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特許7189342貧血治療薬の製造における抗血小板トロンボリシンの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】貧血治療薬の製造における抗血小板トロンボリシンの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/36 20060101AFI20221206BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A61K38/36
A61P7/06
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/14
A61K9/08
A61K9/50
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021523006
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 CN2019080448
(87)【国際公開番号】W WO2020087856
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】201811267000.2
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514259794
【氏名又は名称】兆科薬業(合肥)有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHAOKE PHARMACEUTICAL (HEFEI) COMPANY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】楚 在▲せん▼
(72)【発明者】
【氏名】李 小▲い▼
(72)【発明者】
【氏名】戴 向栄
【審査官】松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105833255(CN,A)
【文献】成田美和子,貧血の分類と診断の進め方,日本内科学会雑誌,2015年,第104巻第7号,pp.1375-1382
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61P 1/00-43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貧血治療薬の製造における抗血小板トロンボリシンの使用であって、
前記抗血小板トロンボリシンは、α鎖とβ鎖の2本のペプチド鎖から構成され、
前記α鎖のアミノ酸配列は配列番号1に示され、β鎖のアミノ酸配列は配列番号2に示され、或いは
前記抗血小板トロンボリシンは、そのα鎖のアミノ酸配列が1つ又は複数のアミノ酸が置換、欠失又は添加されて配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有し、そのβ鎖のアミノ酸配列が1つ又は複数のアミノ酸が置換、欠失又は添加されて配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するとともに、貧血改善活性を有し、
前記貧血は鎌状赤血球貧血症であることを特徴とする、貧血治療薬の製造における抗血小板トロンボリシンの使用。
【請求項2】
前記薬物は化学薬物又は生物製剤であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記薬物は薬学的に許容される補助材料を含むことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記薬物は経口製剤又は注射剤であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記経口製剤は錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、滴丸剤、マイクロカプセル剤又は微丸剤であることを特徴とする、請求項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年10月29日に中国特許庁に提出された特許出願(出願番号:201811267000.2;発明の名称:貧血治療薬の製造における抗血小板トロンボリシンの使用)の優先権を主張し、その内容を全て参照によりここに組み込む。
【0002】
本発明は医薬分野に属し、特に貧血治療薬の製造における抗血小板トロンボリシンの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
貧血は一般的な臨床症状であり、人体の血液中の赤血球の総量が正常値を下回っている状態を指し、様々なシステム疾患によって引き起こされる可能性がある。赤血球量の測定が複雑であるため、臨床では代わりにヘモグロビンHb濃度が使用されることが多い。
【0004】
