IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

特許7189182充電制御装置、バッテリシステム、及び充電制御方法
<>
  • 特許-充電制御装置、バッテリシステム、及び充電制御方法 図1
  • 特許-充電制御装置、バッテリシステム、及び充電制御方法 図2
  • 特許-充電制御装置、バッテリシステム、及び充電制御方法 図3
  • 特許-充電制御装置、バッテリシステム、及び充電制御方法 図4
  • 特許-充電制御装置、バッテリシステム、及び充電制御方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】充電制御装置、バッテリシステム、及び充電制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20221206BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20221206BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20221206BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H02J7/02 J
H02J7/02 H
H02J7/10 B
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020149613
(22)【出願日】2020-09-07
(65)【公開番号】P2022044137
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】大野 ちひろ
(72)【発明者】
【氏名】荘田 隆博
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-023361(JP,A)
【文献】特開2013-090525(JP,A)
【文献】特開2020-022342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 - 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリが直列に接続された蓄電池系統を並列に複数備えたバッテリ群と、前記蓄電池系統の接続と遮断とを切り替える系統スイッチと、複数の前記蓄電池系統を構成する前記複数のバッテリのそれぞれをバイパスするためのバイパススイッチと、を備えたバッテリ装置を充電する充電制御装置であって、
前記系統スイッチ及び前記バイパススイッチを制御して前記バッテリ装置の充電を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、複数の前記蓄電池系統で同一の充電目標となる総電圧である個別充電完了総電圧を決定し、且つ、前記個別充電完了総電圧を達成するための、各前記蓄電池系統を構成する前記複数のバッテリのそれぞれの残充電容量の目標値となる系統残充電所定容量を各前記蓄電池系統ごとに求め、各前記蓄電池系統ごとに各前記蓄電池系統を構成する前記複数のバッテリの残充電容量を前記系統残充電所定容量に統一しつつ前記個別充電完了総電圧まで個別に充電した後に、複数の前記蓄電池系統を一括して充電する
ことを特徴とする充電制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、各前記蓄電池系統のうち最も残充電容量が少ないバッテリを基準にして、同一系統の他のバッテリを同じ残充電容量まで充電した場合の当該系統での総電圧を調整最低系統総電圧として算出し、各前記蓄電池系統のそれぞれで算出された前記調整最低系統総電圧のうち最も高い値を前記個別充電完了総電圧とする
ことを特徴とする請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記系統残充電所定容量に達したバッテリを順次バイパスしていき、前記複数のバッテリの全てが前記系統残充電所定容量に達した段階で、当該系統における個別の充電を完了させる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の充電制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、各前記蓄電池系統を構成する前記複数のバッテリのそれぞれについて、開回路電圧と残充電容量との相関データと劣化率とに基づいて、各バッテリが達成すべき残充電容量を求め、求められた残充電容量を前記系統残充電所定容量とする
