(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】C4流からイソブテンを精製する方法及び精製するための処理設備
(51)【国際特許分類】
C07C 7/04 20060101AFI20221206BHJP
C07C 11/09 20060101ALI20221206BHJP
C07C 5/23 20060101ALI20221206BHJP
B01J 23/40 20060101ALI20221206BHJP
B01D 3/14 20060101ALI20221206BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221206BHJP
【FI】
C07C7/04
C07C11/09
C07C5/23
B01J23/40 M
B01D3/14 A
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021505726
(86)(22)【出願日】2019-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2019070859
(87)【国際公開番号】W WO2020025782
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-06-03
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513277290
【氏名又は名称】オーエムファウ ダウンストリーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(73)【特許権者】
【識別番号】511002984
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】シューマン トートラ
(72)【発明者】
【氏名】パーベル ターデウツ チャイカ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン マンフレート イーゼルボルン
(72)【発明者】
【氏名】カイ-ウーベ ベムオーナー
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ポップ
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特公昭47-013251(JP,B1)
【文献】特表2003-505353(JP,A)
【文献】特開平10-182507(JP,A)
【文献】特表2001-506229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01J
B01D
C07B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1-ブテン、2-ブテン、イソブタン、及びイソブテンを含むC4流(7)からイソブテンを精製する方法であって、以下の工程、すなわち、
- 前記C4流(7)から得られたイソブタン・イソブテン濃縮物質流(12)と、水素流(14)とを、異性化反応器(5)に供給する工程であって、前記異性化反応器(5)が、担体上、好ましくは酸化アルミニウム担体上に水素化に際して活性である少なくとも1種の金属を含む触媒を含む、工程と、
- 前記イソブタン・イソブテン濃縮物質流(12)及び前記水素流(14)を、前記異性化反応器(5)内で前記触媒と接触させる工程であって、それにより、前記イソブタン・イソブテン濃縮物質流(12)中に存在する1-ブテンが2-ブテンに異性化される、工程と、
- 前記異性化反応器(5)からの、前記イソブタン・イソブテン濃縮物質流(12)よりも少ない1-ブテンを含む生成物流(15)を、精留塔(6)に供給する工程と、
- イソブテン濃縮物質流(18)を提供する工程であって、
〇 この物質流(18)が、
・ 前記精留塔(6)からの側方流(17)を介して、若しくは
・ 前記精留塔(6)からの側方流(17)を介して、及び、前記精留塔(6)からの塔底生成物(19)として、若しくは
・ 前記精留塔(6)からの塔底生成物(19)として、
分離され、ここにおいて、さらに、イソブタン濃縮物質流が、前記精留塔(6)の塔頂生成物(16)として分離され、又は、
○ 同工程に際して、イソブタンに加えてイソブテンを含有する、イソブタンが濃縮された前記精留塔(6)からの塔頂生成物(16)が、前記イソブタンを前記イソブテンから分離し、そして第2精留塔(24)からの塔底生成物(26)中の前記イソブテン濃縮物質流(18)を得るために、前記第2精留塔(24)に提供される、工程と、
を含
み、
前記イソブタン・イソブテン濃縮物質流(12)が得られる前記C4流(7)が、さらなる精留塔(2a,2b)に供給され、前記さらなる精留塔が、担体上、好ましくは酸化アルミニウム担体上に水素化に際して活性である少なくとも1種の金属を含むさらなる触媒を伴い、前記C4流(7)が前記さらなる精留塔(2a,2b)内で蒸留分離され、そしてさらなる水素流(9a,9b)及び前記さらなる精留塔(2a,2b)からの1-ブテンを含有する生成物流(8)が、前記さらなる触媒(4a,4b)と接触させられ、これにより、前記生成物流中に存在する1-ブテンが2-ブテンに異性化され、前記さらなる触媒(4a,4b)からの反応生成物流(10)が、前記さらなる精留塔(2a,2b)内で蒸留分離され、そして2-ブテン濃縮物質流(11)が、前記さらなる精留塔(2a,2b)から塔底生成物として分離され、そして前記イソブタン・イソブテン濃縮物質流(12)が前記さらなる精留塔(2a,2b)から塔頂生成物として分離され、そして前記異性化反応器(5)に供給され、この物質流(12)が、前記C4流(7)と比較して少ない1-ブテン及び2-ブテンを含有する、方法。
【請求項2】
