(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】インターリーブ電力コンバータにおける電流を平衡化するための補間制御
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20221206BHJP
H02M 7/12 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H02M3/155 W
H02M7/12 Q
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021121320
(22)【出願日】2021-07-26
【審査請求日】2021-09-14
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521227078
【氏名又は名称】アステック インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボンカト,ヤンシー,フォンタニラ
(72)【発明者】
【氏名】ゴズン,ロニー,バチジェール
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/095208(WO,A1)
【文献】特開2011-091981(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0263609(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0257257(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00- 3/44
H02M 7/00- 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターリーブ多相スイッチング電力コンバータにおいて、
電源スイッチを有する第1のサブコンバータと電源スイッチを有する第2のサブコンバータとを含む複数のサブコンバータであって、前記第2のサブコンバータが前記第1のサブコンバータに対して位相シフトされる、複数のサブコンバータと、
前記第1のサブコンバータ及び前記第2のサブコンバータにおける電流を複数の周期にわたって平衡化するべく前記第1のサブコンバータの前記電源スイッチ及び前記第2のサブコンバータの前記電源スイッチを制御するために前記第1のサブコンバータ及び前記第2のサブコンバータに結合される制御回路であって、該制御回路が、前記スイッチング電力コンバータにおける基準信号及び感知電流に基づいて複数の周期にわたって第1のデューティサイクルを複数回決定し、複数の周期のうちの1つの周期中に前記第1のサブコンバータの前記電源スイッチを制御するための前記第1のデューティサイクルの現在の値を有する第1のPWM制御信号を生成するとともに、前記第1のデューティサイクルの前記現在の値と前記第1のデューティサイクルの以前の値とに基づいて第2のデューティサイクルを決定して、前記1つの周期中に前記第2のサブコンバータの前記電源スイッチを制御するための前記第2のデューティサイクルを有する第2のPWM制御信号を生成するように構成される電流補償器を含む、制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、前記第2のデューティサイクルを決定するために前記第1のデューティサイクルの前記現在の値と前記第1のデューティサイクルの前記以前の値との間の比較に基づいて誤差信号を生成するように構成される、インターリーブ多相スイッチング電力コンバータ。
【請求項2】
前記基準信号が第1の基準信号であり、前記制御回路は、前記第2のデューティサイクルを決定するために前記誤差信号と第2の基準信号との積に基づく信号を生成するように構成される、請求項
1に記載のインターリーブ多相スイッチング電力コンバータ。
【請求項3】
前記第2の基準信号は、前記第1のサブコンバータと前記第2のサブコンバータとの間の位相遅延を360度で除算することによって決定される、請求項
2に記載のインターリーブ多相スイッチング電力コンバータ。
【請求項4】
前記制御回路は、前記第2のデューティサイクルを決定するために前記信号を前記第1のデューティサイクルの現在の値に加算するように構成される、請求項
2に記載のインターリーブ多相スイッチング電力コンバータ。
【請求項5】
前記制御回路は、前記スイッチング電力コンバータの入力電圧、前記スイッチング電力コンバータの出力電圧、及び、基準電圧に基づいて前記基準信号を生成するように構成される電圧補償器を含む、請求項1に記載のインターリーブ多相スイッチング電力コンバータ。
【請求項6】
前記基準信号が第1の基準信号であり、前記複数のサブコンバータが電源スイッチを有する第3のサブコンバータを含み、該第3のサブコンバータは、前記第2のサブコンバータ及び前記第1のサブコンバータに対して位相シフトされ、前記電流補償器は、前記第1のデューティサイクルの前記現在の値、前記第1のデューティサイクルの前記以前の値、及び、第2の基準信号に基づいて第3のデューティサイクルを決定するとともに、前記1つの周期中に前記第3のサブコンバータの前記電源スイッチを制御するための前記第3のデューティサイクルを有する第3のPWM制御信号を生成するように構成される、請求項1に記載のインターリーブ多相スイッチング電力コンバータ。
【請求項7】
前記第2の基準信号は、前記第1のサブコンバータと前記第3のサブコンバータとの間の位相遅延を360度で除算することによって決定される、請求項
6に記載のインターリーブ多相スイッチング電力コンバータ。
【請求項8】
前記制御回路は、平均電流モード制御によって前記第1のサブコンバータの前記電源スイッチ及び前記第2のサブコンバータの前記電源スイッチを制御するように構成される、請求項1に記載のインターリーブ多相スイッチング電力コンバータ。
【請求項9】
前記制御回路がデジタルコントローラを含む、請求項1に記載のインターリーブ多相スイッチング電力コンバータ。
【請求項10】
前記第1のサブコンバータ及び前記第2のサブコンバータがPFCブーストトポロジを含む、請求項1に記載のインターリーブ多相スイッチング電力コンバータ。
【請求項11】
インターリーブ多相スイッチング電力コンバータを制御して、前記インターリーブ多相スイッチング電力コンバータ内の複数のサブコンバータにおける電流を複数の周期にわたって平衡化する方法であって、前記複数のサブコンバータが、電源スイッチを有する第1のサブコンバータを含むとともに、電源スイッチを有する第2のサブコンバータを含み、該第2のサブコンバータが前記第1のサブコンバータに対して位相シフトされ、前記方法は、
前記第1及び第2のサブコンバータに結合される制御回路の電流補償器により、前記スイッチング電力コンバータにおける基準信号及び感知電流に基づき、複数の周期にわたって第1のデューティサイクルを複数回決定するステップと、
複数の周期のうちの1つの周期中に前記第1のサブコンバータの前記電源スイッチを制御するための前記第1のデューティサイクルの現在の値を有する第1のPWM制御信号を生成するステップと、
