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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】情報処理装置及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/38 20120101AFI20221206BHJP
   G06Q 20/06 20120101ALI20221206BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20221206BHJP
【FI】
G06Q20/38 300
G06Q20/06 300
G06Q50/10
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022103313
(22)【出願日】2022-06-28
【審査請求日】2022-09-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】江田 哲平
(72)【発明者】
【氏名】下平 正人
【審査官】永野 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-81426(JP,A)
【文献】特開2021-26514(JP,A)
【文献】特開2020-95489(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0129881(KR,A)
【文献】栗田 健一 ,コミュニティ経済と地域通貨,第1版,日本,専修大学出版局,2020年04月10日,pp.136-138
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに関連付けられた暗号資産口座において暗号資産として管理されている第1金額と、前記暗号資産が決済に利用される単位である資産単位であって、前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位が決済に利用された履歴と、を取得する取得部と、
前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位が過去に決済に利用されたか否かによって異なる換算条件に従って、前記暗号資産の前記第1金額を前記暗号資産口座から減算するとともに、前記第1金額に対応する、所定の通貨として管理される第2金額を前記ユーザに関連付けられた通貨口座に加算するための指示を出力する出力部と、
を有する、情報処理装置。
【請求項2】
前記換算条件に従って、前記第1金額に対応する前記第2金額を算出する算出部をさらに有し、
前記出力部は、前記第2金額を示す前記指示を、前記通貨口座を管理する装置に送信する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記換算条件に従って、前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位を変換するための手数料を算出する算出部をさらに有し、
前記出力部は、前記第1金額から前記手数料を減算した金額を示す前記指示を、前記通貨口座を管理する装置に送信し、
前記第2金額は、前記通貨口座を管理する装置において前記第1金額から前記手数料を減算した金額に基づいて算出される、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記換算条件は、過去に決済に利用されていない前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位に対応する前記第2金額の算出を拒否することを示し、過去に決済に利用された前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位の前記第2金額の算出を許可することを示す、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記換算条件は、過去に決済に利用されていない前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位を変換するための第1手数料と、過去に決済に利用された前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位を変換するための第2手数料であって、前記第1手数料よりも安い第2手数料と、を示す、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記暗号資産口座において前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位よりも多い複数の資産単位が管理されている場合であって、前記複数の資産単位が決済に利用された履歴が異なる場合に、前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位を変換するための手数料が最も安くなるように、前記複数の資産単位から前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位を選択する選択部をさらに有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記履歴は、前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位が、所定条件を満たす店舗における決済に利用された履歴を示す、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記ユーザである店舗の種別に基づいて前記換算条件を決定する決定部をさらに有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位が過去に決済に利用された回数に基づいて前記換算条件を決定する決定部をさらに有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位が前記暗号資産口座に加算された日時、又は前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位に設定された有効期限に基づいて前記換算条件を決定する決定部をさらに有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記第1金額の高さに基づいて前記換算条件を決定する決定部をさらに有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記出力部は、前記暗号資産口座において管理されている合計金額のうち前記通貨に変換可能な金額を前記ユーザに関連付けられた情報端末に通知し、
