(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】創傷治療用プラズマ電極パッド
(51)【国際特許分類】
A61N 1/44 20060101AFI20221206BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A61N1/44
H05H1/24
(21)【出願番号】P 2021540523
(86)(22)【出願日】2019-02-08
(86)【国際出願番号】 KR2019001569
(87)【国際公開番号】W WO2020158983
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】10-2019-0011127
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521307244
【氏名又は名称】エスジェイ グローバル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SJ GLOBAL CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】(Chunui-dong,3F) 166,Bucheon-ro,Bucheon-si,Gyeonggi-do 14559 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン ユ-アン
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-121481(JP,A)
【文献】特開2014-108315(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0262251(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00-1/44
H05H 1/00-1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の皮膚が接地電極として機能して、人体の皮膚に近いプラズマ電極に印加された電圧で前記人体の皮膚と前記プラズマ電極との間にプラズマが発生するフローティングタイプのプラズマ電極パッドであって、
導電性金属薄膜からなるプラズマ電極;
前記プラズマ電極に積層され、人体の皮膚と所定の距離で離隔し、離隔した空間にマイクロ放電を形成する高分子素材のフレキシブルな誘電体薄膜;及び
前記誘電体薄膜に積層され、前記誘電体薄膜を人体の皮膚から所定の距離で離隔させるスペーサー;を含み、
前記スペーサーは、
繊維束が多層レイヤーを構成するように製織された繊維素材
であり、前記繊維束の開口率(opening ratio)が30%以上であるランダムな複雑構造を有することを特徴とする、プラズマ電極パッド。
【請求項2】
前記プラズマ電極に電力を供給するパワーサプライをさらに含み、
前記パワーサプライは、
所定のデューティ比を有する0kV超過5kV以下の範囲の直流電圧を出力してプラズマを発生させることを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ電極パッド。
【請求項3】
前記スペーサーは、
オゾン吸収のための光触媒又は活性触媒粒子が塗布されたことを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ電極パッド。
【請求項4】
前記誘電体薄膜は、
オゾン吸収のための光触媒又は活性触媒粒子が塗布されたことを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ電極パッド。
【請求項5】
前記スペーサーは不織布素材であることを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ電極パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学的治療の目的のために使用できるプラズマ処理装置に係り、特に、皮膚にパッドのように付着して患部の滅菌及び組織の再生を助けるプラズマの発生が可能なプラズマ電極パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、大気圧プラズマは、工学だけでなく、バイオ研究及び医療機器との融合技術分野に取り入れられている。プラズマを発生させる電極モジュールは、両電極に高電圧が印加されると、電極同士の空間で放電が形成されて反応ガスのイオン化が行われることによりプラズマが発生する。このように形成されたプラズマには、様々な機能性イオンが含まれる。プラズマ中で生成された活性種(reactive species)は、殺菌、創傷治癒、止血、細胞死滅など、様々な人体治療に適用させる上で有意な効果を有することが報告されている。活性種のうち、活性酸素種(ROS、Reactive Oxygen Species)は殺菌に有効であり、活性窒素種(RNS、Reactive Nitrogen Species)は細胞恒常性の維持に有効である。従来の場合は、歯牙美白などの一部の美容分野で医療用機器にプラズマ技術が適用されたことがあるが、プラズマが人体に直接作用して滅菌、洗浄、細胞再生などの治療機能を行う医療用プラズマ機器は、まだ商用化された事例を見付け難い。
【0003】
医療機器として使用されるためのプラズマ電極モジュールを考察すると、次の技術的課題が考慮されるべきである。一般的に、プラズマは、放電電圧の低い小型誘電体バリア放電(DBD、Direct Barrier Discharge)タイプやコロナジェットタイプのプラズマに関する研究が90%以上であった。従来のプラズマモジュールは、放電用に供給するヘリウムやアルゴンなどの気体の消費が多いため、供給ガス設備がさらに要求される。結局、プラズマを様々な技術分野に取り入れるためのシステムの単純化が開発されなければならない。
【0004】
