IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミネベア株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電池パック 図1
  • 特許-電池パック 図2
  • 特許-電池パック 図3
  • 特許-電池パック 図4
  • 特許-電池パック 図5
  • 特許-電池パック 図6
  • 特許-電池パック 図7
  • 特許-電池パック 図8
  • 特許-電池パック 図9
  • 特許-電池パック 図10
  • 特許-電池パック 図11
  • 特許-電池パック 図12
  • 特許-電池パック 図13
  • 特許-電池パック 図14
  • 特許-電池パック 図15
  • 特許-電池パック 図16
  • 特許-電池パック 図17
  • 特許-電池パック 図18
  • 特許-電池パック 図19
  • 特許-電池パック 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20221206BHJP
   G01B 7/16 20060101ALI20221206BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20221206BHJP
   H01M 50/284 20210101ALI20221206BHJP
   H01M 50/296 20210101ALI20221206BHJP
【FI】
H01M10/48 301
G01B7/16 R
H01M50/204 401D
H01M50/284
H01M50/296
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021155551
(22)【出願日】2021-09-24
(62)【分割の表示】P 2018239997の分割
【原出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2022008536
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2018159658
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】浅川 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】足立 重之
(72)【発明者】
【氏名】美齊津 英司
(72)【発明者】
【氏名】北村 厚
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/143400(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/094368(WO,A1)
【文献】特開2015-031633(JP,A)
【文献】特表昭62-502665(JP,A)
【文献】特開2012-168064(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061416(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42 - 10/48
H01M 50/20 - 50/298
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
G01B 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池と、
前記電池の状態を検出するセンサと、を備え、
前記センサは、
絶縁層と、
前記絶縁層の一方の側に長手方向を第1方向に向けて並置された互いに電気的に接続されていない複数の第1抵抗部、及び前記絶縁層の他方の側に長手方向を前記第1方向と交差する第2方向に向けて並置された互いに電気的に接続されていない複数の第2抵抗部、を含む抵抗体と、
前記絶縁層の一方の側において、各々の前記第1抵抗部を挟んで前記第1方向の両側に配置され、各々の前記第1抵抗部の両端部に接続された1対の第1電極と、
前記絶縁層の他方の側において、各々の前記第2抵抗部を挟んで前記第2方向の両側に配置され、各々の前記第2抵抗部の両端部に接続された1対の第2電極と、を有し、
前記第1抵抗部及び前記第2抵抗部は、α-Crを主成分とするCr混相膜から形成され、
前記電池の状態を前記抵抗体の抵抗値の変化として検出する電池パック。
【請求項2】
電池と、
前記電池の状態を検出するセンサと、を備え、
前記センサは、
絶縁層と、
前記絶縁層の一方の側に長手方向を第1方向に向けて並置された互いに電気的に接続されていない複数の第1抵抗部、及び前記絶縁層の他方の側に長手方向を前記第1方向と交差する第2方向に向けて並置された互いに電気的に接続されていない複数の第2抵抗部、を含む抵抗体と、を有し、
各々の前記第1抵抗部と各々の前記第2抵抗部とは、平面視で1点のみで交差し、
前記第1抵抗部及び前記第2抵抗部は、α-Crを主成分とするCr混相膜から形成され、
前記電池の状態を前記抵抗体の抵抗値の変化として検出する電池パック。
【請求項3】
各々の前記第1抵抗部及び各々の前記第2抵抗部は、ジグザグのパターンである請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項4】
任意の前記第1抵抗部と任意の前記第2抵抗部とが平面視で交差する点における前記電池の状態を、該第1抵抗部の抵抗値の変化及び該第2抵抗部の抵抗値の変化として出力する請求項1乃至3の何れか一項に記載の電池パック。
【請求項5】
前記電池を収容する筐体を有し、
前記センサは、前記筐体に貼り付けられている請求項1乃至の何れか一項に記載の電池パック。
【請求項6】
前記センサは、前記筐体の上面及び/又は下面の中央部に貼り付けられている請求項に記載の電池パック。
【請求項7】
前記センサは、前記筐体の上面及び/又は下面の端部に貼り付けられている請求項又はに記載の電池パック。
【請求項8】
前記センサは、前記筐体の上面及び/又は下面の角部に貼り付けられている請求項乃至の何れか一項に記載の電池パック。
【請求項9】
前記筐体は、
外部出力端子を封止する封止部を備え、
前記センサは、前記封止部に貼り付けられている請求項に記載の電池パック。
【請求項10】
電子部品が実装された回路基板、及び前記電池を収容する筐体を有し、
前記センサは、前記回路基板に貼り付けられ、前記電子部品と共に気密封止されている請求項1乃至の何れか一項に記載の電池パック。
【請求項11】
前記電池の温度情報を取得する温度センサを有する請求項1乃至10の何れか一項に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器等に用いられる電池パックにおいて、電池パック内の電池の寿命の低下等に起因して電池が膨張し、液漏れ等を引き起こす場合がある。そこで、電池パックにおいて、電池の膨張を検出することは重要であり、電池の膨張を検出する様々な装置が提案されている。
【0003】