前記取得部は、前記出力部が前記通貨に変換可能な金額を前記情報端末に通知した後、前記情報端末において入力された前記第1金額であって、前記通貨に変換可能な金額のうち前記通貨に変換を希望する前記第1金額を取得する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記暗号資産を用いた決済はブロックチェーンによって管理されており、
前記取得部は、前記ブロックチェーンから前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位の前記履歴を取得する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記通貨は、前記ブロックチェーンによって管理されない、
請求項13に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記暗号資産を用いた決済は、所定の地域内の店舗において実行可能であり、前記通貨を用いた決済は、前記地域外の店舗において実行可能である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項16】
プロセッサが実行する、
ユーザに関連付けられた暗号資産口座において暗号資産として管理されている第1金額と、前記暗号資産が決済に利用される単位である資産単位であって、前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位が決済に利用された履歴と、を取得するステップと、
前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位が過去に決済に利用されたか否かによって異なる換算条件に従って、前記暗号資産の前記第1金額を前記暗号資産口座から減算するとともに、前記第1金額に対応する、所定の通貨として管理される第2金額を前記ユーザに関連付けられた通貨口座に加算するための指示を出力するステップと、
を有する、情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗号資産に関する情報を処理するための情報処理装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、暗号資産(仮想通貨ともいう)を預かる口座から、現金を預かる口座へ、暗号資産の価値に対応する金額を送金するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-77640公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
経済循環を活性化させることを目的として、決済に利用可能な暗号資産を発行することが行われている。このような暗号資産を日本円等の通貨に変換できないようにすると、暗号資産の利便性が低下し、暗号資産の普及が妨げられる可能性がある。一方、暗号資産を通貨に自由に変換できるようにすると、暗号資産が地域における決済に利用される割合が低下し、地域内における経済循環を活性化させる目的を達成できない可能性がある。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、暗号資産を通貨に変換可能にしながら、暗号資産の決済への利用を促進できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の情報処理装置は、ユーザに関連付けられた暗号資産口座において暗号資産として管理されている第1金額と、前記暗号資産が決済に利用される単位である資産単位であって、前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位が決済に利用された履歴と、を取得する取得部と、前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位が過去に決済に利用されたか否かによって異なる換算条件に従って、前記暗号資産の前記第1金額を前記暗号資産口座から減算するとともに、前記第1金額に対応する、所定の通貨として管理される第2金額を前記ユーザに関連付けられた通貨口座に加算するための指示を出力する出力部と、を有する。
【0007】
前記情報処理装置は、前記換算条件に従って、前記第1金額に対応する前記第2金額を算出する算出部をさらに有し、前記出力部は、前記第2金額を示す前記指示を、前記通貨口座を管理する装置に送信してもよい。
【0008】
前記情報処理装置は、前記換算条件に従って、前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位を変換するための手数料を算出する算出部をさらに有し、前記出力部は、前記第1金額から前記手数料を減算した金額を示す前記指示を、前記通貨口座を管理する装置に送信し、前記第2金額は、前記通貨口座を管理する装置において前記第1金額から前記手数料を減算した金額に基づいて算出されてもよい。
【0009】
前記換算条件は、過去に決済に利用されていない前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位に対応する前記第2金額の算出を拒否することを示し、過去に決済に利用された前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位の前記第2金額の算出を許可することを示してもよい。
【0010】
前記換算条件は、過去に決済に利用されていない前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位を変換するための第1手数料と、過去に決済に利用された前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位を変換するための第2手数料であって、前記第1手数料よりも安い第2手数料と、を示してもよい。
【0011】
前記情報処理装置は、前記暗号資産口座において前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位よりも多い複数の資産単位が管理されている場合であって、前記複数の資産単位が決済に利用された履歴が異なる場合に、前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位を変換するための手数料が最も安くなるように、前記複数の資産単位から前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位を選択する選択部をさらに有してもよい。
【0012】
前記履歴は、前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位が、所定条件を満たす店舗における決済に利用された履歴を示してもよい。
【0013】
前記情報処理装置は、前記ユーザである店舗の種別に基づいて前記換算条件を決定する決定部をさらに有してもよい。
【0014】
