、
前記制御部は、前記区画線と前記道路境界との距離が所定距離以上である場合に、前記第1の逸脱抑制制御及び前記第2の逸脱抑制制御を実施する。
【0044】
この実施形態によれば、区画線を逸脱した後の余裕幅が大きい場合にのみ制御を適用することができるため、区画線から逸脱しても、ある程度余裕がある状況下で適切な制御を行うことが可能となる。
【0045】
3.上記実施形態の車両制御装置では、
前記道路の形状を検出する形状検出部(例えば20、22、23)をさらに備え、
前記制御部は、前記道路の曲率が閾値以下である場合に、前記第1の逸脱抑制制御及び前記第2の逸脱抑制制御を実施する。
【0046】
この実施形態によれば、直線道路に近いほど道路境界や区画線の検出精度が高くなるので、走行の余裕度も高くなり、走行の余裕度が高い状況下で適切な制御を行うことが可能となる。
【0047】
4.上記実施形態の車両制御装置では、
前記制御部は、前記道路が直線道路である場合に、前記第1の逸脱抑制制御及び前記第2の逸脱抑制制御を実施する。
【0048】
この実施形態によれば、道路境界や区画線の検出精度が高い状況下で適切な制御を行うことが可能となる。
【0049】
5.上記実施形態の車両制御装置では、
前記制御部は、前記区画線検出部により検出された区画線に基づいて車線幅を算出し、前記車線幅が所定値以上である場合に、前記第1の逸脱抑制制御及び前記第2の逸脱抑制制御を実施する。
【0050】
この実施形態によれば、車線幅がある程度広く走行の余裕度が高い状況下で適切な制御を行うことが可能となる。
【0051】
6.上記実施形態の車両制御装置では、
前記制御部は、前記車両の速度と、前記車両の方向角と、前記方向角に沿った線と前記道路境界に基づく所定位置との距離とに基づいて、前記車両が前記所定位置に到達するまでの時間を算出する。
【0052】
この実施形態によれば、車両が道路境界に到達するまでの時間を精度よく算出することができる。
【0053】
7.上記実施形態の車両(例えば1)は、
上記実施形態の車両制御装置を備える車両である。
【0054】
この実施形態によれば、車両制御装置が実施する処理を車両で実現できる。
【0055】
8.上記実施形態の車両制御装置の動作方法は、
車両(例えば1)を制御する車両制御装置の動作方法であって、
道路の区画線(例えば201)を検出する区画線検出工程(例えばS401)と、
前記道路の道路境界(例えば204)を検出する道路境界検出工程(例えばS402)と、
前記区画線からの逸脱を抑制する第1の逸脱抑制制御及び前記道路境界からの逸脱を抑制する第2の逸脱抑制制御を実施する制御工程(例えばS404、S405)と、を有し、
前記制御工程では、前記車両から前記区画線に基づく所定位置(例えばQ、R)までの横方向距離(例えば301)に応じて前記第1の逸脱抑制制御を実施し、前記車両が前記道路境界に基づく所定位置(例えばT、U)に到達するまでの時間に応じて前記第2の逸脱抑制制御を実施する。
【0056】
この実施形態によれば、道路境界及び区画線のそれぞれに対して適応的な車両制御を実現することができる。
【0057】
9.上記実施形態のプログラムは、
コンピュータを、上記実施形態の車両制御装置として機能させるためのプログラムである。
【0058】
この実施形態によれば、本発明の内容をコンピュータにより実現することが可能となる。
【0059】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1:車両、2:制御ユニット、20:ECU