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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】アイソレータ
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/36 20060101AFI20221206BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20221206BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20221206BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H01P1/36 Z
H01F17/00 B
H01F27/00 160
H01F27/28 K
H01F27/28 104
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020049624
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021150839
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(72)【発明者】
【氏名】根賀 亮平
(72)【発明者】
【氏名】藤 慶彦
(72)【発明者】
【氏名】大黒 達也
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 孝信
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-077255(JP,A)
【文献】特開2018-137433(JP,A)
【文献】特開2017-011876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00- 5/06
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26-27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 38/14
H01F 38/18
H01F 38/42
H01P 1/22- 1/397
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に、前記基板の表面に沿って設けられた第1平面コイルと、
前記第1平面コイル上に設けられた第1絶縁部と、
前記第1絶縁部の上に設けられた第2平面コイルと、
前記第1絶縁部の上方に設けられた金属層と、
を備え、
前記第1平面コイル、前記第2平面コイルおよび前記金属層は、前記基板の前記表面に垂直な第1方向に並べて配置され、
前記基板の前記表面に沿った第2方向において、前記第1平面コイルの中心から外周ま
での距離は、前記第2平面コイルの中心から外周までの距離よりも短いアイソレータ。
【請求項2】
前記第1平面コイルの中心、前記第2平面コイルの中心および前記金属層の中心は、前記第1方向に並ぶ請求項1記載のアイソレータ。
【請求項3】
前記金属層の中心から外周までの前記第2方向の距離は、前記第2平面コイルの中心から内周までの前記第2方向の距離よりも短い請求項1または2に記載のアイソレータ。
【請求項4】
前記第1方向における前記基板と前記金属層との間隔は、前記第1方向における前記基板と前記第2平面コイルとの間隔よりも広い請求項1~3のいずれか1つに記載のアイソレータ。
【請求項5】
前記第2平面コイルは、前記第1絶縁部と前記金属層との間に位置する部分を含む請求項1~4のいずれか1つに記載のアイソレータ。
【請求項6】
前記第2平面コイルおよび前記金属層は、前記第2方向において対向する部分を含む請求項3記載のアイソレータ。
【請求項7】
前記第1平面コイルの前記中心から前記第1平面コイルの内周までの前記第2方向の距離は、前記第2平面コイルの前記中心から前記第2平面コイルの内周までの前記第2方向の距離よりも広い請求項1~6のいずれか1つに記載のアイソレータ。
【請求項8】
前記第1平面コイルと前記第2平面コイルとの前記第1方向の間隔は、前記基板と前記第1平面コイルとの前記第1方向の間隔よりも広い請求項1~7のいずれか1つに記載のアイソレータ。
【請求項9】
前記基板の上方に設けられ、前記基板の前記表面沿って延在し、前記第1平面コイル
および前記第2平面コイルを囲む導電体と、
前記基板と前記第1平面コイルとの間に設けられ、前記導電体と前記第1平面コイルと
を電気的に接続する配線を含む配線層と、をさらに備えた請求項1~8のいずれか1つに
記載のアイソレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、アイソレータに関する。
【背景技術】
【0002】
アイソレータは、電流を遮断した状態で、磁界又は電界の変化を利用して信号を伝達する。このアイソレータについては、破壊が生じ難いことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2011/0176339号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、破壊が生じる可能性を低減可能なアイソレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るアイソレータは、基板と、前記基板の上方に、前記基板の表面に沿って設けられた第1平面コイルと、前記第1平面コイル上に設けられた第1絶縁部と、前記第1絶縁部の上に設けられた第2平面コイルと、前記第1絶縁部の上方に設けられた金属層と、を備える。前記第1平面コイル、前記第2平面コイルおよび前記金属層は、前記基板の前記表面に垂直な第1方向に並べて配置される。前記基板の前記表面に沿った第2方向において、前記第1平面コイルの中心から外周までの距離は、前記第2平面コイルの中心から外周までの距離よりも短い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係るアイソレータを表す模式平面図である。
