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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】表面処理剤及び表面処理体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20221207BHJP
   G03F 7/09 20060101ALI20221207BHJP
   G03F 7/16 20060101ALI20221207BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
G03F7/09 501
G03F7/16
G03F7/20 521
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018228940
(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公開番号】P2020038333
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2017245661
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018164199
(32)【優先日】2018-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福井 由季
(72)【発明者】
【氏名】奥村 雄三
(72)【発明者】
【氏名】照井 貴陽
(72)【発明者】
【氏名】公文 創一
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-49468(JP,A)
【文献】特開2017-63179(JP,A)
【文献】特開2018-137426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
G03F 7/09
G03F 7/20
G03F 7/16
G03F 7/32
H01L 21/027
C09K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体の表面処理に使用される表面処理剤であって、
(I)下記一般式[1]、[2]及び[3]で示されるケイ素化合物のうち少なくとも1種、
(II)下記一般式[4]で示される含窒素複素環化合物、下記一般式[5]で示される含窒素複素環化合物、及び、イミダゾールのうち少なくとも1種、及び
(III)有機溶媒
を含む、表面処理剤。
(R(H)Si〔N(R)C(=O)R4-a-b [1]
[式[1]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~18の1価の炭化水素基であり、Rは、それぞれ互いに独立して、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~6のアルキル基、及び、水素元素からなる群から選ばれる基であり、Rは、それぞれ互いに独立して、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~6のアルキル基であり、aは1~3の整数、bは0~2の整数であり、aとbの合計は1~3である。]
(R(H)Si〔OC(=O)R4-c-d [2]
[式[2]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~18の1価の炭化水素基であり、Rは、それぞれ互いに独立して、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~6のアルキル基であり、cは1~3の整数、dは0~2の整数であり、cとdの合計は1~3である。]
(R(H)Si〔OC(R)=NSi(R(H)3-g4-e-f [3]
[式[3]中、R及びRは、それぞれ互いに独立して、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~18の1価の炭化水素基であり、Rは、それぞれ互いに独立して、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~6のアルキル基、及び、水素元素からなる群から選ばれる基であり、eは1~3の整数、fは0~2の整数、gは1~3の整数であり、eとfの合計は1~3である。]
[式[4]中、R及びR10は、それぞれ独立に、
炭素元素及び/又は窒素元素と、水素元素とからなる2価の有機基であり、炭素数と窒素数の合計は1~9であり、2以上の場合は環を構成しない炭素元素が存在してもよい。]
[式[5]中、R11は、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~6のアルキル基、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~8のアルキル基を持つトリアルキルシリル基、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が2~6のアルケニル基、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~6のアルコキシ基、アミノ基、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~6のアルキル基を持つアルキルアミノ基、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~6のアルキル基を持つジアルキルアミノ基、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~6のアミノアルキル基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、ベンジル基、又は、ハロゲン基であり、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~6のアルキル基、又は、水素基である。]
