(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】金属製の物体を製造する方法
(51)【国際特許分類】
B21B 45/08 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
B21B45/08 B
B21B45/08 F
(21)【出願番号】P 2021513802
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(86)【国際出願番号】 EP2019074215
(87)【国際公開番号】W WO2020053268
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】102018215492.9
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ザイデル・ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ゼッツァー・ラルフ
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-529771(JP,A)
【文献】特開平06-079337(JP,A)
【文献】特開平10-272511(JP,A)
【文献】特開平01-205810(JP,A)
【文献】特開平01-178312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 45/00- 45/08
B21B 37/00- 37/78
B21B 1/00- 99/00
B21B 38/00- 38/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の物体(1)、特にスラブ、粗帯材、帯材又は薄板を製造する方法であって、
物体(1)を送り方向(F)に、まずはデスケーラ(2)を通して、これに続いて圧延機(3)を通して送り、その際、圧延機(3)は、少なくとも1つの圧延スタンド(4)、特に送り方向(F)で最初の圧延スタンド(F1)を有し、物体(1)が、デスケーラ(2)において、物体(1)の上面
(6)をデスケーリングする少なくとも1つの上側のノズル列(5)と、物体(1)の下面(8)をデスケーリングする少なくとも1つの下側のノズル列(7)とによって処理される、方法において、
方法は、
a)少なくとも1つの圧延スタンド
(4)の位置に、特に最初の圧延スタンド(F1)の位置に、又は少なくとも1つの圧延スタンド
(4)の手前の、特に最初の圧延スタンド(F1)の手前の規定の位置
(以下、これらの位置を位置Aという)に存在する、物体(1)の上面(6)における二次スケール層の厚さ(s
oben)を特定し
、位置
Aに存在する、物体(1)の下面(8)における二次スケール層の厚さ(s
unten)を特定する、ステップと、
b)
特定された、物体(1)の下面(8)における二次スケール層の厚さ(S
unten
)から、送り方向(F)で最後の下側のノズル列(7)から位置Aまでの間の距離(b)を確定し、
物体(1)の上面(6)における二次スケール層の厚さ(s
oben)と物体(1)の下面(8)における二次スケール層の厚さ(s
unten)との差が
、位置
Aで、所定の値より下回る
ように、送り方向(F)で最後の上側のノズル列(5)を送り方向(F)で最後の下側のノズル列(7)に対してずらして配置し、その際、送り方向(F)で最後の上側のノズル列(5)と送り方向(F)で最後の下側のノズル列(7)との間の距離(a)を確定する、ステップと、
を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
物体(1)についての規定のプロダクトミックスを考慮し、それについての平均距離(a)を決定することによって、請求項1のステップb)による確定を行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上面
(6)及び下面
(8)の二次スケール層の厚さ(s
oben、s
unten)の特定を
、位置
Aで計測することよって行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
上面
(6)及び下面
(8)の二次スケール層の厚さ(s
oben、s