図2】第1実施形態に係るアイソレータを表す模式断面図である。
図3】第1実施形態に係るアイソレータの特性を表す模式図である。
図4】第1実施形態に係るアイソレータの特性を表す模式図である。
図5】第1実施形態に係るアイソレータの特性を表す模式断面図である。
図6】第1実施形態の変形例に係るアイソレータを表す模式断面図である。
図7】第1実施形態の変形例に係るアイソレータを表す模式断面図である。
図8】第1実施形態の変形例に係るアイソレータを表す模式断面図である。
図9】第1実施形態の変形例に係るアイソレータを表す模式断面図である。
図10】第2実施形態に係るアイソレータを表す模式断面図である。
図11】第2実施形態に係るアイソレータの特性を表す模式図である。
図12】第2実施形態の変形例に係るアイソレータを表す模式断面図である。
図13】第3実施形態に係るアイソレータを表す平面図である。
図14】第3実施形態に係るアイソレータの断面構造を表す模式図である。
図15】第3実施形態の第1変形例に係るアイソレータを表す平面図である。
図16図15のA1-A2断面図である。
図17図15のB1-B2断面図である。
図18】第3実施形態の第1変形例に係るアイソレータの断面構造を表す模式図である。
図19】第3実施形態の第2変形例に係るアイソレータを表す平面図である。
図20】第3実施形態の第2変形例に係るアイソレータの断面構造を表す模式図である。
図21】第3実施形態の第3変形例に係るアイソレータを表す模式図である。
図22】第4実施形態に係るパッケージを表す斜視図である。
図23】第4実施形態に係るパッケージの断面構造を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0008】
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るアイソレータを表す平面図である。
図2は、図1のA1-A2断面図である。
【0009】
第1実施形態は、例えば、デジタルアイソレータ、ガルバニックアイソレータ、ガルバニック絶縁素子と呼ばれるデバイスに関する。図1及び図2に表したように、第1実施形態に係るアイソレータ100は、第1回路1、第2回路2、基板5、第1平面コイル11、第2平面コイル12、第1絶縁部21、第2絶縁部22、絶縁部28、絶縁部29、誘電体部31、誘電体部41、誘電体部42、導電体50、金属層62および配線層70を含む。図1では、絶縁部28及び29が省略されている。
【0010】
第1平面コイル11、第2平面コイル12および金属層62は、例えば、円形の外周を有し、基板5の表面に垂直な方向(Z方向)において、例えば、中心線CLを共有するように配置される。なお、第1平面コイル11、第2平面コイル12および金属層62の外周は、円形に限定される訳ではなく、例えば、多角形、楕円などであっても良い。
【0011】
実施形態の説明では、XYZ直交座標系を用いる。第1平面コイル11から第2平面コイル12に向かう方向をZ方向(第1方向)とする。Z方向に対して垂直であり、基板5の表面の沿って、相互に直交する2方向をX方向(第2方向)及びY方向(第3方向)とする。また、説明のために、第1平面コイル11から第2平面コイル12に向かう方向を「上」と言い、その反対方向を「下」と言う。これらの方向は、第1平面コイル11と第2平面コイル12との相対的な位置関係に基づき、重力の方向とは無関係である。
【0012】
図2に表したように、絶縁部20は、配線層70を介して基板5の上に設けられている。第1平面コイル11は、絶縁部20中に設けられている。第1絶縁部21は、第1平面コイル11及び絶縁部20の上に設けられている。第2平面コイル12は、第1絶縁部21の上に設けられている。第2絶縁部22は、Z方向に垂直なX-Y面(第1面)に沿って、第2平面コイル12の周りに設けられている。第2絶縁部22は、第2平面コイル12に接している。
【0013】
図1及び図2に表した例では、第1平面コイル11及び第2平面コイル12は、X-Y面に沿って螺旋状に設けられる。第1平面コイル11及び第2平面コイル12は、Z方向において互いに対向している。第2平面コイル12の少なくとも一部は、Z方向において、第1平面コイル11の少なくとも一部と並ぶ。
【0014】
誘電体部31は、Z方向において、第1絶縁部21と第2絶縁部22との間に設けられている。誘電体部31の少なくとも一部は、X-Y面に沿って第2平面コイル12の周りに位置している。誘電体部31は、第2平面コイル12に接している。
【0015】
誘電体部41は、第2平面コイル12および第2絶縁部22の上に設けられている。例えば、誘電体部41は、第2平面コイル12および第2絶縁部22に接している。
【0016】
導電体50は、第1面に沿って第1平面コイル11及び第2平面コイル12の周りに設けられている。具体的には、導電体50は、第1導電部51、第2導電部52、及び第3導電部53を含む。第1導電部51は、X-Y面に沿って第1平面コイル11の周りに設けられている。第2導電部52は、第1導電部51の一部の上に設けられている。第2導電部52は、第1導電部51に沿って複数設けられている。第3導電部53は、複数の第2導電部52の上に設けられている。第3導電部53は、X-Y面に沿って第2平面コイル12の周りに位置する。
【0017】
図1に表した例では、第1平面コイル11の一端(コイルの一端)は、配線60を介して第1回路1と電気的に接続されている。第1平面コイル11の他端(コイルの他端)は、配線73を介して導電体50と電気的に接続されている。
【0018】