一方、放電用気体の代わりに空気を用いた大気圧プラズマの研究は、誘電体バリア放電(DBD)の構造又はトーチタイプの電極構造に関する研究が殆どである。従来の電極構造は、電極間隔が小さいか或いはプラズマの処理断面積が小さくて、電力効率を高めながら大面積の放電を起こすために電極が大きく設計されなければならないという問題がある。
【0005】
関連特許文献として、韓国登録特許第10-1292268号(以下、「先行特許」と略称する)は、並列駆動マイクロプラズマ創傷治療装置を開示する。上記の先行特許は、前述した医療用プラズマの適用イシューとして、様々な面積や携帯性を考慮したプラズマモジュールを例示している。上記の先行特許のように、現在までに、人体に直接適用するためのプラズマ電極モジュールは一般的にDirect DBDモデルを取る。Direct DBDモデルは、電力が印加される電極と接地電極がプラズマ電極モジュールに一緒に構成された構造を持つ。上記の先行特許を例示として説明すると、第1電極1aと第2電極1bがこれに該当し、これらの両電極の間の空間にプラズマを発生させる。
【0006】
Direct DBDモデルは、電極と電極との間で発生したプラズマを皮膚に放射させる。考えてみると、Direct DBDモデルは、ハンドピースの実現形態に適合することができる。しかし、Direct DBDモデルは、皮膚に付着させるパッドの形で電極モジュールを実現化しようとするときに、電極構造上の欠点を持つ。Direct DBDモデルは、皮膚に直接プラズマが照射されるものではなく、電極と電極との間に発生したプラズマが間接的に皮膚に照射される方式である。したがって、Direct DBDモデルは、治療効果に至るプラズマを生成するために、多少高い電力が要求できる。この場合には、治療目的の医療装備は、安全性面の様々な許可条件を同時に満足することが難しいという問題点が生じる。
【0007】
プラズマデバイスは、プラズマ生成のイオン化過程でオゾンを不可避に生成させる。オゾンは、人体の呼吸器への吸入の際に致命的な毒性物質の一つである。プラズマを強く生成させるほど、オゾン発生量が多くなる。したがって、医療用プラズマ電極モジュールは、プラズマが皮膚上に直接形成されて最小限のプラズマ発生でも治療効果を期待することができるように実現することが好ましい。この過程で、プラズマの発生に伴うオゾンの生成も最小限に抑えることができなければならない。国内外の許可動向によると、全世界のどの国でも、プラズマを用いた創傷治療用理学診療用機器の評価方法はガイドラインすらないのが実情である。プラズマは以前から学問的研究が行われたが、安全性が考慮されるべき理学診療用の医療用デバイスへの適用はまだ製品化された事例が皆無である。
【0008】
プラズマは、治療に適した活性酸素種の発生と、人体に致命的なオゾンの生成とが共存する。プラズマを用いた医療機器の商用化のための設計時には、電極構造とその機能が主に検討されるべきである。まとめると、医学的治療機能が実行できるプラズマデバイスは、電極の構造、プラズマの生成効率、及びオゾンの抑制が商用化のための最大の難題となる。
【0009】
そこで、本出願人は、人体の皮膚を接地電極にしてプラズマが皮膚と電極との間に直接生成されるフローティング電極構造であって、付着式で皮膚に接着されても電磁波の安定性に優れるうえ、オゾンの発生も抑制されるプラズマパッドを考案した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、人体の皮膚に付着して、皮膚上に形成されたプラズマで医学的治療を行うことができるプラズマ電極パッド及びプラズマ治療装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、人体の皮膚が接地電極として機能して、人体の皮膚に近いプラズマ電極に印加された電圧で前記人体の皮膚と前記プラズマ電極との間にプラズマが発生するフローティングタイプのプラズマ電極パッドであって、導電性金属薄膜からなるプラズマ電極;前記プラズマ電極に積層され、人体の皮膚と所定の距離で離隔し、離隔した空間にマイクロ放電を形成する高分子素材のフレキシブルな誘電体薄膜;及び前記誘電体薄膜に積層され、前記誘電体薄膜を人体の皮膚から所定の距離で離隔させるスペーサー;を含み、前記スペーサーは、繊維束が多層レイヤーを構成するように製織された繊維素材で提供されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、人体の皮膚が接地電極として機能して、人体の皮膚に近いプラズマ電極に印加された電圧で前記人体の皮膚と前記プラズマ電極との間にプラズマが発生するフローティングタイプのプラズマ処理装置であって、導電性金属薄膜からなるプラズマ電極と、前記プラズマ電極に積層され、人体の皮膚と所定の距離で離隔し、離隔した空間にマイクロ放電を形成する高分子素材のフレキシブルな誘電体薄膜と、前記誘電体薄膜に積層され、前記誘電体薄膜を人体の皮膚から所定の距離で離隔させるスペーサーと、を含むフローティングプラズマ電極パッド;前記プラズマ電極に直流電圧を所定のデューティ比で印加するパワーサプライ;及び前記パワーサプライに連結されて人体の皮膚に接触する接地パッド;を含むことにより、直流電力の条件で人体適合性の電磁波発生量を有するプラズマが出力されることを他の特徴とする。
【0013】
また、本発明は、人体の皮膚が接地電極として機能して、人体の皮膚に近いプラズマ電極に印加された電圧で前記人体の皮膚と前記プラズマ電極との間にプラズマが発生するフローティングタイプのプラズマ電極パッドであって、導電性金属薄膜からなるプラズマ電極;前記プラズマ電極に積層され、人体の皮膚と所定の距離で離隔し、離隔した空間にマイクロ放電を形成する高分子素材のフレキシブルな誘電体薄膜;及び前記誘電体薄膜に一面が積層され、前記誘電体薄膜を人体の皮膚から所定の距離で離隔させ、所定の開口率(opening ratio)を有するスペーサー;を含み、前記スペーサーは、他面が皮膚に接触して所定の開口率で形成された空隙を介して皮膚に直接プラズマを発生させ、前記空隙によりプラズマの照射形態がドット(dot)式であることを別の特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、皮膚と接触するスペーサーの空隙を介してプラズマが発生して治療のためのプラズマが患部上に直接発生するという利点がある。
