(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】押しボタンスイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 13/04 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
H01H13/04 B
(21)【出願番号】P 2021169373
(22)【出願日】2021-10-15
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】出雲 隆行
(72)【発明者】
【氏名】宮本 幸彦
【審査官】松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-269146(JP,A)
【文献】実開昭54-21178(JP,U)
【文献】中国実用新案第213635793(CN,U)
【文献】中国実用新案第210182270(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00-13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に取り付けられるボタン本体部であって、筒状の突起部、及び前記突起部に形成された開口部を有するボタン本体部と、
前記ボタン本体部に係着取り付けされるボタンキャップであって、前記ボタン本体部に取り付けされたときに、前記ボタン本体部の前記筒状の突起部に嵌合する筒状部、及び前記筒状部に設けられ前記ボタン本体部の開口部と弾性力を伴って係合する突起部を有するボタンキャップと、を含む、
押しボタンスイッチ。
【請求項2】
前記ボタンキャップは、前記ボタン本体部の天面側から前記ボタン本体部へと押し付けて装着した後、前記筒状部が延在する方向を回転軸として前記ボタンキャップを回転させて、前記突起部を前記ボタン本体部の前記開口部に係合される、
請求項1に記載の押しボタンスイッチ。
【請求項3】
前記ボタンキャップの前記突起部の近傍に係止面が形成されており、
前記係止面は、前記ボタンキャップの前記突起部が前記ボタン本体部の前記開口部と係合したときに、前記ボタン本体部の前記開口部と対向して前記ボタンキャップのさらなる回転移動を抑止する、
請求項2に記載の押しボタンスイッチ。
【請求項4】
前記ボタンキャップの前記突起部の端面には、前記ボタン本体部への係着をガイドする斜面部が形成されている、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の押しボタンスイッチ。
【請求項5】
前記ボタンキャップの前記突起部の両端面には、前記ボタンキャップが前記ボタン本体部に係着取り付けされるときに、前記ボタンキャップの前記突起部が前記ボタン本体部の前記開口部に係合されるようガイドする斜面部が形成されている、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の押しボタンスイッチ。
【請求項6】
前記ボタンキャップの前記筒状部は、前記ボタン本体部の前記筒状の突起部の内側に内包されるように、前記ボタン本体部の前記筒状の突起部に嵌合し、前記ボタンキャップの前記突起部は前記ボタン本体部の前記筒状の突起部の内側から前記ボタン本体部の前記開口部と係合する、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の押しボタンスイッチ。
【請求項7】
前記ボタンキャップの前記筒状部は、前記ボタン本体部の前記筒状の突起部の外側を囲むように、前記ボタン本体部の前記筒状の突起部に嵌合し、前記ボタンキャップの前記突起部は前記ボタン本体部の前記筒状の突起部の外側から前記ボタン本体部の前記開口部と係合する、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の押しボタンスイッチ。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の押しボタンスイッチが搭載された電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押しボタンスイッチに関し、特にボタンキャップが表面に取り付けられる押しボタンスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の操作ボタンとして、押しボタンスイッチが用いられている。電子機器の使用者は、押しボタンスイッチを押し下げるなど押しボタンスイッチを操作することにより、電子機器を操作することができる。電子機器の機能増強に伴って、このような押しボタンスイッチの数は増加しており、電子機器の使用者に対して押しボタンスイッチの機能区分を視覚的に明確化することを目的に、複数の押しボタンスイッチを色分けすることも行われている。
