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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】逆向き磁化磁気構造体を生成する方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 13/00 20060101AFI20221206BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20221206BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20221206BHJP
   H01F 10/08 20060101ALI20221206BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H01F13/00 350
B81B1/00
B81C1/00
H01F10/08
H01F41/02 G
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020119128
(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公開番号】P2021028976
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】10 2019 210 177.1
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500242786
【氏名又は名称】フラウンホファー ゲセルシャフト ツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・リセック
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン・ロフィンク
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05396136(US,A)
【文献】特開昭54-152200(JP,A)
【文献】特開2014-095535(JP,A)
【文献】特表2012-529181(JP,A)
【文献】特開2009-4069(JP,A)
【文献】特開2018-201018(JP,A)
【文献】特開平6-260339(JP,A)
【文献】特開2007-227916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 13/00
B81B 1/00
B81C 1/00
H01F 10/08
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板材(110、110a、110b)の中又は上に磁気構造体(300、700、800、900、1000)を生成する方法(110A、110B)であって、
前記基板材の中又は上に複数の第一キャビティ(120)を生成し、第一保磁力(HCA、HCB、H、H)を示す第一硬磁性体(130、140)で前記複数の第一キャビティを充填して、第一硬磁性配列体(350、1140a、1140b)を生成することと、
前記基板材の中又は上に複数の第二キャビティを生成し、前記第一保磁力よりも小さな第二保磁力を示す第二硬磁性体で前記複数の第二キャビティを充填して、第二硬磁性配列体(350、1140a、1140b)を生成することと、
前記第一保磁力及び前記第二保磁力を超える磁場強度を示す第一磁場を用いて、前記第一硬磁性配列体及び前記第二硬磁性配列体を第一向きに磁化することと、
前記第一保磁力未満であるが前記第二保磁力を超える磁場強度を示す第二磁場を用いて、前記第一向きと異なる第二向きに前記第二硬磁性配列体を磁化することと、を備え、
前記第二硬磁性配列体を磁化することが、前記第一硬磁性配列体及び前記第二硬磁性配列体を前記第二磁場に晒すことを含む、方法。
【請求項2】
前記第一保磁力と前記第二保磁力との間の差が50%以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一硬磁性配列体の第一キャビティの深さ及び/又は断面積が前記第二硬磁性配列体の第二キャビティの深さ及び/又は断面積と異なることで、磁化後の前記第一硬磁性配列体の各磁石と前記第二硬磁性配列体の各磁石の磁場強度が等しくなっている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一キャビティの断面積が前記第二キャビティの断面積と等しく、前記第一キャビティの深さが前記第二キャビティの深さと異なることで、磁化後の前記第一硬磁性配列体の各磁石と前記第二硬磁性配列体の各磁石の磁場強度が等しくなっている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の第一キャビティと前記複数の第二キャビティを充填することが、充填された物質を物理的及び/又は化学的に固化させることを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記充填された物質を物理的及び/又は化学的に固化させることが、前記基板材に原子層堆積法を行うことを備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記基板材がガラス材、シリコン材、プラスチック材、又はセラミック材である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第一硬磁性体と前記第二硬磁性体がNdFeB材及び/又はSmCo材及び/又はPtCo材である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第一硬磁性体と前記第二硬磁性体が粉体(230)及び/又は物質粒子(230)である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記基板材の中又は上に前記第一硬磁性配列体と前記第二硬磁性配列体を生成することが、