前記第1のデューティサイクルの前記現在の値及び前記第1のデューティサイクルの以前の値に基づいて第2のデューティサイクルを決定するステップと、
前記1つの周期中に前記第2のサブコンバータの前記電源スイッチを制御するための前記第2のデューティサイクルを有する第2のPWM制御信号を生成するステップと、
前記第2のデューティサイクルを決定するために前記第1のデューティサイクルの前記現在の値と前記第1のデューティサイクルの前記以前の値との間の比較に基づいて誤差信号を生成するステップと、
を含む方法。
【請求項12】
前記第1のサブコンバータの前記電源スイッチ及び前記第2のサブコンバータの前記電源スイッチを平均電流モード制御により制御するステップを更に含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記基準信号が第1の基準信号であり、前記第2のデューティサイクルを決定するために前記誤差信号と第2の基準信号との積に基づく信号を生成するステップを更に含む、請求項
11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インターリーブ電力コンバータにおける電流を平衡化するための補間制御に関する。
【背景技術】
【0002】
この節は、必ずしも従来技術とは限らない本開示に関連する背景情報を提供する。
【0003】
多相電力コンバータは、一般に、インターリーブPFCブーストサブコンバータと、サブコンバータ内の電源スイッチを制御するための制御回路とを含む。幾つかの例において、制御回路は、サブコンバータ内のレール電流を平衡化するために電源スイッチのデューティサイクルを制御することができる。そのような例において、レール電流は、レール電流を平衡化するためのスプリットブーストインダクタ、複数の電流センサ、及び/又は、複数の電流補償器を使用することによって平衡され得る。他の例では、電力コンバータの入力電圧及び電流がサイクルごとに複数回サンプリングされてもよく、また、制御回路の電流補償器は、レール電流を平衡化するためにデューティサイクルを調整するべくサイクルごとに複数回実行されてもよい。
【発明の概要】
【0004】
この節は、本開示の一般的な概要を提供し、その全範囲又はその特徴の全ての包括的な開示ではない。
【0005】
本開示の1つの態様によれば、インターリーブ多相スイッチング電力コンバータは、複数のサブコンバータと、制御回路とを含む。サブコンバータは、電源スイッチを有する第1のサブコンバータと、電源スイッチを有する第2のサブコンバータとを含む。第2のサブコンバータは、第1のサブコンバータに対して位相シフトされる。制御回路は、第1のサブコンバータ及び第2のサブコンバータにおける電流を複数の周期にわたって平衡化するべく第1のサブコンバータの電源スイッチ及び第2のサブコンバータの電源スイッチを制御するために第1のサブコンバータ及び第2のサブコンバータに結合される。制御回路は、スイッチング電力コンバータにおける基準信号及び感知電流に基づいて複数の周期にわたって第1のデューティサイクルを複数回決定し、複数の周期のうちの1つの周期中に第1のサブコンバータの電源スイッチを制御するための第1のデューティサイクルの現在の値を有する第1のPWM制御信号を生成するとともに、第1のデューティサイクルの現在の値と第1のデューティサイクルの以前の値とに基づいて第2のデューティサイクルを決定して、1つの周期中に第2のサブコンバータの電源スイッチを制御するための第2のデューティサイクルを有する第2のPWM制御信号を生成するように構成される電流補償器を含む。
【0006】
本開示の他の態様によれば、インターリーブ多相スイッチング電力コンバータを制御するための制御回路が開示される。スイッチング電力コンバータは、電源スイッチを有する第1のサブコンバータと、電源スイッチを有する第2のサブコンバータとを少なくとも含む。第2のサブコンバータは、第1のサブコンバータに対して位相シフトされる。制御回路は、第1のサブコンバータ及び第2のサブコンバータにおける電流を複数の周期にわたって平衡化するべく第1のサブコンバータの電源スイッチ及び第2のサブコンバータの電源スイッチを制御するために第1のサブコンバータ及び第2のサブコンバータに結合されるように構成される。制御回路は、スイッチング電力コンバータにおける基準信号及び感知電流に基づいて複数の周期にわたって第1のデューティサイクルを複数回決定し、複数の周期のうちの1つの周期中に第1のサブコンバータの電源スイッチを制御するための第1のデューティサイクルの現在の値を有する第1のPWM制御信号を生成するとともに、第1のデューティサイクルの現在の値と第1のデューティサイクルの以前の値とに基づいて第2のデューティサイクルを決定して、1つの周期中に第2のサブコンバータの電源スイッチを制御するための第2のデューティサイクルを有する第2のPWM制御信号を生成するように構成される電流補償器を含む。
【0007】
更なる態様及び適用分野は、本明細書中で提供される説明から明らかになる。この開示の様々な態様が個別に又は1つ以上の他の態様と組み合わせて実施されてもよいことが理解されるべきである。本明細書中の説明及び特定の例が、単なる例示目的を意図しており、本開示の範囲を限定しようとしていないことも理解すべきである。
【0008】
本明細書中で記載される図面は、選択された実施形態の例示を目的としたものにすぎず、全ての想定し得る実施ではなく、また、本開示の範囲を限定しようとするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】電源スイッチを有する2つのサブコンバータと、サブコンバータにおけるレール電流を平衡化するべく電源スイッチのデューティサイクルを決定するための補間ベースの制御を使用する制御回路とを含む本開示の実施形態の1つの例に係るインターリーブ多相スイッチング電力コンバータのブロック図である。
【
図2】従来の制御技術を使用する場合の2つのサブコンバータに関する入力電圧及びデューティサイクル値を示すグラフである。
【
図3】従来の制御技術を使用する場合の2つのサブコンバータに関するデューティサイクル値を示すグラフである。
【
図4】従来の制御技術を使用する場合の2つのサブコンバータにおける不平衡レール電流を示すグラフである。
【
図5A】正のサイクルの開始中における
図4の不平衡レール電流の拡大部分を示すグラフである。
【
図5B】正のピーク値における
図4の不平衡レール電流の拡大部分を示すグラフである。
【
図5C】負のピーク値における
図4の不平衡レール電流の拡大部分を示すグラフである。
【
図6】実施形態の他の例に係る2つのサブコンバータにおけるレール電流を平衡化するべくデューティサイクルを決定するための補間ベースの制御を実施する制御回路の電流補償器のブロック図である。
【
図7】実施形態の更に他の例に係る補間ベースの制御を実施する場合の
図6の電流補償器によって制御されるサブコンバータに関する入力電圧及びデューティサイクル値を示すグラフである。
【