【0003】
このような機能区分を視覚的に明確化することに適した押しボタンスイッチとしては、ボタン本体部と、このボタン本体部に取り付けられるボタンキャップと、を含んで押しボタンスイッチを構成することが考えらえる。そして背景技術のボタンキャップの取り付け構造としては、大別して二つの方式が主流である。
【0004】
一つ目は、一般的な射出成形とは異なる特殊な工法である二色成形工法の採用である。この二色成形工法とは、ボタン本体部とボタンキャップの異色の成形工程を一度に行うことにより、それぞれ異なる色の部品を一体化して成形する。この二色成形工法は、ボタンキャップの離脱耐力の観点で良好の工法ではあるが、特殊工法がゆえに製造設備である成形機も専用の二色成形機が必要である。
【0005】
二つ目は、ボタン本体部の天面に対して垂直方向に突出した複数個(例えば二個)の弾性係止部をボタンキャップに具備するものである。また、ボタンキャップが取付けられるボタン本体部には、ボタンキャップの弾性係止部を受ける開口穴からなる係着穴部を具備するものである。
図10Aを参照すると、ボタン本体部101と、ボタンキャップ102と、を含んで押しボタンスイッチが構成されている。ボタンキャップ102は、ボタン本体部101の天面に対して垂直方向に突出した複数個(例えば二個)の弾性係止部102aを具備している。ボタン本体部101は、ボタンキャップ102の弾性係止部102aと相対する場所に、開口穴からなる係着開口部101aを具備している。ボタンキャップ102の弾性係止部102aがボタン本体部101の係着開口部101aを通過するように、ボタン本体部101にボタンキャップ102を取り付けてボタンキャップ102の弾性係止部102aをボタン本体部101に係合させ、ボタンキャップ102をボタン本体部101に取り付ける。例えば、複数の押しボタンスイッチにおいて、このボタンキャップ102を機能区分ごとに色分けし、ボタン本体部に取り付けることにより、機能区分を視覚的に明確化することが可能である。また二色成形工法による押しボタンスイッチと比べて、色分けされた押しボタンスイッチを安価に実現することができる。このような押しボタンスイッチとしては、特許文献1や特許文献2で提案されているものがある。
【0006】
特許文献1は、押しボタンスイッチに関するものであり、スイッチをオンする押しボタン部材を有底弾性筒状体で覆うことや、有底弾性筒状体にガイドシリンダ外周面への抜け止め手段を形成することが提案されている。
【0007】
特許文献2は、キャップ付きキートップに関するものであり、キートップの上面に嵌合穴を穿設すること、柔軟な弾性素材からなるキャップをキートップに脱着可能に取り付けること、キートップの嵌合穴に嵌合する突起をキャップは有することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-025387号公報
【文献】特開平10-207597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した背景技術の押しボタンスイッチには、以下のような課題がある。
【0010】
二色成形工法を採用した押しボタンスイッチでは、ボタン本体部にボタンキャップが一体化して成形されるのでボタンキャップの離脱耐力の観点で優れている。その一方で、二色成形工法を採用した押しボタンスイッチでは、製造設備として専用の二色成形機が必要であり、部品単価が高価となるという課題がある。
【0011】
図10Aに示した背景技術の押しボタンスイッチでは、製品使用時における不意な落下衝撃を受け場合(特に操作面を下に向けて落下した場合)には、ボタンキャップ102の弾性係止部102aが瞬間変形して、
図10Bのようにボタンキャップ102が離脱する不具合が生じる可能性があった。特許文献1の押しボタンスイッチや、特許文献2のキャップ付きキートップにおいてもこの不具合を解消する実現手段は提案されていない。
【0012】
