(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】表示装置および表示制御方法
(51)【国際特許分類】
A61C 5/40 20170101AFI20221206BHJP
【FI】
A61C5/40
(21)【出願番号】P 2020005840
(22)【出願日】2020-01-17
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【氏名又は名称】荒井 寿王
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】山下 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 恭平
【審査官】中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-172839(JP,A)
【文献】特開2015-083116(JP,A)
【文献】特開2017-170133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 1/00-1/18
A61C 5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
根管治療器に装着される切削工具の制御モードを表示する表示装置であって、
複数の制御モードのうち実行される実行制御モードを示す図形を表示する表示部と、
前記表示部に前記図形を表示させるように前記表示部を制御する制御部と、を備え、
前記図形を表示するための複数の要素は、円弧状に延びる軸部または扇状に延びる帯部と、前記軸部または前記帯部の第1端および第2端にそれぞれ配置されて、前記切削工具の回転方向としての第1方向および第2方向をそれぞれ示す第1の頭部および第2の頭部と、を有し、
前記制御部は、前記根管治療器における前記実行制御モードに応じて前記表示部を制御し、
少なくとも、所定の前記実行制御モードの場合に、前記複数の要素のうち前記軸部または前記帯部の一部と前記第1の頭部および前記第2の頭部の両方とを前記表示部に表示させ、
前記複数の制御モードは、
前記回転方向が前記第1方向のみの第1モード、
前記回転方向が前記第2方向のみの第2モード、
前記回転方向のうち主となる回転方向が前記第1方向であり所定の場合に前記第2方向となる第3モード、および、
前記回転方向のうち主となる回転方向が前記第2方向であり所定の場合に前記第1方向となる第4モードを含み、
所定の前記実行制御モードは、第1モードおよび第2モードを含まず、少なくとも、第3モードおよび第4モードの何れかを含み、
前記制御部は、
前記実行制御モードが前記第3モードである場合は、前記第1の頭部および前記第2の頭部の両方を前記表示部に表示させると共に、前記軸部または前記帯部のうち前記第2端に近い部分のみを前記表示部に表示させず、
前記実行制御モードが前記第4モードである場合は、前記第1の頭部および前記第2の頭部の両方を前記表示部に表示させると共に、前記軸部または前記帯部のうち前記第1端に近い部分のみを前記表示部に表示させない、表示装置。
【請求項2】
前記複数の制御モードは、
前記回転方向が前記第1方向と第2方向とを繰り返す第5モードを含む、請求項
1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記実行制御モードが前記第5モードである場合は、前記第1の頭部および前記第2の頭部の両方を前記表示部に表示させると共に、前記軸部または前記帯部のうち前記第1端と前記第2端の間の中間部のみを前記表示部に表示させない、請求項
2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記軸部または前記帯部は、円弧状または扇状に配置された少なくとも4つ以上のセグメントを含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
根管治療器に装着される切削工具の制御モードを表示する表示装置における表示制御方法であって、前記表示装置が、複数の制御モードのうち実行される実行制御モードを示す図形を表示する表示部を備え、前記図形を表示するための複数の要素は、円弧状に延びる軸部または扇状に延びる帯部と、前記軸部または前記帯部の第1端および第2端にそれぞれ配置されて、前記切削工具の回転方向としての第1方向および第2方向をそれぞれ示す第1の頭部および第2の頭部と、を有し、
前記根管治療器における前記実行制御モードに応じて前記表示部を制御し、
少なくとも、所定の前記実行制御モードの場合に、前記複数の要素のうち前記軸部または前記帯部の一部と前記第1の頭部および前記第2の頭部の両方とを前記表示部に表示させ、
前記複数の制御モードは、
前記回転方向が前記第1方向のみの第1モード、
前記回転方向が前記第2方向のみの第2モード、
前記回転方向のうち主となる回転方向が前記第1方向であり所定の場合に前記第2方向となる第3モード、および、
前記回転方向のうち主となる回転方向が前記第2方向であり所定の場合に前記第1方向となる第4モードを含み、
所定の前記実行制御モードは、第1モードおよび第2モードを含まず、少なくとも、第3モードおよび第4モードの何れかを含み、
前記実行制御モードが前記第3モードである場合は、前記第1の頭部および前記第2の頭部の両方を前記表示部に表示させると共に、前記軸部または前記帯部のうち前記第2端に近い部分のみを前記表示部に表示させず、
前記実行制御モードが前記第4モードである場合は、前記第1の頭部および前記第2の頭部の両方を前記表示部に表示させると共に、前記軸部または前記帯部のうち前記第1端に近い部分のみを前記表示部に表示させない、表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、根管治療器に適用される表示装置およびその表示装置における表示制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
根管治療装置は、ハンドピース(根管治療器)に装着された切削工具を回転させることで、患者の歯牙の根管壁を切削し、根管拡大を行う。特許文献1~3に記載された装置では、ハンドピースのヘッド部に、ファイル又はリーマ等の切削工具が装着され、この切削工具が時計回り又は反時計回りに回転する。時計回りは右回りとも呼ばれ、反時計回りは左回りとも呼ばれる。この装置は、制御ボックス等に設けられた表示部を備える。表示部は、切削工具の先端の根管内における位置や回転方向などを表示する。引用文献1に記載された装置において、表示部には、切削工具の回転の向き等を表示する回転表示部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-149169号公報
【文献】特開2015-83116号公報
