(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】とりわけ穴の持続的な封止のためのダイカット
(51)【国際特許分類】
B32B 5/18 20060101AFI20221206BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20221206BHJP
C09J 133/08 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B32B5/18
B32B5/24 101
C09J133/08
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021119446
(22)【出願日】2021-07-20
【審査請求日】2021-10-20
(31)【優先権主張番号】10 2020 209 289.3
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509120403
【氏名又は名称】テーザ・ソシエタス・ヨーロピア
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】カーチャ・マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ティム・バウマン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ナーゲル
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-59020(JP,A)
【文献】特表2016-530373(JP,A)
【文献】特開2020-15896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 5/18
B32B 5/24
C09J 133/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイカッ
トであって、
・10~40μmの厚さを有する金属層から形成される
、少なくとも一つの第一の層、
・30~200g/m
2の坪量を有するガラス織物またはガラスノンクリンプ織物から形成される
、少なくとも一つの第二の層、
・70~200g/m
2の坪量を有する第一の感圧接着剤から形成される
、少なくとも一つの第三の層、
・0.5~2.5mmの厚さを有する難燃性発泡体から形成される少なくとも一つの第四の層、及び
・300~1800g/m
2
の坪量及び/または400~1800μ
mの厚さを有するアクリレートベースの第二の感圧接着剤から形成される少なくとも一つの第五の層、
から前記指定の層順列で構成される複合
体でできた支持体を備えた、上記ダイカット。
【請求項2】
前記第一の金属層が、12~20μ
mの厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載のダイカット。
【請求項3】
前記第一の金属層が、圧延された金属
箔であることを特徴とする、請求項1または2に記載のダイカット。
【請求項4】
ガラス織物またはガラスノンクリンプ織物でできた前記第二の層が、60g/m
2と120g/m
2との
間の坪量を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つに記載のダイカット。
【請求項5】
ガラス織物またはガラスノンクリンプ織物でできた前記第二の層において、縦糸の糸数及び/または横糸の糸数が、20~40
本/c
mであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一つに記載のダイカット。
【請求項6】
前記第一の金属層と、ガラス織物またはガラスノンクリンプ織物の形の前記第二の層との間に、貼り合わせ用接着剤の形の更に別の接着層
が存在することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一つに記載のダイカット。
【請求項7】
前記の貼り合わせ用接着剤の形の更に別の接着層が、5~50g/m
2
の平面塗布量で存在することを特徴とする、請求項6に記載のダイカット。
【請求項8】
70~200g/m
2の坪量を有する第一の感圧接着剤から形成される前記第三の層が、アクリレートベースの水系接着剤であることを特徴とする、請求項1~
7のいずれか一つに記載のダイカット。
【請求項9】
0.5~2.5mmの厚さを有する難燃性発泡体から形成される前記第四の層が、ポリウレタンポリマー発泡体でできた層であり、このポリマー発泡体が、少なくとも1重量%の難燃剤及び10重量%未満の難燃剤の割合で難燃剤を含むことを特徴とする、請求項1~
8のいずれか一つに記載のダイカット。
【請求項10】
300~1800g/m
2の坪量を有する第二の感圧接着剤から形成される前記第五の層が、発泡されたアクリレートベースの接着剤であることを特徴とする、請求項1~
9のいずれか一つに記載のダイカット。
【請求項11】
ダイカットが、封止すべき穴を覆って同心的に施されていることを特徴とする、請求項1
10のいずれか一つに記載のダイカット。
【請求項12】
ダイカットの輪郭が、封止すべき穴の輪郭に一致するこ
とを特徴とする、請求項1~
11のいずれか一つに記載のダイカット。
【請求項13】
張出部が1mmと20mmとの間であることを特徴とする、請求項12に記載のダイカット。
【請求項14】
穴を持続的に封止するためのものであることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一つに記載のダイカット。
【請求項15】
板金またはプラスチック部材中の穴を持続的に封止するためのものであることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一つに記載のダイカット。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか一つに記載のダイカットを備えた穴を有する車体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカット、とりわけ、好ましくは板金またはプラスチック部品、特に車両の板金またはプラスチック部品にある穴を持続的に封止するためのダイカット、及び穴を持続的に封止するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属板及び/またはプラスチックからなる比較的複雑な形成物を作製する場合、構造上、塗装のためであれまたは溶接のためであれ、板金またはプラスチックに、その後ろにある中空空間に到達するために穴をあけざるを得ない。これらの穴は、所望のプロセスが終わるとたいていは不要になり、それどころかしばしば邪魔である。なぜならこれらの穴を通って空気、空気中の湿気、または水が形成物に入り込み得るからであり、これは例えば酸化プロセス(さび)を生じさせ得る。この問題を回避するための簡単な一解決策は、穴を使用後に再び封止することである。
【0003】
まさに、現代の乗り物、例えば水上を走る乗り物、陸上を走る乗り物(トラック、自動車など)、空を飛ぶ乗り物、宇宙旅行用の乗り物、これらの組合せ、例えば水陸両用車を生産する際には、組立中に、板金製またはプラスチック製の多くの個々の部品に様々な大きさの穴が必要であることは避けられない。通常、穴の直径は5~50mmの間である。これらの穴の多くは、より後のプロセスにおいて、前述の腐食作用を阻止するため、空気及びとりわけ水を通さないように再び封止しなければならない。それだけでなく、穴の封止により客室内の騒音抑制を大幅に改善することが求められている。
【0004】
以下では、本発明の基礎となる問題及び自動車の車体を例としたこの問題の解決策を説明する。これは、この適用例に本発明思想を制限するものでは断じてない。この適用例は、本発明が特に有利に効力を発揮する技術分野の一部である。これ以降、車体での使用を挙げる場合、当業者は、車体以外のその他すべての適用可能性を一緒に読むものである。
【0005】
自動車製造では、車体の様々な部位に穴を設置、つまりパンチング加工しなければならない。これは一般的には、個々の板金部品またはアルミニウム部品のパンチングプロセス及び変形プロセスの際に行われ、更にプラスチック部材にも穴があけられ得る。続いて様々な接合プロセスにより、個々の金属部品を相互に結合し、そしてホワイトボディができる。ホワイトボディにある穴、開口部、または貫通口は、とりわけ(例えば陰極浸漬塗装用の塗料のための)塗料排出口、ワックス注入口、ワックス排出口、後の組立でのネジ留め用またはケーブル通し用の穴として用いられる。これらの穴の多くは、陰極浸漬塗料の乾燥後か、またはむしろ最終の透明塗料のプロセス後に、再び封止されなければならない(この場合、穴の封止は組立プロセスにおいて行われるであろう)。
【0006】
穴封止の必要性には多くの理由があり得る。例えば
-湿気
-音響効果
-腐食防止
【0007】
一般的に、穴または開口部は、要求プロファイルに応じて作製された様々なプラスチックからなる射出成形部品(栓)によって封止される。これは例えば、PET、ABS、PP、PVC、EPDM、PA、及び更なる一般に市販されているプラスチックからなる、またはむしろ挙げた材料からの組合せからなる、並びにここでは挙げていない市販のプラスチック基材からなる栓であり得る。ガラス繊維の部分を有する材料も使用され、例えば貫入に対して栓を強化する炭素繊維も考えられる。基本的には、気候条件下で塗装性、温度安定性、形状安定性について特定のパラメータを提供し、かつ栓の製造プロセスにおいてある程度の経済性も満たす限りにおいては、すべての流通しているプラスチック基材が可能である。
【0008】
現在のところ、車体の穴の封止には一般的にはプラスチック栓が使用されており、このプラスチック栓は、一つには個々の場合に確実には穴を封止せず、もう一つには製造が比較的複雑で高価である。各々の穴サイズのために、その穴サイズに適合した個別の栓が必要である。これは、栓の買い手にとってロジスティクス及び管理技術に労力がかかることを意味する。つまり生産ラインでは、様々なサイズの数多くの栓を、それぞれ割り当てられたストックボックス内に準備しておかなければならない。
【0009】
更に、この目的には、穴サイズに適合させて長さを短くされるかまたはダイカット加工される接着テープが適している。しかし接着テープも市場で高まる要求に常に対応しているわけではない。
【0010】
ここでは、音響作用を達成しなければならない自己接着性の穴封止をより詳しく考察する。
【0011】
組立においてこの音響的に重要な穴封止は、客室空間で、隔絶された領域、車室内を達成するためにしばしば用いられる。車室内で邪魔になる音響効果は、例えばタイヤの転動騒音によって、またはむしろ車両外板に対し及び車両支持体に対しても飛ばされる砂利道の砂利及び小さな小石によって生成される。さらに、流体工学的に不利なデザインによって生じる風切音も、客室空間での比較的高い望ましくない騒音レベルの原因であり得る。
【0012】
砂利道の砂利、小石、タイヤの転動騒音によって、及び地面の凹凸によっても引き起こされる支持システム(サイドメンバー及びクロスメンバー)の中空空間内の音は、しばしば車室内つまり客室空間内に伝わる。これにより、音響的に効果的な製品を車両の外側にも使用しなければならなくなる。効果的な音響保護とは、例えば車台つまり車両プラットフォームにおける穴をマスクすることである。サイドメンバー及びクロスメンバーにはしばしば穴、パンチング加工部、または穿孔が施されている。これに関しては、あらゆるあり得る開口部を入念に封止することに特に注意しなければならない。
【0013】
既に前もって説明したように、車体の板金部品つまり支持システムにおける多くの穴は、プロセス時間を保証するために陰極浸漬塗装用の塗料をできるだけ速く車体及び全ての種類の中空空間から排出し得るために用いられている。これは逆の推論では、陰極浸漬塗装用の乾燥機の直後に、開口部及び穴を確実に封止しなければならないことを意味する。これは一般的には、いわゆるPVCラインにおいて実行される。この部分は、フィラーの塗装前、つまりベース塗料の塗装前に行われる製造ステップである。従って満たされるべき更なる特徴は、この生産区分で使用される製品が上塗り可能なことである。更に、PVC継目シーリング材料に対する適合性が保証されなければならない。なぜなら、陰極浸漬塗装用の乾燥機と次の塗料層の間で、ポンプ輸送可能なPVC剤により隙間がシーリングされるからである。
【0014】
重量フィルムとそれの上面に施与されたフィルムとの組み合わせに基づく穴の封止のための製品が、EP3036100A1(特許文献1)から公知である。この文献には、ダイカット、とりわけ穴、特に板金またはプラスチック部品における穴を持続的に封止するためのダイカットであって、少なくとも2つのプラスチックフィルムからなるラミネートでできた支持体を備えており、その際、下側のフィルムの単位面積当たりの重量が少なくとも1.5kg/m2、とりわけ1.5kg/m2と6kg/m2との間であり、かつ下側のフィルムのうち上側のフィルムと反対の側に、接着剤、とりわけ硬化性または自己接着性の接着剤が施されているダイカットが開示されている。前記の上側のフィルムは、好ましくはポリエステル、更に好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)から構成される。
【0015】
燃焼機関を備えた旧来の自動車の他、バッテリを備えたハイブリッド電気自動車(英語: Hybrid Electric Vehicle、HEV)及び二次電池式電気自動車(Battery Electric Vehicle、BEV)が益々重要性を増している。電気式ハイブリッド自動車は、ハイブリッド駆動装置を備えた自動車、すなわち少なくとも電気モータ及び更に別のエネルギー変換機によって駆動され、その蓄電装置(バッテリ)からだけでなく、それに追加的に積載される燃料からエネルギーを受け取る電気自動車である。完全電気自動車は、バッテリ駆動電気モータのみによって駆動され、それ故、化石燃料を必要としない。バッテリは、外部電源によって充電される。このような自動車では、車体中に搭載されるリチウムイオンバッテリなどのバッテリが問題となる。燃焼するリチウムイオンバッテリは、燃焼するガソリンまたはディーゼル車よりも消火することが明らかに困難である。
【0016】
それ故、電気自動車のバッテリには安全面での要求が絶えず高まっている。OEMは、火災が、例えば車体中の穴を通ってバッテリ室から車両内に広がることを防止することによって、最大限の安全策を持ってこれらの要求に応えようとしている。火炎温度や、ブレークスルーまでの時間に対する要求は正確には規定されていないため、できるだけ高い温度範囲及び期間をカバーする解決策が主として使用されている。
【0017】
課せられた高い要求を満たすことが可能な一級の製品が入手可能である。tesa SE社のtesa(登録商標)54332は、アルミニウム及びガラス繊維布からなる極めて耐熱性の高い支持体と、特に厚いアクリレート接着剤とを含み合わせたものである。この製品は、未使用の車体開口部を封止するために自動車製造における用途に最適化されており、この場合、優れた耐熱性と完璧な密閉が要求される。この製品は、500℃までの温度で短くとも5分間、水平燃焼試験に合格する。この試験では、それぞれの温度における火炎のブレークスルーまでの時間が決定される。燃焼試験の構成及びやり方は、更に以下に正確に記載する。
【0018】
2018年5月3日版のGTR20(世界統一規格第20号)には、二次電池式電気自動車においてまたはバッテリーパックの耐火性に関して、現在、どのような要求が課せられるかが記載されている。OEM/OESは、周囲の部材(例えば、アンダーボディ上のダイカット)もできるだけ耐火性にすることを試みている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】EP3036100A1
【文献】DE4313008A1
【文献】EP0578151A
【文献】EP2520627A1
【文献】EP2522705A1
【文献】EP2520628A1
【文献】EP2695926A1
【文献】EP2520629A1
【文献】EP1378527B1
【文献】EP1978069A1
【文献】US4,387,176A
【文献】US6,765,078B2
【文献】US6,720,399B2
【文献】EP1311555B1
【文献】US5,945,491A
【文献】US5,854,364A
【文献】US5,789,487A
【文献】EP1791922A1
【文献】EP1978069A1
【非特許文献】
【0020】
【文献】「Emulsion Polymerization and Emulsion Polymers」,Peter A.Lovell and Mohamed S.El-Aasser-Wiley-VCH 1997-ISBN 0-471-96746-7
【文献】「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」(van Nostrand、New York 1989)
【文献】T.G.Fox,Bull.Am.Phys.Soc.1(1956)123
【文献】Houben Weyl、Methoden der Organischen Chemie、Vol. E 19a,60~147頁
【文献】P.E.Hinkamp,Polymer,1967,8,381
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の課題は、とりわけ自動車の車体の板金またはプラスチック部品における穴の持続的な封止に適しており、前述の穴を湿気が通り抜けられないように封止し、通常の塗料のうちで少なくとも一部を用いて上塗り可能であり、騒音抑制を改善し、及び内部空間、とりわけ床領域での機械的負荷の際にも、確実に封止し、及び熱及び火に対する耐性の改善を供する、ダイカットを提供することである。
【0022】
この課題は、請求項1に記載されているようなダイカットによって解決される。下位の請求項の対象は、本発明の対象の有利な発展形態である。
【課題を解決するための手段】
【0023】
それ故、本発明は、10~40μmの厚さを有する金属層から形成される任意選択の少なくとも一つの第一の層、30~200g/m2の坪量を有するガラス織物またはガラスノンクリンプ織物から形成される任意選択の少なくとも一つの第二の層、70~200g/m2の坪量を有する第一の感圧接着剤から形成される任意選択の少なくとも一つの第三の層、0.5~2.5mmの厚さを有する難燃性発泡体から形成される少なくとも一つの第四の層、及び300~1800g/m2、好ましくは360~1500g/m2の坪量及び/または400~1800μm、好ましくは800~1500μmの厚さを有する第二の感圧接着剤から形成される少なくとも一つの第五の層からこの指定の層順列で構成される、複合体、特に積層体でできた支持体を備えた、ダイカット、特に孔、とりわけ板金またはプラスチック部材中の孔を持続的に封止するためのダイカットに関する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
少なくとも前記第一、第二、第三、第四及び第五の層が同時に存在するダイカットの実施形態が好ましい。
【0025】
