IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電源制御装置 図1
  • 特許-電源制御装置 図2
  • 特許-電源制御装置 図3
  • 特許-電源制御装置 図4
  • 特許-電源制御装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】電源制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20221206BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 U
H02M3/155 V
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020178723
(22)【出願日】2020-10-26
(65)【公開番号】P2022069834
(43)【公開日】2022-05-12
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】神田 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】吉満 翔大
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-10406(JP,A)
【文献】特開2020-80625(JP,A)
【文献】特開2013-119331(JP,A)
【文献】特開2010-74913(JP,A)
【文献】特開2014-93863(JP,A)
【文献】特開2018-42461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00-3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電圧により駆動される発熱系電装品が接続された第1副電源系と、
前記第1電圧よりも低圧の第2電圧により充電される蓄電池と、前記第2電圧により駆動される低圧系負荷とが接続された第2副電源系と、
主電源と
を備える電源装置を制御する電源制御装置であって、
前記主電源からの電源電圧を降圧して前記第1副電源系と前記第2副電源系とに出力する電圧変換回路と、
前記発熱系電装品の負荷が所定の高負荷状態にある場合に、前記電圧変換回路から前記第2副電源系への電力供給を停止し、前記発熱系電装品の負荷が当該所定の高負荷状態から所定の低負荷状態に変移した場合に、前記電圧変換回路から前記第2副電源系へ電力を供給する制御部と
を備える電源制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記蓄電池及び前記低圧系負荷の少なくとも一方の負荷が所定の高負荷状態にある場合に、前記電圧変換回路から前記第1副電源系への電力供給を停止し、前記蓄電池及び前記低圧系負荷の少なくとも一方の負荷が当該所定の高負荷状態から所定の低負荷状態に変移した場合に、前記電圧変換回路から前記第1副電源系へ電力を供給する請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記電圧変換回路は、
スイッチング素子のスイッチング操作により前記主電源からの電源電圧を降圧してトランスから出力する第1スイッチング回路と、
前記トランスから出力された電力が入力するインダクタと、
前記インダクタと前記第1副電源系と前記第2副電源系とに接続され、前記第1電圧を前記第1副電源系に出力し、前記第2電圧を前記第2副電源系に出力する単一インダクタ・マルチ出力方式の第2スイッチング回路と
を備える請求項1又は2に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記第2スイッチング回路は、
前記インダクタと前記第1副電源系とに接続され、前記制御部によりON/OFFされる第1スイッチと、
前記インダクタと前記第2副電源系とに接続され、前記制御部によりON/OFFされる第2スイッチと
を備え、
前記制御部は、前記発熱系電装品の負荷が前記所定の高負荷状態にある場合に、前記第2スイッチを連続的にOFFにし、前記蓄電池及び前記低圧系負荷の少なくとも一方の負荷が前記所定の高負荷状態にある場合に、前記第1スイッチを連続的にOFFにする請求項2を引用する請求項3に記載の電源制御装置。
【請求項5】
前記制御部により前記電圧変換回路から前記第2副電源系への電力供給が停止された場合、前記蓄電池から前記第2副電源系へ電力を供給する請求項1~4の何れか1項に記載の電源制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
