(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】コアシェル構造を有するメタン酸化用触媒、その製造方法及びそれを用いたメタンの酸化方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/22 20060101AFI20221206BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20221206BHJP
B01J 35/08 20060101ALI20221206BHJP
B01J 37/10 20060101ALI20221206BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20221206BHJP
B01J 33/00 20060101ALI20221206BHJP
C07C 47/048 20060101ALI20221206BHJP
C07C 45/33 20060101ALI20221206BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221206BHJP
【FI】
B01J23/22 Z
B01J35/02 H ZNM
B01J35/08 Z
B01J37/10
B01J37/02 301P
B01J37/02 301M
B01J33/00 C
C07C47/048
C07C45/33
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021518548
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(86)【国際出願番号】 KR2019009370
(87)【国際公開番号】W WO2020071625
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0118267
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509005937
【氏名又は名称】アジュ ユニバーシティ インダストリー-アカデミック コーオペレーション ファウンデーション
(73)【特許権者】
【識別番号】515351884
【氏名又は名称】ユニスト(ウルサン ナショナル インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー)
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】アン グァンジン
(72)【発明者】
【氏名】パク ウンドク
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ウイセオブ
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-342964(JP,A)
【文献】特開昭58-092630(JP,A)
【文献】Nanoscale,2018年06月27日,vol.10,p.14031-14038,DOI:10.1039/c8nr02588f
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C07C 1/00-409/44
C07B 61/00
CA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO
2を含むナノ支持体を製造する段階と、
前記ナノ支持体にV
2O
5ナノ粒子を水熱合成してコア構造体を製造する段階と、
前記コア構造体に40~70の繰り返しサイクルでAl
2O
3を原子層堆積(ALD)してコアシェルナノ構造体を製造する段階と、
を含む、メタンからホルムアルデヒドへの部分酸化用触媒の製造方法。
【請求項2】
前記ナノ支持体は、球状のナノ支持体であることを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記水熱合成は、100~250℃で5~30時間の条件下で行うことを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記原子層堆積は、トリメチルアルミニウム(TMA)とH
2Oとを用いて行うことを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアシェル構造を有するメタン酸化用触媒、その製造方法及びそれを用いたメタンの酸化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタンは、天然ガスの主な構成物質であって、主に熱と電気発生とのために用いられる。最近、水圧破砕技法(hydraulic fracturing)に基づいたシェールガス採掘技術の発達は、豊かなメタンガスをさらに価値のある化学物質供給原料に転換して石油資源に対する依存を減らすための技術開発にさらに多くの関心を有させるきっかけを設けた。それにも拘らず、メタンの4個の強いC-H結合(結合エネルギー=413kJ mol-1)は、メタンを有用な化学物質への転換に大きな障壁である。この強いメタンのC-H結合を切るために、反応温度を増加させれば、メタンは合成ガスに切り替えられて、高付加価値の炭化水素またはアルコールの生成のための供給原料として使われる。実際にメタンのホルムアルデヒド(formaldehyde;HCHO)、メタノール(methanol;CH3OH)及びエチレン(ethylene;C2H4)への転換のために、いくつかの工程が開発され、産業的に応用されている。しかし、高いC-H結合エネルギーを有するメタンの転換反応のために、高い温度の触媒反応は必然的に熱力学的に安定した化学物質である二酸化炭素を生成するが、このような二酸化炭素になるメタンの完全酸化反応は、温室ガスの主要因であり、工程のエネルギー効率の側面でも望ましくない。したがって、完全酸化反応による二酸化炭素の生成を避け、高付加価値の化学物質を生成するためのメタンの部分酸化反応は、非常に重要であるが、依然として挑戦的な課題として残っている。
