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特許7189281密封容器の閉塞の完全性を極低温で検査するためのシステムと方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】密封容器の閉塞の完全性を極低温で検査するためのシステムと方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/20 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
G01M3/20 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021113292
(22)【出願日】2021-07-08
(62)【分割の表示】P 2021529392の分割
【原出願日】2019-11-25
(65)【公開番号】P2021175977
(43)【公開日】2021-11-04
【審査請求日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】62/771,664
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517229774
【氏名又は名称】ウエスト ファーマスーティカル サービシーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】ブラステン・ルイス・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】マッカウ・ジェームズ
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-98611(JP,A)
【文献】特開2012-251849(JP,A)
【文献】特開2017-166909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00-3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封容器の閉塞の完全性を極低温で検査する方法であって、
密封容器を用意するステップと、
少なくとも一部が極低温の流体で満たされている極低温貯蔵容器を用意するステップと、
前記極低温貯蔵容器の中に密封容器を配置するステップと、
前記極低温貯蔵容器に接続された漏れ検出装置を使って、前記極低温の前記密封容器から逃げ出すヘリウムの流量を測定するステップと
を備え、
前記密封容器を用意するステップが、
容器の開口部の中へエラストマー栓を挿入するステップと、
前記エラストマー栓の本体に第1開口部と第2開口部とを貫通させるステップと、
前記第1開口部に第1導管の第1端を嵌めることによって前記第1開口部に前記第1導管を接続し、前記第1導管の第2端をヘリウムの供給源に嵌めるステップと、
前記第2開口部に第2導管の第1端を嵌めることによって前記第2開口部に前記第2導管を接続するステップと、
前記第1導管を通して前記容器の中へヘリウムを供給し、前記第2導管を通して前記容器から空気を逃がすことにより、前記容器内の空気をヘリウムに置換するステップと、
前記第1開口部から前記第1導管を取り外し、前記第2開口部から前記第2導管を取り外すステップと、
前記密封容器を形成する目的で、前記第1開口部と前記第2開口部とをシアノアクリレート接着剤で覆い、所定時間をかけて前記シアノアクリレート接着剤を硬化させるステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記極低温貯蔵容器の開口部を通るように中空管を設置して、前記中空管の第1端を前記極低温貯蔵容器の外側に置き、前記中空管の反対側の第2端を前記極低温貯蔵容器の内側で前記極低温の流体の界面下に置くステップと、
前記密封容器を治具の先端に固定するステップと、
前記治具を前記中空管の中へ挿入して、前記中空管の第2端またはその近傍に前記密封容器を配置するステップと
を更に備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記極低温が約-150℃以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記極低温の流体が液体窒素である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記極低温貯蔵容器がデュワーである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記漏れ検出装置がヘリウム質量分析器である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2018年11月27日を出願日とする米国特許仮出願第62/771,664号に対する優先権主張を伴うものであり、その開示内容の全体がここには参照によって組み込まれている。
【0002】
