(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】タンパク質強化食品製品
(51)【国際特許分類】
A23L 33/17 20160101AFI20221206BHJP
【FI】
A23L33/17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021067649
(22)【出願日】2021-04-13
(62)【分割の表示】P 2019504858の分割
【原出願日】2017-07-28
【審査請求日】2021-05-07
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500561528
【氏名又は名称】コオペラティ・コーニンクレッカ・アヴェベ・ユー・エイ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルティーヌ・エリザベト・マリー-ルイーズ・アシエ
(72)【発明者】
【氏名】ミレーヌ・パトリス・ドミニク・コゼット
(72)【発明者】
【氏名】ゼンホン・チェン
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-530127(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1423527(CN,A)
【文献】特表2013-544530(JP,A)
【文献】特表2004-538015(JP,A)
【文献】米国特許第03962465(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、
少なくとも3wt.%の酸分解アミロペクチンジャガイモデンプン、及び少なくとも2wt.%の
ザラザラの口当たりを有する完全に変性したタンパク質を含
み、前記酸分解アミロペクチンジャガイモデンプンが、前記タンパク質のザラザラの口当たりをマスクする、タンパク質強化食品製品(NutriDeliS)。
【請求項2】
前記酸分解アミロペクチンジャガイモデンプンの量が、3~45wt.%である、請求項1に記載のNutriDeliS。
【請求項3】
少なくとも8wt.%の完全に変性したタンパク質を含む、請求項1又は2に記載のNutriDeliS。
【請求項4】
少なくとも12wt.%の完全に変性したタンパク質を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のNutriDeliS。
【請求項5】
脂肪、油、炭水化物、繊維、ミネラル、塩、糖、酸、微量栄養素、ビタミン、抗酸化剤、フラボノイド、着色料、香味化合物、増粘剤及び保存料の群から選択される1つ若しくは複数の食品グレードの成分;並びに/又は食品成分の果物、野菜、肉、魚、乳製品のうちの1つ若しくは複数を更に含み;並びに、1つ又は複数の医薬化合物を更に任意選択で含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のNutriDeliS。
【請求項6】
支持体又は型なしで少なくとも1日の間重力下で形状を変えないゲルとして定義される固体ゲルである、請求項1から5のいずれか一項に記載のNutriDeliS。
【請求項7】
100~45000cPの粘度を有する溶融形態にある、請求項1から5のいずれか一項に記載のNutriDeliS。
【請求項8】
単回食品分量の形態の、請求項1から6のいずれか一項に記載の少なくとも1つのNutriDeliSを含む、パッケージ。
【請求項9】
前記単回食品分量が、ブロック、スライス、ディスク、シュレッド、ボール又はオーバルから好ましくは選択される、三次元形状を有する、請求項8に記載のパッケージ。
【請求項10】
タンパク質のザラザラの口当たりをマスクしつつ、健常対象におけるタンパク質強化食品を供する
非治療的方法であって、
1)請求項1から6のいずれか一項に記載のNutriDeliSを用意する工程;
2)前記NutriDeliSを加熱して、100~45000cPの粘度を有する溶融NutriDeliSを得る工程;
3)前記溶融NutriDeliSを供する工程、
を含む、方法。
【請求項11】
前記NutriDeliSが、別の食品製品と、好ましくは、パスタ、麺類、米、パン、ジャガイモ、デザート又はアイスクリームの群から選択される、供することが可能な分量の食事又は食事ベースと組み合わされている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
タンパク質欠乏を患っている対象において、タンパク質強化に使用するための、請求項1から7のいずれか一項に記載のNutriDeliS。
【請求項13】
ゲル化食品製品を作製する方法であって、水、
少なくとも3wt.%の酸分解アミロペクチンジャガイモデンプン、及び少なくとも2wt.%の
ザラザラの口当たりを有する完全に変性したタンパク質を混合する工程、前記混合物を加熱して前記デンプンを完全に糊化する工程、並びに、少なくとも5時間の間前記混合物を冷却して前記ゲル化食品製品を得る工程を含
み、前記酸分解アミロペクチンジャガイモデンプンが、前記タンパク質のザラザラの口当たりをマスクする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品及び栄養補助食品の分野におけるものである。
【背景技術】
【0002】
緒言
タンパク質は、脂肪及び炭水化物とともに、3種類の主要栄養素のうちの一つである。タンパク質は、生体内で多くの種類の機能性タンパク質へと転換されるアミノ酸を供給するので、我々の食物によって、十分なタンパク質が供給されることが重要である。
【0003】
今日の社会において多くの人々が、タンパク質の摂取量の増加から恩恵を受けるであろう。タンパク質の摂取量がより高いと、筋肉の蓄積増加が可能となるので、例えばスポーツマンは、タンパク質の摂取量の増加から恩恵を受けることが多い。
【0004】
更に、高齢者では胃の容量が減少していることが多い。こういった人々の場合、十分なタンパク質を供給するのに必要な普通食の量が多すぎることがしばしばである。これにより、全体的な健康にとって否定的な結果をともなって、理想よりも低いタンパク質の摂取量に帰結する。高齢者にとってのさらなる問題とは、彼らは多くの場合、食べるのが比較的遅いということである。多量のタンパク質が存在することに起因する不安定な食事は、冷えた場合あまり魅力的でなくなるか、そうでなければ、供された状態を失っている可能性が高い。
【0005】
また、タンパク質要求の上昇をともなう様々な疾患が存在する。このような疾患を患っている患者の場合、タンパク質の摂取量を高めることが非常に望まれるが、これは、食欲不振よって、そうでなければ、十分に食べることができないことによって、難しい課題である。
【0006】