ことを特徴とする請求項3に記載の充電制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、複数の前記蓄電池系統を一括して充電している場合において、複数の前記蓄電池系統のそれぞれを構成する前記複数のバッテリのいずれかが充電完了であると判断した場合に、複数の前記蓄電池系統の一括した充電を終了させる
ことを特徴とする請求項3又は請求項4のいずれかに記載の充電制御装置。
【請求項6】
複数のバッテリが直列に接続された蓄電池系統を並列に複数備えたバッテリ群と、前記蓄電池系統の接続と遮断とを切り替える系統スイッチと、複数の前記蓄電池系統を構成する前記複数のバッテリのそれぞれをバイパス可能なバイパススイッチと、を備えたバッテリ装置と、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の充電制御装置と、
を備えることを特徴とするバッテリシステム。
【請求項7】
複数のバッテリが直列に接続された蓄電池系統を並列に複数備えたバッテリ群と、前記蓄電池系統の接続と遮断とを切り替える系統スイッチと、複数の前記蓄電池系統を構成する前記複数のバッテリのそれぞれをバイパス可能なバイパススイッチと、を備えたバッテリ装置を充電する充電制御装置の充電制御方法であって、
前記系統スイッチ及び前記バイパススイッチを制御して前記バッテリ装置の充電を制御する制御工程を備え、
前記制御工程では、複数の前記蓄電池系統で同一の充電目標となる総電圧である個別充電完了総電圧を決定し、且つ、前記個別充電完了総電圧を達成するための、各前記蓄電池系統を構成する前記複数のバッテリのそれぞれの残充電容量の目標値となる系統残充電所定容量を各前記蓄電池系統ごとに求め、各前記蓄電池系統ごとに各前記蓄電池系統を構成する前記複数のバッテリの残充電容量を前記系統残充電所定容量に統一しつつ前記個別充電完了総電圧まで個別に充電した後に、複数の前記蓄電池系統を一括して充電する
ことを特徴とする充電制御装置の充電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電制御装置、バッテリシステム、及び充電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチを介して複数のバッテリを直列接続すると共に、各バッテリをバイパスするバイパス線に接続するためのスイッチについても設けたバッテリ装置が知られている。このバッテリ装置は、バイパス線に接続するためのスイッチを制御することで、特定のバッテリをバイパスすることができる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、複数の電池セルが直列に接続された電池セル列を、複数並列に接続して電池セル群を構成したバッテリ装置が知られている。このバッテリ装置は、電池セル列からなる蓄電池系統を複数並列に有するため、並列運転することで大出力の運転が可能となる(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-031247号公報
【文献】特開2013-240155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、車載用途等で使用した中古電池を回収し、それらを統合した大型車用蓄電池や定置用バッテリシステム等を構成するカスケード利用において、過去の電池ユーザの使用方法によって各電池の劣化状態が異なることが課題となる。そこで、特許文献1に記載のように各バッテリをバイパス可能な構成とすることが考えられる。これにより、特定のバッテリのみをバイパスすることが可能となり、例えば電池容量が少ないバッテリのみをバイパスして直列接続される他のバッテリを使用することができる。さらに、特許文献2に記載のように、複数の電池セルを直列に接続した蓄電池系統を複数並列に設けることで、並列運転を行って大出力を得ることができる。
【0006】
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載の技術を採用した構成において、充電進行中にバッテリをバイパスした場合、バイパスした蓄電池系統については総電圧が低下してしまい、他の蓄電池系統の総電圧と差異が生じてしまう。
【0007】
また、充電を蓄電池系統ごとに行うことによっても蓄電圧の総電圧に差異が生じてしまい、不意に充電モードから放電モードに移行した場合に並列運転を行うと、系統間に循環電流が流れてしまう。
【0008】
