(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/00 20060101AFI20221206BHJP
B23Q 1/01 20060101ALI20221206BHJP
B23Q 1/58 20060101ALI20221206BHJP
B23Q 11/08 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B23Q1/00 H
B23Q1/01 G
B23Q1/01 H
B23Q1/01 T
B23Q1/58 Z
B23Q11/08 A
B23Q11/08 Z
(21)【出願番号】P 2021067961
(22)【出願日】2021-04-13
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】寺川 慎二
(72)【発明者】
【氏名】河原崎 拓真
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】荒木 泉
(72)【発明者】
【氏名】橋本 良太
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-301134(JP,A)
【文献】実開平01-166030(JP,U)
【文献】特開2003-266256(JP,A)
【文献】特開2001-121301(JP,A)
【文献】特開2006-334682(JP,A)
【文献】特開平06-155203(JP,A)
【文献】登録実用新案第3179056(JP,U)
【文献】特開平08-025162(JP,A)
【文献】特開2016-203265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00
B23Q 1/01
B23Q 1/58
B23Q 5/34
B23Q 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸頭とワークを相対移動させてワークを加工する工作機械において、
床面に設置されるベッドと、
前記ベッドに立設され、ベッドと共に第1の穴部を形成する第1のコラムと、
前記ベッドに前記第1のコラムと第1の水平方向において離間させて立設され、ベッドと共に第2の穴部を形成する第2のコラムと、
前記ベッドに、前記第1の穴部と前記第2の穴部に進入可能に、前記第1の水平方向に移動可能に取り付けられ前記ワークが載置されるテーブルと、
前記第1の水平方向と垂直な方向である第2の水平方向に移動可能に前記第1のコラムと前記第2のコラムの間に架設されるサドルと、
前記サドルに鉛直方向に移動可能に取り付けられる主軸頭と、
前記ベッドは、前記第2の水平方向に延びる第1のウィング部と、第2のウィング部と、該第1のウィング部と第2のウィング部の間に配置された本体部とを有しており、平面視においてH形に形成されており、前記第1のコラムは前記第1のウィング部に取り付けられ、前記第2のコラムは前記第2のウィング部に取り付けられ、
前記第1のウィング部、本体部、第2のウィング部を貫いて、前記ベッドの上面に沿って前記第1の水平方向に延び、前記第2の水平方向に離間し互いに平行に延びる一対のガイドレールを有する第1の案内と、
前記一対のガイドレールの間に配置された固定子と、該固定子に対して対面するように前記テーブルに固定された可動子とを含む前記テーブルを前記第1の水平方向に往復駆動するリニアモータと、
を具備
し、
前記リニアモータの固定子は、前記ベッドの上面に沿って位置調整可能に固定されるベース部材に固定されており、前記一対のガイドレールは、該ベース部材の前記第1の水平方向に延びる側縁部に当接可能に前記ベッドの上面に固定されることを特徴とした工作機械。
【請求項2】
前記サドルは、中心部に鉛直方向に貫通する開口部が形成されており、前記主軸頭が該開口部内に保持される請求項
1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記工作機械は、該工作機械を包囲する外側カバー組立体を更に具備し、該外側カバー組立体は、少なくとも前面カバー、対向する一対の側面カバーおよび上面カバーを含み、前記前面カバーが、オペレータに該外側カバー組立体内にアクセス可能とする開閉可能なドアを含む請求項
1に記載の工作機械。
【請求項4】
前記工作機械は、前記前面カバーのドアの上方部分を閉鎖する内側カバー組立体を更に具備し、該内側カバー組立体は、前記サドルにおいて前記前面カバーに対面する側面に内側カバーを含み、該内側カバーは、前記第2の水平方向に伸縮可能となっている請求項
3に記載の工作機械。
【請求項5】
前記工作機械は、前記一対の側面カバーのいずれか又は両方に、開口可能な可動パネルを有する請求項
