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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】射出装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/74 20060101AFI20221206BHJP
   B29C 45/18 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B29C45/74
B29C45/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020540043
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2019013495
(87)【国際公開番号】W WO2020044642
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2018159954
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 勇一
(72)【発明者】
【氏名】内藤 七重
(72)【発明者】
【氏名】新井 啓太
(72)【発明者】
【氏名】依田 穂積
(72)【発明者】
【氏名】村田 博文
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-315337(JP,A)
【文献】特開平05-269811(JP,A)
【文献】特開2005-186593(JP,A)
【文献】実開昭62-200418(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱筒と、この加熱筒に回転可能で且つ軸方向移動可能に収納されるスクリューと、前記加熱筒を支える射出台と、前記加熱筒へ樹脂材料を供給する材料供給部とを備える射出装置であり、
前記材料供給部と前記加熱筒との間に、前記材料供給部から前記加熱筒へ前記樹脂材料を導入する材料導入部材が置かれ、
この材料導入部材は、温度調節された熱媒体を流す第1熱媒体通路を有すると共に前記射出台に設けられた縦穴部に上から挿入され、
前記材料導入部材は、前記縦穴部に沿って延びる筒部を有し、
前記筒部の外周面と前記縦穴部の面との間に所定厚さの断熱空気層が確保され、前記筒部の下部が前記加熱筒に接している射出装置において、
前記射出台は、前壁部と後壁部を有する箱体であり、
前記加熱筒の尾部が、前記前壁部と前記後壁部で支持され、前記前壁部と前記後壁部の間の空間にて、前記加熱筒の尾部に温度検出体と、ヒータと、冷却ジャケットとが取付けられている射出装置。
【請求項2】
請求項1記載の射出装置であって、
前記射出台は鋳物であり、前記材料導入部材は金属ブロックから削りだした切削加工品であり、この切削加工品に前記断熱空気層を確保する凹部が形成されている射出装置。
【請求項3】
請求項1記載の射出装置であって、
前記射出台は、温度調節された熱媒体を流す第2熱媒体通路を有する射出装置。
【請求項4】
請求項記載の射出装置であって、
前記加熱筒の尾部は、前記射出台よりも熱伝導率の低い部品を介在させつつ前記後壁部で支持され、
前記加熱筒の尾部は、ボルト穴を有するリング部材を介して前記前壁部にボルト締結され、且つ前記リング部材と前記前壁部の間に断熱材が挟まれていることを特徴とする射出装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項記載の射出装置であって、
前記筒部は上部にフランジ部を備え、このフランジ部と前記射出台の間に、前記射出台よりも熱伝導率の低いガスケットが挟まれている射出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料を金型のキャビティへ射出する射出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形装置は、金型を型締めする型締装置と、型締めされた金型へ樹脂材料を射出する射出装置とで構成される。
射出装置の要部は、加熱筒とスクリューとホッパである。樹脂材料は、ホッパから加熱筒へ導入され、スクリューで混練され、可塑化され、スクリューの軸方向移動により射出される。
【0003】