すなわち総電圧に差異が生じると、系統間の電位差と、電池セルの内部抵抗、遮断スイッチ、バスバー及び配線等の抵抗成分とにより決定される循環電流が系統間に流れてしまう。例えば、電位差が4Vで抵抗成分が100mΩである場合、40Aの循環電流が流れてしまう。このとき、循環電流が流れる系統内に上記循環電流を許容できないセルや回路部品が含まれている場合、系統間を並列接続することができなくなる。
【0009】
また、仮に、循環電流が電池セルの充放電電流制限値や各回路部品の限界値以内に収まり、並列接続を行うことができても、次に充電モードへ移行して充電が進行し、満充電になったセルがバイパスされるたびに、バイパスされるセルの開回路電圧相当分だけ対応する系統の総電圧が低下するため、循環電流が大きくなってしまい、循環電流を許容できなくなることもある。
【0010】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、複数のバッテリが直列接続された蓄電池系統を並列に複数備える場合において、並列接続時において循環電流を許容できなくなる可能性を低減することができる充電制御装置、バッテリシステム、及び充電制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る充電制御装置は、複数のバッテリが直列に接続された蓄電池系統を並列に複数備えたバッテリ群と、前記蓄電池系統の接続と遮断とを切り替える系統スイッチと、複数の前記蓄電池系統を構成する前記複数のバッテリのそれぞれをバイパスするためのバイパススイッチと、を備えたバッテリ装置を充電する充電制御装置であって、前記系統スイッチ及び前記バイパススイッチを制御して前記バッテリ装置の充電を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、複数の前記蓄電池系統で同一の充電目標となる総電圧である個別充電完了総電圧を決定し、且つ、前記個別充電完了総電圧を達成するための、各前記蓄電池系統を構成する前記複数のバッテリのそれぞれの残充電容量の目標値となる系統残充電所定容量を各前記蓄電池系統ごとに求め、各前記蓄電池系統ごとに各前記蓄電池系統を構成する前記複数のバッテリの残充電容量を前記系統残充電所定容量に統一しつつ前記個別充電完了総電圧まで個別に充電した後に、複数の前記蓄電池系統を一括して充電する。
【0012】
本発明に係るバッテリシステムは、複数のバッテリが直列に接続された蓄電池系統を並列に複数備えたバッテリ群と、前記蓄電池系統の接続と遮断とを切り替える系統スイッチと、複数の前記蓄電池系統を構成する前記複数のバッテリのそれぞれをバイパス可能なバイパススイッチと、を備えたバッテリ装置と、上記に記載の充電制御装置と、を備える。
【0013】
本発明に係る充電制御方法は、複数のバッテリが直列に接続された蓄電池系統を並列に複数備えたバッテリ群と、前記蓄電池系統の接続と遮断とを切り替える系統スイッチと、複数の前記蓄電池系統を構成する前記複数のバッテリのそれぞれをバイパス可能なバイパススイッチと、を備えたバッテリ装置を充電する充電制御装置の充電制御方法であって、前記系統スイッチ及び前記バイパススイッチを制御して前記バッテリ装置の充電を制御する制御工程を備え、前記制御工程では、複数の前記蓄電池系統で同一の充電目標となる総電圧である個別充電完了総電圧を決定し、且つ、前記個別充電完了総電圧を達成するための、各前記蓄電池系統を構成する前記複数のバッテリのそれぞれの残充電容量の目標値となる系統残充電所定容量を各前記蓄電池系統ごとに求め、各前記蓄電池系統ごとに各前記蓄電池系統を構成する前記複数のバッテリの残充電容量を前記系統残充電所定容量に統一しつつ前記個別充電完了総電圧まで個別に充電した後に、複数の前記蓄電池系統を一括して充電する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数のバッテリが直列接続された蓄電池系統を並列に複数備える場合において、並列接続時において循環電流を許容できなくなる可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係るバッテリシステムを示す構成図である。
図2】開回路電圧と残充電容量との相関を示す相関図であり(a)は劣化前を示し、(b)は特定の劣化後を示している。
図3】本実施形態に係る充電制御方法を示すメインフローチャートである。
図4図3に示した個別充電処理の詳細を示すサブフローチャートである。
図5図3に示した一括充電処理の詳細を示すサブフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0017】
