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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】演算装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/78 20060101AFI20221206BHJP
   B29C 45/74 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B29C45/78
B29C45/74
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022547312
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 JP2022021021
【審査請求日】2022-08-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】中村 京祐
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/246524(WO,A1)
【文献】特開2004-255607(JP,A)
【文献】特開2001-225372(JP,A)
【文献】特開平06-246808(JP,A)
【文献】特開2014-042998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、前記シリンダの周囲に配置されるヒータと、前記シリンダの内部に配置されるスクリュと、を備える射出成形機において、成形材料に加えられる熱量の割合を演算する演算装置であって、
加熱前の前記成形材料の温度及び前記シリンダから射出される前記成形材料の温度を温度情報として取得する温度取得部と、
前記スクリュを動作させるモータと前記ヒータの動作状態とを動作情報として取得する動作情報取得部と、
前記成形材料及び前記射出成形機の特性を特性情報として取得する特性情報取得部と、
取得された前記温度情報、前記動作情報、及び前記特性情報に基づいて、前記スクリュのせん断発熱量及び前記ヒータからのヒータ伝熱量を演算する演算部と、
演算結果を出力する出力部と、
を備える演算装置。
【請求項2】
前記演算部は、取得された前記温度情報、前記動作情報、及び前記特性情報に基づいて、前記成形材料のエネルギ変化量を算出する請求項1に記載の演算装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記せん断発熱量と前記ヒータ伝熱量との割合を演算し、
前記出力部は、演算された割合を出力する請求項1に記載の演算装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記ヒータによるヒータ発熱量及び前記せん断発熱量の和と前記エネルギ変化量との割合、及び前記ヒータ発熱量と前記ヒータ伝熱量の割合との少なくとも一方の割合を演算し、
前記出力部は、演算された割合を出力する請求項2に記載の演算装置。
【請求項5】
前記温度取得部は、前記シリンダから射出される前記成形材料の実測値を所定時間で平均した温度を温度情報として取得する請求項1に記載の演算装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記成形材料の前記シリンダに投入されるタイミングから前記シリンダの射出口に移動するタイミングの時間を開けて取得された加熱前の前記成形材料の温度及び射出時の前記成形材料の温度を温度情報として割合を演算する請求項1に記載の演算装置。
【請求項7】
前記演算部は、前記スクリュによる前記成形材料へのせん断トルクの伝達時間を用いて前記せん断発熱量を演算する請求項1に記載の演算装置。
【請求項8】
前記演算部は、前記ヒータによる前記成形材料への伝熱時間を用いて前記ヒータ発熱量を演算する請求項4に記載の演算装置。
【請求項9】
前記演算部は、1成形サイクルごとに前記成形材料のエネルギ変化量、前記スクリュのせん断発熱量、及び前記ヒータからのヒータ伝熱量を演算する請求項2に記載の演算装置。
【請求項10】
前記出力部は、前記演算部の演算結果を所定区間ごとに散布図で出力する請求項1に記載の演算装置。
【請求項11】
前記射出成形機に設定される成形条件を取得する成形条件取得部をさらに備え、
前記出力部は、前記演算部による演算結果を時系列的に配置して出力するとともに、配置された演算結果を時系列に沿って選択可能なカーソルと前記カーソルによって選択された演算結果に対応する成形条件を出力する請求項1に記載の演算装置。
【請求項12】
複数のカーソルによって選択された前記成形条件を比較する比較部をさらに備え、
