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特許7189132カテーテルが送達するインプラントのための調節可能かつ可逆性ロック機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】カテーテルが送達するインプラントのための調節可能かつ可逆性ロック機構
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019516221
(86)(22)【出願日】2018-05-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 US2018033802
(87)【国際公開番号】W WO2018217691
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-05-17
(31)【優先権主張番号】62/509,259
(32)【優先日】2017-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/983,599
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デヴィン・エイチ・マール
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・エム・テイラー
(72)【発明者】
【氏名】ユン・エイチ・クォン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ジェイ・シーゲル
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0230919(US,A1)
【文献】特開2013-009994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植え込み可能な心臓弁装置であって、
第1の端部分および第2の端部分を含む主要本体を含み、前記主要本体は、心臓弁の天然の尖の周りに植え込まれるように構成され、これにより、前記第1の端部分は前記尖の心房側にあり、前記第2の端部分は前記尖の心室側にあり、これにより、前記主要本体は、前記心臓弁の手術中に向かい合う天然の尖と接合し、かつ前記心臓弁の手術中に向かい合う天然の尖から離れることができ、
前記第1の端部分または第2の端部分のうちの一方は、連結機構を含み、
前記第1の端部分または第2の端部分のうちのもう一方は、前記心臓弁装置が心臓弁に植え込まれたときに前記連結機構に係合するよう前記天然の尖を通って延びるように構成された連結部材を含み、
前記連結機構は、第1の位置と第2の位置との間で旋回可能な歯止め部材を含み、前記歯止め部材は、前記歯止め部材が前記第1の位置にあるとき前記連結部材に係合するように構成されている、植え込み可能な心臓弁装置。
【請求項2】
前記連結機構は、前記歯止め部材を前記第1の位置に向けて付勢するように構成されたバネ部材をさらに含む、請求項1に記載の植え込み可能な心臓弁装置。
【請求項3】
前記連結部材は、複数の巻き線を有するコイルを含む、請求項1または2に記載の植え込み可能な心臓弁装置。
【請求項4】
前記歯止め部材およびバネ部材は、前記植え込み可能な心臓弁装置の前記第1の端部分に連結された第1のキャップ部材に位置し、
前記連結部材は、前記植え込み可能な心臓弁装置の前記第2の端部分に連結された第2のキャップ部材に連結されている、請求項3に記載の植え込み可能な心臓弁装置。
【請求項5】
前記歯止め部材は、前記第1のキャップ部材に配されたピボット部材の周りを旋回可能である、請求項4に記載の植え込み可能な心臓弁装置。
【請求項6】
前記第1のキャップ部材は、ガイドワイヤが前記第1のキャップ部材から前記主要本体内に延びることができるように、前記主要本体と流体連通している、請求項4または5に記載の植え込み可能な心臓弁装置。
【請求項7】
前記連結部材は、内腔を画定し、これにより、前記ガイドワイヤは、前記連結部材の前記内腔を通って延びることができる、請求項6に記載の植え込み可能な心臓弁装置。
【請求項8】
組立体であって、
