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特許7189315結石破砕装置、結石破砕システムおよび処置用レーザ光の光量を調節する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】結石破砕装置、結石破砕システムおよび処置用レーザ光の光量を調節する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/26 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
A61B18/26
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021501517
(86)(22)【出願日】2019-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2019007928
(87)【国際公開番号】W WO2020174686
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】福島 郁俊
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 篤義
(72)【発明者】
【氏名】雙木 満
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0276101(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結石を破砕する処置用レーザ光を射出するレーザ光射出部と、
ガイド光を射出するガイド光射出部と、
前記ガイド光の照射により前記結石から反射されて戻る戻り光を検出する戻り光検出部と、
前記レーザ光射出部、前記ガイド光射出部および前記戻り光検出部にそれぞれ接続され、相互に近接してまたは同軸に配置された第1の光ファイバ、第2の光ファイバおよび第3の光ファイバと、
前記戻り光が検出されるまでの時間に基づいて、前記ガイド光射出部から前記結石までの距離である光路長を計測する距離計測部と、
該距離計測部により計測された前記距離の時間的変動に基づいて前記レーザ光射出部と前記結石との間に生ずるバブルの大きさを判定する判定部と、
判定された前記バブルの大きさに基づいて、前記処置用レーザ光の光量を調節する光量制御部とを備える結石破砕装置。
【請求項2】
判定された前記バブルの大きさを表示する表示部を更に備える請求項1に記載の結石破砕装置。
【請求項3】
前記光量制御部は、前記距離の変化量が非周期的であり、且つ所定の閾値を超えて増大したときに前記処置用レーザ光の光量を低減させる請求項1に記載の結石破砕装置。
【請求項4】
前記ガイド光が、前記処置用レーザ光の前記結石における照射位置を前記判定部による判定結果に応じた色で可視化する請求項2に記載の結石破砕装置。
【請求項5】
前記距離計測部は、Time of Flight法により前記距離を計測する請求項1から請求項のいずれかに記載の結石破砕装置。
【請求項6】
請求項1、請求項3、請求項4および請求項のいずれかに記載の結石破砕装置と、
前記結石の画像を取得する画像取得部と、
判定された前記バブルの大きさおよび取得された前記画像を表示する表示部とを備える結石破砕システム。
【請求項7】
前記画像取得部により取得された前記画像と、前記距離計測部により計測された前記距離とに基づいて、前記結石の大きさを推定する結石サイズ推定部を備え、
前記表示部が、前記結石サイズ推定部により推定された前記結石の大きさを表示する請求項に記載の結石破砕システム。
【請求項8】
前記結石を回収する結石回収部と、
該結石回収部により回収可能な前記結石の大きさである回収サイズを記憶する回収サイズ記憶部と、
前記距離計測部により計測された前記距離と前記回収サイズとに基づいて、前記結石と対比可能な回収サイズを示す情報を生成する回収サイズ情報生成部とを備え、
前記表示部が、前記回収サイズを示す前記情報を表示する請求項に記載の結石破砕システム。
【請求項9】
前記回収サイズ情報生成部が、前記回収サイズを示す仮想画像を生成し、
前記表示部が、前記仮想画像を前記結石の前記画像に重ね合わせて表示する請求項に記載の結石破砕システム。
