(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】媒体搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/06 20060101AFI20221206BHJP
G07D 11/16 20190101ALI20221206BHJP
【FI】
B65H5/06 D
G07D11/16
(21)【出願番号】P 2019168961
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000237639
【氏名又は名称】富士通フロンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】菅井 豊
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0245715(US,A1)
【文献】特開平11-228004(JP,A)
【文献】特開2019-131349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/06
G07D 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する従動ローラと、
前記従動ローラの回転中心軸方向に延び、当該従動ローラを回転可能に支持する一対のコイルスプリングとを備え、
前記従動ローラには、前記一対のコイルスプリングの一部が挿入される貫通孔が形成され、
前記貫通孔は、前記従動ローラが前記媒体によって径方向に押圧された場合に、変形する前記一対のコイルスプリングとの接触面積が拡がるように、前記回転中心軸方向における中心から両端側にかけて径が漸増するテーパ形状を呈し、
前記一対のコイルスプリングは、巻き方向が互いに反対方向である
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記一対のコイルスプリングは、前記回転中心軸方向に圧縮された状態で配置されている
ことを特徴とする請求項
1記載の媒体搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を搬送する媒体搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙搬送装置において、斜め送りが生じた用紙に追従して、対向するテーパローラ部材に沿って軸方向へ移動可能なローラ部材が配置され、このローラ部材の移動を、ローラ部材の軸に巻き付けられたスプリングによって規制する用紙搬送装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
なお、円筒状ローラの内部に収容されるコイルばねであるが、円筒状ローラを外側に押圧するコイルばねを有する画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-115767号公報
【文献】特許第4103988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、現金自動預け払い機(ATM:Automated Teller Machine)、公営競技用投票機、通帳発行プリンタなどでは、紙幣、投票券、通帳などの媒体が、駆動ローラ及び従動ローラ(ピンチローラ)からなる一対のローラによって搬送される。
【0006】
駆動ローラ及び従動ローラは、互いに力(ピンチ圧)が作用する構造となっており、このピンチ圧及び媒体の摩擦力によって媒体を搬送する。
【0007】
上記ピンチ圧を得るために、従動ローラの回転中心軸方向に延びるコイルスプリングによって従動ローラを回転可能に支持する構成を採用することが考えられる。この構成では、従動ローラの回転軸部材を省略することができるため、媒体搬送装置の構成を簡素化することができる。
【0008】
しかしながら、コイルスプリングによって従動ローラを回転可能に支持すると、コイルスプリングの巻き方向(線材が延びる方向)が媒体の搬送方向に対して傾くことに起因して、従動ローラに回転中心軸方向(スラスト方向)の力が加わり、従動ローラが傾く。これにより、媒体の斜行、ジャム、折れ、欠損などの搬送不良が発生し得る。
【0009】
本発明の目的は、このような事情に鑑みてなされたものであり、従動ローラを回転可能に支持するコイルスプリングを用いた簡素な構成で、媒体の搬送不良を抑制することができる媒体搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様では、媒体搬送装置は、媒体を搬送する従動ローラと、前記従動ローラの回転中心軸方向に延び、当該従動ローラを回転可能に支持する一対のコイルスプリングとを備え、前記一対のコイルスプリングは、巻き方向が互いに反対方向である。
