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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】高周波装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/52 20060101AFI20221206BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H01Q1/52
H01Q13/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021558369
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2020042615
(87)【国際公開番号】W WO2021100657
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】P 2019208005
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 一正
(72)【発明者】
【氏名】川口 和司
(72)【発明者】
【氏名】土屋 潤三
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/198970(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0134213(US,A1)
【文献】特開2010-010183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/52
H01Q 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパターン層を有する誘電体基板(2,3)と、
前記誘電体基板の第1パターン層に形成され、グランド面として使用される地板(4)と、
前記誘電体基板の前記第1パターン層とは異なる第2パターン層に形成された、正6角形または正8角形の無給電パターンである複数の導体パッチ(61,62)を有する機能部(5,6)と、
を備え、
前記導体パッチは、周期的に配置され、且つ、指定された少なくとも一つの方向に沿った辺が、前記誘電体基板の表面を伝搬する電波が共振する長さに設定され、
前記電波が共振する長さに設定された前記導体パッチの辺は、前記電波の管内波長の1/2の長さを有する
高周波装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波装置であって、
前記導体パッチは、複数の辺のうち一つ以上の辺のそれぞれに沿った方向を配列方向として、前記配列方向に沿って周期的に配置された
高周波装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の高周波装置であって、
前記誘電体基板は、3層以上のパターン層を有し、
前記機能部は、前記両面から誘電体層に挟まれた内側のパターン層に形成された
高周波装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の高周波装置であって、
前記第2パターン層には、放射素子として作用する1つ以上のアンテナパターンを有するアンテナ部(7)が形成され、
前記複数の導体パッチは、前記アンテナ部と前記誘電体基板の端部との間に配置された
高周波装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の高周波装置であって、
前記第2パターン層には、放射素子として作用し直線偏波を放射する1つ以上のアンテナパターンを有するアンテナ部(7)が形成され、
前記複数の導体パッチは、前記アンテナ部から放射される放射電波の偏波方向に対して、傾斜した二つの方向において、前記アンテナ部の動作周波数を有する入射波に対して逆位相の輻射波を発生させるように構成された、
高周波装置。
【請求項6】
請求項5に記載の高周波装置であって、
前記導体パッチは、正8角形であって、前記放射電波の偏波方向に対して、それぞれが互いに逆方向に45°傾斜した2辺を有する
高周波装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本国際出願は、2019年11月18日に日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2019-208005号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2019-208005号の全内容を本国際出願に参照により援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、誘電体基板を用いる高周波装置に関する。
