(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】導電性ウレタンフォーム及びトナー供給ローラ
(51)【国際特許分類】
C08J 9/42 20060101AFI20221206BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C08J9/42 CFF
G03G15/08 221
(21)【出願番号】P 2019532608
(86)(22)【出願日】2018-07-23
(86)【国際出願番号】 JP2018027558
(87)【国際公開番号】W WO2019022025
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2017143042
(32)【優先日】2017-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】522345803
【氏名又は名称】株式会社アーケム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】土井 広和
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-262997(JP,A)
【文献】特開2013-037197(JP,A)
【文献】特開2013-011726(JP,A)
【文献】特開2012-155207(JP,A)
【文献】特開昭61-019658(JP,A)
【文献】国際公開第2009/150953(WO,A1)
【文献】特開2009-109762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
G03G 15/08
F16C 13/00- 15/00
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンフォーム基材の表層に、導電剤を含有するバインダー樹脂が含浸してなる導電性ウレタンフォームであって、
前記バインダー樹脂が、シリコーン樹脂を含み、
前記導電剤がケッチェンブラックであり、前記導電性ウレタンフォームにおける前記ケッチェンブラックの含有量が、前記ウレタンフォーム
基材100質量部に対して、0.45~9.0質量部であることを特徴とする、導電性ウレタンフォーム。
【請求項2】
前記導電性ウレタンフォームにおける前記シリコーン樹脂の含有量が、前記ウレタンフォーム基材100質量部に対して、0.3~6.0質量部であることを特徴とする、請求項1に記載の導電性ウレタンフォーム。
【請求項3】
前記シリコーン樹脂が、過酸化物硬化シリコーン、縮合型熱硬化シリコーン、付加型熱硬化シリコーン及びカチオン型UV硬化シリコーンからなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の導電性ウレタンフォーム。
【請求項4】
前記導電性ウレタンフォームにおける前記シリコーン樹脂の含有量が、前記ウレタンフォーム基材100質量部に対して、0.3~6.0質量部であり、
前記バインダー樹脂を含有する含浸液の粘度が、5~300cpsであることを特徴とする、請求項1に記載の導電性ウレタンフォーム。
【請求項5】
前記バインダー樹脂中の前記シリコーン樹脂の含有量が、70質量%以上であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性ウレタンフォーム。
【請求項6】
前記バインダー樹脂を含有する含浸液が、水、トルエン又は酢酸エチルを含み、前記含浸液の粘度が、5~300cpsであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性ウレタンフォーム。
【請求項7】
前記バインダー樹脂を含有する含浸液が、水又は酢酸エチルを含み、前記含浸液の粘度が、5~300cpsであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性ウレタンフォーム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の導電性ウレタンフォームを用いたことを特徴とする、トナー供給ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ウレタンフォーム及びトナー供給ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機、プリンタ等の電子写真方式の画像形成装置等における現像部には、