単一の主電源の電圧を変換して複数の副電源系に出力する電源装置として、主電源からの直流電圧を降圧して高圧系補機や電動パワーステアリング等が接続された第1副電源系に出力するスイッチング電源回路と、第1副電源系からの直流電圧を降圧して低圧系補機等が接続された第2副電源系に出力する昇降圧チョッパ回路とを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の電源装置では、スイッチング回路におけるトランスの2次側と第1副電源系と第2副電源系とにそれぞれチョークコイルが電力変換器として設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-119257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力変換器を構成するチョークコイル等の磁気部品は、専有面積が大きいことから電源装置を大型化させる。特許文献1に記載の電源装置では、スイッチング回路におけるトランスの2次側と昇降圧チョッパ回路における第1副電源系側のみならず、昇降圧チョッパ回路における第2副電源系側にもチョークコイルが設けられていることにより、装置の大型化が避けられない。
【0005】
ここで、チョークコイルの数を減らすことで電源装置を小型化できるものの、それにより複数の副電源系への電力の安定供給が損なわれることは回避する必要がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、主電源と複数の副電源系とを備える電源装置を小型化できると共に、複数の副電源系へ電力を安定的に供給できる電源制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電源制御装置は、第1電圧により駆動される発熱系電装品が接続された第1副電源系と、前記第1電圧よりも低圧の第2電圧により充電される蓄電池と、前記第2電圧により駆動される低圧系負荷とが接続された第2副電源系と、主電源とを備える電源装置を制御する電源制御装置であって、前記主電源からの電源電圧を降圧して前記第1副電源系と前記第2副電源系とに出力する電圧変換回路と、前記発熱系電装品の負荷が所定の高負荷状態にある場合に、前記電圧変換回路から前記第2副電源系への電力供給を停止し、前記発熱系電装品の負荷が当該所定の高負荷状態から所定の低負荷状態に変移した場合に、前記電圧変換回路から前記第2副電源系へ電力を供給する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1副電源系に接続された発熱系電装品の負荷の状態に応じて、第1副電源系及び第2副電源系への電力供給を制御することにより、電圧変換回路に含まれるチョークコイル等の磁気部品を減らした場合でも、第1副電源系と第2副電源系とに電力を安定的に供給できる。従って、主電源と複数の副電源系とを備える電源装置を小型化できると共に、複数の副電源系へ電力を安定的に供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る電源制御装置を備える電動車両を示す図である。
図2図2は、図1に示すDC/DCコンバータの回路構成を示す図である。
図3図3は、図1及び図2に示す制御器によるDC/DCコンバータの制御を説明するためのタイミングチャートである。
図4図4は、図1及び図2に示す制御器によるDC/DCコンバータの制御を説明するためのタイミングチャートである。
図5図5は、ヒーターの温度と第1及び第2出力系の出力電圧及び出力電流との関係を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、以下に示す実施形態は本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態において、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されることはいうまでもない。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る電源制御装置10を備える電動車両1を示す図である。この図に示すように、電動車両1は、モータMと、電源装置100と、ヒーター5と、低圧系補機7とを備える。電源装置100は、メインバッテリ2と、昇圧コンバータ3と、インバータ4と、サブバッテリ6と、電源制御装置10とを備える。なお、電動車両1は、内燃機関とモータMとを駆動源とするハイブリッド車両であってもよく、モータMのみを駆動源とする電動車両であってもよい。
【0012】