【0003】
メタンからホルムアルデヒド(HCHO)を生成するためには、強いC-H結合を切るために、600℃以上の温度を必要とし、HCHOまたはCH3OHを生成するための最適の部分酸化触媒としてV2O5とMoO3とが用いられている。しかし、HCHOは、COとH2Oに、また容易に酸化されるために、選択性に優れ、メタン転換率が高い効率的な部分酸化触媒の開発が必須である。また、C-H結合活性のために使われるPtまたはPdのような貴金属は、触媒活性は良いが、メタンがCO、CO2及びH2Oに完全酸化される可能性が高く、貴金属触媒の非活性化は、工程効率を落とす。このような理由で、HCHOへの部分酸化は、まだ挑戦的な反応であり、現在600℃でメタンのHCHOへの転換率は、10%未満である。
【0004】
したがって、高温に安定的であり、メタンを部分酸化して生成されるホルムアルデヒド(HCHO)の転換率を増加させる触媒の開発が至急な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、熱に安定的であり、メタンを酸化してホルムアルデヒド(HCHO)への転換率を増加させる高活性バナジウム系メタン酸化用触媒及びその製造方法を提供するところにある。
【0006】
また、本発明の他の目的は、前記の製造方法によるメタン酸化用触媒を利用したメタンの酸化方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を果たすために、本発明は、コア構造体;及び前記コア構造体上にコーティングされたシェルコーティング層;を含み、前記コア構造体は、球状のナノ支持体と、前記支持体よりも小さな粒径を有しながら、前記支持体にコーティングされてコア構造体を形成するコアナノ粒子と、からなることを特徴とするメタン酸化用触媒を提供する。
【0008】
また、本発明は、球状のSiO2を製造する段階;前記球状のSiO2にV2O5ナノ粒子を水熱合成(hydrothermal reaction)してコア構造体を製造する段階;及び前記コア構造体にAl2O3を原子層堆積(atomic layer deposition;ALD)してコアシェル(core-shell)ナノ構造体を製造する段階;を含むメタン酸化用触媒の製造方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記のメタン酸化用触媒の製造方法によって製造されることを特徴とするメタン酸化用触媒を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記メタン酸化用触媒の存在下でメタンと酸素とを反応させることを特徴とするメタンの酸化方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記メタン酸化用触媒の存在下でメタンと酸素とを500~800℃で反応させてホルムアルデヒド(HCHO)を生成することを特徴とするホルムアルデヒドを生成するメタンの酸化方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるメタン酸化用触媒は、コアシェル構造によって高温でもAl2O3シェルがV2O5ナノ粒子の凝集及び構造的な変形を防いで熱的安定性に優れている。
【0013】
また、本発明によるコアシェル構造を有するメタン酸化用触媒は、V2O5とAl2O3との間に新たな触媒種を形成して高い温度でもメタンの転換率とホルムアルデヒド(HCHO)の選択性とがそれぞれ22.2%、57.8%に触媒活性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3コア@シェルナノ構造体の製造と(b)球状SiO
2粒子、(c)SiO
2@V
2O
5、(d)SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(50)コア@シェルナノ構造体の透過電子顕微鏡(TEM)イメージとを示す図面である。
【
図2】SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(50)コア@シェルナノ構造体の構造的特性に関するものであって、(a)走査電子顕微鏡(SEM)イメージ、(b)ラインスキャン(line-scan)エネルギー分散型分析(EDS)スペクトルを有する走査透過電子顕微鏡(STEM)イメージを示す図面である。
【
図3】(a)SiO
2@V
2O
5ナノ構造体にAl
2O
3シェルのマルチサイクル(multi-cycle)コーティングに対するALD工程、(b)SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(10、30、50及び100)ナノ構造体のX線回折(XRD)パターンを示す図面である。
【