unten)の特定を、プロセスモデルに基づく数値シミュレーションによって行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
数値シミュレーションは、デスケーラ(2)を通過して圧延機(3)に至るまでの物体(1)の上面
(6)及び下面
(8)の温度経過を計算することを含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上面
(6)及び下面
(8)の二次スケール層の厚さ(s
oben、s
unten)の数値シミュレーションは、関係式
【数1】
式中
sは、二次スケール層の厚さ
k
Pは、スケール係数
tは、デスケーリングの終了以降の酸化時間
による厚さ(s
oben、s
unten)の特定を含むことを特徴とする、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
送り方向(F)で最後の上側のノズル列(5)と送り方向(F)で最後の下側のノズル列(7)との間の距離(a)を、最小で0.2m、好適には最小で0.3mに選択することを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
送り方向(F)で
下側の最後のノズル列
(7)と少なくとも1つの圧延スタンド
(4)、特に最初の圧延スタンド(F1)との間の距離(b)が、最大で6.0m、好適には最大で4.0mであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの圧延スタンド
(4)、特に最初の圧延スタンド(F1)への進入時に、物体(1)の上面(6)における二次スケール層の厚さ(s
oben)と物体(1)の下面(8)における二次スケール層の厚さ(s
unten)との差の所定の値が、関係式
|(s
oben―s
unten)|/s
Mittel*100%≦15%
式中、
s
Mittel=(s
oben+s
unten)/2
に従って決定されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
デスケーラ(2)と少なくとも1つの圧延スタンド
(4)、特に最初の圧延スタンド(F1)との間の領域における物体(1)の温度を、少なくとも1つの圧延スタンド
(4)、特に最初の圧延スタンド(F1)への進入時に、上面(6)における物体(1)の温度(T
oben)と下面(8)における物体(1)の温度(T
unten)とについて、
|(T
oben―T
unten)|/T
Mittel*100%≦3%
式中、
T
Mittel=(T
oben+T
unten)/2(温度℃)
が成り立つように調整することを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
物体(1)を、デスケーラ(2)と少なくとも1つの圧延スタンド
(4)、特に最初の圧延スタンド(F1)との間の領域において、付加的に水で冷却することを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
デスケーラ(2)において、物体(1)の上面
(6)と物体(1)の下面
(8)とで異なるノズルサイズを用いることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
デスケーラ(2)において、物体(1)の下面
(8)に対して、必要に応じて起動される他のノズル列を設けることを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
圧延機(
3)への物体(1)の引込速度及び/又は物体(1)の材料に依存して、物体(1)の上面
(6)及び/又は下面
(8)において複数のノズル列(5、7)の少なくとも1つにおいて吐出される水の水量及び/又は圧力レベルを個別に調整する、特に低減することを特徴とする、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の物体、特にスラブ、粗帯材、帯材又は薄板を製造する方法に関し、この方法では、物体を送り方向に、まずはデスケーラを通して、これに続いて圧延機を通して送り、その際、圧延機は、少なくとも1つの圧延スタンド、特に送り方向で最初の圧延スタンドを有し、物体が、デスケーラにおいて、物体の上面をデスケーリングする少なくとも1つの上側のノズル列と、物体の下面をデスケーリングする少なくとも1つの下側のノズル列とによって処理される。