モータMは、車両駆動用であり、メインバッテリ2から供給される電力により駆動される。メインバッテリ2は、後述の副電源系の電圧に比して高電圧(例えば48V)の電力をモータMや後述のDC/DCコンバータ20に供給する高電圧バッテリである。このメインバッテリ2としては、リチウムイオンバッテリ等を例示できる。昇圧コンバータ3は、メインバッテリ2から出力された直流電圧を昇圧してインバータ4に出力する。インバータ4は、昇圧コンバータ3から出力された直流電圧を交流電圧に変換してモータMに出力する。
【0013】
電動装置100は、モータMに給電するための主電源系と、モータMに比して低電圧の負荷に給電するための副電源系とを備える。副電源系は、発熱系電装品としてのヒーター5が負荷として接続された第1副電源系10Aと、ヒーター5に比して低電圧の負荷である低圧系補機7が負荷として接続された第2副電源系10Bとを備える。ヒーター5としては、シートヒーター、デフォッガー、触媒ヒーター等を例示できる。電源制御装置10は、主電源系の電源電圧を降圧して第1副電源系10A及び第2副電源系10Bに出力する。
【0014】
電源制御装置10は、制御器12と、DC/DCコンバータ20とを備える。制御器12は、昇圧コンバータ3、インバータ4、及びDC/DCコンバータ20を制御する。制御器12は、昇圧コンバータ3のスイッチング制御を行う機能と、インバータ4のスイッチング制御を行う機能と、DC/DCコンバータ20のスイッチング制御を行う機能とを備え、相互に通信する複数のECU(Electric Control Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって構成されている。
【0015】
図2は、図1に示すDC/DCコンバータ20の回路構成を示す図である。この図に示すように、DC/DCコンバータ20は、第1スイッチング回路21と、トランス22と、整流回路23と、第2スイッチング回路24とを備える。第1スイッチング回路21は、フルブリッジ方式のスイッチング回路であり、4個のスイッチ211,212,213,214を備える。本実施形態のスイッチ211~214は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。なお、スイッチ211~214は、MOSFET以外の他のトランジスタスイッチであってもよい。スイッチ211,212はハイサイドのスイッチであり、スイッチ213,214はローサイドのスイッチである。スイッチ211とスイッチ213とが直列に接続され、スイッチ212とスイッチ214とが直列に接続されている。
【0016】
トランス22は、一次側コイル221と、二次側コイル222とを備える。一次側コイル221は、第1スイッチング回路21に接続され、二次側コイル222は、整流回路23に接続されている。一次側コイル221の一端は、スイッチ211とスイッチ213とを接続する配線に接続され、一次側コイル221の他端は、スイッチ212とスイッチ214とを接続する配線に接続されている。二次側コイル222の中央に接地線SL1が接続されている。トランス22において電圧が降圧されるように、一次側コイル221と二次側コイル222との巻き数の比が設定されている。
【0017】
第1スイッチング回路21では、スイッチ211,214とスイッチ212,213とが交互にONになるように、スイッチ211~214のPWM制御が行われる。これにより、トランス22の二次側では、フォワード型の交互電圧が発生する。従って、第1スイッチング回路21におけるスイッチ211~214のスイッチング操作により、メインバッテリ2から出力された直流電圧が交流電圧に変換されると共に降圧されて整流回路23に出力される。
【0018】
整流回路23は、ダイオード231と、ダイオード232と、インダクタ233とを備える。ダイオード231のアノードは、二次側コイル222の一端に接続され、ダイオード232のアノードは、二次側コイル222の他端に接続されている。また、ダイオード231のカソードとダイオード232のカソードとは、インダクタ233の一端に接続されている。スイッチ211,214がONの時に、二次側コイル222から出力された交流電力がダイオード232及びインダクタ233により直流電力に整流される。他方で、スイッチ212,213がONの時に、二次側コイル222から出力された交流電力がダイオード231及びインダクタ233により直流電力に整流される。インダクタ233はチョークコイルであり、二次側コイル222から出力された電力が溜まる。
【0019】