【請求項2】
前記(I)~(III)の総量に対する(II)の濃度が0.05~10質量%である、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項3】
前記(II)が、25℃1気圧で液体である、請求項1又は2に記載の表面処理剤。
【請求項4】
前記一般式[5]の、R11が、炭素数が1~4のアルキル基、又は、トリメチルシリル基であり、R12、R13及びR14が水素基である、請求項1~3のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項5】
前記(II)が、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン 、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、N-メチルイミダゾール、N-エチルイミダゾール、N-プロピルイミダゾール、N-ブチルイミダゾール、及び、トリメチルシリルイミダゾールからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1~4のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項6】
前記(I)~(III)の総量に対する(I)の濃度が0.1~35質量%である、請求項1~5のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項7】
前記(I)として、
前記一般式[1]のaが3で、Rがメチル基で、Rが炭素数1~6の含フッ素アルキル基である少なくとも1種のケイ素化合物を含有する、請求項1~6のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項8】
前記(I)が、(CHSiN(CH)C(=O)CFである、請求項1~7のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項9】
前記(I)として、前記一般式[2]で示されるケイ素化合物を含有し、
前記(II)が、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1~3、5、及び6のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項10】
前記(I)として、
前記一般式[2]のcが3で、Rが炭素数1~6の含フッ素アルキル基である少なくとも1種のケイ素化合物を含有する、請求項1~6のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項11】
前記(I)が、(CHSiOC(=O)CFである、請求項1~6、及び、請求項10のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項12】
前記(I)~(III)の総量に対する前記(CHSiOC(=O)CFの濃度が1~20質量%である、請求項11に記載の表面処理剤。
【請求項13】
前記(I)として、
前記一般式[1]のaが3で、Rが水素元素で、Rが炭素数1~6の含フッ素アルキル基である少なくとも1種のケイ素化合物(I-1)と、
前記一般式[2]のcが3で、Rが炭素数1~6の含フッ素アルキル基である少なくとも1種のケイ素化合物(I-2)とを含有する、請求項1~6、及び、請求項10~12のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項14】
前記ケイ素化合物(I-1)が、(CHSiN(H)C(=O)CFであり、
前記ケイ素化合物(I-2)が、(CHSiOC(=O)CFである、請求項13に記載の表面処理剤。
【請求項15】
前記(II)が、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン 、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項10~14のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項16】
前記(I)として、
前記一般式[3]のe及びgが3で、Rがメチル基又はトリフルオロメチル基である少なくとも1種のケイ素化合物を含有する、請求項1~6のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項17】
前記(I)が、(CHSiOC(CF)=NSi(CHである、請求項1~6、及び、請求項16のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項18】
前記(I)として、前記一般式[3]で示されるケイ素化合物を含み、
前記(II)として、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン 、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1~3、5、及び6のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項19】
前記有機溶媒が、非プロトン性溶媒である、請求項1~18のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項20】
