(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】乾燥粉末吸入器および乾燥粉末吸入器用スペーサ装置
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20221206BHJP
A61M 13/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
A61M13/00
(21)【出願番号】P 2019556321
(86)(22)【出願日】2018-04-18
(86)【国際出願番号】 AU2018050344
(87)【国際公開番号】W WO2018191776
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-04-14
(32)【優先日】2017-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518367002
【氏名又は名称】インスパイアリング ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(72)【発明者】
【氏名】クレメンツ,バリー スペンサー
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05660167(US,A)
【文献】米国特許第05318016(US,A)
【文献】特開2012-071146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
A61M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペーサ装置と流体連結で配置される
乾燥粉末吸入器(DPI
)を含
むDP
I構造であって、前記スペーサ装置は、
概して、それぞれの長手方向軸に沿って30°から170°の間の角度を付けて交差する、反対の流入通路および流出通路によって形成されるV字型取付部の形のボディと、
前記ボディの下に取り付けられる取り外し可能な、可撓性バッグであって、前記バッグおよび前記ボディは、前記流入通路と前記流出通路とがチャンバの内部と流体流動連結されるように、共に前記チャンバを画定する、バッグと、
を含み、
前記流入口は、吸入される薬物を含有する前記DPIと動作接続するために構成され、
前記流出口は、ユーザの口に動作可能なように受けられるように構成され、
前記DPIは前記DPIから前記スペーサ装置に粉末状の薬物を排出するための排出手段を含み、前記薬物はカプセル、カプレット、またはジェル被覆の形で封入され、前記排出手段は、前記DPIから排出される前に粉末を解放するために、前記カプセル、カプレット、またはジェル被覆に穴を開けるための穴開け手段を含み、
前記可撓性バッグはリザーバとして機能し、その中で吸入される薬物の蒸気もしくは雲状粒子が、前記DPIの作動に続いて形成されるようにし、前記可撓性バッグは、少なくとも部分的に膨脹可能で
かつ少なくとも部分的に収縮可能で
あるように構成される、DPI構造。
【請求項2】
弁がない、請求項1に記載のDPI構造。
【請求項3】
前記ボディ、前記流入口、前記流出口、および/または前記バッグは、導電性材料で作られることによって、静電気の帯電を低減させるように構成される、請求項1に記載のDPI構造。
【請求項4】
前記バッグは、金属化された高分子フィルムまたはアルミホイルでできている、請求項3に記載のDPI構造。
【請求項5】
前記ボディ、前記流入口、前記流出口、および/または前記バッグは、帯電防止剤で処理されることによって、静電気の帯電を低減させるように構成される、請求項1に記載のDPI構造。
【請求項6】
前記流入口は、前記DPIの流出口と密閉して係合するための流入通路を画定する取付具を含み、前記流入口は、前記DPIに対して密閉するように構成される密閉カラーによって囲まれている、請求項1に記載のDPI構造。
【請求項7】
前記流出口は、前記チャンバと周囲環境との、または使用中はユーザの口との間に、妨害のない空気および薬物の流れを発生させる、流出通路を画定するマウスピースを含む、請求項1に記載のDPI構造。
【請求項8】
前記バッグは、前記ボディに前記バッグを解除可能なように取り付けることを容易にするために、前記スペーサ装置の前記ボディの低部外周にしっかりと取り付けられる形状および寸法のカラーを含む開口部を有し、前記カラーは前記バッグ開口部の上部外縁に沿って延び、前記バッグの前記開口部の周辺に少なくとも部分的に延びる、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のDPI構造。
【請求項9】
前記バッグは、吸入および呼気の間に、前記バッグが垂直に潰れることに抵抗するのに役立つ、周辺に延びる、弾性的に可撓性のシームを備えられている、請求項8に記載のDPI構造。
【請求項10】
前記排出手段は高圧ガスキャニスタであり、その流出口は、前記流入口と流体流動連結で取り付けられている、請求項1乃至
9のいずれか一項に記載のDPI構造。
【請求項11】
前記排出手段は、正の圧力ガスポンプまたは共有源と連結される導管である、請求項1乃至
10のいずれか一項に記載のDPI構造。
【請求項12】
前記排出手段は、前記装置のユーザが、前記DPIの内容物を、呼気によって前記流出口を通って放出できるようにする形状および寸法の取り込みマウスピースである、請求項1乃至
11のいずれか一項に記載のDPI構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入器用のスペーサ装置に関する。特に、本発明は、吸入薬物送達装置、具体的には乾燥粉末吸入器(DPI)から薬剤を吸入する間に使用するためのスペーサ装置、ならびに新規の乾燥粉末吸入器構造に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術の後述の議論は、本発明の理解を容易にすることのみを意図する。本議論は、参照される資料のいずれもが、本願の優先日の時点で共通の一般知識の一部である、もしくはそうであったことを承認または認めるものではない。
【0003】
過去60年にわたって、吸入技術は、吸入装置のユーザの最も大きな集団である、平均的な喘息性または慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者を援助するために、ほとんど有益ではなかった。このことは、これらの患者の大部分において、肺に到達する吸入薬剤の量が、口に直接入るMDI(定量吸入器または「パッファ」)を使用する患者における10%未満から、スペーサ装置、乾燥粉末吸入器、または標準ネブライザを使用する者における10~30%の間の範囲であるという事実によって容易に実証されており、これはずっと著しく改善されていない。この結果は、多大な高価な薬物浪費、不十分な治療結果、および患者と医者の不満となっており、この全ては、治療の順守を低減するのにつながってきた。
