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特許7189401インサイチュ増幅により無細胞核酸分子を調製する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】インサイチュ増幅により無細胞核酸分子を調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6844 20180101AFI20221207BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20221207BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20221207BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z ZNA
C12Q1/6851 Z
C12N15/09 Z
【請求項の数】 50
(21)【出願番号】P 2018527852
(86)(22)【出願日】2016-08-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-10-18
(86)【国際出願番号】 US2016046875
(87)【国際公開番号】W WO2017027835
(87)【国際公開日】2017-02-16
【審査請求日】2019-08-13
(31)【優先権主張番号】62/204,268
(32)【優先日】2015-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522384581
【氏名又は名称】サークロジーン・セラノスティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イェ,チェン-シオン
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02770090(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0079637(US,A1)
【文献】Clin. Chem.,2010年08月,Vol.56, No.8,pp.1279-1286
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus(JDreamIII)
Google Scholar
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルフリー核酸(cfNA)のインサイチュ増幅の方法であって、
a. 複数のcfNAを含有する液体試料を準備するステップと、
b. 前記試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップであって、前記少なくとも1つの処理ステップが、前記液体試料を希釈すること、前記液体試料を加熱すること、前記液体試料中の前記cfNAを断片化すること、または前述のものの組み合わせである、ステップと、
c. 酵素混合物を使用し、前記試料中の前記cfNAの少なくとも一部分の5’末端または3’末端のうちの少なくとも1つに外因性核酸配列を付加することで、前記試料中の前記cfNAの少なくとも一部分を修飾cfNAに変換して、増幅可能なcfNAプールを創出するステップであって、前記外因性核酸配列が、プライマーに結合することが可能なプライマー部位を含有し、前記外因性核酸配列が、前記プライマー部位の少なくとも一方の側に隣接している縮重核酸配列を有する、ステップと、
d. 前記増幅可能なcfNAプールを増幅して、分析可能なcfNAのプールを生成するステップと、を含み、
前記試料中の前記cfNAが、核酸精製ステップに供されず、前記方法が、単一の反応槽内で実施される、方法。
【請求項2】
前記cfNAがcfDNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記cfNAがcfRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記cfRNAが、ステップ(c)の前に二本鎖DNAに変換される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記酵素混合物が、DNアーゼ活性を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記試料中の前記cfNAの少なくとも一部分が、ひとつにライゲーションされる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記試料中の前記cfNAが、50bp~2,000bp、100bp~1,000bp、50bp~600bp、100bp~500bp、100bp~400bp、100bp~300bp、100bp~200bp、200bp~300bp、300bp~400bp、400bp~500bpまたは500bp~600bpの断片サイズ分布を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記プライマー部位が、ユニバーサルプライマー部位である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記外因性核酸配列が、前記cfNAの5’末端、前記cfNAの3’末端、または前記cfNAの少なくとも一部分の5’末端と3’末端との両方に付加され、前記試料中の前記cfNAの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%少なくとも80、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%が、前記外因性核酸配列を含有するように修飾される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記酵素混合物が、
a. 3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、及びDNAリガーゼを含む混合物、
b. 3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、及びDNAポリヌクレオチドキナーゼを含む混合物、
c. 3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、DNAポリヌクレオチドキナーゼ、及びウラシルDNAグリコシラーゼを含む混合物、並びに、
d. 3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、DNAポリヌクレオチドキナーゼ、ウラシルDNAグリコシラーゼ、及び一本鎖DNA核酸ニッキング酵素を含む混合物
からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記酵素混合物が、
a. T4 DNAポリメラーゼ及びT4 DNAリガーゼを含む混合物、
b. DNAポリメラーゼIのクレノウ断片及びT4 DNAリガーゼを含む混合物、
c. T4 DNAポリメラーゼ、T4 DNAリガーゼ、及びDNAポリメラーゼIのクレノウ断片を含む混合物、
d. T4 DNAポリメラーゼ、T4 DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、及びT4ポリヌクレオチドキナーゼを含む混合物、
e. T4 DNAポリメラーゼ、T4 DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、及びウラシル-DNAグリコシラーゼを含む混合物、並びに
f. T4 DNAポリメラーゼ、T4 DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、ウラシル-DNAグリコシラーゼ、及びNb.BbvC1を含む混合物
からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記試料が、ステップ(c)で順次加熱プログラムに供される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記順次加熱プログラムが、第1の所定期間にわたる16℃のステップ、第2の所定期間にわたる24℃のステップ、第3の所定期間にわたる37℃のステップ、及び第4の所定期間にわたる75℃のステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記外因性核酸配列が、前記プライマー部位のいずれかの側に隣接している縮重核酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記外因性核酸配列が、初期複製ステップ中に前記cfNAに組み込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記外因性核酸配列が、配列番号1及び2の配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記酵素混合物が、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、及びDNAリガーゼを含む、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記酵素混合物が、T4 DNAポリメラーゼ及びT4 DNAリガーゼを含む、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記外因性核酸配列が、二本鎖逆方向反復及び一本鎖ループを含むオリゴヌクレオチドであり、前記試料中の前記cfNAの少なくとも一部分が、前記cfNAの5’末端、前記cfNAの3’末端、または前記cfNAの5’末端と3’末端との両方に平滑末端を有するように調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記外因性核酸配列の各鎖が、前記試料中の前記cfNAの少なくとも一部分で、前記cfNAの5’末端、前記cfNAの3’末端、または前記cfNAの5’末端と3’末端との両方において、前記cfNAの各鎖にライゲーションされる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記一本鎖ループが、ステップ(d)の前に切断される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記外因性核酸配列が、配列番号10の配列を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記酵素混合物が、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、DNAポリヌクレオチドキナーゼ、及びウラシル-DNAグリコシラーゼを含む、請求項19~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記酵素混合物が、T4 DNAポリメラーゼ、T4 DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、及びウラシル-DNAグリコシラーゼを含む、請求項19~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記外因性核酸配列が、二本鎖逆方向反復及び一本鎖ループを含むオリゴヌクレオチドであり、前記試料中の前記cfNAの少なくとも一部分が、前記cfNAの5’末端上の3’末端のうちの少なくとも1つにテール配列を有するように調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記外因性核酸配列の各鎖が、前記試料中の前記cfNAの少なくとも一部分で、前記cfNAの5’末端、前記cfNAの3’末端、または前記cfNAの5’末端と3’末端との両方において、前記cfNAの各鎖にライゲーションされる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記一本鎖ループが、ステップ(d)の前に切断される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記外因性核酸配列が、配列番号9または配列番号7の配列を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記酵素混合物が、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、DNAポリヌクレオチドキナーゼ、及びウラシル-DNAグリコシラーゼを含む、請求項25~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記酵素混合物が、T4 DNAポリメラーゼ、T4 DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、及びウラシル-DNAグリコシラーゼを含む、請求項25~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記外因性核酸配列が、二本鎖逆方向反復及び一本鎖ループを含むオリゴヌクレオチドであり、前記試料中の前記cfNAの少なくとも一部分が、前記cfNAの5’末端、前記cfNAの3’末端、または前記cfNAの5’末端と3’末端との両方に平滑末端を有するように調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記外因性核酸配列の1つの鎖が、前記試料中の前記cfNAの少なくとも一部分で、前記cfNAの5’末端、前記cfNAの3’末端、または前記cfNAの5’末端と3’末端との両方において、前記cfNAの1つの鎖にライゲーションされる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記外因性核酸配列が、配列番号5の配列を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記酵素混合物が、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、DNAポリヌクレオチドキナーゼ、一本鎖DNA核酸ニッキング酵素、及び場合により複製ブロック活性化活性を含む、請求項31~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記酵素混合物が、T4 DNAポリメラーゼ、T4 DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、Nb.BbvC1、及び場合によりウラシル-DNAグリコシラーゼを含む、請求項31~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記外因性核酸配列が、二本鎖逆方向反復、一本鎖ループ、及び複製ブロックを含むオリゴヌクレオチドであり、前記試料中の前記cfNAの少なくとも一部分が、前記cfNAの5’末端、前記cfNAの3’末端、または前記cfNAの5’末端と3’末端との両方に平滑末端を有するように調製され、前記複製ブロックが、複製ブロック活性化活性の作用を受けるまで不活性である、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記外因性核酸配列の1つの鎖が、前記試料中の前記cfNAの少なくとも一部分で、前記cfNAの5’末端、前記cfNAの3’末端、または前記cfNAの5’末端と3’末端との両方において、前記cfNAの1つの鎖にライゲーションされる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記外因性核酸配列が、配列番号5の配列を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記酵素混合物が、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、DNAポリヌクレオチドキナーゼ、一本鎖DNA核酸ニッキング酵素、及び複製ブロック活性化活性を含む、請求項36~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記酵素混合物が、T4 DNAポリメラーゼ、T4 DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、Nb.BbvC1、及びウラシル-DNAグリコシラーゼを含む、請求項36~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記少なくとも1つの処理ステップが、前記液体試料を希釈すること、前記液体試料を加熱すること、または前述のものの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記加熱ステップが、前記cfNAの断片化をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記少なくとも1つの処理ステップが、液体試料中の前記cfNAを断片化することであり、前記液体試料中の前記cfNAが、前記少なくとも1つの処理ステップ後に50bp~600bp、100bp~500bp、100bp~400bp、100bp~300bp、100bp~200bp、200bp~300bp、300bp~400bp、400bp~500bp、または500bp~600bpの断片サイズ分布を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
前記液体試料が、血清試料、血漿試料、尿試料、唾液試料、または脳脊髄液試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
前記液体試料の容量が100μL未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記液体試料の容量が10μL~50μLである、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
前記修飾cfNAが、前記試料中に存在する元々のcfNA配列の一部分、またはその相補体、及び外因性核酸配列を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
cfNAを分析する方法であって、
a. 請求項1に記載の方法によって分析可能なcfNAのプールを準備するステップと、
b. 前記分析可能なcfNAのプールを分析して、前記分析可能なcfNA分子のプール中のcfNAの特性を決定するステップと、を含む、方法。
【請求項49】
前記特性が、染色体異常、単一ヌクレオチド多型、遺伝子変異、点変異、欠失、挿入、メチル化パターン、及びコピー数変動からなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
試料中のセルフリー核酸(cfNA)の元々の濃度を決定するための方法であって、
a. 請求項1に記載の方法によって増幅可能なcfNAプールを準備するステップと、
b. 前記増幅可能なcfNAプールを増幅して、増幅されたcfNA分子のプールを生成するステップと、
c. cfNAの前記増幅されたプール中のcfNAの濃度を決定するステップと、
d. 決定されたcfNAの濃度を標準曲線と比較して、前記試料中のcfNAの元々の濃度を決定するステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年8月12日出願(現在審査中)の米国仮特許出願第62/204,268号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
本年は160万件の癌の新規症例が診断され、50万を超える癌による死がもたらされると推定されている。これは1日当たり約1,600人と言い換えられ、米国における死の4件中1件を占めることになる。固形腫瘍生検の遺伝子検査の大きな進歩により、癌の標的化及び治療の方法が変化し、生存率の改善につながっている。
【0003】
現在、一般に原発腫瘍のものである組織生検は、標的療法が開始する前に、単一の時間点における癌の分子プロファイルを決定するために使用されている。しかしながら、固形腫瘍の試料採取には、いくつかの欠点及び制限がある。第1に、固形腫瘍の試料採取は侵襲的手技であり、多くの事例において患者へのリスクを示す。第2に、いくつかの場合、固形腫瘍の試料採取は選択肢にないか、あるいは腫瘍の位置及び/またはサイズが原因で実現困難である。第3に、固形腫瘍の試料採取は、空間的には生検される領域に限定され、そして時間的には生検の時点での腫瘍の状態に限定されるため、腫瘍の不均一性が十分に対処されない場合がある。腫瘍ゲノムは、淘汰圧下で著しく不安定であり、クローン増殖しやすい。したがって、癌のゲノム特性は、空間的にも時間的にも変化し、本質的に静的ではない。第4に、治療法の決断を下すために固形腫瘍の試料採取から関連性のある情報を特定するには、数日から数週間、またはさらには数か月かかる場合があり、この情報の治療用途での使用は複雑なものとなっている。第5に、固形腫瘍の試料採取は実行にかかるコストが高く、そのため、その用途は多くの場合で限定されている。最後に、固形腫瘍の試料採取は、分析に必要な時間、分析のコスト、及び分析のために試料を得ることの侵襲的性質といったいくつかの要素が原因で、癌治療の長期的監視には実用的でない。したがって、腫瘍組織のゲノム特性決定は、癌の治療及び管理において依然として主要な課題である。
【0004】
血液生検(別称、液体生検)、特に循環細胞フリーDNA(cfDNA)のものは、腫瘍中に存在する特異的遺伝子変異の特定のための非侵襲的方法として発展中である。そのような方法は、既知の癌治療により治療可能である変異を特定するため、また治療のための標的療法を開発するために研究されている。血液中のcfDNAを単離し、数量化し、分析するための先進技術は、染色体異常、遺伝子変異、メチル化パターンの差、及びコピー数多型など、循環における癌特異的な異常の特定につながっている。これらの異常は、固形腫瘍組織の異常に酷似していることが見出された。
【0005】
cfDNA分析を利用した血液生検は、固形腫瘍の試料採取における欠点の解決策を提示する。血液生検は低侵襲性であり、日常的な来院の間に分析用試料を日常的に収集することが可能である。加えて、血液生検は、広範な腫瘍DNAの試料採取を可能にし、固形腫瘍の試料採取で見られる不均一性の不足を克服する。また、血液生検では、診断情報が医療提供者に迅速に返される。最後に、血液生検は、その低侵襲性の性質及び迅速な結果のため、最もコスト効果の高い様式でリアルタイムの腫瘍ゲノム進化を長期的に監視するのに理想的である。
【0006】
循環cfDNAベースの検査は、治療有効性を確実にし、薬物抵抗性、転移、及び再発を監視し、リアルタイムで患者個人に合わせた治療介入を個別化する能力を臨床医に与える。治療法の決断を誘導するための循環cfDNAの腫瘍ゲノム配列決定の使用は、臨床成績を大きく改善させるであろう。したがって、癌の診断及び治療の個人的管理におけるcfDNAの臨床的有用性は、現在の治療モデルを著しく変化させ、全体的な癌生存率を増加させ、新世代の癌管理の標準治療となる能力を有する。
【0007】
しかしながら、cfDNAの分析にもいくつかの欠点がある。そのような制限としては、高い試料容量の必要性、cfDNAの低い収率、異なるサイズのcfDNA断片の差次的な回収、及び再現性の不足が挙げられるが、これらに限定されない。前述の内容は、cfDNAベースの検査を診療所において日常的に適用することに対する主要な障害である。
【0008】
現在、cfDNAの抽出及び単離にはいくつかの方法が用いられているものの、試料からのcfDNA出発物質の抽出が不完全であること、及びこのプロセス中の物質損失が大きいことが原因で、cfDNA単離の効率及び収率は極めて低い。さらに、規格化が不十分であるため、数量化は不定である。
【0009】
cfDNAの分析及び臨床的ツールとしてのcfDNAの使用は、最適ではない。本開示は、試料からcfDNAを濃縮するための優れた方法を提供することによって、cfDNA分析における問題の新規かつ発明的な解決策を提示する。かかる方法は、必要な試料の投入容量が低く、後の分析に使用するための高い回収率の核酸物質をもたらす。したがって、本開示の方法は、試料から直接的にcfDNAを濃縮することを可能にする。開示される方法は、次世代配列決定(NGS)及びqPCRを含むがこれらに限定されない広範囲のゲノムプラットフォームにおけるマイクロリットル容量(血液-液滴容量)の試料を用いた複数の分析を可能にする。本開示の方法により、臨床医は、10マイクロリットルほどの少ない試料容量(例えば、指を刺すことによるもの)で作業することが可能になる。本開示の方法は、関与する遺伝子変異のより完全な特性決定、臨床判断の迅速化、標的療法の特定、ならびに時間効率及びコスト効率の両方が高い様式である様式における適格な患者のための実験的臨床治験の特定を含むがこれらに限定されない、いくつかの利点を可能にする。したがって、本開示の方法を利用することにより、cfDNA分析の潜在性が十分に実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】CGD法を使用して20μLの血漿から生成されたcfDNAのアガロースゲル電気泳動を示す。cfDNAは、臭化エチジウムを使用して可視化した。レーン1~4は、癌と診断された対象または癌を有する疑いのある対象からの凍結した臨床血漿試料であり、レーン5は、健常な対象からの新鮮な血漿に試料4の血漿を加えたものであった。レーン6~8は、健常な対象からの凍結した血漿試料であり、レーン9~10は、健常な対象からの新鮮な血漿試料であった。
図1B】CGD法を使用して10μLの尿から生成されたcfDNAのアガロースゲル電気泳動を示す。cfDNAは、臭化エチジウムを使用して可視化した。レーン1~6は、健常な対象からの新鮮な尿試料であり、レーン7は、比較のための血漿試料であった。
図2】CGD法及びQIAampキットを使用して、それぞれ20μL及び200μLの血漿から調製されたcfDNAに対する、TaqMan定量的リアルタイムPCRを使用して作成されたKRASの増幅プロットを示す。
図3A】CGD法及びQIAampキットを使用して、それぞれ20μL及び200μLの血漿から調製されたcfDNAに対する、TaqMan定量的リアルタイムPCRを使用して作成されたBRAFの増幅プロットを示す。
図3B】CGD法及びQIAampキットを使用して、それぞれ20μL及び200μLの血漿から調製されたcfDNAに対する、TaqMan定量的リアルタイムPCRを使用して作成されたPIK3CAの増幅プロットを示す。
図3C】CGD法及びQIAampキットを使用して、それぞれ20μL及び200μLの血漿から調製されたcfDNAに対する、TaqMan定量的リアルタイムPCRを使用して作成されたNRASの増幅プロットを示す。
図4】防腐剤あり及びなしで市販の唾液試料採取キットを使用して収集された20μLの唾液からCGD法を使用して調製されたcfDNAのアガロースゲル電気泳動(2%)を示す。cfDNAは、臭化エチジウムを使用して可視化した。レーン1及び2は、防腐剤を含む市販の試料採取キットを用いて得た唾液試料の結果を示し、レーン3は陰性対照であり(唾液試料は存在しない)、一方で、レーン4及び5は、防腐剤を含まない市販の試料採取キットを用いて得た唾液試料の結果を示し、レーン6は陰性対照である(唾液試料は存在しない)。
図5】CGD法を使用して20μLの血漿及び脳脊髄液ならびに10μLの尿から生成されたcfDNAのアガロースゲル電気泳動(2%)を示す。cfDNAは、臭化エチジウムを使用して可視化した。試料の割り当ては次の通りである(括弧内はcfDNA濃度である):レーン1 CSF(8.5)、レーン2 尿(5.1)、レーン3 血漿(22)、レーン4 血漿(59)、レーン5 血漿(36.4)、レーン6 陰性対照、レーン7 尿(52.2)、レーン8 尿(11.2)、レーン9 尿(89.6)、及びレーン10 尿(30)。
図6】血漿、CSF、及び尿試料からCGD法によって調製されたcfDNAのサイズ分布及び定量化を決定するためにAgilent 2100 Bioanalyzerを使用した、図5の試料1~5の分析を示す。
図7】PIK3CA、PTEN、及びKRAS遺伝子に関して、治療前及び治療後の卵巣癌患者のCGD法で得られた結果と組織生検で得られた結果との比較を示す。
図8A】肺癌と診断された対象におけるcfDNA変異の定量を示す。治療中により低い循環cfDNAの変異負荷、及び50日間の安定状態(stable disease)後の変異負荷の上昇。治療の開始は、黒矢印黒矢印によって示されている。変異負荷は、患者毎に検出された体細胞変異の数(グラフ右側の縦軸)として表されている。青色の点線は、PET/CTが行われた時間を示す。時間点は、cfDNA分析が実施された時間を示す。
図8B】11-30-15における安定状態及び2016年3月における進行状態(progressive disease)を示し、図XAのcfDNA分析の結果を確定する、対象のPET/CT画像法を示す。
図9A】膵周囲リンパ節腺癌と診断された対象におけるcfDNA変異の定量を示す。治療中に循環cfDNAの変異負荷が減少し、安定状態を示している。安定状態は、タンパク質バイオマーカー、PET/CT画像法(右の写真)、及び臨床成績と一致していた。変異負荷は、患者毎に検出された体細胞変異の数(グラフ右側の縦軸)として表されている。青色の点線は、PET/CTが行われた時間を示す。時間点は、cfDNA分析が実施された時間を示す。
図9B】治療後の安定状態を示し、図XAのcfDNA分析の結果を画定する、対象のPET/CT画像法を示す。
図10】-20℃(レーン1~5)及び4℃(レーン6~10)で保管した試薬を使用してCGD法により調製し、2%ゲルでのアガロースゲル電気泳動に供し、臭化エチジウム(分子量ラダー1kb)を使用して可視化した、分析可能なcfDNAプールを示す。
図11】0、0.001、0.005、0.01、0.025、0.05、0.1、0.25、0.5、及び1ng/μLの濃度における精製DNAを用い、CGD法を使用して生成した標準曲線を示す。
図12】CGD法を使用して20μLの血漿中のcfRNAから作製されたcDNAの増幅プロットを示す。
【発明の概要】
【0011】
本概要は、以下の「発明を実施するための形態」にさらに記載される選ばれた概念を簡易化した形態で紹介するために提供される。本概要は、特許請求の主題の主要または必須な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求の主題の範囲を限定するよう使用されることを意図するものでもない。特許請求の主題の他の特徴、詳細、有用性、及び利点は、添付の図面に例示され添付の「特許請求の範囲」に定義される態様を含め、以下の「発明を実施するための形態」の文言から明らかになるであろう。
【0012】
第1の態様において、本開示は、試料中の無細胞核酸(cfNA)を核酸精製ステップに供することなく試料中のcfNAのインサイチュ増幅(ISA)を行う方法であって、i)複数のcfNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfNA分子の少なくとも一部分を修飾cfNAに変換して、増幅可能なcfNAプールを創出するステップと、iv)増幅可能なcfNAプールを増幅して、分析可能なcfNA分子のプールを生成するステップと、を含む、方法を提供する。