第1の端部分および第2の端部分を有する主要本体を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の植え込み可能な心臓弁装置であって、前記主要本体は、心臓弁の天然の尖の周りに植え込まれるように構成され、これにより、前記第1の端部分は前記尖の心房側にあり、前記第2の端部分は前記尖の心室側にあり、これにより、前記主要本体は、前記心臓弁の手術中に向かい合う天然の尖と接合し、かつ前記心臓弁の手術中に向かい合う天然の尖から離れることができ、前記第1の端部分は、連結組立体を含み、前記第2の端部分は、前記心臓弁装置が心臓弁に植え込まれたときに前記連結組立体に係合するよう前記天然の尖を通って延びるように構成された連結部材を含む、植え込み可能な心臓弁装置と、
前記心臓弁装置の前記第1の端部分に解放可能に連結可能な遠位端部分を有するシャフトを含むカテーテルと、
を含む、組立体。
【請求項9】
前記カテーテルは、前記連結組立体に選択的に係合するように近位位置と遠位位置との間を動くことができる第1のアクチュエータ部材を含み、これにより、前記連結組立体は、前記第1のアクチュエータ部材が前記遠位位置にあるときに前記連結部材から係合解除する、請求項8に記載の組立体。
【請求項10】
前記連結組立体は、第1の位置と第2の位置との間を動くことができる歯止め部材を含み、前記歯止め部材は、前記歯止め部材が前記第1の位置にあるときに前記連結部材に係合するように構成され、
前記第1のアクチュエータ部材は、前記第1のアクチュエータ部材が前記歯止め部材に係合すると、前記歯止め部材を前記第2の位置に動かすように構成されている、請求項9に記載の組立体。
【請求項11】
前記カテーテルは、前記連結部材に選択的に係合するように近位位置と遠位位置との間を動くことができる第2のアクチュエータ部材をさらに含む、請求項10に記載の組立体。
【請求項12】
前記第2のアクチュエータ部材が前記連結部材に接触し、前記歯止め部材が前記第2の位置にあるとき、前記第2のアクチュエータ部材の遠位への動きは、連結機構に対する前記連結部材の対応する遠位への動きを引き起こすように構成されている、請求項11に記載の組立体。
【請求項13】
カテーテル部材の遠位端部分は、縫合糸によって前記心臓弁装置の前記第1の端部分に解放可能に連結されている、請求項8から12のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項14】
前記心臓弁装置の前記第1の端部分は、キャップ部材を含み、
前記カテーテルの前記遠位端部分は、第1のアーム部分および第2のアーム部分を含み、
前記縫合糸は、前記第1のアーム部分に画定された内腔から、前記キャップ部材を通って、前記第2のアーム部分に画定された内腔を通って延びる、請求項13に記載の組立体。
【請求項15】
前記カテーテルから、前記心臓弁装置の前記主要本体を通って、前記連結部材を通って延びて、前記カテーテル内に戻るガイドワイヤをさらに含む、請求項8から14のいずれか一項に記載の組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、天然の心臓弁を封止し、心臓弁を通る逆流を低減させるか、または防止するのに役立つ補綴装置および関連方法、ならびに、このような補綴装置を植え込むための装置および関連方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然の心臓弁(すなわち、大動脈弁、肺動脈弁、三尖弁、および僧帽弁)は、心血管系を通る血液の適切な供給の順流を確実にする上で重要な機能を果たす。これらの心臓弁は、先天性奇形、炎症プロセス、感染状態、または疾患によって、有効性が低くなり得る。弁に対するこのような損傷は、深刻な心血管損傷(serious cardiovascular compromise)または死をもたらし得る。長年、このような障害の最終的治療は、直視下心臓手術中の弁の外科的修復または置換であった。しかしながら、このような手術は、侵襲性が高く、多くの合併症を生じやすい。したがって、心臓弁に欠陥のある年配の患者および虚弱な患者は、しばしば未治療のままであった。さらに最近では、直視下心臓手術よりも侵襲性が低くなるように補綴装置を導入し植え込むための経血管的技術(transvascular techniques)が開発されている。このような経血管的技術は、成功率が高いため、普及してきている。
【0003】
