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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】貨物車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 8/00 20060101AFI20221206BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20221206BHJP
   B60K 15/035 20060101ALI20221206BHJP
   B60K 15/063 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B60K8/00
B60K11/04 H
B60K11/04 K
B60K15/035 Z
B60K15/063 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019200652
(22)【出願日】2019-11-05
(65)【公開番号】P2021075076
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沢田 豊
(72)【発明者】
【氏名】横山 幸秀
(72)【発明者】
【氏名】八神 裕一
【審査官】草野 顕子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0339604(US,A1)
【文献】再公表特許第2014/123040(JP,A1)
【文献】特開2007-112333(JP,A)
【文献】特開2009-018803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 8/00
B60K 11/04
B60K 15/035
B60K 15/063
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が搭乗する客室の後方に、貨物が積載される積載スペースを有する貨物車両であって、
前記客室の下方に搭載され、電力源として機能する燃料電池と、
前記客室と前記積載スペースとの間に配置された収納部と、
前記収納部内に配置され、前記燃料電池に供給される燃料ガスを貯蔵するタンクと、
前記収納部内に設置され、大気と、前記燃料電池に供給される冷媒との間の熱交換をおこなうラジエータと、
前記タンクからの前記燃料ガスの漏洩を検出する漏洩検出部と、を備え、
前記ラジエータは、駆動モータによって回転し、前記収納部の内部と外部との間における大気の流通を制御するファンを有し、
前記漏洩検出部によって前記燃料ガスの漏洩が検出されていないときには、前記収納部の外部から内部へと大気を取り入れるように前記ファンを回転させ、前記漏洩検出部によって前記燃料ガスの漏洩が検出されているときには、前記収納部の内部から外部へと大気を排出させるように前記ファンを回転させる、貨物車両。
【請求項2】
乗員が搭乗する客室の後方に、貨物が積載される積載スペースを有する貨物車両であって、
前記客室の下方に搭載され、電力源として機能する燃料電池と、
前記客室と前記積載スペースとの間に配置された収納部と、
前記収納部内に配置され、前記燃料電池に供給される燃料ガスを貯蔵するタンクと、
前記収納部内に設置され、大気と、前記燃料電池に供給される冷媒との間の熱交換をおこなうラジエータと、
前記タンクの表面温度を検出する温度センサと、を備え、
前記ラジエータは、駆動モータによって回転し、前記収納部の内部と外部との間における大気の流通を制御するファンを有し、
前記温度センサによって検出される前記タンクの表面温度が予め定められた閾値温度以上の場合には、前記収納部の外部から内部へと大気を取り入れるように前記ファンを回転させ、前記タンクの表面温度が前記閾値温度より低い場合には、前記収納部の内部から外部へと大気を排出するように前記ファンを回転させる、貨物車両。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の貨物車両であって、
前記ラジエータは、前記タンクの後方側に設けられている、貨物車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池を搭載する貨物車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、通常、発熱源の温度調整のための冷媒と大気との熱交換をおこなうラジエータが設けられる。例えば、下記特許文献1に開示されているトラックには、エンジンの冷却液と大気とを熱交換させるラジエータがエンジンルームに設けられている。ラジエータには、そうした内燃機関を搭載する車両で用いられるもの以外にも、燃料電池を電力源として搭載する燃料電池車両で用いられるものもある。燃料電池車両では、ラジエータは、燃料電池に供給される冷媒と大気との熱交換に用いられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-248437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に開示されているトラックのような貨物車両では、通常、貨物の積載スペースを大きくとるために、一般の普通乗用車より、駆動系の機器を搭載するための場所が限られる。そうした貨物車両に、燃料電池を電力源として搭載する場合には、燃料電池の他に、燃料電池に供給される燃料ガスを貯蔵するタンクや上述したラジエータなど、燃料電池システムを構成する機器を、その限られた場所を利用して効率よく搭載する必要がある。特に、ラジエータについては、そうした限られた場所の中でも冷媒との熱交換効率を確保できる場所に設置することが求められている。このように、燃料電池車両として構成される貨物車両においては、燃料電池システムを構成する機器の搭載場所について依然として改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の技術は、以下の形態として実現することが可能である。