【背景技術】
【0002】
物体は、圧延機において、いくつかの圧延スタンドを通ってガイドされることが多い。ただし、特にステッケルミルの場合、単一の圧延スタンドの使用も可能である。
【0003】
金属帯材の製造に際して、帯材温度管理、スケール特性ひいては製品品質及び帯材移動安定性に課せられる要求がますます高まっている。調査の結果、温度管理だけでなく、とりわけ後続の圧延プロセスのためのデスケーラの後のスケール成長が前述の特性に影響を及ぼすことが判明した。とりわけ帯材の上面と下面とでスケール層厚が異なると、圧延変形時、ロール粗さがそれぞれ異なるとき、PV圧延作用、スキー形成(湾曲)及び圧延モーメントの誤った調整がもたらされ、そして後の圧延プログラム経過において、上面と下面とで異なる帯材粗さ及び不都合な二次スケール効果がもたらされることが分かった。
【0004】
熱間圧延機の運転時、デスケーリング装置の使用が知られている。高圧ウォータージェットを用いてスケールを除去した後、後続送りに際してすぐに新たな二次スケール層が生成される。その際、スケール厚の成長速度は、設備条件及びプロセス条件に依存する。上面では、帯材又はスラブは、デスケーラの領域で、水に濡らされている、又は水がそこに留まり、下面では、塗布された水が直接に再び落下する。したがって、デスケーラ部分を通過するとき、通常、上面と下面とで異なる帯材温度が生じる。その結果、異なるスケール層厚が生じてしまう。
【0005】
欧州特許第1365870号明細書には、どのようにして、デスケーラの領域及びデスケーラの後方で、帯材の上面と下面との均整のとれた温度分布を調整することによって、条件を改善することができるのかすでに記載されている。しかし、その手段は、圧延設備及び帯材に関す最適な条件を調整することができるには十分ではない。それどころか、スケール生成特性を一緒に考慮し、的確に影響を及ぼす必要がある。
【0006】
さらに他の手段は、欧州特許第1034857号明細書、特開平01-205810号公報、特開2001-9520号公報及び特開2001-47122号公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許第1365870号明細書
【文献】欧州特許第1034857号明細書
【文献】特開平01-205810号公報
【文献】特開2001-9520号公報
【文献】特開2001-47122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の根底を成す課題は、前述の欠点を低減することができるように、冒頭で述べた方法を発展させることである。したがって、デスケーラ又はデスケーラにおけるデスケーリングの過程の最適化によって、製品特性及び設備特性の向上を図っている。これにより、特に二次スケール生成に影響を及ぼすことができるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるこの課題を解決する手段は、方法が、
a)少なくとも1つの圧延スタンドの位置に、特に最初の圧延スタンドの位置に、又は少なくとも1つの圧延スタンドの手前の、特に最初の圧延スタンドの手前の規定の位置に存在する、物体の上面における二次スケール層の厚さを特定し、少なくとも1つの圧延スタンドの位置に、特に最初の圧延スタンドの位置に、又は少なくとも1つの圧延スタンドの手前の、特に最初の圧延スタンドの手前の規定の位置に存在する、物体の下面における二次スケール層の厚さを特定する、ステップと、
b)送り方向で最後の上側のノズル列と送り方向で最後の下側のノズル列との間の距離を確定し、その結果、物体の上面における二次スケール層の厚さと物体の下面における二次スケール層の厚さとの差が、前述の位置で、所定の値より下回る、ステップと、
を有することを特徴とする。
【0010】
その際、好適には、物体についての規定のプロダクトミックスを考慮し、それについての平均距離を決定することによって、上述のステップb)による確定を行う。
【0011】
上面及び下面の二次スケール層の厚さの特定は、少なくとも1つの圧延スタンドの位置で、特に最初の圧延スタンドの位置で、又は少なくとも1つの圧延スタンドの手前の、特に最初の圧延スタンドの手前の規定の位置で計測することよって行うことができる(この規定の位置とは、二次スケール層の厚さを特定するために選択される又は確定される最初の圧延スタンドの直ぐ手前の位置であってよい)。