第一基板の中又は上に前記第一硬磁性配列体を生成するステップと、
第二基板の中又は上に前記第二硬磁性配列体を生成するステップと、を含み、
前記第一基板と前記第二基板が磁化前に接続される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記基板材の中又は上に前記第一硬磁性配列体と前記第二硬磁性配列体を生成することが、
第一基板の中又は上に第一数個の第一硬磁性配列体と第二硬磁性配列体を生成するステップと、
第二基板の中又は上に第二数個の第一硬磁性配列体と第二硬磁性配列体を生成するステップと、を含む
前記第一基板と前記第二基板が磁化前に接続される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第一硬磁性配列体(350、1140a、1140b)の各磁石と前記第二硬磁性配列体(350、1140a、1140b)の各磁石が基板材の中又は上に交互に配置されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第一硬磁性配列体及び/又は前記第二硬磁性配列体が、前記基板材の第一面(113)上に位置するか、又は、前記基板材の第一面から前記基板材の所定の深さまで若しくは前記第一面の反対側の第二面(116)まで延在する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の明細書は、平坦な基板上の複数の永久磁石マイクロ構造体を逆向きに磁化する方法を説明する。本願は、小型の永久磁石配列体の選択的磁化に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気の向きが異なる複数の構造体に基づいた永久磁石配列体は、多数の技術的デバイスにとって本質的に重要なものである。従来の技術分野において確立されていた解決策をマイクロシステムに適用可能にすることも広く興味がもたれている。
【0003】
このことに関する第一の前提条件は、典型的な半導体及び/又はMEMS(マイクロ電気機械システム)技術用の基板上の硬磁性構造体やマイクロ構造体を、シリコン及び/又はガラスに生成できることである。
【0004】
第二の前提条件は、隣接する磁石やマイクロ磁石を望み通りに、異なる向きに磁化できる、又は逆向きに磁化できることである。基板はその上に数百から数千個のMEMS部品を有し得て、その各々が複数の硬磁性マイクロ構造体を含み得るので、例えば、従来の磁気スケールを生成するのに一般的な逐次的な磁化では時間がかかり過ぎる。
【0005】
また、現状利用可能なデバイスを用いて実現可能な最小周期、所謂ピッチは、0.5mmに達している。マイクロ磁石の寸法とマイクロ磁石間の距離はどちらも多くの応用において益々小さくなると想定される。既存の磁気構造体やマイクロ磁気構造体を生成する方法のいくつかを以下に挙げる。
【0006】
・ 例えば、ずいぶん前から既に、レーザに基づいた物質加工が、複雑な形状の三次元部品を高精度で生成することを可能にしている。交互に個別に磁化した櫛状体を用いて、250μmの周期の逆向き磁化スケールを実現することができる。各櫛状体の生成は、厚さ300μmのSmCoフィルムのレーザ加工によって行われる。
【0007】
・ また、所謂“熱磁気パターニング”では、予め一様に磁化させた硬磁性体製の層を、例えばテンプレートやマスクを通してレーザで局所的に加熱し、同時に印加される逆向きの磁場によってその領域を逆向きに磁化させる。このようにして、例えば、Si基板上の厚さ4μmのNdFeB層に、50×50μmのサイズの逆向きに磁化された複数の正方形から成る格子柄パターンを生成することができる。NdFeB層自体の中での熱伝導又は基板に至る熱伝導に起因して、逆向き磁化領域の深さは数マイクロメートルに限定される。
【0008】
・ 熱磁気パターニングの一変形例では、例えば、厚いNdFeBプレートレットをガラス基板上に接合させ、所定のパターンでガラスまで鋸引きし、その全面を磁化する。次いで、各ピクセル及び/又はラインを、レーザを用いた選択的加熱によって、逆向きに磁化する。必要な磁場は、直に隣接するNdFeB構造体によって与えられる。
【0009】
・ パターンの加熱は必須ではない。高透磁率を有する軟磁性体のテンプレートやマスクを用いる場合、加熱せずに、硬磁性層の中に磁気パターンを生成することができる。印加される逆向き磁場は、マスクの隆部内において、その下方に位置する硬磁性層の領域が逆向きに磁化される程度に増幅される。この方法は、低い残留磁束密度と保磁力を有する層に限定される。
【0010】
上述の熱磁気パターニングの変形例は、それで生成されるマイクロ磁石がその材質と比較的大きな体積に起因して大きな磁力を保証するものであるので、MEMSに最も適している。しかしながら、MEMS生成プロセスへの統合は未解決である。この方法は、MEMSアクチュエータに適さない非常に弱いマイクロ磁石しか実現できない。また、MEMS生成プロセスへの統合は、硬磁性層をパターニングしなければならない場合に問題となる。従来のレーザ加工は、高コスト及び/又はバッチプロセスとの相性の悪さのため、MEMSに適さないものとなりがちである。
【0011】
しかしながら、原子層堆積(ALD,atomic layer deposition)を用いた粉体の凝集に基づいた技術的方法が、標準的なMEMSや半導体加工のプロセスと相性が良いシリコン基板やガラス基板上に高性能磁石やマイクロ磁石を生成することを可能にする。以下、この方法を説明する。
【0012】