本発明の有利な実施形態の一つでは、前記第一の金属層は、12~20μm、更に好ましくは18μmの厚さを有する。場合によっては、これは更にエンボス加工されている。
【0026】
金属としては、銀、銅、金、白金、アルミニウム及びアルミニウム化合物、スズ、ニクロム、ニロスタ(NIROSTA)、チタン、金属酸化物、例えば酸化カドニウム類、酸化スズ類、酸化亜鉛類、酸化マンガン類を選択することができる。特に好ましくは、アルミニウムが選択される。この際、このリストは、排他的なものと見なすべきではなく、当業者は、ここで明示的に記載していない他の金属層を、発明的発想を必要とすることなく選択することができる。好ましくは、これは、圧延された金属箔、特にアルミニウム箔である。
【0027】
他の有利なやり方では、本発明によれば、金属酸化物(MeOx層)から構成される層が、第一の金属層として使用される。有利な金属酸化物層は、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)または亜鉛-スズ酸化物(ZnSnO)でできているか、またはこれらは、これらの金属酸化物のうちの一つまたは複数を含む。
【0028】
第二の層のガラス織物またはガラスノンクリンプ織物は、有利には次の特性を有する: 坪量は、60g/m2と120g/m2のとの間、特に70g/m2と100g/m2との間、更に特には80g/m2と90g/m2との間である。縦糸の糸数及び/または横糸の糸数はそれぞれ3~50糸/cmである。本発明の更に別の有利な実施形態の一つによれば、縦糸の糸数は5~10/cm、好ましくは7/cmであり、及び/または横糸の糸数は4~10/cm、好ましくは5/cmである。
【0029】
縦糸及び横糸の繊度は、好ましくは500dtexと1000dtexとの間、更に好ましくは600dtexと800dtexとの間、特に好ましくは680dtexである。
【0030】
横繊度とは、横糸の繊度(dtex)を乗じた1cm当たりの横糸の数のことである。単位はdtex/cmである。縦繊度とは、縦糸の繊度(dtex)を乗じた1cm当たりの縦糸の数のことである。単位は同じくdtex/cmである。本発明の更に別の有利な実施形態の一つによれば、縦糸の縦繊度及び/または横糸の横繊度は、2000dtex/cmを超える。好ましくは、縦繊度は4000dtex/cmと5000dtex/cmとの間であり、及び/または横繊度は3000dtex/cmと4000dtex/cmとの間である。
【0031】
ガラス織物では、糸は平織で織り合わされる。他の織り方は、サテン織り(サテンとも知られ、規則的な形状及び不規則的な形状である)及び綾織りである。綾織り(例えば、三つ綾)での織物は、機械方向に対し斜めに延びるいわゆる綾目を形成する。ノンクリンプ織物は、並行に延びる伸長した糸の一つまたは複数の層からかなる平坦形成物である。通常は、糸は交差点で固定される。この固定は、材料的結合(Stoffschluss)によって、あるいは機械的に摩擦及び/または構造的結合(Formschluss)によって、行われる。
【0032】
以下のタイプのノンクリンプ布が存在する。
・並行な糸の群を固定することによって得られる、一軸もしくは一方向ノンクリンプ織物
・並行な糸の二つの群を二つの軸の方向で固定した二軸ノンクリンプ織物
・並行な糸のより多くの群を様々な軸の方向で固定した多軸ノンクリンプ織物
多層ノンプリンプ布の糸層は、全て異なる配向を有することができ、また様々な糸密度及び様々な糸繊度からできていることができる。本発明では、単層ノンクリンプ織物が好ましい。
【0033】
第一の金属層とガラス織物またはガラスノンプリンプ織物の形の第二の層との間には、機能層、例えば接着を改善するための接着促進剤が存在することができる。好ましくは、貼り合わせ用接着剤の形の更に別の接着層が、詳しくは5~50g/m2、特に7~20g/m2の単位面積塗布量で使用される。貼り合わせ用接着剤としては、特に、以下に詳しく説明するような感圧接着剤が適している。しかし、第一の金属層と、ガラス織物またはガラスノンクリンプ織物の形の第二の層を、加圧下に積層することによって接合することもできる。70~200g/m2の坪量を有する第一の感圧接着剤から形成された第三の層のためには、全ての既知の接着剤系を使用することができる。天然ゴムまたは合成ゴムをベースとする接着剤の他に、とりわけシリコーン系接着剤及びポリアクリレート系接着剤を使用することができる。
【0034】
好ましくは、該接着剤は、感圧接着剤、すなわち比較的弱い押圧下に既に殆ど全ての被着材との持続的な接合を可能とし、かつ使用後に本質的に残渣を残すことなく被着材から再び剥がすことができる接着剤である。感圧接着剤は、室温で永続的に感圧接着性に作用し、つまり十分に低い粘度及び高い初期粘着性を有しており、従って感圧接着剤は、それぞれの被接着下地の表面を、低い押圧力で既に濡らすものである。接着剤の貼付性はその接着特性に、及び再剥離性はその凝集特性に基づいている。
【0035】
感圧接着剤は、弾性成分を有する極めて粘性の高い液体と見なすことができる。それ故、感圧接着剤は、特に、持続的な固有のタック及び接着性をもたらす特徴的な粘弾性特性を有する。
【0036】
感圧接着剤に特徴的なのは、機械的に変形されると、粘性流動プロセスも、弾性復元力の発生も起こることである。両方のプロセスは、それぞれの割合に関して、各々の感圧接着剤の正確な組成、構造、及び架橋度にも、変形の速度及び時間にも、並びに温度にも応じて、互いの特定の比率にある。
【0037】
割合に応じた粘性流動は、接着の達成のために必要である。比較的大きな可動性を持つ高分子によって引き起こされる粘性成分のみが、接着すべき基材上での良好な湿潤及び良好な流動を可能にする。粘性流動の高い割合は、強い感圧接着性(タックまたは表面接着性とも称される)をもたらし、それ故、多くの場合に高い接着力も与える。強く架橋した系、結晶性またはガラス様に硬化したポリマーは、流動可能な成分が欠けているので、一般的に感圧接着性ではないか、または少なくとも僅かにしか感圧接着性でない。
【0038】
割合に応じた弾性復元力は、凝集性を達成するために必要である。この復元力は、例えば非常に長鎖で強く絡んだ高分子及び物理的または化学的に架橋された高分子によってもたらされ、そして接着結合に作用する力の伝達を可能にする。復元力により、接着結合が、例えば持続的なせん断負荷の形で接着結合に作用する持続的負荷に対して十分に、比較的長時間にわたって持ちこたえ得るようになる。
【0039】
この場合、全ての公知の接着剤系を用いることができる。天然ゴムまたは合成ゴムをベースとする接着剤の他、とりわけシリコーン系接着剤及びポリアクリレート系接着剤、好ましくは低分子のアクリレート溶融感圧接着剤を使用することができる。
【0040】
好ましいのはアクリレートまたはシリコーンをベースとする接着剤である。
【0041】
接着剤は、天然ゴムもしくは合成ゴムの群から、または天然ゴム及び/もしくは合成ゴムの任意のブレンドから選択することができ、これに関し、1種または複数の天然ゴムは、基本的に、例えばクレープタイプ、RSSタイプ、ADSタイプ、TSRタイプ、またはCVタイプのような全ての入手可能な品質から、必要な純度及び粘度レベルに応じて選択することができ、1種または複数の合成ゴムは、統計的に共重合されたスチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(XIIR)、アクリレートゴム(ACM)、エチレン・ビニルアセテートコポリマー(EVA)、及びポリウレタン、並びに/またはそれらのブレンドの群から選択することができる。
【0042】
同様に、該接着コーティングは、合成ゴムをベースとする接着剤、すなわち特に少なくとも一種のビニル芳香族ブロックコポリマー及び少なくとも一種の粘着樹脂からできた接着剤から構成される。前記ブロックコポリマーの典型的な使用濃度は、30重量%と70重量%との間の範囲、特に35重量%と55重量%との間の範囲の濃度である。
【0043】
更に別のポリマーとしては、純粋な炭化水素をベースとするポリマー、例えば天然のもしくは合成されたポリイソプレンもしくはポリブタジエンのような不飽和ポリジエン、化学的に実質的に飽和状態のエラストマー、例えば飽和エチレン-プロピレン-コポリマー、α-オレフィンコポリマー、ポリイソブチレン、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、並びに化学的に官能化された炭化水素、例えばハロゲン含有の、アクリレート含有のもしくはビニルエーテル含有のポリオレフィンが存在することができ、これらは、ビニル芳香族含有ブロックコポリマーをその半分まで置き換えることができる。
【0044】
粘着性付与剤としては、スチレンブロックコポリマーのエラストマーブロックと適合性の粘着樹脂が使用される。
【0045】
可塑剤、例えば液状樹脂、軟化油または低分子量液状ポリマー、例えば、<1500g/モル(数平均)のモル質量を有する低分子量ポリイソブチレン、または液状EPDMタイプが典型的に使用される。
【0046】
更に別の添加剤としては、光保護剤、例えばUV吸収剤、立体障害性アミン、耐オゾン劣化防止剤、金属失活剤、加工助剤、末端ブロック強化樹脂を、上記の全てのタイプの接着剤に加えることができる。
【0047】
充填材、例えば、幾つかの例を挙げれば、二酸化ケイ素、ガラス(粉砕ガラス、または中実球もしくは中空球としての球の形のガラス)、マイクロバルーン、酸化アルミニウム類、酸化亜鉛類、炭酸カルシウム類、二酸化チタン類、カーボンブラック、シリケート及びチョーク、同様に有色顔料及び染料、並びに蛍光増白剤も同様に使用することができる。
【0048】
通常は、感圧接着剤の老化安定性を向上するために、一次及び二次酸化防止剤が感圧接着剤に加えられる。この際、一次酸化防止剤は、酸素の存在下に形成し得るオキシラジカル及びパーオキシラジカルと反応し、そしてそれらと反応して、反応性が比較的低い化合物となる。二次酸化防止剤は、例えばヒドロパーオキシドをアルコールに還元する。既知のように、一次老化防止剤と二次老化防止剤との間の相乗効果があり、その結果、混合物の保護効果は、多くの場合に、両方の個々の効果の総和よりも大きい。
【0049】
更に好ましくは、加工性を改善するため、詳しくはエラストマー全体の割合に対して10~50重量%の重量分率で熱可塑性エラストマーをゴムに添加できる。ここでは代表して、なかでも特に適合するスチレン・イソプレン・スチレン(SIS)タイプ及びスチレン・ブタジエン・スチレン(SBS)タイプを挙げておく。例えばEPDMゴムもしくはEPMゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、エチレンビニルアセテート、ジエンから構成される水素化ブロックコポリマー(例えばSBR、cSBR、BAN、NBR、SBS、SIS、またはIRの水素化による、このようなポリマーは例えばSEPS及びSEBSとして公知である)、またはACMのようなアクリレートコポリマーも、混合に適したエラストマーである。その他、スチレン・イソプレン・スチレン(SIS)の100%系が適していることが分かった。
【0050】
架橋は、適用後の接着テープの再剥離性の改善に有利であり、熱によって行うことができるか、またはUV光もしくは電子線での照射によって行うことができる。熱誘発の化学的架橋のためには、全ての既に公知の熱活性化性化学的架橋剤を使用可能であり、例えば促進された硫黄系もしくは硫黄供与体系、イソシアネート系、反応性のメラミン樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、及び(任意選択でハロゲン化された)フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、または対応する活性化剤を含有する反応性のフェノール樹脂架橋系もしくはジイソシアネート架橋系、エポキシ化されたポリエステル樹脂及びアクリレート樹脂、並びにそれらの組合せを使用可能である。架橋剤は、50℃超の温度で、とりわけ100℃~160℃の温度で、就中特に好ましくは110℃~140℃の温度で活性化されるのが好ましい。架橋剤の熱による励起は、IR線または高エネルギーの交流場によっても行うことができる。
【0051】
溶剤ベースの接着剤、水ベースの接着剤、またはホットメルト系としての接着剤も使用可能である。アクリレートホットメルトをベースとする接着剤も適しており、この接着剤は、K値が少なくとも20、とりわけ30超であることができ、このような接着剤の溶液をホットメルトとして加工可能な系へと濃縮することで入手可能である。濃縮は、これに対応して装備されたボイラーまたは押出機内で行うことができ、とりわけガス抜きを伴う場合はベント式押出機が好ましい。このような接着剤は、DE4313008A1(特許文献2)で説明されており、この特許文献の内容を本明細書に援用し、かつその内容を本開示及び本発明の一部とする。但し、アクリレートホットメルトをベースとする接着剤は化学的に架橋されていてもよい。
【0052】
この際、K値は、DIN53726に類似して決定される。
【0053】
この際、加えて、更に別の易揮発性の成分が除去される。溶融物からコーティングした後、これらの接着剤は、少量でのみであるが揮発性成分をなおも含む。それ故、上記の特許で特許請求されている全てのモノマー/処方を使用することができる。接着剤の溶液は、5~80重量%、特に30~70重量%の溶剤を含むことができる。好ましくは、商業的な溶剤、特に低沸点炭化水素、ケトン、アルコール及び/またはエステルが使用される。更に好ましくは、一つまたは特に二つまたはそれを超える脱ガスユニットを備えた単軸スクリュー、二軸スクリューまたは多軸スクリュー押出機が使用される。ベンゾイン誘導体、例えばベンゾインアクリレートもしくはベンゾインメタクリレート、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを、アクリレートホットメルトベースの接着剤中に重合導入することができる。このようなベンゾイン誘導体は、EP0578151A(特許文献3)に記載されている。アクリレートホットメルトベースの接着剤はUV架橋することができる。しかし、他の架橋方法も可能であり、例えば電子線架橋を行うことができる。
【0054】
更に別の好ましい一実施形態では、自着剤として、(メタ)アクリル酸及びその1~25個のC原子を有するエステルから、マレイン酸、フマル酸、及び/もしくはイタコン酸並びに/またはそのエステルから、置換(メタ)アクリルアミド、無水マレイン酸、並びにその他のビニル化合物、例えばビニルエステル、とりわけビニルアセテート、ビニルアルコール、及び/またはビニルエーテルから構成される共重合体が用いられる。
【0055】
同様に適していると分かっている接着剤は、BASFからacResin UVまたはAcronal(登録商標)、とりわけAcronal(登録商標)DS3458またはAC Resin A 260UVの名称で売られているような、低分子のアクリレート溶融感圧接着剤である。K値の低いこの接着剤は、その用途に応じた特性を、最終的な放射線化学的に引き起こされる架橋によって得る。
【0056】
更に別の優れて適切な接着剤は、EP2520627A1(特許文献4)、EP2522705A1(特許文献5)、EP2520628A1(特許文献6)、EP2695926A1(特許文献7)及びEP2520629A1(特許文献8)に記載されている。
【0057】
特に好ましいものは、乾燥ポリマー分散物の形の感圧感圧接着剤であり、そのポリマーは、
(a)95.0~100.0重量%のn-ブチルアクリレート及び/または2-エチルヘキシルアクリレート、
(b)0.0~5.0重量%の、酸官能基もしくは酸無水物官能基を有するエチレン性不飽和モノマー、
から構成される。
【0058】
好ましくは、前記ポリマーは、95.0~99.5重量%のn-ブチルアクリレート及び/または2-エチルヘキシルアクリレート、及び0.5~5重量%の、酸官能基もしくは酸無水物官能基を有するエチレン性不飽和モノマーからなり、更に好ましくは、97.0または98.0重量%~99.0重量%のn-ブチルアクリレート及び/または2-エチルヘキシルアクリレート及び1.0~2.0重量%または3重量%の、酸官能基もしくは酸無水物官能基を有するエチレン性不飽和モノマーから構成される。
【0059】
上記のアクリレートポリマーの他に、該感圧接着剤には、場合により存在する残留モノマーに加えて、追加的な粘着性付与剤及び/または添加物質、例えば光保護剤または老化防止剤を加えることができる。特に、エラストマーなどの更に別のポリマーは感圧接着剤中に含まれない、すなわち感圧接着剤のポリマーは、前記の量比でモノマー(a)及び(b)のみからなる。
【0060】
好ましくは、n-ブチルアクリレートがモノマー(a)を形成する。
【0061】
モノマー(b)としては、有利には、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸及び/またはマレイン酸無水物が考慮される。式Iの(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0062】
【化1】
式中、R
3はHまたはCH
3であり、好ましくは、場合により、アクリル酸またはメタクリル酸から構成される混合物が使用される。アクリル酸が特に好ましい。
【0063】
特にこの好ましい変形の一つによれば、前記ポリマーは以下の組成を有する:
(a)95.0~100.0重量%、好ましくは95.0~99.5重量%、更に好ましくは98.0~99.0重量%のn-ブチルアクリレート、及び
(b)0.0~5.0重量%、好ましくは0.5~5.0重量%、更に好ましくは1.0~2.0重量%のアクリル酸。
【0064】
ポリマー分散物は、上記の成分の乳化重合の方法によって製造される。この方法は、例えば「Emulsion Polymerization and Emulsion Polymers」,Peter A.Lovell and Mohamed S.El-Aasser-Wiley-VCH 1997-ISBN 0-471-96746-7(非特許文献1)またはEP1378527B1(特許文献9)に記載されている。
【0065】
重合において、全てのモノマーがポリマーに転化されるわけではないことは除外されない。この際、残留モノマー含有率はできるだけ少なくするべきことは明らかである。好ましくは、残留モノマー含有率が(乾燥ポリマー分散物の量を基準にして)1重量%以下、特に0.5重量%以下である前記ポリマー分散物を含む接着剤が調製される。
【0066】
最後に、ポリウレタンをベースとする接着剤も適していることを述べておく。
【0067】
特性を最適化するため、使用する自己接着剤を1種または複数の添加剤、例えば粘着性付与剤(樹脂)、軟化剤、充填材、顔料、UV吸収剤、光保護剤、老化防止剤、架橋剤、架橋促進剤、またはエラストマーと混合することができる。
【0068】
粘着性付与剤としては、既に詳細に記載した樹脂が使用される。
【0069】
適切な充填材及び顔料は、例えばカーボンブラック、二酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、ケイ酸塩、またはシリカである。
【0070】
適切な軟化剤は、例えば脂肪族の、脂環式の、及び芳香族の鉱油、フタル酸、トリメリット酸、もしくはアジピン酸のジエステルもしくはポリエステル、液状ゴム(例えばニトリルゴムもしくはポリイソプレンゴム)、ブテン及び/もしくはイソブテンから構成される液状重合体、アクリル酸エステル、ポリビニルエーテル、接着樹脂の原料をベースとする液状樹脂及び軟質樹脂、ラノリン及びその他のワックス、または液状シリコーンである。
