(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】適正施肥支援装置
(51)【国際特許分類】
A01C 21/00 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
A01C21/00 Z
(21)【出願番号】P 2019118824
(22)【出願日】2019-06-26
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100086391
【氏名又は名称】香山 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100110799
【氏名又は名称】丸山 温道
(74)【代理人】
【識別番号】100206704
【氏名又は名称】西尾 明洋
(72)【発明者】
【氏名】古市 光洋
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-144990(JP,A)
【文献】特開2008-278816(JP,A)
【文献】特開2011-215697(JP,A)
【文献】特開2015-027296(JP,A)
【文献】特開2009-259101(JP,A)
【文献】特開2018-082648(JP,A)
【文献】特開2003-307515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 15/00-23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定ユーザの圃場内に設定された複数の小領域毎に施肥量が設定された施肥マップを作成する施肥マップ作成部と、
複合肥料に含まれる複数の肥料成分の成分比率と、前記各肥料成分における
前記小領域単位の上限値とを取得する情報取得部と、
前記施肥マップと、前記成分比率とに基づいて、前記小領域毎の前記各肥料成分の施肥量である成分別施肥量を算出する成分別施肥量算出部と、
前記成分別施肥量算出部によって算出される前記成分別施肥量毎に、当該成分別施肥量が対応する肥料成分の前記上限値よりも多いか否かを判定する過剰判定部と、
前記過剰判定部によって前記成分別施肥量が前記上限値よりも多いと判定された場合には、当該成分別施肥量が前記上限値よりも多い旨を報知する報知部とを含
み、
前記施肥マップ作成部は、前年度の前記小領域毎の収穫量に基づき収穫量が少ない小領域ほど施肥量が多くなるように前記小領域毎の施肥量を算出するかまたは、前記小領域毎の生育状況情報に基づき生育状況が遅い小領域ほど施肥量が多くなるように前記小領域毎の施肥量を算出することにより、前記施肥マップを作成するように構成されている、適正施肥支援装置。
【請求項2】
前記過剰判定部は、前記成分別施肥量が前記上限値よりも多いと判定した場合に、当該成分別施肥量の前記上限値に対する過剰量を算出するように構成されており、
前記報知部は、前記過剰量をも報知するように構成されている、請求項1に記載の適正施肥支援装置。
【請求項3】
前記施肥量が追肥作業を行うための追肥量であり、
前記上限値が、基肥施肥作業前から前記追肥作業後までに施肥されるべき施肥量に対する前記小領域単位の上限値であり、
前記成分別施肥量算出部は、前記基肥施肥作業前から前記追肥作業後までに施肥される予定の成分別施肥量を算出するように構成されている、請求項1または2に記載の適正施肥支援装置。
【請求項4】
特定ユーザの圃場内に設定された複数の小領域毎に施肥量が設定された施肥マップを作成する施肥マップ作成部と、
複合肥料に含まれる複数の肥料成分の成分比率と、前記各肥料成分における
前記小領域単位の下限値とを取得する情報取得部と、
前記施肥マップと、前記成分比率とに基づいて、前記小領域毎の前記各肥料成分の施肥量である成分別施肥量を算出する成分別施肥量算出部と、
前記成分別施肥量算出部によって算出される成分別施肥量毎に、当該成分別施肥量が対応する肥料成分の前記下限値よりも少ないか否かを判定する不足判定部と、
前記不足判定部によって前記成分別施肥量が前記下限値よりも少ないと判定された場合には、当該成分別施肥量が前記下限値よりも少ない旨を報知する報知部とを含
み、
前記施肥マップ作成部は、前年度の前記小領域毎の収穫量に基づき収穫量が少ない小領域ほど施肥量が多くなるように前記小領域毎の施肥量を算出するかまたは、前記小領域毎の生育状況情報に基づき生育状況が遅い小領域ほど施肥量が多くなるように前記小領域毎の施肥量を算出することにより、前記施肥マップを作成するように構成されている、適正施肥支援装置。
【請求項5】
前記不足判定部は、前記成分別施肥量が前記下限値よりも少ないと判定した場合に、当該成分別施肥量の前記下限値に対する不足量を算出するように構成されており、
前記報知部は、前記不足量をも報知するように構成されている、請求項4に記載の適正施肥支援装置。
【請求項6】
施肥量が追肥作業を行うための追肥量であり、
前記下限値が、基肥施肥作業前から前記追肥作業後までに施肥されるべき施肥量に対する前記小領域単位の下限値であり、
前記成分別施肥量算出部は、前記基肥施肥作業前から前記追肥作業後までに施肥される予定の成分別施肥量を算出するように構成されている、請求項4または5に記載の適正施肥支援装置。
【請求項7】
前記報知部による報知内容に基づいて、前記特定ユーザによって前記複合肥料が設定変更された場合には、前記成分別施肥量算出部は、変更後の複合肥料の成分比率を用いて、前記成分別施肥量を算出し直す、請求項1~6のいずれか一項に記載の適正施肥支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、適正施肥支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圃場を分割することによって設定される複数のメッシュ(小領域)毎の施肥量を表す施肥マップを作成する技術が開示されている。具体的には、カメラ等の各種センサと衛星測位システムとが搭載されたマルチコプター(飛行体)を、圃場の上空に飛行させながら、カメラで圃場内の各部を撮影していき、得られた各撮影画像を測位情報とともに記憶する。そして、各撮影画像を解析し、解析結果と各撮影画像の測位情報とに基づいて、圃場内のメッシュ毎に作物の生育状況を表す生育状況情報を算出する。得られたメッシュ毎の生育状況情報に基づいて、施肥マップを作成する。