一例として、リチウム2次電池の内側空間に配置したひずみゲージにより内部圧力を検出し、検出した内部圧力を表示器に表示する装置が挙げられる。この装置では、表示された内部圧力を監視することにより、リチウム2次電池が正常であるか異常であるかを判定することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-289265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来提案されていた装置では、電池の膨張を精度よく検出することが困難であった。又、電池の膨張以外にも電池の様々な状態(例えば、電池の収縮等)を精度よく検出するニーズが存在する。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、電池の状態を精度よく検出することが可能な電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本電池パックは、電池と、前記電池の状態を検出するセンサと、を備え、前記センサは、絶縁層と、前記絶縁層の一方の側に長手方向を第1方向に向けて並置された互いに電気的に接続されていない複数の第1抵抗部、及び前記絶縁層の他方の側に長手方向を前記第1方向と交差する第2方向に向けて並置された互いに電気的に接続されていない複数の第2抵抗部、を含む抵抗体と、前記絶縁層の一方の側において、各々の前記第1抵抗部を挟んで前記第1方向の両側に配置され、各々の前記第1抵抗部の両端部に接続された1対の第1電極と、前記絶縁層の他方の側において、各々の前記第2抵抗部を挟んで前記第2方向の両側に配置され、各々の前記第2抵抗部の両端部に接続された1対の第2電極と、を有し、前記第1抵抗部及び前記第2抵抗部は、α-Crを主成分とするCr混相膜から形成され、前記電池の状態を前記抵抗体の抵抗値の変化として検出する。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、電池の状態を精度よく検出することが可能な電池パックを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態に係る電池パックを例示する分解斜視図である。
図2】第1の実施の形態に係る電池パックに搭載されるひずみゲージを例示する平面図である。
図3】第1の実施の形態に係る電池パックに搭載されるひずみゲージを例示する断面図である。
図4】第1の実施の形態に係る電池パックに搭載される回路基板について説明するブロック図である。
図5】第2の実施の形態に係る電池パックを例示する分解斜視図(その1)である。
図6】第2の実施の形態に係る電池パックに搭載される回路基板について説明するブロック図である。
図7】第2の実施の形態に係る電池パックを例示する分解斜視図(その2)である。
図8】第2の実施の形態の変形例に係る電池パックに搭載されるセンサを例示する平面図である。
図9】第2の実施の形態の変形例に係る電池パックに搭載されるセンサを例示する断面図である。
図10】第3の実施の形態に係る電池パックに搭載されるセンサを例示する平面図である。
図11】第3の実施の形態に係る電池パックに搭載されるセンサを例示する断面図である。
図12】第3の実施の形態の変形例に係る電池パックに搭載されるセンサを例示する平面図である。
図13】第4の実施の形態に係る電池パックに搭載されるセンサを例示する平面図である。
図14】第4の実施の形態に係る電池パックに搭載されるセンサを例示する断面図である。
図15】第5の実施の形態に係る電池パックを例示する斜視図である。
図16】第6の実施の形態に係る電池パックを例示する模式図である。
図17】第6の実施の形態に係る電池パックを例示するブロック図である。
図18】電池の膨張時に電池パックの短手方向に発生するひずみのシミュレーション結果である。
図19】電池の膨張時に電池パックの長手方向に発生するひずみのシミュレーション結果である。
図20】電池の膨張時に電池パックの斜め45度方向に発生するひずみのシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
なお、以下の各実施の形態や変形例では、主に電地の膨張を検出する例を示すが、これには限定されず、各実施の形態や変形例に係るひずみゲージやセンサは、電池の様々な状態を検出することができる。電池の様々な状態とは、電池の膨張以外には、例えば、電池の収縮、凸部や凹部の有無、形状分布、温度等が挙げられる。
【0012】
〈第1の実施の形態〉
図1は、第1の実施の形態に係る電池パックを例示する分解斜視図である。図1を参照するに、電池パック1は、筐体2と、複数の電池3と、回路基板4と、外部出力端子5と、ひずみゲージ6とを有している。電池パック1は、パーソナルコンピュータやスマートフォン等の各種電子機器や携帯端末等に広く用いることができる。
【0013】
筐体2は、電池3、回路基板4、及び外部出力端子5を収容する部材であり、例えば樹脂により形成された下部材2Aと上部材2Bとを有している。電池3は、例えば、リチウムイオン電池等の2次電池であり、適宜並列及び/又は直列に接続されて下部材2A上に複数個配列されている。なお、図1では6個の電池3を図示しているが、電池3の個数は必要に応じて適宜決定することができる。
【0014】
回路基板4は、外部出力端子5や図示しない電子部品等を実装するための基板であり、下部材2A上に固定されている。外部出力端子5は、電池パック1と外部の装置等とを接続するためのコネクタであり、回路基板4に実装されている。外部出力端子5には、電池3の電圧を出力する端子や、ひずみゲージ6の検出結果を出力する端子や、電池3の充電に用いる端子等を適宜含めることができる。
【0015】
ひずみゲージ6は、電池3の膨張(電池3の膨張の有無や膨張の程度)を検出するセンサであり、例えば、上部材2Bの内面に貼り付けられている。但し、ひずみゲージ6は、電池3の膨張の程度を検出するのに適した任意の位置に配置することができる。ひずみゲージ6を下部材2Aや上部材2Bに埋め込むことも可能である。
【0016】
なお、図1は分解斜視図であるが、下部材2A上に、電池3、回路基板4、及び外部出力端子5を収容するように上部材2Bを固定することで、電池パック1が完成する。上部材2Bには、外部出力端子5の一部を筐体2の外部に露出させる切り欠き部2Cが設けられている。
【0017】
電池パック1において、電池3の電圧は、外部出力端子5から出力可能である。又、電池3は、外部出力端子5を介して外部の充電装置により充電可能である。又、ひずみゲージ6の検出した情報(電池3の膨張の程度を示す情報)は、外部出力端子5から出力可能である。
【0018】
図2は、第1の実施の形態に係る電池パックに搭載されるひずみゲージを例示する平面図である。図3は、第1の実施の形態に係る電池パックに搭載されるひずみゲージを例示する断面図であり、図2のA-A線に沿う断面を示している。図2及び図3を参照するに、ひずみゲージ6は、基材10と、抵抗体30と、端子部41とを有している。ひずみゲージ6は、例えば、基材10の下面10bに接着剤を塗布して筐体2の上部材2Bの内面に貼り付けることができる。
【0019】
なお、本実施の形態では、便宜上、ひずみゲージ6において、基材10の抵抗体30が設けられている側を上側又は一方の側、抵抗体30が設けられていない側を下側又は他方の側とする。又、各部位の抵抗体30が設けられている側の面を一方の面又は上面、抵抗体30が設けられていない側の面を他方の面又は下面とする。但し、ひずみゲージ6は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。又、平面視とは対象物を基材10の上面10aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を基材10の上面10aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0020】
基材10は、抵抗体30等を形成するためのベース層となる絶縁性の部材であり、可撓性を有する。基材10の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm~500μm程度とすることができる。特に、基材10の厚さが5μm~200μmであると、抵抗体30のひずみ感度誤差を少なくすることができる点で好ましい。
【0021】
基材10は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成することができる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
【0022】
ここで、『絶縁樹脂フィルムから形成する』とは、基材10が絶縁樹脂フィルム中にフィラーや不純物等を含有することを妨げるものではない。基材10は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成しても構わない。