【文献】特開2017-170133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2,3にも記載されるように、根管治療器の切削工具では、切削効率の向上または適切な切削を行う等のため、複数の駆動パターン(言い換えれば回転モード又は制御モード)にて切削が行われる。すなわち、時計回りと反時計回りが適宜に組み合わされた切削工具の駆動により、より望ましい根管拡大が実施される。上述した従来の回転表示部は、切削工具の回転の向きを表示できるが、ユーザが、切削工具の各種の制御モードを回転表示部にて確認することは難しい。
【0005】
本開示は、ユーザが根管治療器の制御モードを一見して把握できる表示装置および表示制御方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、根管治療器に装着される切削工具の制御モードを表示する表示装置であって、複数の制御モードのうち実行される実行制御モードを示す図形を表示する表示部と、表示部に図形を表示させるように表示部を制御する制御部と、を備え、図形を表示するための複数の要素は、円弧状に延びる軸部または扇状に延びる帯部と、軸部または帯部の第1端および第2端にそれぞれ配置されて、切削工具の回転方向としての第1方向および第2方向をそれぞれ示す第1の頭部および第2の頭部と、を有し、制御部は、根管治療器における実行制御モードに応じて表示部を制御し、複数の要素のうち、軸部または帯部の全体または一部と、第1の頭部および/または第2の頭部と、を表示部に表示させる。
【0007】
本発明の別の態様は、根管治療器に装着される切削工具の制御モードを表示する表示装置における表示制御方法であって、表示装置が、複数の制御モードのうち実行される実行制御モードを示す図形を表示する表示部を備え、図形を表示するための複数の要素は、円弧状に延びる軸部または扇状に延びる帯部と、軸部または帯部の第1端および第2端にそれぞれ配置されて、切削工具の回転方向としての第1方向および第2方向をそれぞれ示す第1の頭部および第2の頭部と、を有し、根管治療器における実行制御モードに応じて表示部を制御し、複数の要素のうち、軸部または帯部の全体または一部と、第1の頭部および/または第2の頭部と、を表示部に表示させる。
【0008】
この表示装置および表示制御方法によれば、表示部には、実際に実行されている実行制御モードが図形で示される。この図形を表示するため、複数の要素が表示部には設けられている。制御部(または表示制御方法)によって、円弧状または扇状に延びる軸部または帯部の全体または一部と、その第1端および第2端に配置された第1の頭部および/または第2の頭部とが、表示部に表示される。軸部または帯部と、頭部の表示形態(表示方法)は、単なるオン・オフではなく、軸部または帯部の一部を表示させたり頭部の両方またはいずれか一方を表示させたりする等の多様な形態を採り得る。よって、切削工具の回転モードすなわち制御モードに合致した図形を表示することができ、ユーザにとって、根管治療器において実行されている実行制御モードを一見して把握することが容易になっている。なお、「図形を表示する」とは、軸部または帯部、および頭部における所定の部分が点灯し続ける態様を含み、軸部または帯部、および頭部における所定の部分が点滅する態様をも含む。
【0009】
制御部は、少なくとも、所定の実行制御モードの場合に、軸部または帯部の一部と、第1の頭部および第2の頭部の両方とを表示部に表示させてもよい。この場合、軸部または帯部の一部のみが表示され、これに併せ、第1の頭部および第2の頭部の両方が表示される。したがって、第1方向または第2方向への単純な回転のみならず、切削工具の複雑な動きを表現することができる。
【0010】
複数の制御モードは、回転方向が第1方向のみの第1モード、回転方向が第2方向のみの第2モード、回転方向のうち主となる回転方向が第1方向であり所定の場合に第2方向となる第3モード、および、回転方向のうち主となる回転方向が第2方向であり所定の場合に第1方向となる第4モードを含み、所定の実行制御モードは、第1モードおよび第2モードを含まず、少なくとも、第3モードおよび第4モードの何れかを含んでもよい。第3モードおよび第4モードは、第1モードおよび第2モードとは違って、切削工具が複雑な動きを行う。第3モードおよび第4モードの何れかにおいて、軸部または帯部の一部と、第1の頭部および第2の頭部の両方とが表示されるので、切削工具の複雑な動きを表現することができる。
【0011】
複数の制御モードは、回転方向が第1方向のみの第1モード、回転方向が第2方向のみの第2モード、回転方向のうち主となる回転方向が第1方向であり所定の場合に第2方向となる第3モード、および、回転方向のうち主となる回転方向が第2方向であり所定の場合に第1方向となる第4モード、のうち少なくとも2つ以上を含んでもよい。軸部または帯部と頭部の表示を適宜に組み合わせることで、回転方向が第1方向であるか若しくは第2方向であるか、または、第1方向または第2方向のいずれが主な回転方向であるか、等の情報を表現することができる。ユーザは、複数の制御モードの中からいずれの制御モードが実行されているかを容易に把握できる。
【0012】
制御部は、実行制御モードが第1モードである場合は、軸部または帯部の全体または一部と第1の頭部のみとを表示部に表示させ、実行制御モードが第2モードである場合は、軸部または帯部の全体または一部と第2の頭部のみとを表示部に表示させてもよい。この場合、制御部の制御によって、表示させる頭部を切り替えることにより、切削工具が第1方向に回転しているか、または第2方向に回転しているかを、ユーザは容易に把握できる。
【0013】
制御部は、実行制御モードが第3モードである場合は、第1の頭部および第2の頭部の両方を表示部に表示させると共に、軸部または帯部のうち第2端に近い部分のみを表示部に表示させず、実行制御モードが第4モードである場合は、第1の頭部および第2の頭部の両方を表示部に表示させると共に、軸部または帯部のうち第1端に近い部分のみを表示部に表示させなくてもよい。この場合、切削工具が第1方向と第2方向の両方に回転していることをユーザは容易に把握できる。しかも、軸部または帯部の第1端側と第2端側のいずれか一方が他方より長くなるので、いずれが主な回転方向であるかということをユーザは容易に把握できる。
【0014】
複数の制御モードは、回転方向が第1方向と第2方向とを繰り返す第5モードを含んでもよい。軸部または帯部と頭部の表示を適宜に組み合わせることで、第1方向の回転と第2方向の回転が繰り返されていることを表現できる。ユーザは、複数の制御モードの中からいずれの制御モードが実行されているかを容易に把握できる。
【0015】
制御部は、実行制御モードが第5モードである場合は、第1の頭部および第2の頭部の両方を表示部に表示させると共に、軸部または帯部のうち第1端と第2端の間の中間部のみを表示部に表示させなくてもよい。この場合、軸部または帯部の左右の部分(第1端側および第2端側)の長さが等しくなるので、切削工具が第1方向と第2方向とに繰り返し回転していることを、ユーザは容易に把握できる。
