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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】振動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
B06B1/04 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021176425
(22)【出願日】2021-10-28
(62)【分割の表示】P 2017190507の分割
【原出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2022009660
(43)【公開日】2022-01-14
【審査請求日】2021-10-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】飛鳥川 孝史
(72)【発明者】
【氏名】千葉 雄介
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 義一
(72)【発明者】
【氏名】山上 憲
(72)【発明者】
【氏名】後藤 元
(72)【発明者】
【氏名】原 晃
(72)【発明者】
【氏名】笹沼 起史
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-042017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケースと、
前記ケースに設けられたコイルと、
前記コイルにより前記ケースの振動軸線に沿って振動する可動子と、
外周部が前記ケースに固定され、内周部が前記可動子に固定されたダンパと、
前記可動子は、穴が形成されていない円板状のマグネット、ポールピース及びマスと、
を備え、
前記マスの外径が、前記ポールピースの外径よりも小さい、
ことを特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記マグネットの外径が、前記ポールピースの外径よりも小さい請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記コイルは、前記可動子の径方向外側に配置されている請求項1又は請求項2に記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記コイルは、前記ポールピースの径方向外側に配置されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記コイルは、前記マスの径方向外側の側面の一部に配置されている請求項1から請求項4のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【請求項6】
前記コイルの上方の端部と下方の端部が、前記ポールピースの上方の端部と下方の端部よりも前記マス側又は前記マグネット側に位置し、前記ポールピースの振動軸線方向の厚さよりも前記コイルの上下方向の高さが大きい請求項1から請求項5のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【請求項7】
前記マスの外径が、前記ダンパとの当接部よりも大きい請求項1から請求項6のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低コストの振動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
振動アクチュエータやリニアアクチュエータに用いられる円筒状のヨークは、平板を打ち抜き、曲げ加工して円筒としている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
そして、上記の方法で成型した円筒ヨークを金型に圧入し、寸法精度を向上させている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公昭61-045745号公報
【文献】実開昭58-097957号公報
【文献】特許第3965124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した金型で寸法精度を向上させた方法で製造された円筒状のヨークを用いた振動アクチュエータはコストがかかる問題点がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、低コストで、寸法精度がよいヨークを有する振動アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題を解決する請求項1に係る発明の振動アクチュエータは、筒状のケースと、前記ケースに設けられたコイルと、前記コイルにより前記ケースの振動軸線に沿って振動する可動子と、外周部が前記ケースに固定され、内周部が前記可動子に固定されたダンパと、前記可動子は、マグネット、ポールピース及びマスと、を備え、前記マスの外径が、前記ポールピースの外径よりも小さいことを特徴とする。
【0006】
本発明の他の特徴は、以下に述べる発明を実施するための形態並びに添付の図面から一層明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0007】
本発明の振動アクチュエータによれば、前記ヨークは、円筒を異なる母線に沿って切断された短冊状の複数の分割ヨークで構成されている。分割ヨークは、プレス加工等のコストが安く、寸法精度が良い製造方法で形成可能なので、低コストで、寸法精度がよいヨークを有する振動アクチュエータを実現できる。
【0008】