【背景技術】
【0003】
誘電体基板上に形成されるパターンによって種々の機能を実現する高周波装置の一つとして、パッチアンテナがある。この種のパッチアンテナを車載レーダのアンテナとして使用する場合、例えば、バンパ内に搭載される。パッチアンテナから放射され、バンパで反射した電波は、アンテナパターンが形成された誘電体基板の表面で再反射することで放射波と干渉して、アンテナ特性を劣化させる。
【0004】
下記特許文献1には、電磁バンドギャップ(すなわち、EBG)構造を有したリフレクトアレーを用いて、バンパで反射した正面方向からの入射波の反射方向を任意に制御することで、反射の影響を抑制する技術が記載されている。EBG構造は、ビアを介して接地プレートに接続される複数のパッチを規則的に並べた構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-45378号公報
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、発明者の詳細な検討の結果、特許文献1に記載の従来技術では、基板表面を伝搬する表面波に対しては機能せず、表面波の影響については抑制できないという課題が見出された。
【0007】
本開示の1つの局面では、誘電体基板の表面を伝搬する表面波の影響を抑制する技術を提供する。
【0008】
本開示の一態様は、高周波装置であって、誘電体基板と、地板と、機能部と、を備える。誘電体基板は、複数のパターン層を有する。地板は、誘電体基板の第1パターン層に形成され、グランド面として使用される。機能部は、誘電体基板の第1パターン層とは異なる第2パターン層に形成された無給電パターンである複数の導体パッチを有する。導体パッチは、周期的に配置され、且つ、少なくとも一つの方向に沿った辺が、誘電体基板の表面を伝搬する電波、すなわち表面波が共振する長さに設定される。
【0009】
このような構成によれば、機能部に属する導体パッチ上で表面波が共振することにより、表面波の伝搬損失が増大する。その結果、表面波に基づく導体パッチからの輻射、及び誘電体基板の端部に到達した表面波の基板端からの輻射等が抑制されるため、表面波による影響を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る高周波装置の構成を模式的に示す平面図である。
図2図1のII-II線で切断した断面を示す垂直断面図である。
図3】変形例の高周波装置の構成を示す垂直断面図である。
図4】第2実施形態に係る高周波装置の構成を模式的に示す平面図である。
図5】導体パッチの辺の長さと共振時の反射位相との関係を示すグラフである。
図6】導体パッチによる偏波の回転作用を説明する図である。
図7】180°の反射位相差、且つ、10dB以上の反射抑制効果が得られる機能部の設計例を示す一覧表である。
図8図7に示す設計例のそれぞれについて、機能部の順方向伝送係数の周波数特性をシミュレーションによって算出した結果を示すグラフである。
図9】実施例1及び各辺で強い共振が起こらないように設計された比較例1について、機能部における電界分布をシミュレーションによって算出した結果を示す図である。
図10】第3実施形態に係る高周波装置の構成を模式的に示す平面図である。
図11】実施例2、機能部を有さない比較例2、及び機能部を有するが辺がλg/2に設定されていない比較例3について、反射断面積をシミュレーションによって算出した結果を示すグラフである。
図12】実施例2及び比較例3について、方位に対する利得の変化を示すアンテナ特性をシミュレーションによって算出した結果を示すグラフである。
図13】機能部を構成する導体パッチの配置パターンの変形例を示す図である。
図14】機能部を構成する導体パッチの配置パターンの変形例を示す図である。
図15】機能部を構成する導体パッチの配置パターンの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
【0012】
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
本実施形態に係る高周波装置1の構成について、図1及び図2を参照して説明する。
【0013】
高周波装置1は、誘電体基板2と、地板4と、機能部5とを備える。
【0014】