【0013】
第2の態様において、本開示は、試料中のcfNAを核酸精製ステップに供することなく試料中のcfNAのISAを行う方法であって、i)複数のcfNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfNA分子の少なくとも一部分の3’末端に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfNA分子の少なくとも一部分を修飾cfNAに変換して、増幅可能なcfNAプールを創出するステップと、v)増幅可能なcfNAプールを増幅して、分析可能なcfNA分子のプールを生成するステップと、を含む、方法を提供する。
【0014】
第3の態様において、本開示は、試料中のcfNAを核酸精製ステップに供することなく試料中のcfNAのISAを行う方法であって、i)複数のcfNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfNA分子の少なくとも一部分の5’末端に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfNA分子の少なくとも一部分を修飾cfNAに変換して、増幅可能なcfNAプールを創出するステップと、v)増幅可能なcfNAプールを増幅して、分析可能なcfNA分子のプールを生成するステップと、を含む、方法を提供する。
【0015】
第4の態様において、本開示は、試料中のcfNAを核酸精製ステップに供することなく試料中のcfNAのISAを行う方法であって、i)複数のcfNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfNA分子の少なくとも一部分の3’末端と5’末端との両方に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfNA分子の少なくとも一部分を修飾cfNAに変換して、増幅可能なcfNAプールを創出するステップと、v)増幅可能なcfNAプールを増幅して、分析可能なcfNA分子のプールを生成するステップと、を含む、方法を提供する。
【0016】
第5の態様において、本開示は、試料を核酸精製ステップに供することなく試料中のcfDNAのISAを行う方法であって、i)複数のcfDNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfDNA分子の少なくとも一部分を修飾cfDNAに変換して、増幅可能なcfDNAプールを創出するステップと、iv)増幅可能なcfDNAプールを増幅して、分析可能なcfDNA分子のプールを生成するステップと、を含む、方法を提供する。
【0017】
第6の態様において、本開示は、試料を核酸精製ステップに供することなく試料中のcfDNAのISAを行う方法であって、i)複数のcfDNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfDNA分子の少なくとも一部分の3’末端に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfDNA分子の少なくとも一部分を修飾cfDNAに変換して、増幅可能なcfDNAプールを創出するステップと、v)増幅可能なcfDNAプールを増幅して、分析可能なcfDNA分子のプールを生成するステップと、を含む、方法を提供する。
【0018】
第7の態様において、本開示は、試料を核酸精製ステップに供することなく試料中のcfDNAのISAを行う方法であって、i)複数のcfDNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfDNA分子の少なくとも一部分の5’末端に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfDNA分子の少なくとも一部分を修飾cfDNAに変換して、増幅可能なcfDNAプールを創出するステップと、v)増幅可能なcfDNAプールを増幅して、分析可能なcfDNA分子のプールを生成するステップと、を含む、方法を提供する。
【0019】
第8の態様において、本開示は、試料を核酸精製ステップに供することなく試料中のcfDNAのISAを行う方法であって、i)複数のcfDNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfDNA分子の少なくとも一部分の3’末端と5’末端との両方に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfDNA分子の少なくとも一部分を修飾cfDNAに変換して、増幅可能なcfDNAプールを創出するステップと、v)増幅可能なcfDNAプールを増幅して、分析可能なcfDNA分子のプールを生成するステップと、を含む、方法を提供する。
【0020】
第9の態様において、本開示は、試料を核酸精製ステップに供することなく試料中のcfRNAのISAを行う方法であって、i)複数のcfRNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfRNA分子の少なくとも一部分を修飾cfRNAに変換して、増幅可能なcfRNAプールを創出するステップと、iv)増幅可能なcfRNAプールを増幅して、分析可能なcfRNA分子のプールを生成するステップと、を含む、方法を提供する。
【0021】
第10の態様において、本開示は、試料を核酸精製ステップに供することなく試料中のcfRNAのISAを行う方法であって、i)複数のcfRNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfRNA分子の少なくとも一部分の3’末端に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfRNA分子の少なくとも一部分を修飾cfRNAに変換して、増幅可能なcfRNAプールを創出するステップと、v)増幅可能なcfRNAプールを増幅して、分析可能なcfRNA分子のプールを生成するステップと、を含む、方法を提供する。
【0022】
第11の態様において、本開示は、試料を核酸精製ステップに供することなく試料中のcfRNAのISAを行う方法であって、i)複数のcfRNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfRNA分子の少なくとも一部分の5’末端に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfRNA分子の少なくとも一部分を修飾cfRNAに変換して、増幅可能なcfRNAプールを創出するステップと、v)増幅可能なcfRNAプールを増幅して、分析可能なcfRNA分子のプールを生成するステップと、を含む、方法を提供する。
【0023】
第12の態様において、本開示は、試料を核酸精製ステップに供することなく試料中のcfRNAのISAを行う方法であって、i)複数のcfRNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfRNA分子の少なくとも一部分の3’末端と5’末端との両方に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfRNA分子の少なくとも一部分を修飾cfRNAに変換して、増幅可能なcfRNAプールを創出するステップと、v)増幅可能なcfRNAプールを増幅して、分析可能なcfRNA分子のプールを生成するステップと、を含む、方法を提供する。
【0024】
上述の第1~第12の態様のそれぞれの特定の実施形態において、液体試料は、対象から得られる任意の液体試料である。特定の実施形態において、液体試料は、血液試料、血清試料、血漿試料、唾液試料、脳脊髄液試料、または尿試料である。特定の実施形態において、液体試料は、処理される。例えば、血液試料は、血漿または血清試料を生成するために処理され得る。
【0025】
上述の第1~第12の態様のそれぞれの特定の実施形態において、試料容量は、約1ml未満、約0.5ml未満、約0.1ml未満、約0.05ml未満、または約0.025ml未満(しかし全事例において0.010ml超)であり得る。特定の実施形態において、試料容量は、約10~約150マイクロリットルである。特定の実施形態において、試料容量は、約10~約100マイクロリットルである。特定の実施形態において、試料容量は、約10~約75マイクロリットルである。特定の実施形態において、試料容量は、約10~約50マイクロリットルである。特定の実施形態において、試料容量は、約10~約25マイクロリットルである。
【0026】
上述の第1~第12の態様のそれぞれの特定の実施形態において、本明細書に記載される範囲内の試料容量が、対象から直接得られる場合がある(すなわち、25マイクロリットルの血液の試料が、指穿刺によって対象から得られる場合がある)。上述の第1~第4の態様のそれぞれにおいて、本明細書に記載される範囲内の試料容量は、対象から得られるより大きな容量の試料から得られてもよい(すなわち、5mlの血液の試料が対象から得られてもよく、この5mlの試料から50マイクロリットルの試料が採取され、試料容量として使用されてもよい)。
【0027】
上述の第1~第12の態様のそれぞれの特定の実施形態において、cfNA、cfDNA、及び/またはcfRNAの3’末端、5’末端、または3’末端と5’末端との両方に付加される外因性核酸配列は、二本鎖核酸配列である。上述の第1~第12の態様のそれぞれの特定の実施形態において、cfNA、cfDNA、及び/またはcfRNAの3’末端、5’末端、または3’末端と5’末端との両方に付加される外因性核酸配列は、パリンドローム配列を含有する一本鎖核酸配列である。前述の内容の特定の実施形態において、cfNA、cfDNA、及び/またはcfRNAは、二本鎖である。
【0028】
上述の第1~第4の態様のそれぞれの特定の実施形態において、cfNAは、任意の核酸であり得る。特定の実施形態において、cfNAはcfDNAである。特定の実施形態において、cfNAは二本鎖cfDNAである。特定の実施形態において、cfNAは一本鎖cfDNAである。特定の実施形態において、cfNAは無細胞RNA(cfRNA)である。特定の実施形態において、cfNAは二本鎖cfRNAである。特定の実施形態において、cfNAは一本鎖cfRNAである。
【0029】
第1~第12の態様の特定の実施形態において、試料は、cfDNAとcfRNAとの両方を含有してもよく、cfDNA及びcfRNAのそれぞれが増幅されて、cfDNA分子及びcfRNA分子の両方の分析可能なプールが生成される。第1~第12の態様の特定の実施形態において、試料は、cfDNAとcfRNAとの両方を含有してもよく、cfDNAのみが増幅されて、分析可能なcfDNA分子のプールが生成される。第1~第12の態様の特定の実施形態において、試料は、cfDNAとcfRNAとの両方を含有してもよく、cfRNAのみが増幅されて、分析可能なcfRNA分子のプールが生成される。前述の内容において、cfDNAは、二本鎖であってもよく、かつ/または、cfRNAは、二本鎖であってもよい。
【0030】
上述の第1~第12の態様のそれぞれの特定の実施形態において、処理ステップは、希釈、緩衝液もしくは緩衝液系の添加、試料の加熱、試料中のcfNA(cfDNA及び/またはcfRNAを含む)の少なくとも一部分の断片化、または前述のものの組み合わせであり得る。
【0031】
上述の第1~第12の態様のそれぞれの特定の実施形態において、試料中のcfNA分子の少なくとも一部分を修飾cfNAに変換して、増幅可能なcfNAプールを創出するステップは、試料中のcfNA(cfDNA及び/またはcfRNAを含む)の少なくとも一部分の末端修復、試料中のcfNA(cfDNA及び/またはcfRNAを含む)の少なくとも一部分の平滑末端cfNAへの変換、試料中のcfNA(cfDNA及び/またはcfRNAを含む)の少なくとも一部分のAテーリング、ライゲーション、または前述のものの組み合わせを伴う。
【0032】
上述の第1~第12の態様のそれぞれの特定の実施形態において、試料中のcfNA分子の少なくとも一部分を修飾cfNAに変換して、増幅可能なcfNAプールを創出するステップは、
i)3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するポリメラーゼ、及びii)リガーゼ、
i)3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するポリメラーゼ、ii)リガーゼ、及びiii)ポリヌクレオチドキナーゼ、
i)3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するポリメラーゼ、ii)リガーゼ、iii)ポリヌクレオチドキナーゼ、及びiv)複製ブロック活性化活性、
i)3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するポリメラーゼ、ii)リガーゼ、iii)ポリヌクレオチドキナーゼ、iv)複製ブロック活性化活性、及びv)核酸ニッキング酵素活性、
i)3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するポリメラーゼ、ii)リガーゼ、iii)ポリヌクレオチドキナーゼ、iv)複製ブロック活性化活性、v)核酸ニッキング酵素活性、及びvi)核酸結合タンパク質
を含む、酵素混合物の使用を伴う。
【0033】
上述の第5~第8の態様のそれぞれの特定の実施形態において、cfDNAは、二本鎖cfDNAであっても一本鎖cfDNAであってもよい。第5~第8の態様の特定の実施形態において、cfDNAは二本鎖cfDNAである。上述の第5~第8の態様の特定の実施形態において、試料は、cfRNA(一本鎖または二本鎖のいずれか)をさらに含有してもよい。第5~第8の態様の特定の実施形態において、試料は、cfDNAとcfRNAとの両方を含有してもよく、cfDNAのみが増幅されて、分析可能なcfDNA分子のプールが生成される。第5~第8の態様の特定の実施形態において、試料は、cfDNAとcfRNAとの両方を含有してもよく、cfDNA及びcfRNAのそれぞれが増幅されて、分析可能なcfDNA分子及びcfRNA分子のプールが生成される。
【0034】
上述の第9~第12の態様のそれぞれの特定の実施形態において、cfRNAは、二本鎖cfRNAであっても一本鎖cfRNAであってもよい。第9~第12の態様の特定の実施形態において、cfRNAは二本鎖cfRNAである。上述の第9~第12の態様の特定の実施形態において、試料は、cfDNA(一本鎖または二本鎖のいずれか)をさらに含有してもよい。第9~第12の態様の特定の実施形態において、試料は、cfRNAとcfDNAとの両方を含有してもよく、cfRNAのみが増幅されて、分析可能なcfRNA分子のプールが生成される。第9~第12の態様の特定の実施形態において、試料は、cfRNAとcfDNAとの両方を含有してもよく、cfRNA及びcfDNAのそれぞれが増幅されて、分析可能なcfRNA分子及びcfDNA分子のプールが生成される。
【0035】
上述の第1~第12の態様のそれぞれの特定の実施形態において、試料中に存在するcfNAの少なくとも50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上が修飾cfNAに変換されて、増幅可能なcfNAプールが創出される。第5~第8の態様にあるように、cfNAがcfDNA(二本鎖cfDNAを含む)であるとき、試料中に存在するcfDNAの少なくとも50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上が修飾cfDNAに変換されて、増幅可能なcfDNAプールが創出される。第9~第12の態様にあるように、cfNAがcfRNA(二本鎖cfRNAを含む)であるとき、試料中に存在するcfRNAの少なくとも50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上が修飾cfRNAに変換されて、増幅可能なcfRNAプールが創出される。
【0036】
第13の態様において、本開示は、試料中のcfNAを核酸精製ステップに供することなく分析のための試料中のcfNAを調製する方法であって、i)複数のcfNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfNA分子の少なくとも一部分を修飾cfNAに変換して、増幅可能なcfNAプールを創出するステップと、を含む、方法を提供する。
【0037】
第14の態様において、本開示は、試料中のcfNAを核酸精製ステップに供することなく分析のための試料中のcfNAを調製する方法であって、i)複数のcfNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfNA分子の少なくとも一部分の3’末端に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfNA分子の少なくとも一部分を修飾cfNAに変換して、増幅可能なcfNAプールを創出するステップと、を含む、方法を提供する。
【0038】
第15の態様において、本開示は、試料中のcfNAを核酸精製ステップに供することなく分析のための試料中のcfNAを調製する方法であって、i)複数のcfNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfNA分子の少なくとも一部分の5’末端に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfNA分子の少なくとも一部分を修飾cfNAに変換して、増幅可能なcfNAプールを創出するステップと、を含む、方法を提供する。
【0039】
第16の態様において、本開示は、試料中のcfNAを核酸精製ステップに供することなく分析のための試料中のcfNAを調製する方法であって、i)複数のcfNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfNA分子の少なくとも一部分の3’末端と5’末端との両方に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfNA分子の少なくとも一部分を修飾cfNAに変換して、増幅可能なcfNAプールを創出するステップと、を含む、方法を提供する。
【0040】
第17の態様において、本開示は、試料中のcfDNAを核酸精製ステップに供することなく分析のための試料中のcfDNAを調製する方法であって、i)複数のcfDNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfDNA分子の少なくとも一部分を修飾cfDNAに変換して、増幅可能なcfDNAプールを創出するステップと、を含む、方法を提供する。
【0041】
第18の態様において、本開示は、試料中のcfDNAを核酸精製ステップに供することなく分析のための試料中のcfDNAを調製する方法であって、i)複数のcfDNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfDNA分子の少なくとも一部分の3’末端に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfDNA分子の少なくとも一部分を修飾cfDNAに変換して、増幅可能なcfDNAプールを創出するステップと、を含む、方法を提供する。
【0042】
第19の態様において、本開示は、試料中のcfDNAを核酸精製ステップに供することなく分析のための試料中のcfDNAを調製する方法であって、i)複数のcfDNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfDNA分子の少なくとも一部分の5’末端に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfDNA分子の少なくとも一部分を修飾cfDNAに変換して、増幅可能なcfDNAプールを創出するステップと、を含む、方法を提供する。
【0043】
第20の態様において、本開示は、試料中のcfDNAを核酸精製ステップに供することなく分析のための試料中のcfDNAを調製する方法であって、i)複数のcfDNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfDNA分子の少なくとも一部分の3’末端と5’末端との両方に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfDNA分子の少なくとも一部分を修飾cfDNAに変換して、増幅可能なcfDNAプールを創出するステップと、v)増幅可能なcfDNAプールを増幅して、分析可能なcfDNA分子のプールを生成するステップと、を含む、方法を提供する。
【0044】
第21の態様において、本開示は、試料中のcfRNAを核酸精製ステップに供することなく分析のための試料中のcfRNAを調製する方法であって、i)複数のcfRNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfRNA分子の少なくとも一部分を修飾cfRNAに変換して、増幅可能なcfRNAプールを創出するステップと、を含む、方法を提供する。
【0045】
第22の態様において、本開示は、試料中のcfRNAを核酸精製ステップに供することなく分析のための試料中のcfRNAを調製する方法であって、i)複数のcfRNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfRNA分子の少なくとも一部分の3’末端に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfRNA分子の少なくとも一部分を修飾cfRNAに変換して、増幅可能なcfRNAプールを創出するステップと、を含む、方法を提供する。
【0046】
第23の態様において、本開示は、試料中のcfRNAを核酸精製ステップに供することなく分析のための試料中のcfRNAを調製する方法であって、i)複数のcfRNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfRNA分子の少なくとも一部分の5’末端に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfRNA分子の少なくとも一部分を修飾cfRNAに変換して、増幅可能なcfRNAプールを創出するステップと、を含む、方法を提供する。
【0047】
第24の態様において、本開示は、試料中のcfRNAを核酸精製ステップに供することなく分析のための試料中のcfRNAを調製する方法であって、i)複数のcfRNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfRNA分子の少なくとも一部分の3’末端と5’末端との両方に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfRNA分子の少なくとも一部分を修飾cfRNAに変換して、増幅可能なcfRNAプールを創出するステップと、を含む、方法を提供する。
【0048】
上述の第13~第24の態様のそれぞれの特定の実施形態において、液体試料は、第1~第12の態様に関して記載した通りである。
【0049】
上述の第13~第24の態様のそれぞれの特定の実施形態において、試料容量は、第1~第12の態様に関して記載した通りである。
【0050】
上述の第13~第24の態様のそれぞれの特定の実施形態において、処理ステップは、第1~第12の態様に関して記載した通りであり得る。
【0051】
上述の第13~第24の態様のそれぞれの特定の実施形態において、試料中のcfNA分子の少なくとも一部分を修飾cfNAに変換して、増幅可能なcfNAプールを創出するステップは、第1~第12の態様に関して記載した通りのプロセスを伴う。
【0052】
上述の第13~第24の態様のそれぞれの特定の実施形態において、試料中のcfNA分子の少なくとも一部分を修飾cfNAに変換して、増幅可能なcfNAプールを創出するステップは、第1~第12の態様に関して記載した通りの酵素混合物の使用を伴う。
【0053】
上述の第13~第24の態様のそれぞれの特定の実施形態において、cfNA、cfDNA、及び/またはcfRNAの3’末端、5’末端、または3’末端と5’末端との両方に付加される外因性核酸配列は、第1~第12の態様に関して記載した通りである。
【0054】
上述の第13~第24の態様のそれぞれの特定の実施形態において、cfNAは、任意の核酸であり得る。特定の実施形態において、cfNAはcfDNAである。特定の実施形態において、cfNAは二本鎖cfDNAである。特定の実施形態において、cfNAは一本鎖cfDNAである。特定の実施形態において、cfNAは無細胞RNA(cfRNA)である。特定の実施形態において、cfNAは二本鎖cfRNAである。特定の実施形態において、cfNAは一本鎖cfRNAである。
【0055】
第13~第24の態様の特定の実施形態において、試料は、cfDNAとcfRNAとの両方を含有してもよく、cfDNA及びcfRNAのそれぞれが修飾されて、cfDNA分子及びcfRNA分子の両方の増幅可能なプールが生成される。第13~第24の態様の特定の実施形態において、試料は、cfDNAとcfRNAとの両方を含有してもよく、cfDNAのみが修飾されて、増幅可能なcfDNA分子のプールが生成される。第13~第24の態様の特定の実施形態において、試料は、cfDNAとcfRNAとの両方を含有してもよく、cfRNAのみが修飾されて、増幅可能なcfRNA分子のプールが生成される。前述の内容において、cfDNAは、二本鎖であってもよく、かつ/または、cfRNAは、二本鎖であってもよい。
【0056】
上述の第17~第20の態様のそれぞれの特定の実施形態において、cfDNAは、二本鎖cfDNAであっても一本鎖cfDNAであってもよい。第17~第20の態様の特定の実施形態において、cfDNAは二本鎖cfDNAである。上述の第17~第20の態様の特定の実施形態において、試料は、cfRNA(一本鎖または二本鎖のいずれか)をさらに含有してもよい。第17~第20の態様の特定の実施形態において、試料は、cfDNAとcfRNAとの両方を含有してもよく、cfDNAのみが修飾されて、増幅可能なcfDNA分子のプールが生成される。第17~第20の態様の特定の実施形態において、試料は、cfDNAとcfRNAとの両方を含有してもよく、cfDNA及びcfRNAのそれぞれが修飾されて、増幅可能なcfDNA分子及びcfRNA分子のプールが生成される。
【0057】
上述の第21~第24の態様のそれぞれの特定の実施形態において、cfRNAは、二本鎖cfRNAであっても一本鎖cfRNAであってもよい。第21~第24の態様の特定の実施形態において、cfRNAは二本鎖cfRNAである。上述の第21~第24の態様の特定の実施形態において、試料は、cfDNA(一本鎖または二本鎖のいずれか)をさらに含有してもよい。第21~第24の態様の特定の実施形態において、試料は、cfRNAとcfDNAとの両方を含有してもよく、cfRNAのみが修飾されて、増幅可能なcfRNA分子のプールが生成される。第21~第24の態様の特定の実施形態において、試料は、cfRNAとcfDNAとの両方を含有してもよく、cfRNA及びcfDNAのそれぞれが修飾されて、増幅可能なcfRNA分子及びcfDNA分子のプールが生成される。
【0058】
上述の第21~第24の態様のそれぞれの特定の実施形態において、試料中に存在するcfNAの少なくとも50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上が修飾cfNAに変換されて、増幅可能なcfNAプールが創出される。第17~第20の態様にあるように、cfNAがcfDNA(二本鎖cfDNAを含む)であるとき、試料中に存在するcfDNAの少なくとも50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上が修飾cfDNAに変換されて、増幅可能なcfDNAプールが創出される。第21~第24の態様にあるように、cfNAがcfRNA(二本鎖cfRNAを含む)であるとき、試料中に存在するcfRNAの少なくとも50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上が修飾cfRNAに変換されて、増幅可能なcfRNAプールが創出される。
【0059】
第25の態様において、本開示は、cfNAを分析する方法であって、i)第1~第4の態様などの本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfNA分子のプールを分析して、分析可能なcfNA分子のプール中のcfNA分子の特性を決定するステップと、を含む、方法を提供する。
【0060】
第26の態様において、本開示は、cfDNAを分析する方法であって、i)第5~第8の態様などの本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfDNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfDNA分子のプールを分析して、分析可能なcfDNA分子のプール中のcfDNA分子の特性を決定するステップと、を含む、方法を提供する。
【0061】
第27の態様において、本開示は、cfRNAを分析する方法であって、i)第9~第12の態様などの本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfRNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfRNA分子のプールを分析して、分析可能なcfRNA分子のプール中のcfRNA分子の特性を決定するステップと、を含む、方法を提供する。
【0062】
第25の態様の特定の実施形態において、分析可能なプールは、第4の態様の第1、第2、第3の方法によって生成される。第26の態様の特定の実施形態において、分析可能なプールは、第5、第6、第7、または第8の態様の方法によって生成される。第27の態様の特定の実施形態において、分析可能なプールは、第9、第10、第11、または第12の態様の方法によって生成される。
【0063】
上述の第25~第27の態様のそれぞれにおいて、分析ステップは、核酸分子の分析に使用するのに好適な任意の技法を伴い得る。好適な技法としては、限定されないが、次世代配列決定(NGS)、ならびに、リアルタイム定量的PCR、ブロッカーPCR、デジタル液滴PCR(ddPCR)、クランピングPCR、ICE-COLD PCR、castPCR、ARMS PCR、BEAMingなどだがこれらに限定されない、PCRベースの技術が挙げられる。本開示の方法によって生成された分析可能なcfNA分子(cfDNA及びcfRNAを含む)のプールは、分析可能なcfNAプールの調製中に核酸分子の精製を必要とすることなく、これら及び他の分析技法で使用するのに十分な分量及び質のcfNA分子をもたらす。
【0064】