図8】実施形態の他の例に係る補間ベースの制御を使用する場合の2つのサブコンバータに関するデューティサイクル値を示すグラフである。
【
図9】実施形態の他の例に係る補間ベースの制御を実施する場合の2つのサブコンバータにおける平衡レール電流を示すグラフである。
【
図10A】正のサイクルの開始中における
図9の平衡レール電流の拡大部分を示すグラフである。
【
図10B】正のピーク値における
図9の平衡レール電流の拡大部分を示すグラフである。
【
図10C】負のピーク値における
図9の平衡レール電流の拡大部分を示すグラフである。
【
図11】実施形態の更なる他の例に係る3つのサブコンバータにおけるレール電流を平衡化するための補間ベースの制御を実施する制御回路の電流補償器のブロック図である。
【
図12】実施形態の他の例に係る2つのサブコンバータにおけるレール電流を平衡化するための補間ベースの制御を実施する電圧補償器及び電流補償器を含む制御回路のブロック図である。
【
図13A】従来の制御技術を使用する場合の値が10%異なるインダクタを有する2つのサブコンバータにおける不平衡レール電流を示すグラフである。
【
図13B】正のピーク値における
図13Aの不平衡レール電流の拡大部分を示すグラフである。
【
図14A】従来の制御技術を使用する場合の値が10%異なるインダクタを有する2つのサブコンバータにおける不平衡レール電流を示すグラフである。
【
図14B】正のピーク値における
図14Aの不平衡レール電流の拡大部分を示すグラフである。
【
図15A】実施形態の他の例に係る補間ベースの制御を実施する場合の値が10%異なるインダクタを有する2つのサブコンバータにおける平衡レール電流を示すグラフである。
【
図15B】正のピーク値における
図15Aの不平衡レール電流の拡大部分を示すグラフである。
【
図16A】実施形態の他の例に係る補間ベースの制御を実施する場合の値が10%異なるインダクタを有する2つのサブコンバータにおける平衡レール電流を示すグラフである。
【
図16B】正のピーク値における
図16Aの不平衡レール電流の拡大部分を示すグラフである。
【
図17A】従来の制御技術を使用する場合の10ミリオームだけ異なる抵抗値を有する2つのサブコンバータにおける不平衡レール電流を示すグラフである。
【
図17B】正のピーク値における
図17Aの不平衡レール電流の拡大部分を示すグラフである。
【
図18A】従来の制御技術を使用する場合の10ミリオームだけ異なる抵抗値を有する2つのサブコンバータにおける不平衡レール電流を示すグラフである。
【
図18B】正のピーク値における
図18Aの不平衡レール電流の拡大部分を示すグラフである。
【
図19A】実施形態の更なる他の例に係る補間ベースの制御を実施する場合の10ミリオームだけ異なる抵抗値を有する2つのサブコンバータにおける平衡レール電流を示すグラフである。
【
図19B】正のピーク値における
図19Aの不平衡レール電流の拡大部分を示すグラフである。
【
図20A】実施形態の更なる他の例に係る補間ベースの制御を実施する場合の10ミリオームだけ異なる抵抗値を有する2つのサブコンバータにおける平衡レール電流を示すグラフである。
【
図20B】正のピーク値における
図20Aの不平衡レール電流の拡大部分を示すグラフである。
【
図21】電源スイッチを有する3つのサブコンバータと、サブコンバータにおけるレール電流を平衡化するために補間ベースの制御を使用する制御回路とを含む実施形態の他の例に係るインターリーブ多相スイッチング電力コンバータの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
対応する参照番号は、図面の幾つかの図にわたって対応する(しかし、必ずしも同一であるとは限らない)部分及び/又は特徴を示す。
【0011】
実施形態の例は、この開示が完璧であって当業者に範囲を十分に伝えるように提供される。本開示の実施形態の完全な理解を与えるために、特定の構成要素、装置、及び、方法の例などの多くの特定の詳細が記載される。特定の詳細を用いる必要がないこと、実施形態の例を多くの異なる形態で具現化することができること、及び、いずれも本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではないことは、当業者に明らかである。実施形態の幾つかの例では、周知のプロセス、周知の装置構造、及び、周知の技術が詳細に記載されない。
【0012】
本明細書中で使用される用語は、実施形態の特定の例のみを説明するためのものであり、限定しようとするものではない。本明細書中で使用される単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び、「その(the)」は、文脈が別段明示しなければ、複数形も同様に含むべく意図され得る。「備える」、「備えている」、「含む」、及び、「有する」という用語は、包括的であり、したがって、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は、構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又は、それらのグループの存在又は追加を排除しない。本明細書中に記載される方法ステップ、プロセス、及び、動作は、実行の順序として具体的に特定されなければ、必ずしも説明又は図示された特定の順序でのそれらの実行を必要とすると解釈されるべきでない。更なる又は代わりのステップが使用されてもよいことも理解されるべきである。
【0013】
第1、第2、第3などの用語は、様々な要素、構成要素、領域、層、及び/又は、セクションを説明するために本明細書中で使用され得るが、これらの要素、構成要素、領域、層、及び/又は、セクションは、これらの用語によって限定されるべきでない。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層、又は、セクションを他の領域、層、又は、セクションから区別するためにのみ使用され得る。本明細書中で使用される場合の「第1」、「第2」などの用語及び他の数値用語は、文脈によって明示されなければ順序又は順番を意味しない。したがって、以下に記載される第1の要素、構成要素、領域、層、又は、セクションは、実施形態の例の教示内容から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、又は、セクションと称され得る。
【0014】
「内側」、「外側」、「真下」、「下方」、「下側」、「上方」、「上側」などの空間的に相対的な用語は、本明細書中では、図に例示されるような1つの要素又は特徴と他の要素又は特徴との関係を記載するための説明を容易にするために使用され得る。空間的に相対的な用語は、図に描かれる向きに加えて、使用中又は動作中の装置の異なる向きを包含することが意図され得る。例えば、図中の装置の向きが変えられる場合、他の要素又は特徴の「下方」又は「真下」と記載される要素は、このとき、他の要素又は特徴の「上方」に向けられる。したがって、用語「下方」の例は、上方及び下方の両方の向きを包含することができる。装置は、他の方向に向けられ(90度又は他の向きに回転され)てもよく、それに応じて本明細書中で使用される空間的に相対的な記述子が解釈される。
