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特許7189297バッテリパック、電動工具、及び電動工具セット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】バッテリパック、電動工具、及び電動工具セット
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/244 20210101AFI20221206BHJP
   H01M 50/213 20210101ALI20221206BHJP
   H01M 50/247 20210101ALI20221206BHJP
   H01M 50/271 20210101ALI20221206BHJP
   H01M 50/296 20210101ALI20221206BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H01M50/244 A
H01M50/213
H01M50/244 Z
H01M50/247
H01M50/271 S
H01M50/296
B25F5/00 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021163923
(22)【出願日】2021-10-05
(62)【分割の表示】P 2019151334の分割
【原出願日】2015-04-28
(65)【公開番号】P2022023095
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2015026325
(32)【優先日】2015-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 英二
(72)【発明者】
【氏名】小倉 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】梅村 卓也
(72)【発明者】
【氏名】田賀 秀行
(72)【発明者】
【氏名】石川 義博
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-073663(JP,A)
【文献】特開2018-078126(JP,A)
【文献】特開2019-145461(JP,A)
【文献】特開2014-235812(JP,A)
【文献】特開2013-196817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/244
H01M 50/213
H01M 50/247
H01M 50/271
H01M 50/296
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動工具に対して一方向からスライドすることにより連結される構成で、複数本のセルを備えるバッテリパックであって、
スライド方向と交差する交差方向に並ぶ複数のバッテリ側端子と、
前記複数のバッテリ側端子を上方から覆う蓋と、を備え、
前記蓋には、前記複数のバッテリ側端子がそれぞれ外部端子と接続することを許容するように前記スライド方向に延出する複数のスリットと、
前記電動工具に形成された突部の挿入を許容する挿入許容溝が形成され、
前記挿入許容溝は、前記挿入許容溝を有さない第2バッテリパックが誤って前記電動工具に挿入されることを防止するように、前記電動工具の前記突部に対応する構成になっており、前記蓋の上面から前記バッテリ側端子に向けて下方に凹みかつ前記複数のスリットの少なくとも1つの前記スリットの上方に設けられ、前記少なくとも1つのスリットを前記交差方向に跨って拡がるバッテリパック。
【請求項2】
請求項に記載のバッテリパックであって、
前記第2バッテリパックは、前記電動工具の定格出力よりも出力の大きいバッテリパックであるバッテリパック。
【請求項3】
請求項1または2に記載のバッテリパックであって、
前記挿入許容溝は、前記少なくとも1つのスリットよりも前記スライド方向において長いバッテリパック。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1つに記載のバッテリパックであって、
前記挿入許容溝は、前記少なくとも1つのスリットの前記交差方向の一方に隣接し前記少なくとも1つのスリットに沿って延出する第1溝側部と、前記少なくとも1つのスリットの前記交差方向の他方に隣接し前記少なくとも1つのスリットに沿って延出する第2溝側部を有するバッテリパック。
【請求項5】
請求項に記載のバッテリパックであって、
前記第1溝側部と前記第2溝側部は、前記少なくとも1つのスリットの前記スライド方向の全長に沿って形成されているバッテリパック。
【請求項6】
請求項またはに記載のバッテリパックであって、
前記挿入許容溝は、前記交差方向に沿って延出して前記第1溝側部と前記第2溝側部を連通する溝端部を有するバッテリパック。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1つに記載のバッテリパックであって、
前記バッテリ側端子の少なくとも1つは、上側において前記スライド方向に延出する上端子部と、前記上端子部の下側において前記スライド方向に延出する下端子部とを有するバッテリパック。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1つに記載のバッテリパックであって、
充電器に対して前記スライド方向にスライドすることにより連結される構成であって、
前記バッテリ側端子は、前記電動工具に連結される際に前記電動工具の複数の工具側端子に電気的に接続される複数の工具接続用端子と、
前記電動工具に連結される際に前記工具側端子には接続されず、かつ、前記充電器に連結される際には、前記充電器の充電器側端子に電気的に接続される少なくとも1つの充電器接続用端子を備えるバッテリパック。
【請求項9】
第1バッテリパックが一方向からスライドされて連結されかつ第2バッテリパックが連結されることを防止できる電動工具であって、
前記第1バッテリパックに対面するターミナル支持板と、
前記ターミナル支持板から突出し、前記第1バッテリパックにスライドされてプラスターミナルに接続可能な工具側プラスターミナルと、
前記ターミナル支持板から突出し、前記第1バッテリパックにスライドされてマイナスターミナルに接続可能であり、かつ前記工具側プラスターミナルとスライド方向と交差する交差方向に並ぶ工具側マイナスターミナルと、
前記ターミナル支持板から突出し、前記第1バッテリパックに設けられる挿入許容溝にスライドして嵌合可能な突部を有し、前記突部が前記挿入許容溝を有さない前記第2バッテリパックに連結されることを防止する電動工具。
【請求項10】
電動工具と、前記電動工具に対して一方向からスライドすることにより連結される第1バッテリパックを有する、電動工具セットであって、
前記第1バッテリパックは、
スライド方向と交差する交差方向に並ぶ複数のバッテリ側端子と、
前記複数のバッテリ側端子を上方から覆う蓋と、を備え、