3に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッドと、ベッド上を水平な軸線方向に往復移動なテーブルと、テーブルの移動方向に離間、配置された2つのコラムと、テーブルに対して垂直に移動可能に2つのコラム間に架設されるサドルと、テーブルに対面するようにサドルにZ軸方向に移動可能に保持される主軸頭とを備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ベッド上で左右方向にテーブルを移動案内するX軸案内と、ベッドに設けられたテーブルが左右方向に進入できるようにX軸案内を前後方向に跨ぐ穴部が設けられたコラムと、コラムの上に設けられたY軸案内に沿って前後方向に移動可能に配置されたサドルと、サドルに配置され、上下方向に移動する主軸頭とを備えたマシニングセンタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のマシニングセンタは、機械の構成が非対称形状を呈しているために、X軸、Y軸、Z軸の送り装置のサーボモータなどから発生する熱や工作機械周辺の温度変化による機械の熱変形に偏りがあり、これが加工精度を低下させる1つの原因となっている。
【0005】
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、工作機械運転時のモータなどから発生する熱や工作機械周辺の温度変化によって発生する機械の熱変形による加工精度の低下を最小限にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、主軸頭とワークを相対移動させてワークを加工する工作機械において、床面に設置されるベッドと、前記ベッドに立設され、ベッドと共に第1の穴部を形成する第1のコラムと、前記ベッドに前記第1のコラムと第1の水平方向において離間させて立設され、ベッドと共に第2の穴部を形成する第2のコラムと、前記ベッドに、前記第1の穴部と前記第2の穴部に進入可能に、前記第1の水平方向に移動可能に取り付けられ前記ワークが載置されるテーブルと、前記第1の水平方向と垂直な方向である第2の水平方向に移動可能に前記第1のコラムと前記第2のコラムの間に架設されるサドルと、前記サドルに鉛直方向に移動可能に取り付けられる主軸頭と、前記ベッドは、前記第2の水平方向に延びる第1のウィング部と、第2のウィング部と、該第1のウィング部と第2のウィング部の間に配置された本体部とを有しており、平面視においてH形に形成されており、前記第1のコラムは前記第1のウィング部に取り付けられ、前記第2のコラムは前記第2のウィング部に取り付けられ、前記第1のウィング部、本体部、第2のウィング部を貫いて、前記ベッドの上面に沿って前記第1の水平方向に延び、前記第2の水平方向に離間し互いに平行に延びる一対のガイドレールを有する第1の案内と、前記一対のガイドレールの間に配置された固定子と、該固定子に対して対面するように前記テーブルに固定された可動子とを含む前記テーブルを前記第1の水平方向に往復駆動するリニアモータとを具備し、
前記リニアモータの固定子は、前記ベッドの上面に沿って位置調整可能に固定されるベース部材に固定されており、前記一対のガイドレールは、該ベース部材の前記第1の水平方向に延びる側縁部に当接可能に前記ベッドの上面に固定されている工作機械が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、工作機械の構造を略対称にすることができ、構造体全体でバランスのよい熱変位となるので加工精度の低下を最小限にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の好ましい実施形態による工作機械の斜視図である。
【
図5】ベッドの一部をテーブルと共に示す側面図である。
【
図6】
図2において、VIで示す部分を拡大して示す部分拡大図である。
【
図7】第1の位置にある内側カバー組立体と共に示す
図1と同様の工作機械の斜視図である。
【
図8】内側カバー組立体が第2の位置にあり、サドルが退避位置にある工作機械の斜視図である。
【
図9】内側カバー組立体を第2の位置に配置し、サドルを加工に用いるY軸の座標範囲内に配置した工作機械の斜視図である。
【
図10】内側カバーおよび工具マガジンと共に示す工作機械の平面図である。
【
図12】前面カバーのスライドドアが閉じた状態の外側カバー組立体を示す斜視図である。
【
図13】
図12の外側カバー組立体の前面カバーの内側を示す斜視図である。
【
図14】正面のスライドドアが開いた状態の外側カバー組立体を示す斜視図である。
【
図15】
図14の外側カバー組立体の前面カバーの内側を示す斜視図である。
【
図16】前面カバーのスライドドアおよび上面カバーの可動カバーが開いた状態で、ワークをクレーンで工作機械内に搬入する様子を示す斜視図である。