【請求項10】
前記画像取得部により取得された前記画像と、前記距離計測部により計測された前記距離とに基づいて、前記結石の大きさを推定する結石サイズ推定部と、
該結石サイズ推定部により推定された前記結石の大きさと前記回収サイズとに基づいて前記結石回収部により回収可能か否かを判定する回収可否判定部とを備え、
前記表示部が、前記回収可否判定部による判定結果を表示する請求項に記載の結石破砕システム。
【請求項11】
処置用レーザ光源が、結石を破砕する処置用レーザ光を射出するレーザ光射出ステップと、
ガイド光用光源が、前記処置用レーザ光と近接する位置又は同軸の位置からガイド光を射出するガイド光射出ステップと、
戻り光検出部が、前記ガイド光の照射により前記結石から反射されて戻る戻り光を検出する戻り光検出ステップと、
距離計測部が、前記戻り光が検出されるまでの時間に基づいて、前記ガイド光用光源から前記結石までの距離である光路長を計測する距離計測ステップと、
判定部が、該距離計測ステップにより計測された前記距離の時間的変動に基づいて前記処置用レーザ光源と前記結石との間に生ずるバブルの大きさを判定する判定ステップと、
光量制御部が、判定された前記バブルの大きさに基づいて、前記処置用レーザ光の光量を調節する光量制御ステップと、を備える処置用レーザ光の光量を調節する方法
【請求項12】
表示部が、判定された前記バブルの大きさを表示する表示ステップを更に備える請求項11に記載の処置用レーザ光の光量を調節する方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結石破砕装置、結石破砕システムおよび処置用レーザ光の光量を調節する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続するパルス状のレーザ光を用いて結石を破砕する装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この特許文献1においては、結石破砕用のレーザ光が結石において反射して戻る戻り光の光量を用いて結石までの距離を測定し、測定された距離に基づいてレーザ光の条件を決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2017/354464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レーザ光の照射によって、レーザ光が通過する位置に存在する液体が蒸発することによるバブルの発生と、発生したバブルが冷却されることによる消滅とが繰り返され、結石の周囲の環境が時々刻々と変動する。レーザ光は液体によって吸収されるため、結石を効率的に破砕するには、適正なバブルが形成されている状態でレーザ光が照射されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、結石を破砕する処置用レーザ光を射出するレーザ光射出部とガイド光を射出するガイド光射出部と、前記ガイド光の照射により前記結石から反射されて戻る戻り光を検出する戻り光検出部と、前記レーザ光射出部、前記ガイド光射出部および前記戻り光検出部にそれぞれ接続され、相互に近接してまたは同軸に配置された第1の光ファイバ、第2の光ファイバおよび第3の光ファイバと、前記戻り光が検出されるまでの時間に基づいて、前記ガイド光射出部から前記結石までの距離である光路長を計測する距離計測部と、該距離計測部により計測された前記距離の時間的変動に基づいて前記レーザ光射出部と前記結石との間に生ずるバブルの大きさを判定する判定部と、判定された前記バブルの大きさに基づいて、前記処置用レーザ光の光量を調節する光量制御部とを備える結石破砕装置である。
【0006】
また、本発明の参考態様は、結石を破砕する処置用レーザ光を射出するレーザ光射出部と、ガイド光を射出するガイド光射出部と、前記ガイド光の照射により前記結石から反射されて戻る戻り光を検出する戻り光検出部と、前記戻り光に基づいて、前記レーザ光射出部から前記結石までの距離を計測する距離計測部と、該距離計測部により計測された前記距離に基づいて前記レーザ光射出部と前記結石との間に生ずるバブルの状態を判定する判定部と、判定された前記バブルの状態を表示する表示部とを備える結石破砕装置である。