【0004】
これらの問題に対処する努力の中で、欧州呼吸器学会および国際医用エアロゾル学会(ERS/ISAM)特別委員会により発行された報告書は、2011年に、吸入した薬剤が肺の中の目標地点に到達する可能性を最適にするのに考慮する必要がある3つの要素を強調した。これらの3つの要素は次のとおりである。
a)粒径-小さな粒子は、より多くの数が気道に到達し、肺のより深くに浸透し、肺により均等に拡散し、部分的に閉塞されている気道を通過し、罹患部および損傷部位に達成しやすい。
b)流れ-低流量は、粒子が角部で衝突するのを防ぐ。そして、
c)呼吸パターン-ゆっくりとした制御された深い吸入または、もしそれができないのであれば、通常の落ち着いた周期的な呼吸が、肺送達と気道浸透を改善する。
【0005】
乾燥粉末吸入器(DPI)または乾燥粉末ディスペンサ(DPD)は、安価で、便利で、使用しやすく、MDIより多くの用量を送達できるので、好まれる。しかし、これらはISAM報告書(上述を参照)に概説される原理のいずれについてもかなりの範囲まで応じることができない。特に、これらは、カプセルを空にして、粒子を分散させるために、高い流速(概して約30~90L/分)を必要とする。この速度で移動する粒子は、咽頭、声門部、および気道の各分岐点などの角部を曲がるときに、粘膜面に衝突および残留しやすく、結果として少量のみ(30%未満)が肺の目標領域に到達することが明確に示されている。これらの要素の全ては、ほとんどの薬物が、肺の「より健康な」部分に向かって最小抵抗の経路を優先的に進み、末梢気道、粘膜で詰まっている気道、および損傷部位などの、最も必要とされる領域にほとんど薬物が浸透しない、罹患肺により関係する。加えて、声帯に衝突する高速粒子は、咳を引き起こし、これはDPIユーザからの圧倒的に最も共通する不満であり、よく彼らに装置をあきらめさせる。適切なDPI機能に必要とされる高流速および呼吸技術はまた、病気の、高齢の、および非常に若年の患者で実現するのが困難である。ISAM報告書はまた、他の研究が、DPIを使用する患者の94%はDPIを正しく使用しておらず、患者の25%は装置に関する技術訓練を受けていないことを強調していると述べている。
【0006】
本発明は、これらの欠点を考慮しながら着想された。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様に従って、乾燥粉末吸入器(DPI)用のスペーサ装置が提供され、スペーサ装置は、
流入口および流入口から反対の流出口を有するボディと、
ボディに取り付けられる取り外し可能な、可撓性バッグであって、バッグおよびボディは、流入口と流出口とがチャンバの内部と流体流動連結されるように、共にチャンバを画定する、バッグと
を含み、
流入口は、吸入される薬物を含有するDPIと動作接続するために構成され、
流出口は、ユーザの口に動作可能なように受けられるように構成され、
可撓性バッグはリザーバとして機能し、その中で吸入される薬物の蒸気もしくは雲状粒子が、DPIの作動に続いて形成されるようにし、可撓性バッグは、少なくとも部分的に膨脹可能で、少なくとも部分的に収縮可能であって、前述のユーザの呼吸および/または再呼吸と同じになるように構成される。
【0008】
当業者は、本明細書で乾燥粉末吸入器(DPI)を参照することは、ユーザからの吸入を介して、または加圧ガスなどの適切な排出構造を通る排出を介して、乾燥粉末の形でユーザの肺に薬剤を送達し、乾燥粉末ディスペンサ(DPD)を形成するように構成される任意の装置への参照を含むことを理解するであろう。従って、本明細書でDPIを参照することは、DPIまたはDPDに関わらず、このような吸入または排出作動装置を参照すると理解されるであろう。
【0009】
スペーサ装置は弁無し、つまり、弁が備えられていない。
【0010】
流入口および流出口を含むボディは、静電気の電荷を低減するように構成され得る。バッグは、静電気の電荷を低減するように構成され得る。ボディ(流入口および流出口を含む)および/またはバッグは、帯電防止剤で処理され得る。ボディ(流入口および流出口を含む)および/またはバッグは、導電性材料で作られ得る。流入口および/または流出口を含むボディは、金属または、金属化プラスチックもしくは金属コーティングされたプラスチックなどの金属化された化合物で作られ得る。バッグは金属化フィルムまたはアルミホイルで作られ得る。金属化フィルムは金属化された高分子フィルムで作られ得る。
【0011】
流入口は、吸入薬物送達装置のマウスピースと密閉して係合するための流入通路を画定する取付具を含み得る。流入口は、DPI装置のマウスピースを密閉して受けるように構成され得る。流入口は、吸入薬物送達装置に対して密閉するように構成される密閉カラーによって囲まれ得る。流入口および流出口を含むスペーサ装置は、弁無しの場合がる。流出口は、流出通路を画定するマウスピースを含み得る。流出通路は、チャンバと周囲環境との、または使用中は人の口との間に、妨害のない空気および薬物の流れを発生させる。
【0012】
ボディは、バッグの外側にある場合がある。バッグはボディから動作可能なように下向きに延びて付属している場合がある。
【0013】
ボディは、概ねV字型取付部の形の場合がある。V字型取付部は、それぞれの長手方向軸に沿って角度を付けて交差する、反対の流入通路および流出通路によって形成される場合がある。V字を形成する角度は、好ましくは30°から170°の間、好ましくは60°から120°の、最も好ましくは90°の円弧を画定する。
【0014】
流入口および流出通路は、円錐形の場合がある。流入口の外周は、円形、長円形、楕円形、または不規則な形状の場合がある。
【0015】
V字型取付部はV字型の内面を含む場合があり、概して長円形である併合する流入および流出ポートの、下部および側部面を併合することによって形成される低部外周を有する場合がある。この外周は、取り外し可能なバッグを受ける取付部の一部を構成し得る。V字型取付部の内面は、流入口とバッグの間、および、バッグとマウスピースの間で、空気および/または薬剤が流れるための通路を設ける空洞を画定する形状および寸法である。
【0016】
V字型空洞の内面は、携帯するためにバッグが空洞内に畳み込まれる際にバッグを受ける大きさおよび寸法となり得る。
【0017】
流入口および流出通路は、大きさ、長さ、体積、直径、または形状が概ね等比率の場合がある。他の実施形態では、流入口および流出口は、大きさ、長さ、体積、直径、および/または形状が等比率でない場合がある。
【0018】
本実施形態における長円形の外周の長軸と短軸の比は、1.01:1から6:1の間、好ましくは1.2:1から2:1の間、最も好ましくは1.38の場合がある。
