(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】高い安定性を有する、一体的に射出成形された車輪
(51)【国際特許分類】
B60B 5/02 20060101AFI20221207BHJP
B60B 1/06 20060101ALI20221207BHJP
B60B 21/02 20060101ALI20221207BHJP
B60B 27/02 20060101ALI20221207BHJP
B60B 27/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
B60B5/02 E
B60B1/06
B60B21/02 J
B60B27/02 E
B60B27/00 D
(21)【出願番号】P 2019516062
(86)(22)【出願日】2017-05-26
(86)【国際出願番号】 EP2017062741
(87)【国際公開番号】W WO2017207426
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-03-23
(31)【優先権主張番号】102016110280.6
(32)【優先日】2016-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522027596
【氏名又は名称】シーアイピー モビリティー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CIP MOBILITY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ツィラー
(72)【発明者】
【氏名】アンネ・ビルツ
(72)【発明者】
【氏名】ファルク・ブロベルク
(72)【発明者】
【氏名】フランセスコ・メスナー
(72)【発明者】
【氏名】イェンス・ズース
(72)【発明者】
【氏名】ファルク・ネストラー
(72)【発明者】
【氏名】ラース・ケーラー
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・ブルカート
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・パペンフス
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト・シュテルツァー
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】トルシュテン・フォーゲル
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ・シュピーラー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・ネンデル
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-069501(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第01083063(EP,A2)
【文献】特開平06-008701(JP,A)
【文献】米国特許第04930844(US,A)
【文献】特開2008-273514(JP,A)
【文献】特開平06-234301(JP,A)
【文献】実開昭63-045301(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 5/02
B60B 1/06
B60B 21/02
B60B 27/02
B60B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブ(3)、車軸に対して回転対称に配置された少なくとも3つの中実スポーク(2)、およびリム(4)を備え、前記ハブ(3)、前記スポーク(2)、および前記リム(4)によって形成される本体が、ガラス繊維強化熱可塑性物質の射出成形により1つの部品として作られている、特に電動自転車およびカーゴバイクのための車輪(1)であって、
- 前記スポーク(2)が、前記リム(4)に向かう方向に大きくなる開き角度を持つS字形状の断面を有し、
- 前記スポーク(2)が、前記車輪の中心断面において前記リム(4)から前記ハブ(3)に向かって先細りになっており、
- 前記スポーク(2)が、少なくとも1つのスポーク(2)の中心を通って延びる車輪断面において前記ハブ(3)から前記リム(4)に向かって先細りになっている