異なる臨床的特徴によって、貧血は分類されている。貧血の進行速度によって、急性貧血と慢性貧血に分けられる。赤血球の形態によって、大球性貧血、正球性貧血、及び小球性低色素性貧血に分けられる。ヘモグロビン濃度によって、軽度、中度、重度、極度の貧血に分けられる。骨髄赤芽球系過形成の程度によって、再生性貧血、溶血性貧血、鉄欠乏性貧血、巨赤芽球性貧血、再生障害性貧血のような再生不良性貧血に分けられる。
【0005】
臨床的には、貧血の発症メカニズムによって、貧血の病因は主に以下の通りである。
1)造血細胞、骨髄造血微小環境及び造血物質異常による赤血球形成減少性貧血、例えば、再生不良性貧血、純粋な赤血球再生不良性貧血、先天性赤血球形成異常性貧血、造血系悪性クローン性貧血等;
2)造血微小環境異常による貧血:骨髄間質及び間質細胞の損傷による貧血、造血調節因子レベル異常による貧血、リンパ球の機能亢進等による自己免疫性溶血性貧血(例えば、鎌状赤血球貧血)、及び造血細胞アポトーシス亢進による貧血;
3)造血物質の不足又は利用障害による貧血:葉酸又はビタミンB12欠乏又は利用障害による貧血、鉄欠乏症と鉄利用障害による貧血;
4)赤血球の過度破壊による貧血:赤血球自体の異常及び赤血球周囲環境の異常等による貧血;
5)失血性貧血等。
【0006】
貧血の病因、血中酸素運搬能力の低下の程度、血液量減少の程度、貧血発症の速度、並びに血液、循環、呼吸等のシステムの代償及び耐性は、いずれも貧血の臨床症状に影響する。貧血症状の重症度は、貧血の速度、貧血の程度、及び生体の代償能力に依存する。
【0007】
鎌状赤血球貧血(別称:鎌状赤血球性貧血;sicklemia,Sickle Cell Disease,SCD)は、人間にとって致命的な可能性のある遺伝病であり、常染色体遺伝ヘモグロビン症である。臨床症状は、慢性溶血性貧血、感染しやすいこと、再発性疼痛、局所慢性虚血による臓器組織の損傷である。鎌状赤血球は硬く、変形性が悪く、血管機構の破壊及び単核貪食細胞系の食作用により溶血が発生する場合があり、毛細血管を塞いで局所的な低酸素症や炎症を引き起こす恐れもある。
【0008】
鎌状赤血球貧血は、母子の健康を深刻に危険にさらす病気でもある。鎌状赤血球貧血による胎児の死亡率は5%に達し、妊産婦の死亡率は4.62%に達している。β-ペプチド鎖の6位アミノ酸であるグルタミン酸がバリンに置換されているため、正常Hb(HbA)の代わりに鎌状ヘモグロビン(HbS)になる。正常な成人ヘモグロビンは、2本のα鎖と2本のβ鎖が結合してなる四量体である。α鎖とβ鎖は、それぞれ141個及び146個のアミノ酸が順番に接続されて構成される。鎌状赤血球貧血患者は、β鎖のアミノ酸であるグルタミン酸がバリンに置換されているため、正常なヘモグロビン(HbA)の代わりに異常なヘモグロビンS(hemoglobin S,HbS)が形成され、酸素分圧が低下するときにHbS分子が互いに作用することで、溶解度が非常に低い螺旋状多量体になることにより、赤血球が変形して鎌状赤血球になり、即ち鎌状化が発生する。赤血球内のHbS濃度、脱酸素の程度、アシドーシス、赤血球の脱水程度等の多くの因子が赤血球の鎌状化に関係がある。赤血球鎌状化の初期は可逆的であり、酸素を供給することで鎌状化過程を逆転することができる。鎌状化により赤血球膜が大きく損傷すると、鎌状化は不可逆的になり、このような細胞を好気性環境に置いたとしても、赤血球は依然として鎌状を保持する。鎌状化した赤血球により、血液粘度が増大し、血流が遅くなり、変形性が低下し、毛細血管を塞いで局所低酸素症や炎症を引き起こしやすくなることで対応部位に疼痛が発生する。主に筋肉、骨、四肢関節、胸腹部、特に関節及び胸腹部に発症することが多い。
【0009】
鎌状赤血球貧血患者の血液が脱酸素化されると、細胞は脱水して変形するとともに、赤血球と毛細血管内皮細胞との粘着性が増大し、特に血液中に脱落した血管内皮細胞が粘着過程を促進するため、鎌状赤血球が大幅に増加する。このような細胞は極めて脆くて損傷しやすいことでヘモグロビンのレベルが低くなる。深刻な結果として、特定の臓器の毛細血管が異常な細胞によってブロックされ、血管の閉塞と溶血反応が悪化し、多くの鎌状赤血球貧血患者の死亡を引き起こす主な原因となっている。
【0010】
重症の場合、ヒドロキシ尿素は疼痛発作の数と輸血の回数を減少できるとともに、胸部症候群が発症する頻度を減少できる。この疾患は、主に低酸素により赤血球が鎌状化し、毛細血管が閉塞することで疼痛発作を引き起こし、代替療法と血管拡張薬を使用することが適切である。葉酸を補うことにより高くなったシステインのレベルを低下させ、血管内皮の機能を改善することができる。骨髄移植及び胎児肝臓造血幹細胞移植により患者を救い、生活の質を向上させることもある。間接流動血球分離器により患者の赤血球を分離すると同時に、献血者のグリセリンが除去された赤血球を供給することにより良好な治療効果を得ることができる。部分交換輸血しながら5%ブドウ糖を点滴することにより血液粘度を低下させることも提案されている。低用量のジクマロールによる治療は患者の血栓形成前の状態の発生を減少できる。この疾患は、患者個体の明確な遺伝子の構成変化が発見されていないため、原因療法には意味がない。現在の一般的な治療法は、低酸素、脱水、感染を予防して症状を緩和し、臓器損傷の合併症を減少させ、造血を促進し、寿命を延ばすことである。