【0015】
また、本発明は、DC電力のカスタマイズで治療用プラズマを生成して交流電源に比べて電磁波の安全性に優れるうえ、低電力でもプラズマ治療が行われることができるという利点がある。
【0016】
また、本発明は、患部接触性に優れ且つ衛生的な繊維素材をスペーサーとして使用する。このとき、多層レイヤーの繊維束がプラズマの発生に特に適したキャビティを形成する。また、スペーサーが繊維素材であって自身にオゾン吸湿性が存在し、多層の繊維束に光触媒または活性触媒が塗布される効率も極大化させることができるという利点がある。
【0017】
また、患部に付着するプラズマ電極パッドは、フローティングタイプであって、別途の接地電極が設けられないため構成が簡単である。本発明によれば、プラズマ電極パッドの消耗品化が可能である。本発明は、プラズマ電極パッドをパワーサプライに対して脱着してプラズマ処理を行い、治療後にはパワーサプライからプラズマ電極パッドを分離することができる。最後に、電源接続によるプラズマ処理後にも、患部にそのままプラズマ電極パッドを貼り付けて置くことができる。このとき、接触面が不織布の繊維素材であり、簡単な電極構造で重量が軽いので、患者は、患部にプラズマ電極パッドを貼り付けて患部の再生と衛生の管理下で日常生活が可能であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1a】本発明の実施形態によるプラズマ処理装置を示すもので、プラズマ処理時のプラズマ治療装置を示す図である。
【
図1b】本発明の実施形態によるプラズマ処理装置を示すもので、プラズマ処理後のプラズマ電極パッドの活用の様子を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態によるプラズマ電極パッドの分解斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態によるプラズマ電極パッドの動作の様子を示す図である。
【
図4a】巻線比の異なる4種のトランスフォーマにそれぞれ周波数(kHz)とデューティ比(μs)を異にして、高い出力特性が維持される条件を確認した結果を示すもので、#1トランスフォーマ、#2トランスフォーマの電力特性結果を示す図である。
【
図4b】巻線比の異なる4種のトランスフォーマにそれぞれ周波数(kHz)とデューティ比(μs)を異にして、高い出力特性が維持される条件を確認した結果を示すもので、#3トランスフォーマ、#4トランスフォーマの電力特性結果を示す図である。
【
図5】周波数(kHz)及びオフデューティタイム(Off duty time)別のプラズマの光学的発生サイズを示す実験結果である。
【
図6】
図5のプラズマ強度(plasma intensity)条件で発生したガス濃度(Gas concentraion)の結果を示す図である。
【
図7】性能評価のための9種の素材をスペーサーとして構成させた実験用プラズマ電極パッドを示す図である。
【
図8】実験のためのプラズマ電極モジュールの構成を示す図である。
【
図9】実験例によるプラズマ電極パッドを動作させて、暗室で撮影したプラズマ発生の数とプラズマの平均面積(area)を示す図である。
【
図10】
図9による実験方式で、
図7による9種の素材別のプラズマ数と平均面積(area)をまとめた表である。
【
図11】6種の不織布素材を断層撮影した様子を示す図である。
【
図12】
図11による不織布素材をスペーサーとして構成したフレキシブルプラズマ電極を動作させてプラズマ発生効率をまとめた様子である。
【
図13】
図11による不織布素材の開口率(opening ratio)とプラズマの発生効率との関係性をテストした結果を示す図である。
【
図14】プラズマ発生時に生成されたガスを測定するための実験の構成図である。
【
図15】測定間隔によるオゾン発生量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に記載された内容を参照して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、例示的実施形態によって制限又は限定されるものではない。各図面に提示された同一の参照符号は、実質的に同一の機能を行う部材を示す。
【0020】
本発明の目的及び効果は、下記の説明によって自然に理解されるか或いはより明らかにすることができ、下記の記載のみで本発明の目的及び効果が制限されるものではない。また、本発明を説明するにあたり、本発明に関連する公知の技術についての具体的な説明が、本発明の要旨を不必要に曖昧にするおそれがあると判断された場合には、その詳細な説明を省略する。
【0021】
図1aは本発明の実施形態によるプラズマ処理装置1を示すものであって、プラズマ処理時のプラズマ治療装置1を示し、
図1bは本発明の実施形態によるプラズマ処理装置1を示すものであって、プラズマ処理後のプラズマ電極パット10の活用の様子を示す。
【0022】
図1aを参照すると、プラズマ処理装置1は、プラズマ電極パッド10、接地パッド35、及びパワーサプライ30で構成できる。本実施形態によるプラズマ処理装置1は、人体の皮膚が接地電極として機能してプラズマ電極パッド10上に1つの電極射出物のみが備えられる。本実施形態によるプラズマ処理装置1は、1つの電極と人体の皮膚3との間にプラズマを発生させるフローティングタイプで提供される。したがって、本実施形態による電極モジュールは、電極と電極との間にプラズマが放電され、放電されたプラズマが皮膚に間接的に照射されるダイレクトタイプ(Direct DBD)とは区分される。
【0023】