【0015】
ここで、添付図面を参照して、実施形態の例についてより完全に説明する。
【0016】
本開示の実施形態の1つの例に係るインターリーブ多相スイッチング電力コンバータが、
図1に示されており、参照番号100によって全体的に示される。
図1に示されるように、インターリーブ多相スイッチング電力コンバータ100は、電源スイッチ106,108を有する位相シフトされたサブコンバータ102,104と、複数の周期にわたってサブコンバータ102,104における電流を平衡化するべく電源スイッチ106,108を制御するためにサブコンバータ102,104に結合される制御回路110とを含む。制御回路110は、スイッチング電力コンバータ100における基準信号Iref及び感知電流Isenseに基づいて複数の周期にわたってデューティサイクルD1を複数回決定し、複数の周期のうちの1つの周期中にサブコンバータ102の電源スイッチ106を制御するためのデューティサイクルD1の現在の値を有するPWM制御信号114を生成するとともに、デューティサイクルD1の現在の値とデューティサイクルD1の以前の値とに基づいて他のデューティサイクルD2を決定して、その周期中にわたってサブコンバータ104の電源スイッチ108を制御するためのデューティサイクルD2を有するPWM制御信号116を生成するように構成される電流補償器112を含む。
【0017】
制御回路110は、サブコンバータが平均電流モード制御で動作されるときにサブコンバータ102,104におけるレール電流を平衡化するための補間ベースの制御を用いる。例えば、制御回路110は、デューティサイクルD1の既知の値に基づいて、サブコンバータ104を制御するためのデューティサイクルD2を決定する。そのような例において、補間ベースの制御は、例えば、制御信号遅延、制御周辺遅延、サブコンバータ102,104における異なるインダクタンス値、サブコンバータ102,104における不一致PCBトレースなどによって引き起こされるサブコンバータ102(例えば、マスターサブコンバータ)とサブコンバータ104(例えば、スレーブサブコンバータ)との間の電流不均衡を緩和する。したがって、サブコンバータ102,104におけるレール電流は、位相同期されて、同様の波形及び振幅を有し得る。サブコンバータ102,104におけるレール電流を平衡化することにより、サブコンバータの数に反比例する因数だけリップル電流を効果的に低減しながら、電源スイッチ106,108において熱を均一に拡散及び放散することができる。
【0018】
従来、異なるサブコンバータを制御するための制御信号のデューティサイクルは、同じ電流値及び電圧値に基づいて更新される。例えば、平均電流モードにおいて、制御信号のデューティサイクルは、いずれも経時的に変化する電流基準(例えば、Iref(t))と感知電流(例えば、入力電流Iint(t))との間の誤差に基づいて計算される。電流基準Iref(t)は、入力電圧V(t)によって大きく影響される。例えば、
図2は、従来の制御技術を使用する2つのサブコンバータに関するデューティサイクル202,204と複数の周期サイクルにわたる入力電圧Vとを示すグラフ200を例示する。この例において、PWM制御信号を生成するためのPWMモジュールは、180度位相シフトφで動作する。
図2に示されるように、入力電圧V(t)の増大(例えば、入力電圧の上向きAC勾配中)は、デューティサイクル値(u)の減少をもたらす。デューティサイクル値は、入力電圧V(t)がピーク電圧値に達するまで減少し続ける。入力電圧の下向きAC勾配(
図2に示されない)中、デューティサイクル値は、入力電圧V(t)が最小電圧値に達するまで増大する。
【0019】
補償器が、サイクルTごとに一回、同じ入力電圧V(t)に基づいてサブコンバータに関するデューティサイクル値(u)を更新する。したがって、補償器がデューティサイクル値(u)を更新すると、一方のサブコンバータに関するデューティサイクル値204は、他方のサブコンバータに関するデューティサイクル値202に対してシフトされて過補償される。例えば、
図2に示されるように、更新されたデューティサイクル値(u)が各サイクルTを通じて同じままである間に入力電圧Vが変化するため、デューティサイクル値202,204は異なる経路をとる。結果として、一方のサブコンバータは他方のサブコンバータよりも多くのエネルギーを蓄えることができ、それにより、サブコンバータにおけるレール電流(例えば、インダクタ電流)間の不均衡が引き起こされる。
【0020】
例えば、
図3、
図4、及び、
図5A~
図5Cは、従来の制御技術を用いる電力コンバータの2つのサブコンバータにおけるデューティサイクル値302,304及びレール電流402,404のグラフ300,400,500A,500B,500Cを示す。具体的には、グラフ300は、電力コンバータの入力電圧が1つのACサイクルのその上向き勾配にあるときの経時的なデューティサイクル値302,304を示し、また、グラフ400は、2つのACサイクルにわたるレール電流402,404を示す。グラフ500A、500B、500Cは、正のサイクルの開始中(
図5A参照)における、正のピーク値(
図5B参照)における、及び、負のピーク値(
図5C参照)における
図4のレール電流402,404の拡大部分を示す。この例において、電力コンバータは、40kHzで動作する二相インターリーブトーテムポールPFCであってもよい。
【0021】
図3に示されるように、サブコンバータのうちの一方のデューティサイクル値304は、他方のサブコンバータに関するデューティサイクル値302に対してシフトされて過補償される。これは、
図4及び
図5A~
図5Cに示されるようなサブコンバータにおけるレール電流402,404(例えば、インダクタ電流)間の不均衡を引き起こす。
【0022】
しかしながら、以下で更に説明されるように、本明細書中に開示されるような補間ベースの制御方法が使用される場合、デューティサイクルのうちの1つは、デューティサイクルが同じ経路に沿って進むようにするべく補正され得る。結果として、サブコンバータにおける平衡レール電流を達成できる。
【0023】
図1の制御回路110は、サブコンバータ102,104において平衡レール電流を達成するべくデューティサイクルを生成するための様々な構成要素を含むことができる。例えば、
図6は、複数の周期(例えば、サイクル)にわたってサブコンバータ102,104におけるレール電流を平衡化するべくデューティサイクルD1、D2の値を決定するための制御回路110内で使用できる電流補償器612を示す。
図6に示されるように、電流補償器612は、比較器620,628と、コントローラ622と、リミッタ624,634と、遅延デバイス626と、乗算器630と、加算器632と、PWMモジュールDPWM1、DPWM2とを含む。
【0024】
図6の例において、電流補償器612は、電流基準信号Iref及び感知電流Isense(例えば、