前記情報処理装置は、前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位が過去に決済に利用された回数に基づいて前記換算条件を決定する決定部をさらに有してもよい。
【0015】
前記情報処理装置は、前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位が前記暗号資産口座に加算された日時、又は前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位に設定された有効期限に基づいて前記換算条件を決定する決定部をさらに有してもよい。
【0016】
前記情報処理装置は、前記第1金額の高さに基づいて前記換算条件を決定する決定部をさらに有してもよい。
【0017】
前記出力部は、前記暗号資産口座において管理されている合計金額のうち前記通貨に変換可能な金額を前記ユーザに関連付けられた情報端末に通知し、前記取得部は、前記出力部が前記通貨に変換可能な金額を前記情報端末に通知した後、前記情報端末において入力された前記第1金額であって、前記通貨に変換可能な金額のうち前記通貨に変換を希望する前記第1金額を取得してもよい。
【0018】
前記暗号資産を用いた決済はブロックチェーンによって管理されており、前記取得部は、前記ブロックチェーンから前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位の前記履歴を取得してもよい。
【0019】
前記通貨は、前記ブロックチェーンによって管理されなくてもよい。
【0020】
前記暗号資産を用いた決済は、所定の地域内の店舗において実行可能であり、前記通貨を用いた決済は、前記地域外の店舗において実行可能であってもよい。
【0021】
本発明の第2の態様の情報処理方法は、プロセッサが実行する、ユーザに関連付けられた暗号資産口座において暗号資産として管理されている第1金額と、前記暗号資産が決済に利用される単位である資産単位であって、前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位が決済に利用された履歴と、を取得するステップと、前記第1金額に対応する一又は複数の資産単位が過去に決済に利用されたか否かによって異なる換算条件に従って、前記暗号資産の前記第1金額を前記暗号資産口座から減算するとともに、前記第1金額に対応する、所定の通貨として管理される第2金額を前記ユーザに関連付けられた通貨口座に加算するための指示を出力するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、暗号資産を通貨に変換可能にしながら、暗号資産の決済への利用を促進できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態に係る情報処理システムの模式図である。
図2】本実施形態に係る情報処理システムのブロック図である。
図3】情報処理システムが暗号資産及び通貨を管理する方法を説明するための模式図である。
図4】利用先ユーザ端末が表示する画面の模式図である。
図5】例示的な移転履歴の模式図である。
図6】例示的な換算条件の模式図である。
図7】選択部がコインを選択する方法を説明するための模式図である。
図8】本実施形態に係る情報処理システムが実行する例示的な情報処理方法のシーケンス図である。
図9】利用先ユーザ端末が表示する画面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[情報処理システムSの概要]
図1は、本実施形態に係る情報処理システムSの模式図である。情報処理システムSは、暗号資産管理サーバ1と、決済サーバ2と、銀行サーバ3と、利用元ユーザ端末4と、利用先ユーザ端末5と、を含む。情報処理システムSは、その他のサーバ、端末等の機器を含んでもよい。
【0025】
暗号資産管理サーバ1(情報処理装置)は、暗号資産に関する情報を管理するためのコンピュータである。暗号資産は、代金の決済等に利用可能であり、法定通貨(日本円や米国ドル等)とは異なる電子的な資産である。暗号資産は、所定の変換比率で所定の通貨に変換可能である。暗号資産は、例えば記憶装置において当該暗号資産を保有するユーザに関連付けられており、決済に利用される際に顧客であるユーザから店舗であるユーザに移転される。
【0026】
暗号資産は、例えば、ブロックチェーンによって管理される電子的な資産である。一方、暗号資産の変換先である所定の通貨(以下、単に通貨という)は、ブロックチェーンによって管理されない資産である。また、暗号資産は、ブロックチェーンに限られず、データベース等によって管理される電子的な資産であってもよい。暗号資産は、決済に利用される所定の単位(例えば、流通する単位)である資産単位で管理される。以下、暗号資産の資産単位をコインと呼ぶが、その他の名称であってもよい。
【0027】
本実施形態において、暗号資産は、例えば、所定の地域において利用可能な地域デジタル通貨である。地域デジタル通貨である暗号資産を用いた決済は、所定の地域内の店舗において実行可能であり、当該地域外の店舗において実行不可能である。また、地域デジタル通貨である暗号資産を用いた決済は、所定の地域内の所定の店舗(例えば、登録された店舗)のみにおいて実行可能であってもよい。一方、通貨を用いた決済は、当該地域外の店舗において実行可能である。通貨を用いた決済は、当該地域内及び当該地域外の両方の店舗において実行可能であってもよい。
【0028】
暗号資産管理サーバ1は、各ユーザが保有する暗号資産を、当該ユーザに関連付けられた暗号資産口座において管理する。暗号資産管理サーバ1は、例えば、決済サーバ2から受信した移転要求に応じて、暗号資産をあるユーザの暗号資産口座から別のユーザの暗号資産口座に移転する。また、暗号資産管理サーバ1は、例えば、利用先ユーザ端末5から受信した変換要求に応じて、変換対象の金額に対応する暗号資産を通貨に変換する。暗号資産管理サーバ1は、ネットワークを介して決済サーバ2、銀行サーバ3及び利用先ユーザ端末5と通信可能である。
【0029】
決済サーバ2は、暗号資産を用いて代金の決済を行うためのコンピュータである。決済サーバ2は、例えば、利用元ユーザ端末4又はその他の端末から決済要求を受信したことに応じて、暗号資産管理サーバ1に対して決済対象の金額に対応する暗号資産を利用元ユーザの暗号資産口座から利用先ユーザの暗号資産口座に移転させる移転要求を送信する。決済サーバ2は、ネットワークを介して暗号資産管理サーバ1及び利用元ユーザ端末4と通信可能である。
【0030】
銀行サーバ3は、通貨に関する情報を管理するためのコンピュータである。銀行サーバ3は、各ユーザが保有する通貨を、当該ユーザに関連付けられた通貨口座において管理する。銀行サーバ3は、例えば、暗号資産管理サーバ1から送金指示を受信したことに応じて、通貨をあるユーザの通貨口座から別のユーザの通貨口座に送金する。銀行サーバ3は、ネットワークを介して暗号資産管理サーバ1と通信可能である。
【0031】