健康な心臓は、下方心尖部(lower apex)まで先細になる、概ね円錐形の形状を有する。心臓は、4つの室があり、左心房、右心房、左心室、および右心室を含む。心臓の左側と右側とは、一般的には隔壁と呼ばれる壁によって隔てられている。ヒトの心臓の天然の僧帽弁は、左心房を左心室につなぐ。僧帽弁は、他の天然の心臓弁とは大きく異なる解剖学的構造を有する。僧帽弁は、僧帽弁口を囲む天然の弁組織の環状部分である弁輪部分と、弁輪から左心室内に下方に延びる一対の弁尖または尖と、を含む。僧帽弁輪は、長軸および短軸を有する、D字型であるか、楕円形であるか、または別様に真円でない断面形状を形成し得る。前尖は、後尖より大きい場合があり、それらが互いに閉じると、尖の隣接する自由縁間に概ねC字型の境界を形成する。
【0004】
適切に動作している場合、前尖および後尖は、一方向弁として一緒に機能して、血液を左心房から左心室にのみ流れさせる。左心房は、肺静脈から酸素化された血液を受け取る。左心房の筋肉が収縮し左心室が拡張すると、左心房に集まった、酸素化された血液は左心室に流れ込む。左心房の筋肉が緩み、左心室の筋肉が収縮すると、左心室内の高くなった血圧により、僧帽弁の2つの尖が一緒に動かされ、それによって一方向の僧帽弁を閉じ、そのため、血液は、左心房に戻ることができず、また、代わりに大動脈弁を通って左心室から放出される。2つの尖が圧力下で脱出して僧帽弁輪を通って左心房に向かって折り返されるのを防ぐため、腱索と呼ばれる複数の線維索が、尖を左心室の乳頭筋につなぐ。
【0005】
心周期の収縮期中に天然の僧帽弁が適切に閉じることができず血液が左心室から左心房に流れ込むと、僧帽弁逆流が生じる。僧帽弁逆流は、心臓弁膜症の最も一般的な形態である。僧帽弁逆流には、尖脱出(leaflet prolapse)、乳頭筋機能不全、および/または左心室の拡張により生じる僧帽弁輪の伸展など、さまざまな原因がある。尖の中心部分における僧帽弁逆流は、中心ジェット僧帽弁逆流(central jet mitral regurgitation)と呼ばれ得、尖の1つの交連部(すなわち、尖が合流する場所)の近くの僧帽弁逆流は、偏心ジェット僧帽弁逆流(eccentric jet mitral regurgitation)と呼ばれ得る。
【0006】
僧帽弁逆流を治療するための一部の先行技術は、天然の僧帽弁尖の一部を互いに直接縫合することを含む。他の先行技術は、天然の僧帽弁尖間に植え込まれる物体の使用を含む。これらの先行技術にもかかわらず、僧帽弁逆流を治療するための改善された装置および方法が引き続き必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2015/0230919号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある実施形態は、天然の心臓弁の尖に補綴インプラントを調節可能かつ/または解放可能に締結する装置および方法に関する。代表的な実施例では、植え込み可能な心臓弁装置が、第1の端部分および第2の端部分を含む主要本体を含む。主要本体は、心臓弁の天然の尖の周りに植え込まれるように構成され、これにより、第1の端部分は尖の心房側にあり、第2の端部分は尖の心室側にあり、かつ、主要本体は、心臓弁の手術中に向かい合う天然の尖と接合し、またこれから離れることができる。第1または第2の端部分のうちの一方は、連結組立体を含み、第1または第2の端部分のうちのもう一方は、心臓弁装置が心臓弁に植え込まれたときに連結機構に係合するよう天然の尖を通って延びるように構成された連結部材を含む。
【0009】
別の代表的な実施形態では、組立体が、第1の端部分および第2の端部分を有する主要本体を含む植え込み可能な心臓弁装置を含む。主要本体は、心臓弁の天然の尖の周りに植え込まれるように構成され、これにより、第1の端部分は尖の心房側にあり、第2の端部分は尖の心室側にあり、かつ、主要本体は、心臓弁の手術中に向かい合う天然の尖と接合し、またこれから離れることができる。第1の端部分は、連結組立体を含み、第2の端部分は、心臓弁装置が心臓弁に植え込まれたときに連結組立体に係合するよう天然の尖を通って延びるように構成された連結部材を含む。組立体は、心臓弁装置の第1の端部分に解放可能に連結可能な遠位端部分を有するシャフトを含むカテーテルをさらに含む。
【0010】