【0023】
但し、基材10が可撓性を有する必要がない場合には、基材10に、SiO、ZrO(YSZも含む)、Si、Si、Al(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO、BaTiO)等の材料を用いても構わない。
【0024】
抵抗体30は、基材10上に所定のパターンで形成された薄膜であり、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。抵抗体30は、基材10の上面10aに直接形成されてもよいし、基材10の上面10aに他の層を介して形成されてもよい。なお、図2では、便宜上、抵抗体30を梨地模様で示している。
【0025】
抵抗体30は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成することができる。すなわち、抵抗体30は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成することができる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0026】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、CrN等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでもよい。
【0027】
抵抗体30の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.05μm~2μm程度とすることができる。特に、抵抗体30の厚さが0.1μm以上であると、抵抗体30を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する点で好ましい。又、抵抗体30の厚さが1μm以下であると、抵抗体30を構成する膜の内部応力に起因する膜のクラックや基材10からの反りを低減できる点で更に好ましい。
【0028】
例えば、抵抗体30がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα-Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、ゲージ特性の安定性を向上することができる。又、抵抗体30がα-Crを主成分とすることで、ひずみゲージ6のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。ここで、主成分とは、対象物質が抵抗体を構成する全物質の50質量%以上を占めることを意味するが、ゲージ特性を向上する観点から、抵抗体30はα-Crを80重量%以上含むことが好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0029】
端子部41は、抵抗体30の両端部から延在しており、平面視において、抵抗体30よりも拡幅して略矩形状に形成されている。端子部41は、ひずみにより生じる抵抗体30の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極であり、例えば、外部接続用のフレキシブル基板やリード線等が接合される。
【0030】
抵抗体30は、例えば、端子部41の一方からジグザグに折り返しながら延在して他方の端子部41に接続されている。端子部41の上面を、端子部41よりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。なお、抵抗体30と端子部41とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成することができる。
【0031】
抵抗体30を被覆し端子部41を露出するように基材10の上面10aにカバー層60(絶縁樹脂層)を設けても構わない。カバー層60を設けることで、抵抗体30に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層60を設けることで、抵抗体30を湿気等から保護することができる。なお、カバー層60は、端子部41を除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
【0032】
カバー層60は、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂から形成することができる。カバー層60は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層60の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、2μm~30μm程度とすることができる。
【0033】
電池パック1において、電池3が膨張すると、それに対応して下部材2Aや上部材2Bが変形する。ひずみゲージ6は、電池3の膨張(電池3の膨張の有無や膨張の程度)を抵抗体30の抵抗値の変化として検出し、一対の電極である端子部41から出力することができる。
【0034】
なお、電池3が膨張すると、ひずみゲージ6の抵抗体30が細く長くなり抵抗値が増える。又、電池3が収縮すると、ひずみゲージ6の抵抗体が太く短くなり抵抗値が減る。従って、ひずみゲージ6の抵抗体の抵抗値の増減を監視することで、電池3が膨張しているか収縮しているかを区別できる。
【0035】
ひずみゲージ6を製造するためには、まず、基材10を準備し、基材10の上面10aに図2に示す平面形状の抵抗体30及び端子部41を形成する。抵抗体30及び端子部41の材料や厚さは、前述の通りである。抵抗体30と端子部41とは、同一材料により一体に形成することができる。
【0036】
抵抗体30及び端子部41は、例えば、抵抗体30及び端子部41を形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜し、フォトリソグラフィによってパターニングすることで形成できる。抵抗体30及び端子部41は、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法や蒸着法、アークイオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等を用いて成膜してもよい。
【0037】
ゲージ特性を安定化する観点から、抵抗体30及び端子部41を成膜する前に、下地層として、基材10の上面10aに、例えば、コンベンショナルスパッタ法により膜厚が1nm~100nm程度の機能層を真空成膜することが好ましい。なお、機能層は、機能層の上面全体に抵抗体30及び端子部41を形成後、フォトリソグラフィによって抵抗体30及び端子部41と共に図2に示す平面形状にパターニングされる。
【0038】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である抵抗体30の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層は、更に、基材10に含まれる酸素や水分による抵抗体30の酸化を防止する機能や、基材10と抵抗体30との密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0039】
基材10を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むため、特に抵抗体30がCrを含む場合、Crは自己酸化膜を形成するため、機能層が抵抗体30の酸化を防止する機能を備えることは有効である。
【0040】
機能層の材料は、少なくとも上層である抵抗体30の結晶成長を促進する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0041】
上記の合金としては、例えば、FeCr、TiAl、FeNi、NiCr、CrCu等が挙げられる。又、上記の化合物としては、例えば、TiN、TaN、Si、TiO、Ta、SiO等が挙げられる。