【0003】
ある圃場に対して作成された施肥マップは、例えば、記録紙に印刷されて、当該圃場に作物を栽培している農家に与えられる。農家は、記録紙に印刷された施肥マップを参照して、圃場のメッシュ毎の施肥量を調整しながら施肥を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、肥料としては、窒素、リン、カリウム等の肥料成分が所定の混合比で混合された複合肥料が用いられる。窒素、リンおよびカリウムのうちのいずれかの肥料成分が過剰になったり、不足したりすると、作物の生育に悪影響を及ぼすことが知られている。したがって、これらの肥料成分に過剰および不足のうちの少なくとも一方が生じないように、複合肥料を選択することが重要となる。
【0006】
この発明の目的は、適正な複合肥料を選択しやすくなる適正施肥支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一実施形態は、複合肥料に含まれる複数の肥料成分の成分比率と、前記各肥料成分における所定の小領域単位の上限値とを取得する情報取得部と、特定ユーザの圃場内に設定された複数の前記小領域毎に施肥量が設定された施肥マップと、前記成分比率とに基づいて、前記小領域毎の前記各肥料成分の施肥量である成分別施肥量を算出する成分別施肥量算出部と、前記成分別施肥量算出部によって算出される前記成分別施肥量毎に、当該成分別施肥量が対応する肥料成分の前記上限値よりも多いか否かを判定する過剰判定部と、前記過剰判定部によって前記成分別施肥量が前記上限値よりも多いと判定された場合には、当該成分別施肥量が前記上限値よりも多い旨を報知する報知部とを含む、適正施肥支援装置を提供する。
【0008】
この構成では、特定ユーザは、施肥マップを使用して施肥作業を行う前に、特定ユーザが設定する複合肥料に対して、各成分別施肥量に過剰が生じるか否かを認識できる。このため、特定ユーザは、適正な複合肥料を選択しやすくなる。
この発明の一実施形態では、前記過剰判定部は、前記成分別施肥量が前記上限値よりも多いと判定した場合に、当該成分別施肥量の前記上限値に対する過剰量を算出するように構成されており、前記報知部は、前記過剰量をも報知するように構成されている。
【0009】
この発明の一実施形態では、前記施肥量が追肥作業を行うための追肥量であり、前記上限値が、基肥施肥作業前から前記追肥作業後までに施肥されるべき施肥量に対する前記小領域単位の上限値であり、前記成分別施肥量算出部は、前記基肥施肥作業前から前記追肥作業後までに施肥される予定の成分別施肥量を算出するように構成されている。
この発明の一実施形態は、複合肥料に含まれる複数の肥料成分の成分比率と、前記各肥料成分における所定の小領域単位の下限値とを取得する情報取得部と、特定ユーザの圃場内に設定された複数の前記小領域毎に施肥量が設定された施肥マップと、前記成分比率とに基づいて、前記小領域毎の前記各肥料成分の施肥量である成分別施肥量を算出する成分別施肥量算出部と、前記成分別施肥量算出部によって算出される成分別施肥量毎に、当該成分別施肥量が対応する肥料成分の前記下限値よりも少ないか否かを判定する不足判定部と、前記不足判定部によって前記成分別施肥量が前記下限値よりも少ないと判定された場合には、当該成分別施肥量が前記下限値よりも少ない旨を報知する報知部とを含む、適正施肥支援装置を提供する。
【0010】
この構成では、特定ユーザは、施肥マップを使用して施肥作業を行う前に、特定ユーザが設定する複合肥料に対して、各成分別施肥量に不足が生じるか否かを認識できる。このため、特定ユーザは、適正な複合肥料を選択しやすくなる。
この発明の一実施形態では、前記不足判定部は、前記成分別施肥量が前記下限値よりも少ないと判定した場合に、当該成分別施肥量の前記下限値に対する不足量を算出するように構成されており、前記報知部は、前記不足量をも報知するように構成されている。
【0011】
この発明の一実施形態では、施肥量が追肥作業を行うための追肥量であり、前記下限値が、基肥施肥作業前から前記追肥作業後までに施肥されるべき施肥量に対する前記小領域単位の下限値であり、前記成分別施肥量算出部は、前記基肥施肥作業前から前記追肥作業後までに施肥される予定の成分別施肥量を算出するように構成されている。
この発明の一実施形態では、前記報知部による報知内容に基づいて、前記特定ユーザによって前記複合肥料が設定変更された場合には、前記成分別施肥量算出部は、変更後の複合肥料の成分比率を用いて、前記成分別施肥量を算出し直す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、この発明の一実施形態に係る適正施肥支援装置が適用された適正施肥支援システムの構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、圃場情報管理テーブルの一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、メッシュ情報管理テーブルの一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、CPUによって実行される基肥作業用の適正施肥支援処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図4のステップS2で作成される基肥施肥マップならびに
図4のステップS3で算出されるメッシュ毎の窒素、リンおよびカリウムの施肥量を表す成分別施肥マップの一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、
図4のステップS6で作成される報知画面の一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、
図4のステップS6で作成される報知画面の他の例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、