前記蓋には、前記複数のバッテリ側端子がそれぞれ外部端子と接続することを許容するように前記スライド方向に延出する複数のスリットと、
前記蓋の上面から前記バッテリ側端子に向けて下方に凹みかつ前記複数のスリットの少なくとも1つの対応スリットの上方に設けられ、前記少なくとも1つのスリットを前記交差方向に跨って拡がる挿入許容溝が形成され、
前記電動工具は、前記外部端子である複数の工具側端子と、
前記挿入許容溝に挿入される突部を有し、前記突部は、前記挿入許容溝を有さない第2バッテリパックが前記電動工具に接続されることを防止する電動工具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具、充電器のバッテリ装着部に対して一方向からスライドすることにより連結される構成で、複数本のセルを備えるバッテリパック、電動工具、及び電動工具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリパックに関する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1のバッテリパック100は、図27に示すように、複数本のセルを収納する箱形のハウジング102を備えている。ハウジング102の上面には、電動工具のバッテリ装着部(図示省略)、あるいは充電器のバッテリ装着部(図示省略)に嵌合してスライド可能に構成された左右一対のスライドレール103が設けられている。また、左右のスライドレール103の幅方向内側には、プラス端子用スリット105pとマイナス端子用スリット105nとが設けられており、両スリット105p,105nの内側にバッテリ側電力端子のプラス端子とマイナス端子とがそれぞれ設けられている。また、プラス端子用スリット105pとマイナス端子用スリット105nとの間には、信号用コネクタ107が設けられている。
【0003】
バッテリパック100は、電動工具のバッテリ装着部にスライド接続された状態で、バッテリパック100のプラス端子とマイナス端子とが電動工具のプラスターミナルとマイナスターミナルとに接続される。また、バッテリパック100は、充電器のバッテリ装着部にスライド接続された状態で、バッテリパック100のプラス端子とマイナス端子とが充電器のプラスターミナルとマイナスターミナルとに接続される。また、バッテリパック100の信号用コネクタ107が充電器の信号用コネクタ(図示省略)に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-203704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したバッテリパック100では、プラス端子用スリット105p(プラス端子)とマイナス端子用スリット105n(マイナス端子)との間に信号用コネクタ107が設けられている。しかし、信号用コネクタ107は、バッテリパック100を充電器のバッテリ装着部に装着する際に必要なものであり、バッテリパック100を電動工具のバッテリ装着部に接続する際には不要となる。このため、電動工具のバッテリ装着部には、プラスターミナルとマイナスターミナルとの間に信号用コネクタ107を収納するための空間が設けられている。これにより、電動工具のバッテリ装着部では、プラスターミナルとマイナスターミナルとの間隔が不必要に広くなり、バッテリ装着部の小型化が難しくなる。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、電動工具のバッテリ装着部を小型化できるバッテリパックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。請求項1の発明は、電動工具に対して一方向からスライドすることにより連結される構成で、複数本のセルを備えるバッテリパックであって、スライド方向と交差する交差方向に並ぶ複数のバッテリ側端子と、前記複数のバッテリ側端子を上方から覆う蓋と、を備え、前記蓋には、前記複数のバッテリ側端子がそれぞれ外部端子と接続することを許容するように前記スライド方向に延出する複数のスリットと、前記電動工具に形成された突部の挿入を許容する挿入許容溝が形成され、前記挿入許容溝は、前記蓋の上面から前記バッテリ側端子に向けて下方に凹みかつ前記複数のスリットの少なくとも1つの前記スリットの上方に設けられ、前記少なくとも1つのスリットを前記交差方向に跨って拡がる。このように、挿入許容溝がスライド方向に延出するスリットの上方に交差方向に跨って設けられることで、バッテリ側端子の交差方向の配列幅を短くできる。従って、電動工具の外部端子の交差方向における配列幅を短くできる。この結果、電動工具におけるバッテリ装着部を小型化できる。また、挿入許容溝を有さない異なるバッテリパックが電動工具に誤って連結されることを防止できる。
【0008】
ここで、「交差方向」とは、スライド方向に対して直交する方向、スライド方向に対して斜め直線方向のみならず、スライド方向に対して斜めジグザグに並べることも含むものとする。
【0009】
請求項の発明によると、前記挿入許容溝は、前記挿入許容溝を有さない第2バッテリパックが誤って前記電動工具に挿入されることを防止するように、前記電動工具の前記突部に対応する構成になっている。
【0010】
請求項の発明によると、前記第2バッテリパックは、前記電動工具の定格出力よりも出力の大きいバッテリパックである。
【0011】
請求項の発明によると、前記挿入許容溝は、前記少なくとも1つのスリットよりも前記スライド方向において長い。
【0012】
請求項の発明によると、前記挿入許容溝は、前記少なくとも1つのスリットの前記交差方向の一方に隣接し前記少なくとも1つのスリットに沿って延出する第1溝側部と、前記少なくとも1つのスリットの前記交差方向の他方に隣接し前記少なくとも1つのスリットに沿って延出する第2溝側部を有する。
【0013】
請求項の発明によると、前記第1溝側部と前記第2溝側部は、前記少なくとも1つのスリットの前記スライド方向の全長に沿って形成されている。
【0014】
請求項の発明によると、前記挿入許容溝は、前記交差方向に沿って延出して前記第1溝側部と前記第2溝側部を連通する溝端部を有する。
【0015】
請求項の発明によると、前記バッテリ側端子の少なくとも1つは、上側において前記スライド方向に延出する上端子部と、前記上端子部の下側において前記スライド方向に延出する下端子部とを有する。
【0016】
請求項の発明は、充電器に対して前記スライド方向にスライドすることにより連結される構成であって、前記バッテリ側端子は、前記電動工具に連結される際に前記電動工具の複数の工具側端子に電気的に接続される複数の工具接続用端子と、前記電動工具に連結される際に前記工具側端子には接続されず、かつ、前記充電器に連結される際には、前記充電器の充電器側端子に電気的に接続される少なくとも1つの充電器接続用端子を備える。
【0017】