【
図17】2台の工作機械の間にワーク交換装置を配置した加工システムを示す斜視図である。
【
図21】加工システムの更に他の例を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
本発明の好ましい実施形態による工作機械100は、工場の床面に固定される基台としてのベッド102と、ベッド102上に取り付けられる第1のコラム130および第2のコラム140、第1のコラム130と、第2のコラム140の間に架設されるサドル150と、サドル150に取り付けられる主軸頭170と、主軸頭170が回転可能に支持する主軸172に対して対面するようにベッド102上に取り付けられるテーブル180を主要な構成要素として具備する。なお、本実施形態では、工作機械100の前方より工作機械100の正面(
図2)を見たときに、左右方向をX軸方向、前後方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とする。
【0010】
ベッド102は、
図4A、
図4Bに示すように、本体部104と、本体部104の一方の端部(図示する実施形態では、工作機械100の正面から見て左端)に結合された第1のウィング部106と、他方の端部(図示する実施形態では、工作機械100の正面から見て右端)に結合された第2のウィング部108とを具備している。第1のウィング部106および第2のウィング部108は、同様に形成されており、左右一対のウィング部を形成している。
【0011】
こうして、ベッド102は、平面視において、全体としてH形を呈する。つまり、ベッド102は、X軸方向の中心軸線Oxに関して前後対称に、かつ、Y軸方向の中心軸線Oyに関して左右対称に形成されている。また、ベッド102をH形にすることによって、工作機械100の正面側に前側スペースSFが、そして背面側に後側スペースSRが形成される。前側スペースSFは、オペレータの作業空間として使用することができる。後側スペースSRは、工具マガジン250のような工作機械100の周辺機器を配置するための空間として使用することができる。
【0012】
第1と第2のウィング部106、108の各々は、前側上面106a、108aと後側上面106b、108bと有している。ベッド102の上面には、一対の畝部114、116が形成されている。一対の畝部114、116は、第1のウィング部106、本体部104および第2のウィング部108を貫いて、X軸方向に中心軸線Oxに沿って平行に延びている。畝部114、116は、Y軸方向に互いに離間して配置されており、両者間にX軸方向に延びる凹所118が形成される。畝部114、116の各々の上面114a、116aには、X軸方向に延びる一対のX軸ガイドレール184、185が固定されている。
【0013】
第1のコラム(工作機械100の正面から見て左側のコラム)130は、前側脚部130a、後側脚部130b、前側脚部130aと後側脚部130bとの間に架設されている梁部130cとを有し、概ねC字形または門形に形成されている。本実施形態では、第1のコラム130は、前側脚部130aをベッド102の第1のウィング部106の前側上面106a、そして後側脚部130bを後側上面106bに固定することによって、ベッド102に固定されている。こうしてベッド102の第1のウィング部106と、第1のコラム130とによって、工作機械100の左端部にX軸方向に貫通する第1の穴部138が形成される。
【0014】
第2のコラム(工作機械100の正面から見て右側のコラム)140も同様に、前側脚部140a、後側脚部140b、前側脚部140aと後側脚部140bとの間に架設されている梁部140cとを有し、概ねC字形または門形に形成されている。本実施形態では、第2のコラム140は、前側脚部140aをベッド102の第2のウィング部108の前側上面108a、そして後側脚部140bを後側上面108bに固定することによって、ベッド102に固定されている。こうしてベッド102の第2のウィング部108と、第2のコラム140とによって、工作機械100の右端部にX軸方向に貫通する第2の穴部148が形成される。ベッド102と、コラム130と、コラム140を、前述のような構成とすることで、工作機械の構造を前後左右方向において略対称に構成することが可能となるので、バランスのよい熱変位となり、熱変位が加工精度へ及ぼす影響を低減することが可能となる。
【0015】
第1の穴部138と第2の穴部148は実質的に同一形状である。また、本実施形態では、第1の穴部138と第2の穴部148を貫通する方向がX軸方向である。
【0016】