図4】(a)SiO
2@V
2O
5、(b)SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(50)ナノ構造体のリアルタイムX線回折(in-situ XRD)パターンを示す図面である。
【
図5】600℃で多様なSiO
2@V
2O
5@Al
2O
3コア@シェルナノ構造体とバナジウム酸化物が担持されたメソ細孔シリカ(V
2O
5/m-SiO
2)触媒のメタン酸化性能を示したものであって、(a)SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(50)ナノ構造体のタイムオンストリーム(time-on-stream)によるメタン転換率と選択性、(b)メタン転換率と生成物の収率とに対するSiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(x)コア@シェルナノ構造体の比較、(c)1、3及び5wt%のバナジウム担持量によるV
2O
5/m-SiO
2触媒のメタン酸化性能を示す図面である。
【
図6】600℃、1:1(v/v)のCH
4/O
2比でバナジウム系触媒のメタン酸化性能を示す図面である(n.d.=not detected)。各反応は、再現性のために、3回以上行い、転換率とTOFは、平均値であり、偏差は、15%以内である。
【
図7】SiO
2@V
2O
5、SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(50)コア@シェルナノ構造体及び3wt% V
2O
5/m-SiO
2の(a)ラマンスペクトラ(Raman spectra)、(b)水素を利用した温度調節還元実験(H
2-TPR)カーブ、(c)紫外線-可視光(UV-vis)拡散反射スペクトラを示す図面であり、(d)SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3コア@シェル触媒でV
2O
5とAl
2O
3との間の反応による新たなT
dバナジウム種の形成とV-O-Al結合とを示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0016】
本発明者らは、メタン酸化反応において高温で安定的であり、メタンの転換率とホルムアルデヒドの選択性とに優れたSiO2@V2O5@Al2O3コアシェル構造を有したナノ構造体触媒を製造し、前記製造された触媒は、高温でAl2O3シェルがV2O5ナノ粒子の凝集及び構造的な変形を防いで熱的安定性に優れ、V2O5とAl2O3との間に新たな触媒種を形成して高い温度でも触媒活性に優れていることを明らかにして、本発明を完成した。
【0017】
本発明は、コア構造体;及び前記コア構造体上にコーティングされたシェルコーティング層;を含み、前記コア構造体は、球状のナノ支持体と、前記支持体よりも小さな粒径を有しながら、前記支持体にコーティングされてコア構造体を形成するコアナノ粒子と、からなることを特徴とするメタン酸化用触媒を提供する。
【0018】
この際、前記球状のナノ支持体は、SiO2を含み、前記支持体にコーティングされるコアナノ粒子は、平均粒径10~100nmのV2O5を含み、前記コア構造体上にコーティングされるシェルコーティング層は、Al2O3を含むものである。
【0019】
また、本発明は、球状のSiO2を製造する段階;前記球状のSiO2にV2O5ナノ粒子を水熱合成してコア構造体を製造する段階;及び前記コア構造体にAl2O3を原子層堆積(ALD)してコアシェルナノ構造体を製造する段階;を含むメタン酸化用触媒の製造方法を提供する。
【0020】
この際、前記水熱合成は、100~250℃で5~30時間の条件下で行うものであり、望ましくは、220℃で24時間の条件下で行うことができる。
【0021】
この際、前記条件を外れれば、球状のSiO2にV2O5ナノ粒子が十分にコーティングされず、Al2O3シェルとの相互作用が正しくなされず、触媒活性が落ちるか、反応時間に比べて、V2O5ナノ粒子コーティング収率が不良であって、経済的でない問題が引き起こされる。
【0022】
また、前記原子層堆積は、トリメチルアルミニウム(trimethylaluminum;TMA)とH2Oとを用いて1~100サイクルを行うものであるが、望ましくは、50サイクルを行うことができる。
【0023】
また、本発明は、前記メタン酸化用触媒の製造方法によって製造されることを特徴とするメタン酸化用触媒を提供する。
【0024】
また、本発明は、前記メタン酸化用触媒の存在下でメタンと酸素とを反応させることを特徴とするメタンの酸化方法を提供する。
【0025】
また、本発明は、前記メタン酸化用触媒の存在下でメタンと酸素とを500~800℃で反応させてホルムアルデヒド(HCHO)を生成することを特徴とするホルムアルデヒドを生成するメタンの酸化方法を提供することができ、望ましくは、前記メタン酸化用触媒の存在下でメタンと酸素とを600℃で反応させてホルムアルデヒド(HCHO)を生成することができる。
【0026】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって、本発明の範囲が、これらの実施例によって制限されないということは当業者にとって自明である。
【0027】
<実施例1>SiO2@V2O5ナノ構造体の製造
【0028】