【0012】
しかも、上面及び下面の二次スケール層の厚さの特定を、プロセスモデルに基づく数値シミュレーションによって行うこともできる。この場合、数値シミュレーションは、デスケーラを通過して圧延機に至るまでの物体の上面及び下面の温度経過の計算を含むことを想定してよい。さらに、有利には、上面及び下面の二次スケール層の厚さの数値シミュレーション又は計算は、関係式
【数1】
式中
sは、二次スケール層の厚さ
k
Pは、スケール係数
tは、デスケーリングの終了以降の酸化時間
による厚さの特定を含むことが想定されている。
【0013】
スケール厚を特定するための上述の式は、シミュレーションモデルで用いることができる。温度及び材料に依存する前述のスケール係数は、実験により決定する又は文献から取り出すことができる。スケール係数は、当業者による相応の調査によって経験的に決定することもできる。
【0014】
代替的に、スケール厚を特定するための他のモデルを用いることもできる。
【0015】
送り方向で最後の上側のノズル列と送り方向で最後の下側のノズル列との間の距離は、好適には最小で0.2m、特に好適には最小で0.3mに選択される。
【0016】
一方、送り方向で最後のノズル列と少なくとも1つの圧延スタンド、特に最初の圧延スタンドとの間の距離は、好適には最大で6.0m、特に好適には最大で4.0mである。
【0017】
少なくとも1つの圧延スタンド、特に最初の圧延スタンドへの進入時に、物体の上面における二次スケール層の厚さ(soben)と物体の下面における二次スケール層の厚さ(sunten)との差の所定の値が、好適には、関係式
|(soben―sunten)|/sMittel*100%≦15%
式中、
sMittel=(soben+sunten)/2
に従って決定される。
【0018】
好適には、デスケーラと少なくとも1つの圧延スタンド、特に最初の圧延スタンドとの間の領域における物体の温度を、少なくとも1つの圧延スタンド、特に最初の圧延スタンドへの進入時に、上面における物体の温度(Toben)と下面における物体の温度(Tunten)とについて、
|(Toben―Tunten)|/TMittel*100%≦3%
式中、
TMittel=(Toben+Tunten)/2
が成り立つように調整する。
その際、温度は、℃で用いられる。
【0019】
材料は、好適には、デスケーラと少なくとも1つの圧延スタンド、特に最初の圧延スタンドとの間の領域において、付加的に水で冷却される。
【0020】
デスケーラにおいて、物体の上面と物体の下面とで異なるノズルサイズを用いることができる。
【0021】
物体の下面に対して、デスケーラにおいて、必要に応じて起動される他のノズル列を設けることができる。
【0022】
最後に、圧延機への物体の引込速度及び/又は物体の材料に依存して、物体の上面及び/又は下面において複数のノズル列の少なくとも1つにおいて吐出される水の水量及び/又は圧力レベルが個別に調整される、特に低減されることが想定される。
【0023】
提案された構想は、手段の組合わせと周辺条件の規定とを想定しているので、均整のとれた帯材温度に代えて、スケール生成又はスケール均整に的確に影響を及ぼすことが可能であり、これにより、前述の課題設定の観点で、改善された方法を実現することができる。
【0024】
図面には、本発明の実施例が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】従来技術による金属製の帯材用の製造設備の一部を概略的に示し、デスケーラ及びこれに続く圧延機の領域が示されていて、送り方向の経路において、帯材のそれぞれ上面及び下面について、温度経過及び厚さが計算された二次スケールの生成が示されている。
【
図2】
図1に基づく描画で、本発明による解決手段の対応する図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面には、帯材1(又はスラブ、粗帯材、薄板)が示唆されていて、帯材1は、デスケーラ2において、帯材1の上面6及び帯材1の下面8でデスケーリングされる。そのようにスケール除去された又はデスケーリングされた帯材は、送り方向Fに圧延機3に供給され、そこで圧延される。圧延機3は、本実施例では、圧延機3のいくつかの圧延スタンド4を有し、図面では圧延スタンド4のうち1つ、つまり最初の圧延スタンドF1だけが示されている。
【0027】