ベッド102の上面には、ワークWを固定するテーブル180が取り付けられる。テーブル180の下面には、X軸ガイドレール184、185に沿って摺動するブロック182、183が取り付けられている。こうして、テーブル180は、ベッド102の上面においてX軸方向に往復移動可能となっている。図示するように、X軸ガイドレール184、185を第1の穴部138および第2の穴部148内まで延設することによって、テーブル180は第1の穴部138および第2の穴部148内まで進入可能となり、テーブル180のX軸方向のストロークを大きくすることが可能となる。また、X軸ガイドレール184、185を第1の穴部138および第2の穴部148内まで延設することによって、後述するワーク交換装置またはワーク搬送装置の構成の自由度が高くなる。
【0017】
工作機械100は、テーブル180をX軸方向に往復駆動するX軸送り装置として、X軸方向に延びるX軸リニアモータを具備している。X軸リニアモータは、ベッド102の上面に固定されたX軸方向に延びる固定子188と、固定子188に対面するようにテーブル180の底面に取り付けられた可動子190とを具備している。固定子188は、好ましくは、取付ベース186上に固定されており、取付ベース186が、ボルト(図示せず)のような締結具を用いて凹所118に固定されている。X軸方向のテーブル180の座標位置を検出する位置検出器としてX軸デジタルスケール(図示せず)をベッド102、例えば畝部114や畝部116の側面に取り付けることができる。
【0018】
また、X軸リニアモータの磁気吸引力を低減する目的で、可動子と固定子の位置関係を変更してもよい。たとえば、
図5の視点において、ベッド102上面の畝部114と畝部116のY軸方向中間位置に、Y軸方向に幅を、Z軸方向に深さを有し、さらにX軸方向に貫通する凹部を設ける。凹部は、自身のY軸と垂直な機械前方向側面および自身のY軸と垂直な機械後ろ方向側面に、それぞれ固定子を具備する。一方、テーブル180の底面には凸部を設ける。凸部は、自身のY軸と垂直な機械前方向側面および自身のY軸の垂直な機械後ろ方向側面に、それぞれ可動子を具備する。凸部は、可動子を具備した状態で、固定子を具備した状態の凹部の幅より小さい幅と、テーブル180とベッド102を組み合わせたとき凹部の底面に干渉しない程度の深さとを有する。つまり、ベッド102に設けられ固定子を具備する凹部に、テーブルに設けられ可動子を具備する凸部が、凹部に対して幅方向と深さ方向に所定の間隙を有し配置される構造で、X軸リニアモータを構成することができる。
【0019】
X軸送り装置は、リニアモータに限らず、例えばX軸方向に延設されたボールねじ(図示せず)、前記ボールねじに係合しテーブル180の底面に固定されたナット、該ボールねじの一端に連結されたX軸サーボモータ(図示せず)により構成してもよい。
【0020】
第1のコラム130の頂部および第2のコラム140の頂部には、サドル150が、X軸に垂直な水平方向(前後方向)に往復移動可能に取り付けられている。本実施形態では、第1のコラム130の頂部には、第1のコラム130の上面130dと、第1のコラム130において第2のコラム140に対面する側面の間の隅部に切欠き部134が形成されており、該切欠き部134にY軸方向に延びるY軸ガイドレール136が取り付けられている。サドル150の下面には、Y軸ガイドレール136に沿って摺動するブロック154が取り付けられている。
【0021】
同様に、第2のコラム140の頂部には、第2のコラム140の上面140dと、第2のコラム140において第1のコラム130に対面する側面の間の隅部に切欠き部144が形成されており、該切欠き部144にY軸方向に延びるY軸ガイドレール146が取り付けられている。サドル150の下面には、Y軸ガイドレール146に沿って摺動するブロック156が取り付けられている。なお、Y軸ガイドレール136とY軸ガイドレール146はそれぞれ、第1のコラム130の側面と第2のコラム140の側面に取り付けてもよい。
【0022】
こうして、サドル150は、第1のコラム130および第2のコラム140の頂部において、Y軸方向に往復移動可能となっている。工作機械100は、サドル150をY軸方向に往復駆動するY軸送り装置として、Y軸方向に延びる一対のY軸リニアモータを具備している。一対のY軸リニアモータは、第1のコラム130および第2のコラム140の各上面130d、140dに取り付けられたY軸方向に延びる固定子132、142と、固定子132、142に対面するようにサドル150の底面に取り付けられた可動子158、160とを具備している。
【0023】
Y軸方向のサドル150の座標位置を検出する位置検出器としてY軸デジタルスケールを第1のコラム130と第2のコラム140の一方に取り付けることができる。
図6には、一例として、第1のコラム130において、第2のコラム140に対面する側面にY軸デジタルスケール166aと、サドル150の底面にブラケット168を介して取り付けられた検出ヘッド166bが図示されている。