請求項の発明は、第1バッテリパックが一方向からスライドされて連結されかつ第2バッテリパックが連結されることを防止できる電動工具であって、前記第1バッテリパックに対面するターミナル支持板と、前記ターミナル支持板から突出し、前記第1バッテリパックにスライドされてプラスターミナルに接続可能な工具側プラスターミナルと、前記ターミナル支持板から突出し、前記第1バッテリパックにスライドされてマイナスターミナルに接続可能であり、かつ前記工具側プラスターミナルとスライド方向と交差する交差方向に並ぶ工具側マイナスターミナルと、前記ターミナル支持板から突出し、前記第1バッテリパックに設けられる挿入許容溝にスライドして嵌合可能な突部を有し、前記突部が前記挿入許容溝を有さない前記第2バッテリパックに連結されることを防止する。このように、電動工具に異なるバッテリパックの連結を防止する。また、工具側プラスターミナルと工具側マイナスターミナルの配列幅を短くしやすくなる。この結果、電動工具のバッテリ装着部を小型化できる。
【0018】
請求項10の発明は、電動工具と、前記電動工具に対して一方向からスライドすることにより連結される第1バッテリパックを有する、電動工具セットであって、前記第1バッテリパックは、スライド方向と交差する交差方向に並ぶ複数のバッテリ側端子と、前記複数のバッテリ側端子を上方から覆う蓋と、を備え、前記蓋には、前記複数のバッテリ側端子がそれぞれ外部端子と接続することを許容するように前記スライド方向に延出する複数のスリットと、前記蓋の上面から前記バッテリ側端子に向けて下方に凹みかつ前記複数のスリットの少なくとも1つの対応スリットの上方に設けられ、前記少なくとも1つのスリットを前記交差方向に跨って拡がる挿入許容溝が形成され、前記電動工具は、前記外部端子である複数の工具側端子と、前記挿入許容溝に挿入される突部を有し、前記突部は、前記挿入許容溝を有さない第2バッテリパックが前記電動工具に接続されることを防止する。このように、挿入許容溝がスライド方向に延出するスリットの上方に交差方向に跨って設けられることで、バッテリ側端子の交差方向の配列幅を短くできる。従って、電動工具の外部端子の交差方向における配列幅を短くできる。この結果、電動工具におけるバッテリ装着部を小型化できる。また、挿入許容溝を有さない異なるバッテリパックが電動工具に誤って連結されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態1に係るバッテリパックと、そのバッテリパックが連結される電動工具を表す斜視図である。
図2図1のII-II矢視縦断面図である。
図3】前記バッテリパックと、そのバッテリパックが連結される電動工具を下方から見た斜視図である。
図4】前記電動工具のバッテリ装着部におけるターミナルを表す側面図(図3のIV矢視図)である。
図5】前記電動工具のバッテリ装着部におけるターミナルを表す正面図(図3のV矢視図)である。
図6】前記バッテリパックと前記電動工具とを連結した状態を表す電気回路図である。
図7】前記バッテリパックの斜視図である。
図8】前記バッテリパックの蓋部を取り外した状態の斜視図である。
図9】前記バッテリパックの上面図である。
図10】前記バッテリパックの蓋部を取り外した状態の上面図である。
図11】前記バッテリパック内のセルの配置、及びセルと端子との電気的な接続を表す模式図である。
図12】前記バッテリパックの端子用金具を表す斜視図である。
図13】前記電動工具のターミナルと前記バッテリパックの端子用金具との接続前の状態を表す平面図である。
図14】前記電動工具のターミナルと前記バッテリパックの端子用金具との接続状態を表す平面図である。
図15】前記バッテリパックと充電器とを連結した状態を表す電気回路図である。
図16】前記バッテリパックと充電器とを連結した状態を表す側面図である。
図17】前記充電器のターミナルと前記バッテリパックの端子用金具との接続前の状態を表す平面図である。
図18】前記電動工具のターミナルと前記バッテリパックの端子用金具との接続状態を表す平面図である。
図19】変更例1に係るバッテリパックと電動工具との端子接続状態を表す模式図である。
図20】変更例1に係るバッテリパックと充電器との端子接続状態を表す模式図である。
図21】変更例2に係るバッテリパックと電動工具との端子接続状態を表す模式図である。
図22】変更例2に係るバッテリパックと充電器との端子接続状態を表す模式図である。
図23】変更例3に係るバッテリパックと電動工具との端子接続状態を表す模式図である。
図24】変更例3に係るバッテリパックと充電器との端子接続状態を表す模式図である。
図25】変更例4に係るバッテリパックと電動工具との組み合わせを表す模式図である。
図26】変更例4に係るバッテリパックと充電器の組み合わせを表す模式図である。
図27】従来のバッテリパックを表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施形態1]
以下、図1から図26に基づいて本発明の実施形態1に係るバッテリパックについて説明する。本実施形態に係るバッテリパック30は電動工具10の駆動用電源であり、その電動工具10のバッテリ装着部20にスライド接続できるように構成されている。また、バッテリパック30は充電器50のバッテリ装着部52に対してスライド接続することで、セル31の充電を行なえるように構成されている。なお、図中に記載された前後左右及び上下は、バッテリパック30のスライド方向を基準にした前後左右及び上下に対応している。
【0021】
<電動工具10の概要について>
前記バッテリパック30について説明する前に、先ず、電動工具10の概要について説明する。電動工具10は、例えば、インパクトドライバであり、図1に示すように、モータ10m(図6参照)等を収納する筒状のハウジング本体部11と、そのハウジング本体部11の下面から下方に突出するように設けられたグリップ部12とを備えている。そして、グリップ部12の下端位置にバッテリパック30が連結されるバッテリ装着部20が設けられている。バッテリ装着部20は、図1図2に示すように、前記グリップ部12に対して幅方向(左右方向)及び前方に広がる角形蓋状に形成されており、蓋天井部21の左右両側と後端側とに下方に突出する塀状の縦壁部22が設けられている。そして、バッテリ装着部20の左右両側に位置する縦壁部22の下端位置に、図2に示すように、内側に突出する角形突条22yが前後方向(スライド方向)に延びるように形成されている。これにより、バッテリ装着部20の蓋天井部21と角形突条22yとの間には、前後方向に延びるスライド溝23が形成されるようになる。
【0022】
そして、図2に示すように、電動工具10(バッテリ装着部20)の左右のスライド溝23に対してバッテリパック30(後記する)の左右のスライドレール35が嵌合し、バッテリ装着部20の左右の角形突条22yがバッテリパック30の左右のスライド溝36に嵌合するようになる。また、電動工具10(バッテリ装着部20)の蓋天井部21(ターミナル支持板210)の下面には、右寄りの位置に前後方向(スライド方向)に延びる誤挿入防止用突条211が形成されている。そして、バッテリパック30の左右のスライドレール35の幅方向内側には、電動工具10(バッテリ装着部20)の誤挿入防止用突条211に対応する位置にその誤挿入防止用突条211が嵌合する挿入許容角溝34uが前後方向に延びるように形成されている。この挿入許容角溝34uは特許請求の範囲に記載する「挿入許容溝」に相当する。
