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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】サイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/207 20060101AFI20221207BHJP
   B60N 2/427 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
B60R21/207
B60N2/427
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018045812
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2019156170
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【復代理人】
【識別番号】100183830
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 勇介
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 眞幸
(72)【発明者】
【氏名】西本 直矢
(72)【発明者】
【氏名】美馬 壱晃
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-020649(JP,A)
【文献】特開2000-313302(JP,A)
【文献】特開2018-027780(JP,A)
【文献】特開2007-245889(JP,A)
【文献】実開平04-048049(JP,U)
【文献】特開2014-100943(JP,A)
【文献】特開2001-301665(JP,A)
【文献】国際公開第2016/010011(WO,A1)
【文献】特開2017-024504(JP,A)
【文献】特開2000-085518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/207
B60N 2/427
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と座席との間に設けられるサイドエアバッグ装置であって、
膨出可能なエアバッグと、前記エアバッグの内部にガスを供給するインフレータと、を有するエアバッグモジュールと、
前記エアバッグモジュールを格納する凹状のエアバッグ格納部を有し、車体ドアと前記座席との間に取り付けられるベース部材と、
前記エアバッグ格納部を車体後方側から保持するリテーナ部材と、を備え、
前記ベース部材は、前記インフレータのハーネスを挿通する第1貫通孔を有し、
前記リテーナ部材は、前記インフレータのハーネスを挿通し、前記第1貫通孔と対向する位置に設けられた第2貫通孔と、前記ハーネスを取り付けるためのハーネス取付部と、を有し、
前記第2貫通孔は、前記ハーネス取付部よりも下方に設けられ、
前記リテーナ部材は、前記エアバッグ格納部の底部に対向して配置されるリテーナ後壁部と、前記リテーナ後壁部から車体前方に延出するリテーナ側壁部と、を有し、
前記第2貫通孔と前記ハーネス取付部は、前記リテーナ部材において異なる壁部に設けられていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記第2貫通孔は、前記リテーナ後壁部に設けられ、
前記ハーネス取付部は、前記リテーナ側壁部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグ格納部は、前記底部と、前記底部から車体前方に延出する側壁部とを有し、
前記第1貫通孔は、前記底部に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項4】
前記ベース部材は、前記第1貫通孔の周囲に形成されたフランジを有し、
前記フランジの内周面は、前記第1貫通孔と連続していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項5】
前記第1貫通孔は、前記インフレータの上端よりも上に設けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項6】
前記エアバッグ格納部は、前記底部から車体後方に突出したボス部を有し、
前記第1貫通孔は、前記ボス部より下方に設けられることを特徴とする請求項3に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項7】
前記リテーナ部材は、前記ボス部を通すボス部挿通用貫通孔を有することを特徴とする請求項6に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項8】
前記第1貫通孔は、前記ボス部と上下に並ぶ位置に形成されることを特徴とする請求項6又は7に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項9】
前記エアバッグの展開を案内する力布を備え、
前記第1貫通孔は、前記力布の車体前方側の前端が取り付けられる破断部よりも、前記座席に近い位置に設けられることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項10】