本発明は、瓶、カートリッジ、注射器等の容器の閉塞の完全性を極低温で検査するためのシステムおよび方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
生物由来の物質用、および薬剤用の梱包部品が選ばれる際には、容器と閉塞具との間の密封状態の完全性が考慮される。これらの物質は通常、エラストマー製の閉塞具で蓋がされたガラス容器またはプラスチック容器(たとえば、ガラス瓶、プラスチック瓶、または注射器)の中に保存される。これらの物質には、たとえば、血液、血清、タンパク質、ペプチド、幹細胞、DNA、その他の生物由来の痛みやすい液体、および、冷凍乾燥され、または凍結乾燥された薬品が含まれる。
【0004】
容器はこれらの物質を、微生物の侵入、湿気、およびガス交換を含め、想定される様々な汚染源から保護できねばならない。したがって、容器の閉塞の完全性(CCI)を確かめる目的で、その容器の閉塞の効果がしばしば検査される。CCIは、容器の閉塞システムが備えた、物質、特に薬品の効能と無菌状態とをその保存可能期間の全体にわたって保護して維持する性能のことである。薬容器内への微生物の侵入を防ぐエラストマー製シール部品(たとえば栓)の性能は、容器の閉塞の完全性に関する検査(CCIT)によって確かめられる。CCITでは、閉塞具と容器との間の密封の完全性が測定される。
【0005】
主要なシール領域はエラストマー製シール部品と容器との間の接続部分に形成される。個々の梱包部品には欠陥が無いと仮定した場合、この接続部分が、梱包に起こりうる不具合の典型的な主原因となる。容器の閉塞の完全性を確実に満足なレベルにするには、薬品に適した容器の閉塞システムを選択して適用する際に、複数の条件を考慮しなければならない。
【0006】
組み立てミス、圧着力不足もしくは過剰、または設計ミス等、製造上の不具合は容器の閉塞システムの完全性を損なわせかねない。したがって、密封の完全性を十分に確立するには、エラストマー製シール部品の寸法を容器に、確実に正しく合わせることが必要不可欠である。真空度の低下、ガスの侵入と交換、pH調整、および汚染は密封の完全性を損なわせかねず、薬品の無菌状態を消失させて薬品の効能に影響を与え、患者を危険にさらす可能性を高めかねない。
【0007】
付加価値の高い生物由来の製品および薬品を好む傾向が高まるにつれて、信頼性の高い容器の閉塞システムがますます必要とされてきている。そのような生物由来の製品および薬品は通常、温度に敏感であり、適切な条件下で保存されなければ劣化する可能性が甚大である。生物由来の製品および薬品の中には、たとえば劣化または蒸発による散逸を避ける目的で-80℃程度の低温の密封容器内に保存されることが珍しくないものもあり、更に低い極低温(たとえば-150℃程度以下)で保存される場合も多い。
【0008】
上記のように、ほとんどの薬容器はシール部品がエラストマー製である。すべてのエラストマーに共通する物理的性質は、エラストマーが弾性を失って固いガラス様状態に変化する温度である。この温度はガラス転移温度(Tg)として知られている。室温の環境下では分子の熱運動が定常状態にあり、分子の構成が絶えず変化して柔軟性を生じさせるので、別の表面にシール領域を形成する能力が得られる。しかし、ガラス転移温度では分子の移動度が大幅に低下するので、物質が脆いガラス様になる。たとえば、ブチルゴムに共通のガラス転移温度は-65℃近辺である。その結果、エラストマー製シール部品は閉塞の完全性を極低温では維持できないかも知れないので、容器内に保存された生物由来の製品または薬品の無菌状態を損なわせる可能性がある。しかし、生物由来の製品または薬品が極低温で保存されるべき場合には、この条件下で容器の閉塞の完全性が確立されるべきである。
【0009】
したがって、密封容器の中身がさらされるかも知れない条件下でその容器の閉塞の完全性を確実に維持するには、特に約-150℃よりも低温で、更には約-180℃で、容器の開口部を完全に密封する効果を栓または閉塞具に確実に発揮させるには、極低温以下で密封容器を検査するためのシステムおよび方法を提供することが望ましいだろう。また、約-196℃よりも低温で、容器の開口部を完全に密封する効果を栓または閉塞具に確実に発揮させることも望ましいかも知れない。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、1つの実施形態では、密封容器の閉塞の完全性を極低温で検査するためのシステムに関する。このシステムは、密封容器、極低温貯蔵容器、中空管、治具、および漏れ検出装置を備えている。密封容器はヘリウムを収容しており、閉塞具によって密封された開口部を含む。極低温貯蔵容器は少なくとも一部が極低温の流体で満たされており、第1端と、その反対側に位置する第2端とを含む。第1端には開口部が設けられている。中空管は極低温貯蔵容器の開口部を通して伸びており、極低温貯蔵容器の外側に置かれた第1端と、その反対側に位置して極低温貯蔵容器の内側に置かれた第2端とを含む。治具は第1端と、その反対側に位置する第2端とを含む。第2端は、密封容器に嵌まるように構成されている。治具は、中空管の第1端にある開口部を通して中空管の中へ取り外し可能に挿入されることにより、中空管の第2端またはその近傍に密封容器が位置するように構成されている。漏れ検出装置は中空管に接続されている。