さらに、本発明の他の態様は、上記いずれかの結石破砕装置と、前記結石の画像を取得する画像取得部と、取得された前記画像を表示する表示部とを備える結石破砕システムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の各態様によれば、結石の周囲の環境要因に依らず、結石を効率的に破砕することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る結石破砕装置および結石破砕システムを示す全体構成図である。
図2図1の結石破砕装置による処置用レーザ光の照射中に適正なバブルが形成されている状態で距離計測部により計測される距離の情報の一例を模式的に示す図である。
図3図1の結石破砕装置による処置用レーザ光の照射中に小さいバブルが形成されている状態で距離計測部により計測される距離の情報の一例を模式的に示す図である。
図4図1の結石破砕装置による処置用レーザ光の照射中に大きいバブルが形成されている状態で距離計測部により計測される距離の情報の一例を模式的に示す図である。
図5図1の結石破砕装置および結石破砕システムの第1の変形例を示す全体構成図である。
図6図1の結石破砕装置および結石破砕システムの第2の変形例を示す全体構成図である。
図7図6の結石破砕システムのモニタに画像とともに表示される結石と対比可能な回収サイズを示す情報の一例を示す図である。
図8図6の結石破砕システムのモニタに画像とともに表示される結石と対比可能な回収サイズを示す情報の他の例を示す図である。
図9図1の結石破砕装置および結石破砕システムの第3の変形例を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係る結石破砕装置3および結石破砕システム1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る結石破砕システム1は、図1に示されるように、内視鏡(画像取得部)2と、本実施形態に係る結石破砕装置3と、内視鏡2により取得された画像G1を表示するモニタ(表示部)4とを備えている。
【0010】
内視鏡2は、体腔内に挿入される挿入部21の先端に体腔内の結石Xに向かって照明光を照射する照明光学系22と、結石Xにおける照明光の反射光を撮影する撮像光学系23とを備えている。また、内視鏡2は、挿入部21に長手方向に沿って貫通するチャンネル24を備えている。そして、内視鏡2は、後述する光ファイバ31,32,33が挿入されたチャンネル24内の空間を利用して、基端側から生理食塩水を供給し、体腔内の液体を還流させる機能を有している。
【0011】
結石破砕装置3は、内視鏡2のチャンネル24内に挿入される3本のシングルモードの光ファイバ31,32,33を備えている。
第1の光ファイバ31の基端側には、ガイド光を射出するガイド光用光源(ガイド光射出部)34が接続されている。第2の光ファイバ32の基端側には、結石Xを破砕するための処置用レーザ光を射出する処置用レーザ光源(レーザ光射出部)35が接続されている。また、第3の光ファイバ33の基端側には、結石Xに照射され反射して戻るガイド光の戻り光のうち、第3の光ファイバ33の先端から入射した戻り光を検出する光検出器(戻り光検出部)36が接続されている。3本の光ファイバ31,32,33の先端は、同一位置に揃えて配置されている。
【0012】
ガイド光は、可視光領域のパルス光(例えば、緑色)であり、処置用レーザ光は、例えば近赤外光である。ガイド光は、結石Xにおける処置用レーザ光の照射位置とほぼ同一位置に照射されて、処置用レーザ光とは異なる波長である緑色のスポットYを形成することにより、処置用レーザ光の照射位置を可視化する。
【0013】
ガイド光用光源34と光検出器36には、ガイド光と戻り光とに基づいて、ガイド光を射出する3本の光ファイバ31,32,33の先端と結石Xとの間の距離を計測する距離計測部37が接続されている。
距離計測部37は、ガイド光用光源34から射出された所定周波数のパルスレーザ光であるガイド光の結石Xにおける戻り光を光検出器36により検出することにより、ガイド光がガイド光用光源34から射出されてから戻り光が光検出器36で検出されるまでの時間を算出し、算出された時間に光速を乗算して2で割ることにより、距離を算出する。また、結石Xと光ファイバ33の間に生理食塩水などの媒質がある場合には、その媒質を考慮し距離が計算される。