【0016】
軸部または帯部は、円弧状または扇状に配置された少なくとも4つ以上のセグメントを含んでもよい。この場合、軸部または帯部の各セグメントを点灯、消灯または点滅させることで、ユーザは、制御モードを一層容易に把握することができる。図形の表示制御も単純化されるので容易である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のいくつかの態様によれば、ユーザにとって、根管治療器において実行されている実行制御モードを一見して把握することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の一実施形態に係る表示装置が適用された根管治療装置を示す図である。
【
図2】根管治療装置およびタブレットからなる根管治療システムの概略構成を示す図である。
【
図3】
図3(a)は表示装置の表示部を示す図、
図3(b)はタブレットの画面を示す図である。
【
図4】
図4(a)は第3モードにおける切削工具の回転を示す図、
図4(b)は第4モードにおける切削工具の回転を示す図、
図4(c)は第5モードにおける切削工具の回転を示す図である。
【
図5】根管治療装置の制御部によって実行される処理を示すフロー図である。
【
図6】
図6(a)~(e)は、第1の変形例における第1~第5モードの表示形態をそれぞれ示す図である。
【
図7】
図7(a)~(e)は、第2の変形例における第1~第5モードの表示形態をそれぞれ示す図である。
【
図8】
図8(a)~(e)は、第3の変形例における第1~第5モードの表示形態をそれぞれ示す図である。
【
図9】
図9(a)~(e)は、第1の変形例における第1~第5モードの表示形態をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
まず
図1および
図2を参照して、本実施形態に係る表示装置が適用された根管治療装置1について説明する。根管治療装置1は、患者の歯牙の根管壁を切削することで根管拡大を行うための歯科治療装置である。根管治療装置1は、根管拡大を行うための治療器具であるインスツルメント2を有する根管治療器10と、根管治療器10におけるインスツルメント2の駆動モードの設定を行ったりインスツルメント2の駆動状態と歯牙の治療状態を表示したりするための根管長測定器(表示装置)20と、根管長測定器20から離れた位置で用いられ、根管長測定器20における表示画面と同様の項目・内容を表示するタブレット30とを備える。
【0021】
根管治療器10の本体は、
図1に示されるように、たとえば根管長測定器20の背面に取り付けられる。根管治療器10は、装置のユーザである歯科医師が根管治療を行う際に、根管長測定器20に対して装着される。根管長測定器20は、根管治療器10に接続されて、操作部23により、インスツルメント2の駆動制御に関するユーザからの入力を受け付け、根管治療器10の制御部11に制御信号を送る。また根管長測定器20は、根管治療器10から出力される各種の信号を入力し、必要な情報をディスプレイ(表示部)22に表示する。根管長測定器20は、根管拡大以外の治療にも適用され得る。根管長測定器20の背面には、根管拡大以外の治療が行われる場合には、根管治療器10とは異なる別の治療器が取り付けられる。
【0022】
根管治療器10は、制御部11、モータドライバ12、入力端子A13、入力端子B14、出力端子15、およびコネクタ16を備えており、これらは根管長測定器20に取り付けられた本体(筐体)に収納されている。また根管治療器10は、入力端子A13および口腔電極ケーブル4bを介して制御部11に接続された口腔電極3と、出力端子15およびインスツルメントケーブル4aを介してモータドライバ12に接続されたインスツルメント2とを備える。インスツルメントケーブル4aおよび口腔電極ケーブル4bは、
図1に示されるように、本体に接続された1本のケーブル4の途中から分岐するように設けられてもよい。これらのケーブル4(インスツルメントケーブル4aおよび口腔電極ケーブル4b)内には、インスツルメント2を駆動するための電源供給用リード線や、各種の信号を伝送するための信号用リード線等が通っている。さらに根管治療器10は、入力端子B14およびケーブル9aを介して制御部11に接続されたフットコントローラ9を備える。なお、図示は省略されているが、根管治療器10は、根管治療装置1に必要な電力を供給するためのバッテリを備えている。なお、根管治療器10または根管長測定器20のいずれかに、電力供給のための電源ケーブルが取り付けられてもよい。
【0023】
インスツルメント2は、ユーザが手に持って根管拡大を行うためのハンドピース7と、ハンドピース7の基端側に着脱自在に接続されたモータユニット6とを含む。ハンドピース7は、その先端に設けられたヘッド部7aを含んでおり、ヘッド部7aには切削工具(ファイル又はリーマ等)8が保持されている。モータユニット6には、ハンドピース7内の回転力伝達機構を介して切削工具8を回転駆動させるマイクロモータ6aが内蔵されている。切削工具8は、根管長、すなわち根管内における切削工具8の先端の位置を検出するための根管長測定回路の第1の電極として機能する。口腔電極3は、その先端に設けられたフック部3aを含んでいる。フック部3aは、根管拡大が行われる際、患者の口角に引っ掛けられ、根管長測定回路の第2の電極として機構する。フットコントローラ9は、ユーザが足で踏み、マイクロモータ6aによる切削工具8の駆動制御を行うための操作部である。
【0024】
制御部11は、CPU等のプロセッサと、RAMおよびROM等を含む記憶装置とを備えたコンピュータである。制御部11は、フットコントローラ9からの操作信号を受けると共に、根管長測定器20からの操作信号を受けて、モータドライバ12を駆動制御する。
【0025】
根管長測定器20は、制御部21、ディスプレイ22、操作部23、メモリ24、スピーカ25、コネクタ26、および無線通信部27を備えており、これらは本体(筐体)に設けられている。根管長測定器20に根管治療器10が取り付けられた状態で、コネクタ26およびコネクタ16を介して、根管長測定器20と根管治療器10との間における各種信号の送受信が可能になっている。制御部21は、CPU等のプロセッサと、RAMおよびROM等を含む記憶装置とを備えたコンピュータである。制御部21は、操作部23を介して入力された切削工具8の制御モード及びユーザ設定モード等に基づいて、根管治療器10の制御部11に指令を出す。また制御部21は、制御部11から送られる、インスツルメント2の駆動状態と歯牙の治療状態を示す信号に基づいて、ディスプレイ22を表示制御する。さらに制御部21は、タブレット30にも、ディスプレイ22に表示させる表示項目および内容と同様の表示がなされるよう、無線通信部27を介してタブレット30に信号を送信する。根管長測定器20とタブレット30との間で、いわゆるミラーリング制御が行われる。なお、「歯牙の治療状態」とは、上記した根管長を含む概念である。
【0026】