近年、予熱された樹脂材料がホッパに供給されるようになってきた。予熱された樹脂材料が、ホッパから加熱筒へ導入される過程で冷却されることは好ましくない。
そこで、導入過程で、樹脂材料を適温に保つことができる射出装置が提案されてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示される射出装置の要部を、図9に基づいて説明する。
図9に示されるように、機台101に、横移動可能に支持台102が載せられている。
一方、スクリュー103を有する加熱筒104の尾部に供給ブロック105が嵌合されている。この供給ブロック105は、ボルトで支持台102に固定される。
【0005】
供給ブロック105と支持台102の間に、断熱材106が挟まれている。
その上、供給ブロック105は温調流路107を有している。この温調流路107に適温の熱媒体が流されることにより、供給ブロック105は所定の温度に保たれる。樹脂材料が落下口108を通過するが、この通過の過程で樹脂材料は適温に保たれる。
【0006】
ところで、支持台102の温度は、雰囲気温度に近似する。そのため、冬期は支持台102は低温となる。
断熱材106は、断熱性能に優れてはいるものの、ある程度の熱は通す。しかも、通過する熱量は、断熱材106の面積に比例する。加えて、供給ブロック105の熱は、ボルトを通じて盛んに支持台102へ流れる。
【0007】
結果として、供給ブロック105は支持台102で冷やされ、供給ブロック105の温度管理が難しくなる。
温度管理が従来よりも厳しく要求される現在及び将来において、特許文献1の技術よりも優れた断熱性能を発揮する射出装置が、望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-160681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、予熱された樹脂材料により適した射出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、加熱筒と、この加熱筒に回転可能で且つ軸方向移動可能に収納されるスクリューと、前記加熱筒を支える射出台と、前記加熱筒へ樹脂材料を供給する材料供給部とを備える射出装置であり、
前記材料供給部と前記加熱筒との間に、前記材料供給部から前記加熱筒へ前記樹脂材料を導入する材料導入部材が置かれ、
この材料導入部材は、温度調節された熱媒体を流す第1熱媒体通路を有すると共に前記射出台に設けられた縦穴部に上から挿入され、
前記材料導入部材は、前記縦穴部に沿って延びる筒部を有し、
前記筒部の外周面と前記縦穴部の面との間に所定厚さの断熱空気層が確保され、前記筒部の下部が前記加熱筒に接している射出装置において、
前記射出台は、前壁部と後壁部を有する箱体であり、
前記加熱筒の尾部が、前記前壁部と前記後壁部で支持され、前記前壁部と前記後壁部の間の空間にて、前記加熱筒の尾部に温度検出体と、ヒータと、冷却ジャケットとが取付けられている。
【0011】
請求項2に係る発明は、好ましくは、請求項1記載の射出装置であって、
前記射出台は鋳物であり、前記材料導入部材は金属ブロックから削りだした切削加工品であり、この切削加工品に前記断熱空気層を確保する凹部が形成されている。
【0012】
請求項3に係る発明は、好ましくは、請求項1記載の射出装置であって、
前記射出台は、温度調節された熱媒体を流す第2熱媒体通路を有する。
【0014】
請求項に係る発明は、好ましくは、請求項記載の射出装置であって、
前記加熱筒の尾部は、前記射出台よりも熱伝導率の低い部品を介在させつつ前記後壁部で支持され、
前記加熱筒の尾部は、ボルト穴を有するリング部材を介して前記前壁部にボルト締結され、且つ前記リング部材と前記前壁部の間に断熱材が挟まれている。
【0015】
請求項に係る発明は、好ましくは、請求項1~のいずれか1項記載の射出装置であって、
前記筒部は上部にフランジ部を備え、このフランジ部と前記射出台の間に、前記射出台よりも熱伝導率の低いガスケットが挟まれている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、材料導入部材は、筒部を主要素とし、筒部は断熱空気層で射出台と分離され、筒部の下部は加熱筒に接している。
射出台と材料導入部材とにおいて、材料導入部材は殆どが射出台から分離されている。分離されているため、材料導入部材は射出台の熱の影響を殆ど受けない。結果、材料導入部材は適正な温度に容易に維持される。その上、材料導入部材は、筒部の下部で加熱筒に接しているため、加熱筒との熱の授受を積極的に行う。
