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特許7189146小型ブラッグ格子パルス成形器を有するチャープパルス増幅レーザーシステム及び、これを近変換限界パルスを発生させるために動作させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】小型ブラッグ格子パルス成形器を有するチャープパルス増幅レーザーシステム及び、これを近変換限界パルスを発生させるために動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/10 20060101AFI20221206BHJP
   H01S 3/098 20060101ALI20221206BHJP
   H01S 3/067 20060101ALI20221206BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H01S3/10 Z
H01S3/098
H01S3/067
G02F1/01 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019553551
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 US2018025152
(87)【国際公開番号】W WO2018183683
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】62/478,123
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501012517
【氏名又は名称】アイピージー フォトニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アレックス・ユシム
(72)【発明者】
【氏名】ブルース・ジェンケット
(72)【発明者】
【氏名】アントン・ドロズジン
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・ヴィーナス
(72)【発明者】
【氏名】イゴール・サマルツェフ
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリー・ペストフ
(72)【発明者】
【氏名】アントン・リャブツェフ
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-526896(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0211600(US,A1)
【文献】特表2006-502407(JP,A)
【文献】国際公開第2006/129502(WO,A1)
【文献】特開2013-138055(JP,A)
【文献】特開平09-105964(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0206071(US,A1)
【文献】特開2005-321601(JP,A)
【文献】特表2017-507500(JP,A)
【文献】特開2001-053679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 -3/02
H01S 3/04 -3/0959
H01S 3/098-3/102
H01S 3/105-3/131
H01S 3/136-3/213
H01S 3/23 -4/00
G02F 1/00 -1/125
G02F 1/21 -7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある経路に沿って近変換限界(TL)サブナノ秒(sub-ns)パルスを放出するレーザー源と、TLパルスを引き延ばす第1のブラッグ格子(BG)と、チャープパルスを再圧縮する第2のBGと、アクチュエータのアレイと、を有して構成されたチャープパルス増幅(CPA)レーザーシステムの出力において、変換限界サブナノ秒(sub-ns)パルスを発生するための方法であって、
前記第1及び第2のBGのうち少なくとも一方を較正する段階であって、較正された前記BGが、間隔を開けられた複数の区画を有し、前記較正が、
一方の前記BGにわたる区画の周波数への対応を決定する段階と、
一方の前記BGにわたる温度のスペクトル位相に対する依存性または、電圧のスペクトル位相に対する依存性を決定する段階と、を含む、前記第1及び第2のBGのうち少なくとも一方を較正する段階と、
圧縮された各パルスのスペクトルにわたって、それぞれの区画について位相修正を計算し、それによって、所望の電圧または温度プロファイルを得る段階と、
前記所望の温度または電圧プロファイルを一方の前記BGに印加し、それによって、近変換限界圧縮サブnsパルスを出力するように、前記区画を選択的に作動させて一方の前記BGをチューニングする段階と、
を含み、
一方の前記BGが、前記アクチュエータのアレイを支持するためのベース及び、前記アクチュエータにそれぞれ結合された間隔を開けた複数の区画を有して構成され、
一方の前記BGが、前記ベースに取り付けられた単一の中央区画と、前記ベースの側部に配置されて前記中央区画に結合された複数の側部区画と、隣接する区画の間を引き延ばす複数の弾性構成要素と、を有して構成された、方法。
【請求項2】