本開示の一形態によれば、乗員が搭乗する客室の後方に、貨物が積載される積載スペースを有する貨物車両が提供される。この貨物車両は、前記客室の下方に搭載され、電力源として機能する燃料電池と、前記客室と前記積載スペースとの間に配置された収納部と、前記収納部内に配置され、前記燃料電池に供給される燃料ガスを貯蔵するタンクと、前記収納部内に設置され、大気と、前記燃料電池に供給される冷媒との間の熱交換をおこなうラジエータと、前記タンクからの前記燃料ガスの漏洩を検出する漏洩検出部と、を備え、前記ラジエータは、駆動モータによって回転し、前記収納部の内部と外部との間における大気の流通を制御するファンを有し、前記漏洩検出部によって前記燃料ガスの漏洩が検出されていないときには、前記収納部の外部から内部へと大気を取り入れるように前記ファンを回転させ、前記漏洩検出部によって前記燃料ガスの漏洩が検出されているときには、前記収納部の内部から外部へと大気を排出させるように前記ファンを回転させる。
本開示の他の形態によれば、乗員が搭乗する客室の後方に、貨物が積載される積載スペースを有する貨物車両が提供される。この貨物車両は、前記客室の下方に搭載され、電力源として機能する燃料電池と、前記客室と前記積載スペースとの間に配置された収納部と、前記収納部内に配置され、前記燃料電池に供給される燃料ガスを貯蔵するタンクと、前記収納部内に設置され、大気と、前記燃料電池に供給される冷媒との間の熱交換をおこなうラジエータと、前記タンクの表面温度を検出する温度センサと、を備え、前記ラジエータは、駆動モータによって回転し、前記収納部の内部と外部との間における大気の流通を制御するファンを有し、
前記温度センサによって検出される前記タンクの表面温度が予め定められた閾値温度以上の場合には、前記収納部の外部から内部へと大気を取り入れるように前記ファンを回転させ、前記タンクの表面温度が前記閾値温度より低い場合には、前記収納部の内部から外部へと大気を排出するように前記ファンを回転させる。
【0006】
(1)一の形態は、例えば、乗員が搭乗する客室の後方に、貨物が積載される積載スペースを有する貨物車両であって、前記客室の下方に搭載され、電力源として機能する燃料電池と、前記客室と前記積載スペースとの間に配置された収納部と、前記収納部内に配置され、前記燃料電池に供給される燃料ガスを貯蔵するタンクと、前記収納部内に設置され、大気と、前記燃料電池に供給される冷媒との間の熱交換をおこなうラジエータと、を備える、貨物車両として提供される。
この形態の貨物車両によれば、客室と積載スペースの間における寸法の制限が少ない比較的自由度の高い空間に、タンクを収納する収納部が設けられ、その収納部にラジエータが設けられる。これによって、貨物車両における客室下方の空間を、タンクとラジエータ以外の燃料電池システム用機器の配置に利用でき、貨物車両内における限られた空間の有効活用が可能になる。また、客室と積載スペースの間に設けられた収納部であれば、大気を取り込みやすく、ラジエータにおける冷媒と大気の熱交換効率を高めることができる。また、収納部にラジエータを通じて大気が流通できるため、収納部内で漏洩した燃料ガスの拡散を促進することができる。その他に、ラジエータと燃料電池との距離が過度に長くなることを抑制できるため、ラジエータと燃料電池を接続する冷媒用の配管の配管長が長くなることを抑制でき、当該配管の破損・劣化を抑制できる。
(2)上記形態の貨物車両において、前記ラジエータは、前記タンクの後方側に設けられてよい。
この形態の貨物車両によれば、ラジエータを収納部におけるタンクの側方に設ける場合よりも、貨物車両が幅方向に大型化することを抑制できる。また、ラジエータを客室から離れた位置に設けることができるため、ラジエータから客室へと冷媒の熱が伝達することを抑制できる。さらに、収納部内で漏洩した燃料ガスが、ラジエータを通じて収納部より後方へと流出するため、収納部前方の客室へと流入することを抑制できる。
(3)上記形態の貨物車両は、さらに、前記タンクからの前記燃料ガスの漏洩を検出する漏洩検出部を備え、前記ラジエータは、駆動モータによって回転し、前記収納部の内部と外部との間における大気の流通を制御するファンを有し、前記漏洩検出部によって前記燃料ガスの漏洩が検出されていないときには、前記収納部の外部から内部へと大気を取り入れるように前記ファンを回転させ、前記漏洩検出部によって前記燃料ガスの漏洩が検出されているときには、前記収納部の内部から外部へと大気を排出させるように前記ファンを回転させてよい。
この形態の貨物車両によれば、例え走行風が生じていない状態でも、ファンの駆動により、ラジエータにおける大気と冷媒の熱交換効率を高めることができる。また、収納部内での燃料ガスの漏洩が検出された場合には、収納部からの燃料ガスの流出が促進されるように、ファンが駆動されるため、収納部内に燃料ガスが滞留してしまうことを抑制できる。
(4)上記形態の貨物車両は、さらに、前記タンクの表面温度を検出する温度センサを備え、前記ラジエータは、駆動モータによって回転し、前記収納部の内部と外部との間における大気の流通を制御するファンを有し、前記温度センサによって検出される前記タンクの表面温度が予め定められた閾値温度以上の場合には、前記収納部の外部から内部へと大気を取り入れるように前記ファンを回転させ、前記タンクの表面温度が前記閾値温度より低い場合には、前記収納部の内部から外部へと大気を排出するように前記ファンを回転させてよい。
この形態の貨物車両によれば、タンクの表面温度が高いときには、収納部に大気を取り込む方向にファンが回転するため、タンクと大気との間の熱交換が促進され、タンクの温度が許容温度以上になることを抑制でできる。また、タンクの表面温度が低いときには、収納部から大気を排出する方向にファンが回転するため、タンクと熱交換して低温下された大気をラジエータへと導くことができ、ラジエータにおける冷媒の冷却効率を高めることができる。
本開示の技術は、貨物車両以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、燃料電池用ラジエータを備えるタンクの収納部、燃料電池車両におけるタンクとラジエータの搭載構造等の形態で実現することができる。また、燃料電池車両におけるラジエータのファンの制御装置や制御方法、その制御方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態としても実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の車両を示す概略側面図。
図2A】トラクターヘッドの概略側面図。
図2B】トラクターヘッドの概略背面図。
図3】第2実施形態におけるファンの駆動制御フローを示す説明図。
図4】第3実施形態におけるファンの駆動制御フローを示す説明図。
図5】第4実施形態におけるトラクターヘッドの概略側面図。
図6】第5実施形態におけるトラクターヘッドの概略側面図。
図7】第6実施形態におけるトラクターヘッドの概略背面図。
図8】第7実施形態におけるトラクターヘッドの概略側面図。
図9A】第8実施形態におけるトラクターヘッドの概略側面図。