図1に示すように、静電潜像を保持する感光体等の画像形成体11と、この画像形成体11に当接して表面に担持したトナー20を付着させることにより静電潜像を可視画像化する現像ローラ12と、この現像ローラ12にトナーを供給するためのトナー供給ローラ13とが設けられており、トナー15を、トナー収容部14からトナー供給ローラ13及び現像ローラ12を介して画像形成体11まで搬送する一連のプロセスにより、画像形成が行われる。
【0003】
このうち、トナー供給ローラ13は、接触する現像ローラ12を傷つけないこと、及び、ローラの接触面積を増してグリップ性を確実にすること等の観点から、軸の外周に、接着層を介してウレタンフォーム等の導電性弾性体を形成した構成が挙げられる。トナー供給ローラ13に要求される機能としては、トナー搬送性、トナー帯電性等があり、これらの機能を満足させるために、種々の方策がとられている。
【0004】
例えば、特許文献1~3には、トナー供給ローラを構成するポリウレタン発泡体に導電性カーボンブラック等の導電性処理液を含浸させることによって、トナー供給ローラの電気抵抗を下げ、トナー帯電量(Q/M)を落とし、トナー搬送量(M/A)を高めることを可能にする技術が開示されている。
ただし、特許文献1~3の技術では、いずれもウレタンフォームに導電材を含浸するものであるため、トナー供給ローラ13と、トナー供給ローラ上のトナー及び現像ローラとの摩擦による帯電の影響を十分に防止することができず、長期間安定的に良好な画像が得られないという問題があった。
【0005】
そのため、特許文献4では、トナー供給ローラ上のトナー及び現像ローラとの摩擦による帯電の影響を十分に防止し、安定した帯電性付与効果を高め、良好な画像を得る(ローラの安定性を向上する)ことを目的として、表層中に、ウレタンフォーム基材よりも帯電列において同等若しくは正側にある導電剤を有するバインダー樹脂を含浸したウレタンフォーム及びトナー供給ローラが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭57―115433号公報
【文献】特開2002―319315号公報
【文献】特開2003―215905号公報
【文献】特開2010-256708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献4に開示された技術によって、安定した帯電性付与効果を高め、良好な画像を得ることが可能となった。しかしながら、バインダー樹脂が含浸したウレタンフォームは、バインダー樹脂の含浸後、その硬度が高くなり、反発弾性が低下する傾向にあることから、その点についてさらなる改善が望まれていた。
【0008】
そのため、本発明の目的は、安定した帯電性付与効果を有しつつ、バインダー樹脂の含浸前後における硬度及び反発弾性の変化を抑えることができる、導電性ウレタンフォームを提供することにある。また、本発明の他の目的は、帯電性付与効果が高く、安定性に優れたトナー供給ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するべく検討を行った結果、ウレタンフォーム基材の表層に、導電剤を含有するバインダー樹脂が含浸してなる導電性ウレタンフォームとすることで、安定した帯電性付与効果を得ることができるとともに、バインダー樹脂の種類について適正化を図ることによって、バインダー樹脂の含浸前後における硬度及び反発弾性の変化を、従来技術に比べてより効果的に抑えることができることを見出した。
【0010】
即ち、本発明の導電性ウレタンフォームは、ウレタンフォーム基材の表層に、導電剤を含有するバインダー樹脂が含浸してなる導電性ウレタンフォームであって、前記バインダー樹脂が、シリコーン樹脂を含むことを特徴とすることを特徴とする。
上記構成を具えることによって、安定した帯電性付与効果を有しつつ、バインダー樹脂の含浸前後における硬度及び反発弾性の変化を抑えることができる。
【0011】
また、本発明の導電性ウレタンフォームについては、前記導電性ウレタンフォームにおける前記シリコーン樹脂の含有量が、前記ウレタンフォーム基材100質量部に対して、0.3~6.0質量部であることが好ましい。バインダー樹脂の含浸前後における硬度及び反発弾性の変化をより低減できるためである。
【0012】
さらに、本発明の導電性ウレタンフォームについては、前記導電剤が、ケッチェンブラックであることが好ましく、前記導電性ウレタンフォームにおける前記ケッチェンブラックの含有量が、前記ウレタンフォームの基材100質量部に対して、0.45~9.0質量部であることがより好ましい。バインダー樹脂の含浸前後における硬度及び反発弾性の変化をより低減できるためである。
【0013】
前記シリコーン樹脂が、過酸化物硬化シリコーン、縮合型熱硬化シリコーン、付加型熱硬化シリコーン及びカチオン型UV硬化シリコーンからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。バインダー樹脂の含浸前後における硬度及び反発弾性の変化をより低減できるためである。