チューニング可能な一方の前記BGの較正が、前記区画の周波数に対する依存性及び、温度のスペクトル位相に対する、または電圧のスペクトル位相に対する依存性の両方を決定するために、変調位相シフト法を使用して実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記温度または電圧のスペクトル位相に対する依存性が、区画ごとに異なり、または全ての区画について均一である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記位相修正の計算が、多光子イントラパルス干渉位相走査(MIIPS)、チャープ反転技術(CRT)またはdスキャンを利用する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
あるスペクトル帯域幅を有し、ある経路に沿って伝搬する近変換限界(TL)サブナノ秒(sub-ns)パルスを出力するように動作可能なモードロックレーザーと、
前記モードロックレーザーの下流において間隔を開けて配置され、結合されたTLサブnsパルスを引き延ばすように動作可能な第1のブラッグ格子(BG)と、
前記第1のBGの下流において間隔を開けて配置され、引き延ばされたパルスを再圧縮するように動作可能な第2のBGであって、前記第1または第2のBGの一方が、前記帯域幅の波長それぞれに対応する複数のチューニング可能な区画を有して構成された、第2のBGと、
各区画に結合されたアクチュエータのアレイと、
TLサブnsパルスのそれからの、圧縮されたパルスの帯域幅の各波長に関するスペクトル位相の逸脱を決定し、スペクトルをTLサブnsパルスのそれに調整するように、一方の前記BGの各区画へのスペクトル位相変化を選択的かつ制御可能に誘導する前記アクチュエータのアレイに結合される修正信号を出力するように動作可能な、パルス成形ユニットと、
を含み、
一方の前記BGが、前記アクチュエータのアレイを支持するためのベース及び、前記アクチュエータにそれぞれ結合された間隔を開けた複数の区画を有して構成され、
一方の前記BGが、前記ベースに取り付けられた単一の中央区画と、前記ベースの側部に配置されて前記中央区画に結合された複数の側部区画と、隣接する区画の間を引き延ばす複数の弾性構成要素と、を有して構成された、チャープパルス増幅(CPA)パルスレーザーシステム。
【請求項6】
前記第1及び第2のBGがそれぞれ、チャープファイバーブラッグ格子(CFBG)またはボリュームブラッグ格子(VBG)である、請求項5に記載のCPAレーザーシステム。
【請求項7】
一方の前記BGが、圧縮されたパルスにわたって所定の周波数の区画に対する依存性及び、スペクトル位相の温度に対する、またはスペクトル位相の電圧に対する依存性を有するように較正された、請求項5または6に記載のCPAレーザーシステム。
【請求項8】
前記パルス成形ユニットが、CRT方式、MIIPS方式またはdスキャン方式に基づく測定ユニットを含む、請求項5から7のいずれか一項に記載のCPAレーザーシステム。
【請求項9】
前記アクチュエータがそれぞれ、加熱素子または圧電素子を含む、請求項5から8のいずれか一項に記載のCPAレーザーシステム。
【請求項10】
前記モードロックレーザー、前記第1及び第2のBG並びに前記パルス成形ユニットを格納する筐体をさらに含む、請求項5から9のいずれか一項に記載のCPAパルスレーザーシステム。
【請求項11】
前記モードロックレーザーが、前記第1及び第2のBGの側部に、1つまたは複数の増幅ステージを有する主発振器パワー増幅器構成を有し、前記パワー増幅器が、ファイバー増幅器及び結晶ホスト希土類イオンドープ増幅器からなる群から選択された、請求項5から10のいずれか一項に記載のCPAレーザーシステム。
【請求項12】
一方の前記BGがさらに、各区画に結合された複数の抵抗器を含む、請求項5から11のいずれか一項に記載のCPAレーザーシステム。
【請求項13】
一方の前記BGがさらに、前記BGを支持し、各アクチュエータに結合された連続的な平板を含む、請求項5から12のいずれか一項に記載のCPAレーザーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡大縮小可能な出力パワー及び、改善されたパルス形状を有するチャープパルス増幅レーザーシステムに関する。特に、本発明は、チャープ光学パルスにわたって位相を修正することにより、パルスペデスタルを抑制するように動作可能である超高速ファイバーレーザーシステムを開示する。位相修正は、パルス診断システムからの信号に応答して、分散ブラッグ格子の複数の区画を選択的に加熱し、及び/または引き延ばすことによって実行される。
【背景技術】
【0002】
超高速パルスレーザーは、20ピコ秒未満と短く、数フェムト秒程度の短さであるパルスを発生する。これらのレーザーは、医療及び産業上の用途が発見された。多光子吸収プロセスは、レーザーの波長を材料の吸収バンドに重ねる必要がないため、ほとんどすべての材料は、このようなレーザーで加工可能である。
【0003】
超高速パルスは、光学パルスが光学コンポーネント/材料を通過して伝搬する際に生じる光学非線形性に起因して、パルスひずみの増大を示す。パルスは、形状の変化及び/または、時間的エンベロープの全持続時間を増大させるプレパルスもしくはポストパルスの形成を悪化させる。これは、多くの用途が図1に示されるように、いかなる時間的ペデスタルもなく、高いピークパワー及び高いパルスエネルギーを有する超高速パルスを必要とするため、問題である。時間的ペデスタルは、光学コンポーネントまたは、強度依存光学非線形性、最も多いのは自己位相変調(Self-Phase Modulation,SPM)を介して引き起こされる、より高次の分散に起因して生じうる。様々なパルス成形技術を用いて高次分散のほとんどを修正することが可能であることが示されている。