図9B】第8実施形態の導風部を示す概略平面図。
図10】第9実施形態におけるトラクターヘッドの概略側面図。
図11】第9実施形態の導風口の構成を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における車両10を示す概略側面図である。図1には、互いに直行するX方向、Y方向、および、Z方向を示す矢印が図示されている。X方向は、車両10の幅方向に相当し、Y方向は、車両10の前後方向に相当し、Z方向は車両10の高さ方向に相当する。X方向、Y方向、および、Z方向を示す矢印は、後に参照する各図においても図1に対応するように図示されている。
【0009】
車両10は、貨物車両として構成される。本明細書において、「貨物車両」とは、貨物の運搬を主目的とする車両であって、客室の後方に、高さ方向に見たときの面積が客室よりも広い貨物の積載スペースを有している車両を意味する。「積載スペースを有している」構成には、積載スペースが形成されるように、荷室や荷台を追加可能に構成されている態様が含まれる。
【0010】
第1実施形態では、車両10は、運転者を含む乗員が搭乗する客室13を有する牽引車両であるトラクターヘッド11と、貨物が積載される被牽引車両であるトレーラ12と、を備える。車両10では、トラクターヘッド11の後方にトレーラ12が連結されることによって、客室13の後方に貨物の積載スペースMSが形成される。第1実施形態では、後述するコンテナ22内の荷室が貨物の積載スペースMSを構成する。このように、トラクターヘッド11は、客室13の後方に積載スペースMSが形成されるように、荷室や荷台を追加可能に構成されている。よって、上記の「貨物車両」の定義に従うと、トレーラ12が連結されていない状態のトラクターヘッド11単体も貨物車両に相当する。
【0011】
トラクターヘッド11は、本体ボディ11bの内部に設けられている客室13の下方に、X方向に離間して並列に配列されているサイドフレームを構成する一対の車両フレーム15を備える。各車両フレーム15は、Y方向に沿って配置され、客室13の下方領域から本体ボディ11bの後方へとY方向に沿って延び出ている。
【0012】
車両フレーム15のX方向における両外側には、トラクターヘッド11の前輪16および後輪17が取り付けられている。前輪16は、客室13の下方に位置しており、後輪17は、車両フレーム15の後端部近傍に位置している。前輪16は、図示しない駆動力源に接続され、当該駆動力源から伝達される駆動力によって回転する駆動輪である。本実施形態では、駆動力源は図示しないモータによって構成される。後輪17は、車両フレーム15の後端部側に設けられている。後輪17の近傍には、一対の車両フレーム15に挟まれた中央部に被連結部18が設けられている。被連結部18には、トレーラ12の連結部24が連結される。被連結部18は、いわゆるカプラによって構成される。
【0013】
トレーラ12は、貨物が収納される荷室を内部に有するコンテナ22を下方から支持する車台21を有する。車台21の後方側端部に寄った位置には、従動輪23が取り付けられている。また、車台21の前方側端部に寄った位置には、上述したトラクターヘッド11の被連結部18に連結する連結部24が設けられている。連結部24は、いわゆるキングピンによって構成される。連結部24は、下方に突出しており、被連結部18に上方から挿入されて係合する。トレーラ12は、トラクターヘッド11に対して幅方向への回動が許容された状態で、トラクターヘッド11に連結される。
【0014】
第1実施形態では、トレーラ12は、車台21の上にコンテナ22が配置されている。他の実施形態では、コンテナ22は省略されてもよい。トレーラ12では、コンテナ22に代えて、車台21の上に、貨物を固定するための固定具が設けられてもよい。
【0015】
車両10は、燃料電池車両として構成されており、燃料電池を含む燃料電池ユニット30を電力源として備える。燃料電池ユニット30は、燃料電池と、燃料電池本体に一体的に取り付けられる機器と、で構成されるユニットである。「燃料電池本体に一体的に接続される機器」には、例えば、燃料電池を収納するケースや、燃料電池を支持するフレーム、センサ類、バルブ、ポンプ、配管接続部材などが含まれる。
【0016】
燃料電池ユニット30は、トラクターヘッド11の本体ボディ11b内における客室13の下方領域に搭載されている。第1実施形態では、燃料電池ユニット30が有する燃料電池は、固体高分子形燃料電池であり、複数の単セルが積層された燃料電池スタックとして構成されている。各単セルは、電解質膜の両側に電極が配置された膜電極接合体を有し、単体でも発電が可能な要素である。なお、車両10に搭載される燃料電池は、固体高分子形燃料電池に限定されることはない。他の実施形態では、燃料電池として、例えば、固体酸化物形燃料電池など、種々のタイプの燃料電池を採用することが可能である。
【0017】
第1実施形態では、燃料電池ユニット30は複数の燃料電池スタックを含んでいる。これによって、車両10の駆動力として燃料電池ユニット30が出力可能な電力を増大させることができ、車両10に積載することが許容される貨物の重量を増大させることができる。なお、他の実施形態では、燃料電池ユニット30は、単一の燃料電池スタックを有していてもよい。
【0018】
車両10は、燃料電池ユニット30の他に、燃料電池ユニット30における発電を実行するための種々の燃料電池システム構成機器を搭載している。種々の燃料電池システム構成機器には、例えば、燃料電池に反応ガスを供給するための機器や、燃料電池の温度を調整するための機器、燃料電池の電圧や電流を制御するための機器、燃料電池システムの運転を制御する制御装置などが含まれる。
【0019】
車両10は、そうした機器の一つとして、燃料電池ユニット30の燃料電池スタックに供給される燃料ガスを貯蔵するタンク32を、トラクターヘッド11に搭載している。タンク32は、燃料ガスとしての水素を貯蔵する。タンク32は、70MPa以上の耐圧性能を有する。第1実施形態では、車両10は、その航続距離を稼ぐために、複数のタンク32を備える。第1実施形態では、各タンク32は同じ寸法を有している。ただし、他の実施形態では、各タンク32の寸法は、均一でなくてもよい。
【0020】
タンク32は、本体部を構成する樹脂製の容器であるライナーを有し、そのライナーの表面が、補強層としての繊維強化樹脂層によって覆われている構成を有する。ライナーは、樹脂部材に代えて、アルミニウム等の軽金属によって構成されてもよい。繊維強化樹脂層は、フィラメント・ワインディング法によって形成される。繊維強化樹脂層は、ライナーの外表面に巻き付けられる炭素繊維強化プラスチック(CFRP;Carbon-Fiber-Reinforced Plastic)などの強化繊維と、その強化繊維同士を結着する熱硬化性樹脂と、で構成される。