【0014】
また、距離計測部37には、判定部38が接続され、判定部38には光量制御部39が接続されている。
判定部38は、処置用レーザ光を射出している状態において、距離計測部37により計測された距離に基づいて、第3の光ファイバ33の先端から結石Xまでの間において発生するバブルの状態を判定する。
具体的には、距離計測部37により計測された距離の時間的変動が、所定の周期範囲を定める下限周期以上、かつ、上限周期未満であるか否かを判定する。
【0015】
距離の時間的変動が下限周期未満である場合には、射出している処置用レーザ光の光量に対して、距離が近すぎると判定することができる。一方、距離の時間的変動が上限周期以上である場合には、射出している処置用レーザ光の光量に対して、距離が遠すぎると判定することができる。これらの判定結果は、モニタ4に表示される。
【0016】
光量制御部39は、処置用レーザ光源35に接続され、判定部38における判定結果に基づいて、処置用レーザ光源35を制御して、処置用レーザ光源35から射出される処置用レーザ光の光量を増減させる。すなわち、光量制御部39は、判定部38において距離が近すぎると判定された場合には、処置用レーザ光の光量を低下させる。一方、光量制御部39は、判定部38において距離が遠すぎると判定された場合には、処置用レーザ光の光量を増大させる。
【0017】
また、光量制御部39は、内視鏡2が挿入される体腔内に充満している液体の成分に基づく補正値を設定可能である。処置用レーザ光が射出されていない状態でガイド光を射出することにより距離が計測された場合には、光量制御部39が、計測された距離と補正値とに基づいて処置用レーザ光の光量を調整する。ここで、補正値は、処置用レーザ光が射出され且つバブルが消滅している時機の処置用レーザ光および/またはガイド光による結石Xからの反射光量と、処置用レーザ光が射出されていない状態でガイド光のみによる結石Xからの反射光量との差分であってもよい。
距離計測部37、判定部38、および光量制御部39はプロセッサにより構成されている。
【0018】
このように構成された本実施形態に係る結石破砕装置3および結石破砕システム1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る結石破砕システム1を用いて、例えば、尿管等の体腔内に形成された結石Xを破砕するには、内視鏡2を体腔内に挿入し、照明光学系22から照明光を体腔内に照射しながら、撮像光学系23により体腔内の画像G1を取得し、取得された画像G1をモニタ4に表示する。
【0019】
操作者は、モニタ4を確認しながら、画像G1内に結石Xが現れるまで内視鏡2を体腔内において前進させていき、モニタ4上の画像G1に結石Xが現れた時点で前進を停止する。この状態で、内視鏡2のチャンネル24を経由して、内視鏡2の先端から3本の光ファイバ31,32,33を突出させる。そして、結石Xの周囲に生理食塩水を還流させた状態で、ガイド光用光源34を作動させ、第1の光ファイバ31を経由してガイド光を射出し、モニタ4を確認しながら内視鏡2の位置を調整することにより、処置用レーザ光を照射したい位置にガイド光のスポットYを配置する。
【0020】
この状態で、第3の光ファイバ33により受光されたガイド光の結石Xによる戻り光が光検出器36により検出され、ガイド光用光源34から射出されるガイド光と光検出器36により検出された戻り光とに基づいて、距離計測部37により距離が計測される。
本実施形態によれば、距離の計測が処置用レーザ光の光量に基づいて行われる従来技術とは異なり、ガイド光を用いたTime of Flight法に基づいて行われるため、結石Xとの間の液体による吸収が発生しても、距離を精度良く測定することができるという利点がある。
【0021】
また、処置用レーザ光の照射位置を可視化するガイド光により距離を計測するので、処置用レーザ光の照射中にも、処置用レーザ光の光量変動に関わらず、距離を精度よく計測し続けることができるという利点がある。
計測された距離は光量制御部39に送られ、設定されている補正値を用いて補正され、補正後の距離に基づいて処置用レーザ光の光量が決定される。
【0022】