操作部23は、ユーザが、治療において実行したい切削工具8の制御モードや、自己に適した各種設定(たとえば切削工具8の回転数や所望の根管長など)を行ったり、電源をオン・オフしたりするための入力装置である。スピーカ25は、たとえば設定中の操作音や、治療中における根管長に応じた音(所望の根管長に切削工具8の先端が達した場合の警告音を含む)を発する。
【0027】
メモリ24には、以下に詳述するディスプレイ22の表示制御を行うための、プログラムが格納される。メモリ24には、その他、根管治療装置1の各種制御を行うためのプログラムが格納されてよい。また、メモリ24には、回転数などの設定情報が格納されている。
【0028】
根管治療器10および根管長測定器20によって、患者に対する治療中において根管長が測定される。歯牙の根管内に挿入された切削工具8と、患者の口角に掛けられた口腔電極3とによって、閉回路が形成される。切削工具8と口腔電極3との間のインピーダンスを計測することによって、歯牙の先端位置(根尖)から切削工具8の先端までの距離が測定される。この測定された距離を根管長とする。根管長測定回路は、根管長測定器20内に形成されてもよいし、根管治療器10内に形成されてもよい。または、根管長測定回路が、根管長測定器20および根管治療器10の両方によって形成されてもよい。
【0029】
タブレット30は、ユーザ、またはユーザ以外の人(他の歯科医師若しくは歯科助手など)によって利用される端末である。タブレット30は、制御部31、タッチパネルディスプレイ32、メモリ33、スピーカ34、および無線通信部35を備えている。タブレット30は、無線通信部35を備えることにより、根管長測定器20の無線通信部27との間で無線通信可能である。制御部31は、CPU等のプロセッサと、RAMおよびROM等を含む記憶装置とを備えたコンピュータである。制御部31は、根管長測定器20から送信された信号を受信してミラーリング制御を行うことにより、タッチパネルディスプレイ32を表示制御する。タブレット30のタッチパネルディスプレイ32は、根管長測定器20の操作部23と同様の機能を備えてもよい。メモリ33の代わりに、制御部31のROMが用いられてもよい。
【0030】
続いて、
図3を参照して、根管長測定器20における表示制御について説明する。根管長測定器20は、根管治療装置1における各種状態、たとえばインスツルメント2の駆動状態および歯牙の治療状態を表示する表示装置である。ユーザは、患者の治療を行いながらディスプレイ22を視認し、治療の状況が適切であるか否かを確認したり、所望の治療状態が実現されているかを確認したりできる。特に本実施形態において、根管長測定器20は、根管治療器10の一部であるハンドピース7に装着された切削工具8の制御モードを表示する。ディスプレイ22は、根管治療装置1において実行され得る複数の制御モードのうち、実際に治療中に実行される実行制御モードを示す図形を表示する。
【0031】
まず、根管治療器10において実行可能な複数の制御モードについて説明する。複数の制御モードは、切削工具8の回転方向と回転態様(同一方向に回転し続けるか又は反対方向に回転するか又は一時的に停止するか等を含む各種態様)に基づいて定められている。これらの制御モードは、根管長測定器20のメモリ24内に記憶されている。複数の制御モードは、少なくとも、切削工具8の回転方向が時計回り(第1方向)のみの第1モード(以下、CWモードという)と、切削工具8の回転方向が反時計回り(第2方向)のみの第2モード(以下、CCWモードという)とを含む。これら2種類の制御モードは、ユーザによってフットコントローラ9が足踏み操作され、回転停止の操作がなされるまでは、同一方向に切削工具8を回転させ続けるモードである。
【0032】
次に
図4(a)~
図4(c)を参照して、他の制御モードについて説明する。
図4(a)に示されるように、複数の制御モードは、切削工具8の駆動期間の半分以上における回転方向が時計回りであり、切削工具8の駆動期間の他の一部における回転方向が反時計回りである第3モード(以下、OTR-CWモードという)を含む。制御部21は、回転角度を検知可能である。このOTR-CWモードでは、切削工具8が時計回りに回転している間、歯牙を切削するときに切削工具8に加わる回転方向の負荷すなわちトルクの値(以下、トルク値という)が、所定の閾値以上となった時刻t1の後に、回転角度が180°となった時点で、切削工具8を反時計回りに回転させる(反転させる)。このOTR-CWモードでは、切削工具8の回転方向のうち主となる回転方向が時計回りであり、所定の場合に、切削工具8の回転方向が反時計回りとなる。また
図4(b)に示されるように、複数の制御モードは、切削工具8の駆動期間の半分以上における回転方向が反時計回りであり、切削工具8の駆動期間の他の一部における回転方向が時計回りである第4モード(以下、OTR-CCWモードという)を含む。このOTR-CCWモードでは、切削工具8が反時計回りに回転している間、歯牙を切削するときに切削工具8に加わる回転方向の負荷すなわちトルク値が、所定の閾値以上となった時刻t1の後に、回転角度が-180°となった時点で、切削工具8を時計回りに回転させる(反転させる)。このOTR-CCWモードでは、切削工具8の回転方向のうち主となる回転方向が反時計回りであり、所定の場合に、切削工具8の回転方向が時計回りとなる。「主となる回転方向」とは、その回転方向にて切削工具8が回転する期間が、他の回転方向にて切削工具8が回転する期間よりも長いことを意味し、通常はその回転方向で根管壁が切削されることを意味する。
図4(a)~
図4(c)において、縦軸は回転角度の累積値を示すが、時計回り(右回り)を正とし、反時計回り(左回り)を負としている。制御部11は、たとえば、モータドライバ12に設けられた負荷検出用抵抗に流れる電流値に基づいて、トルク値を算出可能である。
【0033】
OTR-CWモードおよびOTR-CCWモードは、いずれも、切削工具8に加わる負荷による切削工具の破損を防止しつつ、歯牙の切削効率を向上させることができる制御モードである。これらの制御モードは、たとえば特開2015-83116号公報に開示されている。根管長測定器20は、このような制御を行うために、根管治療器10から送られる信号に基づいてトルク値を検出可能であると共に、メモリ24に、所定の閾値を記憶している。所定の閾値は、根管長測定器20またはタブレット30を用いてユーザが任意に設定可能な値である。上記の折り返し点である180°も、変更・設定可能である。なお、「OTR」はOptimum Torque Reverseの略称であり、「CW」はclockwiseの略称であり、「CCW」はcounterclockwiseの略称である。
【0034】