【0021】
各タンク32は、客室13と積載スペースMSとの間に設けられた収納部35に収納されている。第1実施形態では、収納部35は、客室13とコンテナ22との間に設けられている。収納部35は、車両フレーム15上に固定されている。収納部35は、中空の箱体によって構成された筐体35cを備え、筐体35cの内部にタンク32を収容している。筐体35cは、例えば、ABS樹脂や、繊維強化プラスチックなどによって構成される。第1実施形態では、収納部35の上端は、本体ボディ11bの上端よりも上方に位置している。
【0022】
図1では図示は省略するが、車両10は、トラクターヘッド11に、燃料電池ユニット30の燃料電池スタックに酸化剤ガスを供給するためのコンプレッサを搭載している。本実施形態では、酸化剤ガスは大気中の酸素である。コンプレッサは、客室13の下方領域に設けられており、本体ボディ11bに設けられているフロントグリルから流入する大気を取り込んで圧縮し、燃料電池ユニット30へと送り出す。
【0023】
また、図1では図示は省略するが、車両10は、トラクターヘッド11に、燃料電池ユニット30の燃料電池スタックに冷媒を循環させる冷媒循環部を搭載している。冷媒循環部は、冷媒と大気との間で熱交換させるラジエータ50,55と、燃料電池ユニット30とラジエータ50,55との間で冷媒を循環させる冷媒ポンプと、を有する。詳細は後述するが、第1のラジエータ50は収納部35に設けられており、第2のラジエータ55は、トラクターヘッド11の前方端部に設けられている。冷媒ポンプは、燃料電池ユニット30の近傍に設置されている。
【0024】
図2Aおよび図2Bを参照して、タンク32の構成の詳細および収納部35の構成の詳細を説明する。図2Aは、トラクターヘッド11をX方向に見たときの概略側面図であり、図2Bは、トラクターヘッド11をY方向に見たときの概略背面図である。図2A図2Bでは、収納部35の内部構造が模式的に示されている。図2A図2Bでは、便宜上、収納部35の筐体35cを一点鎖線で示してある。また、図2Aでは、燃料電池ユニット30および後述するシステム補機40の配置領域を二点鎖線で図示してある。さらに、図2Aでは、ラジエータ50,55を実線で示し、図2Bでは、ラジエータ50の設置領域を二点鎖線で示してある。
【0025】
図2Bに示すように、タンク32は、円筒状のシリンダ部32sと、シリンダ部32sの両端に設けられた略半球状のドーム部32dと、を有する。図2Aおよび図2Bに示すように、一方のドーム部32dの頂点には、配管やバルブが接続される口金部33が設けられている。図示は省略するが、口金部33の内部には、タンク32に燃料ガスを充填する際に燃料ガスが流れる充填流路と、タンク32から燃料電池ユニット30に燃料ガスを供給する際に燃料ガスが流れる供給流路と、が設けられている。
【0026】
各タンク32の口金部33には、溶栓弁34が設けられている。溶栓弁34は、口金部33の表面から突出するように設けられている。溶栓弁34は、例えば110度程度の所定の温度を超えると溶解する金属材料で構成される。溶栓弁34は、例えば、鉛と錫との合金によって構成される。溶栓弁34は、口金部33内に設けられた図示しない放出路を封止するように取り付けられている。放出路は、上述した充填流路から分岐して、口金部33の外部まで延びている。例えば、車両10において火災が発生したような場合には、溶栓弁34を構成する金属材料が融点を超えて溶解して、放出路が外部と連通することによって、タンク32内部の燃料ガスが放出路を通じて外部へと放出される。第1実施形態の車両10によれば、タンク32が収納部35に収容されているため、溶栓弁34が開かれてタンク32から燃料ガスが放出されても、客室13へと燃料ガスが流入することが抑制される。
【0027】
収納部35は、筐体35cの内部に、各タンク32が支持する収納棚36を備える。収納棚36は、金属製の複数のフレーム部材を連結することによって構成される。収納棚36は、筐体35cの内部空間において高さ方向にわたって配置されている。収納棚36は、車両10の高さ方向に配列された複数の載置部37を有する。タンク32は、その長手方向が車両10の幅方向と一致するように、各載置部37に一つずつ載置される。車両10における客室13と積載スペースMSとの間の空間であれば、高さ方向における寸法の制約が小さいため、複数のタンク32を高さ方向に多段に配置できる収納棚36を用いることにより、複数のタンク32の配置スペースを確保することが容易にできる。また、図2Bに示すように、第1実施形態では、タンク32の長手方向における長さおよび収納部35の幅は、車両10の幅よりも小さい。これにより、収納部35へのタンク32の搭載によって車両10が幅方向に大型化することが抑制されている。なお、タンク32の長手方向は、タンク32の中心軸に沿った中心軸方向であると言い換えてもよい。
【0028】
なお、図1図2A、および、図2Bでは、3つのタンク32が高さ方向に配列されている例が示されているが、車両10に搭載されるタンク32の数は、3つに限定されることはない。タンク32の数は、1つでも、2でもよいし、3つより多くてもよい。収納棚36での載置部37の数は、車両10に搭載されるタンク32の数に応じて任意に改変されてよい。
【0029】
第1実施形態では、収納棚36における最下段の載置部37には、燃料電池システムを構成する種々の機器を含むシステム補機40が載置される。また、筐体35cには、下端部に寄った位置に、システム補機40の設置領域に連通する開口部35oが設けられている。システム補機40には、例えば、燃料電池システムの運転を制御するECU(Electronic Control Unit)41が含まれる。ECU41は、少なくとも1つのプロセッサと主記憶装置とを備える。ECU41は、プロセッサが主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令を実行することによって、燃料電池システムの運転を制御するための種々の機能を発揮する。ECU41の機能の少なくとも一部は、ハードウェア回路によって構成されてもよい。
【0030】
収納部35に収容されるシステム補機40には、ECU41に加えて、あるいは、ECU41の代わりに、他の機器が含まれてもよい。システム補機40には、例えば、二次電池が含まれてもよい。第1実施形態の車両10によれば、収納棚36を有する収納部35によって、タンク32下方の領域を、システム補機40の搭載スペースとして有効に活用することができる。また、システム補機40のメンテナンスの際には、作業者は、筐体35cの開口部35oを通じて、システム補機40に容易にアクセスできる。なお、他の実施形態では、収納部35に、システム補機40の搭載スペースは設けられていなくてもよい。