現在、これらの問題を解決するために、様々な高タンパク質食品が存在する。例えば、は、タンパク質の摂取量を増大するのに使用される、プロテイン・バーやプロテイン・シェイクが存在する。しかし、タンパク質に伴う問題とは、タンパク質が深刻な異味やザラザラの口当たりを、特により高濃度で伝える恐れがあるということである。このようなことはバーにおいてもシェイクに対しても、不快である。
【0007】
その結果、特に、比較的小さな容積でタンパク質を大量に供給する必要がある食品及び栄養補助食品の場合、こういった異味やザラザラの口当たりは、多くの人々がタンパク質の摂取量を増やすことを妨げている。
【0008】
シェイクに伴うさらなる問題とは、タンパク質が懸濁液中に存在していることである。そのような懸濁液は本質的に不安定であり、飲食前に撹拌又は振とうが必要であるが、なぜなら、懸濁タンパク質は比較的急速に沈降する可能性が高いからである。
【0009】
異味もザラザラの口当たりも無く、少量でタンパク質を大量に供給することができ、
普通の食事の形態で、ホットでもコールドでも使用することができ、且つ、供するときから飲食するときまで依然として安定な均質な製品である、食品製品があることが望ましいであろう。
【0010】
WO 2016/01940には、タンパク質4~98%又は食物繊維4~98%を含む、任意のゲル化剤をベースとするゲルが記載されている。このようなゲルは、満腹感を増し、総食物摂取量を減らすと言われている。しかし、これらのゲルは、必ずしもデンプンゲル化剤をベースとしておらず、更には必ずしも熱可逆性(thermoreversible)ではない。
【0011】
WO 2016/014912には、藻類タンパク質及びゼラチン又はペクチン等のゲル形成材料を含む高タンパク質ゲル化食品製品が記載されている。これらのゲルは、必ずしも熱可逆性ではなく、且つデンプンゲル化剤をベースとしていない。
【0012】
WO 03/015538には、なかでもデンプンとすることができる任意の種類のゲル化剤をベースとした、粘度が制御された食品香味システムが記載されている。加えて、多くの実施形態では、熱可逆性のゲル化は望まれていないが、ゲルは熱可逆性であってよい。
【0013】
WO 2001/1078526には、少なくとも95wt.%のアミロペクチンを含む分解地下デンプン又は塊茎デンプンを含む、食品製品に使用するための可逆性ゲル化剤が記載されている。しかし、これは、タンパク質の存在に関しては言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】WO 2016/01940
【文献】WO 2016/014912
【文献】WO 03/015538
【文献】WO 2001/1078526
【発明の概要】
【0015】
本発明は、水と、デンプン熱可逆性ゲル化剤と、少なくとも2wt.%のタンパク質とを含む、タンパク質強化食品製品に関する。タンパク質-強化食品製品は栄養送達システム(NutriDeliS)であり、これは、タンパク質の量を増加した栄養を提供するのに使用される。好ましくは、食品製品は、溶融食品製品、すなわち液化食品製品であり、これは溶融状態の食品製品である。溶融食品製品はまた、加熱によりゲルを溶融した後には、液化ゲルと呼ぶこともできる。溶融食品製品は、例えば、パンにおいて、オーブンによる又はマイクロ波による等の、既知の任意の手段によって、そのゲル化状態の食品製品を加熱することにより、得ることができる。マイクロ波は、少なくとも実際の目的に際し、好ましい。成分に関する本発明の組合せによれば、ゲル化状態及び溶融状態の両方において、食品製品の快い味と口当たりが提供される。溶融とは、本文脈において、熱可逆性ゲルを加熱すると観察される液化として解釈されたい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】冷却時の、デンプン熱可逆性ゲル化剤を含む食品製品の粘度の図である。
【
図2】冷却時の、寒天を含む食品製品の粘度の図である。
【
図3】冷却時の、ペクチンを含む食品製品の粘度の図である。
【
図4】冷却時の、ゼラチンを含む食品製品の粘度の図である。
【
図5】ゲル化剤がある場合及び無い場合の食品製品におけるタンパク質沈降(25℃、5分)の図である。
【
図6】唾液の影響下での、寒天を含む食品製品の分解の図である。
【
図7】唾液の影響下での、ペクチンを含む食品製品の分解の図である。
【
図8】唾液の影響下での、ゼラチンを含む食品製品の分解の図である。
【
図9】唾液の影響下での、デンプン熱可逆性ゲル化剤を含む食品製品の分解の図である。
【
図10】さまざまな食品製品の官能評価の結果の図である。
【
図11-1】11a~dは、実施例5に記載の調理済みパスタ用のソースの図である。
【
図11-2】11e、11fは実施例5に記載の調理済みパスタ用のソースの図である。
【
図12-1】様々な熱可逆性ゲル化剤をベースとしたゲル化タンパク質強化食品製品のゲル化挙動の比較の図である。
【
図12-2】様々な熱可逆性ゲル化剤をベースとしたゲル化タンパク質強化食品製品のゲル化挙動の比較の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
タンパク質強化食品製品の一利点としては、デンプン熱可逆性ゲル化剤が、タンパク質の周囲に平滑なマスキング層を生み出すことによって、タンパク質の味と口当たりとをマスクする機能を有することである。この効果は、食品製品がそのゲル化状態である場合とともに、溶融、液体状態で食品製品が得られるように食品製品が加熱される場合に生じる。これによって、高濃度のタンパク質に通常伴うザラザラの口当たりと強い異味とを回避し得ることが確実となる。同時に、飲食中に平滑な層が分解することによりクリーミーな口当たりが提供され、これによって、更に食品製品の見かけの味と口当たりが改善される。
【0018】
さらなる一利点としては、本発明の組成物は、冷却した場合でも、溶融後かなり長い間その液体状態を保持することである。これによって、タンパク質強化食品製品が、飲食前に加熱することによって溶融(「液化」)し得ること、及び、室温(18~25℃、好ましくは20℃)で最大4時間までの間その液体状態を保持し得ることが確実となる。このようなことは、その食品が飲食中に冷えやすいので大容量の食品を食するのが困難な人々にとって、一利点である。本発明による溶融ゲルをベースとした食品製品は、こういった条件下でも、その液体で、飲食可能な状態を保持する。
【0019】
8wt.%の濃度で、典型的なデンプン熱可逆性ゲル化剤が、0~7℃で、液化食品製品をゲル化するのに約4時間を要する。比較として、他のハイドロコロイド熱可逆性ゲル化剤は、同じ温度で、数分以内にゲル化する。
【0020】
タンパク質強化食品製品は、デンプン熱可逆性ゲル化剤を含む。これは、液体の又は半液体の食品製品のゲル化を引き起こす作用剤であり、デンプンに由来したものであり、且つ、熱可逆性であるゲルを提供する。換言すれば、これはデンプンベース(又はデンプン由来)の熱可逆性ゲル化剤である。