【0071】
架橋剤は、例えばフェノール樹脂またはハロゲン化フェノール樹脂、メラミン樹脂、及びホルムアルデヒド樹脂である。適切な架橋促進剤は、例えばマレインイミド、トリアリルシアヌレートのようなアリルエステル、アクリル酸及びメタクリル酸の多官能性エステルである。
【0072】
「粘着樹脂」とは、当業者の一般的な理解に一致して、粘着樹脂は含まないものの他は同じ感圧接着剤と比べた場合に感圧接着剤の自動付着(タック、固有粘着性)を高めるオリゴマー性またはポリマー性樹脂のことと解される。
【0073】
感圧接着剤の接着力を高めるための粘着性付与剤の使用は基本的に知られている。この効果は、(乾燥ポリマー分散物の重量を基準にして)15重量部まで(<15重量部に相当)、または5~15重量部の粘着性付与剤が接着剤に加えられた場合にも現れる。好ましくは、(乾燥ポリマー分散物の重量を基準にして)5~12、更に好ましくは6~10重量部の粘着性付与剤が加えられる。
【0074】
粘着樹脂とも称される粘着性付与剤としては、原則的に全ての既知の部類の物質が適している。粘着性付与剤は、幾つかの例のみを挙げれば、例えば炭化水素樹脂(例えば、不飽和C5またはC9モノマーをベースとするポリマー)、テルペンフェノール樹脂、例えばα-もしくはβ-ピネンなどの原料をベースとするポリテルペン樹脂、芳香族樹脂、例えばクマロン-インデン樹脂、またはスチレンもしくはα-メチルスチレンをベースとする樹脂、例えばロジン及びその二次生成物、例えば不均化、二量体化もしくはエステル化ロジン、例えばグリコール、グリセリンもしくはペンタエリトリトールとの反応生成物である。容易に酸化可能な二重結合を持たない樹脂、例えばテルペンフェノール樹脂、芳香族樹脂、及び特に好ましくは、水素化によって製造される樹脂、例えば水素化芳香族樹脂、水素化ポリシクロペンタジエン樹脂、水素化ロジン誘導体または水素化ポリテルペン樹脂が好ましい。
【0075】
好ましいものは、テルペンフェノール及びロジンエステルをベースとする樹脂である。同様に好ましいものは、ASTM E28-99(2009)に従い80℃超の軟化点を有する粘着樹脂である。格別好ましいものは、ASTM E28-99(2009)に従い90℃超の軟化点を有する、テルペンフェノール及びロジンエステルをベースとする樹脂である。樹脂は、有利には分散物の形態で使用される。これらは、問題なく、ポリマー分散物と微分散状態で混合することができる。
【0076】
粘着樹脂が全く感圧接着剤に加えられていない変形が特に好ましい。
【0077】
特に、以下の物質は該感圧接着剤に添加されない:
・炭化水素樹脂(例えば、不飽和C5-もしくはC9-モノマーをベースとするポリマー)、
・テルペンフェノール樹脂、
・例えばα-またはβ-ピネンなどの原料をベースとするポリテルペン樹脂、
・芳香族系樹脂、例えばクロマン-インデン樹脂、またはスチレンもしくはα-メチルスチレンをベースとする樹脂、例えばロジン及びそれの二次生成物、例えば不均化、二量化もしくはエステル化ロジン、例えばグリコール、グリセリンまたはペンタエリトリトールとの反応生成物。
【0078】
「ポリ(メタ)アクリレート」とは、モノマーベースが少なくとも60重量%でアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、及び/またはメタクリル酸エステルから構成されるポリマーのことであり、その際、アクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルを少なくともその配分に応じて、好ましくは当該ポリマーのモノマーベース全体に対して少なくとも50重量%で、含有している。とりわけ、「ポリ(メタ)アクリレート」とはアクリルモノマー及び/またはメタクリルモノマー並びに場合によっては更なる共重合性モノマーのラジカル重合によって得られる重合体のことである。
【0079】
本発明によれば、感圧接着剤の総重量に対して30~65重量%で、1種または複数のポリ(メタ)アクリレートが含有されている。本発明による感圧接着剤は、少なくとも1種のポリ(メタ)アクリレートを、感圧接着剤の総重量に対して35~55重量%含有しているのが好ましい。
【0080】
本発明により使用可能なポリ(メタ)アクリレートのガラス転移温度は、好ましくは<0℃、より好ましくは-20と-50℃との間である。
【0081】
ポリマーまたはブロックコポリマーのポリマーブロックのガラス転移温度は、本発明の枠内では示差走査熱量測定(DSC)によって決定される。
【0082】
本発明による感圧接着剤のポリ(メタ)アクリレートは、官能性で、好ましくはエポキシド基と架橋し得るモノマーを、少なくともその配分に応じて重合導入することによって得られるのが好ましい。この場合特に好ましいのは、酸基(特にカルボン酸基、スルホン酸基、もしくはホスホン酸基)及び/またはヒドロキシ基及び/または酸無水物基及び/またはエポキシド基及び/またはアミン基を有するモノマーであり、とりわけ好ましいのはカルボン酸基含有モノマーである。ポリアクリレートが、重合導入されたアクリル酸及び/またはメタクリル酸を有する場合がとりわけ有利である。これら全ての基は、エポキシド基との架橋能力を有しており、これによりポリアクリレートは、加えられたエポキシドと熱架橋できることが有利である。
【0083】
ポリ(メタ)アクリレートのためのコモノマーとして使用可能な更なるモノマーは、1分子につき最大30個のC原子を有するアクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルの他、例えば最大20個のC原子を有するカルボン酸のビニルエステル、最大20個のC原子を有するビニル芳香族類、エチレン性不飽和ニトリル、ハロゲン化ビニル、1~10個のC原子を含むアルコールのビニルエーテル、2~8個のC原子及び1つもしくは2つの二重結合を有する脂肪族炭化水素、またはこれらモノマーの混合物である。
【0084】
当該のポリ(メタ)アクリレートの特性には、とりわけ、個々のモノマーの重量分率の違いによるポリマーのガラス転移温度の変化を介して影響を及ぼすことができる。本発明の1種または複数のポリ(メタ)アクリレートは、好ましくは、下記のモノマー組成に基づき得ることである。
a)次式
CH2=C(RI)(COORII)
のアクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステル、
式中、RI=HまたはCH3であり、RIIは4~14個のC原子を有するアルキル残基である。
b)エポキシド基との反応性に関して既に定義した種類の官能基を有するオレフィン性不飽和モノマー、
c)任意選択で、成分(a)と共重合可能である更なるアクリレート及び/またはメタクリレート及び/またはオレフィン性不飽和モノマー。
【0085】
対応する成分(a)、(b)、及び(c)の割合は、重合生成物のガラス転移温度が<0℃、より好ましくは-20と-50℃との間(DSC)であるように選択するのが好ましい。特に有利なのは、成分(a)のモノマーの割合を45~99重量%、成分(b)のモノマーの割合を1~15重量%、及び成分(c)のモノマーの割合を0~40重量%と選択することである(データは、「ベースポリマー」のためのモノマー混合物に対してであり、つまり出来上がったポリマーへの場合によってはあり得る樹脂などのような添加剤の添加を含まない)。
【0086】
成分(a)のモノマーは、とりわけ軟化性及び/または非極性のモノマーである。好ましいのは、モノマー(a)として、4~14個のC原子、特に好ましくは4~9個のC原子を有するアルキル基を有するアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルを用いることである。このようなモノマーの例は、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-ペンチルメタクリレート、n-アミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、n-ヘプチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-ノニルアクリレート、及びそれらの分枝異性体、例えばイソブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、または2-エチルヘキシルメタクリレートである。
【0087】
成分(b)のモノマーはとりわけ、官能基を有する、とりわけエポキシド基と反応し得る官能基を有するオレフィン性不飽和モノマーである。成分(b)のために、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、またはホスホン酸基、酸無水物、エポキシド、アミンを含む群から選択される官能基を有するモノマーを用いることが好ましい。
【0088】
成分(b)のモノマーのとりわけ好ましい例は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、アコニット酸、ジメチルアクリル酸、β-アクリロイルオキシプロピオン酸、トリクロロアクリル酸、ビニル酢酸、ビニルホスホン酸、無水マレイン酸、ヒドロキシエチルアクリレート、とりわけ2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、とりわけ3-ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、とりわけ4-ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシヘキシルアクリレート、とりわけ6-ヒドロキシヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、とりわけ2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、とりわけ3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、とりわけ4-ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシヘキシルメタクリレート、とりわけ6-ヒドロキシヘキシルメタクリレート、アリルアルコール、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートである。
【0089】
原理的には、成分(c)として、成分(a)及び/または成分(b)と共重合性である全てのビニル官能化された化合物を用いることができる。成分(c)のモノマーは、結果として生じる感圧接着剤の特性を調整するために用いることができる。
【0090】
成分(c)の例示的なモノマーは次のものである:
メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、sec-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、tert-ブチルフェニルアクリレート、tert-ブチルフェニルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n-ウンデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ベヘニルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2-ブトキシエチルメタクリレート、2-ブトキシエチルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、3,5-ジメチルアダマンチルアクリレート、4-クミルフェニルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノエチルメタクリレート、4-ビフェニルアクリレート、4-ビフェニルメタクリレート、2-ナフチルアクリレート、2-ナフチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、2-ブトキシエチルアクリレート、2-ブトキシエチルメタクリレート、3-メトキシアクリル酸メチルエステル、3-メトキシブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレート、ブチルジグリコールメタクリレート、エチレングリコールアクリレート、エチレングリコールモノメチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート350、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート500、プロピレングリコールモノメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、エトキシトリエチレングリコールメタクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルアクリレート、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ペンタデカフルオロオクチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N-(1-メチルウンデシル)アクリルアミド、N-(n-ブトキシメチル)アクリルアミド、N-(ブトキシメチル)メタクリルアミド、N-(エトキシメチル)アクリルアミド、N-(n-オクタデシル)アクリルアミド、更にN,N-ジアルキル置換アミド、例えばN,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-ベンジルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-tert-オクチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルエーテル、例えばビニルメチルエーテル、エチルビニルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルエステル、例えばビニルアセテート、ビニルクロライド、ハロゲン化ビニル、ビニリデンクロライド、ハロゲン化ビニリデン、ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、N-ビニルフタルイミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルピロリドン、スチレン、α及びp-メチルスチレン、α-ブチルスチレン、4-n-ブチルスチレン、4-n-デシルスチレン、3,4-ジメトキシスチレン、マクロモノマー、例えば2-ポリスチレンエチルメタクリレート(GPCによって決定された重量平均分子量Mw4000~13000g/mol)、ポリ(メチルメタクリレート)エチルメタクリレート(Mw2000~8000g/mol)。
【0091】
成分(c)のモノマーは、後の(例えば電子線、UVによる)放射線化学的な架橋を補助する官能基を含むようにも有利に選択できる。適切な共重合性光開始剤は、例えばベンゾインアクリレート及びアクリレート官能化ベンゾフェノン誘導体である。電子照射による架橋を補助するモノマーは、例えばテトラヒドロフルフリルアクリレート、N-tert-ブチルアクリルアミド、及びアリルアクリレートである。
【0092】
ポリアクリレート(「ポリアクリレート」は本発明の枠内では「ポリ(メタ)アクリレート」と同義に理解される)の製造は、当業者に周知の方法に基づいて行うことができ、とりわけ有利には従来のラジカル重合または制御ラジカル重合によって行うことができる。ポリアクリレートは、通常の重合開始剤及び場合によっては調節剤を使用したモノマー成分の共重合によって製造することができ、その際、通常の温度で、塊状で、エマルション中で、例えば水もしくは液状炭化水素中で、または溶液中で重合される。
【0093】
好ましいのは、ポリアクリレートが、モノマーの総重量に対して一般的に0.01~5、とりわけ0.1~2重量%の通常の量の重合開始剤を使用した、溶剤中、とりわけ沸点範囲が50~150℃、好ましくは60~120℃の溶剤中でのモノマーの重合によって製造されることである。
【0094】
原理的には、当業者に周知の全ての通常の開始剤が適している。ラジカル源の例は、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、及びアゾ化合物、例えばジベンゾイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、シクロヘキシルスルホニルアセチルペルオキシド、ジイソプロピルペルカーボネート、t-ブチルペルオクトアート、ベンゾピナコールである。非常に好ましい手順では、ラジカル開始剤として、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(DuPont社のVazo(登録商標)67(商標))または2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル;AIBN;DuPont社のVazo(登録商標)64(商標))が使用される。
【0095】
ポリ(メタ)アクリレートを製造するための溶剤としては、アルコール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノール、n-ブタノール及びイソブタノール、好ましくはイソプロパノール及び/またはイソブタノール、並びに炭化水素、例えばトルエン及びとりわけ沸点範囲が60~120℃のベンジンが考慮される。更にケトン、例えば好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びエステル、例えば酢酸エチルエステル、並びに挙げた種類の溶剤の混合物を用いることができ、イソプロパノールを含有する混合物、とりわけ、用いられる溶剤混合物に対して2~15重量%、好ましくは3~10重量%の量でイソプロパノールを含有する混合物が好ましい。
【0096】
好ましいのは、ポリアクリレートの製造(重合)後に濃縮が行われ、ポリアクリレートの更なる加工が実質的に溶剤なしで行われることである。重合体の濃縮は、架橋剤物質及び促進剤物質の不在下で行うことができる。但し、これらの化合物クラスの1つを濃縮前に既に重合体に添加してもよく、つまりその場合、濃縮はこの(これらの)物質の存在下で行われる。
【0097】
ポリアクリレートの重量平均分子量Mwは、好ましくは20,000~2,000,000g/molの範囲内、非常に好ましくは100,000~1,500,000g/molの範囲内、極めて好ましくは150,000~1,000,000g/molの範囲内である。本明細書における平均分子量Mw及び多分散性PDのデータは、ゲル浸透クロマトグラフィによる決定に関する。これに関し、所望の平均分子量を調整するため、適切な重合調節剤、例えばチオール、ハロゲン化合物、及び/またはアルコールの存在下で重合を実施することが有利であり得る。
【0098】
ポリアクリレートは、トルエン中(1%濃度溶液、21℃)で測定したK値が30~90、特に好ましくは40~70であることが好ましい。フィケンチャー法に基づくK値は、重合体の分子量及び粘度に関する尺度である。