よって、本発明によれば、予熱された樹脂材料により適した射出装置が提供される。
加えて、請求項1に係る発明では、射出台は箱体である。
箱体であるため、射出台の熱マスを小さくすることができる。
箱体であるため、射出台は、剛性を維持しつつ、軽量化が図れる。加えて、箱体の上部開口から温度検出体、ヒータ、冷却ジャケットを出し入れすることができるため、これらの保守、点検が容易になる。
【0017】
請求項2に係る発明では、材料導入部材は金属ブロックから削りだした切削加工品であり、この切削加工品に断熱空気層を確保する凹部が形成されている。切削加工品には凹部を容易に形成することができる。一方、射出台は鋳物であるが、複雑な機械加工を材料導入部材に集中することで、射出台に複雑な機械加工を施す必要がなくなる。
【0018】
請求項3に係る発明では、射出台は、温度調節された熱媒体を流す第2熱媒体通路を有する。熱マス(熱容量)の大きな射出台を温度制御することで、材料導入部材への熱影響を更に減らすことができる。
【0020】
請求項に係る発明では、加熱筒の尾部は、射出台よりも熱伝導率の低い部品を介在させつつ射出台の後壁部で支持されている。且つリング部材と射出台の前壁部の間に断熱材が挟まれている。
熱伝導率の低い部品と断熱材とで、加熱筒と射出台との間の断熱を図ることができる。
【0021】
請求項に係る発明では、フランジ部と射出台の間に、熱伝導率の低いガスケットが挟まれている。ガスケットで、材料導入部材と射出台との間の断熱を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】射出成形装置の側面図である。
図2】本発明に係る射出装置の要部を拡大した断面図である。
図3】材料導入部材の斜視図である。
図4】射出台の斜視図である。
図5図2の5a-5a線断面図である。
図6】射出台の作用を説明する図である。
図7】別の形態の材料供給部を説明する図である。
図8】別の形態の材料導入部材を説明する図である。
図9】従来の射出装置の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例
【0024】
図1に示されるように、射出成形装置10は、型締装置11と、射出装置20と、型締装置11及び射出装置20を支えるベッド12とを主要部とする装置である。
型締装置11は、金型13を型締めする装置であり、作図の関係で一部(固定盤14)だけを示した。
【0025】
射出装置20は、ベッド12に敷設されたレール21に支持される移動台22で、水平移動可能に支持されている。例えば、移動台22と型締装置11側の固定盤14とに渡された射出装置移動シリンダ23によって、ノズル24が、金型13にタッチする位置から金型13から十分に離れた位置(図の位置)までの間、往復移動される。
射出装置移動シリンダ23は、液圧シリンダや電動シリンダが採用できる。
【0026】
射出装置20は、移動台22で支持される射出台50と、この射出台50で支持される加熱筒27と、この加熱筒27へ樹脂材料を供給する材料供給部28と、加熱筒27に回転可能で且つ軸方向移動可能に収納されるスクリュー29と、射出台50に取付けられたスクリュー移動シリンダ31と、このスクリュー移動シリンダ31のピストンロッド32で支持される移動板33と、この移動板33で支持されスクリュー29を回転するスクリュー回転機構34とからなる。
【0027】
材料供給部28は、例えばホッパ38である。
スクリュー移動シリンダ31は、液圧シリンダや電動シリンダが採用できる。
スクリュー回転機構34は、電動モータや油圧モータが採用できる。
【0028】
可塑化・計量工程:スクリュー回転機構34でスクリュー29を所定方向へ回転しつつ、材料供給部28から加熱筒27へ樹脂材料を供給する。樹脂材料はスクリュー29の第1溝29a及びこの第1溝29aに続く溝に沿ってノズル24近傍まで加熱筒27内を移動する。この移動の際に樹脂材料は可塑化され、可塑化された樹脂材料が加熱筒27の前部に溜まる。この溜まった樹脂材料の反力でスクリュー29は後退(ノズル24から離れるように移動)する。スクリュー29が所定位置まで後退すると、スクリュー29の回転を停止する。以上により、可塑化と計量がなされる。
【0029】
射出工程:ノズル24を金型13にタッチした状態で、スクリュー移動シリンダ31により、スクリュー29を前進させる。この前進により、樹脂材料がノズル24を介して金型13へ射出される。