前記出力部は、複数のカーソルの間で異なる成形条件を出力する請求項11に記載の演算装置。
【請求項13】
シリンダと、前記シリンダの周囲に配置されるヒータと、前記シリンダの内部に配置されるスクリュと、を備える射出成形機において、成形材料に加えられる熱量の割合を演算する演算装置としてコンピュータを動作させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
加熱前の前記成形材料の温度及び前記シリンダから射出される前記成形材料の温度を温度情報として取得する温度取得部、
前記スクリュを動作させるモータと前記ヒータの動作状態とを動作情報として取得する動作情報取得部、
前記成形材料及び前記射出成形機の特性を特性情報として取得する特性情報取得部、
取得された前記温度情報、前記動作情報、及び前記特性情報に基づいて、前記スクリュのせん断発熱量及び前記ヒータからのヒータ伝熱量を演算する演算部、
演算結果を出力する出力部、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、演算装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ホッパに入れられたペレットをシリンダ内で溶融して、金型に注入する射出成形機が知られている。射出成形機のシリンダの外周には、ヒータが配置される。ヒータがシリンダを加熱することにより、ペレット(成形材料)が溶融される。また、シリンダ内に配置されるスクリュを回転させることにより、成形材料が混錬されて、可塑化される。このように、成形材料は、ヒータからの伝熱と、スクリュ回転時のせん断作用により発生するせん断発熱とによって可塑化される。
【0003】
このような射出成形機の制御方法として、ヒータ熱量における加熱シリンダ温度と、予め測定されたシリンダ温度との温度差をせん断発熱による温度情報として検出する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-225372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、成形材料へ付与される熱における伝熱とせん断発熱の割合は、可塑化された成形材料の溶融状態(品質)と密接な関係がある。一般的には、伝熱主体で可塑化を行えば、良好な品質の成形材料が得られると言われている。一方で、せん断主体の場合には、効率的に可塑化を行うことができる。
【0006】
特許文献1では、伝熱とせん断発熱とのエネルギ量が具体的に計算されない。そのため、伝熱とせん断発熱とを成形条件の決定の助けとすることが難しい。伝熱とせん断発熱との関係は品質と効率とのトレードオフの関係にあることから、伝熱とせん断発熱との関係を成形条件の指標として容易に得ることができれば好適である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示は、シリンダと、その周囲に配置されるヒータと、前記シリンダの内部に配置されるスクリュと、を備える射出成形機において、成形材料に加えられる熱量の割合を演算する演算装置であって、加熱前の前記成形材料の温度及び前記シリンダから射出される前記成形材料の温度を温度情報として取得する温度取得部と、前記スクリュを動作させるモータと前記ヒータの動作状態とを動作情報として取得する動作情報取得部と、前記成形材料及び前記射出成形機の特性を特性情報として取得する特性情報取得部と、取得された前記温度情報、前記動作情報、及び前記特性情報に基づいて、前記スクリュのせん断発熱量及び前記ヒータからのヒータ伝熱量を演算する演算部と、演算結果を出力する出力部と、を備える演算装置に関する。
【0008】
(2)また、本開示は、シリンダと、その周囲に配置されるヒータと、前記シリンダの内部に配置されるスクリュと、を備える射出成形機において、成形材料に加えられる熱量の割合を演算する演算装置としてコンピュータを動作させるプログラムであって、前記コンピュータを、加熱前の前記成形材料の温度及び前記シリンダから射出される前記成形材料の温度を温度情報として取得する温度取得部、前記スクリュを動作させるモータと前記ヒータの動作状態とを動作情報として取得する動作情報取得部、前記成形材料及び前記射出成形機の特性を特性情報として取得する特性情報取得部、取得された前記温度情報、前記動作情報、及び前記特性情報に基づいて、前記スクリュのせん断発熱量及び前記ヒータからのヒータ伝熱量を演算する演算部、演算結果を出力する出力部、として機能させるプログラムに関する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、伝熱とせん断発熱との関係を成形条件の指標として容易に得ることが可能な演算装置及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る制御装置を含む射出成形機を示す概略図である。