本実施形態によるプラズマ処理装置1は、プラズマ電極パッド10がパワーサプライ30に対して着脱できる。これにより、プラズマ電極パッド10は消耗品で構成できる。また、本実施形態によれば、プラズマ電極パッド10がフローティングタイプ(FE-DBD)であるので、パッド上に接地電極を備えていないため、簡潔な構造で提供できる。本実施形態によるプラズマ電極パッド10は、人体の皮膚を接地とする。プラズマ治療装置1は、人体の皮膚に接触する別途の接地パッド35が他のノズルとして設けられることができる。接地パッド35は、パワーサプライ30に接続され、プラズマ治療装置1と一緒に半恒久的に使用できる。
【0024】
まとめると、一実施形態によるプラズマ処理装置1は、人体の皮膚が接地電極として機能して、人体の皮膚に近いプラズマ電極に印加された電圧により前記人体の皮膚と前記プラズマ電極との間にプラズマが発生するフローティングタイプである。
【0025】
プラズマ治療装置1は、導電性金属薄膜からなるプラズマ電極101(
図2)と、プラズマ電極101(
図2)に積層され、人体の皮膚と所定の距離で離隔し、離隔した空間にマイクロ放電を形成する高分子素材のフレキシブルな誘電体薄膜103(
図2)と、を含む。また、プラズマ処理装置1は、誘電体薄膜103(
図2)に積層され、誘電体薄膜103(
図2)を人体の皮膚から所定の距離で離隔させるスペーサー105(
図2)を含む。プラズマ電極101、誘電体薄膜103及びスペーサー105は、プラズマ電極パッド10を構成する。
【0026】
また、プラズマ処理装置1は、プラズマ電極101に直流電圧を所定のデューティ比で印加するパワーサプライ30を含む。また、プラズマ処理装置1は、パワーサプライ30に接続され、人体の皮膚に接触する接地パッド35を含む。プラズマ治療装置1は、直流電力の条件で人体適合性の電磁波発生量を有するプラズマが出力される。本実施形態によるプラズマ電極パッド10は、
図2及び
図3を介して後述する。
【0027】
図1bを参照すると、
図1aによるプラズマ治療装置1でプラズマ処理が行われた後、プラズマ電極パッド10がプラズマ治療装置1から分離され、治療完了の後でも、プラズマ電極パッド10がそのまま活用される様子を確認することができる。本実施形態によるプラズマ電極パッド10は、電源ケーブル33から分離されても、皮膚に接触したスペーサー105が患部をそのまま保護することができ、創傷の再生力を確保することができる繊維素材なので、患者に違和感がない。
【0028】
また、患部から別の壊疽や膿などが発生しても、スペーサー105が繊維素材であるため、これを適切に吸収することができ、接着カバー100を介して患部に付着及び固定されることにより患者の日常生活が可能である。したがって、本実施形態によるプラズマ電極パッド10は、患者にプラズマの治療のための電極モジュールとして機能するとともに、所定の期間患部を保護するパッチ又はバンドの役割を兼用することができる。
【0029】
パワーサプライ30は、プラズマパッド10に直流電圧を所定のデューティ比で印加する。本実施形態において、パワーサプライ30は、プラズマ発生において直流電圧を印加することに注目する。交流電圧を使用する場合と比較して、直流電圧は、プラズマ処理の際に著しく優れた電磁波安定性を有する。医療機器の安全性評価項目には、「医療機器の電磁波安全に関する共通基準規格」による食品医薬品安全処の告示に基づいて電磁波関連規格が存在する。したがって、創傷治療用医療機器としてプラズマ電極パッド10を実現するためには、上記の規格条件を満足することができなければならない。交流電力のパワーサプライ30の実現時に電磁波安全に関する共通基準規格の満足が極めて難しいが、これに対し、直流電圧基盤のプラズマ発生モジュールは人体安定的な電磁波規格を満足させることができる。
【0030】
この場合、別途の信号処理なしにパワーサプライ30の直流電圧を電源として使用すると、プラズマの発生効率が交流電源に比べて著しく低下するおそれがある。したがって、直流電圧のパワーでプラズマ発生効率を高めるために、本実施形態によるパワーサプライ30は、所定のデューティ比を有するパルス形態の直流電圧を印加する。この場合、パワーサプライ30は、直流を使用するにも拘らず、交流電源の効果を模写してプラズマ発生効率を高めることができる。
【0031】
本実施形態において、パワーサプライ30は、所定のデューティ比を有する0kV超過5kV以下の範囲の直流電圧を出力してプラズマを発生させる。より詳細には、本実施形態によるパワーサプライ30は、パルスの周波数(Frequency)が130kHz~150kHzを有し、オフデューティタイム(Off duty time)は2μs~4μsの範囲を有する。上記のパワーサプライ30の電圧条件は、医療機器性能評価項目のうち、人体に許容されるオゾン発生量の条件を考慮したものである。医療機器は、大気圧プラズマの生成の際に発生するオゾンが人体に危害を発生させるおそれのある潜在的危険性が適切なレベルであるかを判断する基準として、オゾン発生量が0.05ppm以下であることを告知している。
【0032】
プラズマは、イオン化過程で必然的にオゾン発生を伴う。したがって、医療機器用プラズマ電極パッド10の実現には、オゾンの発生を最小限に抑える技術的イシューが重要である。これは、後述する実験例でより具体的に説明するが、オゾンの発生を最小化に抑えるためには電極モジュールの光触媒又は活性触媒のコーティングと共に電力の条件を制御しなければならない。本実施形態によるパワーサプライ30の電力条件は、本実施形態によるプラズマ電極パッド10のオゾン発生量を0.05ppm以下に下げるための条件として理解されることが好ましい。
【0033】
プラズマ治療装置1には、プラズマの発生有無又はプラズマの強度を表示するディスプレイ31がさらに含まれることができる。プラズマ電極パッド10は、皮膚への接触時に、皮膚を接地電極にしてプラズマが発生するので、ユーザーの立場ではプラズマの発生を目視で確認することは難しい。したがって、プラズマ電極パッド10が正常に動作するかを確認するために、プラズマの発生又は強度が別途のディスプレイ31を介して表示できる。
【0034】