【0011】
本発明の別の実施形態は、密封容器の閉塞の完全性を極低温で検査する方法に関する。この方法は、以下のステップを備えている。ヘリウムを収容している密封容器を用意するステップ。開口部のある第1端と、その反対側に位置する第2端とを含む極低温貯蔵容器を、少なくとも一部が極低温の流体で満たされている状態に用意するステップ。極低温貯蔵容器の開口部の中に中空管を設置して、その中空管の第1端を極低温貯蔵容器の外側に置き、その中空管の反対側の第2端を極低温貯蔵容器の内側で極低温の流体の界面下に置くステップ。密封容器を治具の先端に固定するステップ。治具を中空管の中へ挿入して、中空管の第2端またはその近傍に密封容器を配置するステップ。中空管を漏れ検出装置へ接続して、極低温の密封容器から逃げ出すヘリウムの流量を測定するステップ。
【0012】
本発明の別の実施形態は、密封容器の閉塞の完全性を極低温で検査する方法に関する。この方法は、以下のステップによって密封容器を用意するステップを備えている。容器の開口部の中へエラストマー栓を挿入するステップ。エラストマー栓の本体に第1開口部と第2開口部とを貫通させるステップ。第1開口部に第1導管の第1端を嵌めることによって第1開口部に第1導管を接続し、第1導管の第2端をヘリウムの供給源に嵌めるステップ。第2開口部に第2導管の第1端を嵌めることによって第2開口部に第2導管を接続するステップ。第1導管を通して容器の中へヘリウムを供給し、第2導管を通して容器から空気を逃がすことにより、容器内の空気をヘリウムに置換するステップ。第1開口部から第1導管を取り外し、第2開口部から第2導管を取り外すステップ。密封容器を形成する目的で、第1開口部と第2開口部とをシアノアクリレート接着剤で覆い、所定時間をかけてシアノアクリレート接着剤を硬化させるステップ。この方法は更に、少なくとも一部が極低温の流体で満たされている極低温貯蔵容器を用意するステップ、極低温貯蔵容器の中に密封容器を配置するステップ、および、極低温貯蔵容器に接続された漏れ検出装置を使って、極低温の密封容器から逃げ出すヘリウムの流量を測定するステップを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以上の概要は、後述する本発明の詳細な説明と共に、添付の図面に関連付けて読まれれば、更に良く理解されるであろう。これらの図面には、発明を図示する目的で、現時点において好ましい実施形態が示されている。しかし、図示されている配置と手段との詳細に発明が限定されるわけではないことは、理解されるべきである。
【0014】
図1】本発明のある実施形態に従って利用される、従来の密封容器の断面図である。
図2】本発明のある実施形態による検査システムの部品の1つである、結合器の斜視図である。
図3A】本発明のある実施形態による、検査の際に密封瓶を固定する機構を示す図である。
図3B図3Aの機構を示す図である。
図4A】本発明の別の実施形態による、検査の際に密封瓶を固定する機構を示す図である。
図4B図4Aの機構を示す図である。
図5A】本発明の別の実施形態による、検査の際に密封瓶を固定する機構を示す図である。
図5B図5Aの機構を示す図である。
図6】本発明のある実施形態による検査システムの斜視図である。
図7】本発明のある実施形態による検査システムの一部が分解された状態を示す斜視図である。
図8】本発明のある実施形態による検査システムの一部が組み立てられた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明ではある用語が使用されるが、これらは便宜を図ることのみを目的とし、発明を限定するものではない。“基端”、“先端”、“上側”、“下側”、“底部”、“上部”という語は、参照される図面における方向を示す。“内側へ”という語は、本発明による装置とその特定の部分との幾何学的中心へ向かう方向を意味し、“外側へ”という語は、その中心から離れる方向を意味する。以下、特に断らない限り、冠詞“a”、“an”、“the”は、1つの要素に限定するものではなく、“少なくとも1つ”を意味するものとして読まれるべきである。これらの用語には、上記の語の他、それらの派生語、および語源が同様な語も含まれる。
【0016】
図面の全体にわたり、同様な参照番号は同様な要素を示す。図面を詳細に参照すると、図1図8には、閉塞具によって閉じられた容器の閉塞の完全性を極低温で検査するためのシステムと方法との好ましい実施形態が示されている。
【0017】