第2平面コイル12の一端(コイルの一端)は、金属層62及び配線63を介して第2回路2と電気的に接続されている。第2平面コイル12の他端(コイルの他端)は、金属層64及び配線65を介して第2回路2と電気的に接続されている。例えば、金属層62は、第2平面コイル12の一端の上に設けられている。金属層64は、第2平面コイル12の他端の上に設けられている。金属層62のZ方向における位置及び金属層64のZ方向における位置は、第2平面コイル12のZ方向における位置と同じでも良い。金属層62及び64は、第2平面コイル12と一体に形成されても良い。
【0019】
図2に表したように、導電体50の上には、金属層66が設けられている。導電体50は、金属層66及び配線67を介して、不図示の導電部材と電気的に接続される。例えば、導電体50及び基板5は、基準電位に接続される。基準電位は、例えば接地電位である。導電体50が基準電位に接続され、導電体50が浮遊電位となることを防止できる。これにより、導電体50の電位の変動により、導電体50と各平面コイルとの間において、予期せぬ絶縁破壊が生じる可能性を低減できる。
【0020】
また、基板5には、第1平面コイル11と電気的に接続される回路が設けられても良い。第1回路1は、例えば、基板5上に設けられた回路の一部である。この場合、導電体50が、配線層70を介して、基板5の上に設けられ、回路が、基板5と配線層70の間に設けられることで、基板5及び導電体50の外部から基板5に向けた電磁波に対して、基板5の回路は、導電体50により遮蔽される。この結果、回路の動作をより安定化させることができる。配線層70は、第1平面コイル11と導電体50とを電気的に接続する配線73を含む。
【0021】
金属層62及び66の周りには、X-Y面に沿って絶縁部28が設けられている。絶縁部29は、絶縁部28の上に設けられている。
【0022】
第1回路1及び第2回路2の一方は、送信回路として用いられる。第1回路1及び第2回路2の他方は、受信回路として用いられる。ここでは、第1回路1が送信回路であり、第2回路2が受信回路である場合について説明する。
【0023】
第1回路1は、第1平面コイル11へ、伝達に適した波形の信号(電流)を送る。電流が第1平面コイル11を流れると、螺旋状の第1平面コイル11の内側を通る磁界が発生する。第1平面コイル11の少なくとも一部は、Z方向において、第2平面コイル12の少なくとも一部と並ぶ。発生した磁力線の一部は、第2平面コイル12の内側を通る。第2平面コイル12の内側における磁界の変化により、第2平面コイル12に誘導起電力が生じ、第2平面コイル12を電流が流れる。第2回路2は、第2平面コイル12を流れる電流を検出し、検出結果に応じた信号を生成する。これにより、第1平面コイル11と第2平面コイル12との間で、電流を遮断(絶縁)した状態で、信号が伝達される。
【0024】
アイソレータ100の各構成要素の材料の一例を説明する。
第1平面コイル11、第2平面コイル12、及び導電体50は、例えば金属を含む。第1平面コイル11、第2平面コイル12、及び導電体50は、例えば、銅及びアルミニウムからなる群より選択された少なくとも1つの金属を含む。信号を伝達する際の第1平面コイル11及び第2平面コイル12における発熱を抑制するために、これらの平面コイルの電気抵抗は、低いことが好ましい。電気抵抗の低減の観点から、第1平面コイル11及び第2平面コイル12は、銅を含むことが好ましい。
【0025】
絶縁部20、第1絶縁部21、第2絶縁部22、及び絶縁部28は、シリコン及び酸素を含む。例えば、絶縁部20、第1絶縁部21、第2絶縁部22、及び絶縁部28は、酸化シリコンを含む。絶縁部20、第1絶縁部21、第2絶縁部22、及び絶縁部28は、さらに窒素を含んでも良い。
【0026】
絶縁部29は、ポリイミド、ポリアミドなどの絶縁性樹脂を含む。
誘電体部31は、例えば、シリコン及び窒素を含む。
【0027】
誘電体部41及び42は、例えば、シリコン及び窒素を含む。例えば、誘電体部41及び42は、窒化シリコンを含む。
【0028】
基板5は、シリコン及び不純物を含む。不純物は、ボロン、リン、ヒ素、及びアンチモンからなる群より選択された少なくとも1つである。
【0029】
第2平面コイル12は、第1金属層12a及び第2金属層12bを含んでも良い。第2金属層12bは、第1金属層12aと第1絶縁部21との間、第1金属層12aと誘電体部31との間、及び第1金属層12aと第2絶縁部22との間に設けられている。第1平面コイル11は、第3金属層11c及び第4金属層11dを含んでも良い。第4金属層11dは、第3金属層11cと絶縁部20との間に設けられている。第1金属層12a及び第3金属層11cは、銅を含む。第2金属層12b及び第4金属層11dは、タンタルを含む。第2金属層12b及び第4金属層11dは、タンタルと、窒化タンタルと、の積層膜を含んでも良い。第2金属層12b及び第4金属層11dが設けられることで、第1金属層12a及び第3金属層11cに含まれる金属材料の各絶縁部への拡散を抑制できる。
【0030】
第1導電部51は、金属層51a及び51bを含んでも良い。金属層51bは、金属層51aと絶縁部20との間に設けられている。第2導電部52は、金属層52a及び52bを含んでも良い。金属層52bは、金属層52aと第1絶縁部21との間、及び金属層52aと第1導電部51との間に設けられている。第3導電部53は、金属層53a及び53bを含んでも良い。金属層53bは、金属層53aと第2絶縁部22との間、金属層53aと誘電体部31との間、及び金属層53aと第2導電部52との間に設けられている。金属層51a~53aは、銅を含む。金属層51b~53bは、タンタルを含む。金属層51b~53bは、タンタルと、窒化タンタルと、の積層膜を含んでも良い。金属層51b~53bが設けられることで、金属層51a~53aに含まれる金属材料の各絶縁部への拡散を抑制できる。
【0031】