【0024】
Y軸送り装置は、リニアモータに限らず、例えばY軸方向に延設されたボールねじ(図示せず)、前記ボールねじに係合しサドル150の底面に固定されたナット、該ボールねじの一端に連結されたY軸サーボモータ(図示せず)により構成してもよい。
【0025】
サドル150の中央部には、開口部150aが、鉛直方向またはZ軸方向に貫通、延設されている。開口部150aには、主軸頭170がZ軸方向に往復移動可能に保持されている。主軸頭170は、ハウジング内に主軸172を回転軸線O周りに回転可能に支持している。主軸172は、ベッド102およびテーブル180へ向けてハウジングの下端からZ軸方向に突出している。こうして、主軸172と、テーブル180およびテーブル180に固定されているワークWとは互いに対面するように配置される。また、図示する実施形態では、主軸頭170のハウジングは、概ね直方体形状の外形を有している。主軸頭170のハウジングの4つの隅部の各々には、Z軸方向に延びるZ軸ガイドレール174が取り付けられている。サドル150と主軸頭170を、前述のような構成とすることで、工作機械の構造を前後左右方向において略対称に構成することが可能となるので、バランスのよい熱変位となり、熱変位が加工精度へ及ぼす影響を低減することが可能となる。
【0026】
サドル150の開口部150aは、本実施形態では、主軸頭170の外形に適合するように矩形状に形成されている。矩形状の開口部150aの4つの隅部にZ軸ガイドレール174に係合するブロックが取り付けられている。図示する実施形態では、該ブロックは、開口部150の上方部に取り付けられた4つの上部ブロック162と、開口部150aの下方部に取り付けられた4つの下部ブロック164とを含む。こうして、主軸頭170は、テーブル180およびテーブル180に固定されているワークWに対して接近、離反するように、Z軸方向に往復移動可能にサドル150に支持される。
【0027】
より好ましくは、Z軸ガイドレール174は、主軸頭170のハウジングのX軸に垂直な側面に取り付けられ、上部ブロック162および下部ブロック164は、サドル150の矩形の開口部150a内で、X軸に垂直な側面に固定されている。
【0028】
更に、工作機械100は、サドル150をZ軸方向に往復駆動するZ軸送り装置として、Z軸方向に延びるZ軸リニアモータを具備している。Z軸リニアモータは、主軸頭170のハウジングの側面に固定されたZ軸方向に延びる可動子176と、サドル150の開口部150aに固定された固定子161とを具備している。より好ましくは、Z軸リニアモータの可動子176は、主軸頭170のハウジングにおいて、X軸に垂直な側面に取り付けられ、固定子は可動子176に対面するように、開口部150a内で、X軸に垂直な側面に固定される。
【0029】
第1のコラム130と第2のコラム140との間に架設されるサドル150はX軸方向に長い形状となるので、上述のように、Z軸リニアモータを主軸頭170のハウジングにおいてX軸に垂直な側面およびサドル150の開口部150a内でX軸に垂直な側面に配置することによって、Z軸リニアモータが発生する力によるサドル150の変形を低減することができる。
【0030】
ここで、工作機械では、一般的に直交3軸方向の間の角度は正確に90°である必要がある。X軸およびY軸の水平度とZ軸の鉛直度は、それ自体単独で調整することができる。X軸およびY軸の水平度とZ軸の鉛直度がそれぞれ正確に調整できれば、X軸-Z軸間およびY軸-Z軸間の直角度も結果的に調整され得る。しかしながら、X軸およびY軸の水平度をそれぞれ単独で調整しても、X軸-Y軸間の直角度は自動的には調整されず、改めて調整しなければならない。上述のように、2つのY軸ガイドレール136、146は、第1のコラム130と第2のコラム140に取り付けられているので、双方を同時に2つのX軸ガイドレール184、185に対して調整することは難しい。
【0031】
そこで、本発明では、X軸ガイドレール184、185をY軸ガイドレール136、146に対して調整するようになっている。
図5を参照すると、ベッド102の凹所118に配設される取付ベース186は、畝部114、116の上面114a、116aから上方へZ軸方向に突出しており、この取付ベース186においてZ軸方向に突出した部分は、X軸ガイドレール184、185の下方側面に係合させることができる。取付ベース186の凹所118内における傾斜(Z軸周りの回転位置)を調整し、取付ベース186をベッド102に固定した後に、X軸ガイドレール184、185を取付ベース186に係合させることによって、2つのX軸ガイドレール184、185を同時に効率的に調整することが可能となる。この目的のために、取付ベース186のZ軸方向に突出した部分、すなわちX軸ガイドレール184、185の下方側面と係合する面は、互いに平行になるように機械加工する必要がある。