「閉塞具」という用語は、以下で使用されるように、詰め物(プラグ)、プランジャー、または栓のように容器の開口部を密封する器具、すなわち、その開口部の全周に対して弾力のある物質を押し付けることによってシール領域を形成する器具の意味を含む。「容器」という用語は、以下で使用されるように、物質の収容に利用される密封可能な容器、または物質の保持に利用される密封可能な保持器であって、特に処理される間、または貯蔵される間等で極低温にさらされるものの意味を含む。さらに、「容器」という用語は、以下で使用されるように、小瓶、瓶、注射器、薬剤充填済み注入装置、実験用容器等、開口部が閉塞具で密封可能であって中身を完全な状態に維持するものの意味を含んでいてもよい。本発明によるシステム/方法が、中身の詰まった容器にも、詰まっていない容器にも使用可能であることは、当業者には理解されるだろう。
【0018】
本発明の実施形態には、極低温で実施されるものがある。特に約-80℃以下、好ましくは約-150℃以下、更に好ましくは約-180℃以下、最も好ましくは約-196℃よりも低温で実施されるものがある。多くの生物由来の物質、たとえば、血液、血清、たんぱく質、ペプチド、幹細胞、DNA、その他の痛みやすい物質は、生存能力を長期間維持させる目的で、極低温で保存される。このような保存方法には、ドライアイス(昇華点-78.5℃)によるものが含まれる。
【0019】
本発明は、閉じられた容器のCCIを評価するためのシステムおよび方法に関する。本発明は特に、閉じられた容器のCCIを極低温で検査する目的で、ヘリウムの漏れを検出するシステムと方法とに関する。ヘリウムの漏れの検出で得られる定量的な結果には再現性があり、合否で表される定性的な結果よりも高い正確性がある。
【0020】
図1には、本発明による検査システムと方法とで使用可能な、従来型の閉じられた容器が示されている。図1を参照すると、薬品または製剤(図示せず。)を収容した小瓶10が示されている。小瓶10には首12があり、その開口端12aがほぼ環状のフランジ14によって囲まれている。閉塞具、すなわち栓20は特にエラストマー製であり、小瓶10の開口端12aに設置されて小瓶10を密封する。栓20はフランジ22と、そのフランジ22から下方へ伸びているプラグ24とを含む。プラグ24は、小瓶10の首12によって囲まれた開口部の中へ挿入されてその開口部を密封する。プラグ24のほぼ中央には空洞26がある。この空洞26の第1端は、針等を刺し通すことが可能な部品で閉じられており、好ましくは、フランジ22の幾何学的中心に設置されている。空洞26の第2端は開放されており、小瓶10の中身との間で流体を往き来させる。栓20は、製薬分野での利用に適していることが知られている弾力材またはエラストマーから形成されていてもよい。小瓶10は、製薬分野での利用に適していることが知られているガラス、セラミックス、またはポリマーから形成されていてもよい。
【0021】
ある実施形態では、小瓶10と栓20とが、図1に示されているように一体に組み合わされ、さらにそれらに蓋が圧着され、および/または被された後に、本発明による検査方法が行われる。図1を参照しながら詳述すると、本発明による検査方法およびシステムを使用する目的で小瓶10に対して行う準備として、まず、栓20に第1開口部16と第2開口部18とを設ける。これらの開口部16、18を、以下、「穿刺部位」とも呼ぶ。好ましくは、両方の開口部16、18が同じサイズである。ただし、2つの開口部16、18が異なるサイズであってもよいことは理解されるであろう。ある実施形態では、これらの開口部16、18が栓のフランジ22の幾何学的中心に設けられる。ただし、これらの開口部16、18がフランジ22のどこに形成されてもよいことは理解されるであろう。各開口部16、18はフランジ22の本体を貫通し、フランジ22の上面22aに第1端16a、18aを含み、フランジ22の下面22bに第2端16b、18bを含む。第2端16b、18bは小瓶10の内部に連通している。
【0022】
各開口部16、18、好ましくは、その第1端16a、18aに導管または配管28、30が設置され、または接続されている。たとえば、各開口部16、18には針が設置され、または接続されていてもよい。第1開口部16に設置され、または接続されている第1導管28は、ヘリウム等の不活性ガスを密封状態の小瓶10の内部へ供給する役割を果たす。第2開口部18に設置され、または接続されている第2導管30は、不活性ガスに置換される空気を小瓶10から逃がすことの可能な排気口、または脱出管として機能し、小瓶10の過圧を防ぐ。好ましくは、小瓶10に充填される不活性ガスは、小瓶10内の空気の完全な置換を確実に行うのには十分な体積である。好ましくは、小瓶10内の空気の完全な置換が確実に行われるように、体積が小瓶10のヘッドスペース(小瓶10内の上部にできている空間)の10倍である不活性ガスで、小瓶10内の空気が置換される。好ましい実施形態では、小瓶10内の空気の完全な置換が確実に行われるように、体積が小瓶10のヘッドスペースの10倍である純度100%のヘリウムで、小瓶10内の空気が置換される。小瓶10のヘッドスペース(すなわち、薬品の界面よりも上に位置するガスの空間)には栓のプラグ24の空洞26が含まれる。なお、充填される不活性ガスの体積は必ずしも小瓶10のヘッドスペースの10倍でなくてもよく、小瓶10内の空気の完全な置換を確実に行うのには十分な大きさでありさえすればよいことは、理解されるであろう。好ましくは、ヘリウムの充填処理は室温で行われる。