図4のステップS6で作成される報知画面のさらに他の例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、CPUによって行われる追肥作業用の第2適正施肥支援処理の手順を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、
図8のステップS22で作成される追肥マップならびに
図8のステップS23で算出されるメッシュ毎の窒素、リンおよびカリウムの施肥量を表す成分別施肥マップの一例を示す模式図である。
【
図11】
図11は、
図8のステップS24で算出されるメッシュ毎の窒素、リンおよびカリウムの統合施肥量を表す成分別統合施肥マップの一例を示す模式図である。
【
図12】
図12は、
図8のステップS27で作成される報知画面の一例を示す模式図である。
【
図13】
図13は、
図8のステップS27で作成される報知画面の他の例を示す模式図である。
【
図14】
図14は、
図8のステップS27で作成される報知画面のさらに他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る適正施肥支援装置が適用された適正施肥支援システム1の構成を示す模式図である。
適正施肥支援システム1は、1または複数の圃場を所有する特定ユーザが使用するユーザ端末2と、適正施肥支援装置としての適正施肥支援サーバ(以下、単に「サーバ3」という)とを含む。ユーザ端末2とサーバ3とは、通信網4を介して互いに通信可能である。
【0014】
サーバ3は、適正施肥支援情報等をユーザ端末2に提供する。適正施肥支援情報には、施肥マップや複合肥料を選択するために参考となる情報が含まれる。ユーザ端末2は、サーバ3によって提供される適正施肥支援情報をディスプレイに表示する。
施肥マップとは、メッシュ毎に施肥量が設定されたマップである。メッシュとは、圃場を複数の矩形状(この実施形態では正方形状)の小領域に分割した場合の個々の小領域を意味する。
【0015】
施肥マップには、基肥施肥作業に使用される施肥マップ(以下、「基肥施肥マップ」という場合がある。)と、追肥作業に使用される施肥マップ(以下、「追肥マップ」という場合がある。)とがある。
基肥施肥マップは、前年度のメッシュ毎の収穫量に基づいて作成される。各メッシュに対する施肥量は、例えば、収穫量が少ないメッシュほど施肥量が多くなるように設定される。
【0016】
これに対して、追肥マップは、メッシュ毎の生育状況情報に基づいて作成される。生育状況情報とは、作物の生育状況を表す情報をいう。各メッシュに対する施肥量は、例えば、生育状況が遅いメッシュほど、施肥量が多くなるように、施肥量が設定される。
生育状況情報としては、例えば、正規化差植生指数(NDVI : Normalized Difference Vegetation Index)が用いられる。植物の緑葉は赤色等の可視光を吸収し、近赤外領域の波長の光を強く反射する。NDVIは、このような緑葉の性質を利用した指数であって、植生の有無や活性度を表す指数である。NDVIは、次式(1)で定義される。
【0017】
NDVI=(IR-R)/(IR+R) …(1)
IR:近赤外光の観測値
R:可視光の観測値
ある圃場の各メッシュに対するNDVIは、例えば、次のようにして作成される。すなわち、マルチスペクトルカメラが搭載された飛行体を、圃場の上空に飛行させながら、マルチスペクトルカメラで圃場を撮影する。マルチスペクトルカメラは、例えば、可視赤色光と近赤外光の画像を撮影できるカメラである。飛行体は、例えば、ドローン(無人航空機)である。そして、得られた撮影画像に基づいて、圃場内のメッシュ毎のNDVIを演算する。
【0018】
図1に戻り、ユーザ端末2は、パーソナルコンピュータ(PC)からなり、制御装置(PC本体)21と、ディスプレイ22と、マウス、キーボード等の操作機器23とを含む。制御装置21は、図示しないが、CPU、メモリ、ハードディスク等を含む。ハードディスクには、OS(オペレーションシステム)の他、ウェブページを閲覧するためのブラウザ(browser)等のプログラム、その他必要なデータが格納されている。
【0019】
サーバ3は、パーソナルコンピュータ(PC)からなり、制御装置(PC本体)31と、ディスプレイ32と、マウス、キーホード等の操作機器33とを含む。制御装置31は、CPU41、メモリ42、ハードディスク43等を含む。
ハードディスク43内には、適正施肥支援プログラム43Aの他、圃場情報管理テーブル43B、メッシュ情報管理テーブル43C等が格納されている。
【0020】
図2は、圃場情報管理テーブル43Bの一例を示す模式図である。
圃場情報管理テーブル43Bには、サーバ3に登録されている圃場ID毎に、圃場に関する情報(圃場情報)が記憶される。この実施形態では、圃場情報には、圃場名、圃場位置特定情報等が記憶される。
圃場位置特定情報は、当該圃場の位置を特定するための情報であり、例えば、圃場の輪郭線上の複数の特徴点の位置情報からなる。
【0021】
図3は、メッシュ情報管理テーブル43Cの一例を示す模式図である。
メッシュ情報管理テーブル43Cは、サーバ3に登録されている圃場ID毎に、メッシュ情報を記憶したテーブルである。ある圃場に対するメッシュ情報は、その圃場内のメッシュ毎の複数の情報からなる。メッシュ毎の複数の情報は、当該メッシュに付与されたメッシュIDと、当該メッシュの位置を特定するための位置情報と、当該メッシュに対する前年度の収量情報と、当該メッシュに対する生育状況情報とを含む。この実施形態では、生育状況情報はNDVIである。
【0022】
メッシュの位置を特定するための位置情報は、例えば、当該メッシュの4頂点の位置情報または4頂点のうちの一組の対頂点の位置情報からなる。メッシュの位置を特定するための位置情報は、当該メッシュの中心の位置情報を含んでいてもよい。
NDVIは、当該圃場に対して、基肥施肥作業または追肥作業が行われた後に、当該圃場がマルチスペクトルカメラによって撮影され、撮影画像に基づいてメッシュ毎のNDVIが演算された場合に当該圃場に対応する生育状況情報として記憶される。したがって、当該圃場に基肥施肥作業が行われる前には、NDVIは当該圃場に対応する生育状況情報としては記憶されていない。