【0019】
流出口は、ユーザの口によって、直接またはフェイスマスクを通して受けられるように構成され得る。
【0020】
本発明は、そのさらなる態様において、本発明のスペーサ装置用のバッグに及ぶ。バッグは、本発明のスペーサ装置のボディの低部外周にしっかりと取り付けられ、それにより、バッグをスペーサ装置のボディに解除可能に取り付ける形状および寸法である、カラーを含む開口部を有する。カラーはバッグ開口部の上部外縁に沿って延びる場合があり、バッグの開口部の周辺に少なくとも部分的に延びる場合がある。バッグ開口部は、弾性的に可撓性を示す材料で作られることによって、開口の拡張した位置に偏向され得る。バッグは、使う準備ができたときに、開口の膨張した/拡張した位置の形状を自然と採用する場合がある。これは、形状または材料記憶によって起こる。バッグは、周辺に延びる、弾性的に可撓性のシームを備え得る。弾性的に可撓性のシームは、吸入および呼気の間に、バッグが垂直に潰れることに抵抗するのに役立つ。
【0021】
この形状を採用するためのバッグの容量は、吸入の間にバッグが潰れることに対する無視できる程度の抵抗が存在することを確実にするように調整され得る。一実施形態では、カラーは、カラー(および故にバッグ)を取付部の内面に対して押す、弾性的に可撓性の材料でできている。他の実施形態では、カラーは、Oリング構造を含む摩擦フィットまたは、スナップフィットの方法で、ボディの低部外周を囲んで取り付けられる、形状および寸法になり得る。バッグは、ボディの低部外周の相補的なねじ部と係合する、ねじ状のカラーを設けられる場合がある。
【0022】
スペーサ装置は、ユーザの肺容量および吸入能力、使用している時点での医療ニーズ、および患者の好み(販売方法の選択を含み得る)を含むが、これらに限定されない、多くの要素に応じる選択を伴って、または、社会的環境で使用されるときに、居心地の悪さおよび顕著性を最小化するために、多くの異なる大きさおよび形状のバッグを含み得ることを理解されたい。
【0023】
概して、本発明はそのさらに他の実施形態において、DPIにも及ぶ。DPIは、流入口および流出口を有するボディと、ボディ内に画定されるチャンバと流体流動連結している流入口および流出口と、粉末状の吸入薬物を受ける形状および寸法であるチャンバとを含む。
【0024】
流入口は、チャンバから、流出口を通って、周囲環境に、または一実施形態では、本発明のスペーサ装置に排出される、粉末状の薬物を吐き出すのに関する排出手段を受ける形状および寸法の場合がある。乾燥粉末は、カプセル、カプレット、ジェル被覆、または他の封入手段で提供され得る。
【0025】
したがって、DPIは、DPIチャンバから排出される前に粉末を解放するために、カプセル、カプレット、ジェル被覆、または他の封入手段に穴を開けるための穴開け手段を含み得る。穴開け手段は、ユーザによって作動されてDPIチャンバ内に移動し、それにより封入手段に穴を開け、乾燥粉末薬物をDPIチャンバ内に解放し得る、1つ以上のピンの形の場合がある。ピンは、それらがユーザによって解放されると自動的に引っ込むようにばね付勢されている場合がある。ピンは対向している、つまりDPIチャンバの反対側にある場合がある。
【0026】
流出口は、塊のまたは大きすぎる粒子がチャンバまたは流出口から排出されるのを防ぐために、関連するフィルタを含む場合がある。フィルタは、DPIチャンバに隣接する場合があり、またはその遠位(つまり、流出口の出口付近)にある場合がある。
【0027】
DPIの一実施形態では、排出手段は高圧ガスキャニスタの形の場合があり、その流出口は、流入口と流体流動連結で取り付けられている。高圧ガスキャニスタは、定量吸入器(MDI)で見られるものなどの、圧縮作動キャニスタの場合があり、その作動の際に、定量の高圧ガスをDPIチャンバに排出するように機能する場合がある。
【0028】
DPIの他の実施形態では、排出手段はネブライザまたは酸素供給源などの、正の圧力ポンプに連結される導管の形の場合がある。
【0029】
DPIのさらなる実施形態では、排出手段は、装置のユーザが、チャンバの内容物を、呼気によって流出口を通って放出できるようにする形状および寸法の取り込みマウスピースの形の場合がある。取り込みマウスピースが使用されるとき、スペーサ装置の反対の流出口を閉鎖する必要があり得る。このため、本発明の本実施形態は、スペーサ装置の流出口を閉塞する、取り外し可能なキャップを含む。したがって、流出口キャップはスペーサ装置の流出口にぴったりと取り付けられる。
【0030】
さらなる実施形態では、排出手段が、乾燥粉末薬剤がチャンバに排出されるように構成される、注射器、圧縮可能な球などの、空気圧縮機の任意の適切な形を含み得る。
【0031】
使用中に、ユーザは本発明のDPIをスペーサ装置の流入口に取り付け、封入手段に穴を開けて薬物粉末を解放し、排出手段を作動および使用して、DPIチャンバから、DPI流出口を通って、スペーサ装置流入口を通って、関連するスペーサ装置ボディおよびバッグによって形成されるスペーサ装置チャンバに、粉末を排出し、そこから、蒸発したまたは微粒分散された薬物粒子が、ゆっくりとした深い吸入、および/または規則的かつ周期的な呼吸および/または再呼吸によって吸入され得る。
【0032】
当業者は、記載の方法で、DPIと組み合わされるスペーサ装置が、概して上述のISAM報告書のパラメータ内で、雲状または蒸気のよく分散された乾燥粉末粒子を吸入するのを容易にすることを理解するであろう。
【0033】
DPIの可能な一実施形態を用いて、ユーザは封入手段に穴を開け、続いて、圧縮空気もしくは気体のみを含有する定量吸入器キャニスタを作動させる。この目的は、単に粉末をチャンバに吐き出すことである。DPIの他の可能な実施形態では、ユーザが封入手段に穴を開け、空気または酸素を、DPIを通ってスペーサ装置チャンバの内部に導く。さらなる実施形態では、ユーザはスペーサ装置の流出口を閉鎖し、封入手段に穴を開け、DPIの流入口に設けられる取り込みマウスピースに息を吹き込み、DPIチャンバの内容物をスペーサ装置チャンバ内に吐き出す。加えて、ユーザは球または注射器などの、適切な空気圧縮機を使用して、乾燥粉末状薬物を、それが分散するチャンバへ吐き出しまたは送り込み、ユーザによる快適で制御された吸入の準備ができている。
【0034】
これらの実施形態では、粉末がチャンバに吐き出されると、薬剤はユーザに吸入される準備ができている。ユーザが装置に息を吹き込む場合、流出口キャップが吸入の前に取り除かれる必要がある。
【0035】
次の添付の図を参照しながら、説明が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一態様に従う、DPI用のV字型スペーサ装置およびDPI装置の三次元図面である。
【
図2】
図1に示されるスペーサ装置のV字型ボディに取り付けられる、