ことを特徴とする、車輪(1)。
【請求項2】
前記車輪(1)が、3つから8つ、好ましくは5つまたは6つのスポーク(2)を有する、請求項1に記載の車輪。
【請求項3】
前記スポーク(2)が、1.5mmから5mm、好ましくは2.5mmから3.5mmの範囲の肉厚を有する、請求項1または2に記載の車輪。
【請求項4】
前記スポーク(2)と前記リム(4)との間の移行部、および/または前記ハブ(3)部分における隣り合うスポーク(2)間の移行部が、連続的であるように設計される、請求項1から3のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項5】
前記ハブ(3)が、車軸、電気モータ、ハブダイナモ、および/もしくは内部ギアハブを保持するための金属インサートまたはプラスチックインサートをさらに備えるか、または、前記車輪のプラスチックの本体に車輪軸受が直接圧入される、請求項1から4のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項6】
前記リム(4)が、径方向において外方に少なくとも部分的に開いた中空の輪郭(13)を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項7】
前記リム(4)の前記中空の輪郭(13)が、前記中空の輪郭(13)を複数のチャンバに仕切る横断リブ(15)を備える、請求項6に記載の車輪。
【請求項8】
前記リブが、6個から12個のセグメント(16)に分割され、前記セグメント(16)内の前記リブ(15)それぞれが、同一の径方向の配向を有し、隣り合うセグメント(16)における前記リブ(15)が、異なる径方向の配向を有する、請求項7に記載の車輪。
【請求項9】
前記ガラス繊維強化熱可塑性材料が、35重量%から65重量%、好ましくは40重量%から60重量%、より好ましくは45重量%から55重量%のガラス繊維含有率を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項10】
前記ガラス繊維強化熱可塑性物質が、100MPaから300MPa、好ましくは150MPaから250MPaのDIN EN ISO527による引張破壊応力と、6GPaから30GPa、好ましくは15GPaから25GPaのDIN EN ISO527による縦弾性係数とを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項11】
前記ガラス繊維強化熱可塑性物質が、部分結晶性ポリアミドおよび部分芳香族ポリアミドで構成される、請求項1から10のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項12】
前記車輪の材料が、少なくとも1種の反射性顔料を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項13】
ハブ(3)と、車軸に対して回転対称に配置された少なくとも3つの中実スポーク(2)と、リム(4)とを備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の車輪(1)を製造する方法であって、前記車輪(1)を1つの部品に射出成形するために、適切なガラス繊維強化熱可塑性物質が使用される、方法。
【請求項14】
車軸軸受および/または電気モータを保持するための車輪軸受または金属インサートもしくはプラスチックインサートをハブ開口部内に導入するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記車輪軸受または前記インサートの組み込みが、対応する構成要素の周りでの射出成形によって達成されるか、または、前記対応する構成要素が、前記射出成形された車輪(1)の余熱を利用して前記車輪(1)と結合される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気を動力源とする自転車およびカーゴバイク(cargo bike)などの増大したシステム重量(system weight)を有する自転車に特に適した、極めて安定した低重量の車輪と、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