【0021】
ゲル化剤とは、そうでなければ液体、又はせいぜいわずかに粘稠であろう製品のゲル化を引き起こす作用剤である。ゲル化剤の種類によって変化する特定の、既知の濃度で組成物中にゲル化剤を溶解させることによって、これを行うことができる。ゲル化剤はまた、より低い濃度で含めることもできるが、この場合、液体製品を結合又は増粘することを可能とする。多くのゲル化剤が知られるが、なかでも、ペクチン、デンプン、寒天、グアーガム、タンパク質ベースのゲル化剤、アルギン酸、カラギーナン、ジェランガム、コンニャク、ローカストビーンガムとキサンタンガムとの組み合わせ及びゼラチンである。ほとんどのゲル化剤は不可逆的にゲルを形成する、その場合の形成されたゲルを加熱するとゲルを破壊するが、加熱ゲルを冷却してもゲル化状態への反転をもたらさない。
【0022】
熱可逆性ゲル化剤は、ゲルを溶融した後、ゲル化状態に戻ることを可能にするゲル化剤の種類である。したがって、溶融及びゲル化の多重サイクルを、交互の加熱冷却によって、行うことができる。熱可逆性ゲル化剤は例えば高温で、液体製品に含めることができ、その後の冷却によってゲルの形成が起きる。このゲルを加熱するとゲルの溶融が生じ、これによって、製品が液体形態又は溶融形態に戻る。続いて行う冷却によってゲルがリフォームする。
【0023】
一般的に、従来の熱可逆性ゲル化剤をベースとしたゲルを冷却する場合、冷却は付随的に製品のゲル化状態への戻りと結びついている。既知の熱可逆性ゲル化剤は、例えば、ゼラチン、寒天、ペクチン、デンプン、ジェランガム、及びキサンタンガムとローカストビーンガム又はグアーガムの組合せである。したがって、そのようなゲル化剤は高温状態で液体であり、低温状態でゲルである。製品が冷たいが依然として液体である、明白な中間状態は存在しない。
【0024】
現在、デンプン熱可逆性ゲル化剤は、冷却した後長い間、他の熱可逆性ゲル化剤よりもはるかに長く、その溶融状態を保持する特性を有することがわかっている。デンプンベースの熱可逆性ゲル化剤は、4℃及び8wt.%濃度で少なくとも2時間、好ましくはすくなくとも4時間の、ゲルセット速度が低いことによって特徴付けられる。しかし、溶融状態及びゲル化状態の両方において、デンプン熱可逆性ゲル化剤の多糖鎖がタンパク質の味と口当たりにマスキング効果を発揮する。加えて、溶融状態及びゲル化状態の両方において、本発明の食品製品は、タンパク質の沈降を防止する。
【0025】
デンプンは、マメ科植物、穀物、地下又は塊茎の各デンプン等の、任意の種類であってもよいが、好ましくは地下デンプン又は塊茎デンプンである。デンプン熱可逆性ゲル化剤を得るのに使用してもよいデンプンの種類は、例えば、米、小麦、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ、タピオカ又はヤムの各デンプンであり、好ましくは地下デンプン又は塊茎デンプン、好ましくはジャガイモデンプン及びタピオカデンプン、最も好ましくはジャガイモデンプンである。他の種類のデンプンに勝って、地下デンプン又は塊茎デンプンを、特にジャガイモデンプン使用する一利点としては、地下デンプン又は塊茎デンプンが他のデンプンよりも純粋な形態で得ることができることである。加えて、これらは、透明性がより高く、呈色、臭気及び異味がより低い。
【0026】
様々なデンプンの種類のうち、アミロースのアミロペクチンに対する任意の比を使用することができる。普通のデンプンは、一般に、約20wt.%のアミロースと80wt.%のアミロペクチンとを含む。アミロースが豊富なデンプンはアミロース含量がより高く、いわゆる「ワキシー」デンプンは、デンプンの重量に対して、好ましくは95wt.%超、より好ましくは98wt.%超であり、アミロペクチン含量が高い。本発明では、デンプン熱可逆性ゲル化剤は、ワキシーなトウモロコシデンプン又は小麦デンプン、又はアミロペクチンジャガイモデンプン等ワキシーデンプンであることが好ましい。とても好ましい一実施形態では、デンプンは、アミロペクチンジャガイモデンプンである。
【0027】
デンプン熱可逆性ゲル化剤は化工(modified)デンプンであってよく、これには、分解による化工があり、分解の内でも、酸による、酸化による或いは酵素的若しくは機械的方法又は組合せ方法による化工がある。酸化、例えば過酸化物酸化若しくは次亜塩素酸酸化による分解又は酸による分解が好ましく、酸によるのが最も好ましい。適切な酸は当技術分野で既知であり、それには、例えば、HCl、H2SO4及びHNO3が挙げられる。食用用にはHClが好ましい。
【0028】
とても好ましいデンプン熱可逆性ゲル化剤は、例えば、酸分解(acid-degraded)ワキシーデンプン、好ましくは酸分解アミロペクチンジャガイモデンプンである。
【0029】
デンプン熱可逆性ゲル化剤はまた(追加的に)、デンプンのエーテル化、エステル化又はアミド化によって等の、わずかな安定化によって化工されてよい。したがって、デンプン熱可逆性ゲル化剤はまた、安定化デンプンとすることができる。適切な安定化デンプンは、例えばアセチル化又はヒドロキシプロピル化デンプンである。
【0030】
化工の組み合わせも想定される。しかし、化工によって熱可逆性ゲル化剤の熱可逆性が影響を受けないことが重要である。加えて、化工は、本発明の食品製品の口当たりの改善に関して重要な態様であるので、飲食中にデンプンの分解を妨げないことが求められる。
【0031】
デンプン熱可逆性ゲル化剤は、RVA(ラピッドビスコアナライザー、Newport Scientific Pty Ltd社)によって決定される、ピーク粘度を一般に有する。脱イオン水中の45%のデンプン(db)。粘度は、パドル速度が160rpmの状態で、12℃/分で35℃から95℃までに温度を上昇させることによって測定することができる。次いで、95℃で3分間維持し、次いで100cp~13000cpの範囲で12℃/分で35℃に低下させる。
【0032】
デンプン熱可逆性ゲル化剤は、1.180mg/mlの試料濃度及び50.0μlの注入容量で、aF4法(フィールドフローフラクショネーション)によって決定される分子量を一般に有する。平均分子量は、0.01×106~50×106g/molの範囲である。
【0033】
とても好ましい一実施形態では、デンプン熱可逆性ゲル化剤は、好ましくは、0.05×106~0.5×106g/molの間の分子量、及び/又はRVA(ラピッドビスコアナライザー、Newport Scientific Pty Ltd社)によって決定される、200~1000cpの粘度を有する、酸分解アミロペクチンジャガイモデンプンである。脱イオン水中の45%のデンプン(db)。粘度は、パドル速度が160rpmの状態で、12℃/分で35℃から95℃までに温度を上昇させることによって測定した。次いで、95℃で3分間維持し、次いで12℃/分で35℃に低下させる。