【0099】
本発明により特に適しているのは、狭い分子量分布(多分散性PD<4)を有するポリアクリレートである。このポリアクリレートは、分子量が比較的小さいにもかかわらず、架橋後に特に良好なせん断強度を有する。加えて比較的低い多分散性は、適用特性がほぼ同じであれば、より幅広く分布したポリアクリレートに比べて流動粘度が低いので、融体状での加工を比較的容易にすることができる。狭く分布したポリ(メタ)アクリレートは、アニオン重合または制御ラジカル重合法によって有利に製造でき、制御ラジカル重合法が特によく適している。N-オキシルにより、対応するポリアクリレートを製造することもできる。更に、狭く分布したポリアクリレートの合成に原子移動ラジカル重合(ATRP)を有利に用いることができ、その際、開始剤として、単官能性または二官能性の第二級または第三級のハロゲン化物、及びこの(これらの)ハロゲン化物の引き抜きのためにCu錯体、Ni錯体、Fe錯体、Pd錯体、Pt錯体、Ru錯体、Os錯体、Rh錯体、Co錯体、Ir錯体、Ag錯体、またはAu錯体を用いることが好ましい。
【0100】
ポリ(メタ)アクリレートを製造するためのモノマーは、エポキシド基との連結反応に適した官能基をその配分に応じて含むことが好ましい。これは、エポキシドとの反応によるポリアクリレートの熱架橋を有利に可能にする。連結反応とは、とりわけ付加反応及び置換反応のことである。つまりとりわけ、エポキシド基を有する連結ブリッジとしての架橋分子を介して、官能基を有するポリマー構成要素を架橋するという意味における、官能基を有する構成要素とエポキシド基を有する構成要素との連結が生じることが好ましい。エポキシド基含有物質は、多官能性エポキシド、つまり少なくとも2つのエポキシド基を有するエポキシドであることが好ましく、従って総括すると、官能基を有する構成要素の間接的な連結が生じることが好ましい。
【0101】
本発明による感圧接着剤のポリ(メタ)アクリレートは、熱架橋剤により、ポリ(メタ)アクリレートに含有されている官能基が、とりわけ付加反応または置換反応の意味における連結反応によって架橋されるのが好ましい。加工プロセス、とりわけ押出成形プロセス中にゲル化が生じない十分に長い加工時間を保証すると共に、加工温度より低い温度、とりわけ室温での、所望の架橋度へのポリマーの迅速な後架橋をもたらす全ての熱架橋剤を使用することができる。架橋剤としては、例えばカルボキシル基、アミン基、及び/またはヒドロキシ基を含むポリマー、並びにイソシアネート、とりわけ脂肪族イソシアネートまたはアミンによって不活化され三量化されたイソシアネートからの組合せが可能である。
【0102】
適切なイソシアネートは、とりわけMDI[4,4-メチレン-ジ(フェニルイソシアネート)]、HDI[ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキシレンジイソシアネート]、及び/またはIPDI[イソホロンジイソシアネート、5-イソシアナト-1-イソシアナトメチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン]の三量化された誘導体であり、例えばDesmodur(登録商標)N3600及びXP2410タイプ(それぞれBAYER AG:脂肪族ポリイソシアネート、低粘度のHDIの三量体)である。微粒子化され三量化されたIPDI BUEJ339(登録商標)、現在はHF9(登録商標)(BAYER AG)の表面不活化された分散系も適している。
【0103】
但し、他のイソシアネート、例えばDesmodur VL 50(MDIベースのポリイソシアネート、Bayer AG)、Basonat F200WD(脂肪族ポリイソシアネート、BASF AG)、Basonat HW100(HDIベースの水乳化性多官能性イソシアネート、BASF AG)、Basonat HA 300(HDIイソシアヌレートベースのアロファネート修飾されたポリイソシアネート、BASF)、またはBayhydur VPLS2150/1(親水性に変性されたIPDI、Bayer AG)も、基本的に架橋に適している。
【0104】
熱架橋剤は、架橋すべきポリマーの総量に対して0.1~5重量%で、とりわけ0.2~1重量%で用いられるのが好ましい。
【0105】
該感圧接着剤のポリ(メタ)アクリレートは、エポキシド(複数種可)または1種もしくは複数のエポキシド基含有物質(複数種可)によって架橋されるのが好ましい。エポキシド基含有物質は、とりわけ多官能性エポキシド、つまり少なくとも2つのエポキシド基を有するエポキシドであり、従って総括すると、官能基を有するポリ(メタ)アクリレート構成要素の間接的な連結が生じる。エポキシド基含有物質は、芳香族化合物であっても脂肪族化合物であってもよい。
【0106】
ことさら適した多官能性エポキシドは、エピクロロヒドリンのオリゴマー、多価アルコール(とりわけエチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、ペンタエリトリトール、ソルビトール、ポリビニルアルコール、ポリアリルアルコール、及びその類似物)のエポキシエーテル、多価フェノール[とりわけレゾルシン、ヒドロキノン、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-メタン、ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-メタン、ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)-メタン、ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジフルオロフェニル)-メタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)-プロパン、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-フェニルメタン、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-フェニルメタン、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4’-メチルフェニルメタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-2,2,2-トリクロロエタン、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-(4-クロロフェニル)-メタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサン、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキシルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、2,2’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン]のエポキシエーテル及びそれのヒドロキシエチルエーテル、フェノール-ホルムアルデヒド縮合生成物、例えばフェノールアルコール、フェノールアルデヒド樹脂、及びその類似物、S含有及びN含有のエポキシド(例えばN,N-ジグリシジルアニリン、N,N’-ジメチルジグリシジル-4,4-ジアミノジフェニルメタン)、並びに通常の方法に基づいて多価不飽和カルボン酸または不飽和アルコールの一価不飽和カルボン酸エステルから製造されたエポキシド、グリシジルエステル、不飽和酸のグリシジルエステルの重合もしくは混合重合によって獲得し得るか、またはその他の酸性化合物(シアヌル酸、ジグリシジルスルフィド、環状トリメチレントリスルホン、もしくはそれらの誘導体など)から得られるポリグリシジルエステルである。
【0107】
非常に適したエーテルは、例えば1,4-ブタンジオールジグリシジドエーテル、ポリグリセロール-3-ジグリシジドエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジドエーテル、グリセリントリグリシジドエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジドエーテル、ペンタエリトリトールテトラグリシジドエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジドエーテル)、ポリプロピレングリコールジグリシジドエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジドエーテル、ペンタエリトリトールテトラグリシジドエーテル、ビスフェノール-A-ジグリシジドエーテル、及びビスフェノール-F-ジグリシジドエーテルである。
【0108】
架橋すべきポリマーとしてのポリ(メタ)アクリレートのために特に好ましいのは、加工時間、架橋キネティクス、及び架橋度についてのより良いコントロールを得るために、例えばEP1978069A1(特許文献10)に記載された架橋剤・促進剤系(「架橋系」)を使用することである。架橋剤・促進剤系は、架橋剤として、少なくとも1種のエポキシド基含有物質を、及び促進剤として、架橋すべきポリマーの融解温度未満の温度でエポキシド基含有化合物による架橋反応に促進性に作用する少なくとも1種の物質を含んでいる。
【0109】
促進剤としては、本発明では、アミン(形式的にはアンモニアの置換生成物と解釈され;下記の式では、これらの置換基を「R」で表しており、かつとりわけアルキル残基及び/もしくはアリール残基並びに/またはその他の有機残基を含んでいる)が用いられるのが特に好ましく、とりわけ用いられるのが好ましいのは、架橋すべきポリマーの構成要素と反応しないかまたは僅かにしか反応しないアミンである。
【0110】
原理的には、促進剤として第一級アミン(NRH2)も、第二級アミン(NR2H)も、第三級アミン(NR3)も、もちろん複数の第一級アミン基及び/または第二級アミン基及び/または第三級アミン基を有するアミンも選択することができる。但し、特に好ましい促進剤は、第三級アミン、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6-トリス-(N,N-ジメチルアミノメチル)-フェノール、N,N’-ビス(3-(ジメチルアミノ)プロピル)尿素である。ジアミン、トリアミン、及び/またはテトラミンのような多官能性アミンも促進剤として有利に用い得る。ことさら適しているのは、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリメチルヘキサメチレンジアミンである。
【0111】
それだけでなくアミノアルコールも促進剤として好ましく使用される。第二級及び/または第三級のアミノアルコールが用いられるのが特に好ましく、その際、1分子にアミン官能基が複数ある場合には、好ましくは少なくとも1つの、好ましくは全てのアミン官能基が、第二級及び/または第三級である。好ましいアミノアルコール促進剤としては、トリエタノールアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)エタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、2-アミノシクロヘキサノール、ビス(2-ヒドロキシシクロヘキシル)メチルアミン、2-(ジイソプロピルアミノ)エタノール、2-(ジブチルアミノ)エタノール、N-ブチルジエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、2-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、1-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-プロパノール、トリイソプロパノールアミン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-(ジエチルアミノ)エタノール、2-(2-ジメチルアミノエトキシ)エタノール、N,N,N’-トリメチル-N’-ヒドロキシエチルビスアミノエチルエーテル、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、及び/またはN,N,N’-トリメチルアミノプロピルエタノールアミンを用いることができる。
【0112】
更なる適切な促進剤は、ピリジン、イミダゾール類(例えば2-メチルイミダゾール)、及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンである。脂環式ポリアミンも促進剤として用いることができる。リン酸塩ベースの促進剤、例えばホスフィン類及び/またはホスホニウム化合物、例えばトリフェニルホスフィンまたはテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートも適している。
【0113】
アクリレート系感圧接着剤は、典型的には、C1~C20-アルコールのアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステル、例えばメチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレート、加えて更なる(メタ)アクリル酸エステル、例えばイソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、及び2-ブロモエチル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばエトキシエチル(メタ)アクリレートからラジカル重合されたコポリマーである。更に、エチレン性不飽和ジカルボン酸及びトリカルボン酸のエステル、並びに酸無水物、例えばマレイン酸エチル、フマル酸ジメチル、及びイタコン酸エチルメチルがこれに属している。ビニル芳香族モノマー、例えばスチレン、ビニルトルエン、メチルスチレン、n-ブチルスチレン、デシルスチレンもこれに属している。
【0114】
更なる可能なモノマーは、最大20個の炭素原子を含むカルボン酸からのビニルエステル、例えばビニルアセテートまたはラウリン酸ビニル、最大10個の炭素原子を含むアルコールからのビニルエーテル、例えばビニルメチルエーテルまたはビニルイソブチルエーテル、ビニルクロライドまたはビニリデンジクロライドのようなハロゲン化ビニル、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリルのようなニトリル、アクリルアミドまたはメタクリルアミドのような酸アミド、及び2~8個の炭素原子を有する不飽和炭化水素、例えばエチレン、プロペン、ブタジエン、イソプレン、1-ヘキセン、または1-オクテンである。
【0115】
感圧接着剤の物理的特性及び光学的特性に影響を及ぼすために、架橋モノマーとして多官能性のエチレン性不飽和モノマーが考慮される。これに関する例は、ジビニルベンゼン、アルキルジアクリレート、例えば1,2-エチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,8-オクタンジオールジアクリレート、または1,12-ドデカンジオールジアクリレート、トリアクリレート、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、及びテトラアクリレート、例えばペンタエリトリトールテトラアクリレートである。多官能性モノマーの群には、例えばベンゾフェノンまたはベンゾインの(メタ)アクリレート官能化された誘導体のようなUV架橋性モノマーも属している。
【0116】
モノマーのもう1つの群は、ポリマー中で潜在的な架橋ポテンシャルを生じさせ、接着剤の乾燥後に自然に(しばしば触媒的に)ネットワーク構造を生じさせるモノマーである。そのようなモノマーの一つは、例えばグリシジルメチルアクリレートであり、そのオキシラン環は、開環してヒドロキシル官能基またはとりわけカルボキシレート官能基と共有結合する。この反応は、亜鉛イオンの存在下で、または特にカルボキシル官能基、アミンの存在下で促進される。
【0117】
感圧接着特性を達成するには、接着剤の加工温度は、粘弾特性を有するために接着剤のガラス転移温度より高くなければならない。
【0118】
更に、アクリレートベースの本発明による活性化性接着剤を用いることができる。つまりこの場合、活性化性接着剤は、下記から構成されるベースポリマーa)についての特に好ましい一設計において存在する。
a1)下式のアクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステル40~95重量%
CH2=C(R1)(COOR2)、
式中、R1=HまたはCH3であり、R2=H及び/または1~30個のC原子を有するアルキル鎖である。
a2)少なくとも1つのカルボン酸及び/またはスルホン酸基及び/またはホスホン酸基を有する共重合性ビニルモノマー5~30重量%
a3)少なくとも1つのエポキシド基または酸無水物官能基を有する共重合性ビニルモノマー1~10重量%
a4)凝集性の上昇、架橋の反応性の上昇、または直接的な架橋に、官能基によって寄与し得る共重合性ビニルモノマー0~20重量%、並びに
b)エポキシ樹脂または複数のエポキシ樹脂から構成される混合物5~50重量%。
【0119】
ポリマーa)は、温度作用下及び任意選択の圧力下で感圧接着性になり、かつ貼付及び冷却後に固化によって高い接着力を発生させる活性化性感圧接着剤を含むことができる。この活性化性感圧接着剤は、適用温度に応じ、様々な静的ガラス転移温度TG,Aまたは融点TS,Aを有する。
【0120】
非常に好ましい一設計では、モノマーa1)のために、4~14個のC原子、好ましくは4~9個のC原子を有するアルキル基を有するアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルを含むアクリルモノマーが用いられる。具体的な例は、この列挙によって制限する意図はないが、n-ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-ヘプチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ノニルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、及びこれらの分枝異性体、例えば2-エチルヘキシルアクリレートである。c1)として同様に少量で添加し得る更なる使用可能な化合物クラスは、メチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、及びイソボルニルメタクリレートである。
【0121】
好ましい1つのやり方では、モノマーa2)として、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、フマル酸、クロトン酸、アコニット酸、ジメチルアクリル酸、β-アクリロイルオキシプロピオン酸、トリクロロアクリル酸、ビニルホスホン酸、ビニルスルホン酸、及びビニルスルホン酸が用いられる。
【0122】
好ましい1つのやり方では、モノマーa3)として、グリシジルメタクリレート、無水マレイン酸、及び無水イタコン酸が用いられる。
【0123】