まず、基板内にキャビティ又はマイクロキャビティを生成する。次いで、マイクロキャビティを、μmサイズの粉体又は粒子で緩く充填する。その後、基板がALDプロセスを受け、そのプロセス中に、マイクロキャビティ内の元々は緩かった粒子が凝集して、機械的に堅固な多孔質マイクロ構造体を生成する。例えば、Si基板上にNdFeB粉体で製造されるこうした構造体については、高い再現性と共に優れた磁気特性が確かめられている。磁石又はマイクロ磁石及び/又はマイクロ磁石の磁場は全て平行に整列している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第9221217号明細書(“Method for producing a three-dimensional structure and three- dimensional structure”)
【非特許文献】
【0014】
【文献】https://www.sensitec.com/fileadmin/sensitec/Products_and_Solutions/Angle_and_Length/ Linear_Scales/SENSITEC_Magnetische_Massstaebe_DE.pdf
【文献】Petersen et al., “Laser micromachined permanent magnet arrays with spatially altemating magnetic field distribution”, Proc. PowerMEMS Conf., Atlanta, GA, USA, 2012
【文献】F. Dumas-Bouchiat et al., “Thermomagnetically pattemed micromagnets”, Appl. Phys. Lett., 96, 102511 (2010)
【文献】R. Fujiwara et al., “Micrometer scale magnetization of neodyrnium magnet for integrated magnetic MEMS”, Proc. MEMS Conf., Shanghai, China, 2016
【文献】C. Valez et al., “Simulation and experimental validation of a selective magnetization process for batch-patteming magnetic layers”, J. Phys.: Conf. Ser. 660 012006, 2015
【文献】T. Reimer et al., “Temperature-stable NdFeB micromagnets with high-energy density compatible with CMOS back end ofline technology”, MRS Advances, No. 1, 2016
【文献】https://www.magsys.de/index.php/de/produkte-dienstleistungen/magnetisiervorrichtungen
【文献】https://de.wikipedia.org/wiki/Magnetwerkstoffe
【文献】https://mqitechnology.com/products/bonded-neo-powder/product-comparison-tool/
【文献】https://mqitechnology.com/wp-content/uploads/2017/09/rnqp-14-12-20000-070.pdf
【文献】https://rnqitechnology.com/wp-content/uploads/2017/09/mqp-14-9-20061-070.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、硬磁性構造体の逆向き磁化配列体を有する磁性構造体を、少ない労力で、単純で高速に生成することを可能にする方法を提供することであり、例えば、その磁気構造体の大量生産を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は、独立請求項の主題によって達成される。
【0017】
本方法(請求項1を参照)の核となる概念は、以下のステップを用いて、基板材の中又は上に硬磁性構造体の逆向き磁化配列体を有する磁気構造体を生成することを可能としたものである。
【0018】
1. 基板材の中又は上に複数の第一キャビティを生成し、第一保磁力を示す第一硬磁性体で充填して、硬磁性構造体の第一配列体を生成するステップ。
【0019】
2. 基板材の中又は上に複数の第二キャビティを生成し、第一保磁力よりも小さな第二保磁力を示す第二硬磁性体で充填して、硬磁性構造体の第二配列体を生成するステップ。
【0020】
3. 第一保磁力と第二保磁力を超える磁場強度を有する第一磁場によって、硬磁性構造体の第一配列体と第二配列体を第一向きに磁化するステップ。
【0021】
4. 第一保磁力未満であるが第二保磁力を超える磁場強度を有する第二磁場によって、硬磁性構造体の第二配列体を第一向きと異なる第二向きに磁化するステップ。硬磁性構造体の第二配列体を磁化するステップは、硬磁性構造体の第一配列体と第二配列体を第二磁場に晒すことを含む。
【0022】
1.と2.に記載のステップの順番は、半導体技術とMEMS技術の一般的に用いられている製造条件に応じてフレキシブルである。
【0023】
ステップ1とステップ2の代替例として、例えば、第一キャビティと第二キャビティは、基板材の中又は上に、同時に又は交互に生成され得て、同時に又は交互にそれぞれ第一硬磁性体と第二硬磁性体で充填され得る。
【0024】