【0034】
当技術分野で既知であるように、デンプン熱可逆性ゲル化剤は、デンプンの適切な化工によって得ることができる。とても好ましいデンプン熱可逆性ゲル化剤は、WO 2001/1078526に開示されているデンプンであり、これは、そこに記載の通りに得ることができる。
【0035】
デンプン熱可逆性ゲル化剤は、タンパク質をマスクするのに十分な量で本発明の食品製品中に存在する。好ましくは、その量とは、食品製品がゲル化状態を得ることを可能にするようなものである。食品製品の種類に応じて、これは、食品製品の総重量に対して、3wt.%以上の食品製品中のデンプン熱可逆性ゲル化剤の量で既に存在することができる。一般的に、しかし、食品製品の総重量に対して、5wt.%超の量、好ましくは8wt.%超の量等の、より高い量が望ましい。デンプン熱可逆性ゲル化剤は、最大35wt.%の量まで、好ましくは最大40wt.%まで、より好ましくは最大45wt.%まで、存在することができる。本発明のさらなる一利点は、デンプン熱可逆性ゲル化剤は、かなり高い濃度まで比較的軟らかいゲルを形成することである。これが意味するところは、高炭水化物エネルギーの存在を提供し、同時に排便の頻度を高め得る、比較的高い固形分含量を有するゲルを得ることができることである。
【0036】
タンパク質強化食品製品は、組成物の総重量に対して、少なくとも2wt.%のタンパク質を更に含む。本発明の一利点は、多糖鎖のネットワーク中にタンパク質を含めることにより、デンプン熱可逆性ゲル化剤の存在がタンパク質の味と口当たりをマスクすることである。理論に束縛されることを望むものではないが、デンプン熱可逆性ゲル化剤は、タンパク質の周りに薄い流体力学的シェルを形成するものと思われる。ゲル化状態では、これが意味するところは、タンパク質がゲルのネットワーク中に取り込まれ、味と口当たりの両方をマスクするということである。
【0037】
驚くべきことに、これはまた、ゲルの液体状態でも機能する。加熱によりゲルを溶融した後、タンパク質は明らかに、ゲルネットワーク自体が溶融によって乱された場合であっても、ゲルネットワークを形成した多糖類と依然として会合したままである。したがって、タンパク質の味と口当たりはまた、溶融食品製品中にマスクされている。
【0038】
本発明の食品製品は、ゲル化状態とすることができる。結果として、好ましい実施形態では、本発明は、支持体又は型(mold)なしで少なくとも1日の間重力下で形状を変えないゲルとして定義される固体ゲルである食品製品に関する。室温で、これは105cP超の粘度を有するゲルと同等である。
【0039】
他の好ましい実施形態では、食品製品は100~45000、好ましくは100~35000cP、より好ましくは500~30000cP、又は更により好ましくは100~25000cPの粘度を有する、溶融食品製品である。溶融食品製品の粘度は、19rpmのパドル速度で37℃でラピッドビスコアナライザー(RVA)により、溶融後に決定される。当業者であれば、ある特定の粘度のゲル、又は溶融ゲルを得るために、デンプン熱可逆性ゲル化剤の濃度を調整する方法を知っている。
【0040】
タンパク質濃度がより高いと、タンパク質が豊富な食品に伴う負の影響がより明白になる。本発明のさらなる一利点は、タンパク質がかなりの量で存在する場合でも、タンパク質の異味とザラザラの口当たりとがマスクされることである。したがって、特に好ましい実施形態では、本発明による食品製品のタンパク質含量は、食品製品の総重量に対して、少なくとも2wt.%のタンパク質、より好ましくは少なくとも8wt.%のタンパク質、より好ましくは少なくとも12wt.%、更により好ましくは少なくとも15wt.%のタンパク質である。本食品製品中のタンパク質含量は45wt.%程度の高さの場合さえある。或いは、これは、食品製品の総重量に対して、35wt.%程度の高さであってよい。
【0041】
本食品製品中のタンパク質はどのような形態であってもよい。これは、天然タンパク質であってもよいが、完全に又は部分的に変性した又は加水分解されたタンパク質であってもよい。好ましくは、タンパク質は完全に又は部分的に変性したタンパク質であり、なぜなら、こういったタンパク質は入手するのに最も安価だからである。タンパク質の代わりの好ましい種類は、完全に又は部分的に加水分解されたタンパク質である。このようなタンパク質は、消化し、摂取するのが容易である。とても好ましい一代替実施形態では、加水分解されたタンパク質は、部分的に加水分解されたタンパク質である。タンパク質は、更に、上記形態の任意の混合物であってよい。
【0042】
タンパク質は、エンドウマメタンパク質、ダイズタンパク質、乳タンパク質、乳清タンパク質、米、小麦、藻類タンパク質、カゼイン、肉タンパク質、魚タンパク質、オート麦タンパク質、キャノーラタンパク質又はジャガイモタンパク質等の、食品グレードの任意の種類でよい。好ましいタンパク質の種類は、ダイズタンパク質、乳タンパク質、カゼイン、乳清タンパク質、エンドウマメタンパク質及びジャガイモタンパク質、最も好ましくはジャガイモタンパク質である。当業者であれば、構成アミノ酸プロファイルに基づいて、タンパク質の種類を容易に調整し、特定のアミノ酸要求に一致するようにタンパク質の種類を適合させることができる。
【0043】
例えば、筋肉増強の改善を可能とし得る食品製品を提供するために、分枝鎖アミノ酸が豊富なタンパク質を、例えば、乳清タンパク質、カゼイン、又はジャガイモタンパク質を使用することができる。
【0044】
あらゆる種類のタンパク質が、多くの供給源から市販されている。
【0045】
本発明の食品製品は他の成分を追加的に含み、その結果、製品の栄養価及び/又は味を高めてよい。したがって、食品製品は、脂肪、油、炭水化物、繊維、ミネラル、塩、糖、酸、微量栄養素、ビタミン、抗酸化剤、フラボノイド、着色料、香味化合物、増粘剤、及び保存料の群から選択される1つ又は複数の食品グレードの成分を更に含んでよい。
【0046】
適切な脂肪としては、例えば、バター、ラード、ダックファット、ココナッツ脂肪が挙げられる。
【0047】
適切な油としては、例えば、ヒマワリ油、オリーブ油、サフラワー油、アーモンド油、クルミ油、パーム油、ダイズ油、キャノーラ油、ヤシ油、ナタネ油、ラッカセイ油等の植物油、並びに微生物油及び魚油が挙げられる。多価不飽和脂肪酸含有量が高い微生物油及び魚油が好ましい。代替の好ましい油はオリーブオイル、ヒマワリ油及びパーム油である。
【0048】
適切な炭水化物としては、例えば、デンプン等の、中でも、上に定義の化工及び/又は安定化デンプン等の、ただしデンプン熱可逆性ゲル化剤を除いて、多糖、更には、マルトデキストリン、ラフィノース、スタキオース等のオリゴ糖及びフラクトオリゴ糖が挙げられる。
【0049】
適切な繊維としては、たとえば、b-グルカン、イヌリン、ペクチン、リグニン及びアルギン酸、更にはヘミセルロース、キチン、キサンタンガム、難消化性デンプン、フルクタン及びマルトデキストリン等の可溶性食物繊維並びに不溶性食物繊維が挙げられる。