【0004】
SPMに関するしきい値を増大させる、より多くのパルスエネルギーを引き出すための1つのよく知られている方法は、チャープパルス増幅と呼ばれる。この方法では、パルスは、線形的にスペクトルエンベロープ内の各縦モードの位相を調整することによって、時間的に引き延ばされる。バルク格子、プリズム、ファイバー、チャープファイバーブラッグ格子またはチャープボリュームブラッグ格子が、この分散を導入することによって、パルスを引き延ばすのに使用されうる。次いで、このパルスは、SPMを導入しうるピークパワーに達する前に、より高いパルスエネルギーを達成する増幅材料を通して増幅されうる。最後に、パルスは、必要なパルスエネルギー及び超短パルスを達成するピコ秒またはフェムト秒のパルス持続時間に、パルスを再圧縮するマッチング分散素子で圧縮される。
【0005】
チャープパルス増幅(Chirp Pulse Amplification、CPA)法が、顕著なパルスエネルギーを引き出すために使用可能であっても、この方法は依然として制限がある。典型的な構成は、チャープの線形部分を補償する。より高次の分散技術は非線形チャープを補償するために必要とされるが、システム全体の大きさを増大させ、1ps未満の持続時間及び100nJを超えるパルスエネルギーを有するクリーンなペデスタルのない光学パルスを発生させるために最終調整を行う、高度な技術を有する作業者を必要とする。
【0006】
パルス成形を伴う多くの高度な技術が開発されている。位相及び/または強度は、様々な方法によって出力光学スペクトルにわたって調整される。共通の方法は、バルク光学格子及びレンズを空間的に使用して光学スペクトルをフーリエ領域にマップし、次いで位相変調器を用いて位相または強度を操作することである。残念ながら、光学パルスの光学スペクトルにわたって多数の画素を手動で調整するのは非常に時間を要する。
【0007】
手動調整における困難さは、多光子イントラパルス干渉位相走査(Multiphoton Intrapulse Interference Phase Scan,MIIPS)や、直接電場再構成に関するスペクトル位相干渉法(Spectral Phase Interferometry for Direct Electric Field Reconstruction、SPIDER)を含むがこれらに限定されない、パルスにわたって位相を調整するための自動化技術によって対処されてきた。これらの、またその他の自動化技術は、近変換限界(Transform Limited,TL)パルスを発生させる。これらの技術は、数分未満で、数十秒内に何度も光学スペクトルにわたって必要な位相を決定することができる自由空間パルス成形器に基づいている。さらに、様々な種類のネマティック液晶を含むそのような自由空間パルス成形器は、大型であり、複雑な自由空間アライメントを必要とするため、産業用途に最適化されていない。
【0008】
小型かつ頑丈であり、モノリシックな離散コンポーネントである、より高次の分散を補償するための代替的なコンポーネントは、ファイバーブラッグ格子(Fiber Bragg Grating,FBG)である。これらの文献は、CPAレーザーシステムにおいて必要となるような目的に応じてチャープされたパルスとは対照的に、導波路を通って伝搬する際の分散のために、チャープを獲得するナノ秒より長いパルスを教示している。これらの特許で取り扱われる長いパルスは、高出力短パルスCPAシステムにおいて特に関心のあるペデスタル状現象を呈しない。非線形FBGの導入から、多くのグループが、性能をさらに最適化しようとしてきた。調整可能な区画の数が増えるにつれ、最適なパルス形状のために各区画の設定を決定するために調整を手動で実行するのは困難になっている。
【0009】
そのため、CPAレーザーシステムの出力において近変換限界サブnsパルスを提供するために、制御可能な分散補償に適合されたチューニング可能なチャープストレッチャーまたはチャープ圧縮器を有するCPAレーザーシステムを提供することが望まれている。
【0010】
また、分散素子を較正するための変調位相シフト方式及び、較正された分散素子の多数のチャンネルについて位相修正を識別するためのチャープ反転技術を利用することによって、開示されたCPAレーザーシステムに実装される適合する分散補償のための方法を提供することが望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示される構造は、入射する光学パルスの位相を操作する複数の調整可能な区画を有する小型のチューニング可能なBGと、CPA構成のパルスレーザーシステム内の、パルス成形ユニットと呼ばれるパルス特性検出システムとを含み合わせることによって、この必要性に合致し、産業上の高ボリュームレーザー製造のための光学パルスを自動的に最適化する小型かつ頑丈な超高速ファイバーレーザーを作る。これは、扱いの困難な従来技術の自由空間パルス成形器を、CPA構成のファイバーレーザーシステム内のBG構成の成形器で置き換えることによって達成される。
【0012】