図1のDPI装置の三次元図である。
【
図3A-3B】本発明のスペーサ装置のV字型ボディの底面図であって、
図3Bはスペーサボディの内腔を横断して延びる十字の糸状体を含む型を示す図である。
【
図4】ボディとバッグとの間に画定される空洞を横断する雲状の粒子の形成につながる、DPIから放出される乾燥粉末粒子の流れを示し、同時に本発明のDPIの断面図を示す、
図1に示される実施形態の断面図である。
【
図5】使用中の、吸入の準備ができている、バッグの容積を充満する雲状の粒子を示し、
図1に示される本発明の実施形態の部分断面図である。
【
図6A】携帯性を支援するために、ボディによって画定される内腔に畳み込まれるバッグを示す図である。
【
図6B】携帯性を支援するために、ボディによって画定される内腔に畳み込まれるバッグを示す図である。
【
図7】吸入によって垂直断面でわずかに縮小するバッグを示す図である。
【
図8】本発明の一態様に従う、スペーサ装置の低部の部分的断面の三次元図を示す図である。
【
図9】
図1に示されるスペーサ装置と併用するために、本発明の一態様に従うボディの低部外周に取り付けるためのカラーを備えたバッグの三次元図である。
【
図10】ネブライザポンプまたは酸素源などの加圧源からの導管を含む、DPIの他の実施形態の側面断面図である。
【
図11】乾燥粉末カプセルに穴を開ける前の、DPIの他の実施形態の側面断面図である。
【
図12】乾燥粉末カプセルに穴を開けた後の、DPIの他の実施形態の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明のさらなる特徴は、そのいくつかの非限定的な実施形態に関する後続の記述で、より十分に説明される。この記述は、本発明を当業者に例示する目的のためだけに含まれている。上述のように、本発明の広範な概要、開示、または説明を制限するものとして理解されるべきではない。例示の一実施形態もしくは複数の実施形態の特徴を図示するために組み込まれる図では、全体を通して同様の参照符号が同様の部分を識別するように使用される。
【0038】
本明細書に記載される本発明は、吸入器送達装置(DPIなど)から送達される、乾燥した粉末状の薬剤の吸入を容易にするためのスペーサ装置に関する。本発明はまた、DPIの新規の実施形態に関する。一実施形態は、カプセルの内容物をスペーサ装置の内部チャンバに吹き込むように、DPIのカプセルチャンバの内部と流体流動連結している高圧ガスキャニスタを備えたDPIである。さらなる実施形態は、カプセルチャンバの内部への圧縮空気を伴う導管を受けるように適用されるDPIである。第三の実施形態は、ユーザがカプセルに穴を開けてその内容物を本発明のスペーサ装置の内部チャンバに吹き込めるようにするための流入口を備えたDPIである。
【0039】
スペーサ装置の本発明は、急速な調整された吸入の必要性を避けることと、同時にユーザが粉末状の薬剤を、最小限の努力および時間調整でゆっくりと吸入できるようにすることとによって、本出願人が認識する既存の装置に関する課題に対処する。これは、次に、吸入の間の快適さを向上させ、高濃度の乾燥粉末粒子が通常は1秒未満の短い時間に声帯および/または喉に速くぶつかることによって生じる主に咳である、DPI装置の最も一般的な副作用の発生を最小化する。もちろん、この吸入速度は、乾燥粉末がDPIを出て、同時に粒子を分散させるのに十分な速度で取り込まれるのを確実にすることが要求される。
【0040】
一般的に、本発明のスペーサ装置は、図を通して参照符号110で示され、粒子の雲状または蒸気の状態で吸入される薬物を受けるためのリザーバとして機能する形と寸法である、柔軟で潰すことが可能なバッグ112と、薬剤がDPIからバッグに放出される流入口もしくは入口、および、通常はバッグの内容物が吸入され得るマウスピースを形成する流出口もしくは出口を備えたボディとを含む。バッグは、吸入によって生成される負の圧力の下で潰れ、それによりその内容物の全てを患者の口に排出するのを促進し、不慣れなユーザの肺に対しても薬剤の送達を最大化させる。スペーサ装置は、吸入薬物の全用量がバッグ内に受けられるようにし、そこから不慣れなユーザによって、規則的かつ周期的な呼吸で、またはゆっくりとした深い一回の吸入で、ゆっくりと(かつ完全に)吸入される。
【0041】
スペーサ装置の要素は一般的に、その中のもしくはその上の薬物粒子の衝突を最小限にするように設計され、それにより層流がバッグおよび流入口/流出口に出入りするのを促進する。この構成は、薬物の有効性および吸入を上昇させるのを大幅に容易にし、バッグに入る吸入薬物の排出を吸気に合わせる必要なく、ユーザの肺の最も広い範囲に吸入薬物が進行できるようにする。本出願人が認識している現在の乾燥粉末吸入装置の全てで要求される、急激な調整された吸気よりもむしろ、ゆっくりとした深い一回の呼吸の吸入または規則的かつ周期的な呼吸によって、より多くの薬物が吸入され得る。便利なことに、バッグの大きさは、年齢、体格、肺活量、吸気の強さ、社会的な居心地の悪さといった、ユーザのニーズに合わせて取り替えることが可能で、500cm3ほどの小さなバッグと、1500cm3ほどの大きなバッグとは、前述の要素に応じて、順調に吸入される薬物粒子が同程度になることが分かった。
【0042】
参照符号110は、概して、本発明のスペーサ装置を参照する。
図1から12に示される、本発明の一実施形態では、スペーサ装置110は、ボディ118に取り付けられた、伸展性が低いまたはない、金属化されたバッグ112を含む。バッグ112は、金属またはアルミホイルなどの、導電性材料でできている。他の実施形態では、バッグ112は、金属化フィルムまたは金属化された二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(BoPET)または通常はMylar(登録商標)である他の同類の可撓性ポリマーでできている。あるいは、バッグ112は、バッグ112に静電気散逸コーティングもしくは層を形成する帯電防止剤で処理され得る。同じことがボディ118に対しても当てはまり、ボディ118は帯電防止コーティングまたは層から作られる、帯電防止コーティングまたは層に積層される、あるいは帯電防止コーティングまたは層でコーティングされ得る。ボディ118は通常、(限定はしないが)アルミニウムなどの金属、または金属化された化合物(限定はしないが、金属化プラスチックなど)、または(限定はしないが)高密度プラスチック材料などの金属がコーティングされた化合物から作られる。
【0043】
ボディ118は流入口114および反対の流出口116を含み、流入口114および反対の流出口116は、ボディ118に設けられ、ボディ118と一体である。ボディ118およびバッグ112は結合して、乾燥粉末吸入器(DPI)から蒸発したまたは微粒分散された薬剤を受けるためのチャンバ120を形成する。
【0044】