デスケーラ2は、上側のノズル列5と下側のノズル列7とを有し、これらのノズル列は、帯材1の対応する面をそれぞれスケール除去する又はデスケーリングするために設けられている。帯材を送るために、ロール対偶9及びロール対偶10が設けられている。実施例では、デスケーラ2は、その上さらに他の上側のノズル列11と他の下側のノズル列12とを有する。それぞれ異なるノズル列によって、水Wが、帯材1の上面と下面とに塗布される。
【0028】
図1は、従来技術による製造ラインの形態で圧延機3の手前に位置する2列のデスケーラ2の一例について示す。帯材表面温度(T
o/u)がどのように経過し得るか示されている。特に注目すべきは、それぞれの最後のデスケーラ噴射バー5又は7と製造ライン3との間のスケール成長である。
図1に示されているように、2つのデスケーリング列5及び7が、互いに上下に配置されているとき、圧延機3の最初の圧延スタンド4に対する距離(F1)が等しく表面温度T
o/uが異なる周辺条件では、冒頭で述べた問題を招いてしまう、異なるスケール層厚s
o/uが形成される。とりわけ、上面と下面との間のスケール層厚の違いは不都合であり、本発明によれば、最小化する又は特定の範囲内に保たれるべきである。
【0029】
帯材1の上面6と帯材1の下面8との間のスケール層厚の差を小さくしたい又は理想的には圧延プロセス時にそれらを等しく調整したいとき、
図2に、本発明による例に従って示されているように、上側のデスケーリング列5と下側のデスケーリング列7とを、送り方向Fに所定の形で互いにずらして、下側の列7が製造ライン3の手前で又は特に最初の圧延スタンドF1の手前でより近くに位置するように配置することができる。これは、
図2に、距離aによって表されている。スケール生成の法則性を適切に考慮すると、スケール条件を最適化することができ、これについては、以下に、具体的な実施例で表されている。
【0030】
帯材1の上面6の温度経過(T
o)及び帯材1の下面8の温度経過(T
u)と、帯材1の上面6におけるスケール層の生成厚(s
o)及び帯材1の下面8におけるスケール層の生成厚(s
u)を有する重要なスケール成長とが、
図2に示されていて、そしてこれは計算することができる。ゆえに、デスケーリング列と圧延スタンドF1との間の距離bと、下側のデスケーリング列に対する上側のデスケーリング列の距離aとは、スケール層厚が後続の1つ又は複数の圧延変形加工にとって最適であるように確定することができる。すなわち、スケール層厚s
o/uの違いは、圧延スタンドにおける帯材の上面と下面との層厚の差が所定値を下回るように調整される。
【0031】
圧延ライン内において、また圧延ライン3に至るまでかつ圧延ライン3内でのデスケーラ2の領域でも、温度変化をプロットするために、プロセスモデルが用いられる。計算された温度経過を知った上で、以下のスケールモデル又はスケール式を用いてスケール成長を計算することができる。
s=kp*(t)0.5
式中、
sは、スケール層厚(前回のデスケーリング後に0で始まる)
tは、酸化時間(前回のデスケーリング後に始まる)
kpは、帯材表面温度と帯材材料と周辺条件(水、空気)とに依存するスケール係数。
【0032】
圧延ライン3の設計は、生産割合に基づいて重み付けされ、プロダクトミックスに関して特定された、デスケーラ2と圧延ライン3との間の引込速度と表面温度とについて以下の最適に規定される条件が調整可能であるように行われる。
【0033】
上側のデスケーラ噴射バー5と下側のデスケーラ噴射バー7とは、下側の噴射バーが最後に配置されているように、互いにずらして配置されている(距離a)。この場合、最後のデスケーラ噴射バー7と圧延スタンドF1との間の距離bと、上側の噴射バー5と下側の噴射バー7との間の距離aとは、互いに、圧延ライン(例えば製造ライン3のスタンドF1)に進入するときのスケール厚が、平均で、上面と下面とで好適には同一である、又は上面と下面との間の計算されたスケール層厚(値)の差Δsが、平均スケール層厚の15%より小さい(
図2の最後のデスケーリング列7から圧延スタンドF1の距離範囲参照)。
【0034】
この場合、最初の圧延スタンドF1に進入するときの二次スケール層の厚さに関する関係式
sMittel=(soben+sunten)/2
Δs=|(soben―sunten)|/sMittel*100%
が成り立つ。式中、
sMittelは、帯材の上面/下面の平均のスケール層厚
sobenは、上面におけるスケール層厚