図1のスイッチング電力コンバータ100の入力電流)を受ける。電流基準信号Irefは、例えば、経時的に変化するスイッチング電力コンバータの入力電圧に起因して、1つの周期サイクルから次の周期サイクルへ変化し得る。比較器620は、電流基準信号Irefと感知電流Isenseとを一周期サイクル中に比較し、電流基準信号Irefと感知電流Isenseとの間の比較(例えば、差異)に基づいて電流誤差信号err_iを生成する。
【0025】
その後、コントローラ622は、電流誤差信号err_iに基づいて、周期サイクルに関するデューティサイクルD1を表わす信号u(t)を生成する。信号u(t)は、信号u(t)の値を制限するべくリミッタ624に通される。そのような例では、信号u(t)が規定の値未満であると、信号u(t)がその規定された値を強いられ得る。しかしながら、信号u(t)が他の規定された値よりも大きい場合には、信号u(t)が他の規定された値を強いられ得る。その後、PWMモジュールDPWM1は、周期サイクル中にサブコンバータ(例えば、
図1のサブコンバータ102)における1つ以上の電源スイッチを制御するためのデューティサイクルD1の現在の値u(t)を有する制御信号PWM1を生成する。
【0026】
図6のコントローラ622は、比例積分(Pl)コントローラを含むものとして示される。そのような例において、コントローラ622は、電流誤差信号err_iに比例利得係数及び積分係数を乗算するための1つ以上の増幅器を含んでもよい。他の例において、コントローラ622は、比例・積分・微分(PID)コントローラなどの他の適したタイプのコントローラを含んでもよい。
【0027】
図6に示されるように、比較器628は、デューティサイクルD1の現在の値u(t)と以前の値u(t-1)とを比較し、値間の比較(例えば、差)に基づいて誤差信号errを生成する。例えば、
図6に示されるように、以前の周期サイクルからデューティサイクルD1の以前の値u(t-1)を取得するためにデューティサイクルD1の現在の値u(t)が遅延デバイス626に通される。
【0028】
乗算器630は、誤差信号err及び基準信号C1を受けて、誤差信号errと基準信号C1との積に基づく信号を生成する。例えば、基準信号C1は、サブコンバータ(例えば、サブコンバータ102,104)間の位相遅延と周期サイクルとに基づく所定の一定値であってもよい。例えば、スイッチング電力コンバータが2つのインターリーブサブコンバータを含む場合、一方のサブコンバータと他方のサブコンバータとの間の位相遅延は180度であり、周期サイクルは360度である。このような例において、基準信号C1は、位相遅延(例えば、180度)を周期(例えば、360度)で除算することによって取得されてもよい。
【0029】
その後、加算器632は、乗算器630によって与えられる信号とデューティサイクルD1の現在の値u(t)とを加算して、デューティサイクルD2を決定する。例えば、デューティサイクルD2の現在の値を表わす信号u(t)´が、加算器632によって与えられて、リミッタ624と同様に機能するリミッタ634に通される。その後、デューティサイクルD2の現在の値を表わす信号u(t)´はPWMモジュールDPWM2に渡される。PWMモジュールDPWM2は、周期サイクル中に他方のサブコンバータ(例えば、
図1のサブコンバータ104)における1つ以上の電源スイッチを制御するためのデューティサイクルD2の現在の値u(t)´を有する制御信号PWM2を生成する。信号u(t)´の値を決定するための計算が以下の式(1)に示される。
式(1) u(t)´=[(u(t)-u(t-1))*C1]+u(t)
【0030】
信号u(t)、u(t)´の値は時間に関連付けられる。したがって、信号u(t)、u(t)´の値は、1つのPWM周期(例えば、1サイクル)内で有効であり得る。信号値は、以前の及び/又はその後のPWM周期に関して前述したのと同様の態様で再び決定されてもよい。
【0031】
デューティサイクルD2に関する信号u(t)´の値が前述のように決定されると、デューティサイクルD1、D2が同じ経路に沿って進み、それにより、サブコンバータにおけるレール電流が平衡化される。例えば、
図7は、
図6の電流補償器610を使用する場合の2つのサブコンバータに関するデューティサイクル値D1、D2を示すグラフ700を例示する。
図7に示されるように、デューティサイクル値D1、D2は、入力電圧Vが変化するのと同様の経路に沿って進む。
【0032】
図6及び
図7の特定の例において、デューティサイクルD2は、デューティサイクルD1の現在の値u(t)と以前の値u(t-1)との誤差の半分だけ補正される。結果として、デューティサイクルD1の現在の値u(t)と将来の値u(t+1)との中点に一致するようにデューティ比D2が演算される。例えば、入力電圧が、以前のサイクルで95ボルト(例えば、V(t-1))、現在のサイクルで100ボルト(例えば、V(t))、将来のサイクルで105ボルト(例えば、V(t+1))である場合、デューティサイクルD 2がデューティサイクルD1の現在の値u(t)と将来の値u(t+1)との中点(例えば、u(t+0.5))と一致するように計算されると、入力電圧は102.5ボルト(例えば、V(t+0.5))である。
【0033】
デューティサイクルD1、D2が同様の経路に沿って進む結果として、電源スイッチは、サブコンバータにおいて平衡電流を達成するように制御されてもよい。例えば、
図8、
図9及び
図10A~
図10Cは、本明細書中に開示される補間ベースの制御方法を用いる電力コンバータの2つのサブコンバータにおけるデューティサイクル値802,804及びレール電流1a、1bを示すグラフ800,900、1000A、1000B、1000 Cを例示する。具体的には、グラフ800は、電力コンバータの入力電圧が1つのACサイクルのその上向き勾配にあるときの経時的なデューティサイクル値802,804を示し、また、グラフ900は、2つのACサイクルにわたるレール電流1a、1b(例えば、インダクタ電流)を示す。グラフ1000a、1000b、1000cは、正のサイクルの開始中(
図10A参照)における、正のピーク値(
図10B参照)における、及び、負のピーク値(
図10C参照)における
図9のレール電流1a、1bの拡大部分を示す。この例において、電力コンバータは、40kHzで動作する二相インターリーブトーテムポールPFCであってもよい。
【0034】
図8に示されるように、デューティサイクル値802,804は同様の経路に沿って進む。結果として、
図9及び
図10A~
図10Cに示されるように、サブコンバータのうちの一方(例えば、
図1のサブコンバータ102)を通じて流れるレール電流1aと他方のサブコンバータ(例えば、
図1のサブコンバータ104)を通じて流れるレール電流1bとが平衡化される。具体的には、レール電流1a、1bは位相同期されるとともに、同様の波形及び振幅を有する。
【0035】
図1及び
図6は、電力コンバータにおける2つのインターリーブサブコンバータを制御するための補間ベースの制御方法に関するが、方法が3つ以上のインターリーブサブコンバータを制御するために使用されてもよいことは明らかなはずである。例えば、