図4(c)に示されるように、複数の制御モードは、切削工具8の回転方向が時計回りと反時計回りとを繰り返す第5モード(以下、OGPモードという)を含む。このOGPモードでは、たとえば時計回りに回転する切削工具8の回転角度が180°に達すると切削工具8を反時計回りに回転させ、続いて切削工具8の回転角度が90°に達すると切削工具8を時計回りに回転させ、それ以降、回転角度が180+90°×N(Nは自然数)に達する度に、切削工具8を反時計回りに90°だけ戻す制御が行われる。このOGPモードは、たとえば根管の形状等に関わらず根管を適切に切削することができる制御モードである。この制御モードは、たとえば特開2017-170133号公報に開示されている。上記の180°または90°は、変更・設定可能である。その場合、反時計回りに回転する(戻る)角度は、時計回りに回転する角度よりも小さい。すなわち、第1方向に切削工具8が回転した角度の一部のみ、切削工具8が第2方向に回転する。OGPモードは、反時計回りを基本として、切削工具8が時計回りに回転しても(戻っても)よい。すなわち、
図4(c)に示される形態とは、第1方向と第2方向が逆になった制御モードであってもよい。なお、「OGP」はOptimum Glide Pathの略称である。
【0035】
根管治療装置1では、ディスプレイ22の下に位置する操作部23をユーザが操作することで、いずれかの制御モードを選択可能になっている。操作部23は1つ又は複数のボタン(ボタンスイッチ)を含み、ユーザは、たとえばディスプレイ22に示された制御モード選択表記を見ながら、いずれかの制御モードを選択する。制御部11および制御部21は、選択された制御モード(実行制御モード)に従って、所定の処理を実行する。制御部11は、根管長測定器20からの操作信号を受け、モータドライバ12に対して選択された制御モードに応じた駆動制御を行う。モータドライバ12は、マイクロモータ6aが各制御モードに応じた回転動作を行うよう、マイクロモータ6aを駆動させる。制御部21は、ディスプレイ22およびスピーカ25に対して、選択された制御モードに応じた画面表示や音出力等の制御を行う。また、タブレット30のタッチパネルディスプレイ32をユーザが操作することで、上記と同様、いずれかの制御モードを選択可能になっている。
【0036】
図3(a)に戻り、制御部21は、ディスプレイ22に、実行制御モードを示す図形を表示させるよう、ディスプレイ22を制御する。
図3(a)に示されるように、ディスプレイ22には、ユーザによって選択された設定モードを表示する操作モード表示部41と、測定した根管長を詳細に表示する多数の要素を含むドット表示部42と、根管長を複数のゾーンに分けて段階的に表示するゾーン表示部43と、切削工具8の回転数等を表示する数値表示部44と、切削工具8に加わるトルク値を表示するための多数の要素を含むドット表示部46とが設けられている。
【0037】
さらにディスプレイ22には、上述した各種の制御モードのうち実行されている実行制御モードを示すための制御モード文字表記50と、制御モード図形47とが設けられている。制御モード文字表記50は、制御モード図形47の四隅の位置に配置された、上述した各種モードに対応する文字列、すなわちCW表記51、CCW表記52、OTR表記53、およびOGP表記55を含む。これらの文字表記は、単独で、又は組み合わせて表示される。
【0038】
制御モード図形47を表示するための複数の要素は、
図3(a)に示されるように、円弧状に延びる軸部48と、軸部48の右下端(第1端)および左下端(第2端)にそれぞれ配置された右回り頭部(第1の頭部)49Rおよび左回り頭部(第2の頭部)49Lとを有する。右回り頭部49Rおよび左回り頭部49Lによって方向表示部49が構成されており、これらは、切削工具8の回転方向としての時計回りおよび反時計回りをそれぞれ示す。
【0039】
軸部48は、円弧状に配置された複数の(図示された形態では6つ)のセグメントを含む。軸部48は、円弧の右半分を構成する右回り軸部48Rと、円弧の左半分を構成する左回り軸部48Lとを含んでいる。右回り軸部48Rの下端に右回り頭部49Rが配置され、左回り軸部48Lの下端に左回り頭部49Lが配置されている。右回り軸部48Rは、第1の右セグメント48Raと第2の右セグメント48Rbと第3の右セグメント48Rcとを含む。左回り軸部48Lは、第1の左セグメント48Laと第2の左セグメント48Lbと第3の左セグメント48Lcとを含む。これらの右セグメント48Ra~48Rc、および、左セグメント48La~48Lcは、同じ曲率半径および中心角を有する円弧状部分である。各セグメントの中心角は、たとえば、40°~50°の範囲内の値であってもよく、45°であってもよい。なお、各セグメントが、同じ曲率半径、同じ中心角を有する構成に限られない。たとえば、各セグメントが、楕円の一部をなす曲率半径を有してもよい。
【0040】
制御部21は、後述するように、根管治療器10における実行制御モードに応じて、ディスプレイ22を制御し、上記した複数のセグメントのうち、軸部48の全体または一部と、右回り頭部49Rおよび/または左回り頭部49Lとをディスプレイ22に表示させる。
【0041】
一方、
図3(b)に示されるように、タブレット30のタッチパネルディスプレイ32にも、ミラーリング制御により、ディスプレイ22と同様の表示がなされる。タッチパネルディスプレイ32には、ユーザによって選択された設定モードを表示する操作モード表示部61と、測定した根管長を詳細に表示する多数の要素を含むドット表示部62と、根管長を複数のゾーンに分けて段階的に表示するゾーン表示部63と、切削工具8の回転数等を表示する数値表示部64と、切削工具8に加わるトルク値を表示するための多数の要素を含むドット表示部66とが設けられている。タッチパネルディスプレイ32には、実行制御モードを示すための制御モード文字表記70と、制御モード図形67とが設けられている。制御モード図形67は、円弧状に延びる軸部68と、軸部68の右下端(第1端)および左下端(第2端)に配置された方向表示部69とを有する。
【0042】
次に
図5を参照して、制御部11および制御部21によって実行される処理(根管治療器10における表示制御方法)について説明する。
図5は、制御部11および制御部21によって実行される処理を示すフロー図である。まず制御部21は、操作部23もしくはタッチパネルディスプレイ32の操作によりCWモードが選択された(されている)か否かを判断する(ステップS01)。制御部21は、CWモードが選択されていると判断した場合には(ステップS01;Yes)、CWモードの図形をディスプレイ22に表示させる(ステップS11)。ユーザがフットコントローラ9を踏むと、制御部11は、モータドライバ12およびマイクロモータ6aに対してCWモードの制御を実行し(ステップS12)、切削工具8は所定の回転速度(回転数)で時計回りに回転し続ける。制御部11は、CWモードに基づく駆動制御が終了したと判断した場合(ステップS13;Yes)、モータドライバ12およびマイクロモータ6aに対する駆動制御を終了する。なお、ユーザがフットコントローラ9を踏んでいる間、切削工具8は実行制御モードに応じて回転し続けるが、ユーザがフットコントローラ9から足を離すと、制御部11および制御部21よる制御は終了するか、またはステップS01へと戻る。制御部11が、CWモードに基づく駆動制御が終了していないと判断した場合(ステップS13;No)、制御部21がステップS11の処理を行い、制御部11がステップS12の処理を行う。ステップS01において、制御部21は、制御モードとしてCWモードが選択されていないと判断した場合(ステップS01;No)、制御部21はステップS02の判断を行う。