実施形態に係るアイソレータ100では、第1平面コイル11と第2平面コイル12との間で信号が伝達される際、第1平面コイル11に対して正の電圧が第2平面コイル12に印加される。これにより、第1平面コイル11と第2平面コイル12との間、及び導電体50と第2平面コイル12との間に、電位差が生じる。この時、第2平面コイル12の外周側における下端に電界集中が発生し、第1平面コイル11と第2平面コイル12との間の絶縁破壊に至る場合がある。このため、下端LE1近傍(図3(a)参照)の電界強度を低下させ、アイソレータ100の破壊を回避することが望ましい。
【0032】
アイソレータ100では、図2に示すように、第1平面コイル11の中心線から外周までのX方向の距離R1は、第2平面コイル12の中心から外周までの距離R2よりも短い。また、第1平面コイル11の中心から内周までの距離R3は、第2平面コイル12の中心から内周までの距離R4よりも短い。金属層62の中心から外周までの距離R5は、第2平面コイル12の中心から内周までの距離R4よりも短い(図1参照)。
【0033】
第1平面コイル11の巻き数は、第2平面コイル12の巻き数と同じである。この例では、第1平面コイル11は、第2平面コイル12に対して、外径を縮小して設けられる。
【0034】
図3図5は、第1実施形態に係るアイソレータ100の特性を表す模式図である。
図3(a)、図4(a)、図4(b)、図5(a)および図5(b)は、第1平面コイル11と第2平面コイル12との間の電界強度分布を表す模式断面図である。
【0035】
図3(a)には、第1平面コイル11と第2平面コイル12との間の等電位面を示している。等電位面間の間隔が狭い部分において電界強度が高く、等電位面間の間隔が広いほど電界強度は低くなる。以下の図面の電界分布においても同様である。
【0036】
図3(a)に示すように、電界強度は、第1平面コイル11の外周の上端UE1および第2平面コイル12の外周の下端LE1において高くなる。第2平面コイル12の下端LE1における電界強度は、第1平面コイル11の上端UE1における電界強度よりも高い。
【0037】
図3(b)は、第2平面コイル12における外周側の下端LE1の電界強度を表すグラフである。縦軸は、下端LE1の電界強度である。横軸は、第2平面コイル12の中心から外周までの距離R2と、第1平面コイル11の中心から外周までの距離R1との差ΔR1(=R2-R1)である。
【0038】
図3(b)に示すように、ΔR1が広くなるほど、下端LE1の電界強度は低下する。すなわち、ΔR1を広くするほど、第2平面コイル12の下端LE1および第1平面コイル11の上端UE1における電界集中を緩和し、第1平面コイル11と第2平面コイル12との間の絶縁破壊を回避することができる。
【0039】
図4(a)および(b)は、第1平面コイル11および第2平面コイル12の内周側の電界分布を表す断面図である。第1平面コイル11の内周側の端は、第2平面コイル12の内周側の端よりも中心線CL(図2参照)に近い位置に設けられる。
【0040】
図4(a)に示す例では、第2平面コイル12の内周側の下端LE2において電界集中が生じる。これに対し、図4(b)に示す例では、金属層62が第2平面コイル12の中央に設けられる(図1参照)。金属層62は、例えば、Y方向において、第2平面コイル12の上面のレベルよりも高い位置に設けられる。
【0041】
図4(c)は、第2平面コイル12における内周側の下端LE2の電界強度を表すグラフである。縦軸は、下端LE2の電界強度である。横軸は、第2平面コイル12の中心から内周までの距離R4と、第1平面コイル11の中心から内周までの距離R3と、の差ΔR2(=R4-R3)である(図2参照)。
【0042】
図4(c)には、金属層62を配置しない場合の特性Aと、金属層62を配置した場合の特性Bと、を示している。特性Aでは、ΔR2が大きくなるにしたがって、下端LE2における電界強度が上昇する。これに対し、特性Bでは、下端LE2における電界強度は上昇せず、図3(a)の下端LE1における電界強度が図3(b)のように減少する。
【0043】
このように、金属層62を配置することにより、第2平面コイル12の内周側の下端LEにおける電界集中を緩和し、第1平面コイル11と第2平面コイル12との間の絶縁破壊を回避することができる。
【0044】
図5(a)および(b)は、第1平面コイル11および第2平面コイルの外周側の別の電界分布を表す断面図である。
【0045】
図5(a)に示す例では、第1平面コイル11と第2平面コイル12とのZ方向の間隔T1は、基板5と第1平面コイル11とのZ方向の間隔T2よりも広い。これに対し、図5(b)に示す例では、間隔T1は、間隔T2よりも狭い。
【0046】
図5(b)に示す例では、基板5と第1平面コイル11の外周側の端との間に等電位面が回り込むような電界分布を生じる。これにより、第1平面コイル11の内周側の上端UE2の電界強度が上昇する。
【0047】
このように、第1平面コイル11と第2平面コイル12との間の絶縁破壊を回避するためには、第1平面コイル11と第2平面コイル12とのZ方向の間隔T1は、基板5と第1平面コイル11とのZ方向の間隔T2よりも広くすることが好ましい。
【0048】
図6図8は、第1実施形態の変形例に係るアイソレータ110、120および130をそれぞれ表す模式断面図である。
【0049】
図6に示すアイソレータ110では、金属層62の中心から外周までのX方向の距離R5は、第2平面コイル12の中心から内周までの距離R4よりも短く、金属層62は、第2平面コイル12の内周で囲まれたスペースに配置される。金属層62は、図示しない部分で第2平面コイル12に電気的に接続される。
【0050】
金属層62の少なくとも一部は、基板5の表面に沿った方向(例えば、X方向)において、第2平面コイル12の内周に対向する。これにより、第2平面コイル12の内周側の下端LE2(図4(b)参照)の電界強度をさらに低下させることができる。