別の代表的な実施形態では、方法は、ループに形成され、患者の身体の天然の心臓弁の尖を通って延びるガイドワイヤを介して、植え込み可能な心臓弁装置を天然の心臓弁に送達し、これによってガイドワイヤの第1および第2の端部が、患者の身体の外側に位置するようにすることを含む。方法は、心臓弁装置の第1の端部分を尖の心房側に位置付けることをさらに含む。第1の端部分は連結組立体を含む。方法は、心臓弁装置の第2の端部分を尖の心室側に位置付けて、これによって心臓弁装置の主要本体が、心臓弁の手術中に向かい合う天然の尖と接合し、またこれから離れることができるようにすることをさらに含む。第2の端部分は連結部材を含む。方法は、尖を通じて連結部材を挿入することによって心臓弁装置の第1の端部分を心臓弁装置の第2の端部分に連結させて、これによって連結組立体が連結部材に係合するようにすることをさらに含む。
【0011】
開示されたテクノロジーの前述した目的、特徴部、および利点ならびに他の目的、特徴部、および利点は、添付図面を参照して進める、以下の詳細な説明からさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態による、僧帽弁逆流を治療するための補綴装置が僧帽弁後尖に植え込まれた、心臓の断面図である。
図2】装置の第1および第2の端部分を互いに連結するための連結機構を含む図1の補綴装置の斜視図である。
図3】第1および第2の端部分が非連結状態にある装置を通過するガイドワイヤを示す図1の補綴装置の斜視図である。
図4】ループを形成するために僧帽弁の天然の尖を通って延びるガイドワイヤを示す心臓の断面図である。
図5】送達カテーテルに連結された図1の補綴装置の斜視図である。
図6図5の送達カテーテルの遠位端部分の正面図である。
図7】補綴装置のキャップ部材およびカテーテルの遠位端部分が断面で示され、送達カテーテルの第1および第2のアクチュエータ部材が近位位置にある、図1の補綴装置および図5の送達カテーテルの側面図である。
図8】補綴装置のキャップ部材およびカテーテルの遠位端部分が断面で示され、送達カテーテルの第1および第2のアクチュエータ部材が遠位位置にある、図1の補綴装置および図5の送達カテーテルの側面図である。
図9】装置の第1および第2の端部分を互いに連結する前に後尖の周りに位置する図1の補綴装置を示す僧帽弁の部分断面図である。
図10】装置の第1および第2の端部分が連結部材によって互いに連結された、後尖の周りに位置する図1の補綴装置を示す僧帽弁の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書には、ヒトの心臓の僧帽弁、大動脈弁、三尖弁、または肺動脈弁の領域のうちの1つに植え込まれることが主に意図された補綴装置、ならびにそれを植え込むための器具および方法の実施形態が記載される。ある実施形態では、補綴装置は、欠陥のある天然の僧帽弁の機能性を回復させ、かつ/または入れ替えるのを助けるよう使用され得る。開示される実施形態は、決して限定的なものとして解釈すべきではない。代わりに、本開示は、単独の、また、互いとのさまざまな組み合わせおよび部分的組み合わせにおける、さまざまな開示される実施形態の新規で非自明のすべての特徴部および態様に向けられている。
【0014】
図1は、一実施形態による、補綴装置100が僧帽弁14の後尖12に固定された、ヒトの心臓10の断面図を示す。装置は、第1の端部分104および第2の端部分106を含む主要本体102を含み得る。配備された構成では、主要本体102は、尖12に巻かれるか、または別様に尖12の周りに配され得、これにより、第1の端部分104は、左心房18の中に配され、尖12の心房表面を覆い、第2の端部分106は、左心室20の中に配され、尖の心室表面を覆う。
【0015】
図2および図3は、装置100をさらに詳細に示す。示される実施形態では、主要本体102は、非外傷性カバー110で覆われた、編んだ管状メッシュ108を含み得る。編んだメッシュ108は、心臓の内側で送達カテーテルまたはシースから解放されると所望の形状を回復し得る、ニチノールまたは他の弾性的に変形可能かつ/もしくは形状設定可能な材料で作られ得る。いくつかの実施形態では、編んだメッシュ108およびカバー110により、主要本体102は、参照により本明細書に組み込まれる特許文献1にさらに記載されるように、長さ方向に短くなると横方向に膨張し、長さ方向に長くなると横方向に収縮することができる。いくつかの実施形態では、編んだメッシュ108は、非偏向状態にあるときに湾曲形状を有するように形状設定され得る。