【0050】
適切なミネラルとしては、例えば、カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、及びマグネシウムが挙げられる。
【0051】
適切な塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム又はヨウ化カリウムが挙げられる。
【0052】
適切な糖としては、単糖類及び二糖類、例えばグルコース、フルクトース、ガラクトース、スクロース、グルコースシロップ、マルトース、ラクトースが挙げられる。一部の実施形態では、本発明の食品製品は、ラクトースフリーである。
【0053】
適切な酸としては、例えば、酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、及び乳酸が挙げられる。
【0054】
適切な微量栄養素としては、例えば、鉄、コバルト、クロム、銅、ヨウ素、マンガン、セレン、亜鉛、ホウ素、及びモリブデン、更にはヨウ素、フッ素、及びリンが挙げられる。
【0055】
適切なビタミンとしては、例えば、ビタミンA、C、D、E、K、B1、B2、B3、B5、B6、B7、B8、B9、B11及びB12が挙げられる。
【0056】
適切な抗酸化剤としては、例えば、ポリフェノール、アントシアニン、アスコルビン酸、トコフェロール、カロテノイド、没食子酸プロピル、tert-ブチルヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、及びブチル化ヒドロキシトルエンが挙げられる。
【0057】
適切なフラボノイドとしては、例えば、ルチン及びケンペロールが挙げられる。
【0058】
適切な着色料としては、例えば、人工及び天然の食品着色料、人工的着色料の中でも、キノリンイエロー、カルモイシン、ポンソー4R、パテントブルーV、グリーンS、又は代替的にブリリアントブルーFCF、インジゴチン、ファストグリーンFCF、エリスロシン、アルラレッドAC、タートラジン、サンセットイエローFCF、が挙げられる。天然着色料としては、カロテノイド、クロロフィリン、アントシアニン、及びベタニンが挙げられる。
【0059】
適切な香味化合物としては、アスパルテーム、チクロ、サッカリン、ステビア、スクラロース、アセスルファムK、及びモグロシド等の人工及び天然甘味料、並びに例えばバニリン又はグルタミン酸塩が挙げられる。
【0060】
適切な増粘剤としては、例えば、グアーガム、寒天、種々のデンプンベースの非熱可逆性ゲル化剤、ペクチン、ゼラチン、アルギン酸及びカラギーナンが挙げられる。
【0061】
適切な保存料としては、例えば、安息香酸又はその塩、ヒドロキシ安息香酸、乳酸、硝酸塩、亜硝酸塩、プロピオン酸及びその塩、二酸化硫黄並びにソルビン酸が挙げられる。
【0062】
代替的に又は追加的に、食品製品は、さらなる成分の果物、野菜、肉、魚、乳製品のうちの1つ又は複数を含んでよい。
【0063】
適切な果物としては、例えば、リンゴ、ナシ、ベリー、パイナップル、マンゴー、ココナッツ、モモ又はバナナが挙げられる。
【0064】
適切な野菜としては、例えば、ニンジン、タマネギ、ニンニク、キャベツ、豆、レンズ豆、ブロッコリー及びトマトが挙げられる。
【0065】
適切な肉としては、例えば、豚、牛、鶏、七面鳥又は馬肉が挙げられる。
【0066】
適切な魚としては、例えばタラ、シーバス、スケトウダラ、サケ、マス及びティラピア、並びに貝、エビ及びイカが挙げられる。
【0067】
適切な乳製品としては、例えば、ミルク、クリーム、ヨーグルト、チーズ又はサワークリームが挙げられる。
【0068】
好ましい実施形態では、さらなる成分は、刻まれて若しく細断されて、又はなおすりつぶしもされて若しくは融合もされて、食品製品中に存在する。
【0069】
代替的に又は追加的に、食品製品は、1つ又は複数の医薬化合物、例えば降圧薬、鎮痛剤又はプロトンポンプ阻害剤を含んでよい。
【0070】
本発明の明確な一利点とは、本食品製品はゲル化形態とすることができ、このゲル化形態は、続いて食品製品を加熱することにより溶融させることができることである。溶融した後、食品製品は少なくとも4時間その液体状態を保持し、その結果、本発明によって、タンパク質のマスキングにおいてゲルに関して有利な効果を有する食品製品が提供されるとともに、いっぽう、液体状態での飲食が可能になる。したがって、本発明は、好ましくは液体又は半液体の食品製品に関するものであり、この場合、液体又は半液体とは、100~45000、好ましくは100~35000cP、より好ましくは500~30000cP、又は更により好ましくは100~25000cPの粘度を有すると定義される。溶融食品製品の粘度は、19rpmのパドル速度で37℃でラピッドビスコアナライザー(RVA)により、溶融後に決定される。
【0071】
したがって、本発明は、上に定義のタンパク質を添加することで補充することにより、タンパク質が濃縮されている、例えばパスタソース等のソースにも関するが、これは、パスタソースの普通の成分を更に含む。
【0072】
食品製品は、食品製品にデンプン熱可逆性ゲル化剤を添加することにより、及び同時に又は任意の順序で順次にさらなるタンパク質を添加することにより、調製してよい。続いて、食品製品を冷却して、休ませてゲル化食品製品を得てよい。ゲル化食品製品は、そのまま飲食してもよいが、好ましくは、飲食予定の場所に食品製品を送るのに、食品製品のゲル化状態を使用する。ついで、飲食の場所でゲル化食品製品を、マイクロ波による等の、簡単に加熱することによって、食品製品が溶融食品製品に変換され、室温に冷却した後もゲル化状態に戻ることなく、この溶融食品製品を、非常にゆっくりでも飲食することが可能である。
【0073】
一部の実施形態では、加熱前に供することが可能な分量に切ってもよいブロックで、又は加熱して多くの分量の溶融食品製品を提供することが可能であるブロックで、本発明の食品製品を提供することができる。しかし、好ましい実施形態では、本発明の食品製品は、単回食品分量(single food portion)として提供される。単回食品分量は、好ましくは、ブロック、スライス、ディスク、シュレッド、ボール又はオーバルから選択される三次元形状を有することが好ましい。単回食品分量として本発明の食品製品を提供することは、個人のタンパク質の要求、医薬化合物に対する個人の要件、ベジタリアン、ビーガン、コーシャやハラル食品製品等の個人の食物願望に基づいて、食品製品の組成物を個人のニーズ又は味に調整することができるという利点を有する。
【0074】