本発明の目的は、上述した課題を鑑み、ボタン本体部に係着取り付けされるボタンキャップの離脱耐力を向上させることができる押しボタンスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、本発明に係る押しボタンスイッチは、
筐体に取り付けられるボタン本体部であって、筒状の突起部、及び上記突起部に形成された開口部を有するボタン本体部と、
上記ボタン本体部に係着取り付けされるボタンキャップであって、上記ボタン本体部に取り付けされたときに、上記ボタン本体部の上記筒状の突起部に嵌合する筒状部、及び上記筒状部に設けられ上記ボタン本体部の開口部と弾性力を伴って係合する突起部を有するボタンキャップと、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ボタン本体部に係着取り付けされるボタンキャップの離脱耐力を向上させることができる押しボタンスイッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の上位概念の実施形態による押しボタンスイッチを説明するための断面図である。
【
図2A】本発明の一実施形態による押しボタンスイッチが適用された電子機器の外観を示す斜視図である。
【
図2B】本発明の一実施形態による押しボタンスイッチが適用された電子機器の概要を説明するための分解斜視図である。
【
図2C】本発明の一実施形態による押しボタンスイッチの外観を示す斜視図である。
【
図3A】本発明の一実施形態による押しボタンスイッチがアレイ状に配列された押しボタンスイッチモジュールの平面図である。
【
図3B】
図3AのA-A線に沿った押しボタンスイッチモジュールの断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による押しボタンスイッチがアレイ状に配列された押しボタンスイッチモジュールの透視斜視図である。
【
図5A】本発明の一実施形態による押しボタンスイッチのボタンキャップ10の側面図である。
【
図5B】本発明の一実施形態による押しボタンスイッチのボタンキャップ10の平面図である。
【
図5C】本発明の一実施形態による押しボタンスイッチのボタンキャップ10の透視斜視図である。
【
図5D】本発明の一実施形態による押しボタンスイッチのボタンキャップ10の断面図である。
【
図5E】
図5DのB-B線に沿ったボタンキャップ10の断面図である。
【
図6A】本発明の一実施形態による押しボタンスイッチの組立方法を説明するための外観図である。
【
図6B】ボタン本体部20の係着開口穴22の周辺の拡大断面図である。
【
図6C】本発明の一実施形態による押しボタンスイッチの組立方法を説明するための、ボタンキャップ10の外観図である。
【
図7A】本発明の一実施形態による押しボタンスイッチの組立方法を説明するための縦断面図である。
【
図7B】本発明の一実施形態による押しボタンスイッチの組立方法を説明するための横断面図である。
【
図7C】本発明の一実施形態による押しボタンスイッチの組立方法を説明するための横断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態の押しボタンスイッチの変形例における、ボタンキャップの弾性係着凸部13の周辺の形状を説明するための拡大断面図である。
【
図9】本発明のその他の実施形態による押しボタンスイッチを説明するための断面図である。
【
図10A】背景技術の押しボタンスイッチの組立方法を説明するための外観図である。
【
図10B】背景技術の課題を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
〔上位概念の実施形態〕
本発明の上位概念による押しボタンスイッチについて、説明する。
図1は、本発明の上位概念の実施形態による押しボタンスイッチを説明するための断面図である。
【0018】
(実施形態の構成)
図1の押しボタンスイッチは、筐体50に取り付けられるボタン本体部51と、このボタン本体部51に係着取り付けされるボタンキャップ52と、を有する。押しボタンスイッチのボタン本体部51は、筒状の突起部51a、及びこの筒状の突起部51aに形成された開口部51bを有する。押しボタンスイッチのボタンキャップ52は、ボタン本体部51に係着取り付けされたときに、ボタン本体部51の筒状の突起部51aに嵌合する筒状部52a、及び筒状部52aに設けられボタン本体部51の開口部51bと弾性力を伴って係合する突起部52bと、を有する。
【0019】