光量制御部39は処置用レーザ光源35を制御して、決定された光量の処置用レーザ光を処置用レーザ光源35から射出させる。これにより、第2の光ファイバ32からガイド光によって指示された位置に処置用レーザ光が照射され、結石Xの破砕が開始される。
【0023】
処置用レーザ光が第2の光ファイバ32の先端から射出されると、第2の光ファイバ32と結石Xとの間に配置されている液体が処置用レーザ光のエネルギによって瞬時に蒸発させられてバブルが発生する。発生したバブルは周囲の液体によって冷却されて消滅する。液体内におけるガイド光の光路長と、バブル内における光路長とは異なるので、液体内を通過する場合とバブル内を通過する場合とで、距離計測部37により計測される距離が変動する。
【0024】
ガイド光に用いる光のパルス幅は数十nsec程度であり、一方、バブルの発生周期は数十μsec程度である。ガイド光による距離測定時間は、バルブ発生と消滅との周期よりも十分小さいので、バブルの発生と消滅とにより、距離計測部37により計測される距離は、図2から図4に示されるように時間的に変動する周波数成分が主なデータとして得られる。図2から図4は距離の時間的変動を模式的に示したものであり、現実には主な周波数成分よりも高い高周波成分も存在するため、図示されるような滑らかな変動とはならないが、周期的に変動する成分を抽出することでバブルに由来する主な周波数成分が取得される。バブルの発生と消滅との周期はバブルの大きさと相関があり、バブルが大きい程、その発生と消滅の周期は長くなる。一方、バブルは光ファイバ32の先端と結石Xとの間にできるので、その距離とバブルのサイズとには相関がある。つまり、測定される距離の時間変化の周期と光ファイバ32の先端と結石Xとの距離と相関がある。
【0025】
すなわち、図2は、所定範囲内の適正な周期で距離が変動している場合を示す。この場合には、第2の光ファイバ32と結石Xとの間にバブルが適正に形成されている。
図3は、所定範囲のうちの下限周期よりも小さい周期で距離が変動している場合を示す。この場合には、第2の光ファイバと32結石Xとの間のバブルが小さく、距離が近すぎることを示している。
図4は、所定範囲のうちの上限周期よりも大きい周期で距離が変動している場合を示す。この場合には、第2の光ファイバ32と結石Xとの間のバブルが大きく、距離が離れすぎていることを示している。
【0026】
図3の場合には、光量制御部39は、光量を低減させるよう処置用レーザ光源35を制御する。一方、図4の場合には、光量制御部39は、光量を増大させるよう処置用レーザ光源35を制御する。
【0027】
そして、図2に示される適正なバブルが形成されている状態を維持することにより、処置用レーザ光がバブル内を通過して、液体による吸収を抑えて、処置用レーザ光のエネルギを結石Xに無駄なく供給し、効率的に砕石することができるという利点がある。
適正なバブルが形成されている状態であるか否かについては、複数の異なる波長の可視光を選択的にガイド光用光源34から射出し得るようにし、ガイド光のスポットYの色を、適正な場合には「緑」、不適正な場合には「赤」にしてもよいし、実際のガイド光の色を変更することなく、モニタ4上に表示される画像G1上のスポットYの色を変更してもよい。この場合、ガイド光用光源34は、複数の異なる波長の可視光を射出するとともに、判定部38に接続して、判定部38における判定結果に基づいて射出するガイド光の色を変更できるようにすればよい。
【0028】
なお、本実施形態においては、ガイド光を導光する第1の光ファイバ31、処置用レーザ光を導光する第2の光ファイバ32、戻り光を導光する第3の光ファイバ33をそれぞれ別個の光ファイバにより構成したが、偏光ビームスプリッタとダイクロックミラーとを単一のマルチコアファイバの基端側に配置することにより、全ての光を単一の光ファイバで導光しながら、各種光を同時に結石Xに対し照射するとともに、結石Xからの反射光を光検出器36に入射させることにしてもよい。
また、光量制御部39は、距離計測部37により計測された距離の増加量が所定の閾値を超えている場合に、処置用レーザ光源35を制御して処置用レーザ光の光量を低減することにしてもよい。
【0029】
距離が大きく増加する場合は、処置用レーザ光のエネルギによって結石Xが遠ざかる方向に移動したものと考えられるため、処置用レーザ光の光量を低下させることにより、次回同じ条件で処置用レーザ光が結石Xに照射されたときに結石Xが移動してしまうことを防止することができる。