図2】一実施形態の制御装置のヒータの発熱量と放熱量の関係を示す概略図である。
図3】一実施形態の制御装置の構成を示すブロック図である。
図4】一実施形態の制御装置の時間の流れと温度と発熱量との関係を示すグラフである。
図5】一実施形態の制御装置の出力部によって出力される画面を示す画面図である。
図6】一実施形態の制御装置の出力部によって出力される画面を示す画面図の他の例である。
図7】一実施形態の制御装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態に係る演算装置1及びプログラムについて、図1から図7を参照して説明する。
まず、本実施形態により制御される射出成形機について説明する。
射出成形機10は、ペレット(以下、成形材料ともいう)を溶融して金型(図示せず)に注入することで成形する装置である。射出成形機10は、例えば、図1に示すように、シリンダ101と、ヒータ102と、安全カバー103と、を備える。
【0012】
シリンダ101は、例えば、筒状体である。シリンダ101の軸方向一端部は、端部に向けて縮径する。シリンダ101は、軸方向に沿って、内部にスクリュ(図示せず)を有する。スクリュは、溶融した成形材料を攪拌しつつシリンダ101の一端側に移動させる。
【0013】
ヒータ102は、シリンダ101の周囲に配置される。ヒータ102は、例えば、シリンダ101の軸方向に沿って、複数配置される。具体的には、ヒータ102は、シリンダ101の軸方向先端のノズル部から基端まで複数配置される。本実施形態において、ヒータ102はシリンダ101の外周を覆うように、軸方向に沿って4つ配置される。ヒータ102は、例えば、シリンダ101を200度以上に加熱する。
【0014】
安全カバー103は、ヒータ102の周囲に配置される凹状体である。安全カバー103は、比較的高温となるヒータ102への接触を回避するために配置される。
【0015】
以上の射出成形機10によれば、ヒータ102によって200度以上に加熱されたシリンダ101の内部において、成形材料が溶融される。スクリュは、溶融した成形材料をシリンダ101の一端から金型に注入する。これにより、射出成形機10は、例えば、プラスチック製品を成形する。ヒータ102の周囲には、安全カバー103が配置される。
【0016】
ここで、図2に示すように、成形材料が受け取る総熱量Eは、ヒータ102からの伝熱量をE、せん断発熱量をEとすると、以下の数1で示され得る。
【0017】
【数1】
【0018】
以下の実施形態に係る演算装置1は、成形材料の温度変化と、上記相関を用いて、伝熱量Eを演算する。これにより、伝熱量とせん断発熱量との割合を演算するものである。これにより、伝熱とせん断発熱との関係を成形条件の指標として容易に得ることを図ったものである。
【0019】
次に、本開示の一実施形態に係る演算装置1について、図1から図7を参照して説明する。
演算装置1は、射出成形機10において、成形材料に加えられる熱量の割合を演算する装置である。演算装置1は、図3に示すように、温度取得部11と、成形条件取得部12と、動作情報取得部13と、特性情報格納部14と、特性情報取得部15と、演算部16と、出力部17と、比較部18と、を備える。
【0020】
温度取得部11は、例えば、CPUが動作することにより実現される。温度取得部11は、加熱前の前記成形材料の温度及びシリンダ101から射出される成形材料の温度を温度情報として取得する。温度取得部11は、例えば、シリンダ101の材料投入口に投入される成形材料の温度を取得する。温度取得部11は、例えば、シリンダ101の材料投入口に配置されるセンサ(図示せず)の実測温度を取得する。また、温度取得部11は、例えば、シリンダ101から射出される成形材料の温度を取得する。温度取得部11は、例えば、シリンダ101の先端に配置されたセンサ(図示せず)の実測温度を取得する。温度取得部11は、例えば、シリンダ101から射出される成形材料の実測値を所定時間で平均した温度を温度情報として取得する。
【0021】
成形条件取得部12は、例えば、CPUが動作することにより実現される。成形条件取得部12は、射出成形機10に設定される成形条件を取得する。成形条件取得部12は、例えば、計量ストローク、計量背圧、冷却時間、及び計量回転数等を成形条件として取得する。
【0022】
動作情報取得部13は、例えば、CPUが動作することにより実現される。動作情報取得部13は、スクリュを動作させるモータとヒータ102の動作状態とを動作情報として取得する。動作情報取得部は、スクリュを回転駆動するモータの電流負荷率、スクリュ回転角速度、各ヒータ102の稼働率をサンプリング周期毎に取得する。
【0023】