【発明の概要】
【0011】
本発明者は、抗血小板トロンボリシンが貧血マウスの血小板-好中球凝集を顕著に減少させ、貧血マウスの生存時間を延長でき、貧血治療への適用が期待できることを予期せずに発見した。
【0012】
上記の事情に鑑み、本発明の目的は、抗血小板トロンボリシンの新しい用途を提供することである。本発明に記載の抗血小板トロンボリシン(Antiplatelet thrombolysin,APT, Anfibatide)は、ヒャッポダ毒から分離されたC型レクチン様タンパク質であり、α鎖とβ鎖の2本のペプチド鎖から構成され、そのα鎖のアミノ酸配列は配列番号1に示され、β鎖のアミノ酸配列は配列番号2に示される。前記抗血小板トロンボリシンは、そのα鎖のアミノ酸配列が1つ又は複数のアミノ酸が置換、欠失又は添加されて配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有し、そのβ鎖のアミノ酸配列が1つ又は複数のアミノ酸が置換、欠失又は添加されて配列番号2のアミノ酸配と少なくとも95%の同一性を有するとともに、貧血改善活性を有する。
【0013】
好ましくは、前記貧血は鎌状赤血球貧血症である。
【0014】
好ましくは、本発明に係る薬物は化学薬物又は生物製剤である。
【0015】
好ましくは、前記薬物は抗血小板トロンボリシン及び薬学的に許容される補助材料を含む。
【0016】
好ましくは、本発明に係る貧血治療薬は外用製剤又は注射剤である。
【0017】
より好ましくは、前記外用製剤は、チンキ剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション、リンス、塗り薬又はゲル剤である。
【0018】
本発明に係る貧血症を改善する薬物の製造における抗血小板トロンボリシンの使用は、従来技術と異なり、従来薬物による治療の欠陥を補うことができる。in vivo及びin vitroの実験により、抗血小板トロンボリシンはTNF-α誘導鎌状赤血球貧血モデル血小板-好中球凝集を顕著に減少させ、TNF-α誘導鎌状赤血球貧血生体の生存時間を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】鎌状赤血球貧血マウスモデルの好中球の細胞間相互作用を示す。
図2】鎌状赤血球貧血マウスモデルの血小板-好中球間の相互作用を示す。
図3】生体顕微結像の代表図である。左から右へ順にBSA群、IgG群、抗血小板トロンボリシン群、抗PDI群、抗PDI+抗血小板トロンボリシン群である。大きな矢印及び小さな矢印はそれぞれ血流及び好中球の移動方向を示す。
図4】鎌状赤血球貧血マウスに投与した後の生存時間を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明によれば、貧血治療薬の製造における抗血小板トロンボリシンの使用が提供される。当業者は、本明細書に基づいてプロセスパラメータを適宜修正することができる。特に、全ての類似の置換及び変形は、当業者にとって自明なものであり、いずれも本発明の範囲に含まれるものとみなされる。本発明の方法及び使用は、既に好適な実施例により説明された。当業者は、本発明の内容及び趣旨から逸脱しない範囲内で本明細書に記載の方法及び使用を変形、変更、組み合わせることにより、本発明の技術を実現及び使用することができる。
【0021】
本発明で使用される試薬はいずれも通常の市販品であり、市場で購入できる。
【0022】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
【0023】
実施例1:TNF-α誘導鎌状赤血球貧血マウスモデルの血小板-好中球凝集に対する抗血小板トロンボリシンの減少作用
好中球(neutrophil)は、血液の非特異的細胞性免疫系において非常に重要な役割を果たしている。活性化した好中球は、走化作用により病変部位に到達し、それが運ぶ殺菌性物質が局所で大量に放出し、それぞれの破壊作用により組織を損傷し、さらに臓器障害を引き起こす。また、好中球は、1つの臓器に浸入した後、他の重要な臓器中の好中球の凝集を誘導し、多くの臓器の損傷を招く。同時に、血小板選択的受容体は、血小板と好中球との結合及び粘着の活性化を媒介し、好中球を凝集させることで、組織損傷が促進される。一方、血小板と好中球の粘着は血小板の凝集を促進し、血管閉塞を媒介する。また、好中球の細胞膜はアラキドン酸を放出することができ、酵素の作用下でさらに生成したトロンボキサン及びプロスタグランジン等は血管の口径及び透過性の調節に対して顕著な作用を有するとともに、炎症反応及び疼痛を引き起こす可能性がある。鎌状赤血球貧血の血液中の鎌状化した赤血球は硬くなり、変形性が悪くなり、毛細血管を塞いで局所的な低酸素症や炎症を引き起こしやすく、その臨床症状は、慢性溶血性貧血、感染しやすいこと、再発性疼痛、局所慢性虚血による臓器組織の損傷である。現在の鎌状赤血球貧血に対する一般的な治療は、低酸素、脱水、感染を予防して症状を緩和し、臓器損傷の合併症を減少させ、造血を促進し、寿命を延ばすことである。