前記ベース部材は、前記エアバッグ格納部に隣接した領域に形成された表皮吊り込み用スリットを有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドエアバッグ装置に係り、特に車両の座席に備えられるサイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体幅方向において車体ドアと座席との間に配置されるサイドエアバッグ装置として、エアバッグの内部にガスを注入するインフレータと、エアバッグおよびインフレータを格納する箱状の格納ケースと、格納ケースを車体前方側から覆う樹脂製のベースカバーと、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、特許文献1に記載されたサイドエアバッグ装置は、格納ケースに格納されたエアバッグをインフレータで膨出させると、エアバッグが車体前方側にあるベースカバーの薄肉部を破壊して膨出展開する構成となっている。
具体的には、インフレータと、車体上に設けられた車両用バッテリーとがハーネスで接続されており、車体側方から所定値以上の衝撃が加わったときに、車両用バッテリーからハーネスを介してインフレータに点火用電力が供給され、エアバッグが着座者の側方で膨出展開する構成となっている。
上記構成によって、サイドエアバッグ装置によれば、座席に着座する着座者に加わる衝撃を緩和させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-88850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のようなサイドエアバッグ装置では、ベースカバーの車体後方側にある格納ケースにインフレータが格納されているため、ハーネスが車両用バッテリーから格納ケース内部のインフレータに向かって延出する形状が複雑となる。
そのため、着座者から受ける振動や車体の振動等によってハーネスが自由に動き回ると、エアバッグの膨出展開時にハーネスがエアバッグに干渉してしまう虞があった。
特に、車体と後部座席との間の空間に配置されるサイドエアバッグ装置の場合、狭い空間に構成部品を取り付ける作業となるため、ハーネスがエアバッグに干渉しないように配置する工夫が必要とされていた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハーネスとエアバッグの干渉を抑制可能なサイドエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、本発明に係るサイドエアバッグ装置によれば、車体と座席との間に設けられるサイドエアバッグ装置であって、膨出可能なエアバッグと、前記エアバッグの内部にガスを供給するインフレータと、を有するエアバッグモジュールと、前記エアバッグモジュールを格納する凹状のエアバッグ格納部を有し、車体ドアと前記座席との間に取り付けられるベース部材と、前記エアバッグ格納部を車体後方側から保持するリテーナ部材と、を備え、前記ベース部材は、前記インフレータのハーネスを挿通する第1貫通孔を有し、前記リテーナ部材は、前記インフレータのハーネスを挿通し、前記第1貫通孔と対向する位置に設けられた第2貫通孔と、前記ハーネスを取り付けるためのハーネス取付部と、を有し、前記第2貫通孔は、前記ハーネス取付部よりも下方に設けられ、前記リテーナ部材は、前記エアバッグ格納部の底部に対向して配置されるリテーナ後壁部と、前記リテーナ後壁部から車体前方に延出するリテーナ側壁部と、を有し、前記第2貫通孔と前記ハーネス取付部は、前記リテーナ部材において異なる壁部に設けられていることにより解決される。
上記のサイドエアバッグ装置によれば、ベース部材及びリテーナ部材の外側を迂回させることなく、ベース部材及びリテーナ部材にインフレータのハーネスを通すことができる。これにより、ハーネスをエアバッグと干渉しないように配置できる。
また、第2貫通孔よりも上方に延びるようにハーネスを保持できる。これにより、リテーナ部材の後方のスペースを有効利用できる。
【0008】
上記のサイドエアバッグ装置において、前記第2貫通孔は、前記リテーナ後壁部に設けられ、前記ハーネス取付部は、前記リテーナ側壁部に設けられているとよい。
また上記のサイドエアバッグ装置において、前記エアバッグ格納部は、前記底部と、前記底部から車体前方に延出する側壁部とを有し、前記第1貫通孔は、前記底部に形成されるとよい。
こうすることで、ベース部材の後面側にある底部に第1貫通孔が形成されているので、ベース部材の剛性低下を抑制できる。
【0009】
上記のサイドエアバッグ装置において、前記ベース部材は、前記第1貫通孔の周囲に形成されたフランジを有し、前記フランジの内周面は、前記第1貫通孔と連続しているとよい。
こうすることで、ハーネスがリテーナ部材に当接することを抑制できる。
【0010】
上記のサイドエアバッグ装置において、前記第1貫通孔は、前記インフレータの上端よりも上に設けられるとよい。
こうすることで、ベース部材においてインフレータを保持するエアバッグ格納部の剛性低下を抑制できる。
【0011】
上記のサイドエアバッグ装置において、前記エアバッグ格納部は、前記底部から車体後方に突出したボス部を有し、前記第1貫通孔は、前記ボス部より下方に設けられるとよい。
こうすることで、ボス部にハーネスが接触することを抑制できる。
【0012】
上記のサイドエアバッグ装置において、前記リテーナ部材は、前記ボス部を通すボス部挿通用貫通孔を有するとよい。
こうすることで、ベース部材とリテーナ部材との位置決めを行いやすくなる。
【0013】
上記のサイドエアバッグ装置において、前記第1貫通孔は、前記ボス部と上下に並ぶ位置に形成されるとよい。
こうすることで、ベース部材において第1貫通孔を含む上下方向の領域の剛性を向上できる。
【0015】
上記のサイドエアバッグ装置において、前記エアバッグの展開を案内する力布を備え、前記第1貫通孔は、前記力布の車体前方側の前端が取り付けられる破断部よりも、前記座席に近い位置に設けられるとよい。
こうすることで、車体ドア側に比べてレイアウトに余裕がある座席側に、第1貫通孔を設けることにより、シート内の部品の干渉を抑制することができる。
【0016】