マウンテンバイク、常用自転車(everyday bike)、リカンベント自転車、などのような様々なタイプの自転車のための車輪は、様々な実例および材料において長い間知られてきた。スポークの構造に関して、多数のスポークを有する、金属で作られた昔ながらのスポーク車輪が入手可能であるが、大きく減少した数のスポークを有する車輪であって、必要とされる安定性を提供するためにより多くの材料を使用してスポークが設計される車輪もまた、入手可能である。低重量および高い安定性が望まれる場合、後者の車輪は、通常、カーボン構造によって製造される。しかし、カーボン構造は、比較的に高価かつ複雑であり、したがって、主にスポーツ分野で使用される。さらに、側方の衝撃荷重に対する安定性は、明確な対策がとられていない場合は、不十分であることが多い。
【0003】
近年、カーゴバイク、フリートバイク(fleet bike)、ならびに電動アシスト自転車(pedelec)およびe-バイクなどの電気を動力源とする自転車の使用は、非常に増加しており、また、電気駆動装置は、カーゴバイクおよびフリート自転車で特に使用される。電気を動力源とする自転車の高速化、およびカーゴ自転車の重量増を考慮すると、車輪は、関連する増大した機械的応力に耐えることが可能であるべきである。上述のカーボン構造の車輪は、入念に設計されるのであれば、軽量かつ安定したものであるが、上述のように、製造するのに費用がかかりかつ面倒なものであり、また、側方の衝撃荷重などのスポーツバイクにとって典型的でない荷重を吸収することに関して、なおも改善することができる。
【0004】
特許文献1は、高い曲げ強度を相応に有しかつねじり荷重に対する安定性をも有する、車椅子に特に適していると説明された車輪を開示している。ハブ、スポーク、およびリムを含む車輪は、プラスチックから1つの部品に成形され、スポークは、中空スポークであり、また、スポークは、定められた断面寸法、および定められた断面輪郭を有する。しかし、成形プラスチック車輪の安定性は、なおも改善することができる。
【0005】
特許文献2は、ハブ、スポーク、およびリムベッドが、ガラス繊維強化ポリアミドから1つの部品として一体的に成形される車輪を開示しているが、十分な安定性を提供するために、それらは、リムに結合された金属リングを備える。繊維強化プラスチック材料だけで作られた車輪の安定性は、明らかに不十分である。
【0006】
特許文献3は、ガラス繊維強化され得る、S字形状のスポーク断面を有する1部品射出成形車輪を開示している。スポークの断面がハブに向かって大きくなること、および、S字形状がハブに向かって広がることが、さらに説明されている。さらに、スポークは、ハブ部分において互いに正弦波状にフランジが付けられる。
【0007】
特許文献4は、自転車の車輪などの車両車輪の風圧抵抗を低減するための方法を開示している。自転車の車輪に対しては、楕円形のスポーク輪郭が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第3536308号
【文献】米国特許第4,930,844号
【文献】欧州特許出願公開第1083063号
【文献】国際公開第2014/099197号1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、電気を動力源とする自転車および/またはカーゴバイクにおいて特に生じ得るような増大した機械的応力に耐え、許容できる重量、好ましくは低重量を有し、また、わずかな工程ステップで安価に大量に製造することができる、安定した車輪を提供することである。車輪は、さらに、可能な限り長持ちするべきであり、また、メンテナンスをほとんど必要としないものであるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、自転車、電気自転車、およびカーゴバイクに特に適し、また、ハブ、車軸に対して回転対称に配置された少なくとも3つの中実スポーク、およびリムを備え、ハブ、スポーク、およびリムから成る本体が、ガラス繊維強化熱可塑性物質の射出成形により1つの部品に(一体的に)作られる、請求項1に記載の車輪であって、
- スポークが、リムに向かう方向に大きくなる開き角度(opening angle)を持つS字形状の断面を有し、
- スポークが、車輪の中心断面において(または、車輪の軸方向における平面図において)リムからハブに向かって先細りになっており、また、
- スポークが、少なくとも1つのスポークの中心を通って延びる車輪断面においてハブからリムに向かって先細りになっている
ことを特徴とする、車輪によって解決される。
【0011】
本発明はまた、車輪を製造する方法を提供する。
【0012】