【0014】
本発明のトナー供給ローラは、上述した本発明の導電性ウレタンフォームを用いてなることを特徴とする。
上記構成を具えることによって、高い帯電付与効果及び優れた安定性を実現できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、安定した帯電性付与効果を有しつつ、バインダー樹脂の含浸前後における硬度及び反発弾性の変化を抑えることができる、導電性ウレタンフォームを提供することができる。また、本発明によれば、帯電性付与効果が高く、安定性に優れたトナー供給ローラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】画像形成装置の一例を模式的に示した部分断面図である。
【
図2】本発明のトナー供給ローラの一実施形態を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、必要に応じて図面を用いて説明する。
<導電性ウレタンフォーム>
本発明の導電性ウレタンフォームは、ウレタンフォーム基材の表層に、導電剤を含有するバインダー樹脂が含浸してなる。
ウレタンフォーム基材の表層に、導電剤を含有するバインダー樹脂が含浸されていることによって、安定して帯電性付与効果を発現することができ、良好な画像を得ることができる。
【0018】
(ウレタンフォーム基材)
本発明の導電性ウレタンフォームを構成するウレタンフォーム基材については、特に限定はされず、用途や目的に応じて、公知のウレタンフォームを適宜用いることができる。
【0019】
前記ウレタンフォーム基材については、例えば、2個以上の活性水素を有する化合物と2個以上のイソシアネート基を有する化合物を、触媒、発泡剤、整泡剤等の添加剤と共に攪拌混合して発泡・硬化させることにより製造できる。例えば、800~3600の平均分子量差を有する2種類の単一ジオールを含む単一ジオールの混合物を、ポリオール成分に対して総量で50質量%以上含むポリエーテルポリオールと、イソシアネートと、水と、触媒と、発泡剤とを混合し、発泡させ、放置することにより製造することができる。
【0020】
ここで、「単一ジオール」とは、1種のジオール又は平均分子量の差が400以内の2種以上のジオール群を総称する意味に用いられる。また、「平均分子量差」とは、対象となるジオールが各々有する平均分子量の差分を表し、組み合わせが多種類ある場合には、特に、最大の差分を表す意味に用いられる。
【0021】
前記プレポリマーの製造に用いられるポリオール成分としては、例えば、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、酸成分とグリコール成分とを縮合したポリエステルポリオール、カプロラクトンを開環重合したポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール等を用いることができる。
【0022】
本発明において、前記ウレタンフォーム基材を製造する際に用いられるポリエーテルポリオールとしては、例えば、(A)ジエチレングリコールにプロピレンオキサイドのみを付加させたタイプのポリエーテルポリオール、また、(B)ジエチレングリコールにプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドをブロック又はランダムに付加させたタイプのポリエーテルポリオール、さらに、(C)前記(A)又は(B)に例えばアクリルニトリルやスチレンをグラフトしたタイプのポリエーテルポリオール、等が挙げられる。その中でも、より効果を発揮するためには、(A)タイプのポリエーテルポリオールであることが好ましい。
【0023】
前記ポリエーテルポリオールを製造するために用いられる開始剤としては、多価アルコール、多価フェノール、モノ若しくはポリアミン、その他のものが挙げられるが、好ましくは多価アルコール及び多価フェノールであり、さらに好ましくは多価アルコールであり、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール等が含まれ、この中でもジエチレングリコールが特に好ましい。
【0024】
また、前記ポリエーテルポリオール成分には、ジオール以外のポリオール成分も含み得る。このようなポリオール成分としては、通常、ウレタンフォーム基材の製造に使用される3官能の、例えば、グリセリンベースにプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させたもの、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイド等の2種のアルキレンオキサイドをランダム若しくはブロックで付加させたもの等が挙げられ、多官能のものとしては、例えば、サッカロースベースに前記と同様のものを付加させたポリエーテルポリオール、等が挙げられる。