以下、本実施形態によるプラズマ電極パッド10を説明する。
【0035】
図2は本発明の実施形態によるプラズマ電極パッド10の分解斜視図を示す。
図3は本発明の実施形態によるフローティングプラズマパッドの動作の様子を示す。
【0036】
図2及び
図3を参照すると、プラズマ電極パッド10は、治療のための皮膚3にパッチのように直接付着する。プラズマ電極パッド10は、接着カバー100、プラズマ電極101、誘電体薄膜103及びスペーサー105を含むことができる。
【0037】
一実施形態によるプラズマ電極パッド10は、導電性金属薄膜からなるプラズマ電極101;プラズマ電極101に積層され、人体の皮膚と所定の距離で離隔し、離隔した空間にマイクロ放電を形成する高分子素材のフレキシブルな誘電体薄膜103;及び誘電体薄膜103に積層され、前記誘電体薄膜を人体の皮膚から所定の距離で離隔させるスペーサー105;を含み、スペーサー105は、繊維束が多層レイヤーを構成するように製織された繊維素材で提供されることを特徴とする。
【0038】
他の実施形態によるプラズマ電極パッド10は、導電性金属薄膜からなるプラズマ電極101;プラズマ電極101に積層され、人体の皮膚と所定の距離で離隔し、離隔した空間にマイクロ放電を形成する高分子素材のフレキシブルな誘電体薄膜103;及び誘電体薄膜103に一面が積層され、誘電体薄膜103を人体の皮膚から所定の距離で離隔させ、所定の開口率(opening ratio)を有するスペーサー105;を含み、スペーサー105は、他面が皮膚に接触して、所定の開口率で形成された空隙を介して皮膚に直接プラズマを発生させ、前記空隙によりプラズマの照射形態がドット(dot)式であることを特徴とする。
【0039】
以下、各実施形態によるプラズマ電極パッド10の詳細な構成を説明する。
【0040】
図2を参照すると、フレキシブルプラズマ電極パッド10は、皮膚3から順次、スペーサー105、誘電体薄膜103、プラズマ電極101及び接着カバー100が積層される。
【0041】
接着カバー100は、プラズマパッド10のカバーとして機能する。接着カバー100は、プラズマ電極101を絶縁し、柔軟性のある素材で提供できる。本実施形態として、接着カバー100の素材は、シリコーン、PDMS、又は合成ゴムである。接着カバー100には、電極パッドを皮膚3に付着させる接着部1001が含まれることができる。接着部1001が形成された接着カバー100は、プラズマ電極101、誘電体薄膜103及びスペーサー105よりも広い面積を形成する。接着部1001は、周知の粘着性素材が下面に塗布され、皮膚3に付着してプラズマ電極パッド10を固定する。
【0042】
接着カバー100は、一領域に貫通した通孔1003が設けられる。通孔1003は、接着カバー100の下部に設けられたプラズマ電極101の電源端子1011が外部に露出できるようにする。
【0043】
プラズマ電極101は、導電性金属薄膜からなる。プラズマ電極101は、導電性に優れる、柔軟な素材で形成されることが好ましい。一例示として、プラズマ電極モジュールには、銅(Cu)素材が多数使用されてきた。しかし、本実施形態によるプラズマ電極パッド10は、医療用として皮膚に近接配置される。したがって、発熱が激しくて耐久性が弱い銅(Cu)素材よりは、カーボン素材でプラズマ電極101を構成することがより好ましい。
【0044】
プラズマ電極101は、電源ケーブル33を接続するための端子1011を含むことができる。電源端子1011は、
図2の実施形態のようにボタン型に上方へ突出するように構成できる。電源端子1011は、プラズマ電極101の面方向に遠位部に構成されることもできるが、この場合、厚さの薄いプラズマ電極パッド10の側面から電源ケーブル33が接続されなければならない不便さが伴う。また、プラズマ電極パッド10から電源ケーブル33が分離された後、プラズマ電極パッド10の遠位部に端子が露出した状態であれば、患者にとっては露出した端子が気になることもある。したがって、本実施形態では、端子1011はプラズマ電極101の上方向に突出して構成される。
【0045】
誘電体薄膜103は、プラズマ電極101に積層され、人体の皮膚3と所定の距離で離隔し、離隔した空間にマイクロ放電を形成する高分子素材のフレキシブルな構成で提供できる。
【0046】
一般的に、プラズマ電極において、誘電体は、剛性(Rigid)素材が使用され、高分子素材がプラズマ電極の誘電体素材として使用された製品の商用化事例は見当たらない。考えてみると、一般的に使用されるリジッド(Rigid)な誘電体は、誘電率が6~10と高いため、プラズマの発生が容易であるという利点を持つからである。しかし、リジッド(Rigid)な誘電体は、誘電率が高いので、プラズマ生成の際にオゾン(O3)も多量に発生するという問題があり、これは、本発明が意図する医工学的適用に困難を引き起こす。これに対し、高分子素材は、誘電率が低いため、プラズマの発生が難しいものの、柔軟な特性を有する。
【0047】
本実施形態において、誘電体薄膜103は、PDMS又はPI素材で構成できる。誘電体薄膜103は、厚さが薄いほど柔軟性に優れるが、プラズマ発生のための高電圧の範囲が破壊電圧となって誘電破壊(Dielectric Breakdown)現象が発生しないように各素材の電圧破壊厚さを考慮しなければならない。電圧破壊厚さは、高分子素材の各特性によって異なる。本実施形態の高分子素材であるPDMS、PIは、電圧破壊が発生しないためには少なくとも0.1mmの厚さが維持されなければならない。したがって、誘電体薄膜103は、厚さが0.1mm以上であり且つ柔軟性が確保されるように1mm以下の範囲で形成されることが好ましい。
【0048】
誘電体薄膜103は、オゾン吸収のための光触媒又は活性触媒粒子が塗布されて提供できる。誘電体薄膜103は、オゾンの生成量を減少させるための光触媒又は活性触媒の機能性コーティング1031が行われることができる。このときの触媒物質としてはTiO2又はMnO2を含むことができる。
【0049】