図11は、3つのサブコンバータにおけるレール電流を平衡化するべくデューティサイクルD1、D2、D3を決定するために使用できる電流補償器1112を示す。
図11の電流補償器1112は、
図6の電流補償器612と実質的に同様であるが、第3のサブコンバータに関するデューティサイクルD3を生成するための他の制御ループを含む。例えば、
図11の電流補償器1112は、比較器620,628、コントローラ622、リミッタ624,634、遅延デバイス626、乗算器630、加算器632、及び、
図6のPWMモジュールDPWM1、DPWM2、並びに、乗算器1130、加算器1132、リミッタ1134、及び、PWMモジュールDPWM3を含む。
【0036】
デューティサイクルD1、D2は、
図6に関連して前述したのと同じ態様で決定される。例えば、一周期サイクル中、デューティサイクルD1(例えば、デューティサイクルD1の現在の値を表わす信号u(t))は、基準信号Iref及び感知電流Isenseの電流値に基づいて決定され、また、デューティサイクルD2(例えば、デューティサイクルD2の現在の値を表わす信号u(t)´)は、前述したように、デューティサイクルD1の現在の値u(t)及び以前の値u(t-1)に基づいて決定される。
【0037】
図11の例において、乗算器630は、比較器628からの誤差信号errと基準信号C1とを受け、前述したように誤差信号errと基準信号C1との積に基づく信号を生成する。
図11の特定の例において、基準信号C1は、
図6の基準信号C1と比較されて変更される。具体的には、
図11の基準信号C1は、第1のサブコンバータ(例えば、マスターサブコンバータ)と第2のサブコンバータ(例えば、スレーブサブコンバータ)との間の位相遅延とサイクル(例えば、360度)とを除算することによって決定される。そのような例では、第1のサブコンバータと第2のサブコンバータとの間の位相遅延が120度である。したがって、
図11の特定の例では、基準信号C1が0.333(例えば、120I360)である。
【0038】
デューティサイクルD2と同様に、第3のサブコンバータに関するデューティサイクルD3は、デューティサイクルD1の現在の値u(t)及び以前の値u(t-1)に基づいて決定される。例えば、
図11に示されるように、乗算器1130は、比較器628からの誤差信号err及び基準信号C2を受け、誤差信号errと基準信号C2との積に基づく信号を生成する。
【0039】
基準信号C2は、基準信号C1と同様の態様で決定される所定の一定値であってもよい。例えば、基準信号C2は、第1のサブコンバータ(例えば、マスターサブコンバータ)と第3のサブコンバータ(例えば、スレーブサブコンバータ)との間の位相遅延及びサイクルに基づいて決定されてもよい。このような例では、第1のサブコンバータと第3のサブコンバータとの間の位相遅延が240度である。このように、基準信号C2は、位相遅延(例えば、240度)をサイクル(例えば、360度)で除算することによって取得されてもよい。したがって、
図11の特定の例では、基準信号C2が0.667(例えば、240度/360度)である。
【0040】
その後、加算器1132は、デューティサイクルD3の現在の値(例えば、信号u(t)´´)を決定するために乗算器1130によって与えられる信号とデューティサイクルD1の現在の値u(t)とを加算する。デューティサイクルD3の現在の値を表わす信号u(t)´´は、前述したリミッタ634と同様に機能するリミッタ1134に通される。その後、信号u(t)´´はPWMモジュールDPWM3に渡される。PWMモジュールDPWM3は、周期サイクル中に第3のサブコンバータにおける1つ以上の電源スイッチを制御するためのデューティサイクルD3の現在の値u(t)´´を有する制御信号PWM3を生成する。信号u(t)´´の値を決定するための計算が以下の式(2)で示される。
式(2) u(t)´´=[(u(t)-u(t-1))*C2]+u(t)
【0041】
図11の特定の例において、デューティサイクルD2は、基準信号C1に起因するデューティサイクルD1の現在の値u(t)と以前の値u(t-1)との誤差の1/3だけ補正される。結果として、デューティサイクルD2は、デューティサイクルD1の現在の値u(t)と将来の値u(t+1)との間の範囲の1/3の点に一致するように計算される。更に、デューティサイクルD3は、基準信号C2に起因するデューティサイクルD1の現在の値u(t)と以前の値u(t-1)との誤差の2/3だけ補正される。したがって、デューティサイクルD3は、デューティサイクルD1の現在の値u(t)と将来の値u(t+1)との間の範囲の2/3の点に一致するように計算される。
【0042】
本明細書中に開示される基準信号Irefは、電圧補償器の出力に基づいて生成されてもよい。例えば、
図12は、複数の周期にわたって電流を平衡化するべくスイッチング電力コンバータ(例えば、
図1のスイッチング電力コンバータ100)の2つのサブコンバータにおける電源スイッチを制御するための制御回路1210を示す。図示のように、制御回路1210は、
図6の電流補償器612と、電流補償器612に関する電流基準信号Irefを生成するための回路1212とを含む。
【0043】
図12の例において、電流基準信号Irefは、スイッチング電力コンバータの入力電圧Vin、スイッチング電力コンバータの出力電圧Vo、及び、基準電圧Vrefに基づいて生成される。例えば、
図12に示されるように、回路1212は、比較器1214、乗算器1216、及び、電力制限機能1218を含む。比較器1214は、基準電圧Vrefと出力電圧Voとを比較して、乗算器1216に出力を与える。出力電圧Voは、デジタル信号を生成するべく出力電圧Vo(例えば、アナログ信号)をサンプリングしてその値を所定期間(例えば、サンプル間隔)にわたって一定レベルに保持するサンプル・アンド・ホールド(S&H)回路などの随意的なゼロ次ホールド(ZOH)デバイスを通過してもよい。
【0044】
幾つかの例では、比較器1214が電圧補償器に相当してもよい。したがって、比較器1214の出力が電圧補償器の出力であってもよい。そのような例では、コントローラ(例えば、
図6のPIコントローラ622と同様)を比較器1214に結合することができる。
【0045】
電力制限機能1218は、電力コンバータの入力電圧Vin(例えば、調整された入力電圧)を受け、乗算器1216に出力を与える。例えば、電力制限機能1218は、平均入力電圧の二乗の逆数を表わす信号(例えば、1/(average(Vin))A2、1/Vacrms A2など)を出力してもよい。或いは、電力制限機能1218は、必要に応じて他の信号を出力してもよい。出力電圧Voと同様に、入力電圧Vinは、必要に応じて随意的なZOHデバイスを通過してもよい。
【0046】
乗算器1216は、比較器1214の出力(例えば、電圧補償器の出力)と電力制限機能1218の出力との積及び電力コンバータの入力電圧Vinとに基づいて電流基準信号Irefを生成する。その後、電流基準信号Irefは、前述したように、電流補償器612の比較器620に渡される。
【0047】