被処理体の表面に、請求項1~19のいずれかに記載の表面処理剤を接触させ、当該被処理体の表面を処理する表面処理体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理剤及び表面処理体の製造方法に関し、特に、半導体集積回路製造において使用される基板等の被処理体の表面処理に好適に適用可能な表面処理剤及び表面処理体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の製造においては、基板にエッチング等の処理を施す前にリソグラフィ技術が用いられている。このリソグラフィ技術では、感光性樹脂組成物を用いて基板上に感光性樹脂層を設け、次いでこれを活性放射線で選択的に照射して露光し、現像処理を行ったあと、感光性樹脂層を選択的に溶解除去して、基板上に樹脂パターンを形成する。そして、この樹脂パターンをマスクとしてエッチング処理を行うことにより、基板に無機パターンを形成する。
【0003】
ところで、近年、半導体デバイスの高集積化、微小化の傾向が高まり、マスクとなる樹脂パターンやエッチング処理により作製された無機パターンの微細化・高アスペクト比化が進んでいる。しかし、その一方で、いわゆるパターン倒れの問題が生じるようになっている。このパターン倒れは、基板上に多数の樹脂パターンや無機パターンを並列して形成させる際、隣接するパターン同士がもたれ合うように近接し、場合によってはパターンが基部から折損したり、剥離したりするという現象のことである。このようなパターン倒れが生じると、所望の製品が得られないため、製品の歩留まりや信頼性の低下を引き起こすことになる。
【0004】
このパターン倒れは、パターン形成後の洗浄処理において、洗浄液が乾燥する際、その洗浄液の表面張力により発生することがわかっている。つまり、乾燥過程で洗浄液が除去される際に、パターン間に洗浄液の表面張力に基づく応力が作用し、パターン倒れが生じることになる。
【0005】
そこで、特許文献1では、基板上に設けられた無機パターン又は樹脂パターンのパターン倒れを防止することを目的として、シリル化剤と、ケイ素原子を含まない含窒素複素環化合物とを調液した表面処理剤で被処理体(当該基板上のパターン)を表面処理して撥水性を付与する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-063179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、シリル化剤と、ケイ素原子を含まない含窒素複素環化合物とを含む表面処理剤は、調液時に原料を溶かすのに時間がかかってしまう場合や、撥水性付与効果が不十分な場合があることを、本発明者らは見出した。そこで、それらの問題を解決できる新規な表面処理剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、被処理体の表面処理に使用される表面処理剤であって、
(I)下記一般式[1]、[2]及び[3]で示されるケイ素化合物のうち少なくとも1種、
(II)下記一般式[4]で示される含窒素複素環化合物、下記一般式[5]で示される含窒素複素環化合物、及び、イミダゾールのうち少なくとも1種、及び
(III)有機溶媒
を含む、表面処理剤である。
(R(H)Si〔N(R)C(=O)R4-a-b [1]
[式[1]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~18の1価の炭化水素基であり、Rは、それぞれ互いに独立して、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~6のアルキル基、及び、水素元素からなる群から選ばれる基であり、Rは、それぞれ互いに独立して、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~6のアルキル基であり、aは1~3の整数、bは0~2の整数であり、aとbの合計は1~3である。]
(R(H)Si〔OC(=O)R4-c-d [2]
[式[2]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~18の1価の炭化水素基であり、Rは、それぞれ互いに独立して、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~6のアルキル基であり、cは1~3の整数、dは0~2の整数であり、cとdの合計は1~3である。]
(R(H)Si〔OC(R)=NSi(R(H)3-g4-e-f [3]
[式[3]中、R及びRは、それぞれ互いに独立して、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~18の1価の炭化水素基であり、Rは、それぞれ互いに独立して、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~6のアルキル基、及び、水素元素からなる群から選ばれる基であり、eは1~3の整数、fは0~2の整数、gは1~3の整数であり、eとfの合計は1~3である。]
[式[4]中、R及びR10は、それぞれ独立に、
炭素元素及び/又は窒素元素と、水素元素とからなる2価の有機基であり、炭素数と窒素数の合計は1~9であり、2以上の場合は環を構成しない炭素元素が存在してもよい。]
[式[5]中、R11は、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~6のアルキル基、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~8のアルキル基を持つトリアルキルシリル基、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が2~6のアルケニル基、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~6のアルコキシ基、アミノ基、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~6のアルキル基を持つアルキルアミノ基、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~6のアルキル基を持つジアルキルアミノ基、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~6のアミノアルキル基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、ベンジル基、又は、ハロゲン基であり、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~6のアルキル基、又は、水素基である。]