【0024】
致死量の照射を受けた6週齢WTマウスの体内にBerkeleyマウスの骨髄を移植し、キメラ対照及びBerkeleyマウスを作成した。移植の3ヶ月後、PCR及び電気泳動分析によりキメラを確認した結果、これらのキメラBerkeleyマウスは鎌状赤血球貧血マウスであった。
【0025】
鎌状赤血球貧血モデルマウスの血小板(2x10個/ml)及び好中球(1x10個/ml)を取り、それぞれDyLight488-抗CD42C及びAlexa Fluor647-抗Ly-6G抗体で標識し、ヒト好中球及び血小板をそれぞれAlexa Fluor 488-抗CD41及びFITC-抗Lセレクチン抗体で標識し、好中球を20ng/mlのTNF-αで5min誘導し、血小板をそれぞれ対照IgG(10μg/ml)、抗PDI抗体(プロテインジスルフィドイソメラーゼ阻害剤、10μg/ml)、BSA(0.2μg/ml)、抗血小板トロンボリシン(0.2μg/ml)及び抗血小板トロンボリシン+抗PDIと共に室温で30minインキュベートした後、0.025U/mlのトロンビンと共に37℃で5minインキュベートし、さらに50uMのPPACKと共にインキュベートし、1000rpmで血小板及び好中球を撹拌して混合し、5min後に固定し、フローサイトメーターにより分析した。
【0026】
病気が発生するときに、血小板と好中球が粘着して血小板の凝集を促進し、血管閉塞を媒介し、病態生理学的反応を悪化させる。試験の結果は、0.2μg/mlの抗血小板トロンボリシンが鎌状赤血球貧血モデルマウスの好中球同士の凝集作用(図1)を減少させ、血小板と好中球の結合作用(図2)を減少させることで血管損傷を抑制する作用を奏することを示している。
【0027】
図1では、縦座標は対照群細胞に対する細胞間相互作用であり、横座標は実験群であり、左から右へ順に対照IgG群、抗PDI群、BSA群、anfibatide群、IgG+BSA群、抗PDI+anfibatide群である。
【0028】
図2では、縦座標は対照群に対する血小板と好中球の相互作用であり、横座標は実験群であり、左から右へ順に対照IgG群、抗PDI群、BSA群、anfibatide群、IgG+BSA群、抗PDI+anfibatide群である。
【0029】
実験データはANOVA及びTukey’s検定により統計分析した。
n=4、*P<0.05、**P<0.01、又は***P<0.001であった。
【0030】
実施例2:鎌状赤血球貧血マウスに対する抗血小板トロンボリシンの治療作用
致死量の照射を受けた6週齢WTマウスの体内にBerkeleyマウス骨髄を移植し、キメラ対照及びBerkeleyマウスを作成した。移植の3ヶ月後、PCR及び電気泳動分析によりキメラを確認した結果、これらのキメラBerkeleyマウスは鎌状赤血球貧血マウスであった。モデリングに成功したマウスを取り、500ngのTNF-αを腹腔内注射することで重度の炎症を誘導し、3時間誘導した後、単盲検試験により投与した。投与群はIgG対照(1.5μg/g)、抗PDI(BD34,1.5μg/g)、BSA(25ng/g)、anfibatide(25ng/g)、抗PDI(1.5μg/g)+anfibatide(25ng/g)を含む。
【0031】
投与後に、生体顕微鏡観察により各マウスの生存時間を研究、記録した。記録時間はTNFα注射から開始し、マウス死亡又はTNF-α注射の6h後に終了した。GraphPad Prism 7ソフトウェアでデータを分析した。Student’s t-検定及びANOVAにより統計分析した。n=8/群、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001であった。
【0032】
生体顕微鏡により観察した結果、BSA対照群に比べ、25ng/g抗血小板トロンボリシンはSCDマウスの血管壁上の血小板と好中球の粘着を解消した(図3)。同図では、それぞれDyLight488-抗CD42C及びAlexa Fluor647-抗Ly-6G抗体で血小板及び好中球を標識し、大きな矢印は血流方向を示し、小さな矢印は好中球の移動方向を示す。TNF-α刺激及び生体顕微鏡外科手術は急性血管塞栓症を引き起こし、ほとんどのSCDマウスの死亡を招く。実験観察期間はマウス死亡まで又はTNFα投与後の6h以内であった。
【0033】
各対照群に比べ、BSAと抗血小板トロンボリシン群とを比較した結果、P=0.0249であり、BSA+IgGとBSA+抗PDI群とを比較した結果、P=0.028であり、BSA+IgGと抗血小板トロンボリシン+抗PDI併用群とを比較した結果、P=0.0165であった。抗血小板トロンボリシン(Anfibatide)治療マウスの50%生存時間は5.0hであり、各投与群の中に最も長いマウスの生存時間であり(図4を参照)、鎌状赤血球貧血生体に対する抗血小板トロンボリシンの貧血治療改善作用を示している。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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