特性情報格納部14は、例えば、ハードディスク等の記憶媒体である。特性情報格納部14は、射出成形機10の特性を特性情報として格納する。特性情報格納部14は、例えば、成形材料の比熱、溶融時の密度、モータに関する情報(トルク定数、減速比、機械効率)、ヒータ102に関する情報(ヒータ容量)、加熱シリンダ101やスクリュの形状、等を特性情報として格納する。
【0024】
特性情報取得部15は、例えば、CPUが動作することにより実現される。特性情報取得部15は、射出成形機10の特性情報を取得する。特性情報取得部15は、例えば、特性情報格納部14から特性情報を読み出すことにより特性情報を取得する。
【0025】
演算部16は、例えば、CPUが動作することにより実現される。演算部16は、取得された温度情報、動作情報、及び特性情報に基づいて、成形材料のエネルギ変化量、スクリュのせん断発熱量、及びヒータ102からのヒータ伝熱量を演算するとともに、せん断発熱量とヒータ伝熱量との割合を演算する。また、演算部16は、取得された温度情報、動作情報、及び特性情報に基づいて、成形材料のエネルギ変化量、スクリュのせん断発熱量、ヒータ102によるヒータ発熱量、及びヒータ102からのヒータ伝熱量を演算するとともに、ヒータ発熱量及びせん断発熱量の和とエネルギ変化量との割合、及びヒータ発熱量とヒータ伝熱量の割合とを演算する。演算部16は、例えば、1成形サイクルごとに成形材料のエネルギ変化量、スクリュのせん断発熱量、及びヒータからのヒータ伝熱量を演算する。演算部16は、例えば、成形材料のシリンダ101に投入されるタイミングからシリンダ101の射出口に移動するまでのタイミングの時間差を開けて取得された加熱前の成形材料の温度及び射出時の前記成形材料の温度を温度情報として割合を演算する。すなわち、演算部16は、成形材料の投入から射出までの移動時間を考慮して、移動前の成形材料の温度と移動後の成形材料の温度とを温度情報として割合を演算する。また、演算部16は、例えば、スクリュによる成形材料へのせん断トルクの伝達時間を用いてせん断発熱量を演算する。また、演算部16は、ヒータによる成形材料への伝熱時間を用いてヒータ発熱量を演算する。演算部16は、例えば、図4に示すように、所定区間(1成形サイクル)ごとの演算結果を演算する。図4において、演算部16は、例えば、投入口から投入された成形材料について、3サイクルで射出される場合に、成形材料の投入から射出までの移動時間を考慮して、エネルギ変化量を求めている。また、3サイクル分の動作情報を使用して、せん断発熱量およびヒータ発熱量を求めている。演算部16は、エネルギ変化量演算部161と、せん断発熱量演算部162と、ヒータ伝熱量演算部163と、ヒータ発熱量演算部164と、割合演算部165と、を備える。
【0026】
エネルギ変化量演算部161は、成形材料のエネルギ変化量として、成形材料の可塑化に用いられた熱量を演算する。エネルギ変化量演算部161は、例えば、エネルギ変化量Eについて、成形材料の質量m、成形材料の比熱c、材料投入口とシリンダ101の先端との成形材料の温度差ΔTとして、以下の数2を演算する。ここで、成形材料の質量mは、計量体積Vと成形材料の溶融時密度ρの積によって演算されてもよい。なお、比熱cは、一定ではなく、温度依存で変化する。エネルギ変化量演算部161は、例えば、入口温度から出口温度の平均値によって求められる比熱cを用いて演算する。
【0027】
【数2】
【0028】
せん断発熱量演算部162は、動作情報及び特性情報に基づいて、せん断発熱量を演算する。せん断発熱量演算部162は、例えば、計量時のスクリュトルクTと回転角速度ωとを時間積分することにより、せん断発熱量Eを演算する。なお、せん断発熱量演算部162は、成形材料に加えられたトルクを正確に演算するため、予め各回転速度で測定したスクリュ空転時のトルクを用いて、摩擦トルク分を計量時のスクリュトルクから差し引いてせん断発熱量Eを演算してもよい。せん断発熱量演算部162は、せん断発熱量Eについて、スクリュ回転モータのトルク定数K、計量時のモータの電流値r、空転時のモータの電流値r、モータとスクリュ間の減速比R、スクリュの回転角速度ω、機械効率η、計量開始時刻T、計量終了時刻Tとして、以下の数3又は数4で演算されてもよい。なお、空転時のモータの電流値rは、機種、スクリュサイズ、スクリュ形状、及び回転数に応じて事前に測定される値であってよい。また、せん断発熱量Eは、スクリュトルクから加速トルク分をさらに差し引いて求められてもよい。
【0029】
【数3】
【数4】
【0030】
ヒータ伝熱量演算部163は、ヒータ102の伝熱量を演算する。ヒータ伝熱量演算部163は、演算されたエネルギ変化量Eからせん断発熱量Eの差を求めることにより、ヒータ伝熱量Eを演算する。
【0031】