図1は、本実施形態に係るバッテリシステムを示す構成図である。図1に示すバッテリシステム1は、並列接続時における循環電流を許容内に抑えるためのものであって、バッテリ装置10と、充電制御部(充電制御装置)20とを備えている。
【0018】
バッテリ装置10は、バッテリ群BGと、複数(図1において2つ)の系統スイッチS100,S200と、複数の並列スイッチ(バイパススイッチ)S101a~S103a,S201a~S203aと、複数の直列スイッチ(バイパススイッチ)S101b~S103b,S201b~S203bとを備えている。
【0019】
バッテリ群BGは、複数(図1において2つ)の蓄電池系統11,12を並列に備えたものである。第1の蓄電池系統11は、複数(図1において3つ)のバッテリC101~C103が複数の直列スイッチS101b~S103bを介して直列に接続されたものである。第2の蓄電池系統12は、複数(図1において3つ)のバッテリC201~C203が複数の直列スイッチS201b~S203bを介して直列に接続されたものである。各バッテリC101~C103,C201~C203は、それぞれが車載用途等で使用され回収された中古電池(単位セルであってもよいし、複数セルからなる電池であってもよい)である。これらバッテリC101~C103,C201~C203は、例えば劣化状態が計測され、同程度の劣化状態であるものにより構成されていても良いし、劣化状態の異なるものにより構成されていても良い。なお、バッテリ群BGは、各バッテリC101~C103,C201~C203の劣化状態を考慮のうえ、対象となる使用用途に応じた電圧等を満たすようにされている。
【0020】
複数の系統スイッチS100,S200は、充電制御部20から各蓄電池系統11,12に至るまでの経路上に設けられ、各蓄電池系統11,12と充電制御部20との接続及び遮断を切り替えるものである。
【0021】
複数の並列スイッチS101a~S103a,S201a~S203aと、複数の直列スイッチS101b~S103b,S201b~S203bとは、各蓄電池系統11,12を構成する複数のバッテリC101~C103,C201~C203それぞれをバイパスするためのスイッチである。複数のバッテリC101~C103,C201~C203それぞれをバイパスしない場合、複数の直列スイッチS101b~S103b,S201b~S203bがオンされ(接続状態とされ)、複数の並列スイッチS101a~S103a,S201a~S203aがオフされる(遮断状態とされる)。一方、複数のバッテリC101~C103,C201~C203それぞれをバイパスする場合、複数の直列スイッチS101b~S103b,S201b~S203bがオフされ、複数の並列スイッチS101a~S103a,S201a~S203aがオンされる。
【0022】
なお、図1に示すように、本実施形態に係るバッテリシステム1において、バッテリC101~C103,C201~C203、並列スイッチS101a~S103a,S201a~S203a、及び、直列スイッチS101b~S103b,S201b~S203bは1つずつ組み合わされて各電池モジュールM101~M103,M201~M203を構成している。
【0023】
充電制御部20は、上記スイッチS100,S200,S101a~S103a,S201a~S203a,S101b~S103b,S201b~S203bを制御する制御部(制御手段)21を有している。また、充電制御部20は例えばA/D変換器を介して商用電源に接続されていたり、他のDC電源に接続されていたりしており、制御部21は、これら電源を利用してバッテリ装置10の充電を制御する。また、充電制御部20は、各バッテリC101~C103,C201~C203の電圧等を検出し又は検出する機器から情報取得可能する検出部22についても備えている。
【0024】
さらに、本実施形態において制御部21は、蓄電池系統11,12それぞれを個別に充電して蓄電池系統11,12の総電圧をそろえた後に、一括充電を行うようにしている。制御部21は、個別の充電において、1)複数の蓄電池系統11,12で同一の充電目標となる総電圧である個別充電完了総電圧VITを決定し、2)各蓄電池系統11,12それぞれを個別充電完了総電圧VITまで充電する(条件1)。これにより、制御部21は、各蓄電池系統11,12の総電圧を個別充電完了総電圧VITにそろえる。その後、制御部21は、複数の蓄電池系統11,12を一括して充電する。
【0025】