【発明の効果】
【0011】
前記態様によれば、従動ローラを回転可能に支持するコイルスプリングを用いた簡素な構成で、媒体の搬送不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図7】比較例におけるコイルスプリングを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る媒体搬送装置について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、紙幣取扱装置1を示す斜視図である。
図2は、紙幣取扱装置1のトップモジュールM1を示す斜視図である。
【0015】
なお、
図1及び
図2、並びに後述する
図3~
図7には、説明の便宜上、前後方向、左右方向、及び上下方向を図示する。例えば、前後方向及び左右方向は水平方向であり、上下方向は鉛直方向である。
【0016】
図1に示すように、紙幣取扱装置1は、上から順に、トップモジュールM1、リサイクルモジュールM2,M3、補充モジュールM4、回収モジュールM5、及び搬送モジュールM6を備える。これらのモジュールM1~M6は、上下方向に積層されるように連結され、
図1に2点鎖線(想像線)で示す紙幣B(媒体の一例)を他のモジュールに受け渡すように搬送することが可能である。
【0017】
紙幣取扱装置1は、媒体を搬送する媒体搬送装置の一例である。紙幣取扱装置1は、例えば、紙幣Bの入出金を行う。そのため、紙幣取扱装置1は、紙幣入出金機ともいえる。なお、媒体としては、紙幣Bに限られず、帳票、伝票などの他の紙葉類(シート状の媒体)であってもよい。また、媒体としては、通帳などの複数枚の紙葉類分の厚さを有するものであってもよい。
【0018】
図2に示すトップモジュールM1には、紙幣Bを出金するための出金部M1aと、紙幣Bを入金するための入金部M1bとが前方に突出するように設けられている。
【0019】
トップモジュールM1の内部(
図2に示すA部)には、
図3及び
図4に示す紙幣搬送モジュール10が配置されている。また、トップモジュールM1の内部には、紙幣を鑑別する鑑別部なども配置されている。
【0020】
紙幣搬送モジュール10及びトップモジュールM1のそれぞれは、紙幣取扱装置1と同様に、媒体を搬送する媒体搬送装置の一例といえる。なお、媒体搬送装置としては、媒体を搬送するものであればよく、一例にすぎないが、現金自動預け払い機(ATM)、紙幣出金機、紙幣入金機、通帳発行プリンタ、公営競技用投票機などであってもよいし、或いは、これらの一部として配置されるモジュールなどであってもよい。
【0021】
図1に示すリサイクルモジュールM2,M3の内部における前部及び後部のそれぞれには、例えば紙幣Bをフィルムで挟んで巻き付けて収容する図示しないリサイクル紙幣収容部が配置されている。このリサイクル紙幣収容部は、フィルムを巻き出すことによって、フィルムで挟んで巻き付けられた紙幣Bを排出することが可能である。このように、リサイクルモジュールM2,M3においては、紙幣Bがリサイクル可能となっている。
【0022】
補充モジュールM4は、出金に利用される紙幣Bを収容する。
回収モジュールM5は、入金された紙幣Bのうちリサイクルされない紙幣Bを収容する。
【0023】
搬送モジュールM6は、例えば、紙幣Bを紙幣取扱装置1の下方などの所定の方向に搬送する。一例ではあるが、紙幣取扱装置1が、金庫内の仕切りを挟んだ上下のスペースのうち上部のスペースに配置される場合、搬送モジュールM6は、仕切りの開口部から金庫内の下部のスペースへ向かうように紙幣Bを紙幣取扱装置1の下方に搬送する。
【0024】
なお、上述の紙幣取扱装置1の構成はあくまで一例であり、媒体搬送装置として機能する紙幣取扱装置1、トップモジュールM1、又は紙幣搬送モジュール10は、後述する従動ローラ11及び一対のコイルスプリング12,13を備えるものであればよい。
【0025】
図3は、紙幣搬送モジュール10を示す斜視図である。
図4は、紙幣搬送モジュール10を示す平面図である。
【0026】
【0027】
図3及び
図4に示す紙幣搬送モジュール10は、従動ローラ11,15と、一対のコイルスプリング12,13と、フレーム14と、搬送ベルト16と、
図5に2点鎖線(想像線)で示す駆動ローラ17,18とを備える。
【0028】
従動ローラ11,15は、
図5に示す駆動ローラ17,18(搬送ベルト16)の回転に追従して回転し、駆動ローラ17,18(搬送ベルト16)との間に紙幣Bを挟み込んで搬送する。なお、ここでは後述する一対のコイルスプリング12,13によって回転可能に支持される一方の従動ローラ11を例に説明するが、他方の従動ローラ15も従動ローラ11と同様に一対のコイルスプリングによって回転可能に支持されるとよい。