非常に好ましい一設計では、モノマーa4)のために、ビニルエステル、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、α位で芳香族環及び複素環を有するビニル化合物が用いられる。またこの場合も、非排他的に一部の例が挙げられる:ビニルアセテート、ビニルホルムアミド、ビニルピリジン、エチルビニルエーテル、ビニルクロライド、ビニリデンクロライド及びアクリロニトリル。更なる非常に好ましい一設計では、モノマーa4)のために、次の官能基、すなわちヒドロキシ基、酸アミド基、イソシアネート基、またはアミノ基を有するモノマーが用いられる。
【0124】
成分a4)のための更なる特に好ましい例は、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アリルアルコール、アクリルアミド、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、t-ブチルフェニルアクリレート、t-ブチルフェニルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2-ブトキシエチルメタクリレート、2-ブトキシエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、シアノエチルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、6-ヒドロキシヘキシルメタクリレート、N-tert.-ブチルアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-(ブトキシメチル)メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-(エトキシメチル)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、テトラヒドロフルフリルアクリレートであり、この列挙はこれで終わりではない。
【0125】
更なる好ましい一設計では、成分a4)のために芳香族ビニル化合物が用いられ、これに関し好ましいのは、芳香族核がC4~C18を有することができ、かつヘテロ原子も含み得ることである。特に好ましい例は、スチレン、4-ビニルピリジン、N-ビニルフタルイミド、メチルスチレン、3,4-ジメトキシスチレン、4-ビニル安息香酸であり、この列挙はこれで終わりではない。
【0126】
重合のために、モノマーをここでも、結果として生じるポリマーが工業用に使用可能な接着剤または感圧接着剤として用いることができ、とりわけ、結果として生じるポリマーがDonatas Satasの「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」(van Nostrand、New York 1989)(非特許文献2)に対応する接着特性または感圧接着特性を有するように選択する。ここでも、所望のガラス転移温度の制御は、重合の基礎となるモノマー混合物の構成にFox式(G1)を適用することによって達成できる。感圧接着剤に関しては、結果として生じるポリマーの静的ガラス転移温度が15℃未満であることが有利である。
【0127】
熱活性化性接着剤のためのTG,A≧30℃のポリマーのガラス転移温度TG,Aを達成するには、上で述べたことに対応して、Fox式(G1)(T.G.Fox、Bull.Am.Phys.Soc.1(1956)123(非特許文献3)を参照)に基づいてポリマーの所望のTG,A値が生じるようにモノマーを選び出すことが非常に好ましく、かつそのようにモノマー混合物の量的組成を選択することが有利である。
【0128】
【数1】
式中、nは用いるモノマーの通し番号を表し、w
nはそれぞれのモノマーnの質量分率(重量%)を表し、かつT
G,nはそれぞれのモノマーnからなるホモポリマーのそれぞれのガラス転移温度をKで表している。
【0129】
接着剤の製造には、従来のラジカル重合または制御ラジカル重合を実施するのが有利である。ラジカルによって進行する重合には、重合のための更なるラジカル開始剤、とりわけ熱によって分解してラジカルを生成するアゾ開始剤またはペルオキソ開始剤を追加的に含有する開始剤系を用いるのが好ましい。但し、原理的には、アクリレートに関して当業者に周知の通常の全ての開始剤が適している。炭素中心ラジカルの生成は、Houben Weyl、Methoden der Organischen Chemie、Vol.E 19a、60~147頁(非特許文献4)に記載されている。これらの方法を相応に適用することが好ましい。
【0130】
ラジカル源の例は、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、及びアゾ化合物であり、典型的なラジカル開始剤の幾つかの例としては、他にもあるがここでは、ペルオキソ二硫酸カリウム、ジベンゾイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、アゾジイソ酸ブチロニトリル、シクロヘキシルスルホニルアセチルペルオキシド、ジイソプロピルペルカーボネート、t-ブチルペルオクトアート、ベンゾピナコールを挙げておく。非常に好ましい一設計では、ラジカル開始剤として、1,1’-アゾ-ビス-(シクロヘキサンカルボン酸ニトリル)(DuPont社のVazo 88(商標))が使用される。
【0131】
ラジカル重合で生じる感圧接着剤の平均分子量Mnは、20,000~2,000,000g/molの範囲内にあるように選択されるのが非常に好ましく、溶融感圧接着剤としての更なる使用のためには特に、平均分子量Mnが100,000~500,000g/molの感圧接着剤を製造する。
【0132】
重合は、塊状で、1種もしくは複数の有機溶剤の存在下で、水の存在下で、または有機溶剤及び水から構成される混合物中で実施することができる。その際、使用する溶剤量をできるだけ少なく保つことを目標とする。
【0133】
重合時間は、転化率及び温度に応じて4~72時間の間である。反応温度をより高く選択し得るほど、つまり反応混合物の熱安定性が高ければそれだけ、反応期間をより短く選択することができる。
【0134】
難燃性が望ましい場合は、これは、難燃剤を接着剤に添加することによって達成することができる。これらは、必要に応じて三酸化アンチモンなどの相乗剤との有機臭素化合物であってよいが、接着テープのハロゲンフリー性に関しては、赤リン、有機リン化合物、鉱物または膨張性化合物、例えばポリリン酸アンモニウムを、単独でまたは相乗剤との組み合わせで使用することが好ましい。適切な難燃剤については後で詳しく説明する。
【0135】
接着剤塗布量は、好ましくは80g/cm2と160g/cm2との間、とりわけ90g/cm2と100g/cm2との間である。
【0136】
接着剤と隣接する層との間の凝集性を高めるためには、接着剤及び/または隣接する層をコロナ処理に付すことができる。
【0137】
接着性を改善するためにはプライマーを使用することもできる。通常使用されるプライマーの記載は、例えば、Donatas Satasの「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」(van Nostrand、1989)(非特許文献2)にある。
【0138】
少なくとも0.5~3mm、更に好ましくは1~2mmの厚さを有する難燃性発泡体から形成される第四の層は、ポリマー発泡体でできた層である。これは、そのマトリックス材料が、本質的に一種以上のポリマーから形成される発泡体のことと理解される。好ましくは、発泡層のマトリックス材料は、それぞれこの発泡層の総重量を基準にして、少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、特に好ましくは少なくとも70重量%、特に少なくとも90重量%の割合で一種以上のポリマーを含む。該ポリマー発泡体のポリマーは、好ましくは、ポリオレフィン;ポリウレタン;ポリビニルクロライド(PVC);エチレン、プロピレン及び非共役性ジエンから構成されるターポリマー(EPDM);エチレン及び極性基で置換されたエチレンから構成されるコポリマー;ポリアクリレート、並びに前述のポリマーの二種以上のものの混合物からなる群から選択される。それ故、発泡層のマトリックス材料は、それぞれこの発泡層の総重量を基準にして、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、特に好ましくは少なくとも70重量%、特に少なくとも90重量%の割合で、ポリオレフィン;ポリウレタン;ポリビニルクロライド(PVC);エチレン、プロピレン及び非共役性ジエンから構成されるターポリマー(EPDM);エチレン及び極性基で置換されたエチレンから構成されるコポリマー;ポリアクリレート、及び前述のポリマーの二種以上のものの混合物からなる群から選択される一種以上のポリマーを含む。特に好ましくは、該発泡層は、ポリオレフィン;ポリウレタン;ポリビニルクロライド(PVC);エチレン、プロピレン及び非共役性ジエンから構成されるターポリマー(EPDM);エチレン及び極性基で置換されたエチレンからなるコポリマー;ポリアクリレート、並びに前述のポリマーの二種以上のものの混合物からなる群から選択される一種以上のポリマー以外の更に別のポリマーは含まない。
【0139】
特に好ましくは、該ポリマー発泡体または該発泡層は、ポリウレタンからなる少なくとも一種のポリマーを含む。特に、該発泡層中の全てのポリウレタンポリマーの全体の割合は、それぞれこの発泡層の総重量を基準にして、少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、特に好ましくは少なくとも70重量%、特に少なくとも80重量%、例えば少なくとも90重量%である。就中特に好ましくは、該発泡層は、更に別のポリマーを含まない。
【0140】
本発明においては、「ポリオレフィン」とは、一般構造式-[CH2-CR1R2-]n-のポリマーのことと解され、ここで、R1及びR2は、互いに独立して、水素原子または線状もしくは分岐状飽和脂肪族もしくは環状脂肪族基を表す。このポリオレフィンは、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー、またはポリエチレンとポリプロピレンとの混合物である。この際、ポリエチレンは、それ自体既知のタイプのポリエチレン、例えばHDPE、LDPE、LLDPE、VLDPE、VLLDPE、これらのタイプのポリエチレンのブレンド、及びこれらの混合物の一種以上を含み得る。ポリプロピレンは、好ましくは結晶性ポリプロピレン、より好ましくはホモポリプロピレン(hPP)である。本発明の特別な実施形態の一つでは、該発泡層は、一種以上のポリオレフィン以外の更に別のポリマーを含まない。
【0141】
エチレン及び極性基で置換されたエチレンから構成されるコポリマーとは、一般構造式-[CH2-CR3R4-]n-のポリマーのことと解され、ここで、R3またはR4は水素原子を表し、そして各々の場合に残る置換基は、少なくとも一つの酸素原子を含む基を表す。好ましくは、エチレン及び極性基で置換されたエチレンから構成されるコポリマーは、エチレン-ビニルアセテートコポリマー(EVA)、エチレン-メチルアクリレートコポリマー(EMA)、エチレン-エチルアクリレートコポリマー(EEA)、エチレン-アクリル酸コポリマー(EAA)、エチレン-ブチルアクリレートコポリマー(EBA)またはこれらの混合物である。特に好ましくは、エチレン及び極性基で置換されたエチレンから構成されるコポリマーは、エチレン-ビニルアセテートコポリマー(EVA)である。EVAは、好ましくは、3~70重量%、より好ましくは5~30重量%、特に10~20重量%のビニルアセテート含有率を有する。本発明の特別な実施形態の一つでは、該発泡層は、エチレン及び極性基で置換されたエチレンから構成される一種以上のコポリマー以外の更に別のポリマーは含まず、特に、エチレン-ビニルアセテートコポリマー(EVA)以外の更に別のポリマーは含まない。
【0142】
マトリックス材料の発泡は、原則的に、任意の通例の方法で、例えば添加された発泡ガスによってまたは化学的発泡剤によって行うことができ、前記化学的発泡剤は、加工中に規定の温度下にガスを形成しながら分解するものである。
【0143】
PE発泡体は、多くの場合に、第一のステップにおいて、通常は粉末状の発泡剤とポリマーとを混合することによって製造される。この混合物は、いわゆるマスターバッチである。次のステップにおいて、発泡体の他の成分、例えば残ポリマー、老化防止剤、場合により難燃剤などを混入する。この目的のためには、押出機、例えば二軸スクリュー押出機または混練機を使用することができる。
【0144】
次いで、更に別のプロセスステップにおいて、この混合物を、例えば一軸スクリュー押出機中で押出しして発泡体マトリックスとし、そしてダイを通して層として繰り出す。これにより、いわゆるフィルムベール(Folienballen)が得られる。次いで、例えば電子線照射機を用いて電子線硬化することによって、その組成物を架橋する。
【0145】
次いで、最終のステップにおいて、しばしば熱発泡と称される発泡、すなわち発泡剤の熱的活性化により開始して発泡を行う。
【0146】
本発明では、発泡層は、少なくとも1重量%の難燃剤、好ましくは10重量%未満の難燃剤の含有率で難燃剤を含む。難燃剤のこのような含有率では、発泡層の特性は、全く影響を受けないか、またはほとんど影響を受けないことが判明した。本発明では、発泡層中の難燃剤の割合は、それが少なければ少ないほどより好ましい。好ましくは、発泡層は、8重量%未満、特に好ましくは6重量%未満、特に3重量%未満を含む。上記の数値は、それぞれ、発泡層の総重量を基準とする。
【0147】
使用可能な難燃剤には、例えば、酸化アルミニウム水和物類、ホウ酸亜鉛類、リン酸アンモニウム類もしくはポリリン酸アンモニウム類、酸化アンチモン、クロロパラフィン、ポリ塩素化ビフェニル類、ヘキサブロモベンゼン、ポリ臭素化ジフェニルエーテル;シアヌレート類、例えばシアヌル酸メラミン;有機リン酸誘導体、例えば2-カルボキシエチル-フェニルリン酸;有機ホスフェート及びポリホスフェート、ホスファイト及びホスホネート、例えばトリトリルホスフェート、tert-ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビスフェノールA-ビス(ジフェニルホスフェート)、レソルシノールビス(ジフェニルホスフェート)及びポリリン酸メラミン、ジエチルビス(2-ヒドロキシエチル)アミノメチルホスホネート及びジフェニルアニリノホスホネート;ホスフィン酸塩、ジホスフィン酸塩及びジアルキルホスフィン酸塩;並びにハロゲン化有機リン化合物、例えばトリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(2-ブロモ-4-メチルフェニル)ホスフェート及びトリス(2-クロロイソプロピル)ホスフェートなどが挙げられる。本発明では、ハロゲンフリーの難燃剤が好ましい。それ故、本発明に従い使用可能な難燃剤は、好ましくは、酸化アルミニウム水和物類、ホウ酸亜鉛類、リン酸アンモニウム類及びポリリン酸アンモニウム類、酸化アンチモン;シアヌレート類;有機リン酸誘導体;有機ホスフェート、ホスファイト及びホスホネート;リン酸塩、ジホスフィン酸塩及びジアルキルホスフィン酸塩、並びに前述の難燃剤の二種以上のものの混合物からなる群から選択される。特に好ましくは、本発明に従い使用可能な難燃剤が、ポリリン酸アンモニウム類及びジアルキルホスフィン酸塩からなる群から選択される。
【0148】
本発明において好ましいジアルキルホスフィン酸塩は、式F2のものである:
(RIIIRIV(O)P-O(-))mM(m+) (F2)
式中、RIII及びRIVは、同一かまたは異なり、線状または分岐状C1~C6アルキル残基を表し;
Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Zn、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kまたはプロトン化された窒素塩基を表し;そして
mは、1~4の自然数を表す。
【0149】
Mは、好ましくはAl、Ca、Ti、Zn、SnまたはZrを表す。
【0150】
RIII及びRIVは、好ましくは同一かまたは異なり、そしてメチル残基、エチル残基、n-プロピル残基、iso-プロピル残基、n-ブチル残基、iso-ブチル残基、tert-ブチル残基、n-ペンチル残基、iso-ペンチル残基、n-ヘキシル残基またはiso-ヘキシル残基を表す。
【0151】
特に好ましいジアルキルホスフィン酸塩は、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスエチルブチルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスエチルブチルホスフィン酸チタニル、テトラキスエチルブチルホスフィン酸チタン、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、及びビスエチルブチルホスフィン酸亜鉛、並びにこれらのジアルキルホスフィン酸塩の一種以上のものの混合物である。
【0152】
本発明においては、難燃剤は、既に記載した前記物質の他に、一種以上のいわゆる相乗剤を含むことができる。相乗剤は、難燃剤の総重量を基準にして0.1~70重量%の割合で難燃剤中に含まれていることができる。特に好ましくは、難燃剤は、
a)式F2のジアルキルホスフィン酸塩及びポリリン酸アンモニウム類から選択される一種以上の化合物60~99重量%、及び
b)一種以上の相乗剤1~40重量%、
を含み、
ここで、前記の割合は、難燃剤の総重量を基準とし、そして合計して100重量%である。
【0153】
相乗剤は、好ましくは、窒素系化合物、リン系化合物またはリン窒素系化合物である。特に好ましくは、前記一種以上の相乗剤は、アラントイン、シアヌル酸、グリコールウリル、尿素、メラミン、メラム、メレム、メロン、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレム、ポリリン酸メロン、シアヌル酸メラミン、リン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン、カルボジイミド、立体障害性フェノール類、ホスフィンオキシド、次亜リン酸塩、環状ホスホネート、トリアリール(アルキル)ホスファイト、アルキル-及びアリール置換ホスフェート、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、ホウ素化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、セリウム化合物、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、スズ酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、リン酸水素亜鉛、ピロリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛及び/またはリン酸亜鉛からなる群から選択される。
【0154】
難燃剤が一種以上の相乗剤を含む場合には、本発明ではこれらは、難燃剤の成分として見なされる。すなわち、これらも、存在する場合には、特に前節で述べた難燃剤の割合に含まれる。