【0051】
図7に示すアイソレータ120では、第1平面コイル11の中心から外周までの距離R1は、第2平面コイル12の中心から外周までの距離R2よりも短く、第1平面コイル11の中心から内周までの距離R3は、第2平面コイル12の中心から内周までの距離R4よりも長い。
【0052】
すなわち、第1平面コイル11の外周と内周との間隔(R1-R3)は、第2平面コイル12の外周と内周との間隔(R2-R4)よりも狭く設けられる。これにより、第2平面コイル12の内周側の下端LE2の電界強度を低下させることができる(図3(a)および(b)参照)。また、金属層62を配置することにより、下端LE2の電界強度をさらに低減することができる(図4(b)参照)。
【0053】
この例でも、第1平面コイル11の巻き数は、第2平面コイル12の巻き数と同じである。例えば、第1平面コイル11の巻線のX方向の幅および巻線間のスペースの幅の少なくともいずれかを縮小することにより、第1平面コイル11の外周と内周との間隔(R1-R3)を縮小することができる。
【0054】
第1平面コイル11の巻き数を第2平面コイル12の巻き数と同じにすることにより、第1平面コイル11と第2平面コイル12との間の磁気カップリングの設計を容易にすることができる。
【0055】
図8に示すアイソレータ130では、金属層62は、Z方向において、第2平面コイル12の上面よりも上のレベルに位置する。さらに、金属層62の中心から外周までの距離R5は、第2平面コイルの中心から内周までの距離R4よりも長い。言い換えれば、第2平面コイル12は、第1絶縁部21と金属層62との間に位置する部分を含む。これにより、第2平面コイル12の内周側の下端LE2の電界強度をさらに低減することができる。
【0056】
このように、アイソレータ100~130では、第2平面コイル12の中心から外周までの距離R2を、第1平面コイル11の中心から外周までの距離R1よりも長くすることにより、第2平面コイル12の外周側の下端LE1の電界強度を低減する。さらに、金属層62を配置することにより、第2平面コイル12の内周側の下端LE2の電界強度を低減し、第1平面コイル11と第2平面コイル12との間の絶縁破壊を回避することができる。
【0057】
また、アイソレータ100~130に示した第1平面コイル11、第2平面コイル12および金属層62の構成は、第1平面コイル11と第2平面コイル12との間の所望の絶縁耐量を実現するために、相互に組合せることができる。
【0058】
図9は、比較例に係るアイソレータ100rと、第1実施形態の変形例に係るアイソレータ100pと、を表す模式断面図である。
【0059】
アイソレータ100rは、第1平面コイル11と、第2平面コイル12と、金属層62と、導電体50rと、を備える。第1平面コイル11の中心から外周までの距離R1(図2参照)は、第2平面コイル12の中心から外周までの距離R2(図2参照)と同じである。
【0060】
導電体50rは、第1導電部51rと、第2導電部52と、第3導電部53と、を含み、第1平面コイル11および第2平面コイル12を囲むように設けられる。例えば、第1導電部51rから第1平面コイル11までの距離R1は、第3導電部53から第2平面コイル12までの距離R2と略同一である。
【0061】
アイソレータ100pは、第1平面コイル11と、第2平面コイル12と、金属層62と、導電体50pと、を備える。第1平面コイル11の中心から外周までの距離R1(図2参照)は、第2平面コイル12の中心から外周までの距離R2(図2参照)よりも短い。
【0062】
導電体50pは、第1導電部51pと、第2導電部52と、第3導電部53と、を含み、第1平面コイル11および第2平面コイル12を囲むように設けられる。例えば、第1導電部51pから第1平面コイル11までの距離R1は、第3導電部53から第2平面コイル12までの距離R2と略同一である。
【0063】
すなわち、第1導電部51pは、第1導電部51rよりも第1平面コイル11に向かって長く延在する。例えば、基板5と第1導電部51pとの間において、基板5の表面側に第1平面コイル11に接続される回路(図示しない)を設ける場合、アイソレータ100pでは、アイソレータ100rに比べて、第1平面コイル11により近い位置に配置することができる。これにより、アイソレータ100pでは、例えば、第1導電部51pを第1平面コイル11の方向に伸ばした長さLxだけ、X方向のサイズを縮小できる。
【0064】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態に係るアイソレータ200を示す模式断面図である。なお、図10では、基板5と絶縁部20との間の配線層70を省略している。以下の図面でも同様である。
【0065】
図10に示すように、アイソレータ200では、金属層62の中心から外周までの距離R5を、第2平面コイル12の中心から外周までの距離R2よりも長くする。この例では、第2平面コイル12の中心から外周までの距離R2は、第1平面コイル11の中心から外周までの距離R1と同じである。また、第2平面コイル12の中心から内周までの距離R4は、第1平面コイル11の中心から内周までの距離R3と同じでも良い。
【0066】
図11(a)および(b)は、第2実施形態に係るアイソレータ200の特性を示す模式図である。図11(a)は、第1平面コイル11と第2平面コイル12との間の電界分布を示す断面図である。図11(b)は、第2平面コイル12の外周側の下端LE1における電荷強度を示すグラフである。
【0067】
図11(a)に示すように、第1平面コイル11の外周側の上端UE1、第2平面コイル12の外周側の下端LE1および金属層62の外周において、等電位面の間隔が狭まり電界強度が上昇していることが分かる。
【0068】
