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特許7189232光配向性共重合体、バインダー組成物、バインダー層、光学積層体および画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】光配向性共重合体、バインダー組成物、バインダー層、光学積層体および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/30 20060101AFI20221206BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20221206BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20221206BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20221206BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20221206BHJP
   C08F 220/32 20060101ALI20221206BHJP
   C08F 220/22 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C08F220/30
C08F220/26
G02F1/1337 520
G02F1/13363
G02B5/30
C08F220/32
C08F220/22
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020558403
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2019045171
(87)【国際公開番号】W WO2020110818
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2018222267
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】野副 寛
(72)【発明者】
【氏名】飯泉 隆史
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】西川 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】中川 一茂
(72)【発明者】
【氏名】渥美 匡広
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-016116(JP,A)
【文献】国際公開第2018/173727(WO,A1)
【文献】特表2015-527459(JP,A)
【文献】国際公開第2015/199052(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 251/00-283/00
C08F 6/00-246/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光配向性基を含む繰り返し単位Aと、
光、熱、酸および塩基からなる群から選択される少なくとも1種の作用により架橋反応を生起する架橋性基を含む繰り返し単位Bと、
光、熱、酸および塩基からなる群から選択される少なくとも1種の作用により分解して極性基を生じる開裂基を含む繰り返し単位Cと、を有する光配向性共重合体であって、
前記繰り返し単位Cが、側鎖に前記開裂基を有し、かつ、前記側鎖の前記開裂基よりも末端側にフッ素原子を有し、
前記繰り返し単位Aが、下記式(A)で表される繰り返し単位であり、
前記繰り返し単位Bが、下記式(B)で表される繰り返し単位であり、
前記繰り返し単位Cが、下記式(C1)で表される繰り返し単位であり、
前記繰り返し単位Aの含有量aと、前記繰り返し単位Bの含有量bと、前記繰り返し単位Cの含有量cとの合計に対する各繰り返し単位の含有量が、質量比で下記式(W1)~(W3)を満たす、光配向性共重合体。
0.03 ≦ a/(a+b+c) ≦ 0.75 ・・・(W1)
0.20 ≦ b/(a+b+c) ≦ 0.90 ・・・(W2)
0.03 ≦ c/(a+b+c) ≦ 0.70 ・・・(W3)
【化1】
前記式(A)中、R は、水素原子またはメチル基を表し、L は、2価の連結基を表す。R 、R 、R 、R およびR は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、R 、R 、R 、R およびR のうち、隣接する2つの基が結合して環を形成していてもよい。
【化2】
前記式(B)中、R は、水素原子またはメチル基を表し、L は、2価の連結基を表し、Xは、前記架橋性基であって、下記式(X1)~(X4)からなる群から選択される少なくとも1種の架橋性基を表し、
【化3】
前記式(X1)~(X4)中、*は、前記式(B)中のL との結合位置を表し、R は、水素原子、メチル基およびエチル基のいずれかを表し、前記式(X4)中、Sは、エチレン性不飽和二重結合を有する官能基を表す。
【化4】
前記式(C1)中、R 11 は、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、複数のR 11 は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。X 11 およびX 12 は、それぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表し、RKは、前記開裂基を表し、RLは、フッ素原子を含む1価の有機基を表す。
【請求項2】
前記繰り返し単位Aの含有量aと、前記繰り返し単位Bの含有量bと、前記繰り返し単位Cの含有量cとの合計に対する各繰り返し単位の含有量が、質量比で下記式(W4)~(W6)を満たす、請求項1に記載の光配向性共重合体。
0.03 ≦ a/(a+b+c) ≦ 0.45 ・・・(W4)
0.45 ≦ b/(a+b+c) ≦ 0.90 ・・・(W5)
0.03 ≦ c/(a+b+c) ≦ 0.50 ・・・(W6)
【請求項3】
前記繰り返し単位Aの含有量aと、前記繰り返し単位Bの含有量bと、前記繰り返し単位Cの含有量cとの合計に対する各繰り返し単位の含有量が、質量比で下記式(W7)~(W9)を満たす、請求項1に記載の光配向性共重合体。
0.03 ≦ a/(a+b+c) ≦ 0.40 ・・・(W7)
0.55 ≦ b/(a+b+c) ≦ 0.90 ・・・(W8)
0.03 ≦ c/(a+b+c) ≦ 0.40 ・・・(W9)
【請求項4】
前記繰り返し単位Aの含有量aと、前記繰り返し単位Bの含有量bと、前記繰り返し単位Cの含有量cとの合計に対する各繰り返し単位の含有量が、質量比で下記式(W10)~(W12)を満たす、請求項1に記載の光配向性共重合体。
0.03 ≦ a/(a+b+c) ≦ 0.20 ・・・(W10)
0.60 ≦ b/(a+b+c) ≦ 0.80 ・・・(W11)
0.15 ≦ c/(a+b+c) ≦ 0.35 ・・・(W12)
【請求項5】
前記式(C1)中のRKが、下記式(rk-1)~(rk-13)のいずれかで表される開裂基である、請求項1~4のいずれか1項に記載の光配向性共重合体。
【化5】
ここで、前記式(rk-1)~(rk-13)中、*1は、前記式(C1)中のX11およびX12のいずれか一方との結合位置を表し、*2は、前記式(C1)中のX11およびX12のうち前記*1と結合していない側との結合位置を表し、Rは、それぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表す。
【請求項6】
前記式(A)中のLが、窒素原子とシクロアルカン環とを含む2価の連結基を表し、前記シクロアルカン環を構成する炭素原子の一部が、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択されるヘテロ原子で置換されていてもよい、請求項1~5のいずれか1項に記載の光配向性共重合体。
【請求項7】
前記式(A)中のLが、下記式(1)~(10)のいずれかで表される2価の連結基である、請求項に記載の光配向性共重合体。
【化6】
前記式(1)~(10)中、*1は、前記式(A)中の主鎖を構成する炭素原子との結合位置を表し、*2は、前記式(A)中のカルボニル基を構成する炭素原子との結合位置を表す。
【請求項8】
前記式(A)中のLが、前記式(2)、(3)、(7)および(8)のいずれかで表される2価の連結基である、請求項に記載の光配向性共重合体。
【請求項9】
前記式(A)中のR、R、R、RおよびRのうち、少なくともRが置換基を表す、請求項のいずれか1項に記載の光配向性共重合体。
【請求項10】
前記式(A)中のR、R、RおよびRがいずれも水素原子を表す、請求項に記載の光配向性共重合体。
【請求項11】
前記式(A)中のRが、電子供与性の置換基である、請求項または10に記載の光配向性共重合体。
【請求項12】
前記式(A)中のRが、炭素数が6~16のアルコキシ基である、請求項11に記載の光配向性共重合体。
【請求項13】
前記式(A)中のR、R、R、RおよびRが表す置換基が、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1~20の直鎖状のハロゲン化アルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、シアノ基、アミノ基、または、下記式(11)で表される基である、請求項1に記載の光配向性共重合体。
【化7】
前記式(11)中、*は、前記式(A)中のベンゼン環との結合位置を表し、Rは、1価の有機基を表す。
【請求項14】
前記繰り返し単位Bが、前記式(B)中のXが前記式(X1)~(X3)のいずれかで表される架橋性基である繰り返し単位と、前記式(B)中のXが前記式(X4)で表される架橋性基である繰り返し単位とを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の光配向性共重合体。
【請求項15】
前記式(B)中のLが、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~18の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリーレン基、エーテル基、カルボニル基、および、置換基を有していてもよいイミノ基からなる群から選択される少なくとも2以上の基を組み合わせた2価の連結基である、請求項14のいずれか1項に記載の光配向性共重合体。
【請求項16】
重量平均分子量が10000~500000である、請求項1~15のいずれか1項に記載の光配向性共重合体。
【請求項17】
重量平均分子量が30000~300000である、請求項16に記載の光配向性共重合体。
【請求項18】
バインダーと、請求項1~17のいずれか1項に記載の光配向性共重合体とを含有する、バインダー組成物。
【請求項19】
請求項18に記載のバインダー組成物を用いて形成される、バインダー層。
【請求項20】
請求項19に記載のバインダー層と、前記バインダー層上に設けられる光学異方性層とを有する光学積層体であって、
前記光学異方性層が、重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を用いて形成され、
前記バインダー層と前記光学異方性層とが互いに隣接して積層されている、光学積層体。
【請求項21】
請求項19に記載のバインダー層または請求項20に記載の光学積層体を有する、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光配向性共重合体、バインダー組成物、バインダー層、光学積層体および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学補償シートおよび位相差フィルムなどの光学フィルムは、画像着色解消および視野角拡大などの観点から、様々な画像表示装置で用いられている。
光学フィルムとしては延伸複屈折フィルムが使用されていたが、近年、延伸複屈折フィルムに代えて、液晶化合物を用いた光学異方性層を使用することが提案されている。
【0003】
このような光学異方性層は、液晶化合物を配向させるために、光学異方性層を形成する支持体上に配向膜を設けることが知られており、また、この配向膜として、ラビング処理に代えて光配向処理を施した光配向膜が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、シンナメート基を含む構成単位a1を有する重合体Aと、シンナメート基を有し、重合体Aよりも分子量が小さい低分子化合物Bと、を含有する光配向膜用組成物が記載されており([請求項1])、重合体Aが、エポキシ基、オキセタニル基などの架橋性基を含む構成単位a2を有している態様が記載されている([0024]~[0028])。
また、特許文献2には、所定の光配向性基を含む繰り返し単位Aと、所定の架橋性基を含む繰り返し単位Bとを有する光配向性共重合体、および、この光配向性共重合体を含有する光配向膜用組成物を用いて形成した光配向膜が記載されている([請求項1][請求項13])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/069252号
【文献】国際公開第2018/173727号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、特許文献1および2に記載された共重合体を検討したところ、得られる光配向膜上に光学異方性層を形成する際に、光学異方性層用の組成物の塗布性(以下、「上層塗布性」ともいう。)が劣る場合があることを明らかとした。
【0007】
そこで、本発明は、層として形成された後において上層塗布性を良好とすることができる光配向性共重合体、バインダー組成物、バインダー層、光学積層体および画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、光配向性基を含む繰り返し単位Aと、光、熱、酸および塩基からなる群から選択される少なくとも1種の作用により架橋反応を生起する架橋性基を含む繰り返し単位Bと、光、熱、酸および塩基からなる群から選択される少なくとも1種の作用により分解して極性基を生じる開裂基を含む繰り返し単位Cとを、所定の質量比で含有する共重合体を含有するバインダー組成物を用いることにより、層として形成された後において上層塗布性が良好となることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0009】
[1] 光配向性基を含む繰り返し単位Aと、
光、熱、酸および塩基からなる群から選択される少なくとも1種の作用により架橋反応を生起する架橋性基を含む繰り返し単位Bと、
光、熱、酸および塩基からなる群から選択される少なくとも1種の作用により分解して極性基を生じる開裂基を含む繰り返し単位Cと、を有する光配向性共重合体であって、
繰り返し単位Cが、側鎖に開裂基を有し、かつ、側鎖の開裂基よりも末端側に、光配向性共重合体を空気界面側に偏在させることが可能な原子団を有し、
繰り返し単位Aの含有量aと、繰り返し単位Bの含有量bと、繰り返し単位Cの含有量cとの合計に対する各繰り返し単位の含有量が、質量比で下記式(W1)~(W3)を満たす、光配向性共重合体。
0.03 ≦ a/(a+b+c) ≦ 0.75 ・・・(W1)
0.20 ≦ b/(a+b+c) ≦ 0.90 ・・・(W2)
0.03 ≦ c/(a+b+c) ≦ 0.70 ・・・(W3)
【0010】
[2] 繰り返し単位Aの含有量aと、繰り返し単位Bの含有量bと、繰り返し単位Cの含有量cとの合計に対する各繰り返し単位の含有量が、質量比で下記式(W4)~(W6)を満たす、[1]に記載の光配向性共重合体。
0.03 ≦ a/(a+b+c) ≦ 0.45 ・・・(W4)
0.45 ≦ b/(a+b+c) ≦ 0.90 ・・・(W5)
0.03 ≦ c/(a+b+c) ≦ 0.50 ・・・(W6)
[3] 繰り返し単位Aの含有量aと、繰り返し単位Bの含有量bと、繰り返し単位Cの含有量cとの合計に対する各繰り返し単位の含有量が、質量比で下記式(W7)~(W9)を満たす、[1]に記載の光配向性共重合体。
0.03 ≦ a/(a+b+c) ≦ 0.40 ・・・(W7)
0.55 ≦ b/(a+b+c) ≦ 0.90 ・・・(W8)
0.03 ≦ c/(a+b+c) ≦ 0.40 ・・・(W9)
[4] 繰り返し単位Aの含有量aと、繰り返し単位Bの含有量bと、繰り返し単位Cの含有量cとの合計に対する各繰り返し単位の含有量が、質量比で下記式(W10)~(W12)を満たす、[1]に記載の光配向性共重合体。
0.03 ≦ a/(a+b+c) ≦ 0.20 ・・・(W10)
0.60 ≦ b/(a+b+c) ≦ 0.80 ・・・(W11)
0.15 ≦ c/(a+b+c) ≦ 0.35 ・・・(W12)
【0011】
[5] 繰り返し単位Cが、側鎖に開裂基を有し、かつ、側鎖の開裂基よりも末端側にフッ素原子またはケイ素原子を有する、[1]~[4]のいずれかに記載の光配向性共重合体。
【0012】
[6] 繰り返し単位Cが、下記式(C1)で表される繰り返し単位、または、下記式(C2-1)もしくは(C2-2)で表される繰り返し単位である、[1]~[5]のいずれかに記載の光配向性共重合体。
【化1】