【0023】
電動工具10(バッテリ装着部20)の蓋天井部21の下面には、図3図5に示すように、ターミナル支持板210が固定されている。そして、ターミナル支持板210には、上記した誤挿入防止用突条211とプラスターミナル212(+)、マイナスターミナル214(-)、及び温度信号ターミナル213(T)が設けられている。プラスターミナル212(+)、マイナスターミナル214(-)、及び温度信号ターミナル213(T)は板状端子であり、縦向きの状態でスライド方向に延びるように設けられている。また、プラスターミナル212(+)、マイナスターミナル214(-)、及び温度信号ターミナル213(T)のスライド方向に対して直交方向における間隔は、短絡防止に必要な最小限の間隔に設定されている。
【0024】
ここで、プラスターミナル212(+)は、図6に示すように、電動工具10のメインスイッチ13を介してモータ10mのプラス端子に電気的に接続されている。また、マイナスターミナル214(-)は、スイッチング素子15を介してモータ10mのマイナス端子に電気的に接続されている。さらに、温度信号ターミナル213(T)は、温度検出回路16に接続され、その温度検出回路16の出力信号が制御用マイコン17に入力されている。即ち、電動工具10のプラスターミナル212(+)とマイナスターミナル214(-)とが本発明の工具側電源端子に相当し、温度信号ターミナル213(T)が本発明の工具側信号端子に相当する。
【0025】
電動工具10の制御用マイコン17は、パック電圧検出回路19(図6参照)で検出した電圧値が一定値以下になると、SW制御回路17sにスイッチング素子15の停止信号を出力してモータ10mを停止させる。また、制御用マイコン17は、温度検出回路16で検出した温度値が許容範囲を超えると、SW制御回路17sにスイッチング素子15の停止信号を出力してモータ10mを停止させる。これにより、前記バッテリパック30が過放電、あるいは高温になり、寿命が損なわれるのを防止できる。
【0026】
また、電動工具10の温度検出回路16と制御用マイコン17間には、マイコン保護用のダイオード16dが設けられている。ダイオード16dは、図6に示す状態で、仮に、プラスターミナル212(+)と温度信号ターミナル213(T)間が短絡して温度検出回路16の出力信号線16sにバッテリ電圧(バッテリ電圧>Vdd)が加わった場合に、制御用マイコン17を保護するためのものである。即ち、ダイオード16dは、温度検出回路16の出力信号線16sにバッテリ電圧が加わった場合に、そのバッテリ電圧を制御用マイコン17の電源(Vdd)側に逃がせるように構成されている。これにより、バッテリ電圧が制御用マイコン17の信号端子に加わらなくなり、制御用マイコン17の保護が図られる。
【0027】
また、プラスターミナル212(+)と温度信号ターミナル213(T)間で短絡が発生すると、ダイオード16dの働きで温度検出回路16の出力電圧は最大値(Hi(電源電圧Vdd))となる。これにより、制御用マイコン17は、バッテリパック30のセル31の温度が許容温度よりも低温と判定し、SW制御回路17sに対してスイッチング素子15の停止信号(モータ停止信号)を出力する。また、温度信号ターミナル213(T)とマイナスターミナル214(-)間で短絡が発生した場合には、温度検出回路16の出力信号線16sの電圧(出力電圧)は最小値(Lo(0V))となる。これにより、制御用マイコン17は、バッテリパック30のセル31の温度が許容温度よりも高温と判定し、SW制御回路17sに対してスイッチング素子15の停止信号(モータ停止信号)を出力する。なお、ダイオード16dの代わりに、信号端子16sとアース端子間に制御用マイコン17の電圧に応じた電圧のツェナーダイオードを設けることも可能である。
【0028】
<バッテリパック30について>
バッテリパック30は、電動工具10に電力を供給する低出力(定格20A)のバッテリである。バッテリパック30は、図7図11に示すように、複数本のセル31(図11参照)を収納する上部開放型のハウジング本体部32と、そのハウジング本体部32の上部開口32hを塞ぐ蓋部34とを備えている。
【0029】
<バッテリパック30の蓋部34について>
バッテリパック30の蓋部34は、バッテリパック30を電動工具10のバッテリ装着部20、あるいは充電器50のバッテリ装着部52(図16参照)に対してスライド接続できるように構成されている。即ち、バッテリパック30の蓋部34の上面左右両側には、図2、及び図7図9に示すように、電動工具10(バッテリ装着部20)の左右のスライド溝23に嵌合可能なスライドレール35が前後方向(スライド方向)に延びるように形成されている。また、左右のスライドレール35の下側には、電動工具10(バッテリ装着部20)の左右の角形突条22yが嵌合するスライド溝36が形成されている。
【0030】
バッテリパック30の蓋部34の上面には、図7図9等に示すように、左右のスライドレール35の間に前記電動工具10のターミナル212,213,214、又は充電器50(後記する)のターミナル511,512,513,514,515がスライド過程でそれぞれ挿入される第1~第5スリット341,342,343,344,345が形成されている。そして、第1スリット341と第5スリット345の周縁に上記した挿入許容角溝34uが形成されている。また、バッテリパック30の蓋部34の上面には、第1~第5スリット341,342,343,344,345の後方に平面形状が横U字形をしたフック用開口37が形成されている。そして、前記フック用開口37からフック38がバネ力により一定寸法だけ突出するように構成されている。フック38は、バッテリパック30が電動工具10のバッテリ装着部20、あるいは充電器50のバッテリ装着部52に対してスライド接続された状態で、電動工具10側のスライドロック溝(図示省略)、あるいは充電器50側のスライドロック溝(図示省略)と嵌合可能に構成されている。
【0031】
<バッテリパック30の内部構造について>
バッテリパック30のハウジング本体部32の内部には、図11の模式図に示すように、例えば、三本の円柱形のセル31が収納されている。各々のセル31は、電気的に直列に接続されており、軸心を前後方向(スライド方向)に沿わせ、左右方向に並べられた状態でハウジング本体部32の内部に収納されている。前記セル31は、図8等に示すように、セルホルダ33によってハウジング本体部32に保持されており、そのセルホルダ33の上面中央に電気回路基板33kが固定されている。電気回路基板33k上には、図8図10に示すように、蓋部34の第1~第5スリット341,342,343,344,345にそれぞれ対応する位置に、V2端子311、プラス端子312a,312b(+)、温度信号端子313(T)、マイナス端子314a,314b(-)、V1端子315が設けられている。
【0032】