【0023】
上記のように小瓶10にヘリウムが充填された後、第1導管28が第1開口部16から取り外され、第2導管30が第2開口部18から取り外される。続いて、各開口部16、18が接着剤の層29、31で覆われる。接着剤は、開口部16、18を密封するように構成されている物質であれば何でもよい。ある実施形態では接着剤がエポキシ系接着剤であり、特に速硬化型エポキシ系接着剤、またはエポキシ系の瞬間接着剤である。好ましくは、エポキシ系接着剤がビスフェノールAジグリシジルエーテル樹脂を含む。好ましい市販のエポキシ系接着剤はDevcon(登録商標)Part No.14250である。別の実施形態では、接着剤が糊であり、特に硬化または固着の早い糊である。たとえば、接着剤はシアノアクリル系接着剤である。接着剤の層またはコーティング29、31がそれぞれ第1開口部16と第2開口部とに塗布された後、塗布された接着剤が所定期間、そのまま放置されると硬化する。好ましくは、接着剤の層またはコーティング29、31が所定時間をかけて硬化することにより、開口部16、18を密封するのには十分な硬さとなるので、小瓶10が密封される。硬化時間は、使用される接着剤の種類に応じて数秒間から数分間までにわたり、使用される接着剤の特性によっては更に長い場合(たとえば約1時間の場合)もありうる。
【0024】
次に、接着剤が硬化した後、小瓶10に蓋が圧着され、および/または被される。小瓶10はすぐに検査を受けてもよいし、検査の準備が整うまで室温または極低温等の所定温度で貯蔵されてもよい。好ましくは、密封された小瓶10が、極低温での検査の前に、-80℃等の所定温度までゆっくりと冷却される。
【0025】
以上に説明された、小瓶10を用意する作業は、単一の小瓶10を対象とするものであったが、複数の小瓶10が上記の説明のように用意されてもよいことは理解されるであろう。この場合、検査は、以下で説明されるように、各小瓶10に対して個別に行われる。
【0026】
小瓶10へのヘリウムの充填は必ずしも上記の処理で行われなくてもよく、ヘリウム充填用のものとして知られているいずれの処理およびシステムで行われてもよいことは、理解されるであろう。
【0027】
たとえば別の実施形態では、小瓶10と栓20とが一体に組み合わされてそれらに蓋が圧着され、および/または被される前に、本発明による方法が行われる。詳述すると、本発明による検査方法およびシステムを使用する目的で小瓶10に対して行う準備として、栓20を小瓶10の開口端12aへ挿入する前に、開口端12aを通してヘリウム等の不活性ガスを小瓶10の内部へ供給する。好ましくは、この供給は室温で行われる。小瓶10に所定量の不活性ガスが充填された後(たとえば、小瓶10内の空気の完全な置換が確実に行われるように、体積が小瓶10のヘッドスペースの10倍である純度100%のヘリウムで小瓶10内の空気が置換された後)、栓20が小瓶10の開口端12aに設置されて小瓶10を密封し、密封された小瓶10に蓋が被されて圧着される。次に、小瓶10が直ちに検査を受けてもよいし、検査の準備が整うまで室温または極低温等の所定温度で貯蔵されてもよい。好ましくは、密封された小瓶10が、極低温での検査の前に、-80℃等の所定温度までゆっくりと冷却される。
【0028】
上記のように用意された小瓶10の検査を行う実施形態の1つでは、図6図8に示されているシステム60が使用される。システム60は貯蔵容器32と漏れ検出器34とを備えている。漏れ検出器は特に質量分析器であり、周知または市販の質量分析器のいずれが使用されてもよいことは、当業者には理解されるであろう。ある実施形態では貯蔵容器32が、デュワーとして一般に知られている真空フラスコ(魔法瓶)である。貯蔵容器32には温度制御用に、極低温の、すなわち液化したガスが収容されてもよい。そのようなガスとしては、液体窒素、液体酸素、液体水素、液体ヘリウム等が挙げられるが、それらには限られない。好ましくは、貯蔵容器32の内部温度が約-196℃であるように、貯蔵容器32の少なくとも一部が液体窒素で満たされる。図3A図7とを参照すると、たとえば、貯蔵容器32には第1端36と、その反対側の第2端38とがある。第1端36には開口部40が設けられている。システム60のうち、浸漬管等のパイプ、すなわち中空管42が貯蔵容器32の開口部40を通して伸びており、貯蔵容器32の中にしっかりと取り付けられている。中空管42は、貯蔵容器32からの取り外しが可能であるように構成されていても、取り外し不能に構成されていてもよい。中空管42の寸法は、必要に応じて、貯蔵容器32の開口部40のサイズに合うように調整されてもよい。
【0029】