基板の中又は上に生成された硬磁性構造体の硬磁性マイクロ構造体又は配列体は、例えば適切な磁化デバイスを用いて、基板レベルで一回のステップで磁化され得る。このプロセスでは、磁石又はマイクロ磁石は逆向きに、例えば交互に逆向きに磁化される。直径300mmの領域にわたって数千kA/mの磁場を生成することができる磁化システムが利用可能となっている。
【0025】
また、異なる硬磁性体の硬磁性構造体又はマイクロ構造体の配列体が逆向き磁化を可能にする。
【0026】
まず、保磁力HCAを有する第一硬磁性体Aから、硬磁性構造体(又はマイクロ構造体)の配列体を生成する。
【0027】
次いで、同じ様にして、基板の他の領域に、保磁力HCBを有する第二硬磁性体Bから、硬磁性構造体又はマイクロ構造体の配列体を生成する。HCBはHCAよりも小さい。
【0028】
次いで、両種の硬磁性構造体又はマイクロ構造体の配列体を、HCAとHCBを超える強度Hの磁場によって、一回のステップで同時に磁化させる。
【0029】
最後に、HCBよりも大きいがHCAよりも小さい強度Hの逆向き磁場を印加することによって、一回のステップで、物質Bの硬磁性構造体又はマイクロ構造体の配列体を再び磁化させる。このプロセスにおいて、物質Aの硬磁性構造体又はマイクロ構造体の配列体の元々の磁化は維持される。
【0030】
プロセスを加速させることによって、硬磁性構造体又はマイクロ構造体の逆向き磁化配列体の大量生産が促進される。硬磁性体の磁化は一回のステップで行われる。また、複数の物質を利用することで、それら物質の異なる保磁力に基づいて、物質を異なって磁化させることができる。
【0031】
硬磁性構造体の配列体の典型的な寸法は以下のとおりである:
・ 構造体/磁石の端部長さ:10~1000μm、及び/又は
・ 構造体/磁石同士の間の距離:10~1000μm
【0032】
硬磁性構造体の配列体の好ましい寸法は以下のとおりである:
・ 構造体/磁石の端部長さ:20~500μm、及び/又は
・ 構造体/磁石同士の間の距離:20~500μm
【0033】
硬磁性構造体又はマイクロ構造体の集積配列体の逆向き磁化性は、例えば、以下のものの対象となる:
・ 小型磁気スケール、
・ ボイルコイルドライブやハルバッハ配列に基づいたMEMS部品、
・ 磁気浮上に基づいて無接触で支持された硬磁性構造体又はマイクロ構造体の可動配列体を備えるMEMS部品。
【0034】
実施形態に係る方法(請求項2を参照)では、第一保磁力と第二保磁力の差は50%以上である。
【0035】
最近の磁化デバイスは数パーセントの精度内で磁場を設定及び/又は再生することができるので、物質同士の間の50%以上の保磁力の差が、硬磁性構造体又はマイクロ構造体の逆向き磁化配列体を実現するのに十分なものである。
【0036】
実施形態に係る方法(請求項3を参照)では、硬磁性構造体の第一配列体の複数の第一キャビティの深さ及び/又は断面積が、硬磁性構造体の第二配列体の複数の第二キャビティの深さ及び/又は断面積と異なることで、磁化後の第一配列体と第二配列体の各磁石の磁場強度が等しくなるようにする。
【0037】
つまり、本方法では、第一配列体の磁石の深さ及び/又は断面積が第二配列体の磁石の深さ及び/又は断面積と異なることで、磁化後の各磁石の磁場強度が等しくなるようにする。
【0038】
磁石又はマイクロ磁石が、異なる特性を有する二種類の異なる磁性体製の配列体から成るので、同じ寸法を有する磁石又は構造体が、逆向き(逆符号)で異なる強度を有する磁場をもたらす。この影響は、両種の磁石又はマイクロ磁石の寸法を介して補償可能である。つまり、異なる物質製のマイクロ磁石が発生させる磁場を、製造中において、第一物質製の磁石又は構造体用に第二物質製の磁石又は構造体用よりも浅いキャビティを基板にエッチングすることで、調整することができる。
【0039】
実施形態に係る方法(請求項4を参照)では、複数の第一キャビティと複数の第二キャビティの断面積が互いに等しく、複数の第一キャビティと複数の第二キャビティの深さが互いに異なることで、磁化後の硬磁性構造体の第一配列体と第二配列体の各磁石の磁場強度が等しくなるようにする。
【0040】
つまり、本方法では、硬磁性構造体の第一配列体と第二配列体の磁石の断面積が互いに等しく、硬磁性構造体の第一配列体と第二配列体の磁石の深さが互いに異なることで、磁化後の各磁石の磁場強度が等しくなるようにする。
【0041】
本実施形態の具体的な利点は、全ての磁石又はマイクロ磁石の断面積を同じにすることができるという点である。これは、例えば磁気スケールにとって顕著なものとなり得る。
【0042】
実施形態に係る方法(請求項5を参照)では、複数の第一キャビティと複数の第二キャビティを充填することは、充填された物質の物理的及び/又は化学的固化を備え、例えば、基板材に原子層堆積法を行う。
【0043】
元々は緩かった硬磁性粒子及び/又は粉体が、キャビティ又はマイクロキャビティ内で凝集して、機械的に堅固な多孔質構造体又はマイクロ構造体を形成する。
【0044】
実施形態に係る方法(請求項6を参照)では、基板材はガラス材、シリコン材、プラスチック材、又はセラミック材である。
【0045】
例えば、ガラス、シリコン、プラスチック、セラミック等の一般的な基板材を用いることで、半導体技術やMEMS技術の通常の製造条件で本発明の方法を適用することが促進される。
【0046】
実施形態に係る方法(請求項7を参照)では、第一硬磁性体と第二硬磁性体は、NdFeB材及び/又はSmCo材及び/又はPtCo材である。
【0047】
例えば、NdFeB及び/又はSmCo及び/又はPtCo等の一般的な硬磁性体を用いることで、半導体技術やMEMS技術の通常の製造条件で本発明の方法を適用することが促進される。
【0048】
実施形態に係る方法(請求項8を参照)では、第一硬磁性体と第二硬磁性体は、粉体及び/又は物質粒子で形成される。
【0049】
粉体及び/又は粒子は、多様な断面積及び/又は深さのキャビティを充填することを可能にする。
【0050】