【0025】
エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオールとしては、例えば、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、メチルグルコシド、芳香族ジアミン、ソルビトール、ショ糖、リン酸等を出発物質とし、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したものを挙げることができるが、特に、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールを出発物質としたものが好適である。付加するエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの比率やミクロ構造については、エチレンオキサイドの比率が好ましくは2~95質量%、より好ましくは5~90質量%であり、末端にエチレンオキサイドが付加しているものが好ましい。また、分子鎖中のエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの配列は、ランダムであることが好ましい。
【0026】
なお、かかるポリエーテルポリオールの分子量としては、水、プロピレングリコール、エチレングリコールを出発物質とする場合は2官能となり、重量平均分子量で300~6000の範囲のものが好ましく、3000~5000の範囲のものがより好ましい。また、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールを出発物質とする場合は3官能となり、重量平均分子量で900~9000の範囲のものが好ましく、4000~8000の範囲のものがより好ましい。さらに、2官能のポリオールと3官能のポリオールとを適宜ブレンドして用いることもできる。
【0027】
また、ポリテトラメチレンエーテルグリコールは、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合によって得ることができ、重量平均分子量が400~4000の範囲、特には、650~3000の範囲にあるものが好ましく用いられる。また、分子量の異なるポリテトラメチレンエーテルグリコールをブレンドすることも好ましい。さらに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを共重合して得られたポリテトラメチレンエーテルグリコールを用いることもできる。
【0028】
さらに、ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオールとを、ブレンドして用いることも好ましい。この場合、これらのブレンド比率が、質量比で95:5~20:80の範囲、特には90:10~50:50の範囲となるように用いることが好適である。
【0029】
また、前記ポリオール成分とともに、ポリオールをアクリロニトリル変性したポリマーポリオール、ポリオールにメラミンを付加したポリオール、ブタンジオール等のジオール類、トリメチロールプロパン等のポリオール類やこれらの誘導体を併用することもできる。
【0030】
前記ポリイソシアネート成分としては、芳香族イソシアネート又はその誘導体、脂肪族イソシアネート又はその誘導体、脂環族イソシアネート又はその誘導体が用いられる。これらの中でも芳香族イソシアネート又はその誘導体が好ましく、特に、トリレンジイソシアネート(TDI)又はその誘導体、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)又はその誘導体、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート又はその誘導体が好適に用いられ、単体若しくは混合して使用される。
【0031】
トリレンジイソシアネート又はその誘導体としては、粗製トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートとの混合物、これらのウレア変性物、ビュレット変性物、カルボジイミド変性物、ポリオール等で変性したウレタン変性物等が用いられる。ジフェニルメタンジイソシアネート又はその誘導体としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン又はその誘導体をホスゲン化して得られたジフェニルメタンジイソシアネート又はその誘導体が用いられる。