【0030】
本発明では、材料供給部28と加熱筒27との間に、材料供給部28から加熱筒27へ樹脂材料を導入する材料導入部材40を置いた。
図2に示されるように、材料導入部材40は、射出台50に載せられると共に材料供給部(図1、符号28)を支持するフランジ部41と、このフランジ部41から下に延びる筒部42と、この筒部42の下端から張り出し加熱筒27に接触する鍔部43とを有する。
【0031】
加熱筒27は、箱体である射出台50の前壁部51に、ボルト穴35を有するリング部材36及びボルト37を用いて固定される。また、加熱筒27は、射出台50の後壁部52に、L字断面の部品53及びボルト54を用いて固定される。
L字断面の部品53は、射出台50よりも熱伝導率の低い部品であればよく、断面形状はL字断面の他、任意に変更することができる。
【0032】
図3に示されるように、材料導入部材40は、フランジ部41と、筒部42と、鍔部43とを有し、この鍔部43とフランジ部41との間に、縦長の凹部44が形成されている。図では省略したが、フランジ部41に材料供給部(図1、符号28)を固定するためのボルト穴やねじ穴を設けることは差し支えない。
【0033】
さらには、材料導入部材40は、温度調節された熱媒体を流す第1熱媒体通路45を有する。例えば第1熱媒体通路45は、左通路45L(Lは左を示す添え字)と右通路45R(Rは右を示す添え字)とからなる。
【0034】
左通路45L及び右通路45Rは、各々、フランジ部41に設けられる媒体入口45aと、筒部42を流下する流下通路45bと、鍔部43に設けられる横通路45cと、筒部42を上昇する上昇通路45dと、フランジ部41に設けられる媒体出口45fとからなる。なお、入口と出口を入れ換えることや、通路の構造を適宜変更することは、差し支えない。
このような第1熱媒体通路45により、材料導入部材40は、温度調節された熱媒体とほぼ等しい温度に保たれる。
【0035】
材料導入部材40は、構造が複雑であるため、金属ブロックから削りだした切削加工品とする。この切削加工品に断熱空気層を形成するための凹部44を切削により形成する。
金属ブロックは、安価な炭素鋼ブロックが好適であるが、耐食性を要求される場合は、耐食性を有する金属からなるブロックとする。または、炭素鋼ブロックから削りだした切削加工品にめっきを施して耐食性を高めてもよい。よって、金属の種類は格別に限定されない。
【0036】
図4に示されるように、射出台50は、前壁部51と、この前壁部51から後ろへ延びる左右の側壁部55L、55Rと、これら左右の側壁部55L、55Rの後端同士を繋ぐ後壁部52と、底部56とを有する有底箱体である。有底箱体は、剛性に富むため推奨される。しかし、射出台50は、底なしの箱体であってもよい。
前壁部51に、材料導入部材(図3、符号40)を上から挿入する縦穴部57と、加熱筒(図2、符号27)を横から挿入する横穴部58とを有する。
【0037】
さらに、射出台50は、温度調節された熱媒体を流す第2熱媒体通路59を有する。
第2熱媒体通路59は、例えば、前壁部51に設けられた媒体入口59a、流下通路59b、横通路59c及び上昇通路59dと、一方の側壁部55Rに設けられた横通路59eと、後壁部52に設けられた流下通路59f、横通路59g、上昇通路59h及び媒体出口59iとからなる。なお、入口と出口を入れ換えることや、通路の構造を適宜変更することは、差し支えない。
このような第2熱媒体通路59により、射出台50は、温度調節された熱媒体とほぼ等しい温度に保たれる。
【0038】
射出台50は、構造が単純であるため、鋳物(鋳鋼を含む。)とすることができる。図3で説明した材料導入部材40に凹部44を切削加工するなど、複雑な機械加工を材料導入部材40に集中することにより、射出台50に施す機械加工を少なくしたとも言える。
【0039】
図5(a)に示されるように、加熱筒27の尾部27aに、熱電対などの温度検出体61と、ヒータ62と、冷却ジャケット63が取付けられている。
図5(b)に示されるように、冷却ジャケット63は、半月断面の中空体であり、内部が壁で仕切られている。加熱筒27の尾部27aに、2個の冷却ジャケット63を当て、それらの外面をヒータ62で覆い、ヒータ62をボルト64で加熱筒27に固定する。これらの作業は、図4に示される上部開口を用いて、実施することができる。
【0040】