バッテリパック30のプラス端子312a,312b(+)は、図6に示すように、直列接続されたセル31の集合体のプラス電極V3と電気的に接続されている。マイナス端子314a,314b(-)は、直列接続されたセル31の集合体のマイナス電極(アースE)と電気的に接続されている。プラス端子312a,312b(+)とマイナス端子314a,314b(-)とは、電動工具10のモータ10mに電力を供給するとともに、電動工具10のパック電圧検出回路19にセル31の集合体のプラス電圧信号を伝送可能に構成されている。また、温度信号端子313(T)は、セル31の温度測定用のサーミスタTM1における一方の端子と電気的に接続されている。また、サーミスタTM1における他方の端子がアース端子Eと電気的に接続されている。温度信号端子313(T)は、サーミスタTM1の抵抗値の信号を電動工具10の温度検出回路16に伝送可能に構成されている。
【0033】
このように、バッテリパック30の温度信号端子313(T)は、サーミスタTM1を介してアース端子Eと電気的に接続されている。このため、バッテリパック30が電動工具10と接続されていない状態で、仮に、プラス端子312a,312b(+)と温度信号端子313(T)間で短絡が発生した場合には、プラス端子312a,312b(+)の電圧(バッテリ電圧)は、サーミスタTM1(抵抗)を介してアース端子Eに加わるようになる。これにより、サーミスタTM1には、短絡電流が流れるようになる。しかし、サーミスタTM1は、自身を流れる電流で発熱して抵抗値が増大する。この結果、プラス端子312a,312b(+)と温度信号端子313(T)間で短絡が生じても、サーミスタTM1により短絡電流が小さな値に抑えられる。なお、マイナス端子314a,314b(-)と温度信号端子313(T)間で短絡が発生した場合には、温度信号端子313(T)に0Vが加わるため、特に問題は生じない。即ち、サーミスタTM1が本発明の保護手段に相当する。
【0034】
バッテリパック30のV2端子311は、直列接続された二本目のセル31のプラス電極V2と抵抗R2を介して電気的に接続されている。V1端子315は、一本目のセル31のプラス電極V1と抵抗R1を介して電気的に接続されている。また、セル31の集合体のプラス電極V3とマイナス電極E(アース端子)とは、図6に示すように、残容量検出回路39と電気的に接続されている。残容量検出回路39は、セル31の集合体の電圧に基づいてバッテリパック30の残容量を検出する回路であり、前記残容量に応じてLED1~4を点灯できるように構成されている。
【0035】
バッテリパック30のプラス端子312a,312b(+)と温度信号端子313(T)とマイナス端子314a,314b(-)とは、図6図11に示すように、スライド方向に対して直交する方向に隣り合って並べられており、その間隔は短絡防止に必要な最小限の値に設定されている。即ち、プラス端子312a,312b(+)とマイナス端子314a,314b(-)との間に温度信号端子313(T)が配置されている。また、V2端子311とV1端子315とがプラス端子312a,312b(+)、温度信号端子313(T)、及びマイナス端子314a,314b(-)を右側と左側とから挟む位置に配置されている。ここで、図11に示すように、二本目のセル31のプラス電極V2(導体含む)はハウジング本体部32の右側に設けられている。このため、二本目のセル31のプラス電極V2と右端に配置されたV2端子311との距離が小さくなり、両者間の配線長を短くできる。また、一本目のセル31のプラス電極V1はハウジング本体部32の左側に設けられている。このため、一本目のセル31のプラス電極V1と左端に配置されたV1端子315との距離が小さくなり、両者間の配線長を短くできる。
【0036】
<バッテリパック30の端子用金具40について>
次に、バッテリパック30のプラス端子312a,312b(+)、マイナス端子314a,314b(-)、温度信号端子313(T)、V2端子311、及びV1端子315に使用される端子用金具40について説明する。端子用金具40は、等しい形状、及びサイズで形成されており、図10図12の白矢印に示すように、電動工具10、及び充電器50(後記する)の板状端子(以下、ターミナルという)がスライド方向から挿入されることで、そのターミナルと電気的に接続できるように構成されている。端子用金具40は、スライド方向に長い長方形状のベース部41と、そのベース部41の左右両側に設けられた縦壁部43と、左右の縦壁部43にそれぞれ固定されたバネ板部45とから構成されている。
【0037】
端子用金具40の縦壁部43は、先端側に設けられた低い基礎壁部43fと基端部側に設けられた高い固定壁部43sとにより側面略L字形に形成されており、固定壁部43sの先端側にバネ板部45が横向きの状態で先端方向に延びるように設けられている。バネ板部45は、帯状の上板部45uと下板部45dとから構成されており、上板部45uと下板部45dとが固定壁部43sに対して幅方向内側に曲げられている。また、バネ板部45の上板部45uと下板部45dの先端部には、前記ターミナルの側面を押圧可能なターミナル押圧面45pが設けられている。即ち、左側のバネ板部45は右方向に押圧力を発生させられるように付勢されており、右側のバネ板部45は左方向に押圧力を発生させられるように付勢されている。このため、端子用金具40に対してターミナルが挿入されていない状態では、図12に示すように、左側のバネ板部45(上板部45uと下板部45d)のターミナル押圧面45pと右側のバネ板部45のターミナル押圧面45pとが互いに面接触するようになる。したがって、端子用金具40の先端側(一端側)の幅寸法は、基端部側(他端側)の幅寸法よりも小さくなる。
【0038】
バッテリパック30のプラス端子312a,312b(+)とマイナス端子314a,314b(-)とは、図8図10に示すように、それぞれスライド方向に並んだ二個の端子用金具40から構成されている。前記二個の端子用金具40は、各々の端子用金具40の先端側(一端側)がスライド方向において対向するように設置されている。即ち、前側の端子用金具40は、先端側(一端側)が後方を向くように設置されており、後側の端子用金具40は、先端側(一端側)が前方を向くように設置されている。このため、例えば、前記ターミナルが前側の端子用金具40を通過し、後側の端子用金具40のターミナル押圧面45p(先端部)まで到達した段階で、前記ターミナルと二個の端子用金具40との電気的な接続が完了する。したがって、前記ターミナルのスライド方向における長さ寸法を極力小さくできる。
【0039】
バッテリパック30の温度信号端子313(T)、V2端子311、及びV1端子315は、それぞれ1個の端子用金具40により構成されている。温度信号端子313(T)、V2端子311、及びV1端子315を構成する端子用金具40は、プラス端子312a,312b(+)とマイナス端子314a,314b(-)との前側の端子用金具40と横並び状態で、先端側(一端側)が前方を向くように設置されている。
【0040】
ここで、プラス端子312a,312b(+)の端子用金具40は、図8図10等に示すように、右から二個目、マイナス端子314a,314b(-)の端子用金具40は右から四個目に配置されているため、端子用金具40は、隣り合う端子用金具40の先端側(一端側)と基端部側(他端側)とが逆向きになる互い違いの状態で左右方向に並べられている。このため、隣り合う端子用金具40間の隙間を極力小さくできる。ここで、左右方向に並べられた端子用金具40は等間隔で配置されており、隣り合う端子用金具40間の隙間には、図2に示すように、バッテリパック30の蓋部34側に設けられた絶縁板34xが挿入されるように構成されている。