図1の押しボタンスイッチでは、ボタンキャップ52の筒状部52aは、ボタン本体部51の筒状の突起部51aの内側に内包されるように、ボタン本体部51の筒状の突起部51aに嵌合する。また
図1の押しボタンスイッチでは、ボタンキャップ52の突起部52bはボタン本体部51の筒状の突起部51aの内側からボタン本体部51の開口部51bと係合する。
【0020】
図1の押しボタンスイッチは、ボタンキャップ52がボタン本体部51に対して係着取り付けされる。ボタンキャップ52がボタン本体部51に係着取り付けされたときに、ボタンキャップ52の筒状部52aがボタン本体部51の筒状の突起部51aに嵌合すると共に、ボタンキャップ52の突起部52bがボタンキャップ52の開口部51bに弾性力を伴って係合する。特に、ボタンキャップ52の突起部52bは、ボタン本体部51の筒状の突起部51aの側面に形成された開口部51bと弾性力を伴って係合する。
【0021】
(実施形態の効果)
図1の押しボタンスイッチによれば、ボタン本体部51に係着取り付けされるボタンキャップ52の離脱耐力を向上させることができる。
図1の押しボタンスイッチでは、押しボタンスイッチに外的衝撃が与えられた場合でも、ボタンキャップ52の筒状部52aに設けられている突起部52bがボタン本体部51の筒状の突起部51aに形成された開口部51bと係合しているので、ボタンキャップ52のボタン本体部51からの離脱を抑制することができる。特に、ボタン本体部51へのボタンキャップ52の係着方向に対して実質的に垂直方向にボタンキャップ52の突起部52bがボタン本体部51の開口部51bと係合しているので、係着方向と平行な方向の外的衝撃に対しては、ボタンキャップ52の突起部52bがボタン本体部51の開口部51bと係合していることによって、ボタンキャップ52のボタン本体部51からの離脱を抑制することができる。また係着の方向と垂直な方向の外的衝撃に対しては、ボタンキャップ52の筒状部52aがボタン本体部51の筒状の突起部51aに嵌合していることにより、ボタンキャップ52のボタン本体部51からの離脱を抑制することができる。以下、本発明の実施形態による押しボタンスイッチについて、より具体的に説明する。
【0022】
〔一実施形態〕
次に、本発明のより具体的な実施形態として、本発明の一実施形態による押しボタンスイッチについて、説明する。
図2Aは、本発明の一実施形態による押しボタンスイッチが適用された電子機器の外観を示す斜視図である。
図2Bは、本発明の一実施形態による押しボタンスイッチが適用された電子機器の概要を説明するための分解斜視図である。
図2Cは、本発明の一実施形態による押しボタンスイッチの外観を示す斜視図である。
図3Aは本発明の一実施形態による押しボタンスイッチがアレイ状に配列された押しボタンスイッチモジュールの平面図である。
図3Bは、
図3AのA-A線に沿った押しボタンスイッチの断面図である。
図4は、本発明の一実施形態による押しボタンスイッチがアレイ状に配列された押しボタンスイッチモジュールの透視斜視図である。
図5Aは、本発明の一実施形態による押しボタンスイッチのボタンキャップ10の側面図である。
図5Bは、本発明の一実施形態による押しボタンスイッチのボタンキャップ10の平面図である。
図5Cは、本発明の一実施形態による押しボタンスイッチのボタンキャップ10の透視斜視図である。
図5Dは、本発明の一実施形態による押しボタンスイッチのボタンキャップ10の断面図である。
図5Eは、
図5DのB-B線に沿ったボタンキャップ10の断面図である。
図5Fは、
図5Eの弾性係着凸部13の周辺の拡大図である。
【0023】
(一実施形態の構成)
図2A乃至
図2Cに示す電子機器は、本実施形態の押しボタンスイッチが実装される装置本体の上筐体(以降、カバー30と称する)と、複数個が一体となったボタン本体部20と、このボタン本体部20に係着取り付けされる複数個のボタンキャップ10と、を含んで構成される。
【0024】
カバー30自体は、構造設計的には背景技術の方式と変わらず、ボタン本体部20を露出させるためにボタン数に合わせたボタン用開口穴31を具備している。また、カバー30の内面側には、ボタン本体部20を取り付けるためにネジ締結用ボス32が適宜設けられている。
【0025】
ボタン本体部20は、天面側に貫通した円筒形状からなるキャップ係着受け部21、及びこのキャップ係着受け部21の側面の一部に形成された開口形状からなる係着開口穴22を含む。