例えば、金属層62の外周は、第1平面コイル11からの距離が長い位置にあり、電界集中による絶縁破壊に寄与する可能性は少ない。また、第1平面コイル11の上端UE1における電界強度は、第2平面コイル12の下端LE1の電界強度よりも低い。このため、第1平面コイル11と第2平面コイルとの間の絶縁破壊を回避するためには、第2平面コイル12の下端LE1における電界強度を低減すれば良い。
【0069】
図11(b)は、第2平面コイル12の下端LE1における電界強度の変化を表すグラフである。縦軸は、下端LE1の電界強度であり、横軸は、金属層62の中心から外周までの距離R5と、第2平面コイル12の中心から外周までの距離R2との差ΔR3(=R5-R2)である。
【0070】
図11(b)に示すように、ΔR3をゼロよりも大きくすると、下端LE1における電界強度が低下する。すなわち、金属層62の端部を第2平面コイル12の外周から外側へ突き出すことにより、第2平面コイル12の下端LE1の電界強度を下げることができる。同時に、第1平面コイル11の上端UE1における電界強度もさらに低下する。
【0071】
このように、アイソレータ200では、金属層62の中心から外周までの距離R5を、第2平面コイル12の中心から外周までの距離R2よりも長くすることにより、第2平面コイル12の下端LE2における電界集中を緩和し、第1平面コイル11と第2平面コイル12との間の絶縁破壊を回避することができる。
【0072】
図12は、第2実施形態の変形例に係るアイソレータ210を表す模式断面図である。アイソレータ210では、金属層62の中心から外周までの距離R5を、第2平面コイル12の中心から外周までの距離R2よりも長くする。
【0073】
さらに、第2平面コイル12の中心から外周までの距離R2は、第1平面コイル11の中心から外周までの距離R1よりも長い。また、第2平面コイル12の中心から内周までの距離R4は、第1平面コイル11の中心から内周までの距離R3よりも短い。これにより、第2平面コイル12の下端LE2における電界集中をさらに緩和し、第1平面コイル11と第2平面コイル12との間の絶縁破壊を回避することができる。
【0074】
なお、第2実施形態に係るアイソレータは、上記の例に限定されず、例えば、図2に示す第1平面コイル11および第2平面コイル12を配置しても良い。
【0075】
(第3実施形態)
図13は、第3実施形態に係るアイソレータを表す平面図である。
図14は、第3実施形態に係るアイソレータの断面構造を表す模式図である。
【0076】
第3実施形態に係るアイソレータ300では、図13に表したように、配線73を介して、第1平面コイル11の外周部の一端が導電体50と電気的に接続されている。第1平面コイル11の他端は、配線60を介して第1回路1と電気的に接続されている。
【0077】
図14に表したように、第1回路1は、基板5中に設けられている。第2回路2は、基板5から離れた基板6中に設けられている。金属層62は、配線63を介して、基板6の上に設けられた金属層69と電気的に接続されている。金属層64は、配線65を介して、基板6の上に設けられた金属層68と電気的に接続されている。第2回路2は、金属層68及び69と電気的に接続されている。
【0078】
アイソレータ300において、基板5より上側の構造には、既に説明した各実施形態に係る構造を適用可能である。これにより、第2平面コイル12の端面の下端近傍における電界強度を低減できる。
【0079】
図15は、第3実施形態の第1変形例に係るアイソレータを表す平面図である。
図16は、図15のA1-A2断面図である。図17は、図15のB1-B2断面図である。
図18は、第3実施形態の第1変形例に係るアイソレータの断面構造を表す模式図である。
【0080】
第1変形例に係るアイソレータ310は、図15に表したように、第1構造体10-1及び第2構造体10-2を含む。
【0081】
第1構造体10-1は、図15図16、及び図18に表したように、平面コイル11-1、平面コイル12-1、絶縁部21-1、絶縁部22-1、誘電体部31a、誘電体部41a、誘電体部42a、導電体50a、金属層62a、金属層64a、及び金属層66aを含む。
【0082】
平面コイル11-1、平面コイル12-1、絶縁部21-1、絶縁部22-1、誘電体部31a、誘電体部41a、誘電体部42a、導電体50a、金属層62a、金属層64a、及び金属層66aの構造は、例えば、図2に表した第1平面コイル11、第2平面コイル12、第1絶縁部21、第2絶縁部22、誘電体部31、誘電体部41、誘電体部42、導電体50、金属層62、金属層64、及び金属層66の構造とそれぞれ同様である。
【0083】
第2構造体10-2は、図15図17、及び図18に表したように、平面コイル11-2、平面コイル12-2、絶縁部21-2、絶縁部22-2、誘電体部31b、誘電体部41b、誘電体部42b、導電体50b、金属層62b、金属層64b、及び金属層66bを含む。
【0084】
平面コイル11-2、平面コイル12-2、絶縁部21-2、絶縁部22-2、誘電体部31b、誘電体部41b、誘電体部42b、導電体50b、金属層62b、金属層64b、及び金属層66bの構造は、例えば、図2に表した第1平面コイル11、第2平面コイル12、第1絶縁部21、第2絶縁部22、誘電体部31、誘電体部41、誘電体部42、導電体50、金属層62、金属層64、及び金属層66の構造とそれぞれ同様である。
【0085】
図15に表したように、金属層62aは、配線63によって金属層62bと電気的に接続されている。金属層64aは、配線65によって金属層64bと電気的に接続されている。
【0086】
金属層66aは、配線67aによって別の導電部材と電気的に接続されている。金属層66bは、配線67bによって別の導電部材と電気的に接続されている。
【0087】