前記さらなる触媒(4a)の少なくとも一部が、前記さらなる精留塔(2a)の外側で反応器(3)内に配置され、前記生成物流(8)が前記さらなる精留塔(2a)から側流を介して分離され、前記生成物流(8)及び前記さらなる水素流(9a)が前記反応器(3)に供給され、そして、前記さらなる触媒(4a)からの前記反応生成物流(10)が、前記さらなる精留塔(2a)に供給されることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記さらなる精留塔(2b)内の前記さらなる触媒(4b)が、前記さらなる精留塔(2b)の少なくとも1つの分離段内に提供され、前記C4流(7)及び前記さらなる水素流(9b)が前記さらなる精留塔(2b)に供給され、そして前記反応生成物流(10)が前記さらなる精留塔(2b)内部で生成されることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記異性化反応器(5)内の温度が、20℃~100℃、好ましくは30℃~80℃、特には40℃~70℃であることを特徴とする、請求項1から
3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記異性化反応器(5)内の圧力が、3bar~30bar、好ましくは5bar~20bar、特には7bar~16barであることを特徴とする、請求項1から
4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記異性化反応器(5)への供給時に、前記イソブタン・イソブテン濃縮物質流(12)t/h当たりの水素(14)の流量が、0.02Nm
3/h~200Nm
3/h、好ましくは0.1Nm
3/h~50Nm
3/h、特には0.5Nm
3/h~5Nm
3/hであることを特徴とする、請求項1から
5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記精留塔(6)からの塔底生成物(19)の少なくとも一部が、還流(20)としてC4流(7)に供給されることを特徴とする、請求項1から
6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記イソブテン濃縮物質流(18)が、側流(17)を介して前記精留塔(6)から分離され、前記精留塔(6)の総分離段の8%~25%、好ましくは10%~20%、特には12%~15%が、前記側流(17)が位置する分離段の下方にあることを特徴とする、請求項1から
7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記さらなる精留塔(2a,2b)が、前記精留塔(6)よりも高い温度にあり、そして前記精留塔(6)に熱が供給されることを特徴とする、請求項
1から
8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記異性化反応器(5)の触媒の、水素化に際して活性である金属が、元素周期表の8,9又は10族からのものであり、特にはパラジウム又は白金であることを特徴とする、請求項1から
9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1-ブテン、2-ブテン、イソブタン、及びイソブテンを含有するC4流(7)からイソブテンを精製するための処理設備(1a,1b,1c,1d)であって、以下の装置、すなわち、
- 担体上、好ましくは酸化アルミニウム担体上に水素化に際して活性である少なくとも1種の金属を含む触媒を含む、異性化反応器(5)と、
- 前記異性化反応器(5)の下流側に接続された精留塔(6)と
を含
み、
前記処理設備(1a,1b,1c,1d)が、さらなる精留塔(2a,2b)を含み、前記さらなる精留塔が、担体上に水素化に際して活性である少なくとも1種の金属を含むさらなる触媒を伴い、前記異性化反応器が前記さらなる精留塔の塔頂の下流側にあることを特徴とする、処理設備。
【請求項12】
前記処理設備(1a,1b,1c,1d)が熱交換器(22)を含み、前記熱交換器が、前記精留塔(6)とさらなる精留塔(2a,2b)との間の熱伝達のために、前記精留塔(6)及び前記さらなる精留塔(2a,2b)に接続されていることを特徴とする、請求項
11に記載の処理設備(1a,1b,1c,1d)。
【請求項13】
前記精留塔(6)が、イソブテンを含有する物質流を分離するための側流(17)を含むことを特徴とする、請求項
11又は
12に記載の処理設備(1a,1b,1c,1d)。
【請求項14】
前記精留塔(6)からの塔底生成物(19)を少なくとも部分的に還流させるために、前記精留塔(6)の塔底が、前記C4流(7)を搬送するために設けられたラインに接続されていることを特徴とする、請求項
11から
13までのいずれか1項に記載の処理設備(1a,1b,1c,1d)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1-ブテン、2-ブテン、イソブタン、及びイソブテンを含むC4流からイソブテンを精製する方法及び処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の製品のための出発材料としてのイソブテンに対する純度要件がますます高くなっている。例えば、イソブテン含有プラスチックを製造するための原料としてイソブテンを使用するときに、特定の純度が必要とされる。これらの製造プロセスにおいて、一般には、出発材料に対する純度要件、例えば最小イソブテン含量、並びに1-ブテン及び他の成分、例えばブタン、C3及びC5炭化水素の最大含量が指定される。具体的な難題は、1分子当たりの炭素原子数が4の異なる炭化水素、例えば1-ブテン、2-ブテン、イソブタン、及びイソブテンを含むC4流からイソブテン濃縮生成物を製造するのに際して、イソブテンと1-ブテンとを分離することにある。なぜならば、イソブテン及び1-ブテンの沸点が互いに極めて近接しており、これにより、蒸留分離は、比較的高いエネルギー消費量を伴わなければ可能にはならないからである。反対に、イソブテンと2-ブテンとの分離はより容易である。なぜならば、これら2種のブテン化合物の沸点の差がより大きいからである。このように、C4流からのイソブテンの分離を容易にするためにC4流中の1-ブテンを2-ブテンに異性化するという事実に本質的に基づく方法が従来技術において知られている。