実施形態に係る方法(請求項9を参照)では、基板の中又は上に硬磁性構造体の配列体を生成することは、以下のステップを含む。
【0051】
1. 第一基板の中又は上に硬磁性構造体の第一配列体を生成するステップ。
【0052】
2. 第二基板の中又は上に硬磁性構造体の第二配列体を生成するステップ。
【0053】
第一基板と第二基板は磁化の前に接続される。
【0054】
各基板は、一種類のみの物質製の磁石又はマイクロ磁石を含み、磁化の前に、基板レベルでの接合によって、互いに固定して接続される。このために利用可能な多数の確立された接合プロセスをシリコン技術は有していて、例えば、密封接続用のガルバニック堆積Au‐Sn積層体や、印刷ガラスフリットに基づいたものや、非密封接続用のパターン化された接着剤やポリマーを用いたものが挙げられる。
【0055】
基板を積層することによって、硬磁性マイクロ構造体の三次元配列体を実現することもできる。対応する基板内の磁石又はマイクロ磁石の幾何学的形状と配置は所望のとおりに変更可能であるので、この方法で相互に反発する磁石又はマイクロ磁石の配列体を生成することができる。
【0056】
実施形態に係る方法(請求項10を参照)では、基板の中又は上に硬磁性構造体の配列体を生成することは、以下のステップを含む。
【0057】
1. 第一基板の中又は上に第一数個の第一硬磁性構造体と第二硬磁性構造体を生成するステップ。
【0058】
2. 第二基板の中又は上に第二数個の第一硬磁性構造体と第二硬磁性構造体を生成するステップ。
【0059】
第一基板と第二基板は磁化の前に接続される。
【0060】
いずれの基板上の各磁石又はマイクロ磁石の幾何学的形状と配置を所望のとおりに変更することができるので、この方法で相互に反発するマイクロ磁石の配列体を生成することができる。
【0061】
また、第一基板及び/又は第二基板内の第一硬磁性構造体と第二硬磁性構造体を用いることで、硬磁性マイクロ構造体の三次元配列体を多種多様に生成することができる。
【0062】
実施形態に係る方法(請求項11を参照)では、硬磁性構造体の第一配列体と第二配列体の各磁石は、基板材の中又は上に交互に配置される。
【0063】
実施形態に係る方法(請求項12を参照)では、硬磁性構造体の第一配列体及び/又は第二配列体は、基板材の第一面上に位置するか、又は、基板材の第一面から、基板材の所定の深さまで若しくは第一面の反対側の第二面まで延在する。硬磁性構造体の第一配列体及び/又は第二配列体は、応用に応じてあらゆる深さを有することができ、基板材の第二面まで延在してもよい。
【0064】
連続的な構造体を用いることで、高い(最大)アスペクト比に起因して特に高い磁場強度が達成される(図6を参照)。しかしながら、特定の値、例えば、7:1を超える値では、発生する磁場は僅かな増大しか示さなくなる。
【0065】
実施形態(請求項13から15を参照)によると、本発明の方法を用いて、2D(二次元)及び/又は3D(三次元)磁気構造体が生成される。
【0066】
以下、図面を参照して、本願の好ましい実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1A】逆向き磁化マイクロ構造体を生成する方法の概略図を示す。
図1B】逆向き磁化マイクロ構造体を生成する代替方法の概略図を示す。
図2】キャビティ又はマイクロキャビティの充填の概略図を示す。
図3】硬磁性構造体の逆向き磁化配列体を有する永久磁石磁気構造体の概略図を示す。
図4】主要な磁性体の残留磁束密度と保磁力の図を示す。
図5】磁化に用いられる磁場の関数として表1の2番と4番の物質の磁化の程度の図を示す。
図6】色々な直径dについて、長さL対直径dの比の関数としての棒磁石の正規化した軸方向磁束密度Bの図を示す。
図7】深さが異なるが磁場の強度が等しい磁石又は構造体を備える逆向き磁化配列体を備える永久磁石磁気構造体の概略図を示す。
図8】深さが異なるが磁場の強度が等しい磁石(基板材の第一面から第二面まで延在する第一配列体及び/又は第二配列体の磁石)を備える逆向き磁化配列体を備える永久磁石磁気構造体の概略図を示す。
図9】深さが異なる逆向き磁化配列体を備える永久磁石磁気構造体(複数の第一及び第二の構造体又は磁石は交互だけではなくて所望のとおりに配置される)の概略図を示す。
図10】二種類の異なる基板(各々、一種類の物質製の逆向きに磁化されたマイクロ磁石のみを含む)で形成された三次元磁気構造体の概略図を示す。
図11】個々に磁化された複数のSmCo櫛状体で構成されたサブmmピッチの磁気スケールの概略図を示す。
図12A】テンプレートを用いる「熱磁気パターニング」による逆向き磁化領域の生成の概略図を示す。
図12B】ピクセル及び/又はラインを鋸引きによって互いに分離する「熱磁気パターニング」による逆向き磁化領域の生成の概略図を示す。
図13】高い透磁率を有する軟磁性体製のテンプレートを用いて、加熱せずに逆向き磁化領域を生成することの概略図を示す。
図14】一様磁場を印加することによって硬磁性体から生成されたマイクロ構造体の磁化の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明の方法を実現する案と更に発展させる案は多数存在している。そこで、特許請求の範囲の記載を参照する一方で、図面と共に以下の実施形態の説明を参照する。
【0069】
図1Aは、硬磁性構造体の逆向き磁化配列体を備える磁気構造体を生成する本発明の方法100Aの概略図を示す。本方法のステップが図1Aのa)から図1Aのe)に示されている。
【0070】
図1Aのa)は、本方法の開始時点において、平坦な基板材110が、第一面113と、第一面113の反対側の第二面116とを有する様子を示す。シリコン及び/又はガラス材及び/又はプラスチック及び/又はセラミックを含む基板材は容易に実現可能である。
【0071】