図2に示されるように、射出工程完了時には、スクリュー29の第1溝29aは、材料導入部材40の真下にある。一方、可塑化・計量工程完了時には、スクリュー29の第1溝29aは、前壁部51と後壁部52の間に位置する。
【0041】
仮に、ヒータ62に通電しなければ、可塑化・計量工程完了時にスクリュー29の第1溝29a付近は、低温の射出台50で冷却され、低温になる。
低温の第1溝29aが、射出工程完了時に材料導入部材40の真下に到達し、この位置で樹脂材料を受ける。樹脂材料は予熱されているにも拘わらず、低温の第1溝29a付近で冷やされ、可塑化不足が生じる。
【0042】
対して、本発明により、ヒータ62に通電することにより、前壁部51と後壁部52の間に位置する第1溝29a付近を適温まで温めることができる。結果、予熱された樹脂材料は、その温度を保ったままで第1溝29aを通過する。
【0043】
ヒータ62で連続運転時の温度制御を実施する。連続運転停止時(生産終了時や異常停止時等)に冷却ジャケット63へ冷媒を供給する。目標温度は変更可能である。
【0044】
図6に示されるように、リング部材36と射出台50との間に断熱材66を挟めることが望ましい。また、材料導入部材40のフランジ部41と射出台50との間にガスケット67を挟めることが望ましい。断熱材66、ガスケット67及びその他の構成要素の熱伝導率を次に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
射出台50の熱伝導率は、35W/mKである。
L字断面の部品53の熱伝導率は、16W/mKであって、射出台50の熱伝導率より低い。
断熱材66の熱伝導率は、0.3W/mKであって、射出台50の熱伝導率より十分に低い。
ガスケット67の熱伝導率は、16W/mKであって、射出台50の熱伝導率より低い。
【0047】
主要部材の温度の例を、次に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
加熱筒27は、樹脂材料の種類により、設定温度が変更されるが、例えば200℃である。
射出台50の温度は、例えば30℃である。
材料導入部材40の温度は、例えば60℃である。
【0050】
図6において、加熱筒27→射出台50の伝熱(熱移動)と、材料導入部材40→射出台50の伝熱と、加熱筒27→材料導入部材40の伝熱とを検討する。
・加熱筒27→射出台50の伝熱:
主たる熱伝導部は、第1熱伝導部71(加熱筒27側のリング部材36と射出台50の前壁部51との間)及び第2熱伝導部72(加熱筒27とL字断面の部品53との間)である。
【0051】
熱伝導量は、熱伝導率に一次比例する。第1熱伝導部71の要部である断熱材66の熱伝導率がごく小さく、また、第2熱伝導部72の要部であるL字断面の部品53の熱伝導率は射出台50の熱伝導率の半分以下である。
結果、加熱筒27→射出台50の伝熱は僅かであり、射出台50によって、加熱筒27が冷却されることはなく、冷却されるとしても僅かである。
【0052】
・材料導入部材40→射出台50の伝熱:
前壁部51の縦穴部57の面57aと材料導入部材40の筒部42の外周面42aとの間は、所定厚さの断熱空気層68で分離されている。分離されているため空気対流による熱伝達は発生するものの、熱伝導は発生しない。なお、断熱空気層68の所定厚さは、射出装置20の大きさに対応して適宜設定されるが、5mm~15mmの範囲が好適である。
【0053】
熱伝達は、断熱空気層68を空気が循環することで発生する。固体から固体へ直接伝熱する熱伝導に比較して、循環する空気が熱キャリアとなる熱伝達での伝熱量は格段に小さい。
そのため、材料導入部材40→射出台50の伝熱における主たる熱伝導部は、第3熱伝導部73(材料導入部材40のフランジ部41と射出台50の前壁部51との間)だけとなる。
【0054】
第3熱伝導部73の要部であるガスケット67の熱伝導率は射出台50の熱伝導率の半分未満である。
結果、材料導入部材40→射出台50の伝熱は僅かであり、射出台50によって、材料導入部材40が冷却されることはなく、冷却されるとしても僅かである。
【0055】
・加熱筒27→材料導入部材40の伝熱:
主たる熱伝導部は、第4熱伝導部74(加熱筒27と材料導入部材40の鍔部43との間)だけである。
例えば、加熱筒27が200℃で材料導入部材40が60℃であれば、加熱筒27から第4熱伝導部74を通じて鍔部43に伝熱される。結果、材料導入部材40は加熱筒27の温度に近づく。