本発明の高パワー超短パルスレーザーシステムは、近フーリエ変換限界サブnsパルスを出力するモードロック発振器またはシードを有して構成される。実際上、完全な変換限界パルスを形成するのは非常に困難であるため、仮に典型的にそのようなパルスが近変換限界と呼ばれる場合であったとしても、本開示では「近」との用語は、純粋に明確性の目的のために省略されうる場合がある。結論として、レーザーからの超短パルスはそれぞれ、特定の光学帯域幅に関して可能な最も短い持続時間を有する。次いで、パルスは、周波数依存に対してほぼ線形的な群遅延を有するブラッグ格子を用いて、時間領域で引き延ばされる。CPAレーザーシステムに沿って伝搬すると、この関係は次第にその線形的特性を失ってパルスが幅広くなり、これは、所望のTL超短パルスを出力できるように修正されるべきである。
【0013】
本開示の1つの態様によれば、CPAレーザーシステムにおいて変換限界サブナノ秒(サブns)パルスを発生する方法は、以下のとおりである。まず、レーザーシステムに組み込まれた上流BG及び下流BGの少なくとも1つが、周波数の区画に対する依存性及び位相の温度(または電圧)に対する依存性に関して較正される。チャープ反転技術などの測定技術とともに、較正された成形器は、各圧縮パルスのスペクトルにわたって各区画について必要な位相修正を決定し、それによって、所望の、電圧または温度プロファイルを得る。次いで、区画が、パルス帯域の各周波数についてのスペクトル位相をTL超短パルスについての特性に調整するように選択的に作動されるように、決定されたプロファイルが区画分割されたBGに適用される。
【0014】
開示された方法の1つの特徴によれば、区画分割されたBGの較正は、周波数に対する区画及びスペクトル位相に対する温度の両方を決定するための変調位相シフト法を用いて実行される。代替的に、較正は、周波数に対する区画の依存性及びスペクトル位相に対する電圧の依存性を確立するように実行される。これら2つの特徴の実施は、各区画に対応するアクチュエータの種類に依存する。アクチュエータは、熱電冷却器または圧電トランスデューサから選択されうる。
【0015】
寄生パルスの減少またはペデスタルにつながる位相修正の計算は、多数の区画について位相修正を特定する複数の方法によって実現される。これらの方法または技術は、MIIPS、dスキャン、SPIDER、FROG、チャープ反転技術(CRT)などを含みうる。
【0016】
本開示のさらなる態様によれば、開示された方法は、本発明のCPAパルスレーザーシステムによって実現される。これは、それぞれある帯域幅を有し、ある経路に沿って伝搬する変換限界(TL)サブナノ秒(サブns)パルスを出力するように動作可能なモードロックレーザーを含む。TLパルスは、TLサブnsパルスを引き延ばすように動作可能な第1のまたは上流のBGに結合される。本発明のCPAレーザーシステムの光学コンポーネントに沿って伝搬すると、引き延ばされたパルスのスペクトル位相は、TLパルスの位相から逸脱し、第2のBGが再圧縮を行った後、特に明りょうになる。
【0017】
各周波数に関する位相逸脱は、複数の選択的にチューニング可能な区画を有して提供される第1及び第2のBGの1つにわたって印加される修正信号を出力するパルス成形ユニットによって測定される。具体的には、修正信号は、スペクトル位相をTLサブnsパルスのそれに調整するように、各区画において選択的かつ制御可能にスペクトル位相変化を誘導するアクチュエータのアレイに結合される。
【0018】
本開示の態様の1つの特徴によれば、上流及び下流のBGはそれぞれ、チャープファイバーブラッグ格子(CFBG)またはボリュームブラッグ格子(VBG)である。BGはまた、トレイシーまたはマルチネス型であってもよいが、これらはCFBG及びVBGよりは好ましくない。
【0019】
別の開示された特徴によれば、区画分割されたBGは、圧縮パルスにわたって、所定の周波数の区画に対する依存性及び、スペクトル位相の温度に対する、またはスペクトル位相の電圧に対する依存性を有するように較正される。
【0020】
さらに別の特徴によれば、パルス成形ユニットは、CRT方式、MIIPS方式またはdスキャン方式に基づく測定ユニットを含む。測定修正信号は、熱電冷却器(TEC)または圧電素子のいずれかでありうるアクチュエータに結合される。
【0021】
本発明のCPAレーザーシステムは、モードロックレーザー、第1及び第2のBG並びにパルス成形ユニットを収容する筐体内にパッケージされる。そのため、製造の観点からは、開示されたシステムは独立型ユニットであるか、またはより大きなシステムの一部であることができる。
【0022】
添付された特許請求の範囲にさらに記載されるように、上述の及びその他の構造的な特徴は、それぞれ他の本発明の構成とは別個に開示されているが、本明細書で開示された本発明の特徴の全ては互いに対して相補的であり、任意の可能な組み合わせで互いとともに使用可能である。
【0023】
前述の、及びその他の概念、特徴及び利点は、以下の図面とともに、以下で開示される本発明の構造の詳細からより容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】時間領域におけるペデスタルを示す。
図2】CPAレーザーシステムにおける波長に対する群遅延の関係を示す高度に概略化された図である。
図3】開示されるCPAレーザーシステムの光学概略図である。
図4図4AからCは、チャープ反転技術(Chirp Reversal Technique、CRT)を示す。