【0023】
なお、この実施形態では、当該圃場に対して、マルチスペクトルカメラによる撮影が時期をずらして複数回行われた場合には、最新に行われた撮影に基づいて演算されたメッシュ毎のNDVIのみが当該圃場に対応する生育状況情報として記憶されるものとする。マルチスペクトルカメラによる撮影が時期をずらして複数回行われた場合に、各撮影に基づいて演算されたメッシュ毎のNDVIを、撮影日別に記憶するようにしてもよい。
【0024】
図1に戻り、CPU41は、適正施肥支援プログラム43Aを実行することによって、適正施肥支援処理を行う機能を備えている。CPU41は、機能処理部として、情報取得部41Aと、施肥マップ作成部41Bと、成分別施肥量算出部41Cと、過剰判定部41Dと、不足判定部41Eと、報知部41Fとを含む。
情報取得部41Aは、複合肥料に含まれる複数の肥料成分の成分比率と、各肥料成分におけるメッシュ(小領域)単位の上限値および下限値とを取得する。
【0025】
施肥マップ作成部41Bは、特定ユーザの圃場内に設定された複数のメッシュ毎に施肥量が設定された施肥マップを作成する。
成分別施肥量算出部41Cは、施肥マップ作成部41Bによって作成される施肥マップと、情報取得部41Aによって取得される成分比率とに基づいて、メッシュ毎の各肥料成分の施肥量である成分別施肥量を算出する。
【0026】
過剰判定部41Dは、成分別施肥量算出部41Cによって算出される成分別施肥量毎に、当該成分別施肥量が、対応する肥料成分の上限値よりも多いか否かを判定する。
不足判定部41Eは、成分別施肥量算出部41Cによって算出される成分別施肥量毎に、当該成分別施肥量が、対応する肥料成分の下限値よりも少ないか否かを判定する。
報知部41Fは、過剰判定部41Dによって成分別施肥量が上限値よりも多いと判定された場合には、当該成分別施肥量が上限値よりも多い旨を報知する。また、報知部41Fは、不足判定部41Eによって成分別施肥量が下限値よりも少ないと判定された場合には、当該成分別施肥量が下限値よりも少ない旨を報知する。
【0027】
CPU41によって実行される適正施肥支援処理には、基肥作業用の適正基肥支援処理と、追肥作業用の適正基肥支援処理とがある。まず、基肥作業用の適正基肥支援処理について説明する。
図4は、CPU41によって実行される基肥作業用の適正施肥支援処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【0028】
特定ユーザは、ある圃場に対する基肥施肥マップをサーバ3から取得したい場合には、ユーザ端末2を操作することにより、サーバ3にアクセスする。そして、特定ユーザは、例えば、サーバ3から提供されるウェブページを利用して、基肥施肥マップを作成すべき圃場(以下、「マップ作成対象圃場」という場合がある。)を示す圃場IDおよび基肥施肥作業に使用される複合肥料に関する情報(以下、「複合肥料情報」という場合がある。)をサーバ3に提供する。複合肥料情報は、複合肥料に含まれる主要に肥料成分である窒素(N)、リン(P)およびカリウム(K)の成分比率(重量比率%)と、窒素、リンおよびカリウムそれぞれに対するメッシュ単位の上限値および下限値とを含む。
【0029】
情報取得部41Aは、特定ユーザからユーザ端末2を介して提供される、マップ作成対象圃場の圃場IDおよび複合肥料情報を取得する(ステップS1)。
次に、施肥マップ作成部41Bは、マップ作成対象圃場に対する基肥施肥マップを作成する(ステップS2)。
具体的には、施肥マップ作成部41Bは、まず、マップ作成対象圃場の圃場IDに基づいて、メッシュ情報管理テーブル43Cからマップ作成対象圃場のメッシュ毎の収量情報を取得する。そして、施肥マップ作成部41Bは、取得したメッシュ毎の収量情報に基づいて、マップ作成対象圃場のメッシュ毎の施肥量を演算する。施肥マップ作成部41Bは、メッシュ毎の施肥量が設定された基肥施肥マップを作成する。
【0030】
次に、成分別施肥量算出部41Cは、ステップS2で作成された基肥施肥マップと、最新に取得した複合肥料情報に含まれている肥料成分の成分比率とに基づいて、メッシュ毎の各肥料成分の施肥量である成分別施肥量を算出する(ステップS3)。
具体的には、成分別施肥量算出部41Cは、基肥施肥マップと、最新に取得した複合肥料情報に含まれている窒素、リンおよびカリウムの成分比率とに基づいて、メッシュ毎の窒素、リンおよびカリウムの施肥量である成分別施肥量を算出する。
【0031】
例えば、窒素、リンおよびカリウムの成分比率が、それぞれ、10%、12%および8%であるとする。ステップS2で作成された基肥施肥マップが、
図5の基肥施肥マップ100で表される場合、メッシュ毎の窒素、リンおよびカリウムの施肥量は、それぞれ
図5の成分別施肥マップ101、102および103で表される。なお、
図5では、説明の便宜上、圃場内に9つのメッシュのみが設定されているが、通常は、圃場内により多くのメッシュが設定される。
【0032】
次に、過剰判定部41Dは、過剰判定処理を行う(ステップS4)。具体的には、過剰判定部41Dは、ステップS3で算出された成分別施肥量毎に、当該成分別施肥量が、対応する肥料成分の上限値よりも多いか否かを判定する。各肥料成分の上限値は、情報取得部41Aが最新に取得した複合肥料情報に含まれている窒素、リンおよびカリウムのメッシュ単位の上限値である。
【0033】
次に、不足判定部41Eは、不足判定処理を行う(ステップS5)。具体的には、不足判定部41Eは、ステップS3で算出された成分別施肥量毎に、当該成分別施肥量が、対応する肥料成分の下限値よりも少ないか否かを判定する。各肥料成分の下限値は、情報取得部41Aが最新に取得した複合肥料情報に含まれている窒素、リンおよびカリウムのメッシュ単位の下限値である。
【0034】
例えば、窒素の下限値が1.0kgで上限値が1.5kgであり、リンの下限値が1.0kgで上限値が1.5kgであり、カリウムの下限値が0.7kgで上限値が1.2kgであるとする。また、ステップS3で算出されたメッシュ毎の窒素、リンおよびカリウムの施肥量が、