本発明者らは、広範囲に及ぶ調査を行い、そして、説明された車輪の特定のスポーク設計、および適切なガラス繊維強化熱可塑性物質の使用により、車輪の重量を低く保つことができると同時に、驚くほどに優れた車輪安定性を得ることができることを見いだした。具体的には、安定性に関して、おそらくは高システム重量との組合せにおいて、路上の穴を走り抜けるときに経験するような垂直方向の大きな衝撃荷重に耐性があることのいずれもが観察された。さらに、ディスクブレーキを使用した制動の際に特に生じる変形力に関して、ハブの領域において高い安定性が得られ、また、例えばコーナリングおよび事故の際に生じ得る、リム付近での車輪への横力に関して、高い側方安定性が得られる。比較的薄い肉厚のスポークでもこの安定特性の組合せを得られることは、驚くべきことであった。したがって、本発明による車輪は、カーゴバイク、電動アシスト自転車およびe-バイクなどの電気的に動作する自転車にとって特に有利または必須である、高い安全要件を満たす。特に、本発明による車輪は、1つの工程ステップで大量に迅速に製造することができる。
【0013】
本発明による車輪は、ハブ、車軸に対して回転対称に配置された少なくとも3つの中実スポーク、およびリムを備え、ハブ、スポーク、およびリムから成る本体は、射出成形により1つの部品に作られる。したがって、本発明による車輪は、例えばリムの領域において金属製の補強材を必要とせず、完全に1つの部品に射出成形される。スポークの配置は、全てのスポークが、隣り合うスポークから同じ距離を有するような配置であることが、好ましい。本発明における中実スポークは、中空スポークではないスポークとして理解されるべきである。しかし、重量軽減のために、本発明のスポークは、材料が取り除かれた凹部または穴を有し得る。本発明による車輪のリムは、引掛け式タイヤまたはチューブラタイヤのために設計され得る。引掛け式タイヤに必要とされるアンダカットを含むリムフランジは、潰すことができるコアを有する摺動体または型部品により、射出成形で実現することができる。
【0014】
リムに向かう方向に大きくなる開き角度を有するS字形状の断面を持つスポークの設計は、本発明の本質的な特徴である(
図2参照)。S字形状の断面は、スポークの低重量設計を可能にし、かつ、車輪の安定性に貢献する。本発明によれば、「S字形状の断面」という用語はまた、
図2b)において示されるようにS字形状の丸みのある部分がわずかに鋭角になったS字形状を含む。
【0015】
本発明によれば、スポークが車輪の中心断面においてリムからハブに向かって先細りになっていることが、さらに必要不可欠である。「車輪の中心断面」とは、本発明によれば、車輪の中心において車輪全体を通る断面として理解される。先細りになっていることはまた、車軸の方向における垂直側方平面図(vertical lateral plan view)において観察することができる(
図3a)参照)。
【0016】
さらに、スポークは、スポークを通って延びる車輪断面においてハブからリムに向かって先細りになっている。より具体的には、車輪断面は、車輪の主平面に垂直な車軸を通る断面、少なくとも1つのスポークの中心を通って延びる断面である。言い換えれば、本発明によれば、スポークは、外側のハブ端部に向かう方向において、リムからハブに向かう方向に広がる。車輪断面においてハブからリムに向かって先細りになっていることは、
図3a)内の線A-Aに沿った断面を示す
図3b)において観察することができる。
【0017】
これらのスポーク設計特徴を組み合わせることにより、複雑なカーボン構造の方法を適用する必要なしに、低重量で優秀な安定性を持つ1部品の車輪を、射出成形によって提供することができる。
【0018】
本発明による車輪は、好ましくは3つから8つ、より好ましくは5つまたは6つのスポーク、さらに好ましくはちょうど6つの説明されたスポークを有する。特に、スポークの数を6つにすることで、許容できる低重量において、安定性の観点から優れた結果が得られた。
【0019】
本発明による車輪のスポークは、好ましくは1.5から5mmの範囲、より好ましくは2.5から3.5mmの範囲の肉厚を有する。スポークの肉厚をスポークに沿って一定にまたは原則的に一定に保つことが、さらに好ましい。しかし、リムへのおよび/またはハブへの移行部分におけるスポークの肉厚の増大が存在してもよい。
【0020】
車輪の安定性をさらに改善するために、スポークとリムとの間の移行部、および/またはハブの領域における隣り合うスポーク間の移行部は、スポークからリムへの滑らかな移行部を得るために、連続的に設計されることが好ましい(