【0003】
例えば、英国特許第570 692号明細書に開示された、イソブテンを分離する方法の場合、本質的には、イソブテンと1-ブテンとを含有するC4流を、1-ブテンをイソブテンではなく2-ブテンに変化させるのに十分に高い空間速度で、1-ブテンの2-ブテンへの異性化を加速する触媒と接触させ、そして分別によりイソブテンを得る。プロセス生成物流中のイソブテンの純度を高めるために、反応器内の触媒異性化及び精留塔内の分別を繰り返すことができるものの、このことは生産プロセスのエネルギー消費量を著しく増大させる。さらに、この方法を用いて製造されたイソブテンの純度は、数多くの用途にとってあまりにも低いことも不都合である。純度が低い理由は、1-ブテンがイソブテン含有生成物流中に濃縮されているため、異性化後の1-ブテンの質量分率があまりにも高いので、後続の分別においてイソブテンの所要純度を得ることができないことにある。
【0004】
欧州特許第0 922 018号明細書には、イソブテン及び1-ブテンを含有するC4流からイソブテンを製造する方法が開示されている。この方法の場合、蒸留塔内でC4流を処理し、蒸留塔内で流動する液体の一部を蒸留塔から取り出し、そして1-ブテンの2-ブテンへの異性化のために反応器に供給する。反応器内では、触媒によって、1-ブテンの2-ブテンへの異性化がイソブテンの異性化よりも優先される。しかしながら、生成物流中のイソブテンの純度が、生成物流の特定のさらなる用途にとってはあまりにも低いので不都合である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、C4流からイソブテンを精製する公知の方法の少なくとも個々の欠点を軽減又は克服することである。特には、本発明の目的は、C4混合物からイソブテンを効率的に精製する方法及び処理設備を提供すること、又は可能な限り最高のイソブテン純度を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも1-ブテン、2-ブテン、イソブタン、及びイソブテンを含むC4流からイソブテンを精製する方法であって、少なくとも以下の工程、すなわち、
- 前記C4流から得られたイソブタン・イソブテン濃縮物質流と水素流とを、異性化反応器に供給する工程であって、前記異性化反応器が、担体上、好ましくは酸化アルミニウム担体上に水素化に際して活性である少なくとも1種の金属を含む触媒を含む、工程と、
- 前記イソブタン・イソブテン濃縮物質流及び前記水素流を、前記異性化反応器内で前記触媒と接触させる工程であって、これにより、前記イソブタン・イソブテン濃縮物質流中に存在する1-ブテンが2-ブテンに異性化される工程と、
- 前記異性化反応器からの、前記イソブタン・イソブテン濃縮物質流よりも少ない1-ブテンを含む生成物流を、精留塔に供給する工程と、
- イソブテン濃縮物質流を提供する工程であって、
〇この物質流が、
・前記精留塔の側方流を介して、若しくは
・前記精留塔の側方流を介して、及び前記精留塔の塔底生成物として、若しくは
・前記精留塔の塔底生成物として、
分離され、ここにおいて、さらに、イソブタン濃縮物質流が前記精留塔から塔頂生成物として分離され、又は、
〇 同工程に際して、イソブタンに加えてイソブテンを含有する、イソブタンが濃縮された前記精留塔からの塔頂生成物が、前記イソブタンを前記イソブテンから分離し、そして前記第2精留塔からの塔底生成物中の前記イソブテン濃縮物質流を得るために、第2精留塔に提供される、工程と、
が実施される、イソブテンを精製する方法を提供する。
【0007】
目的はこうして達成される。
【0008】
これに相応して、本発明はまた、少なくとも1-ブテン、2-ブテン、イソブタン、及びイソブテンを含有するC4流からイソブテンを精製する処理設備を提供する。この設備は少なくとも、
- 担体上、好ましくは酸化アルミニウム担体上で水素化に際して活性である少なくとも1種の金属を含む触媒を含む異性化反応器と、
- 前記異性化反応器の下流側に接続された精留塔と
を含む。
【0009】
目的はまたこうして達成される。
【発明の効果】
【0010】
驚くべきことに、本発明に基づく方法を用いて得ることができる精製イソブテンのイソブテン質量分率は、少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、特に好ましくは少なくとも99%である。
【0011】
C4流から得られたイソブタン・イソブテン濃縮物質流と、水素流とを、好ましくは欧州特許第2170494号明細書に開示されたように形成された異性化反応器に供給することにより、イソブタン・イソブテン濃縮物質流中に存在する1-ブテンを、水素の存在下で2-ブテンに触媒的に異性化する。異性化を加速するために、異性化反応器は触媒を含む。触媒は、担体上に水素化に際して活性である少なくとも1種の金属を含む。イソブタン・イソブテン濃縮物質流の1-ブテンを、異性化反応器内の触媒の存在下で水素流の水素で異性化することによって2-ブテンを形成し、これにより異性化反応器の生成物流中の1-ブテンの比率をさらに低減する。この生成物流を精留塔に供給する。塔頂生成物として蒸留することにより、イソブタン濃縮物質流を分離する。精留塔からイソブテン濃縮物質流を得るための4つの実施態様がある。第1、第2、又は第3実施態様の場合、精留塔の側流を介して、又は精留塔の側流を介して及び塔底生成物として、又は精留塔からの塔底生成物として、イソブテン濃縮物質流が得られる。第4実施態様では、精留塔からの塔頂生成物としてイソブタン・イソブテン含有物質流を第2精留塔に供給することにより、イソブテンからイソブタンを分離し、そしてイソブタン濃縮物質流を塔頂生成物として得、イソブテン濃縮物質流を塔底生成物として第2精留塔から得る。