スペーサー105は、誘電体薄膜に積層され、誘電体薄膜103を人体の皮膚3から所定の距離に離隔させる。このとき、スペーサー105は、繊維束が多層レイヤーを構成するように製織された繊維素材で提供されることを特徴とする。フローティングタイプのDBDプラズマ電極構造において、人体の皮膚3を接地電極として使用する本実施形態によるプラズマ電極パッド10は、誘電体薄膜103と皮膚3との間に必然的に所定の遊び距離が必要である。遊び距離が存在すれば、その遊び空間上に大気圧プラズマが形成できる。このために、プラズマ電極パッド10は、皮膚3と誘電体薄膜103とを離隔させるスペーサー105の構成が備えられる。ここで、理論的には、必ず遊び空間が必要であるので、スペーサーを、通孔が設けられたメッシュ(mesh)構造として採用するのが一般的である。つまり、スペーサーは、肉眼でも貫通ホールがあるメッシュ薄膜を採用することが当業者に自然である。しかし、本実施形態によるスペーサー105は、後述する実験例を介して、様々な素材をテストした結果、従来の理論的なメッシュ構造では見難い複雑な構造の繊維素材がプラズマ発生のスペーサーとしてより効果的に機能することを確認した。複雑構造の繊維素材に貫通通孔が殆ど目に見えないため、プラズマの発生空間が十分に形成されずにプラズマが発生しないだろうという予想とは異なり、下記の実験例でむしろランダム型複雑(complicate)構造を有するスペーサーが優れたプラズマ発生効果を示した。
【0050】
そこで、本実施形態によるスペーサー105は、繊維束が多層レイヤーを構成した繊維素材で提供されることを特徴とし、繊維束の遊び空間の間にプラズマを発生させる。スペーサー105は、繊維束が多層レイヤーを構成し、ランダムな複雑構造を有する。このとき、本明細書では、多層レイヤーを上方から見た横断面において、多層レイヤーを構成する繊維同士の間の開口空間の割合と、繊維が占める空間における開口空間の割合を開口率(opening ratio)と定義する。本実施形態によるスペーサー105は、開口率(opening ratio)が30%以上で提供されることが好ましい。後述する実験例を介して、繊維素材のスペーサー105の中でもさまざまな条件の開口率を有する素材を実験した結果、開口率とプラズマ発生効率は、20%以内の開口率区間で低い比例関係を持ってから、20%~30%の区間で比例関係が向上し、30%以上で高いプラズマ発生効率を示した。考えてみると、開口率30%以上の条件でプラズマ発生効率の臨界的な意義があるものが相当であると見られる。本実施形態によるスペーサー105は、ランダムな複雑構造の多層レイヤー繊維素材であり、開口率が30%以上である条件を持つ。
【0051】
より詳細には、スペーサー105は、不織布素材で提供されることが好ましい。不織布は、繊維束が多層レイヤーに構成され、レーヨン又は合成繊維をメッシュ構造で製織したガーゼと対比される。不織布素材がスペーサー105としてメッシュ構造のガーゼよりも適している理由を考察すると、次のようにまとめられる。第一に、後述する実験例によるとき、むしろメッシュ構造よりも不織布繊維のプラズマ発生効率が優れている。第二に、メッシュ構造は、貫通した通孔の個別面積が大きい。この場合、皮膚3と所定の距離を離隔させるのは、製織された繊維の単層厚さとなる。これに対し、繊維束の多層レイヤー構造を有する不織布は、絡み合って編まれた多数の繊維束が多層を構成するが、繊維束同士の間にランダムな空間を形成する。このとき、皮膚に付着するスペーサー105は、接着過程で比較的大きいメッシュ構造の通孔に誘電薄膜103が密着してプラズマ発生空間の効率をむしろ低減させるおそれがある。これに対し、不織布は、皮膚にいくら密着、圧着で接着させても、繊維束が多層に構成されて皮膚3と誘電体薄膜103とが直接接触するのは難しい。したがって、不織布素材をスペーサー105に適用することにより、皮膚3の患部がさらに衛生的に保護できるのみならず、プラズマ発生効率にも優れる。第三に、多数の繊維束で構成される不織布は、その素材自体の特性によりオゾンの発生を低減させることができる。本実施形態によるスペーサー105は、プラズマの周辺に生成されるオゾンの濃度を0.05ppm以下に維持する。このため、スペーサー105は、オゾン吸収のための光触媒又は活性触媒粒子が塗布されて提供できる。スペーサー105は、オゾンの生成量を減少させるための光触媒又は活性触媒の機能性コーティング1051が行われることができる。このときの触媒は、TiO2又はMnO2を含むことができる。第四に、不織布がスペーサー105として使用される本実施形態では、光触媒塗布の効率が極大化できる。本実施形態において、不織布には光触媒粒子をスプレー方式で噴射して塗布させる。この場合、メッシュ構造のスペーサーは光触媒塗布の面積が小さいのに対し、不織布は光触媒粒子が多層の繊維束に付着してオゾン吸収の性能が極大化される可能性がある。
【0052】
図3は本実施形態によるプラズマ電極パッド10の動作の様子を表現したものである。
図3を参照すると、実際、皮膚3の表面に形成されるプラズマPはドット(dot)形状になる。理解のために、
図3では、スペーサー105の下端面から眺めたプラズマPの形成の様子を分離して示した。
【0053】
以下、本実施形態によるパワーサプライ30の電力条件を導出した実験例、スペーサー105の素材条件を導出した実験例、及びオゾンと活性酸素をチェックする実験例を説明する。
【0054】
実験例1.パワーサプライの電力条件
本実験は、直流を使用するパワーサプライ30の特性上、プラズマの発生に最適効率条件のパルスのデューティ比、周波数を確認する。
【0055】
図4は巻線比の異なる4種のトランスフォーマにそれぞれ周波数(kHz)とデューティ比(μs)を異にして、高い出力特性が維持される条件を確認した結果を示す。
図4aは#1トランスフォーマ、#2トランスフォーマの電力特性結果を示す。
図4bは#3トランスフォーマ、#4トランスフォーマの電力特性結果を示す。
図4の結果を参照すると、巻線比の異なる4種のトランスフォーマにおいて共通して100kHz~160kHzの範囲でプラズマ発生が可能であった。
【0056】