【0016】
図2および図3を参照すると、第1の端部分104はキャップ部材112を含み得、第2の端部分106はキャップ部材114を含み得る。図2に示すように、キャップ部材112は、インプラント100の主要本体に(例えば、編んだメッシュ108に)連結され得、ハウジング部分118を含み得る。ハウジング部分118は、第1の開口部120、第2の開口部122、および、開口部120と開口部122との間に延びる通路124を画定し得る。いくつかの実施形態では、キャップ部材112は、主要本体102の内部へと開いていてよく、これによって、ハウジング部分118およびインプラントの主要本体は、互いと流体連通している。キャップ部材112はまた、ハウジング部分118を通って横方向に延びる、開口部115(図3)などの開口部を画定することができ、以下でさらに説明するように、これに縫合糸が通されてインプラント100を送達カテーテルに連結することができる。図3に最もよく示すように、キャップ部材114は、内部通路130と、キャップ部材114の上面に沿って延びるスロット132と、を画定し得る。
【0017】
再び図2を参照すると、装置100は、第1の端部分104および第2の端部分106を互いに解放可能かつ/または調節可能に連結するように構成された、全体が134で示される連結機構を含み得る。例えば、示された構成では、連結機構134は、連結部材138に係合するように構成された連結組立体136を含み得る。いくつかの実施形態では、連結組立体136は、装置の第1の端部分104に組み込まれ得、連結部材138は、第2の端部分106に連結され得、かつ、連結組立体に係合するように第2の端部分から延び得る。
【0018】
例えば、示された構成では、連結組立体136は、キャップ部材112の内部通路124に位置する。連結組立体136は、第1の位置(図7)と第2の位置(図8)との間を動くことができる歯止め部材140を含み得る。歯止め部材140は、連結部材138に係合するように構成された第1の端部分142と、バネ部材146に係合するように構成された第2の端部分144と、を含み得る。歯止め部材140は、ピボット部材148の周りを旋回するように構成され得る。バネ部材146は、歯止め部材を第1の位置に向けて付勢するように構成され得る。歯止め部材の第2の端部分144に力を加えると、バネ部材146が圧縮され、歯止め部材が第2の位置に向けて旋回することができる。
【0019】
示された実施形態では、連結部材138は、複数の巻き線150を含むコイルとして構成される。連結部材138は、キャップ部材114に連結され得、連結組立体136と係合されるとスロット132を通って延びることができる。いくつかの実施形態では、連結部材138は、スロット132内部でキャップ部材114に対して動くことができるように、可撓性であってよい。ある構成では、キャップ部材114の反対側の連結部材138の端部分116(図3)が、天然の尖の組織を通じた連結部材の挿入を容易にするようにテーパー状にされてもよい。例えば、ある構成では、コイルの1つまたは複数の巻き線150は、コイルの端部分116がテーパー状の輪郭を有するように、研磨され得る。
【0020】
再び図2を参照すると、歯止め部材140は、連結部材138の巻き線150に係合するように構成され得る。矢印151の方向への連結部材138の動きにより、歯止め部材140は反時計回りに旋回し、バネ部材146が圧縮され、連結部材の連続する巻き線150が、歯止め部材を通り過ぎて前進することができる。このように、歯止め部材140を通り過ぎて前進する連結部材138の長さの部分が調節され得る。
【0021】
インプラント100は、前述した参照により組み込まれる特許文献1に詳細に記載されるように、経中隔的に左心室まで前進され、(例えば、天然の弁の弁輪に隣接する尖の基部の近くの)標的の尖を通じて挿入され、患者の身体を通ってアクセス部位まで戻る、ガイドワイヤまたは縫合糸を用いて、送達され得る。このように、ガイドワイヤは、ワイヤの両端部が患者の身体の外側に位置する状態でループを形成する。図4は、ループを形成するため、弁輪16に隣接して天然の尖12を通って延びる、このようなガイドワイヤ152を示す。
【0022】