【0012】
好ましい実施形態によれば、イソブタン・イソブテン濃縮物質流が得られる源となるC4流は、さらなる精留塔に供給され、前記さらなる精留塔は、担体上、好ましくは酸化アルミニウム担体上で水素化に際して活性である少なくとも1種の金属を含むさらなる触媒と連携する。C4流は前記さらなる精留塔内で蒸留分離され、分離されると、1-ブテン含有生成物流が得られる。前記生成物流中に含有された1-ブテンを、前記さらなる触媒の存在下でさらなる水素流と接触させることにより、2-ブテンに異性化する。前記さらなる触媒の、水素化に際して活性である金属は、1-ブテンの2-ブテンへの反応を促進する。この触媒反応からの生成物、すなわち反応生成物流は、前記さらなる精留塔内で蒸留分離される。この精留(向流蒸留)から得られた生成物流の少なくとも一部を、前記さらなる触媒の存在下で、前記さらなる水素流の水素と再び接触させることにより、これらの生成物流中に存在する1-ブテンを異性化する。このような触媒反応に際して生成された反応生成物流は、前記さらなる精留塔内の蒸留によって再び分離される。向流蒸留及び触媒反応のプロセス工程をこのように少なくとも1回繰り返すことにより、後続のプロセス工程における1-ブテンの濃度が低くなることが保証される。前記さらなる精留塔の塔底において、C4流から、そして1-ブテンの触媒異性化から生じた2-ブテンを濃縮された物質流が分離される。イソブタン・イソブテン濃縮物質流は塔頂生成物として前記さらなる精留塔から分離され、この場合前記さらなる精留塔の塔頂は異性化反応器に接続されている。イソブタン・イソブテン濃縮物質流は、供給物として前記さらなる精留塔に供給される前記C4流と比較して少ない1-ブテン及び2-ブテンを含む。
【0013】
好ましい実施形態によれば、処理設備は、担体上、好ましくは酸化アルミニウム担体上で水素化に際して活性である少なくとも1種の金属を含むさらなる触媒と連携するさらなる精留塔を含み、異性化反応器は前記さらなる精留塔の塔頂の下流側にある。
【0014】
好ましい別の実施形態では、前記さらなる触媒の少なくとも一部が、前記さらなる精留塔の外側で反応器内に配置され、反応器は前記さらなる精留塔に、この精留塔へ延びる接続部及び精留塔から延びる接続部によって接続されている。こうして、前記さらなる精留塔内の蒸留分離中に形成された1-ブテン含有生成物流が、側流を介して前記さらなる精留塔から分離され、そして反応器に通じる接続部を介して反応器に供給される。加えて、前記さらなる水素流を反応器に加えることにより、異性化に必要とされる水素を提供する。前記さらなる触媒を介した異性化中に生成された反応生成物流を、還流接続部を介して前記さらなる精留塔に供給し、その場所で蒸留分離する。
【0015】
さらなる好ましい別の実施形態では、前記さらなる精留塔内の前記さらなる触媒は前記さらなる精留塔の少なくとも1つの分離段内に提供される。これに関連して、C4流及び前記さらなる水素流は前記さらなる精留塔に供給され、蒸留分離中に前記さらなる精留塔内で生成された1-ブテン含有生成物流は前記さらなる精留塔内部の前記さらなる触媒に供給され、そしてこの生成物流の1-ブテンは水素の存在下で2-ブテンに異性化される。この触媒的な異性化中に前記さらなる精留塔内部で生成された反応生成物流は、前記さらなる精留塔内で蒸留分離される。
【0016】
高純度のイソブテンを得るために、有利には、前記さらなる精留塔に供給されたC4流中のイソブテンの質量分率は、少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、特には少なくとも20%である。
【0017】
さらに、高純度のイソブテンを得るために、有利には、前記さらなる精留塔に供給されたC4流中の1-ブテンの質量分率は、最大40%、好ましくは最大30%、特には最大25%である。
【0018】
さらに、高純度のイソブテンを得るために、有利には、前記さらなる精留塔に供給されたC4流中の2-ブテンの質量分率は、最大60%、好ましくは最大50%、特には最大40%である。
【0019】
特に、イソブテンの異性化に対して1-ブテンの2-ブテンへの異性化を促進するために、有利には、異性化反応器内の温度は20℃~130℃、好ましくは30℃~80℃、特には40℃~70℃である。
【0020】
好ましい実施形態によれば、特にはイソブテンの異性化と比較して1-ブテンの2-ブテンへの異性化を促進するために、有利には、異性化反応器内の圧力は3bar~30bar、好ましくは5bar~20bar、特には7bar~16barである。
【0021】
さらなる好ましい実施形態によれば、イソブタン・イソブテン濃縮物質流の少なくとも一部を前記さらなる精留塔の凝縮器内で液化することにより、この物質流の液相又は混合相を得る。さらに、異性化反応器は混合・分配装置を含むと有利である。特に好ましくは、この混合分配装置を使用して、前記さらなる精留塔のイソブタン・イソブテン濃縮物質流を液相又は混合相として、そして水素流を気相として、異性化反応器の触媒と均一に接触させることにより、イソブタン・イソブテン濃縮物質流と水素流とのできる限り十分な混合を保証する。このタイプの混合・分配装置は長きにわたって当業者に知られているので、これに関する詳述は必要でない。
【0022】
高度な異性化を得るために、有利には、異性化反応器への供給時に、イソブタン・イソブテン濃縮物質流t/h当たりの水素の流量は、0.02Nm3/h~200Nm3/h、好ましくは0.1Nm3/h~50Nm3/h、特には0.5Nm3/h~5Nm3/hである。このような比により、1-ブテンが2-ブテンに高い異性化速度で異性化され、イソブタンを形成するためのイソブテンと水素との副反応が最小化されるのを保証する。