したがって、本発明は、単回食品分量の形態の、少なくとも1つの食品製品を含む、パッケージに更に関する。好ましくは、パッケージは、複数の単回食品分量、例えば異なる個体のニーズに調整した複数の分量、又は単一個人のニーズに調整した複数の食品分量を含むとともに、いっぽう、少なくとも食品製品の味及び組成において、様々な食物を可能とする。こういった食品分量の一利点とは、食品分量はゲル化状態で配給することができ、このゲル化状態によって、食品製品をプレートに移す際に滴り又はこぼれがまったくないので配給がより容易となることであり、且つ、量を量ることなく、明確に規定された食品分量が可能になることである。
【0075】
これらの実施形態は、個人向けに食品分量を提供するという利点を更に有し、こういった分量は一つの場所で大規模に製造することが可能であるとともに、いっぽう、特定の場所での飲食用に、個々のニーズに調整することが可能である。本食品製品の飲食に好ましい場所とは、高齢者住宅、病院、及び様々な食物ニーズや願望が個人の住民につながり得るが、食品流通に対する大規模な要件によって、個人のニーズや要望を満たすことが困難なその他の場所、である。本発明は、効率的に製造及び配給することが可能な一人前の食品分量を提供する。
【0076】
本発明は、
1)上に定義の食品製品を用意する工程
2)食品製品を加熱して、100~45000cP、好ましくは35000cPの粘度を有する溶融食品製品を得る工程。
3)当該食品を供する工程
を含む、タンパク質強化食品を供する(serving)方法を更に提供する。
【0077】
好ましい実施形態では、食品製品は、たとえば、パスタ、麺類、米、パン、ジャガイモ、デザート又はアイスクリームの群から選択される、供することが可能な分量の食事又は食事ベース等の他の食品製品と組み合わせることができる。
【0078】
これらの実施形態によって、本発明の食品製品に基づいて、例えば、供する場所で調製されたパスタ上へと適用することが可能なパスタソースに基づいて、個人の食品要件を満たすことが可能となる。或いは、食品製品はチリとすることができ、供する場所で調製された、又は他の場所で得られた、米又はパンに添えて供される。食品製品はまた、パンの上に適用されるスプレッドとすることができる。ゲル化状態でのスプレッドを加熱することで、普通のスプレッド粘度を有する溶融スプレッドが提供されるが、この溶融スプレッドを冷却しパンの上に適用することができ、そののち、食品製品はそのゲル化状態に戻ることなく、供することができる。
【0079】
とても好ましい実施形態では、食品製品は、例えばアイスクリームやの別の種類のデザート上に適用するためのソースとすることができる。かかる実施形態では、食品製品は長い間その液体状態を保持するという食品製品の利点は、アイスクリーム上でさえのとおり、特に明らかであり、溶融し、続いて冷却したゲルは4時間以内にそのゲル化状態に戻ることはない。この時間は、食べるのが最も遅い人にとってさえ、食品製品を飲食するのに十分である。
【0080】
結果として、本発明は、ゲル化又は溶融形態で、上に定義のタンパク質強化食品を供する工程含む、健常対象におけるタンパク質強化の方法を更に提供する。好ましくは、供することは溶融形態である。好ましい健常対象としては、例えば、スポーツマンや高齢者が挙げられる。
【0081】
本発明は、タンパク質欠乏を患っているか、そうでなければ多量のタンパク質を必要とする対象において、タンパク質強化に使用する食品製品を、並びに、タンパク質欠乏を患っているか、そうでなければ多量のタンパク質を必要とする患者に、タンパク質を補充する方法も、更に提供する。本発明のこの使用に想定される対象には、罹患している及び/又は栄養不良の対象が含まれる。
【0082】
本発明は、上に定義のゲル化食品製品を作製する方法を更に提供するが、水と、デンプン熱可逆性ゲル化剤と、少なくとも2wt.%のタンパク質とを混合する工程、混合物を加熱してデンプンを完全に糊化する工程、及び少なくとも5時間、好ましくは少なくとも10時間、混合物を冷却してゲル化食品製品を得る工程を含む。好ましい実施形態では、ゲル化食品製品を、続いて加熱して溶融させて、溶融状態の食品製品を得ることができる。少なくとも70℃の温度へと、好ましくは少なくとも80℃の温度へと、より好ましくは少なくとも90℃の温度へと、加熱する工程が好ましい。好ましくは、食品製品をパッケージに注いで、冷却前に単回食品分量を用意する。
【0083】
明快さと簡潔な記述を目的として、本明細書では、特徴については同一又は別々の実施形態の部分として記述するが、本発明の範囲は、記載された特徴の全ての又は一部の組合せを有する実施形態を含み得ることは理解されるであろう。
【0084】
次に、以下の非制限的実施例により本発明について、更に例示する。
【実施例】
【0085】
実施例1~4において、溶融食品製品を、成分を一緒に混合し、デンプンを完全に糊化することによって調製する。この混合物を、例えば室温で又は更により低い温度で一晩冷却して、ゲル化状態の食品製品を得ることが可能であろう。次いで、このゲル化食品製品を加熱すると、溶融食品製品が得られるであろう。このようにして得られた溶融食品製品は、成分を混合しデンプンを糊化した後に直接得られた混合物と化学的に正確に同じものであるが、なぜなら、当該デンプンは、デンプン熱可逆性ゲル化剤であり、このゲル化剤のゲル化によって、食品製品にそのテクスチャ以外の変化がもたらされないからである。したがって、効率上の理由ため、冷却し、ゲル化し且つ溶融させる工程に関して中間工程無しで、成分を混合し、デンプンを糊化した後に得られた混合物を使用して、本発明の利点を示す。実施例5及び実施例6では、中間工程も示されている。
【0086】
(実施例1)
様々なゲル化剤を有するソースの粘度に及ぼす温度の影響
材料:
1. ゲル化剤:
Eliane Gel 100: AVEBE社製、オランダ、酸分解アミロペクチンジャガイモデンプン;
ゼラチン: Suntran Chemical Co. Ltd社製、中国、食品グレードのゼラチン(200ブルーム);
寒天: Suntran Chemical Co. Ltd社製、中国、食品グレードの寒天;
ペクチン: Foodchem International Corporation社製、中国、シトラスペクチンパウダー(LM);
2. タンパク質:
エンドウマメタンパク質単離物: Cosucra社製、ベルギー;
3. 糖: Suiker Unie社製、オランダ、糖(スクロース);
4. 塩: Akzo Nobel Functional Chemicals B.V.社製、オランダ、塩;
【0087】
方法:
試料を以下のレシピにより調製した:
【0088】
【0089】
試験方法:
Eliane Gel 100、寒天、ペクチン及びゼラチンを、それぞれ、水道水を有するビーカーに添加した。次いでEliane Gel 100が完全に糊化し、寒天、ペクチン及びゼラチンが完全に溶解するまで、試料を水浴中100℃で調理した。タンパク質を、糖と塩と乾燥形態で混合し、次いで穏やかに撹拌しながら上の溶液に添加した。次いで、混合物を水浴中90℃で5分間調理した。
【0090】