【0155】
難燃剤は、通常の混合装置、例えば攪拌機を用いて、発泡層の組成物中に配合することができる。配合は、好ましくは、該当する層の形成の前に行われる。
【0156】
更に、シリコーンベースの添加剤を添加することができ、これは、難燃剤の作用を援助する。このような添加剤は、例えばUS4,387,176A(特許文献11)に記載されている。
【0157】
300~1500g/cm2、好ましくは360~1500g/m2、更に好ましくは600~1200g/m2の坪量及び/または400~1800μm、好ましくは500~1500μm、更に好ましくは800~1200μmの厚さを有する第二のアクリレートベース感圧接着剤から形成される第五の層は、好ましくは、例えばtesa社からACXplusの名称で入手できるもののような、発泡されたアクリレートベース接着剤である。
【0158】
ACXplus製品は、アクリレートベースの発泡接着剤を備えた単層または多層接着テープを含む。このような接着テープは、好ましくは支持体層を有し、これは、硬質相とも称される。この硬質相のポリマーベースは、好ましくは、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリブチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルブチラール(PVB)、アイオノマー、及び前述のポリマーの二種以上のものの混合物からなる群から選択される。特に好ましくは、前記硬質相のポリマーベースは、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリオレフィン、及び前述のポリマーの二種以上のものの混合物からなる群から選択される。前記硬質相は、本質的には、そのポリマーベースが前述の材料から選択されるポリマーフィルムである。「ポリマーフィルム」とは、薄く、平坦で、フレキシブルで、巻くことが可能な長尺物であって、その材料ベースが、本質的に、一種以上のポリマーから形成される長尺物のことと解される。
【0159】
「ポリウレタン」とは、広義には、繰り返し単位が、ウレタン基-NH-CO-O-によって互いに連結しているポリマー性物質のことと解される。
【0160】
「ポリオレフィン」とは、一般構造式-[-CH2-CR1R2-]n-の繰り返し単位を物質量基準で少なくとも50%の割合で含むポリマーのことと解され、ここで、R1は水素原子を表し、そしてR2は水素原子を表すかまたは線状もしくは分岐状の飽和脂肪族もしくは環状脂肪族基を表す。前記硬質相のポリマーベースがポリオレフィンを含む場合には、これは、特に好ましくは、ポリエチレン、特に超高モル質量を有するポリエチレン(UHMWPE)である。
【0161】
「ポリマーベース」とは、該当する層または相中に含まれる全てのポリマーのうちの最も大きい重量割合を占める一種以上のポリマーのことと解される。
【0162】
該硬質相の厚さは特に≦150μmである。好ましくは、該硬質相の厚さは、10~150μm、特に好ましくは30~120μm、特に50~100μm、例えば70~85μmである。「厚さ」とは、機械方向と機械方向に対して横方向とによって広がった平面がx-y面を形成する仮想座標系のz-座標に沿った該当する層または相の寸法のことと解される。厚さは、該当する層または相の少なくとも五つの異なる箇所で測定し、次いで得られた測定結果の算術平均を取ることによって求められる。この際、硬質相の厚さ測定は、DIN EN ISO4593に従って行われる。
【0163】
更に、このような接着テープは、ポリマー発泡体、粘弾性材料及び/またはエラストマー性材料を含む軟質相を有することができる。この軟質相のポリマーベースは、好ましくは、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリウレタン、及び前述のポリマーの二種以上のものの混合物から選択される。最も簡単な変形では、接着テープは、軟質相のみからなる。
【0164】
「ポリマー発泡体」とは、液状、半液状、高粘性または固形のセル壁によって区切られるガス充填球形もしくは多面体形セルでできた形成物のことと解され、更に、セル壁の主成分は、ポリマーまたは複数種のポリマーの混合物である。
【0165】
「粘弾性材料」とは、純粋な弾性の特徴(機械的な外的作用後に初期状態に戻る特徴)の他に、粘性液体の特徴、例えば変形時に内部摩擦の発生も示す材料のことと解される。特に、ポリマーベースの感圧接着剤は、粘弾性材料と見なされる。
【0166】
「エラストマー性材料」とは、ゴム弾性挙動を有し、そして20℃においてその長さの少なくとも二倍まで繰り返し伸長することができ、そして伸長に必要な力が取り除かれた後に、再びほぼそれの初期寸法になる材料のことと理解される。
【0167】
「ポリマーベース」、「ポリウレタン」及び「ポリオレフィン」という用語の理解に関しては、上記のものが適用される。「ポリアクリレート」とは、そのモノマーベースが、物質量に基づいて、少なくとも50%までアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルから構成されるポリマーのことと解され、この際、アクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルは、少なくとも割合に応じて一般的に及び好ましくは、少なくとも50%まで含まれる。とりわけ、「ポリアクリレート」とは、アクリル-及び/またはメタクリルモノマー並びに場合により更に別の共重合可能なモノマーのラジカル重合によって得ることができるポリマーのことと解される。
【0168】
特に好ましくは、前記軟質相のポリマーベースは、ポリオレフィン、ポリアクリレート、及び前述のポリマーの二種以上のものの混合物から選択される。ポリオレフィンが、軟質相のポリマーベースに属する場合は、これらは、好ましくは、ポリエチレン、エチレン-ビニルアセテートコポリマー(EVA)、及びポリエチレンとエチレン-ビニルアセテートコポリマーとの混合物(PE/EVAブレンド)である。この際、ポリエチレンは、様々なタイプのポリエチレンであってよく、例えばHDPE、LDPE、LLDPE、これらのタイプのポリエチレンのブレンド、及び/またはこれらの混合物であってよい。
【0169】
一つの実施形態では、該軟質相は、発泡体と、発泡層の上と下にそれぞれ配置された感圧接着層とを含み、ここで、この発泡体のポリマーベースは、一種以上のポリオレフィンからなり、そしてこの感圧接着層のポリマーベースは、一種以上のポリアクリレートから構成される。この際、特に好ましくは、前記発泡体のポリマーベースは、一種以上のポリエチレン、エチレン-ビニルアセテートコポリマー、及び一種以上のポリエチレン及び/または一種以上のエチレン-ビニルアセテートコポリマーの混合物から構成される。この際、非常に特に好ましくは、前記発泡体のポリマーベースは、一種以上のポリエチレンでできている。
【0170】
ポリオレフィンベースの発泡体自体は、感圧接着性でないか、または感圧接着性が非常に低いものである。それ故、硬質相とのまたは基材との接合は、有利には感圧接着層によって行われる。前記発泡体のポリオレフィンベースの原料の発泡は、好ましくは、物理的発泡の意味では、添加された発泡ガスによって、及び/または化学的な発泡剤によって、例えばアゾジカルボン酸ジアミンによって行われる。
【0171】
更に別の実施形態の一つでは、軟質相は、ポリマーベースが一種以上のポリアクリレートでできている感圧接着性ポリマー発泡体である。「感圧接着性発泡体」とは、発泡体それ自体が感圧接着剤であり、それ故、追加的な感圧接着層の施与は不要であることを意味する。これは、製造プロセスにおいて、接合するべき層の数が少なくなり、剥離現象及び層境界における他の望ましくない現象のリスクが低下するという点で有利である。
【0172】
前記ポリアクリレートは、好ましくは、エポキシド基で架橋可能な官能性モノマーの少なくとも配分に応じた重合導入によって得ることができる。この場合特に好ましいのは、酸性基(特にカルボン酸基、スルホン酸基、もしくはホスホン酸基)及び/またはヒドロキシ基及び/または酸無水物基及び/またはエポキシド基及び/またはアミン基を有するモノマーであり、とりわけ好ましいのはカルボン酸基含有モノマーである。前記ポリアクリレートが、重合導入されたアクリル酸及び/またはメタクリル酸を含む場合にとりわけ有利である。これら全ての基は、エポキシド基との架橋能力を有しており、これによりポリアクリレートは、導入されたエポキシドと熱架橋できることが有利である。
【0173】
ポリアクリレートのためのコモノマーとして使用できる更なるモノマーは、C原子数が最大30までのアクリル酸-及び/またはメタクリル酸エステルの他、最大20までのC原子を含むカルボン酸のビニルエステル、C原子数が最大20までのビニル芳香族類、エチレン性不飽和ニトリル、ハロゲン化ビニル、1~10のC原子を含むアルコールのビニルエーテル、C原子数が2~8で二重結合数が1または2の脂肪族炭化水素、またはこれらのモノマーの混合物である。
【0174】
当該ポリアクリレートの特性には、とりわけ、個々のモノマーの重量分率の違いによるポリマーのガラス転移温度の変化を介して影響を及ぼすことができる。該ポリアクリレートには、好ましくは、以下のモノマー組成を使用することができる:
a)次式
CH2=C(RI)(COORII)
のアクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステル、
式中、RI=HまたはCH3であり、RIIは4~14個のC原子を有するアルキル残基である、
b)エポキシド基との反応性に関して既に定義した種類の官能基を有するオレフィン性不飽和モノマー、
c)任意選択で、成分(a)と共重合可能である更なるアクリレート及び/またはメタクリレート及び/またはオレフィン性不飽和モノマー。
【0175】
該ポリアクリレートは、成分(a)のモノマーが45~99重量%の割合で、成分(b)のモノマーが1~15重量%の割合で、及び成分(c)のモノマーが0~40重量%の割合で含まれる(数値は「ベースポリマー」のためのモノマー混合物を基準とし、すなわち出来上がったポリマーへの場合によってはあり得る樹脂などの添加剤は含まない)モノマー組成をベースとすることが好ましい。この場合、重合生成物は、≦15℃のガラス温度(低周波数でのDMA)及び感圧接着特性を備える。
【0176】
成分(a)のモノマーは、とりわけ軟化性及び/または非極性のモノマーである。好ましいのは、モノマー(a)として、4~14個のC原子、特に好ましくは4~9個のC原子を有するアルキル基を有するアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルを用いることである。このようなモノマーの例は、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-ペンチルメタクリレート、n-アミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、n-ヘプチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-ノニルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート及びそれらの分枝異性体、例えば2-エチルヘキシルアクリレートまたは2-エチルヘキシルメタクリレートである。
【0177】
成分(b)のモノマーはとりわけ、官能基を有する、とりわけエポキシド基と反応し得る官能基を有するオレフィン性不飽和モノマーである。
【0178】
成分(b)のために、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、またはホスホン酸基、酸無水物、エポキシド、アミンを含む群から選択される官能基を有するモノマーを用いることが好ましい。成分(b)の特に好ましい例は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、アコニット酸、ジメチルアクリル酸、β-アクリロイルオキシプロピオン酸、トリクロロアクリル酸、ビニル酢酸、ビニルホスホン酸、イタスコン酸、無水マレイン酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、6-ヒドロキシ-ヘキシルメタクリレート、アリルアルコール、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートである。
【0179】
原理的には、成分(c)として、成分(a)及び/または成分(b)と共重合可能である全てのビニル官能化された化合物を用いることができる。成分(c)のモノマーは、結果として生じる感圧接着剤の特性を調整するために用いることができる。
【0180】
成分(c)の例示的なモノマーは次のものである:
メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、sec-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、tert-ブチルフェニルアクリレート、tert-ブチルフェニルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n-ウンデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ベヘニルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2-ブトキシエチルメタクリレート、2-ブトキシエチルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、3,5-ジメチルアダマンチルアクリレート、4-クミルフェニルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノエチルメタクリレート、4-ビフェニルアクリレート、4-ビフェニルメタクリレート、2-ナフチルアクリレート、2-ナフチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、2-ブトキシエチルアクリレート、2-ブトキシエチルメタクリレート、3-メトキシアクリル酸メチルエステル、3-メトキシブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレート、ブチルジグリコールメタクリレート、エチレングリコールアクリレート、エチレングリコールモノメチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート350、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート500、プロピレングリコールモノメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、エトキシトリエチレングリコールメタクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルアクリレート、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ペンタデカフルオロオクチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N-(1-メチルウンデシル)アクリルアミド、N-(n-ブトキシメチル)アクリルアミド、N-(ブトキシメチル)メタクリルアミド、N-(エトキシメチル)アクリルアミド、N-(n-オクタデシル)アクリルアミド、更にN,N-ジアルキル置換アミド、例えばN,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-ベンジルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-tert-オクチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルエーテル、例えばビニルメチルエーテル、エチルビニルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルエステル、例えばビニルアセテート、ビニルクロライド、ハロゲン化ビニル、ビニリデンクロライド、ハロゲン化ビニリデン、ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、N-ビニルフタルイミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルピロリドン、スチレン、a及びb-メチルスチレン、a-ブチルスチレン、4-n-ブチルスチレン、4-n-デシルスチレン、3,4-ジメトキシスチレン、マクロモノマー、例えば2-ポリスチレンエチルメタクリレート(分子量Mw4000~13000g/mol)、ポリ(メチルメタクリレート)エチルメタクリレート(Mw2000~8000g/mol)である。
【0181】
成分(c)のモノマーは、後の(例えば電子線、UVによる)放射線化学的な架橋を補助する官能基を含むようにも有利に選択できる。適切な共重合可能な光開始剤は、例えばベンゾインアクリレート及びアクリレート官能化ベンゾフェノン誘導体である。電子照射による架橋を補助するモノマーは、例えばテトラヒドロフルフリルアクリレート、N-tert-ブチルアクリルアミド、及びアリルアクリレートである。
【0182】
ポリアクリレート(「ポリアクリレート」は本発明内では「ポリ(メタ)アクリレート」と同義に理解される)の製造は、当業者に周知の方法に基づいて行うことができ、とりわけ有利には従来のラジカル重合または制御ラジカル重合によって行うことができる。ポリアクリレートは、通常の重合開始剤及び場合によっては調節剤を使用したモノマー成分の共重合によって製造することができ、その際、通常の温度で、塊状で、エマルション中で、例えば水もしくは液状炭化水素中で、または溶液中で重合される。
【0183】
好ましいのは、ポリアクリレートが、(モノマーの総重量に対して)一般的に0.01~5、とりわけ0.1~2重量%の通常の量の重合開始剤を使用した、溶剤中、とりわけ沸点範囲が50~150℃、好ましくは60~120℃の溶剤中でのモノマーの重合によって製造されることである。
【0184】
原理的には、当業者に周知の全ての通常の開始剤が適している。ラジカル源の例は、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、及びアゾ化合物、例えばジベンゾイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、シクロヘキシルスルホニルアセチルペルオキシド、ジイソプロピルペルカーボネート、t-ブチルペルオクトアート、ベンゾピナコールである。非常に好ましい手順では、ラジカル開始剤として、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(DuPont社のVazo(登録商標)67(商標))または2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル;AIBN;DuPont社のVazo(登録商標)64(商標))が使用される。
【0185】