ある実施形態では、図2に示されているように、開口部40への中空管42の固定に便利な結合器54が設置されている。結合器54は、好ましくは、本体がほぼ円筒形状であり、開口部40の中にしっかりと取り付けられて中空管42を取り囲むように、サイズと形状とが設計されている。結合器54は特に、図2に示されているように、外径の異なる複数の円筒部分で形作られていてもよいし、その全長にわたって外径が一様な管の形をしていてもよい。ある実施形態では、開口部40への結合器54の固定に接着剤が使用されてもよい。別の実施形態では、結合器54が締まり嵌めで開口部40に固定されている。結合器54には、その本体を貫通する円形の穴56もある。穴56は、その中に中空管42が入るようなサイズと形状とに設計されているので、結合器54は中空管42を貯蔵容器32の開口部40の中に、更に安定化させることができる。結合器54には、更に好ましくは、貯蔵容器32の中に収容されているガスを排出するための排気口、すなわち開口部58が、少なくとも1つ設けられている。特に、液体窒素が定常的にガスを発生させて貯蔵容器32内を加圧するので、その発生したガスを排出するように結合器54の排気口58が構成されている。結合器54には排気口58が2つ以上設けられてもよいことは、理解されるであろう。
【0030】
図7を参照するに、上記のシステムは中空管42に加え、アダプター43を含んでいてもよい。アダプター43はT継手として構成され、中空管42の一端に取り外し可能に接続されてもよい。接続部は、好ましくは、クランプ等の機械式コネクター62で固定されている。中空管42とアダプター43とは金属製であってもよいし、プラスチック製であってもよい。好ましくは、中空管42とアダプター43とが、ステンレス鋼等の金属製である。中空管42には、アダプター43に接続される第1端と、その反対側の第2端45とがあり、第1端は、貯蔵容器32の外側に配置されるように構成され、第2端45は、貯蔵容器32の内側に配置されるように構成されている。第2端45は特に、貯蔵容器32内で液体窒素の界面下に配置される。アダプター43は、T継手の片側には第1脚64を含み、その反対側には、中空管42に取り付けられる第2脚66を含む。好ましくは、それらの脚44、46が中空管またはパイプの形をしている。第1脚64は好ましくは、キャップ70で閉じられるように構成された開口端を含む。これについては、後で更に詳しく説明する。
【0031】
上記とは別に、システムが、T継手として構成されたアダプターしか備えていなくてもよい。この場合、アダプターの第1脚と第2脚とが1本の中空管によって構成され、その第1開口端がアダプター43の第1脚64の第1開口端に相当し、第2端が中空管42の第2端45に相当する。システムがこのように組み立てられる場合、機械式コネクター62が不要になる。
【0032】
中空管42はアダプター43と導管49とを通して質量分析器34に接続されている(図6図8参照)。特に導管49はアダプター43の第3脚68(第1脚64と第2脚66とに直交する脚)に取り外し可能に接続されている。第3脚68は、好ましくは、中空管またはパイプとして形作られている。導管49は中空管42を質量分析器34に連通させて、流体の通路を構成している。図6に示されているように、導管49の第1端72が別の機械式コネクター51(たとえばクランプ)によってアダプター43に取り外し可能に接続されてもよく、反対側の第2端53が質量分析器34に接続されてもよい。質量分析器34は、好ましくは、ヘリウム質量分析器である。好ましくは、質量分析器34が、小瓶10の検査に利用される前に、NIST(米国国立標準技術研究所)の定めた漏れに関する追跡可能な標準に照らして校正される。
【0033】
ある実施形態ではシステム60が、中空管42の中に収納される治具46を更に含む。治具46は特に、キャップ70が取り外された後のアダプター43の第1脚64の開口端を通してアダプター43と中空管42との中へ、取り外し可能に挿入されるように構成されている。キャップ70は第1脚64の端部に、当業者には周知の手段によって取り外し可能に取り付けられてもよい。その手段は、好ましくは、クランプ44である。別の実施形態では、キャップ70が第1脚64の端部にネジ止めされてもよい。治具46は、棒、管、またはワイヤーであり、密封された小瓶10が検査目的で貯蔵容器32内に設置される際、その小瓶10を中空管42の中に保持するように構成されたものであってもよい。治具46には第1端47と反対側の第2端50とがある。第2端50は、密封された小瓶10に引っ掛けられ、または小瓶10を保持するように構成されている。
【0034】
ある実施形態では、治具46の第2端50が、小瓶10を収めるように構成された容器または空洞を含み、またはそのような容器または空洞として形作られている。第2端50に収容される際の小瓶10は特に密封されており、その中にヘリウムが充填されている。たとえば、第2端50がカップ形状の容器(図示せず。)を含み、その容器が、密封された小瓶10の検査の際にその小瓶10を収容するのに適したサイズと形状とに設計されていてもよい。
【0035】
図3A図3Bに示されているような別の例では、治具46が柔軟な金属ワイヤーで形成されている。密封された小瓶10の検査では、治具46の第2端50がその小瓶10に巻き付けられ、またはその小瓶10をコイル状に取り囲んでその小瓶10を固定する。
【0036】
図4A図4Bに示されているような別の例では、治具46が柔軟なプラスチックス(たとえばナイロン(登録商標))製のワイヤーまたはロープで形成されている。密封された小瓶10の検査では、治具46の第2端50がその小瓶10、特にその首12のまわりに結び付けられ、または固定されて、その小瓶10を貯蔵容器32の中へ下ろして固定する。