【0042】
機能層は、例えば、機能層を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にAr(アルゴン)ガスを導入したコンベンショナルスパッタ法により真空成膜することができる。コンベンショナルスパッタ法を用いることにより、基材10の上面10aをArでエッチングしながら機能層が成膜されるため、機能層の成膜量を最小限にして密着性改善効果を得ることができる。
【0043】
但し、これは、機能層の成膜方法の一例であり、他の方法により機能層を成膜してもよい。例えば、機能層の成膜の前にAr等を用いたプラズマ処理等により基材10の上面10aを活性化することで密着性改善効果を獲得し、その後マグネトロンスパッタ法により機能層を真空成膜する方法を用いてもよい。
【0044】
機能層の材料と抵抗体30及び端子部41の材料との組み合わせは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、機能層としてTiを用い、抵抗体30及び端子部41としてα-Cr(アルファクロム)を主成分とするCr混相膜を成膜することが可能である。
【0045】
この場合、例えば、Cr混相膜を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にArガスを導入したマグネトロンスパッタ法により、抵抗体30及び端子部41を成膜することができる。或いは、純Crをターゲットとし、チャンバ内にArガスと共に適量の窒素ガスを導入し、反応性スパッタ法により、抵抗体30及び端子部41を成膜してもよい。
【0046】
これらの方法では、Tiからなる機能層がきっかけでCr混相膜の成長面が規定され、安定な結晶構造であるα-Crを主成分とするCr混相膜を成膜できる。又、機能層を構成するTiがCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性が向上する。例えば、ひずみゲージ6のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。なお、機能層がTiから形成されている場合、Cr混相膜にTiやTiN(窒化チタン)が含まれる場合がある。
【0047】
なお、抵抗体30がCr混相膜である場合、Tiからなる機能層は、抵抗体30の結晶成長を促進する機能、基材10に含まれる酸素や水分による抵抗体30の酸化を防止する機能、及び基材10と抵抗体30との密着性を向上する機能の全てを備えている。機能層として、Tiに代えてTa、Si、Al、Feを用いた場合も同様である。
【0048】
このように、抵抗体30の下層に機能層を設けることにより、抵抗体30の結晶成長を促進することが可能となり、安定な結晶相からなる抵抗体30を作製できる。その結果、ひずみゲージ6において、ゲージ特性の安定性を向上することができる。又、機能層を構成する材料が抵抗体30に拡散することにより、ひずみゲージ6において、ゲージ特性を向上することができる。
【0049】
抵抗体30及び端子部41を形成後、必要に応じ、基材10の上面10aに、抵抗体30を被覆し端子部41を露出するカバー層60を設けることで、ひずみゲージ6が完成する。カバー層60は、例えば、基材10の上面10aに、抵抗体30を被覆し端子部41を露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱して硬化させて作製することができる。カバー層60は、基材10の上面10aに、抵抗体30を被覆し端子部41を露出するように液状又はペースト状の熱硬化性の絶縁樹脂を塗布し、加熱して硬化させて作製してもよい。
【0050】
図4は、第1の実施の形態に係る電池パックに搭載される回路基板について説明するブロック図である。図4を参照するに、ひずみゲージ6は、回路基板4に実装されたアナログフロントエンド部7に接続され、アナログフロントエンド部7の出力が外部出力端子5に接続されている。これにより、ひずみゲージ6の検出した情報(電池3の膨張の程度を示す情報)は、外部出力端子5からデジタル信号として出力可能となる。
【0051】
なお、回路基板4に他の機能を有する回路(電子部品等)が搭載されてもよい。他の機能を有する回路とは、例えば、電池3の電圧監視回路、保護回路、電流検出回路等である。
【0052】
ひずみゲージ6の1対の端子部41は、例えば、フレキシブル基板やリード線等を用いて、アナログフロントエンド部7に接続されている。
【0053】
アナログフロントエンド部7は、例えば、ブリッジ回路、増幅器、アナログ/デジタル変換回路(A/D変換回路)、外部通信機能(例えば、IC等のシリアル通信機能)等を備えている。アナログフロントエンド部7は、温度補償回路を備えていてもよい。アナログフロントエンド部7は、IC化されていてもよいし、個別部品により構成されていてもよい。
【0054】
アナログフロントエンド部7では、例えば、ひずみゲージ6の1対の端子部41は、ブリッジ回路に接続される。すなわち、ブリッジ回路の1辺が1対の端子部41間の抵抗体30で構成され、他の3辺が固定抵抗で構成される。これにより、ブリッジ回路の出力として、抵抗体30の抵抗値に対応した電圧(アナログ信号)を得ることができる。
【0055】
ブリッジ回路から出力された電圧は、増幅器で増幅された後、A/D変換回路によりデジタル信号に変換され、外部出力端子5から出力可能とされる。アナログフロントエンド部7が温度補償回路を備えている場合には、温度補償されたデジタル信号が外部出力端子5から出力可能とされる。
【0056】
例えば、電池パック1において、電池3の寿命の低下等に起因して電池3が膨張し、液漏れ等を引き起こす場合がある。そこで、電池パック1では電池3の膨張をひずみゲージ6で検出し、検出結果(電池3の膨張の程度を示す情報)をアナログフロントエンド部7からのデジタル信号として、外部出力端子5から出力している。
【0057】
例えば、電池パック1の外部において、外部出力端子5に充電回路を接続することが可能である。この場合、接続された充電回路は、アナログフロントエンド部7からのデジタル信号に基づいて、充電電流を多くしたり少なくしたりすることができる。又、接続された充電回路は、電池3の膨張の程度が許容値を超えていると判定した場合に、充電を停止して警告音を発したり『充電不能』等を表示したりすることができる。
【0058】
又、電池パック1の内部にCPU(Central Processing Unit)等を含む制御回路を設けることも可能である。制御回路は、例えば、回路基板4に実装することができる。この場合、例えば、電池3の正極側及び/又は負極側のラインに電流遮断スイッチを挿入すると共に、アナログフロントエンド部7が出力するデジタル信号を制御回路に入力する。制御回路は、アナログフロントエンド部7からのデジタル信号に基づいて、電池3の膨張の程度が許容値を超えていると判定した場合には、電流遮断スイッチを遮断して電池パック1の動作を停止することができる。
【0059】
このように、電池パック1では、ひずみゲージ6を設けたことで、電池3の膨張の程度を抵抗体30の抵抗値の変化として検出することができる。これにより、電池3の膨張の程度に応じて充電電流の多少を制御したり、電池パック1の動作を停止したりすることができる。その結果、電池3の膨張の程度が許容値を超えている場合に、無理に充電したり、使用を継続したりすることを防止可能となり、電池パック1の破損を回避すると共に電池パック1の安全性を向上できる。
【0060】
特に、抵抗体30がCr混相膜から形成されている場合は、抵抗体30がCu-NiやNi-Crから形成されている場合と比べ、電池3の膨張に対する抵抗値の感度(同一の電池3の膨張に対する抵抗体30の抵抗値の変化量)が大幅に向上する。抵抗体30がCr混相膜から形成されている場合、電池3の膨張に対する抵抗値の感度は、抵抗体30がCu-NiやNi-Crから形成されている場合と比べ、おおよそ5~10倍程度となる。そのため、抵抗体30をCr混相膜から形成することで、電池3の膨張を精度よく検出することが可能となる。