図3Aに示すように、ボタン本体部20は、全てのボタンが連結用枠であるランナ部23で繋がると共に、各ボタンは細い弾性形状のヒンジ部24にて上記ランナ部23に繋がることにより、ボタン本体部20として一体化した部品構成としている。ランナ部23はネジで、カバー30の内面側のネジ締結用ボス32に固定される。
【0026】
押しボタンスイッチ1のボタンキャップ10は
図4や
図5A乃至
図5Fに示すように、ボタン本体部20に係着取り付けされたときに、ボタン本体部20の円筒形状からなるキャップ係着受け部21に嵌合する筒状部11と、筒状部11に設けられた弾性係着部12と、ボタン本体部20の係着開口穴22に係着する弾性係着凸部13と、を有する。ボタンキャップ10の弾性係着凸部13は、ボタンキャップ10がボタン本体部20に係着取り付けされたときに、ボタン本体部20の係着開口穴22に係着するような対応する位置に配置されている。
図5Fに示すように、弾性係着凸部13の近傍には、係止面13aが形成されている。
【0027】
図4の押しボタンスイッチ1では、ボタンキャップ10の筒状部11は、ボタン本体部20のキャップ係着受け部21の内側に内包されるように、ボタン本体部20のキャップ係着受け部21に嵌合する。また
図4の押しボタンスイッチ1では、ボタンキャップ10の弾性係着凸部13はボタン本体部20のキャップ係着受け部21の内側からボタン本体部20の係着開口穴22と弾性力を伴って係合する。
【0028】
本実施形態の押しボタンスイッチ1では、ボタンキャップ10の筒状部11をボタン本体部20のキャップ係着受け部21へと押し込んだ後で、ボタンキャップ10の筒状部11を回転軸としてボタンキャップ10を回転移動させる。このボタンキャップ10の回転移動により、ボタンキャップ10の弾性係着凸部13をボタン本体部20の係着開口穴22に係着させ、ボタンキャップ10をボタン本体部20に固定する。
【0029】
ボタンキャップ10を回転移動によって装着させる狙いは、落下衝撃時に生じるボタンキャップ10とボタン本体部20を引き剥がす方向(係着嵌合面に対して垂直方向)とは別方向(水平方向)の嵌合及び係着を実現するためである。
【0030】
二つの部品(例えばボタン本体部とボタンキャップ)を係着嵌合させた構造体では、落下衝撃時において瞬間的にボタンキャップとボタン本体部を引き剥がす様な(係着嵌合面に対して垂直方向の)エネルギーが生じる。このことで、係着嵌合機能を有したボタンキャップに具備した弾性係止部が変位し、ボタン本体部に具備した係着開口穴から外れて、ボタンキャップの離脱に至るメカニズムが想定される。これに対して本実施形態の押しボタンスイッチ1では、部品離脱方向(垂直方向)とは異なる方向での異部品間取り付け構造を採用することにより、ボタンキャップの離脱を抑止する。
【0031】
なお、ここで本実施形態の押しボタンスイッチ1においては、その組立において弾性係着部12や弾性係着凸部13の弾性変形を利用するので、ボタンキャップ10の弾性係着凸部13は、ボタンキャップ10の材質の物性に合致した弾性限度を考慮して寸法設計するものとする。すなわち弾性係着凸部13の弾性係着部12の主表面からの突出高さや突出幅、弾性係着部12の長さなどの寸法は、ボタンキャップ10の材質の物性に合致した弾性限度を考慮して設計する。
【0032】
(押しボタンスイッチの組立)
続いて、本実施形態による押しボタンスイッチ1の組立方法について、図面を用いて作業手順に従って説明する。
図6Aは、本発明の一実施形態による押しボタンスイッチの組立方法を説明するための外観図である。
図6Bは、ボタン本体部20の係着開口穴22の周辺の拡大断面図である。
図6Cは、本発明の一実施形態による押しボタンスイッチの組立方法を説明するための、ボタンキャップ10の外観図である。
図7Aは、本発明の一実施形態による押しボタンスイッチの組立方法を説明するための縦断面図である。
図7Bは、本発明の一実施形態による押しボタンスイッチの組立方法を説明するための横断面図である。
図7Cは、本発明の一実施形態による押しボタンスイッチの組立方法を説明するための横断面図である。
【0033】
第一の作業手順では
図6Aに示すように、ボタン本体部20の天面側に具備した貫通した円筒形状からなるキャップ係着受け部21に、ボタンキャップ10の内面側から突出した筒状部11を挿入する。挿入方向に対して垂直な、ボタンキャップ10のいずれかの表面が、ボタン本体部20のいずれかの表面に当接する位置まで、ボタンキャップ10は押し込まれる。
【0034】
ボタンキャップ10の筒状部11がボタン本体部20のキャップ係着受け部21に装着された際に