【0043】
ステップS11におけるCWモードの表示制御では、ディスプレイ22の制御モード図形47は、軸部48のすべてのセグメントと、右回り頭部49Rのみとを含む。制御モード図形47では、左回り頭部49Lのみが表示されない。すなわち、制御部21は、実行制御モードがCWモードである場合は、軸部48の全体と右回り頭部49Rのみとをディスプレイ22に表示させる。なお、CWモードにおいて、制御部21は、軸部48のうち左回り軸部48Lの全体または一部をディスプレイ22に表示させないように制御を行ってもよい。以上の図形表示によって、ユーザは、切削工具8が時計回りに回転し続ける実行制御モードであることを直感的に理解できる。また本実施形態では、制御モード図形47に制御モード文字表記50が併せて表示される。CWモードの表示制御では、上記した制御モード図形47に対し、CW表記51が併せて表示される。これにより、ユーザはより一層、CWモードが実行されていることを明確に理解できる。
【0044】
制御部21は、操作部23もしくはタッチパネルディスプレイ32の操作によりCCWモードが選択された(されている)か否かを判断する(ステップS02)。制御部21は、CCWモードが選択されていると判断した場合には(ステップS02;Yes)、CCWモードの図形をディスプレイ22に表示させる(ステップS21)。ユーザがフットコントローラ9を踏むと、制御部11は、モータドライバ12およびマイクロモータ6aに対してCCWモードの制御を実行し(ステップS22)、切削工具8は所定の回転速度(回転数)で反時計回りに回転し続ける。制御部11は、CCWモードに基づく駆動制御が終了したと判断した場合(ステップS23;Yes)、モータドライバ12およびマイクロモータ6aに対する駆動制御を終了する。制御部11が、CCWモードに基づく駆動制御が終了していないと判断した場合(ステップS23;No)、制御部21がステップS21の処理を行い、制御部11がステップS22の処理を行う。ステップS02において、制御部21は、制御モードとしてCCWモードが選択されていないと判断した場合(ステップS02;No)、制御部21はステップS03の判断を行う。
【0045】
ステップS21におけるCCWモードの表示制御では、ディスプレイ22の制御モード図形47は、軸部48のすべてのセグメントと、左回り頭部49Lのみとを含む。制御モード図形47では、右回り頭部49Rのみが表示されない。すなわち、制御部21は、実行制御モードがCCWモードである場合は、軸部48の全体と左回り頭部49Lのみとをディスプレイ22に表示させる。なお、CCWモードにおいて、制御部21は、軸部48のうち右回り軸部48Rの全体または一部をディスプレイ22に表示させないように制御を行ってもよい。以上の図形表示によって、ユーザは、切削工具8が反時計回りに回転し続ける実行制御モードであることを直感的に理解できる。またCCWモードの表示制御では、上記した制御モード図形47に対し、CCW表記52が併せて表示される。これにより、ユーザはより一層、CCWモードが実行されていることを明確に理解できる。
【0046】
制御部21は、操作部23もしくはタッチパネルディスプレイ32の操作によりOTR-CWモードが選択された(されている)か否かを判断する(ステップS03)。制御部21は、OTR-CWモードが選択されていると判断した場合には(ステップS03;Yes)、OTR-CWモードの図形をディスプレイ22に表示させる(ステップS31)。ユーザがフットコントローラ9を踏むと、制御部11は、モータドライバ12およびマイクロモータ6aに対してOTR-CWモードの制御を実行し(ステップS32)、切削工具8が時計回りに回転している間にトルク値が所定の閾値以上となった場合、切削工具8が反時計回りに回転する。ステップS32の処理において、制御部11は、トルク値が所定の閾値以上であるか閾値未満であるかを判断する。制御部11は、OTR-CWモードに基づく駆動制御が終了したと判断した場合(ステップS33;Yes)、モータドライバ12およびマイクロモータ6aに対する駆動制御を終了する。制御部11が、OTR-CWモードに基づく駆動制御が終了していないと判断した場合(ステップS33;No)、制御部21がステップS31の処理を行い、制御部11がステップS32の処理を行う。ステップS03において、制御部21は、制御モードとしてOTR-CWモードが選択されていないと判断した場合(ステップS03;No)、制御部21はステップS04の判断を行う。
【0047】
ステップS31におけるOTR-CWモードの表示制御では、ディスプレイ22の制御モード図形47は、右回り軸部48Rのすべてのセグメント及び左回り軸部48Lの一部のセグメントと、右回り頭部49R及び左回り頭部49Lの両方とを含む。制御モード図形47では、左回り軸部48Lの第2の左セグメント48Lbのみが表示されない。すなわち、制御部21は、実行制御モードがOTR-CWモードである場合は、右回り頭部49Rおよび左回り頭部49Lの両方をディスプレイ22に表示させると共に、軸部48のうち左下端(第2端)に近い部分のみをディスプレイ22に表示させない。OTR-CWモードは、特許請求の範囲に記載された「所定の実行制御モード」の1つである。なお、この表示例において、「軸部48の左下端に近い部分」は第2の左セグメント48Lbであるが、「軸部48の左下端に近い部分」が第1の左セグメント48Laまたは第3の左セグメント48Lcであってもよい。以上の図形表示によって、ユーザは、切削工具8が時計回りに回転しているがトルク値が所定の閾値以上となった場合には反時計回りに回転する実行制御モードであることを直感的に理解できる。またOTR-CWモードの表示制御では、上記した制御モード図形47に対し、OTR表記53およびCW表記51が併せて表示される。これにより、ユーザはより一層、OTR-CWモードが実行されていることを明確に理解できる。
【0048】