特に、制御部21は、個別充電において、上記条件1のみならず、条件2を満たすように充電を行う。条件2は、同一系統11,12内の複数のバッテリC101~C103,C201~C203それぞれの残充電容量をそろえることである。このため、制御部21は、個別充電において、複数のバッテリC101~C103,C201~C203のうち、目的となる残充電容量に達したものについてバイパスするようにスイッチS101a~S103a,S201a~S203a,S101b~S103b,S201b~S203bを制御する。
【0026】
詳細に説明すると、制御部21は、条件1の個別充電完了総電圧VITを以下のようにして決定する。
【0027】
まず、制御部21は、各バッテリC101~C103,C201~C203の電圧値等に基づいて、各蓄電池系統11,12のうち最も残充電容量が少ないバッテリC101~C103,C201~C203を特定する(最も充電されているバッテリC101~C103,C201~C203を特定する)。図1に示す例において制御部21は、第1の蓄電池系統11を構成するバッテリC101~C103のうち、最も残充電容量が少ないものを特定し、第2の蓄電池系統12を構成するバッテリC201~C203のうち、最も残充電容量が少ないものを特定する。
【0028】
次に、制御部21は、同一系統11,12の他のバッテリC101~C103,C201~C203を同じ残充電容量まで充電した場合の当該系統11,12での総電圧を調整最低系統総電圧VATとして算出する。例えば、第1の蓄電池系統11において第1バッテリC101が最も残充電容量が少なかったとすると、制御部21は、第2及び第3バッテリC102,C103についても第1バッテリC101と同じ残充電容量となるように充電した場合の第1の蓄電池系統11の総電圧である第1の調整最低系統総電圧VAT1を算出する。同様に、第2の蓄電池系統12において第1バッテリC201が最も残充電容量が少なかったとすると、制御部21は、第2及び第3バッテリC202,C203についても第1バッテリC201と同じ残充電容量となるように充電した場合の蓄電池系統12の総電圧である第2の調整最低系統総電圧VAT2を算出する。
【0029】
次いで、制御部21は、各蓄電池系統11,12のそれぞれで算出された調整最低系統総電圧VAT1,VAT2のうち最も高い値を個別充電完了総電圧VITとする。すなわち、第1の調整最低系統総電圧VAT1と第2の調整最低系統総電圧VAT2とを比較して高い方を採用し、これを個別充電完了総電圧VITとする。
【0030】
以上のようにして、制御部21は、現実的に最も個別充電が早く終わるように個別充電完了総電圧VITを決定する。すなわち、複数の蓄電池系統11,12のうちいずれかのバッテリC101~C103,C201~C203については充電が行われず、現実的に最も個別充電が早く終わるように個別充電完了総電圧VITが決定されることとなる。
【0031】
さらに、制御部21は、条件2に関し、以下の制御を実行する。まず、制御部21は、個別充電完了総電圧VITを達成するための、各蓄電池系統11,12を構成する複数のバッテリC101~C103,C201~C203のそれぞれの残充電容量の目標値となる系統残充電所定容量SRCを求める。
【0032】
図2は、開回路電圧と残充電容量との相関を示す相関図であり(a)は劣化前を示し、(b)は特定の劣化後を示している。上記について一例を挙げて説明する。まず、個別充電完了総電圧VITが3αVに相当する場合、図1に示す例ではバッテリC101~C103は3つであるため、それぞれのバッテリC101~C103が例えばαVとなる必要がある。図2(a)に示す劣化前の状態でαVの開回路電圧を得るためには、図2(a)に示すように、残充電容量がβ1となる必要がある。しかし、本実施形態では中古電池を想定していることから、或る程度劣化が進行している。劣化が進行すると図2(a)に示した横軸方向に相関図が圧縮されるようになり、αVの開回路電圧を得るためには、図2(b)に示すように、残充電容量がβ2となる必要がある。制御部21は、予め第1の蓄電池系統11のバッテリC101~C103それぞれについて、開回路電圧と残充電容量との相関データ(すなわち図2(a)に示すようなデータ)、及び、劣化率の情報を取得しており、これに基づいて、図2(b)に示すような相関を導き出す。これにより、制御部21は、残充電容量β2を算出可能であり、この残充電容量β2を系統残充電所定容量SRCとして求める。
【0033】