図7Bに係着解除状態として示すように、ボタンキャップ10の弾性係着凸部13はボタン本体部20のキャップ係着受け部21の内面に押し込められた様に弾性変位した状態となっている。ボタン本体部20とボタンキャップ10とは、ボタンキャップ10の弾性係着凸部13の弾性復旧力にて、状態保持する。
【0035】
更に第二の作業手順として、上述した状態のボタンキャップ10をボタン天面とは水平方向に回転させる。言い換えると、ボタンキャップ10の筒状部11を回転軸としてボタンキャップ10を回転移動させる。このようにボタンキャップ10を水平方向に回転させることにより、
図7Cに係着状態として示すように、ボタンキャップ10の弾性係着凸部13がボタン本体部20の係着開口穴22に嵌合及び係着することになり、ボタン本体部20へのボタンキャップ10の取り付けが完了する。この第一の作業手順及び第二の作業手順を経て、ボタンキャップ10をボタン本体部20に被せた後、例えば
図6Cに矢印で示す方向とは反対方向にボタンキャップ10をひねって(回転させて)、ボタン本体部20にボタンキャップ10を係着させることにより、本実施形態の押しボタンスイッチ1の組立が完了する。
【0036】
ボタンキャップ10の弾性係着凸部13がボタン本体部20の係着開口穴22に嵌合したときに、弾性係着凸部13近傍の係止面13aは、係着開口穴22の内面と対向する或いは接触するなどして、ボタンキャップ10のさらなる回転移動(
図6Cの矢印で示す方向の回転移動)を抑止するように働く。ボタンキャップ10の弾性係着凸部13とボタン本体部20の係着開口穴22とが一旦嵌合してしまえば、この係止面13aの働きによって、
図6Cの矢印で示す方向にはボタンキャップ10は回転しなくなる。このようにこの弾性係着凸部13近傍の係止面13aの働きによって、ボタン本体部20へのボタンキャップ10の取付けが強固なものになる。
【0037】
(実施形態の効果)
本実施形態の押しボタンスイッチによれば、ボタン本体部20に係着取り付けされるボタンキャップ10の離脱耐力を向上させることができる。その理由は、落下衝撃時に生じるボタンキャップ10とボタン本体部20を引き剥がす方向(係着嵌合面に対して垂直方向)とは別方向(水平方向)の嵌合及び係着を、実現しているからである。その際、特殊で高価な加工方法である二色成形工法を用いることなく、一般的な射出成形工法の採用にて、ボタンキャップ10の離脱耐力を向上させることができる。また本実施形態の押しボタンスイッチでは、上述した第一の作業手順及び第二の作業手順にて押しボタンスイッチを組立てることができ、低コストで押しボタンスイッチを組み立てることができる。
【0038】
(実施形態の変形例)
上述した実施形態の押しボタンスイッチ1においては、
図8に示すような、ボタンキャップ10の弾性係着部12の端面、特に弾性係着凸部13の端面に、ボタン本体部20の係着開口穴22への係着をガイドする係着ガイド斜面14が形成されていてもよい。
図8は、本発明の一実施形態の押しボタンスイッチの変形例を示す図であって、ボタンキャップの弾性係着凸部13の周辺の形状を説明するための拡大断面図である。
図8では、ボタンキャップ10の弾性係着凸部13の両端面に、係着ガイド斜面14が形成されている状態を示している。この係着ガイド斜面14は、ボタンキャップ10がボタン本体部20に係着取り付けされるときに、ボタンキャップ10の弾性係着凸部13がボタン本体部20の係着開口穴22へ係合されるようガイドする。
【0039】
係着ガイド斜面14が形成されていることにより、上述した第二の作業手順において、ボタンキャップ10をひねって(回転させて)ボタン本体部20にボタンキャップ10を係着させる工程がより簡単により確実に行うことができる。また係着ガイド斜面14が弾性係着凸部13の両端面に形成されている場合には、ボタンキャップ10の弾性係着凸部13とボタン本体部20の係着開口穴22との間の最終的な係合状態へのガイドを、より確実に行うことができる。
【0040】
〔その他の実施形態〕
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
図1の押しボタンスイッチでは、ボタンキャップ52の筒状部52aは、ボタン本体部51の筒状の突起部51aの内側に内包されるように、ボタン本体部51の筒状の突起部51aに嵌合するものとして、説明した。
図4の押しボタンスイッチでは、ボタンキャップ10の筒状部11は、ボタン本体部20のキャップ係着受け部21の内側に内包されるように、ボタン本体部20のキャップ係着受け部21に嵌合するものとして、説明した。