ここで、上記式(C1)および(C2-1)中、R11は、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、上記式(C1)中の複数のR11は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
また、上記式(C1)、(C2-1)および(C2-2)中、X11およびX12は、それぞれ独立に単結合または2価の連結基を表し、RKは、開裂基を表し、RLは、フッ素原子またはケイ素原子を含む1価の有機基を表す。
【0013】
[7] 上記式(C1)、(C2-1)および(C2-2)中のRKが、下記式(rk-1)~(rk-13)のいずれかで表される開裂基である、[6]に記載の光配向性共重合体。
【化2】

ここで、上記式(rk-1)~(rk-13)中、*1は、上記式(C1)、(C2-1)および(C2-2)中のX11およびX12のいずれか一方との結合位置を表し、*2は、上記式(C1)、(C2-1)および(C2-2)中のX11およびX12のうち*1と結合していない側との結合位置を表し、Rは、それぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表す。
【0014】
[8] 繰り返し単位Aが、下記式(A)で表される繰り返し単位である、[1]~[7]のいずれかに記載の光配向性共重合体。
【化3】

上記式(A)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Lは、2価の連結基を表す。R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、R、R、R、RおよびRのうち、隣接する2つの基が結合して環を形成していてもよい。
【0015】
[9] 上記式(A)中のLが、窒素原子とシクロアルカン環とを含む2価の連結基を表し、シクロアルカン環を構成する炭素原子の一部が、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択されるヘテロ原子で置換されていてもよい、[8]に記載の光配向性共重合体。
【0016】
[10] 上記式(A)中のLが、下記式(1)~(10)のいずれかで表される2価の連結基である、[9]に記載の光配向性共重合体。
【化4】

上記式(1)~(10)中、*1は、上記式(A)中の主鎖を構成する炭素原子との結合位置を表し、*2は、上記式(A)中のカルボニル基を構成する炭素原子との結合位置を表す。
【0017】
[11] 上記式(A)中のLが、上記式(2)、(3)、(7)および(8)のいずれかで表される2価の連結基である、[10]に記載の光配向性共重合体。
[12] 上記式(A)中のR、R、R、RおよびRのうち、少なくともRが置換基を表す、[8]~[11]のいずれかに記載の光配向性共重合体。
[13] 上記式(A)中のR、R、RおよびRがいずれも水素原子を表す、[12]に記載の光配向性共重合体。
[14] 上記式(A)中のRが、電子供与性の置換基である、[12]または[13]に記載の光配向性共重合体。
[15] 上記式(A)中のRが、炭素数が6~16のアルコキシ基である、[14]に記載の光配向性共重合体。
[16] 上記式(A)中のR、R、R、RおよびRが表す置換基が、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1~20の直鎖状のハロゲン化アルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、シアノ基、アミノ基、または、下記式(11)で表される基である、[8]~[15]のいずれかに記載の光配向性共重合体。
【化5】

上記式(11)中、*は、上記式(A)中のベンゼン環との結合位置を表し、Rは、1価の有機基を表す。
【0018】
[17] 繰り返し単位Bが、下記式(B)で表される繰り返し単位である、[1]~[16]のいずれかに記載の光配向性共重合体。
【化6】

上記式(B)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Lは、2価の連結基を表し、Xは、架橋性基を表す。
[18] 上記式(B)中のXが、下記式(X1)~(X4)からなる群から選択される少なくとも1種の架橋性基である、[17]に記載の光配向性共重合体。
【化7】