NH4OH(7.5mL)、H2O(24ml)を室温でエタノール(294ml)に混合した。これにオルトケイ酸テトラエチル(Tetraethyl orthosilicate;TEOS、Aldrich、98%、15mL)を一滴ずつ滴下し、混合物を24時間混合した。不透明になった前記溶液を濾過させ、濾過物(filter cake)をエタノールで濯いだ後、70℃で乾燥させてシリカ球を得た。SiO2@V2O5ナノ構造体を合成するために、あらかじめ製造されたシリカ球(0.3g)をジメチルホルムアミド(dimethylformamide、40mL)が添加されたバナジルアセチルアセトナート(vanadyl acetylacetonate;VO(acac)2、Sigma-Aldrich、97%、0.83g)と3時間超音波処理しながら混合した。前記方法で得られた溶液は、50mLテフロンオートクレーブ反応器(Teflon-lined autoclave reactor)に入れられ、堅く密封した後、220℃で24時間保持した。黒色生成物は、遠心分離機によって分離され、エタノールで濯ぎ、70℃で乾燥させた後、400℃で3時間熱処理して得られた生成物をSiO2@V2O5コア@シェルナノ構造体のコアとして利用した。
【0029】
<実施例2>SiO2@V2O5@Al2O3-(x)(x=10、30、40、50、70、100)コア@シェルナノ構造体の製造
【0030】
Al2O3シェルは、トリメチルアルミニウム(TMA;アルミナ前駆体、Sigma-Aldrich、97%)-H2O-Arシーケンス(sequence)を用いて回転式原子層堆積(ALD)反応器でSiO2@V2O5ナノ構造体の表面に成長させた。まずに、SiO2@V2O5パウダーは、多孔性ステンレススチールシリンダー(porous stainless steel cylinder)に入れられ、反応チャンバ内で140rpmで回転させた。ALDシーケンスの一回のサイクルのために、導入されたTMAは、1Torrの圧力と180℃でV2O5の表面に蒸着され、その後、チャンバは、副産物で生成されたCH4と非反応したTMAとの除去のために排気された。チャンバは、20Torr圧力のArで満ち、何分後に排気された。その後、TMAに付着されたメチルグループをOHグループに取り替えるためにH2O(1Torr)を入れ、チャンバに生成されたCH4と超過したH2Oとを除去するために排気され、Ar(20Torr)で除去された。2回のサイクルのために、前記段階は反復される。ALDサイクルの数は、(x)に表示され、これは、Al2O3シェルの厚さに比例されることが分かった。したがって、Al2O3シェルの厚さが調節されたSiO2@V2O5@Al2O3-(x)コア@シェルナノ構造体は、ALDサイクル数(x=10、30、40、50、70、100)を異ならせることで製造された。
【0031】
<実施例3>多孔性シリカ支持体V2O5(V2O5/m-SiO2)触媒の製造
【0032】
従来のV2O5/m-SiO2(mesoporous silica)触媒は、初期湿式含浸法(incipient wetness impregnation)によって製造された。メソセルラー(mesocellular)構造(MCF-17)を有したメソ細孔(mesoporous)シリカは、支持体として使われた。簡単に、1,3,5-トリメチルベンゼン(1,3,5-trimethylbenzene、Sigma-Aldrich、98%、4g)は、4gのプルロニック(Pluronic)P123トリブロック共重合体(triblock copolymer(Aldrich、平均分子量Mw5800Da))と10mLの濃縮されたHClとを含む水溶液75mLに溶解された。前記混合物を40℃で2時間混ぜた後、TEOS(9.2mL)を入れた後、5分間保持した。前記溶液は、混ぜる過程なしに40℃で20時間保管され、NH4F(Sigma-Aldrich、98%、46mg)が添加された後、100℃、24時間密閉された容器で保管された。前記方法で得られた白色析出物は濾過され、水とエタノールとで濯がれ、メソ細孔シリカMCF-17を得るために、600℃で6時間空気中で熱処理した。V2O5/m-SiO2触媒は、シュウ酸二水和物(oxalic acid dihydrate;C2H2O4・2H2O、Acros Organics、99%)の存在下に酸化アンモニウムバナジウム(ammonium vanadium oxide;NH4VO3、Alfa Aesar、99%)の溶液にMCF-17(1g)を10時間以上露出することで製造された。遠心分離し、乾燥して、350℃で4時間か焼した後に1、3及び5wt%バナジウム前駆体が担持されたV2O5/m-SiO2触媒を得た。また、本発明との比較のために、商業用Al2O3(Puralox SBa 200、Sasol)の存在下に前記のような含浸法によってV2O5/Al2O3触媒を製造した。より詳細に、Al2O3 1gは、NH4VO3のエタノール溶液にシュウ酸二水和物と共に混合した。60℃で乾燥し、350℃で4時間空気中で熱処理した後に、3及び5wt%のV2O5/Al2O3触媒を得た。
【0033】
<実施例4>特性分析
【0034】