図5】CRTを組み込む、本発明のCPAレーザーシステムを示す。
図6図3の本発明のCPAレーザーシステムに組み込まれたCFBGパルス成形器の1つの実施形態を示す。
図7】開示されるCFBGパルス成形器の加熱を示す。
図8】開示されるCFBGパルス成形器のさらに別の実施形態を示す。
図9】開示されるCFBGパルス成形器のさらなる別の実施形態を示す。
図10】開示されるCFBGパルス成形器の別の実施形態を示す。
図11】開示されるCFBGパルス成形器のさらなる実施形態を示す。
図12図3の概略図においてパルス成形器として動作する本発明のVBG圧縮器を示す。
図13】開示されるCFBGパルス成形器を較正するための位相シフト方法を実施する試験ステーションを示す。
図14】位相シフト方法を用いたCFBGパルス成形器の波長較正へのチャンネルを示す。
図15】位相シフト方法による本発明のCFBGパルス成形器の温度較正に対する位相の比例因子を決定するための技術を示す。
図16図16A及び16Bは、図3の開示されたCPAレーザーシステムによって得られる実験結果をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態について、詳細に参照する。可能な場合はいつでも、同じまたは類似する参照符号は、同じまたは類似する部分もしくはステップを参照するために図面及び説明の中で使用される。図面は簡略化された形態であり、正確な縮尺ではない。「結合する」との用語及び類似の用語は、必ずしも直接、密接な接続を提供するわけではなく、中間要素またはデバイスを介した接続も含む。
【0026】
図3を参照すると、本発明のCPAレーザーシステム50は、システムの出力信号のスペクトルプロファイルを制御するためのユニット55を含み、近変換限界パルスを達成するためにペデスタルを最小化するように動作可能である。パルス拡張は、欠陥及び非線形効果に有害な結果を作製することによって容易に説明可能である。
【0027】
システム50の例示的な概略図は、主発振器パワー増幅器構成を示しているが、単一レーザーで構成することも可能である。主発振器52は、数フェムト秒(fs)程度の短いパルスを有するサブnsパルス持続範囲の近変換限界(TL)パルスをレーザー出力するように動作可能なモードロックパルスレーザーまたはシードを含む。シード52の構成は、例えばダイオードまたはファイバーレーザーを含みうる。近TLパルスは、任意選択的なファイバーカプラーまたは循環器54などの上流ルーティングデバイスに結合される。
【0028】
結合パルスは、チャープファイバーブラッグ格子(Chirped Fiber Bragg Grating、CFBG)内で順に引き延ばされる。CFBGは、典型的にはファイバー長に沿って屈折率の変調を導入する、UVレーザー及び位相マスクを用いて製造され、変調周期は増大または減少する。結果として、CFBGは、光を異なる光学周波数においてFBGの異なる部分内から効果的に反射し、レーザースペクトルにわたって光学群遅延(Group Delay,GD)を導入する。光学パルスを引き延ばすのに最も単純な方法であり、最も容易に修正しやすいため、線形チャープ、すなわちGDの周波数に対する線形依存が好ましい。対応するスペクトル位相は、周波数の2乗で変化する。
【0029】
残念ながら、事前にプログラムされたGD依存からの逸脱が、CFBG製造において生じる可能性があり、ストレッチャーと圧縮器との間に不可避の不整合をもたらし、パルス再圧縮が悪くなりうる。さらに、その他のコンポーネントが高次の分散を導入し、レーザー出力において変換限界パルスを達成するために、レーザーシステム全体の分散の修正が必要となる。さらに事情を複雑にすることに、パルスエネルギーまたは平均パワーがより高くなるにつれて、位相のさらなる変化が発生する可能性があり、位相ひずみの動的な修正を必要とする。この位相修正は、レーザーシステム内のチューニング可能な位相成形器を用いて達成可能である。
【0030】
例示的なシステム50は、主発振器52に加え、少なくとも1つまたは複数の前段増幅ステージ58及びブースターステージ62を有する、全てがファイバーレーザーシステムである。ファイバーコンポーネントの使用はシステムの小型化、効率及び頑丈さを増すため、増幅ステージが全てファイバー構成であることが好ましい。しかし、その他の種類の増幅器は、YAG及びディスクレーザーなどの固体または結晶ホスト希土類イオンドープ増幅器並びに、エキシマーレーザーなどのガスレーザーを含んでもよく、これらは全て本開示の本発明の範囲の一部である。パルスエネルギーの増大は、平均パワーを増大することにより、前段増幅及びブースターステージ58、62の間の光音響または光電気変調器(Electro-Optical Modulator、EOM)60を結合することにより、それぞれ実現されうる。EOM60は、レーザー分野の当業者には周知のパルスピッカーとして働く。増幅チャープパルスは、システム50の上流コンポーネントに対して有害な光の後方反射を最小化する、既存の別の任意選択的な光学アイソレータ64の後に、自由空間を超えて伝搬する。四分の一波長板及び反射器/パルス圧縮器68とともに、偏光器66が、レーザーヘッドの外にビームを向けるための循環器として使用される。パルス圧縮器68は、好適には当業者には周知の方式で動作するボリュームブラッグ格子(Volume Bragg Grating,VBG)であるが、トレイシー・マルチネス(Treacy and Martinez)バルク格子などのその他任意の構成であってもよい。FBG及びVBGは、図3の本発明の概略図に関して示され、開示されているが、ストレッチャー56及び圧縮器68の両方とも、全てファイバー格子であってもよく、または全てのバルク格子もしくはストレッチャーがVBGであり、圧縮器がファイバーから構成されてもよい。