上記のサイドエアバッグ装置において、前記ベース部材は、前記エアバッグ格納部に隣接した領域に形成された表皮吊り込み用スリットを有するとよい。
こうすることで、吊り込み用の表皮端部とハーネスとの干渉を抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ハーネスをエアバッグと干渉しないように配置できる。
本発明によれば、ベース部材の剛性低下を抑制できる。
本発明によれば、ハーネスがリテーナ部材に当接することを抑制できる。
本発明によれば、ベース部材においてインフレータを保持するエアバッグ格納部の剛性低下を抑制できる。
本発明によれば、ボス部にハーネスが接触することを抑制できる。
本発明によれば、ベース部材とリテーナ部材との位置決めを行いやすくなる。
本発明によれば、ベース部材において第1貫通孔を含む上下方向の領域の剛性を向上できる。
本発明によれば、リテーナ部材の後方のスペースを有効利用できる。
本発明によれば、シート内の部品の干渉を抑制することができる。
本発明によれば、吊り込み用の表皮端部とハーネスとの干渉を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態のサイドエアバッグ装置の配置を示す説明図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3】破断部に対する第1力布と第2力布の取付構造を示す図である。
図4】サイドエアバッグ装置を斜め後方から見た図である。
図5】サイドエアバッグ装置の分解斜視図である。
図6】ベース部材とリテーナ部材の取付状態を示す図である。
図7】サイドエアバッグ装置の後面図である。
図8図7のVIII-VIII断面図である。
図9】リテーナ部材の部分拡大図である。
図10】リテーナ部材の全体構成を示す図である。
図11】リテーナ部材の部分拡大図である。
図12】ベース部材の後面図である。
図13図12のXIII-XIII断面図である。
図14】力布ブラケットの全体構成を示す図である。
図15】力布ブラケットの側面図である。
図16】第1力布及び第2力布を取り付けた状態の力布ブラケットの上面図である。
図17】変形例に係るサイドエアバッグ装置の分解斜視図である。
図18】変形例に係るリテーナ部材の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1乃至図18を参照しながら、本発明の実施の形態(以下、本実施形態)に係るサイドエアバッグ装置1について説明する。
本実施形態に係るサイドエアバッグ装置1は、自動車等の車両の運転席の後方に設けられる座席Sと、車体Bの一部を構成する車体ドアDとの間に設けられる。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0020】
以下の説明中、「前後方向」とは、座席Sの着座者から見たときの前後方向を意味し、車両の走行方向と一致する方向である。
「シート幅方向」とは、座席Sの横幅方向を意味し、座席Sの着座者から見たときの左右方向と一致する。なお、シート幅方向外側とは、サイドエアバッグ装置1に対し近い側の車体ドアDに向かう方向であり、シート幅方向内側とは、その反対側の方向である。
また、「上下方向」とは、座席Sの高さ方向を意味し、座席Sを正面から見たときの上下方向と一致する。
【0021】
<サイドエアバッグ装置1の構成>
本実施形態のサイドエアバッグ装置1は、車体側方から着座者に加えられる衝撃を緩和するための装置である。図1に示すように、サイドエアバッグ装置1は、車体幅方向において座席Sの背もたれ部となるシートバックS1と、車体Bの車体ドアDとの間に配置されている。
なお、本実施形態では、サイドエアバッグ装置1は、座席Sの車体幅方向の左右外側にそれぞれ1つずつ配置されている。
【0022】
サイドエアバッグ装置1は、図2及び図5に示すように、主な構成として、エアバッグモジュール10、ベース部材20及びリテーナ部材50を備える。
なお、図5においては、エアバッグモジュール10のエアバッグ11を省略して示している。
【0023】
エアバッグモジュール10は、主な構成として、膨出可能な袋体としてのエアバッグ11と、エアバッグ11の内部にガスを供給するインフレータ12とを備える。
インフレータ12は、図5及び図7に示すように、長尺な略円柱形状のガス発生装置であり、上下方向に長尺となるように配置されている。
インフレータ12には、インフレータ12から外側に向けて2本のボルト13が突出するように取り付けられている。詳細については後述するが、2本のボルト13のそれぞれを、ベース部材20の開口部28、力布ブラケット40のボルト挿通孔49、リテーナ部材50のボルト挿通孔51Caに通し、ナット16で締結する。これにより、インフレータ12、力布ブラケット40及びリテーナ部材50がそれぞれ締結可能となっている。
【0024】
なお、通常時、すなわちエアバッグモジュール10の非動作時においては、エアバッグ11は折り畳まれている。そして、ハーネス14を介してインフレータ12に動作信号(点火用電力)が入力されると、インフレータ12がガスを発生して、ガスをエアバッグ11に注入することにより、エアバッグ11を膨出させる。
【0025】
ここで、エアバッグ11は、シート幅方向の左右をそれぞれ第1力布31と第2力布32により囲まれている。この第1力布31は、エアバッグ11に対しシート幅方向内側に配されるためインナ力布とも称される。また、第2力布32は、エアバッグ11に対しシート幅方向外側に配されるためアウタ力布とも称される。
第1力布31と第2力布32とを総称して力布30とし、力布30はエアバッグ11の展開方向を破断部70に向けて案内する部材である。
【0026】