リアルタイムX線回折(in situ X-ray diffraction)パターンは、20~80°(Cu Kα放射線(radiation)、λ=1.5418A)の2θでそれぞれPAnalytical X´Pert ProとリガクスマートラップX線回折機(Rigaku Smart Lab X-ray diffractometer)装備とを用いて得られた。測定前に、サンプルは、ホルダーに載せられ、150℃で30分間Ar下で予熱された。現場測定スペクトラは、特別に製作されたセルを使用して50℃(100から800℃まで)段階に4% CH4、4% O2及び残量Arの加熱された混合ガスに露出された触媒について記録された。BET(Brunauer-Emmett-Teller)表面積は、microtrac BELsorp-Max分析器に記録された窒素(N2)吸着/脱着等温線から見つけ出した。気孔サイズ分布は、BJH(Barrett-Joyner-Halenda)方法によって見つけ出した。SEM(scanning electron microscopy)イメージは、Hitachi S-4800を用いて分析し、TEM(Transmission electron microscopy)イメージは、JEOL JEM-2100Fを用いて200kVで分析された。EDS(energy-dispersive X-ray spectroscopy)分析器(Oxford instrument、X-Max 80T)は、元素分析のために使われた。TPR(temperature-programmed reduction)は、Micromeritics AutoChem II 2920装置を用いて分析された。一般的に、触媒サンプル(100mg)は、U字型石英チューブに入れられ、150℃で30分間Heガス流れ下でガスを抜いた。その後、Heガス(50mL min-1)にある10% H2の流れ(50mL min-1)下で10℃ min-1の速度で800℃に温度を上昇させた。消費されたH2の量は、Delsi Nermag熱伝導検出器を用いてガスクロマトグラフィーで見つけ出した。拡散反射UV-visスペクトルは、200~2200nmの領域で作動するAgilent Cary 5000 UV-vis-NIR分光光度計を用いて1nmのスキャン段階条件で記録された。ハロン(halon)白色(PEFE)反射度基準(standard)を反射度のバックグラウンドとして利用した。ラマンスペクトラは、532nmのダイオードレーザが装着されたWITec alpha300 R分光分析器を用いて得られた。レーザパワーは、0.1mWに固定し、十分な信号対雑音比(signal-to-noise ratio)を得るために、スペクトラは、10秒露出、10倍蓄積CCDを使用して得られた。
【0035】
<実施例5>メタン酸化反応
【0036】
触媒作用によるメタン酸化は、大気圧及び600℃の一定温度で実験室規模流れ型触媒反応器で行われた。前記で合成されたバナジウム系触媒は、150~250μmの粒子サイズのペレットで製造された。100mgの触媒サンプルは、1gの精製された砂と共に石英チューブからなる触媒反応器に入れられた。1:1のv/v比率のCH4(99.95%)及びO2(99.995%)をガス質量流れ調節器(mass flow controller)を使用して40sccmの速度で触媒層の上部から下部に供給し、気体時間当り空間速度(GHSV)を24,000mL gcat
-1h-1に保持した。反応器を炉で600℃に加熱し、挿入された熱電対(thermocouple)を装着して温度をモニタリングした。生成物は、Porapak-Nカラムが装着されたオンラインガスクロマトグラフィー(YL6500)及びメタナイザー(methanizer)(Arは、移動相として流す)が装着された熱伝導度検出器(thermal conductivity detector;TCD)及び水素炎イオン化検出器(flame ionization detector;FID)に連結された分子篩カラム(molecular sieve column)を用いて検出した。HCHO、CO、CO2及びH2が主なメタンの酸化反応生成物と確認された。メタンから転換された生成物は、ガスクロマトグラフィーに入る前に、コールドトラップ(cold trap)装置によって凝縮されて分離した。この溶液は、1M Na2SO3溶液と混合されてNaOH及びH2SO4と滴定(titration)分析を行うことにより、HCHOの濃度を計算することができる。メタン転換率は、最大活性値を有する安定化された地点に対するガスクロマトグラフィーデータを使用して消耗されたメタン量と元のメタン量との比率で計算された。HCHOの選択性は、生成物の量と転換されたメタンの総量との比として計算された。SiO2@V2O5@Al2O3-(x)コア@シェルナノ構造体(x=40、50及び70)の転換率は、メタン転換率の平均値によって見つけ出し、各反応は、再現性のために3回以上分析された。時間当り使用可能な各バナジウム活性点(site)でHCHOで反応したCH4分子の数を基準に転換頻度(turnover frequency;TOFHCHO)を計算した。V2O5ナノ粒子の最も外側の表面に独立したバナジウム種をアルミナ皮と接触させると仮定すれば、コア@シェル触媒の全体表面積は、構造のサイズと質量とで決定されるが、コア@シェルナノ構造体の数は、単一ナノ粒子の質量によって換算され、総表面積と独立した表面バナジウム活性点(7.3×1018)とを計算して最終的にTOFを計算した。
【0037】
<実験例1>SiO2@V2O5@Al2O3コア@シェル触媒の製造
【0038】
前記実施例2の方法のように、SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3コア@シェルナノ構造体は、水熱合成とALDとによって製造され(
図1のa)、平均サイズ150nmのSiO