【0041】
また、電気回路基板33kには、図10に示すように、隣り合う端子用金具40間の隙間の位置にスリット状の水抜き穴34wが形成されている。さらに、電動工具10のターミナル212,213,214が接続されるプラス端子312a,312b(+)とマイナス端子314a,314b(-)と温度信号端子313(T)とが中央部にまとまって配置されているため、電動工具10のバッテリ装着部20の幅寸法を極力小さくできる。
【0042】
<バッテリパック30と電動工具10とのスライド接続について>
バッテリパック30を電動工具10のバッテリ装着部20にスライド接続する場合には、図1に示すように、バッテリパック30の左右のスライドレール35を前端側から電動工具10(バッテリ装着部20)の左右のスライド溝23に嵌合させる。これにより、バッテリパック30のスライド溝36と電動工具10(バッテリ装着部20)の角形突条22yとが嵌合するようになる。この状態で、電動工具10のバッテリ装着部20に対してバッテリパック30を前方にスライドできるようになる。スライド過程で、電動工具10(バッテリ装着部20)に設けられた誤挿入防止用突条211がバッテリパック30の挿入許容角溝34uに挿入されるため、バッテリパック30の前方スライドが妨げられない。
【0043】
さらに、スライド過程で、電動工具10(バッテリ装着部20)の各ターミナル212(+),213(T),214(-)がバッテリパック30の第2~第4スリット342,343,344(図7参照)に挿入される。そして、図13の二点鎖線に示すように、電動工具10の各ターミナル212(+),213(T),214(-)が同時にバッテリパック30の各端子312a(+),313(T),314a(-)(端子用金具40)のターミナル押圧面45pにそれぞれ当接するようになる。即ち、電動工具10の各ターミナル212(+),213(T),214(-)は、対応する端子用金具40のターミナル押圧面45pに対して同時に当接するようにスライド方向に位置調整されている。これにより、電動工具10の各ターミナル212(+),213(T),214(-)のスライド方向の長さ寸法を極力小さく設定できる。
【0044】
そして、バッテリパック30が前進限位置までスライドする過程で、図14に示すように、電動工具10の各ターミナル212(+),213(T),214(-)がバッテリパック30の各端子312a(312b)(+),313(T),314a(314b)(-)とが電気的に接続される。即ち、電動工具10のプラスターミナル212(+)がバッテリパック30の前側のプラス端子312aの後部のターミナル押圧面45p間に挿入された状態で、さらに後方に移動し、後側のプラス端子312bの前部のターミナル押圧面45p間に挿入される。また、電動工具10の温度信号ターミナル213(T)がバッテリパック30の温度信号端子313の前部のターミナル押圧面45p間に挿入される。さらに、電動工具10のマイナスターミナル214(-)がバッテリパック30の前側のマイナス端子314aの後部のターミナル押圧面45p間に挿入された状態で、さらに後方に移動し、後側のマイナス端子314bの前部のターミナル押圧面45p間に挿入される。
【0045】
そして、バッテリパック30が前進限位置までスライドした状態で、バッテリパック30のフック38がバネ力により電動工具10のスライドロック溝(図示省略)と嵌合し、電動工具10に対するバッテリパック30のスライド接続が完了する。ここで、電動工具10にバッテリパック30が接続された状態で、図6に示すように、バッテリパック30のV2端子311とV1端子315とは未接続状態に保持される。このように、バッテリパック30のプラス端子312a,312b(+)とマイナス端子314a,314b(-)とが本発明の一対の兼用バッテリ側電力端子に相当し、温度信号端子313(T)が本発明の兼用バッテリ側信号端子(放電を制御する際に使用される端子)に相当する。
【0046】
<充電器50の概要について>
充電器50には、図16に示すように、その充電器50の上面右側にバッテリ装着部52が設けられている。このため、バッテリパック30は蓋部34を下側にした状態で充電器50のバッテリ装着部52にスライド接続される。ここで、充電器50のバッテリ装着部52は、基本構造が電動工具10のバッテリ装着部20と等しいため説明を省略する。充電器50のバッテリ装着部52には、図15の回路図に示すように、バッテリパック30のプラス端子312a,312b(+)、マイナス端子314a,314b(-)に対応する位置に充電用プラスターミナル512(+)、充電用マイナスターミナル514(-)が設けられている。充電用プラスターミナル512(+)、充電用マイナスターミナル514(-)は、充電器50の充電回路54と電気的に接続されている。
【0047】
また、充電器50のバッテリ装着部52には、図15に示すように、バッテリパック30の温度信号端子313(T)、V2端子311、及びV1端子315に対応する位置に温度信号ターミナル513(T)、V2ターミナル511、及びV1ターミナル515が設けられている。温度信号ターミナル513(T)は、温度検出回路55と電気的に接続されている。V2ターミナル511は、V2電圧検出回路56と電気的に接続されている。V1ターミナル515は、V1電圧検出回路57と電気的に接続されている。そして、温度検出回路55、V2電圧検出回路56、及びV1電圧検出回路57の出力信号が充電制御用マイコン58に入力される。
【0048】
充電制御用マイコン58は、温度検出回路55で検出した温度値が許容範囲を超えると充電回路54のスイッチング素子を停止させる。このため、バッテリパック30が高温、あるいは低温で充電されることを防止でき、バッテリパック30の寿命が低下するのを防ぐことができる。また、充電制御用マイコン58は、パック電圧検出回路59、V1電圧検出回路57、及びV2電圧検出回路56で検出したバッテリパック30内の各セル31の電圧が一定値以下になるように充電を制御する。これにより、バッテリパック30のセル31の過充電を防止できる。過充電になるとセル31の安全性を損なうおそれがあるため、充電時には各セル31の電圧を監視する必要がある。このため、V2端子311、V1端子315が必要になり、放電時と比べて必要な端子数が多くなる。即ち、充電器50の充電用プラスターミナル512(+)、充電用マイナスターミナル514(-)が本発明の一対の充電用電力端子に相当し、温度信号ターミナル513(T)、V2ターミナル511、及びV1ターミナル515が本発明の充電器側信号端子に相当する。また、バッテリパック30のV2端子311とV1端子315とが本発明の充電器用バッテリ側信号端子に相当する。
【0049】