図12の例において、PWM制御信号PWM1、PWM2のデューティサイクルは、最小センサを使用して決定されてもよい。例えば、デューティサイクルは、単一の電流センサ、単一の入力電圧センサ、及び、単一の出力電圧センサを使用して決定されてもよい。
【0048】
幾つかの例において、本明細書中に開示されるサブコンバータは、1つ以上のインダクタ及び/又はPCBトレースを含んでもよい。そのような例において、異なるインダクタ値及び/又はPCBトレース(例えば、不一致抵抗)は、サブコンバータ間の電流不均衡の少なくとも一部に起因し得る。しかしながら、本明細書中に開示される補間ベースの制御方法が使用される場合、サブコンバータにおけるレール電流は、インダクタ値が±10%異なる場合及び/又は抵抗値が±10ミリオーム異なる場合でも、振幅及び位相が実質的に平衡化され得る。
【0049】
例えば、
図13A~
図16Bは、インダクタL1、L2におけるレール電流1302、1304、1402、1404、1502、1504、1602、1604を示すグラフ1300A、1300B、1400A、1400B、1500A、1500B、1600A、1600Bを例示する。インダクタL1が一方のサブコンバータ(例えば、
図1のサブコンバータ102などのマスターサブコンバータ)のレールで結合されてもよく、また、インダクタL2が他方のサブコンバータ(例えば、
図1のサブコンバータ104などのスレーブサブコンバータ)のレールで結合されてもよい。
図13B、
図14B、
図15B、
図16Bのグラフ1300B、1400B、1500B、1600Bは、それらの正のピーク値における
図13A、
図14A、
図15A、
図16Aのレール電流1302、1304、1402、1404、1502、1504、1602、1604の拡大部分を示す。
図13A~
図16Bの例では、インダクタL1、L2が10%異なる値を有する。例えば、インダクタL2値は、
図13A~
図13B及び
図15A~
図15BにおけるインダクタL1値の90%であり(例えば、L2=0.90*L1)、また、インダクタL2値は、
図14A~
図14B及び
図16A~
図16BにおけるインダクタL1値の110%である(例えば、L2=1.1*L1)。
【0050】
図13A~
図13B及び
図14A~
図14Bに示されるように、インダクタンスの10%の差は、補間制御方法が用いられない場合にインダクタL1における電流1302、1402とインダクタL2における電流1304、1404との間の不均衡をもたらす。しかしながら、
図15A~
図15B及び
図16A~
図16Bに示されるように、補間制御方法が使用される場合、インダクタンスにおける10%の差は、インダクタL1における電流1502、1602とインダクタL2における電流1504、1604との間の不均衡を最小にする。
【0051】
更に、
図17A~
図20Bは、抵抗器R1、R2を含むサブコンバータを通じて流れるレール電流1702、1704、1802、1804、1902、1904、2002、2004を示すグラフ1700A、1700B、1800A、1800B、1900A、1900B、2000A、2000Bを例示する。幾つかの例では、レール電流1702、1704、1802、1804、1902、1904、2002、2004がサブコンバータにおけるインダクタ電流を表わしてもよい。抵抗器R1は、一方のサブコンバータ(例えば、
図1のサブコンバータ102などのマスターサブコンバータ)におけるPCBトレースを表わしてもよく、また、抵抗器R2は、他のサブコンバータ(例えば、
図1のサブコンバータ104などのスレーブサブコンバータ)におけるPCBトレースを表わしてもよい。
図17B、
図18B、
図19B、
図20Bのグラフ1700B、1800B、1900B、2000Bは、それらの正のピーク値における
図17A、
図18A、
図19A、
図20Aのレール電流1702、1704、1802、1804、1902、1904、2002、2004の拡大部分を示す。
図17A~
図20Bの例では、抵抗器R1、R 2が10ミリオームだけ異なる値を有する。例えば、抵抗器R2の値は、
図17A~
図17B及び
図19A~
図19Bにおける抵抗器R1の値よりも10ミリオーム大きく(例えば、R2=R1+10ミリオーム)、また、抵抗器R1の値は、
図18A~
図18B及び
図20A~
図20Bにおける抵抗器R2の値よりも10ミリオーム大きい(例えば、R1=R2+10ミリオーム)。
【0052】
図17A~
図17B及び
図18A~
図18Bに示されるように、抵抗器R1と抵抗器R2との間の10ミリオームの差は、補間制御方法が使用されない場合、マスターサブコンバータを通じて流れる電流1702、1802とスレーブサブコンバータを通じて流れる電流1704、1804との間の不均衡をもたらす。具体的には、スレーブサブコンバータにおける電流1704、1804は、マスターサブコンバータにおける電流1702、1802よりも大きくそれを先導する。しかしながら、
図19A~
図19B及び
図20A~
図20Bに示されるように、補間ベースの制御方法が使用される場合、10ミリオームの抵抗差は、マスターサブコンバータを通じて流れる電流1902、2002とスレーブサブコンバータを通じて流れる電流1904、2004との間の不均衡を最小限にする。
【0053】
本明細書中で開示されるインターリーブ多相スイッチング電力コンバータは、AC/DC、DC/AC及び/又はDC/DC電力変換を行なうためのバック、ブースト、バック-ブースト、トーテムポールなどのトポロジなどの任意の適切なトポロジを含んでもよい。幾つかの好ましい実施形態において、サブコンバータは、スイッチング電力コンバータにおけるフロントエンド段であってもよく、例えば、所定の位相シフトで及び平均電流モード制御により動作されるAC/DCブーストPFC電力回路、トーテムポールPFC電力回路などを含む。そのような例において、電力コンバータは、3000W、3000Wより大きい又は小さい電力定格などを有してもよい。
【0054】
例えば、
図21は、3つのインターリーブサブコンバータ2102、2104、2106と制御回路2108とを含むインターリーブ多相スイッチング電力コンバータ2100を示す。サブコンバータ2102、2104、2106は、並列に結合されるとともに、インダクタL1、L2、L3、ダイオードD1、D2、D3、及び、電源スイッチS1、S2、S3をそれぞれ含む。サブコンバータ2102、2104、2106のインダクタ、ダイオード、及び、電源スイッチは、PFCブーストトポロジを成して配置される。幾つかの例では、サブコンバータ2102がマスターサブコンバータであってもよく、また、サブコンバータ2104、2106がスレーブサブコンバータであってもよい。
【0055】
制御回路2108は、サブコンバータ2102、2104、2106をそれらの間の位相シフトが120度で動作させるべく電源スイッチS1、S2、S3を制御するためにサブコンバータ2102、2104、2106に結合される。制御回路2108は、例えば、
図11の電流補償器1112、