ガイドワイヤ152は、インプラントがガイドワイヤに沿って治療部位まで前進され得るように、インプラント100を通って延び得る。例えば、図3を参照すると、ガイドワイヤ152の第1の部分154は、キャップ部材112の通路124(図2)内へと開口部120を通って、またインプラントの主要本体102を通って延び得る。ガイドワイヤ152は、キャップ部材114を通って、かつ連結部材138を通って同軸に、延び得る。ガイドワイヤ152は次に、開口部122から開口部120までキャップ部材112を通って戻ってよく、これによって、ガイドワイヤの第2の部分156は、キャップ部材112から現れ、患者の体内を通ってアクセス部位まで戻る。
【0023】
図5を参照すると、送達構成では、インプラント100は、送達カテーテル160として構成された第1のカテーテルのシャフト158に連結され得る。いくつかの実施形態では、送達カテーテル160は、患者の脈管構造を通って治療部位まで挿入されるよう、インプラント100を相対的にまっすぐで半径方向に潰れた構成に拘束するように構成された送達シース(不図示)内部に同軸に配され得る。インプラント100が治療部位に到達すると、図5に示すように、送達シースから前進され得、また、その機能的構成をとることができる。
【0024】
図7および図8は、送達カテーテル160のシャフト158の遠位端部分166をさらに詳細に示す。シャフト158の遠位端部分166は、端部分またはキャップ部材168を含み得る。キャップ部材168は、一対の延長部分またはアーム170A、170Bを含み得、これらは、シャフト158がインプラント100に連結されると少なくとも部分的にキャップ部材112の上を延びることができる。図6に最もよく示されているように、アーム170A、170Bは、それぞれの内腔172A、172Bを画定し得る。いくつかの実施例では、縫合糸174(図5)または他のフィラメントが、内腔172Aから、キャップ部材112を通って(例えば、開口部115を通って)横方向に延びて、内腔172Bを通ってキャップ部材168に戻ることができる。このように、インプラント100は、送達カテーテル160に連結され(例えば、つながれ)得る。ある構成では、ピボット部材148は、開口部115に受容され得、縫合糸174が通過し得る内腔を画定し得る。いくつかの構成では、インプラント100は、ピボット部材148を中心として、かつ/または縫合糸174を中心として、アーム170Aとアーム170Bとの間を旋回可能であってよい。
【0025】
送達カテーテル160は、キャップ部材114に対するキャップ部材112の動きを制限するのに役立ち得る。よって、ガイドワイヤ152の一方または両方の部分154、156に張力を加えると、図3に示すように、インプラントの主要本体102内部のガイドワイヤの長さが減少し得る。これによって、次に、インプラントは、キャップ部材114がキャップ部材112に隣接するように、丸くなることができる。このように、ガイドワイヤ152上に同軸に配された連結部材138は、歯止め部材140が連結部材の巻き線150に係合するように、キャップ部材112に受容され得る。キャップ部材112を通って連結部材138が近位に動き続けると、連結部材の巻き線150を、ラチェットのように歯止め部材140を越えて前進させ続けることによって、インプラントが締まり得る。いくつかの実施形態では、歯止め部材140の第1の端部分142は、第1の端部分に対する下向きの力によって、歯止め部材が係合する連結部材の巻き線をクランプするかまたはこれに「食い込む」ように、湾曲し得る。このように、連結部材138の不注意な遠位への動きを防止することができる。
【0026】
図7および図8に戻ると、送達カテーテル160はまた、第1のアクチュエータ部材176と、第2のアクチュエータ部材178と、を含むことができる。示された構成では、第1のアクチュエータ部材176は、キャップ部材168の開口部180を通って延びることができ、近位位置(図7)と遠位位置(図8)との間を動くことができ得る。示された実施形態では、ガイドワイヤ152の第1の部分154は、アクチュエータ部材176の内腔を通ってインプラント100内に延び得るが、他の構成も可能である。ある構成では、アクチュエータ部材176の遠位端部分184は、以下でさらに説明するように、歯止め部材140に接触するのを助けるように球状の形状を有し得る。
【0027】