【0037】
図5A図5Bに示されているような別の例では、治具46が(金属製またはプラスチック製の)管で形成されており、その第2端50が、複数の指または爪を備えた固定機構60を含む。密封された小瓶10の検査では、固定機構60の指または爪がその小瓶10の一部を掴んで、その小瓶10を固定する。
【0038】
図3A図5Bには治具46の特定の例、特に治具46の第2端50に設けられた、密封された小瓶10を固定するための機構が示されている。しかし、治具46と、その第2端50に設けられる機構とが、密封された小瓶10を検査目的で貯蔵容器32の中へ下ろして固定することの可能なものであればどのような形態であってもよいことは、当業者には理解されるであろう。
【0039】
本発明による検査方法の実施では、貯蔵容器32の開口部40に中空管42が取り付けられ、その開口部40に結合器54がしっかりと取り付けられる。これにより、中空管42の第2端45が貯蔵容器32の内部で液体窒素の界面下に配置され、中空管42の第1端が貯蔵容器32の外側に配置されてアダプター43に接続される。次に、ヘリウムが充填された状態で密封された小瓶10が、好ましくは上記のように用意され、治具46の第2端50に固定される。その後、治具46がアダプター43の第1脚64の開口端を通して中空管42の中へ挿入されてその第2端45へ向かい、小瓶10を第2端45またはその近傍に配置する。これにより、小瓶10とその中身の薬とが極低温に冷やされる。ある実施形態では、治具46の第1端47がアダプター43の第1脚64に固定され、続いてその第1脚64の開口端がキャップ70とクランプ44とで閉じられる。別の実施形態では、治具46の第1端47が、アダプター43の第1脚64の開口端を閉じるように構成されたキャップ70に固定されてもよいし、そのキャップ70と一体に形成されていてもよい。そのような実施形態では、まずキャップ70を掴んで動して、アダプター43の第1脚64の開口端を通してアダプター43と中空管42との中へ治具46を挿入し、次にキャップ70を第1脚64の開口端に設置して、その開口端を閉じてもよい。
【0040】
別の実施形態(図示せず。)では、治具46の中に冷却システムが組み込まれることにより、貯蔵容器32が省略されてもよい。たとえば、ある実施形態では、小瓶10が設置される治具46の第2端に、小瓶10を取り巻くジャケットまたはコイルが設けられてもよい。このジャケットまたはコイルには液化ガス(たとえば液体窒素)が流され、小瓶10を極低温まで冷却する。別の実施形態では、アダプター43および/または中空管42に、液化ガスまたは他の冷却剤が流れるジャケットまたはコイルが設けられてもよい。
【0041】
使用される寒剤に応じて貯蔵容器32の中の温度が異なってもよいことは、理解されるだろう。貯蔵容器32の内部温度は、好ましくは約-150℃以下であり、更に好ましくは約-180℃以下であり、最も好ましくは約-196℃(すなわち液体窒素の沸点)以下である。
【0042】
密封された小瓶10が上記のように貯蔵容器32の中に固定された後、質量分析器34の操作が開始される。質量分析器34は小瓶10を真空中に置き、極低温、好ましくは-196℃の小瓶10から逃げ出すヘリウムを測定する。質量分析器34によって漏れ検出器内のヘリウムの分圧が測定され、小瓶10からのこの「漏れ」が(定量的に測定され、)漏洩速度として表示される。漏洩速度が決定された後、小瓶10を室温まで温めることができる。その後、校正済みのヘッドスペース分析プローブ(図示せず。)を用いて小瓶10内のヘリウムの濃度が測定され、小瓶10の中に残るヘリウムの量が決定される。その後、ヘリウムの濃度と漏洩速度の測定値とは、小瓶10におけるヘリウムの実際の漏洩速度(cc/秒)の計算に利用される。この漏洩速度が、ヘリウムを逃がした漏洩部分のサイズに関係している。
【0043】
本発明のある実施形態に従って用意された-180℃の小瓶では、ヘリウムの漏洩速度が平均してE-9~E-10(すなわち10-9~10-10)std・cc/秒のオーダーである。これと比べ、ヘリウムが充填された室温の同様な小瓶では、漏洩速度がE-7~E-8(すなわち10-7~10-8)std・cc/秒の範囲内である。このように、室温のサンプルを、-180℃で検査されたサンプルと比べた場合、本発明の実施形態に従って測定される漏洩速度には大幅な低下が見られる。
【0044】
以下の説明は主に小瓶に関するが、本発明の対象とする容器には、注射器、カートリッジ、ブリスターパック等、生物由来の製品または薬品の保存または収容に適した容器であればいずれも含まれることは、理解されるだろう。
【0045】
本発明によるシステム/方法では、容器のヘッドスペースに充填されるガスを検出するのに利用される分析器の種類に応じて他のガスが使用されてもよいこともまた、理解されるだろう。そのような分析器にはガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)と発光分光器とが含まれるが、それらに限られるわけではない。