上述の第25~第27の態様のそれぞれにおいて、決定される特性は、cfNA分子(cfDNA及びcfRNAを含む)の任意の特性であり得る。2つ以上の特性が同時に分析されてもよい。代表的な特性としては、染色体異常、単一ヌクレオチド多型、遺伝子変異(限定されないが、例えば点変異、欠失、及び挿入)、メチル化パターン、及びコピー数多型が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、この特性は、疾患に関連する。
【0065】
第28の態様において、本開示は、疾患を患っているか、もしくはそのリスクがあるものとして対象を診断する方法であって、i)第1~第4の態様などの本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfNA分子のプールを分析して、分析可能なcfNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfNA分子の特性を決定するステップと、iii)この特性の存在に基づいて、対象が疾患を患っている、かつ/もしくはそのリスクがあると決定するステップ、または、この特性の非存在に基づいて、対象が疾患を患っていない、かつ/もしくはそのリスクがないと決定するステップと、を含む、方法を提供する。
【0066】
第29の態様において、本開示は、疾患を患っているか、もしくはそのリスクがあるものとして対象を診断する方法であって、i)第5~第8の態様などの本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfDNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfDNA分子のプールを分析して、分析可能なcfDNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfDNA分子の特性を決定するステップと、iii)この特性の存在に基づいて、対象が疾患を患っている、かつ/もしくはそのリスクがあると決定するステップ、または、この特性の非存在に基づいて、対象が疾患を患っていない、かつ/もしくはそのリスクがないと決定するステップと、を含む、方法を提供する。
【0067】
第30の態様において、本開示は、疾患を患っているか、もしくはそのリスクがあるものとして対象を診断する方法であって、i)第9~第12の態様などの本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfRNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfRNA分子のプールを分析して、分析可能なcfRNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfRNA分子の特性を決定するステップと、iii)この特性の存在に基づいて、対象が疾患を患っている、かつ/もしくはそのリスクがあると決定するステップ、または、この特性の非存在に基づいて、対象が疾患を患っていない、かつ/もしくはそのリスクがないと決定するステップと、を含む、方法を提供する。
【0068】
第28の態様の特定の実施形態において、分析可能なプールは、第4の態様の第1、第2、第3の方法によって生成される。第29の態様の特定の実施形態において、分析可能なプールは、第5、第6、第7、または第8の態様の方法によって生成される。第30の態様の特定の実施形態において、分析可能なプールは、第9、第10、第11、または第12の態様の方法によって生成される。
【0069】
上述の第28~第30の態様のそれぞれにおいて、分析ステップは、核酸分子の分析に使用するのに好適な任意の技法を伴い得る。好適な技法としては、限定されないが、次世代配列決定(NGS)、ならびに、リアルタイム定量的PCR、ブロッカーPCR、デジタル液滴PCR(ddPCR)、クランピングPCR、ICE-COLD PCR、castPCR、ARMS PCR、BEAMingなどだがこれらに限定されない、PCRベースの技術が挙げられる。本開示の方法によって生成された分析可能なcfNA分子(cfDNA及びcfRNAを含む)のプールは、分析可能なcfNAプールの調製中に核酸分子の精製を必要とすることなく、これら及び他の分析技法で使用するのに十分な分量及び質のcfNA分子をもたらす。
【0070】
上述の第28~第30の態様のそれぞれにおいて、決定される特性は、cfNA分子(cfDNA及びcfRNAを含む)の任意の特性であり得る。2つ以上の特性が同時に分析されてもよい。代表的な特性としては、染色体異常、単一ヌクレオチド多型、遺伝子変異(限定されないが、例えば点変異、欠失、及び挿入)、メチル化パターン、及びコピー数多型が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、この特性は、疾患に関連する。
【0071】
第31の態様において、本開示は、疾患を患う対象のための治療介入を決定する方法であって、i)第1~第4の態様などの本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfNA分子のプールを分析して、分析可能なcfNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfNA分子の特性を決定するステップと、iii)決定された特性に基づいて、治療介入を決定するステップと、を含む、方法を提供する。
【0072】
第32の態様において、本開示は、疾患を患う対象のための治療介入を決定する方法であって、i)第5~第8の態様などの本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfDNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfDNA分子のプールを分析して、分析可能なcfDNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfDNA分子の特性を決定するステップと、iii)決定された特性に基づいて、治療介入を決定するステップと、を含む、方法を提供する。
【0073】
第33の態様において、本開示は、疾患を患う対象のための治療介入を決定する方法であって、i)第9~第12の態様などの本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfRNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfRNA分子のプールを分析して、分析可能なcfRNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfRNA分子の特性を決定するステップと、iii)決定された特性に基づいて、治療介入を決定するステップと、を含む、方法を提供する。
【0074】
第31の態様の特定の実施形態において、分析可能なプールは、第4の態様の第1、第2、第3の方法によって生成される。第32の態様の特定の実施形態において、分析可能なプールは、第5、第6、第7、または第8の態様の方法によって生成される。第33の態様の特定の実施形態において、分析可能なプールは、第9、第10、第11、または第12の態様の方法によって生成される。
【0075】
上述の第31~第33の態様のそれぞれにおいて、分析ステップは、核酸分子の分析に使用するのに好適な任意の技法を伴い得る。好適な技法としては、限定されないが、次世代配列決定(NGS)、ならびに、リアルタイム定量的PCR、ブロッカーPCR、デジタル液滴PCR(ddPCR)、クランピングPCR、ICE-COLD PCR、castPCR、ARMS PCR、BEAMingなどだがこれらに限定されない、PCRベースの技術が挙げられる。本開示の方法によって生成された分析可能なcfNA分子(cfDNA及びcfRNAを含む)のプールは、分析可能なcfNAプールの調製中に核酸分子の精製を必要とすることなく、これら及び他の分析技法で使用するのに十分な分量及び質のcfNA分子をもたらす。
【0076】
上述の第31~第33の態様のそれぞれにおいて、決定される特性は、cfNA分子(cfDNA及びcfRNAを含む)の任意の特性であり得る。2つ以上の特性が同時に分析されてもよい。代表的な特性としては、染色体異常、単一ヌクレオチド多型、遺伝子変異(限定されないが、例えば点変異、欠失、及び挿入)、メチル化パターン、及びコピー数多型が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、この特性は、疾患に関連する。
【0077】
第34の態様において、本開示は、疾患の診断を受け、かつ疾患の治療のための治療レジメンを用いた治療を受けている対象の治療を監視するための方法であって、i)第1~第4の態様などの本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfNA分子のプールを分析して、分析可能なcfNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfNA分子の特性を決定するステップと、iii)決定された特性が現在の治療処置レジメンと適合性があるかを決定するステップと、iv)決定された特性が、治療レジメンが禁忌であるもしくは推奨されないことを示す場合は、治療レジメンを変更するステップ、または、決定された特性が、治療レジメンが引き続き推奨されることを示す場合は、治療レジメンを継続するステップと、vi)場合により、ステップi)~iv)を繰り返して、所望の時間間隔で治療介入を監視するステップと、を含む、方法を提供する。
【0078】
第35の態様において、本開示は、疾患の診断を受け、かつ疾患の治療のための治療レジメンを用いた治療を受けている対象の治療を監視するための方法であって、i)第5~第8の態様などの本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfDNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfDNA分子のプールを分析して、分析可能なcfDNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfDNA分子の特性を決定するステップと、iii)決定された特性が現在の治療処置レジメンと適合性があるかを決定するステップと、iv)決定された特性が、治療レジメンが禁忌であるもしくは推奨されないことを示す場合は、治療レジメンを変更するステップ、または、決定された特性が、治療レジメンが引き続き推奨されることを示す場合は、治療レジメンを継続するステップと、vi)場合により、ステップi)~iv)を繰り返して、所望の時間間隔で治療介入を監視するステップと、を含む、方法を提供する。
【0079】
第36の態様において、本開示は、疾患の診断を受け、かつ疾患の治療のための治療レジメンを用いた治療を受けている対象の治療を監視するための方法であって、i)第9~第12の態様などの本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfRNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfRNA分子のプールを分析して、分析可能なcfRNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfRNA分子の特性を決定するステップと、iii)決定された特性が現在の治療処置レジメンと適合性があるかを決定するステップと、iv)決定された特性が、治療レジメンが禁忌であるもしくは推奨されないことを示す場合は、治療レジメンを変更するステップ、または、決定された特性が、治療レジメンが引き続き推奨されることを示す場合は、治療レジメンを継続するステップと、vi)場合により、ステップi)~iv)を繰り返して、所望の時間間隔で治療介入を監視するステップと、を含む、方法を提供する。
【0080】
第34の態様の特定の実施形態において、分析可能なプールは、第4の態様の第1、第2、第3の方法によって生成される。第35の態様の特定の実施形態において、分析可能なプールは、第5、第6、第7、または第8の態様の方法によって生成される。第36の態様の特定の実施形態において、分析可能なプールは、第9、第10、第11、または第12の態様の方法によって生成される。
【0081】
上述の第34~第36の態様のそれぞれにおいて、分析ステップは、核酸分子の分析に使用するのに好適な任意の技法を伴い得る。好適な技法としては、限定されないが、次世代配列決定(NGS)、ならびに、リアルタイム定量的PCR、ブロッカーPCR、デジタル液滴PCR(ddPCR)、クランピングPCR、ICE-COLD PCR、castPCR、ARMS PCR、BEAMingなどだがこれらに限定されない、PCRベースの技術が挙げられる。本開示の方法によって生成された分析可能なcfNA分子(cfDNA及びcfRNAを含む)のプールは、分析可能なcfNAプールの調製中に核酸分子の精製を必要とすることなく、これら及び他の分析技法で使用するのに十分な分量及び質のcfNA分子をもたらす。
【0082】
上述の第34~第36の態様のそれぞれにおいて、決定される特性は、cfNA分子(cfDNA及びcfRNAを含む)の任意の特性であり得る。2つ以上の特性が同時に分析されてもよい。代表的な特性としては、染色体異常、単一ヌクレオチド多型、遺伝子変異(限定されないが、例えば点変異、欠失、及び挿入)、メチル化パターン、及びコピー数多型が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、この特性は、疾患に関連する。
【0083】
第37の態様において、本開示は、対象を監視する方法であって、i)第1~第4の態様などの本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfNA分子のプールを分析して、分析可能なcfNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfNA分子の特性を決定するステップと、iii)決定された特性に基づいて、対象が治療を必要としているかを決定するステップと、を含む、方法を提供する。
【0084】
第38の態様において、本開示は、対象を監視する方法であって、i)第5~第8の態様などの本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfDNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfDNA分子のプールを分析して、分析可能なcfDNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfDNA分子の特性を決定するステップと、iii)決定された特性に基づいて、対象が治療を必要としているかを決定するステップと、を含む、方法を提供する。
【0085】
第39の態様において、本開示は、対象を監視する方法であって、i)第9~第12の態様などの本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfRNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfRNA分子のプールを分析して、分析可能なcfRNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfRNA分子の特性を決定するステップと、iii)決定された特性に基づいて、対象が治療を必要としているかを決定するステップと、を含む、方法を提供する。
【0086】
第37の態様の特定の実施形態において、分析可能なプールは、第4の態様の第1、第2、第3の方法によって生成される。第38の態様の特定の実施形態において、分析可能なプールは、第5、第6、第7、または第8の態様の方法によって生成される。第39の態様の特定の実施形態において、分析可能なプールは、第9、第10、第11、または第12の態様の方法によって生成される。
【0087】
上述の第37~第39の態様のそれぞれにおいて、分析ステップは、核酸分子の分析に使用するのに好適な任意の技法を伴い得る。好適な技法としては、限定されないが、次世代配列決定(NGS)、ならびに、リアルタイム定量的PCR、ブロッカーPCR、デジタル液滴PCR(ddPCR)、クランピングPCR、ICE-COLD PCR、castPCR、ARMS PCR、BEAMingなどだがこれらに限定されない、PCRベースの技術が挙げられる。本開示の方法によって生成された分析可能なcfNA分子(cfDNA及びcfRNAを含む)のプールは、分析可能なcfNAプールの調製中に核酸分子の精製を必要とすることなく、これら及び他の分析技法で使用するのに十分な分量及び質のcfNA分子をもたらす。
【0088】
上述の第37~第39の態様のそれぞれにおいて、決定される特性は、cfNA分子(cfDNA及びcfRNAを含む)の任意の特性であり得る。2つ以上の特性が同時に分析されてもよい。代表的な特性としては、染色体異常、単一ヌクレオチド多型、遺伝子変異(限定されないが、例えば点変異、欠失、及び挿入)、メチル化パターン、及びコピー数多型が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、この特性は、疾患に関連する。
【発明を実施するための形態】
【0089】
以下の説明において、本発明の理解をより深めるために多数の具体的詳細が記載される。しかしながら、開示される実施形態がこれらの具体的詳細のうちの1つ以上を用いずに実施され得ることは当業者に明らかであろう。他の事例では、本発明を不明瞭にすることを避けるために、周知の特徴及び当業者に周知の手技は記載されていない。
【0090】
定義
本明細書で使用される場合、「増幅可能な核酸プール」という用語は、核酸分子の増幅が可能になるように元々の状態から改変されている核酸のプールを指す。特定の実施形態において、増幅可能な核酸プールは、試料中に存在する核酸分子の少なくとも一部分の3’末端、5’末端、または3’末端と5’末端との両方に外因性核酸配列を付加することによって創出される。
【0091】
本明細書で使用される場合、「増幅可能な核酸プール」及び「増幅可能なcfNAプール」という用語は、試料中に存在する、少なくとも1つの外因性核酸配列を含有するように修飾されている複数の核酸を指し、この外因性核酸配列は、外因性配列が結合している核酸分子を増幅するための反応において使用される。特定の実施形態において、核酸は、1つまたは2つの外因性配列を含有し得る。
【0092】
本明細書で使用される場合、「増幅可能なcfDNAプール」という用語は、試料中に存在する、少なくとも1つの外因性核酸配列を含有するように修飾されている複数のcfDNAを指し、この外因性核酸配列は、外因性配列が結合しているcfDNA分子を増幅するための反応において使用される。特定の実施形態において、cfDNAは、1つまたは2つの外因性配列を含有し得る。
【0093】
本明細書で使用される場合、「増幅可能なcfRNAプール」という用語は、試料中に存在する、少なくとも1つの外因性核酸配列を含有するように修飾されている複数のcfRNAを指し、この外因性核酸配列は、外因性配列が結合しているcfRNA分子を増幅するための反応において使用される。特定の実施形態において、cfRNAは、1つまたは2つの外因性配列を含有し得る。
【0094】
本明細書で使用される場合、「外因性核酸配列」という用語は、試料中に存在する、cfNA、cfDNA、及び/またはcfRNAを含む、核酸分子内に存在しない配列を意味する。特定の実施形態において、外因性核酸配列は、ヒトゲノムでは生じない配列である。特定の実施形態において、外因性核酸配列は、プライマーに結合することが可能なプライマー部位を含有する。特定の実施形態において、プライマー部位は、ユニバーサルプライマー部位である。特定の実施形態において、外因性核酸配列は、複製ブロックを含有する。
【0095】
本明細書で使用される場合、「無細胞核酸」または「cfNA」という用語は、血流、脳脊髄液、唾液、または尿を含むがこれらに限定されない体液中などの細胞外に見出される核酸のセグメントを意味する。cfNAは、対象(例えば、対象の細胞)を起源としてもよいし、対象以外の源(例えば、ウイルス感染)を起源としてもよい。
【0096】
本明細書で使用される場合、「無細胞DNA」または「cfDNA」という用語は、血流、脳脊髄液、唾液、または尿を含むがこれらに限定されない体液中などの細胞外に見出されるDNAのセグメントを意味する。cfDNAは、対象(例えば、対象の細胞)を起源としてもよいし、対象以外の源(例えば、ウイルス感染)を起源としてもよい。
【0097】
本明細書で使用される場合、「無細胞RNA」または「cfRNA」という用語は、血流、脳脊髄液、唾液、または尿を含むがこれらに限定されない体液中などの細胞外に見出されるRNAのセグメントを意味する。「無細胞RNA」または「cfRNA」という用語には、RNAのセグメントのセグメントから生成されたDNA(例えば、二本鎖cDNAなど)も含まれる。cfRNAは、対象(例えば、対象の細胞)を起源としてもよいし、対象以外の源(例えば、ウイルス感染)を起源としてもよい。
【0098】
本明細書で使用される場合、試料または試料中の核酸(cfNA、cfDNA、及び/またはcfRNAを含む)を説明するために使用されるときの「試料を核酸精製ステップに供することなく」、「精製ステップに供されていない」、「未精製」、または「精製に供されない」などの用語(ならびに同様の用語)は、その試料/核酸が、試料中の核酸(cfNA、cfDNA、及び/またはcfRNAを含む)を特異的に単離または精製するためのステップに供されていないことを意味する。
【0099】
本明細書で使用される場合、「特異的に単離する」という用語は、試料中の核酸(cfNA、cfDNA、及び/またはcfRNAを含む)を核酸の配列特異的特性に基づいて(例えば、プローブの使用などによって)試料から分離することを可能にするステップまたは一連のステップを意味する。本明細書で使用される場合、試料中の核酸(cfNA、cfDNA、及び/またはcfRNAを含む)に関する「精製する」という用語は、試料中の核酸(cfNA、cfDNA、及び/またはcfRNAを含む)を核酸の結合特性に基づいて試料から分離することを可能にするステップまたは一連のステップ(例えば、配列特異的な様式以外の様式で核酸に結合する核酸結合試薬とのインキュベーション)を意味する。したがって、試料の性質がどのようなものであれ、試料は、試料から核酸を取り除くため、または核酸以外の試料の成分の全てもしくは本質的に全てを試料から取り除くために、i)試料中に存在し得る何らかの核酸(cfNA、cfDNA、及び/またはcfRNAを含む)を特異的に単離するステップ(複数可)に供されることも、またはii)核酸を単離するための、試料中の核酸(cfNA、cfDNA、及び/またはcfRNAを含む)と核酸結合試薬との相互作用を伴うステップに供されることもない。特定の事例では、核酸を含有する試料は処理されてもよく(例えば、血液試料は、血清または血漿試料を生成するために遠心処理または他の手段によって処理されてもよい)、この処理は、特定の成分(例えばタンパク質、細胞、または他の成分)を取り除き、かつ/または試料中の核酸の濃度を増加させてもよい。そのような処理は、試料中の核酸(cfNA、cfDNA、及び/またはcfRNAを含む)を「特異的に単離する」または「精製する」ものとはみなされないが、これは、核酸分子が依然として試料のさらなる成分と共に存在し、この処理が試料中の核酸分子を特異的に対象としないためである。一実施形態において、「特異的に単離する」及び「精製する」という用語は、試料の遠心処理を含まない。別の実施形態では、cfNA(cfDNA及び/またはcfRNAを含む)の濃度を増加させる処理ステップは、試料の少なくとも1つの他の成分の濃度も増加する場合、試料中のcfNA(cfDNA及び/またはcfRNAを含む)を「特異的に単離する」または「精製する」ものとはみなされない。
【0100】
本明細書で使用される場合、反応(例えば核酸の増幅)を説明するために使用されるときの「インサイチュ」という用語は、その反応が、試料をさらに操作する必要なしに試料中で起こることを意味する。
【0101】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、「およそ」、「大体」、「ほぼ」、または「の領域内」を意味する。「約」という用語が数値範囲と併せて使用されるとき、この用語は、記載される数値の上下に両境界を広げることにより、その範囲を修飾する。概して、本明細書において「約」という用語は、規定値を1パーセント~20パーセント上または下の(より高いまたはより低い)差異だけ上回る数値及び下回る数値を修飾するように使用され、特定の実施形態では、本明細書において「約」という用語は、規定値を1パーセント~5パーセント上または下の(より高いまたはより低い)差異だけ上回る数値及び下回る数値を修飾するように使用される。
【0102】
本明細書で使用される場合、「動物」、「対象」、及び「患者」という用語は、本明細書で使用される場合、哺乳動物、動物(例えば、ネコ、イヌ、ウマ、ブタなど)、及びヒトを含むがこれらに限定されない、動物界の全てのメンバーを含む。特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0103】
本明細書で使用される場合、「試料中のcfNA分子の少なくとも一部分の5’末端及び/または3’末端に外因性核酸配列を付加する」という用語または同様の用語は、試料中に存在するcfNAの配列への外因性核酸配列の組み込み、またはcfNAの配列の少なくとも一部分の相補体である配列への外因性核酸配列の組み込みを指す。そのような組み込みは、cfNA配列への外因性核酸配列のアニーリング及び(外因性核酸配列によりプライミングされてもよい)cfNA配列の後の複製によって達成することができる。そのような組み込みは、cfNAの少なくとも1つの鎖への外因性核酸配列の少なくとも1つの鎖のライゲーションによって達成されてもよい。いずれにしても、cfNAの少なくとも5’末端及びまたは3’末端が外因性核酸配列を含有する、本明細書では修飾cfNAと称される場合もあるcfNA(またはcfNAの相補体)が生成される。
【0104】
本明細書及び添付の「特許請求の範囲」で使用される場合、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、文脈が別段明らかに指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「核酸分子(a nucleic acid molecule)」への言及は、1つの核酸分子、2つ以上の核酸分子、またはそのような核酸分子の混合物を指し、「アッセイ(an assay)」への言及は、当業者に知られる複数の同等なステップ及び方法への言及を含むなどということである。
【0105】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間の各介在値、及びその規定範囲内のあらゆる他の規定値または介在値が、本発明に包含されることを理解されたい。規定範囲が上限及び下限を含む場合、含まれるこれらの限界のいずれかを除外する範囲も本発明に含まれる。
【0106】
明示的な規定がない限り、本明細書で使用される用語は、当業者により理解されている平易かつ通常の意味を有するよう意図される。上記の定義は、読者の本発明の理解を助けることを意図するが、明確な記載がない限り、かかる用語の意味を変えること、または別様に限定することを意図するものではない。本明細書で言及される全ての公開文献は、公開文献に記載され、かつ本明細書に記載される発明に関連して使用され得る、系統的表現及び方法論を説明し開示する目的で、参照により援用される。
【0107】
導入
体内の核酸(DNA及びRNA)のほとんどは細胞内に位置しているが、相当量の細胞外核酸が血流中に循環していることも見受けられる。Mandel及びMetaisにより1948年に初めて血液中のcfDNAが発見されてから、cfDNAは、疾患または病態(例えば癌)を有する患者と健常な個体とを2つの方法で識別することが、研究者らにより見出されている。その2つの方法とは、第1に、疾患または病態を有する患者の血液中のcfDNA濃度の上昇によるもの、そして第2に、疾患または病態を有する患者のcfDNAにおける腫瘍特異的変質の存在によるものである。腫瘍特異的cfDNAは、血液癌、結腸直腸癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、肺癌、乳癌、胃癌、前立腺癌、及び子宮頸癌などだがこれらに限定されない、広範な癌に対応する血液中で見出されている。これは、cfDNAが全ての癌の特質であり、癌の診断、疾患進行の監視、治療介入の特定、及び治療応答の監視に使用することのできる、病理学的プロセスを反映することを示唆する。cfDNAは、新たに合成された核酸の「能動的」放出、ならびに「受動的」機序によって、ネクローシス性及び/またはアポトーシス性の細胞死の最終産物として血流に進入すると考えられている。
【0108】
健常な対象の場合、循環cfDNAの平均濃度は血漿1mL当たり10~30ngであり、癌患者の値は、血漿1mL当たり100ngを超える。複数の方法を使用した、腫瘍によりもたらされたcfDNAの推定値は、0.01~90%である(Schwarzenbach H,et al.,2008,Ann N Y Acad Sci 1137:190-196)。ほとんどのcfDNA断片は150~200塩基対の長さであり、循環中の可変的な半減期は、15分間から数時間まで及ぶ。血流中のcfDNAの量は、腫瘍進行、腫瘍位置、腫瘍の代謝回転、腫瘍サイズ、ならびに血液及びリンパ循環によるcfDNAのクリアランス、分解、及びフィルタリングなどだがこれらに限定されない、種々の要素に影響される。最も一般的な公開されているcfDNAの抽出方法は、市販のスピンカラム抽出キットである。他に報告されている抽出方法としては、磁気ビーズ、フェノール/クロロホルム抽出、及びアルカリ塩添加(alkaline salting)が挙げられる。cfDNA抽出の効率は、変異(複数可)を検出する能力に直接影響し得、この検出能力は、アッセイ感度に直接影響する。
【0109】
循環cfDNAベースの非侵襲的方法を使用すると、特定の癌の分子特性決定に従い、癌患者の適切な治療のために特異的及び予測的バイオマーカーを検出し、監視することができる。例えば、qPCR、デジタルPCR、または配列決定を使用することにより、標的療法の前、その間、及びその後の癌患者のcfDNAから、KRAS及びEFGR変異の状態を得ることができる(Bidard FC,et al.,2013,Cancer Metastasis Rev.32(1-2):179-188)。次世代配列決定(NGS)によるcfDNAの全エクソーム配列決定は、腫瘍進行の分子的状態に関する大域的で完全かつリアルタイムな実態を提供することができる(Diaz LA Jr,et al.,2013,Oncotarget 4(10):1856-1857)。最も重要なことには、超深度cfDNA変異プロファイリングから腫瘍量を定量的に推定することができる(Bettegowda C,et al.,2014,Sci.Transl.Med.6(224):224ra24)。腫瘍ゲノムのメチル化の状態をcfDNA断片中で検出することもできる(Mori T,et al.,2005,J.Clin.Oncol.23(36):9351-9358)。全体として、血液生検を用いた患者中心の分子診断学の発展は、患者ケアに多くの利益を提示する。