図2及び図3に示されるように、第1力布31は、力布ブラケット40に取り付けられる後端としての第1ループ状端部31Aと、ティアラインとしての破断部70に取り付けられる前端としての第1縫合部31Cとを有する。ここで、第1力布31の第1ループ状端部31Aは、二枚の布を第1ループ縫製部31Bにおいて縫い合わせることによりループ状に構成される端部である。
同様に、第2力布32は、力布ブラケット40に取り付けられる後端としての第2ループ状端部32Aと、ティアラインとしての破断部70に取り付けられる前端としての第2縫合部32Cとを有する。第2力布32の第2ループ状端部32Aは、二枚の布を第2ループ縫製部32Bにおいて縫い合わせることによりループ状に構成される端部である。
【0027】
そして、第1力布31の第1縫合部31Cと、第2力布32の第2縫合部32Cとは、エアバッグモジュール10の前面を被覆する表皮材71に設けられた破断部70に縫い付けられる。具体的には、図2に示されるように、第1力布31と第2力布32の間に表皮材71の破断部70が取り付けられている。
エアバッグ11が膨出展開する際に、エアバッグ11により第1力布31の第1縫合部31Cと、第2力布32の第2縫合部32Cとがそれぞれ引き離される方向に引っ張られることにより、破断部70が破断し、それにより、破断部70からエアバッグ11が飛び出すようになる。こうすることで、車両に一定以上の衝撃が加わった場合に、シートバックS1と、車体ドアDとの間にエアバッグ11が破断部70から膨出し、それにより、乗員に加えられる衝撃を緩和することが可能となる。
【0028】
なお、図3に示されるように、第1力布31の第1縫合部31Cと、第2力布32の第2縫合部32Cとは、上下方向の長さが異なっている。具体的には、第1縫合部31Cよりも第2縫合部32Cの方が長くなっている。こうすることで、エアバッグ11の展開時に、最初に破断部70の中央付近を破断させ、その後に中央付近からエアバッグ11を上方に向けて膨出展開させることが可能となる。また、破断部70の中央付近からエアバッグ11を膨出させることにより、シートのクッション材としてのパッド72の飛散量を低減できる。
【0029】
<力布ブラケット40の構成>
次に、図14乃至図16を参照しながら、第1力布31及び第2力布32のそれぞれの後端を保持する力布ブラケット40の構成について説明する。
【0030】
力布ブラケット40は、第1延出部41、第2延出部42及び取付部43を有する金属部材である。
取付部43には、インフレータ12のボルト13を挿通するためのボルト挿通孔49が形成されており、インフレータ12のボルト13を挿通した状態で、インフレータ12及びリテーナ部材50に締結される。
図2に示されるように、力布ブラケット40をベース部材20、リテーナ部材50に取り付けた状態において、取付部43は、前後方向に延出する向きに配される。この場合、取付部43の前側に第1延出部41が位置し、取付部43の後側に第2延出部42が位置することとなる。
すなわち、第1延出部41は、取付部43の前端からシート幅方向外側に向けて延出する部分である。そして、第2延出部42は、取付部43の後端からシート幅方向内側に向けて延出する部分である。
【0031】
力布ブラケット40には、取付部43から第1延出部41にかけて第1スリット部45が形成される。具体的には、第1スリット部45は、第1開口部45A、第1屈曲部45B及び第1力布保持部45Cを有する。
第1開口部45Aは、取付部43の第1端部40Aから第2端部40Bに向かって形成されるスリット領域である。
第1屈曲部45Bは、第1開口部45Aにおける第1端部40Aとは反対側の端から第1延出部41に向かって延びるスリット領域である。
第1力布保持部45Cは、第1屈曲部45Bと接続し、第1延出部41の長手方向に沿って延出するスリット領域である。
なお、第1力布保持部45Cの長手方向の両端の間において、第1屈曲部45Bが第1力布保持部45Cに接続している。
【0032】
第1力布31を力布ブラケット40に取り付ける際には、第1力布31の第1ループ状端部31Aを第1開口部45A、第1屈曲部45Bを通じて第1力布保持部45Cに通す。こうすることで、図16に示すように、第1力布31の第1ループ状端部31Aが第1力布保持部45Cに保持されることとなる。
なお、上述したように、第1力布保持部45Cの長手方向の両端部の間に第1屈曲部45Bが接続されているため、第1力布保持部45Cに保持される第1ループ状端部31Aが第1力布保持部45Cから抜けにくくなっている。
【0033】
そして、第1力布保持部45Cに第1力布31の第1ループ状端部31Aを通した後に、取付部43のボルト挿通孔49にインフレータ12のボルト13が通されて、力布ブラケット40とインフレータ12が固定される。ここで、2つのボルト挿通孔49は、第1屈曲部45Bを跨るように形成されているため、力布ブラケット40にインフレータ12を取り付けた後には、第1スリット部45の第1屈曲部45Bがインフレータ12により塞がれる。そのため、第1力布31の第1ループ状端部31Aが第1屈曲部45Bを通じて力布ブラケット40から抜けてしまうことを抑制できる。
【0034】
また、第1力布保持部45Cの周囲には、前方に突出する凸部41Aが形成されている。このように凸部41Aを形成することにより、第1力布保持部45Cの前方に空隙を形成できる。そのため、第1力布保持部45Cに保持される第1力布31が力布ブラケット40と他の部材(例えばエアバッグ11)との間で強く挟み込まれてしまうことを抑制できる。
【0035】
また、第1延出部41における第1力布保持部45Cの両側には、凹部47が形成されている。このように凹部47が形成されていることで、第1力布保持部45Cの後方に空隙を形成できる。そのため、第1力布保持部45Cに保持される第1力布31が力布ブラケット40と他の部材(例えば第1側壁部23A)との間で強く挟み込まれてしまうことを抑制できる。
【0036】