ジアミノジフェニルメタンの誘導体としては多核体等があり、ジアミノジフェニルメタンから得られた純ジフェニルメタンジイソシアネート、ジアミノジフェニルメタンの多核体から得られたポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネート等を用いることができる。ポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートの官能基数については、通常、純ジフェニルメタンジイソシアネートと様々な官能基数のポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物が用いられ、平均官能基数が好ましくは2.05~4.00、より好ましくは2.50~3.50のものが用いられる。また、これらのジフェニルメタンジイソシアネート又はその誘導体を変性して得られた誘導体、例えば、ポリオール等で変性したウレタン変性物、ウレチジオン形成による二量体、イソシアヌレート変性物、カルボジイミド/ウレトンイミン変性物、アロハネート変性物、ウレア変性物、ビュレット変性物等も用いることができる。また、数種類のジフェニルメタンジイソシアネートやその誘導体をブレンドして用いることもできる。
【0032】
前記プレポリマー化の方法としては、ポリオールとイソシアネートを適切な容器に入れて十分に攪拌し、30~90℃、より好ましくは40~70℃で、6~240時間、より好ましくは24~72時間保温する方法が挙げられる。この場合、ポリオールとイソシアネートとの分量の比率は、得られるプレポリマーのイソシアネート含有率が4~30質量%となるように調節することが好ましく、より好ましくは6~15質量%である。イソシアネートの含有率が4質量%未満であると、プレポリマーの安定性が損なわれ、貯蔵中にプレポリマーが硬化してしまい、使用に供することができなくなるおそれがある。また、イソシアネートの含有率が30質量%を超えると、プレポリマー化されていないイソシアネートの含有量が増加し、このポリイソシアネートは、後のポリウレタン硬化反応において用いるポリオール成分との、プレポリマー化反応を経ないワンショット製法に類似の反応機構により硬化するため、プレポリマー法を用いる効果が薄れる。
【0033】
なお、前記ウレタンフォーム基材の硬化反応に用いる触媒としても、特に限定はされない。例えば、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン等のモノアミン類、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルプロパンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン等のジアミン類、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、テトラメチルグアニジン等のトリアミン類、トリエチレンジアミン、ジメチルピペラジン、メチルエチルピペラジン、メチルモルホリン、ジメチルアミノエチルモルホリン、ジメチルイミダゾール等の環状アミン類、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、トリメチルアミノエチルエタノールアミン、メチルヒドロキシエチルピペラジン、ヒドロキシエチルモルホリン等のアルコールアミン類、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、エチレングリコールビス(ジメチル)アミノプロピルエーテル等のエーテルアミン類、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マーカプチド、ジブチル錫チオカルボキシレート、ジブチル錫ジマレエート、ジオクチル錫マーカプチド、ジオクチル錫チオカルボキシレート、フェニル水銀プロピオン酸塩、オクテン酸鉛等の有機金属化合物等が挙げられる。これらの触媒は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
(バインダー樹脂)
そして、本発明の導電性ウレタンフォームでは、前記バインダー樹脂が、シリコーン樹脂を含むことを特徴とする。
従来バインダー樹脂として用いられていなかったシリコーン樹脂を、バインダー樹脂として用いることによって、前記ウレタンフォーム基材へ含浸させた後のウレタンフォームの硬質化を抑えることができる結果、ウレタンフォームの硬度及び反発弾性の変化を最小限に抑えることが可能となる。
【0035】
なお、前記ウレタンフォーム基材の表層とは、前記ウレタンフォームの骨格に、導電剤を含有するバインダー樹脂がコーティングされることにより、形成した層のことである。本発明では、少なくとも表面に、前記バインダー樹脂が含浸していれば本発明の効果を奏することができるため、表層(バインダー樹脂がコーティングされた層)の厚みについては特に限定されない。