流入口114および流出口116の各々は、チャンバ120と流体流動連結しているポートの形である。流入口114および流出口116は、ボディ118の一部として形成される広いV字型を画定し、それによって分離されている。ボディ118はさらに、バッグ112を取り外し可能なように受けるための、フランジ118.2を画定する楕円もしくは長円の低部外周118.1を含む。
【0045】
図4で最もよく見られ得るように、バッグ112は、バッグ112の動作可能な上部内に画定される、または取り付けられる、開口部112.2(
図9で最もよく見られる)に取り付けられる、伸縮性のある、周辺に同一の広がりをもつリブ112.1の形の接続構造を含む。リブ112.1はフランジ118.2に結合し、バッグ112とボディ118との間に効果的な密閉をもたらす。
図9はまた、バッグ112がベース/ボディ118の外周118.1に連結される前にどのように見え得るかを示す。
【0046】
他の実施形態では(図示なし)、バッグ112開口部112.2(故にリブ112.1)はフランジ118.2に受けられ、従ってフランジ118.2を覆い、バッグ112は、バッグ112およびフランジ118.2の間を効果的に密閉できる収縮性を有する弾性リブもしくはOリング112.1を有する。
【0047】
図4に示される実施形態は、ボディ118の洗浄もしくはオートクレーブを容易にするために、フランジ118.2がねじ構造118.3を使用してボディ118に螺合され得ることを示す。他の実施形態では、フランジ118.2はボディ118と一体で形成される。
【0048】
図1に戻ると、流入口114は、流入口114への流体流動方法でDPI156のマウスピース158を受けるための環状連結具122を含み、それによりDPI156とチャンバ120との間が直接連結するようにし、加圧されたキャニスタ160内に含有される高圧ガスが放出されるときに、チャンバ120内の概ね妨げられない雲状の形成を可能にする。環状連結具122は、端部114.2に隣接して設けられるねじまたは干渉取付具114.3を使用して、流入口114の端部114.2にねじ留めもしくはクリップ留めされる。環状連結具はまた、スナップフィットもしくは摩擦フィットの方法(図示なし)で流入口114と連結され得ることを理解されたい。環状連結具122は、マウスピース158を密閉して受けるための、弾性的に可撓性のある内部環の形の密閉カラー126を含む。
【0049】
図4に最もよく見られるように、そして本明細書で前述のように、ボディ118はそこに一体で形成される、単体構造の流入口114および流出口116ポートを有し、流入口114および流出口116ポートの長手方向軸114.1、116.1はそれぞれ、交差するところで30°から170°の間の角度(θとして示される)を有する円弧を画定する。流入口114および流出口116ポートに画定されるV字型は90°の一般角を有し、これは
図11から19に示される実施形態で同様におよそ90°である角度(θ)と概ね一致する。
図4、10、および11に示されるように、これは、もし流入口114および流出口116が位置合わせされている場合、つまり角度が180°またはその付近であるときに起こり得るように、吸入薬物が流入口114と流出口116との間を直接通過するよりむしろ、吸入薬物(微粒分散液滴または粉末粒子127として示される)がまずはチャンバ120に完全に流入することを確実にするのを助け、それにより、粉末粒子127の分散または蒸発を容易にする。
【0050】
こうすることにより、推進された粒子127は、内部構造のいかなる範囲にも衝突して残留することなく、または流出口116を直接通って噴き出すことによってユーザの口腔もしくは喉に直接高速で吐き出されることなく、スムーズな流体流れでチャンバ120に入る。従って、チャンバ120は吸入薬物のためのリザーバとしての役割を果たし、チャンバ120内の粒子の雲状の形成もしくは分散を容易にし、吸入粒子127は、本出願人が知る限りでは他のDPI吸入器が提供できない低流速で、チャンバ120から吸入され得る。流入口114および流出口116の角度と、および、それらの両方が弁を備えていないこととの両方が、吸入粒子127がスムーズかつ妨げられることなくチャンバ120に流出入できるようにする。これは、これらの構成がない場合と比較べて、ユーザが流出口116を通してはるかに高い割合の有効薬物を吸入する事実を加える。
【0051】
さらに、バッグ112をボディ118の動作可能な底部に設けることによって、使用中にユーザがDPI装置156を視覚的に参照するのをバッグ112が妨げないことを確実にし(
図5を参照)、ユーザがより正確に、しかし顕著性が少なく、装置110を使用することにつながる。
【0052】
図3Aおよび3Bに、ならびに
図4、10および11で横から見られ得るように、ボディ118の内部はV字で、ボディ118の外側と一致する。
図3Bおよび8に示される一実施形態では、ボディ118の内部は、バッグ112がボディ110の内部に完全に吸い込まれ、流入口114および流出口116を塞ぐ可能性を防ぐ、十字の糸状体129を含む。しかし、試験によって、これが生じる可能性は非常に低く、もし存在しない場合、および他の実施形態では、糸状体構造が除かれている。
図6Aおよび6Bは、携帯または輸送のためにバッグ112がボディ118の内部内にほぼ完全に受けられるもしくは畳まれる、本発明の吸入器スペーサ装置110を示す。これは、装置110の大きさおよび顕著さを減少させるのに役立ち、装置110が小銭入れ、ハンドバッグ、もしくはキャリーバッグに容易に入れられるようにする。
【0053】
図7に見られ得るように、吸入の間、バッグ112は使用中に垂直断面でわずかにのみ小さくなり、一般的にバッグは、バッグ112の一部を形成するシーム112.3の弾性によって、その垂直寸法を維持する。従って、一般的に吸入によって、バッグ112がボディ110の内側空洞に吸い込まれて内側に潰れるよりむしろ、バッグ112の2つの向かい合う側面つまり「チーク」112.4、112.5(
図1で最も良く見られる)が優先的に互いに近くに引っ張られることになる。本出願人は、急激な吸入の時でさえ、バッグ112の構成および形状だけでなく、(特に弾性的に可撓性を示す形状記憶シーム112.3)、負の圧力の増大が、空気がマウスピースに取り付けられたDPIを通って取り込まれ、本スペーサ装置のベースの内部/空洞を通って流れる程度に達することを合わせて、バッグ112が筐体110に画定される内腔に吸い込まれ、流出口116を閉鎖する可能性を防ぐことを見出した。
【0054】
有利には、小さなバッグは子供、高齢者、または肺機能障害を有する者に対して(または顕著さを避けるために)使用され得、一方で大きなバッグは成人に対して使用される場合がある。
【0055】