第2スイッチング回路24は、単一インダクタ・マルチ出力方式(SIMO:Single Inductor Multi Output)のDC/DCスイッチング電源回路であり、単一のインダクタ233から電圧が相互に異なる2つの電力を出力できる。この第2スイッチング回路24は、第1出力系24Aと、第2出力系24Bとを備える。第1出力系24Aは、第1スイッチ241と、インダクタ243と、コンデンサ244とを備える。また、第2出力系24Bは、第2スイッチ242と、コンデンサ245とを備える。なお、第1出力系24Aがインダクタ243を備えることは必須ではなく、第1出力系24Aがインダクタ243を備えない場合には、DC/DCコンバータ20がより一層小型化する。
【0020】
本実施形態の第1スイッチ241及び第2スイッチ242は、MOSFETである。なお、第1スイッチ241及び第2スイッチ242は、MOSFET以外のトランジスタスイッチであってもよい。第1スイッチ241のドレインと第2スイッチ242のドレインとが相互に接続されると共に、インダクタ233の他端に接続されている。また、第1スイッチ241のソースは、インダクタ243の一端に接続され、第2スイッチ242のソースは、第2電源線SPL2と接地線SL1とに接続されている。
【0021】
インダクタ243の他端は第1電源線SPL1に接続されている。この第1電源線SPL1は、ヒーター5(図1参照)に接続されている。また、コンデンサ244は、第1電源線SPL1と接地線SL1とに接続されている。インダクタ243及びコンデンサ244は、インダクタ233から出力された直流電圧を平滑すると共に第1電圧VL1に変換する。第1電圧VL1は、第1電源線SPL1から第1副電源系10A(図1参照)に出力される。
【0022】
コンデンサ245は、第2電源線SPL2と接地線SL1とに接続されている。このコンデンサ245は、インダクタ233から出力された直流電圧を平滑すると共に第2電圧VL2に変換する。ここで、第2電圧VL2は、第1電圧VL1に比して低電圧であり、第2電源線SPL2から第2副電源系10B(図1参照)に出力される。
【0023】
第2電源線SPL2はサブバッテリ6のプラス端子に接続され、接地線SL1は、サブバッテリ6のマイナス端子に接続されている。サブバッテリ6は、第2出力系24Bから出力される第2電圧VL2の直流電力により充電される。また、低圧系補機7(図1参照)は、第2電源線SPL2に接続されており、第2出力系24B又はサブバッテリ6から出力される直流電力により駆動される。
【0024】
制御器12は、第1スイッチング回路21のスイッチ211~214のPWM制御と、第2スイッチング回路24の第1スイッチ241及び第2スイッチ242のPWM制御とを行う。ここで、制御器12による第1スイッチ241及び第2スイッチ242の制御は、ヒーター5やサブバッテリ6や低圧系補機7の負荷の状態によって異なる。まず、ヒーター5等の負荷が低負荷状態の場合における制御器12による第2スイッチング回路24の第1スイッチ241及び第2スイッチ242の制御について、第1スイッチング回路21のスイッチ211~214の制御と共に説明する。
【0025】
図3は、図1及び図2に示す制御器12によるDC/DCコンバータ20の制御を説明するためのタイミングチャートである。このタイミングチャートに示すように、制御器12は、PWM信号P1~P4によりスイッチ211~214をON/OFFする。スイッチ211をPWM制御するためのPWM信号P1とスイッチ212をPWM制御するためのPWM信号P2とは、一方がONであれば他方がOFFとなる相補関係にある。また、スイッチ213をPWM制御するためのPWM信号P3とスイッチ214をPWM制御するためのPWM信号P4とは、相補関係にある。
【0026】
さらに、第1スイッチング回路21は、位相シフト・フルブリッジ方式のスイッチング回路であり、PWM信号P2,P4は、PWM信号P1,P3に対して位相シフトされる。PWM信号P2,P4とPWM信号P1,P3との位相シフト量PS及びPWM信号P1~P4のデューティ(時比率デューティ)は、フィードバック制御される。例えば、制御器12は、第1出力系24Aから出力された第1電圧VL1の目標値に対する差分と、第2出力系24Bから出力された第2電圧VL2の目標値に対する差分とに基づいて、位相シフト量PS及びデューティを調整する。
【0027】
制御器12は、PWM信号P1がONになった時に一次側コイル221にその一端側(図2の上端側)から電圧Vtを印加し、PWM信号P2がONになった時に一次側コイル221にその他端側(図2の下端側)から電圧Vtを印加する。
【0028】