また、前記バインダー樹脂による前記ウレタンフォームへの含浸は、前記ウレタンフォームの少なくとも一部の表層に含浸すればよいが、ウレタンフォームの硬度及び反発弾性の変化を最小限に抑える観点からは、前記ウレタンフォーム基材全体の表層に含浸することが好ましい。
【0036】
ここで、前記バインダー樹脂に含まれるシリコーン樹脂の含有量は、ウレタンフォームの硬度及び反発弾性の変化をより抑えることができる観点から、前記バインダー樹脂中の50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0037】
また、本発明の導電性ウレタンフォームにおける前記シリコーン樹脂の含有量については、前記ウレタンフォームの基材100質量部に対して、0.3~6.0質量部であることが好ましく、1.0~6.0質量部であることがより好ましく、2.0~6.0質量部であることがさらに好ましく、5.0~6.0質量部であることが特に好ましい。ウレタンフォームの硬度及び反発弾性の変化をより抑えることができるためであり、前記シリコーン樹脂の含有量が前記ウレタンフォームの基材100質量部に対して0.3質量部未満の場合は、カーボンがウレタンフォームに接着できず脱落するおそれがあり、6.0質量部を超える場合には、導電性ウレタンフォームの物性が変化し、硬度及び反発弾性の変化を十分に抑えることができないおそれがある。
【0038】
なお、前記バインダー樹脂中に含まれるシリコーン樹脂の種類については、シロキサン結合による主骨格をもつ高分子化合物であれば特に限定はされず、目的や用途に応じて、適宜シリコーン樹脂を選択して用いることができる。例えば、前記シリコーン樹脂を前記ウレタンフォーム基材に含浸させるための、加工性や密着性を向上させる観点からは、前記シリコーン樹脂として、液状シリコーンゲルの主剤と、硬化剤とから構成されるシリコーン樹脂であることが好ましい。そのようなシリコーン樹脂としては、例えば、付加反応型液状シリコーン樹脂、過酸化物を加硫に用いる熱加硫型ミラブルタイプのシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0039】
また、前記シリコーン樹脂については、ウレタンフォームの硬度及び反発弾性の変化をより抑えることができる観点からは、過酸化物硬化シリコーン、縮合型熱硬化シリコーン、付加型熱硬化シリコーン及びカチオン型UV硬化シリコーンからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0040】
なお、前記バインダー樹脂については、上述したシリコーン樹脂以外にも、本発明の効果を阻害しない範囲で、アクリル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、アクリル酸-スチレン共重合体樹脂、アクリル酸-酢酸ビニル共重合体樹脂等のアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、クロロプレンゴム等をさらに含有することができる。これらの成分は、単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0041】
なお、前記バインダー樹脂については、適量の水や、トルエン、酢酸エチル等の溶媒を、さらに添加した含浸液として用いることができる。なお、前記溶媒は、前記含浸液の粘度が5~300cps(25℃)程度となるように添加することが好ましい。前記含浸液の粘度を上記範囲内とすることにより含浸付着作業がさらに容易になる。
【0042】
また、前記バインダー樹脂については、必要に応じて、前記含浸液中にその他の添加剤をさらに含有することもできる。前記添加剤については、消泡剤、界面活性剤、荷電制御剤等が挙げられる。これらの添加剤の含有量については、前記含浸液100質量部に対して、0.001~10質量部であることが好ましく、0.001~1質量部の範囲であることがより好ましい。
【0043】
(導電剤)
また、本発明の導電性ウレタンフォームに含浸されているバインダー樹脂は、導電剤を含有する。前記導電剤とは、前記バインダー樹脂を介して前記ウレタンフォーム基材中に含浸することで、ウレタンフォーム基材に導電性を付与できる材料である。具体的には、カーボン導電剤、イオン導電剤、電子導電剤等が挙げられ、これらを単独又は複数混合して用いることができる。
また、上述した導電剤の中でも、カーボン導電剤を用いることが好ましい。コストを抑えつつも、優れた帯電性付与効果が得られるためである。
【0044】