本実施形態におけるスペーサ装置118の長円形外周118.1の長手方向軸(長軸)は9cmである。他の実施形態では、これがより短くてもよく(2cmまで、もしくはそれ未満)またはより長くてもよい(20cmまで、もしくはそれより長い)。本実施形態における長円形外周118.1の最大幅を画定する軸(短軸)は、6.5cmである。他の実施形態では、これがより短くてもよく(1cmまで、もしくはそれ未満)またはより長くてもよい(15cmまで、もしくはそれより長い)。長軸と短軸との間の比は通常は1.38:1である。
【0056】
V字型取付部の壁の厚さは、重さ、強度、感触、および構成に関する懸念に応じて調整できる。本実施形態では、変化する場合もあるが、壁は取付部の大部分を通して厚さ2mmである。他の実施形態では、これがより薄くてもよく(1mmまで、もしくはそれ未満)またはより厚くてもよい(8mmまで、もしくはそれより厚い)。
【0057】
便利なことに、共にチャンバ120を画定するボディ(もしくは「ベース」)118およびバッグ112は分離可能で、バッグ112がボディ112から外されるようにする。多くの指示の中で、バッグ112が摩耗もしくは汚染された際に洗浄もしくは取り換えられる必要があるとき、または、患者のニーズおよび能力に応じて異なる大きさ(体積)のものと単に取り換えられるときに、この取り外しが指示され得る。
【0058】
図9で見られ得るように、使う準備ができたとき、バッグ112は自然と、空気で充満された十分に膨らんだ位置になる。通常、バッグ112は膨脹および潰れに対して無視できる程度の抵抗を示す柔軟で薄い材料でできており、患者が再呼吸の間に息を吸ったり吐いたりする間に十分に収縮および再膨張できるようにする。本明細書で前述のように、バッグ112は、電気を通し、それによって静電気を発生させないように、金属化される(通常、Mylar(登録商標)などの、薄い部分の、容易に潰すことが可能な高分子金属化フィルムから生成される)。一実施形態における材料の厚さは12.5ミクロンであるが、他の実施形態ではより薄く(5ミクロンまでもしくはそれ未満)、さらなる実施形態ではより厚い(25ミクロンまでもしくはそれ以上)。
【0059】
バッグ112は、吸入の間に完全に潰れて、DPIからチャンバ120にはじめに排出された薬剤粒子127の全てを一息で完全に空にできるようにするか、あるいは部分的に潰れ(患者の呼吸の快適さおよび能力に応じて)、ユーザが再吸入の前に息を吐き戻すことによって再呼吸できて、数回の呼吸で空にできる。バッグ120は、呼気の間に完全にまたは部分的に再膨張して、吸収されていない薬剤127を受け入れる。もし深い呼気の間にチャンバ120が充満されると、弁のない流入口114は、(もし必要であれば)DPIホルダ156を通って余分な空気が漏出できるようにし、ゆえにスペーサ装置110内に圧力が蓄積するのを防ぐ。同様に、もしチャンバ120が空になって完全に潰れた後に患者が深く息を吸い続ける場合、DPIの周りの筐体156(少なくとも
図1から5に示される実施形態)は、追加の空気がスペーサ装置110に取り込まれてボディ118を通過して患者に到達できるようにし、従って吸気に対する制限を防ぐ。
【0060】
本発明は、異なる形態のDPIにも及ぶ。DPIの3つの実施形態は、
図1~5、10、および11~12で、それぞれ参照符号158、258、および358で一般的に示されている。一般的に、本発明のDPIは流入口および流出口を有するボディを含み、流入口および流出口はDPIボディ内に画定されるチャンバと流体流動連結しており、チャンバが粉末状の吸入薬物を受ける形状および寸法である。
【0061】
図1から5に示される実施形態では、DPI156はボディ156.1を含む。ボディは、スペーサ装置110の流入口116と連結される流出口158を含む。ボディはさらに、排出または高圧ガス手段として機能するキャニスタ160を含む。キャニスタは高圧ガス(図示なし)を含有し、高圧ガスは、導管164を介して流入口162と流体流動連結しており、カラー166および流入口170を通過してチャンバ172の内部に入り、チャンバ172は、カプセル174または吸入される乾燥粉末を含有する他のディスペンサを受けて保持する形状および寸法である。
【0062】
流入口170は、チャンバ172に入る導管164の周りにぴったりと取り付けられるDPIチャンバ172の後方壁に画定される孔の形である。
【0063】
高圧ガスが作動するより前に、直径方向に向かい合うピン176の形である穴開け手段を使用して、ユーザがボタン178を内側に押してピン176をチャンバ174の内部に押し込むことによって、カプセル174に穴が開けられる。ピンがカプセル174の外側被包層に入り、その中の薬物内容物がチャンバ172内に漏れるようにする。ボタンおよびピンは、コイルばね180によってばね付勢されており、それらは外側に、チャンバ174の内部から外に偏向される。
【0064】
押すことによって作動する際に、高圧ガスはキャニスタ160から、導管164および流入口170を通って、チャンバ172の内部に入り、そこで解放された乾燥粉末薬物を流出口158に排出する。薬物の塊または大きすぎる粒子がチャンバ172を出てスペーサ装置110チャンバ120に入るのを防ぐために、フィルタ182がチャンバ172と流出口158との間に置かれる。
【0065】
図10に示される他の実施形態では、排出手段はネブライザまたは酸素供給源184などの、正の圧力ポンプに連結される導管164の形であって、導管164は、流入口170を通る連結具186を通過して、チャンバ172の内部に入る。本実施形態では、カプセルが前述のように穴を開けられ、続いて、圧力ポンプが作動され、それによりチャンバ172から、フィルタ182を通って、流出口158を通って、スペーサ装置110のチャンバ120内に、乾燥粉末薬物を放出する。
【0066】
DPIのさらなる実施形態では、排出手段は、DPI156装置のユーザが、強い呼気によって流出口158を通って、DPIチャンバ172の内容物を排出できる形状および寸法である、取り込みマウスピース188の形である。取り込みマウスピース188が使用されるとき、スペーサ装置110の反対の流出口116は、スペーサ装置の流出口116を閉塞する取り外し可能なキャップ190を使用して閉鎖される。したがって、流出口キャップはスペーサ装置110の流出口116を覆うようにぴったりと取り付けられる。使用中に、ユーザは本実施形態のDPI156をスペーサ装置110の流入口114に取り付け、キャップ190を取り付け(または、代替的に、自分の手を使って流出口116を閉鎖する)、カプセル174に穴を開けて薬物粉末を解放し、マウスピース188によって画定される流入口192を介して取り込みマウスピース188に力強く吹くまたは息を吐き、それによりDPIチャンバ172から、DPI流出口158を通って、スペーサ装置流入口114を通って、関連するスペーサ装置ボディ118およびバッグ120によって形成されるスペーサ装置チャンバ120に、粉末状の薬物を排出する。キャップが取り外されると、(微粒分散の形態の)蒸発した薬物粒子が規則的かつ周期的な呼吸および/または再呼吸によってスペーサ装置流出口116の外に吸入され得る。