制御部21は、蓄電池系統11,12のそれぞれで系統残充電所定容量SRCを求め(すなわち、第1の蓄電池系統11の系統残充電所定容量SRC1と、第2の蓄電池系統12の系統残充電所定容量SRC2とを求め)、系統残充電所定容量SRC1,SRC2に達したバッテリC101~C103,C201~C203を順次バイパスしていき、複数のバッテリC101~C103,C201~C203の全てが系統残充電所定容量SRC1,SRC2に達した段階で、当該系統11,12における個別の充電を完了させることとなる。これにより、各蓄電池系統11,12においてバッテリC101~C103,C201~C203の残充電容量が系統残充電所定容量SRC1,SRC2になるように(バッテリC101~C103について系統残充電所定容量SRC1となるように、且つ、バッテリC201~C203について系統残充電所定容量SRC2となるように)統一されたうえで個別充電完了総電圧VITとなるように、個別充電することができる。なお、第1の蓄電池系統11の系統残充電所定容量SRC1と、第2の蓄電池系統12の系統残充電所定容量SRC2とは、算出の結果、同じ値となっても良いし、異なっていても良い。
【0034】
以上より、個別充電完了時には蓄電池系統11,12の電位差に応じた循環電流の問題が解消されることとなる。特に、複数のバッテリC101~C103,C201~C203の残充電容量が統一されており、後の一括充電においても、理論的にはいずれかのバッテリC101~C103,C201~C203のみが先に満充電となってバイパスされてしまうこともない。よって、蓄電池系統11,12の総電圧をそろえた後については、並列接続したとしても、循環電流が抑えられることとなる。
【0035】
加えて、制御部21は、個別充電後の一括充電において複数の蓄電池系統11,12のそれぞれを構成する複数のバッテリC101~C103,C201~C203のいずれかが充電完了であると判断した場合に、複数の蓄電池系統11,12の一括した充電を終了させる。ここで、上記したように、個別充電の完了時には各蓄電池系統11,12において総電圧が個別充電完了総電圧VITにそろっており、且つ、バッテリC101~C103,C201~C203の残充電容量についてもそろった状態となっている。このため、全てのバッテリC101~C103,C201~C203等を検出することなく、少なくとも1つの充電完了を確認できれば、全体的にも充電完了と判断できる。
【0036】
なお、制御部21は、各系統11,12の電流センサ(不図示)から取得した電流値と各系統11,12の充電電流制限値を比較し、いずれも制限値を超えないように充電電流を制御することはいうまでもない。また、充電が進行すると各系統11,12の充電電流制限値が低下するため、これに追従して充電電流について制御することもいうまでもない。
【0037】
次に、本実施形態に係る充電制御方法を説明する。図3は、本実施形態に係る充電制御方法を示すメインフローチャートである。まず、図3に示すように、制御部21は、個別充電処理を実行する(S1)。この処理においては、上記したように、各蓄電池系統11,12の総電圧が個別充電完了総電圧VITにそろえられ、且つ、各蓄電池系統11,12において各バッテリC101~C103,C201~C203の残充電容量を、系統残充電所定容量SRC(SRC1,SRC2)にそろえる。
【0038】
その後、制御部21は、一括充電処理を実行する(S2)。これにより、全蓄電池系統11,12の複数のバッテリC101~C103,C201~C203が共に充電されていくこととなる。そして、一括充電処理の完了後に、図3に示す処理が終了する。
【0039】
図4は、図3に示した個別充電処理の詳細を示すサブフローチャートである。図4に示すように、個別充電処理において制御部21は、まず全スイッチS100,S200,S101a~S103a,S201a~S203a,S101b~S103b,S201b~S203bをオフする(S101)。
【0040】
次いで、制御部21は、全ての直列スイッチS101b~S103b,S201b~S203bをオンする(S102)。その後、充電制御部20の検出部22は、各蓄電池系統11,12それぞれの総電圧を測定する(S103)。
【0041】
次に、制御部21は、個別充電完了総電圧VITを決定する(S104)。この処理において制御部21は、第1の蓄電池系統11の各バッテリC101~C103の残充電容量に基づいて、第1の調整最低系統総電圧VAT1を決定し、第2の蓄電池系統12の各バッテリC201~C203の残充電容量に基づいて、第2の調整最低系統総電圧VAT2を決定する。そして、制御部21は、第1及び第2の調整最低系統総電圧VAT1,VAT2の高い方を個別充電完了総電圧VITとして決定する。
【0042】