【0032】
なお、主軸頭170に作用する鉛直方向の力(重力)を相殺するために、主軸頭170のためのバランサを設けることができる。一例として、
図10、11に示すバランサは、主軸頭170に結合された連結部材230と、サドル150と連結部材230との間に結合された流体圧シリンダ232とを備えることができる。
【0033】
図10、
図11において、連結部材230は、X軸方向に突出するように主軸頭170の頂部に結合されているので、主軸頭170のZ軸方向のストロークを大きくできる。また、連結部材230はY軸方向に突出していてもよい。連結部材230は、1つではなく、複数の部材を含んでいてもよい。
【0034】
また、流体圧シリンダ232は、少なくとも部分的にサドル150内に埋設することができる。図示する実施形態では、流体圧シリンダ232は、ピストン棒232aがサドル150の上面から上方に突出するように、シリンダ部分がサドル150内に埋設されている。流体圧シリンダ232は、油圧シリンダまたは空圧シリンダとすることができる。主軸頭170の重量を相殺するように、流体圧シリンダ232に供給される作動流体の圧力を調節することができる。
【0035】
なお、
図11には、工具マガジン250の一例が示されている。この例では、工具マガジン250は、Z軸方向に延びる回転軸線Om周りに回転可能に設けられた円板254の周縁部に複数の工具252を保持するように形成されている。工具252は、エンドミルのような回転工具と、該回転工具を保持する工具ホルダとの組み合わせである。主軸頭170をY軸方向に後退させ、工具交換位置に割り出された工具252の上方に配置し、主軸頭170を工具252へ向けてZ軸方向に下動させ、主軸先端の工具装着穴(図示せず)内に、工具252のテーパ部(図示せず)を嵌合することによって1つの工具252が主軸172の先端部に装着される。工具252を主軸172の先端部に装着した後、主軸頭170をY軸方向に前進させることによって、工具252は主軸172の先端部に保持された状態で、工具マガジン250から抜去される。
【0036】
工作機械100は、更に、第1のコラム130および第2のコラム140の上方の空間へ切り屑やクーラントの飛散を防止する内側カバー組立体200を備えている。図示する実施形態では、内側カバー組立体200は、Y軸方向に伸縮可能な内側カバー202と、内側カバー202をY軸方向に駆動する駆動装置とを主要な構成要素として具備する。内側カバー202は、Y軸方向に伸縮可能な蛇腹構造またはテレスコピック構造を有している。
【0037】
本実施形態では、内側カバー202は三角屋根形の2つの斜面を有している。内側カバー202は、Y軸方向に伸縮自在な、例えば蛇腹部材から形成することができる。内側カバー202の一端がサドル150の前面に固定され、他端がフレーム204に固定されている。一例としてフレーム204は、X-Z平面に平行となるよう配置される板部材より成る本体部分204aと、本体部分204aの上端部において、X軸方向の各端部からY軸方向に延びる一対の腕部204b、204cとを有している。内側カバー202の前記他端は、本体部分204aの背面に固定されている。
【0038】
フレーム204は、Y軸方向に往復移動可能に第1のコラム130および第2のコラム140の上方に配設される。第1のコラム130の上面130dおよび第2のコラム140の上面140dには、該上面130d、140dから上方に突出する倒立L字形の支持部材206が固定されており、該支持部材206の上端にY軸方向に延びる板状のベース部材208が固定されている。
【0039】
ベース部材208の上面にY軸方向に延びるガイドレール214が取り付けられている。フレーム204の腕部204b、204cの下面には、ガイドレール214に沿って摺動するブロック(図示せず)が取り付けられている。
【0040】
ベース部材208には、更に、内側カバー202の駆動装置として流体圧シリンダ210が取り付けられている。流体圧シリンダ210は、油圧シリンダまたは空圧シリンダとすることができる。流体圧シリンダ210は、Y軸方向に進退可能なピストン棒212を有しており、ピストン棒212の先端部がフレーム204に固定されている。こうして、フレーム204は、サドル150とは独立に、第1のコラム130および第2のコラム140に対してY軸方向に往復移動可能となっている。
【0041】
図7は、内側カバー組立体200(フレーム204)の第1の位置を示しており、該第1の位置において、フレーム204はY軸方向に最も前方に配置される。フレーム204が第1の位置にあるとき、工作機械100は加工可能な状態となる。