図5の成分別施肥マップ101、102および103で表されるとする。
この場合、過剰判定部41Dは、メッシュ毎のリンの施肥量を表す成分別施肥マップ102内の1.56kgが、リンの上限値の1.5kgよりも多いと判定する。また、不足判定部41Eは、メッシュ毎の窒素の施肥量を表す成分別施肥マップ101内の0.90kgが、窒素の下限値の1.0kgよりも少ないと判定する。
【0035】
次に、報知部41Fは、過剰判定部41Dおよび不足判定部41Eの判定結果を報知する(ステップS6)。
上限値よりも多い成分別施肥量が存在する場合には、報知部41Fは、当該成分別施肥量が上限値よりも多い旨を特定ユーザに報知する。また、下限値よりも少ない成分別施肥量が存在する場合には、報知部41Fは、当該成分別施肥量が下限値よりも少ない旨を特定ユーザに報知する。
【0036】
例えば、ステップS3で算出されたメッシュ毎の窒素、リンおよびカリウムの施肥量(成分別施肥量)が、
図5の成分別施肥マップ101、102および103で表される場合、報知部41Fは、
図6に示すような報知画面111を作成して、ユーザ端末2に提供する。
報知画面111は、ステップS3で算出されたメッシュ毎の窒素、リンおよびカリウムの施肥量それぞれを表す成分別施肥マップ101、102および103を含む。また、報知画面111は、各成分別施肥マップ101、102および103において成分別施肥量が下限値よりも少ないメッシュに対して、その領域を囲む赤色の太枠R1と、当該領域に対して施肥量が不足することを示す吹き出しR2を含む。吹き出しR2には、「不足」という文字が表示される。
【0037】
また、報知画面111は、各成分別施肥マップ101、102および103において成分別施肥量が上限値よりも多いメッシュに対して、その領域を囲む青色の太枠B1と、当該領域に対して施肥量が過剰になることを示す吹き出しB2を含む。吹き出しB2には、「過剰」という文字が表示される。また、報知画面111は、複合肥料の設定変更を行うか否かを特定ユーザに問うための変更ボタン104および非変更ボタン105を含む。
【0038】
上限値よりも多い成分別施肥量および下限値よりも少ない成分別施肥量が共に存在しない場合には、報知部41Fは、
図7に示すような報知画面112を作成して、ユーザ端末2に提供する。報知画面112は、ステップS3で算出されたメッシュ毎の窒素、リンおよびカリウムの施肥量それぞれを表す成分別施肥マップ101A、102Aおよび103Aと、複合肥料の設定変更を行うか否かを特定ユーザに問うための変更ボタン104および非変更ボタン105とを含む。
図7の成分別施肥マップ101A、102Aおよび103Aでは、各成分別施肥量が下限値から上限値までの範囲内に入るように、
図5の成分別施肥マップ101、102および103の内容を若干変更している。
【0039】
ユーザ端末2に提供された報知画面111または報知画面112は、ユーザ端末2のディスプレイ22に表示される。特定ユーザは、これにより、上限値よりも多い成分別施肥量が存在するか否かを認識できるともに上限値よりも多い成分別施肥量が存在する場合には、いずれの成分別施肥量が上限値よりも多いかを認識することができる。また、特定ユーザは、下限値よりも少ない成分別施肥量が存在するか否かを認識できるともに下限値よりも少ない成分別施肥量が存在する場合には、いずれの成分別施肥量が下限値よりも少ないかを認識することができる。
【0040】
特定ユーザは、ディスプレイ22に表示された報知画面111または112に基づいて、複合肥料を設定変更するか否かを判断する。複合肥料を設定変更すると判断した場合には、特定ユーザは変更ボタン104を操作し、複合肥料を設定変更しないと判断した場合には、特定ユーザは非変更ボタン105を操作する。
前記ステップS6の処理後、情報取得部41Aは、変更ボタン104が操作されたか(ステップS7)、非変更ボタン105が操作されたか(ステップS8)を監視する。
【0041】
変更ボタン104が操作された場合には、ステップS7で肯定判定となるので(ステップS7:YES)、情報取得部41Aは、複合肥料情報を特定ユーザに入力させるための複合肥料情報入力画面をユーザ端末2に提供する(ステップS9)。これにより、複合肥料情報入力画面がユーザ端末2のディスプレイ22に表示される。特定ユーザは、複合肥料情報入力画面上で、複合肥料情報を入力した後、所定の操作を行うことにより、複合肥料情報をサーバ3に提供する。
【0042】
情報取得部41Aは、サーバ3に提供された複合肥料情報を取得すると(ステップS10)、ステップS2に戻る。この場合には、ステップS10で取得された複合肥料情報を、最新に取得された複合肥料情報として、ステップS2以降の処理が再度実行される。
報知画面111または112上で特定ユーザが非変更ボタン105を操作した場合には、ステップS8で肯定判定となるので(ステップS8:YES)、報知部41Fは、ステップS1で作成された基肥施肥マップ100をユーザ端末2に提供する(ステップS11)。これにより、基肥施肥マップ100がユーザ端末2のディスプレイ22に表示される。そして、報知部41Fは、今回の処理を終了する。この場合、特定ユーザは、ユーザ端末2に対して所定の操作を行うことにより、基肥施肥マップ100をダウンロードすることができる。
【0043】
過剰判定部41Dは、前記ステップS4において、成分別施肥量が上限値よりも多いと判定した場合に、当該成分別施肥量の上限値に対する過剰量を算出するようにしてもよい。同様に、不足判定部41Eは、前記ステップS5において、成分別施肥量が下限値よりも少ないと判定した場合に、当該成分別施肥量の下限値に対する不足量を算出するようにしてもよい。
【0044】
ステップS4において、過剰量が算出された場合には、ステップS6において、報知部41Fは、過剰量をも報知する。同様に、ステップS5おいて、不足量が算出された場合には、ステップS6において、報知部41Fは、不足量をも報知する。
例えば、ステップS3で算出されたメッシュ毎の窒素、リンおよびカリウムの施肥量が、
図5の成分別施肥マップ101、102および103で表される場合、報知部41Fは、例えば、