また、力布ブラケット40には、取付部43から第2延出部42にかけて第2スリット部46が形成される。具体的には、第2スリット部46は、第2開口部46A、第2屈曲部46B及び第2力布保持部46Cを有する。
第2開口部46Aは、取付部43の第2端部40Bから第1端部40Aに向かって形成されるスリット領域である。
第2屈曲部46Bは、第2開口部46Aの第2端部40Bとは反対側の端から第2延出部42に向かって延びるスリット領域である。
第2力布保持部46Cは、第2屈曲部46Bと接続し、第2延出部42の長手方向に沿って延出するスリット領域である。
なお、第2力布保持部46Cの長手方向の両端の間において、第2屈曲部46Bが第2力布保持部46Cに接続している。
【0037】
第2力布32を力布ブラケット40に取り付ける際には、第2力布32の第2ループ状端部32Aを第2開口部46A、第2屈曲部46Bを通じて第2力布保持部46Cに通す。こうすることで、図16に示すように、第2力布32の第2ループ状端部32Aが第2力布保持部46Cに保持されることとなる。
なお、上述したように、第2力布保持部46Cの長手方向の両端部の間に第2屈曲部46Bが接続されているため、第2力布保持部46Cに保持される第2ループ状端部32Aが第2力布保持部46Cから抜けにくくなっている。
【0038】
また、第2延出部42における第2力布保持部46Cの両側には、凸部48が形成されている。このように凸部48が形成されていることで、第2力布保持部46Cの前方に空隙を形成できる。そのため、第2力布保持部46Cに保持される第2力布32が力布ブラケット40と他の部材(例えばエアバッグ11)の間で強く挟み込まれてしまうことを抑制できる。
【0039】
また、力布ブラケット40には、第1延出部41、取付部43及び第2延出部42に亘ってビード部44が形成される。このビード部44は、エアバッグ11側に凸の形状である。このように、力布ブラケット40にビード部44を設けることにより、第1力布31と第2力布32により反対側に引っ張られる箇所の剛性を向上できる。これにより、力布ブラケット40による第1力布31及び第2力布32の保持の安定性を向上できる。
【0040】
そして、図2図6及び図8に示されるように、力布ブラケット40の少なくとも一部が、ベース部材20に形成される開口部28に重なった状態で取り付けられる。
具体的には、力布ブラケット40の取付部43の一部と、第2延出部42が開口部28に重なった状態で取り付けられる。
【0041】
また、力布ブラケット40の表面にナイロンコーティングを施すこととしてよい。こうすることで、力布ブラケット40の鋭利な箇所がコーティングされ、第1力布31と第2力布32が摩耗、損傷することを抑制できる。
【0042】
<ベース部材20の構成>
次に、ベース部材20の構成について説明する。
ベース部材20は、サイドエアバッグ装置1の基板となる樹脂製の板状部材からなり、図2に示すように、エアバッグモジュール10を格納するものである。
図12に示されるように、ベース部材20は、エアバッグモジュール10を格納する凹状のエアバッグ格納部21が形成されるベース部材本体部20Aと、ベース部材本体部20Aから下方に突出した下方突出部20Bとを備える。
【0043】
ベース部材本体部20Aは、主要な構成要素として、シート幅方向の略中央部分に設けられた吊り込み用溝20Abよりもシート幅方向外側を構成する前面部20Aaと、吊り込み用溝20Abよりもシート幅方向内側に設けられるエアバッグ格納部21とを備える。
前面部20Aaは、座席SのシートバックS1の前面と連続した位置に設けられる。また、エアバッグ格納部21に対しては、エアバッグモジュール10を格納した上で、エアバッグモジュール10の前方にパッド72を設ける。そして、パッド72、前面部20Aaを表皮材71により被覆する。
ここで、上述したように、前面部20Aaとエアバッグ格納部21との境界部分には、上下方向に延出した吊り込み用溝20Abが形成されている。この吊り込み用溝20Abには所定の間隔で表皮吊り込み用スリット27が複数形成されている。換言すれば、表皮吊り込み用スリット27は、ベース部材20のうちエアバッグ格納部21に隣接する領域に形成されている。
そして、表皮吊り込み用スリット27には、表皮材71の端部が通されて、表皮材71の吊り込み固定が可能となっている。
なお、表皮材71の端部は、表皮吊り込み用スリット27に通された後に、エアバッグモジュール10を格納するエアバッグ格納部21が形成されている側とは反対側(すなわち表皮吊り込み用スリット27からシート幅方向外側)に引っ張られて固定される。
【0044】
次に、エアバッグ格納部21の構成の詳細について説明する。
エアバッグ格納部21は、前面部20Aaよりもシート後方に凹んだ、断面略コ字状の部位として形成される。具体的には、エアバッグ格納部21は、シート後方の壁部としての底部22と、底部22の左右からシート前方に延出する側壁部23とを有する。
なお、側壁部23のうちシート幅方向内側に設けられる方を第1側壁部23Aとし、シート幅方向外側に設けられる方を第2側壁部23Bとする。
【0045】
底部22には、第1貫通孔24が形成されている。第1貫通孔24は、丸穴であり、第1貫通孔24の周囲には後方側に突出したフランジ25が形成される。詳細には、フランジ25の内周面25Aが第1貫通孔24と連続するようになっている。なお、フランジ25は、後述するリテーナ部材50の第2貫通孔52に挿通され、これにより、ベース部材20の第1貫通孔24と、リテーナ部材50の第2貫通孔52とが対向する位置(詳細には重なる位置)に配されることとなる。
この第1貫通孔24と第2貫通孔52に対しては、図4に示されるように、インフレータ12に接続されるハーネス14が通される。こうすることで、ベース部材20の前方に配されるエアバッグモジュール10のハーネス14を、ベース部材20の外側を迂回させずに、ベース部材20及びリテーナ部材50の後方側に通すことができる。