【0031】
第1実施形態の収納棚36には、タンク32の収納領域の後方に支持メンバ39が設けられている。支持メンバ39は、柱状部材によって構成されており、収納棚36の上端側の部位から、下端の載置部37における後方側に延び出ている部位へと斜めに架設されている。支持メンバ39によって、収納棚36の前後方向における配置姿勢の安定性が高められる。
【0032】
図2Aに示すように、収納部35内には、燃料ガスの濃度を検出する濃度センサ35dが設けられている。ECU41は、収納部35における燃料ガスの漏洩を検出する漏洩検出部としての機能を有し、濃度センサ35dによって収納部35内における燃料ガスの濃度を監視する。ECU41は、収納部35内における燃料ガスの濃度が予め定められた閾値より大きくなったときに、客室13に設けられた図示しないインジケータなどの報知部を通じて、車両10の乗員に、燃料ガスの漏洩の発生を報知する。なお、他の実施形態では、ECU41は、漏洩検出部としての機能を有していなくてもよいし、濃度センサ35dは省略されてもよい。
【0033】
図2Bに示すように、各タンク32の表面には、タンク32の表面温度を検出する温度センサ32tが取り付けられている。温度センサ32tによる検出結果は、ECU41に送信される。ECU41は、温度センサ32tによって、タンク32の表面温度を監視する。ECU41は、例えば、タンク32の温度が予め定められた閾値温度より高いときに、客室13に設けられた図示しないインジケータなどの報知部を通じて、車両10の乗員に、タンク32における異常温度の発生を報知する。なお、他の実施形態では、温度センサ32tは省略されてもよく、ECU41はタンク32の表面温度を監視していなくてもよい。
【0034】
収納部35には、燃料電池ユニット30に供給される冷媒と大気との間の熱交換をおこなうラジエータ50が設けられている。ラジエータ50は、収納部35の筐体35cに固定されている。第1実施形態では、ラジエータ50は、タンク32の後方側の位置において、積載スペースMSの方に向くように設けられている。また、ラジエータ50は、筐体35cの下端部よりも上端部に寄った位置に設けられている。筐体35cには、ラジエータ50と面する部位に、大気が流通するラジエータグリル35gが設けられている。
【0035】
ラジエータ50は、冷媒が流通するチューブとフィンとが平板状に配列された構成を有し、チューブとフィンの間を厚み方向に大気が流通可能に構成されている。ラジエータ50はファン52を有する。ファン52は、ECU41の制御下で駆動する駆動モータ53によって回転する。第1実施形態では、車両10が起動されて燃料電池システムの運転が開始されると、ECU41は、燃料電池システムの運転が終了するまで、収納部35の外部の大気を収納部35の内部に取り込む方向にファン52を回転させる。ラジエータ50がファン52を有することにより、例えば、走行風が生じていない場合でも、ファン52の駆動により、収納部35の内部と外部の間における大気の流通を促進させることができる。よって、ラジエータ50における冷媒の熱交換効率を高めることができる。なお、他の実施形態では、ファン52は省略されてもよい。
【0036】
ラジエータ50が、収納部35に設けられていることにより、車両10の走行風を利用した冷媒との熱交換が容易化される。また、ラジエータ50が、熱源である燃料電池ユニット30が配置されるエンジンルームとは隔てられた収納部35に設けられていることにより、ラジエータ50に対する燃料電池ユニット30からの受熱が抑制される。そのため、ラジエータ50による冷媒の冷却効率を高めることができる。加えて、ラジエータ50がタンク32の収納部35に設けられていることにより、ラジエータ50を通じた収納部35内への大気の流れを利用して、収納部35内で漏洩した燃料ガスの拡散を促進することができる。その他に、ラジエータ50を収納部35に設ければ、ラジエータ50と燃料電池ユニット30との間の距離が過度に長くなることを抑制できるため、ラジエータ50と燃料電池ユニット30とを接続する図示しない冷媒用配管の配管長が長くなることを抑制できる。よって、当該冷媒用配管の破損・劣化を抑制できる。
【0037】
第1実施形態では、上述したように、ラジエータ50は、収納部35におけるタンク32の後方側に設けられている。これによって、ラジエータ50を収納部35におけるタンク32の側方に設ける場合よりも、車両10が幅方向に大型化することを抑制できる。また、ラジエータ50を客室13から離すことができるため、ラジエータ50における冷媒の熱が、客室13へと伝わることが抑制される。さらに、収納部35内で燃料ガスの漏洩が生じても、その燃料ガスが、ラジエータ50を通じて、客室13へと流入することが抑制される。その他に、ラジエータグリル35gを、遮蔽物が比較的少ない積載スペースMS側に面するように形成できるため、その形成位置のレイアウトが容易化される。
【0038】
第1実施形態では、上述した収納部35の第1のラジエータ50に加えて、トラクターヘッド11の本体ボディ11b内に、第2のラジエータ55が設けられている。第2のラジエータ55は、設置位置が異なっている点以外は、第1のラジエータ50の構成とほぼ同じである。第2のラジエータ55は、図1においても説明したように、トラクターヘッド11の前方側端部に設けられており、図示しないフロントグリルを通じて本体ボディ11b内に取り込まれる大気と冷媒を熱交換させる。
【0039】
第1実施形態の車両10では、2つのラジエータ50,55によって冷媒の温度を制御できる。そのため、各ラジエータ50,55を大型化しなくとも、燃料電池ユニット30が有する複数の燃料電池スタックの温度制御性を高めることができる。また、2つのラジエータ50,55がそれぞれ、車両10の異なる空間に取り込まれた大気を利用して熱交換するため、各ラジエータ50,55における冷媒の熱交換効率を高めることができる。なお、他の実施形態では、本体ボディ11b内の第2のラジエータ55は省略されてもよい。
【0040】