【0029】
図6に示すように、従動ローラ11には、一対のコイルスプリング12,13の一部が挿入される貫通孔11aが形成されている。この貫通孔11aは、回転中心軸方向(左右方向)における中心から両端側にかけて径が漸増するテーパ形状を呈する。すなわち、貫通孔11aは、回転中心軸方向における中心の径R1よりも回転中心軸方向における両端の径R2が長い(R1<R2)。なお、貫通孔11aは、回転中心軸方向(左右方向)に直交する断面が円形状を呈する。また、貫通孔11aの回転中心軸方向における中心の径R1は、例えば、一対のコイルスプリング12,13の外径とほぼ同一である。
【0030】
一対のコイルスプリング12,13は、従動ローラ11の回転中心軸方向(左右方向)に延び、この従動ローラ11を回転可能に支持する。これにより、一対のコイルスプリング12,13は、従動ローラ11の回転中心軸として機能する。そのため、紙幣搬送モジュール10には、一対のコイルスプリング12,13以外に、従動ローラ11の回転中心軸方向に延びて従動ローラ11を支持する回転軸部材が配置されていない。
【0031】
一対のコイルスプリング12,13は、従動ローラ11の回転中心軸方向(左右方向)に圧縮された状態で、フレーム14のスプリング収容部14a,14bに収容されている。一対のコイルスプリング12,13は、フレーム14のスプリング収容部14a,14bに収容されている状態で、コイルスプリング12,13の螺旋状の線材間に隙間がないように(ほぼ隙間がないように)配置されているとよい。また、一対のコイルスプリング12,13は、互いに押し合うように接触しているとよい。なお、従動ローラ11に貫通孔11aが形成されていない場合、一対のコイルスプリング12,13は、互いに接触せずに従動ローラ11を挟み込むように配置されていてもよい。また、一対のコイルスプリング12,13が一体に形成されていてもよい。
【0032】
一対のコイルスプリング12,13は、フレーム14から取り出された状態の自由長では、例えば、軸方向のピッチが線材の径の2倍以上である。そのため、一対のコイルスプリング12,13の自由長における軸方向の長さの和は、フレーム14のスプリング収容部14a,14bにおける左右方向(従動ローラ11の回転中心軸方向)の長さよりも長い。
【0033】
一方のコイルスプリング12の巻き方向D2と、他方のコイルスプリング13の巻き方向D3とは、互いに反対方向である。例えば、左方から右方を見て、一方のコイルスプリング12の巻き方向D2は反時計回りであり、他方のコイルスプリング13の巻き方向D3は時計回りである。なお、巻き方向D2,D3は、一対のコイルスプリング12,13の線材が延びる方向である。
【0034】
一対のコイルスプリング12,13は、従動ローラ11の回転中心軸方向(左右方向)における中心を挟んで対称に配置されているといえる。また、巻き方向D2,D3は、紙幣Bの搬送方向D1(前後方向)に対して対称といえる。
【0035】
図7は、比較例におけるコイルスプリング112を示す断面図である。
本比較例では、フレーム114のスプリング収容部114aに収容されるのは単一のコイルスプリング112であり、このコイルスプリング112は、従動ローラ111の貫通孔111aを貫通するように配置されている。この貫通孔111aの径は、従動ローラ111の中心軸方向(左右方向)の位置によらず同一である。
【0036】
コイルスプリング112の巻き方向D4は、全体に亘って一定であり、紙幣Bの搬送方向D1に対して傾いている。例えば、左方から右方を見て、コイルスプリング112の巻き方向D4は、反時計回りである。
【0037】
実施の形態の説明に戻り、
図3及び
図4に示すように、フレーム14は、紙幣Bの搬送経路の上方において前後方向及び左右方向に拡がるように配置され、上述のスプリング収容部14a,14bを有する。また、フレーム14は、従動ローラ11,15などを収容する。
【0038】
図5に示すように、搬送ベルト16は、駆動ローラ17,18など(他のローラの図示は省略)に掛け渡された無端帯状の部材であり、従動ローラ11,15との間に紙幣Bを挟み込む。
【0039】
駆動ローラ17,18は、図示しない駆動手段から動力を伝達されて回転する。これに伴い、上述の搬送ベルト16及び従動ローラ11,15が回転する。
【0040】