suntenは、下面におけるスケール層厚
Δsは、計算されたスケール層厚の差の百分率。
【0035】
上面及び下面におけるスケール成長をさらに最適化するため、また平均的な条件(引込速度、温度)から逸脱した場合の設計上のかつ/又は日常的な使用上の前述の目的を保つために、デスケーラ2と圧延ライン3との間に付加的な高圧冷却装置及び/又は低圧冷却装置が配置されている(図示されていない)。これらの冷却装置は、圧延スタンドF1の位置又は圧延スタンドF1の直ぐ手前の規定された基準位置において帯材1の上面6と下面8とでスケール層厚をできるだけ等しくする目的に近づけるために、プロセスモデルの結果に依存して起動される。
【0036】
さらに、デスケーラ2と圧延ライン3との間に付加的な帯材冷却部が存在する又はしない、デスケーラ2の後方の表面温度経過は、帯材1の上面6と下面8との間の温度差(値)が圧延スタンドにおける平均の表面温度の3%より小さい表面温度を生じさせるべきである。
【0037】
この場合、以下の関係式
TMittel=(Toben+Tunten)/2
ΔT=|(Toben―Tunten)|/TMittel*100%
が成り立つ。式中、
TMittelは、上面/下面の平均の帯材温度
Tobenは、上面における帯材温度
Tuntenは、下面における帯材温度
ΔTは、圧延スタンドにける計算された帯材温度の差の百分率。
その際、温度は℃で用いられる。
【0038】
デスケーラ2及び圧延ライン3の領域における最適な条件のために、計算から、好適には以下の距離が得られる。
【0039】
デスケーラ2の上側の噴射列5と下側の噴射列7との間の距離aは、好適には0.2mより大きく、特に好適には0.3mより大きい。
【0040】
最後のデスケーラ噴射列7とこれに続く圧延スタンドF1との間の距離bは、好適には6m以下、特に好適には4m以下である。
【0041】
デスケーリング条件ひいてはスケール層厚の状態を最適に調整するための他の調整要素として、以下の追加措置を講じることができる。
【0042】
帯材上面用のデスケーリングノズルは、帯材下面におけるノズルとは異なる。この場合、特に、下側では上側よりも大きなノズルが使用される。この場合、これは、下面では、帯材の表面の温度に所望の影響を及ぼすことができるように、より多くの量の水が塗布されることを意味する。
【0043】
任意選択的に、第3のデスケーラノズル列を帯材の下面に設けてよい。第3のデスケーラノズル列は、周辺条件に応じて、プロセスモデルによって起動される。
【0044】
引込速度及び帯材材料に依存して、第1のデスケーリングノズル列は、上側のみ、下側のみ又は両側で停止させることができる(これは複数列のデスケーラにも当てはまる)。
【0045】
引込速度及び帯材材料に依存して、上面及び/又は下面で第1のデスケーリングノズル列及び/又は第2のデスケーリングノズル列(又は他のノズル列も)の水量及び/又は圧力レベルを個別に低減することができる。
【0046】
デスケーラ2と圧延ライン3との間の付加的な冷却部が設置され、必要に応じて起動される。
【0047】
設備の設計、特にデスケーラから圧延スタンドの領域における距離の決定は、以下のステップで行われる。
【0048】
第1のステップで、まず、最後のデスケーリング列7から圧延ライン、つまり最初の圧延スタンドF1までの間の距離が特定される(距離b)。この距離は、好適には、二次スケール生成を最小限に抑えるために、最小化される。
【0049】
次いで、第2のステップで、上側及び下側のデスケーラ噴射バー同士の距離(a)の決定がなされるので、前述のスケール関係式及び/又は温度関係式の条件又は目的が満たされている、又は上面と下面との間のスケール層厚の差が最小化されている。
【0050】
設備の設計に際して、スケール層厚の差を所望の範囲内に維持することができないときには、デスケーラ2と圧延ライン3との間に付加的な冷却部を設けなければならない、かつ/又は前述の追加措置を実施しなければならない。
【0051】
所定の距離を有する既存の設備を運転するとき、様々な温度調整要素又はデスケーラ調整要素(ノズル圧、水量)が用いられるので、前述の許容差が維持される。
【0052】
スケールモデルを間接的に支援するために、(最初の)圧延スタンドF1の手前及び/又は後方の表面温度を計測し、計算値と比較することができる。計測された、上側の駆動スピンドルと下側の駆動スピンドルとの間のモーメント差から、複数の帯材にわたって差が持続する又は圧延プログラムの途中で増加するとき、圧延スタンドのワークロールの粗さの差を間接的に推測することもできる。この計測値は、スケールモデル及びデスケーリングパラメータ(水圧及び水量)の調整に関するフィードバックとして利用することもできる。