上記式(X1)~(X4)中、*は、上記式(B)中のLとの結合位置を表し、Rは、水素原子、メチル基およびエチル基のいずれかを表し、上記式(X4)中、Sは、エチレン性不飽和二重結合を有する官能基を表す。
[19] 繰り返し単位Bが、上記式(B)中のXが上記式(X1)~(X3)のいずれかで表される架橋性基である繰り返し単位と、上記式(B)中のXが上記式(X4)で表される架橋性基である繰り返し単位とを含む、[18]に記載の光配向性共重合体。
[20] 上記式(B)中のLが、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~18の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリーレン基、エーテル基、カルボニル基、および、置換基を有していてもよいイミノ基からなる群から選択される少なくとも2以上の基を組み合わせた2価の連結基である、[17]~[19]のいずれかに記載の光配向性共重合体。
【0019】
[21] 重量平均分子量が10000~500000である、[1]~[20]のいずれかに記載の光配向性共重合体。
[22] 重量平均分子量が30000~300000である、[21]に記載の光配向性共重合体。
【0020】
[23] バインダーと、[1]~[22]のいずれかに記載の光配向性共重合体とを含有する、バインダー組成物。
[24] [23]に記載のバインダー組成物を用いて形成される、バインダー層。
[25] [24]に記載のバインダー層と、バインダー層上に設けられる光学異方性層とを有する光学積層体であって、
光学異方性層が、重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を用いて形成され、
バインダー層と光学異方性層とが互いに隣接して積層されている、光学積層体。
[26] [24]に記載のバインダー層または[25]に記載の光学積層体を有する、画像表示装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、層として形成された後において上層塗布性を良好とすることができる光配向性共重合体、バインダー組成物、バインダー層、光学積層体および画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本願明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0023】
[光配向性共重合体]
本発明の光配向性共重合体は、光配向性基を含む繰り返し単位Aと、光、熱、酸および塩基からなる群から選択される少なくとも1種の作用により架橋反応を生起する架橋性基を含む繰り返し単位Bと、光、熱、酸および塩基からなる群から選択される少なくとも1種の作用により分解して極性基を生じる開裂基を含む繰り返し単位Cと、を有する光配向性共重合体である。
また、本発明の光配向性共重合体は、繰り返し単位Cが、側鎖に開裂基を有し、かつ、側鎖の開裂基よりも末端側に、光配向性共重合体を空気界面側に偏在させることが可能な原子団を有する。
更に、本発明の光配向性共重合体は、繰り返し単位Aの含有量aと、繰り返し単位Bの含有量bと、繰り返し単位Cの含有量cとの合計に対する各繰り返し単位の含有量が、質量比で下記式(W1)~(W3)を満たすものである。
0.03 ≦ a/(a+b+c) ≦ 0.75 ・・・(W1)
0.20 ≦ b/(a+b+c) ≦ 0.90 ・・・(W2)
0.03 ≦ c/(a+b+c) ≦ 0.70 ・・・(W3)
【0024】
本発明においては、上述した繰り返し単位A、BおよびCを所定の質量比で含有する共重合体を含有するバインダー組成物を用いることにより、層として形成された後において上層塗布性が良好となる。
これは、詳細には明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
すなわち、本発明の光配向性共重合体を含有する組成物を塗布し、バインダー層などの層として形成された後において、空気界面側に偏在した本発明の光配向性共重合体に対して、光、熱、酸および塩基からなる群から選択される少なくとも1種を作用させることにより、側鎖に含まれる開裂基が分解して極性基を生じるため、上層塗布性が良好になったと考えられる。
以下に、繰り返し単位A、BおよびCについて詳述する。
【0025】
〔繰り返し単位A〕
本発明の光配向性共重合体が有する繰り返し単位Aは、光配向性基を含む繰り返し単位である。
ここで、「光配向性基」とは、異方性を有する光(例えば、平面偏光など)の照射により、再配列や異方的な化学反応が誘起される光配向機能を有する基をいい、配向の均一性に優れ、熱的安定性や化学的安定性も良好となる理由から、光の作用により二量化および異性化の少なくとも一方が生じる光配向性基が好ましい。
【0026】
光の作用により二量化する光配向性基としては、具体的には、例えば、桂皮酸誘導体(M. Schadt et al., J. Appl. Phys., vol. 31, No. 7, page 2155 (1992))、クマリン誘導体(M. Schadt et al., Nature., vol. 381, page 212 (1996))、カルコン誘導体(小川俊博他、液晶討論会講演予稿集,2AB03(1997))、マレイミド誘導体、および、ベンゾフェノン誘導体(Y. K. Jang et al., SID Int. Symposium Digest, P-53(1997))からなる群から選択される少なくとも1種の誘導体の骨格を有する基などが好適に挙げられる。
一方、光の作用により異性化する光配向性基としては、具体的には、例えば、アゾベンゼン化合物(K. Ichimura et al.,Mol.Cryst.Liq.Cryst .,298,221(1997))、スチルベン化合物(J.G.Victor and J.M.Torkelson,Macromolecules,20,2241(1987))、スピロピラン化合物(K. Ichimura et al., Chemistry Letters, page 1063 (1992) ;K.Ichimura et al., Thin Solid Films, vol. 235, page 101 (1993) )、桂皮酸化合物(K.Ichimura et al.,Macromolecules,30,903(1997))、および、ヒドラゾノ-β-ケトエステル化合物(S. Yamamura et al., Liquid Crystals, vol. 13, No. 2, page 189 (1993))からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の骨格を有する基などが好適に挙げられる。
【0027】
これらのうち、光配向性基が、桂皮酸誘導体、クマリン誘導体、カルコン誘導体およびマレイミド誘導体、アゾベンゼン化合物、スチルベン化合物およびスピロピラン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の誘導体の骨格を有する基であることが好ましく、桂皮酸誘導体、クマリン誘導体骨格を有する基であることがより好ましい。
【0028】
本発明においては、繰り返し単位Aが、下記式(A)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【化8】

上記式(A)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Lは、2価の連結基を表す。R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、R、R、R、RおよびRのうち、隣接する2つの基が結合して環を形成していてもよい。
【0029】
次に、上記式(A)のLが表す2価の連結基について説明する。
ここで、2価の連結基は、後述する式(B)中のLで説明するものと同様のものが挙げられるが、本発明の光配向性共重合体を含有する組成物を塗布し、バインダー層などの層として形成された後において、形成された層上に液晶化合物を用いて形成される光学異方性層の配向性(以下、「液晶配向性」ともいう。)がより良好となる理由から、窒素原子とシクロアルカン環とを含む2価の連結基であることが好ましい。なお、本発明においては、上述した通り、シクロアルカン環を構成する炭素原子の一部は、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択されるヘテロ原子で置換されていてもよい。また、シクロアルカン環を構成する炭素原子の一部が窒素原子で置換されている場合は、シクロアルカン環とは別に窒素原子を有していなくてもよい。
【0030】
また、シクロアルカン環は、炭素数6以上のシクロアルカン環であることが好ましく、その具体例としては、シクロヘキサン環、シクロペプタン環、シクロオクタン環、シクロドデカン環、シクロドコサン環等が挙げられる。
【0031】
本発明においては、液晶配向性がより良好となる理由から、上記式(A)中のLが、下記式(1)~(10)のいずれかで表される2価の連結基であることが好ましい。
【化9】

上記式(1)~(10)中、*1は、上記式(A)中の主鎖を構成する炭素原子との結合位置を表し、*2は、上記式(A)中のカルボニル基を構成する炭素原子との結合位置を表す。
【0032】
上記式(1)~(10)のいずれかで表される2価の連結基のうち、バインダー層などの層を形成する際に用いる溶媒に対する溶解性と、得られる層の耐溶剤性とのバランスが良好となる理由から、上記式(2)、(3)、(7)および(8)のいずれかで表される2価の連結基であることが好ましい。
【0033】
次に、上記記式(A)中のR、R、R、RおよびRの一態様が表す置換基について説明する。なお、上記式(A)中のR、R、R、RおよびRが、置換基ではなく水素原子であってもよいことは上述した通りである。
【0034】
上記式(A)中のR、R、R、RおよびRの一態様が表す置換基は、光配向性基が液晶化合物と相互作用しやすくなり、液晶配向性がより良好となる理由から、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1~20の直鎖状のハロゲン化アルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、シアノ基、アミノ基、または、下記式(11)で表される基であることが好ましい。
【化10】