【0031】
チャープパルスが上述のコンポーネントの全てを通って案内される間、望ましくない非線形チャープ成分がより顕著になる。しかし、別の分散素子、すなわちパルス圧縮器68及び、そのCFBG56との製造不整合が、パルスに渡る周波数成分との望ましい関係からの位相及びGDの逸脱を顕著に増大させる。結果として、出力される再圧縮パルスは、出力パルスに時間的ペデスタルを形成する寄生前段パルス及び後段パルスの存在によって示されるシード52の出力における近TLパルスほどには細くない。
【0032】
寄生パルスの減少またはペデスタルは、以下で議論するパルス成形器CFBG56の区画などの多数のチャンネルについて位相修正を識別する複数の方法によって実現される。これらの方法は、MIIPS、dスキャン、SPIDER、FROG、チャープ反転技術(CRT)などを含みうる。
【0033】
FROG及びSPIDERにおいて、測定及び圧縮プロセスは、完全に分離されている。特徴づけられるべきパルスは、専用のセットアップに方向を変えられ、そこで処理される。FROG及びSPIDERを使用するための代価は、より複雑な特徴決定セットアップである。MIIPSおよびdスキャンで使用される走査技術は全て当業者には周知であり、本発明の目的に適していると思われる。しかし、MIIPS及びdスキャンは、温度応答時間のために、ファイバーベースの成形器56に関しては非常に時間を要する。
【0034】
一方、CRTは、CFBG56の全てのチャンネル/区画に関して位相修正を発見するための、2つのスペクトル分解測定のみを必要とする漸近的方法である。本発明のように高度にチャープされたパルスに関しては、2次高調波発生(Second Harmonic Generation,SHG)スペクトルについての漸近式は、以下で与えられる。
【0035】
【数1】
【0036】
ここで、
【0037】
【数2】
【0038】
は未知のGDDプロファイルであり、
【0039】
【数3】
【0040】
は追加された既知の線形チャープである。
【0041】
未知のGDDプロファイルは、2つの印加されたチャープ値
【0042】
【数4】
【0043】
及び
【0044】
【数5】
【0045】
について測定された2つのSHGスペクトル(図4Aの赤色及び青色のグラフ)から導くことができ、これらは以下の数式に従って、成形器56に適用される異なる温度プロファイルに応じて得られる。
【0046】
【数6】
【0047】
この数式において、全ての強度値は、2つの測定それぞれにおける各周波数について適用される位相
【0048】
【数7】
【0049】
と同様に知られている。結果として、パルスの帯域幅にわたる各周波数についてのGDDプロファイルが、図4Bに示されるように導き出される。導き出されたGDDプロファイルに基づき、変換限界パルスについて必要な位相修正が、図4Cに示されるように導き出されたGDDの二重積分によって計算される。換言すれば、本方法は、パルス帯域幅の各周波数に関して、TLパルスの位相からの、試験されるパルスの位相の逸脱を決定する。
【0050】
本発明のCRTを実現する本発明の概略図が、図5に概略的に示されており、これは、図3において示された構成と組み合わせて議論される。圧縮されたパルスは非線形結晶70に集束され、図4Aから図4Cを参照して説明されるように、これは基本周波数を2次高調波、すなわち非線形結晶72内で生成され、さらに自動化パルス成形ユニット74内で分析される、緑色光スペクトルSHGに変換する。さらに精度を高めるために、各スペクトルを有する2つのチャープが最大限異なることが望ましい。
【0051】
計算された位相の波長に対する関係は、図3の例示的な概略図ではCFBG成形器56である、較正された分散素子を用いてコントローラ74によって温度プロファイルに変換される。成形器の区画が、必要であれば帯域幅の各周波数に関して修正された位相を得るように選択的かつ制御可能に加熱され、または引き延ばされるように、温度プロファイルが成形器CFBG56にわたって印加される。容易に理解できるように、成形器CFBG56は、比喩的に言えば、温度の区画/チャンネルへの関係のみを「理解する」ため、修正された位相につながる、各区画の所望の位相-温度操作を提供するように較正されなければならない。CFBG成形器56の構成及び、分散素子を較正するための一般的な技術は、下記に説明される。
【0052】
ストレッチャー/成形器56の動作は、熱的誘導技術及びひずみ誘導技術を含む2つの別個であるが相補的な技術に基づく構成によって調整される。これらの技術のそれぞれは、以下で議論される開示された摂動コムによって実現可能である。ひずみ誘導技術は、追加的な損失、信頼性の低下及び位相調整が小さいことが知られている。そのため、熱的誘導応力技術が、以下で説明されるように好ましい。
【0053】