本発明の他の効果は、以下に述べる発明を実施するための形態並びに添付の図面から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の振動アクチュエータの実施形態を説明する分解斜視図である。
図2図1を組み付けた際の上面図である。
図3図2の正面図である。
図4図2の背面図である。
図5図2の下面図である。
図6図3の左側面図である。
図7図2の切断線VII-VIIにおける断面図である。
図8】ケースに分割ヨークを取り付ける方法を説明する図である。
図9】分割ヨークが取り付けられたケースにコイルを取り付ける方法を説明する図である。
図10】分割ヨークとコイルとが取り付けられたケースを説明する図である。
図11図1に示す振動アクチュエータの作動を説明する図である。
図12】他の実施形態の振動アクチュエータの作動を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図を用いて実施形態を説明する。図1は本発明の振動アクチュエータの実施形態を説明する分解斜視図、図2図1を組み付けた際の上面図、図3図2の正面図、図4図2の背面図、図5図2の下面図、図6図3の左側面図、図7図2の切断線VII-VIIにおける断面図、図8はケースに分割ヨークを取り付ける方法を説明する図、図9は分割ヨークが取り付けられたケースにコイルを取り付ける方法を説明する図、図10は分割ヨークとコイルとが取り付けられたケースを説明する図、図11図1に示す振動アクチュエータの作動を説明する図、図12は他の実施形態の振動アクチュエータの作動を説明する図である。尚、図3の右側面は、図6の左側面と同一である。
(全体構成)
図1図7を用いて振動アクチュエータの全体構成を説明する。
【0011】
両端に開口を有する円筒状でABS等の樹脂でなるケース1の内部には円筒状の軟磁性材料でなるヨーク11が設けられている。ヨーク11の内周面には、ヨーク11と電気的に絶縁された状態でコイル21が取り付けられている。
ケース1の一方の開口側の端面には、ABS等の樹脂でなる円筒状の第1カバーケース31が配置される。ケース1の他方の開口側の端面には、ABS等の樹脂でなる円筒状の第2カバーケース41が配置されている。
【0012】
第1カバーケース31のケース1と反対側の開口側の端面には、ステンレスの薄板を加工してなり、ケース1の振動軸線Oに沿って可撓可能な第1ダンパ51が配置されている。第2カバーケース41のケース1と反対側の開口側の端面には、ステンレスの薄板を加工してなり、ケース1の振動軸線Oに沿って可撓可能な第2ダンパ61が配置されている。
【0013】
第1カバーケース31と協働して第1ダンパ51を挟むように第1ダンパカバー71が配置されている。第2カバーケース41と協働して第2ダンパ61を挟むように第2ダンパカバー81が配置されている。
第1ダンパカバー71の縁部に沿って120°ピッチで3つの貫通した穴71aが形成されている。第1カバーケース31には、第1ダンパカバー71の穴71aに対向する3つの貫通した穴31aが形成されている。ケース1の一方の開口側の端面には、第1カバーケース31の3つの穴31aに対向する3つのめねじ穴1aが形成されている。
【0014】
そして、第1ダンパカバー71の穴71a、第1カバーケース31の穴31aを挿通し、ケース1のめねじ穴1aに螺合する3本のねじ91により、第1ダンパ51は、第1ダンパカバー71と第1カバーケース31とに挟持されで、第1ダンパカバー71、第1ダンパ51、第1カバーケース31は、ケース1の一方の開口側に取り付けられている。
【0015】
第2ダンパカバー81の縁部に沿って120°ピッチで3つの貫通した穴81aが形成されている。第2カバーケース41には、第2ダンパカバー81の穴81aに対向する3つの貫通した穴41aが形成されている。ケース1の他方の開口側の端面には、第2カバーケース41の3つの穴41aに対向する3つのめねじ穴(図示せず)が形成されている。
【0016】
そして、第2ダンパカバー81の穴81a、第2カバーケース41の穴41aを挿通し、ケース1の他方の開口側の端面に形成されためねじ穴に螺合する3本のねじ101により、第2ダンパ61は、第2ダンパカバー81と第2カバーケース41とに挟持され、第2ダンパカバー81、第2ダンパ61、第2カバーケース41は、ケース1の他方の開口側に取り付けられている。
【0017】
第1ダンパ51と第2ダンパ61との間には、コイル21に包囲され、振動軸線Oに沿って振動する可動子111が配置される。可動子111は、円板状のマグネット113と、マグネット113を挟むように配置された円板状の第1ポールピース115、第2ポールピース117と、マグネット113,第1ポールピース115,第2ポールピース117を挟むように配置される第1マス(錘)119,第2マス(錘)121からなっている。
【0018】
マグネット113は着磁方向が振動軸線O方向である。第1ポールピース115、第2ポールピース117は、難磁性材料でなり、マグネット113の磁気吸着力及び接着剤等により、マグネット113に取り付けられている。第1マス119、第2マス121は、非磁性体でなり、接着剤等により、第1ポールピース115、第2ポールピース117に取り付けられている。このため、可動子111を構成するマグネット113,第1ポールピース115、第2ポールピース117、第1マス119、第2マス121は一体化されている。
【0019】
第1マス119,第2マス121には、中心軸に沿って貫通した穴119a、貫通した穴121aが形成されている。また、第1ダンパ51の中心には、第1マス119の穴119aに対向し、貫通した穴51aが形成されている。同様に、第2ダンパ61の中心には、第2マス121の穴121aに対向し、貫通した穴61aが形成されている。
【0020】