各試料25gをRVA(ラピッドビスコアナライザー、Newport Scientific Pty Ltd社)のカップに移し、次いで、RVAを使用して測定した。試料を50℃で測定し、この温度で5分間保持し、その後、溶液を19rpmのパドル速度で4℃/分の速度で10℃に冷却した。試料の粘度を記録した。
【0091】
結果及び結論:
温度が50℃から10℃に低下すると、デンプン熱可逆性ゲル化剤で調製した試料の粘度は非常に安定していたことが
図1において見られる。これが示すところは、10℃に冷却した場合であっても、溶融後のゲルは、長い間その溶融状態を保持することである。デンプン熱可逆性ゲル化剤のこの特性によって保証されることは、室温で及び更に低い温度で食品製品を容易に飲食することができるとともに、いっぽう、冷却された液体製品の外観と口当たりを保持し、且つ同時にタンパク質の味をマスクすることができることである。
【0092】
図2、
図3及び
図4には、それぞれ、寒天、ペクチン及びゼラチンで調製した試料の粘度が示されている。粘度は、温度を下げて数分以内に上昇した。
図2が示すところによれば、温度が35℃に低下した場合、寒天で調製した試料は、数分以内により濃厚(粘度が上昇)となった。温度が30℃より低くなった後、粘度は劇的に且つ即座に上昇した。寒天のように、ゼラチンで調製した試料の粘度は(
図4を参照されたい)、30℃に冷却されると上昇し始め、次いで、温度が15℃より低くなった後に著しく更に上昇した。ゲル化状態に復帰するプロセスは、通常の室温(18~25℃、好ましくは20℃)よりも更に高い温度に達した後、数分以内に起こった。ペクチンで調製した試料では(
図3)、35℃から粘度が上昇し始め、次いで、温度の低下とともに着実に上昇した。またペクチンの場合、室温に到達して数分以内に、試料はゲル化状態に復帰していた。これが示すところは、寒天、ペクチン及びゼラチンのゲル化剤で調製した試料は、室温まで冷却した後、最大で数分のタイムスパン内でゲル化状態に戻ることであり、つまり、このようなゲルをベースとした食品製品は、室温以下に冷却した後、液体状態よりもむしろ、ゲル化状態で飲食しなければならないであろう。
【0093】
(実施例2)
デンプン熱可逆性ゲル化剤がある場合及び無い場合の食品製品のタンパク質沈降の比較
方法:
1. ゲル化剤:
Eliane Gel 100: AVEBE社製、オランダ、酸分解ワキシージャガイモデンプン;
2. タンパク質:
AVEBE社製、オランダ、ジャガイモタンパク質(Solanic 100);
3.糖: Suiker Unie社製、オランダ、糖(スクロース);
4.塩: Akzo Nobel Functional Chemicals B.V.社製、オランダ、塩;
【0094】
方法:
試料を以下のレシピに従い調製した:
【0095】
【0096】
Eliane Gel 100を、水道水を有するビーカーに添加し、次いでEliane Gel 100が完全に糊化するまで、穏やかに撹拌しながら水浴中100℃で調理した。タンパク質、糖及び塩を、レシピ(table 2(表2))にしたがい、それぞれ、ビーカーに添加し、次いで、90℃で5分間調理した。混合物を25℃に冷却し、100mlのメスシリンダーに移した(
図5)。混合物を25℃で5分間維持し、次いで、上清をピペットで採取した。上清を秤量し、そしてタンパク質沈降を、以下の式に従って計算した。
分離%=100 *上清(g)/全試料(g)
【0097】
結果及び結論:
【0098】
【0099】
Table 3(表3)が示すところによれば、デンプン熱可逆性ゲル化剤が適用された場合、食品製品におけるタンパク質沈降は有意に減少した。このことから、デンプン熱可逆性ゲル化剤によって、飲食中にタンパク質強化食品製品の構造を均質とすることができることが示唆されている。
【0100】
(実施例3)
飲食中のデンプン熱可逆性ゲル化剤の分解
材料:
1. ゲル化剤:
Eliane Gel 100: AVEBE社製、オランダ、酸分解ワキシージャガイモデンプン;
ゼラチン: Suntran Chemical Co. Ltd社製、中国、食品グレードのゼラチン(200ブルーム);
寒天: Suntran Chemical Co. Ltd社製、中国、食品グレードの寒天;
ペクチン: Foodchem International Corporation社製、中国、シトラスペクチンパウダー(LM);
2. α-アミラーゼ: α-アミラーゼ(BAN 480)はNovozymes社から得た。
【0101】
方法:
Eliane Gel 100 45wt.%、寒天5wt.%、ペクチン12wt.%及びゼラチン22wt.%を含む溶液を水道水で調製した。Eliane Gel 100を、水浴中100℃で5分間調理することにより糊化させた。寒天、ペクチン及びゼラチンを穏やかに撹拌しながら水浴中90℃で加熱することによって水に完全に溶解させた。こうして、高度に類似の粘度を有する4種の試料溶液を用意した。
【0102】
次いで、全ての試料を、さらなる測定のために水浴中37℃で保った。試料25gをRVAカップに移し、37℃で19rpmのパドル速度で10分間RVAを使用して、粘度を測定した。測定後、唾液モデルとしてα-アミラーゼ15μgを添加し、測定を繰り返した。α-アミラーゼがある場合及び無い場合の試料の粘度を記録した。
【0103】
結果及び考察:
他の熱可逆性ゲル化剤(寒天、ペクチン及びゼラチン)全ての粘度は、アミラーゼの添加前、また添加後、測定中になんら変化を示さなかった(
図6、
図7及び
図8を参照されたい)。Eliane Gel 100(
図9)のみが、アミラーゼを添加するとゲル化剤の顕著な分解を示したが、この分解は粘度の減少によってわかる。これが示すところは、デンプン熱可逆性ゲル化剤は唾液の影響下で飲食中に迅速に分解されることが可能なことである。唾液の影響下に食品製品の分解によってクリーミーな感覚が提供され、その結果、クリーミーな口当たりにつながる。
【0104】
(実施例4)
様々な熱可逆性ゲル化剤で調製した食品製品の官能評価
材料:
1. ゲル化剤:
Eliane Gel 100: AVEBE社製、オランダ、酸分解ワキシージャガイモデンプン;
ゼラチン: Suntran Chemical Co. Ltd社製、中国、食品グレードのゼラチン(200ブルーム);
寒天: Suntran Chemical Co. Ltd社製、中国、食品グレードの寒天;
ペクチン: Foodchem International Corporation社製、中国、シトラスペクチンパウダー(LM);
2. タンパク質: エンドウマメタンパク質単離物: Cosucra社製、Gelgium;
3. 糖:Suiker Unie社製、オランダ、糖(スクロース)
4. 塩:Akzo Nobel Functional Chemicals B.V.社製、オランダ、塩;