制御器12は、PWM信号P5,P6により第1スイッチ241及び第2スイッチ242をON/OFFする。第1スイッチ241をPWM制御するためのPWM信号P5と第2スイッチ242をPWM制御するためのPWM信号P6とは、一方がONであれば他方がOFFとなる相補関係にある。PWM信号P5,P6のデューティは、フィードバック制御される。例えば、制御器12は、第2出力系24Bから出力された第2電圧VL2の目標値に対する差分に基づいて、PWM信号P6のデューティを設定し、PWM信号P6のON/OFFを反転させたPWM信号P5を生成する。
【0029】
次に、ヒーター5とサブバッテリ6と低圧系補機7との負荷の状態に応じた制御器12による第2スイッチング回路24の第1スイッチ241及び第2スイッチ242の制御について説明する。
【0030】
図4は、図1及び図2に示す制御器12によるDC/DCコンバータ20の制御を説明するためのタイミングチャートである。このタイミングチャートに示すように、制御器12は、ヒーター5の負荷が所定の高負荷状態にある場合には、第2スイッチ242を連続的にOFFにして第1スイッチ241を連続的にONにする。なお、ヒーター5の負荷の「所定の高負荷状態」としては、ヒーター5がONになって設定温度に向かって昇温している状態を例示できる。また、ヒーター5の負荷の「所定の低負荷状態」としては、ヒーター5の温度が設定温度まで上昇した後に安定している状態を例示できる。
【0031】
図5は、ヒーター5の温度Theaterと第1及び第2電圧VL1,VL2と第1及び第2電流IL1,IL2との関係を示すタイミングチャートである。左側のタイミングチャートは、瞬間的に第1副電源系10A及び第2副電源系10Bが遮断した状態を示している。また、右側のタイミングチャートは、第1副電源系10A及び第2副電源系10Bが一定時間連続して遮断した状態を示している。図中破線で示す第1電流IL1は、第1出力系24Aから出力される電流値であり、図中破線で示す第2電流IL2は、第2出力系24Bから出力される電流値である。
【0032】
左側のタイミングチャートに示すように、第1副電源系10Aが瞬間的に遮断した場合、ヒーター5は、自身の熱容量が十分に大きいことから、瞬時に温度低下を起こすということはない。即ち、ヒーター5は、瞬間的な電源遮断に対して、異常動作を起こさず、温度Theaterを維持する。また、右側のタイミングチャートに示すように、第1副電源系10Aが一定時間連続して遮断された場合でも、ヒーター5は、自身の熱容量の大きさに応じて、しばらくの間は、温度Theaterを維持する。
【0033】
即ち、第1出力系24Aからヒーター5への電力供給は、ヒーター5の負荷が高負荷状態にあるときは連続的に行う必要があるものの、ヒーター5の負荷が低負荷状態にあるときは長時間でなければ停止することも可能である。そこで、第1出力系24Aと第2出力系24Bとの出力を安定させることを目的として、図4のタイミングチャートに示すように、制御器12は、第1出力系24Aから第1副電源系10Aへの出力と第2出力系24Bから第2副電源系10Bへの出力とを制御する。
【0034】
制御器12は、ヒーター5の負荷が高負荷状態にあるか低負荷状態にあるかを、ヒーター5をON/OFFしたり温度を昇降したりする制御信号に基づいて判断する。例えば、制御器12は、ヒーター5をONにする制御信号を受信した後の所定時間、ヒーター5の負荷を高負荷状態と判断する。あるいは、制御器12は、ヒーター5の負荷が高負荷状態にあるか低負荷状態にあるかを、ヒーター5に出力される電圧に基づいて判断する。
【0035】
制御器12は、第2副電源系10Bに接続されたサブバッテリ6や低圧系補機7等の負荷が高負荷状態にあるか低負荷状態にあるかを、サブバッテリ6を充電する制御信号や低圧系補機7をONにする制御信号に基づいて判断する。例えば、制御器12は、サブバッテリ6を充電する制御信号を受信した後の所定時間、サブバッテリ6の負荷を高負荷状態と判断する。あるいは、制御器12は、サブバッテリ6の負荷が高負荷状態にあるか低負荷状態にあるかを、サブバッテリ6の電圧Vsubに基づいて判断する。
【0036】
まず、期間T1では、ヒーター5はOFFであり、ヒーター5の負荷は低負荷状態である。また、サブバッテリ6の充電率も十分に高く、低圧系補機7の負荷も低負荷状態である。この期間T1では、第1出力系24A及び第2出力系24Bは低出力である。
【0037】
次に、ヒーター5がONになってから設定温度まで昇温する期間T2では、制御器12は、第1スイッチ241をON、第2スイッチ242をOFFにして、第1出力系24Aからヒーター5への電力供給を連続的に行い、第2出力系24Bから第2副電源系10Bへの電力供給を遮断する。この期間T2では、サブバッテリ6により第2副電源系10Bの第2電圧VL2が維持される。
【0038】