図1Aのb)では、複数の第一キャビティ120を生成し、第一保磁力HCAを示す第一硬磁性体(物質)130で充填して、硬磁性構造体の第一配列体を生成する。キャビティの充填については図2においてより詳細に説明する。
【0072】
図1Aのc)では、複数の第二キャビティ120を生成し、第二保磁力HCBを示す第二硬磁性体(物質)140で充填し、硬磁性構造体の第二配列体を生成する。第一保磁力HCAは、理想的には、第二保磁力HCBよりも50%以上高い。
【0073】
図1Aのd)では、第一物質130製の硬磁性構造体の第一配列体と、第二物質140製の硬磁性構造体の第二配列体を、第一保磁力HCA及び第二保磁力HCBを超える磁場強度Hを示す磁場によって、第一向きに磁化する。
【0074】
図1Aのe)では、硬磁性構造体の第二配列体のみを、第一保磁力HCA未満であるが第二保磁力HCBを超える磁場強度Hを示す磁場によって、逆向きに磁化する。硬磁性構造体の第二配列体の磁化は、硬磁性構造体の第一配列体及び第二配列体を第二磁場に晒すことを含む。
【0075】
図1Bは、硬磁性構造体の逆向き磁化配列体を有する磁気構造体を生成する代替方法100Bの概略図を示す。本方法のステップが、図1Bのa)から図1Bのf)に示されている。
【0076】
図1Bのa)は、本方法の開始時点において、平坦な基板材110が、第一面113と、第一面113の反対側の第二面116とを有する様子を示す。シリコン及び/又はガラス材及び/又はプラスチック及び/又はセラミックを含む基板材は容易に実現可能である。
【0077】
図1Bのb)は、方法100Bの第一ステップを示し、複数のキャビティ120が基板110内に生成される。キャビティ120は、第一面113から第二面116に向けて延在する。
【0078】
図1Bのc)では、複数の第一キャビティ120を、第一保磁力HCAを示す第一硬磁性体(物質)130で充填し、硬磁性構造体の第一配列体を生成する。キャビティの充填については図2においてより詳細に説明する。
【0079】
図1Bのd)では、複数の第二キャビティ120を、第二保磁力HCBを示す第二硬磁性体(物質)140で充填し、硬磁性構造体の第二配列体を生成する。第一保磁力HCAは、理想的には、第二保磁力HCBよりも50%以上高い。
【0080】
図1Bのe)では、第一物質130製の硬磁性構造体の第一配列体と、第二物質140製の硬磁性構造体の第二配列体を、第一保磁力HCA及び第二保磁力HCBを超える磁場強度Hを示す磁場によって、第一向きに磁化する。
【0081】
図1Bのf)では、硬磁性構造体の第二配列体のみを、第一保磁力HCA未満であるが第二保磁力HCBを超える磁場強度Hを示す磁場によって、逆向きに磁化する。硬磁性構造体の第二配列体の磁化は、硬磁性構造体の第一配列体と第二配列体を第二磁場に晒すことを含む。
【0082】
つまり、図1A図1Bは、二種類の異なる磁性体130、140を用いることに基づいて、同じ一つの基板の中又は上に硬磁性構造体の逆向き磁化配列体から成る磁気構造体を生成することを開示している。
【0083】
異なる硬磁性体製の硬磁性構造体又はマイクロ構造体の配列体を用いることで、逆向き磁化を容易にする。
【0084】
まず、保磁力HCAを有する第一硬磁性体130から、硬磁性構造体又はマイクロ構造体を生成する。
【0085】
次いで、基板110の他の領域上に、同じ様にして、保磁力HCBを示す第二硬磁性体140製の硬磁性構造体又はマイクロ構造体を生成する。HCBはHCAよりも小さい。
【0086】
次いで、両種の硬磁性構造体又はマイクロ構造体を、HCA及びHCBを超える強度Hの磁場によって、一回のステップで平行に磁化する。
【0087】
最後に、物質140の硬磁性構造体又はマイクロ構造体を、HCBよりも大きいがHCAよりも小さい強度Hの逆向き磁場を印加することによって、一回のステップで再び磁化する。物質130製の硬磁性構造体又はマイクロ構造体の元々の磁場はこのプロセスにおいて維持される。方法100A及び/又は方法100Bの結果が図3図7に示されている。
【0088】
図2において、図1Aのb)、c)、図1Bのc)、d)に示されるキャビティ120の充填200をより詳細に説明する。
【0089】
図2Aから図2Cには、ALDを用いて緩い粒子230を凝集させることによって、基板上に固化した多孔質硬磁性構造体又はマイクロ構造体240を生成する様子がステップ毎に概略的に示されている。
【0090】
図2Aは、図1Bのb)と同様であり、第一面113及び第二面116を有する平坦な基板材110と、基板材の第一面113から、第一面の反対に位置する第二面116に向けて延在するキャビティ120を示す。
【0091】
図2Bでは、キャビティ120が、NdFeB材、SmCo材及び/又はPtCo材等の硬磁性体の緩い粒子230及び/又は物質粒子で充填される。
【0092】
図2Cでは、緩い粒子230が、物理的及び/又は化学的固化、例えばALDを用いて、固化又は凝集される。固化した多孔質構造体240が、図1Aのd)、e)、図1Bのe)、f)それぞれに記載される磁化用に用意される。
【0093】
図1Bのb)で生成されるキャビティや異なる深さ及び/又は断面を有するキャビティを、緩い粉体で単純に充填してもよい。そして、キャビティ内の粉体を固化させて、図1Aのd)、e)、図1Bのe)、f)それぞれに記載される磁化用に用意する。
【0094】
図3は、同じサイズの硬磁性構造体350を有する平坦な基板110を備える磁気構造体300の概略図を示す。硬磁性構造体350は逆向きに磁化され、第一面113から第二面116に向けて延在する。
【0095】
つまり、図3は、平坦な基板110に統合された逆向き磁化の永久磁石マイクロ構造体又は硬磁性構造体350の概略図である。永久磁石マイクロ構造体若しくは硬磁性構造体350又は磁気構造体300は、回転MEMS素子内及び/又は無接触磁気的支持用に使用可能であり、例えば、図1Aの方法100Aによって生成可能である。
【0096】