5. トマトピューレ: Sligro BV社製、オランダ、トマトピューレ(Grand Gerard)
6. 乳クリーム: Campina社製、オランダ、Verse Slagroom(40%脂肪);
【0105】
方法:
食品製品を以下のレシピ(table 4(表4)を参照されたい)によって調製した。全てのゲル化剤(Eliane Gel 100及び寒天)溶液は、先の方法を使用することによって水道水で調製し、その後、乳クリームを添加した。タンパク質パウダー、糖及び塩を予備混合し、次いで、それぞれ、上の溶液に添加した。次いで、トマトピューレを混合物それぞれに添加した。ソースを、水浴中100℃で5分間調理し、その後、30℃に冷却し、官能パネル試験用の20mlの官能カップに移した。
【0106】
官能パネルは10人のよく訓練されたヒトで構成されていた。食品製品の官能指標は、以下の属性によって評価し、強度によって採点した(table 5(表5)参照されたい)。属性定義は、1が最低強度を表し、10が最高強度を表す、1から10までのスコアで各パネリストがマークした。マークされた属性は、口当たり(滑らかさ)、クリーミーさ、異味及び全体的嗜好性とした。
【0107】
【0108】
結果及び結論:
官能評価のフォームを収集し、様々な試料に関する各属性の平均値を比較に使用した。これがtable 5(表5)に表示される結果につながった。
【0109】
ゲル化剤(Eliane Gel 100及び寒天)で調製したタンパク質ソースは口当たりがより良好で及びクリーミーさがより高いが、異味についてはより低いことがわかる。全体として、ゲル化剤で調製したソース類は、パネリストによってより好まれた。寒天と比較し、Eliane Gel 100で調製したソースは、アミラーゼ分解結果の成果に一致している、よりクリーミーでより良好な口当たりを示した。Eliane Gel 100で調製したソースはパネリストによってより好まれたが、異味は寒天で調製したものよりも低い。この結果が示すところは、Eliane Gel 100はタンパク質の異味を大幅にマスクすることができ、且つタンパク質強化食品製品に対して口当たり、クリーミーさ及び全体的な嗜好性を向上させることができることである(
図10を参照されたい)。
【0110】
【0111】
(実施例5)
作製の準備及び調理済みパスタ用への熱可逆性高タンパク質ゲル化ソースの使用
材料:
1. ゲル化剤:
Eliane Gel 100: AVEBE社製、オランダ、酸分解ワキシージャガイモデンプン;
2. タンパク質:
AVEBE社製、オランダ、ジャガイモタンパク質(Solanic 100);
3. 糖:Suiker Unie社製、オランダ、糖(スクロース)
4. 塩:Akzo Nobel Functional Chemicals B.V.社製、オランダ、塩;
5. トマトピューレ: Sligro BV社製、オランダ、トマトピューレ(Grand Gerard)
6. 乳クリーム: Campina社製、オランダ、Verse Slagroom(40%脂肪);
【0112】
方法:
熱可逆性高タンパク質ゲル化ソースを以下(table 6(表6)を参照されたい)のレシピに従い調製した。
【0113】
【0114】
準備:
Eliane Gel 100を水に分散させ、Eliane Gel 100が完全に糊化するまで(透明になる)、オー・バン・マリー(au bain marie)100℃で調理した。次いで、残りの成分を添加し、十分に混合し、その後、オー・バン・マリー100℃で更に5分間調理した。混合物を室温に冷却し、次いで、カップ又はボックスに充填した(
図11a及び
図11bを参照されたい)。
【0115】
ソースにカバーをし、0~4℃で一晩保存して、ゲルを形成した。ゲル化ソースを型抜き(demolded)又は所定の形状に切断することができる。ゲル化ソースを、事前調理のパスタの上に置いた。飲食の準備の用意ができている調理済みパスタを冷蔵した(
図11c及び
図11dを参照されたい)。
【0116】
ゲル化したソースが溶融するまで調理済みパスタをおよそ2分間電子レンジで加熱した。溶融したソースをパスタと混合し、飲食の準備ができた(
図11eを参照されたい)。
【0117】
ソースは、室温で少なくとも2時間液体状態を維持することができる(
図11fを参照されたい)。
【0118】
(実施例6)
様々なゲル化剤による高タンパク質ゲルの溶融挙動の比較。
ゲルを実施例1記載のとおり調製した。液体混合物を透明なプラスチックカップに入れ、ゲル化状態に完全に(
図12a)達するまで冷蔵庫で7℃に冷却した。その後、ゲルを水浴90℃で又はマイクロ波中(1~2分間900ワット)で加熱して、液体形態で溶融ゲルを得た。マイクロ波又は水浴加熱は、同じように機能した。種々のゲル化剤による溶融ゲルの画像を
図12bに示す。
【0119】
溶融したゲルを25℃に維持した。数分以内で、ペクチン、ゼラチン及び寒天をベースとしたゲルは、ゲル化状態に戻った。20分後の、ペクチン、ゼラチン及び寒天をベースとした再度完全にゲル化した製品の画像を
図12cに示す。
【0120】
対照的に、デンプン熱可逆性ゲル化剤Eliane Gel 100をベースとしたゲルは、25℃で数時間その液体状態を保持した。25℃で1時間後の、デンプン熱可逆性ゲル化剤をベースとした溶融ゲルの画像も、
図12cに示す。
【0121】
これらの写真からわかることは、デンプン熱可逆性ゲル化剤をベースとした食品製品は、室温に冷却した後、長く液体の状態で飲食できること、いっぽう、これに対して、
非デンプン性の熱可逆ゲル化剤をベースとした食品製品はまだ熱い場合のみ液体状態で飲食することができ、したがって、溶融後速やかに飲食しなければならないこと、である。
【0122】
(実施例7)
従来技術の製品との比較。
WO 03/015538の実験1を、化工ワキシートウモロコシデンプンの添加がある場合及び無い場合で再度実施した。留意すべきことは、化工の種類及び程度に関してなんら定義の無い、WO 03/015538の化工ワキシートウモロコシデンプンは、熱可逆性ゲル化デンプンとみなすことはできないことである。これは、以下の比較でわかる。
【0123】
2種類のバターガーリックをtable 7(表7)のレシピA及びBにしたがって、調製した。
【0124】
【0125】
結果をtable8(表8)に示す。結果が示すところは、化工ワキシートウモロコシデンプンがガーリックバターのゲル化挙動を顕著に変化させないことである。熱可逆性ゲル化挙動は、化工ワキシートウモロコシデンプンの存在によるものではない。加えて、結果が示すところは、WO 03/015538のガーリックバターは、室温に冷却した後長期間その液体形状を保持することができないことである。したがって、WO 03/015538によるガーリックバターは、熱可逆性ゲル化デンプンを含まず、その結果、本発明のタンパク質強化食品製品と結びついている好都合な長い溶融時間を提示しない。
【0126】