図18に表したように、第1回路1は、基板5中に設けられている。第1構造体10-1は、基板5の上に設けられている。第2回路2は、基板6中に設けられている。第2構造体10-2は、基板6の上に設けられている。平面コイル11-1の一端は導電体50aと電気的に接続されている。平面コイル11-1の他端は第1回路1と電気的に接続されている。平面コイル11-2の一端は導電体50bと電気的に接続されている。平面コイル11-2の他端は第2回路2と電気的に接続されている。
【0088】
アイソレータ310において、基板5より上側の構造及び基板6より上側の構造には、既に説明した各実施形態に係る構造を適用可能である。これにより、平面コイル12-1の端面の下端近傍における電界強度を低減できる。また、平面コイル12-2の端面の下端近傍における電界強度を低減できる。図15図18に表したアイソレータ310では、一対の平面コイル11-1及び平面コイル12-1が、一対の平面コイル11-2及び平面コイル12-2と直列に接続されている。換言すると、第1回路1と第2回路2との間は、直列に接続された二対の平面コイルによって、二重に絶縁されている。アイソレータ310によれば、一対の平面コイルによって一重に絶縁された構造に比べて、絶縁信頼性を向上できる。
【0089】
図19は、第3実施形態の第2変形例に係るアイソレータを表す平面図である。
図20は、第3実施形態の第2変形例に係るアイソレータの断面構造を表す模式図である。
【0090】
第3実施形態の第2変形例に係るアイソレータ320は、図19及び図20に表したように、第1平面コイル11の両端が第1回路1と電気的に接続されている点で、アイソレータ300と異なる。導電体50は、第1回路1及び第1平面コイル11とは電気的に分離されている。導電体50が基準電位に設定されれば、第1回路1、第1平面コイル11、及び導電体50の間の電気的な接続関係は、適宜変更可能である。
【0091】
図21は、第3実施形態の第3変形例に係るアイソレータを表す模式図である。
第3変形例に係るアイソレータ330は、第1構造体10-1、第2構造体10-2、第3構造体10-3、第4構造体10-4を含む。第1構造体10-1は、平面コイル11-1及び平面コイル12-1を含む。第2構造体10-2は、平面コイル11-2及び平面コイル12-2を含む。第3構造体10-3は、平面コイル11-3及び平面コイル12-3を含む。第4構造体10-4は、平面コイル11-4及び平面コイル12-4を含む。それぞれの平面コイルは、コイルである。第1回路1は、差動ドライバ回路1a、容量C1、及び容量C2を含む。第2回路2は、差動受信回路2a、容量C3、及び容量C4を含む。
【0092】
例えば、差動ドライバ回路1a、容量C1、容量C2、平面コイル11-1、平面コイル11-2、平面コイル12-1、及び平面コイル12-2は、不図示の第1基板の上に形成される。平面コイル11-1の一端は、第1の定電位に接続される。平面コイル11-2の他端は、容量C1に接続される。平面コイル11-1の一端は、第2の定電位に接続される。平面コイル11-2の他端は、容量C2に接続される。
【0093】
差動ドライバ回路1aの一方の出力は、容量C1に接続される。差動ドライバ回路1aの他方の出力は、容量C2に接続される。容量C1は、差動ドライバ回路1aと平面コイル11-1との間に接続される。容量C2は、差動ドライバ回路1aと平面コイル11-2との間に接続される。
【0094】
絶縁部を挟んで平面コイル11-1と平面コイル12-1が積層される。別の絶縁部を挟んで平面コイル11-2と平面コイル12-2が積層される。平面コイル12-1の一端は、平面コイル12-2の一端と接続されている。
【0095】
例えば、差動受信回路2a、容量C3、容量C4、平面コイル11-3、平面コイル11-4、平面コイル12-3、及び平面コイル12-4は、不図示の第2基板の上に形成される。平面コイル11-3の一端は、第3の定電位に接続される。平面コイル11-3の他端は、容量C3に接続される。平面コイル11-4の一端は、第4の定電位に接続される。平面コイル11-4の他端は、容量C4に接続される。
【0096】
差動受信回路2aの一方の入力は、容量C3に接続される。差動受信回路2aの他方の入力は、容量C4に接続される。絶縁部を挟んで平面コイル11-3と平面コイル12-3が積層される。別の絶縁部を挟んで、平面コイル11-4と平面コイル12-4が積層される。平面コイル12-3の一端は、平面コイル12-4の一端と接続されている。平面コイル12-3の他端は、平面コイル12-1の他端と接続される。平面コイル12-4の他端は、平面コイル12-2の他端と接続される。
【0097】
動作について説明する。トランス(もしくはアイソレータ)では、変調された信号が伝送される。図21では、Vinが変調された信号を表す。信号の変調には、例えば、エッジトリガ方式、又はOn-Off Keying方式が用いられる。いずれの方法においても、Vinは、元の信号を高周波帯にシフトさせた信号である。
【0098】
差動ドライバ回路1aは、Vinに応じて平面コイル11-1及び平面コイル11-2に互いに逆方向の電流i0を流す。平面コイル11-1及び11-2は、互いに逆向きの磁界(H1)を発生する。平面コイル11-1の巻数が平面コイル11-2の巻数と同じときは、発生する磁界の大きさが互いに等しくなる。
【0099】
磁界H1によって平面コイル12-1に生じる誘導電圧は、磁界H1によって平面コイル12-2に生じる誘導電圧と加算される。平面コイル12-1及び12-2に、電流i1が流れる。平面コイル12-1及び12-2は、平面コイル12-3及び平面コイル12-4とそれぞれボンディングワイヤで接続されている。ボンディングワイヤは、例えば金を含む。ボンディングワイヤの直径は、例えば30μmである。
【0100】
平面コイル12-1及び12-2で加算された誘導電圧は、平面コイル12-3及び12-4に印加される。平面コイル12-3及び12-4には、平面コイル12-1および平面コイル12-2に流れる電流i1と同じ値の電流i2が流れる。平面コイル12-3及び12-4は、互いに逆向きの磁界(H2)を発生する。平面コイル12-3の巻数が平面コイル12-4の巻数と同じときは、発生する磁界の大きさが互いに等しくなる。