制御部21は、操作部23もしくはタッチパネルディスプレイ32の操作によりOTR-CCWモードが選択された(されている)か否かを判断する(ステップS04)。制御部21は、OTR-CCWモードが選択されていると判断した場合には(ステップS04;Yes)、OTR-CCWモードの図形をディスプレイ22に表示させる(ステップS41)。ユーザがフットコントローラ9を踏むと、制御部11は、モータドライバ12およびマイクロモータ6aに対してOTR-CCWモードの制御を実行し(ステップS42)、切削工具8が反時計回りに回転している間にトルク値が所定の閾値以上となった場合、切削工具8が時計回りに回転する。ステップS42の処理において、制御部11は、トルク値が所定の閾値以上であるか閾値未満であるかを判断する。制御部11は、OTR-CCWモードに基づく駆動制御が終了したと判断した場合(ステップS43;Yes)、モータドライバ12およびマイクロモータ6aに対する駆動制御を終了する。制御部11が、OTR-CCWモードに基づく駆動制御が終了していないと判断した場合(ステップS43;No)、制御部21がステップS41の処理を行い、制御部11がステップS42の処理を行う。ステップS04において、制御部21は、制御モードとしてOTR-CCWモードが選択されていないと判断した場合(ステップS04;No)、制御部21はステップS05の判断を行う。
【0049】
ステップS41におけるOTR-CCWモードの表示制御では、ディスプレイ22の制御モード図形47は、左回り軸部48Lのすべてのセグメント及び右回り軸部48Rの一部のセグメントと、右回り頭部49Rおよび左回り頭部49Lの両方とを含む。制御モード図形47では、右回り軸部48Rの第2の右セグメント48Rbのみが表示されない。すなわち、制御部21は、実行制御モードがOTR-CCWモードである場合は、右回り頭部49Rおよび左回り頭部49Lの両方をディスプレイ22に表示させると共に、軸部48のうち右下端(第1端)に近い部分のみをディスプレイ22に表示させない。OTR-CCWモードは、特許請求の範囲に記載された「所定の実行制御モード」の1つである。なお、この表示例において、「軸部48の右下端に近い部分」は第2の右セグメント48Rbであるが、「軸部48の右下端に近い部分」が第1の右セグメント48Raまたは第3の右セグメント48Rcであってもよい。以上の図形表示によって、ユーザは、切削工具8が反時計回りに回転しているがトルク値が所定の閾値以上となった場合には時計回りに回転する実行制御モードであることを直感的に理解できる。またOTR-CCWモードの表示制御では、上記した制御モード図形47に対し、OTR表記53およびCCW表記52が併せて表示される。これにより、ユーザはより一層、OTR-CCWモードが実行されていることを明確に理解できる。
【0050】
制御部21は、操作部23もしくはタッチパネルディスプレイ32の操作によりOGPモードが選択された(されている)か否かを判断する(ステップS05)。制御部21は、OGPモードが選択されていると判断した場合には(ステップS05;Yes)、OGPモードの図形をディスプレイ22に表示させる(ステップS51)。ユーザがフットコントローラ9を踏むと、制御部11は、モータドライバ12およびマイクロモータ6aに対してOGPモードの制御を実行し(ステップS52)、切削工具8は、所定の回転速度で、時計回りと反時計回りとを繰り返すように回転する。制御部11は、OGPモードに基づく駆動制御が終了したと判断した場合(ステップS53;Yes)、モータドライバ12およびマイクロモータ6aに対する駆動制御を終了する。制御部11が、OGPモードに基づく駆動制御が終了していないと判断した場合(ステップS53;No)、制御部21がステップS51の処理を行い、制御部11がステップS52の処理を行う。ステップS05において、制御部21は、制御モードとしてOGPモードが選択されていないと判断した場合(ステップS05;No)、制御部21はステップS01の判断を行う。
【0051】
ステップS51におけるOGPモードの表示制御では、ディスプレイ22の制御モード図形47は、右回り軸部48Rの一部のセグメントおよび左回り軸部48Lの一部のセグメントと、右回り頭部49Rおよび左回り頭部49Lの両方とを含む。制御モード図形47では、第1の右セグメント48Raおよび第1の左セグメント48Laのみが表示されない。すなわち、制御部21は、実行制御モードがOGPモードである場合は、右回り頭部49Rおよび左回り頭部49Lの両方をディスプレイ22に表示させると共に、軸部48のうち右下端と左下端の中間部のみをディスプレイ22に表示させない。OGPモードは、特許請求の範囲に記載された「所定の実行制御モード」の1つである。なお、OGPモードにおいて、制御部21は、第1の右セグメント48Ra、第2の右セグメント48Rb、第1の左セグメント48La、および第2の左セグメント48Lbをディスプレイ22に表示させないように制御を行ってもよい。以上の図形表示によって、ユーザは、切削工具8が時計回りと反時計回りとを繰り返すように回転する実行制御モードであることを直感的に理解できる。またOGPモードの表示制御では、上記した制御モード図形47に対し、OGP表記55が併せて表示される。これにより、ユーザはより一層、OGPモードが実行されていることを明確に理解できる。
【0052】
以上の一連の処理によって、根管治療器10を用いての根管拡大治療、および、根管長測定器20のディスプレイ22における表示が行われる。なお、上記実施形態において、各セグメントおよび頭部は、点灯し続ける表示態様であるが、
図5に示される表示を基本として、軸部48および方向表示部49における所定の部分が点滅する態様であってもよい。後述する各種変形例においても、その点は同様である。
【0053】
本実施形態の根管長測定器20によれば、ディスプレイ22には、実際に実行されている実行制御モードが図形で示される。この図形を表示するため、複数の要素がディスプレイ22には設けられている。制御部21によって、円弧状に延びる軸部48の全体または一部と、その右下端および左下端に配置された右回り頭部49Rおよび/または左回り頭部49Lとが、ディスプレイ22に表示される。軸部48と方向表示部49の表示形態(表示方法)は、単なるオン・オフではなく、軸部48の一部を表示させたり方向表示部49の両方またはいずれか一方を表示させたりする等の多様な形態を採り得る。よって、切削工具8の回転モードすなわち制御モードに合致した図形を表示することができ、ユーザにとって、根管治療器10において実行されている実行制御モードを一見して把握することが容易になっている。従来は、表示部における表示に基づいて制御モードを容易に把握することは難しかったが、本実施形態によれば、ユーザは表示部を見ればその図形から制御モードを認識できるので、制御モードを容易かつ即座に把握することができる。またこれらの効果は、タブレット30のタッチパネルディスプレイ32を見るユーザまたはユーザ以外の人等に対しても同様に奏される。
【0054】
所定の実行制御モードの場合に、軸部48の一部と、両方の頭部とを表示部に表示させる。軸部の一部のみが表示され、これに併せ、両方の頭部が表示されるので、第1方向または第2方向への単純な回転のみならず、切削工具の複雑な動きを表現することができる。
【0055】
特に、OTR-CWモードおよびOTR-CCWモードは、CWモードおよびCCWモードとは違って、切削工具8が複雑な動きを行う。OTR-CWモードおよびOTR-CCWモードの何れかにおいて、軸部48の一部と、両方の頭部とが表示されるので、切削工具8の複雑な動きを表現することができる。