【0110】
精密医療の時代において、患者はますます、腫瘍の位置または組織学的特徴ではなく、患者特有の腫瘍の遺伝的構造に基づいて治療されることが予想されている。しかしながら、癌ゲノムは、療法の適用などの淘汰圧下で不安定であり、変化しやすい。したがって、遺伝子学的に個別化された癌治療は、臨床成績の改善のための腫瘍ゲノムの連続的監視を必要とする。その実行は、現在の技法では臨床的に実用的でない。原発腫瘍に典型的な遺伝子変異及びエピジェネティック変異が癌患者の循環cfDNA中で検出され得るという所見は、血液中のcfDNAの少なくとも一部が腫瘍由来であることを示唆する。したがって、末梢血のcfDNA分析は、非侵襲的方式における長期的な腫瘍監視の無比の機会を提示する。
【0111】
以上、固形腫瘍の試料採取に固有の欠点を詳解した。
【0112】
対照的に、血液生検、特にcfDNA分析は、癌の精密管理のための利用しやすく低侵襲性かつ長期的な解決策を提示する。cfDNAを用いる臨床検査は、本質的に特異的であり、高感度であり、腫瘍内及び腫瘍間の両方の不均一性をリアルタイムで捉えることができる(Dawson SJ,et al.,2013,N Engl J Med 368:1199-1209)。周期的な「血液生検」分析による低頻度の変異の検出により、病変が画像法で検出するのに十分大きくなる前の腫瘍進行を監視することができる(Diaz LA Jr,et al.,2012,Nature 486(7404):537-540)。また、単一変異を超える分析は、効果的な治療法の決断のために腫瘍不均一性を捉えることが保証され得る(Sequist LV,et al.,2011,Sci.Transl.Med.23(75):75ra26)。血液生検は組織生検ほど空間的に限定されず、体内における癌発生の間中に生じる変異の大域的なスペクトルを提示し得る。それにもかかわらず、サンガー配列決定などの従来の分析方法の感度は、低頻度のバリアントを検出するには不十分である。この点で、先進的なNGS技術は、高感度を有する複数の変異のハイスループット分析のコスト効果の高い代替手段を提供し得る。加えて、大部分が正常な集団からの腫瘍特異的cfDNAの単一分子増幅及び/または選択的濃縮という特徴を有するPCRベースのプラットフォームは、前例のないアッセイ感度を実証している。
【0113】
cfDNAによって癌関連遺伝子変異を評価することにより、観察される変異のスペクトルが同じ悪性組織内の異なる生検切片間で異なり得る腫瘍の直接試料採取に固有の位置的なバイアスを避けることもできる。血流へのDNA放出の精確な機序は不確かなままであるが、アポトーシス、ネクローシス、及び腫瘍細胞からの能動的放出の組み合わせから生じると考えられている。そのような情報価値のあるcfDNAバイオマーカーは、ほとんど全ての癌タイプにおいて、早期検出、診断、予後、疾患及び療法の監視を改善させる見込みを示している(Gormally E,et al.,2007,Mutat.Res.635(2-3):105-117、Tong YK,et al.,2006 Clin.Chim.Acta 363(1-2):187-196、Gautschi O,et al.,2004,J.Clin.Oncol.22(20):4157-4164、Xue X,et al.,2006 Ann.N.Y.Acad.Sci.1075:154-164、Khan S,et al.,2004 Intl.J.Cancer 110(6):891-895)。
【0114】
【表1】
【0115】
健常な個体と比較してより高いレベルの血漿cfDNAが癌患者で一貫して検出されているものの、研究間及び方法論間で相当な差異がある。こうした差異は、研究コホート、分析前の試料調製、及びcfDNAを単離し数量化するために使用される方法の差に起因し得る(Xue X,et al.,2006,Ann.N.Y.Acad.Sci.1075:154-164、Boddy JL,et al.,2005,Clin.Cancer Res.11(4):1394-1399、Wu TL,et al.2002,Clin.Chim.Acta 321(1-2):77-87、Chiu RW,et al.2001,Clin.Chem.47(9):1607-1613)。循環cfDNAは、血漿中でのその低い濃度、不均一なサイズ分布、及び断片化された性質のために、抽出が困難な分析物である。結果として、cfDNAの単離は、高い投入容量の必要性、コスト、及び労働集約のために困難である。cfDNAの抽出、精製、または数量化のための既存の標準的プロトコルはない。多くの研究所が市販の抽出キットを用いる一方で、他の研究所は独自の単離方法を開発している。最もポピュラーな市販キットは、QIAamp循環核酸キット(Qiagen)であり、このキットでは、シリカ膜が、好ましくは、cfDNAの小断片にスピンカラム形式で結合し、さらなるゲノム分析のためにcfDNAを精製するための迅速かつ容易な方法が提供される。しかしながら、結合、洗浄、及び溶出などのステップにおける損失が不可避であるため、現在の方法論によるcfDNAの回収効率は極めて低く、大容量の出発物質(>10mLの血液)の必要性につながっている。さらに、このようなシリカ膜結合技法は、様々なサイズのcfDNA断片を効率的に回収せず、下流分析にさらにバイアスをかける。
【0116】
液体生検分野における最新の研究は、対象の腫瘍特異的cfDNAを選択的に濃縮または増幅する新規技術に焦点を当てている。しかしながら、上記で詳解したように、現在の技法によって単離されたcfDNAは、試料中に元々存在したcfDNAの一部にしか相当しないため、出発物質は不完全なままである。したがって、濃縮及び検出技術の感度が下流でいかに高かろうと、これらの技法は、上流の試料調製中に既に失われたcfDNAを補うことはできない。さらに、先行技術の技法は、様々なサイズのcfDNA断片の回収に一貫性がない。
【0117】
したがって、当該技術分野では、同じ試料中の無細胞核酸から腫瘍特異的変異プロファイルを正確に数量化し、かつ検出するための、より高分子量(ネクローシス死)及びより低分子量(アポトーシス死)のcfNA種(cfDNA及び/またはcfRNAを含む)の両方を効率的に回収することのできる、目的にかなった試料調製方法が不足している。本開示はそのような方法を提供し、cfDNA分析の分析感度及び特異性の改善を可能にする。
【0118】
増幅の方法
本開示は、cfNAベースの液体生検の患者ケアへの適用を含む液体生検の臨床適用における少なくとも3つの主要な未解決の課題、すなわちi)投入試料容量、ii)分析用のcfNAの産出分量、及びiii)分析用の産出cfNAの質に対する解決策を提示する。本開示は、分析のための試料中のcfNA(cfDNA及び/またはcfRNAを含む)を、該試料を核酸精製ステップに供することなく調製する方法を提供する。そのような方法において、必要とされる試料容量は先行技術の方法よりも低く(好適な血漿試料を生成するために10~50マイクロリットルほどの低さの全血が必要とされる)、核酸精製ステップが必要とされないことから汚染のリスクが減少し、核酸精製が必要とされないことから試料中のcfNAの全スペクトルの回収が増加する。本開示はまた、cfNAの使用のための方法、例えば、試料中のcfNA(cfDNA及び/またはcfRNAを含む)を分析する方法であって、cfNAが本開示の方法を使用して調製される(すなわち、試料が核酸精製ステップに供されていない)方法を提供する。
【0119】
本開示の方法によって調製された核酸は、増幅及び分析の前にcfNAを精製または回収する必要性が排除されるため、試料中のcfNAの優れた利用をもたらす。本開示は、試料中のcfNAのインサイチュ増幅をもたらし、単一の反応(すなわち、単一の試験管またはマルチウェルプレートの単一のウェル)で行うことができる。さらに、本開示の方法によって調製されたcfNAは、先行技術の方法によって調製されたcfNAよりも質が高く、優れた下流分析が可能である。なおもさらに、本開示の方法は、小容量の出発試料のみを必要とする。10~50マイクロリットルほどの低さの容量を使用することができる(液滴容量)。例えば、本開示は、10マイクロリットルの尿及び10~20マイクロリットルの血漿(およそ50マイクロリットルの全血から得ることができる)からのcfNAの増幅及び/または分析を示す。したがって、本開示の方法は、次世代液体生検、ポイントオブケア、及びナノまたは小型化マイクロ流体「ラブオンチップ」診断デバイスに好適である。加えて、本開示の方法を使用すると、より広範なcfNA分子(例えば、小型及び大型両方のcfNA断片の広域分布)を分析することができる。例えば、本開示の方法は、核酸断片サイズに関するバイアスを示さない。
【0120】
cfNAのISA方法及び増幅用cfNAの調製方法
本開示の方法は、試料を核酸精製ステップに供する必要のない、液体試料中のcfNAのインサイチュ増幅を利用する。したがって、核酸精製ステップの必要なしに、液体試料(例えば、尿、CSF、唾液、血漿、または血清)からインサイチュで直接cfNAを増幅することができる(例えば、cfNAは、特異的に単離または精製されない)。この特徴は、調製ステップ中の試料中のcfNAの損失を少なくとも部分的に排除し、試料中のcfNAの完全再現の利点が後の分析のために利用可能である。本明細書に記載の方法において、試料容量は先行技術と比較して著しく低下する。
【0121】
加えて、本開示の方法は、質が高く種々の下流分析技法で使用することのできる分析可能なcfNAのプールを提供する。本開示の方法によって作製された分析可能なcfNAのプールを分析するためには、本開示の方法と併せて、任意の既知の分析技法が使用され得る。好適な技法としては、限定されないが、次世代配列決定(NGS)、ならびに、リアルタイム定量的PCR、ブロッカーPCR、デジタル液滴PCR(ddPCR)、クランピングPCR、ICE-COLD PCR、castPCR、ARMS PCR、BEAMingなどだがこれらに限定されない、PCRベースの技術が挙げられる。これまで、これらの技法で使用するためには高度に精製されたcfNAが必要であると考えられていた。
【0122】
本開示は、増幅可能な核酸プールを生成するための、試料中の核酸(例えば、cfDNAを含む)のインサイチュ増幅の方法を提供する。増幅可能な核酸プールは、本明細書に記載されるように、分析可能な核酸プールを生成するために増幅することができ、後の分析に使用することができる。さらに、本開示は、増幅のための試料中の核酸(例えば、cfDNAを含む)を調製する方法を提供する。記載される方法は、試料を核酸精製ステップに供することなく実施される(例えば、cfNAは、特異的に単離または精製されない)。さらに、特定の実施形態において、本方法は、10~50マイクロリットルの試料容量を用いて行われる。本方法の特定の実施形態が、以下に提供される。なおもさらに、特定の実施形態において、記載される反応は全て、単一の反応槽内で実施される。
【0123】
核酸分子は、任意の核酸であり得る。特定の実施形態において、核酸はcfDNAである。特定の実施形態において、核酸は二本鎖cfDNAである。特定の実施形態において、核酸は二本鎖cfRNAである。
【0124】
以下の記載は、本明細書に記載の方法の実施形態及び態様のそれぞれに言及する。以下の詳解は、簡潔さのために代表的なcfNAとしてcfDNAに言及し得るが、本開示の方法は任意の種類のcfNAに適用可能であり、cfDNAに限定されるべきではない。
【0125】
本開示の方法は、試料中のcfNAのISAの方法であって、1)cfNA(cfDNA及び/またはRNAを含む)を含有する液体試料を準備することと、2)試料を処理ステップに供することと、3)試料中のcfNA分子の少なくとも一部分の5’末端及び/または3’末端に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfNA分子の少なくとも一部分を修飾cfNAに変換して、増幅可能なcfNAプールを創出することと、4)増幅可能なcfNAプールを増幅して、分析可能なcfNAのプールを創出することと、を含む、方法を提供する。
【0126】
本明細書で詳解されるように、cfNAは、cfDNA(例えば二本鎖cfDNA)であってもよい。したがって、本開示は、試料中のcfDNAのISAの方法であって、1)cfDNAを含有する液体試料を準備することと、2)試料を処理ステップに供することと、3)試料中のcfDNA分子の少なくとも一部分の5’末端及び/または3’末端に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfDNA分子の少なくとも一部分を修飾cfDNAに変換して、増幅可能なcfDNAプールを創出することと、4)増幅可能なcfDNAプールを増幅して、分析可能なcfDNAのプールを創出することと、を含む、方法を提供する。
【0127】
本明細書で詳解されるように、cfNAは、cfRNAであってもよい。したがって、本開示は、試料中のcfRNAのISAの方法であって、1)cfRNAを含有する液体試料を準備することと、2)試料を処理ステップに供することと、3)試料中のcfRNA分子の少なくとも一部分の5’末端及び/または3’末端に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfRNA分子の少なくとも一部分を修飾cfRNAに変換して、増幅可能なcfRNAプールを創出することと、4)増幅可能なcfRNAプールを増幅して、分析可能なcfRNAのプールを創出することと、を含む、方法を提供する。
【0128】
本開示は、試料中のcfNAを核酸精製ステップに供することなく分析のための試料中のcfNAを調製する方法であって、i)複数のcfNA分子を含有する液体試料を準備するステップと、ii)試料に少なくとも1つの処理ステップを行うステップと、iii)試料中のcfNA分子の少なくとも一部分を修飾cfNAに変換して、増幅可能なcfNAプールを創出するステップと、を含む、方法を提供する。
【0129】
本明細書で詳解されるように、cfNAは、cfDNA(例えば二本鎖cfDNA)であってもよい。したがって、本開示は、試料中のcfNAを核酸精製ステップに供することなく分析のための試料中のcfNAを調製する方法であって、1)cfDNAを含有する液体試料を準備するステップと、2)試料を処理ステップに供するステップと、3)試料中のcfDNA分子の少なくとも一部分の5’末端及び/または3’末端に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfDNA分子の少なくとも一部分を修飾cfDNAに変換して、増幅可能なcfDNAプールを創出するステップと、を含む、方法を提供する。
【0130】
本明細書で詳解されるように、cfNAは、cfRNAであってもよい。したがって、本開示は、試料中のcfNAを核酸精製ステップに供することなく分析のための試料中のcfNAを調製する方法であって、1)cfRNAを含有する液体試料を準備するステップと、2)試料を処理ステップに供するステップと、3)試料中のcfRNA分子の少なくとも一部分の5’末端及び/または3’末端に外因性核酸配列を付加することにより、試料中のcfRNA分子の少なくとも一部分を修飾cfRNAに変換して、増幅可能なcfRNAプールを創出するステップと、4)増幅可能なcfRNAプールを増幅して、分析可能なcfRNAのプールを創出するステップと、を含む、方法を提供する。
【0131】
本開示の方法は、上記の「発明の概要」の節に記載した第1~第12及び第13~第24の態様の方法を具体的に含む。以下の記載は、ISAの方法と、分析用のcfNAを調製するための方法との両方に適用される。
【0132】
特定の実施形態において、試料中のcfNA(cfDNA及び/またはcfRNAを含む)の少なくとも一部分は、cfNAの5’末端または3’末端のいずれかに1つの外因性核酸配列を含有する。特定の実施形態において、試料中のcfNA(cfDNA及び/またはcfRNAを含む)の少なくとも一部分は、2つの外因性核酸配列(5’末端に1つ及び3’末端に1つ)を含有する。複数の外因性核酸配列が存在するとき、外因性核酸配列は、同じであってもよく、または互いと異なっていてもよい。特定の実施形態において、外因性核酸配列は、試料中に存在するcfNA(cfDNA及び/またはcfRNAを含む)分子の少なくとも一部分の3’末端と5’末端との両方に付加される。
【0133】
複数のcfNA分子(例えば、cfDNA及び/またはcfRNA)を含有する液体試料が準備される。液体試料は、対象から得られる任意の液体試料であり得る。特定の実施形態において、液体試料は、血液試料、血清試料、血漿試料、唾液試料、CSF試料、唾液試料、または尿試料である。液体試料は、所望の場合は処理されてもよい。例えば、血液試料は、細胞を取り除き、血漿/血清画分を準備するために処理されてもよい。液体試料は、いかなる処理も行わずに直接使用されてもよい。液体試料の性質が、処理ステップが必要であるかを少なくとも部分的に決定する。一実施形態における液体試料は、全細胞または細胞断片を含有しない。処理ステップは、細胞、細胞断片など、不要な物質を試料から排除するために使用され得る。試料の性質がどのようなものであれ、試料中のcfNAは、特異的に単離または精製されない。特定の実施形態において、液体試料は、ヒト対象などの対象からのものである。特定の実施形態において、液体試料は、癌、細菌感染、またはウイルス感染などの疾患または病態を有する疑いのある、ヒト対象を含む対象からのものである。特定の実施形態において、液体試料は、疾患または病態のための治療を受けている、ヒト対象を含む対象からのものである。いくつかの実施形態では、液体試料は、対象が疾患または病態のための治療を受けている間(治療が開始される前、治療中、及び/または治療が休止した後を含む)、ヒト対象を含む対象から経時的に連続して採取される。
【0134】
一実施形態において、液体試料の容量は、1ml未満である。別の実施形態では、液体試料の容量は、0.5ml未満である。別の実施形態では、液体試料の容量は、0.1ml未満である。別の実施形態では、液体試料の容量は、0.05ml未満である。特定の実施形態において、液体試料の容量は、10~1000マイクロリットルである。特定の実施形態において、液体試料の容量は、10~750μLである。特定の実施形態において、液体試料の容量は、10~500μLである。特定の実施形態において、液体試料の容量は、10~250μLである。特定の実施形態において、液体試料の容量は、10~100μLである。特定の実施形態において、液体試料の容量は、10~50μLである。試料の性質が、必要な試料容量を少なくとも部分的に決定し得る。
【0135】
一実施形態において、処理ステップは、試料を希釈することである。したがって、cfNAを含有する試料は、場合により希釈されてもよい。特定の実施形態において、試料は、本明細書に記載されるさらなる反応と適合性のある溶液で希釈される。特定の実施形態において、試料は、増幅許容溶液で希釈される。「増幅許容溶液」とは、試料中の修飾cfDNA分子の増幅のために使用される核酸増幅反応と適合性のある溶液であり、試料中のcfNAを分解しないものである。使用することのできる代表的な溶液は当該技術分野で知られており、リン酸緩衝食塩水(PBS)、PCR増幅緩衝液、ヌクレアーゼ不含水、及びトリス系緩衝液を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態において、試料は希釈されない。血漿または血清試料が使用される特定の実施形態では、試料は、増幅許容溶液などで1~20倍、1~10倍、または1~5倍希釈される。特定の実施形態において、溶液は、PBSである。特定の実施形態において、溶液は、10mMトリス(pH8.0)、1mM EDTAである。特定の実施形態において、溶液は、ヌクレアーゼ不含水である。特定の実施形態において、血漿及び血清試料が希釈される。特定の実施形態において、尿試料は希釈されない。増幅許容溶液は、試料中のcfNAの分解を防止する作用物質を含有してもよい。特定の実施形態において、増幅許容溶液は、試料中のcfNAの分解を防止する作用物質を含有しない。
【0136】
一実施形態において、処理ステップは、試料を加熱することである。したがって、cfNAを含有する試料は、場合により加熱されてもよい。加熱は、タンパク質の変性、cfNA複合体の解離、試料中のヌクレアーゼ(例えば、DNアーゼ及び/またはRNアーゼ)の不活性化、及び試料中のcfDNAの断片化に少なくとも部分的に役立つ。加熱ステップは様々であり得る。一実施形態において、試料は、70℃~120℃、80℃~110℃、または90℃~100℃の温度で加熱される。試料は、1~20分間、1~10分間、または1~5分間加熱されてもよい。特定の実施形態では、試料は、95℃で4分間加熱される。
【0137】
一実施形態において、処理ステップは、試料中のcfNAを断片化することである。本明細書で詳解されるように、様々な源由来のcfNAは、異なる断片サイズ分布を有し得る。本明細書に記載の方法で使用されるとき、特定の実施形態において、cfNAは、50bp~2,000bpの断片サイズ分布を有することが好ましい。特定の実施形態において、cfNAは、100bp~1,000bpの断片サイズ分布を有する。特定の実施形態において、cfNAは、50bp~600bpの断片サイズ分布を有する。特定の実施形態において、cfNAは、50bp~500bpの断片サイズ分布を有する。特定の実施形態において、cfNAは、100bp~500bpの断片サイズ分布を有する。特定の実施形態において、cfNAは、100bp~400bpの断片サイズ分布を有する。特定の実施形態において、cfNAは、100bp~300bpの断片サイズ分布を有する。特定の実施形態において、cfNAは、100bp~200bpの断片サイズ分布を有する。特定の実施形態において、cfNAは、200bp~300bp、300bp~400bp、400bp~500bp、または500bp~600bpの断片サイズ分布を有する。特定の実施形態において、cfNAの主要な部分は、100bp~2,000bp、または上記に詳解した範囲のいずれかの断片サイズ分布を有する。ここで「主要な部分」とは、試料中のcfNAの少なくとも50%、例えば少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ以上を意味する。したがって、cfNAを含有する試料は、場合により断片化されてもよい。特定の実施形態において、断片化ステップの後、cfNAは、50bp~600bp、100bp~500bp、100bp~400bp、100bp~300bp、100bp~200bp、200bp~300bp、300bp~400bp、400bp~500bp、または500bp~600bpの断片サイズ分布を有する。断片化ステップは、当該技術分野で知られるいずれの方法を使用して達成されてもよい。上記で詳解したように、一実施形態において、断片化は、試料を加熱することによって達成され得る。cfNAを断片化するために加熱が使用される場合、二価カチオン(例えば、マグネシウム)が試料に付加されてもよい。一実施形態において、断片化は、音波せん断(acoustic shearing)、超音波処理、及び流体力学的せん断などだがこれらに限定されない物理的手段によって達成される。
【0138】
一実施形態において、処理ステップは、希釈及び加熱である。一実施形態において、処理ステップは、希釈及び断片化である。一実施形態において、処理ステップは、加熱及び断片化である。一実施形態において、処理ステップは、希釈、加熱、及び断片化である。
【0139】
特定の実施形態において、試料中のcfNA分子の少なくとも一部分が、試料中のcfNA分子の少なくとも一部分の5’末端に外因性核酸配列を付加することによって修飾cfNAに変換されて、増幅可能なcfNAプールが創出される。特定の実施形態において、増幅可能なcfNAプールを創出するための、試料中のcfNA分子の少なくとも一部分の3’末端に外因性核酸配列を付加することによる、修飾cfNAへの試料中のcfNA分子の少なくとも一部分。特定の実施形態において、増幅可能なcfNAプールを創出するための、試料中のcfNA分子の少なくとも一部分の5末端と3’末端との両方に外因性核酸配列を付加することによる、修飾cfNAへの試料中のcfNA分子の少なくとも一部分。
【0140】
試料中のcfNA分子の少なくとも一部分に外因性核酸配列を付加するためには、外因性核酸配列に効率的に連結することのできるcfNA(「最適化cfNA」と称される)を生成するようにcfNAを処置してもよい。試料中のcfNAは、特に5’末端及び/または3’末端において均一でない。したがって、特定の実施形態において、試料中のcfNAの少なくとも一部分は、外因性核酸配列(複数可)の付加前に最適化cfDNAに形質転換される。最適化cfNAは、付加される外因性核酸配列(複数可)の性質に部分的に依存し得るいくつかの方法によって調製することができる。特定の実施形態において、試料中のcfNAは、試料中のcfNA分子の少なくとも一部分に外因性核酸配列を付加する前に、本明細書で詳解されるように断片化される。
【0141】
一実施形態において、cfNAは、平滑末端を有するcfNAを生成するように末端修復される。このような末端修復により、あらゆる5’及び/または3’オーバーハングが、好適なポリメラーゼを使用することで充填される。ポリメラーゼが、5’-3’ポリメラーゼ活性に加えて、3’-5’エキソヌクレアーゼ/プルーフリーディング活性を有することが好ましいが、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性は必要ではない。例えば、cfDNA T4 DNAポリメラーゼのために、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片またはTaq DNAポリメラーゼが使用され得る。外因性核酸配列は、試料中のcfNAの少なくとも一部分の3’末端及び5’末端の一方または両方にライゲーションによって直接付加されてもよい。
【0142】
別の実施形態では、試料中のcfNAは、cfNAの一方または両方の末端に(ポリメラーゼにより創出された単一のアデニンまたはポリ-アデノシン配列であり得る)3’オーバーハングを作製するように(例えば、ポリメラーゼを使用して)末端修復される。外因性核酸配列は、3’オーバーハングとハイブリダイズするための相補性配列を有するように設計されており、その後、試料中のcfDNA分子の少なくとも一部分の3’末端及び5’末端の一方または両方にライゲーションされる。
【0143】
別の実施形態では、cfNAの3’末端の一方または両方が、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)を使用して修飾されて、ホモポリマーテール(例えば、ポリ-アデニン配列)が創出され、これが、相補的ヌクレオチド配列(例えば、ポリ-チミン)を有する外因性核酸配列の付加を可能にする。一本鎖ニックを封止するためにDNAリガーゼを使用してもよい。
【0144】
前述のもののいずれにおいても、5’リン酸にヌクレオチドキナーゼ活性(例えばT4ポリヌクレオチドキナーゼ)が付加されてもよい。
【0145】
前述の反応を達成するために、種々の酵素混合物が使用され得る。特定の実施形態において、酵素混合物は、次の成分:
1)3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するポリメラーゼ、及びii)リガーゼ、
2)3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するポリメラーゼ、ii)リガーゼ、及びiii)ポリヌクレオチドキナーゼ、
3)3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するポリメラーゼ、ii)リガーゼ、iii)ポリヌクレオチドキナーゼ、及びiv)複製ブロック活性化活性、
4)3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するポリメラーゼ、ii)リガーゼ、iii)ポリヌクレオチドキナーゼ、iv)複製ブロック活性化活性、及びv)核酸ニッキング酵素活性、
5)3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するポリメラーゼ、ii)リガーゼ、iii)ポリヌクレオチドキナーゼ、iv)複製ブロック活性化活性、v)核酸ニッキング酵素活性、及びvi)核酸結合タンパク質
を含み得る。
【0146】
特定の実施形態において、酵素混合物は、次の成分:
1)3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、及びii)DNAリガーゼ、
2)3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、ii)DNAリガーゼ、及びiii)DNAポリヌクレオチドキナーゼ、
3)3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、ii)DNAリガーゼ、iii)DNAポリヌクレオチドキナーゼ、及びiv)ウラシル-DNAグリコシラーゼ活性、
4)3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、ii)DNAリガーゼ、iii)DNAポリヌクレオチドキナーゼ、iv)ウラシル-DNAグリコシラーゼ活性、及びv)一本鎖DNA核酸ニッキング酵素活性、
5)3’-5’エキソヌクレアーゼ活性ありまたはなしの5’-3’ポリメラーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、ii)DNAリガーゼ、iii)DNAポリヌクレオチドキナーゼ、iv)ウラシル-DNAグリコシラーゼ活性、v)一本鎖DNA核酸ニッキング酵素活性、及びvi)一本鎖DNA結合タンパク質
を含み得る。
【0147】
特定の実施形態において、酵素混合物は、次の成分:
1)T4 DNAポリメラーゼ、及びii)T4 DNAリガーゼまたはDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、及びii)T4 DNAリガーゼ、
2)T4 DNAポリメラーゼ、ii)T4 DNAリガーゼ、及びiii)DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、
3)T4 DNAポリメラーゼ、ii)T4 DNAリガーゼ、iii)DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、及びiv)T4ポリヌクレオチドキナーゼ、
4)T4 DNAポリメラーゼ、ii)T4 DNAリガーゼ、iii)DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、iv)T4ポリヌクレオチドキナーゼ、及びv)ウラシル-DNAグリコシラーゼ、または、