2球は、前記実施例1の方法によって合成された(
図1のb)。平均35nmのサイズを有する別個のV
2O
5ナノ粒子は、VO(acac)
2の存在下に熱水反応によってSiO
2球の表面に蒸着された(
図1のc)。反応の間に、小さなバナジウムクラスターは、まず、核形成によって形成され、その後、バナジウム種は、SiO
2の表面の親水性の性質のためにほとんどSiO
2球に付着された。以後、多様な反復サイクルを有するALDによって薄いAl
2O
3層が制御された厚さにSiO
2@V
2O
5ナノ構造体上に蒸着された。
図1のdは、コア構造体にコーティングされたAl
2O
3層の存在を明らかに示すSiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(50)コア@シェルナノ構造体の代表的なTEMイメージを示す。
【0039】
SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(50)コア@シェルナノ構造体の表面形態は、SEM、TEMスキャニング(STEM)及びEDSによって分析された。
図2のaは、Al
2O
3層がSiO
2@V
2O
5ナノ構造体の全体表面に均一に蒸着されていることを明確に示す。STEMイメージとこれによるEDSラインスキャニングとを通じた元素分布(
図2のb)から見られたOとV(V
2O
5に由来する)は、シェルに均一に広がっているが、Si(シリカ球に由来する)は、主にコアに分布した。そして、全体コア@シェルナノ構造体上でのアルミナ分布でアルミナは、薄いAl
2O
3シェル層によってコーティングされていることを見つけ出した。また、SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(10、30、50及び100)コア@シェルナノ構造体は、高解像度TEM測定によって、100ALDサイクルは、20nmの厚さのAl
2O
3層が生成されて、球全体を覆うに十分な一方、10サイクルは、十分にコーティングされるには十分ではないことを見つけ出した。
【0040】
SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3コア@シェルナノ構造体のシェル厚さは、ALDサイクル数が増加するにつれて増加した(
図3のa)。導入されたTMA前駆体は、V
2O
5表面上に吸着されてAl-O結合を形成し、水蒸気の追加下にAl(OH)
4が最終的に生成された。その後に、ALDサイクルでSiO
2@V
2O
5上に追加アルミナ層の蒸着を行った。SiO
2@V
2O
5触媒のXRDパターン(
図3のb)は、V
2O
5(Pmmn、a=11516、b=03566、c=04372nm)ピーク特徴が存在することを見つけ出した。(110)ピークでScherrer方程式を用いてSiO
2@V
2O
5ナノ構造体の結晶サイズが40.1nmになることを見つけ出し、これは、TEMとSEMとで得た値と一致した。しかし、SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3コア@シェルナノ構造体では、非常に弱いXRDピーク(
図3のb)が観察されたが、これは、Al
2O
3シェルが結晶ではないためであることが確認された。SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(10、30、50及び100)ナノ構造体のXRD分析でALDサイクルの数が10から100まで増加することにより、結晶サイズも31.3から34.6nmに増加することを確認した。このような結果として、(a)製造されたV
2O
5ナノ粒子は、減少したサイズのV
2O
5でAl
2O
3の表面に拡散され、(b)V
2O
5コアからのX線回折は、ALDサイクルの数が増加しながら得られたAl
2O
3シェルのために、ピークの強度が減少して表われた。
【0041】
<実験例2>コア@シェルナノ構造体でV2O5種の熱的安定性
【0042】
Al
2O
3蒸着前/後にSiO
2@V
2O
5触媒の熱的安定性は、4% CH
4、4% O
2、及びArのガス存在下に100~800℃でリアルタイムXRD分析によって調査された。
図4のaは、V
2O
5のXRDピーク特徴を示すものであって、SiO
2@V
2O
5触媒では、V
2O
5のXRDピーク特徴がよく表われており、ピーク強度は、温度が750℃まで増加するほど増加することをを示した。Scherrer方程式を用いて計算されたV
2O
5ナノ粒子の結晶サイズは、100℃で50.8nmから750℃で77.9nmに増加した。高い温度で、外部のV
2O
5ナノ粒子は、漸次的に崩壊されて結晶性を失い、800℃以上でXRDピーク解像度が減少することが観察された。一方、SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(50)コア@シェルナノ構造体では、800℃までXRDピーク強度が保持され、これをもって、Al
2O
3シェルの存在は、高い温度でコアV
2O
5ナノ粒子の凝集を防ぐことを見つけ出した(
図4のb)。
【0043】
また、700℃以上でSiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(50)コア@シェルナノ構造体に新たなピークが生じたことを見つけ出した(
図4のb)。しかし、アルミナまたはバナジウム酸化物の他の結晶構造の可能性を調査した時、アルファ、ガンマ、シータのような結晶アルミナとV