【0046】
ここで、第1貫通孔24の位置について説明すると、図7に示されるように、第1貫通孔24は、インフレータ12の上端12Aよりも上方に設けられる。
なお、図7においては、サイドエアバッグ装置1からインフレータ12を取り外した上で、インフレータ12を上下方向における取り付け位置に対応するように示している。
また、第1貫通孔24は、上下方向に関し、開口部28よりも上方に設けられる。
また、第1貫通孔24は、上下方向に関し、ボス部26と上下に並ぶ位置に設けられ、具体的には、第1貫通孔24はボス部26の下に設けられる。
また、図2に示されるように、第1貫通孔24は、シート幅方向に関し、第1力布31及び第2力布32のそれぞれの前端が取り付けられる破断部70よりも、座席Sに近い位置に設けられる。
【0047】
そして、ベース部材20においては、底部22から第1側壁部23Aに亘って開口部28が形成される。具体的には、開口部28は、底部22の一部と、第1側壁部23Aの一部とを型抜きして形成されるものである。このように、底部22と第1側壁部23Aとに連続した開口部28を形成することにより、底部22又は第1側壁部23Aのいずれか一方のみに開口を形成する場合に比べて、型抜き方向が複数となるため型抜きが容易となる。
【0048】
開口部28は、第1貫通孔24の下方であって、開口部28と第1貫通孔24とはシート幅方向において少なくとも一部が重なる位置に形成される。
そして、開口部28に対しては、力布ブラケット40の少なくとも一部が配される。
具体的には、図2に示すように、力布ブラケット40の第2延出部42及び取付部43が開口部28と重なる位置に配される。
【0049】
図8に示されるように、力布ブラケット40の取付部43は、エアバッグ格納部21の内面としての第1側壁部23Aに当接した状態に配される。なお、開口部28の開口部上端28Aは、ボルト13を通すように上縁が半円状に形成されている。
【0050】
また、図2に示されるように、第1側壁部23Aの先端である側壁部前端23Aaは、U字状に屈曲している。そして、力布ブラケット40の第1延出部41のシート幅方向外側に位置する外端部41Bは、側壁部前端23Aaに対して回り込むように設けられる。
【0051】
また、エアバッグ格納部21における第1貫通孔24の上方には、後方に突出したボス部26が設けられる。ボス部26は、中空の柱体状に構成され、リテーナ部材50のボス部挿通用貫通孔53に通される。
【0052】
そして、エアバッグ格納部21におけるボス部26の上方には、エアバッグモジュール10の上端に設けられるボルト15を通すボルト挿通孔29が形成される。なお、ボルト挿通孔29は、リテーナ部材50の上部貫通孔58と対向する位置に設けられている。そして、ボルト15により、エアバッグモジュール10、ベース部材20、及びリテーナ部材50の上部がそれぞれ締結される。
【0053】
そして、前面部20Aaの下方には、下方突出部20Bが設けられる。下方突出部20Bには、貫通孔20Baが形成される。ベース部材20の貫通孔20Baと、リテーナ部材50の第1締結部61にボルトを通して締結することにより、ベース部材20とリテーナ部材50とが固定される。
より詳細には、ベース部材20の下方突出部20Bと、リテーナ部材50のリテーナ取付部60とが固定される。
【0054】
<リテーナ部材50の構成>
次に、リテーナ部材50の構成について説明する。
リテーナ部材50は、ベース部材20のエアバッグ格納部21を車体後方側から保持する金属製の保持部材である。
図5及び図10に示されるように、リテーナ部材50は、エアバッグ格納部21を保持するリテーナ本体部51と、リテーナ本体部51の下方に設けられたリテーナ取付部60とを有する。
【0055】
リテーナ本体部51は、断面略コ字形状に形成される。詳細には、リテーナ本体部51は、エアバッグ格納部21の底部22に対向して配置されるリテーナ後壁部51Aと、リテーナ後壁部51Aの車体幅方向の両端部からシート前方に延出する第1リテーナ側壁部51B及び第2リテーナ側壁部51Cとを備える。
【0056】
リテーナ後壁部51Aには、上方から下方の順に、第3締結部57、ボス部挿通用貫通孔53、第2貫通孔52、ビード部56が形成される。
【0057】
第3締結部57は、ベース部材20のボルト挿通孔29と対向する位置に形成された孔であり、ボルト15を用いた締結がなされる。
ボス部挿通用貫通孔53は、ベース部材20のボス部26が通される孔であり、図7に示されるように、ボス部挿通用貫通孔53はボス部26の断面より僅かに大きいサイズに形成される。
第2貫通孔52は、ベース部材20の第1貫通孔24及びフランジ25と対向する位置に形成された孔である。そして、図7に示されるように、第2貫通孔52は、フランジ25の断面よりも僅かに大きいサイズに形成される。
そして、第2貫通孔52及び第1貫通孔24には、サイドエアバッグ装置1の前面側から後面側に向けて、エアバッグモジュール10のハーネス14が通される。
なお、第2貫通孔52とボス部挿通用貫通孔53とは、上下方向に並ぶ位置に形成される。換言すれば、第2貫通孔52とボス部挿通用貫通孔53とは、シート幅方向において少なくとも一部が重なる位置に配される。
【0058】
また、リテーナ後壁部51Aにおいて、第2貫通孔52より下方には、上下方向に延出したビード部56が形成される。ビード部56は、シート後方に凸状となるように加工された部分であり、図7に示されるように、ビード部56は、エアバッグ格納部21に取り付けられるインフレータ12と上下方向において重なる位置に設けられる。
【0059】
そして、リテーナ本体部51の第1リテーナ側壁部51Bは、シート幅方向外側の側壁を構成し、第2リテーナ側壁部51Cはシート幅方向内側の側壁を構成する。