【0056】
軸部48と方向表示部49の表示を適宜に組み合わせることで、回転方向が時計回りであるか若しくは反時計回りであるか、または、時計回りまたは反時計回りのいずれが主な回転方向であるか、等の情報を表現することができる。ユーザは、複数の制御モードの中からいずれの制御モードが実行されているかを容易に把握できる。
【0057】
CWモードまたはCCWモードでは、制御部21の制御によって、表示させる頭部を切り替えることにより、切削工具8が時計回りに回転しているか、または反時計回りに回転しているかを、ユーザは容易に把握できる。
【0058】
OTR-CWモードまたはOTR-CCWモードでは、切削工具8が時計回りと反時計回りの両方に回転していることをユーザは容易に把握できる。しかも、軸部48の右下端側と左下端側のいずれか一方が他方より長くなるので、いずれが主な回転方向であるかということをユーザは容易に把握できる。
【0059】
軸部48と方向表示部49の表示を適宜に組み合わせることで、時計回りの回転と反時計回りの回転が繰り返されていることを表現できる。ユーザは、複数の制御モードの中からいずれの制御モードが実行されているかを容易に把握できる。
【0060】
OGPモードでは、軸部48の左右の部分(右下端側および左下端側)の長さが等しくなるので、切削工具が時計回りと反時計回りとに繰り返し回転していることを、ユーザは容易に把握できる。
【0061】
軸部48が円弧状に配置された4つ以上(実施形態では6つ)のセグメントを含む。軸部48の各セグメントを点灯、消灯または点滅させることで、ユーザは、制御モードを一層容易に把握することができる。図形の表示制御も単純化されるので容易である。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。制御モード図形47はあらゆる変形態様を含み得る。
【0063】
たとえば、
図6(a)~
図6(e)に示されるように、扇状に延びる帯部58と三角形の方向表示部49とを有する制御モード図形47Aであってもよい。制御モード図形47Aでは、6つのセグメントが扇状に配置されている。帯部58は、扇状に配置された複数の(図示された形態では6つ)のセグメントを含む。帯部58は、円弧の右半分を構成する右回り帯部58Rと、円弧の左半分を構成する左回り帯部58Lとを含んでいる。右回り帯部58Rの下端に右回り頭部49Rが配置され、左回り帯部58Lの下端に左回り頭部49Lが配置されている。右回り帯部58Rは、第1の右セグメント58Raと第2の右セグメント58Rbと第3の右セグメント58Rcとを含む。左回り帯部58Lは、第1の左セグメント58Laと第2の左セグメント58Lbと第3の左セグメント58Lcとを含む。帯部58におけるこれらのセグメントの位置および範囲は、軸部48におけるこれらのセグメントの位置および範囲と同様であってよい。
【0064】
また、
図7(a)~
図7(e)に示されるように、扇状に延びる帯部58と三角形の方向表示部49とを有する制御モード図形47Bであってもよい。制御モード図形47Bでは、6つのセグメントが扇状に配置されているが、その中心部分に中心空間Cが設けられており、表示としては中心部が切り欠かれたようになっている。また
図8(a)~
図8(e)に示されるように、扇状に延びる帯部58と三角形の方向表示部49とを有する制御モード図形47Cであってもよい。制御モード図形47Cでは、6つの扇状のセグメントが設けられる角度範囲が、上述した制御モード図形47,47A,47Bよりも小さい。
【0065】
また、
図9(a)~
図9(e)に示されるように、円弧状に延びる軸部48と三角形の方向表示部49とを有する制御モード図形47Dであってもよい。制御モード図形47Dでは、複数のセグメントは用いられず、ドットマトリックス等が用いられて、連続的な軸部48が設けられている。この場合、OTR-CWモードでは、制御モード図形47Dは、軸部48の左側に、円弧が途切れた部分である左非表示部45Lを含む。OTR-CCWモードでは、制御モード図形47Dは、軸部48の右側に、円弧が途切れた部分である左非表示部45Lを含む。OGPモードでは、制御モード図形47Dは、軸部48の上部中央に、円弧が途切れた部分である中央非表示部45Mを含む。なお、軸部48と左右の頭部49R,49Lとの間の隙間が無く、これらが連続していてもよい。
【0066】
上述した5種類の制御モードのうち、1つ又は複数が省略されてもよい。たとえば、複数のモードが、CWモードおよびCCWモードに、OTR-CWモード、OTR-CCWモード、又はOGPモードのうちいずれか1つ又は2つを加えた3種類または4種類の制御モードを含んでもよい。あるいは、CWモードまたはCCWモードのいずれか一方が省略されてもよい。複数の制御モードが、時計回り、反時計回り、および停止のいずれかを組み合わせた6種類以上の制御モードを含んでもよい。どのような制御モードが含まれていても、軸部または帯部の全体または一部と、第1の頭部および/または第2の頭部とを表示部に表示させることで、ユーザは、根管治療器10において実行されている実行制御モードを一見して把握できる。
【0067】
根管治療器10において、フットコントローラ9による制御だけでなく、ユーザの設定により、回転方向が反転したり停止したりする動作が実行されてもよい。例えば、アピカルリバースと呼ばれる機能が根管治療器10に備わっていてもよい。アピカルリバース機能では、ファイルの先端位置が予め設定した根管内の位置に到達すると、自動的に回転方向を反転させる。このような場合でも、軸部または帯部の全体または一部と、第1の頭部および/または第2の頭部とを表示部に表示させることで、ユーザは、根管治療器10において実行されている実行制御モードを一見して把握できる。
【0068】
軸部または帯部を構成するセグメントの数は、偶数でもよいが、奇数でもよい。セグメントの数は、4つでもよく、5つでもよく、7つ以上であってもよい。円弧状または扇状に配置される各セグメントの中心角(または周長)が異なってもよい。
【0069】
制御モード文字表記50が、制御モード図形47に隣接しておらず、制御モード図形47とは離れた位置に表示されてもよい。制御モード文字表記50が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…根管治療装置、2…インスツルメント、3…口腔電極、6a…マイクロモータ、7…ハンドピース、8…切削工具、10…根管治療器、20…根管長測定器(表示装置)、21…制御部、22…ディスプレイ(表示部)、23…操作部、30…タブレット、47…制御モード図形、48…軸部、48L…左回り軸部、48La~48Lc…左セグメント、48R…右回り軸部、48Ra~48Rc…右セグメント、49…方向表示部、49L…左回り頭部(第2の頭部)、49R…右回り頭部(第1の頭部)、50…制御モード文字表記、58…帯部、58L…左回り帯部、58La~58Lc…左セグメント、58R…右回り帯部、58Ra~58Rc…右セグメント。