以上のように、第1実施形態の車両10によれば、客室13と積載スペースMSとの間における寸法の制限が少ない比較的自由度の高い空間にタンク32とラジエータ50とが配置される。これによって、本体ボディ11b内の限られた空間を、燃料電池ユニット30や、燃料電池システムを構成するその他の機器のために利用することができ、貨物車両である車両10内の限られた空間を有効活用できる。また、本体ボディ11b外部の収納部35であれば、大気の流通性を確保しやすく、ラジエータ50における冷媒と大気の熱交換効率を高めることができるとともに、収納部35内で漏洩した燃料ガスの拡散を促進することができる。その他に、第1実施形態の車両10によれば、本体ボディ11b内の客室13と収納部35とが隔てられているため、収納部35で漏洩した燃料ガスが客室13へと流入することが抑制される。
【0041】
2.第2実施形態:
図3は、第2実施形態の車両10において実行されるラジエータ50のファン52の駆動制御フローを示す説明図である。第2実施形態の車両10の構成は、特に説明しない限り、第1実施形態で説明したのとほぼ同じである。
【0042】
車両10では、第1実施形態で説明したように、ECU41によって、ファン52の駆動が制御される。燃料電池システムの運転が開始されると、ECU41は、駆動モータ53を制御して、外部の大気を、ラジエータグリル35gを通じて、収納部35内に取り込む方向へのファン52の回転を開始する。その後、ECU41は、図3のファン52の駆動制御を、燃料電池システムの運転が終了するまで実行する。
【0043】
ステップS10では、ECU41は、収納部35内における燃料ガスの漏洩が検出されているか否かを判定する。ECU41は、例えば、図2Aに示す燃料ガスの濃度センサ35dによって検出される燃料ガスの濃度が予め定めた閾値より大きくなったときに、燃料ガスの漏洩を検出する。なお、他の実施形態では、ECU41は、燃料ガスの濃度センサ35dを用いる以外の方法により、燃料ガスの漏洩を検出してもよい。例えば、ECU41は、燃料電池ユニット30に対する燃料ガスの供給圧力の実測値が、燃料ガスの供給圧力の目標値に対して、予め定められた閾値以上に低下したときに、燃料ガスの漏洩を検出してもよい。ステップS10で、燃料ガスの漏洩が検出されない場合には、ECU41は、収納部35内における燃料ガスの漏洩の監視を続ける。
【0044】
ステップS10で燃料ガスの漏洩が検出された場合には、ECU41は、ステップS20において、収納部35内の大気がラジエータグリル35gを通じて外部に排出されるように、ファン52の回転方向を反転させる。これによって、収納部35内に漏洩した燃料ガスが滞留してしまうことを抑制できる。なお、ステップS20では、第1実施形態でも説明したように、ECU41は、図示しない報知部を通じて、運転者に燃料ガスの漏洩が発生していることを報知してもよい。
【0045】
ECU41は、ステップS30において、収納部35内での燃料ガスの漏洩が解消されたか否かを判定する。ECU41は、収納部35内における燃料ガスの濃度が、予め定められた許容値より低下したときに、収納部35内における燃料ガスの漏洩の解消を検出する。ECU41は、燃料ガスの漏洩の解消が検出されるまで、収納部35内の大気を外部に排出する方向でのファン52の回転を継続する。
【0046】
ステップS30で、燃料ガスの漏洩の解消が検出された場合には、ECU41は、ステップS40において、ファン52の回転方向を反転させて、通常の回転方向に戻す。これにより、ファン52の回転方向が、外部の大気を収納部35内に取り込む方向に切り替わる。この後、ECU41は、ステップS10の処理へと戻り、燃料電池システムの運転が終了するまで、上述したファン52の駆動制御を継続する。
【0047】
以上のように、第2実施形態の車両10によれば、例えば、溶栓弁34が開いて、収納部35内において燃料ガスの漏洩が発生しているような場合でも、ラジエータ50のファン52を利用して、収納部35内からの燃料ガスの排出を促進させることができる。その他に、第2実施形態の車両10によれば、第1実施形態で説明したのと同様な種々の作用効果を奏することができる。
【0048】
3.第3実施形態:
図4は、第3実施形態の車両10において実行されるラジエータ50のファン52の駆動制御フローを示す説明図である。第3実施形態の車両10の構成は、以下において、特に説明しない限り、第1実施形態で説明したのとほぼ同じである。ECU41は、燃料電池システムの運転が開始されると、駆動モータ53を制御して、外部の大気を収納部35内に取り込む方向へのファン52の回転を開始させ、図4の駆動制御を、燃料電池システムの運転中にわたって実行する。
【0049】
ステップS50では、ECU41は、温度センサ32tによって各タンク32の表面温度Tを検出する。ステップS60では、ECU41は、ステップS50での検出結果を用いてタンク温度判定処理を実行する。ECU41は、各タンク32の表面温度Tが、閾値温度Tthより以上であるか否かを判定する。閾値温度Tthは、例えば、室温としてよい。なお、車両10eが外気温センサを有する場合、閾値温度Tthは外気温センサによって計測される現在の外気温に設定されてもよい。
【0050】
収納部35に収納されているタンク32のうち、n個未満のタンク32の表面温度Tが、閾値温度Tth以上である場合には、ECU41は、ステップS70において、ファン52を第1方向の回転方向で回転させる。nは、1以上の予め定められた任意の数である。また、第1方向の回転方向は、外部の大気を収納部35内に取り込む方向である。これによって、例えば、燃料ガスが充填された直後でタンク32の表面温度が高くなっている場合などに、ファン52の駆動によって収納部35内への外気の導入が促進されて、タンク32の冷却を促進させることができる。よって、タンク32の高温化による劣化を抑制することができる。
【0051】
収納部35に収納されているタンク32のうち、n個以上のタンク32の表面温度Tが、閾値温度Tth未満である場合には、ECU41は、ステップS80において、ファン52を第2方向の回転方向で回転させる。第2方向の回転方向は、第1方向とは反対の回転方向であり、収納部35内の大気を外部に排出する方向である。これによって、燃料ガスの放出により表面温度Tが低下しているタンク32によって温度が低下している収納部35内の大気を用いて、ラジエータ50に流れる冷媒を冷却させることができる。よって、ラジエータ50における冷媒の冷却効率を高めることができる。ステップS70またはステップS80の後、ECU41は、ステップS50以降の処理を繰り返す。
【0052】
以上のように、第3実施形態の車両10によれば、タンク32の表面温度Tに応じて、ファン52の回転方向が決定され、タンク32の高温化を抑制したり、ラジエータ50における冷媒の冷却効率を高めたりすることができる。その他に、第3実施形態の車両10によれば、第1実施形態で説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0053】