【0053】
好適には、デスケーラの圧力レベル又は水量とデスケーラの後方における付加的な冷却部(存在するとき)とを最適に制御し、これにより上面と下面とのスケール層厚を等しくする目的にできるだけ近づけるだけでなく、エネルギ消費量(つまり最小の水圧及び水量)と帯材温度損失(最小の水量)を最小限に抑えることもできるプロセスモデルが提供される。圧力レベルを変化させるとともにエネルギを節約するために、ピストンポンプが推奨される。
【0054】
提案された本発明による構成によって、最初の圧延スタンドF1の位置について、延長線が
図2に記載された位置(Pos)を選択することができる。この位置は、デスケーラ2に続いて圧延スタンドF1を配置するには最適な範囲(Opt)内にある。
【0055】
最適な範囲(Opt)では、前述にて要求されたような、二次スケール層の厚さの状態について要求される条件が存在する。
【0056】
したがって、有利には、前述の距離は、圧延ポートフォリオに基づいて設計される。
【0057】
複数列のデスケーラでは、デスケーリング列を任意にオン又はオフすることができるように構想を適合させることができる。その際、圧力レベルは、プロセスに応じて、上側の又は下側のそれぞれのノズル列において様々に調整することができる。
【0058】
デスケーラと製造ラインとの間に付加的な冷却部を設けて、必要に応じて起動することができる。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の観点として以下を含む。
1.
金属製の物体(1)、特にスラブ、粗帯材、帯材又は薄板を製造する方法であって、
物体(1)を送り方向(F)に、まずはデスケーラ(2)を通して、これに続いて圧延機(3)を通して送り、その際、圧延機(3)は、少なくとも1つの圧延スタンド(4)、特に送り方向(F)で最初の圧延スタンド(F1)を有し、物体(1)が、デスケーラ(2)において、物体(1)の上面をデスケーリングする少なくとも1つの上側のノズル列(5)と、物体(1)の下面(8)をデスケーリングする少なくとも1つの下側のノズル列(7)とによって処理される、方法において、
方法は、
a)少なくとも1つの圧延スタンドの位置に、特に最初の圧延スタンド(F1)の位置に、又は少なくとも1つの圧延スタンドの手前の、特に最初の圧延スタンド(F1)の手前の規定の位置に存在する、物体(1)の上面(6)における二次スケール層の厚さ(s
oben
)を特定し、少なくとも1つの圧延スタンドの位置に、特に最初の圧延スタンド(F1)の位置に、又は少なくとも1つの圧延スタンドの手前の、特に最初の圧延スタンド(F1)の手前の規定の位置に存在する、物体(1)の下面(8)における二次スケール層の厚さ(s
unten
)を特定する、ステップと、
b)送り方向(F)で最後の上側のノズル列(5)と送り方向(F)で最後の下側のノズル列(7)との間の距離(a)を確定し、その結果、物体(1)の上面(6)における二次スケール層の厚さ(s
oben
)と物体(1)の下面(8)における二次スケール層の厚さ(s
unten
)との差が、前記位置で、所定の値より下回る、ステップと、
を有することを特徴とする、方法。
2.
物体(1)についての規定のプロダクトミックスを考慮し、それについての平均距離(a)を決定することによって、上記1のステップb)による確定を行うことを特徴とする、上記1に記載の方法。
3.
上面及び下面の二次スケール層の厚さ(s
oben
、s
unten
)の特定を、少なくとも1つの圧延スタンドの位置で、特に最初の圧延スタンド(F1)の位置で、又は少なくとも1つの圧延スタンドの手前の、特に最初の圧延スタンド(F1)の手前の規定の位置で計測することよって行うことを特徴とする、上記1又は2に記載の方法。
4.
上面及び下面の二次スケール層の厚さ(s
oben
、s
unten
)の特定を、プロセスモデルに基づく数値シミュレーションによって行うことを特徴とする、上記1又は2に記載の方法。
5.
数値シミュレーションは、デスケーラ(2)を通過して圧延機(3)に至るまでの物体(1)の上面及び下面の温度経過を計算することを含むことを特徴とする、上記4に記載の方法。
6.