示された構成では、第2のアクチュエータ部材178は、第1のアクチュエータ部材176の下に位置することができ、キャップ部材168の開口部182を通って近位位置(図7)と遠位位置(図8)との間を動くこともでき得る。ガイドワイヤ152の第2の部分156は、連結部材138から、アクチュエータ部材178の内腔内へ延びることができる。いくつかの実施形態では、アクチュエータ部材178の遠位端部分186は、アクチュエータ部材176と同じような球状の形状、または任意の他の適切な形状を、所望通りに有し得る。
【0028】
図9は、第1のキャップ部材112と第2のキャップ部材114とを互いに連結する前に尖12の周りに配されたインプラント100を示す。図9では、キャップ部材112は、弁輪16に隣接して尖12の心房表面上に配され、送達カテーテル160のキャップ部材168に連結される。主要本体102は、尖12の上を延び、キャップ部材114は、尖の心室表面に隣接して左心室20内に位置する。ガイドワイヤ152の部分154、156のうちの一方または両方に張力をかけることによって、キャップ部材114は、キャップ部材112が送達カテーテル160によって静止して保持されている間、尖12の心室表面に隣接して引っ張られ得る。連結部材138は、尖の組織を通って延び、キャップ部材112に隣接して尖の心房側に現れるように、ガイドワイヤ152上をたどることができる。ガイドワイヤ152にさらに張力をかけると、図10に示すように、連結組立体136が連結部材に係合するように、連結部材138がキャップ部材112に引き込まれ得る。
【0029】
再び図8を参照すると、第1のアクチュエータ部材176は、遠位位置まで前進すると、アクチュエータ部材の遠位端部分184が、歯止め部材140の第2の端部分144に接触し得るように、構成され得る。これによりバネ部材148が圧縮され得、歯止め部材140は第2の位置まで旋回して、連結部材138から係合解除される。歯止め部材140が連結部材138から係合解除されると、第2のアクチュエータ部材178は、遠位に前進し得る。第2のアクチュエータ部材178の遠位端部分186は、連結部材138の端部分116に接触するように構成され得る。アクチュエータ部材178がさらに遠位に動くと、連結部材138は矢印188の方向に(例えば、左心室20の方向に戻って)歯止め部材140を越えて動くことができる。
【0030】
このように、連結部材の位置、その結果、インプラント100の湾曲度、が調節され得る。ガイドワイヤ152に張力をかけると、連結部材138が歯止め部材140を越えて近位に引っ張られ、尖がキャップ部材112とキャップ部材114との間にクランプされて、主要本体102が尖12の形状に一致し得る。尖とインプラントとの接合、および/または弁を通る逆流が、次に評価され得る。インプラントの位置を調節することが望ましい場合、歯止め部材140は、アクチュエータ部材176を用いて連結部材138から係合解除され得、連結部材は、アクチュエータ部材178を用いてキャップ部材112を通って左心室20の方向に押し戻され得る。このプロセスは、補綴装置100の望ましい位置付けが達成されるまで、繰り返され得る。連結部材138は、例えばインプラント100を取り外すことが望ましい状況において、全体がキャップ部材112から押し出されることもできる。
【0031】
臨床医がインプラント100の設置に満足したら、送達カテーテル160は、縫合糸174を引き抜くことによってキャップ部材112から係合解除され得る。ガイドワイヤ152も、主要本体102から引き抜かれて、図1に示すように、インプラントを尖12上の所定の場所に残すことができる。
【0032】
他の実施形態では、連結部材138は、コイルである必要はないが、例えば、歯止め部材140に係合し得る隆起または歯を含む、中実の可撓性部材として、構成され得る。連結組立体136は、さまざまな異なる方法で構成されてもよい。例えば、他の実施形態では、歯止め部材140は、前述したように、キャップ部材112と一体的に形成され、かつ連結部材に係合するように構成された、タブ部材であってよい。
【0033】
一般論
この説明の目的で、本開示の実施形態のある態様、利点、および新規な特徴を本明細書に記載している。開示された方法、器具、およびシステムは、決して限定的なものとして解釈すべきではない。代わりに、本開示は、単独の、また互いとのさまざまな組み合わせおよび部分的組み合わせにおける、さまざまな開示された実施形態のすべての新規で非自明の特徴および態様に向けられている。方法、器具、およびシステムは、任意の特定の態様もしくは特徴またはそれらの組み合わせに限られず、開示された実施形態は、任意の1つもしくは複数の特定の利点が存在するか、または問題が解決されることを必要としない。