次に、制御部21は、系統残充電所定容量SRC(SRC1,SRC2)を決定する(S105)。この処理において制御部21は、ステップS104において決定された個別充電完了総電圧VITを達成するための、各バッテリC101~C103,C201~C203の残充電容量を、系統残充電所定容量SRCとして決定する。この際、制御部21は、図2(a)に示したような相関データと劣化率とから、図2(b)に示す相関データを算出して、系統残充電所定容量SRCを決定する。
【0043】
その後、制御部21は、第nの蓄電池系統11,12を選択して、選択された第nの蓄電池系統11,12に該当する系統スイッチS100,S200をオンする(S106)。ここで、nは正の整数であり、初期的には「1」である。
【0044】
次に、制御部21は、ステップS106において選択された第nの蓄電池系統11,12に対して充電を開始する(S107)。その後、制御部21は、ステップS105において決定された系統残充電所定容量SRC(SRC1,SRC2)に達したバッテリC101~C103,C201~C203があるかを判断する(S108)。
【0045】
系統残充電所定容量SRC(SRC1,SRC2)に達したバッテリC101~C103,C201~C203がない場合(S108:NO)、系統残充電所定容量SRC(SRC1,SRC2)に達したバッテリC101~C103,C201~C203があると判断するまで、この処理が繰り返される。
【0046】
系統残充電所定容量SRC(SRC1,SRC2)に達したバッテリC101~C103,C201~C203がある場合(S108:YES)、制御部21は、系統残充電所定容量SRC(SRC1,SRC2)に達したバッテリC101~C103,C201~C203の直列スイッチS101b~S103b,S201b~S203bをオフし、並列スイッチS101a~S103a,S201a~S203aをオンして、当該バッテリC101~C103,C201~C203をバイパスする(S109)。
【0047】
次いで、制御部21は、系統11,12内のバッテリC101~C103,C201~C203の全てが系統残充電所定容量SRC(SRC1,SRC2)に達したか、すなわち第nの蓄電池系統11,12の充電が完了したかを判断する(S110)。第nの蓄電池系統11,12の充電が完了していない場合(S110:NO)、処理はステップS108に移行する。
【0048】
第nの蓄電池系統11,12の充電が完了した場合(S110:YES)、制御部21は、全ての蓄電池系統11,12の充電が完了したかを判断する(S111)。全ての蓄電池系統11,12の充電が完了していない場合(S111:NO)、充電制御部20は、n=n+1とし(S112)、処理はステップS106に移行する。
【0049】
一方、全ての蓄電池系統11,12の充電が完了した場合(S111:YES)、図4に示す処理は終了する。これにより、個別充電が完了することとなる。
【0050】
図5は、図3に示した一括充電処理の詳細を示すサブフローチャートである。図5に示すように、一括充電処理において制御部21は、まず全スイッチS100,S200,S101a~S103a,S201a~S203a,S101b~S103b,S201b~S203bをオフする(S201)。
【0051】
次いで、制御部21は、全ての直列スイッチS101b~S103b,S201b~S203bをオンする(S202)。その後、制御部21は、全ての系統スイッチS100,S200をオンする(S203)。
【0052】
次に、制御部21は充電を開始する(S204)。これにより、全ての蓄電池系統11,12に対して一括した充電が開始される。その後、制御部21は、充電が完了したバッテリC101~C103,C201~C203があるかを判断する(S205)。
【0053】
充電が完了したバッテリC101~C103,C201~C203がない場合(S205:NO)、完了したバッテリC101~C103,C201~C203があると判断するまで、この処理が繰り返される。完了したバッテリC101~C103,C201~C203がある場合(S205:YES)、図5に示す処理は終了する。
【0054】
このようにして、本実施形態に係る充電制御部20、バッテリシステム1及び充電制御方法によれば、各蓄電池系統11,12を構成する複数のバッテリC101~C103,C201~C203の残充電容量を系統残充電所定容量SRC1,SRC2に統一しつつ、個別充電完了総電圧VITまで個別に充電した後に、一括充電するため、各蓄電池系統11,12の残充電容量をそろえた後については不意に放電モードに移行したとしても循環電流が許容電流内に抑えられており、且つ、一括充電中においてもバッテリC101~C103,C201~C203のバイパスによる循環電流の問題も生じ難くなる。従って、複数のバッテリC101~C103,C201~C203が直列接続された蓄電池系統11,12を並列に複数備える場合において、並列接続時において循環電流を許容できなくなる可能性を低減することができる。