なお、図5図7、及び図10に示されるように、リテーナ後壁部51Aと第1リテーナ側壁部51Bを接続する角部には、上下方向に並んだ複数の凹部55が形成されている。上記の凹部55は、シート前方に凹む部分である。
同様に、リテーナ後壁部51Aと第2リテーナ側壁部51Cを接続する角部には、複数の凹部55が形成されている。
上記のように凹部55を形成することにより、リテーナ後壁部51Aに対する第1リテーナ側壁部51B及び第2リテーナ側壁部51Cの変形を抑制できる。これにより、リテーナ後壁部51Aに対して第1リテーナ側壁部51B及び第2リテーナ側壁部51Cが左右に広がることを抑制できる。
【0060】
また、図5図7、及び図10に示されるように、第1リテーナ側壁部51Bには、ハーネス14に取り付けられた金具を保持するハーネス取付部54が設けられる。
ハーネス取付部54は、開口としてもよいし、開口に取り付けられる金具を含むこととしてもよい。
なお、ハーネス取付部54は、上下方向において第2貫通孔52より高い位置に設けられる。具体的には、ハーネス取付部54は、上下方向においてボス部挿通用貫通孔53と略同じ高さに設けられる。
そして、ハーネス取付部54が第2貫通孔52より高い位置に設けられていることにより、第2貫通孔52を通されたハーネス14が上方向に屈曲した状態で保持されることとなる。
【0061】
リテーナ本体部51の本体下端部59には、下方に延出するリテーナ取付部60が設けられる。本実施形態では、本体下端部59に対してリテーナ取付部60を溶接により接合しているがこれに限られない。例えば、リテーナ本体部51とリテーナ取付部60とはボルトとナット等の締結具を用いて接合されてもよいし、リテーナ本体部51とリテーナ取付部60は一体として成形されてもよい。
【0062】
リテーナ取付部60は、シート幅方向内側から外側に向けて湾曲しながら下方に延出する金属製の板状部材である。
図10に示されるように、リテーナ取付部60は、面を構成する主面部60Aと、主面部60Aの両端を屈曲させた側面部60Bとを有する。換言すれば、側面部60Bは、主面部60Aの両端部から垂直に立ち上がる壁部である。
【0063】
主面部60Aは、上方から下方に向かって幅が狭くなるように形成され、上下方向の略中央部には、第1締結部61を取り囲む位置に周状ビード部63が設けられる。周状ビード部63は、シート前方に向けて僅かに凸状に形成されている。
また、リテーナ取付部60の下端部付近には、周状ビード部63を横切るように屈曲部64が形成される。具体的には、リテーナ取付部60は、屈曲部64においてシート前方に向けて屈曲している。屈曲部64は、シート幅方向内側から外側に向けて、下方に傾いた状態で形成されている。
【0064】
また、主面部60Aの下端部付近には、第1締結部61及び第2締結部62が形成されている。詳細には、第1締結部61及び第2締結部62は、主面部60Aがシート幅方向に湾曲している湾曲部60Aaよりも下方に設けられる。
【0065】
第1締結部61は、ベース部材20の下方突出部20Bの貫通孔20Baと対向する位置に設けられる孔である。具体的には、第1締結部61と貫通孔20Baにボルトを挿通してナットにより締結することで、リテーナ部材50(リテーナ取付部60)とベース部材20とが固定される。
なお、第1締結部61は、周状ビード部63の内部であって、屈曲部64よりも上部に形成される。
【0066】
また、第2締結部62は、主面部60Aにおいて、周状ビード部63より下方に形成される。
第2締結部62は、車体B(例えば座席Sのシートフレームや、タイヤハウス等)に締結される部分である。具体的には、第2締結部62は、リテーナ取付部60に形成された貫通孔であり、第2締結部62にボルトを通して、リテーナ取付部60を車体Bに締結することによりリテーナ部材50(リテーナ取付部60)が車体Bに固定される。
以上のように、第1締結部61と第2締結部62とは、共にリテーナ部材50の下端部付近において互いに離間した位置に設けられている。
そして、第1締結部61は屈曲部64の上方に設けられ、第2締結部62は屈曲部64の下方に設けられているため、第1締結部61と第2締結部62との締結作業を異なる角度で行うことができる。
また、第1締結部61は、周状ビード部63の内部に形成されているため、リテーナ部材50とベース部材20との取付剛性を高めることができる。
【0067】
また、図11に示されるように、リテーナ取付部60の下端においては、側面部60Bの上端には折り返し部60Baが形成されている。折り返し部60Baは、側面部60Bの上端を下側に折り返した部分であり、これにより、側面部60Bの剛性を向上させている。そのため、リテーナ部材50と車体Bとの取付剛性を向上できる。
【0068】
<まとめ>
以上説明した本実施形態に係るサイドエアバッグ装置1の主な特徴は以下の通りである。
【0069】
[1]サイドエアバッグ装置1は、車体Bと座席Sとの間に設けられる。サイドエアバッグ装置1は、膨出可能なエアバッグ11と、エアバッグ11の内部にガスを供給するインフレータ12と、を有するエアバッグモジュール10と、エアバッグモジュール10を格納する凹状のエアバッグ格納部21を有し、車体ドアDと座席Sとの間に取り付けられるベース部材20と、エアバッグ格納部21を車体後方側から保持するリテーナ部材50と、を備える。ベース部材20は、インフレータ12のハーネス14を挿通する第1貫通孔24と、第1貫通孔24の周囲に形成されたフランジ25と、を有する。リテーナ部材50は、インフレータ12のハーネス14を挿通し、第1貫通孔24と対向する位置に設けられた第2貫通孔52を有する。
上記のサイドエアバッグ装置1によれば、ベース部材20及びリテーナ部材50の外側を迂回させることなく、ベース部材20及びリテーナ部材50にインフレータ12のハーネス14を通すことができる。これにより、ハーネス14をエアバッグ11と干渉しないように配置できる。