利用元ユーザ端末4は、利用元ユーザが利用するコンピュータである。利用元ユーザは、例えば、店舗である利用先ユーザに対して、商品(物品、サービス等)の代金を、暗号資産を利用して支払う顧客である。また、利用元ユーザは、他の店舗である利用先ユーザに対して、暗号資産を利用して代金を支払う店舗であってもよい。利用元ユーザ端末4は、例えば、スマートフォン、タブレット端末又はパーソナルコンピュータである。利用元ユーザ端末4は、操作を受け付けるためのタッチパネルやキーボード等の操作部と、情報を表示するための液晶ディスプレイ等の表示部と、を有する。利用元ユーザ端末4は、ネットワークを介して決済サーバ2と通信可能である。
【0032】
利用先ユーザ端末5は、利用先ユーザが利用するコンピュータである。利用先ユーザは、例えば、顧客又は店舗である利用元ユーザから、暗号資産を利用して代金の支払いを受ける店舗である。利用先ユーザ端末5は、例えば、スマートフォン、タブレット端末又はパーソナルコンピュータである。利用先ユーザ端末5は、操作を受け付けるためのタッチパネルやキーボード等の操作部と、情報を表示するための液晶ディスプレイ等の表示部と、を有する。利用先ユーザ端末5は、ネットワークを介して暗号資産管理サーバ1と通信可能である。
【0033】
本実施形態に係る情報処理システムSが実行する処理の概要を以下に説明する。利用元ユーザ端末4は、利用元ユーザによる操作に応じて、決済要求を決済サーバ2に送信する(1)。また、POS(Point Of Sales)端末等の利用元ユーザ端末4とは異なる端末が決済要求を送信してもよい。決済要求は、例えば、利用元ユーザを識別するための識別情報(ID:identification)と、利用先ユーザのIDと、暗号資産を利用して利用先ユーザに支払う金額である決済金額と、を示す情報である。
【0034】
決済サーバ2は、利用元ユーザ端末4又はその他の端末から受信した決済要求が示す決済金額に対応する暗号資産を利用元ユーザの暗号資産口座から利用先ユーザの暗号資産口座に移転するための移転要求を暗号資産管理サーバ1に送信する(2)。移転要求は、例えば、決済金額と、利用元ユーザのIDと、利用先ユーザのIDと、を示す情報である。
【0035】
暗号資産管理サーバ1は、決済サーバ2から受信した移転要求が示す決済金額に対応する暗号資産を、利用元ユーザの暗号資産口座から利用先ユーザの暗号資産口座に移転する(3)。暗号資産管理サーバ1は、例えば、ブロックチェーンに対して、決済金額に対応する暗号資産の保有者を利用元ユーザから利用先ユーザに変更することを示すデータを追加する。
【0036】
利用先ユーザ端末5は、利用先ユーザによる操作に応じて、変換要求を暗号資産管理サーバ1に送信する(4)。変換要求は、例えば、利用先ユーザのIDと、変換対象とする暗号資産の金額である変換対象金額と、を示す情報である。
【0037】
暗号資産管理サーバ1は、利用先ユーザ端末5から受信した変換要求が示す変換対象金額に対応する暗号資産が過去に決済に利用された履歴を取得する。暗号資産管理サーバ1は、変換対象金額に対応する暗号資産が過去に決済に利用されたか否かによって異なる換算条件を決定する。暗号資産管理サーバ1は、例えば、過去に決済に利用されていない暗号資産を変換不可能にし、過去に決済に利用された暗号資産を変換可能にする換算条件を決定する。また、暗号資産管理サーバ1は、例えば、過去に決済に利用された暗号資産を変換するための手数料を、過去に決済に利用されていない暗号資産を変換するための手数料よりも安くする換算条件を決定してもよい。
【0038】
暗号資産管理サーバ1は、決定した換算条件に従って、暗号資産の金額である変換対象金額に対応する、通貨の金額である変換後金額に算出する(5)。暗号資産管理サーバ1は、例えば、暗号資産が過去に決済に利用されたか否かに応じて決定された手数料が反映されている変換比率を用いて、変換対象金額から変換後金額を算出する。また、銀行サーバ3が変換対象金額から変換後金額を算出してもよい。暗号資産管理サーバ1は、暗号資産の変換対象金額を利用先ユーザの暗号資産口座から減算するとともに(6)、通貨の変換後金額を利用先ユーザの通貨口座に加算するための送金指示を銀行サーバ3に送信する(7)。
【0039】
このように、情報処理システムSは、変換対象金額に対応する暗号資産が過去に決済に利用されたか否かによって異なる換算条件に従って、暗号資産の変換対象金額を通貨の変換後金額に変換する。これにより、情報処理システムSは、例えば過去に決済に利用された暗号資産のみを変換可能にしたり、過去に決済に利用された暗号資産を変換するための手数料を安くしたりすることにより、暗号資産を通貨に変換可能にしながら暗号資産の決済への利用を促進できる。
【0040】
[情報処理システムSの構成]
図2は、本実施形態に係る情報処理システムSのブロック図である。図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、図2に示したもの以外のデータの流れがあってもよい。図2において、各ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、図2に示すブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0041】
暗号資産管理サーバ1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を有する。暗号資産管理サーバ1は、2つ以上の物理的に分離した装置が有線又は無線で接続されることにより構成されてもよい。また、暗号資産管理サーバ1は、コンピュータ資源の集合であるクラウドによって構成されてもよい。
【0042】
通信部11は、ネットワークを介して決済サーバ2、銀行サーバ3及び利用先ユーザ端末5との間でデータを送受信するための通信コントローラを有する。通信部11は、決済サーバ2又は利用先ユーザ端末5からネットワークを介して受信したデータを制御部13に通知する。また、通信部11は、ネットワークを介して、制御部13から出力されたデータを銀行サーバ3又は利用先ユーザ端末5に送信する。
【0043】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等を含む記憶媒体である。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを予め記憶している。また、記憶部12は、暗号資産を通貨に変換するための換算条件を予め記憶している。記憶部12は、暗号資産管理サーバ1の外部に設けられてもよく、その場合にネットワークを介して制御部13との間でデータの授受を行ってもよい。
【0044】
制御部13は、受信部131と、暗号資産処理部132と、取得部133と、決定部134と、選択部135と、算出部136と、出力部137と、を有する。制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、受信部131、暗号資産処理部132、取得部133、決定部134、選択部135、算出部136及び出力部137として機能する。受信部131、暗号資産処理部132、取得部133、決定部134、選択部135、算出部136及び出力部137それぞれが行う処理については後述する。