誘電体基板2は、誘電体で形成された厚さを有する長方形の板材である。以下では、誘電体基板2の2つの板面のうち、第1の板面を基板表面2a、第2の板面を基板裏面2bと称する。基板表面2a及び基板裏面2bはいずれもパターン層として使用される。また、長方形の誘電体基板2の一つの辺に沿った方向をX軸方向、その辺と直交する辺に沿った方向をY軸方向、基板表面2aの法線方向をZ軸方向と称する。但し、誘電体基板2の形状は長方形に限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。
【0015】
地板4は、基板裏面2bの全面を覆うように形成された銅製のパターンであり、接地面として作用する。つまり、基板裏面2bが第1パターン層に相当する。
【0016】
機能部5は、基板表面2aの少なくとも一部に形成され、基板表面2aでの表面波(以下、対象表面波)の伝搬を抑制する機能を有する。ここでは、表面波はX軸方向に沿って図1中の左から右方向へ伝搬するものとする。機能部5は、周期的かつ二次元的に配置された複数の導体パッチ50を備える。つまり、基板表面2aが第2パターン層に相当する。
【0017】
導体パッチ50は、いずれも同一形状、同一サイズを有する長方形に形成された銅製の無給電パターンである。以下では、長方形の導体パッチ50の長辺及び短辺のうち、いずれか一つの辺を第1の辺、残りの一つの辺を第2の辺という。複数の導体パッチ50は、それぞれが絶縁されており、第1の辺がX軸方向に沿って、第2の辺がY軸方向に沿って、それぞれ一定間隔で配置される。つまり、導体パッチ50は、第1の辺が対象表面波の伝搬方向に沿うように配置される。図1では、長方形に形成された導体パッチ50の長辺を第1の辺としている。
【0018】
導体パッチ50は、対象表面波の管内波長をλgとして、第1の辺がλg/2の長さを有する。管内波長λgは、誘電体基板2の誘電率に応じた短縮率で短縮された対象表面波の波長である。但し、第1の辺の長さは厳密にλg/2である必要はなく、対象表面波が共振する長さであればよい。例えば、第1の辺の長さは、λg/2に対して±5%程度の範囲内で異なってもよい。また、導体パッチ20の第1の辺は、対象表面波の伝搬方向と厳密に一致している必要はない。例えば、第1の辺は、対象表面波の伝搬方向に対して±45°の範囲内で傾斜していてもよい。
【0019】
[1-2.作用]
このように、構成された高周波装置1では、基板表面2aをX軸方向に沿って伝搬する対象表面波は、機能部5が有する各導体パッチ50のλg/2の長さを有するX軸方向に沿った第1の辺で共振する。その共振時に。対象表面波は、導体パッチ50での抵抗損失、及び誘電体基板2での誘電損失を受ける。
【0020】
[1-3.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0021】
(1a)高周波装置1では、基板表面2aを伝搬する対象表面波は、機能部5に属する導体パッチ50上で共振することで損失を受ける。その結果、対象表面波に基づく導体パッチ50からの輻射、及び誘電体基板2の端部に到達した対象表面波の基板端からの輻射を抑制できる。つまり、対象表面波の伝搬を抑制する表面波抑制効果だけでなく、対象表面波に基づく導体パッチ50からの輻射を抑制する輻射抑制効果を得ることができる。
【0022】
(1b)誘電体基板2上に、対象表面波の発生源、及びその他の回路が設けられている場合、発生源とその他の回路との間に機能部5を設けることで、その他の回路が対象表面波の影響を受けることを抑制できる。
【0023】
[1-4.変形例]
第1実施形態の高周波装置1では、基板表面2a及び基板裏面2bにパターン層を有する誘電体基板2が用いられているが、誘電体基板の構造はこれに限定されるものではない。例えば、図3に示す高周波装置1aのように、基板表面3a及び基板裏面3bに加えて基板内層3cにもパターン層を有する多層の誘電体基板3を用いてもよい。この場合、基板内層3cに機能部5を形成してもよい。但し、機能部5は、地板4が形成されたパターン層に誘電体層を挟んで隣接するパターン層に形成される。なお、基板表面3aに形成されるパターン41は、接地面として機能するパターンでもよいし、高周波回路として機能するパターンでもよい。
【0024】
[2.第2実施形態]
[2-1.第1実施形態との相違点]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0025】
前述した第1実施形態の高周波装置1では、機能部5に属する導体パッチ50の第1の辺が、X軸方向(すなわち、対象表面波の伝搬方向)に沿うように、導体パッチ50が配置されている。第2実施形態の高周波装置1bでは、図4に示すように、機能部6に属する導体パッチ60の第1の辺及び第2の辺がいずれもX軸方向に対して互いに逆方向に45°傾斜するように配置される。