【0023】
好ましい実施形態によれば、精留塔は100~220の分離段、好ましくは120~200の分離段、特には130~180の分離段を有している。さらに、有利には、精留塔の還流量と蒸留液量との還流比は少なくとも10:1、好ましくは少なくとも15:1、特には少なくとも20:1である。
【0024】
一定のC4流の投入量に対する精製イソブテンの収量を高めるために、有利には、精留塔の塔底生成物の少なくとも一部を還流としてC4流に供給する。これを目的として、精留塔の塔底は、前記さらなる精留塔内へ供給されるC4流を搬送するために設けられたラインに接続されている。
【0025】
さらなる好ましい実施形態によれば、精留塔から得られたイソブテン濃縮物質流を付加的な精留塔に供給することにより、イソブテン濃縮物質流と比較して少ない1-ブテン及び2-ブテンを含むさらなる精製イソブテン物質流を得る。特に好ましくは、付加的な精留塔から生じた前記さらなる精製イソブテン物質流中のイソブテン質量分率は、少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、特に好ましくは少なくとも99%、特には少なくとも99.5%である。
【0026】
C4流の投入量をできる限り少なく保つために、前記付加的な精留塔の塔底生成物の少なくとも一部を還流としてC4流に供給することにより、一定のC4流に対する精製イソブテンの収量を高める。これを目的として、前記付加的な精留塔の塔底は、前記さらなる精留塔に供給されるC4流を搬送するために設けられたラインに接続されている。
【0027】
さらなる好ましい実施形態によれば、イソブテン濃縮物質流は側流を介して精留塔から分離される。精留塔の総分離段の8%~25%、好ましくは10%~20%、特には12%~15%が、側流が位置する分離段の下方にある。特に好ましくは、イソブテン濃縮物質流中のイソブテン質量分率は少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、特に好ましくは少なくとも99%、特には少なくとも99.5%である。
【0028】
所要エネルギーを低減するために、有利には、前記さらなる精留塔は前記精留塔よりも高い温度にあり、そして前記精留塔及び前記さらなる精留塔に熱交換器を接続することにより、前記精留塔と前記さらなる精留塔との間で熱を交換することによって、前記精留塔に前記さらなる精留塔からの熱を供給する。
【0029】
さらなる好ましい実施形態によれば、前記さらなる触媒はAl2O3上に担持されたPdO触媒である。
【0030】
さらなる好ましい実施形態によれば、異性化反応器の触媒の、水素化に際して活性である金属が元素周期表の8,9又は10族に由来し、特にはパラジウム又は白金である。特に好ましくは、この触媒の、水素化に際して活性である金属は、質量分率が0.01%~5%、好ましくは0.1%~0.7%、特には0.2%~0.5%のパラジウムである。
【0031】
特に好ましい実施形態によれば、異性化反応器のための触媒の酸化アルミニウム担体は球状成形体である。
【0032】
さらなる好ましい実施形態によれば、異性化反応器のための触媒の酸化アルミニウム担体は押出物又はタブレットを含む。
【0033】
図面に示された非制限的な模範的実施形態によって本発明を以下に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、イソブテンがC4流から精製される、本発明による処理設備のプロセスフロー図を示す。
【
図2】
図2は、処理設備のさらなる実施形態のプロセスフロー図を示す。
【
図3】
図3は、処理設備の第3実施形態のプロセスフロー図を示す。
【
図4】
図4は、処理設備の第4実施形態のプロセスフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は本発明による設備1のプロセスフロー図である。この設備は異性化反応器5と、精留塔6と、さらなる精留塔2aと、さらなる触媒4aを含有する反応器3とを有している。反応器3内のさらなる触媒4a及びさらなる精留塔2aは、C4流中の1-ブテンの異性化及び蒸留分離を繰り返すために役立つ。1-ブテンの異性化のためのさらなる触媒4aを含む反応器3は、さらなる精留塔2aの外部にある。精留塔と、少なくとも部分的に精留塔外部に位置する触媒とによってC4流中の1-ブテンを繰り返し異性化し蒸留分離する方法が、例えば欧州特許第0922 018号明細書に基づき公知である。
【0036】
図1に示された実施形態では、10%~40%のイソブタン、10%~20%イソブテン、4%~10%の1-ブテン、及び30%~60%の2-ブテンの質量分率を含んでよいC4流7を、さらなる精留塔2aに連続的に供給する。さらなる精留塔2a内ではC4流7は蒸留分離され、そしてさらなる精留塔2a内で形成された1-ブテン含有生成物流8を、少なくとも1つの側流を介してさらなる精留塔2aから取り出す。この生成物流8を、さらなる水素流9aと一緒にラインを介して反応器3に連続的に供給する。反応器8はさらなる精留塔2aの外部にあり、そしてさらなる触媒4aを含む。生成物流8は、さらなる水素流9aとは別に反応器3に供給される。このような生成物流8は、反応器3内への供給前にさらなる水素流9aと混合してもよい。反応器3内では、生成物流8中の1-ブテンは、Al
2O
3上に担持されたPdO触媒であるさらなる触媒4aの存在下で、さらなる水素流9aの水素と反応することにより、2-ブテンを形成する。生成物流8よりも1-ブテンを少なく2-ブテンを多く含有する、こうして得られた反応生成物流10を還流ラインを介してさらなる精留塔2aに再び供給する。これに関連して、