【0045】
[口座の説明]
まず、情報処理システムSが暗号資産及び通貨を管理する方法を説明する。図3は、情報処理システムSが暗号資産及び通貨を管理する方法を説明するための模式図である。
【0046】
暗号資産管理サーバ1は、複数のユーザそれぞれが保有する暗号資産を、暗号資産口座において管理する。複数のユーザそれぞれの暗号資産口座は、当該ユーザのID(例えば、暗号資産口座のID)に関連付けられている。暗号資産管理サーバ1は、暗号資産の管理として、暗号資産口座に対して暗号資産を入金及び出金し、又は複数の暗号資産口座間で通貨を移転する。
【0047】
暗号資産管理サーバ1は、例えば、ブロックチェーンを用いて、コインを資産単位として暗号資産を管理する。暗号資産管理サーバ1は、例えば、ユーザのIDと、当該ユーザの暗号資産口座における取引の内容と、を関連付けたブロック(データ)を、ネットワーク上の一又は複数の記憶装置上にブロックチェーンとして記憶する。ブロックチェーン内の各ブロックには所定の規則で生成されたハッシュ値が含まれており、ブロック間のハッシュ値の整合性を確認することによりブロックチェーン全体の正しさが担保される。
【0048】
暗号資産管理サーバ1は、ブロックチェーンに限られず、例えば、ユーザのIDと、当該ユーザの暗号資産口座の残高と、当該ユーザの暗号資産口座における一又は複数の取引の内容と、を関連付けたデータを、暗号資産管理サーバ1が有する記憶部12上にデータベースとして記憶してもよい。
【0049】
銀行サーバ3は、複数のユーザそれぞれが保有する通貨を、通貨口座において管理する。複数のユーザそれぞれの通貨口座は、当該ユーザのID(例えば、通貨口座のID)に関連付けられている。銀行サーバ3は、通貨の管理として、通貨口座に対して通貨を入金及び出金し、又は複数の通貨口座間で通貨を移転(送金)する。銀行サーバ3は、例えば、ユーザのIDと、当該ユーザの通貨口座の残高と、当該ユーザの通貨口座における一又は複数の取引の内容と、を関連付けたデータを、銀行サーバ3が有する記憶部上にデータベースとして記憶する。
【0050】
[決済処理の説明]
次に、情報処理システムSが暗号資産を用いて決済する処理を実行するための構成を以下に説明する。利用元ユーザ端末4は、利用元ユーザによる操作に応じて、決済要求を決済サーバ2に送信する。決済要求は、例えば、利用元ユーザのIDと、利用先ユーザのIDと、暗号資産を利用して利用先ユーザに支払う金額である決済金額と、を示す。また、例えば利用元ユーザ端末4から決済要求に必要な情報を取得したPOS端末が、決済要求を決済サーバ2に送信してもよい。また、利用元ユーザ端末4又はPOS端末に限られず、その他の端末が決済要求を送信してもよい。
【0051】
決済サーバ2は、利用元ユーザ端末4又はその他の端末から受信した決済要求が示す決済金額に対応する暗号資産を利用元ユーザの暗号資産口座から利用先ユーザの暗号資産口座に移転するための移転要求を暗号資産管理サーバ1に送信する。移転要求は、例えば、決済金額と、利用元ユーザのIDと、利用先ユーザのIDと、を示す。
【0052】
暗号資産管理サーバ1において、受信部131は、決済サーバ2から移転要求を受信する。暗号資産処理部132は、受信部131が受信した移転要求が示す決済金額に対応する暗号資産を、利用元ユーザの暗号資産口座から利用先ユーザの暗号資産口座に移転する。暗号資産処理部132は、例えば、ブロックチェーンを用いて暗号資産を管理する場合に、ブロックチェーンに対して、決済金額に対応するコインの保有者を利用元ユーザから利用先ユーザに変更することを示すブロックを追加する。
【0053】
また、暗号資産処理部132は、例えば、データベースを用いて暗号資産を管理する場合に、データベースにおいて、利用元ユーザの暗号資産口座から決済金額に対応するコインを減算し、利用先ユーザの暗号資産口座に決済金額に対応するコインを加算してもよい。
【0054】
[変換処理の説明]
次に、情報処理システムSが暗号資産を通貨に変換する処理を実行するための構成を以下に説明する。利用先ユーザは、暗号資産を通貨に変換することを希望する場合に、利用先ユーザ端末5において、利用先ユーザに関連付けられた暗号資産口座において暗号資産として管理されている合計金額のうち、通貨への変換を希望する金額である変換対象金額を入力する。
【0055】
図4は、利用先ユーザ端末5が表示する画面の模式図である。利用先ユーザ端末5は、利用先ユーザの暗号資産口座において管理されている暗号資産の合計金額(保有金額)を表示部上に表示する。
【0056】
利用先ユーザ端末5は、変換対象金額の入力を受け付ける。利用先ユーザ端末5は、利用先ユーザによる操作部の操作に応じて、変換要求を暗号資産管理サーバ1に送信する。変換要求は、例えば、利用先ユーザのIDと、変換対象とする暗号資産の金額である変換対象金額と、を示す情報である。
【0057】
暗号資産管理サーバ1において、受信部131は、利用先ユーザ端末5から変換要求を受信する。取得部133は、受信部131が受信した変換要求が含む利用先ユーザのID及び変換対象金額(第1金額)を取得する。
【0058】
取得部133は、変換要求が含む変換対象金額に対応する一又は複数のコイン(資産単位)が過去に決済に利用された履歴である利用履歴を取得する。取得部133は、例えば、ネットワーク上の一又は複数の記憶装置上に記憶されたブロックチェーンから、暗号資産が移転された履歴である移転履歴を取得し、取得した移転履歴から利用履歴を取得する。
【0059】
図5は、例示的な移転履歴の模式図である。移転履歴は、例えば、コインを識別するためのID(コインID)と、決済への利用によりコインが移転された日時と、コインの移転元のユーザのID(移転元ユーザID)と、コインの移転先のユーザのID(移転先ユーザID)と、を関連付けた情報である。
【0060】
取得部133は、例えば、全ての移転履歴から、変換要求が含む利用先ユーザのIDが最後に移転先のユーザになっている一又は複数のコインのIDを特定する。そして取得部133は、全ての移転履歴の中から、特定した一又は複数のコインのIDに関連付けられている移転履歴であって、当該一又は複数のコインが店舗における決済に利用されたことを示す移転履歴(例えば、移転先のユーザが店舗である移転履歴)を、利用先ユーザが保有する一又は複数のコインが過去に決済に利用された利用履歴として取得する。
【0061】
図5に例示した移転履歴において、ユーザα、βは店舗でないユーザであり、店舗γは店舗であるユーザである。取得部133は、例えば、記憶部12においてユーザのIDに関連付けて予め記憶されている、ユーザが店舗であるか否かを示す情報に基づいて、各ユーザが店舗であるか否かを判定する。コインIDが102及び103のコインは、店舗でないユーザから店舗であるユーザに移転されたため、過去に決済に利用されたコインである。一方、コインIDが101のコインは、店舗でないユーザ間で移転されたため、過去に決済に利用されていないコインである。