【0026】
以下では、導体パッチ60の第1の辺に沿った方向をα方向、第2の辺に沿った方向をβ方向と称する。α方向とβ方向は互いに直交する方向である。導体パッチ60は、α方向に沿った第1の辺の長さLαとβ方向に沿った第2の辺の長さLβとが異なる。
【0027】
複数の導体パッチ60は、それぞれが絶縁されており、すべて同じ角度で傾斜し、α方向及びβ方向において一定間隔に並べて配置される。
【0028】
導体パッチ60において、第1の辺の長さLαは、λg/2に設定される。第2の辺の長さLβは、表面波に対して共振し、第2の辺で共振する信号の位相と第1の辺での共振する信号の位相との差(以下、共振時位相差)Δθが逆位相となる(すなわち、位相が180°異なる)ように設定される。
【0029】
図5に示すように、導体パッチ60の各辺の長さLα,Lβと各辺で共振する信号の位相とには相関がある。この関係を利用して、導体パッチ60の各辺の長さLα,Lβは、共振時位相差Δθが180°となる長さに設定される。
【0030】
[2-2.動作]
対象表面波が、偏波面がX軸方向に沿った水平偏波である場合について説明する。α方向及びβ方向は、対象表面波の偏波面に対して、それぞれ45°の角度で傾斜した方向を有する。対象表面波が伝搬してくると、対象表面波によって励振される電流が、導体パッチ60の第1の辺と第2の辺に流れ、α方向とβ方向の2つの方向で共振する。このとき、第1の辺の長さLαと第2の辺の長さLβとが異なるため、2つの方向における共振長が異なる。その結果、第1の辺で共振する信号の位相と第2の辺で共振する位相とに位相差が生じる、即ち、Δθ≠0°となるため、導体パッチ60から放射される放射波の偏波方向は、対象表面波の偏波方向とは異なったものとなる。
【0031】
特に、Δθ=180°の場合、対象表面波によって励振された導体パッチ60から放射される放射波は、図6に示すように、対象表面波のX軸方向に沿った水平偏波からのY軸方向に沿った垂直偏波に変化する。その結果、対象表面波と同じ水平偏波を有する電波と、垂直偏波を有する導体パッチ60からの輻射波との干渉が抑制される。
【0032】
ここで、図7は、導体パッチ60の各辺の長さLα,Lβ及び導体パッチ60の配置間隔gを変化させて、導体パッチ60からの輻射が10dB以上の抑制されるパラメータの組み合わせを示す。具体的には、Lαをλg/2に対して±5%の範囲で変化させ、シミュレーションによってLβ,gを算出した。図8は、図7に示したパラメータの組み合わせパターン1~5のそれぞれについて、表面波の伝搬特性をシミュレーションによって算出した結果である。パターン4として示すパラメータの組み合わせを用いた場合、76GHz~77GHzにおいて、輻射抑制効果及び表面波抑制効果が、いずれについても10dB以上得られることがわかる。
【0033】
図9は、実施例1及び比較例1について、電界分布をシミュレーションによって算出した結果を示す。実施例1は、表面波抑制効果及び反射抑制効果がいずれも得られるように設計した高周波装置1bである。比較例1は、導体パッチ60の第1の辺及び第2の辺が、いずれもλg/2から5%以上異なるように、すなわち、各辺で強い共振が起こらないように設計した高周波装置である。
【0034】
図9中で、ハッチングで示した部位が強い電界強度が観測される部位である。実施例1では、各導体パッチ60の第1の辺に沿ったα方向で共振することによりα方向の両端で強い電界が得られること、及び、共振によって、表面波の伝搬が抑制されることによって、導体パッチ60から放射される電界の強度が弱まることがわかる。
【0035】
比較例1では、導体パッチ60での強い共振が起こらないため、表面波は強い強度のまま伝搬することによって、各導体パッチ60から輻射される電界の強度も強くなることがわかる。
【0036】
[2-3.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1a)(1b)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0037】
(2a)高周波装置1bでは、対象表面波に基づく導体パッチ60からの輻射波が、対象表面波とは異なる偏波面を有するように変換されるため、輻射波が対象表面波と同じ水平偏波の電波と干渉することを、より一層抑制できる。
【0038】
[3.第3実施形態]
[3-1.第2実施形態との相違点]