【0009】
上記(I)~(III)の総量に対する(II)の濃度が0.05~10質量%であることが好ましい。
【0010】
上記(II)が、25℃1気圧で液体であると、溶解性の観点から好ましい。
【0011】
また、上記(II)が、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン 、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、N-メチルイミダゾール、N-エチルイミダゾール、N-プロピルイミダゾール、N-ブチルイミダゾール、及び、トリメチルシリルイミダゾールからなる群から選択される少なくとも1つであると、溶解性の観点から好ましく、中でも、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン 、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、N-メチルイミダゾール、N-エチルイミダゾール、N-プロピルイミダゾール、及び、N-ブチルイミダゾールからなる群から選択される少なくとも1つであると、より優れた撥水性付与効果を発現しやすいためより好ましく、特に、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン 、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、及び、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンからなる群から選択される少なくとも1つであると、さらに優れた撥水性付与効果を発現しやすいため特に好ましい。
【0012】
上記(I)~(III)の総量に対する(I)の濃度が0.1~35質量%であると、被処理体の表面に均一に保護膜を形成しやすくなるため好ましい。0.1質量%未満では、撥水性付与効果が不十分となる傾向がある。また、35質量%を超えると、被処理体の表面を侵食したり、不純物として被処理体表面に残留したりする懸念があること、またコスト的な観点から見ても好ましくない。さらに好ましくは0.5~30質量%、より好ましくは1~20質量%、特に好ましくは1~9質量%である。
【0013】
また、上記表面処理剤が、上記(I)として、
上記一般式[1]のaが3で、Rがメチル基で、Rが炭素数1~6の含フッ素アルキル基である少なくとも1種のケイ素化合物を含有するものであると、
撥水性付与効果がより優れたものとなりやすいため好ましく、中でも、上記(I)が、(CHSiN(CH)C(=O)CFであることが特に好ましい。
【0014】
上記(I)として、上記一般式[2]で示されるケイ素化合物を含有する場合には、上記(II)が、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンからなる群から選択される少なくとも1つであると、撥水性付与効果が特に優れたものとなりやすいため、特に好ましい。
【0015】
また、上記表面処理剤が、上記(I)として、
上記一般式[2]のcが3で、Rが炭素数1~6の含フッ素アルキル基である少なくとも1種のケイ素化合物を含有するものであると、撥水性付与効果が特に優れたものとなりやすいため、より好ましい。中でも、上記(I)が、(CHSiOC(=O)CFであると、撥水性付与効果の観点から特に好ましい。
さらに、上記表面処理剤が、上記(I)として、
上記一般式[1]のaが3で、Rが水素元素で、Rが炭素数1~6の含フッ素アルキル基である少なくとも1種のケイ素化合物(I-1)と、
上記一般式[2]のcが3で、Rが炭素数1~6の含フッ素アルキル基である少なくとも1種のケイ素化合物(I-2)とを含有するものであると、
当該表面処理剤に水が混入した場合であっても、被処理体表面に対する撥水性付与効果を安定的に維持しやすいため、より好ましく、特に、
上記ケイ素化合物(I-1)が、(CHSiN(H)C(=O)CFであり、上記ケイ素化合物(I-2)が、(CHSiOC(=O)CFであることが好ましい。
また、上記(II)が、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン 、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンからなる群から選択される少なくとも1つであると、撥水性付与効果が特に優れたものとなりやすいため、より好ましい。
【0016】
また、上記表面処理剤が、上記(I)として、
上記一般式[3]のe及びgが3で、Rがメチル基又はトリフルオロメチル基である少なくとも1種のケイ素化合物を含有するものであると、
撥水性付与効果がより優れたものとなりやすいため好ましく、中でも、上記(I)が、(CHSiOC(CF)=NSi(CHであることが特に好ましい。
【0017】
上記(I)として、上記一般式[3]で示されるケイ素化合物を含有する場合には、上記(II)が、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン 、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンからなる群から選択される少なくとも1つであると、撥水性付与効果が優れたものとなりやすいため好ましく、中でも1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンからなる群から選択される少なくとも1つであると、撥水性付与効果が特に優れたものとなりやすいため、特に好ましい。