次に、ヒーター5の温度Theaterが設定温度まで上昇した後に安定している期間T3では、制御器12は、第1スイッチ241をON、第2スイッチ242をONにする。この期間T3では、ヒーター5の負荷が低負荷状態になることから、第1出力系24Aからヒーター5への出力を低出力にすると共に、第2出力系24Bからサブバッテリ6及び低圧系補機7への電力供給を再開する。
【0039】
次に、例えば、サブバッテリ6の充電が行われる等、第2副電源系10Bに接続された負荷が高負荷状態になる期間T4では、制御器12は、第1スイッチ241をOFF、第2スイッチ242をONにする。この期間T4では、第1出力系24Aからヒーター5への電力供給を停止すると共に、第2出力系24Bの出力を高出力にする。この期間T4では、ヒーター5は、自身の熱容量により安定的に動作する。
【0040】
次に、第2副電源系10Bに接続された負荷が低負荷状態になる期間T5では、制御器12は、第1スイッチ241をON、第2スイッチ242をONにする。この期間T5では、第1出力系24Aからの出力と第2出力系24Bからの出力とを共に低出力にすることにより、ヒーター5の温度Theaterを設定温度に維持すると共に、サブバッテリ6の電圧Vsubを一定に維持し、また、低圧系補機7を正常に動作させる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の電源制御装置10では、単一インダクタ・マルチ出力方式の第2スイッチング回路24を用いることにより、DC/DCコンバータ20に含まれるチョークコイル等の磁気部品を減らし、DC/DCコンバータ20を小型化している。そのうえで、本実施形態の電源制御装置10によれば、第1副電源系10Aに接続されたヒーター5の負荷の状態に応じて、第1副電源系10A及び第2副電源系10Bへの電力供給を制御する。これにより、要求負荷を抑えることができるので、メインバッテリ2に要求される出力容量を抑えたうえで、第1副電源系10A及び第2副電源系10Bに電力を安定的に供給できる。従って、メインバッテリ2と電源制御装置10との双方の小型化により、電源装置100を小型化できると共に、第1及び第2副電源系10A,10Bへ電力を安定的に供給できる。
【0042】
ここで、ヒーター5の負荷が所定の高負荷状態から所定の低負荷状態に変移した場合、ヒーター5は、供給電力が減少したり遮断したりした場合でも、自身の熱容量により温度Theaterを維持する。このため、ヒーター5の負荷が所定の高負荷状態から所定の低負荷状態に変移した場合に、第2副電源系10Bへの電力供給を再開したり、第1副電源系10Aへの電力供給を遮断したりする本実施形態の制御によれば、ヒーター5を支障なく機能させたうえで、第2副電源系10Bに接続されたサブバッテリ6の充電と低圧系補機7の駆動とを正常に実施できる。
【0043】
また、ヒーター5の負荷が所定の高負荷状態にある場合に第2副電源系10Bへの電力供給を遮断している間は、サブバッテリ6から低圧系補機7に電力を供給することにより、低圧系補機7を駆動させることができる。
【0044】
また、単一インダクタ・マルチ出力方式の第2スイッチング回路24において、ヒーター5の負荷が所定の高負荷状態にある場合、第2スイッチ242を連続的にOFFにすることにより、第2副電源系10Bへの電力供給を遮断でき、サブバッテリ6及び低圧系補機7の少なくとも一方の負荷が所定の高負荷状態にある場合、第1スイッチ241を連続的にOFFにすることにより、第1副電源系10Aへの電力供給を遮断できる。
【0045】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態に変更を加えてもよいし、適宜公知や周知の技術を組み合わせる等してもよい。
【0046】
例えば、上記実施形態では、第2スイッチング回路24をSIMO方式のスイッチング回路としたが、同様の機能を有するスイッチング回路に代えてもよい。また、上記実施形態では、第1スイッチング回路21をフルブリッジ方式のスイッチング回路としたが、同様の機能を有するスイッチング回路に代えてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 :電動車両
2 :メインバッテリ(主電源)
5 :ヒーター(発熱系電装品)
6 :サブバッテリ(蓄電池)
7 :低圧系補機(低圧系負荷)
10 :電源制御装置
10A :第1副電源系
10B :第2副電源系
12 :制御器(制御部)
20 :DC/DCコンバータ(電圧変換回路)
21 :第1スイッチング回路
211~214:スイッチ(スイッチング素子)
22 :トランス
233 :インダクタ
24 :第2スイッチング回路
241 :第1スイッチ
242 :第2スイッチ
100 :電源装置
VL1 :第1電圧
VL2 :第2電圧
図1
図2
図3
図4
図5