4.第4実施形態:
図5は、第4実施形態の車両10aにおけるトラクターヘッド11の構成を示す概略側面図である。図5は、収納部35にラジエータ50が1つ追加されている点以外は、図2Aとほぼ同じである。第4実施形態の車両10aの構成は、以下に説明する点以外は、第1実施形態の車両10の構成とほぼ同じである。第4実施形態の車両10aでは、収納部35に2つのラジエータ50が設けられている。2つのラジエータ50はそれぞれ、タンク32の後方において、車両10aの後方に向く姿勢で、高さ方向に配列されている。車両10aでは、ラジエータ50の個数が増加されていることにより、冷媒の熱交換効率が高められている。その他に、第4実施形態の車両10aによれば、上記の各実施形態で説明した種々の作用効果を奏することができる。なお、ラジエータ50の個数は2つに限定されることはない。収納部35には、さらに複数のラジエータ50が設けられてもよい。また、他の実施形態では、複数のラジエータ50は、車両10aの幅方向に配列されていてもよい。
【0054】
5.第5実施形態:
図6は、第5実施形態における車両10bのトラクターヘッド11の構成を示す概略側面図である。図6は、収納部35におけるラジエータ50の設置位置が異なっている点以外は、図2Aとほぼ同じである。第5実施形態の車両10bの構成は、以下に説明する点以外は、第1実施形態の車両10の構成とほぼ同じである。第5実施形態の車両10bでは、収納部35のラジエータ50は、タンク32の前方側において、車両10bの前方に向く姿勢で設置されている。これにより、車両10の前方からの走行風を、ラジエータ50を通じて収納部35内へと、より効率よく取り入れることが可能である。その他に、第5実施形態の車両10bによれば、上記の各実施形態で説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0055】
6.第6実施形態:
図7は、第6実施形態における車両10cのトラクターヘッド11の構成を示す概略背面図である。図7は、収納部35におけるラジエータ50の設置位置が異なっている点以外は、図2Bとほぼ同じである。第6実施形態の車両10cの構成は、以下に説明する点以外は、第1実施形態の車両10の構成とほぼ同じである。第6実施形態の車両10cでは、収納部35のラジエータ50は、車両10cの幅方向におけるタンク32の両側において、車両10cの側方に向く姿勢で設置されている。これにより、車両10の側方の走行風を、ラジエータ50を通じて収納部35内へと効率よく取り入れることが可能である。なお、ラジエータ50は、タンク32の片側にのみ設けられてもよい。他の実施形態では、複数のラジエータ50が、タンク32の側方において、高さ方向や前後方向に配列されていてもよい。その他に、第6実施形態の車両10cによれば、上記の各実施形態で説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0056】
7.第7実施形態:
図8は、第7実施形態における車両10dのトラクターヘッド11の構成を示す概略側面図である。図8は、収納部35におけるラジエータ50の設置位置が異なっている点以外は、図2Aとほぼ同じである。第7実施形態の車両10dの構成は、以下に説明する点以外は、第1実施形態の車両10の構成とほぼ同じである。第7実施形態の車両10dでは、収納部35のラジエータ50は、タンク32の上方において、上方に向く姿勢で設置されている。これにより、車両10dの上方の走行風を、ラジエータ50を通じて収納部35内へと効率よく取り入れることが可能である。他の実施形態では、複数のラジエータ50が、タンク32の上方において、車両10の前後方向や幅方向に配列されてもよい。その他に、第7実施形態の車両10dによれば、上記の各実施形態で説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0057】
8.第8実施形態:
図9Aは、第8実施形態における車両10eのトラクターヘッド11の構成を示す概略側面図である。図9Aは、以下に説明する導風部60が設けられている点と、収納部35が高さ方向に小型化されている点以外は、図5とほぼ同じである。図9Bは導風部60を上方から下方にみたときの概略平面図である。第8実施形態の車両10eの構成は、以下に説明する点以外は、図5に示す第4実施形態の車両10aの構成とほぼ同じである。
【0058】
図9Aを参照する。第8実施形態の車両10eでは、システム補機40は、収納部35以外の部位に配置されており、収納部35では、システム補機40を配置するためのスペースが省略され、収納部35の高さ寸法が低減されている。第8実施形態では、収納部35の上面は、本体ボディ11bの上面と高さ位置がほぼ揃っている。
【0059】
図9Aに示すように、車両10eには、本体ボディ11bの上面から収納部35の上面にわたって、導風部60が設けられている。導風部60は、トラクターヘッド11のボディの一部を構成する。導風部60は、中空の箱体として構成されており、例えば、ABS樹脂や、繊維強化プラスチックなどによって構成される。
【0060】
図9Aおよび図9Bを参照する。導風部60は、前後方向に連続して配列され、前方に向かって下降傾斜する2つの傾斜面61a,61bと、2つの傾斜面61a,61bの後方に位置し、上方に向く上面62と、を有する。また、導風部60は、傾斜面61a,61bおよび上面62に交差し、車両10eの幅方向に対向する一対の側面63と、前方側の傾斜面61aと一対の側面63とに交差し、下方に向く底面64と、を有する。
【0061】
図9Aに示すように、前方側の傾斜面61aは、本体ボディ11bの前面に隣接する位置に配置される。後方側の傾斜面61bは、前方側の傾斜面61aと上面62との間に位置する。後方側の傾斜面61bの方が、前方側の傾斜面61aよりも車両10eの前後方向に対する傾斜角が小さい。傾斜面61a,61bによって、トラクターヘッド11の前面に衝突して上方に流れる走行風が後方へと導かれる。なお、前方側の傾斜面61aと後方側の傾斜面61bとはX方向に見たときに滑らかな曲線を描くように一体化されていてもよい。また、前方側の傾斜面61aと後方側の傾斜面61bとの間には、前後方向に対する傾斜角が異なる傾斜面が追加されてもよい。
【0062】
導風部60は、走行風を収納部35内へと導く大気流路65が内部に設けられている。大気流路65の一端は、後方側の傾斜面61bにおいて開口しており、他端は、底面64において開口している。大気流路65の底面64側の開口は、収納部35の筐体35cの上面に設けられている開口部35oに接続されている。大気流路65を有する導風部60によって、走行風を収納部35内部へと効率良く導入することができる。