2O
3、V
4O
7、VO
2などのバナジウム酸化物とは一致せず、高解像度TEMイメージでも薄いAl
2O
3シェルは、如何なる結晶度を見せないことを示した。以前研究で分析された570℃以上でV
2O
5とAl
2O
3との間の固相反応から形成されたAlVO
4相(phase)と26~30°の範囲で追加的なXRDピーク分析は、AlVO
4のピーク特性と一致した。このような結果に基づいて、温度が増加するほど薄いアルミナシェルは結晶化されないが、700℃以上でV
2O
5とAl
2O
3との間の固相反応から新たなAlVO
4種を生成することを見つけ出した。
【0044】
<実験例3>メタンの触媒作用によるホルムアルデヒドへの酸化反応
【0045】
Al
2O
3シェルの厚さが調節されたSiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(50)コア@シェルナノ構造体を利用したメタン酸化は、1:1(v/v)のCH
4/O
2比と600℃の温度で実験室規模流れ型気相反応器で行われた。
図5のaは、600℃でSiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(50)ナノ構造体のタイムオンストリームによるメタン転換率を示す。
【0046】
初期に観察されたタイムオンストリームによる転換率の漸次的な増加は、6時間(生成物選択性が変化された地点)で急な変化と引き続き最大の飽和を示し、これは、触媒の構造的再配置によるものである。SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(50)コア@シェルナノ構造体のメタン転換率は、~22.2%に到達され、これと対応してHCHO、CO及びCO
2の選択性は、それぞれ57.8、27.4及び14.8%であった(
図6)。35時間以上で、全体的な転換率と選択性は、一定に保持され、これをもって、SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(50)ナノ構造体は、高い温度のメタン酸化反応で長時間安定化されて熱的安定性に優れているということを証明した。また、多くの他のシェル厚さを有したSiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(x)ナノ構造体を利用したメタン酸化反応を行った(
図5のb)。SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(50)でメタンの転換率が22.2%に最大値が観察された一方、x=0-30では、転換率が低いと観察された。したがって、SiO
2@V
2O
5ナノ構造体は、600℃でV
2O
5ナノ粒子が構造的に安定していないために、メタン酸化反応で活性が大きくないことが分かった。Al
2O
3シェルの保護効果は、SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(50)で最大になり、これは、反応物と生成物との持続的な交換のための十分な気孔を提供するAl
2O
3シェルの特徴のためであり、これと共にシェル厚さがさらに増加するほどSiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(100)で転換率が3.7%観察されることにより、性能がさらに悪化することを見つけ出した(
図5のb、
図6)。また、
図5のcは、バナジウム1、3及び5wt%担持されたV
2O
5/m-SiO
2のメタン酸化反応性能を示すものであって、600℃でメタン転換率は、5.5~5.6%であり、HCHO選択性は、65.7~71.2%であることを見つけ出し、これは、以前研究と類似していることが確認された。
図6は、Al
2O
3シェルの厚さを調節したコア@シェルナノ構造体とV
2O
5/m-SiO
2触媒のメタン酸化反応性能を要約したものであり、これをもって、SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(50)で達成されたメタン転換率は、以前に600℃でバナジウム系触媒では成就したことがない最高のメタン転換率を有することを見つけ出した。
【0047】
したがって、本発明のSiO2@V2O5@Al2O3-(50)ナノ構造体は、600℃、24,000mL gcat-1h-1下で22.2%のCH4転換率と57.8%のHCHO選択性とを有した最上の触媒活性を示し、これは、以前に知られたメタンからHCHOに切り換えるあらゆるバナジウム系触媒を凌駕するものである。
【0048】
<実験例4>SiO2@V2O5@Al2O3コア@シェル触媒でV2O5の特性分析
【0049】
バナジウム系触媒の触媒活性は、バナジウムの分散、バナジウム活性サイトの性質及び適した酸化物支持体の選択によって結晶される金属-支持体間の相互作用に依存すると知られている。炭化水素の部分酸化、アルカンのアルケンへの酸化的脱水素、NOxの選択的触媒還元及びSO2の酸化を含む多くの触媒酸化で、末端V=O基を含有する独立した四面体(Td)バナジウム酸化物種は、活性サイトとして提案されてきた。SiO2@V2O5@Al2O3コア@シェルナノ構造体でバナジウム種を特性化し、それをV2O5/m-SiO2触媒のバナジウム種と比較するために、ラマン分光法、H2-TPR及び拡散反射UV-vis分光法で分析された。
【0050】