第3実施形態は、基本的な構成は第2実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1及び第2実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0039】
前述した第2実施形態の高周波装置1bでは、機能部6が基板表面2aに設けられている。第3実施形態の高周波装置1cでは、図10に示すように、機能部6に加えてアンテナ部7が基板表面2aに設けられている点で、第2実施形態と相違する。
【0040】
高周波装置1cは、例えば、車両の周辺に存在する各種物標を検出するためのミリ波レーダにおけるアンテナ装置として使用される。
【0041】
アンテナ部7は、予め設定された動作周波数の電波を放射する放射素子として作用する一つ以上のアンテナパターンを有する。
【0042】
高周波装置1cにおいて、アンテナ部7は、基板表面2aの中央付近に配置され。アンテナ部7の周囲には、アンテナ部7に対する給電線が配線される1方向を除く3方向に機能部6が形成される。図10ではアンテナ部7に下方向以外、すなわち、上方向及び左右方向に機能部6が形成される。
【0043】
アンテナ部7は、図中X軸方向に沿った偏波面を有し、管内波長がλgとなる直線偏波(以下、水平偏波)を送信する。
【0044】
[3-2.実験]
機能部6を有する高周波装置1c(以下、実施例2)のレーダ反射断面積(以下、RCS)を測定した結果を図11に示す。比較例2として、機能部6を有さない単なる金属板のRCSを合わせて示す。
【0045】
高周波装置1c(すなわち、実施例2)では、機能部6の存在により、比較例2と比べて、正面方向以外のRCSを十分に小さな値に抑えられていることがわかる。なお、機能部6に類似する構造を有するが、導体パッチ60の辺の長さLα,Lβがいずれもアンテナ部7が送信する電波が共振しない長さに設定された比較例3でも、実施例2と同様の測定結果が得られる。
【0046】
実施例2及び比較例3のアンテナ特性を、図12に示す。
【0047】
比較例3では、表面波に基づく導体パッチ60からの輻射波は、偏波面の回転によってアンテナ部7の特性に影響を与えることが抑制される。しかし、表面波に基づく基板端からの輻射波は、アンテナ部7からの放射波に対する干渉波となって、アンテナ特性に影響を与え、具体的には、方位によって利得が大きく変動する。実施例2では、導体パッチ60にて表面波が共振することで、アンテナ部7から基板端へ向けての表面波の伝搬が抑制され、基板端輻射(すなわち、干渉波)が減少することで、利得の変動が抑制される。
【0048】
[3-3.効果]
以上詳述した第3実施形態によれば、前述した第1及び第2実施形態の効果(1a)(1b)(2a)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0049】
(3a)高周波装置1cでは、アンテナ部7と基板端部との間に配置された機能部6により、アンテナ部7を発生源とする表面波の伝搬、ひいては表面波に基づく基板端輻射が減少する。その結果、基板端輻射の干渉によるアンテナ特性の乱れが抑制されるため、アンテナ性能を向上させることができる。
【0050】
なお、基板端輻射は、アンテナ特性において所望の利得が得られる角度範囲を広げる作用を有するため、必要な基板端輻射が得られるように機能部6が有する伝搬特性を設計してもよい。
【0051】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は前述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0052】
(4a)上記実施形態では、機能部5,5を構成する導体パッチ50,50は、図1及び図4に示すように、長方形の第1の辺及び第2の辺のいずれもが一列に並ぶように配置されているが、導体パッチの配置方法はこれに限定されるものではない。長方形の導体パッチ60は、例えば図13に示すように、第1の辺及び第2の辺のいずれか一つのみが一列に並ぶように配置されてもよい。
【0053】
(4b)上記実施形態では、長方形の導体パッチ50,50が用いられているが、導体パッチの形状はこれに限定されるものではない。例えば、図14に示す6角形の導体パッチ61及び図15に示すように8角形の導体パッチ62等、任意の多角形の導体パッチを用いてもよい。
【0054】
(4c)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0055】
(4d)前述した高周波装置1,1a~1cの他、当該高周波装置1,1a~1cを構成要素とするシステム、不要輻射抑制方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15