【0062】
また、取得部133は、予め登録された決済サーバ2から受信した移転要求に応じて移転されたコインを、過去に決済に利用されたコインと判定してもよい。この場合に、移転履歴は、移転要求の送信元を示す情報を含む。
【0063】
また、取得部133は、利用先ユーザが保有する一又は複数のコインが過去に決済に利用された利用履歴のうち、当該一又は複数のコインが所定条件を満たす店舗(例えば、地域デジタル通貨に対応する地域内にある店舗)における決済に利用されたことを示す利用履歴を取得してもよい。取得部133は、例えば、記憶部12においてユーザのIDに関連付けて予め記憶されている、ユーザである店舗の所在地等を示す属性情報に基づいて、ユーザである店舗が所定条件を満たすか否かを判定する。これにより、暗号資産管理サーバ1は、例えば暗号資産が地域外の店舗で利用可能な場合であっても、当該地域内の店舗の利用履歴のみを換算条件に反映することができる。
【0064】
決定部134は、暗号資産を通貨に換算するための換算条件を決定する。換算条件は、暗号資産を通貨に変換できるか否かと、暗号資産を通貨に変換するための手数料と、の少なくとも一方を示す。ここで決定部134は、取得部133が取得した変換対象金額及び利用履歴に基づいて、変換対象金額に対応する暗号資産が過去に決済に利用されたか否かによって異なる換算条件を決定する。
【0065】
図6(a)、図6(b)は、例示的な換算条件の模式図である。図6(a)の換算条件は、過去に決済に利用されていない一又は複数のコインの変換を拒否する(変換不可能にする)ことを示し、過去に決済に利用された一又は複数のコインの変換を許可する(変換可能にする)ことを示す。
【0066】
図6(a)の例では、決定部134は、利用先ユーザが保有する一又は複数のコインそれぞれに対して、当該コインが過去に決済に利用されていないことを利用履歴が示す場合に変換を拒否する換算条件を決定し、当該コインが過去に決済に利用されたことを利用履歴が示す場合に変換を許可する換算条件を決定する。このように、暗号資産管理サーバ1は、暗号資産が過去に決済に利用されたことを条件として通貨への変換を可能にすることによって、暗号資産の決済への利用を促進できる。
【0067】
図6(b)の換算条件は、過去に決済に利用されていない一又は複数のコインを変換するための第1手数料と、過去に決済に利用された一又は複数のコインを変換するための第2手数料であって、第1手数料よりも安い第2手数料と、を示している。
【0068】
換算条件は、変換対象金額から手数料を算出するための計算式を示してもよい。この場合に、換算条件が示す計算式は、例えば、変換対象金額が大きいほど高くなるように手数料を算出する。
【0069】
また、換算条件は、暗号資産を通貨に変換するための、手数料が反映されている変換比率を示してもよい。この場合に、手数料が安いほど暗号資産から通貨への変換比率が高くなり、手数料が高いほど暗号資産から通貨への変換比率が低くなる。また、手数料は、暗号資産から通貨への変換ごとに課される料金(1回の変換につき100円等)であってもよい。
【0070】
図6(b)の例では、決定部134は、利用先ユーザが保有する一又は複数のコインそれぞれに対して、当該コインが過去に決済に利用されていないことを利用履歴が示す場合に第1手数料の換算条件を決定し、当該コインが過去に決済に利用されたことを利用履歴が示す場合に第1手数料より安い第2手数料の換算条件を決定する。このように、暗号資産管理サーバ1は、暗号資産が過去に決済に利用されたことを条件として換算条件をユーザにとって有利にすることによって、暗号資産の決済への利用を促進できる。
【0071】
決定部134は、暗号資産が過去に決済に利用されたか否かに加えて、その他の情報に基づいて換算条件を決定してもよい。決定部134は、例えば、変換対象金額に対応する一又は複数のコインが過去に決済に利用された回数に基づいて、換算条件を決定してもよい。この場合に、決定部134は、取得部133が取得した利用履歴から、各コインが過去に決済に利用された回数(例えば、利用履歴において各コインが店舗であるユーザに移転された数)を算出する。決定部134は、例えば、コインが過去に決済に利用された回数が多いほど手数料を安く、コインが過去に決済に利用された回数が少ないほど手数料を高くする。このように、暗号資産管理サーバ1は、例えば暗号資産が決済に利用された回数が多いほど換算条件をユーザにとって有利にすることによって、暗号資産の決済への利用を促進できる。
【0072】
また、決定部134は、変換対象金額に対応する一又は複数のコインが暗号資産口座に加算された加算日時と、変換対象金額に対応する一又は複数のコインに設定された有効期限と、の少なくとも一方に基づいて、換算条件を決定してもよい。有効期限は、コインが決済に利用可能な期限であり、コインに予め関連付けられている。
【0073】
決定部134は、例えば、変換対象金額に対応する一又は複数のコインそれぞれに対して、図5の例において利用先ユーザのIDが最後に移転先のユーザになっている移転履歴の移転日時を、利用先ユーザの暗号資産口座に加算された加算日時として特定する。また、決定部134は、例えば、変換対象金額に対応する一又は複数のコインそれぞれに予め関連付けられた有効期限を取得する。決定部134は、例えば、加算日時が古いほど又は有効期限が近いほど手数料を安く、加算日時が新しいほど又は有効期限が遠いほど手数料を高くする。
【0074】
このように、暗号資産管理サーバ1は、例えば暗号資産口座に加算されてから間もないコインを変換するための手数料を高くし、又は有効期限が近付いたコインを変換するための手数料を安くすることにより、暗号資産が早期に通貨に変換されることを抑えることができる。
【0075】
また、決定部134は、暗号資産から通貨への変更を希望している利用先ユーザである店舗の種別に基づいて、換算条件を決定してもよい。この場合に、店舗には、換算条件を決定するための種別(例えば、第1店舗グループ又は第2店舗グループ)が予め関連付けられている。決定部134は、利用先ユーザである店舗に関連付けられた種別に応じて、異なる換算条件を決定する。決定部134は、例えば、店舗の種別が第1店舗グループである場合の手数料を、店舗の種別が第2店舗グループである場合の手数料よりも安くする。これにより、暗号資産管理サーバ1は、店舗ごとに換算条件を変えることを可能にし、換算条件の自由度を向上させることができる。
【0076】
また、決定部134は、変換対象金額の高さに基づいて、換算条件を決定してもよい。決定部134は、例えば、変換対象金額が高いほど手数料を安く、変換対象金額が低いほど手数料を高くする。このように、暗号資産管理サーバ1は、例えば暗号資産を多く貯めるほど換算条件をユーザにとって有利にすることによって、暗号資産が早期に通貨に変換されることを抑えることができる。