図1から判るように、還流された反応生成物流10の供給は、さらなる精留塔2aの、生成物流8の取り出しと同じ分離段内で行ってよい。さらなる精留塔2aの塔底生成物は2-ブテン濃縮物質流11であり、そして塔頂生成物はイソブタン・イソブテン濃縮物質流12である。この物質流12は、さらなる精留塔2aに供給されたC4流7と比較して少ない1-ブテン及び2-ブテンを含有する。イソブタン・イソブテン濃縮物質流12の質量分率は例えば約48%のイソブタン、約50%のイソブテン、600~1000ppmの1-ブテン、及び200~400ppmの2-ブテンであってよい。
【0037】
図1に示された実施形態では、さらなる精留塔2aの塔頂生成物の少なくとも一部、すなわちイソブタン・イソブテン濃縮物質流12をさらなる精留塔2aの凝縮器13内で液化し、そして異性化反応器5に連続的に供給する。異性化反応器はさらなる精留塔2aの塔頂の下流側に接続され、さらなる精留塔2aに動作的に接続されている。この文脈において、「動作的に接続される」という用語は、これらの設備部分を含む処理設備の動作中に、異性化反応器5とさらなる精留塔2aとの間で物質及び/又はエネルギーの交換を行い得る形式で、異性化反応器5とさらなる精留塔2aとが互いに接続されていることを意味する。加えて、異性化反応器5に水素流14を供給する。水素流14とは別に異性化反応器5には、イソブタン・イソブテン濃縮物質流12を供給する。このような物質流12は、異性化反応器5への供給前に水素流14と混合されてもよい。イソブタン・イソブテン濃縮物質流12のt/h当たり、0.5Nm
3/h~5Nm
3/hの水素が水素流14を介して異性化反応器5に供給される。液相としてのイソブタン・イソブテン濃縮物質流12と、気相としての水素流14と、固相としての異性化反応器5の触媒とのこのような三相反応によって、反応物質の混合量をできる限り多くするために、欧州特許第2170494号明細書に基づき公知であるような混合・分配装置が異性化反応器5内に設けられている。混合・分配装置は液相のためのトラフ状チャネル及びトラフ状チャネル内の出口管を備えたトラフ分配器と、トラフ分配器の下方に配置されて鉛直ノズルを有する分配器板とを含む。さらに、異性化反応器5は、球状成形体を備えた水平方向に配置された固形触媒床を有する触媒を含む。触媒は、酸化アルミニウム担体上の、水素化に際して活性である少なくとも1種の金属を含む。この触媒の、水素化に際して活性である金属は、質量分率が0.2%~0.5%のパラジウムである。液相としてのイソブタン・イソブテン濃縮物質流12と、気相としての水素流14とを、並流法で上方から下方へ向かって、混合・分配装置によって触媒の固形触媒床全体にわたって異性化反応器5を通して案内することにより、イソブタン・イソブテン濃縮物質流12中に存在する1-ブテンを、水素を用いて2-ブテンに触媒的に異性化する。異性化反応器5内でのこのような異性化に際しては、温度は40℃~70℃であり、圧力は7bar~16barである。
【0038】
図1に示された実施形態では、異性化反応器5内の異性化から生じた生成物流15を精留塔6に供給する。精留塔6は異性化反応器5の下流側に接続され、これに動作的に接続されている。精留塔6は130~180の分離段を含み、還流液量と蒸留量との還流比は20:1である。精留塔6内では、約48%のイソブタン、約50%のイソブテン、100~200ppmの1-ブテン、及び700~1200ppmの2-ブテンの質量分率を含む生成物流15を蒸留分離する。これに関連して、塔頂生成物16として精留塔6からイソブタン濃縮物質流が分離される。これは80%~95%のイソブタン質量分率と、5%~20%のイソブテン質量分率とを有する。精留塔6は側流17を有している。精留塔6の総分離段の12%~15%は、側流17が位置する分離段の下方にある。イソブテン濃縮物質流18はこの側流17を介して分離される。この質量分率は99.7%のイソブテン、0.2%のイソブタン、200ppmの1-ブテン、及び400ppmの2-ブテンである。精留塔6の塔底生成物19中のイソブテンの質量分率は約98%であり、そして2-ブテンの質量分率は約2%である。
図1に示された実施形態では、所定の比率の塔底生成物19を、還流20としてC4流7に供給する。これに関連して、精留塔6の塔底と、C4流7をさらなる精留塔2a内へ供給するために設けられたラインとは、還流20を搬送するためのラインによって互いに動作的に接続されている。
【0039】
図1に示された実施形態では、さらなる精留塔2aの塔頂を介して引き出された物質流の一部である物質流21を、精留塔6のための蒸発器である熱交換器に供給することにより、熱交換器22を介して精留塔6の塔底内で気化されるべき混合物に熱を提供する。精留塔6の蒸発器に熱を供給するために、さらなる精留塔2aを精留塔6よりも高い温度、そして高い圧力で動作させる。物質流21を搬送するためのラインが、さらなる精留塔2aの塔頂と、精留塔6の熱交換器22とを接続している。放熱後、物質流21よりも低いエネルギー含有量を有する物質流23を、熱交換器22からさらなる精留塔2aの凝縮器13に供給することにより、さらなる精留塔2aの塔頂から取り出された物質流をさらなる精留塔2aの塔頂へ、熱伝達のために還流する。これに相応して、精留塔6の熱交換器22とさらなる精留塔2aの凝縮器13とは、物質流23を搬送するためのラインを介して接続されている。
【0040】
図2は、本発明によるさらなる設備1bのプロセスフロー図を示している。この設備1bはさらなる精留塔2bと、さらなる触媒4bと、異性化反応器5と、精留塔6とを含む。さらなる触媒4b及びさらなる精留塔2bは、C4流中の1-ブテンの異性化及び蒸留分離を繰り返すために役立つ。1-ブテンの異性化のためのさらなる触媒4bは、さらなる精留塔2bの内部の分離段内にある。精留塔と、精留塔内に配置された触媒とによってC4流中の1-ブテンを繰り返し異性化し蒸留分離する方法は、例えば欧州特許第1200378号明細書に基づき公知である。