前記カーボン導電剤については、例えば、デンカブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のガスブラック、インクブラックを含むオイルファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ランプブラック等が挙げられる。これらのカーボン導電剤の中でも、ウレタンフォームの硬度及び反発弾性の変化をより抑えることができる観点からは、ケッチェンブラックを用いることが好ましい。
【0045】
さらに、前記ケッチェンブラックについては、本発明の導電性ウレタンフォームにおける前記ケッチェンブラックの含有量が、前記ウレタンフォームの基材100質量部に対して、0.45~9.0質量部であることが好ましく、1.0~9.0質量部であることがより好ましく、3.0~9.0質量部であることがさらに好ましく、7.5~9.0質量部であることが特に好ましい。ウレタンフォームの硬度及び反発弾性の変化をさらに高いレベルで抑制できるためである。
【0046】
なお、前記イオン導電剤については、例えば、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ステアリルトリメチルアンモニウム)、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、アルキル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩等のアンモニウム塩、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩等が挙げられる。
【0047】
また、前記電子導電剤の例としては、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属等を挙げることができる。
【0048】
<トナー供給ローラ>
本発明のトナー供給ローラは、上述した本発明の導電性ウレタンフォームを用いたことを特徴とする。
本発明の導電性ウレタンフォームを用いることによって、帯電性付与効果が高く、安定性に優れたトナー供給ローラを実現できる。
【0049】
前記トナー供給ローラとは、例えば、
図1に示すように、現像ローラ12へとトナー15を供給するためのローラ13であり、導電性を有する。
また、
図2は、本発明のトナー供給ローラの一例を模式的に示したものである。
図2では、本発明のトナー供給ローラが、軸1の外周に、接着層2を介して、本発明の導電性ウレタンフォーム3を担持してなる。
【0050】
なお、本発明のトナー供給ローラに用いられる軸1としては、特に制限はなく、いずれのものも使用し得るが、例えば、硫黄快削鋼等の鋼材にニッケルや亜鉛等のめっきを施したものや、鉄、ステンレススチール、アルミニウム等の金属製の中実体からなる芯金、内部を中空にくりぬいた金属製円筒体等の金属製シャフトを用いることができる。なお、本発明においては、かかる軸1の径をφ6mm未満、例えば、5.0mmとし、かつ、本発明の導電性ウレタンフォーム3の厚みを4.5mm未満、例えば、4.0mmとすることが好適である。これにより、ローラの軽量化を図ることができるとともに、本発明の導電性ウレタンフォーム3の薄層化によりマクロで見た時のウレタンフォームの弾性率が上がり、トナー掻き取り性が向上する。また、本発明の導電性ウレタンフォーム3の薄層化によるウレタンフォームの体積減少により、印字耐久時に本発明の導電性ウレタンフォーム3が含むトナー量が減少し、トナー燃費を抑制することができる。
【0051】
また、本発明のトナー供給ローラにおいては、
図2に示すように、軸1と荷電制御された導電性ウレタンフォーム3との間に、接着層2を設けることが好ましい。接着層2に用いる接着剤としては、融点120℃以上、特には130℃以上200℃以下のアジペート系ポリウレタン樹脂を主成分とする熱溶融型高分子接着剤を好適に用いることができる。
かかる接着剤の性状としては、フィルムやペレット等、いかなる形態であってもよい。また、接着層2の厚みは、好適には20~300μmであり、薄すぎると接着不良が発生し、厚すぎると好適なローラ抵抗が得られないため、いずれも好ましくない。なお、接着時における接着剤の溶融温度は、100℃以上、特には130℃以上200℃以下であって、接着剤の融点よりも低い温度とすることが好ましい。これにより、接着層2が半溶融状態となり、5V印加時のローラ抵抗を10
6~10
8Ω、100V印加時のローラ抵抗を10
2~10
4Ωと電圧依存性をコントロールすることがより容易になり、印字耐久初期の濃度を上げることが可能となる。
【0052】
なお、本発明のトナー供給ローラ13は、例えば、軸1の外周に、所望に応じ接着剤を介して本発明の導電性ウレタンフォーム3を形成した後、軸1と本発明の導電性ウレタンフォーム3とを所定の温度で加熱接着することにより製造することができる。