図8に示すような報知画面113を作成して、ユーザ端末2に提供する。
【0045】
報知画面113は、ステップS3で算出されたメッシュ毎の窒素、リンおよびカリウムの施肥量を表す成分別施肥マップ101、102および103を含む。また、報知画面113は、各成分別施肥マップ101、102および103において成分別施肥量が下限値よりも少ないメッシュに対して、その領域を囲む赤色の太枠R1と、当該領域に対して施肥量が不足することを示す吹き出しR2を含む。吹き出しR2には、「不足」という文字、当該肥料成分ベースの不足量および複合肥料ベースの不足量が表示される。複合肥料ベースの不足量は、{肥料成分ベースの不足量÷(成分比率/100)}によって算出される。
【0046】
また、報知画面113は、各成分別施肥マップ101、102および103において成分別施肥量が上限値よりも多いメッシュに対して、その領域を囲む青色の太枠B1と、当該領域に対して施肥量が過剰となることを示す吹き出しB2とを含む。吹き出しB2には、「過剰」という文字と、当該肥料成分ベースの過剰量および複合肥料ベースの過剰量が表示される。複合肥料ベースの過剰量は、{肥料成分ベースの過剰量÷(成分比率/100)}によって算出される。
【0047】
また、報知画面113は、複合肥料の設定変更を行うか否かを特定ユーザに問うための変更ボタン104および非変更ボタン105を含む。
次に、追肥作業用の適正施肥支援処理について説明する。追肥作業用の適正施肥支援処理には、追肥マップを作成すべき圃場(以下、「マップ作成対象圃場」という。)に対して既に算出された成分別施肥量を考慮しない追肥作業用の第1適正施肥支援処理と、マップ作成対象圃場に対して既に算出された成分別施肥量を考慮する追肥作業用の第2の適正施肥支援処理とがある。
【0048】
追肥作業用の第1適正施肥支援処理の手順は、
図4に示される適正施肥支援処理と同様な手順である。ただし、追肥マップを作成すべき圃場が、「マップ作成対象圃場」となる。
また、
図4のステップS2においては、施肥マップ作成部41Bは、次のようにして、マップ作成対象圃場に対する追肥マップを作成する。メッシュ情報管理テーブル43C内のマップ作成対象圃場に対応するメッシュ情報記憶領域には、メッシュ毎のNDVIが記憶されているものとする。
【0049】
施肥マップ作成部41Bは、まず、マップ作成対象圃場の圃場IDに基づいて、メッシュ情報管理テーブル43Cからマップ作成対象圃場のメッシュ毎のNDVIを取得する。そして、施肥マップ作成部41Bは、取得したメッシュ毎のNDVIに基づいて、マップ作成対象圃場のメッシュ毎の施肥量を演算する。そして、施肥マップ作成部41Bは、メッシュ毎の施肥量が設定された追肥マップを作成する。
【0050】
ステップS2以外のステップの処理は、前述した処理と同様である。
次に、追肥作業用の第2適正施肥支援処理について説明する。
図9は、CPU41によって行われる追肥作業用の第2適正施肥支援処理の手順を示すフローチャートである。
以下では、説明の便宜上、基肥施肥作業が行われた後に最初に行われる追肥作業のために行われる、追肥作業用の第2適正施肥支援処理について説明する。
【0051】
メッシュ情報管理テーブル43C内のマップ作成対象圃場に対応するメッシュ情報記憶領域には、メッシュ毎のNDVIが記憶されているものとする。また、図示しないが、ハードディスク43には、マップ作成対象圃場に対する基肥施肥作業に使用された基肥施肥マップおよび基肥施肥作業用の適正施肥支援処理において最終的に算出された成分別施肥量(以下、「基肥施肥作業時の成分別施肥量」という。)が記憶されているものとする。
【0052】
特定ユーザは、ある圃場に対する追肥マップをサーバ3から取得したい場合には、ユーザ端末2を操作することにより、サーバ3にアクセスする。そして、特定ユーザは、例えば、サーバ3から提供されるウェブページを利用して、マップ作成対象圃場を示す圃場IDおよび追肥作業に使用される複合肥料に関する情報(以下、「複合肥料情報」という場合がある。)をサーバ3に提供する。複合肥料情報は、複合肥料に含まれる主要に肥料成分である窒素、リンおよびカリウムの成分比率(重量比率%)と、窒素、リンおよびカリウムそれぞれに対するメッシュ単位の上限値および下限値とを含む。
【0053】
ただし、各肥料成分のメッシュ単位の上限値は、基肥施肥作業前から今回の追肥作業後までに施肥されるべき施肥量に対する統合上限値であり、各肥料成分のメッシュ単位の下限値は、基肥施肥作業前から今回の追肥作業後までに施肥されるべき施肥量に対する統合下限値である。
情報取得部41Aは、特定ユーザからユーザ端末2を介して提供される、マップ作成対象圃場の圃場IDおよび複合肥料情報を取得する(ステップS21)。
【0054】
次に、施肥マップ作成部41Bは、マップ作成対象圃場に対する追肥マップを作成する(ステップS22)。
具体的には、施肥マップ作成部41Bは、まず、マップ作成対象圃場の圃場IDに基づいて、メッシュ情報管理テーブル43Cからマップ作成対象圃場のメッシュ毎のNDVIを取得する。そして、施肥マップ作成部41Bは、取得したメッシュ毎のNDVIに基づいて、マップ作成対象圃場のメッシュ毎の施肥量を演算する。施肥マップ作成部41Bは、メッシュ毎の施肥量が設定された追肥マップを作成する。
【0055】
次に、成分別施肥量算出部41Cは、ステップS22で作成された施肥マップと、最新に取得した複合肥料情報に含まれている肥料成分の成分比率とに基づいて、メッシュ毎の各肥料成分の施肥量である成分別施肥量を算出する(ステップS23)。
具体的には、成分別施肥量算出部41Cは、追肥マップと、最新に取得した複合肥料情報に含まれている窒素、リンおよびカリウムの成分比率とに基づいて、メッシュ毎の窒素、リンおよびカリウムの施肥量である成分別施肥量を算出する。
【0056】
例えば、窒素、リンおよびカリウムの成分比率が、それぞれ、10%、12%および8%であるとする。ステップS22で作成された追肥マップが、
図10の追肥マップ200で表される場合、メッシュ毎の窒素、リンおよびカリウムの施肥量は、それぞれ
図10の成分別施肥マップ201、202および203で表される。