【0041】
図2に示された実施形態では、さらなる精留塔2b内へ供給される前に、C4流7をさらなる水素流9bと混合し、そして次いでさらなる精留塔2bに供給する。C4流7をさらなる水素流9bと混合するのに加えて、これら2つの流れをさらなる精留塔2bに別個に供給することもできる。さらなる精留塔2b内で、C4流7を蒸留分離し、そしてさらなる精留塔2b内に形成された1-ブテン含有生成物流8を、さらなる水素流9bの水素と一緒に、さらなる触媒4bに供給する。さらなる触媒4bはさらなる精留塔2bの内側で分離段内に配置されている。生成物流8は
図2には示されていない。なぜならば、これは、さらなる触媒4bと同じ分離段内に配置されこのさらなる触媒4bと接触させられる、さらなる精留塔2b内の物質流に相当するからである。Al
2O
3上に担持されたPdO触媒であるさらなる触媒4bの存在下で、生成物流8中にある1-ブテンは、さらなる精留塔2b内でさらなる水素流9bの水素と反応することにより、2-ブテンを形成する。生成物流8よりも1-ブテンを少なく、そして2-ブテンを多く含有する、こうして形成された反応生成物流10もまた、さらなる触媒4bと同じ分離段内にあり、さらなる精留塔2b内で蒸留分離される。このような理由から、反応生成物流10も
図2には示されていない。さらなる精留塔2bの塔底生成物は、2-ブテン濃縮物質流11であり、塔頂生成物は、イソブタン・イソブテン濃縮物質流12である。この物質流12は、C4流7をさらなる水素流9bと混合する前の、さらなる精留塔2bに供給されるこのC4流7中のものよりも比較的少ない1-ブテン及び2-ブテンを有する。イソブテン濃縮物質流を得るための、
図2に示された実施形態におけるさらなる精留塔2bの後のさらなるプロセス工程は、
図1の実施形態におけるさらなる精留塔2aの後のプロセス工程と同じである。
【0042】
図3は、本発明によるさらなる設備1cのプロセスフロー図を示している。この設備1bは
図2の別の実施形態によるさらなる精留塔2bと、さらなる触媒4bと、異性化反応器5と、精留塔6とを含む。
図2の別の実施形態とは異なり、
図3に示された実施形態の精留塔6は、イソブテン濃縮物質流18を分離するための側流17を有していない。精留塔6の塔頂生成物16は、精留塔6の塔頂の下流側に接続されたさらなる精留塔24に供給される。このような理由から、精留塔6の塔頂及び第2精留塔24は互いに動作的に接続されている。
【0043】
図3に示された実施形態では、
図2の別の実施形態と比較して、精留塔6をより高い圧力及び/又はより高い温度で動作させることにより、イソブタン・イソブテン濃縮物質流を精留塔6から塔頂生成物16として分離する。このような塔頂生成物16を第2精留塔24に供給することにより、イソブタンからイソブテンを分離し、そして塔頂生成物25中のイソブタン濃縮物質流と、第2精留塔24の塔底生成物26中のイソブテン濃縮物質流18とを得る。このイソブテン濃縮物質流18中のイソブテンの質量分率は少なくとも99%である。
【0044】
図4は、本発明によるさらなる設備1dのプロセスフロー図を示している。この設備1dは
図1の別の実施形態によるさらなる精留塔2aと、さらなる触媒4aを含有する反応器3と、異性化反応器5と、精留塔6とを含む。
図1の別の実施形態とは異なり、
図4に示された実施形態の精留塔6は、イソブテン濃縮物質流18を分離するための側流17を有していない。精留塔6の塔底生成物19は、精留塔6の塔底の下流側に接続された付加的な精留塔27に供給される。このような理由から、精留塔6の塔底と付加的な精留塔27とは互いに動作的に接続されている。
【0045】
図4に示された実施形態では、イソブテン濃縮物質流18を精留塔6の塔底生成物19として、付加的な精留塔27に供給する。付加的な精留塔27内では、イソブテン濃縮物質流18の2-ブテンからイソブテンを分離し、そして付加的な精留塔27から塔頂生成物29として、さらに精製されたイソブテン流28を得る。このさらに精製されたイソブテン流28中のイソブテンの質量分率は少なくとも99.7%である。イソブテンと2-ブテンとを含む、付加的な精留塔27の塔底生成物30の一部を、還流31としてC4流7に供給する。このようにして、付加的な精留塔27の塔底と、C4流7をさらなる精留塔2a内に供給するために設けられたラインとは、還流31を搬送するためのラインを介して互いに動作的に接続されている。
本開示には以下に例示する実施形態も開示される。
[実施形態1]
少なくとも1-ブテン、2-ブテン、イソブタン、及びイソブテンを含むC4流(7)からイソブテンを精製する方法であって、以下の工程、すなわち、
- 前記C4流(7)から得られたイソブタン・イソブテン濃縮物質流(12)と、水素流(14)とを、異性化反応器(5)に供給する工程であって、前記異性化反応器(5)が、担体上、好ましくは酸化アルミニウム担体上に水素化に際して活性である少なくとも1種の金属を含む触媒を含む、工程と、
- 前記イソブタン・イソブテン濃縮物質流(12)及び前記水素流(14)を、前記異性化反応器(5)内で前記触媒と接触させる工程であって、それにより、前記イソブタン・イソブテン濃縮物質流(12)中に存在する1-ブテンが2-ブテンに異性化される、工程と、
- 前記異性化反応器(5)からの、前記イソブタン・イソブテン濃縮物質流(12)よりも少ない1-ブテンを含む生成物流(15)を、精留塔(6)に供給する工程と、
- イソブテン濃縮物質流(18)を提供する工程であって、
〇 この物質流(18)が、
・ 前記精留塔(6)からの側方流(17)を介して、若しくは
・ 前記精留塔(6)からの側方流(17)を介して、及び、前記精留塔(6)からの塔底生成物(19)として、若しくは
・ 前記精留塔(6)からの塔底生成物(19)として、