【0061】
又、電池3の膨張に対する抵抗値の感度が高いことで、電池3の膨張の程度により行う動作を分けることができる。例えば、電池3の膨張が小であることを検出した場合には所定の動作を行い、電池3の膨張が中であることを検出した場合には他の動作を行い、電池3の膨張が大であることを検出した場合には更に他の動作を行うような制御の実現が可能となる。
【0062】
又、電池3の膨張に対する抵抗値の感度が高いと、S/Nの高い信号を得ることができる。そのため、アナログフロントエンド部7のA/D変換回路において平均化を行う回数を低減しても精度よく信号検出ができる。A/D変換回路において平均化を行う回数を低減することで、1回のA/D変換に必要な時間を短縮できる。
【0063】
又、抵抗体30がCr混相膜から形成されている場合は、ひずみゲージ6を小型化できるため、小型の電池パック1にも使用可能となる。又、ひずみゲージ6を小型化できるため、配置する場所の選択の自由度を向上することが可能となる。
【0064】
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、電池パックに複数のひずみゲージを搭載する例を示す。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0065】
図5は、第2の実施の形態に係る電池パックを例示する分解斜視図(その1)である。図5を参照するに、電池パック1Aは、複数のひずみゲージ6を有している点が、電池パック1(図1参照)と相違する。
【0066】
電池パック1Aでは、各々の電池3に対してひずみゲージ6が割り当てられている。例えば、図5に示すように、各々の電池3の表面に、ひずみゲージ6を1つずつ貼り付けることができる。但し、各々の電池3に対して複数のひずみゲージ6を貼り付けてもよい。又、各々のひずみゲージ6が各々の電池3に対応する位置にくるように、各々のひずみゲージ6を上部材2Bの内面に貼り付けてもよいし、下部材2Aや上部材2Bに埋め込んでもよい。
【0067】
図6は、第2の実施の形態に係る電池パックに搭載される回路基板について説明するブロック図である。図6を参照するに、各々のひずみゲージ6は、回路基板4に実装されたアナログフロントエンド部7Aに接続され、アナログフロントエンド部7Aの出力が外部出力端子5に接続されている。これにより、各々のひずみゲージ6の検出した情報(各々の電池3の膨張の程度を示す情報)は、外部出力端子5から出力可能となる。
【0068】
アナログフロントエンド部7Aは、例えば、入力信号選択スイッチが追加された点がアナログフロントエンド部7と相違する。各々のひずみゲージ6の1対の端子部41は、アナログフロントエンド部7Aの入力信号選択スイッチに接続され、入力信号選択スイッチにより何れか1つのひずみゲージ6の1対の端子部41が選択される。入力信号選択スイッチで選択された1対の端子部41は、ブリッジ回路に接続される。
【0069】
すなわち、ブリッジ回路の1辺が入力信号選択スイッチで選択された1対の端子部41間の抵抗体30で構成され、他の3辺が固定抵抗で構成される。これにより、ブリッジ回路の出力として、入力信号選択スイッチで選択された1対の端子部41間の抵抗体30の抵抗値に対応した電圧(アナログ信号)を得ることができる。
【0070】
ブリッジ回路から出力された電圧は、増幅器で増幅された後、A/D変換回路によりデジタル信号に変換され、外部出力端子5から出力可能とされる。アナログフロントエンド部7が温度補償回路を備えている場合には、温度補償されたデジタル信号が外部出力端子5から出力可能とされる。
【0071】
アナログフロントエンド部7Aは、制御部8に接続されており、アナログフロントエンド部7Aの入力信号選択スイッチは、制御部8から制御可能である。制御部8の指令により、アナログフロントエンド部7Aの入力信号選択スイッチを高速で切り替えることで、全てのひずみゲージ6の1対の端子部41間の抵抗体30の抵抗値に対応するデジタル信号を極短時間で外部出力端子5から出力することができる。
【0072】
制御部8は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、メインメモリ等を含む構成とすることができる。この場合、制御部8の各種機能は、ROM等に記録されたプログラムがメインメモリに読み出されてCPUにより実行されることによって実現できる。但し、制御部8の一部又は全部は、ハードウェアのみにより実現されてもよい。又、制御部8は、物理的に複数の装置等により構成されてもよい。
【0073】
なお、制御部8に、第1の実施の形態で例示した、電流遮断スイッチを遮断して電池パックの動作を停止する機能等を盛り込んでも構わない。
【0074】
このように、電池パック1Aでは、各々の電池3にひずみゲージ6を割り当てたことで、各々の電池3の膨張の程度を抵抗体30の抵抗値の変化として個別に検出することができる。すなわち、より精度の高い電池の膨張検出が可能となる。
【0075】
なお、図7に示す電池パック1Bのように、各々の電池3の何れか一方の端部に、ひずみゲージ6を1つずつ貼り付けてもよい。図7の場合には、電池パック1Bの限られた内側空間を占有することなく、電池3の僅かな部分を有効利用した省スペースでの検出が可能となり、電池パック1Bの小型化及び軽量化が可能となる。
【0076】
前述のように、抵抗体30がCr混相膜から形成されている場合は、抵抗体30がCu-NiやNi-Crから形成されている場合と比べ、電池3の膨張に対する抵抗値の感度(同一の電池3の膨張に対する抵抗体30の抵抗値の変化量)が大幅に向上する。そのため、抵抗体30をCr混相膜から形成する場合には、電池パック1Bの更なる小型化及び軽量化が可能となる。
【0077】
〈第2の実施の形態の変形例〉
第2の実施の形態の変形例では、第2の実施の形態とは構造の異なるセンサの例を示す。なお、第2の実施の形態の変形例において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0078】
図8は、第2の実施の形態の変形例に係る電池パックに搭載されるセンサを例示する平面図である。図9は、第2の実施の形態の変形例に係る電池パックに搭載されるセンサを例示する断面図であり、図8のB-B線に沿う断面を示している。
【0079】
図8及び図9を参照するに、センサ6Aは、各々の電池3に対して割り当てられた個別センサ50(ひずみゲージ)の集合体である。従って、センサ6Aは、電池3の個数分の個別センサ50を有している。但し、センサ6Aは、電池3の個数分よりも多い個別センサ50を有し、各々の電池3に対して複数の個別センサ50を割り当ててもよい。
【0080】
個別センサ50は、各々の個別センサ50に共通の基材10と、各々の個別センサ50毎に設けられた抵抗体30及び端子部41とを有している。各々の個別センサ50は、同一の基材10の一方の側に配列されている。
【0081】
各々の個別センサ50の抵抗体30を被覆し端子部41を露出するように基材10の上面10aに第1の実地の形態で説明したカバー層60を設けても構わない。カバー層60を設けることで、各々の個別センサ50の抵抗体30に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層60を設けることで、各々の個別センサ50の抵抗体30を湿気等から保護することができる。なお、カバー層60は、端子部41を除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
【0082】
センサ6Aは、例えば、各々の個別センサ50が各々の電池3に対応する位置にくるように、縦横に配列された電池3の表面に貼り付けてもよいし、上部材2Bの内面に貼り付けてもよいし、下部材2Aや上部材2Bに埋め込んでもよい。
【0083】
このように、単体のひずみゲージ6を複数個用いる形態に代えて、ひずみゲージ6に対応する個別センサ50が複数個配列されたセンサ6Aを用いても構わない。
【0084】
〈第3の実施の形態〉