上面及び下面の二次スケール層の厚さ(s
oben
、s
unten
)の数値シミュレーションは、関係式
【数1】
式中
sは、二次スケール層の厚さ
k
P
は、スケール係数
tは、デスケーリングの終了以降の酸化時間
による厚さ(s
oben
、s
unten
)の特定を含むことを特徴とする、上記4又は5に記載の方法。
7.
送り方向(F)で最後の上側のノズル列(5)と送り方向(F)で最後の下側のノズル列(7)との間の距離(a)を、最小で0.2m、好適には最小で0.3mに選択することを特徴とする、上記1から6のいずれか1つに記載の方法。
8.
送り方向(F)で最後のノズル列(5、7)と少なくとも1つの圧延スタンド、特に最初の圧延スタンド(F1)との間の距離(b)が、最大で6.0m、好適には最大で4.0mであることを特徴とする、上記1から7のいずれか1つに記載の方法。
9.
少なくとも1つの圧延スタンド、特に最初の圧延スタンド(F1)への進入時に、物体(1)の上面(6)における二次スケール層の厚さ(s
oben
)と物体(1)の下面(8)における二次スケール層の厚さ(s
unten
)との差の所定の値が、関係式
|(s
oben
―s
unten
)|/s
Mittel
*100%≦15%
式中、
s
Mittel
=(s
oben
+s
unten
)/2
に従って決定されることを特徴とする、上記1から8のいずれか1つに記載の方法。
10.
デスケーラ(2)と少なくとも1つの圧延スタンド、特に最初の圧延スタンド(F1)との間の領域における物体(1)の温度を、少なくとも1つの圧延スタンド、特に最初の圧延スタンド(F1)への進入時に、上面(6)における物体(1)の温度(T
oben
)と下面(8)における物体(1)の温度(T
unten
)とについて、
|(T
oben
―T
unten
)|/T
Mittel
*100%≦3%
式中、
T
Mittel
=(T
oben
+T
unten
)/2(温度℃)
が成り立つように調整することを特徴とする、上記1から9のいずれか1つに記載の方法。
11.
物体(1)を、デスケーラ(2)と少なくとも1つの圧延スタンド、特に最初の圧延スタンド(F1)との間の領域において、付加的に水で冷却することを特徴とする、上記1から10のいずれか1つに記載の方法。
12.
デスケーラ(2)において、物体(1)の上面と物体(1)の下面とで異なるノズルサイズを用いることを特徴とする、上記1から11のいずれか1つに記載の方法。
13.
デスケーラ(2)において、物体(1)の下面に対して、必要に応じて起動される他のノズル列を設けることを特徴とする、上記1から12のいずれか1つに記載の方法。
14.
圧延機(2)への物体(1)の引込速度及び/又は物体(1)の材料に依存して、物体(1)の上面及び/又は下面において複数のノズル列(5、7)の少なくとも1つにおいて吐出される水の水量及び/又は圧力レベルを個別に調整する、特に低減することを特徴とする、上記1から13のいずれか1つに記載の方法。
【符号の説明】
【0059】
1 金属製の物体(スラブ、粗帯材、帯材、薄板)
2 デスケーラ
3 圧延機
4 圧延スタンド
5 上側のノズル列
6 帯材の上面
7 下側のノズル列
8 帯材の下面
9 ロール対偶
10 ロール対偶
11 他の上側のノズル列
12 他の下側のノズル列
F 送り方向
F1 最初の圧延スタンド
a 上側のノズル列と下側のノズル列との間の(送り方向の)距離
b 最後のノズル列と最初の圧延スタンドとの間の(送り方向の)距離
soben 帯材の上面における二次スケール層の厚さ
sunten 帯材の下面における二次スケール層の厚さ
Toben 上面における帯材の温度
Tunten 下面における帯材の温度
W 水
Pos 最初の圧延スタンド(F1)の選択された位置
Opt デスケーラに続く圧延スタンド(F1)の配置に最適な領域