図8、9は、内側カバー組立体200(フレーム204)の第2の位置を示しており、該第2の位置において、フレーム204はサドル150に最も接近する。フレーム204が第2の位置にあるとき、工作機械100は加工不能状態となる。
【0042】
図8は、サドル150のY軸方向に最も後退した退避位置を示している。退避位置は、加工に用いるY軸の座標範囲外であり、サドルが位置することが可能な最も後方の位置である。このとき、工作機械100の制御装置は、オペレータの操作による主軸頭170の移動を許可しない。つまり、オペレータは主軸頭170を手動操作することができなくなる。オペレータの操作による主軸頭170の移動を許可しないのは、可能な限り段取り領域(テーブル180の上方空間)を広く確保する目的で、保守レベルでしか利用しない退避位置にまで主軸頭170が移動している状態にあるので、この状態でオペレータ操作を許可すると、主軸頭170および主軸172が工具マガジン等の工作機械100の構成要素に衝突する可能性があり、危険だからである。
【0043】
サドル150が退避位置にあるとき、
図8に示すように、内側カバー組立体200のフレーム204を第2の位置に配置することによって、テーブル180の上方空間が広く開放され、ワークWを工作機械100の上方からテーブル180上に搬送することが可能となる。
【0044】
図9は、内側カバー組立体200(フレーム204)を第2の位置に配置し、そしてサドル150を加工に用いるY軸の座標範囲内に配置した状態を示している。このとき、工作機械100の制御装置は、オペレータの操作による主軸頭170の移動指令を許容する。つまり、オペレータは、主軸頭170を手動操作することができる。
【0045】
工作機械100は、更に、外側カバー組立体内に収納することができる。
図12~
図17を参照すると、外側カバー組立体は、前面カバー300、背面カバー(図示せず)、右側面カバー320、左側面カバー(図示せず)および上面カバー330を備えており、内部に工作機械100が配置される。
【0046】
前面カバー300は、互いにX軸方向に離間して配置された2枚の固定パネル302、304と、両者間に配置されたスライドドア308、310を含んでいる。2枚の固定パネル302、304は、それぞれ第1のコラム130と第2のコラム140の概ね前方に配置される。固定パネル302、304の一方、図示する実施形態では、工作機械100の正面から見て右側の固定パネル304には、工作機械100の操作盤306が取り付けられている。操作盤306に、工作機械100の制御装置(NC装置、機械制御装置)を組み込むことができる。
【0047】
スライドドア308、310は、X軸方向に互いに接近、離反するように形成されている。また、スライドドア308、310は、
図13に示すように、内面側に傾斜カバー312、314を備えている。傾斜カバー312、314は、スライドドア308、310の開閉方向、本実施形態では、X軸方向に伸縮可能となっている。傾斜カバー312、314は、X軸方向に伸縮可能な蛇腹構造またはテレスコピック構造を有している。傾斜カバー312、314を設けることによって、前側スペースSFが、加工中に発生する切り屑やクーラントによって汚染されることが防止される。傾斜カバー312、314をX軸方向に伸縮可能とすることによって、スライドドア308、310を開いたときに、傾斜カバー312、314が、それぞれ第1のコラム130と第2のコラム140とに衝突することが防止される。
【0048】
図14に示すように、スライドドア308、310が開くと、オペレータは工作機械100の前側スペースSFにアクセス可能となる。スライドドア308、310が開いたとき、内側カバー組立体200(フレーム204)が、
図9に示すように、第2の位置にあり、かつ、サドル150が、加工に用いるY軸の座標範囲内にあるとき、オペレータは前側スペースSFに入り、工作機械100内部で作業、例えば段取り作業を行うことができる。このとき、内側カバー202は、サドル150と共に工作機械100の後方部分に後退しており、前側スペースSFの上方は開放されるので、クーラントや切りくずが内側カバー202から落下することはなく、オペレータは、手動で行うワークの芯出しや、高さ調整等の段取り作業を安全かつ清潔な環境でおこなうことが可能となる。
【0049】
図示する実施形態では、右側面カバー320は4枚のパネル322、324、326、328より成る。全てのパネル322、324、326、328を固定パネルまたは可動パネルとすることができる。或いは、外側の2枚のパネル326、328を固定パネルとし、内側の2枚のパネル322、324を可動パネルとしてもよい。この場合、内側の2枚の可動パネル322,324は、前面カバー300のスライドドア308、310と同様のY軸方向に互いに接近、離反可能なスライドドアとしたり、或いは、固定パネル326、328にヒンジにより取り付けられた回動式のドアとすることができる。内側の2枚のパネルを取外し可能としてもよい。