第3の実施の形態では、第1及び第2の実施の形態とは構造の異なるセンサの例を示す。なお、第3の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0085】
図10は、第3の実施の形態に係る電池パックに搭載されるセンサを例示する平面図である。図11は、第3の実施の形態に係る電池パックに搭載されるセンサを例示する断面図であり、図10のC-C線に沿う断面を示している。
【0086】
図10及び図11を参照するに、センサ6Bは、抵抗体30Bと、端子部41B及び42Bとを有している。
【0087】
抵抗体30Bは、基材10を介して積層された複数の抵抗部31B及び32Bを含んでいる。すなわち、抵抗体30Bは、複数の抵抗部31B及び32Bの総称であり、抵抗部31B及び32Bを特に区別する必要がない場合には抵抗体30Bと称する。なお、図10では、便宜上、抵抗部31B及び32Bを梨地模様で示している。
【0088】
複数の抵抗部31Bは、基材10の上面10aに、長手方向をX方向に向けて所定間隔でY方向に並置された薄膜である。複数の抵抗部32Bは、基材10の下面10bに、長手方向をY方向に向けて所定間隔でX方向に並置された薄膜である。但し、複数の抵抗部31Bと複数の抵抗部32Bとは平面視で直交している必要はなく、交差していればよい。
【0089】
抵抗体30Bの幅は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.1μm~1000μm(1mm)程度とすることができる。隣接する抵抗体30Bのピッチは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、1mm~100mm程度とすることができる。なお、図10及び図11では、抵抗部31Bを10本、抵抗部32Bを8本図示しているが、抵抗部31B及び32Bの本数は必要に応じて適宜変更することができる。抵抗体30Bの材料、厚さ、製造方法等は、抵抗体30と同様とすることができる。
【0090】
端子部41Bは、基材10の上面10aにおいて、各々の抵抗部31Bの両端部から延在しており、平面視において、抵抗部31Bよりも拡幅して略矩形状に形成されている。端子部41Bは、電池3の膨張により生じる抵抗部31Bの抵抗値の変化を外部に出力するための1対の電極であり、例えば、外部接続用のフレキシブル基板やリード線等が接合される。端子部41Bの上面を、端子部41Bよりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。なお、抵抗部31Bと端子部41Bとは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成することができる。
【0091】
端子部42Bは、基材10の下面10bにおいて、各々の抵抗部32Bの両端部から延在しており、平面視において、抵抗部32Bよりも拡幅して略矩形状に形成されている。端子部42Bは、電池3の膨張により生じる抵抗部32Bの抵抗値の変化を外部に出力するための1対の電極であり、例えば、外部接続用のフレキシブル基板やリード線等が接合される。端子部42Bの上面を、端子部42Bよりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。なお、抵抗部32Bと端子部42Bとは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成することができる。
【0092】
なお、基材10を貫通する貫通配線(スルーホール)を設け、端子部41B及び42Bを基材10の上面10a側又は下面10b側に集約してもよい。
【0093】
抵抗部31Bを被覆し端子部41Bを露出するように基材10の上面10aに第1の実地の形態で説明したカバー層60を設けても構わない。又、抵抗部32Bを被覆し端子部42Bを露出するように基材10の下面10bに第1の実地の形態で説明したカバー層60を設けても構わない。カバー層60を設けることで、抵抗部31B及び32Bに機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層60を設けることで、抵抗部31B及び32Bを湿気等から保護することができる。なお、カバー層60は、端子部41B及び42Bを除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
【0094】
センサ6Bの全ての端子部41B及び42Bは、例えば、図6に示すアナログフロントエンド部7Aの入力信号選択スイッチに接続され、第2の実施の形態と同様に動作する。すなわち、制御部8の指令により、アナログフロントエンド部7Aの入力信号選択スイッチを高速で切り替えることで、センサ6Bの全ての端子部41B及び42Bの抵抗値に対応するデジタル信号を極短時間で外部出力端子5から出力することができる。
【0095】
外部出力端子5から出力するデジタル信号は、電池3の膨張の程度を示す情報と共に、電池3の膨張した位置を示す情報を含んでいる。そのため、外部出力端子5に接続された装置等は、例えば、図10の最下部に位置する抵抗部31Bの抵抗値と、左から2番目に位置する抵抗部32Bの抵抗値が変化した場合には、図10に示すE部が膨張したことを検出できる。
【0096】
又、外部出力端子5に接続された装置等は、最下部に位置する抵抗部31Bの抵抗値の変化の大小と、左から2番目に位置する抵抗部32Bの抵抗値の変化の大小とに基づいて、図10に示すE部における膨張の程度を検出できる。
【0097】
又、外部出力端子5に接続された装置等は、複数の抵抗部31Bの抵抗値や複数の抵抗部32Bの抵抗値が変化した場合には、電池3が複数の位置で膨張したことを検出できる。
【0098】
なお、電池3の膨張の程度が小さい場合等には、抵抗部31B及び抵抗部32Bのうち、電池3に近い方の抵抗部のみが押圧され、電池3から遠い方の抵抗部は押圧されない場合がある。この場合には、電池3に近い方の抵抗部の1対の電極間の抵抗値のみが電池3の膨張に応じて連続的に変化するが、この場合も、外部出力端子5に接続された装置等は、電池3に近い方の抵抗部の抵抗値の変化の大小に基づいて、電池3の膨張の程度を検出できる。
【0099】
つまり、電池3の膨張により抵抗部31B及び/又は抵抗部32Bが押圧されると、押圧された抵抗部(抵抗部31B及び/又は抵抗部32B)の1対の電極間の抵抗値が押圧力の大きさに応じて連続的に変化する。そして、外部出力端子5に接続された装置等は、抵抗部31Bと抵抗部32Bの一方が押圧されたか両方が押圧されたかにかかわらず、押圧された抵抗部の抵抗値の変化の大小に基づいて、押圧力の大きさ(すなわち、電池3の膨張)を検出することができる。
【0100】
センサ6Bは、例えば、縦横に配列された電池3の表面に貼り付けてもよいし、上部材2Bの内面に貼り付けてもよいし、下部材2Aや上部材2Bに埋め込んでもよい。
【0101】
このように、第3の実地の形態では、長手方向を第1方向に向けて並置された複数の抵抗部31Bと、長手方向を第1方向と交差する第2方向に向けて並置された複数の抵抗部32Bとを含む抵抗体30Bを有するセンサ6Bを用いている。
【0102】
これにより、電池3が膨張する位置と膨張の程度とを含む3次元情報を精度よく取得することができる。すなわち、電池パック全体の応力情報が得られ、応力集中している箇所を詳細に把握できるので、電池3の膨張を精度よく検出することが可能となる。抵抗部31B及び32BがCr混相膜から形成されていると特に好ましい点は、第1の実施の形態と同様である。
【0103】
〈第3の実施の形態の変形例〉
第3の実施の形態の変形例では、センサの抵抗体をジグザグパターンにする例を示す。なお、第3の実施の形態の変形例において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0104】
図12は、第3の実施の形態の変形例に係る電池パックに搭載されるセンサを例示する平面図であり、図10に対応する平面を示している。図12を参照するに、センサ6Cは、抵抗体30Bが抵抗体30Cに置換された点が、センサ6B(図10及び図11参照)と相違する。