そして、ピン131が第1ダンパ51の穴51aを挿通し、第1マス119の穴119aに圧入され、ピン141が第2ダンパ61の穴61aを挿通し、第2マス121の穴121aに圧入されることにより、可動子111はケース1の振動軸線Oに沿って振動可能に支持されている。
【0021】
ケース1の周面には、リード線が接続され、コイル21に電流を供給するターミナル3が形成されている。
(ケース1、ヨーク11、コイル21)
図8図10を用いて説明する。
本実施形態のヨーク11は、円筒を異なる母線に沿って切断された短冊状の複数(本実施形態では3つ)の分割ヨーク13で構成されている。
【0022】
また、本実施形態のコイル21は、振動軸線Oに沿って配置され、第1コイル23、第2コイル25からなっている。第1コイル23、第2コイル25は、ヨーク11の内周面に沿って巻回されている。
ケース1の内周面には、振動軸線O方向に突出し、振動軸線O方向に延びるリブ5が等ピッチ間隔で3か所形成されている。
【0023】
各リブ5の振動軸線O方向の2つの端面には、分割ヨーク13の母線に沿った端面が当接する分割ヨーク当接面5aが形成されている。本実施形態では、リブ5は樹脂でなっているので、弾性を有している。よって、分割ヨーク13の母線に沿った2つの端面が当接する。
【0024】
分割ヨーク13の母線に沿った端面が、リブ5の分割ヨーク当接面5aに当接することで、分割ヨーク13のケース1の周方向の位置決めが成される。
また、各リブ5の可動子111のマグネット113と対向する面5bには可動子111方向に突出する突起7が形成されている。突起7のケース1の一方の開口側には、第1コイル23の開口側の端部が当接する第1コイル当接面7aが形成されている。突起7のケース1の他方の開口側には、第2コイル25の開口側の端部が当接する第2コイル当接面7bが形成されている。
【0025】
第1コイル23の開口側の端部が、リブ5の突起7の第1コイル当接面7aに当接し、第1コイル23のケース1の振動軸線O方向の位置決めがなされた状態で、接着剤等を用いて第1コイル23のヨーク11への取り付けがなされる。第2コイル25の開口側の端部が、リブ5の突起7の第2コイル当接面7bに当接し、第2コイル25のケース1の振動軸線O方向の位置決めがなされた状態で、接着剤等を用いて第2コイル25のヨーク11への取り付けがなされる。
【0026】
(作動)
図11を用いて、本実施形態の振動アクチュエータの作動を説明する。
第1コイル23、第2コイル25に通電していない状態では、第1ダンパ51、第2ダンパ61で支持される可動子111は、コイル21の中央に位置している。
【0027】
第1コイル23、第2コイル25には、交互に逆極性の磁界を発生する向きに交流を通電させる。即ち、第1コイル23,第2コイル25の隣り合う部分に同極が発生するようになっている。
図11の極性では、可動子111には下方(矢印A方向)への推力が発生し、第1コイル23、第2コイル25へ流す電流を反転させれば、可動子111には上方向(矢印B方向)への推力が発生する。
【0028】
このように、第1コイル23、第2コイル25に交流を通電させれば、可動子111はケース1、第1ダンパ51、第2ダンパ61よる付勢力を両側から受けながら、振動軸線Oに沿って振動する。
ところで、可動子111に発生する推力は、基本的にはフレミングの左手の法則に基づいて与えられる推力に準じられる。本実施形態では、第1コイル23、第2コイル25が固定されているので、可動子111に第1コイル23、第2コイル25に発生する力の反力としての推力が発生する。
【0029】
よって、推力に寄与するのは、可動子111のマグネット113の磁束の水平成分(マグネット113の軸方向に直交する成分)である。そして、ヨーク11はマグネット113の磁束の水平成分を増大するものである。
上記構成によれば、以下のような効果が得られる。
【0030】
(1) ヨーク11は、円筒を異なる母線に沿って切断された短冊状の複数の分割ヨーク13で構成されている。分割ヨーク13は、プレス加工等のコストが安く、寸法精度が良い製造方法で形成可能なので、低コストで、寸法精度がよいヨークを有する振動アクチュエータを実現できる。
【0031】
(2) リブ5に設けた突起7をガイドとして、第1コイル23、第2コイル25を設けるので、従来必要であったコイルを保持するボビン(円筒)が不要となり、小型の振動アクチュエータを実現できる。
(3) 分割ヨーク13の母線に沿った端面が、リブ5の分割ヨーク当接面5aに当接することで、分割ヨーク13のケース1の周方向の位置決めを行うことができる。
【0032】
尚、上記実施形態では、分割ヨーク13の母線に沿った2つ端面が、弾性を有する隣り合うリブ5の分割ヨーク当接面5a間に圧入されるような形態であったが、分割ヨーク13の母線に沿った2つ端面のうち一方の端面がリブ5の分割ヨーク当接面5aに当接することにより、分割ヨーク13のケース1の周方向の位置決めは行える。
【0033】
(4) 第1コイル23の開口側の端部が、リブ5の突起7の第1コイル当接面7aに当接することで、第1コイル23のケース1の振動軸線O方向の位置決めを行うことができる。また、第2コイル25の開口側の端部が、リブ5の突起7の第2コイル当接面7bに当接することで、第2コイル25のケース1の振動軸線O方向の位置決めを行うことができる。
【0034】
尚、本発明は上記実施形態に限定するものではない。
上記実施形態では、コイル21は第1コイル23、第2コイル25の2つからなった例で説明をしたが、図12に示すように、1つのコイル221でもよい。この場合、可動子311のマグネットはラジアル方向に着磁されている。
【符号の説明】
【0035】
1 ケース
11 ヨーク
13 分割ヨーク
21 コイル
111 可動子
113 マグネット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12