【0050】
左側面カバーも同様に構成することができる。すなわち、全てのパネルを固定パネルとしたり、或いは、一部を可動式または着脱式のパネルとすることができる。
【0051】
工作機械100において、上面カバー330は、第1のコラム130および第2のコラム140の上面130d、140dから上方に突出する部分を包囲する5面の箱型のカバーとなっている。上面カバー330は可動カバー332を有している。
【0052】
また、前面カバー300のスライドドア308、310および上面カバー330の可動カバー332が、
図16に示すように、開いているとき、内側カバー組立体200(フレーム204)を第2の位置に配置し、かつ、サドル150を退避位置に配置することによって、例えば、工作機械100が設置されている工場の天井クレーンCを用いて、ワークWを工作機械100へ上方から搬入させることが可能となる。このとき、オペレータの手動操作による主軸頭170の移動を禁止することによって、主軸頭170と天井クレーンCまたは天井クレーンCによって吊り下げられているワークWとの衝突が防止される。
【0053】
既述の実施形態によれば、
図17、18に示すように、横並びに配置した2つの工作機械100-1、100-2の間にワーク交換装置またはワーク搬送装置10を配置し、正面から見て、左側の工作機械100-1の外側カバー組立体の右側面カバー320を開き、他方の工作機械100-2の外側カバーの左側面カバーを開くことによって、左側の工作機械100-1へは、ワーク交換装置またはワーク搬送装置10から開いている右側面カバー320、および、工作機械100-1の右側穴部(第2の穴部)148を通じてテーブル180の上面にワークWを供給し、右側の工作機械100-2へは、ワーク交換装置またはワーク搬送装置10から開いている左側面カバー、および、工作機械100-2の左側穴部(第1の穴部)138を通じてテーブル180の上面にワークWを供給することが可能となっている。このように、左右側面のいずれからも工作機械にワークを供給することが可能な構成であるので、工作機械とワーク交換装置またはワーク搬送装置で構成する加工システムレイアウトを、幅広く選択できる。
【0054】
この点、工作機械のどちらか片方の側面からワークを供給するようにした2つの工作機械20の間にワーク交換装置またはワーク搬送装置10を配置した従来の加工システムでは、
図19に略示するように、2つの工作機械20を反対向きにしなければならず、そのために、2つの工作機械20の操作盤を操作したり、段取り作業を行うために、オペレータは一方の側から他方の側へ加工システムを超えて移動しなければならない。
【0055】
更に、
図20、21に示すように、Y軸方向に2つの工作機械100-1、100-2を配置して、両者間に共通のワーク交換装置またはワーク搬送装置30を配置して加工システムを形成してもよい。
【0056】
既述の工作機械100は、X軸方向の中心軸線OxおよびY軸方向の中心軸線Oyに関して対象形状に形成されており、工作機械100の全体でバランスのよい熱変位となり、熱変位の加工精度への影響を最小限にすることができる。
【0057】
また、工作機械100は、第1のコラム130とベッド102の第1のウィング部106とが形成する工作機械100の左端部のX軸方向に貫通する第1の穴部138からでも、第2のコラム140とベッド102の第2のウィング部108とが形成する工作機械100の右端部のX軸方向に貫通する第2の穴部148からでもワークWを供給することができるので、
図18に略示するように、オペレータは、加工システムの一方の側で操作盤306を操作したり、段取り作業を行うことができ、従来の加工システムに比べて非常に効率的に作業を行うことが可能となる。
【0058】
X軸、Y軸、Z軸の送り装置の駆動源としてボールねじとサーボモータを用いてもよいと説明したが、既述の実施形態のようにリニアモータを用いることにより、部品の配置や、熱の発生源を対称に構成できるので、工作機械100全体でバランスのよい熱変位となり、熱変位が加工精度へ及ぼす影響を低減することが可能となる。
【0059】
既述の実施形態では、主軸頭170は、回転工具(図示せず)を装着する主軸172を支持しているが、主軸頭170は、レーザヘッドや放電加工用電極を支持するようにしてもよい。
【0060】
さらに、主軸頭170やテーブル180に傾斜軸や回転軸を付加して、5軸加工などをおこなえるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
100 工作機械
130 第1のコラム
138 第1の穴部
140 第2のコラム
148 第2の穴部
150 サドル
170 主軸頭
172 主軸
180 テーブル
250 工具マガジン