図5は周波数(kHz)、オフデューティタイム(Off duty time)別のプラズマの光学的発生サイズを示す実験結果である。
図5に表記されたXプラズマ強度(X plasma intensity)とYプラズマ強度(Y plasma intensity)は、周波数(frequency)とオフデューティタイム(off duty time)の変化によるプラズマの光学強度の変化を介して選定した条件である。その条件は、プラズマ生成の際に発生したガス中のオゾンが0.05ppm以下で発生するか否かに関するものであり、プラズマ発生領域を区分した。
【0057】
プラズマ光学強度の測定は、発光分光分析(Optical emission spectroscopy)(@360nm)の結果を基に行った。プラズマ光学強度の測定は、大気圧プラズマで発生する様々な波長の光の中から360nmの波長の光を選定して条件別の光学強度の変化を観察した。光学強度の変化においてプラズマの発生が可能でありながらも、オゾンが0.05ppm以下に導出される区間をYプラズマ強度(Y plasma intensity)領域と表記した。
【0058】
図6は
図5のプラズマ強度(plasma intensity)条件で発生したガス濃度(Gas concentraion)の結果を示す。
図6を参照すると、Xプラズマ強度(X plasma intensity)領域における各スペーサー105の素材に対するO
3、NO
2発生量と、光触媒機能性層1031、1051を含んだときのO
3、NO
2発生量を示す。ここで、選定されたスペーサー105の素材OCL15、OCP16、OCP22、OCP30、OCP40、CCT50は、いずれも不織布素材であって、当該素材が選定された実験例は後述する。一方、O
3は0.05ppm以下で生成されることが好ましく、NO
2は殺菌に有益な活性気体であって、多く生成されるほど好ましい。
【0059】
図6を参照すると、Xプラズマ強度(X plasma intensity)でオゾン吸収のための光触媒の機能性層を塗布しても、オゾン発生量が0.05ppmを超えることを確認することができる。一方、Yプラズマ強度(Y plasma intensity)では、OCL15、OCP16、OCP40、CCT50の不織布素材であるときにオゾン発生量が0.05ppm以下で発生しうることを確認することができる。特に、注目すべき点は、Xプラズマ強度(X Plasma intensity)では、オゾン発生量と二酸化窒素発生量とが類似している。一方、Yプラズマ強度(Y Plasma intensity)条件は、オゾン発生量が減少したのに対し、二酸化窒素発生量は相対的に高いことである。
【0060】
Xプラズマ強度(X plasma intensity)のパワーサプライ作動条件は、周波数(Frequency)120kHz、オフデューティタイム(Off duty time):5.08μs、プラズマターンオンタイム(plasma turn on time):0.426ms、電圧(Voltage):0~7kVである。Yプラズマ強度(Y plasma intensity)のパワーサプライ30作動条件は、周波数(Frequency)140kHz、オフデューティタイム(Off duty time):2.64μs、プラズマターンオンタイム(plasma turn on time):0.426ms、電圧(Voltage):0~4kVである。
【0061】
図4~
図6の実験結果に基づいて、本実施形態によるパワーサプライ30は、パルスの周波数(Frequency)が130kHz~150kHzを有し、オフデューティタイム(Off duty time)は2μs~4μsの範囲を有する。
【0062】
実験例2.スペーサーの素材別プラズマ発生効率の実験
2-1.メッシュ構造(mesh structure)vs複雑構造(complicated structure)
図7は性能評価のための9種の素材をスペーサーとして構成させた実験用プラズマ電極パッドを示す。
図8は実験のためのプラズマ電極モジュールの構成を示す。
図8を参照すると、接地として機能させ且つ人体の皮膚に相当する構成として、アガロースゲルを使用した。本実験例によるフレキシブルプラズマ電極パッドは、人体に接触すればプラズマが発生し、これを外部から確認することができるように透明なアガロースゲルを使用した。アガロースゲルは、寒天パウダー(Agar powder)/脱イオン水(DI water)10wt%、70℃で硬化させて製作した。
【0063】
図8において、スペーサーに該当する構成としては、
図7による9種の素材を適用させたフレキシブルプラズマパッドを使用して、それぞれプラズマ発生をテストした。
図7に示された9種の素材は左から右への方向及び上から下への方向に連番が付され、素材名は次のとおりである。
【0064】
【表1】
連番1、5~9の素材はいずれも、メッシュ構造であり、連番2~4の素材は、不織布(non-woven)であって、繊維束が多層レイヤーに構成される不織布である。
図9は実験例によるプラズマ電極パッドを動作させて、暗室で撮影したプラズマ発生の数とプラズマの平均面積(area)を示す。
図9による撮影の様子は、連番3の不織布を使用したときのプラズマ発生の様子である。
【0065】
図10は
図9のテスト方式で、
図7による9種の素材別のプラズマの数と平均面積(area)をまとめた表である。
図10を参照すると、プラズマの数(number of plasma)とプラズマの面積(plasma area)の両方とも優れた素材は、連番3、連番6、連番7の素材であった。
【0066】
注目すべき点は、理論上の期待とは異なり、
図9のような不織布(non-woven)素材からドット型のプラズマが放出されるという点である。連番1、5~9のメッシュ構造の素材は、メッシュの通孔形状と対応してプラズマが放出されるのが自然であるが、これに対し、連番2~4の不織布素材は、実際に放出されるプラズマドットのように通孔が設けられた素材ではないためである。また、
図9の実験方式において、プラズマの面積は10pixel