【0067】
同様に、前述のように、当業者は、排出手段が、乾燥粉末薬剤がチャンバ172に排出されるように構成される、注射器、圧縮可能な球などの、空気圧縮機の任意の適切な形を含み得ることを理解するであろう。
【0068】
本出願人は、本発明の以下の利益を特定した。
・流れに対する抵抗が低く、およびバッグ112が容易に潰れることによって、患者が使用しやすくする。
・これは、本出願人が認識する限り、ユーザが時間調整や適合させる必要なく、吸入流速を制御できる、初めてかつ唯一のDPI装置である。
・ユーザが一回呼吸方法をできない場合、再呼吸を許容する。そして、
・患者ができない場合、流速または呼吸のパターン(浅いまたは深いなど)を変更しない、またはチャンバの体積を変更する能力もある。
【0069】
さらに、本出願人は、本発明に関する後続の利益を特定した。ボディ118およびバッグ112の金属特性は、静電気によって粒子が内壁に付着し、スペーサ装置110内に残留する可能性を除去する。バッグ112は、取り外し可能で、そのときの医療的ニーズおよび患者の好みに応じて、異なる体積になる。バッグ112は非常にしなやかで、最大限に膨脹することおよび空もしくはほぼ空になるまで収縮するのに対して非常に低い抵抗を示す。ボディ118はDPIが連結されていて、DPIが作動したときに薬物がバッグに直接排出される入口端部を有する。入口の角度は、DPIの作動に続いて、薬剤の柱(plume)が、直接および、バッグの容積内にほぼ直線で扇状に広がり、微粒分散された粒子が主に自身の慣性によってバッグ内に残り、それにより空気に浮遊する粒子の貯蔵雲(reservoir cloud)を形成し、吸入の準備ができることを確実にする。
【0070】
角度に加えて、弁のない入口(つまり弁が備えられていない)は、拡散する柱に含有される粒子が、固体壁および表面に固着および残留することを最小化することを確実にし、入口角度だけでなく、バッグの大きさにもよる関数である。
【0071】
吸入の間、出口端部(マウスピース)の角度および弁がないことによって、バッグの中の貯蔵雲から直接、マウスピースを通って、口に入り、気道に入る薬物粒子の妨げられない層流を促進する。チャンバ(バッグ)内の粒子の貯蔵特性によって、患者は、具合が良く、可能であるときに、最適に肺に堆積するために、理想としてはゆっくりとした流速で深い吸気である、所望の流速と呼吸パターンを選択できるようにする。一方で、患者の具合が悪く、チャンバ(バッグ)を空にしたり、呼吸パターンを調整したりできない場合、システムの弁がない閉鎖回路の特性によって、数回の呼吸にわたる再呼吸で押し流すことによってチャンバ120から残りの薬物を排出できるようにする。再呼吸の呼気段階の間に、流出口116の角度は再び、吐き出された空気の妨げのない流れと、吸収されなかった薬剤がバッグの容積に戻ることとを促進し、バッグを再膨張させ、再び肺に再吸入するのに利用可能な貯蔵雲を再形成する。患者または健康状態の要求によって、様々な型の外部のマウスピース(図示なし)を流出口116に加えることができることに留意するのが重要である。要求される場合は、これはフェイスマスクも含む。
【0072】
潰すことが可能なチャンバ120が低い位置にあることによって、患者への干渉を著しく増大させることなく、より大きな空間(体積)を使用できるようにする。チャンバ120の体積がより大きいことによって、薬物送達が一般的により効果的で、薬物粒子液滴127の分散を改善し、薬物粒子液滴127が側壁に固着する傾向を低くできるようにする。本出願人が認識している現在のスペーサは、スペーサの体積を変更することに関する柔軟性がなく、実質的に、大小2つだけのスペーサチャンバの大きさがある。本発明は、一回の深い吸入の間に大きな体積をより簡単に排出することを提供し(流れに対する抵抗が低く、流出口116に弁がなく、排出を促進する潰すことが可能なバッグ120)、そして、排出が一回の吸入で達成できない場合、通常は3から5回以内の呼吸である再呼吸が、弁がない閉鎖回路の環境を伴う押し出しによってこれを達成するであろう。もしそれでも達成できなければ、より小さなバッグに取り換えることは、すぐに可能な選択肢である。
【0073】
実質的に、DPIからバッグ112に排出される薬物の総量は、スペーサ装置内に捕らえられ、一呼吸もしくは再呼吸のいずれかによって妨げられないように肺に入る吸入に対して利用可能であって、その途中の各段階における損失が最小化されている。加えて、使用中に、バッグの動作量は、吸入されている薬剤の量に関する重要な指標である。これは患者および/または観察者に、正確で重要なフィードバックおよび安心感を与え、最適な使用および、処置の順守を促進するのに重要であることが示された。作動に関して吸入を適合または時間調整する必要はない。重要なことに、本発明は、常に流量に対する十分な制御をユーザに与え、非常に低い流量は、一回の深い呼吸または、単純な周期的な再呼吸方法の間などの複数回の呼吸のいずれかを使用して、薬剤送達を損なうことなく発生され得る。流量が少ないことによって、口、咽頭、および声門部の中で衝突し残留する薬物の量を最小化し、同時に、気道に入り込む吸入薬物粒子が肺の中でより均一に堆積し、肺のより末端部分に送達され、最も必要とされる罹患部によりよく侵入することを確実にする。
【0074】
前述のように、これは、(i)気道に送達される薬剤の量、(ii)肺全体の薬剤の均一な分配、(iii)気道内の薬剤のより末端の分配、および、最も重要なのは(iv)最も必要とされる肺の罹患部によりよく侵入することを向上させるための、国際医用エアロゾル学会によって特定される重要な要素である、乾燥粉末粒子のゆっくりとした深い吸入を可能にする、本出願人が認識する初めてかつ唯一の装置である。
【0075】
本発明の装置は、他の吸入装置と比較して、次のことを実証する。
・気道への薬物送達の効果の改善。
・薬物が装置に保持されるようにする壁粒子衝撃としての静電気が重大な問題でない。
・作動と呼吸とを適合させる必要性の低減。
・使用の向上した容易性、より優れた快適さおよび携帯性
・操作中の動作に関する、患者への有益な視覚的かつ生理的フィードバックおよび安心感、
・簡易化および低費用。
【0076】
加えて、これらの利点の全ては、かなり若年または高齢である患者、健康状態が非常に悪い(深刻な喘息発作の間などの)患者、または慢性肺疾患を患っており気道が損傷されている患者などの、通常は効果的な薬物送達が最も難しい状況で増幅される。
【0077】