【0101】
磁界H2によって平面コイル11-3に生じる誘導電圧の方向は、磁界H2によって平面コイル11-4に生じる誘導電圧の方向と逆である。平面コイル11-3及び11-4に電流i3が流れる。また、平面コイル11-3に生じる誘導電圧の大きさは、平面コイル11-4に生じる誘導電圧の大きさと同じである。差動受信回路2aには、平面コイル11-3及び11-4がそれぞれ発生させる誘導電圧の加算が印加され、変調された信号が伝送される。
【0102】
図22は、第4実施形態に係るパッケージを表す斜視図である。
図23は、第4実施形態に係るパッケージの断面構造を表す模式図である。
【0103】
第4実施形態に係るパッケージ400は、図22に表したように、金属部材81a~81f、金属部材82a~82f、金属層83a~83f、金属層84a~84f、封止部90、及び複数のアイソレータ330を含む。
【0104】
図示した例では、パッケージ400は、4つのアイソレータ330を含む。すなわち、図21に表した第1構造体10-1~第4構造体10-4の組が、4つ設けられている。
【0105】
複数の第1構造体10-1および第2構造体10-2は、金属部材81aの一部の上に設けられている。例えば、複数の第1構造体10-1および第2構造体10-2は、1つの基板5の上に設けられている。基板5は、金属部材81aと電気的に接続されている。基板5中には、それぞれの第1構造体10-1および第2構造体10-2に対応する複数の第1回路1が設けられている。
【0106】
複数の第3構造体10-3および第4構造体10-4は、金属部材82aの一部の上に設けられている。複数の第3構造体10-3および第4構造体10-4は、1つの基板6の上に設けられている。基板6は、金属部材82aと電気的に接続されている。基板6中には、それぞれの第3構造体10-3および第4構造体10-4に対応する複数の第2回路2が設けられている。
【0107】
金属部材81aは、さらに金属層83aと電気的に接続されている。金属層83aは、各第1構造体10-1および第2構造体10-2の導電体50aと電気的に接続されている。金属部材82aは、さらに金属層84aと電気的に接続されている。金属層84aは、各第3構造体10-3および第4構造体10-4の導電体50bと電気的に接続されている。
【0108】
金属部材81b~81eは、金属層83b~83eとそれぞれ電気的に接続されている。金属層83b~83eは、複数の第1回路1とそれぞれ電気的に接続されている。金属部材81fは、金属層83fと電気的に接続されている。金属層83fは、複数の第1回路1と電気的に接続されている。
【0109】
金属部材82b~82eは、金属層84b~84eとそれぞれ電気的に接続されている。金属層84b~84eは、複数の第2回路2とそれぞれ電気的に接続されている。金属部材82fは、金属層84fと電気的に接続されている。金属層84fは、複数の第2回路2と電気的に接続されている。
【0110】
封止部90は、金属部材81a~81f及び82a~82fのそれぞれの一部、金属層83a~83f、金属層84a~84f、及び複数のアイソレータ330を覆っている。
【0111】
金属部材81a~81fは、端子T1a~T1fをそれぞれ有する。金属部材82a~82fは、端子T2a~T2fをそれぞれ有する。端子T1a~T1f及びT2a~T2fは、封止部90に覆われておらず、外部に露出している。
【0112】
例えば、端子T1a及びT2aは、基準電位に接続される。端子T1b~T1eには、それぞれの第1回路1への信号が入力される。端子T2b~T2eには、それぞれの第2回路2からの信号が出力される。端子T1fは、複数の第1回路1を駆動させるための電源と接続される。端子T2fは、複数の第2回路2を駆動させるための電源と接続される。
【0113】
第4実施形態によれば、パッケージ400においてアイソレータの破壊が生じる可能性を低減できる。ここでは、4つのアイソレータ330が設けられた例を説明したが、パッケージ400には、1つ以上の他のアイソレータが設けられても良い。
【0114】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0115】
1…第1回路、 1a…差動ドライバ回路、 2…第2回路、 2a…差動受信回路、 5、6…基板、 10-1…第1構造体、10-2…第2構造体、10-3…第3構造体、10-4…第4構造体、 11…第1平面コイル、 11-1、11-2、11-3、11-4、12-1、12-2、12-3、12-4…平面コイル、 11c、11d、12a、12b、51a、51b、52a、52b、53a、53b、62、62a、62b、64、64a、64b、66、66a、66b、68、69、83a、83b、83f、84a、84b、84f…金属層、 12…第2平面コイル、 20、28、29…絶縁部、 21…第1絶縁部、 22…第2絶縁部、 31、31a、31b、41、41a、41b、42、42a、42b…誘電体部、 50、50a、50b、50r、50p…導電体、 51、51p、51r、51p…第1導電部、 52、…第2導電部、 53…第3導電部、 60、63、65、67、67a、67b、73…配線、 70…配線層、 81a、81b、81f、82a、82b、82f…金属部材、 90…封止部、 100、100p、100r、110、120、130、200、210、300、310、320、330、400…アイソレータ、 400…パッケージ、 CL…中心線、 H1、H2…磁界、 LE1、LE2…下端、 T1a、T1b~T1f、T2a、T2b~T2f…端子、 UE1、UE2…上端
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