図3a)、破線を参照)。ハブの領域では、そのような連続的な移行部は、隣り合うスポーク間のブリッジとも見なされ得る。
【0021】
本発明による車輪は、ガラス繊維強化熱可塑性物質を使用して製造される。ガラス繊維強化熱可塑性物質は、好ましくは35から65重量%、より好ましくは40から60重量%、より好ましくは45から55重量%のガラス繊維含有率を備える。ガラス繊維は、1mmを超える長さを持ついわゆる長繊維であることが好ましい。上述の量の範囲内では、一方では、車輪の良好な機械的特性を提供することができ、他方では、たとえリム設計の形成などのより微細な形状の形成を伴っても、射出成形による加工が可能である。本発明では、射出成形後の最終製品における繊維が絡み合いかつ同一の配向をほとんど有していないことが好ましい。
【0022】
熱可塑性の母材として、特にポリアミド、コポリアミド、およびそれらの混合物が検討され得る。部分結晶性ポリアミドおよび部分芳香族ポリアミドを基礎とするプラスチック母材が好ましい。適切なポリアミドおよびコポリアミドの例は、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6I、ポリアミド6X、ポリアミド6I/X、および、特にポリアミド66とポリアミド6I/Xとの組合せなどのそれらの混合物である。
【0023】
本発明によれば、ガラス繊維強化熱可塑性物質は、100MPaから300MPa、好ましくは150MPaから250MPaのDIN EN ISO527による引張破壊応力(tensile stress at break)と、6GPaから30GPa、好ましくは15GPaから25GPaのDIN EN ISO527による縦弾性係数(E modulus)とを有することが好ましい。
【0024】
適切なガラス繊維強化熱可塑性物質は、例えば、EMS-Grivory、EMS Chemie AG、SwitzerlandからGrivory(登録商標)の商標名で市販されている。
【0025】
他の好ましい実施形態では、視認性を高めるためにガラス繊維強化熱可塑性物質に反射性顔料が混ぜられてもよく、それにより、押出しおよび射出成形後に反射性の車輪が得られる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、車輪は、ハブ内に、車軸、電気モータ(ハブモータ)、ハブダイナモおよび/もしくは内部ギアハブを保持するための金属インサートまたはプラスチックインサートを備えるか、または、例えば車輪のプラスチック体に車輪軸受が直接圧入される。本発明による車輪の射出成形による製造は、そのようなインサートまたは車輪軸受を車輪ハブ内に容易に設けることを可能にする。例えば、対応する構成要素の組入れは、それらを型に挿入することおよびそれらの周りでの射出成形によって達成することができ、または、それぞれの構成要素が、好ましくは射出成形された車輪の余熱を利用して、射出成形後に車輪と結合されるか圧着される。
【0027】
さらに、軽量化に関して、本発明による車輪は、好ましくは、リムが外向きの半径方向において少なくとも部分的に開いた中空の輪郭を有するリム設計を有する(
図5b)参照)。中空の輪郭は、V字形状、U字形状、台形状、または箱形状の輪郭として構成され得る。輪郭深さは、好ましくは1から80mm、より好ましくは15から50mm、なおも好ましくは25から35mmであり得る。
【0028】
中空の輪郭は、完全に開けていてもよく、または、安定性を高めるために、中空の輪郭を複数のチャンバに分割する横断リブによって断続されてもよい(
図6)。中空の輪郭、および横断リブによって断続された中空の輪郭は、空洞を形成する型部品を射出成形中に半径方向に引き抜くことによって形成され得る。
【0029】
横断リブは、外側のリブ縁において測定した場合、リブの中央において1mmから6mmの厚さ、より好ましくは1.5から4mmの厚さ、より好ましくは2から3mmの厚さを有することが、好ましい。さらに、横断リブは、リム側面への連続的な移行部を有することが好ましい。
【0030】
本発明による車輪は、特に引掛け式タイヤとの使用のために構成される場合に、リムテープを備えてもよい。リムテープは、中空の輪郭上、または横断リブによって断続された中空の輪郭上に位置して、タイヤ圧力に対してインナーチューブを支持することが、好ましい。
【0031】