【0041】
しかしながら、ボタンキャップの筒状部とボタン本体部の筒状の突起部との関係は相対的なものであるので、両者が嵌合できる構造としてはこれに限られない。例えば、ボタン本体部の筒状の突起部がボタンキャップの筒状部の内側に内包されるように、ボタンキャップがボタン本体部に係着取り付けされる構造を採用することもできる。
図9は、本発明のその他の実施形態による押しボタンスイッチを説明するための断面図である。
【0042】
図9の押しボタンスイッチは、筐体50に取り付けられるボタン本体部53と、このボタン本体部53に係着取り付けされるボタンキャップ54と、を有する。押しボタンスイッチのボタン本体部53は、筒状の突起部53a、及びこの筒状の突起部53aに形成された開口部53bを有する。押しボタンスイッチのボタンキャップ54は、ボタン本体部53に係着取り付けされたときに、ボタン本体部53の筒状の突起部53aに嵌合する筒状部54a、及び筒状部54aに設けられボタン本体部53の開口部53bと弾性力を伴って係合する突起部54bと、を有する。
【0043】
図9の押しボタンスイッチでは、ボタン本体部53の筒状の突起部53aはボタンキャップ54の筒状部54aの内側に内包されるように、ボタンキャップ54の筒状部54aがボタン本体部53の筒状の突起部53aに嵌合する。また
図9の押しボタンスイッチでは、ボタンキャップ54の突起部54bはボタン本体部53の筒状の突起部53aの外側からボタン本体部53の開口部53bと係合する。
【0044】
図9に示される、本実施形態の押しボタンスイッチにおいても、ボタン本体部53に係着取り付けされるボタンキャップ54の離脱耐力を向上させることができる。押しボタンスイッチに外的衝撃が与えられた場合でも、ボタンキャップ54の筒状部54aに設けられている突起部54bがボタン本体部53の筒状の突起部53aに形成された開口部53bと係合しているので、ボタンキャップ54のボタン本体部53からの離脱を抑制することができる。特に、ボタン本体部53へのボタンキャップ54の係着の方向に対して実質的に垂直方向にボタンキャップ54の突起部54bがボタン本体部53の開口部53bと係合しているので、係着の方向と平行な方向の外的衝撃に対しては、ボタンキャップ54の突起部54bがボタン本体部53の開口部53bと係合していることによって、ボタンキャップ54のボタン本体部53からの離脱を抑制することができる。また係着の方向と垂直な方向の外的衝撃に対しては、ボタンキャップ54の筒状部54aがボタン本体部53の筒状の突起部53aに嵌合していることにより、ボタンキャップ54のボタン本体部53からの離脱を抑制することができる。
【0045】
なお本実施形態においても、その組立においてボタンキャップ54の突起部54bの弾性変形を利用するので、ボタンキャップ54の突起部54bは、ボタンキャップ54の材質の物性に合致した弾性限度を考慮して寸法設計するものとする。すなわちボタンキャップ54の突起部54bの寸法は、ボタンキャップ54の材質の物性に合致した弾性限度を考慮して設計する。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0047】
1 押しボタンスイッチ
10、52、54 ボタンキャップ
11 筒状部
12 弾性係着部
13 弾性係着凸部
13a 係止面
14 係着ガイド斜面
20、51、53 ボタン本体部
21 キャップ係着受け部
22 係着開口穴
23 ランナ部
24 ヒンジ部
30 カバー
31 ボタン用開口穴
32 ネジ締結用ボス
50 筐体
51a、53a 筒状の突起部
51b、53b 開口部
52a、54a 筒状部
52b、54b 突起部
101 ボタン本体部 101a 係着開口部
102 ボタンキャップ
102a 弾性係止部
【要約】
【課題】ボタン本体部に係着取り付けされるボタンキャップの離脱耐力を向上させることができる押しボタンスイッチを提供する。
【解決手段】押しボタンスイッチは、筐体に取り付けられるボタン本体部であって、筒状の突起部、及び前記突起部に形成された開口部を有するボタン本体部と、前記ボタン本体部に係着取り付けされるボタンキャップであって、前記ボタン本体部に取り付けされたときに、前記ボタン本体部の前記筒状の突起部に嵌合する筒状部、及び前記筒状部に設けられ前記ボタン本体部の開口部と弾性力を伴って係合する突起部を有するボタンキャップと、を含む。
【選択図】
図1