ここで、上記式(11)中、*は、上記式(A)中のベンゼン環との結合位置を表し、Rは、1価の有機基を表す。
【0035】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、中でも、フッ素原子、塩素原子であるのが好ましい。
【0036】
炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基について、直鎖状のアルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基などが挙げられる。
分岐状のアルキル基としては、炭素数3~6のアルキル基が好ましく、具体的には、例えば、イソプロピル基、tert-ブチル基などが挙げられる。
環状のアルキル基としては、炭素数3~6のアルキル基が好ましく、具体的には、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0037】
炭素数1~20の直鎖状のハロゲン化アルキル基としては、炭素数1~4のフルオロアルキル基が好ましく、具体的には、例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基などが挙げられ、中でも、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0038】
炭素数1~20のアルコキシ基としては、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数6~18のアルコキシ基がより好ましく、炭素数6~14のアルコキシ基が更に好ましい。具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基、メトキシエトキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基などが好適に挙げられ、中でも、n-ヘキシルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基がより好ましい。
【0039】
炭素数6~20のアリール基としては、炭素数6~12のアリール基が好ましく、具体的には、例えば、フェニル基、α-メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
【0040】
炭素数6~20のアリールオキシ基としては、炭素数6~12のアリールオキシ基が好ましく、具体的には、例えば、フェニルオキシ基、2-ナフチルオキシ基などが挙げられ、中でも、フェニルオキシ基が好ましい。
【0041】
アミノ基としては、例えば、第1級アミノ基(-NH);メチルアミノ基などの第2級アミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、含窒素複素環化合物(例えば、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジンなど)の窒素原子を結合手とした基などの第3級アミノ基;が挙げられる。
【0042】
上記式(11)で表される基について、上記式(11)中のRが表す1価の有機基としては、例えば、炭素数1~20の直鎖状または環状のアルキル基が挙げられる。
直鎖状のアルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基などが挙げられ、中でも、メチル基またはエチル基が好ましい。
環状のアルキル基としては、炭素数3~6のアルキル基が好ましく、具体的には、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、中でも、シクロヘキシル基が好ましい。
なお、上記式(11)中のRが表す1価の有機基としては、上述した直鎖状のアルキル基および環状のアルキル基を直接または単結合を介して複数組み合わせたものであってもよい。
【0043】
本発明においては、光配向性基が液晶化合物と相互作用しやすくなり、液晶配向性がより良好となる理由から、上記式(A)中のR、R、R、RおよびRのうち、少なくともRが上述した置換基を表していることが好ましく、更に、得られる光配向性共重合体の直線性が向上し、液晶化合物と相互作用しやすくなり、液晶配向性が更に良好となる理由から、R、R、RおよびRがいずれも水素原子を表すことがより好ましい。
【0044】
本発明においては、得られるバインダー層などの層に光照射した際に反応効率が向上する理由から、上記式(A)中のRが電子供与性の置換基であることが好ましい。
ここで、電子供与性の置換基(電子供与性基)とは、ハメット値(Hammett置換基定数σp)が0以下の置換基のことをいい、例えば、上述した置換基のうち、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。
これらのうち、アルコキシ基であることが好ましく、バインダー層などの層として形成する際に、乾燥時の乾燥風で引き起こされる膜厚ムラ(以下、「風ムラ」ともいう。)を抑制でき、液晶配向性がより良好となる理由から、炭素数が6~16のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数7~10のアルコキシ基であることが更に好ましい。
【0045】
上記式(A)で表される繰り返し単位Aとしては、具体的には、例えば、以下に示す繰り返し単位A-1~A-56が挙げられる。なお、下記式中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。なお、以下の具体例中、繰り返し単位A-1~A-10の2価の連結基に含まれる「1,4-シクロヘキシル基」は、シス体およびトランス体のいずれであってもよいが、トランス体であることが好ましい。
【化11】




【化12】





【0046】
【化13】

【0047】
〔繰り返し単位B〕
本発明の光配向性共重合体が有する繰り返し単位Bは、光、熱、酸および塩基からなる群から選択される少なくとも1種の作用により架橋反応を生起する架橋性基を含む繰り返し単位である。
【0048】
本発明においては、液晶配向性がより良好となる理由から、繰り返し単位Bが、下記式(B)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【化14】

上記式(B)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Lは、2価の連結基を表し、Xは、架橋性基を表す。
【0049】
次に、上記式(B)中のLが表す2価の連結基について説明する。
【0050】
2価の連結基としては、光配向性基が液晶化合物と相互作用しやすくなり、液晶配向性がより良好となる理由から、置換基を有していてもよい炭素数1~18の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリーレン基、エーテル基(-O-)、カルボニル基(-C(=O)-)、および、置換基を有していてもよいイミノ基(-NH-)からなる群から選択される少なくとも2以上の基を組み合わせた2価の連結基であることが好ましい。
【0051】
ここで、アルキレン基、アリーレン基およびイミノ基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、シアノ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基および水酸基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、中でも、フッ素原子、塩素原子であるのが好ましい。
アルキル基としては、例えば、炭素数1~18の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基またはエチル基であるのが特に好ましい。
アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基、メトキシエトキシ基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基であることが更に好ましく、メトキシ基またはエトキシ基であるのが特に好ましい。
アリール基としては、例えば、炭素数6~12のアリール基が挙げられ、具体的には、例えば、フェニル基、α-メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ、ナフトキシ、イミダゾイルオキシ、ベンゾイミダゾイルオキシ、ピリジン-4-イルオキシ、ピリミジニルオキシ、キナゾリニルオキシ、プリニルオキシ、チオフェン-3-イルオキシなどが挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。
【0052】
炭素数1~18の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基について、炭素数1~6の直鎖状のアルキレン基、炭素数3~6の分岐状のアルキレン基、または炭素数3~6の環状のアルキレン基が好ましく、炭素数1~6の直鎖状のアルキレン基がより好ましい。直鎖状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などが挙げられる。
また、分岐状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、ジメチルメチレン基、メチルエチレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、2-エチル-2-メチルプロピレン基などが挙げられる。
また、環状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基、シクロデシレン基、アダマンタン-ジイル基、ノルボルナン-ジイル基、exo-テトラヒドロジシクロペンタジエン-ジイル基などが挙げられ、中でも、シクロヘキシレン基が好ましい。
【0053】
炭素数6~12のアリーレン基としては、具体的には、例えば、フェニレン基、キシリレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、2,2’-メチレンビスフェニル基などが挙げられ、中でも、フェニレン基が好ましい。
【0054】
次に、上記式(B)中のXが表す架橋性基について説明する。
【0055】
上記式(B)中のX(架橋性基)としては、具体的には、例えば、エポキシ基、エポキシシクロヘキシル基、オキセタニル基、および、エチレン性不飽和二重結合を有する官能基などが挙げられ、中でも、下記式(X1)~(X4)からなる群から選択される少なくとも1種の架橋性基であることが好ましい。
【化15】

上記式(X1)~(X4)中、*は、上記式(B)中のLとの結合位置を表し、Rは、水素原子、メチル基およびエチル基のいずれかを表し、上記式(X4)中、Sは、エチレン性不飽和二重結合を有する官能基を表す。
ここで、エチレン性不飽和二重結合を有する官能基としては、具体的には、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基が挙げられ、アクリロイル基またはメタクリロイル基であることが好ましい。
【0056】
本発明においては、後述する本発明の光学積層体の強度が高くなり、後述する本発明の光学積層体を用いて他の層を形成する際のハンドリング性が良好となる理由から、繰り返し単位Bが、上記式(B)中のXが上記式(X1)~(X3)のいずれかで表される架橋性基である繰り返し単位(以下、「繰り返し単位B1」とも略す。)と、上記式(B)中のXが上記式(X4)で表される架橋性基である繰り返し単位(以下、「繰り返し単位B2」とも略す。)とを含んでいることが好ましい。
【0057】
上記式(B)表される繰り返し単位B(繰り返し単位B1)としては、具体的には、例えば、以下に示す繰り返し単位B-1~B-17が挙げられる。
【化16】


【0058】
また、上記式(B)表される繰り返し単位B(繰り返し単位B2)としては、具体的には、例えば、以下に示す繰り返し単位B-18~B-47が挙げられる。
【化17】