5)T4 DNAポリメラーゼ、ii)T4 DNAリガーゼ、iii)DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、iv)T4ポリヌクレオチドキナーゼ、v)ウラシル-DNAグリコシラーゼ及びNb.BbvC1
を含み得る。
【0148】
前述のもののいずれかは、一本鎖結合タンパク質(例えば、E.coli一本鎖結合タンパク質など)をさらに含んでもよい。
【0149】
特定の実施形態において、酵素混合物は、T4 DNAポリメラーゼ、T4 DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、ウラシル-DNAグリコシラーゼ、及びNb.BbvC1を含む。特定の実施形態において、酵素混合物は、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片及びT4 DNAリガーゼを含む。
【0150】
本明細書に開示される方法で使用することのできる様々な酵素の濃度は、様々であり得る。一実施形態において、酵素は、次の濃度範囲、すなわちT4 DNAポリメラーゼ2~15U、クレノウ断片2~20U、T4 DNAリガーゼ100~1,000U、T4ポリヌクレオチドキナーゼ5~20U、Nb.BbvC1 5~20U、及びウラシル-DNAグリコシラーゼ1~6Uで使用され、E.coli一本鎖結合タンパク質は、50~500ngで存在し得る。
【0151】
当該技術分野で知られているように、種々の緩衝液/反応溶液が本開示の方法で使用され得る。一実施形態において、反応溶液は、20~75mMの酢酸カリウム、10~100mMのトリス-アセテート(25℃においてpH7.9)、1~30mMの酢酸マグネシウム、0.1~20mMのDTT、5~100μMのdNTP、0.5~2mMのATP、及び100~400ug/mLのBSAを含む。別の実施形態では、反応溶液は、20~75mMのNaCl、10~100mMのトリス-Cl(pH7.0~8.0)、1~30mMのMgCl、0.1~20mMのDTT、5~100μMのdNTP、及び0.5~2mMのATPを含む。
【0152】
特定の実施形態において、酵素混合物は、反応を開始し完了させるために、順次加熱プログラム(例えばサーマルサイクラーの使用によるもの)に供される。一実施形態において、順次加熱プログラムは、所定期間の2つの加熱ステップ、所定期間の3つの加熱ステップ、所定期間の4つの加熱ステップ、または所定期間の5つの加熱ステップからなる。個々の加熱ステップの期間は、独立して様々であってよく、1~40分間、例えば5~30分間、10~25分間、1~5分間、20分間、または5分間持続してもよい。順次加熱プログラムは、試料の温度を変更することによって、酵素混合物中の特定の酵素を所定の時間に優先的に活性にさせるのに役立つ。ここで優先的に活性とは、酵素混合物中の酵素のうちの1つ以上が、酵素混合物中の少なくとも1つの他の酵素よりも高い活性を示すことを意味する。この様式において、増幅可能なcfNAプールの生成に必要とされる様々な反応を、少なくとも部分的な程度まで順序付けることができる。順次加熱プログラムは、最適なcfNAの形成を可能にする、ポリメラーゼ活性(例えばT4 DNAポリメラーゼ及び/またはクレノウ断片)が優先的に活性である温度で始まり、次に、cfNAへの外因性核酸配列(複数可)のライゲーションを可能にする、リガーゼが優先的に活性である温度が続く。他の加熱ステップが含まれてもよい。例えば、外因性核酸配列の切断を可能にする温度ステップが含まれてもよい。さらなる例として、酵素混合物中の酵素の全てまたは一部を不活性化する温度ステップが含まれてもよい。
【0153】
順次加熱プログラムの例示的な温度範囲には、12℃~20℃、20℃~30℃、30℃~40℃、及び60℃~90℃が含まれる。特定の実施形態では、順次加熱プログラムの温度範囲は、14℃~18℃及び22℃~26℃;14℃~18℃、22℃~26℃、及び70℃~80℃;または14℃~18℃、22℃~26℃、35℃~39℃、及び70℃~80℃である。各温度範囲は、次の温度範囲に進行する前に所定期間にわたって維持され得る。
【0154】
本開示の方法で使用され得る代表的な順次加熱プログラムは、i)16℃で20分間、ii)24℃で20分間、iii)37℃で20分間、iv)75℃で5分間(不活性化)、及びv)4℃(保持;このステップは、即時的なPCR増幅が所望される場合は任意である)である。このプロセスの結果は、修飾cfDNA分子の5’末端及び3’末端の一方または両方にプライマー部位を有する、増幅可能なcfDNA分子のプールである。この反応の結果が、増幅可能なcfDNA分子のプールである。
【0155】
前述の内容において、全ての酵素反応は、cfNA精製の必要なしに元々の試料中で行われ(cfNAは特異的に単離または精製されない)、成分を取り除いたり、生成物もしくは基質を取り除いたり、または別様にステップ間で反応を「クリーンアップ」したりする必要なしに、単一の反応槽内で行われる。
【0156】
前述の内容の結果が、分析可能なcfNA分子のプールを創出するために使用され得る増幅可能なcfNA分子のプールの創出である。
【0157】
外因性核酸配列は、増幅可能なcfNAのプールの増幅に使用される、プライマーに結合することが可能なプライマー部位を含有する。「プライマーに結合することが可能な」という用語は、特異的プライマーの配列に相補的である配列を有するプライマー部位、ならびに特異的プライマーの配列と同一の配列を有するプライマー部位(この場合、プライマーに相補的な配列は、本明細書で詳解される初期複製ステップ中に生成される)を含むよう意図される。特定の実施形態において、外因性核酸配列は、特異的プライマーに相補的なプライマー部位または特異的プライマーと同一の配列を含有し、これは、初回のDNA合成の後にプライマー部位を創出する。特定の実施形態において、プライマー部位は、ユニバーサルプライマー部位である。したがって、ユニバーサルプライマー部位は、試料中のcfNA分子の少なくとも一部分の3’末端、5’末端、または3’末端と5’末端との両方に付加される。3’末端に付加されたプライマー部位は、3’プライマー部位と称され、5’末端に付加されたプライマー部位は、5’プライマー部位と称される。一実施形態において、3’プライマー部位のそれぞれは、修飾された各cfNA分子で同一であり、5’プライマー部位のそれぞれは、修飾された各cfNA分子で同一であり、3’プライマー部位及び5’プライマー部位は、互いと明確に異なる(すなわち、明確に異なるプライマーに配列特異的な様式で結合することが可能である)。したがって、増幅可能なcfNAプールを増幅するために単一のプライマー対を使用し、複数のプライミング部位に合わせて増幅条件を最適化することの複雑性を排除することにより、増幅の条件を簡易化することができる。一実施形態において、3’プライマー部位及び5’プライマー部位のそれぞれは、修飾された各cfNA分子で同一であり、3’プライマー部位及び5’プライマー部位のそれぞれは、配列特異的な様式で同じプライマーに結合することが可能である。増幅可能なcfNAプールを増幅するために単一のプライマーを使用し、複数のプライミング部位に合わせて増幅条件を最適化することの複雑性を排除することにより、増幅の条件をさらに簡易化してもよい。特定の実施形態において、3’プライマー結合部位及び/または5’プライマー結合部位は、ヒトゲノムでは見出されない配列である。特定の実施形態において、3’プライマー部位及び/または5’プライマー部位は、実質的に同じ増幅条件下でそれぞれのプライマーが3’結合部位及び/または5’結合部位に結合するように設計される。特定の実施形態において、3’プライマー部位及び/または5’プライマー部位は、互いの1℃~2℃以内または互いの2℃~4℃以内である融解温度及び/またはアニーリング温度でそれぞれのプライマーが3’結合部位及び/または5’結合部位に結合するように設計される。
【0158】
一実施形態において、外因性核酸配列は、以下に示される配列を有し、N6-10及びN3-6は、任意の核酸配列を表す。各部位のそれぞれのプライマーも提供する。
アダプター1:5’-(N6-10ATTAACCCTCACTAAAG(N3-6)-3’(配列番号1)
アダプター2:5’-(N6-10TAATACGACTCACTATAGGG(N3-6)-3’(配列番号2)
5’プライマー:5’-ATTAACCCTCACTAAAG-3’-(配列番号3)
3’プライマー:5’-TAATACGACTCACTATAGGG-3’-(配列番号4)
【0159】
別の実施形態では、外因性核酸配列は、以下に示される配列を有する。各部位のそれぞれのプライマーも提供する。
アダプター:
5’-OH-TGTGTTGGGTGTGGUUUUUATTTAATACGACTCACTATAGACCCTCAGCACC
ACCACACCCAACACA-3’(配列番号5)
プライマー:5’-ACTCACTATAGACCCTCAGCACCAC-3’(配列番号6)
【0160】
別の実施形態では、外因性核酸配列は、以下に示される配列を有する。各部位のそれぞれのプライマーも提供する。
アダプター:
5’-TGTGTTGGGTGTGGUUUUUATTTAATACGACTCACTATAGACCCTCAGCACCAC
CACACCCAACACA(N)-3’(配列番号7)(式中、Nは任意のヌクレオチドであり得、nは、0~10の整数である。特定の実施形態において、Nはアデニンであり、nは、1~5であるか、またはnは1である(例えば配列番号9)。特定の実施形態において、nは0である(例えば配列番号10))
5’-TGTGTTGGGTGTGGUUUUUATTTAATACGACTCACTATAGACCCTCAGCACCAC
CACACCCAACACAA-3’(配列番号9)
5’-TGTGTTGGGTGTGGUUUUUATTTAATACGACTCACTATAGACCCTCAGCACCAC
CACACCCAACACA(配列番号10)
プライマー:5’-TGAGTGATATCTGGGAGTCGAGGTG(配列番号8)
【0161】
特定の実施形態において、外因性核酸は、複製ブロックを含有する。本明細書で使用される場合、「複製ブロック」という用語は、DNAポリメラーゼが複製ブロックを超えて相補的な核酸鎖を創出しないようにDNAポリメラーゼの作用を妨害または停止する核酸配列を指す。特定の実施形態において、複製ブロックの核酸配列は、不活性形態にあり、反応混合物の成分(例えば酵素混合物の成分)によって活性形態に変換される。上記の外因性核酸配列の特定の実施形態において、複製ブロックは、ウラシル-DNAグリコシラーゼの作用を受けない限り複製ブロックとして不活性である、ポリ-U配列によって表される。
【0162】
上記に提供した配列は本質的に例示的であり、他の外因性核酸配列が提供されてもよい。本明細書に開示される方法において、外因性核酸配列は、0.1~5μMで使用することができ、プライマーは、50~1000nMで使用することができる。
【0163】
試料中のcfNAの少なくとも一部分の5’末端及び/または3’末端に付加される外因性核酸配列は、種々の形態で準備され得る。一実施形態において、外因性核酸配列は、ステム-ループ構造を形成し、一本鎖ループ部分を含む配列である。
【0164】
特定の実施形態において、試料中のcfNA分子の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%が、5’末端及び/または3’末端の一方または両方に外因性核酸配列を含有するように修飾される。特定の実施形態において、試料中のcfNA分子の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%が、5’末端と3’末端との両方に外因性核酸配列を含有するように修飾される。
【0165】
以下、試料中のcfNAの5’末端、3’末端、及び/または5’末端と3’末端との両方に外因性核酸配列を付加するためのいくつかの例示的な手法を記載する。特定の実施形態において、外因性核酸配列は、外因性核酸配列によってプライミングまたは開始されてもよいcfNAの初期複製によって、cfNAの5’末端及び/または3’末端に付加される。特定の実施形態において、外因性核酸配列の少なくとも1つの鎖が、cfNAの5’末端及び/または3’末端において、cfNAの少なくとも1つの鎖にライゲーションされる。特定の実施形態において、外因性核酸配列の少なくとも1つの鎖が、cfNAの5’末端及び/または3’末端において、cfNAの少なくとも1つの鎖にライゲーションされ、外因性核酸配列の少なくとも一部分は、cfNAによってプライミングまたは開始されてもよい初期複製によって複製される。本明細書に記載される実施形態において、試料中のcfNAのうちの1つ以上は、より大きなcfNA断片を形成するようにひとつにライゲーションされてもよい。
【0166】
一実施形態において、本開示の方法は、ユニバーサル5’末端プライマー部位を保有する縮重オリゴヌクレオチドプライマーをアニーリングすることによる、試料中に存在するcfNA(例えばcfDNAを含む)の初期複製を利用する。アニーリングされたプライマーは、DNAポリメラーゼにより伸長され、これが次に、プライマーのアニーリング及び伸長の別のサイクルのための新しい鋳型の機能を果たし得る。結果として、試料中のcfNA(例えばcfDNAを含む)は、プライマー部位を含有する(この場合、初期複製によるcfNAへの組み込みによる)外因性核酸配列の付加によって修飾され、増幅可能なcfNA(例えばcfDNAを含む)プールを生成する分析前の指数関数的増幅に好適である。したがって、外因性核酸配列は、外因性核酸配列が初期複製をプライミングする際、初期複製によって5’末端及び/または3’末端に付加される。一実施形態において、全ての酵素反応は、物質(核酸を含む)の移動またはcfNAの精製の必要なしに、元々の試料中で行われる(例えば、cfNAは、特異的に単離または精製されない)。特定の実施形態において、試料中のcfNA断片は、縮重プライマーがcfNA配列に結合する前または後のいずれかに、より長いcfNA断片を生成するようにライゲーションを受ける場合がある。そのような実施形態に好適な酵素混合物としては、DNAポリメラーゼI及びT4 DNAリガーゼを含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる酵素混合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0167】
別の実施形態では、本開示の方法は、分子クローニングの概念を適用して、試料中のcfNA(例えばcfDNAを含む)の少なくとも一部分に5’末端及び3’末端の一方または両方で配列特異的な外因性核酸配列を酵素的に付加し、PCR増幅のためのプライマー部位(複数可)を作製する。一実施形態において、全ての酵素反応は、物質(核酸を含む)の移動またはcfNAの精製の必要なしに、元々の試料中かつ単一の反応槽内で行われる(例えば、cfNAは、特異的に単離または精製されない)。
【0168】
分子クローニング手法の一実施形態において、外因性核酸配列は、ステム-ループ構造を形成し、一本鎖ループ部分を含む配列であり、外因性核酸配列の各鎖は、修飾cfNAが外因性核酸配列とcfNA配列との間で、核酸鎖にギャップ、ニック、または切断を有しないように、試料中のcfNA分子の少なくとも一部分の5’末端及び/または3’末端でcfNAの各鎖にライゲーションされる。この手法の一実施形態では、外因性核酸配列は、cfNAに直接ライゲーションされる。cfNAは、本明細書で詳解される平滑末端、ならびに5’末端及び/または3’末端でcfNAの各鎖に直接ライゲーションされた外因性核酸配列を有するように調製されてもよい。そのような実施形態において、外因性核酸配列のループ部分は、酵素(例えば、ウラシル-DNAグリコシラーゼの使用などによって、切断される(または開かれる)場合がある。そのような実施形態に好適な酵素混合物としては、T4 DNAポリメラーゼ、ii)T4 DNAリガーゼ、iii)DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、iv)T4ポリヌクレオチドキナーゼ、及びv)ウラシル-DNAグリコシラーゼ(場合によりNb.BbvC1を含有するもの)を含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる酵素混合物が挙げられるが、これに限定されない。そのような実施形態に好適な好適な外因性核酸配列としては、配列番号8のプライマーを有する配列番号10の配列が挙げられるが、これに限定されない。
【0169】
cfNAは、単一のヌクレオチド(例えば単一のアデニン残基)または複数のヌクレオチド(例えばポリ-アデニンテール)などのテール配列(例えば3’オーバーハング)を有するように調製されてもよく、特定の実施形態において、テールは、cfNAの5’末端及び/または3’末端の一方または両方に位置する。特定の実施形態において、テールは、単一のアデニンまたはポリ-アデニンテール(例えば2~10ヌクレオチド長)である。そのような実施形態において、外因性核酸配列のループ部分は、酵素(例えば、ウラシル-DNAグリコシラーゼの使用などによって、切断される(または開かれる)場合がある。そのような実施形態に好適な酵素混合物としては、T4 DNAポリメラーゼ、ii)T4 DNAリガーゼ、iii)DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、iv)T4ポリヌクレオチドキナーゼ、及びv)ウラシル-DNAグリコシラーゼ(場合によりNb.BbvC1を含有するもの)を含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる酵素混合物が挙げられるが、これに限定されない。そのような実施形態に好適な好適な外因性核酸配列としては、配列番号8のプライマーと併せた配列番号7の配列(例えば、配列番号9)が挙げられるが、これに限定されない。
【0170】
分子クローニング手法の別の実施形態では、外因性核酸配列は、ステム-ループ構造を形成し、プライマー部位の相補体を含む一本鎖ループ部分を含む配列であり、外因性核酸配列の1つの鎖は、修飾cfNAが、cfNA配列の末端3’OH残基と外因性核酸配列の5’OHとの間で、cfNAの5’末端及び/または3’末端における核酸鎖にギャップ、ニック、または切断を含有しないように、試料中のcfNA分子の少なくとも一部分の5’末端及び/または3’末端でcfNAの1つの鎖にライゲーションされる。この実施形態において、本開示の方法は、外因性核酸配列を複製し、プライマー結合部位を創出する、cfNAの遊離3’OHで開始されるニックトランスレーション機序による外因性核酸配列の初期複製を利用する。T4ポリヌクレオチドキナーゼによって5’リン酸基が付加されてもよく、これは、外因性核酸配列に元々存在した3’OHをリン酸に置き換える。そのような実施形態に好適な酵素混合物としては、T4 DNAポリメラーゼ、T4 DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、及びNb.BbvC1(場合によりウラシル-DNAグリコシラーゼを含有するもの)を含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる酵素混合物が挙げられるが、これに限定されない。そのような実施形態に好適な好適な外因性核酸配列としては、配列番号6のプライマーと併せた配列番号5の配列が挙げられるが、これに限定されない。
【0171】
分子クローニング手法の別の実施形態では、外因性核酸配列は、ステム-ループ構造を形成し、複製ブロック及びプライマー部位の相補体を含む一本鎖ループ部分を含む配列であり、外因性核酸配列の1つの鎖は、修飾cfNAが、cfNA配列の末端3’OH残基と外因性核酸配列の5’OHとの間で、cfNAの5’末端及び/または3’末端における核酸鎖にギャップ、ニック、または切断を含有しないように、試料中のcfNA分子の少なくとも一部分の5’末端及び/または3’末端でcfNAの1つの鎖にライゲーションされる。この実施形態において、本開示の方法は、外因性核酸配列を複製ブロックまで複製する、cfNAの遊離3’OHで開始されるニックトランスレーション機序による外因性核酸配列の初期複製を利用する。DNAポリメラーゼを使用し、創出された5’オーバーハングを充填して、プライマー結合部位を創出することができる。特定の実施形態において、パリンドローム配列の一部分は、後のPCR増幅プロセス中のヘアピン構造の形成を防止するために修飾cfNAから取り除かれた元々の外因性核酸配列のものである。そのような反応は、一本鎖ニッキング酵素(例えばNbBbv1)及びウラシル-DNAグリコシラーゼを使用して実施され得る。T4ポリヌクレオチドキナーゼによって5’リン酸基が付加されてもよく、これは、外因性核酸配列に元々存在した3’OHをリン酸に置き換える。そのような実施形態に好適な酵素混合物としては、T4 DNAポリメラーゼ、T4 DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、ウラシル-DNAグリコシラーゼ、及びNb.BbvC1を含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる酵素混合物が挙げられるが、これに限定されない。そのような実施形態に好適な好適な外因性核酸配列としては、配列番号6のプライマーと併せた配列番号5の配列が挙げられるが、これに限定されない。
【0172】
分子クローニング手法の特定の実施形態において、パリンドローム配列の一部分は、後のPCR増幅プロセス中のヘアピン構造の形成を防止するために修飾cfNAから取り除かれた元々の外因性核酸配列(二本鎖ステム部分を形成するもの)のものである。そのような反応は、一本鎖ニッキング酵素(例えばNbBbv1)及びウラシル-DNAグリコシラーゼを使用して実施され得る。分子クローニング手法の特定の実施形態において、パリンドローム配列の一部分は取り除かれない。
【0173】
次に、増幅可能なcfNAプールを任意の既知の技法によって増幅して、下流分析のために十分な分量のcfNAを生成することができる。この増幅反応の生成物は、分析可能なcfNAのプールと称される。一実施形態において、増幅可能なcfNAプールは、3’プライマー結合部位及び/または5’プライマー結合部位に対する配列特異的プライマーを使用したPCRに供される。一実施形態において、3’結合部位と5’結合部位との両方、及びそれらそれぞれのプライマーが、増幅に使用される。一実施形態において、3’プライマー結合部位または5’プライマー結合部位のうちの一方のみ、及びそれぞれのプライマーが、増幅に使用される。いかなるPCR増幅プロトコルまたは技法を使用して、増幅可能なcfDNAプールを増幅してもよい。
【0174】
PCR増幅は、分析可能なcfNAのプール中のcfNAの所望の収率をもたらすために、所望の増幅サイクル数にわたって実施することができる。特定の実施形態では、10~30サイクルの増幅が実施される。特定の実施形態では、12~28サイクルの増幅が実施される。特定の実施形態では、15~25サイクルの増幅が実施される。特定の実施形態では、17~23サイクルの増幅が実施される。特定の実施形態では、18サイクルの増幅が実施される。特定の実施形態では、25サイクルの増幅が実施される。
【0175】
PCR増幅反応のサイクリング条件は、当該技術分野で知られている通りであり得、概して、鋳型の変性、プライマーのアニーリング、及びプライマーの伸長のためのステップを含む。最初のステップは、標的DNAを15秒~4分間94℃以上に加熱することにより、標的DNAを変性させる。この変性プロセスにおいて、DNAの鎖が互いから分離し、熱安定性ポリメラーゼによる複製に必要な一本鎖DNA鋳型が生成される。サイクルの次のステップでは、温度をおよそ40~65℃に低下させる。この温度において、オリゴヌクレオチドプライマーは、変性した標的DNAと安定な会合を形成し(アニール)、ポリメラーゼのためのプライマーとして機能することができ、新しい鋳型が合成される。このステップは、概して、1~7分間にわたり65~74℃の範囲で行われる。次のサイクルは、変性のために94℃に戻すことから始まる。PCR増幅の特定の条件は、当該技術分野で知られているように変更され、それでも本開示の方法で有用であり得る。
【0176】
一実施形態において、次のPCR増幅条件:i)95℃で3分間にわたる初期変性、ii)続いて、25サイクルの、94℃で15秒間にわたる変性、及び65℃で5分間にわたるアニーリング/伸長が使用される。
【0177】
別の実施形態では、次のPCR増幅条件:i)95℃で3分間にわたる初期変性、ii)続いて、18サイクルの、94℃で15秒間にわたる変性、及び65℃で5分間にわたるアニーリング/伸長が使用される。
【0178】
この増幅反応の結果は、分析可能なcfDNA分子のプールである。
【0179】
例示的な手順
本明細書に記載の方法を実施するための例示的な手順は、本明細書における「方法」の節及び「実施例」に提供する。
【0180】
分析可能なcfDNAのプールの分析
本明細書における方法によって生成された分析可能なcfDNAのプールは、当該技術分野で知られるいずれの方法によって分析されてもよい。さらに、いかなる量のcfNAが分析に使用されてもよい。
【0181】
一実施形態において、分析の方法は、次世代配列決定(NGS)である。NGSが使用される場合、分析可能なプールからのcfNAの量は様々であり得る。特定の実施形態において、分析可能なプール中で1ng~50ngのcfNAが、NGS分析のために使用される。特定の実施形態において、分析可能なプール中で1ng~10ng、例えば1ng~2ng、2ng~5ng、5ng~7ng、または7ng~10ngのcfNAが、NGS分析のために使用される。特定の実施形態において、分析可能なプール中で10ng~25ng、例えば13ng~27ng、16ng~24ng、または19ng~21ngのcfNAが、NGS分析のために使用される。
【0182】
別の実施形態では、分析の方法はNGSであり、cfNA試料(例えば、上記で指定された量のもの)は、単一の分析可能なcfNAのプールから採取される。分析可能なcfNAのプールからのcfNAは、単一の試料採取で採取されても、複数の試料採取で採取されてもよい。
【0183】
別の実施形態では、分析の方法はNGSであり、cfNA試料、例えば上記で指定された量のものは、同じ試料から調製された複数の分析可能なcfNAのプールから採取される。任意の数、例えば2~10個の分析可能なcfNAのプールを試料採取することができる。分析可能なcfNAのプールからのcfNAは、任意の分析可能なcfNAのプールから、単一の試料採取で採取されても、複数の試料採取で採取されてもよい。同じ試料から調製された、さらなる複数の分析可能なcfNAのプールを、試料採取の前に組み合わせてもよい。任意の数、例えば2~10個の分析可能なcfNAのプールを組み合わせる(すなわちプーリングする)ことができる。組み合わされた分析可能なcfNAのプールからのcfNAは、組み合わされた分析可能なcfNAのプールから、単一の試料採取で採取されても、複数の試料採取で採取されてもよい。
【0184】
使用の方法
本開示は、増幅可能なcfNAのプール及び分析可能なcfNAのプールを使用する方法も提供する。
【0185】
本開示は、試料中のcfNA(cfDNAを含むがこれに限定されない)を分析する方法を提供する。本方法の特定の実施形態が、以下に提供される。
【0186】
一実施形態において、本開示は、無細胞核酸を分析する方法であって、i)本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfNA分子のプールを分析して、分析可能なcfNA分子のプール中のcfNA分子の特性を決定するステップと、を含む、方法を提供する。
【0187】
この分析の方法において、cfNAは、cfNAであり得る。特定の実施形態において、核酸はcfDNAである。特定の実施形態において、核酸は、二本鎖cfDNAである。特定の実施形態において、cfNAは、cfRNAか、またはかかるcfRNAに由来し、かつかかるcfRNAを代表するDNAである。
【0188】
したがって、別の実施形態において、本開示は、cfDNAを分析する方法であって、i)本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfDNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfDNA分子のプールを分析して、分析可能なcfDNA分子のプール中のcfDNA分子の特性を決定するステップと、を含む、方法を提供する。
【0189】
別の実施形態において、本開示は、cfRNAを分析する方法であって、i)本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfRNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfRNA分子のプールを分析して、分析可能なcfRNA分子のプール中のcfDNA分子の特性を決定するステップと、を含む、方法を提供する。特定の実施形態において、cfRNAは、cfRNAを代表するDNAに変換され、分析可能なプールは、cfRNAを代表するDNAを含む。
【0190】
分析可能なプールは、当該技術分野で知られるいずれの技法によって分析されてもよい。好適な技法としては、限定されないが、次世代配列決定(NGS)、ならびに、リアルタイム定量的PCR、ブロッカーPCR、デジタル液滴PCR(ddPCR)、クランピングPCR、ICE-COLD PCR、castPCR、ARMS PCR、BEAMingなどだがこれらに限定されない、PCRベースの技術が挙げられる。本開示の方法により生成された分析可能なプールは、これら及び他の分析技法で使用するのに十分な分量及び質のcfNAをもたらす。
【0191】
特定の実施形態において、分析可能なプールは、分析可能なプール中の1つ以上のcfNA(cfDNAを含む)の少なくとも1つの特性を決定するために分析される。決定される特性は、cfNAの任意の特性であり得る。2つ以上の特性が同時に分析されてもよい。代表的な特性としては、限定されないが、染色体異常、単一ヌクレオチド多型、遺伝子変異(限定されないが、例えば点変異、欠失、及び挿入)、メチル化パターン、及びコピー数多型が挙げられ、加えて、この特性は、作用物質(限定されないが、例えばウイルス、細菌、または真菌)の存在であってもよい。一実施形態において、この特性は、疾患に関連する。一実施形態において、この特性は、試料の提供者が疾患を患っているかを決定するために使用される。別の実施形態では、この特性は、試料の提供者が疾患を発症するリスクがあるかを決定するために使用される。別の実施形態では、この特性は、試料の提供者における作用物質(限定されないが、例えばウイルス、細菌、または真菌)の存在を決定するために使用される。別の実施形態では、この特性は、対象のための治療または療法の過程を決定するために使用される。別の実施形態では、この特性は、治療または療法の現在の過程が効果的であるかを決定するために使用される。
【0192】
特定の特性についてcfNA(例えばcfDNAを含む)を分析する能力は、診断的な意味と、疾患を治療するための治療介入の決定との両方で有益である。本明細書で詳解されるように、本開示の方法は、cfNAの精製を必要としない、少ない試料容量のcfNA(例えばcfDNAを含む)の分析を可能にする。したがって、本開示の方法の患者ケアへの適用形態は、大きく拡大する。