分離され、ここにおいて、さらに、イソブタン濃縮物質流が、前記精留塔(6)の塔頂生成物(16)として分離され、又は、
○ 同工程に際して、イソブタンに加えてイソブテンを含有する、イソブタンが濃縮された前記精留塔(6)からの塔頂生成物(16)が、前記イソブタンを前記イソブテンから分離し、そして第2精留塔(24)からの塔底生成物(26)中の前記イソブテン濃縮物質流(18)を得るために、前記第2精留塔(24)に提供される、工程と、
を含む方法。
[実施形態2]
前記イソブタン・イソブテン濃縮物質流(12)が得られる前記C4流(7)が、さらなる精留塔(2a,2b)に供給され、前記さらなる精留塔が、担体上、好ましくは酸化アルミニウム担体上に水素化に際して活性である少なくとも1種の金属を含むさらなる触媒を伴い、前記C4流(7)が前記さらなる精留塔(2a,2b)内で蒸留分離され、そしてさらなる水素流(9a,9b)及び前記さらなる精留塔(2a,2b)からの1-ブテンを含有する生成物流(8)が、前記さらなる触媒(4a,4b)と接触させられ、これにより、前記生成物流中に存在する1-ブテンが2-ブテンに異性化され、前記さらなる触媒(4a,4b)からの反応生成物流(10)が、前記さらなる精留塔(2a,2b)内で蒸留分離され、そして2-ブテン濃縮物質流(11)が、前記さらなる精留塔(2a,2b)から塔底生成物として分離され、そして前記イソブタン・イソブテン濃縮物質流(12)が前記さらなる精留塔(2a,2b)から塔頂生成物として分離され、そして前記異性化反応器(5)に供給され、この物質流(12)が、前記C4流(7)と比較して少ない1-ブテン及び2-ブテンを含有することを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
[実施形態3]
前記さらなる触媒(4a)の少なくとも一部が、前記さらなる精留塔(2a)の外側で反応器(3)内に配置され、前記生成物流(8)が前記さらなる精留塔(2a)から側流を介して分離され、前記生成物流(8)及び前記さらなる水素流(9a)が前記反応器(3)に供給され、そして、前記さらなる触媒(4a)からの前記反応生成物流(10)が、前記さらなる精留塔(2a)に供給されることを特徴とする、実施形態2に記載の方法。
[実施形態4]
前記さらなる精留塔(2b)内の前記さらなる触媒(4b)が、前記さらなる精留塔(2b)の少なくとも1つの分離段内に提供され、前記C4流(7)及び前記さらなる水素流(9b)が前記さらなる精留塔(2b)に供給され、そして前記反応生成物流(10)が前記さらなる精留塔(2b)内部で生成されることを特徴とする、実施形態2に記載の方法。
[実施形態5]
前記異性化反応器(5)内の温度が、20℃~100℃、好ましくは30℃~80℃、特には40℃~70℃であることを特徴とする、実施形態1から4までのいずれか1項に記載の方法。
[実施形態6]
前記異性化反応器(5)内の圧力が、3bar~30bar、好ましくは5bar~20bar、特には7bar~16barであることを特徴とする、実施形態1から5までのいずれか1項に記載の方法。
[実施形態7]
前記異性化反応器(5)への供給時に、前記イソブタン・イソブテン濃縮物質流(12)t/h当たりの水素(14)の流量が、0.02Nm
3
/h~200Nm
3
/h、好ましくは0.1Nm
3
/h~50Nm
3
/h、特には0.5Nm
3
/h~5Nm
3
/hであることを特徴とする、実施形態1から6までのいずれか1項に記載の方法。
[実施形態8]
前記精留塔(6)からの塔底生成物(19)の少なくとも一部が、還流(20)としてC4流(7)に供給されることを特徴とする、実施形態1から7までのいずれか1項に記載の方法。
[実施形態9]
前記イソブテン濃縮物質流(18)が、側流(17)を介して前記精留塔(6)から分離され、前記精留塔(6)の総分離段の8%~25%、好ましくは10%~20%、特には12%~15%が、前記側流(17)が位置する分離段の下方にあることを特徴とする、実施形態1から8までのいずれか1項に記載の方法。
[実施形態10]
前記さらなる精留塔(2a,2b)が、前記精留塔(6)よりも高い温度にあり、そして前記精留塔(6)に熱が供給されることを特徴とする、実施形態2から9までのいずれか1項に記載の方法。
[実施形態11]
前記異性化反応器(5)の触媒の、水素化に際して活性である金属が、元素周期表の8,9又は10族からのものであり、特にはパラジウム又は白金であることを特徴とする、実施形態1から10までのいずれか1項に記載の方法。
[実施形態12]
少なくとも1-ブテン、2-ブテン、イソブタン、及びイソブテンを含有するC4流(7)からイソブテンを精製するための処理設備(1a,1b,1c,1d)であって、以下の装置、すなわち、
- 担体上、好ましくは酸化アルミニウム担体上に水素化に際して活性である少なくとも1種の金属を含む触媒を含む、異性化反応器(5)と、
- 前記異性化反応器(5)の下流側に接続された精留塔(6)と
を含む、処理設備。
[実施形態13]
前記処理設備(1a,1b,1c,1d)が熱交換器(22)を含み、前記熱交換器が、前記精留塔(6)とさらなる精留塔(2a,2b)との間の熱伝達のために、前記精留塔(6)及び前記さらなる精留塔(2a,2b)に接続されていることを特徴とする、実施形態12に記載の処理設備(1a,1b,1c,1d)。
[実施形態14]
前記精留塔(6)が、イソブテンを含有する物質流を分離するための側流(17)を含むことを特徴とする、実施形態12又は13に記載の処理設備(1a,1b,1c,1d)。
[実施形態15]
前記精留塔(6)からの塔底生成物(19)を少なくとも部分的に還流させるために、前記精留塔(6)の塔底が、前記C4流(7)を搬送するために設けられたラインに接続されていることを特徴とする、実施形態12から14までのいずれか1項に記載の処理設備(1a,1b,1c,1d)。