【0055】
また、各蓄電池系統11,12のうち最も残充電容量が少ないバッテリC101~C103,C201~C203を基準にして、同一系統11,12の他のバッテリC101~C103,C201~C203を同じ残充電容量まで充電した場合の当該系統11,12での総電圧を調整最低系統総電圧VAT1,VAT2として算出し、各蓄電池系統11,12のそれぞれで算出された調整最低系統総電圧VAT1,VAT2のうち最も高い値を個別充電完了総電圧VITとする。このため、現実的に最も個別充電が早く終わるように個別充電完了総電圧VITが決定されるため、不意の放電モードへの移行時に並列運転を行うことができる可能性を高めることができる。
【0056】
また、個別充電完了総電圧VITを達成するための複数のバッテリC101~C103,C201~C203のそれぞれの残充電容量の目標値となる系統残充電所定容量SRC1,SRC2を求め、系統残充電所定容量SRC1,SRC2に達したバッテリC101~C103,C201~C203を順次バイパスしていき、複数のバッテリC101~C103,C201~C203の全てが系統残充電所定容量SRC1,SRC2に達した段階で、当該系統11,12における個別の充電を完了させる。このため、複数のバッテリC101~C103,C201~C203のそれぞれで残充電容量にばらつきがあっても、ばらつきを調整することができる。
【0057】
また、複数のバッテリC101~C103,C201~C203のそれぞれについて、開回路電圧と残充電容量との相関データと劣化率とに基づいて各バッテリC101~C103,C201~C203が達成すべき残充電容量を求め、これを系統残充電所定容量SRCとする。このため、各蓄電池系統11,12において劣化率を考慮して適切な達成すべき残充電容量を求めることができる。
【0058】
また、一括充電している場合において、複数のバッテリC101~C103,C201~C203のいずれかが充電完了であると判断した場合に、複数の蓄電池系統11,12の一括した充電を終了させる。詳細には、一括充電においては複数のバッテリC101~C103,C201~C203の残充電容量が蓄電池系統11,12ごとに統一されていることにより、各蓄電池系統11,12における全てのバッテリC101~C103,C201~C203の残充電容量が同等に減少する。また、蓄電池系統11,12が並列接続されているため、各蓄電池系統11,12の総電圧が同一である。以上より、全てのバッテリC101~C103,C201~C203は、同時に充電が完了する。したがって、全てのバッテリC101~C103,C201~C203の充電完了を確認する必要がなく、簡易に充電完了を判断することができる。
【0059】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、周知及び公知の技術を組み合わせてもよい。
【0060】
例えば図4に示したステップS106の処理においては、まず、第1の蓄電池系統11が選択され、ステップS112の処理を経て、第2の蓄電池系統12が選択されるようになっているが、特にこれに限らず、例えば系統残充電所定容量SRC(SRC1,SRC2)が少ないもの、又は多いものから順番に選択されるようになっていてもよい。
【0061】
また、上記実施形態において蓄電池系統11,12は2つであるが、3つ以上であってもよい。また、各蓄電池系統11,12が構成するバッテリC101~C103,C201~C203は3つであるが、2つ又は4つ以上であってもよい。さらに、バッテリC101~C103,C201~C203は単位セルであってもよいし、複数の単位セルからなるモジュールであってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 :バッテリシステム
10 :バッテリ装置
11,12 :蓄電池系統
20 :充電制御部(充電制御装置)
21 :制御部(制御手段)
BG :バッテリ群
C101~C103,C201~C203 :バッテリ
S100,S200 :系統スイッチ
S101a~S103a,S201a~S203a:並列スイッチ(バイパススイッチ)
S101b~S103b,S201b~S203b:直列スイッチ(バイパススイッチ)
SRC,SRC1,SRC2 :系統残充電所定容量
AT,VAT1,VAT2 :調整最低系統総電圧
IT :個別充電完了総電圧
図1
図2
図3
図4
図5