図12の回路1212、又は、サブコンバータ2102、2104、2106におけるレール電流を平衡化するための他の適した電流補償器及び/又は電圧補償器を含んでもよい。インターリーブ多相スイッチング電力コンバータ2100が2つのサブコンバータ(例えば、サブコンバータ2102、2104)のみを含むシナリオにおいて、制御回路2108は、例えば、
図6の電流補償器612又はレール電流を平衡化するための他の適した電流補償器を含んでもよい。
【0056】
図21に示されるように、スイッチング電力コンバータ2100は、AC入力電圧V_acを調整するための整流器(例えば、ダイオードブリッジ整流器など)と、サブコンバータ2102、2104、2106と整流器との間に結合されるコンデンサC3と、サブコンバータ2102、2104、2106とコンバータの出力との間に結合されるコンデンサC4とを更に含む。更に、スイッチング電力コンバータ2100は、入力電圧が出力電圧よりも大きいときに電流の流れを入力から出力へと経路変更するためにサブコンバータ2102、2104、2106の両端間に結合される随意的なダイオードD4(例えば、バイパスダイオード)を含む。この状態中、インダクタにおけるエネルギーが出力に伝わることができない。入力電圧が出力電圧未満であるとき、ダイオードD4はその非アクティブ状態にある。
【0057】
制御回路2108は、インダクタL1、L2、L3を通過するレール電流が平衡化されるようにするべく本明細書中に開示される補間ベースの制御方法のいずれかを使用してもよい。例えば、制御回路2108は、感知電流Isense及び基準信号に基づいて(例えば、マスターサブコンバータ2102の)電源スイッチS1に関するデューティサイクルD1を決定してもよい。基準信号は、前述したように、感知入力電圧Vin及び感知出力電圧Voに基づいて決定されてもよい。また、制御回路2108は、前述したように、デューティサイクルD1の現在及び以前の値並びに一定の基準信号(例えば、
図11の基準信号C1、C2)に基づいて(例えば、スレーブサブコンバータ2104、2106の)電源スイッチS2、S3に関するデューティサイクルD2、D3を決定してもよい。その後、制御回路2108は、電源スイッチS1、S2、S3をそれぞれ制御するためのデューティサイクルD1、D2、D3を有するPWM制御信号PWM1、PWM2、PWM3を生成してもよい。
【0058】
図21の例において、信号Isenseは、サブコンバータ2102、2104、2106を通じて流れる合成電流に相当し、単一の電流センサR1によって生成される。或いは、必要に応じて、電流センサが各サブコンバータ2102、2104、2106と関連付けられてもよい。しかしながら、複数の電流センサを使用すると、構成要素が増加し、結果として、電力コンバータ2100のコスト及び複雑さが増加する。
【0059】
本明細書中で開示される制御回路は、アナログ制御回路、デジタル制御回路、又は、ハイブリッド制御回路(例えば、デジタル制御ユニット及びアナログ回路)を含んでもよい。例えば、制御回路がデジタル制御回路である場合、制御回路は、1つ以上のハードウェア構成要素及び/又はソフトウェアにより実装されてもよい。例えば、本明細書中に開示される補間ベースの制御方法の特徴のうちの任意の1つ以上を実行するための命令は、持続性コンピュータ可読媒体などに記憶され及び/又は持続性コンピュータ可読媒体などから1つ以上の既存のデジタル制御回路、新たなデジタル制御回路などに転送されてもよい。そのような例において、命令のうちの1つ以上は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ROM、RAM、1つ以上のハードディスク、磁気ディスクドライブ、光ディスクドライブ、取り外し可能なメモリ、取り外し不能なメモリ、磁気テープカセット、フラッシュメモリカード、CD-ROM、DVD、クラウドストレージなどに記憶されてもよい。
【0060】
デジタル制御回路は、1つ以上のタイプのデジタル制御回路により実装されてもよい。例えば、デジタル制御回路はそれぞれ、デジタル信号コントローラ(DSC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、マイクロコントローラユニット(MCU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向けIC(ASIC)などを含んでもよい。
【0061】
本明細書中に開示される電源スイッチは、トランジスタ及び/又は他の適したスイッチングデバイスを含んでもよい。例えば、電源スイッチは、
図21に示されるように金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を含んでもよい。
【0062】
本明細書中で開示される補間ベースの制御方法は、インターリーブ多相スイッチング電力コンバータの2つ以上のサブコンバータにおけるレール電流を平衡化するために使用され得る。幾つかの例では、生成される制御信号におけるノイズレベルを最小にするために、2つのインターリーブサブコンバータ又は3つのインターリーブサブコンバータを有するスイッチング電力コンバータにおいて補間ベースの制御方法を使用することが好ましい場合がある。制御方法は、常に平衡電流(例えば、位相同期された、類似の波形、類似の振幅など)を維持しながら任意の適切な負荷及び/又は入力範囲条件で実施されてもよい。
【0063】
更に、補間ベースの制御方法は、更なるセンサ、制御回路の較正(又は再較正)などを必要とせずに平均電流モード制御技術と併せて実施されてもよい。更に、実施される制御方法は、サブコンバータのレール電流を平衡化するためにサブコンバータを制御するための最小限の計算を必要とする。幾つかの例において、制御回路は、必要な計算を実施するための構成要素を既に含んでいてもよい。したがって、制御方法は、制御回路内の制御ループに殆ど影響を及ぼさない。例えば、減算演算、乗算演算、累積演算、及び、最小/最大制限演算が、2つのインターリーブサブコンバータ(例えば、二相インターリーブシステム)を有するコンバータに必要な唯一の更なる計算であってもよい。3つ以上のインターリーブサブコンバータを有するコンバータの場合、必要な計算は、2つのインターリーブサブコンバータに関する前述の演算を含んでもよく、また、それぞれの更なるレールごとに、乗算演算、累積演算、及び、最小/最大制限演算を含んでもよい。
【0064】
実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的で与えられてきた。実施形態の前述の説明は、包括的であるように意図されておらず、或いは、本開示を限定しようとするものではない。特定の実施形態の個々の要素又は特徴は、一般に、その特定の実施形態に限定されず、適用可能な場合には交換可能であり、また、具体的に図示又は説明されていなくても、選択された実施形態で使用することができる。また、特定の実施形態の個々の要素又は特徴が多くの方法で変更されてもよい。そのような変更が本開示からの逸脱と見なされるべきでなく、また、全てのそのような修正は、本開示の範囲内に含まれることが意図される。