【0059】
〔繰り返し単位C〕
本発明の光配向性共重合体が有する繰り返し単位Cは、光、熱、酸および塩基からなる群から選択される少なくとも1種の作用により分解して極性基を生じる開裂基を含む繰り返し単位である。
また、本発明の光配向性共重合体が有する繰り返し単位Cは、側鎖に上記開裂基を有し、かつ、側鎖の上記開裂基よりも末端側に、本発明の光配向性共重合体を空気界面側に偏在させることが可能な原子団を有する。
ここで、「極性基」とは、ヘテロ原子またはハロゲン原子を少なくとも1原子以上有する基をいい、具体的には、例えば、水酸基、カルボニル基、カルボキシ基、アミノ基、ニトロ基、アンモニウム基、シアノ基などが挙げられる。なかでも、水酸基、カルボキシ基が好ましい。
また、「極性基を生じる開裂基」とは、開裂によって上述した極性基を生じる基をいうが、本発明においては、ラジカル開裂後に酸素分子と反応し、極性基を生成する基も含む。
更に、「空気界面側に偏在させることが可能な原子団」とは、本発明の光配向性共重合体を含有する組成物を塗布し、バインダー層などの層として形成した際に、層の空気界面側に本発明の光配向性共重合体を偏在させることが可能な官能基団をいい、具体的には、例えば、フッ素原子、ケイ素原子および長鎖アルキル基(例えば、炭素数6~20のアルキル基)などの表面エネルギーを低減可能な原子団が挙げられる。
【0060】
本発明においては、膜厚ムラ(風ムラ)を抑制できる理由から、繰り返し単位Cが、側鎖に開裂基を有し、かつ、側鎖の開裂基よりも末端側にフッ素原子またはケイ素原子を有する単位であることが好ましい。
【0061】
また、本発明においては、膜厚ムラ(風ムラ)をより抑制することができる理由から、繰り返し単位Cが、下記式(C1)で表される繰り返し単位、または、下記式(C2-1)もしくは(C2-2)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【化18】
【0062】
上記式(C1)および(C2-1)中、R11は、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、上記式(C1)中の複数のR11は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
11としては、水素原子またはメチル基であることが好ましい。
【0063】
また、上記式(C1)、(C2-1)および(C2-2)中、X11およびX12は、それぞれ独立に単結合または2価の連結基を表し、RKは、開裂基を表し、RLは、フッ素原子またはケイ素原子を含む1価の有機基を表す。
【0064】
上記式(C1)、(C2-1)および(C2-2)中のX11およびX12が示す2価の連結基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素数1~10の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリーレン基、エーテル基(-O-)、カルボニル基(-C(=O)-)、および、置換基を有していてもよいイミノ基(-NH-)からなる群から選択される少なくとも1以上の基が挙げられる。
【0065】
ここで、アルキレン基、アリーレン基およびイミノ基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、炭素数1~18の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基またはエチル基であるのが特に好ましい。
アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基、メトキシエトキシ基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基であることが更に好ましく、メトキシ基またはエトキシ基であるのが特に好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、なかでも、フッ素原子、塩素原子であるのが好ましい。
【0066】
炭素数1~10の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基について、直鎖状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、デシレン基などが挙げられる。
また、分岐状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、ジメチルメチレン基、メチルエチレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、2-エチル-2-メチルプロピレン基などが挙げられる。
また、環状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基、シクロデシレン基、アダマンタン-ジイル基、ノルボルナン-ジイル基、exo-テトラヒドロジシクロペンタジエン-ジイル基などが挙げられ、なかでも、シクロヘキシレン基が好ましい。
【0067】
炭素数6~12のアリーレン基としては、具体的には、例えば、フェニレン基、キシリレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、2,2’-メチレンビスフェニル基などが挙げられ、なかでも、フェニレン基が好ましい。
【0068】
上記式(C1)、(C2-1)および(C2-2)中のRKが示す開裂基としては、例えば、下記式(rk-1)~(rk-13)のいずれかで表される開裂基(結合)が挙げられる。
【化19】
【0069】
上記式(rk-1)~(rk-13)中、*1は、上記式(C1)、(C2-1)および(C2-2)中のXおよびXのいずれか一方との結合位置を表し、*2は、上記式(C1)、(C2-1)および(C2-2)中のXおよびXのうち*1と結合していない側との結合位置を表し、Rは、それぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表す。
ここで、Rが示す1価の有機基としては、例えば、炭素数1~20の鎖状または環状のアルキル基、置換基を有していていてもよい炭素数6~20のアリール基等が挙げられる。
【0070】
また、上記式(rk-10)および(rk-11)中のアニオン部は、開裂に影響を及ぼさないため特に限定されず、無機のアニオンでも有機のアニオンでも使用することが可能である。
無機のアニオンとしては、具体的には、例えば、塩化物イオン、臭化物イオンなどのハロゲン化物イオン;スルホン酸アニオン;等が挙げられる。
有機のアニオンとしては、具体的には、例えば、酢酸アニオンなどのカルボン酸アニオン;メタンスルホン酸アニオン、パラトルエンスルホン酸アニオンなどの有機スルホン酸アニオン;等を挙げることができる。
【0071】
本発明においては、これらの開裂基のうち、光を利用して開裂させる場合においては、量子効率の観点から、上記式(rk-1)で表される開裂基が好ましく、また、酸を利用して開裂させる場合においては、開裂速度の観点から、上記式(rk-9)で表される開裂基が好ましい。
【0072】
上記式(C1)、(C2-1)および(C2-2)中のRLが示す、フッ素原子またはケイ素原子を含む1価の有機基としては、例えば、少なくとも1つの炭素原子がフッ素原子を置換基として有する、炭素数1~20のアルキル基または炭素数2~20のアルケニル基が挙げられる。
【0073】
繰り返し単位Cとしては、具体的には、例えば、以下に示す繰り返し単位C-1~C-29が挙げられる。
【化20】