【0034】
開示された実施形態のうちのいくつかの動作は、便宜的な描写のため特定の連続した順序で記載されているが、この記載様式は、特定の順序が以下に記載する特定の文言に必要でない限り、配置変えを包含することを理解されたい。例えば、連続して記載される動作は、場合によっては、配置を変えられるか、または同時に実行され得る。さらに、単純化するため、添付図面は、開示される方法が他の方法と共に使用され得るさまざまな方法を示しているわけではないかもしれない。さらに、説明では、開示される方法を説明するために「提供する」または「達成する」のような用語を使用する場合がある。これらの用語は、実行される実際の動作の高レベルな抽象概念である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実施態様に応じて変化する場合があり、当業者によって容易に認識可能である。
【0035】
本出願および特許請求の範囲で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈で別段明確に指定されていなければ、複数形を含む。さらに、用語「含む(includes)」は「含む(comprises)」を意味する。さらに、用語「連結された(coupled)」および「関連付けられた(associated)」は、一般的には、電気的、電磁気的、および/または物理的に(例えば、機械的もしくは化学的に)連結またはリンクされることを意味し、特定の反対語がない限り、連結されるか、または関連付けられたアイテム間の中間要素の存在を排除するものではない。
【0036】
開示される実施形態が、心臓の天然の弁(例えば、肺動脈弁、僧帽弁、および三尖弁)のいずれかと共に使用されるように適合され得、かつさまざまなアプローチ(例えば、逆行性、順行性、経中隔、経心室、経心房など)のうちのいずれかで使用され得ることを理解されたい。
【0037】
本明細書で使用される用語「近位」は、ユーザに近接していて植え込み部位からさらに離れている、装置の位置、方向、または部分を指す。本明細書で使用される用語「遠位」は、ユーザからさらに離れていて植え込み部位に近接している、装置の位置、方向、または部分を指す。よって、例えば、装置の近位への動きは、ユーザに向かう装置の動きであり、装置の遠位への動きは、ユーザから離れる装置の動きである。用語「長手方向」および「軸方向」は、別段明確に定義されていない限り、近位方向および遠位方向に延びる軸を指す。
【0038】
本明細書で使用される用語「一体的に形成された」および「一体構造」は、いかなる溶接部、ファスナ、または別々に形成された材料片を互いに固定するための他の手段も含まない構造を指す。
【0039】
開示されるテクノロジーの原理が適用され得る多くの可能な実施形態を鑑みて、示される実施形態は、単に好適な実施例であり、開示の範囲を制限するものとして理解すべきではないことを認識されたい。むしろ、開示の範囲は、少なくとも以下の特許請求の範囲と同じような広さである。
【符号の説明】
【0040】
10 心臓
12 後尖
14 僧帽弁
18 左心房
20 左心室
100 補綴装置
102 主要本体
104 第1の端部分
106 第2の端部分
108 編んだ管状メッシュ
110 非外傷性カバー
112 キャップ部材
114 キャップ部材
115 開口部
116 端部分
118 ハウジング部分
120 第1の開口部
122 第2の開口部
124 通路
130 内部通路
132 スロット
134 連結機構
136 連結組立体
138 連結部材
140 歯止め部材
142 第1の端部分
144 第2の端部分
146 バネ部材
148 ピボット部材
150 巻き線
152 ガイドワイヤ
154 第1の部分
156 第2の部分
158 第1のカテーテルのシャフト
160 送達カテーテル
166 遠位端部分
168 キャップ部材
170A アーム
170B アーム
172A 内腔
172B 内腔
174 縫合糸
176 第1のアクチュエータ部材
178 第2のアクチュエータ部材
180 開口部
182 開口部
184 遠位端部分
186 遠位端部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10