最終的な概要では、本明細書に記載される本発明は、弁が備えられていない、抵抗が低い、閉鎖回路の、再呼吸の、帯電防止の、潰すことが可能なチャンバの概念を利用して、適合されたもしくは任意の特定の呼吸パターンによらない、吸入および呼気の間に、落ち着いた通常のもしくは低流量を可能にする構造をもたらす。これらの特徴は、本発明人が認識している現在の装置と比較したときに、特に、改善された送達効率、使用の簡易さ、および多用途性に関して、特に有益である。
【0078】
当業者は、広範に記載される本発明の精神または範囲から逸脱することなく、具体的な実施形態に示される本発明に対して、多くの変更および/または修正がなされ得ることを理解するであろう。そのために、本実施形態は全ての点において、例示であって制限するものではないと考慮されるべきである。
【0079】
たとえば、フレーム50は、バッグ12のボディ18と一体で形成される場合があり、ロッドはバッグ12の膨張の間に外側に動くことができるが、内側に完全に動くことはできない。また、
図7に示されるように、ボディ18は、バッグ12が完全に潰れるのを防ぐように構成される、多くの内部ノブまたは隆起62を設けられる場合がある。
【0080】
要約すると、本出願人は、本発明は、ユーザが、雲状もしくは蒸気の、よく分散された、薄まった、乾燥粉末粒子を、ゆっくりとした深い吸入、および/または規則的かつ周期的な呼吸、および/または再呼吸もしくは患者が選択する任意の呼吸パターンで吸入することができるという、乾燥粉末吸入技術における重要で革新的な利点を示すと考える。加えて、本発明は、ISAM報告書で推奨されるものに適合するのに十分低い流速の、すなわち10~15L/分の、ほぼ周期的な流れで、乾燥粉末状の薬物を吸入することをもたらす。前述のように、利点は次のものを含み得る。
・低流量は、喉および他の部分での衝突を著しく低減する。
・これにより、肺に送達される粒子の数(用量)が増加する。
・これにより、衝突および残留によって生じる喉の合併症を低減する。
・声帯への影響が著しく少なく、咳の発生を低減する。
・低流量は、向上した末端気道の堆積、より均一な肺への散布、および最も必要とされる肺の罹患部および損傷部への粒子の侵入につながる。
・低流量は、より小さな粒子(ナノ粒子)の散布利益を最大化する。
・チャンバの容積における増加した分散性は、粒子の集中、衝突、再集合を低減し、最終的には気道に送達される微細粒子量が増加することを意味する。
・粒子が薄まることおよびより長い時間にわたる用量の吸入は、耐性が低く、耐性および他の送達問題を改善するためにより大きなMMADに調整される必要がしばしばあり、これは1回ごとにより多くのカプセルが必要であることを意味し、この全てはユーザにとって不利益である、濃い粒子剤を送達することに関する問題を軽減する。
・適合または特定の呼吸パターンの必要性がないことは、使用の簡易化および全てのユーザに対する、特に非常に高齢、非常に若年、および非常に健康状態が悪い、最も必要とする人たちに対する利便性を向上させる。
【0081】
本発明の任意の実施形態は、本明細書で参照されるもしくは示される複数の部品、要素、および機構に、個々でまたは集合的に、部品、要素、または機構の2つ以上のいずれかもしくは全ての組み合わせで、広く存在すると言ってもよい。具体的な整数が本明細書で述べられており、本発明が関連する技術における周知の同等物を有し、このような周知の同等物は、別々に明記されているかのように本明細書に組み込まれるように見なされる。例示の実施形態では、周知のプロセス、周知の装置構造、および周知の技術は、当業者に容易に理解され得るので、詳細に説明されていない。
【0082】
様々な実施形態を記載するのに関して(特に、請求される主題に関して)、「一つの(a)」、「一つの(an)」、「前述の(said)」、「前述の(the)」および/または同様の指示対象は、本明細書で指示されているもしくは文脈によって明確に否定されていない限り、単数形および複数形の両方を網羅するように解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」および「含有する(containing)」という表現は、言及されていない限り、制約のない表現(つまり、「含むが、限らない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書で使用されるように、「および/または」という表現は、関連する列挙される項目の1つ以上の任意の全ての組み合わせを含む。本明細書におけるいかなる文言も、請求されていない主題が、請求されている主題の実施に必要不可欠なものであることを示すものとして解釈されるべきではない。
【0083】
「内側」、「外側」、「下方(beneath)」、「下(below)」、「低部(lower)」、「上方(above)」、「上部(upper)」および同類のものなどの空間的に相対的な表現は、1つの要素または機構の、他の1つの(または複数の)要素または1つの(または複数の)機構に対する関係を、図で示されるとおりに表すための説明を簡易化するために使用され得る。空間的に相対な表現は、図に示される方向に加えて、使用中または操作中の装置の異なる方向を包含するように意図され得る。たとえば、図の装置が反転されると、他の要素または機構の「下にある(below)」または「下方にある(beneath)」として記載される要素が、前述の他の要素または機構の「上方に(above)」向けられる。従って、「下(below)」という例示の表現は、上と下の両方の方向を包含し得る。その他では、装置が方向付けられると(90°または他の方向に回転されると)、本明細書で使用される空間的に相対な記述子はそれに応じて解釈される。
【0084】
本発明の「一例」または「ある例」、あるいは同様の例示の文言(たとえば、「など」)を本明細書で参照することは、排他的な意味を持たないことを理解されたい。請求される主題の、様々な十分かつ具体的で、実践的かつ有用な例示の実施形態が、請求される主題を実行するために、文章で、および/または図で本明細書に記載されている。
【0085】
したがって、一例は本発明のいくつかの側面を例示し、一方で他の側面は異なる例で例示される。これらの例は、当業者が本発明を実施するのを助けることを意図しており、文章で明確に指示されていない限り、本発明の全体の範囲を限定する意図はない。本明細書に記載の1つ以上の実施形態の変更形態(たとえば、改良および/または改善)は、本願を読むことで当業者に明らかになるであろう。本発明者(もしくは複数の本発明者)は、当業者がこのような変更形態を必要に応じて使用することを期待し、本発明者(もしくは複数の本発明者)は、請求される主題が、本明細書に具体的に記載されるもの以外で実行されることを意図する。
【0086】
本明細書に記載される方法段階、過程、および操作は、実施の順序として具体的に特定されていない限り、記載されたもしくは図示された特定の順序で必ず実施される必要があるものとして解釈されるべきではない。追加のまたは代替の段階が採用され得ることも理解されるべきである。