【0030】
また、本実施形態に係る結石破砕システム1においては、図5に示されるように、撮像光学系23により取得された画像G1と、処置用レーザ光が射出されておらずガイド光が射出されている状態で距離計測部37により計測された距離とに基づいて、結石Xの大きさを推定する結石サイズ推定部5を備えていてもよい。結石サイズ推定部5もプロセッサにより構成されればよい。
そして、結石サイズ推定部5により推定された結石Xの大きさは、モニタ4に表示される。
モニタ4に表示される結石Xの大きさとしては、画像G1上に現れている結石Xの最大長さ寸法、周長あるいは面積等の任意の大きさを採用してもよい。
【0031】
また、チャンネル(結石回収部)24先端から出没させるバスケット鉗子等の回収手段(図示略)により結石を把持して、チャンネル24内に回収する場合には、以下の構成を備えていてもよい。すなわち、図6に示されるように、チャンネル24内に取り込み可能な結石Xのサイズを記憶する回収サイズ記憶部6と、距離計測部37により計測された距離と回収サイズとに基づいて結石Xと対比可能な回収サイズを示す情報を生成する回収サイズ情報生成部7とを備えていてもよい。
【0032】
結石Xと対比可能な回収サイズを示す情報としては、図7に示される目盛あるいは図8に示されるように、チャンネル24の内径寸法に等しい円形の仮想画像G2を挙げることができる。目盛をモニタ4に表示されている画像G1上に表示することにより、操作者は目盛と対比して、結石Xの大きさを認識することができる。また、円形の仮想画像G2をモニタ4に表示されている結石Xの画像G1に重ね合わせて表示することにより、結石Xが円形の仮想画像G2内に入る大きさであれば回収でき、入らなければ回収できないことを簡易に確認することができる。
【0033】
回収サイズ記憶部6はメモリ、回収サイズ情報生成部7はプロセッサにより構成されている。
この結石破砕システム1によれば、内視鏡2により取得された画像G1を処理する必要がないので、簡易に、結石Xが回収可能な程度まで破砕されたか否かを判定可能な情報を提供することができる。
結石回収部としては、チャンネル24の他、バスケット鉗子を出没可能に挿通させるシースを採用してもよい。
【0034】
また、モニタ4上に回収サイズを示す情報を表示することに代えて、図9に示されるように、推定された結石Xの大きさと回収サイズとに基づいて、結石Xをチャンネル24内に回収可能か否かを判定する回収可否判定部8を備え、回収可否判定部8による判定結果をモニタ4に表示することにしてもよい。判定結果としては、「回収可」あるいは「回収不可」のような文字、音声あるいは、赤または緑の点灯等を採用してもよい。モニタ4等により表示された判定結果に基づけば、操作者が結石Xを回収可能か否かについて、迅速かつ正確に確認することができる。
【0035】
本実施形態においては、結石破砕装置3および結石破砕システム1を適用可能な体腔として尿管を例示したが、これに代えて、胆管その他の任意の体腔に適用することにしてもよい。
【0036】
また、本実施形態においては、適正なバブルを形成可能な状態でない場合に、処置用レーザ光の光量を光量制御部39により調節することとしたが、これに代えて、バブルの状態の判定結果をモニタ4に表示することで、操作者に手動で光量の調節を促すことにしてもよい。この場合、上述したようにガイド光のガイド光のスポットYの色を変更することで、判定結果の表示を行うようにしてもよい。
また、本実施形態においては、適正なバブルを形成可能な状態ではない場合に、処置用レーザ光の光量を増減させることとしたが、これに代えて、バブルの状態の判定結果に基づき結石破砕装置3と結石Xとの距離を調節することにしてもよい。
【0037】
距離の調節は、調節機構を設けて電動で行ってもよいし、モニタ4に「結石から光ファイバを離してください」あるいは「光ファイバを結石に近づけてください」などの判定結果としての指示情報を表示することで、操作者に距離調節を促すことにしてもよい。
すなわち、距離計測部37により計測された距離が、図3に示されるように、小さいバブルが発生していることを示している場合には、距離を遠ざけることが好ましい。その一方、図4に示されるように、大きいバブルが発生していることを示している場合には、距離を近づけることが好ましい。