リムテープは、熱可塑性の連続繊維強化複合材料(熱可塑性の母材を含むテキスタイル強化半完成品)から形成されることが好ましく、さらに、200から600MPa、より好ましくは300から400MPaの範囲のDIN EN ISO527による引張破壊応力を有することが好ましく、また、6GPaから30GPa、より好ましくは15GPaから25GPaの範囲のDIN EN ISO527による縦弾性係数を有することが好ましい。リムテープの厚さは、好ましくは0.25から5mm、より好ましくは0.3から1mm、さらに好ましくは0.4から0.6mmであり得る。
【0032】
リム輪郭を仕切る横断リブが、複数のセグメントに分類され、リブがそれぞれ、セグメント内で同一の径方向の配向を有し、すなわち、互いに平行に延び、また、隣り合うセグメント内のリブが、異なる径方向の配向を有するが、同一のセグメント内では互いに平行に整列される実施形態が、特に好ましい(
図6)。驚いたことに、全ての横断リブが同一の配向を有した場合と比べて、安定性のさらなる改善を得ることができた。本発明による車輪は、6つから12個のこれらのセグメント、より好ましくは8つのセグメントを備えることが、さらに好ましい。本発明によれば、安定性と低重量との特に良好な組合せにつながった6つのスポークと8つのセグメントとを有する車輪が、特に好ましい。
【0033】
本発明による車輪は、任意の慣例の寸法、および、例えばETRTO(欧州タイヤおよびリム技術機構)によって規定されるような自転車およびカーゴバイクのためのリム寸法で製造することができる。ETRTO規格に基づけば、好ましい公称車輪径は、16から28インチ、より好ましくは18から26、さらに好ましくは20から26インチ、最も好ましくは24インチのタイヤ寸法に適したものである。リム幅(口幅(mouth width))は、好ましくは14から35mm、より好ましくは25から30mmである。引掛け式タイヤの場合、リム縁高さは、好ましくは5から10mm、より好ましくは6から8mmの範囲である。
【0034】
24インチタイヤのためのサイズの場合、本発明による車輪は、望まれる安定性に応じて、好ましくは1から2kg、より好ましくは1から1.5kg、より好ましくは1から1.2kgの範囲の重量を有する。重量とは、ハブ部分内に上記の任意選択のインサートを含まない、射出成形後の車輪の重量を意味する。
【0035】
本発明による車輪は、2輪車両のためにだけではなく、3輪または4輪車両のために使用することができる。本発明の車輪の適用領域は、具体的にはe-バイク、カーゴバイク、フリートホイール(fleet wheel)、電動アシスト自転車、マウンテンバイク、リカンベントバイク、または車椅子であるが、モータスクータ(スクータ)などの筋力によって駆動されない車両も同様に適用領域である。重量と安定性との良好な組合せにより、本発明による車輪は、2輪または3輪のカーゴバイク、およびe-バイクまたは電動アシスト自転車などの電気を動力源とする自転車に対して使用されるのが特に好ましい。本発明による車輪の適用はまた、ミッドシップエンジン(mid-engine)によって駆動される車両、および、各車輪ハブ内にハブモータが設けられる4輪駆動車両を特に含む。
【0036】
ハブ、車軸に対して回転対称に配置された少なくとも3つの中実スポーク、およびリムを備える本発明の車輪は、適切な熱可塑性ガラス繊維強化プラスチックを使用して射出成形によって一体的に形成される。この目的のために、熱可塑性ガラス繊維強化プラスチックは、通常、押出し成形機で処理され、適切な温度にされて、型内に射出される。続いて、主要な型部品が、通常、車輪の軸方向に取り除かれる。スポークのS字形状の断面形状、および中実としてのそれらの設計が、単純でアンダカットのない成形を可能にした。射出成形後に半径方向に引き出される適切な型部品または摺動体を使用することにより、任意選択のいかなる横断リブをも含む、リムの任意に所望されるいかなる中空の輪郭形状も得ることができる。
【0037】
車輪軸受、あるいは、車軸軸受および/もしくは電気モータを保持するための金属インサートまたはプラスチックインサートがハブ開口部内に設けられるべき場合、それぞれの構成要素は、射出成形の際に型内に前もって配置されてもよく、射出成形は、構成要素の周りで起こるか、または、構成要素は、好ましくは射出成形された部品の余熱を利用して、射出成形後にハブ開口部に圧入される。
【0038】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】6つのスポークを有する本発明による車輪の側面からの平面図である。
【
図2】スポークのS字形状の断面輪郭を示す図である。
【
図2a)】本発明による車輪の一部を示す図である。