次に、成分別施肥量算出部41Cは、基肥施肥作業前から今回の追肥作業後までに施肥される予定の成分別施肥量(以下、「成分別統合施肥量」という。)を算出する(ステップS24)。
【0057】
この実施形態では、成分別施肥量算出部41Cは、前記ステップS23で算出された成分別施肥量と基肥施肥作業時の成分別施肥量との間で、肥料成分およびメッシュが対応する成分別施肥量どうしを加算することによって、成分別統合施肥量を算出する。
基肥施肥作業時の窒素、リンおよびカリウムの施肥量が、それぞれ例えば、
図5の成分別施肥マップ101、102および103で表される場合、基肥施肥作業前から今回の追肥作業後までに施肥される予定の窒素、リンおよびカリウムの統合施肥量は、それぞれ
図11の成分別統合施肥マップ211、212および213で表される。
【0058】
次に、過剰判定部41Dは、過剰判定処理を行う(ステップS25)。具体的には、過剰判定部41Dは、ステップS24で算出された成分別統合施肥量毎に、当該成分別統合施肥量が、対応する肥料成分の統合上限値よりも多いか否かを判定する。各肥料成分の統合上限値は、情報取得部41Aが最新に取得した複合肥料情報に含まれている窒素、リンおよびカリウムそれぞれのメッシュ単位の統合上限値である。
【0059】
次に、不足判定部41Eは、不足判定処理を行う(ステップS26)。具体的には、不足判定部41Eは、ステップS24で算出された成分別統合施肥量毎に、当該成分別統合施肥量が、対応する肥料成分の統合下限値よりも少ないか否かを判定する。各肥料成分の統合下限値は、情報取得部41Aが最新に取得した複合肥料情報に含まれている窒素、リンおよびカリウムそれぞれのメッシュ単位の統合下限値である。
【0060】
例えば、窒素の統合下限値が1.5kgで統合上限値が2.0kgであり、リンの統合下限値が2.0kgで統合上限値が2.6kgであり、カリウムの統合下限値が1.2kgで統合上限値が1.7kgであるとする。また、ステップS24で算出されたメッシュ毎の窒素、リンおよびカリウムの統合施肥量が、
図11の成分別統合施肥マップ211、212および213で表されるとする。
【0061】
この場合、過剰判定部41Dは、メッシュ毎の窒素の統合施肥量を表す成分別統合施肥マップ211内の2.10kgが、窒素の統合上限値の2.0kgよりも多いと判定する。また、不足判定部41Eは、メッシュ毎のリンの統合施肥量を表す成分別統合施肥マップ212内の1.80kgが、リンの統合下限値の2.0kgよりも少ないと判定する。
次に、報知部41Fは、過剰判定部41Dおよび不足判定部41Eの判定結果を報知する(ステップS27)。
【0062】
統合上限値よりも多い成分別統合施肥量が存在する場合には、報知部41Fは、当該成分別統合施肥量が統合上限値よりも多い旨を特定ユーザに報知する。また、統合下限値よりも少ない成分別統合施肥量が存在する場合には、報知部41Fは、当該成分別統合施肥量が統合下限値よりも少ない旨を特定ユーザに報知する。
例えば、ステップS24で算出されたメッシュ毎の窒素、リンおよびカリウムの統合施肥量が、
図11の成分別統合施肥マップ211、212および213で表される場合、報知部41Fは、
図12に示すような報知画面221を作成して、ユーザ端末2に提供する。
【0063】
報知画面221は、ステップS24で算出されたメッシュ毎の窒素、リンおよびカリウムの統合施肥量を表す成分別統合施肥マップ211、212および213を含む。また、報知画面221は、各成分別統合施肥マップ211、212および213において成分別統合施肥量が統合下限値よりも少ないメッシュに対して、その領域を囲む赤色の太枠R1と、当該領域に対して施肥量が不足することを示す吹き出しR2を含む。吹き出しR2には、「不足」という文字が表示される。
【0064】
また、報知画面221は、各成分別統合施肥マップ211、212および213において成分別統合施肥量が統合上限値よりも多いメッシュに対して、その領域を囲む青色の太枠B1と、当該領域に対して施肥量が過剰になることを示す吹き出しB2を含む。吹き出しB2には、「過剰」という文字が表示される。また、報知画面221は、複合肥料の設定変更を行うか否かを特定ユーザに問うための変更ボタン214および非変更ボタン215を含む。
【0065】
統合上限値よりも多い成分別統合施肥量および統合下限値よりも少ない成分別統合施肥量が共に存在しない場合には、報知部41Fは、
図13に示すような報知画面222を作成して、ユーザ端末2に提供する。報知画面222は、ステップS14で算出されたメッシュ毎の窒素、リンおよびカリウムの統合施肥量それぞれを表す成分別統合施肥マップ211A、212Aおよび213Aと、複合肥料の設定変更を行うか否かを特定ユーザに問うための変更ボタン214および非変更ボタン215とを含む。
図13の成分別統合施肥マップ211A、212Aおよび213Aでは、各成分別統合施肥量が統合下限値から統合上限値までの範囲内に入るように、
図11の成分別統合施肥マップ211、212および213の内容を若干変更している。
【0066】
ユーザ端末2に提供された報知画面221または報知画面222は、ユーザ端末2のディスプレイ22に表示される。特定ユーザは、これにより、統合上限値よりも多い成分別統合施肥量が存在するか否かを認識できるともに統合上限値よりも多い成分別統合施肥量が存在する場合には、いずれの成分別統合施肥量が統合上限値よりも多いかを認識することができる。また、特定ユーザは、統合下限値よりも少ない成分別統合施肥量が存在するか否かを認識できるともに統合下限値よりも少ない成分別統合施肥量が存在する場合には、いずれの成分別統合施肥量が統合下限値よりも少ないかを認識することができる。
【0067】
特定ユーザは、ディスプレイ22に表示された報知画面221または222に基づいて、複合肥料を設定変更するか否かを判断する。複合肥料を設定変更すると判断した場合には、特定ユーザは変更ボタン214を操作し、複合肥料を設定変更しないと判断した場合には、特定ユーザは非変更ボタン215を操作する。
前記ステップS27の処理後、情報取得部41Aは、変更ボタン214が操作されたか(ステップS28)、非変更ボタン215が操作されたか(ステップS29)を監視する。