【0193】
本開示は、疾患を患っているか、もしくはそのリスクがあるものとして対象を診断する方法を提供する。
【0194】
一実施形態において、本方法は、i)本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfNA分子のプールを分析して、分析可能なcfNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfNA分子の特性を決定するステップと、iii)この特性の存在に基づいて、対象が疾患を患っている、かつ/もしくはそのリスクがあると決定するステップ、または、この特性の非存在に基づいて、対象が疾患を患っていない、かつ/もしくはそのリスクがないと決定するステップと、を含む。
【0195】
別の実施形態では、本方法は、i)本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfDNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfDNA分子のプールを分析して、分析可能なcfDNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfDNA分子の特性を決定するステップと、iii)この特性の存在に基づいて、対象が疾患を患っている、かつ/もしくはそのリスクがあると決定するステップ、または、この特性の非存在に基づいて、対象が疾患を患っていない、かつ/もしくはそのリスクがないと決定するステップと、を含む。
【0196】
別の実施形態では、本方法は、i)本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfRNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfRNA分子のプールを分析して、分析可能なcfRNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfRNA分子の特性を決定するステップと、iii)この特性の存在に基づいて、対象が疾患を患っている、かつ/もしくはそのリスクがあると決定するステップ、または、この特性の非存在に基づいて、対象が疾患を患っていない、かつ/もしくはそのリスクがないと決定するステップと、を含む。特定の実施形態において、cfRNAは、cfRNAを代表するDNAに変換され、分析可能なプールは、cfRNAを代表するDNAを含む。
【0197】
本明細書で詳解される種々の方法を使用して、cfNAのいくつかの特性を決定することができる。上記の方法の例示的な適用形態として、対象が進行転移性結腸癌を患っていると疑われる場合、進行転移性結腸癌に関連した特性(例えば、KRAS、BRAF、NRAS、及びPIK3CA遺伝子のうちの1つ以上の変異)について、分析可能なプールを分析してもよい。この特性(KRAS、BRAF、NRAS、及びPIK3CA遺伝子のうちの1つ以上の変異)が分析可能なプール中に存在する場合、対象が結腸癌を患っているか、またはそのリスクがあることが決定される。
【0198】
本開示は、疾患を患う対象のための治療介入を決定する方法を提供する。
【0199】
一実施形態において、本方法は、i)本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfNA分子のプールを分析して、分析可能なcfNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfNA分子の特性を決定するステップと、iii)決定された特性に基づいて、治療介入を決定するステップと、を含む。
【0200】
別の実施形態では、本方法は、i)本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfDNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfDNA分子のプールを分析して、分析可能なcfDNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfDNA分子の特性を決定するステップと、iii)決定された特性に基づいて、治療介入を決定するステップと、を含む。
【0201】
別の実施形態では、本方法は、i)本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfRNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfRNA分子のプールを分析して、分析可能なcfRNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfRNA分子の特性を決定するステップと、iii)決定された特性に基づいて、治療介入を決定するステップと、を含む。特定の実施形態において、cfRNAは、cfRNAを代表するDNAに変換され、分析可能なプールは、cfRNAを代表するDNAを含む。
【0202】
本明細書で詳解される種々の方法を使用して、cfNAのいくつかの特性を決定することができる。治療介入を決定する方法の例示的な適用形態として、結腸癌の例を再び考察する。詳解したように、KRAS、BRAF、NRAS、及びPIK3CA遺伝子のうちの1つ以上の変異は、結腸癌を示す。しかしながら、存在する特定の異常に応じて、最も有効な治療に必要とされる治療介入は異なる。決定された特性(複数可)が、KRAS、BRAF、NRAS、及びPIK3CA遺伝子の変異を有しない場合は、セツキシマブ及びパニツムマブなどの抗EGFR抗体を用いた療法(これはNCCN及びASCOガイドラインによる第一選択治療の選択肢である)が適切な療法と決定され得る。しかしながら、決定された特性が、KRAS、BRAF、NRAS、及びPIK3CA遺伝子の変異の存在である場合は、抗EGFR抗体を用いた療法は推奨されず、これは、KRAS、BRAF、NRAS、及びPIK3CA遺伝子の変異が、抗EGFR抗体療法への不応性を示すためである。
【0203】
本開示は、疾患の診断を受け、かつ疾患の治療のための治療レジメンを用いた治療を受けている対象の治療を監視するための方法も提供する。
【0204】
一実施形態において、本方法は、i)第1~第4の態様などの本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfNA分子のプールを分析して、分析可能なcfNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfNA分子の特性を決定するステップと、iii)決定された特性が現在の治療処置レジメンと適合性があるかを決定するステップと、iv)決定された特性が、治療レジメンが禁忌であるもしくは推奨されないことを示す場合は、治療レジメンを変更するステップ、または、決定された特性が、治療レジメンが引き続き推奨されることを示す場合は、治療レジメンを継続するステップと、vi)場合により、ステップi)~iv)を繰り返して、所望の時間間隔で治療介入を監視するステップと、を含む。
【0205】
別の実施形態では、本方法は、i)第1~第4の態様などの本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfDNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfDNA分子のプールを分析して、分析可能なcfDNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfDNA分子の特性を決定するステップと、iii)決定された特性が現在の治療処置レジメンと適合性があるかを決定するステップと、iv)決定された特性が、治療レジメンが禁忌であるもしくは推奨されないことを示す場合は、治療レジメンを変更するステップ、または、決定された特性が、治療レジメンが引き続き推奨されることを示す場合は、治療レジメンを継続するステップと、vi)場合により、ステップi)~iv)を繰り返して、所望の時間間隔で治療介入を監視するステップと、を含む。
【0206】
別の実施形態では、本方法は、i)第1~第4の態様などの本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfRNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfRNA分子のプールを分析して、分析可能なcfRNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfRNA分子の特性を決定するステップと、iii)決定された特性が現在の治療処置レジメンと適合性があるかを決定するステップと、iv)決定された特性が、治療レジメンが禁忌であるもしくは推奨されないことを示す場合は、治療レジメンを変更するステップ、または、決定された特性が、治療レジメンが引き続き推奨されることを示す場合は、治療レジメンを継続するステップと、vi)場合により、ステップi)~iv)を繰り返して、所望の時間間隔で治療介入を監視するステップと、を含む。特定の実施形態において、cfRNAは、cfRNAを代表するDNAに変換され、分析可能なプールは、cfRNAを代表するDNAを含む。
【0207】
本明細書で詳解される種々の方法を使用して、cfNAのいくつかの特性を決定することができる。本開示の方法は、試料中のcfNAの特性を決定すること、特定された特性が現在の治療処置レジメンと適合性があるかを決定すること、及び決定された特性(複数可)に基づいて治療法の決断を下すこと(例えば、決定された特性が、治療レジメンが禁忌であるもしくは推奨されないことを示す場合は、治療レジメンを変更すること、または、決定された特性が、治療レジメンが引き続き推奨されることを示す場合は、治療レジメンを継続すること)による、対象の監視を提供する。結腸癌と診断され、初回スクリーニング後に抗EFGR抗体治療に適格であると決定された対象を考察されたい。上記で詳解したように、KRAS、BRAF、NRAS、及びPIK3CA遺伝子のうちの1つ以上の変異は、抗EGFR抗体療法が不適切であり得ることを示す。抗EGFR抗体治療の継続中に決定された特性が、KRAS、BRAF、NRAS、及びPIK3CA遺伝子のうちの1つ以上の変異である場合は、抗EGFR抗体を用いた治療を停止し、新しい治療レジメンを開始する決断が下され得る。
【0208】
別の実施形態では、この特性は、現在の癌治療に影響し得る腫瘍細胞における薬物抵抗性の発達を示す特性であり得る。薬物抵抗性の表現型が決定されれば、治療レジメンを必要に応じて修正及び変更することができる。さらに別の実施形態では、この特性は、腫瘍のクローン進化(例えば、新しい特性の出現、またはそれまでに決定された特性の消失)を示し得る。再び、治療レジメンを必要に応じて修正及び変更することができる。さらに別の実施形態では、この特性は、腫瘍転移を示すものであり得る。そのような特性が決定された場合、所望の場合はそれにしたがって治療レジメンを改変してもよいし、新しい治療レジメンを開始してもよい。
【0209】
本開示は、対象を監視する方法も提供する。
【0210】
一実施形態において、本方法は、i)第1~第4の態様などの本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfNA分子のプールを分析して、分析可能なcfNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfNA分子の特性を決定するステップと、iii)決定された特性に基づいて、対象が治療を必要としているかを決定するステップと、を含む。
【0211】
別の実施形態では、本方法は、i)第1~第4の態様などの本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfDNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfDNA分子のプールを分析して、分析可能なcfDNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfDNA分子の特性を決定するステップと、iii)決定された特性に基づいて、対象が治療を必要としているかを決定するステップと、を含む。
【0212】
別の実施形態では、本方法は、i)第1~第4の態様などの本明細書に記載の方法のいずれかによって、分析可能なcfRNA分子のプールを準備するステップと、ii)分析可能なcfRNA分子のプールを分析して、分析可能なcfRNA分子のプール中の、疾患に関連しているcfRNA分子の特性を決定するステップと、iii)決定された特性に基づいて、対象が治療を必要としているかを決定するステップと、を含む。特定の実施形態において、cfRNAは、cfRNAを代表するDNAに変換され、分析可能なプールは、cfRNAを代表するDNAを含む。
【0213】
本明細書で詳解される種々の方法を使用して、cfNAのいくつかの特性を決定することができる。例えば、結腸癌の例を再び考察されたい。対象が現在寛解期にある場合、本開示の方法を使用して対象を監視することができる。結腸癌の再発を示す特性が決定された場合、治療介入を再開することができる。治療介入は、少なくとも部分的に、決定された特性によって誘導され得る。
【0214】
試料中のcfNAの数量化の方法
本開示の方法は、試料中のcfNAの元々の濃度または量の決定も可能にする。試料中のcfDNAの量を数量化するための現在の方法は、試料からcfDNAを精製することの難しさ(これは、試料からのcfDNAの損失をもたらす)、及び試料中のcfDNAの低い濃度のために、極端な可変性の影響下にある。試料中のcfDNAの濃度を数量化する堅実かつ効率的な方法が望ましく、重要な臨床適用性を有するであろう。例えば、高レベルのcfDNAは、移植拒絶反応、受傷後の外傷後遺症(臓器不全を含む)、虚血性脳卒中におけるリスク層別化、敗血症の重症度、及び他の病態の前兆となることが示唆されている。記載されるCGD法は、線形増幅プロセスである。したがって、既知分量のDNAを投入物として(cfDNAを含有する試料の代わりに)使用して作成した標準曲線を参照することにより、元々の試料中のcfDNAの濃度を数量化することが可能である。例えば、CGD法における投入物として、DNA、好ましくは精製されたDNAを使用し(例えば、0、0.001、0.005、0.01、0.025、0.05、0.1、0.25、0.5、及び1ng/μLの連続的濃度を使用し)、標準曲線を作成するために各濃度における増幅DNAの収率を決定することで、標準曲線を確立することができる。次に、試料中のcfDNAから得られる増幅cfDNAの収率が決定され、標準曲線を参照することにより、試料中のcfDNAの元々の濃度が決定される。
【0215】
一実施形態において、本方法は、i)本明細書に記載の方法のいずれかによって、増幅可能なcfNAプールを準備するステップと、ii)増幅可能なcfNAプールを増幅して、増幅されたcfNA分子のプールを生成するステップと、iii)増幅されたcfNAのプール中のcfNAの濃度を決定するステップと、iv)決定されたcfNAの濃度を標準曲線と比較して、試料中のcfNAの濃度を決定するステップと、を含む。
【0216】
特定の実施形態において、標準曲線は、増幅されたcfNAのプールを調製するために使用されるものと同じ方法を使用して作成される。特定の実施形態において、標準曲線は、精製されたDNAを使用して作成される。特定の実施形態において、標準曲線は、増幅されたcfNAのプールと同時に作成される。
【0217】
キット
本開示は、記載される方法に必要な試薬及び/または反応溶液のうちの1つ以上を含むキットも提供する。一実施形態において、本開示は、本開示の方法を実施するために必要な成分及び試薬の少なくとも一部分を含むキットを提供する。
【0218】
一実施形態において、本キットは、反応が実施される好適な容器または反応槽内に収容されていてもよく、少なくとも1つの外因性核酸配列(すなわち、アダプター)と、cfNAに外因性核酸配列をライゲーションするのに好適な反応溶液と、場合により、増幅可能なcfNAのプールを生成するために反応溶液と共に使用するのに好適な酵素混合物と、を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる。
【0219】
別の実施形態では、本キットは、反応が実施される好適な容器または反応槽内に収容されていてもよく、cfNAに外因性核酸配列をライゲーションするのに好適な反応溶液と、増幅可能なcfNAのプールを生成するために反応溶液と共に使用するのに好適な酵素混合物と、場合により、少なくとも1つの外因性核酸配列(すなわち、アダプター)と、を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる。
【0220】
別の実施形態では、本キットは、反応が実施される好適な容器または反応槽内に収容されていてもよく、cfNAに外因性核酸配列をライゲーションするのに好適な反応溶液と、増幅可能なcfNAのプールを生成するために反応溶液と共に使用するのに好適な酵素混合物と、少なくとも1つの外因性核酸配列(すなわち、アダプター)と、を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる。
【0221】
上記のキットのいずれかは、増幅可能なcfNAプールの増幅に好適な第2の反応溶液、外因性核酸配列と共に使用するための少なくとも1つのプライマー、増幅可能なcfNAプールの増幅のための第2の反応溶液と共に使用して分析可能なcfNAのプールを生成するための第2の酵素混合物、及び本方法の実施に関する指示書のうちの1つ以上をさらに含んでもよい。特定の実施形態において、上記のキットのいずれかは、列挙されたさらなる構成要素の全てを含む。
【0222】
一実施形態において、本キットは、-20℃で保管されてもよい。別の実施形態では、本キットは、4℃で保管されてもよい。保管の長さは、特に-20℃で保管されるとき、数日から数か月、数年まで及び得る。
【0223】
一実施形態において、本キットは、96ウェルプレートなどのマルチウェルプレート形式で提供される。
【0224】
特定の実施形態において、増幅可能なcfNAのプールを生成するために反応溶液と共に使用するのに好適な酵素混合物は、次の活性:
1)5’-3’ポリメラーゼ活性及び3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ、ならびにii)リガーゼ、
2)5’-3’ポリメラーゼ活性及び3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ、ii)リガーゼ、ならびにiii)ポリヌクレオチドキナーゼ、
3)5’-3’ポリメラーゼ活性及び3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ、ii)リガーゼ、iii)ポリヌクレオチドキナーゼ、ならびにiv)ウラシル-DNAグリコシラーゼ活性、
4)5’-3’ポリメラーゼ活性及び3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ、ii)リガーゼ、iii)ポリヌクレオチドキナーゼ、iv)ウラシル-DNAグリコシラーゼ活性、ならびにv)核酸ニッキング酵素活性、
5)5’-3’ポリメラーゼ活性及び3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ、ii)リガーゼ、iii)ポリヌクレオチドキナーゼ、iv)ウラシル-DNAグリコシラーゼ活性、v)核酸ニッキング酵素活性、ならびにvi)核酸結合タンパク質
を含み得る。
【0225】
特定の実施形態において、増幅可能なcfNAのプールを生成するために反応溶液と共に使用するのに好適な酵素混合物は、次の成分:
1)5’-3’ポリメラーゼ活性及び3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、ならびにii)DNAリガーゼ、
2)5’-3’ポリメラーゼ活性及び3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、ii)リガーゼ、ならびにiii)DNAポリヌクレオチドキナーゼ、
3)5’-3’ポリメラーゼ活性及び3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、ii)DNAリガーゼ、iii)DNAポリヌクレオチドキナーゼ、ならびにiv)ウラシル-DNAグリコシラーゼ活性、
4)5’-3’ポリメラーゼ活性及び3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、ii)DNAリガーゼ、iii)DNAポリヌクレオチドキナーゼ、iv)ウラシル-DNAグリコシラーゼ活性、ならびにv)一本鎖DNA核酸ニッキング酵素活性、
5)5’-3’ポリメラーゼ活性及び3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、ii)DNAリガーゼ、iii)DNAポリヌクレオチドキナーゼ、iv)ウラシル-DNAグリコシラーゼ活性、v)一本鎖DNA核酸ニッキング酵素活性、ならびにvi)一本鎖DNA結合タンパク質
を含み得る。
【0226】
特定の実施形態において、増幅可能なcfNAのプールを生成するために反応溶液と共に使用するのに好適な酵素混合物は、次の成分:
1)T4 DNAポリメラーゼ、及びii)T4 DNAリガーゼまたはDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、及びii)T4 DNAリガーゼ、
2)T4 DNAポリメラーゼ、ii)T4 DNAリガーゼ、及びiii)DNAポリメラーゼIのクレノウ断片
3)T4 DNAポリメラーゼ、ii)T4 DNAリガーゼ、iii)DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、及びiv)T4ポリヌクレオチドキナーゼ、
4)T4 DNAポリメラーゼ、ii)T4 DNAリガーゼ、iii)DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、iv)T4ポリヌクレオチドキナーゼ、及びv)ウラシル-DNAグリコシラーゼ、または、
5)T4 DNAポリメラーゼ、ii)T4 DNAリガーゼ、iii)DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、iv)T4ポリヌクレオチドキナーゼ、v)ウラシル-DNAグリコシラーゼ及びNb.BbvC1
を含み得る。
【0227】
前述のもののいずれかは、一本鎖結合タンパク質(例えば、E.coli一本鎖結合タンパク質など)をさらに含んでもよい。
【0228】
特定の実施形態において、増幅可能なcfNAのプールを生成するために反応溶液と共に使用するのに好適な酵素混合物は、T4 DNAポリメラーゼ、T4 DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、ウラシル-DNAグリコシラーゼ、及びNb.BbvC1を含む。特定の実施形態において、増幅可能なcfNAのプールを生成するために反応溶液と共に使用するのに好適な酵素混合物は、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片及びT4 DNAリガーゼを含む。
【0229】
本明細書に開示される方法で使用することのできる様々な酵素の濃度は、様々であり得る。一実施形態において、酵素は、次の濃度範囲、すなわちT4 DNAポリメラーゼ2~15U、クレノウ断片2~20U、T4 DNAリガーゼ100~1,000U、T4ポリヌクレオチドキナーゼ5~20U、Nb.BbvC1 5~20U、及びウラシル-DNAグリコシラーゼ1~6Uで使用され、E.coli一本鎖結合タンパク質は、50~500ngで存在し得る。
【0230】
特定の実施形態において、増幅可能なcfNAのプールを生成するために反応溶液と共に使用するのに好適な酵素混合物は、本明細書の実施例12に記載される酵素混合物を含む。
【0231】
当該技術分野で知られているように、種々の緩衝液/反応溶液が本開示の方法で使用され得る。特定の実施形態において、反応溶液は、20~75mMの酢酸カリウム、10~100mMのトリス-アセテート(25℃においてpH7.9)、1~30mMの酢酸マグネシウム、0.1~20mMのDTT、5~100μMのdNTP、0.5~2mMのATP、及び100~400ug/mLのBSAを含む。特定の実施形態において、反応溶液は、20~75mMのNaCl、10~100mMのトリス-Cl(pH7.0~8.0)、1~30mMのMgCl、0.1~20mMのDTT、5~100μMのdNTP、及び0.5~2mMのATPを含む。
【0232】
特定の実施形態において、酵素混合物と共に使用するための反応溶液は、本明細書の実施例13に記載されるものである。
【0233】
方法
血漿cfDNAの調製
EDTAを含む試験管(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)に血液を採取し、2500rpmで20分間にわたり遠心処理した。残ったデブリ(例えば保管されていた試料中のもの)を取り除くために必要であれば、さらなる遠心処理(10,000rpmで10分間)を用いてもよい。バフィーコートを慎重に避けながら、血漿をクライオバイアルに移し、さらなる分析まで-80℃で保管した。20μL及び200μLの血漿試料から、それぞれ、本明細書に記載のcfDNA濃縮及び回収技術(CGD法と称される)ならびにQIAamp循環核酸キット(Qiagen,Valencia,CA、製造元の指示に従って使用)を使用して、cfDNAを調製した。
【0234】
尿からのcfDNAの調製
別段の規定がない限り、循環cfDNAは、CGD法を使用して、未処理、未希釈の尿試料10~20μLから直接調製した。
【0235】
cfDNAのISA
本明細書に記載の実施例では、いくつかの変化形を使用して、CGD法をcfDNAのISAのために行った。特定の実施例は、最適化を目的とした様々なプロトコルの比較を提供し、CGD法が行われる方法は、そのような各実施例で提供される。
【0236】
以下の説明は、記載されるCGD法の一般的適用を限定することを意図するものではなく、本明細書に記載の方法を実施するための例示的なプロトコルとして提供されるものである。記載される方法は、例えばPCR試験管または多層ストリップ/プレートなどの、好適な容器または反応槽内で行われる。
【0237】
プロトコルA
1. 試料(例えば、20μLの血漿、血清、尿、唾液、またはCSF)に、1倍PBS(20μLの試料容量に対して80μL)で希釈した試料を添加し、場合により試料を混合した。
2. ステップ1の試料10μLに、1μLの10倍TE緩衝液を添加し、試料を95℃で4分間加熱した。
4. この試料を氷上で直ちに冷却し、試料を手短に遠心処理して内容物を固めた。
5. 2μLのマスターミックス(反応物中の最終濃度:dNTP 40μM、アダプター分子;すなわち外因性核酸配列 各2μM)、及び2μLのユニバーサル緩衝液(反応物中の最終濃度:NaCl 50mM、トリス-Cl(pH7.0~8.0)25mM、MgCl 10mM、DTT 2.5mM、及びATP 1mM)を、各試料に添加した。
5’-(N6-10ATTAACCCTCACTAAAG(N3-6)-3’(配列番号1)
5’-(N6-10TAATACGACTCACTATAGGG(N3-6)-3’(配列番号2)
6. 試料を十分にボルテックスし、手短に遠心処理し、95℃で2分間加熱した。
7. これらの試料を氷上で冷却し、遠心処理によって固め、氷上に戻した。
8. E.coli DNAポリメラーゼ(クレノウ断片)及びT4 DNAリガーゼを含む1μLの酵素混合物を各試料に添加し(最終濃度:ポリメラーゼ5U及びリガーゼ100U)、試料を十分にボルテックスし、手短に遠心処理した。
9. 試料をサーマルサイクラーに入れ、次のようにインキュベートした。
16℃で20分間
24℃で20分間
37℃で20分間
75℃で5分間
4℃で保持
10. サーマルサイクラーから取り除いた後、試料を手短に遠心処理した。これらの試料は、-20℃で(最長3日間にわたり)保管し、以下に記載のようにさらに処理したか、あるいは、直ちに以下に記載のように処理した。
11. アダプター核酸を含有する修飾cfNAの増幅のため、ステップ10の各試料に次の試薬を添加した。
7.5μLの10倍マスターミックス(反応物中の最終濃度:dNTP 40μM、ならびに配列番号3及び4の配列を有するプライマー500nM)、
47.5μLの水(分子生物学グレード)、及び、
5μLの高忠実度DNAポリメラーゼ
5’プライマー 5’-ATTAACCCTCACTAAAG-3’(配列番号3)
3’プライマー: 5’-TAATACGACTCACTATAGGG-3’(配列番号4)
13. 各試料を十分にボルテックスし、手短に遠心処理し、サーマルサイクラーに入れ、次のようにインキュベートした。
95℃で3分間の初期変性
次のように25サイクルを行う:
94℃で15秒間の変性
65℃で5分間のアニーリング/伸長
サイクリングが完了した後、試料を4℃に維持し、増幅したcfNAを本明細書に記載の分析に供したか、または本明細書に記載の分析に供するまで-20℃で保管した。
【0238】
プロトコルB
1. 20μLの試料(例えば、血漿、血清、尿、またはCSF)に、80μLの1倍PBSを添加し、場合により試料を混合した。
2. ステップ1の試料10μLに、1μLの10倍TE緩衝液(100mMのトリス0HCL(pH8.0)及び10mMのEDTA)を添加し、試料を95℃で4分間加熱した。
4. この試料を氷上で直ちに冷却し、試料を手短に遠心処理して内容物を固めた。
5. 2μLのCG1緩衝液(最終濃度:配列番号5のアダプター分子(ヌクレアーゼ不含水中);すなわち外因性核酸配列2μM)、及び1μLのCG2緩衝液(最終濃度:酢酸カリウム50mM、トリス-アセテート(pH7.9)20mM、酢酸マグネシウム10mM、DTT 1mM、ATP 1mM、dNTP 40μM、及びBSA 200μg/ml)を、各試料に添加した。
5’-OHTGTGTTGGGTGTGGUUUUUATTTAATACGACTCACTATAGACCCTCAGCACC ACCACACCCAACACA-3’(配列番号5)
6. 試料を十分にボルテックスし、手短に遠心処理し、95℃で2分間加熱した。
7. これらの試料を氷上で冷却し、遠心処理によって固め、氷上に戻した。
8. T4 DNAポリメラーゼのクレノウ断片、T4 DNAリガーゼ、E.coli DNAポリメラーゼI、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)、Nb.BbvC1、及びE.coli一本鎖結合タンパク質を含む酵素混合物1μLを、各試料に添加し(最終濃度:T4 DNAポリメラーゼ5U、T4 DNAリガーゼ800U、クレノウ断片12.5U、T4ポリヌクレオチドキナーゼ12.5U、ウラシル-DNAグリコシラーゼ3.75U、及び一本鎖結合タンパク質120ng)、試料を十分にボルテックスし、手短に遠心処理した。
9. 試料をサーマルサイクラーに入れ、次のようにインキュベートした。