ポリアクリレートを製造するための溶剤としては、アルコール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノール、n-ブタノール及びイソブタノール、好ましくはイソプロパノール及び/またはイソブタノール、並びに炭化水素、例えばトルエン及びとりわけ沸点範囲が60~120℃のベンジンが考慮される。更にケトン、例えば好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びエステル、例えば酢酸エチルエステル、並びに挙げた種類の溶剤の混合物を用いることができ、イソプロパノールを含む混合物、とりわけ、用いられる溶剤混合物に対して2~15重量%、好ましくは3~10重量%の量でイソプロパノールを含有する混合物が好ましい。
【0186】
好ましいのは、ポリアクリレートの製造(重合)後に濃縮が行われ、ポリアクリレートの更なる加工が実質的に溶剤なしで行われることである。重合体の濃縮は、架橋剤物質及び促進剤物質の不在下で行うことができる。但し、これらの化合物クラスの1つを濃縮前に既に重合体に添加してもよく、つまりその場合、濃縮はこの(これらの)物質の存在下で行われる。
【0187】
ポリマーは、濃縮ステップの後にコンパンダーに移すことができる。場合により、濃縮及び配合は同じ反応器中で行うこともできる。
【0188】
ポリアクリレートの重量平均分子量Mwは、好ましくは20,000~2,000,000g/molの範囲内、非常に好ましくは100,000~1,000,000g/molの範囲内、極めて好ましくは150,000~500,000g/molの範囲内である。これに関し、所望の平均分子量を調整するため、適切な重合調節剤、例えばチオール、ハロゲン化合物、及び/またはアルコールの存在下で重合を実施することが有利であり得る。
【0189】
該ポリアクリレートは、トルエン(1%濃度溶液、21℃)中で測定したK値が30~90、特に好ましくは40~70であることが好ましい。フィケンチャー法に基づくK値は、重合体の分子量及び粘度に関する尺度である。
【0190】
特に適しているのは、狭い分子量分布(多分散性PD<4)を有するポリアクリレートである。このポリアクリレートは、分子量が比較的小さいにもかかわらず、架橋後に特に良好なせん断強度を有する。加えて比較的低い多分散性は、適用特性がほぼ同じであれば、より幅広く分布したポリアクリレートに比べて流動粘度が低いので、融体状での加工を比較的容易にすることができる。狭く分布したポリ(メタ)アクリレートは、アニオン重合または制御ラジカル重合法によって有利に製造でき、制御ラジカル重合法が特によく適している。RAFT法に従い製造されるこのようなポリアクリレートの例は、US6,765,078B2(特許文献12)及びUS6,720,399B2(特許文献13)に記載されている。例えばEP1311555B1(特許文献14)に記載されているように、N-オキシルを介しても、対応するポリアクリレートを製造することができる。また、原子移動ラジカル重合(ATRP)も狭く分布したポリアクリレートの合成に有利に使用することができ、その際、開始剤として、単官能性または二官能性の第二級または第三級のハロゲン化物、及びこの(これらの)ハロゲン化物の引き抜きのためにCu錯体、Ni錯体、Fe錯体、Pd錯体、Pt錯体、Ru錯体、Os錯体、Rh錯体、Co錯体、Ir錯体、Ag錯体、またはAu錯体を用いることが好ましい。ATRPの異なる可能性は、US5,945,491A(特許文献15)、US5,854,364A(特許文献16)及びUS5,789,487A(特許文献17)の明細書に記載されている。
【0191】
ポリアクリレートを製造するためのモノマーは、エポキシド基との連結反応に適した官能基をその配分に応じて含むことが好ましい。これは、エポキシドとの反応によるポリアクリレートの熱架橋を有利に可能にする。連結反応とは、とりわけ付加反応及び置換反応のことである。つまりとりわけ、エポキシド基を有する連結ブリッジとしての架橋分子を介して、官能基を有するポリマー構成要素を架橋するという意味における、官能基を有する構成要素とエポキシド基を有する構成要素との連結が生じることが好ましい。エポキシド基含有物質は、多官能性エポキシド、つまり少なくとも2つのエポキシド基を有するエポキシドであることが好ましく、従って総括すると、官能基を有する構成要素の間接的な連結が生じることが好ましい。
【0192】
このまたはこれらのポリアクリレートは、熱架橋により、このまたはこれらのポリアクリレートに含有されている官能基が、とりわけ付加反応または置換反応の意味における連結反応によって架橋されるのが好ましい。加工プロセス中にゲル化が生じない十分に長い加工時間を保証すると共に、加工温度より低い温度、とりわけ室温での、所望の架橋度へのポリマーの迅速な後架橋をもたらす全ての熱架橋剤を使用することができる。架橋剤としては、例えばカルボキシル基、アミン基、及び/またはヒドロキシ基を含むポリマー、並びにイソシアネート、とりわけEP1791922A1(特許文献18)に記載のような脂肪族イソシアネートまたはアミンによって不活化され三量化されたイソシアネートからの組合せが可能である。
【0193】
適切なイソシアネートは、とりわけMDI[4,4-メチレン-ジ(フェニルイソシアネート)]、HDI[ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキシレンジイソシアネート]、及び/またはIPDI[イソホロンジイソシアネート、5-イソシアナト-1-イソシアナトメチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン]の三量化された誘導体であり、例えばDesmodur(登録商標)N3600及びXP2410タイプ(それぞれBAYER AG: 脂肪族ポリイソシアネート、低粘性HDI三量体)である。 微粒子化され三量化されたIPDI BUEJ339(登録商標)、現在はHF9(登録商標)(BAYER AG)の表面不活化された分散系も適している。
【0194】
但し、他のイソシアネート、例えばDesmodur VL 50(MDIベースのポリイソシアネート、Bayer AG)、Basonat F200WD(脂肪族ポリイソシアネート、BASF AG)、Basonat HW100(HDIベースの水乳化性多官能性イソシアネート、BASF AG)、Basonat HA 300(イソシアヌレートベースのアロファネート修飾されたポリイソシアネート、HDIベース、BASF)、またはBayhydur VPLS2150/1(親水性に変性されたIPDI、Bayer AG)も、基本的に架橋に適している。熱架橋剤、例えば三量化されたイソシアネートは、架橋すべきポリマーの総量に対して0.1~5重量%で、とりわけ0.2~1重量%で用いられるのが好ましい。
【0195】
好ましくは、熱架橋剤は、少なくとも一種のエポキシド基含有物質を含む。エポキシド基含有物質は、とりわけ、多官能性エポキシド、つまり少なくとも2つのエポキシド基を有するエポキシドであり、従って総括すると、官能基を有する構成要素の間接的な連結が生じる。エポキシド基含有物質は、芳香族化合物であっても脂肪族化合物であってもよい。
【0196】
ことさら適した多官能性エポキシドは、エピクロロヒドリンのオリゴマー、多価アルコール(とりわけエチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、ペンタエリトリトール、ソルビトール、ポリビニルアルコール、ポリアリルアルコール、及びその類似物)のエポキシエーテル、多価フェノール[とりわけレゾルシン、ヒドロキノン、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-メタン、ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-メタン、ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)-メタン、ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジフルオロフェニル)-メタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)-プロパン、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-フェニルメタン、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-フェニルメタン、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4’-メチルフェニルメタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-2,2,2-トリクロロエタン、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-(4-クロロフェニル)-メタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサン、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキシルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、2,2’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン]のエポキシエーテル及びそれらのヒドロキシエチルエーテル、フェノール-ホルムアルデヒド縮合生成物、例えばフェノールアルコール、フェノールアルデヒド樹脂、及びその類似物、S含有及びN含有のエポキシド(例えばN,N-ジグリシジルアニリン、N,N’-ジメチルジグリシジル-4,4-ジアミノジフェニルメタン)、並びに通常の方法に基づいて多価不飽和カルボン酸または不飽和アルコールの一価不飽和カルボン酸エステルから製造されたエポキシド、グリシジルエステル、不飽和酸のグリシジルエステルの重合もしくは混合重合によって獲得し得るか、またはその他の酸性化合物(シアヌル酸、ジグリシジルスルフィド、環状トリメチレントリスルホン、もしくはそれらの誘導体など)から得られるポリグリシジルエステルである。
【0197】
非常に適したエーテルは、例えば1,4-ブタンジオールジグリシドエーテル、ポリグリセロール-3-ジグリシドエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシドエーテル、グリセリントリグリシドエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシドエーテル、ペンタエリトリトールテトラグリシドエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシドエーテル)、ポリプロピレングリコールジグリシドエーテル、トリメチロールプロパントリグリシドエーテル、ペンタエリトリトールテトラグリシドエーテル、ビスフェノール-A-ジグリシドエーテル、及びビスフェノール-F-ジグリシドエーテルである。
【0198】
特に好ましいのは、加工時間、架橋キネティクス、並びに架橋度についてのより良いコントロールを得るために、例えばEP1978069A1(特許文献19)に記載された架橋剤・促進剤系(「架橋系」)を使用することである。架橋剤・促進剤系は、架橋剤として、少なくとも1種のエポキシド基含有物質を、及び促進剤として、架橋すべきポリマーの融解温度未満の温度でエポキシド基含有化合物による架橋反応に促進性に作用する少なくとも1種の物質を含んでいる。
【0199】
促進剤としては、アミン(形式的にはアンモニアの置換生成物と解釈され;下記の式では、これらの置換基を「R」で表しており、かつとりわけアルキル残基及び/またはアリール残基及び/またはその他の有機残基を含んでいる)が用いられるのが特に好ましく、とりわけ用いられるのが好ましいのは、架橋すべきポリマーの構成要素と反応しないかまたは僅かにしか反応しないアミンである。
【0200】
原理的には、促進剤として第一級アミン(NRH2)も、第二級アミン(NR2H)も、第三級アミン(NR3)も、もちろん複数の第一級アミン基及び/または第二級アミン基及び/または第三級アミン基を有するアミンも選択することができる。但し、特に好ましい促進剤は、第三級アミン、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6-トリス-(N,N-ジメチルアミノメチル)-フェノール、N,N’-ビス(3-(ジメチルアミノ)プロピル)尿素である。ジアミン、トリアミン、及び/またはテトラミンのような多官能性アミンも促進剤として有利に用い得る。ことさら適しているのは、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリメチルヘキサメチレンジアミンである。
【0201】
それだけでなくアミノアルコールを促進剤として使用することが好ましい。第二級及び/または第三級のアミノアルコールが用いられるのが特に好ましく、その際、1分子にアミン官能基が複数ある場合には、好ましくは少なくとも1つの、好ましくは全てのアミン官能基が、第二級及び/または第三級である。好ましいアミノアルコール系促進剤としては、トリエタノールアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)エタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、2-アミノシクロヘキサノール、ビス(2-ヒドロキシシクロヘキシル)メチルアミン、2-(ジイソプロピルアミノ)エタノール、2-(ジブチルアミノ)エタノール、N-ブチルジエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、2-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、1-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-プロパノール、トリイソプロパノールアミン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-(ジエチルアミノ)エタノール、2-(2-ジメチルアミノエトキシ)エタノール、N,N,N’-トリメチル-N’-ヒドロキシエチルビスアミノエチルエーテル、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、及び/またはN,N,N’-トリメチルアミノプロピルエタノールアミンを用いることができる。
【0202】
更なる適切な促進剤は、ピリジン、イミダゾール類(例えば2-メチルイミダゾール)、及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンである。脂環式ポリアミンも促進剤として用いることができる。リン酸塩ベースの促進剤、例えばホスフィン類及び/またはホスホニウム化合物、例えばトリフェニルホスフィンまたはテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートも適している。
【0203】
更に、ポリアクリレート(複数種可)でできているポリマーベースを含むそれ自体が感圧接着性のポリマー発泡体に、その上面及び/または下面に感圧接着剤もコーティングすることが企図でき、その際、前記感圧接着剤のポリマーベースも同様にポリアクリレートでできていることが好ましい。代替的に、他のまたは異なる前処理された接着層、すなわち例えば、ポリ(メタ)アクリレートとは異なるポリマーをベースとする感圧接着層及び/または加熱活性化可能な層を貼り合わせて発泡層とすることができる。適当なベースポリマーは、天然ゴム、合成ゴム、アクリレートブロックコポリマー、ビニル芳香族ブロックコポリマー、特にスチレブロックコポリマー、EVA、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリビニルエーテル及びシリコーンである。好ましくは、これらの層は、発泡層の材料との適合性が高く、その結果、相当な量で発泡層中に拡散し、そこでの特性を変化させるような、移動性の構成分を顕著な割合では含まない。
【0204】
一般的に、該接着テープの軟質相は、少なくとも一種の粘着性付与樹脂を含むことができる。粘着性付与樹脂としては、特に、脂肪族、芳香族及び/またはアルキル芳香族炭化水素樹脂、純粋なモノマーをベースとする炭化水素樹脂、水素化炭化水素樹脂、機能性炭化水素樹脂並びに天然樹脂を使用することができる。好ましくは、該粘着性付与樹脂は、ピネン樹脂、インデン樹脂及びロジン樹脂、それらの不均化、水素化、重合化及び/またはエステル化誘導体及び塩、テルペン樹脂及びテルペンフェノール樹脂、並びにC5-、C9-及び他の炭化水素樹脂を含む群から選択される。結果として生じる接着剤の特性を希望通りに調整するため、これらの樹脂及び更に別の樹脂の組合せを有利に使用することができる。特に好ましくは、粘着性付与樹脂は、テルペンフェノール樹脂及びロジンエステルを含む群から選択される。
【0205】
該接着テープの軟質相は、一種以上の充填材を含むことができる。前記の一種以上の充填材は、軟質相の一つ以上の層中に存在することができる。
【0206】
好ましくは、該軟質相はポリマー発泡体を含み、そして特に、このポリマー発泡体のポリマーベースが一種以上のポリアクリレートを含む場合に及び就中特に好ましくは、このポリマー発泡体のポリマーベースが一種以上のポリアクリレートでできている場合に、該ポリマー発泡体は部分的にもしくは完全に膨張したマイクロバルーンを含む。マイクロバルーンは、熱可塑性のポリマーシェルを有する弾性中空体であり;それ故、これらは、膨張性ポリマーマイクロスフィアまたはマイクロ中空球とも称される。これらの球体には、低沸点の液体または液化したガスが充填される。シェル材料としては、特に、ポリアクリロニトリル、ポリビニルジクロライド(PVDC)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリアミドまたはポリアクリレートを使用される。低沸点の液体としては、特に、低級アルカン、例えばイソブタンまたはイソペンタンが適しており、これらは、液化したガスとして加圧下にポリマーシェル中に封入される。例えば熱の入力(特に、例えば超音波またはマイクロ波照射による、熱の供給または熱の発生)によるマイクロバルーンへの物理的な作用によって、一方では外側のポリマーシェルが軟化し、そしてこれと同時に、シェル中に存在する液状の発泡ガスがそれのガス状態に変化する。圧力と温度との規定のペアリング(クリティカルペアリングとも称する)において、マイクロバルーンが不可逆的に伸張し、そして三次元に膨張する。内圧と外圧が等しくなった時に膨張が終了する。ポリマーシェルは維持されるため、独立気泡型の発泡体が得られる。
【0207】
多種のマイクロバルーンを商業的に入手でき(例えばAkzo Novel社のExpancel DUタイプ(乾燥未膨張))、これらは、本質的に、それの大きさ(未膨張状態で6~45μm径)及び膨張に必要なそれらの開始温度(75℃~220℃)によって区別される。
【0208】