[実験例]
【0046】
本発明のある実施形態によるシステムと方法とを用いて、全部で80個の小瓶を、対照用サンプルと共に、-180℃で検査する実験が行われた。これらの小瓶は容量が2mLと10mLとのいずれかであり、環状オレフィン系ポリマー材(Daikyo Seiko社製造のCrystal Zenith(登録商標)(CZともいう。))で形成されていた。閉塞具は13mmまたは20mmのハロブチルゴム製の栓であった。小瓶はすべて、上記のとおりに密封状態に用意され(すなわち、小瓶のサンプル、陽性対照、および陰性対照のすべてにヘリウムが充填されて、各小瓶内の空気がヘリウムに置換され)、圧着された蓋によって閉じられた。その後、小瓶は個別に極低温(たとえば-180℃)で検査され、各小瓶からのヘリウムの漏洩速度が測定された。
【0047】
特に、ヘリウム質量分析器(Leak Detection Associates社製造のSIMS 1284+ 密封性監視システム)が校正されてシステムの適合性、すなわち校正が有効であることが確認された後、各小瓶が、ヘリウムの漏れを検査するための貯蔵容器、すなわちデュワーの中に設置された。貯蔵容器はそれぞれ2mLの小瓶と10mLの小瓶との検査用であり、ヘリウム質量分析器に取り付けられた。ヘリウムの漏れが検査される間、その全体を通してサンプルの温度が-180℃に維持された。ヘリウム質量分析器はサンプルのまわりを真空にし、漏洩速度をstd・cc/秒の単位で定量化した。分析器がサンプルのまわりを真空にはできなかった場合、そのことが「極度の漏れ」として特定された。以上の処理が2mLの小瓶と10mLの小瓶との両方に対して行われた。
【0048】
検査は1日あたり、20個の新しい小瓶と共に、5個の同じ陽性対照、すなわち、本体に2μmの穴がある小瓶に対して行われた。上記の処理の評価は第1検査者と第2検査者とによって行われた。第1検査者は上記の処理の精度、ロバスト性、特異性、および検出限界(MDL)について検査を行い、第2検査者は中間精度(室内再現精度)について検査を行った。第1検査者と第2検査者とによる検査の結果は、表1-表4に与えられている。サンプルが良品であるという基準は、漏洩速度が1.9×E-6(すなわち1.9×10-6)std・cc/秒以下であることであった。
-精度-
【0049】
1日目(day1)では、上記のシステムと方法とを用いて2μmの陽性対照が5個、サンプルが20個、検査された。その結果が表1に示されている。「MHLR」はヘリウムの漏洩速度の測定値、すなわち、真空中での検査によって決定された漏洩速度であり、ヘリウム濃度による修正がされていない値を表す。
-中間精度-
【0050】
2日目(day2)では、第2検査者が本発明によるシステム60と方法とを同じ手順で用いて、陽性対照については第1検査者と同じものを、容器のサンプルについては異なる20個を、異なるヘリウム質量分析器で検査した。その結果が表1に示されている。
-特異性、MDL、分析器に対するロバスト性、サンプルの種類に対するロバスト性-
【0051】
3日目(day3)では、第1検査者が本発明によるシステムと方法とを同じ手順で用いて、同じ陽性対照を検査した。その結果が表1に示されている。
【0052】
2mLの容器のサンプルが検査されることにより、サンプルの種類に対するロバスト性が調べられた。その結果が表2に示されている。
【0053】
容器の良、不良を分析器が検出し分けることができたかが確かめられることにより、特異性が見極められた。検出の下限が2μmであることが検証された。
【0054】
データ収集時間が、予定どおりである60秒間に加え、50秒間と70秒間とに設定されて検査が行われることにより、分析器に対するロバスト性も検査されて、確認された。その結果は、分析器が、データ収集において起こり得る変動が考慮された場合においても所望の結果を与える程度に、その性能において頑強であることを示している。これらの結果は表3、表4に示されている。
【0055】
本発明によって検査された小瓶のサンプルはすべて、漏洩速度が1.9×E-6(すなわち1.9×10-6)std・cc/秒以下であるという基準を満たしていた。一方、陽性対照は、漏洩速度が1.9×E-6std・cc/秒を超えていた。
【表1】
【0056】
【表2】
(235285、235291、235295、235301、235303はそれぞれ陽性対照1、2、3、4、5を表す。)
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
本発明の広い概念から逸脱することなく、上記の実施形態に変更が加えられてもよいことは、当業者には理解されるであろう。それ故、本発明が、開示された特定の実施形態には限定されず、添付の請求の範囲によって定義されているような本発明の精神と範囲との中で行われる修正にも及ぶことを意図していることは、理解される。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8