16℃で20分間
24℃で20分間
37℃で20分間
75℃で5分間
4℃で保持
10. サーマルサイクラーから取り除いた後、試料を手短に遠心処理した。これらの試料は、-20℃で(最長3日間にわたり)保管し、以下に記載のようにさらに処理したか、あるいは、直ちに以下に記載のように処理した。
11. アダプター核酸を含有する修飾cfNAの増幅のため、ステップ10の各試料に次の試薬を添加した。
7.5μLの10倍マスターミックス(dNTP 40μM、及び配列番号6の配列を有するプライマー500nM)、
47.5μLの水(分子生物学グレード)、及び、
5μLの高忠実度DNAポリメラーゼ
5’-ACTCACTATAGACCCTCAGCACCAC-3’(配列番号6)
13. 各試料を十分にボルテックスし、手短に遠心処理し、サーマルサイクラーに入れ、次のようにインキュベートした。
95℃で3分間の初期変性
次のように25サイクルを行う:
94℃で15秒間の変性
65℃で5分間のアニーリング/伸長
サイクリングが完了した後、試料を4℃に維持し、増幅したcfNAを本明細書に記載の分析に供したか、または本明細書に記載の分析に供するまで-20℃で保管した。
【0239】
cfRNAのISA
以下の説明は、cfRNAにISAを行う例示的な方法である。この説明は、記載されるCGD法の一般的適用を限定することを意図するものではなく、本明細書に記載の方法を実施するための例示的なプロトコルとして提供されるものである。記載される方法は、例えばPCR試験管または多層ストリップ/プレートなどの、好適な容器または反応槽内で行われる。
1. 10μLの希釈した血漿(1:5)を95℃で2分間加熱して、内因性ヌクレアーゼを不活性化させ、DNA複合体を解離させ、cfDNAを断片化/変性する。
2. 1μLのDNアーゼI反応緩衝液(最終濃度:トリス-HCl 10mM、MgCl 2.5mM 、CaCl 0.5mM(pH7.6))及び2ユニットのDNアーゼIを添加し、十分に混合し、37℃で30分間インキュベートする。
3. 1μLの0.5M EDTAを(5mMの最終濃度になるまで)添加する。
4. 85℃で15分間にわたり熱で不活性化させる。
5. 逆転写及びcDNA合成を行う(例えば、New England BioLabs,Ipswich,MAのProtoscript IIキットを使用する)。上記のDNアーゼIで処置した試料11μLに、5倍の第1鎖合成反応緩衝液3μL、及びランダムプライマー1μLを添加し、この試料を94℃で15分間インキュベートし、試験管を氷に移し、0.5μLのマウスRNアーゼ阻害薬(20U)及び1μLの逆転写酵素ならびに水を添加して、最終容量を20μLにし、この試料を予熱済みサーマルサイクラーで次のようにインキュベートする:25℃で10分間、42℃で15分間、70℃で15分間、及び4℃で保持。
6. 第2鎖合成を行う(例えば、New England BioLabs,Ipswich,MAのNEBNext第2鎖合成モジュールを使用する)。反応物(20μl)に、次の試薬:ヌクレアーゼ不含水48μl、合成反応緩衝液8μl、合成酵素ミックス4μlを添加し(全容量80μl)、十分に混合し、加熱蓋を≦40℃に設定したサーマルサイクラーにおいて16℃で1時間インキュベートする。
7. Agencourt AMPure XPビーズ(Beckman Coulter,Brea,CA)を使用して、二本鎖cDNAを精製する。
8. cfDNAのISAプロトコル(例えば、プロトコルAまたはプロトコルB)のステップ5に進む。
【0240】
リアルタイムPCR
cfDNAの増幅能(Amplifiability)は、KRAS、BRAF、PIK3CA、及びNRAS遺伝子(Life Technologies,Carlsbad,CA)に特異的に設計したプライマーを用い、TaqManリアルタイム定量的PCRを使用して、各試料につき二連で実施した。増幅プロット及びCt値は、内蔵ソフトウェア(QuantStudio 12K機器、Life Technologies,Carlsbad,CA)によって作成した。PCR反応の正確度を制御するために、各ランで適切なブランク及び陽性対照を含めた。
【0241】
血漿cfNAの数量化
Qubit 2.0蛍光光度計をdsDNA BR及びHSアッセイキット(Life Technologies,Carlsbad,CA)と一緒に使用し、cfNAの数量化を行った。分析は、製造元の指示に従って行った。
【0242】
Ion Torrent NGSによる高深度標的化配列決定(Deep targeted sequencing)及びデータ分析
手短に述べると、Ion AmpliSeq Libraryキット2.0及びCancer Hotspot Panel v2を製造元(Life Technologies,Carlsbad,CA)の指示に従って使用し、標的化配列決定ライブラリを作製した。この試験パネルは、次の50個の主要な癌遺伝子:ABL1、AKT1、ALK、APC、ATM、BRAF、CDH1、CDKN2A、CSF1R、CTNNB1、EGFR、ERBB2、ERBB4、EZH2、FBXW7、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT3、GNAQ、GNAS、GNA11、HNF1A、HRAS、IDH1、IDH2、JAK2、JAK3、KDR、KIT、KRAS、MET、MLH1、MPL、NOTCH1、NPM1、NRAS、PDGFRA、PIK3CA、PTEN、PTPN11、RB1、RET、SMAD4、SMARCB1、SMO、SRC、STK11、TP53、及びVHLにおける2,855個の変異を標的化するように設計されている。変異の全リストは、(http://path.upmc.edu/divisions/map/)で確認することができる。変異の詳細は、Catalogue of Somatic Mutations in Cancer(COSMIC)データベース(http://cancer.sanger.ac.uk/cancergenome/projects/cosmic/)から対応するCOSMIC IDを用いて得ることができる。このパネルの遺伝子の参照として使用されるDNA配列は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/refseq/rsg/で確認することができる。変異の命名法は、Human Genome Variation Society(http://www.hgvs.org/mutnomen/)の推奨する慣例に基づく。
【0243】
出発物質は、CGD法の使用または他の方法(例えば、QIAampキット)によって調製された1~20ngのcfDNAからなった。各試料を50個の遺伝子パネル全体について分析し、合計およそ2,800個の変異を精査した。次に、ライブラリ増幅に使用したプライマーをPfu酵素によって部分的に消化し、続いて、対応するバーコード付きアダプターとのライゲーションを行い、Ampureビーズを使用して精製した。QuantStudio 6リアルタイムPCR機器を使用してライブラリの質を評価した。配列決定鋳型をクローン増幅するエマルジョンPCRのため、Ion Chefシステムで20ピコモルの各ライブラリを分析した。分析した試料数に基づいて、チップ314、316、または318を使用した。1000~4000倍のカバレッジ範囲を用い、Ion Torrent PGMで高深度配列決定を行った。Variant Caller 4.0ソフトウェアにより、体細胞の高ストリンジェンシーパラメータならびに標的化及びホットスポットパイプラインを使用して、配列決定データを分析した。GenePool(Station X,San Francisco,CA)によってデータを分析することにより、特定された全てのバリアントをさらに確定した。
【実施例
【0244】
実施例1-cfDNA回収
CGD法の優れた特性を実証するため、CGD法を使用し、市販のcfDNA精製キット(QIAamp循環核酸キット、Qiagen,Valencia,CA)を用いてcfDNAを調製した。記載したように、プロトコルAを使用し、血漿試料(20μL)及び尿試料(10μL)からcfDNAを調製した。増幅可能なcfDNAプールを、プロトコルAに記載のPCR増幅に供した。QIAampキット(製造元の指示に従って使用)を使用し、cfDNAを血漿試料(200μL)から調製した。17人の癌患者の血漿試料からcfDNAを調製した。尿試料は健常な対象のものであった。蛍光Qubit dsDNA BRまたはHSアッセイ、ならびにKRAS、BRAF、PIK3CA、及びNRAS遺伝子のTaqmanリアルタイムPCR分析により、cfDNAを数量化した(血漿試料のみ)。さらに、NGS分析を適用して、血漿試料セットにおける変異を検出した(血漿試料のみ)。
【0245】
表1に示されるように、CGD法は、Qubit測定により決定した場合に、QIAampキットよりも有意に多いcfDNAをもたらした。CGD法を使用して観察されたcfDNAの平均濃度は、QIAampキットを使用した0.42ng/μLと比較して、92.5ng/μLであった(n=17、P<0.0001)。この回収の向上は、投入試料容量を考慮するとより顕著である。QIAampキットでの200μLの血漿試料と比較して、CGD法では20μLの血漿試料を使用した。それでもCGD法は、低下した試料容量にもかかわらずはるかに優れた結果をもたらした。
【0246】
CGD法を使用し、尿試料からもcfDNAを回収し、Qubit測定によって定量化した。CGD法を使用して得られたcfDNAの平均濃度は、40.9ng/μL(N=6)であった(4.52ng/ml~80.4ng/ml.)。血漿試料については、CGD法は、尿試料からのcfDNAの効果的な調製を示した。この結果を表1に示す。
【表2】
【0247】
CGD法で得られるより高いcfDNAの産出量は、アガロースゲル電気泳動によっても明らかになった。CGD法により血漿及び尿試料から調製された、選択されたcfDNA試料をアガロースゲル電気泳動(2%)に供し、臭化エチジウムを使用して可視化した。CGD法により調製された血漿(図1B)及び尿(図1C)から得たcfDNAは、強いDNA強度を示した。
【0248】
図1Bにおいて、分析した試料は、7つの凍結した血漿試料及び3つの新鮮な血漿試料から抽出したcfDNAを含んでいた。レーン1~4は、癌と診断された対象または癌を有する疑いのある対象からの臨床血漿試料であり、レーン5は、健常な対象からの新鮮な血漿に試料4の血漿を加えたものであった。レーン6~8は、健常な対象からの凍結した血漿試料であり、レーン9~10は、健常な対象からの新鮮な血漿試料であった。CGD法を使用して調製された血漿cfDNAの分画は、100~500bpの一貫したサイズ分布を明らかにし、強力な染色を示した。
【0249】
図1Cでは、10μLの尿から回収したcfDNAをアガロースゲル電気泳動(2%)に供し、臭化エチジウムを使用して可視化した。分析した試料は、6体の健常な個体からの尿試料(レーン1~6)と、陽性対照としての血漿試料(レーン7)であった。血漿試料について見られたように、CGD法を使用して尿試料から得たcfDNAの分画は、CGD法により100~500bpの一貫したサイズ分布を明らかにし、強力な染色を示した。
【0250】
上記の結果は、CGD法が、種々の試料タイプから高分量で優秀なcfDNA調製物をもたらすことを実証する。さらに、CGD法は、試験した先行技術の方法よりも優れていた。
【0251】
実施例2-cfDNAの増幅能
CGD法及びQIAampキットを使用して実施例1に記載のように血漿試料から調製したcfDNAの増幅能を、TaqMan定量的リアルタイムPCR(qPCR)により4つの癌原遺伝子(KRAS、BRAF、PIK3CA、及びNRAS)で調べて、生成された分析可能なcfDNAのプールの質を評価した。実施例1に記載のように血漿試料を調製し、qPCR分析に供した。
【0252】
qPCR技法は、増幅の進行の連続的監視を伴い、標的の数量化を可能にする。予想通り、CGD法及びQIAampキットを使用して調製されたcfDNAからのKRASの増幅プロットは、CGD法及びQIAampキットを使用して調製されたcfDNAについて、それぞれ17~24及び28~33の範囲の閾値サイクル(Ct)値を示した(図2)。全試料においてKRASが増幅され、血漿試料中の十分なcfDNAの存在が示された。しかしながら、Ct値の比較は、CGD法がQIAampキットよりも少なくとも100倍多くの分析可能なcfDNAをもたらしたことを示す(ΔCt>7)。
【0253】
次に、3つの他の遺伝子、すなわちBRAF、PIK3CA、及びNRASで行った測定に同様の差が存在したかどうかを決定した。実施例1に記載のように血漿試料を調製した。図3A~3Cにはそれぞれ、BRAF、PIK3CA、及びNRASについての結果が示されている。CGD法を使用して調製されたcfDNAからの増幅プロットは、QIAampキットを使用して調製されたcfDNAと比較すると低いCt値を示した。この差は、3つ全ての遺伝子間で観察された。ΔCtの大きさは、KRASのそれと一致している。
【0254】
これらの実験の主要な特性の概要を表2に示す。
【表3】
【0255】
上記の結果は、CGD法が、さらなる分析に好適な質の高い分析可能なcfDNAのプールをもたらすことを実証する。さらに、CGD法は、試験した先行技術の方法よりも優れていた。
【0256】
実施例3-次世代配列決定
次世代配列決定(NGS)分析を使用して、CGD法及びQIAampキットから調製されたcfDNAのさらなる評価を行った。実施例1に記載のようにcfDNAを調製した。NGS分析は、上述のように行った。
【0257】
CGD法を使用し、またQIAampキットを使用して調製された、1~10ngのcfDNAを、50個の遺伝子パネル全体について分析し、合計およそ2,800個の変異を精査した(Cancer Hotspot Panel v2,Life Technologies,Carlsbad,CA)。この結果を表3に示す。
【表4】
【0258】
試験した17個の試料のうち、QIAampキットにより調製されたcfDNAを使用した8個の試料(8/17、47.1%)は、結果を得るにはQNS(分量不足)であり、先の実施例1のQubit及びリアルタイムPCRの結果と一致した。CGD法により調製されたcfDNAを使用した試料は全て分析可能であった(17/17、100%)。NGS分析は、CGD法及びQIAampキットで調製されたcfDNAを使用した、野生型(変異なし)と決定された4つの一致ケース(試料4、10、13、及び15)を示した。NGS分析は、CGD法及びQIAampキットで調製されたcfDNAを使用した5つの不一致ケースも明らかにした。4つのケースにおいて、QIAampキットを使用して調製されたcfDNAは、変異を明らかにしなかったが、CGD法により調製されたcfDNAを使用した同じ試料(試料5、7、9、及び12)では、少なくとも1つの変異が検出された。1つのケースにおいて、QIAampキットを使用して調製されたcfDNAは、単一の変異を明らかにし(低いカバレッジ、463倍)、一方で、同じ試料からCGD法により調製されたcfDNAは、野生型の結果をもたらした(試料14)。
【0259】
サイレント変異及び未確定の体細胞変異を除去した後、17体中11体の対象(64.7%)が、CGD法により調製されたcfDNAを使用した場合にNGS分析により検出された少なくとも1つの変異を有した。これらの試料の読み深度は、1006倍~3542倍の範囲であった。対照的に、QIAampキットを使用して調製されたcfDNAを使用したNGS分析は、1/17のみの対象(5.9%)における変異を明らかにした。CGD法により調製されたcfDNAを使用したNGS分析により、QIAampキットを使用して調製されたcfDNAを使用したNGS分析では検出されなかった11個の試料中23個の変異の定量が可能になった。特定された全ての変異は、置換であった。まとめると、NGS結果は、CGD法により抽出されたcfDNAが、先行技術の方法と比較して優れた分析用出発物質をもたらしたことを実証した。さらに、比較すると、QIAampキットは、cfDNA調製ステップにおける損失に起因する高いQNS及び偽陰性率を示した。
【0260】
さらなる実験において、試料可変性及びバイオマーカー検出不良の可能性に関する問題点に対処するために、添加回収実験を行った。Horizon Diagnosticsによる2つのNGS標準品を試験した:標準4は、5%で10個の変異をカバーし、標準6は、2.5%で20個の変異を保有し、両方ともゲノムDNAフォーマットである。健常な個体に通常見出される10~30ng/mLのcfDNAに関して、2つの添加濃度(5及び20ng/mL)を使用した。表4に示されるように、CGD法により調製された試料では、2.5%または5%のいずれにおいても60パーセントの変異(6/10及び12/20)がNGS分析によって検出され得るが、QIAampキットを使用して調製された同じ添加試料では、NGS分析により検出可能な変異はなかった。添加研究の結果は先のNGS分析データと一致しており、CGD法が先行技術の方法と比較して少ない血漿からより高い分量のcfDNAをもたらしたことをさらに確定し、より多くの変異の特定につながった。
【表5】
CGD法は、液滴容量の血漿(20μLほどの低さ)から直接調製されたcfDNAの先進的ゲノム分析(例えば次世代配列決定)を可能にする。CGD法は、最小限の試料容量、最大限の収率、コスト及び所要時間の低下した合理化されたワークフローという利点と共に、広範囲の臨床遺伝子検査に適用することができる。
【0261】
実施例4-CGD法を使用した唾液試料のISA
本実施例は、CGD法における唾液試料の使用を例示する。この実施例では、プロトコルに従ってCGD法を行った。2体の個々の対象から唾液試料を得た。唾液試料は、防腐剤ありまたはなしで、市販の試料採取キット(Pure-SAL経口検体収集システム、Oasis Diagnostics)を用いて得た。20μLの唾液試料を投入物として使用し、分析可能なcfDNA分子のプールを生成した。
【0262】
この実施例のための試料は、市販の唾液試料採取キットに存在する防腐剤あり及びなしの両方で、2体の異なる対象から採取した唾液試料であり、20μLの試料を各実験に使用した。プロトコルAに記載されるように唾液試料を処理して、cfDNAプールの分析可能なプールを生成した。上述のQubit 2.0蛍光光度計を使用し、増幅されたcfDNAの全収率を数量化した。
【0263】
CGD法から得られたcfDNAを、2%のゲルでのアガロースゲル電気泳動に供し、臭化エチジウムを使用して可視化した(図4)。図4中、レーン1及び2は、防腐剤を含む市販の試料採取キットを用いて得た唾液試料の結果を示し、レーン3は陰性対照であり(唾液試料は存在しない)、一方で、レーン4及び5は、防腐剤を含まない市販の試料採取キットを用いて得た唾液試料の結果を示し、レーン6は陰性対照である(唾液試料は存在しない)。直接採取された唾液試料のcfDNAは、CGD法により生成された豊富なcfDNAの存在を示す強い染色強度を示した。対照的に、防腐剤及び他の作用物質を含有する市販のキットを使用して採取された唾液試料は、染色をほとんどまたは全く示さなかった(レーン1及び2)。
【0264】
この実施例は、唾液試料中に存在するcfDNAから分析可能なcfDNA分子のプールを生成するためにCGD法が効率的に使用され得ることを示す。さらに、この実施例は、市販の試料採取キット中に存在する作用物質が、CGD法によるcfDNAの増幅を妨害し得ることを実証する。
【0265】
実施例5-CGD法を使用した血漿、尿、及び脳脊髄液試料のISA
本実施例は、CGD法における血漿、尿、及び脳脊髄液(CSF)試料の使用を例示する。この実施例では、プロトコルAに従ってCGD法を行った。プロトコルAに記載されるように試料を処理して、cfDNAプールの分析可能なプールを生成した。記載されるように、分析可能なcfDNAのプールをNGS分析に供した。上述のQubit 2.0蛍光光度計を使用し、増幅されたcfDNAの全収率を数量化した。
【0266】
種々の源から凍結試料を得た。血漿及びCSF試料については、20μLの試料を投入物としてCGD法に使用し、一方で尿試料については、10μLの試料を投入物としてCGD法に使用した。
【0267】
CGD法から得られたcfDNAを、2%のゲルでのアガロースゲル電気泳動に供し、臭化エチジウムを使用して、1kbラダーで可視化した(図5)。図5中、様々な試料から調製されたcfDNAは次の通りであり、括弧内はng/μL単位のcfDNA濃度である:レーン1 CSF(8.5)、レーン2 尿(5.1)、レーン3 血漿(22)、レーン4 血漿(59)、レーン5 血漿(36.4)、レーン6 陰性対照、レーン7 尿(52.2)、レーン8 尿(11.2)、レーン9 尿(89.6)、及びレーン10 尿(30)。全ての試料のcfDNAが、CGD法により生成された豊富なcfDNAの存在を示す強い染色強度を示した。また、図5のレーン1~6に示される試料から調製されたcfDNAをAgilent 2100 Bioanalyzerにより分析して、CGD法により調製されたcfDNAのサイズ分布及び定量化を決定した(図6)。
【0268】
この実施例は、種々の試料タイプに存在するcfDNAから分析可能なcfDNA分子のプールを生成するためにCGD法が効率的に使用され得ることを示す。さらに、CGD法を使用したcfDNAのサイズ分布は、概して100~600kbの範囲内であり、これは下流分析に有益である。
【0269】
実施例6-cfDNAを使用した変異体の割合の決定
本実施例は、野生型及び変異体のcfDNAの絶対コピー数の決定ならびに変異体の割合の計算を例示する。QIAampキット(製造元の指示に従って使用)を使用して、血漿及びCSF試料(200μL)からcfDNAを調製した。試料は、CGD法のために直接使用した。プロトコルAに従い、CGD法を行った。この実施例のための試料は、対象から採取した血漿試料であった。プロトコルAに記載されるように血漿試料を処理して、分析可能なcfDNAプールを生成した。試料投入容量はそれぞれ、CGD法で20μL、CGD法及びQiaAmpキットで200μLであった。cfDNAは、陽性対照及び陰性対照と併せて、6つの血漿試料及び1つのCSF試料から調製した。cfDNAは、独立した研究所により、QX200 Droplet Digital PCRシステム(Bio-Rad,Hercules,CA)を使用して分析された。
【0270】
ddPCRは、核酸標的配列の高精度で絶対的な数量化を可能にする。サーマルサイクラーを使用した各液滴内のPCR増幅反応に続いて、離散的な容積測定的に定義された油中水型の液滴分配において封入された核酸分子を計数することにより、絶対コピー数を測定した。1つは野生型DNAに対し、もう1つは変異体DNAに対する、2つの異なる蛍光シグナルを計数する液滴リーダーで、液滴を一列に流した。変異体の割合は、変異体の割合%=(変異体コピー数/全コピー数)×100の式を使用して計算した。この結果を表5に示す。
【0271】
表5に見ることができるように、CGD法を使用して調製されたcfDNAは、変異体の割合の濃縮において、先行技術の方法と比較して優れていた。試験した7つの試料のうち、CGD法は、5/7の試料(71.4%)において変異体の割合の優れた濃縮をもたらした。
【表6】
【0272】
実施例6-CGD法の再現性
本実施例は、CGD法の再現性を示す。6つの質対照試料(quality control sample)(2つの陽性対照、2つの陰性対照、及び2つの添加処理対照)を10か月の期間にわたって分析した。陽性対照には、市販の細胞株SW480及びNCI-H1975を使用した。陰性対照には、市販の細胞株NA12878及びNA19240を使用した。細胞株は全て、American Type Culture Collection(Manassas,VA)から購入した。処理対照については、以前に試験した2つの陽性患者のDNA試料を正常血漿に添加するために使用して(最終濃度200ng/ml)、2つの処理対照を作製した。細胞からDNAを単離し、10ngのDNAを投入物としてCGD法に使用した。
【0273】
プロトコルAに従い、CGD法を行った。分析可能なcfDNAのプールを上述のようにNGS分析に供した。この結果を表6Aに示す。表6Aは、COSMIC ID番号により示される遺伝子及び変異のバリアントコールを示し、サイレント変異及び未確定の体細胞変異は除去しなかった。異なるCOSMIC IDが同じ変異を表す場合がある。COSMIC IDは、Catalogue of Somatic Mutations in Cancer: http://cancer.sanger.ac.uk/cancergenome/projects/cosmic/から得た。
【0274】
表6Aに示されるように、CGD法は、質対照試料を使用した全ての試験期間にわたって100%の一致率で経時的に完全に再現可能であった。
【表7】
【0275】
CGD法を使用したアッセイ内の差異も調べた。15個の血漿試料(健常な対象から2個、癌対象から4個、添加血漿試料から2個、4個の細胞株試料、及び3個の血清試料)を収集した。添加血漿試料は上記のように調製した。細胞株からDNAを精製し、10ngのDNAをCGD法への投入物として使用した。プロトコルAに従い、CGD法を行った。分析可能なcfDNAのプールを上述のようにNGS分析に供した。異なる頻度の変異を有する15個のライブラリに異なるバーコードで指標をつけ、多重化し、Ion Proton NGSアッセイを使用した同じランにおいて5回試験した。平均読み深度は>200倍であった。
【0276】
この結果を表6Bに示す。表6Bは、COSMIC ID番号により示される遺伝子及び変異のバリアントコールを示し、サイレント変異及び未確定の体細胞変異は除去しなかった。異なるCOSMIC IDが同じ変異を表す場合がある。COSMIC IDは、Catalogue of Somatic Mutations in Cancer: http://cancer.sanger.ac.uk/cancergenome/projects/cosmic/から得た。複製分析間の一致率も示されている。この結果は、各複製分析において変異コールに対する100%の一致率を示す。変異のバリアント頻度は、高度に再現可能であった(CV%<10%)。
【表8】
【0277】
アッセイ内研究において記載した15個の試料を使用し、2人のオペレータによる5回の異なるランで、アッセイ間再現性研究を行った。プロトコルAに従い、CGD法を行った。分析可能なcfDNAのプールを上述のようにNGS分析に供した。異なる頻度の変異を有する15個のライブラリに異なるバーコードで指標をつけ、多重化し、Ion Proton NGSアッセイを使用した5回の別々のランにおいて試験した。平均読み深度は>200倍である。
【0278】
この結果を表6Cに示す。表6Cは、COSMIC ID番号により示される遺伝子及び変異のバリアントコールを示し、サイレント変異及び未確定の体細胞変異は除去しなかった。異なるCOSMIC IDが同じ変異を表す場合がある。COSMIC IDは、Catalogue of Somatic Mutations in Cancer: http://cancer.sanger.ac.uk/cancergenome/projects/cosmic/から得た。複製分析間の一致率も示されている。アッセイ間研究と同様に、この結果は、5回全ての分析において変異コールに対する100%の一致率を示す。変異のバリアント頻度は、高度に再現可能であった(CV%<10%)。
【表9】
【0279】
実施例7-CGD法の感度
この実施例は、CGD法の感度及び検出限界(LOD)を例示する。この実施例では、Horizon Dx NGS標準品であるTru-Q 4及びTru-Q 7を使用した。これらの標準は、既知の変異を所定の頻度で含有する。これら2つの標準を正常なヒトゲノムDNA(Promega)に4:1、3:2、2:3、及び1:4の比率で段階希釈して、異なるレベルの変異を得、CGD法によって分析した。
【0280】
プロトコルAに従い、CGD法を行った。分析可能なcfDNAのプールを上述のようにNGS分析に供した。Tru-Q 4の結果を表7Aに示し、 Tru-Q 7の結果を表7Bに示す。これらの表は、標準中に存在する各変異を変異頻度と併せて提供し、未希釈の試料及び各段階希釈物での各変異に対するCGD法の感度(LOD)を示す。各試料の平均読み深度は>4000倍であった。この結果は、最もアクショナブルな(actionable)体細胞変異に対するLODが1%~3%の範囲であることを示す。
【表10】
【表11】
【0281】
実施例8-CGD法の特異性
本実施例は、CGD法の特異性を例示する。17体の健常な対象から血漿試料を得た。血漿試料を出願者の研究所にてCGD法により分析した。プロトコルAに従い、CGD法を行った。分析可能なcfDNAのプールを上述のようにNGS分析に供した。第2のCLIA認定研究所において、市販のcfDNA抽出キットを使用してcfDNAを精製することにより、同じ血漿試料を分析した。Ion Torrent PCG配列決定装置を製造元の指示に従って用い、cfDNAを分析した。
【0282】
この結果を表8に示す。表8は、COSMIC ID番号により示される遺伝子及び変異のバリアントコールを示し、サイレント変異及び未確定の体細胞変異は除去しなかった。異なるCOSMIC IDが同じ変異を表す場合がある。COSMIC IDは、Catalogue of Somatic Mutations in Cancer:http://cancer.sanger.ac.uk/cancergenome/projects/cosmic/から得た。CGD法と比較法との間の一致率も示されている。この結果は、試験特異性が遺伝子レベルで99.9%(849/850)であり、第2のCLIA認定研究所により行われた試験と高い一致率(16/17、94%)であることを示す。
【表12】
【0283】
別の比較において、50個の臨床血漿試料を得た(15人の膵臓癌患者、15人の結腸直腸癌患者、1人の消化管間質腫瘍患者、4人の肺癌患者、及びSと記された15個のCEA陽性血清試料)。血漿試料を出願者の研究所にてCGD法により分析した。プロトコルに従ってCGD法を行った。分析可能なcfDNAのプールを上述のようにNGS分析に供した。上述の同じ第2のCLIA認定研究所にて、同じ血漿試料を分析した。
【0284】
この結果を表9に示す。表9は、COSMIC ID番号により示される遺伝子及び変異のバリアントコールを示し、サイレント変異及び未確定の体細胞変異は除去しなかった。異なるCOSMIC IDが同じ変異を表す場合がある。COSMIC IDは、Catalogue of Somatic Mutations in Cancer:http://cancer.sanger.ac.uk/cancergenome/projects/cosmic/から得た。CGD法と比較法との間の一致率も示されている。この結果は、96%(48/50)の一致率を示し、試料2及び8は不一致である。
【表13】
【0285】
これらの結果は、CGD法が技術水準の方法に極めて好ましく匹敵することを示す。
【0286】
実施例9-組織生検結果とのCGD法の比較