【
図2b)】
図2a)における破線の位置に対応する断面が強調されたスポークのより詳細な図である。
【
図3a)】車軸の方向における、本発明による車輪の平面図であって、スポークがリムからハブに向かって先細りになっていることが分かる図である。
【
図3b)】車輪断面においてスポークがハブからリムに向かって先細りになっていることを示す図である。
【
図4a)】軸方向における、本発明による車輪の平面図である。
【
図4b)】車軸軸受のためのインサートが挿入された本発明によるハブ部分の設計の例を概略的に示す図であって、その下側部分が、線B-Bに沿ったハブ部分の断面を示す図である。
【
図5a)】軸方向における、本発明による車輪の平面図である。
【
図5b)】
図5a)の線D-Dに沿った断面として、可能なリム輪郭形状を示す図である。
【
図6】横断リブが互いに平行に整列されている8つのセグメントを持つ実施形態における、横断リブによって形成された中空のチャンバを有している本発明による車輪のリム部分を特に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の車輪の実施形態をより詳細に説明する。
【0041】
S字形状の6つのスポーク2、ハブ3、およびリム4を有する、
図1に示されるような車輪1は、50%のガラス繊維含有率を有する適切なガラス繊維強化熱可塑性物質(例えば、Grivory(登録商標)GVN-5H 9915)を適切な射出成形型内に射出成形して型を車軸の方向に取り除くことにより、1つの部品に製造された。車輪は、チューブを含む引掛け式タイヤのために設計されたリムを有して、または、チューブラタイヤリムを有して形成され得る。
図1に示された実施形態では、スポークは、重量軽減のための穴5を備える。
【0042】
スポーク2は、リムに向かう方向に大きくなる開き角度を持つS字形状の断面を有する(
図2、特に
図2b)参照)。この実施形態での肉厚は、約3mmであり、かつ、ハブからリムまでおおむね一定である。スポーク2は、車輪の中心断面においてリム4からハブ3に向かって先細りになっており(
図3a))、かつ、少なくとも1つのスポーク2の中心を通って延びる車輪断面においてハブ3からリム4に向かって先細りになっている(
図3b)参照)。ハブ3の部分におけるスポーク2とスポーク2からリム4への移行部分との間で、スポーク2は連続的である。これらの移行部は、
図3a)では破線によって示されている。
【0043】
図4b)は、車軸を保持するためのインサートを備える、本発明による車輪のハブ3の可能な実施形態を示す。ハブ部分3は、ブレーキディスクを取り付けるための取付け穴またはボア6を備える。線B-Bに沿った断面では、一体化された玉軸受11を有する円筒形の支持体7で形成されたインサートが観察され得る。インサートは、車輪3に固定して挿入されて、開口部10を貫いて延在する車軸を保持する働きをする。射出成形された車輪の壁9は、重量軽減のために設けられた空洞8を包囲する。この例では、インサートに接触する壁9は、車輪ハブ内でのインサートのより良好な定着のために、階段形状とされている。
【0044】
ハブ部分3およびインサートの任意の他の構造が、本発明に従って可能である。具体的には、ハブ部分内に電気モータが設けられてもよい。
【0045】
図5は、本発明による車輪のリム輪郭の可能な設計を示す。
図5b)は、
図5a)の線D-Dに沿った断面を示す。リム4は、連続的な空洞13を有して設計されている。リム4の上部領域には、リム縁12が示されている。さらに、この実施形態ではリムテープが設けられて、タイヤチューブの圧力に対する境界を提供する。
【0046】
図6に示されるように、リム輪郭の空洞13は、空洞13を複数のチャンバに分割する横断リブ15によって分割され得る。
図6に示された好ましい実施形態では、リム部分4は、仕切られた中空の輪郭として横断リブ15によって形成されて、8つのセグメント16を有する。これらのセグメント16内では、横断リブは、同一の配向を有するが、隣り合うセグメントにおける横断リブ15の配向は、それぞれ異なる。個々のセグメント16は、放射状に配置される8つの摺動体を設けてそれらを引き抜くことにより、車輪を作るときに形成され得る。
【符号の説明】
【0047】
1 車輪
2 スポーク
3 ハブ、ハブ部分
4 リム
5 穴
6 固定穴、ボア
7 支持体
8 空洞
9 壁
10 軸取付けのための開口部
11 玉軸受
12 リム縁
13 リム空洞
14 リムテープ
15 横断リブ
16 セグメント