更に、未膨張タイプのマイクロバルーンは、固形物またはマイクロバルーン含有率が約40~45重量%の水性分散液としても入手でき、更には、ポリマー結合型マイクロバルーン(マスターバッチ)、例えばエチルビニルアセテート中にマイクロバルーン濃度約65重量%のポリマー結合型マイクロバルーンとしても入手できる。更に、固形物含有率が60~80重量%のマイクロバルーンが水性分散液として存在する、いわゆるマイクロバルーン-スラリー系も入手できる。マイクロバルーン分散液、すなわちマイクロバルーンスラリーも、またマスターバッチも、DUタイプと同様に、接着テープの軟質相中に含まれるポリマー発泡体の発泡のために適している。
【0209】
特に好ましくは、該ポリマー発泡体は、25℃下での未膨張状態において3μm~40μm、とりわけ5μm~20μmの直径、及び/または膨張後に10μm~200μm、とりわけ15μm~90μmの直径を有するマイクロバルーンを含む。
【0210】
好ましくは、該ポリマー発泡体は、このポリマー発泡体の総量をそれぞれ基準にして、最大で30重量%までのマイクロバルーン、とりわけ0.5重量%と10重量%との間のマイクロバルーンを含む。
【0211】
ポリマー発泡体を含む場合、該接着テープの軟質相のポリマー発泡体は、好ましくは、連続気泡系の中空空間がほぼ存在しないことを特徴とする。特に好ましくは、該ポリマー発泡体は、ポリマーシェルを持たない中空空間、すなわち連続気泡系の空洞の割合が、2体積%以下、とりわけ0.5体積%以下である。それ故、該ポリマー発泡体は、好ましくは独立気泡系の発泡体である。
【0212】
任意選択的に、該接着テープの軟質相は、粉末及び/またはグラニュール状の充填材、染料及び顔料、とりわけ研磨性及び強化性充填材、例えばチョーク(CaCO3)、二酸化チタン類、酸化亜鉛類及びカーボンブラックを、高い割合で、すなわち軟質相の総量を基準にして0.1~50重量%の割合で含んでいてもよい。
【0213】
更に、難燃性充填材、例えばポリリン酸アンモニウム;電導性充填材、例えば導電性カーボンブラック、炭素繊維及び/または銀被覆ビード;伝熱性材料、例えば窒化ホウ素、酸化アルミニウム、炭化ケイ素;強磁性添加剤、例えば酸化鉄(III);増体積用の他の添加剤、例えば膨張剤、ガラス中実球、ガラス中空球、炭化したマイクロビード、フェノール系マイクロ中空球、他の材料製のマイクロビード;シリカ、シリケート、有機系再生可能原料、例えば木粉、有機系及び/もしくは無機系ナノ粒子、繊維;老化防止剤、光保護剤、オゾン劣化防止剤、及び/または配合剤が軟質相中に含まれ得る。老化防止剤としては、好ましくは、一次老化防止剤、例えば4-メトキシフェノールまたはIrganox(登録商標)1076や、二次老化防止剤、例えばBASF社のIrgafos(登録商標)TNPPまたはIrgafos(登録商標)を、場合によりこれらを互いに組み合わせても、使用することができる。更に別の老化防止剤としては、フェノチアジン(C-ラジカル捕捉剤)、並びに酸素の存在下でのヒドロキノンメチルエーテル、並びに酸素自体を使用することができる。
【0214】
軟質相の厚さは、好ましくは200~1800μm、特に好ましくは300~1500μm、特に400~1000μmである。軟質相の厚さは、ISO1923に従い決定される。
【0215】
接着テープを形成するための硬質及び軟質相の互いの接合、または硬質及び/または軟質相中に供される各層の互いの接合も、例えば、積層、貼り合わせまたは共押出によって行うことができる。硬質相及び軟質相を、直接互いに、すなわち直に接合することが可能である。また同様に、硬質相と軟質相との間に、一つ以上の接着促進層を配置することも可能である。更に、該接着テープは、更に別の層を含んでいてもよい。
【0216】
好ましくは、互いに接合すべき層の少なくとも一つ、より好ましくは、互いに接合すべき層の複数、就中特に好ましくは互いに接合すべき層の全ては、コロナ(空気もしくは窒素を使用)、プラズマ(空気、窒素または他の反応性ガス、あるいはエアロゾルとして使用可能な反応性化合物)、または火炎前処理法を用いて前処理される。
【0217】
好ましくは、全ての層は、ダイカットにおいて同じ形状及びサイズを有しており、合同に配置されている。
【0218】
比較的小さな穴の多くを封止できるダイカットのための典型的なサイズは、直径が10~100mm、とりわけ20~60mm、就中とりわけ30~40mmの(円形の)薄片である。
【0219】
穴、特に車体中の穴を本発明によるダイカットで封止するための本発明による方法は、単に、ダイカットを、穴が完全にダイカットにより覆われるように、封止すべき穴の上に施与することを含む。
【0220】
ダイカットが、封止すべき穴を覆って同心的に施されている場合が好ましい。ダイカットの輪郭が、封止すべき穴の輪郭に対応することが有利である。こうすることで、ダイカットの個々の層の張出部が対称的になる。張出部は、好ましくは3~20mmの間、更に好ましくは5~10mmの間である。
【0221】
本発明によるダイカットは、特に機械的な負荷の上昇に際し、従来技術から既知の解決策に勝っている。
【0222】
このダイカットは、
・非常に高い難燃性
・非常に高い負荷耐性/引裂強さ/貫入抵抗
・湿気に対する非常に良好なシーリング性/湿気バリア
・騒音に対する非常に良好なシーリング性/騒音抑制
・上塗り性
・PVC付着性
を特徴とする。
【0223】
本発明の有利な一実施形態によれば、ダイカットの貫入強度は200~2000Nである。
【0224】
ダイカットの表面は、外観及び手触りの点で、好感を与えかつ平滑な表面を提供し、それ故、良好に上塗り可能である。
【0225】
試験法
測定は、(別の記載がない限り)23±1℃及び相対湿度50±5%の検査雰囲気で実施される。
【0226】
モル質量Mn及び重量平均モル質量Mw並びに多分散性PD
本明細書での数平均モル質量Mn及び重量平均モル質量Mw並びに多分散性PDのデータは、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)による決定に関する。この決定は、清澄ろ過した試料100μl(試料濃度4g/l)に対して行われる。溶離液としては、トリフルオロ酢酸を0.1体積%含むテトラヒドロフランを用いる。測定は25℃で行われる。
【0227】
プレカラムとして、PSS-SDVタイプ、10μm、103Å、8.0mm×50mmのカラム(データはここ及び以下では順番に:タイプ、粒子サイズ、多孔度、内径×長さ;1Å=10-10m)を使用する。分離には、PSS-SDVタイプ、10μm、103Å並びに105Å及び107Å、それぞれ8.0mm×300mmのカラムの組合せを用いる(Polymer Standards Service社のカラム;示差屈折計Shodex RI71によって検出)。貫流量は1分当たり1.0mlである。
【0228】
キャリブレーションは、マインツ在のPSS Polymer Standard GmbH社の商業的に入手可能なReadyCal-Kit Poly(styrene)highを用いて行う。これは、マーク・フウィンクパラメータK及びアルファに基づいて汎用にポリメチルメタクリレート(PMMA)に換算されるので、データはPMMA質量等価で表記される。
【0229】
K値
この方法の原理は、相対的な溶液粘度を毛管粘度計によって決定することに基づいている。このために、試験物質をトルエン中に、30分振動することで溶解させ、これにより1%濃度溶液を得る。Vogel-Ossag粘度計において流出時間を25℃で測定し、それを基に、純粋な溶剤の粘度に対する試料溶液の相対粘度を決定する。フィケンチャー法[P.E.Hinkamp、Polymer、1967、8、381(非特許文献5)]に基づき、表からK値を読み取ることができる(K=1000k)。
【0230】
ガラス転移温度
ガラス転移温度は、動的走査熱量測定(DSC)によって決定する。このために、未処理のポリマー試料5mgをアルミニウム製るつぼ(容積25μL)に量り入れ、穴の開いた蓋で閉じる。測定にはNetzsch社のDSC 204 F1を使用する。不活化のため窒素下で作業する。試料を最初に-150℃に冷却し、その後、加熱率10K/分で+150℃まで加熱し、改めて-150℃に冷却する。続く第2の加熱曲線は、改めて10K/分で進行させて熱容量の変化を記録する。ガラス転移は、サーモグラムにおける段差として認識される。
【0231】
ガラス転移温度は次のように評価する(
図2を参照)。
【0232】
段差の前(1)及び後(2)のサーモグラムのベースラインにそれぞれ接線を当てがう。段差の領域で、適合直線(5)を座標に並行に、この適合直線が両方の接線と交わるように、つまり同じ面積の2つの面(3)及び(4)(それぞれ1つの接線と、適合直線と、測定曲線との間)が生じるように置く。このように位置決めされた適合直線と測定曲線との交点がガラス転移温度になる。
【0233】
接着力
接着力の決定(AFERA 5001準拠)は以下のようにして行う。規定の被着体として、2mmの厚さの亜鉛メッキされた鋼鉄製シート(Rocholl GmbH社から購入)を使用する。試験すべき接着可能な平坦要素を20mmの幅及び約25cmの長さに切断し、操作部を設け、そしてその後直ぐに、4kgの鋼鉄製ロールを用いて、10m/分の送りでそれぞれ選択された被着体上に5回、押し付ける。その直後に、接着可能な平坦要素を、180°の角度で、被着体から、引張試験装置(Zwick社)を用いて300mm/分の速度vで引き剥がし、そして室温下にそのために必要な力を測定する。測定値(N/cm)は、三回の個々の測定からの平均値として得られる。
【0234】
貫入抵抗
貫入抵抗により、(例えば、自動車工業における穴の封止のための)貫入時の、穴の上に接着されたダイカットの最大負荷力が決定される。
【0235】
円形のダイカットを使用して、板金中の穴を封止する。試験は、接着後直ぐにか、または規定の保管条件後に行われる。この際に記録される最大力は、貫入抵抗の結果として単位Nで与えられる。試験試料を貫入するための最大力は、引張試験機を用いて求められる。この際、引張試験機は、20mmの押し込み深さが達成するまで300mm/分の速度で下方に移動するパンチを用いて、接着されたダイカットに対してその中央に荷重をかける。この方法論は、マンドレルが上側のロードセル中に固定されており、板金中の水平に位置決めされかつ他方でダイカットで封止されている穴上に、一定の速度(300mm/分)で移動する引張試験機の使用に基づく。この際、穴としては、直径30mmの円形の部分が選択される。鋼板は0.7mmの厚さを有し、そして穴封止が貫入される時にマンドレルが穴を通って20mm進むことができるようにリング上に配置される。マンドレルの先端は丸められており、20mmの直径及び3mmの曲げ高さを有する、ISO8677による丸頭ネジの頭部のようになっており、ロードセルに溶接されている。マンドレルを穴を通して20mm押し込むために必要な力を測定する。板金との付着が非常に良好な場合は、この値は、長手及び横方向における層状体の引張り延び特性と相間する。
【0236】
試験すべきダイカット(円形、直径50mm)を、できるだけ中央にかつ空気が入り込まないようにして、板金の穴上に配置し、そして4kgの鋼鉄製ローラを用いてロール掛けする(ダイカットの全幅に対して10m/分で往復五回)。特に他に記載しない限り、試験は、接着してから10分未満内に行われる(即時試験)。
【0237】
この試験は、支持体側でも、または接着剤側ででも行うことができる。他に記載がなければ、該試験は支持体側で行われる、すなわちダイカットの支持体側を上に向ける。試験片は、ダイカットがホルダの上に中央にかつパンチの下に中央にあるように試験片ホルダ上に配置及び固定する。次いで、試験機を300mm/分の速度で始動させ、そしてダイカットを、板金中の穴を通して下方に押し込む。20mmの押し込み深さが達成された時、またこの際、試験片が押し込まれているだけで、なおまだ貫通されていない場合でも、試験は終了する。貫入抵抗は、三回の個々の結果からの平均値である。ダイカットが貫入されないかまたは接着が剥がれた場合には、その結果は、記号「以上(grosser/gleich)」で表示する。
【0238】
燃焼試験
陰極浸漬塗装板金(20)上で、穴直径30mmの円形の穴に対しダイカット直径50mmのダイカット(10)を同心的に施与する。このダイカットは、予め、160℃30分間炉中で前処理する。次いで、ダイカットが室温まで冷えるまで待機する。この待機時間は、少なくとも2時間の期間を含む。
【0239】
タイプKの温度センサ(30)で、1000℃±100℃の温度がダイカットの直前及び中央で調節されるように、ブンゼンバーナー(40)を用いてダイカットの外側の面に火炎をあてる。垂直試験法(サンプルが垂直で、火炎が水平)及び水平試験法(サンプルが水平で、火炎が垂直)がある。
図3aには、垂直試験法を、
図3bには水平試験法を示す。
【0240】
以下では、とりわけ自動車の車体の板金またはプラスチック部品における穴を持続的に封止するためのダイカットを図に基づいてより詳しく説明するが、如何なる形態においても制限的には作用しない。
【0241】
図1は、車体における封止が必要な穴、及び封止すべき穴を封止した後の状態を示す図である。
【0242】
車体20に、封止が必要な穴50が構造上の制約により存在している。
このためには、次の構造
1 アルミニウム箔
12 PU接着剤
3 ガラスノンクリンプ織物
4 水系アクリレート材
5 難燃性PU発泡体
6 発泡アクリレート接着剤
を有する支持体を備えたダイカット10を、穴50がダイカット10により完全に覆われるように穴50上に固定する。ダイカット10の面積は、封止すべき穴50の面積より広く、その結果、穴50が完全に封止される。
【0243】
以下に、本発明を例によってより詳しく説明するが、本発明をそれによって限定する意図はない。
【実施例】
【0244】
層1:アルミニウム箔18μm
層12:PU接着剤7g/m2
層2:ガラスノンクリンプ織物85g/m2
層3:水系アクリレート材95g/m2
層4:難燃性PU発泡体1.5mm(Unipoly社)
層5:発泡アクリレート接着剤800μm
【0245】
比較例
以下の比較例では、層4であるPU発泡層、並びに任意選択の層1、12、2及び3を、それぞれ以下の表に記載の層に置き換え、そして同様に、垂直燃焼試験(少なくとも10分間の期間まで1000℃の温度)に付す。
【0246】
この際、燃焼試験に同等に良好に合格するようなダイカットはどの層も与えないことが示される。この際、機能不全は、穴を通る火炎のブレークスルーとして定義される。
【0247】
【0248】
従来技術に対する本発明によるダイカットの利点は次の通りである:
・両燃焼試験における、最大1000℃の温度までかつ少なくとも10分間の期間までの耐火性
・低温耐衝撃性
・綺麗な接着、接着剤のはみ出しがない
・アクリレートベースの感圧接着剤に対する難燃性発泡層の十分な付着(多くの比較製品と比べて、層間の凝集破壊がない)
【0249】
本発明は、10~40μmの厚さを有する金属製の層から形成される任意選択の少なくとも一つの第一の層、30~200g/m2の坪量を有するガラス織物またはガラスノンクリンプ織物から形成される任意選択の少なくとも一つの第二の層、70~200g/m2の坪量を有する第一の感圧接着剤から形成される任意選択の少なくとも一つの第三の層、少なくとも0.5~2.5mmの厚さを有する難燃性発泡体から形成される少なくとも一つの第四の層、及び300~1800g/m2、好ましくは360~1500g/m2の坪量及び/または400~1800μm、好ましくは800~1500μmの厚さを有するアクリレートベースの第二の感圧接着剤から形成される少なくとも一つの第五の層からこの指定の層順列で構成される、複合体、特に積層体でできた支持体を備えた、ダイカット、特に孔、とりわけ板金またはプラスチック部材中の孔を持続的に封止するためのダイカットに関する。
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1. ダイカット、特に穴、とりわけ板金またはプラスチック部材中の穴を持続的に封止するためのダイカットであって、
・10~40μmの厚さを有する金属層から形成される、任意選択の少なくとも一つの第一の層、
・30~200g/m
2
の坪量を有するガラス織物またはガラスノンクリンプ織物から形成される、任意選択の少なくとも一つの第二の層、
・70~200g/m
2
の坪量を有する第一の感圧接着剤から形成される、任意選択の少なくとも一つの第三の層、
・少なくとも0.5~2.5mmの厚さを有する難燃性発泡体から形成される少なくとも一つの第四の層、及び
・300~1800g/m
2
、好ましくは360~1500g/m
2
の坪量及び/または400~1800μm、好ましくは800~1500μmの厚さを有するアクリレートベースの第二の感圧接着剤から形成される少なくとも一つの第五の層、
から前記指定の層順列で構成される複合体、特に積層体でできた支持体を備えた、上記ダイカット。
2. 前記第一の金属層が、12~20μm、更に好ましくは18μmの厚さを有することを特徴とする、前記1.に記載のダイカット。
3. 前記第一の金属層が、圧延された金属箔、特にアルミニウム箔であることを特徴とする、前記1.または2.に記載のダイカット。
4. ガラス織物またはガラスノンクリンプ織物でできた前記第二の層が、60g/m
2
と120g/m
2
との間、とりわけ70g/m
2
と100g/m
2
との間、更にとりわけ80g/m
2
と90g/m
2
との間の坪量を有することを特徴とする、前記1.~3.のいずれか一つに記載のダイカット。
5. ガラス織物またはガラスノンクリンプ織物でできた前記第二の層において、縦糸の糸数及び/または横糸の糸数が、20~40/cm、好ましくは25~30/cmであることを特徴とする、前記1.~4.のいずれか一つに記載のダイカット。
6. 前記第一の金属層と、ガラス織物またはガラスノンクリンプ織物の形の前記第二の層との間に、貼り合わせ用接着剤の形の更に別の接着層が、詳しくは好ましくは5~50g/m
2
、とりわけ7~20g/m
2
の平面塗布量で存在することを特徴とする、前記1.~5.のいずれか一つに記載のダイカット。
7. 70~200g/m
2
の坪量を有する第一の感圧接着剤から形成される前記第三の層が、アクリレートベースの水系接着剤であることを特徴とする、前記1.~6.のいずれか一つに記載のダイカット。
8. 0.5~2.5mmの厚さを有する難燃性発泡体から形成される前記第四の層が、ポリウレタンポリマー発泡体でできた層であり、このポリマー発泡体が、少なくとも1重量%の難燃剤及び10重量%未満の難燃剤の割合で難燃剤を含むことを特徴とする、前記1.~7.のいずれか一つに記載のダイカット。
9. 300~1800g/m
2
の坪量を有する第二の感圧接着剤から形成される前記第五の層が、発泡されたアクリレートベースの接着剤であることを特徴とする、前記1.~8.のいずれか一つに記載のダイカット。
10. ダイカットが、封止すべき穴を覆って同心的に施されていることを特徴とする、前記1.~9.のいずれか一つに記載のダイカット。
11. ダイカットの輪郭が、封止すべき穴の輪郭に一致すること、とりわけ、張出部が1mmと20mmとの間、更に好ましくは5mmと10mmとの間であることを特徴とする、前記1.~10.のいずれか一つに記載のダイカット。
12. 前記1.~11.のいずれか一つに記載のダイカットを備えた、とりわけ車体における穴。
【図面の簡単な説明】
【0250】
【
図1】車体における封止が必要な穴、及び封止すべき穴を封止した後の状態を示す略図。