ヒータ発熱量演算部164は、各ヒータ102の稼働率と、ヒータ102の容量との積を時間積分することにより、ヒータ102の総発熱量EHiを演算する。ヒータ発熱量演算部164は、ヒータ102の容量W、各ヒータ102の稼働率r,計算開始時刻t,計算終了時刻tとして、以下の数5を演算することにより求められてもよい。また、ヒータ発熱量演算部164は、動作情報として取得した成形時の電源電圧を補正することにより、ヒータ102の総発熱量EHiを求めてもよい。
【0032】
【数5】
【0033】
割合演算部165は、成形材料のエネルギ変化量におけるヒータ102の伝熱量とせん断発熱量との割合を演算する。また、割合演算部165は、成形材料に伝達される可塑化時のエネルギの効率を示す可塑化エネルギ効率を演算する。割合演算部165は、例えば、ヒータ102の発熱量E及びせん断発熱量Eの和とエネルギ変化量Eとの比を演算することにより、可塑化エネルギ効率を演算する。また、割合演算部165は、成形材料に伝達される可塑化時のヒータのエネルギ効率を演算する。割合演算部165は、例えば、ヒータ102の発熱量Eとヒータ102の伝熱量Eとの比を演算することにより、ヒータエネルギ効率を演算する。
【0034】
出力部17は、例えば、CPUが動作することにより実現される。出力部17は、演算結果を出力する。出力部17は、例えば、ディスプレイ等の表示装置に演算結果を出力する。出力部17は、例えば、演算部16の演算結果を所定区間ごとに散布図で出力する。また、出力部17は、演算部16による演算結果を時系列的に配置するとともに、配置された演算結果を時系列に沿って選択可能なカーソルを出力する。出力部17は、例えば、数値、円グラフ、又は棒グラフで演算結果を示す。また、出力部17は、例えば、図5に示すように、所定区間(サイクル)ごとの演算結果を散布図として出力する。出力部17は、カーソルを用いて各サイクルを選択可能に示すとともに、選択されたサイクルにおける伝熱量、せん断発熱量、伝熱量及びせん断発熱量の割合、可塑化エネルギ効率、ヒータ102のエネルギ効率、及び成形条件を出力する。
【0035】
比較部18は、例えば、CPUが動作することにより実現される。比較部18は、複数のカーソルによって選択された成形条件を比較する。比較部18は、例えば、図6に示すように、複数のカーソルで選択された所定区間の演算結果及び成形条件を比較する。
【0036】
以上の比較部18及び出力部17によれば、出力部17は、複数のカーソルの間で異なる成形条件を出力する。出力部17は、例えば、図6に示すように、2つの所定区間において計量回転数、計量背圧について異なる成形条件として出力する。
【0037】
次に、演算装置1による処理の流れについて、図7を参照して説明する。
まず、特性情報取得部15は、特性情報を取得する(ステップS1)。次いで、温度取得部11は、温度情報を取得する(ステップS2)。次いで、成形条件取得部12は、成形条件を取得する(ステップS3)。
【0038】
次いで、エネルギ変化量演算部161は、エネルギ変化量を演算する(ステップS4)。次いで、ヒータ発熱量演算部164は、ヒータ発熱量を演算する(ステップS5)。次いで、せん断発熱量演算部162は、せん断発熱量を演算する(ステップS6)。次いで、ヒータ伝熱量演算部163は、ヒータ伝熱量を演算する(ステップS7)。次いで、割合演算部165は、せん断発熱量とヒータ伝熱量との割合、ヒータ発熱量及びせん断発熱量の和とエネルギ変化量との割合、及びヒータ発熱量とヒータ伝熱量の割合を演算する(ステップS8)。次いで、出力部17は、演算結果を出力する(ステップS9)。
【0039】
次いで、終了するか否かが判断される(ステップS10)。終了する場合(ステップS10:YES)、本フローによる処理は、終了する。一方、終了しない場合(ステップS10:NO)、処理は、ステップS2に戻る。
【0040】
次に、本実施形態のプログラムについて説明する。
演算装置1に含まれる各構成は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせによりそれぞれ実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0041】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、表示プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0042】
以上、一実施形態に係る演算装置1及びプログラムによれば、以下の効果を奏する。