充電器50の温度検出回路55と充電制御用マイコン58間には、図15に示すように、マイコン保護用のツェナーダイオード55tが設けられている。ツェナーダイオード55tは、図15に示す状態で、仮に、充電用プラスターミナル512(+)と温度信号ターミナル513(T)間が短絡して温度検出回路55の出力信号線55sにバッテリ電圧(高電圧)が加わった場合に、充電制御用マイコン58を保護するためのものである。即ち、ツェナーダイオード55tは、温度検出回路55の出力信号線55sにバッテリ電圧が加わると、そのバッテリ電圧をアース端子に逃がし、出力信号線55sの電圧をツェナーダイオード55tの設定電圧に保持する。これにより、短絡時に充電制御用マイコン58の信号端子に対して高電圧が加わらなくなり、充電制御用マイコン58の保護が図られる。
【0050】
また、充電用プラスターミナル512(+)と温度信号ターミナル513(T)間で短絡が発生すると、温度検出回路55の出力電圧はツェナーダイオード55tの設定電圧(出力最大値Hi)に等しくなる。これにより、充電制御用マイコン58は、バッテリパック30のセル31の温度が許容温度よりも低温と判定し、充電回路54のスイッチング素子を停止させる。また、温度信号ターミナル513(T)と充電用マイナスターミナル514(-)間で短絡が発生すると、温度検出回路55の出力信号線55sの電圧(出力電圧)は最小値(Lo(0V))となる。これにより、充電制御用マイコン58は、バッテリパック30のセル31の温度が許容温度よりも高温と判定し、充電回路54のスイッチング素子を停止させる。なお、ツェナーダイオード55tの代わりに、出力信号線55sの高電圧を充電制御用マイコン58の電源回路に逃がせるようにダイオードを設けることも可能である。
【0051】
<バッテリパック30と充電器50とのスライド接続について>
バッテリパック30と充電器50とを接続する際のスライド過程では、図17の二点鎖線に示すように、充電器50の各ターミナル511(V2),512(+),513(T),514(-),515(V1)が同時にバッテリパック30の端子311(V2),312a(+),313(T),314a(-),315(V1)(端子用金具40)のターミナル押圧面45pにそれぞれ当接するようになる。即ち、充電器50の各ターミナル511(V2),512(+),513(T),514(-),515(V1)は、対応する端子用金具40(311(V2),312a(+),313(T),314a(-
),315(V1))のターミナル押圧面45pに同時に当接するようにスライド方向に位置調整されている。これにより、充電器50の各ターミナル511(V2),512(+),513(T),514(-),515(V1)のスライド方向における長さ寸法を極力小さくできる。
【0052】
そして、バッテリパック30が充電器50に対して前進限位置までスライドする過程で、図18に示すように、充電器50の各ターミナル511(V2),512(+),513(T),514(-),515(V1)とバッテリパック30の対応する端子311(V2),312a(+),313(T),314a(-),315(V1)とが電気的に接続される。即ち、充電器50のV2ターミナル511がバッテリパック30のV2端子311の前部のターミナル押圧面45p間に挿入される。また、充電用プラスターミナル512(+)がバッテリパック30の前側のプラス端子312aの後部のターミナル押圧面45p間に挿入される。また、充電器50の温度信号ターミナル513(T)がバッテリパック30の温度信号端子313の前部のターミナル押圧面45p間に挿入される。さらに、充電用マイナスターミナル514(-)がバッテリパック30の前側のマイナス端子314aの後部のターミナル押圧面45p間に挿入される。そして、充電器50のV1ターミナル515がバッテリパック30のV1端子315の前部のターミナル押圧面45p間に挿入される。
【0053】
そして、バッテリパック30が充電器50に対する前進限位置までスライドした状態で、バッテリパック30のフック38がバネ力により充電器50のスライドロック溝(図示省略)と嵌合し、充電器50に対するバッテリパック30のスライド接続が完了する。このように、バッテリパック30と充電器50とがスライド接続された状態で、充電器50の充電用プラスターミナル512(+)、充電用マイナスターミナル514(-)は、バッテリパック30の前側のプラス端子312a、マイナス端子314aのみと機械的に接続され、後側のプラス端子312b、マイナス端子314bとは機械的に接続されない。このため、バッテリパック30と充電器50との接続、及び接続解除時の摩擦抵抗を小さくできる。
【0054】
<本実施形態に係るバッテリパック30の長所について>
本実施形態に係るバッテリパック30によると、電動工具10のプラスターミナル212(+)と温度信号ターミナル213(T)とマイナスターミナル214(-)とにそれぞれ接続されるプラス端子312a,312b(+)と温度信号端子313(T)とマイナス端子314a,314b(-)とが短絡防止に必要な最小限の間隔をおいてスライド方向と交差する方向(左右方向)に並んで設置されている。即ち、プラス端子312a,312b(+)と温度信号端子313(T)とマイナス端子314a,314b(-)との右端から左端までの寸法を必要最小限にできる。これにより、電動工具10のプラスターミナル212(+)と温度信号ターミナル213(T)とマイナスターミナル214(-)の右端から左端までの寸法を必要最小限にできる。この結果、電動工具10におけるバッテリ装着部20の小型化が可能になる。また、プラス端子312a,312b(+)とマイナス端子314a,314b(-)間に、温度信号端子313(T)が配置されているため、プラス端子312a,312b(+)とマイナス端子314a,314b(-)間で短絡が発生し難くなる。
【0055】
また、電動工具10では使用されないV2端子311、V1端子315(充電時専用バッテリ側信号端子)が端子並び方向における外側に配置されているため、電動工具10のバッテリ装着部20を小型に保持できる。さらに、端子用金具40は、等しい形状、及びサイズで形成されて、左右方向(スライド方向に対して交差する方向)に等間隔で配置されている。このため、設計が容易で、コスト低減を図ることができる。また、隣り合う端子用金具40の一端側と他端側とが逆向きになる互い違いの状態で、それらの端子用金具40がスライド方向に対して交差する方向に並べられている。このため、短絡防止を図った状態で隣同士の端子間距離を極力小さくできる。
【0056】
また、バッテリパック30のプラス端子312a,312b(+)とマイナス端子314a,314b(-)とは、それぞれスライド方向に並べられた二個の端子用金具40から構成されている。このため、放電電流、あるいは充電電流が二個の端子用金具40に分散して流れるようになり、端子用金具40の発熱を抑えることができる。また、二個の端子用金具40は、ターミナルを挟む一端側がスライド方向において対向するように配置されている。このため、前側の端子用金具40を貫通して後側の端子用金具40の先端側(一端側)までターミナルを挿入することで、ターミナルと二個の端子用金具40とを電気的に接続することができる。したがって、ターミナルの挿入寸法を必要最小限にでき、前記ターミナルの長さ寸法を極力小さくできる。