図6及び7は、本明細書で開示される、熱的誘導応力技術を実現する本発明のコム75の構造的な実施形態の1つを示している。コム75は、各周波数に対応する複数の間隔を開けられた区画78を有して構成される。構造的に、コム75は、ステンレス鋼などの熱伝導性の小さい材料の単一の個片から構成されてもよく、間隔を開けられたチャンネルまたは区画78を支持するベース80を含む。ストレッチャー/成形器56は、区画78の上部それぞれに形成された、整列された凹部の中に配置される。抵抗加熱器82及び温度センサ84は、低熱伝導性コム75の各区画/チャンネル78に結合され、受け取った圧縮パルスのスペクトルにわたって、位相を、変換限界パルスの位相に対応するように調整するなど、各区画/チャンネル78の温度を独立して制御する。温度精度を向上させるために、熱電対86がベース80の底部側に固定される。冷却器と一般に称される冷却のための他の手段は、本発明の範囲の構造の一部であり、液体または気体媒体に基づくものでありうる。
【0054】
図7における色で区別された区画78は、各区画78に熱を選択的に印加することを示している。例えば、「赤色」の区画は、印加された応力によって直接影響を受けており、その一方、別の青い色は、ベース及び、それに隣接する各区画78の部分の選択的な冷却を表している。
【0055】
図8は、図6に示された抵抗器82の代わりに使用される熱電冷却器88を有して構成された、改良されたコム77を示している。コム77は、好適には銅から形成され、指定された区画92に影響を与える複数の熱電冷却器(Thermoelectric Cooler,TEC)88と熱的に接触した状態のベース80を有して提供される。FBG56は、区画92に取り付けられ、熱伝導性ペーストによって結合され、その一方FBG56の反対側の端部は、例えばエポキシによって各コラム94に結合される。
【0056】
コム77の動作原理は、図6及び7を参照して開示されたものと同様であり、下記に説明するように、図3及び5のコントローラ74からの命令に応じて、あらかじめ決定された波長に関連するこれらのTEC88を選択的に作動させることを含む。印加された熱及び応力は、各選択された区画92に対応するファイバー領域における屈折率を変化させ、これは、結果的に位相の制御された調整となる。
【0057】
図9は、FBG56の領域または引延しに選択的に影響を与えるように動作可能なコム79のさらに別の実施形態を示す。ファイバー支持構造は、図8のものと類似しており、CRT技術の動作原理に従って、FBG56の所望の引延しに影響を与える複数の冷却器88を支えるベース90を含む。図9の構造と図8の構造との差異は、TEC96に取り付けられ、高度に非熱伝導性である材料からなる連続的な平板96である。
【0058】
図10は、FBG56の引延しに選択的に影響を与え、決定された波長におけるチャープの非線形成分を修正するように動作するコム91のさらに別の構成の応用例を示している。構成91は、中央区画108を支持するベース98を含む。中央区画108の側部にある複数の高い熱抵抗性の区画78及び、隣接する区画78の各対は、高い熱膨脹率を有する材料からなる個別平板100によってブリッジされる。各平板100には、図3のコントローラ74から各信号を受け取る抵抗器104が取り付けられており、選択的に加熱し、それによって、指定された平板100を膨張させる。結果として、隣接する区画78は、互いに対して変位し、問題の波長に対して較正されたファイバーの引き延ばしを生じさせ、変位した区画の間を拡張して引き延ばす。開示された上述の一連の動作は、引き延ばされたパルスにわたって、隣接するスペクトル成分の間の位相の修正につながる。結果として、位相の調整は、非線形チャープ成分が補償されて変換限界パルスに到達するようにする。
【0059】
単一の中央区画108のみがベース98に結合されているため、平板100が加熱されて区画78の間を引き延ばすときに、隣接する区画の膨張を妨げる水平方向の制限因子が存在しないため、構造全体が所望の柔軟性を呈する。構成91の全体の変位は、隣接する区画のそれぞれの底部を結合するばね106などの弾性構成要素によってさらに容易になる。
【0060】
図11は、図10のそれと類似するコムを示しているが、抵抗加熱する平板100の代わりに、図示されたコムは複数の圧電素子106を有して提供される。ひずみ誘導構成は、圧電素子の性質のために、最も短い時間応答を有する。
【0061】
図12を参照すると、パルス成形器としてCFBG56を使用する代わりに、上述の議論の全てがVBG76に適用されうる。成形器としてVBG圧縮器76を使用すると、外部応力及び内部応力に対して比較的容易に影響を受けるFBGに典型的な欠点を避けることができる。様々な構造的改良が、熱及びひずみ応力をVBG76に選択的に印加することについて使用されうる。例えば、CRT方法に従ってこの格子の所望の区画に選択的に与えるように、図7に示されるように、VBGの各底部区画に熱的に結合された複数のTECまたは抵抗器を使用してもよい。図12に示されるように、圧電素子71のアレイが、熱アクチュエータの代わりに使用されてもよい。
【0062】
ここで、開示された成形器の様々な構造的構成が議論されたが、CRT法は、パルス成形器の較正を必要とすることを思い出すことが必要である。具体的に、成形器は、チャンネル/区画の波長較正及び、温度チューニングと、誘導された位相変化との間の関係を確立することを必要とする。本発明の範囲内で利用されるパルス成形器較正の方法は、レーザー分野の当業者に知られた変調位相シフト(Modulation Phase-Shift,MPS)技術に基づいており、これは、本発明のパルス成形器に照らして以下に簡単に議論する。
【0063】