例えば、まず、バインダー樹脂、添加剤を混合してなる含浸液を調製し、この含浸液を満たした浴中に、ブロック状(16mm×1000mm×2000mm)の除膜処理を施していないウレタンフォームを浸漬し、2本のロール間で圧縮した後、開放して含浸液にウレタンフォームを含浸する。これを浴上に導いて、ニップロールに通して余分な含浸液を絞り、除去した後110℃の熱風炉にて10分間加熱乾燥し、荷電制御されたウレタンフォーム3を作製する。この方法により成形できる本発明の導電性ウレタンフォーム3は、機械的なガス封入により得られるものと比べて低硬度、具体的にはアスカーF硬度で30~90°の発泡体となる。
【0053】
また、軸1の外周には、フィルム状接着剤を巻回するか、またはペレット状接着剤を溶融、塗布することにより、接着剤の膜を形成する。その後、本発明の導電性ウレタンフォーム3に孔をあけて、この孔に接着剤付きの軸1を挿入する。その後、所定温度で加熱を行って、軸1と本発明の導電性ウレタンフォーム3とを接着層2を介して一体化させ、本発明の導電性ウレタンフォーム3の表面を研磨して所望の円筒形状とし、さらに、本発明の導電性ウレタンフォーム3の端部を裁断して所定形状とすることで、本発明のトナー供給ローラ13を得ることができる。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0055】
(実施例1~8、比較例1~3)
表1に示すような条件で、ウレタンフォーム基材の表層に、導電剤を含有するバインダー樹脂を含浸させた導電性ウレタンフォームを作製した。
その後、作製した実施例及び比較例の導電性ウレタンフォームの各サンプルについて、以下の評価を行った。
【0056】
(評価)
(1)バインダー樹脂の含浸前後におけるウレタンフォームの硬度変化
実施例及び比較例の各サンプルについてアスカーF硬度を測定した。具体的には、バインダー樹脂の含浸前後で、剛直な板の上にサンプルのウレタンフォームを載置し、高分子計器(株)製アスカーゴム硬度計F型を用いて測定した。硬度の測定は、サンプルのウレタンフォームを静かに載置した後、10秒経過時の値を読み取ることで測定した。測定結果を、表1に示す。
【0057】
(2)バインダー樹脂の含浸前後におけるウレタンフォームの反発弾性変化
実施例及び比較例の各サンプルについてウレタンフォームの反発弾性(%)を測定した。具体的には、バインダー樹脂の含浸前後で、JIS K 6400に準じて、水平台の上にサンプルのウレタンフォームを静置し、規定高さから鋼球を落下させて、跳ね返った高さを測定した。測定結果を、表1に示す。
【0058】
(3)導電性ウレタンフォームの抵抗値
実施例及び比較例の各サンプルについて、測定機((株)三菱ケミカルアナリテック製「ロレスタGX MCP-T700」)を用いて、印加電圧90Vの条件で、抵抗値(LogΩ・cm)を測定した。測定結果を、表1に示す。
【0059】
【0060】
*1 ウレタンフォーム、(株)ブリヂストン製、密度:60kg/m3、硬度:60(Ask-F)、通気性:90cc/cm2/sec
*2 アクリル樹脂(アクリルニトリル・アクリル酸アルキル共重合体エマルジョン)、エネックス(株)製、「BS-050301-1」、固形分:50%
*3 シリコーン樹脂(シリコーン樹脂水分散体)、エネックス(株)製、「BS-160617-1」、固形分:30~40%
*4 カーボンブラック(カーボンブラック水分散体)、御国色素(株)製、「PSMブラックA898」、固形分:30~40%
*5 ケッチェンブラック(ケッチェンブラック水分散体)、ライオンスペシャリティケミカルズ(株)製、「ライオンペーストW-311N」、固形分16.5%
*6 非結晶シリカ混合物、信越シリコーン(株)製、「KS-502」
【0061】
表1の結果から、各実施例の導電性ウレタンフォームは、各比較例の導電性ウレタンフォームに比べて、バインダー樹脂の含浸前後におけるウレタンフォームの硬度及び反発弾性のいずれについても変化が小さいことがわかった。また、各実施例の導電性ウレタンフォームは、抵抗値についても、低く抑えられていることがわかった。その結果、各実施例の導電性ウレタンフォームについては、硬度及び反発弾性の変化を抑制しつつ、抵抗値についても低く維持できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、安定した帯電性付与効果を有しつつ、バインダー樹脂の含浸前後における硬度及び反発弾性の変化を抑えることができる、導電性ウレタンフォームを提供することができる。また、本発明によれば、帯電性付与効果が高く、安定性に優れたトナー供給ローラを提供することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 軸
2 接着層
3 導電性ウレタンフォーム
11 画像形成体
12 現像ローラ
13 トナー供給ローラ
14 トナー収容部
15 トナー