【0038】
なお、本実施形態においては、以下の態様を導くことができる。
本発明の一態様は、結石を破砕する処置用レーザ光を射出するレーザ光射出部と、ガイド光を射出するガイド光射出部と、前記ガイド光の照射により前記結石から反射されて戻る戻り光を検出する戻り光検出部と、前記戻り光に基づいて、前記レーザ光射出部から前記結石までの距離を計測する距離計測部と、該距離計測部により計測された前記距離に基づいて前記レーザ光射出部と前記結石との間に生ずるバブルの状態を判定する判定部と、判定された前記バブルの状態に基づいて、前記処置用レーザ光の光量を調節する光量制御部とを備える結石破砕装置である。
【0039】
本態様によれば、ガイド光射出部から射出されたガイド光が結石に照射されることで結石から反射されて戻る戻り光が戻り光検出部により検出されることにより、結石におけるレーザ光の照射位置が可視化される。また、戻り光検出部により検出された戻り光に基づいて距離計測部によりレーザ光射出部から結石までの距離が計測される。
【0040】
計測された距離に応じた光量の処置用レーザ光がレーザ光射出部から射出されると、結石までの間に配置されている液体が蒸発してバブルが発生する。ガイド光が液体を通過するときの空気換算長は、ガイド光がバブル内を通過するときの距離とは異なるため、距離計測部により計測される距離は、バルブの発生と消滅によって周期的に変動する。
【0041】
距離計測部により計測される距離の変動の周期は、バブルの大きさに関係する。すなわち、バブルが大きいほど空気換算長が長くなるのでバブルが発生する都度に、計測される距離が、バブルの大きさに応じた周期でほぼ一定のピッチにより断続的に増減を繰り返す。かかる周期的な距離の変動に基づいて、判定部がバブルの状態を判定することにより、適正なバブルが形成される条件でレーザ光を照射することができ、結石を効率的に破砕することができる。
【0042】
上記態様においては、前記判定部が、前記距離計測部により計測された前記距離の時間的な変化量が所定範囲か否かに基づいて前記バブルの状態を判定してもよい。
レーザ光の光量が一定である場合、発生するバブルが大きいときには、バブルの発生と消滅の周期が大きくなり、発生するバブルが小さい場合には発生と消滅の周期が小さくなる。
したがって、計測される距離の時間的な変動に基づいてバブルの状態を判定することにより、距離の時間的変動が所定の閾値より大きい場合には、レーザ光射出部から射出されるレーザ光の光量を増大させ、距離の時間的変動が所定の閾値以下の場合には、レーザ光射出部から射出されるレーザ光の光量を低減させる。これにより、適正なバブルが形成される条件でレーザ光を照射することができ、結石を効率的に破砕することができる。
【0043】
また、上記態様においては、前記光量制御部は、前記距離の変化量が非周期的であり、且つ所定の閾値を超えて増大したときに前記処置用レーザ光の光量を低減させてもよい。
この構成により、処置用レーザ光の射出中に、ガイド光の戻り光に基づいて計測された距離が大きく変化したときには、処置用レーザ光のパワーによって結石が離れる方向に移動したと考えられるので、処置用レーザ光の光量を低減させることにより、次の照射時に結石が再度移動してしまうことを防止することができる。
【0044】
また、本発明の他の態様は、結石を破砕する処置用レーザ光を射出するレーザ光射出部と、ガイド光を射出するガイド光射出部と、前記ガイド光の照射により前記結石から反射されて戻る戻り光を検出する戻り光検出部と、該距離計測部により計測された前記距離に基づいて前記レーザ光射出部と前記結石との間に生ずるバブルの状態を判定する判定部と、判定された前記バブルの状態を表示する表示部とを備える結石破砕装置である。
上記態様においては、前記ガイド光が、前記処置用レーザ光の前記結石における照射位置を前記判定部による判定結果に応じた色で可視化してもよい。
この構成により、操作者は、表示部に表示されたガイド色の色を見ることで結石までの距離が所定の範囲よりも遠いか近いかを把握できる。
【0045】
また、上記いずれかの態様においては、前記距離計測部は、Time of Flight法により前記距離を計測してもよい。
この構成により、ガイド光射出部と結石との間に存在する液体による吸収によってガイド光および戻り光の光量が低下しても、精度よく距離を計測することができる。