(1)シリンダ101と、その周囲に配置されるヒータ102と、シリンダ101の内部に配置されるスクリュと、を備える射出成形機10において、成形材料に加えられる熱量の割合を演算する演算装置1であって、加熱前の成形材料の温度及びシリンダ101から射出される成形材料の温度を温度情報として取得する温度取得部11と、スクリュを動作させるモータとヒータ102の動作状態とを動作情報として取得する動作情報取得部13と、成形材料及び射出成形機10の特性を特性情報として取得する特性情報取得部15と、取得された温度情報、動作情報、及び特性情報に基づいて、成形材料のエネルギ変化量、スクリュのせん断発熱量、及びヒータ102からのヒータ伝熱量を演算するとともに、せん断発熱量とヒータ伝熱量との割合を演算する演算部16と、演算結果を出力する出力部17と、を備える。これにより、伝熱とせん断発熱との関係を成形条件の指標として容易に得ることができる。
【0043】
(2)演算部16は、取得された温度情報、動作情報、及び特性情報に基づいて、成形材料のエネルギ変化量を算出する。これにより、成形材料に対するエネルギ効率を容易に得ることができる。
【0044】
(3)演算部16は、せん断発熱量とヒータ伝熱量との割合を演算し、出力部17は、演算された割合を出力する。これにより、伝熱とせん断発熱との関係を成形条件の指標としてより分かりやすい値として得ることができる。
【0045】
(4)演算部16は、ヒータ発熱量及びせん断発熱量の和とエネルギ変化量との割合、及びヒータ発熱量とヒータ伝熱量の割合との少なくとも一方の割合を演算し、出力部17は、演算された割合を出力する。これにより、成形条件の指標について、より詳細な情報を容易に得ることができる。
【0046】
(5)温度取得部11は、シリンダ101から射出される成形材料の実測値を所定時間で平均した温度を温度情報として取得する。これにより、成形材料の温度を精度よく得ることができる。
【0047】
(6)演算部16は、成形材料のシリンダ101に投入されるタイミングからシリンダ101の射出口に移動するタイミングの時間を開けて取得された加熱前及び射出時の成形材料の温度を温度情報として割合を演算する。これにより、投入口から投入される成形材料に着目して、シリンダ101内を移動した後に射出される成形材料の温度変化を温度情報として得ることができるので、エネルギ変化量を精度よく演算することができる。
【0048】
(7)演算部16は、スクリュによる成形材料へのせん断トルクの伝達時間を用いてせん断発熱量を演算する。これにより、せん断発熱量を精度よく演算することができる。
【0049】
(8)演算部16は、ヒータ102による成形材料への伝熱時間を用いてヒータ発熱量を演算する。これにより、ヒータ発熱量を精度よく演算することができる。
【0050】
(9)演算部16は、計量及び射出を1サイクルとして、1サイクルごとに成形材料のエネルギ変化量、スクリュのせん断発熱量、及びヒータからのヒータ伝熱量を演算する。これにより、サイクルごとに成形条件の指標を演算することができるので、後の成形条件の検証をより効率的にすることができる。
【0051】
(10)出力部17は、演算部16の演算結果を所定区間ごとに散布図で出力する。これにより、演算部16の演算結果をより分かりやすく出力することができる。
【0052】
(11)演算装置1は、射出成形機10に設定される成形条件を取得する成形条件取得部12をさらに備え、出力部17は、演算部16による演算結果を時系列的に配置して出力するとともに、配置された演算結果を時系列に沿って選択可能なカーソルとカーソルによって選択された演算結果に対応する成形条件を出力する。これにより、演算部16の演算結果をより分かりやすく出力することができる。
【0053】
(12)演算装置1は、複数のカーソルによって選択された成形条件を比較する比較部18をさらに備え、出力部17は、複数のカーソルの間で異なる成形条件を出力する。これにより、演算部16の演算結果をより分かりやすく出力することができる。
【0054】
以上、本開示の演算装置及びプログラムの好ましい各実施形態につき説明したが、本開示は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、上記実施形態において、演算部16は、ヒータ発熱量及びせん断発熱量の和とエネルギ変化量との割合、及びヒータ発熱量とヒータ伝熱量の割合との少なくとも一方の割合を演算するようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態において、温度取得部11は、成形機が材料投入口の温度を制御するための、制御用温度センサの実測温度を取得してもよい。また、温度取得部11は、材料投入口の設定温度として、成形機に入力された温度(定数)を取得してもよい。また、温度取得部11は、使用者により入力された任意の温度(定数)を取得してもよい。これにより、樹脂の温度を測定するための追加のセンサを必要としないため、低コスト化を図ることができる。
【0056】