【0056】
以上に述べたように、材料導入部材40と射出台50との間に設けた断熱空気層68の断熱作用により、材料導入部材40が射出台50で冷却される心配がなく、冷却されても軽微であるため、材料導入部材40は、所定の温度に保たれ、予熱された樹脂材料が適温のまま加熱筒27へ導入される。
【0057】
なお、実施例では、射出台50に第2熱媒体通路59を設け、これに温度調節された熱媒体を流して、30℃程度に保つようにしたが、構造の簡略化及びコストダウンを目的に、第2熱媒体通路59を省くことは差し支えない。
ただし、加熱筒27から熱を受けて、射出台50が徐々に高温になることがある。射出台50の温度が変化すると、加熱筒27及び材料導入部材40の温度制御に悪影響を及ぼす。
実施例のように、射出台50に第2熱媒体通路59を設け、これに温度調節された熱媒体を流すようにすれば、加熱筒27及び材料導入部材40の温度制御を良好に実施することができる。
【0058】
次に、本発明に係る変更例を説明する。
図7において、図1と共通する構成要素には、図1の符号を流用し、詳しい説明は省略する。
【0059】
図7に示されるように、材料供給部28は、筒状のジョイント部76であってもよい。このジョイント部76は、予熱材料輸送管77を介して、予熱機能付きホッパ78に接続される。予熱機能付きホッパ78で予熱された樹脂材料は、予熱材料輸送管77及びジョイント部76を介して材料導入部材40へ供給される。
【0060】
材料供給部28は、ホッパ(図1、符号38)の他、ジョイント部76でもよく、その形態及び構造は任意であり、格別に限定されるものではない。
【0061】
図8において、図2と共通する構成要素には、図2の符号を流用し、詳しい説明は省略する。
図8(a)に示されるように、材料導入部材40は、図2で説明したフランジ部41が省かれ、全てが縦穴部57に収納される。結果、射出台50の前壁部51に材料供給部28を直に載せることができる。なお、筒部42の上部に第2鍔部46を設け、前壁部51から延ばしたボルト(例えば、六角穴付きボルト)47で第2鍔部46を支えるようにしてもよい。
【0062】
また、図8(b)に示されるように、材料導入部材40は、図2で説明した鍔部43を省いてもよい。この場合、材料導入部材40は、縦穴部57に沿って延びる筒部42と、この筒部42の上部に一体形成されるフランジ部41とからなる。筒部42の下部42bが、加熱筒27に直に接している。なお、縦穴部57に沿って延びる筒部42とは、縦穴部57の長手軸に筒部42の長手中心軸が合致していることを意味する。
【0063】
また、図8(c)に示されるように、材料導入部材40は、縦穴部57に沿って延びる筒部42だけで構成してもよい。この場合は、射出台50の前壁部51側に凹部44を設けることにより、断熱空気層68を確保する。単なる筒状の材料導入部材40は、加熱筒27で支え、上へ膨張させるようにしてもよい。
【0064】
以上に述べたように、材料導入部材40は、縦穴部57に沿って延びる筒部42は必須要素であるが、この筒部42に、鍔部43、第2鍔部46及び/又はフランジ部41を付設するか否かは任意である。
また、断熱空気層68を確保するために設ける凹部44は、材料導入部材40と前壁部51の一方に形成する他、材料導入部材40と前壁部51の両方に形成してもよい。両方に形成すると、各々の凹部44の深さが半分になる。
【0065】
尚、本発明の射出装置20は、射出軸が水平である横型射出成形装置と、射出軸が鉛直である竪型射出成形装置のいずれにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、予熱された樹脂材料を扱う射出装置に好適である。
【符号の説明】
【0067】
20…射出装置、27…加熱筒、27a…加熱筒の尾部、28…材料供給部、29…スクリュー、35…ボルト穴、36…リング部材、37…ボルト、40…材料導入部材、41…フランジ部、42…筒部、42a…筒部の外周面、42b…筒部の下部、44…凹部、45…第1熱媒体通路、50…射出台、51…前壁部、52…後壁部、53…射出台よりも熱伝導率の低い部品(L字断面の部品)、57…縦穴部、57a…縦穴部の面、59…第2熱媒体通路、61…温度検出体、62…ヒータ、63…冷却ジャケット、66…断熱材、67…ガスケット、68…断熱空気層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9