【0046】
また、本発明の他の態様は、上記いずれかの結石破砕装置と、前記結石の画像を取得する画像取得部と、取得された前記画像を表示する表示部とを備える結石破砕システムである。
本態様によれば、画像取得部により取得された結石の画像が表示部に表示される。結石の画像においては、ガイド光射出部から射出されたガイド光により、処置用レーザ光の照射位置が可視化されているので、操作者は結石破砕装置を操作して、ガイド光を結石の所望の位置に配置し、処置用レーザ光を照射することができる。
【0047】
上記態様においては、前記画像取得部により取得された前記画像と、前記距離計測部により計測された前記距離とに基づいて、前記結石の大きさを推定する結石サイズ推定部を備え、前記表示部が、前記結石サイズ推定部により推定された前記結石の大きさを表示してもよい。
この構成により、結石サイズ推定部が、画像取得部により取得された画像を処理して結石の輪郭形状を検出することができ、距離計測部により計測された距離を用いることにより、結石の大きさ、例えば、輪郭形状の最大寸法等の実際の寸法を精度よく推定することができる。このようにして推定された結石の大きさを表示部に表示することにより、操作者が、破砕作業が十分に行われたか否かを容易に判定することができる。
【0048】
また、上記態様においては、前記結石を回収する結石回収部と、該結石回収部により回収可能な前記結石の大きさである回収サイズを記憶する回収サイズ記憶部と、前記距離計測部により計測された前記距離と前記回収サイズとに基づいて、前記結石と対比可能な回収サイズを示す情報を生成する回収サイズ情報生成部とを備え、前記表示部が、前記回収サイズを示す前記情報を表示してもよい。
【0049】
この構成により、処置用レーザ光が射出されておらずガイド光が射出されている状態で距離計測部により計測された距離と回収サイズ記憶部に記憶されている回収サイズとに基づいて、結石と対比可能な回収サイズを示す情報が回収サイズ情報生成部により生成される。操作者は、表示部に表示された結石の画像と回収サイズを示す情報とを対比して、回収サイズ以下となるまで、結石の破砕作業を行うことができる。これにより、必要最小限の破砕作業を行って、結石を結石回収部により回収することができる。
【0050】
また、上記態様においては、前記回収サイズ情報生成部が、前記回収サイズを示す仮想画像を生成し、前記表示部が、前記仮想画像を前記結石の前記画像に重ね合わせて表示してもよい。
この構成により、表示部には、回収サイズを示す仮想画像と結石の画像とが重ねて表示されるので、操作者は、これらの画像の対比によって、結石が回収可能な大きさまで破砕されたか否かを簡易に確認することができる。
【0051】
また、上記態様においては、前記画像取得部により取得された前記画像と、処置用レーザ光が射出されておらずガイド光が射出されている状態で前記距離計測部により計測された前記距離とに基づいて、前記結石の大きさを推定する結石サイズ推定部と、該結石サイズ推定部により推定された前記結石の大きさと前記回収サイズとに基づいて前記結石回収部により回収可能か否かを判定する回収可否判定部とを備え、前記表示部が、前記回収可否判定部による判定結果を表示してもよい。
【0052】
この構成により、結石サイズ推定部が、結石の画像と計測された距離とに基づいて結石の大きさを推定し、推定された結石の大きさと回収サイズとが、回収可否判定部において比較されることにより回収可能か否かの判定が行われる。そして、判定結果が表示部に表示されることにより、操作者は、結石が回収可能な大きさまで破砕されたか否かを簡易に確認することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 結石破砕システム
2 内視鏡(画像取得部)
3 結石破砕装置
4 モニタ(表示部)
5 結石サイズ推定部
6 回収サイズ記憶部
7 回収サイズ情報生成部
8 回収可否判定部
24 チャンネル(結石回収部)
34 ガイド光用光源(ガイド光射出部)
35 処置用レーザ光源(レーザ光射出部)
36 光検出器(戻り光検出部)
37 距離計測部
38 判定部
39 光量制御部
G1 画像
G2 仮想画像
X 結石
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9