本実施例は、組織生検とのCGD法の比較を例示する。再発経験のある乳癌患者の血漿試料(n=13)及び卵巣癌患者(化学療法前及び後の両方)の血漿試料(n=15)を得た。全ての対象が、比較のために入手可能な組織生検データを有した。乳癌患者では、組織生検データは、腫瘍内の2つの別々の位置から入手可能であった。卵巣癌患者では、組織生検データは、化学療法処置前及び後の両方で入手可能であり、加えて、整合した組織ゲノムDNAも抽出し、分析に提供した。血漿試料から調製されたcfDNAから得られた結果を、組織生検からの結果と比較した。
【0287】
プロトコルAに従い、CGD法を行った。得られた分析可能なcfDNAのプールを上述のようにNGS分析に供した。
【0288】
再発経験のある乳癌患者に関し、CGD法で得られた結果は、組織生検から得られた結果との強い一致を示した。全体として、CGD法で得られた結果と組織生検で得られた結果との間には69.2%の一致率があり、これは、当該技術分野で報告されている一致率値と一致する。この結果を表10に示す。
【表14】
【0289】
卵巣癌の比較については、CGD法で得られた結果は、化学療法処置前及び後の両方で、組織生検から得られた結果との強い一致を示した(表11及び12ならびに図7を参照されたい)。KRAS、BRAF、PIK3CA、及びPTEN遺伝子に関する2つの方法の結果には、患者レベルと変異レベルとの両方で強い一致があった(表11)。CGD法は、組織生検と比較して、変異を有するより多くの遺伝子、及び個々の遺伝子を有するより多くの変異を検出した。最も高頻度に変異する遺伝子に関するパターンは、CGD法と組織生検との間で一貫していた(表12)。
【表15】
【表16】
【0290】
CGD法及び組織生検の結果を治療基準に従って(例えば、化学療法処置前及び後に)比較すると、CGD法及び組織生検の結果は、遺伝子レベルで一貫した結果を提供した(図7)。図7中、各遺伝子について提示されるデータは、左から右に、組織生検処置前、CGD法処置前、組織生検処置後、及びCGD法処置後に対応する。
【0291】
これらの結果は、CGD法と現在の技術水準の組織生検法との優秀な一致を示す。
【0292】
実施例10-癌治療を受けている対象の長期的監視
本実施例では、2人の患者の治療中に血漿cfDNA中の体細胞変異の長期的監視を行った。治療の過程を通じて、変異負荷の動態をプロットし、癌抗原(CA)マーカー及びPET/CT画像法と比較した。固形腫瘍の応答評価基準(RECIST:Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)を使用して画像法スキャンを評価した。
【0293】
この実施例では、プロトコルAに従ってCGD法を行った。この実施例のための試料は、2体の対象から経時的に採取した血漿試料であった。上述のQubit 2.0蛍光光度計を使用し、増幅DNAの全収率を数量化した。1~10ngの濃度の分析可能なcfDNAプールを使用し、供給元のプロトコルに従い、50個の癌ドライバー遺伝子内の2855個のホットスポット変異を標的としたAmpliSeq Cancer Hotspot Panelバージョン2(Life Technologies,Carlsbad,CA,USA)を用いて、207個の標的遺伝子座を増幅した。その後、半導体ベースの配列決定を、Ion Chef及びIon Proton(Life Technologies,Carlsbad,CA,USA)でリード数を試料1つ当たり>200,000に維持して行った。
【0294】
対象1は、転移を伴う肺癌と診断された69歳で非喫煙の中国人女性患者であった。組織生検は上皮増殖因子受容体(EGF-R)の感作変異を示したが、ALK、ROS-1、BRAFは陰性であった(2015年5月19日)。対象は、Tarceva(EGF-Rを標的とするエルロチニブ塩酸塩;1日100mg)及びAvastin(ベバシズマブ)を1か月に1回用いる療法を開始した。5か月近くの治療の後、CGD法を使用したcfDNA分析によって決定した対象の癌胚抗原(CEA)、CA19-9、及びCA125のレベルは全て著しく低下した(図XA)。PET/CTスキャン評価はまた、腫瘍サイズ及び活性の減少と共に101日間維持された安定状態を示した(図XB)。しかしながら、CGD法を使用した血漿cfDNA分析は、TP53及びPTEN遺伝子中におよそ50日間維持された2つの新しい体細胞変異を検出した。検出された腫瘍変異は、2016年3月末までに3つ、7つ、及び8つの変異へと漸進的に増加し、進行状態が示された。2016年3月のcfDNA分析は、EGFR、E114K(4.2%)、及びE868G(2.4%)の対立遺伝子頻度の低い2つのサブクローンを明らかにし、薬物による淘汰圧に際したクローン進化が暗示された。2016年3月31日のPET/CTスキャンは、新しい腫瘍塊(分解能のレベルをわずかに超える;約1cm)を特定し、cfDNA分析を確定した。全体として、この事例は、CGD法を使用してcfDNA分析により検出された変異が、放射線学的な進行よりも約2か月早く現れた変異負荷の増加と共に、放射線学的な安定状態と密接に関連していたことを実証する。さらに、1年に2回以上のPET/CTスキャンは推奨されないため、CGD法は、対象の長期的評価の効果的で安全な代替手段を提示する。
【0295】
対象2は、原発不明の転移性膵周囲リンパ節腺癌と診断された79歳イラン人女性患者であった。細針生検での免疫組織化学的検査はCK7陽性であったが、CK20、TTF、S100、及びCD45は全て、2015年10月26日時点で陰性であった。はじめに、対象にXELOX療法(オキサリプラチンと合わせたカペシタビンからなる化学療法レジメン)を処した。後に免疫染色がPD-L1の過剰発現も特定したため、患者を次にXELIRI(イリノテカンと合わせたカペシタビンからなる化学療法レジメン)、Avastin(ベバシズマブ)、及びOpdivo(ニボルマブ)で治療した。2016年2月11日のPET/CTスキャンは、>90%の奏効率と共に腫瘍サイズ及び活性の著しい減少を示した(図XB)。血漿cfDNA分析の結果は、CEA及びCAマーカー(CA125、CA27-29、CA19-9)の減少を示し、画像法の結果と一致しており、少なくとも41日間維持された安定状態を示した(図XA)。4つの体細胞変異がはじめに検出され(FLT3 Y572C 6.5%、TP53 E165G 5.2%、TP53 Y104C 4.1%、TP53 C137Y 4.0%)、それから治療過程中に1個及び0個の変異まで減少した。この事例は、血液-液滴液体生検による変異分析が、療法に応答した臨床成績と強く相関したことを再び例示した。
【0296】
重要なことに、CEA及びCAタンパク質マーカーは必ずしも癌細胞に特異的とは限らず、PET/CTスキャンには分解能限界がある。対照的に、本明細書でCGD法によって検出される癌関連体細胞変異は悪性腫瘍に特異的であり、これらの変異を有する血漿cfDNAは、悪性腫瘍の存在を示すことが示された。この実施例の結果は、CGD法を使用してcfDNA分析により検出される体細胞変異のレベルが、現在の標準的ケアの試験結果及び臨床成績と深く相関し、再発の最も早い兆候を提供し得ることを示す。
【0297】
実施例11-CGD法を使用した長期的監視
本実施例は、癌患者の長期的監視におけるCGD法の使用を例示する。CGD法を使用すると、臨床医が、治療有効性、残存疾患、クローン進化、薬物抵抗性の進化、及び腫瘍再発に関するリアルタイムの長期的情報を得ることが可能になる。正確なリアルタイムの情報があれば、臨床医は、治療介入に関してより正確な決断を下すことができ、臨床医が現在の治療を改変して、最も効果的な治療をコスト効果の高い様式で提供することが可能になる。
【0298】
この実施例では、プロトコルAに従ってCGD法を行った。この実施例のための試料は、対象から採取した血漿試料であった。記載されるように、分析可能なcfDNAのプールをNGS分析に供した。
【0299】
表13は、様々な癌を有する患者の分析の例示的な結果を示す(CRCは結腸直腸癌を表し、GISTは消化管間質腫瘍を表す)。CGD法を使用した長期的監視の有用性は、表13から明白である。例えば、CRCを有する対象1は、2015年11月の初期検査でNRAS及びPTEN変異を示した。治療中、この患者を2015年12月に再検査し、変異は検出されなかった。2015年2月にこの患者を再検査したところ、BRAF変異(低頻度)に対して陽性であった。別の例として、対象5(肺癌)を2015年11月にはじめに検査したところ、TP53遺伝子の変異を示した。2015年12月、2016年1月、及び2016年2月のさらなる長期的検査の後、腫瘍変異パターンの変化は明白であった。この患者では、KDR、ERBB4、VHL、CTNNb1、及びRB1遺伝子の変異の出現が2016年2月に検出され、元々のTP53変異は(2016年2月に依然として存在していたが)頻度が減少したことが示された。リアルタイムで提供されるこのような情報を使用すると、臨床医は、患者の腫瘍プロファイルの絶えず変化する性質に対処するように治療介入を変更することができる。
【表17】
【0300】
実施例12-ISA酵素混合物の最適化
本明細書で詳解されるように、CGD法は、試料中に存在するcfDNAから増幅可能なcfNAプールを効率的に準備するために、種々の酵素混合物を使用することができる。本実施例は、CGD法の効率に関するいくつかの異なる酵素混合物(1~6)の使用を例示する(効率は増幅されたcfDNAのng/μL単位の収率に基づく)。酵素混合物1~6の組成を表14に提供する。
【0301】
以下の注記を例外として、プロトコルAに従ってCGD法を行った。この実施例のための試料は、単一の対象から採取した血漿試料であり、20μLの試料を各実験に使用した。プロトコルAに列挙した酵素混合物の代わりに酵素混合物1~6をプロトコルAのステップ8で用いたことを例外として、プロトコルAに記載のように血漿試料を処理して、増幅可能なcfDNAプールを生成した。増幅可能なcfDNAプールをプロトコルAに記載のPCR増幅に供して、分析可能なcfDNAのプールを生成した。上述のdsDNA BR及びHSアッセイキットと一緒にQubit 2.0蛍光光度計を使用し、増幅DNAの全収率を数量化した。
【0302】
この結果を表14に示す。全ての酵素混合物が良好な結果をもたらした。プロトコルAの酵素混合物は、元々の試料cfDNA投入物から82.3ng/μLの増幅DNAをもたらした。酵素ミックス1は、プロトコルAと比較すると同様の収率の増幅DNA(82.2ng/μL)を生成したが、酵素ミックス2及びミックス6は、プロトコルAと比較すると減少した収率の増幅DNA(それぞれ70.4ng/μL及び58.6ng/μL)を生成した(しかし、これらの混合物は本明細書に記載の方法で使用するのに好適である)。酵素ミックス3、ミックス4、及びミックス5は、プロトコルAと比較すると増加した収率の増幅DNA(それぞれ97.1ng/μL、105.0ng/μL、及び96.4ng/μL)を生成した。
【0303】
これらの結果は、CGD法では試料中に存在するcfDNAから増幅可能なcfDNA分子のプールを効率的に生成するために5’-3’ポリメラーゼ活性、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性、及びDNAリガーゼ活性が必要であることを示す。ポリヌクレオチドキナーゼ活性の付加も、増幅可能なcfDNAプールの生成の効率を増加させる。表14に示されるように、増幅可能なcfDNAプールの生成の効率を著しく阻害することなく、付加活性が存在する場合もある。
【表18】
【0304】
実施例13-ISA緩衝溶液の最適化
本明細書で詳解されるように、CGD法は、試料中に存在するcfDNAから分析可能なcfNAプールを効率的に準備するために、種々の酵素混合物を使用することができる。本実施例は、本開示の方法の効率に関するいくつかの異なる酵素混合物の使用を例示する(効率は増幅されたcfDNAのng/μL単位の収率に基づく)。
【0305】
この実施例では、プロトコルAで使用されるマスターミックス及びユニバーサル緩衝液を、表6に示される組み合わせのCG1緩衝液またはCG2緩衝液のいずれかに置き換え、増幅されたcfDNAの全収率に対する影響を決定した。マスターミックス及び/またはユニバーサル緩衝液の代用物として使用したCG1及びCG2は、プロトコルAに従って置き換えられた成分と同じ容量で添加した。
【0306】
マスターミックス(別称、L緩衝液)は、反応物中の最終濃度が、dNTP 40μMならびに配列番号1及び2のアダプター分子2μMとなるように添加した。
【0307】
ユニバーサル緩衝液(別称、S緩衝液)は、反応物中の最終濃度が、NaCl 50mM、トリス-Cl(pH7~8)25mM、MgCl 10mM、DTT 2.5mM、及びATP 1mMとなるように添加した。
【0308】
CG1緩衝液は、反応物中の最終濃度が、酢酸カリウム50mM、トリス-アセテート(pH7.9)20mM、酢酸マグネシウム10mM、DTT 1mM、ATP 1mM、dNTP 40μM、及びBSA 200μg/mlとなるように添加した。
【0309】
CG2緩衝液は、反応物中の最終濃度が、配列番号5のアダプター分子2μM(ヌクレアーゼ不含水中)となるように添加した。
【0310】
以下の注記を例外として、プロトコルAに従ってCGD法を行った。この実施例のための試料は、単一の対象から採取した血漿試料であり、20μLの試料を各実験に使用した。プロトコルAに列挙したマスターミックス及び/またはユニバーサル緩衝液の代わりにCG1及び/またはCG2緩衝液をプロトコルAのステップ5で用いたことを例外として、プロトコルAに記載のように血漿試料を処理して、増幅可能なcfDNAプールを生成した。増幅可能なcfDNAプールをプロトコルAに記載のPCR増幅に供して、分析可能なcfDNAのプールを生成したが、ただし、配列番号5のアダプター分子をCG2緩衝液中に使用したとき、プロトコルAで指定したプライマーではなく、プライマー5’-ACTCACTATAGACCCTCAGCACCAC-3’(配列番号6)を使用したことを例外とする。全ての反応において、プロトコルAで指定した酵素混合物を使用した。
【0311】
上述のdsDNA BR及びHSアッセイキットと一緒にQubit 2.0蛍光光度計を使用し、増幅DNAの全収率を数量化した。
【0312】
各反応物の成分の最終濃度を以下に提供し、結果を表6に示す。
【0313】
試験1
CG1由来の酢酸カリウム50mM、トリス-アセテート(pH7.9)20mM、酢酸マグネシウム10mM、DTT 1mM、ATP 1mM、dNTP 40μM、BSA 200ug/ml、ならびにS緩衝液由来のNaCl 50mM、トリス-Cl(pH7~8)25mM、MgCl 10mM、DTT 2.5mM、及びATP 1mM
試験2
CG2由来のアダプター2μM、ならびにS緩衝液由来のNaCl 50mM、トリス-Cl(pH7~8)25mM、MgCl 10mM、DTT 2.5mM、及びATP 1mM
試験3
CG1由来の酢酸カリウム50mM、トリス-アセテート(pH7.9)20mM、酢酸マグネシウム10mM、DTT 1mM、ATP 1mM、dNTP 40μM、BSA 200ug/ml、ならびにL緩衝液由来のdNTP 40μM及びアダプター2μM
試験4
L緩衝液由来のdNTP 40μM及びCG2由来のアダプター2μM;マスターミックス由来のアダプター分子は提供されているため、この試験では省略したことに留意されたい
試験5
CG1由来の酢酸カリウム50mM、トリス-アセテート(pH7.9)20mM、酢酸マグネシウム10mM、DTT 1mM、ATP 1mM、dNTP 40μM、BSA 200ug/ml、及びCG2由来のアダプター2μM
プロトコルA
S緩衝液由来のNaCl 50mM、トリス-Cl(pH7~8)25mM、MgCl 10mM、DTT 2.5mM、及びATP 1mM、L緩衝液由来のdNTP 40μM及びアダプター2μM
【0314】
試験1は、陰性対照として機能した(CG1とユニバーサル緩衝液のいずれも、増幅可能なcfDNAプールに必要な修飾cfDNA分子を生成するために必要とされるアダプター分子を含有しないため)。試験2は、dNTPの存在が、増幅可能なcfDNAプールに必要な修飾cfDNAの効率的な生成に必要であることを示す。試験3は、ユニバーサル緩衝液の代わりにCG1緩衝液を用いると、増幅cfDNAの全収率がプロトコルAと比較して改善したことを示す。試験4は、ユニバーサル緩衝液の代わりにCG2緩衝液を用いると、増幅cfDNAの全収率がプロトコルAと比較して改善したことを示す。また試験5は、許容される分量の増幅cfDNAを生成するためにさらなる緩衝液成分が必要とされないことを示す。試験5は、マスターミックス及びユニバーサル緩衝液の両方の代わりにCG1緩衝液及びCG2緩衝液を用いることでも、増幅cfDNAの全収率が改善したことを示す。
【0315】
この結果を表15に示す。これらの結果は、本開示の方法が、分析可能なcfDNA分子のプールを生成するために、種々の緩衝液組成を用い、かつ試験4に示されるように緩衝液成分を付加することなく行われ得ることを示す。
【表19】
【0316】
実施例14-ISA酵素混合物及び緩衝溶液の最適化
実施例12及び13に示されるように、CGD法は、試料中に存在するcfDNAから分析可能なcfNAプールを効率的に準備するために、種々の酵素混合物及び緩衝溶液を使用することができる。本実施例は、本開示の方法の効率に関する、CG1緩衝液及びCG2緩衝液を使用した酵素混合物の最適化を例示する(効率は増幅されたcfDNAのng/μL単位の収率に基づく)。
【0317】
この実施例では、プロトコルAで使用されるマスターミックス及びユニバーサル緩衝液をCG1緩衝液及びCG2緩衝液に置き換え、実施例12の酵素混合物をこの組み合わせで試験した。マスターミックス及び/またはユニバーサル緩衝液の代用物として使用したCG1及びCG2は、プロトコルAに従って置き換えられた成分と同じ容量で添加した。
【0318】
プロトコルAに従って、または以下の(酵素ミックス1~4に関する)注記を例外としてプロトコルAに従って、CGD法を行った。この実施例のための試料は、単一の対象から採取した血漿試料であり、20μLの試料を各実験に使用した。プロトコルAに列挙したマスターミックス及びユニバーサル緩衝液の代わりにCG1及びCG2緩衝液をプロトコルAのステップ5で用い、プロトコルAの酵素混合物の代わりに記載した酵素混合物1~5をステップ8で用いたことを例外として、プロトコルAに記載のように血漿試料を処理して、増幅可能なcfDNAプールを生成した。増幅可能なcfDNAプールをプロトコルAに記載のPCR増幅に供して、分析可能なcfDNAのプールを生成したが、ただし、プロトコルAで指定したプライマーではなく、プライマー5’-ACTCACTATAGACCCTCAGCACCAC-3’(配列番号6)を使用したことを例外とする。
【0319】
上述のdsDNA BR及びHSアッセイキットと一緒にQubit 2.0蛍光光度計を使用し、増幅DNAの全収率を数量化した。
【0320】
CG1緩衝液は、反応物中の最終濃度が、酢酸カリウム50mM、トリス-アセテート(pH7.9)20mM、酢酸マグネシウム10mM、DTT 1mM、ATP 1mM、dNTP 40μM、及びBSA 200μg/mlとなるように添加した。
【0321】
CG2緩衝液は、反応物中の最終濃度が、配列番号5のアダプター分子2μM(ヌクレアーゼ不含水中)となるように添加した。
【0322】
この結果を表16に示す。全ての酵素混合物が良好な結果をもたらした。この実施例において、酵素ミックス2及び3は、元々の試料cfDNA投入物から140ng/μLの増幅cfDNAをもたらし、一方で、酵素ミックス1、ミックス4、及びミックス5は、元々の試料cfDNA投入物から、それぞれ124ng/μL、112ng/μL、及び99.4ng/μLの増幅cfDNAをもたらした。試験した全ての酵素混合物が、本明細書に記載の方法で使用するのに好適であった。
【0323】
これらの結果は実施例12と一致しており、CGD法では試料中に存在する投入cfDNAから分析可能なcfDNA分子のプールを効率的に生成するために5’-3’ポリメラーゼ活性、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性、及びDNAリガーゼ活性が必要であることを示す。ポリヌクレオチドキナーゼ活性及びウラシル-DNAグリコシラーゼ活性の付加も、分析可能なcfDNA分子のプールの生成の効率を増加させる。表16に示されるように、分析可能なcfDNA分子のプールの生成の効率を著しく阻害することなく、付加活性が存在する場合もある。
【表20】
【0324】
実施例15-血漿中のcfDNAと精製されたDNAとの間のISAの効率
本実施例は、血漿試料からのcfDNA及び精製されたDNAのISAの効率を例示する(効率は増幅されたcfDNAまたはDNAのng/μL単位の収率に基づく)。
【0325】
この実施例では、以下の(酵素ミックス1~5に関する)注記を例外として、プロトコルAに従ってCGD法を行った。この実施例のための試料は、単一の対象から採取した血漿試料であり、20μLの試料を各実験に使用した。プロトコルAに列挙したマスターミックス及びユニバーサル緩衝液の代わりにCG1及びCG2緩衝液をプロトコルAのステップ5で用い、プロトコルAの酵素混合物の代わりに記載した酵素混合物1~5をステップ8で用いたことを例外として、プロトコルAに記載のように血漿試料を処理して、増幅可能なcfDNAプールを生成した。増幅可能なcfDNAプールをプロトコルAに記載のPCR増幅に供して、分析可能なcfDNAのプールを生成したが、ただし、プロトコルAで指定したプライマーではなく、プライマー5’-ACTCACTATAGACCCTCAGCACCAC-3’(配列番号6)を使用したことを例外とする。精製されたDNAの実験では、10ngの投入DNAを等容量のPBS中で使用した。
【0326】
上述のdsDNA BR及びHSアッセイキットと一緒にQubit 2.0蛍光光度計を使用し、増幅DNAの全収率を数量化したものを、ng/μLとして表す。
【0327】
この結果を表17に示し、収率をng/μL単位で報告する。全ての酵素混合物が良好な結果をもたらした。この実施例では、酵素ミックス3、ミックス4、及びミックス5は、10ngの精製DNAで得られた収率以上の、元々の試料cfDNA投入物からの増幅cfDNAの収率をもたらした。酵素ミックス1及びミックス2から得られた増幅cfDNAの収率ならびにプロトコルAのものも、良好な結果を示した。試験した全ての酵素混合物が、本明細書に記載の方法で使用するのに好適であった。
【0328】
これらの結果は、先の実施例と一致しており、生体試料からcfDNAを増幅することにおける本開示の方法の効率が高く、精製DNAが試料投入物として使用されるときと同じ範囲内であることを実証する。
【表21】
【0329】
実施例16-ISAに使用される試薬の安定性
CGD法を実施するために必要な試薬を含んだキット(例えば、予め充填された96ウェルプレート)を調製するための潜在性を評価するために、CGD法の実行に必要な様々な緩衝液及び酵素混合物を96ウェルプレートに予め充填し、5か月間-20℃または4℃のいずれかで5か月間保管した。加えて、マスターミックス及び酵素成分(ユニバーサル緩衝液中)を一緒または別々のいずれかで96ウェルプレートにおいて保管することの影響も調べた。保管された試薬及び新鮮な試薬を使用した6つの試料に関する結果を比較した。
【0330】
この実施例では、プロトコルAに従ってCGD法を行った。この実施例のための試料は、対象から採取した血漿試料であった。プロトコルAに記載されるように血漿試料を処理して、cfDNAプールの分析可能なプールを生成した。記載されるように、分析可能なcfDNAのプールをNGS分析に供した。上述のQubit 2.0蛍光光度計を使用し、cfDNAの全収率を数量化した。
【0331】
この結果を表18に示す(増幅cfDNAの収率はng/μL単位で示されている)。示されているように、CGD法を行うために必要な試薬の-20℃または4℃における保管は、CGD法の性能に著しい影響を与えなかった。加えて、マスターミックス及び酵素成分を一緒に保管すること(「混合」と呼ぶ)は、それぞれを別々に保管すること(「別々」と呼ぶ)よりもいくらか効果的であった。
【表22】
【0332】
加えて、-20℃及び4℃で保管した試薬を使用してCGD法により調製した分析可能なcfDNAプールを、2%のゲルでのアガロースゲル電気泳動に供し、臭化エチジウムを使用して可視化した(図10)。図10中、レーン1~10は、10個の試料からの結果を示し、レーン1~5は、-20℃で保管した試薬を使用して調製したcfDNAからの結果を示し、レーン6~10は、4℃で保管した試薬を使用して調製したcfDNAからの結果を示す。全事例において、cfDNAは、強い染色強度及び正常なサイズ分布を示した。この結果は、CGD法を行う際に使用された試薬の安定性をさらに確定する。
【0333】
これらの結果は、集合的に、CGD法を行う際に使用された試薬の安定性を確定し、CGD法を行うためのキットの製造を可能にする。
【0334】
実施例17-試料中のcfDNAの数量化
本実施例は、試料中のcfDNA濃度の数量化を例示する。この実施例では、プロトコルAに従ってCGD法を行った。この実施例のための試料は、対象から採取した血漿試料であった。プロトコルAに記載されるように血漿試料を処理して、分析可能なcfDNAのプールを生成した。精製されたDNAを使用した標準曲線の作成のために、10μL容量中0、0.001、0.005、0.01、0.025、0.05、0.1、0.25、0.5、及び1ng/μLの濃度における精製DNAの試料を、プロトコルAに従ってCGD法に供する。上述のQubit 2.0蛍光光度計を使用し、増幅されたcfDNAまたは精製されたDNAの全収率を数量化した。
【0335】
図11は、0、0.001、0.005、0.01、0.025、0.05、0.1、0.25、0.5、及び1ng/μLの濃度における精製DNAをCGDプロセスの投入物として18サイクルの増幅で使用して確立された標準曲線の直線性を示す。元々のcfDNA試料投入物からの増幅cfDNAの収率(ng/μL単位)を決定することで、精製DNAを使用して生成された標準曲線を参照することにより、元々の試料中のcfDNAの濃度が決定され得る。表20は、2つの臨床試料中に元々存在したcfDNA濃度の定量の結果を示す。cfDNA濃度(ng/μL単位)は、CGD法を使用して2つの臨床試料から決定した。cfDNAの産出収率から、試料中の元々のcfDNA濃度を、図11に示される標準曲線から決定した。
【表23】
【0336】
この実施例は、臨床試料中の元々のcfDNA濃度を決定するためにCGD法が使用され得、対象におけるcfDNA濃度を素早くかつ正確に決定することが可能になり、種々の臨床の場におけるcfDNA濃度の診断的使用が可能になることを示す。
【0337】
実施例18-分析のための複数の分析可能なcfDNAのプールのプーリング
本実施例は、分析前の複数の分析可能なcfDNA分子のプールのプーリングの使用を例示する。上述のように、特定の実施例では、NGS分析(例えば、Ion Torrent NGSによるもの)のための配列決定ライブラリを創出するために、1~10μLの分析可能なcfDNAのプール(20μLの全容量から;およそ1~2ng)を使用する。このような試料採取は、特定の事例では、NGS配列決定アプリケーションにおける均一性の差異につながる場合がある。この実施例では、NGSのための配列決定ライブラリを創出するために使用するcfDNA投入物を、生成された分析可能なプールからほぼ20ngのcfDNAに増加させた。この目的を達成するために、プロトコルAに記載のCGD法を改変した。第1に、分析可能なcfDNA分子のプールを創出するために使用する増幅サイクルを25サイクルから18サイクルに減少させて、分析可能なプール中のcfDNAの全体的な収率が低下するように、CGD法を変更した。第2に、分析用のcfDNA投入物を単一の分析可能なcfDNAのプールから採取するのではなく、単一の試料から複数の分析可能なプールを創出し、組み合わせ(すなわちプーリングし)、組み合わされた分析可能なcfDNAのプールからcfDNA投入物を採取した。詳解したように、NGS分析に使用したcfDNAの量は、ほぼ20ngに増加させた。NGS分析のために25サイクルの増幅を使用して生成された単一の分析可能なcfDNAのプールから取り出したcfDNA試料を使用することと、NGS分析のために18サイクルの増幅を使用して生成された4つの別々の分析可能なcfDNAのプールを組み合わせたプールから取り出したcfDNA試料を使用することの対比により、NGSカバレッジ及びNGS均一性を比較した。
【0338】
この実施例では、プロトコルAに従ってCGD法を行った。この実施例のための試料は、対象から採取した血漿試料であった。プロトコルAに記載されるように血漿試料を処理して、分析可能なcfDNAプールを生成した。記載されるように、分析可能なcfDNAのプールをNGS分析に供した。改良したCGD法(CGD2と表記する)では、18サイクルの増幅を使用して分析可能なcfDNAのプールを生成し、4つの別々の分析可能なcfDNAのプールを組み合わせたプールからNGS分析用のcfDNA試料を取り出した。明確化のために付言すると、比較のCGD法(CGD1と称される)では、25サイクルの増幅を使用して分析可能なcfDNAのプールを生成し、単一の分析可能なcfDNAのプールからNGS分析用のcfDNA試料を取り出した。
【0339】
この結果を表20に示し、NGSカバレッジ、NGS均一性、及び組み合わされた分析可能なcfDNAのプールを使用したNGS均一性の改善率を報告する。以下に示されるように、分析可能なcfDNAのプールを組み合わせると、NGS均一性が一貫して増加した。さらに、試料14は、単一の分析可能なcfDNAプール及び組み合わされた分析可能なcfDNAプールの両方をIon Torrent NGSによって分析したときのCGD法の再現性を示す。
【表24】
【0340】
実施例19-CGD法を使用したRNAのISA
本開示の方法は、cfRNAのISAのために使用することもできる。cfRNAのISA方法では、標準的方法論を使用して、試料中のcfRNAを二本鎖DNAに変換する。次にこの二本鎖DNAを、試料中のcfDNAと同じ様式で処置する。本開示の方法を使用するための例示的なプロトコルは、方法の節に提供されている。
【0341】
この実施例では、プロトコルAに従ってCGD法を行った。この実施例のための試料は、単一の対象から採取した血漿試料であった。cfRNAをcDNAに変換するためのさらなるDNアーゼI及び逆転写ステップを用い、プロトコルAに記載されるように血漿試料を処理して、分析可能なcDNAプールを生成した。記載されるように、分析可能なcDNAのプールをNGS分析に供した。
【0342】
図12は、cfRNAから生成されたcDNAのISAの成功を例示する増幅プロットを示す。NGS配列決定は933,674のリードをマッピングし、リードの98.91%がオンターゲットであった。平均ベースカバレッジ深度は4.072であり、ベースカバレッジの均一性は59.56%であった。この実施例は、CGD法のcfRNAへの適用の成功を例示する。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
【配列表】
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