【0105】
抵抗体30Cは、抵抗部31C及び32Cを含んでいる。抵抗部31Cは、1対の端子部41Bの間に形成されたジグザグのパターンである。又、抵抗部32Cは、1対の端子部42Bの間に形成されたジグザグのパターンである。抵抗体30Cの材料、厚さ、製造方法等は、抵抗体30と同様とすることができる。
【0106】
このように、抵抗部31C及び32Cをジグザグパターンにすることで、直線状のパターンにした場合と比べて、1対の端子部41B間の抵抗値及び1対の端子部42B間の抵抗値を高くできる。その結果、電池3が膨張して抵抗部31C及び32Cが押圧された際の1対の端子部41B間の抵抗値の変化量及び1対の端子部42B間の抵抗値の変化量が大きくなり、電池3が膨張する位置と膨張の程度とを含む3次元情報を更に精度よく取得することができる。
【0107】
又、1対の端子部41B間の抵抗値及び1対の端子部42B間の抵抗値を高くできるため、センサ6Cを低消費電力化することが可能である。
【0108】
〈第4の実施の形態〉
第4の実施の形態では、第1~第3の実施の形態とは構造の異なるセンサの例を示す。なお、第4の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0109】
図13は、第4の実施の形態に係る電池パックに搭載されるセンサを例示する平面図である。図14は、第4の実施の形態に係る電池パックに搭載されるセンサを例示する断面図であり、図13のD-D線に沿う断面を示している。
【0110】
図13及び図14を参照するに、センサ6Dは、同一の基材10上に形成された、ひずみゲージ6と、温度センサである温度検出部6Tとを備えている。ひずみゲージ6と温度検出部6Tとは、互いに独立して配置されており、電気的に接続されていない。
【0111】
なお、図13及び図14では、紙面上側からひずみゲージ6、温度検出部6Tを配置しているが、これには限定されず、ひずみゲージ6、温度検出部6Tは任意の配置とすることができる。
【0112】
温度検出部6Tは、基材10上に形成された、金属層30Dと、金属層43と、電極40Dとを有している。
【0113】
金属層30Dは、基材10上にベタ状に形成された薄膜である。金属層30Dは、基材10の上面10aに直接形成されてもよいし、基材10の上面10aに他の層を介して形成されてもよい。金属層30Dの材料や厚さは、例えば、抵抗体30と同様とすることができる。
【0114】
金属層43は、金属層30D上に積層されたベタ状の薄膜である。金属層43の材料は、金属層30Dと異なる材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。金属層43の材料としては、例えば、Cu、Ni、Al、Ag、Au、Pt等、又は、これら何れかの金属の合金、これら何れかの金属の化合物、或いは、これら何れかの金属、合金、化合物を適宜積層した積層膜が挙げられる。金属層43の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.01μm~30μm程度とすることができる。
【0115】
金属層30Dと金属層43とは異なる材料により形成されているため、熱電対として機能することができる。金属層30D及び43をベタ状の薄膜とすることにより、ひずみの影響を低減して精度のよい温度検出が可能となる。
【0116】
電極40Dは、端子部41D上に金属層42Dが積層された積層構造とすることができる。端子部41Dは、金属層30Dの両端部から延在しており、平面視において、略矩形状に形成されている。金属層42Dの一方は、金属層43の一端部から延在しており、平面視において、端子部41Dの一方上に略矩形状に形成されている。金属層42Dの他方は、端子部41Dの他方上に略矩形状に形成されているが、金属層43とは電気的に接続されていない。
【0117】
電極40Dは、ひずみゲージ6の周辺温度の変化に応じて金属層30Dと金属層43との間に生じる電位差(熱起電力)を外部に出力するための一対の電極であり、例えば、外部接続用のリード線等が接合される。
【0118】
金属層30D及び43を被覆し電極40Dを露出するように基材10の上面10aに防湿層65を設けても構わない。防湿層65を設けることで、金属層30D及び43に対する湿気の影響を低減して精度のよい温度検出が可能となる。なお、防湿層65は、電極40Dを除くより広い領域を覆うように設けてもよい。
【0119】
防湿層65の材料は、金属層30D及び43に対する湿気の影響を低減できる材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ブチルゴム等が挙げられる。防湿層65の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、2μm~30μm程度とすることができる。
【0120】
なお、抵抗体30、端子部41、金属層30D、及び端子部41Dは便宜上別符号としているが、これらは同一工程において同一材料により一体に形成することができる。又、金属層42D及び金属層43は便宜上別符号としているが、これらは同一工程において同一材料により一体に形成することができる。
【0121】
例えば、図1図5において、ひずみゲージ6に代えて、ひずみゲージ6に温度検出機能を追加したセンサ6Dを用いてもよい。
【0122】
これにより、電池3の変形(膨張や収縮)に加え、電池3の温度情報を取得することができる。電池3の温度情報を外部出力端子5から出力して外部で監視することで、電池パック1の熱暴走等の回避が可能となる。
【0123】
図8及び図9に示すセンサ6A、図10及び図11に示すセンサ6B、図12に示すセンサ6Cの基材10上に、1つ又は複数の温度検出部6Tを形成することも可能である。この場合も上記と同様の効果を奏する。
【0124】
なお、以上は、ひずみゲージ6と温度検出部6Tとを同一の基材10上に形成する例を示したが、温度検出部6Tはひずみゲージ6とは別の基材上に設けても構わない。又、温度検出部6Tに代えて、汎用の温度センサ(熱電対、サーミスタ等)を用いてもよい。
【0125】
〈第5の実施の形態〉
第5の実施の形態では、電池パックの筐体の外側にひずみゲージを貼る例を示す。なお、第5の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0126】
図15は、第5の実施の形態に係る電池パックを例示する斜視図である。図15を参照するに、電池パック1Cは、CPU等が実装された回路基板4や電池3(図示せず)を収容する筐体2を有しており、筐体2の端部には、外部出力端子5を樹脂や低温ガラス等により封止した封止部9が設けられている。
【0127】
封止部9は、電池3が膨張すると僅かに変形する。そこで、封止部9の表面にひずみゲージ6を貼り付けることで、電池3の膨張を検出可能である。前述のように、抵抗体30がCr混相膜から形成されている場合は、抵抗体30がCu-NiやNi-Crから形成されている場合と比べ、電池3の膨張に対する抵抗値の感度(同一の電池3の膨張に対する抵抗体30の抵抗値の変化量)が大幅に向上する。そのため、抵抗体30をCr混相膜から形成することで、封止部9のような変形の少ない部分にひずみゲージ6を貼り付けた場合であっても、電池3の膨張を精度よく検出することが可能となる。
【0128】
例えば、薄型の物、厚みや大きさに制限のある物、額縁状のグリップセンサのような物に用いることができる。
【0129】
なお、ひずみゲージ6に代えて、図8及び図9に示すセンサ6A、図10及び図11に示すセンサ6B、図12に示すセンサ6C、図13に示すセンサ6Dを用いてもよい。この場合も上記と同様の効果を奏する。
【0130】
〈第6の実施の形態〉
第6の実施の形態では、ひずみゲージを封止する例を示す。なお、第6の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0131】