【0074】
本発明の光配向性共重合体は、上層塗布性および液晶配向性がより良好となる理由から、繰り返し単位Aの含有量aと、繰り返し単位Bの含有量bと、繰り返し単位Cの含有量cとの合計に対する各繰り返し単位の含有量が、質量比で下記式(W4)~(W6)を満たしていることが好ましく、下記式(W7)~(W9)を満たしていることがより好ましく、下記式(W10)~(W12)を満たしていることが更に好ましい。
0.03 ≦ a/(a+b+c) ≦ 0.45 ・・・(W4)
0.45 ≦ b/(a+b+c) ≦ 0.90 ・・・(W5)
0.03 ≦ c/(a+b+c) ≦ 0.50 ・・・(W6)
0.03 ≦ a/(a+b+c) ≦ 0.40 ・・・(W7)
0.55 ≦ b/(a+b+c) ≦ 0.90 ・・・(W8)
0.03 ≦ c/(a+b+c) ≦ 0.40 ・・・(W9)
0.03 ≦ a/(a+b+c) ≦ 0.20 ・・・(W10)
0.60 ≦ b/(a+b+c) ≦ 0.80 ・・・(W11)
0.15 ≦ c/(a+b+c) ≦ 0.35 ・・・(W12)
【0075】
〔繰り返し単位D〕
本発明の光配向性共重合体は、本発明の効果を阻害しない限り、上述した繰り返し単位A、繰り返し単位Bおよび繰り返し単位C以外に、他の繰り返し単位Dを有していてもよい。
【0076】
本発明においては、繰り返し単位Dが、下記式(D)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【化21】
【0077】
上記式(D)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Lは、置換基を有していてもよい炭素数1~18の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリーレン基、エーテル基、カルボニル基、および、置換基を有していてもよいイミノ基からなる群から選択される1または2以上の基を組み合わせた2価の連結基を表し、Qは、-OH、-COOH、および、-COOtBuのいずれかの基を表す。なお、「tBu」は、tert-ブチルを示す表記である。
ここで、置換基、および、炭素数1~18の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基などについては、上記式(B)中のLにおいて説明したものと同様である。
【0078】
上記式(D)表される繰り返し単位Dとしては、具体的には、例えば、以下に示す繰り返し単位D-1~D-13が挙げられる。
【化22】
【0079】
上記式(D)以外で表される繰り返し単位Dとしては、例えば、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、以下に示す繰り返し単位D-14、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物、ビニル化合物等が挙げられる。
【化23】
【0080】
本発明の光配向性共重合体の合成法は特に限定されず、例えば、上述した繰り返し単位Aを形成するモノマー、上述した繰り返し単位Bを形成するモノマー、上述した繰り返し単位Cを形成するモノマー、および、任意の他の繰り返し単位Dを形成するモノマーを混合し、有機溶剤中で、ラジカル重合開始剤を用いて重合することにより合成することができる。
【0081】
本発明の光配向性共重合体の重量平均分子量(Mw)は、液晶配向性がより向上する理由から、10000~500000が好ましく、30000~300000がより好ましい。
ここで、本発明における重量平均分子量および数平均分子量は、以下に示す条件でゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法により測定された値である。
・溶媒(溶離液):THF(テトラヒドロフラン)
・装置名:TOSOH HLC-8320GPC
・カラム:TOSOH TSKgel Super HZM-H(4.6mm×15cm
)を3本接続して使用
・カラム温度:40℃
・試料濃度:0.1質量%
・流速:1.0ml/min
・校正曲線:TOSOH製TSK標準ポリスチレン Mw=2800000~1050(Mw/Mn=1.03~1.06)までの7サンプルによる校正曲線を使用
【0082】
[バインダー組成物]
本発明のバインダー組成物は、バインダーと本発明の光配向性共重合体とを含有する組成物である。
ここで、本発明のバインダー組成物中に含まれる光配向性共重合体の含有量は、後述するバインダー100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~5質量部であることがより好ましい。
【0083】
〔バインダー〕
本発明のバインダー組成物に含まれるバインダーは、特に限定されず、それ自体は重合反応性のない樹脂のみから構成されるような単に乾燥固化する樹脂(以下、「樹脂バインダー」ともいう。)であってもよく、重合性化合物であってもよい。
【0084】
<樹脂バインダー>
樹脂バインダーとしては、具体的には、例えば、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アイオノマー樹脂、エチレンエチルアクリレート樹脂、アクリロニトリルアクリレートスチレン共重合樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、アクリロニトリル塩化ポリエチレンスチレン共重合樹脂、エチレン酢ビ樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、酢酸セルロース樹脂、フッ素樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、ポリスチレンマレイン酸共重合樹脂、ポリスチレンアクリル酸共重合樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、メチルペンテン樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート樹脂、ブチラール樹脂、ホルマール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、および、これらの共重合樹脂などが挙げられる。
【0085】
<重合性化合物>
重合性化合物としては、例えば、エポキシ系モノマー、アクリル系モノマー、オキセタニル系モノマーなどが挙げられ、なかでも、エポキシ系モノマーおよびアクリル系モノマーが好ましい。
また、本発明においては、重合性化合物として、重合性液晶化合物を用いてもよい。
【0086】
(エポキシ系モノマー)
エポキシ系モノマーであるエポキシ基含有モノマーとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0087】
(アクリル系モノマー)
アクリル系モノマーである、アクリレートモノマー及びメタクリレートモノマーとしては、3官能モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンPO(プロピレンオキサイド)変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO(エチレンオキサイド)変性トリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートが挙げられる。また、4官能以上のモノマー、オリゴマーとして、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等を例示することができる。
【0088】
(重合性液晶化合物)
重合性液晶化合物は、特に限定されず、例えば、ホメオトロピック配向、ホモジニアス配向、ハイブリッド配向およびコレステリック配向のいずれかの配向が可能な化合物を用いることができる。
ここで、一般的に、液晶化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶化合物を用いることもできるが、棒状液晶化合物(以下、「CLC」とも略す。)またはディスコティック液晶化合物(円盤状液晶化合物)(以下、「DLC」とも略す。)を用いることが好ましく、また、モノマーであるか、重合度が100未満の比較的低分子量な液晶化合物を用いることが好ましい。
また、重合性液晶化合物が有する重合性基としては、具体的には、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、ビニル基等が挙げられる。
このような重合性液晶化合物を重合させることにより、液晶化合物の配向を固定することができる。なお、液晶化合物が重合によって固定された後においては、もはや液晶性を示す必要はない。
【0089】
棒状液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報の請求項1や特開2005-289980号公報の段落[0026]~[0098]に記載のものを好ましく用いることができ、ディスコティック液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報の段落[0020]~[0067]や特開2010-244038号公報の段落[0013]~[0108]に記載のものを好ましく用いることができるが、これらに限定されない。
【0090】
本発明においては、上記重合性液晶化合物として、逆波長分散性の液晶化合物を用いることができる。
ここで、本明細書において「逆波長分散性」の液晶化合物とは、これを用いて作製された位相差フィルムの特定波長(可視光範囲)における面内のレターデーション(Re)値を測定した際に、測定波長が大きくなるにつれてRe値が同等または高くなるものをいう。
【0091】
逆波長分散性の液晶化合物は、上記のように逆波長分散性のフィルムを形成できるものであれば特に限定されず、例えば、特開2008-297210号公報に記載の一般式(I)で表される化合物(特に、段落番号[0034]~[0039]に記載の化合物)、特開2010-84032号公報に記載の一般式(1)で表される化合物(特に、段落番号[0067]~[0073]に記載の化合物)、および、特開2016-081035公報に記載の一般式(1)で表される化合物(特に、段落番号[0043]~[0055]に記載の化合物)等を用いることができる。
更に、特開2011-6360号公報の段落番号[0027]~[0100]、特開2011-6361号公報の段落番号[0028]~[0125]、特開2012-207765号公報の段落番号[0034]~[0298]、特開2012-77055号公報の段落番号[0016]~[0345]、WO12/141245号公報の段落番号[0017]~[0072]、WO12/147904号公報の段落番号[0021]~[0088]、WO14/147904号公報の段落番号[0028]~[0115]に記載の化合物を用いることができる。
【0092】
〔重合開始剤〕
本発明のバインダー組成物は、バインダーとして重合性化合物を用いた場合には、重合開始剤を含有することが好ましい。
このような重合開始剤は特に限定されないが、重合反応の形式に応じて、熱重合開始剤および光重合開始剤が挙げられる。
本発明においては、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-40799号公報、特公平5-29234号公報、特開平10-95788号公報、特開平10-29997号公報記載)等が挙げられる。
【0093】
〔光酸発生剤〕
本発明のバインダー組成物は、上述した光配向性共重合体が、酸の作用により分解して極性基を生じる開裂基を含む1価の特定基を有する重合体である場合、光酸発生剤を含有していることが好ましい。
【0094】
光酸発生剤としては、波長300nm以上、好ましくは波長300~450nmの活性光線に感応し、酸を発生する化合物が好ましいが、その化学構造に制限されるものではない。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない光酸発生剤についても、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線に感応し、酸を発生する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。本発明で使用される光酸発生剤としては、pKaが4以下の酸を発生する光酸発生剤が好ましく、pKaが3以下の酸を発生する光酸発生剤がより好ましく、2以下の酸を発生する光酸発生剤が最も好ましい。なお本発明において、pKaは、基本的に25℃の水中におけるpKaを指す。水中で測定できないものは、測定に適する溶剤に変更し測定したものを指す。具体的には、化学便覧等に記載のpKaが参考にできる。pKaが3以下の酸としては、スルホン酸またはホスホン酸であることが好ましく、スルホン酸であることがより好ましい。
【0095】
光酸発生剤の例として、オニウム塩化合物、トリクロロメチル-s-トリアジン類、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、第四級アンモニウム塩類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、および、オキシムスルホネート化合物などを挙げることができる。これらの中でも、オニウム塩化合物、イミドスルホネート化合物、オキシムスルホネート化合物が好ましく、オニウム塩化合物、オキシムスルホネート化合物が特に好ましい。光酸発生剤は、1種単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0096】
〔溶媒〕
本発明のバインダー組成物は、バインダー層を形成する作業性等の観点から、溶媒を含有するのが好ましい。
溶媒としては、具体的には、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、水、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0097】
[バインダー層]
本発明のバインダー層は、上述した本発明のバインダー組成物を用いて形成される層であり、配向規制力を有する層である。
バインダー層の形成方法は、バインダーの種類によって異なるため特に限定されないが、バインダーとして重合性化合物を用いた場合には、光カチオン重合、ラジカル重合など、従来公知の方法で形成することができる。
なお、配向規制力を有するとは、バインダー層上に配置される液晶化合物を所定の方向に配向させる機能を有することを意味する。
【0098】
[光学積層体]
本発明の光学積層体は、本発明のバインダー層と、バインダー層上に設けられる光学異方性層とを有する光学積層体である。
本発明の光学積層体は、バインダー層上に設けられる光学異方性層が重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を用いて形成されており、また、バインダー層と光学異方性層とが互いに隣接して積層されている。
また、本発明の光学積層体は、バインダー層を支持する支持体を有していることが好ましい。
以下、本発明の光学積層体の好適態様について詳述する。
【0099】
〔支持体〕
支持体としては、例えば、ガラス基板およびポリマーフィルムが挙げられる。
ポリマーフィルムの材料としては、セルロース系ポリマー;ポリメチルメタクリレート、ラクトン環含有重合体等のアクリル酸エステル重合体を有するアクリル系ポリマー;熱可塑性ノルボルネン系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系ポリマー;、塩化ビニル系ポリマー;ナイロン、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー;イミド系ポリマー;スルホン系ポリマー;ポリエーテルスルホン系ポリマー;ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー;ポリフェニレンスルフィド系ポリマー;塩化ビニリデン系ポリマー;ビニルアルコール系ポリマー;ビニルブチラール系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリオキシメチレン系ポリマー;エポキシ系ポリマー;またはこれらのポリマーを混合したポリマーが挙げられる。
【0100】
上記支持体の厚みについては特に限定されないが、5~200μmであることが好ましく、10~100μmであることがより好ましく、20~90μmであることが更に好ましい。
【0101】
〔バインダー層〕
バインダー層は、上述した本発明のバインダー層である。
本発明においては、上記バインダー層の厚みについては特に限定されないが、0.1~10μmであるのが好ましく、0.5~5μmであるのがより好ましい。
【0102】
〔光学異方性層〕
光学異方性層は、上述したように、重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を用いて形成される。
ここで、光学異方性層を形成するための重合性液晶組成物としては、例えば、本発明のバインダー組成物において任意成分として記載した重合性液晶化合物、重合開始剤および溶媒などを配合した組成物が挙げられる。
【0103】
本発明においては、光学異方性層の厚みについては特に限定されないが、0.1~10μmであるのが好ましく、0.5~5μmであるのがより好ましい。
【0104】
[光学積層体の作製方法]
本発明の光学積層体を作製する方法は特に限定されず、例えば、上述した支持体上に、上述した本発明のバインダー組成物を塗布する第1塗布工程と、第1塗布工程の後に、バインダー層を形成するバインダー層形成工程と、光、熱、酸および塩基からなる群から選択される少なくとも1種を作用させる作用工程と、偏光または無偏光を照射する照射工程と、バインダー層上に、光学異方性層を形成する重合性液晶組成物を直接塗布する第2塗布工程と、第2塗布工程の後に、光学異方性層を形成する光学異方性層形成工程と、を有する方法により作製することができる。
また、作用工程は、バインダー層形成工程と第2塗布工程との間、または、バインダー層形成工程または第2塗布工程と同時、に行う工程である。