【0068】
変更ボタン214が操作された場合には、ステップS28で肯定判定となるので(ステップS28:YES)、情報取得部41Aは、複合肥料情報を特定ユーザに入力させるための複合肥料情報入力画面をユーザ端末2に提供する(ステップS30)。これにより、複合肥料情報入力画面がユーザ端末2のディスプレイ22に表示される。特定ユーザは、複合肥料情報入力画面上で、複合肥料情報を入力した後、所定の操作を行うことにより、複合肥料情報をサーバ3に提供する。
【0069】
情報取得部41Aは、サーバ3に提供された複合肥料情報を取得すると(ステップS31)、ステップS22に戻る。この場合には、ステップS31で取得された複合肥料情報を、最新に取得された複合肥料情報として、ステップS22以降の処理が再度実行される。
報知画面221または222上で特定ユーザが非変更ボタン215を操作した場合には、ステップS29で肯定判定となるので(ステップS19:YES)、報知部41Fは、ステップS21で作成された追肥マップ200をユーザ端末2に提供する(ステップS32)。そして、報知部41Fは、今回の処理を終了する。この場合、特定ユーザは、ユーザ端末2に対して所定の操作を行うことにより、追肥マップ200をダウンロードすることができる。
【0070】
過剰判定部41Dは、前記ステップS25において、成分別統合施肥量が統合上限値よりも多いと判定した場合に、当該成分別統合施肥量の統合上限値に対する過剰量を算出するようにしてもよい。同様に、不足判定部41Eは、前記ステップS26において、成分別統合施肥量が統合下限値よりも少ないと判定した場合に、当該成分別統合施肥量の統合下限値に対する不足量を算出するようにしてもよい。
【0071】
ステップS25において、過剰量が算出された場合には、ステップS27において、報知部41Fは、過剰量をも報知する。同様に、ステップS26おいて、不足量が算出された場合には、ステップS27において、報知部41Fは、不足量をも報知する。
例えば、ステップS24で算出されたメッシュ毎の窒素、リンおよびカリウムの統合施肥量が、
図11の成分別統合施肥マップ211、212および213で表される場合、報知部41Fは、例えは、
図14に示すような報知画面223を作成して、ユーザ端末2に提供する。
【0072】
報知画面223は、ステップS24で算出されたメッシュ毎の窒素、リンおよびカリウムの統合施肥量を表す成分別統合施肥マップ211、212および213を含む。また、報知画面223は、各成分別統合施肥マップ211、212および213において成分別統合施肥量が統合下限値よりも少ないメッシュに対して、その領域を囲む赤色の太枠R1と、当該領域に対して統合施肥量が不足することを示す吹き出しR2とを含む。吹き出しR2には、「不足」という文字、当該肥料成分ベースの不足量および複合肥料ベースの不足量が表示される。複合肥料ベースの不足量は、{肥料成分ベースの不足量÷(成分比率/100)}によって算出される。
【0073】
また、報知画面223は、各成分別統合施肥マップ211、212および213において成分別統合施肥量が上限値よりも多いメッシュに対して、その領域を囲む青色の太枠B1と、当該領域に対して施肥量が過剰になることを示す吹き出しB2とを含む。吹き出しB2には、「過剰」という文字と、当該肥料成分ベースの過剰量および複合肥料ベースの過剰量が表示される。複合肥料ベースの過剰量は、{肥料成分ベースの過剰量÷(成分比率/100)}によって算出される。また、報知画面223は、複合肥料の設定変更を行うか否かを特定ユーザに問うための変更ボタン214および非変更ボタン215を含む。
【0074】
前述の実施形態では、特定ユーザは、施肥マップを使用して施肥作業(基肥施肥作業、追肥作業を含む)を行う前に、特定ユーザが設定する複合肥料に対して、各成分別施肥量(メッシュ毎の各成分別施肥量を意味する)に過剰が生じるか否か、不足が生じるか否かを認識できる。このため、特定ユーザは、適正な複合肥料を選択しやすくなる。
また、追肥作業用の第2適正施肥支援処理が実行された場合には、特定ユーザは、施肥マップを使用して追肥作業を行う前に、特定ユーザが設定する複合肥料に対して、各成分別施肥量(メッシュ毎の各成分別施肥量を意味する)に過剰が生じたり、不足が生じたりするのを認識できる。このため、特定ユーザは、適正な複合肥料を選択しやすくなる。
【0075】
前述の実施形態では、CPU41は、過剰判定部41Dと不足判定部41Eとを含んでいるが、CPU41は、過剰判定部41Dと不足判定部41Eのうちいずれか一方のみを含んでいてもよい。言い換えれば、
図4のステップS4およびステップS5のうちのいずれか一方を省略してもよい。また、
図8のステップS25およびステップS26のうちのいずれか一方を省略してもよい。
【0076】
前述の実施形態では、追肥マップの作成に使用される生育状況情報はNDVIおよび窒素吸収量(葉色と植被率の乗算値)であるが、生育状況情報は、作物の生育に関する情報であれば、これらの情報以外の情報であってもよい。生育状況情報は、例えば、植被率情報や、窒素吸収量(葉色と植被率の乗算値)であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 適正施肥支援システム
2 ユーザ端末
3 適正施肥支援サーバ
4 通信網
21 制御装置(PC本体)
22 ディスプレイ
23 操作機器
31 制御装置(PC本体)
32 ディスプレイ
33 操作機器
41 CPU
41A 情報取得部
41B 施肥マップ作成部
41C 成分別施肥量算出部
41D 過剰判定部
41E 不足判定部
41F 報知部
42 メモリ
43 ハードディスク
43A 適正施肥支援プログラム
43B 圃場情報管理テーブル
43C メッシュ情報管理テーブル
100,200 施肥マップ
101,102,103 成分別施肥マップ
104 変更ボタン
105 非変更ボタン
111,112,113 報知画面
201,202,203 成分別施肥マップ
211,212,213 成分別統合施肥マップ
221,222,223 報知画面
224 変更ボタン
225 非変更ボタン