図16は、第6の実施の形態に係る電池パックを例示する模式図である。図17は、第6の実施の形態に係る電池パックを例示するブロック図である。
【0132】
図16及び図17を参照するに、電池パック1Dは、電池パック1等と同様に、筐体2と、複数の電池3と、回路基板4と、外部出力端子5と、ひずみゲージ6とを有している。
【0133】
電池パック1Dでは、ひずみゲージ6は、回路基板4に貼り付けられ、回路基板4に実装された外部出力端子5及びアナログフロントエンド部7と共に、樹脂や低温ガラス等からなる封止部9Dにより気密封止されている。回路基板4に電池3の電圧監視回路、保護回路、電流検出回路等が実装されている場合には、これらの回路も含めて、封止部9Dにより気密封止することができる。
【0134】
ひずみゲージ6の抵抗体30は、耐熱性に優れたCr混相膜から形成されていることが好ましい。ひずみゲージ6の抵抗体30がCr混相膜から形成されている場合、ひずみゲージ6は樹脂や低温ガラス等による封止が可能な耐熱性を備えており、ひずみゲージ6を樹脂や低温ガラス等からなる封止部9Dにより気密封止することにより、堅牢性を向上することができる。
【0135】
なお、ひずみゲージ6に代えて、図8及び図9に示すセンサ6A、図10及び図11に示すセンサ6B、図12に示すセンサ6C、図13に示すセンサ6Dを用いてもよい。この場合も上記と同様の効果を奏する。
【0136】
〈シミュレーション〉
有限要素法解析ソフトを用い、電池が膨張したときに、電池パックの筐体の短手方向に発生するひずみ、長手方向に発生するひずみ、及び斜め45度方向に発生するひずみのシミュレーションを行った。
【0137】
結果を図18図19、及び図20に示す。図18は、電池の膨張時に電池パックの短手方向に発生するひずみのシミュレーション結果である。図19は、電池の膨張時に電池パックの長手方向に発生するひずみのシミュレーション結果である。図20は、電池の膨張時に電池パックの斜め45度方向に発生するひずみのシミュレーション結果である。
【0138】
図18図20に示すように、シート型や箱型の電池パックにおいて、電池パックの筐体内に配置された電池の内部にガスが発生すると、電池が膨張し、電池パックの筐体の上面及び/又は下面の中央部が最も盛り上がる。そして、筐体の盛り上がった部分の近傍に引張(膨張)ひずみが発生する。
【0139】
電池パックの筐体の上面及び/又は下面の中央部では、最大で+500μεの引張ひずみが発生する。そこで、電池パックの筐体の上面及び/又は下面の中央部にひずみゲージ6を貼り付けることで、より確実に、かつ早期に電池パックの異常を発見することが可能となる。
【0140】
本明細書において、筐体の上面の中央部は、上面の面積を長手方向に2分する直線と短手方向に2分する直線の交点を中心として、上面の短手方向の長さの10%の長さを半径とする円を描いたとき、円の内側となる領域、と定義する。筐体の下面の中央部についても同様の定義である。
【0141】
又、電池パックの筐体の上面の中央部にひずみゲージを貼り付けるとは、ひずみゲージの全体が、上記の円の内側に存在すること、と定義する。電池パックの筐体の下面の中央部にひずみゲージを貼り付ける場合についても同様の定義である。
【0142】
又、電池パックの筐体の上面及び/又は下面の端部では、最大で-500μεの圧縮ひずみが発生する。そこで、電池パックの筐体の上面及び/又は下面の端部にひずみゲージ6を貼り付けることで、より確実に、かつ早期に電池パックの異常を発見することが可能となる。
【0143】
本明細書において、筐体の上面の端部とは、筐体の上面と各側面との境界となる辺から上面側に延伸した、上面の短手方向の長さの10%の幅を有する環状の領域、及び上面と各側面との境界となる辺から各側面側に延伸した、上面の短手方向の長さの10%の幅を有する環状の領域、と定義する。筐体の下面の端部についても同様の定義である。
【0144】
又、筐体の上面の端部にひずみゲージを貼り付けるとは、ひずみゲージの全体が、上記の上面側に延伸した環状の領域、各側面側に延伸した環状の領域の少なくとも一方の内側に存在すること、と定義する。電池パックの筐体の下面の端部にひずみゲージを貼り付ける場合についても同様の定義である。
【0145】
又、図20の場合には、電池パックの筐体の上面及び/又は下面の角部で、大きな圧縮ひずみが発生する。そこで、電池パックの筐体の上面及び/又は下面の角部にひずみゲージ6を貼り付けることで、より確実に、かつ早期に電池パックの異常を発見することが可能となる。この場合には、ひずみゲージ6の抵抗体30の長手方向を、ひずみ方向(電池パックの斜め45度方向)に合わせるように貼り付けることが好ましい。
【0146】
本明細書において、筐体の上面の角部とは、筐体の上面の各頂点を中心として、上面の短手方向の長さの10%の長さを半径とする扇形を描いたとき、扇形の内側となる領域、と定義する。筐体の下面の角部についても同様の定義である。
【0147】
又、筐体の上面の角部にひずみゲージを貼り付けるとは、ひずみゲージの全体が、上記の扇状の領域の少なくとも一つの内側に存在すること、と定義する。電池パックの筐体の下面の角部にひずみゲージを貼り付ける場合についても同様の定義である。
【0148】
なお、電池パックの筐体の上面及び/又は下面の中央部、端部、角部の何れか2つ以上にひずみゲージ6を貼り付けてもよい。又、電池パックの筐体の上面及び/又は下面の中央部、端部、角部の何れの場合も、ひずみゲージ6に代えて、図8及び図9に示すセンサ6A、図10及び図11に示すセンサ6B、図12に示すセンサ6C、図13に示すセンサ6Dを用いてもよい。この場合も上記と同様の効果を奏する。
【0149】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0150】
例えば、ひずみゲージは図2等に示す形態には限定されない。例えば、基材の一方の側に直線状に形成された複数の抵抗部を有し、各々の抵抗部が同一面上で交差して互いに導通しているひずみゲージを用いてもよい。より具体的には、基材の一方の側に直線状に形成された2つの抵抗部を有し、各々の抵抗部が同一面上で直交して互いに導通しているひずみゲージを用いることができる。又、基材の一方の側に直線状に形成された3つ以上の抵抗部を有し、各々の抵抗部が同一面上で互いのなす角が45度になるように交差して互いに導通しているひずみゲージを用いることができる。これにより、複数方向のひずみを選択的に測定することができる。
【0151】
又、センサ6Bでは、絶縁層である基材10の上面10aに抵抗部31Bを設け、下面10bに抵抗部32Bを設ける例を示したが、絶縁層の一方の側に抵抗部31Bを設け、他方の側に抵抗部32Bを設ける構造であれば、これには限定されない。例えば、基材10の上面10aに抵抗部31Bを設け、基材10の上面10aに抵抗部31Bを被覆する絶縁層を設け、絶縁層上に抵抗部32Bを設けてもよい。又、抵抗部31Bを設けた第1基材と、抵抗部32Bを設けた第2基材を作製し、抵抗部31Bと抵抗部32Bを内側に向けて、絶縁層を挟んで抵抗部31Bを設けた第1基材と抵抗部32Bを設けた第2基材を貼り合わせてもよい。又、抵抗部31Bを設けた第1基材と、抵抗部32Bを設けた第2基材を作製し、抵抗部31Bを設けた第1基材と抵抗部32Bを設けた第2基材を同一方向に積層してもよい。センサ6Cについても同様である。
【符号の説明】
【0152】
1、1A、1B、1C、1D 電池パック、2 筐体、2A 下部材、2B 上部材、2C 切り欠き部、3 電池、4 回路基板、5 外部出力端子、6 ひずみゲージ、6A、6B、6C、6D センサ、6T 温度検出部、7、7A アナログフロントエンド部、8 制御部、9、9D 封止部、10 基材、10a 基材の上面、10b 基材の下面、30、30B、30C 抵抗体、30D、42D、43 金属層、31B、31C、32B、32C 抵抗部、41、41B、42B、41D 端子部、50 個別センサ、60 カバー層、65 防湿層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20