【0070】
[2]上記のサイドエアバッグ装置1において、エアバッグ格納部21は、底部22と、底部22から前方に延出する側壁部23とを有し、第1貫通孔24は、底部22に形成される。
こうすることで、ベース部材20の後面側にある底部22に第1貫通孔24が形成されているので、ベース部材20の剛性低下を抑制できる。
【0071】
[3]上記のサイドエアバッグ装置1において、フランジ25の内周面25Aは、第1貫通孔24と連続している。
こうすることで、ハーネス14がリテーナ部材50に当接することを抑制できる。
【0072】
[4]上記のサイドエアバッグ装置1において、第1貫通孔24は、インフレータ12の上端12Aよりも上に設けられる。
こうすることで、ベース部材20においてインフレータ12を保持するエアバッグ格納部21の剛性低下を抑制できる。
【0073】
[5]上記のサイドエアバッグ装置1において、エアバッグ格納部21は、底部22から後方に突出したボス部26を有し、第1貫通孔24は、ボス部26より下方に設けられる。
こうすることで、ボス部26にハーネス14が接触することを抑制できる。
【0074】
[6]上記のサイドエアバッグ装置1において、リテーナ部材50は、ボス部26を通すボス部挿通用貫通孔53を有する。
こうすることで、ベース部材20とリテーナ部材50との位置決めを行いやすくなる。
【0075】
[7]上記のサイドエアバッグ装置1において、第1貫通孔24は、ボス部26と上下に並ぶ位置に形成される。
こうすることで、ベース部材20において第1貫通孔24を含む上下方向の領域の剛性を向上できる。
【0076】
[8]上記のサイドエアバッグ装置1において、リテーナ部材50は、ハーネス14を取り付けるためのハーネス取付部54を有し、第2貫通孔52は、ハーネス取付部54よりも下方に設けられる。
こうすることで、第2貫通孔52よりも上方に延びるようにハーネス14を保持できる。これにより、リテーナ部材50の後方のスペースを有効利用できる。
【0077】
[9]上記のサイドエアバッグ装置1において、エアバッグ11の展開を案内する力布30を備え、第1貫通孔24は、力布30の前端が取り付けられる破断部70よりも、座席Sに近い位置に設けられる。
こうすることで、車体ドアD側に比べてレイアウトに余裕がある座席S側に、第1貫通孔24を設けることにより、シート内の部品の干渉を抑制することができる。
【0078】
[10]上記のサイドエアバッグ装置1において、ベース部材20は、エアバッグ格納部21に隣接した領域に形成された表皮吊り込み用スリット27を有する。
こうすることで、吊り込み用の表皮端部とハーネス14との干渉を抑制できる。
【0079】
<その他の実施形態>
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
図17及び図18には、リテーナ部材50の変形例としてのリテーナ部材50Aを示した。図17においては、エアバッグモジュール10のエアバッグ11を省略して示している。
図17及び図18に示されるように、リテーナ部材50Aは、リテーナ本体部51と、リテーナ取付部60とを一体的に形成した点でリテーナ部材50と相違し、その他の点では共通である。
なお、リテーナ部材50Aは、リテーナ部材50のリテーナ本体部51と同じ材料(例えば金属)により成形することとしてよい。
【0080】
例えば、上記の実施形態では車両の後部座席にサイドエアバッグ装置1を設ける例について説明したが、サイドエアバッグ装置1は、前部座席、2列目以降の後部座席に対して設けてもよい。
また、サイドエアバッグ装置1は、自動車に限られず、電子、バス、航空機、船舶等の乗物に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
B 車体
D 車体ドア
S 座席
S1 シートバック
1 サイドエアバッグ装置
10 エアバッグモジュール
11 エアバッグ
12 インフレータ
12A 上端
13 ボルト
14 ハーネス
15 ボルト
16 ナット
20 ベース部材
20A ベース部材本体部
20Aa 前面部
20Ab 吊り込み用溝
20B 下方突出部
20Ba 貫通孔
21 エアバッグ格納部
22 底部
23 側壁部
23A 第1側壁部
23Aa 側壁部前端
23B 第2側壁部
24 第1貫通孔
25 フランジ
25A 内周面
26 ボス部
27 表皮吊り込み用スリット
28 開口部
28A 開口部上端
29 ボルト挿通孔
30 力布
31 第1力布
31A 第1ループ状端部(後端)
31B 第1ループ縫製部
31C 第1縫合部(前端)
32 第2力布
32A 第2ループ状端部(後端)
32B 第2ループ縫製部
32C 第2縫合部(前端)
40 力布ブラケット
40A 第1端部
40B 第2端部
41 第1延出部
41A 凸部
41B 外端部
42 第2延出部
43 取付部
44 ビード部
45 第1スリット部
45A 第1開口部
45B 第1屈曲部
45C 第1力布保持部
46 第2スリット部
46A 第2開口部
46B 第2屈曲部
46C 第2力布保持部
47 凹部
48 凸部
49 ボルト挿通孔
50 リテーナ部材
51 リテーナ本体部
51A リテーナ後壁部
51B 第1リテーナ側壁部(リテーナ側壁部)
51C 第2リテーナ側壁部(リテーナ側壁部)
51Ca ボルト挿通孔
52 第2貫通孔
53 ボス部挿通用貫通孔
54 ハーネス取付部
55 凹部
56 ビード部
57 第3締結部
58 上部貫通孔
59 本体下端部
60 リテーナ取付部
60A 主面部
60Aa 湾曲部
60B 側面部
60Ba 折り返し部
61 第1締結部
62 第2締結部
63 周状ビード部
64 屈曲部
70 破断部
71 表皮材
72 パッド

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18