図13は、典型的な変調位相シフト方式または格子試験ステーション(Grating Test Station,GTS)を示している。これは、所望の帯域幅、例えば1020から1040nm内の連続波(Continuous Wave,CW)単一周波数チューニング可能レーザーを含む。光学出力は、電気光学変調器(Electro-Optical Modulator,EOM)において、高周波で変調される。光学出力は、位相におけるシフトに影響を与えるFBGパルス成形器56に向けて光を向けなおす循環器を有して提供される、参照アームとその他のアームとの間のスプリッターで分離される。各アームに結合された光検出器は、受け取った光を測定し、その間の位相のシフトを有する電気信号を出力し、これはEOM内に結合されるRF増幅器を通して、差異の測定値を出力するベクトルネットワークアナライザーで決定される。決定された電気的位相シフトは、光学的群遅延(Group Delay,GD)(または群遅延分散(Group Delay Dispersion,GDD))と相関し、これは、1回積分されると(GDDについては2回)、測定された光学位相シフトになる。
【0064】
図13の位相シフト方式を利用して、複数の加熱されたチャンネル、例えば4つのチャンネルについてのデータに基づき、線形フィット及び内挿が決定される。図14に示されるように、試験された成形器のチャンネル/区画のそれぞれ(この例では28)はそれぞれ、各波長に対応する。
【0065】
位相対温度較正に関して、チャンネルごとの位相変化は、温度差に比例すると仮定する。それにより、使用者は、比例因子について初期推定を行うことができる。この因子を使用して、ある量の群遅延分散(Group Delay Dispersion,GDD)についての位相マスクが生成され、CFBGパルス成形器56でエンコードされる。位相シフト法は、図15の赤線で示されるように、実際のGDDを測定するために使用される。推定されたGDD値(図13の点線)と測定されたGDD値との間の相違は、比例因子(Proportionality Factor,PF)についての初期推定を調整するために使用される値である。
【0066】
前述に基づき、残るすべきことは、図4Cのスペクトル位相を温度に変換することである。これは、決定された比例因子によって図4Cの位相値の分割を提供するコントローラ74によって自動的に行われる。さらに、波長と各区画との間の関係は、既に決定されている。結果として、区画78は、各冷却器によって選択的かつ制御可能に加熱され、成形されたパルスが実質的にペデスタルを有さず、変換限界パルスのそれに近い形状を有するように、各周波数について位相シフトを調整する。
【0067】
簡単に再考すると、CRT/MPH技術の前述の説明に照らして、圧電アクチュエータで動作する本発明の成形器の図示された実施形態は、知られているように圧電素子が電圧を必要とするのみである。したがって、この場合の較正は、前述のように、波長のチャンネル/区画に対する依存性を含み、温度の位相に対する関係の代わりに、開示された前述の技術によって実現された電圧の位相に対する依存性を含む。
【0068】
図16は、開示された構造及び方法が、どのようにして超短パルスの形状を顕著に改善するかを示している。モードロックレーザー、任意選択的な増幅ステージ、分散素子及び、分散素子の1つとともに閉ループを形成する位相成形ユニットを含む上記で開示されたCPAレーザーシステムは、筐体内にパッケージされ、独立型ユニットとして使用可能である。
【0069】
まとめると、開示された頑丈なパルス成形器が、レーザーシステムに追加的な光学損失を追加することなく開発された。レーザー出力において最大100μJのエネルギーを有するパルスが、300fs未満に圧縮される。ペデスタル抑制のさらなる改善は、制御チャンネルの数を増加させることによって可能であると思われる。さらに、IPGフォトニクス社において製造中である複数チャンネル熱電冷却器に基づくパルス成形器に関して、より高速な応答時間が予測される。他のレーザー構成は、出力パルスエネルギーをさらに拡大するそのようなデバイスからの利益を有しうる。
【0070】
本開示は開示された例に関して説明されたが、FROGを含むその他のパルス成形システムの使用などの多数の改良、もしくは加熱及びひずみ構成要素の組合せ、並びに/または全てのFBGもしくは全てのVBGもしくはストレッチャー及び成形器の両方をチューニングすること、または上記で開示された実施形態へのその他任意の追加は、以下の特許請求の範囲及び思想を逸脱せずに、レーザー技術の当業者には容易に明らかであろう。
【符号の説明】
【0071】
50 CPAレーザーシステム
52 主発振器
56 ストレッチャー、パルス成形器CFBG
58 前段増幅ステージ
60 光電気変調器(EOM)
62 ブースターステージ
64 光学アイソレータ
66 偏光器
68 反射器/パルス圧縮器
70 非線形結晶
71 圧電素子
72 非線形結晶
74 コントローラ
75 コム
76 VBG圧縮器
78 区画/チャンネル
79 コム
80 ベース
82 抵抗加熱器
84 温度センサ
86 熱電対
88 熱電冷却器(TEC)
90 ベース
91 コム
92 区画
94 コラム
96 TEC
98 ベース
100 平板
104 抵抗器
106 バネ
108 中央区画
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16