更に、照射工程は、バインダー層形成工程と第2塗布工程との間、または、バインダー層形成工程または第2塗布工程と同時、に行う工程である。
【0105】
〔第1塗布工程〕
第1塗布工程は、上述した支持体上に、上述した本発明のバインダー組成物を塗布する工程である。
本発明のバインダー組成物を塗布する方法は特に限定されず、塗布方法としては、具体的には、例えば、スピンコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等が挙げられる。
【0106】
〔バインダー層形成工程〕
バインダー層形成工程は、第1塗布工程の後に、バインダー層を形成する工程であり、第1塗布工程で得られた塗膜に対して硬化処理(紫外線の照射(光照射処理)または加熱処理)を施すことにより形成することができる。
また、硬化処理の条件は特に限定されないが、光照射による重合においては、紫外線を用いることが好ましい。照射量は、10mJ/cm~50J/cmであることが好ましく、20mJ/cm~5J/cmであることがより好ましく、30mJ/cm~3J/cmであることが更に好ましく、50~1000mJ/cmであることが特に好ましい。また、重合反応を促進するため、加熱条件下で実施してもよい。
【0107】
〔作用工程〕
作用工程は、光、熱、酸および塩基からなる群から選択される少なくとも1種を作用させる工程である。
また、作用工程は、上層としての光学異方性層を形成する際の塗布性を担保する観点から、バインダー層形成工程と第2塗布工程との間、または、バインダー層形成工程または第2塗布工程と同時に行う工程である。
ここで、「バインダー層形成工程と第2塗布工程との間」とは、バインダー層形成工程(例えば、熱重合)で形成したバインダー層に対して、第2塗布工程を施す前に、作用工程(例えば、光を作用させる工程)を行うことをいう。
また、「バインダー層形成工程と同時」とは、バインダー層を形成する工程、例えば、光ラジカル発生によるオレフィン系モノマーの重合、および、光酸発生によるエポキシモノマーの重合などによりバインダー層を形成する工程と、作用工程(例えば、光を作用させる工程)とを同時に行うことをいう。すなわち、バインダー層の重合に用いる光と、開裂に用いる光が、同時に2つの作用を引き起こすことを意味する。
また、「第2塗布工程と同時」とは、バインダー層形成工程(例えば、光重合)で形成したバインダー層に対して、第2塗布工程を施す際に、作用工程(例えば、熱を作用させる工程)を同時に行うことをいう。
このうち、光を作用させ、バインダー層形成工程と同時に行う工程であることが、プロセス簡略化の観点から好ましい。
【0108】
また、光を作用させる方法としては、例えば、バインダー層に紫外線を照射する方法などが挙げられる。光源としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等の紫外線を発光するランプ等を用いることが可能である。また、照射量は、10mJ/cm~50J/cmであることが好ましく、20mJ/cm~5J/cmであることがより好ましく、30mJ/cm~3J/cmであることが更に好ましく、50~1000mJ/cmであることが特に好ましい。
また、熱を作用させる方法としては、例えば、バインダー層を加熱する方法などが挙げられる。加熱する温度としては、50~200℃であることが好ましく、60~150℃であることがより好ましく、70~130℃であることが特に好ましい。
また、酸を作用させる方法としては、例えば、バインダー層に予め酸を添加しておく方法、バインダー層に光酸発生剤を添加しておき、光をトリガーとして酸を発生させる方法、バインダー層に熱酸発生剤を添加しておき、熱をトリガーとして酸を発生させる方法などが挙げられる。これらのうち、光酸発生剤および熱酸発生剤を用いる方法が好ましい。
また、塩基を作用させる方法としては、例えば、バインダー層に予め塩基を添加しておく方法、バインダー層に光塩基発生剤を添加しておき、光をトリガーとして塩基を発生させる方法、バインダー層に熱塩基発生剤を添加しておき、熱をトリガーとして塩基を発生させる方法などが挙げられる。これらのうち、光塩基発生剤および熱塩基発生剤を用いる方法が好ましい。
【0109】
〔照射工程〕
照射工程は、偏光または無偏光を照射する工程、すなわち、配向規制力が付与されたバインダー層を形成する工程である。
また、照射工程は、上層としての光学異方性層を形成する際の塗布性を担保する観点から、バインダー層形成工程と第2塗布工程との間、または、バインダー層形成工程または第2塗布工程と同時に行う工程である。
ここで、「バインダー層形成工程と第2塗布工程との間」とは、バインダー層形成工程(例えば、熱重合)で形成したバインダー層に対して、第2塗布工程を施す前に、照射工程(例えば、偏光を照射する工程)を行うことをいう。
また、「バインダー層形成工程と同時」とは、バインダー層を形成する工程、例えば、光ラジカル発生によるオレフィン系モノマーの重合、および、光酸発生によるエポキシモノマーの重合などによりバインダー層を形成する工程と、照射工程(例えば、偏光を照射する工程)とを同時に行うことをいう。すなわち、バインダー層の重合に用いる光と、配向に用いる光が、同時に2つの作用を引き起こすことを意味する。
また、「第2塗布工程と同時」とは、バインダー層形成工程(例えば、光重合)で形成したバインダー層に対して、第2塗布工程を施す際に、照射工程(例えば、偏光を照射する工程)を同時に行うことをいう。
このうち、バインダー層形成工程と第2塗布工程との間に行う工程であることが好ましい。
【0110】
照射工程において、照射する偏光は特に限定されず、例えば、直線偏光、円偏光、および、楕円偏光が挙げられ、直線偏光が好ましい。
照射する方法としては、例えば、紫外線を偏光照射する方法が好ましく挙げられ、具体的には、偏光板(例えば、ヨウ素偏光板、二色色素偏光板、ワイヤーグリッド偏光板など)を用いる方法;プリズム系素子(例えば、グラントムソンプリズムなど)やブリュースター角を利用した反射型偏光子を用いる方法;偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法;などが挙げられる。
ここで、紫外線照射に用いる光源としては、紫外線を発生する光源であれば特に限定されず、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
【0111】
〔第2塗布工程〕
第2塗布工程は、バインダー層上に、光学異方性層を形成する重合性液晶組成物を直接塗布する工程である。
光学異方性層を形成する重合性液晶組成物を塗布する方法は特に限定されず、第1塗布工程と同様方の方法が挙げられる。
【0112】
〔光学異方性層形成工程〕
光学異方性層形成工程は、第2塗布工程の後に、光学異方性層を形成する工程であり、第2塗布工程で得られた塗膜に対して硬化処理(紫外線の照射(光照射処理)または加熱処理)を施すことにより形成することができる。
また、硬化処理の条件は特に限定されないが、光照射による重合においては、紫外線を用いることが好ましい。照射量は、10mJ/cm~50J/cmであることが好ましく、20mJ/cm~5J/cmであることがより好ましく、30mJ/cm~3J/cmであることが更に好ましく、50~1000mJ/cmであることが特に好ましい。また、重合反応を促進するため、加熱条件下で実施してもよい。
【0113】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、本発明の光学異方性層または本発明の光学積層体を有する、画像表示装置である。
本発明の画像表示装置に用いられる表示素子は特に限定されず、例えば、液晶セル、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と略す。)表示パネル、プラズマディスプレイパネル等が挙げられる。
これらのうち、液晶セル、有機EL表示パネルであるのが好ましく、液晶セルであるのがより好ましい。すなわち、本発明の画像表示装置としては、表示素子として液晶セルを用いた液晶表示装置、表示素子として有機EL表示パネルを用いた有機EL表示装置であるのが好ましい。
【0114】
〔液晶表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である液晶表示装置は、上述した本発明の光学異方性層または本発明の光学積層体と、液晶セルとを有する液晶表示装置である。
以下に、液晶表示装置を構成する液晶セルについて詳述する。
【0115】
<液晶セル>
液晶表示装置に利用される液晶セルは、VA(Vertical Alignment)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、またはTN(Twisted Nematic)であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子(棒状液晶化合物)が実質的に水平配向し、更に60~120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2-176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVA(Multi-domain Vertical Alignment)モードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n-ASMモード(Axially symmetric aligned microcell))の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58~59(1998)記載)および(4)SURVIVAL(Super Ranged Viewing by Vertical Alignment)モードの液晶セル(LCD(liquid crystal display)インターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、およびPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006-215326号公報、および特表2008-538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶性分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶性分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加時で黒表示となり、上下一対の偏光板の吸収軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10-54982号公報、特開平11-202323号公報、特開平9-292522号公報、特開平11-133408号公報、特開平11-305217号公報、特開平10-307291号公報などに開示されている。
【0116】
〔有機EL表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である有機EL表示装置としては、例えば、視認側から、偏光子、本発明の光学異方性層または本発明の光学積層体、および、有機EL表示パネルをこの順で有する態様が好適に挙げられる。
【0117】
<偏光子>
上記偏光子は、光を特定の直線偏光に変換する機能を有する部材であれば特に限定されず、従来公知の吸収型偏光子および反射型偏光子を利用することができる。
吸収型偏光子としては、ヨウ素系偏光子、二色性染料を利用した染料系偏光子、およびポリエン系偏光子などが用いられる。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子には、塗布型偏光子と延伸型偏光子があり、いずれも適用できる。
また、基材上にポリビニルアルコール層を形成した積層フィルムの状態で延伸および染色を施すことで偏光子を得る方法として、特許第5048120号公報、特許第5143918号公報、特許第4691205号公報、特許第4751481号公報、特許第4751486号公報を挙げることができ、これらの偏光子に関する公知の技術も好ましく利用することができる。
反射型偏光子としては、複屈折の異なる薄膜を積層した偏光子、ワイヤーグリッド型偏光子、選択反射域を有するコレステリック液晶と1/4波長板とを組み合わせた偏光子などが用いられる。
これらのうち、密着性がより優れる点で、ポリビニルアルコール系樹脂(-CH-CHOH-を繰り返し単位として含むポリマー。特に、ポリビニルアルコールおよびエチレン-ビニルアルコール共重合体からなる群から選択される少なくとも1つ)を含む偏光子であることが好ましい。
【0118】
偏光子の厚みは特に限定されないが、3μm~60μmであるのが好ましく、5μm~30μmであるのがより好ましく、5μm~15μmであるのが更に好ましい。
【0119】
<有機EL表示パネル>
有機EL表示パネルは、陽極、陰極の一対の電極間に発光層もしくは発光層を含む複数の有機化合物薄膜を形成した部材であり、発光層のほか正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、保護層などを有してもよく、またこれらの各層はそれぞれ他の機能を備えたものであってもよい。各層の形成にはそれぞれ種々の材料を用いることができる。
【実施例
【0120】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0121】
[実施例1-1]
冷却管、温度計、および撹拌機を備えたフラスコに、溶媒として2-ブタノン5質量部を仕込み、フラスコ内に窒素を5mL/min流しながら、水浴加熱により還流させた。ここに、下記モノマーmA-52を50質量部、下記モノマーmB-2を20質量部、下記モノマーmC-1を30質量部、重合開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を1質量部と、溶媒として2-ブタノン5質量部を混合した溶液を、3時間かけて滴下し、さらに3時間還流状態を維持したまま撹拌した。反応終了後、室温まで放冷し、2-ブタノン30質量部を加えて希釈することで約20質量%の重合体溶液を得た。得られた重合体溶液を大過剰のメタノール中へ投入して重合体を沈殿させ、回収した沈殿物をろ別し、大量のメタノールで洗浄した後、50℃において12時間送風乾燥することにより、上述した繰り返し単位A-52、繰り返し単位B-2、および、繰り返し単位C-1を下記表1に示す質量部で有する共重合体P-1を得た。
【化24】
【0122】
[実施例1-2~1-11および比較例1-1]
下記表1に示す繰り返し単位を形成するモノマーとして、合成した各モノマーを用い、下記表1に示す重量平均分子量となるように重合開始剤の添加量を変更した以外は、実施例1で合成した重合体P-1と同様の方法で、共重合体を合成した。
なお、下記表1中、繰り返し単位A-9、繰り返し単位B-2などの構造は、上述した各繰り返し単位の説明において記載したものと同様である。
【0123】
合成した各共重合体について、上述した方法で重量平均分子量を測定した。結果を下記表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
次に、実施例1-4、1-9および1-11ならびに比較例1-1で合成した共重合体については、以下に示す方法で光学積層体を作製し、以下に示す評価を行った。
【0126】
[実施例2-1]
〔バインダー層の作製〕
アクリルモノマー(PETA、大阪有機化学工業(株)製)(100質量部)、光重合開始剤(IRGACURE819、BASF社製)(3質量部)、下記光酸発生剤(B-1-1)(5.0質量部)、および、共重合体P-4(2.0質量部)をメチルエチルケトン(300質量部)に溶解して、バインダー層形成用溶液を調製した。調製したバインダー層形成用溶液を、洗浄済みガラス基板上にスピンコートし、室温で、365nmのUV-LEDを用いて、照射量500mJ/cmの紫外線を照射した。その後、120℃で1分アニリーリングすることで、バインダー層を作製した。膜厚は約3μmであった。また、バインダー層の表面エネルギーは、50mN/mであった。
【化25】
【0127】
〔照射工程(配向機能付与)〕
得られたバインダー層に、室温で、ワイヤーグリッド偏光子を通したUV光(超高圧水銀ランプ;UL750;HOYA製)を25mJ/cm(波長:313nm)照射し、配向機能(規制力)を付与した。
【0128】
〔光学異方性層(上層)の形成〕
市販の液晶化合物(ZLI-4792、メルク社製)(100質量部)、光重合開始剤(イルガキュア907、BASF社製)(3質量部)、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)(1質量部)、および、下記水平配向剤(0.3質量部)をメチルエチルケトン(193質量部)に溶解して、光学異方性層形成用溶液を調製した。
上記配向機能(規制力)を付与したバインダー層上に、上記の光学異方性層形成用溶液をワイヤーバーコーター#2.2で塗布し、60℃で2分間加熱し、60℃に維持したまま、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量300mJ/cmの紫外線を照射して光学異方性層を形成し、光学積層体を作製した。
【化26】
【0129】
[実施例2-2]
共重合体P-4に代えて、共重合体P-9を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で、光学積層体を作製した。
【0130】
[実施例2-3]
棒状液晶化合物に代えて、下記液晶化合物L-3および下記液晶化合物L-4をそれぞれ50質量部用いた以外は、実施例2-2と同様の方法で、光学積層体を作製した。
なお、下記液晶化合物L-3およびL-4のアクリロイルオキシ基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、下記液晶化合物L-3およびL-4は、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。
【化27】