図7のaは、600℃でV
2O
5/m-SiO
2とSiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(50)コア@シェルナノ構造体とのラマンスペクトラを示し、前記物質いずれも995(V=O)、703、406、305及び285cm
-1でバンドが存在することが分かった。したがって、前記触媒は、いずれもV
2O
5結晶質があることが分かった。たとえ3wt% V
2O
5/m-SiO
2のラマンスペクトラは、V
2O
5結晶質から製造されたコア@シェル触媒と類似しているが、3wt% V
2O
5/m-SiO
2では、独立したVO
4種の対称V=Oストレッチ(stretch)による1040cm
-1でのショルダー(shoulder)ピークが観察された(
図7のa)。V
2O
5/m-SiO
2のバナジウム含有量が1wt%に減少することによって、前記ショルダーピークは顕著になり、これをもって、V
2O
5/m-SiO
2触媒で低いバナジウム担持量に結晶質V
2O
5の相対含量は減少することが分かった。
【0051】
活性バナジウム種の分散及び類型は、H
2-TPRによって分析された。以前研究で、460~500℃で観察された低温H
2-TPR還元ピークは、高分散された単量体種であるV
5+からV
3+への還元によるものである。バナジウムローディングが増加するほど、還元ピークは、還元反応の結果としてさらに高い温度に移動した。~600℃での高温還元ピークは、重合体及びバルクと類似したV
2O
5種でバナジウムの還元で発生したものである。
図7のbのTPRカーブで3wt% V
2O
5/m-SiO
2は、ラマン分光分析結果とよく一致して、高分散単量体種と少量のV
2O
5種とを含んでいることを示した。また、SiO
2/V
2O
5は、V
2O
5ナノ粒子サイズ(35nm)に起因したバルクV
2O
5種のみ含んでいることが分かった。一方、SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3コア@シェル触媒は、V
2O
5と高分散単量体種とを含んでおり、550及び620℃で2つの広いTPRバンドが表われた。
【0052】
最後に、拡散反射UV-vis分光分析器を用いてバナジウム系触媒の分散と活性種構造とを分析した(
図7のc)。3eV真上の吸収バンドは、T
d配位を有するVOx種に起因した一方に、約5.5eV付近の吸収バンドは、単量体T
d種の存在であることを確認した。3wt% V
2O
5/m-SiO
2(2.6eV)とSiO
2@V
2O
5/SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(50)(<2.4eV)との吸収エッジ(edge)位置で3wt% V
2O
5/m-SiO
2触媒がSiO
2@V
2O
5/SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(50)触媒よりもさらに小さなサイズを有した均一なT
d VOx種を含んでいることが分かった。また、35nm V
2O
5ナノ粒子を含むSiO
2@V
2O
5触媒で観察された低エネルギーショルダーは、V
2O
5/m-SiO
2で観察されていない結晶質V
2O
5種の二重分散(bimodal)サイズ分布に起因したものであることが分かった。そして、SiO
2@V
2O
5とSiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(50)コア@シェル触媒は、ショルダーピークから推論されたサイズ分布が異なるので、これをもって、結晶質V
2O
5種の性質は、Al
2O
3シェルの蒸着によって変形されることを見つけ出した。
【0053】
V2O5とAl2O3との間の相互作用は、触媒の性能に影響を及ぼすために、従来のV2O5/Al2O3触媒を用いてメタン酸化反応を行った。V2O5/Al2O3触媒は、3及び5wt%の異なるバナジウム担持量を有するように含浸法によって製造された。メタン酸化反応をテストした時、3と5wt%のバナジウムがローディングされた触媒いずれも無視できるほどの転換率(メタン転換率2%未満)が得られ、このような結果は、以前研究とも一致した。
【0054】
前記の結果から球状SiO
2粒子に形成されたV
2O
5ナノ粒子は、結晶質V
2O
5種と確認され、SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3-(50)のAl
2O
3シェルは、ALD工程の間にV
2O
5とAl
2O
3との間の相互作用を促進して高分散されたT
d単量体種が形成される新たな表面を提供することが証明された(
図7のd)。AlVO
4相が増加した温度でSiO
2@V
2O
5@Al
2O
3コア@シェルナノ構造体に存在するという事実に基づいて、V
2O
5ナノ粒子とAl
2O
3との間の相互作用は、AlVO
4で連結された(bridging)V-O-Al結合を生成させた。SiO
2@V
2O
5@Al
2O
3コア@シェルナノ構造体のV-O-Al結合を有する高分散T
dバナジウム種は、従来のV
2O
5/Al
2O
3触媒では表われなかった。
【0055】
結論的に、V-O-Al結合に連結された新たに形成されたTd単量体バナジウム種は、600℃でメタン酸化反応に用いられて高いメタン転換率が得られた。また、Al2O3シェルは、V2O5ナノ粒子を塑性から保護して熱的安定性の効果も得られた。