【0077】
利用先ユーザの暗号資産口座において管理されている複数のコイン(利用先ユーザが保有する複数のコイン)の利用履歴が異なる場合に、当該複数のコインの換算条件が互いに異なり得る。利用先ユーザが保有する複数のコインの換算条件が互いに異なる場合に、選択部135は、換算条件を考慮して、当該複数のコインの中から、変換対象金額に対応する一又は複数のコインを選択する。暗号資産管理サーバ1は、選択部135が選択した一又は複数のコインを用いて以降の処理を行う。
【0078】
図7は、選択部135がコインを選択する方法を説明するための模式図である。図7の例では、合計10000コインのうち、5000コインが変換不可能であり、4000コインが第1手数料で変換可能であり、1000コインが第1手数料よりも安い第2手数料で変換可能である。
【0079】
選択部135は、変換対象金額に対応する一又は複数のコインを変換するための手数料が最も安くなるように、利用先ユーザが保有する複数のコインから変換対象金額に対応する一又は複数のコインを選択する。図7の例において変換対象金額が2000コインである場合に、選択部135は、第2手数料で変換可能な1000コインと、第1手数料で変換可能な1000コインと、を選択する。これにより、暗号資産管理サーバ1は、変換対象金額に対応する一又は複数のコインを変換するための手数料を安くすることができ、ユーザに対してコインを選択する手間を掛けることなくユーザの利益を向上させることができる。
【0080】
変換対象金額に対応する変換後金額は、暗号資産管理サーバ1又は銀行サーバ3によって算出される。暗号資産管理サーバ1が変換後金額を算出する場合に、算出部136は、決定部134が決定した換算条件に従って、変換対象金額に対応する、所定の通貨として管理される金額である変換後金額(第2金額)を算出する。本実施形態において、変換後金額の通貨は日本の法定通貨である日本円であるが、その他の通貨であってもよい。
【0081】
算出部136は、例えば、決定部134が決定した換算条件が示す、手数料が反映された変換比率を用いて、変換対象金額から変換後金額を算出する。また、算出部136は、換算条件が変換を拒否することを示す場合に、変換後金額の算出を行わず、又は変換後金額を0円とする。
【0082】
変換対象金額に対応する複数のコインの換算条件が互いに異なる場合に、算出部136は、当該複数のコインそれぞれの換算条件に従って、変換対象金額に対応する変換後金額を算出する。図7の例では、算出部136は、1000コインを100コイン=80円の変換比率で変換し、1000コインを100コイン=90円に変換比率で変換することにより、1700円の変換後金額を算出する。
【0083】
銀行サーバ3が変換後金額を算出する場合に、算出部136は、例えば、決定部134が決定した換算条件が示す計算式を用いて、変換対象金額から手数料を算出する。手数料は、例えば、変換対象金額が大きいほど高い金額である。変換対象金額に対応する複数のコインの換算条件が互いに異なる場合に、算出部136は、当該複数のコインそれぞれの換算条件に従って、変換対象金額から手数料を算出する。
【0084】
出力部137は、暗号資産が過去に決済に利用されたか否かによって異なる上述の換算条件に従って、暗号資産の変換対象金額を利用先ユーザに関連付けられた暗号資産口座から減算するとともに、通貨の変換後金額を利用先ユーザに関連付けられた通貨口座に加算するための指示を出力する。出力部137は、例えば、利用先ユーザの暗号資産口座から減算する変換後金額を、暗号資産処理部132に通知する。暗号資産処理部132は、ブロックチェーンに対して、変換対象金額に対応するコインを利用先ユーザから剥奪することを示すブロックを追加することにより、利用先ユーザの暗号資産口座から変換対象金額を減算する。
【0085】
暗号資産管理サーバ1が変換後金額を算出する場合に、出力部137は、例えば、変換後金額を示す送金指示を銀行サーバ3に送信することにより、利用先ユーザの通貨口座に変換後金額を加算する。銀行サーバ3は、暗号資産管理サーバ1から受信した送金指示が示す変換後金額に対応する通貨を、所定の通貨口座から利用先ユーザの通貨口座に送金する。送金元の通貨口座は、例えば、暗号資産の発行元であるユーザ(自治体、会社等)に関連付けられた通貨口座であり、暗号資産の原資が予め管理されている。
【0086】
銀行サーバ3が変換後金額を算出する場合に、出力部137は、例えば、変換対象金額から手数料を減算した金額を示す送金指示を銀行サーバ3に送信することにより、利用先ユーザの通貨口座に変換後金額を加算する。銀行サーバ3は、所定の変換比率を用いて、暗号資産管理サーバ1から受信した送金指示が示す、変換対象金額から手数料を減算した金額から、変換後金額を算出する。銀行サーバ3は、算出した変換後金額に対応する通貨を、所定の通貨口座から利用先ユーザの通貨口座に送金する。また、銀行サーバ3とは異なるサーバが、変換対象金額から手数料を減算した金額から変換後金額を算出し、算出した変換後金額を銀行サーバ3に通知してもよい。
【0087】
これにより、暗号資産管理サーバ1は、例えば過去に決済に利用された暗号資産のみを変換可能にしたり、過去に決済に利用された暗号資産を変換するための手数料を安くしたりすることにより、暗号資産を通貨に変換可能にしながら暗号資産の決済への利用を促進できる。
【0088】
[情報処理方法のシーケンス]
図8は、本実施形態に係る情報処理システムSが実行する例示的な情報処理方法のシーケンス図である。利用先ユーザ端末5は、変換対象金額の入力を受け付ける(S11)。利用先ユーザ端末5は、利用先ユーザによる操作部の操作に応じて、変換要求を暗号資産管理サーバ1に送信する。変換要求は、例えば、利用先ユーザのIDと、変換対象とする暗号資産の金額である変換対象金額と、を示す情報である。
【0089】
暗号資産管理サーバ1において、受信部131は、利用先ユーザ端末5から変換要求を受信する。取得部133は、受信部131が受信した変換要求が含む利用先ユーザのID及び変換対象金額(第1金額)を取得する(S12)。
【0090】
取得部133は、変換要求が含む変換対象金額に対応する一又は複数のコイン(資産単位)が過去に決済に利用された履歴である利用履歴を取得する(S13)。取得部133は、例えば、ネットワーク上の一又は複数の記憶装置上に記憶されたブロックチェーンから、暗号資産が移転された履歴である移転履歴を取得し、取得した移転履歴から利用履歴を取得する。
【0091】
決定部134は、取得部133が取得した変換対象金額及び利用履歴に基づいて、変換対象金額に対応する暗号資産が過去に決済に利用されたか否かによって異なる換算条件を決定する(S14)。決定部134は、暗号資産が過去に決済に利用されたか否かに加えて、暗号資産が過去に決済に利用された回数や、暗号資産の加算日時又は有効期限に基づいて、換算条件を決定してもよい。