磁石又はマイクロ磁石が、異なる特性を示す二種類の異なる磁性体製の硬磁性構造体の配列体を有する磁気構造体で構成され、第二硬磁性構造体140製の磁石又はマイクロ磁石の磁化が不完全であるため(図5参照)、寸法が同じ硬磁性構造体は、逆向き(逆符号)であるが強度が異なる磁場を発生させる。この影響は、例えば、二種類の磁石又はマイクロ磁石の寸法を介して補償され得る。
【0097】
図4は、例えば、図1Aの方法100Aで使用可能である主要な磁性体の残留磁束密度と保磁力の概要を示す。図4によると、例えば、NdFeB、SmCo及び/又はPtCo等の最も一般的な硬磁性体の保磁力Hの大きさは互いに異なる。
【0098】
【表1】
【0099】
保磁力Hは、同一種の物質であっても大きく異なり得る。例えば、表1は、永久磁石を生成するための開始材としての一業者(マグネクエンチ社)製の異なるNdFeB系粉体の特性を示す。また、例えば、図1Aの方法100Aにおける完全な磁化が、対応する物質の保磁力Hをはるかに超える磁場を要することも考慮しなければならない。
【0100】
図5は、業者のデータシートに基づいて、表1の2番と4番の物質の磁化の程度を、例えば図1Aの方法100Aの磁化用に使用可能な磁場の関数として示す図である。図の点線は、800kA/mの磁場での4番の物質の磁化の程度を示す。
【0101】
つまり、図5は、業者のデータシートに基づいて、印加磁場の関数としての磁化の程度の図を示す。
【0102】
図1Bのe)に従って逆向き磁化の磁石又はマイクロ磁石の配列体を同時磁化する場合、表1の2番の物質と4番の物質を使用すると、2500kA/mの磁場が、両種類の磁石又はマイクロ磁石をほぼ完全に磁化するのに十分なものとなる。
【0103】
次いで、図1Bのf)に従って800kA/mの逆磁場を印加すると、4番の物質製のマイクロ磁石は、80%を超える程度で逆向きに磁化される。しかしながら、2番の物質の磁石又はマイクロ磁石は、その少なくとも950kA/mの保磁力Hが印加磁場よりも明らかに高いので、ほとんど影響されない。このようにして、図1A図1Bの方法を用いて、例えば、図3に基づく硬磁性構造体の配列体を備える磁気構造体を得ることができる。
【0104】
図6は、棒磁石の長さL対直径dの比の関数として、棒磁石の前端から100μmの距離における正規化軸方向磁束密度Bzを、25μmから400μmの間の多様な直径dについて示す図である。
【0105】
つまり、図6は、磁石のアスペクト比に対する磁束密度の依存性の図を示す。
【0106】
磁石又はマイクロ磁石は、異なる特性を示す二種類の異なる磁性体製である図1Bのf)の硬磁性構造体の配列体を有する磁気構造体であるので、同じ寸法の硬磁性構造体は、逆向き(逆符号)であるが異なる強度を有する磁場を発生させる。
【0107】
保磁力Hは一般的に磁石又はマイクロ磁石の寸法や極性に依存せず、使用される物質のみに依存するので、この影響は、例えば、両種類の磁石又はマイクロ磁石の寸法を介して補償可能である。
【0108】
逆向き磁化構造体又はマイクロ構造体の配列体を有する磁気構造体を生成するための図1A図1Bに開示される方法は、異なる配列体の構造体やキャビティが相互に特定のアスアスペクト比を有するものであって、原理的に実現可能なものである。
【0109】
図7は、キャビティ120を有する平坦な基板材110を備える磁気構造体700の概略図を示す。
【0110】
キャビティは、基板材の第一面113から、第一面の反対側に位置する第二面116に向けて延在する。
【0111】
複数の第一キャビティは、第一深さを有し、第一物質130で充填され、硬磁性構造体の第一配列体を生成する。複数の第二キャビティは、第二深さを有し、第二物質140で充填され、硬磁性構造体の第二配列体を生成する。第一硬磁性体130と第二硬磁性体140製の硬磁性構造体の第一配列体と第二配列体が交互に配置された構造体が逆向きに磁化される。
【0112】
つまり、等しい強度の磁場を有する硬磁性構造体の二次元配列体を、平坦な基板(例えば、シリコン及び/又はガラス及び/又はプラスチック及び/又はセラミック製)の中又は上に逆向き磁化を有する硬磁性構造体又はマイクロ構造体から生成することができる。
【0113】
図7は、等しい強度の逆向き磁場を発生させるように逆向き磁化の磁石又はマイクロ構造体の配列体を備える磁気構造体を生成するために異なる深さのキャビティを利用することを示す。
【0114】
図1Aの方法100Aと図1Bの方法100Bが、マイクロ構造体同士の間の磁場強度の補償によって改善される。異なる特性を有する二種類の異なる磁性体は、異なる磁場強度を生じさせるので、この影響を、両種類の磁石又はマイクロ磁石の寸法を介して補償する。
【0115】
図8は、硬磁性構造体350の配列体を備えるプレート810上の平坦な基板材110を備える磁気構造体800の概略図を示す。硬磁性構造体350は、基板材の第一面113から、第一面の反対側に位置する第二面116に向けて延在する。
【0116】
硬磁性構造体の第一配列体及び/又は第二配列体は、第一面から、基板材の所定の深さまで、更には、プレート810及び/又は基板材の第二面116までランダムに延在する。
【0117】
プレート810の代わりに、第二面116を薄層で覆ってもよく、その薄層上で連続的なキャビティのエッチングが停止する。この場合、プレート810は基板上に統合される。
【0118】
代わりに、基板の両面113と116に対してそれぞれ図2のステップを行うことによって、連続的な硬磁性構造体を生成し得る。
【0119】
硬磁性構造体の第一配列体及び/又は第二配列体は、応用に応じてあらゆる深さを有し得て、更には、基板材の第二表面まで延在してもよい。
【0120】
連続的な構造体を用いることによって、高い(最大)アスペクト比に起因する特に高い磁場強度が達成される(図6も参照)。しかしながら、特定の値、例えば、7:1以後では、生成される磁場は僅かな上昇しか示さなくなる。