また、上記実施形態において、温度取得部11は、成形機が加熱シリンダ101の先端の温度を制御するための、制御用温度センサの実測温度を取得してもよい。また、温度取得部11は、加熱シリンダ101の先端の設定温度として、成形機に入力された温度(定数)を取得してもよい。また、温度取得部11は、使用者により入力された任意の温度(定数)を取得してもよい。これにより、樹脂の温度を測定するための追加のセンサを必要としないため、低コスト化、センサ強度による成形条件の制約からの解放、シリンダ強度の低下の回避等を図ることができる。
【0057】
また、上記実施形態において、成形材料の質量mは、使用者によって測定される成形品の質量が用いられてもよい。これにより、測定の手間は増えるが、計量された樹脂の質量を正確に測定することができる。射出成形における成形品の質量の変動は非常に小さいので、一定値としてもよい。
【0058】
また、上記実施形態において、演算部16は、射出成形機10の1サイクルに限定されず、数サイクルをまとめて、成形材料のエネルギ変化量、スクリュのせん断発熱量、ヒータ102からのヒータ伝熱量、せん断発熱量とヒータ伝熱量との割合、ヒータ発熱量及びせん断発熱量の和とエネルギ変化量との割合、及びヒータ発熱量とヒータ伝熱量の割合を演算してもよい。これにより、複数サイクル分の計算をまとめて行うことにより、計算結果を安定化することができる。例えば、異なる成形条件における割合を比較する際などは複数サイクル分の値を比較するのが望ましい。
【0059】
また、上記実施形態において、温度取得部11は、射出成形機10の射出ノズル(図示せず)、ノズルアダプタ(図示せず)、及びシリンダ101の先端の温度のいずれかの温度を取得するようにしてよい。シリンダ体積や射出体積の大小によって、射出直前の樹脂がノズル・ノズルアダプタ・シリンダのどの部品内に最も多く存在しているかが変わる。そこで、それに応じて適する部品の温度を使用することにより、演算精度を向上することができる。
【0060】
また、上記実施形態において、温度取得部11は、複数本のセンサを用いて射出される成形材料の温度及び投入口の温度を取得してもよい。温度取得部11は、複数のセンサのうち、特定のセンサの値だけを使用してもよい。また、温度取得部11は、複数のセンサの平均値等を使用してもよい。複数のセンサのデータを取得することで、より精度よくエネルギ変化量の計算をすることができる。
【0061】
また、温度取得部11は、材料の温度を直接測定してもよい。材料の温度を直接測定することにより、精度を向上することができる。また、温度取得部11は、壁内温度を取得してもよい。これにより、センサの強度を考慮せずに温度を測定することができる。
【0062】
また、温度取得部11は、ノズル、ノズルアダプタ、加熱シリンダ101等、複数の制御点温度が使用できる場合、特定の制御点の温度だけを取得してもよく、平均値等を取得してもよい。また、温度取得部11は、複数の設定温度が使用できる場合、特定の設定温度だけを取得してもよく、平均値等を取得してもよい。計量された樹脂が各部品に満遍なく存在する場合等では、各制御点温度や設定温度の平均値等を使用すると精度を向上することができる。
【0063】
また、上記実施形態において、割合演算部165は、演算結果をスコア化してもよい。出力部17は、スコア化した結果を出力してもよい。割合演算部165は、例えば、伝熱とせん断との割合、又はエネルギ効率をスコア化してもよい。割合演算部165は、例えば、予め設定された品質重視又は成形効率重視の目標値に対して、伝熱とせん断との割合の適否をスコア化してもよい。また、割合演算部165は、予め目標値として設定されるエネルギ効率に対して、実際の動作におけるエネルギ効率の適否をスコア化してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 演算装置
10 射出成形機
11 温度取得部
12 成形条件取得部
13 動作情報取得部
14 特性情報取得部
16 演算部
17 出力部
101 シリンダ
102 ヒータ
【要約】
伝熱とせん断発熱との関係を成形条件の指標として容易に得ることが可能な演算装置及びプログラムを提供すること。
シリンダと、その周囲に配置されるヒータと、シリンダの内部に配置されるスクリュと、を備える射出成形機において、成形材料に加えられる熱量の割合を演算する演算装置であって、加熱前の成形材料の温度及びシリンダから射出される成形材料の温度を温度情報として取得する温度取得部と、スクリュを動作させるモータとヒータの動作状態とを動作情報として取得する動作情報取得部と、成形材料及び射出成形機の特性を特性情報として取得する特性情報取得部と、取得された温度情報、動作情報、及び特性情報に基づいて、スクリュのせん断発熱量及びヒータからのヒータ伝熱量を演算する演算部と、演算結果を出力する出力部と、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7