以上説明した本実施の形態では、媒体搬送装置として機能する、紙幣搬送モジュール10、トップモジュールM1、又は紙幣取扱装置1は、媒体(例えば紙幣B)を搬送する従動ローラ11と、この従動ローラ11の回転中心軸方向(左右方向)に延び、この従動ローラ11を回転可能に支持する一対のコイルスプリング12,13とを備える。この一対のコイルスプリング12,13は、巻き方向D2,D3が互いに反対方向である。
【0041】
そのため、一対のコイルスプリング12,13によって従動ローラ11を回転可能に支持することで、従動ローラ11の回転軸部材を省略し、構成を簡素化することができる。また、一対のコイルスプリング12,13の巻き方向D2,D3が互いに反対方向であるため、
図7に示す比較例のようにコイルスプリング112の全体に亘って巻き方向D4が同一方向である場合と比較して、巻き方向が媒体の搬送方向D1に対して傾くことに起因して従動ローラ11に回転中心軸方向(スラスト方向)の力が加わるのを防止することができる。したがって、従動ローラ11が傾くのを抑制することができる。これにより、媒体の斜行、ジャム、折れ、欠損などの搬送不良を抑制することができる。よって、本実施の形態によれば、従動ローラ11を回転可能に支持する一対のコイルスプリング12,13を用いた簡素な構成で、媒体の搬送不良を抑制することができる。
【0042】
また、本実施の形態では、従動ローラ11には、一対のコイルスプリング12,13の一部が挿入される貫通孔11aが形成されている。この貫通孔11aは、回転中心軸方向(左右方向)における中心から両端側にかけて径R1,R2が漸増するテーパ形状を呈する。
【0043】
ところで、
図7に示す比較例のように従動ローラ111の貫通孔111aの径が一定である場合、従動ローラ111が媒体によって上方(径方向)に押圧された場合に、貫通孔111aの両端に接触する部分でコイルスプリング112に繰り返し集中荷重が発生する。一方、本実施の形態では、貫通孔11aが、回転中心軸方向(左右方向)における中心から両端側にかけて径R1,R2が漸増するテーパ形状を呈する。そのため、従動ローラ11が媒体(駆動ローラ17)によって上方(径方向)に押圧された場合に、一対のコイルスプリング12,13が貫通孔11aのテーパ形状に沿って変形することで、貫通孔11aとの接触面積が拡がる。したがって、一対のコイルスプリング12,13と従動ローラ11との接触部に応力が集中して、繰り返しの集中荷重によって一対のコイルスプリング12,13がへたったり、従動ローラ11が破損したりするのを防止することができる。そのため、一対のコイルスプリング12,13及び従動ローラ11の部品寿命の長寿化を図ることができる。なお、貫通孔11aの中心の径R1は、コイルスプリング12,13の径よりも長くてもよい。また、貫通孔11aの中心(径R1)は、回転中心軸方向(左右方向)に径(R1)が一定の部分が連続していてもよい。
【0044】
また、本実施の形態では、一対のコイルスプリング12,13は、従動ローラ11の回転中心軸方向(左右方向)に圧縮された状態で配置されている。
【0045】
これにより、従動ローラ11が媒体(駆動ローラ17)によって上方(径方向)に押圧されたときに、一対のコイルスプリング12,13が自由長で配置されて螺旋状の線材間の隙間が大きい場合と比較して、圧縮により一対のコイルスプリング12,13の回転時のがたつきが抑えられる。そのため、従動ローラ11と一対のコイルスプリング12,13との接触部における従動ローラ11の破損を防止することができる。また、一対のコイルスプリング12,13の特定部位への応力の集中によって、一対のコイルスプリング12,13がへたるのを防止することができる。したがって、一対のコイルスプリング12,13及び従動ローラ11の部品寿命の長寿化を図ることもできる。
【0046】
なお、本発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でのその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素を適宜組み合わせてもよい。このように、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において発明の種々の変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 紙幣取扱装置
10 紙幣搬送モジュール
11 従動ローラ
11a 貫通孔
12,13 コイルスプリング
14 フレーム
14a,14b スプリング収容部
15 従動ローラ
16 搬送ベルト
17,18 駆動ローラ
B 紙幣
D1 搬送方向
D2,D3 巻き方向
M1 トップモジュール
M1a 出金部
M1b 入金部
M2,M3 リサイクルモジュール
M4 補充モジュール
M5 回収モジュール
M6 搬送モジュール
R1,R2 径(貫通孔11aの径)