【0092】
利用先ユーザが保有する複数のコインの換算条件が互いに同じである場合に(S15のNO)、暗号資産管理サーバ1はステップS17に進む。利用先ユーザが保有する複数のコインの換算条件が互いに異なる場合に(S15のYES)、選択部135は、変換対象金額に対応する一又は複数のコインを変換するための手数料が最も安くなるように、当該複数のコインから変換対象金額に対応する一又は複数のコイン(資産単位)を選択する(S16)。暗号資産管理サーバ1は、選択部135が選択した一又は複数のコインを用いて以降の処理を行う。
【0093】
算出部136は、決定部134が決定した換算条件に従って、変換対象金額に対応する、所定の通貨として管理される金額である変換後金額(第2金額)を算出する(S17)。変換対象金額に対応する複数のコインの換算条件が互いに異なる場合に、算出部136は、当該複数のコインそれぞれの換算条件に従って、変換対象金額に対応する変換後金額を算出する。銀行サーバ3が変換後金額を算出する場合に、算出部136は、決定部134が決定した換算条件に従って、変換後金額に代えて、手数料を算出してもよい。
【0094】
出力部137は、例えば、ブロックチェーンに対して、変換対象金額に対応するコインを利用先ユーザから剥奪することを示すブロックを追加することにより、利用先ユーザの暗号資産口座から変換対象金額を減算する(S18)。
【0095】
出力部137は、例えば、変換後金額を利用先ユーザの通貨口座に加算するための送金指示を銀行サーバ3に送信することにより、利用先ユーザの通貨口座に変換後金額を加算する(S19)。銀行サーバ3は、暗号資産管理サーバ1から受信した送金指示が示す変換後金額に対応する通貨を、所定の通貨口座から利用先ユーザの通貨口座に送金する(S20)。銀行サーバ3が変換後金額を算出する場合に、銀行サーバ3は、暗号資産管理サーバ1から受信した送金指示が示す、変換対象金額から手数料を減算した金額から、変換後金額を算出する。銀行サーバ3は、算出した変換後金額に対応する通貨を、所定の通貨口座から利用先ユーザの通貨口座に送金してもよい。
【0096】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る情報処理システムSによれば、暗号資産管理サーバ1は、変換対象金額に対応する暗号資産が過去に決済に利用されたか否かによって異なる換算条件に従って、暗号資産の変換対象金額を通貨の変換後金額に変換する。これにより、情報処理システムSは、例えば過去に決済に利用された暗号資産のみを変換可能にしたり、過去に決済に利用された暗号資産を変換するための手数料を安くしたりすることにより、暗号資産を通貨に変換可能にしながら暗号資産の決済への利用を促進できる。
【0097】
<第1変形例>
本変形例において、暗号資産管理サーバ1は、利用先ユーザ端末5において利用先ユーザから変換対象金額の入力を受け付ける前に、利用先ユーザが保有している暗号資産の合計金額のうち通貨に変換可能な金額を利用先ユーザ端末5に通知する。以下、上述の実施形態とは異なる部分を主に説明する。
【0098】
決定部134は、利用先ユーザが保有する一又は複数のコインそれぞれの換算条件を決定した後に、利用先ユーザが保有する一又は複数のコインの合計金額のうち通貨に変換可能な金額である変換可能金額を決定する。決定部134は、例えば、換算条件が変換不可能であることを示していない一又は複数のコインに対応する金額を、変換可能金額として決定する。
【0099】
出力部137は、利用先ユーザが保有する一又は複数のコインの合計金額と、決定部134が決定した変換可能金額と、を利用先ユーザ端末5に通知する。
【0100】
図9は、利用先ユーザ端末5が表示する画面の模式図である。利用先ユーザ端末5は、暗号資産管理サーバ1から受信した合計金額及び変換可能金額を表示部上に表示する。
【0101】
利用先ユーザ端末5は、変換可能金額のうち、変換対象金額の入力を受け付ける。利用先ユーザ端末5は、変換可能金額を超える変換対象金額の入力を拒否してもよい。利用先ユーザ端末5は、利用先ユーザによる操作部の操作に応じて、変換要求を暗号資産管理サーバ1に送信する。暗号資産管理サーバ1において、取得部133は、受信部131が受信した変換要求が含む変換対象金額(第1金額)を取得する。
【0102】
本変形例によれば、暗号資産管理サーバ1は、変換対象金額の入力を受け付ける前に通貨に変換可能な金額を利用先ユーザに通知するため、通貨に変換可能な暗号資産の量を利用先ユーザに容易に把握させることができる。
【0103】
<第2変形例>
上述の実施形態では暗号資産管理サーバ1が暗号資産を通貨に変換する処理を行う情報処理装置として機能しているが、決済サーバ2が暗号資産を通貨に変換する処理を行う情報処理装置として機能してもよい。本変形例において、決済サーバ2の制御部(プロセッサ)は、上述の受信部131、暗号資産処理部132、取得部133、決定部134、選択部135、算出部136及び出力部137として機能する。
【0104】
本変形例によれば、決済サーバ2が暗号資産を用いて代金の決済を行う処理に加えて暗号資産を通貨に変換する処理を実行することができるため、装置間の通信による負荷や待ち時間を削減することができる。
【0105】
なお、本発明により、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献することが可能となる。
【0106】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0107】
S 情報処理システム
1 暗号資産管理サーバ
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
131 受信部
132 暗号資産処理部
133 取得部
134 決定部
135 選択部
136 算出部
137 出力部
2 決済サーバ
3 銀行サーバ
4 利用元ユーザ端末
5 利用先ユーザ端末

【要約】
【課題】暗号資産を通貨に変換可能にしながら、暗号資産の決済への利用を促進できるようにする。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る暗号資産管理サーバ1は、ユーザに関連付けられた暗号資産口座において暗号資産として管理されている第1金額と、暗号資産が決済に利用される単位である資産単位であって、第1金額に対応する一又は複数の資産単位が決済に利用された履歴と、を取得する取得部133と、第1金額に対応する一又は複数の資産単位が過去に決済に利用されたか否かによって異なる換算条件に従って、暗号資産の第1金額を暗号資産口座から減算するとともに、第1金額に対応する、所定の通貨として管理される第2金額をユーザに関連付けられた通貨口座に加算するための指示を出力する出力部137と、を有する。
【選択図】図2

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9