【0057】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、図6に示すように、電動工具10に接続されるプラス端子312a,312b(+)と温度信号端子313(T)とマイナス端子314a,314b(-)とを中央部分に配置し、左右両側に充電器50のみに接続されるV2端子311とV1端子315(図15参照)とを配置する例を示した。しかし、図19図20に示すように、電動工具10に接続されるプラス端子312a,312b(+)と温度信号端子313(T)とマイナス端子314a,314b(-)とを、例えば、幅方向一端側に寄せ、V2端子311とV1端子315とを幅方向他端側に寄せることも可能である。また、本実施形態では、図6に示すように、プラス端子312a,312b(+)とマイナス端子314a,314b(-)間に、温度信号端子313(T)を配置する例を示した。しかし、図21図22に示すように、プラス端子312a,312b(+)とマイナス端子314a,314b(-)との外側に温度信号端子313(T)を配置することも可能である。また、本実施形態では、プラス端子312a,312b(+)とマイナス端子314a,314b(-)間に、一つの信号端子(温度信号端子313(T))を配置する例を示した。しかし、図23図24に示すように、プラス端子312a,312b(+)とマイナス端子314a,314b(-)間に、複数の信号端子(T)(S)を配置することも可能である。
【0058】
本実施形態に係るバッテリパック30は、上記したように、低出力用(定格20A用)のバッテリパックである。このため、図25に示すように、例えば、定格20Aの小型電動工具10s、又は定格40Aの中型電動工具10、又は定格60Aの大型電動工具10pに使用しても、前記電動工具10s,10,10pに対して過電流が流れることによる損傷を与えるおそれはない。このため、前記バッテリパック30は、全ての電動工具10s,10,10pに対して使用可能である。したがって、本実施形態に係るバッテリパック30には、図2、及び図25の左図に示すように、蓋部34の上面に左右一対の挿入許容角溝34uが形成されている。これに対し、定格60Aの大型電動工具10pには、バッテリパック30の挿入許容角溝34uと嵌合する誤挿入防止用突条211は設けられていない。定格40Aの中型電動工具10には、バッテリパック30の一方の挿入許容角溝34uと嵌合する誤挿入防止用突条211が一本設けられている。また、定格20Aの小型電動工具10sには、バッテリパック30の各々の挿入許容角溝34uと嵌合可能な誤挿入防止用突条211が二本設けられている。即ち、バッテリパック30には左右一対の挿入許容角溝34uが形成されているため、誤挿入防止用突条211を備える電動工具10s,10、及び誤挿入防止用突条211を有しない電動工具10pの双方にスライド接続が可能となる。
【0059】
低出力用(定格20A用)のバッテリパック30に対して、中出力用(定格40A用)のバッテリパック30mの場合、仮に、定格20Aの小型電動工具10sに接続できるようにすると、小型電動工具10sにおいて過電流による損傷が発生するおそれがある。このため、図25に示すように、中出力用(定格40A用)のバッテリパック30mでは、定格40Aの中型電動工具10の誤挿入防止用突条211に対応する位置にのみ挿入許容角溝34uが形成されている。したがって、中出力用(定格40A用)のバッテリパック30mは、定格20Aの小型電動工具10sに対してスライド接続できなくなる。即ち、中出力用(定格40A用)のバッテリパック30mは、定格40Aの中型電動工具10と定格60Aの大型電動工具10pとに対してスライド接続が可能となる。
【0060】
また、高出力用(定格40A用)のバッテリパック30pの場合には、図25に示すように、挿入許容角溝34uは設けられていない。このため、高出力用(定格40A用)のバッテリパック30pは、誤挿入防止用突条211を備える定格20Aの小型電動工具10sと定格40Aの中型電動工具10とに対してはスライド接続ができなくなる。即ち、高出力用(定格40A用)のバッテリパック30pは、誤挿入防止用突条211を有しない定格60Aの大型電動工具10pに対してのみスライド接続が可能となる。ここで、充電器の場合、図26に示すように、低速充電器50であっても、高速充電器50xであっても定格60Aの大型電動工具10pのように誤挿入防止用突条211は設けられていない。したがって、低速充電器50、あるいは高速充電器50xに対しては、低出力用(定格20A用)のバッテリパック30、中出力用(定格40A用)のバッテリパック30m、及び高出力用(定格40A用)のバッテリパック30pのいずれのバッテリパックもスライド接続が可能になる。
【0061】
本実施形態では、バッテリパック30のプラス端子312a,312b(+)とマイナス端子314a,314b(-)とをスライド方向に並んだ二個の端子用金具40により構成する例を示した。しかし、プラス端子312a,312b(+)とマイナス端子314a,314b(-)とを一個の大型端子用金具により構成することも可能である。また、本実施形態では、バッテリパック30のハウジング本体部32内に三本のセル31を左右に並べた状態で収納する例を示した。しかし、三本のセル31を二段積みにしてハウジング本体部32内に収納することも可能である。この場合、セル31を二本毎に並列接続して三セットのセル並列体を形成し、三セットのセル並列体を直列接続することで、定格電圧を同一の状態で容量アップを図ることができる。
【符号の説明】
【0062】
10・・・・・電動工具
212・・・・プラスターミナル(工具側電源端子)(工具側端子)
214・・・・マイナスターミナル(工具側電源端子)(工具側端子)
213・・・・温度信号ターミナル(工具側信号端子)(工具側端子)
30・・・・・バッテリパック
31・・・・・セル
40・・・・・端子用金具
312a・・・・プラス端子(兼用バッテリ側電力端子)(兼用バッテリ側端子)
312b・・・・プラス端子(兼用バッテリ側電力端子)(兼用バッテリ側端子)
314a・・・・マイナス端子(兼用バッテリ側電力端子)(兼用バッテリ側端子)
314b・・・・マイナス端子(兼用バッテリ側電力端子)(兼用バッテリ側端子)
313・・・・温度信号端子(兼用バッテリ側信号端子)(兼用バッテリ側端子)
311・・・・V2端子(充電器用バッテリ側信号端子)(充電器用バッテリ側端子)
315・・・・V1端子(充電器用バッテリ側信号端子)(充電器用バッテリ側端子)
50・・・・・充電器
512・・・・充電用プラスターミナル(充電用電力端子)(充電器側端子)
514・・・・充電用マイナスターミナル(充電用電力端子)(充電器側端子)
513・・・・温度信号ターミナル(充電器側信号端子)(充電器側端子)
511・・・・V2ターミナル(充電器側信号端子)(充電器側端子)
515・・・・V1ターミナル(充電器側信号端子)(充電器側端子)
TM1・・・・サーミスタ(保護手段)
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