【0063】
第8実施形態の車両10eでは、収納部35に設けられているラジエータ50のファン52は、収納部35内の大気を外部に排出する方向に回転する。また、上記のように、収納部35内には、導風部60を通じて走行風が導入される。よって、ラジエータ50における冷媒の温度交換効率を高めることができる。また、収納部35内で燃料ガスの漏洩が生じた場合でも、導風部60を通じて収納部35に取り込まれる走行風によって、収納部35からの燃料ガスの排出が促進される。その他に、第8実施形態の車両10eによれば、上記の各実施形態で説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0064】
9.第9実施形態:
図10は、第9実施形態における車両10fのトラクターヘッド11の構成を示す概略側面図である。図10は、導風部60が設けられていない点と、収納部35の筐体35cに設けられた導風口68が一点鎖線で図示されている点以外は、図9Aとほぼ同じである。第9実施形態の車両10fの構成は、以下に説明する点以外は、第8実施形態の車両10eの構成とほぼ同じである。
【0065】
第9実施形態の車両10fは、導風部60を備えておらず、代わりに、収納部35の筐体35cに、走行風を筐体35c内部に取り込むための導風口68が設けられている。導風口68は、筐体35cの両側面に設けられている。なお、導風口68は、筐体35cの片側の側面にのみ設けられていてもよい。他の実施形態では、導風口68は、筐体35cの上面に設けられていてもよい。
【0066】
図11を参照して、導風口68の構成の詳細を説明する。図11は、図10に示す11-11切断における概略断面図である。導風口68の前方側端部には、収納部35内部に向かって折れ曲がって傾斜している誘導壁部68wが設けられている。誘導壁部68wは、後方側ほど収納部35の奥まった位置に位置するように、車両10eの前後方向に対して傾斜している。誘導壁部68wによって、車両10eが前進しているときに収納部35の側方に流れる走行風が、収納部35内へと流入しやすくなる。
【0067】
第9実施形態の車両10fによれば、収納部35の筐体35cに設けられた導風口68によって、収納部35内に走行風を効率良く取り込むことができる。よって、収納部35に設けられたラジエータ50における冷媒の温度交換効率を高めることができる。また、収納部35内で漏洩した燃料ガスの収納部35からの排出が促進される。その他に、第9実施形態の車両10fによれば、上記の各実施形態で説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0068】
10.他の実施形態:
上記の各実施形態で説明した種々の構成は、例えば、以下のように改変することが可能である。以下に説明する他の実施形態はいずれも、上記の各実施形態と同様に、本開示の技術を実施するための形態の一例として位置づけられる。
【0069】
・他の実施形態1:
上記の各実施形態において、収納部35でのタンク32の配置姿勢は、その長手方向が車両の幅方向に一致する姿勢に限定されることはない。タンク32は、例えば、その長手方向が、車両の高さ方向に一致するように配置されていてもよい。収納部35における収納棚36は省略されてもよく、タンク32は、収納部35において、筐体35cの内壁面に固定されていてもよい。
【0070】
・他の実施形態2:
上記の各実施形態において、車両10,10a~10fは、トラクターヘッド11を備える貨物車両には限定されない。車両10,10a~10fは、例えば、客室13の後方に、積載スペースMSを構成する荷台や荷室が常時固定されているトラックとして構成されていてもよい。上記の各実施形態において、車両10,10a~10fは、燃料電池ユニット30が発電する電力を走行に用いなくてもよく、電装品の駆動にのみ用いてもよいし、外部給電にのみ用いてもよい。
【0071】
・他の実施形態3:
上記の各実施形態の構成は、適宜、組み合わせることが可能である。例えば、第1実施形態の構成において、第5実施形態で説明したタンク32前方のラジエータ50や、第6実施形態で説明したタンク32側方のラジエータ50、第7実施形態で説明したタンク32上方のラジエータ50が追加されてもよい。同様に、第5実施形態、第6実施形態、および、第7実施形態のそれぞれの構成において、他の各実施形態で説明したラジエータ50の形成位置が適宜組み合わされてもよい。また、上記の第8実施形態以外の各実施形態において、第8実施形態の導風部60が追加されてもよいし、上記の第9実施形態以外の各実施形態において、第9実施形態の導風口68が追加されてもよい。その他に、上記の各実施形態の貨物車両において、第2実施形態でのラジエータ50のファン52の駆動制御や、第3実施形態でのラジエータ50のファン52の駆動制御が実行されてもよい。第2実施形態でのラジエータ50のファン52の駆動制御と、第3実施形態でのラジエータ50のファン52の駆動制御とは並列に実行されてもよい。この場合には、例えば、収納部35において燃料ガスの漏洩が検出されたときのファン52の駆動制御が、タンク32の表面温度に基づくファン52の駆動制御に優先されるように設定されていてもよい。
【0072】
11.その他:
本開示の技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須ではないと説明されているものに限らず、その技術的特徴が本明細書中に必須であると説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
10,10a~10f…車両、11…トラクターヘッド、11b…本体ボディ、12…トレーラ、13…客室、15…車両フレーム、16…前輪、17…後輪、18…被連結部、21…車台、22…コンテナ、23…従動輪、24…連結部、30…燃料電池ユニット、32…タンク、32d…ドーム部、32s…シリンダ部、32t…温度センサ、33…口金部、34…溶栓弁、35…収納部、35c…筐体、35d…濃度センサ、35g…ラジエータグリル、35o…開口部、36…収納棚、37…載置部、39…支持メンバ、40…システム補機、50…ラジエータ、52…ファン、53…駆動モータ、55…第2のラジエータ、60…導風部、61a…傾斜面、61b…傾斜面、62…上面、63…側面、64…底面、65…大気流路、68…導風口、68w…誘導壁部、MS…積載スペース
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11