2以上のプラズマ面積のみを対象とした。ここで、連番3は、連番6、7とは異なり、プラズマの発生数と面積のvariationが最も少なかった。これは、チェックされたプラズマの数ごとに10pixel
2以上のプラズマ面積を発生させるドット性能がより優れることを予想するようにする。このように、プラズマの発生効率だけでなく、前述した第二~第四の理由で不織布素材が創傷治療用プラズマ電極パッドにさらに適合することを述べたことがある。これを考慮すれば、スペーサー素材の構造的特性において、メッシュ構造の素材に比べて、繊維束が多層レイヤーに構成され且つランダムに絡み合っている複雑構造の素材がより優れるだろう。
【0067】
2-2.不織布(複雑構造(complicated structure))素材の条件別プラズマの特性
図11は6種の不織布素材を走査電子顕微鏡で断層撮影した様子を示す。6種の不織布素材は、次の通りである。
【0068】
【表2】
図12は
図11による不織布素材をスペーサーとして構成したフレキシブルプラズマ電極を動作させてプラズマ発生効率をまとめた様子である。
図12を参照すると、OCL15の不織布から発生したプラズマはストリーマー(フィラメント)(streamer(filament)がほとんど発生せず、グロー放電(glow discharge)のようにプラズマが放電してプラズマの数を数えることができなかった。これは、OCL15不織布の厚さが最も薄いため、電極間の距離が狭くなることにより、放電電圧が減少してグロー放電(glow discharge)によりプラズマが発生したものと推定される。
【0069】
図13は
図11による不織布素材の開口率(opening ratio)とプラズマの発生効率との関係性をテストした結果を示す。
図13の結果表は、右側のy軸が開口率(%)を示し、左側のy側が10pixel
2以上の面積にドット放出されるプラズマの数を示す。ここで、開口率は、不織布を走査電子顕微鏡で断層撮影したイメージ上において、繊維束が形成した面積に対する開口空間の割合で定量化した数値である。
【0070】
注目すべき点として、不織布素材の開口率が20%以下である場合、プラズマ発生効率が線形的ではあるが、その程度が高くなかった。
図13の結果表は、プラズマ発生の効率が、開口率が高くなるほど増加する形態を示す。しかし、開口率とプラズマ発生効率は、全体区間で線形的に増加せず、開口率が30%以上であるときからプラズマ発生効率が高くなった。
図11~
図13の結果を総合すると、OCL15のように60μm以下の厚さではグロー放電(glow discharge)が起こる。したがって、厚さ60μm~100μmの条件で開口率30%以上のときに最も良いプラズマが発生するものとまとめられる。
【0071】
実験例3.ガス発生量のテスト
図14はプラズマ発生時に生成されたガスを測定するための実験の構成図である。測定ガスは、有害なオゾンと有益な二酸化窒素にする。初期ガス測定の電力条件は、周波数120kHz、デューティタイム(Duty time)5.08μs、ディレイタイム(Delay time)0.426msに設定した。皮膚に該当する接地電極は、2×1cm
2のアガロースゲル(agarosegel)を使用した。測定間隔は少なくとも1cm、高さは2cm、測定時間はプラズマ1分放電後にして、5回繰り返し測定した。
【0072】
プラズマ電極パッドは、誘電体薄膜としてPDMS素材を使用し、プラズマ電極としてカーボン(carbon)素材を使用した。また、PDMSとスペーサーに光触媒を塗布してオゾン吸収が優れた条件で実験した。
図15は測定間隔によるオゾン発生量を示す。
図15を参照すると、電極とガス検知管との距離が1cmずつ増加するにつれて、オゾンが非常に大きく減少することを確認することができた。環境政策基本法と室内空気清浄機の関連規格によれば、オゾンの発生量を評価するときに集塵試験用チャンバー又は空間体積40m
3±10m
3(天井高さ3m以下)の室内空間で測定する。上記の試験条件は、オゾンを人体の呼吸器に吸入するときに問題になるからである。本実施形態によるプラズマ電極パッド10は、皮膚に付着するもので、顔に使用されても人体の呼吸器としての鼻又は口から1~3cm以上離れることができる。
図15の実験結果において、プラズマ電極パッドからわずか3cmの距離が形成されても、オゾン発生量は0.05ppm以下である。
【0073】
しかし、最大限の安定性を確保するために、本実験例では、プラズマ電極パッドと検知管との距離1cm以内でもオゾンが0.05ppm以下で確定発生する条件を最適化しようとした。その結果は、前述の
図6によるパワーサプライ30の条件別実験で確認することができる。再び
図6を参照すると、
図6は
図14の実験構成図において検知管が1cmであるときに測定した結果である。不織布の厚さが厚くなるほど、発生するガス濃度の傾向線は次第に減少する特性を示した。本実験の結果、OCL15、OCP16、OCP40、CCT50をスペーサーとして用いた場合、1cmの測定距離でもオゾン発生量が0.05ppm以下に検出された。
【0074】
以上で、代表的な実施形態を挙げて本発明を詳細に説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、上述した実施形態に対して、本発明の範疇から逸脱することなく、様々な変形が可能であることを理解するだろう。したがって、本発明の権利範囲は、説明した実施形態に限定されて定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、特許請求の範囲と均等な概念から導き出されるすべての変更又は変形形態によって定められるべきである。
【符号の説明】
【0075】
1 フローティングプラズマ治療装置
3 皮膚
33 電源ケーブル
35 接地パッド
10 フローティングプラズマパッド
100 接着カバー
1001 接着部
1003 通孔
101 プラズマ電極
1011 端子
103 誘電体薄膜
1031、1051 機能性コーティング
105 スペーサー