【0121】
図9は、硬磁性構造体350の配列体を有する平坦な基板材110を備える磁気構造体900の概略図を示す。硬磁性構造体は、第一面113から第二面116に向けて延在する。
【0122】
第一配列体、第二配列体は、第一硬磁性構造体、第二硬磁性構造体を備える。第一硬磁性構造体、第二硬磁性構造体製の第一硬磁性構造体、第二硬磁性構造体は、交互だけではなくて、所望のとおりに配置される。
【0123】
この磁気構造体900は、図1Aの方法110Aと図1Bの方法100Bによって確かめられているように、平坦な基板の中又は上の逆向き磁化の硬磁性マイクロ構造体又は磁石製の配列体を備える二次元磁気構造体を多種多様に実現可能にする。
【0124】
図10は、基板レベルでの接合を用いて互いに固定して接続された異なる基板110a、110bの中又は上の二つの異なる配列体1140a、1140bを備える三次元磁気構造体1000を示す。
【0125】
二つの配列体1140a、1140bは、異なる硬磁性体製のマイクロ磁石を含む。
【0126】
図10は、それぞれ一種類の物質の磁石又はマイクロ磁石のみを含む二つの異なる基板110aと110bを接続することによって、異なる基板110a、110bの中又は上に硬磁性構造体1140a、1140bの逆向き磁化配列体の磁気構造体1400を生成する様子を示す。
【0127】
つまり、図10は、二つの異なる基板の中又は上に生成された逆向き磁化磁石又はマイクロ磁石の配列体を有する三次元磁気構造体1000を示す。各基板は、一種類の物質製の磁石又はマイクロ磁石のみを含み、磁化の前に基板レベルでの接合によって互いに固定して接続される。接合の際に、基板110aは、永久磁石配列体1140aが接合ウェーハ積層体の内側又は外側に位置するようにして、整列され得る。このために利用可能な多数の確立された接合プロセスをシリコン技術は有していて、例えば、密封接続用のガルバニック堆積Au‐Sn積層体や、印刷ガラスフリットに基づいたものや、非密封接続用のパターン化された接着剤やポリマーを用いたものが挙げられる。
【0128】
図1Aの方法100Aと図1Bの方法100Bはそれぞれ、例えば、3D磁気構造体を生成することもできる。いずれの基板の中又は上における磁石又はマイクロ磁石の幾何学的形状と配置は、所望のとおりに変更可能であるので、相互に反発し又は引き合う磁石又はマイクロ磁石の配列体がこのようにして多種多様に生成される。
【0129】
本発明の実施形態の以下の説明では、まず、既知の従来の方法を示す。
【0130】
例えば、図11は、複数の個々に磁化されたSmCo櫛状体から成るサブmmピッチの磁気スケールの概略図を示す。
【0131】
レーザに基づいた物質加工が、かなり前から既に、複雑な形状の三次元部品を高精度で生成することを可能にしている。250μmの周期の逆向き磁化スケールは、個々に磁化された櫛状体を交互配置することによって実現される。個々の櫛状体の生成は、厚さ300μmのSmCoフィルムのレーザ加工を用いて実現される。
【0132】
二つ目の例である図12は、熱磁気パターニングを用いて逆向き磁化領域を生成することの例示である。薄い硬磁性層の場合には、テンプレートが用いられる(図12Aを参照)。非常に厚い層の場合には、NdFeBピクセルは、鋸引きによって互いに分離される(図12Bを参照)。
【0133】
所謂「熱磁気パターニング」では、硬磁性体製の一様に予め磁化させた層を、テンプレート及び/又はマスクを介してレーザによって局所的に加熱し、同時に印加される逆向き磁場を用いてその領域を逆向きに磁化する(図12Aを参照)。このようにして、例えば、Si基板上の厚さ4μmのNdFeB層に、50×50μmのサイズの逆向き磁化正方形から成る格子柄パターンの生成が可能となっている。NdFeB層自体内における又は基板に至る熱伝導に起因して、逆向き磁化領域の深さは略1μmに限定される。
【0134】
熱磁気パターニングの一変形例が図12Bに示されている。厚いNdFeBプレートレットがガラス基板上に接合され、所定のパターンでガラスまで鋸引きされ、その後、その全面において磁化される。
【0135】
次いで、レーザを用いた選択的加熱によって、個々のピクセル又はラインが磁化される。必要な磁場は、直に隣接するNdFeB構造体によって与えられる。
【0136】
例えば、図13は、高透磁率の軟磁性体製のテンプレート及び/又はマスクを用いて硬磁性層内に逆向きに磁化された領域を生成する様子を示す。
【0137】
高透磁率の軟磁性体のテンプレート及び/又はマスクを用いる場合、加熱せずに、硬磁性層内に磁気パターンを生成することができる。
【0138】
図13がこの方法を示している。印加される逆向き磁場は、マスクの隆部内において、その下方に位置する硬磁性層の領域が逆向きに磁化される程度に増幅される。この方法は、残留磁束密度と保磁力が低い層に限定される。
【0139】
図14は、従来技術の対応するデバイスを用いて、基板の表面領域全体にわたって一様であり磁場強度Hを示す磁場を印加することによって、硬磁性体130製の硬磁性構造体又はマイクロ構造体を磁化する様子を示す。
【0140】
上述の実施形態は、本発明の方法の原理を単に例示するものである。本願で説明される方法や詳細の修正や変更が当業者には明らかであることを理解されたい。本発明の方法は、実施形態の説明及び例示を用いて本願に示される具体的な詳細ではなくて、添付の特許請求の範囲によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0141】
110 基板材
113 基板材の第一面
116 基板材の第二面
120 キャビティ
130 第一硬磁性体(物質)
140 第二硬磁性体(物質)
300 磁気構造体
350 硬磁性構造体
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14