【0131】
[実施例2-4]
棒状液晶化合物に代えて、下記液晶化合物L-5および下記液晶化合物L-6をそれぞれ50質量部用いた以外は、実施例2-2と同様の方法で、光学積層体を作製した。
【化28】

【0132】
[実施例2-5]
棒状液晶化合物に代えて、下記液晶化合物L-7を用いた以外は、実施例2-2と同様の方法で、光学積層体を作製した。
【化29】
【0133】
[実施例2-6]
共重合体P-9に代えて、共重合体P-11を用い、アクリルモノマー(PETA、大阪有機化学工業(株)製)に代えて、下記液晶化合物L-1および下記液晶化合物L-2を用い、下記垂直配向剤S-1(1.0質量部)および下記垂直配向剤S-2(1.0質量部)を添加した以外は、実施例2-3と同様の方法で、光学積層体を作製した。
【化30】


【0134】
[実施例2-7]
共重合体P-9に代えて、共重合体P-11を用い、アクリルモノマー(PETA、大阪有機化学工業(株)製)に代えて、下記液晶化合物L-8(83質量部)、L-9(15質量部)およびL-10(2質量部)を用い、上記垂直配向剤S-1(1.0質量部)およびS-2(1.0質量部)を添加した以外は、実施例2-3と同様の方法で、光学積層体を作製した。
【化31】
【0135】
〔風ムラ〕
2枚の偏光板をクロスニコルに設置し、その間に、作製したバインダー層のサンプルを設置してスジ状のムラの有無を観察し、以下の基準で風ムラの評価を行った。結果を下記表2に示す。
<評価基準>
A:ムラが視認できない。
B:ムラがほとんど視認できない。
C:ムラが視認できる。
【0136】
〔上層塗布性〕
作製したバインダー層の表面エネルギーを測定し、以下の基準で上層塗布性を評価した。結果を下記表2に示す。
<評価基準>
A:45mN/m以上
B:40mN/m以上、45mN/m未満
C:30mN/m以上、40mN/m未満
D:30mN/m未満
【0137】
〔液晶配向性〕
2枚の偏光板をクロスニコルに設置し、その間に得られたバインダー層および光学異方性層を積層したサンプルを設置して光漏れの程度を観察し、以下の基準で評価した。結果を下記表2に示す。
<評価基準>
A:光漏れがない。
B:光漏れがほとんどない。
C:光漏れが観察される。
【0138】
【表2】
【0139】
表1および表2に示す結果から、繰り返し単位Cを有していない共重合体を用いると、バインダー層形成時の風ムラ、および、形成したバインダー層の上層塗布性が劣ることが分かった(比較例2-1)。
これに対し、光などの作用により分解して極性基を生じる開裂基を側鎖に含む繰り返し単位Cを有する共重合体を用いると、バインダー層形成時の風ムラを抑制することができ、また、形成したバインダー層の上層塗布液に対する塗布性および液晶配向性も良好となることが分かった(実施例2-1~2-7)。