【0018】
上記有機溶媒が、非プロトン性溶媒であることが好ましい。
【0019】
また、本発明は、被処理体の表面に、上記のいずれかに記載の表面処理剤を接触させ、当該被処理体の表面を処理する表面処理体の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、調液時に原料を溶かすのに時間がかかってしまったり、撥水性付与効果が不十分であったりする恐れがない表面処理剤、及び当該表面処理剤を使用した表面処理体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】水添加量に対する、表面処理後の接触角維持率のプロット(実施例A-1、A-2、9)
図2】水添加量に対する、表面処理後の接触角維持率のプロット(実施例A-3、A-4、10)
図3】水添加量に対する、表面処理後の接触角維持率のプロット(実施例A-5、A-6、13)
図4】(II)の濃度に対する、表面処理後の接触角のプロットと溶解時間の傾向を示す図(PGMEA溶媒)
図5】(II)の濃度に対する、表面処理後の接触角のプロットと溶解時間の傾向を示す図(n-デカン、TPGDME混合溶媒)
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.表面処理剤について
表面処理剤は、被処理体の表面をシリル化する際に使用される。被処理体の種類は特に限定されない。被処理体としては、「基板」が好ましい。ここで、シリル化処理の対象となる「基板」としては、半導体デバイス作製のために使用される基板が例示され、「基板の表面」とは、基板自体の表面のほか、基板上に設けられた無機パターン及び樹脂パターンの表面、並びにパターン化されていない無機層及び有機層の表面が例示される。
【0023】
基板上に設けられた無機パターンとしては、フォトレジスト法により基板に存在する無機層の表面にエッチングマスクを作製し、その後、エッチング処理することにより形成されたパターンが例示される。無機層としては、基板自体の他、基板を構成する元素の酸化膜、基板の表面に形成した窒化珪素、窒化チタン、タングステン等の無機物の膜や層等が例示される。このような膜や層としては、特に限定されないが、半導体デバイスの作製過程において形成される無機物の膜や層等が例示される。
【0024】
基板上に設けられた樹脂パターンとしては、フォトレジスト法により基板上に形成された樹脂パターンが例示される。このような樹脂パターンは、例えば、基板上にフォトレジストの膜である有機層を形成し、この有機層に対してフォトマスクを通して露光し、現像することによって形成される。有機層としては、基板自体の表面の他、基板の表面に設けられた積層膜の表面等に設けられたものが例示される。このような有機層としては、特に限定されないが、半導体デバイスの作製過程において、エッチングマスクを形成するために設けられた有機物の膜が例示される。
【0025】
上記(I)と(II)を、上記(III)の有機溶媒に溶解した溶液タイプの表面処理剤を、例えばスピンコート法や浸漬法等の手段によって基板等の被処理体の表面に塗布して、接触されることにより、表面処理することができる。また、上記の溶液タイプの表面処理剤を、例えば、蒸気化して当該蒸気を基板等の被処理体の表面に供給して、当該被処理体の表面に凝集させて液体状態にして保持することで、接触されることにより、表面処理することもできる。
【0026】
本発明の表面処理剤は、
(I)上記一般式[1]、[2]及び[3]で示されるケイ素化合物のうち少なくとも1種、
(II)上記一般式[4]で示される含窒素複素環化合物、上記一般式[5]で示される含窒素複素環化合物、及び、イミダゾールのうち少なくとも1種、及び
(III)有機溶媒
を含む。以下、各成分について説明する。
【0027】
(I)ケイ素化合物について
上記一般式[1]のR基、上記一般式[2]のR基、及び、上記一般式[3]のR基は、撥水性の官能基である。そして、上記一般式[1]の-N(R)C(=O)R基、上記一般式[2]の-OC(=O)R基、及び、上記一般式[3]の-OC(R)=NSi(R(H)3-g基が被処理体の表面と反応し、上記撥水性の官能基を有する部位が被処理体に固定されることにより、該被処理体に撥水性の保護膜(以降、「撥水性保護膜」や単に「保護膜」と記載する場合がある)が形成する。また上述の、被処理体の表面と反応する基が、保護膜の撥水性をより高める構造であると一層好ましい。
該ケイ素化合物と、上記(II)成分とを用いると、該ケイ素化合物と被処理体の表面が早く反応するようになり、撥水性付与効果が得られる。
【0028】
上記一般式[1]のケイ素化合物の具体例としては、CHSi〔N(CH)C(=O)CF、CSi〔N(CH)C(=O)CF、CSi〔N(CH)C(=O)CF、CSi〔N(CH)C(=O)CF、C11Si〔N(CH)C(=O)CF、C13Si〔N(CH)C(=O)CF、C15Si〔N(CH)C(=O)CF、C17Si〔N(CH)C(=O)CF、C19Si〔N(CH)C(=O)CF、C1021Si〔N(CH)C(=O)CF、C1123Si〔N(CH)C(=O)CF、C1225Si〔N(CH)C(=O)CF、C1327Si〔N(CH)C(=O)CF、C1429Si〔N(CH)C(=O)CF、C1531Si〔N(CH)C(=O)CF、C1633Si〔N(CH)C(=O)CF、C1735Si〔N(CH)C(=O)CF、C1837Si〔N(CH)C(=O)CF、(CHSi〔N(CH)C(=O)CF、CSi(CH)〔N(CH)C(=O)CF、(CSi〔N(CH)C(=O)CF、CSi(CH)〔N(CH)C(=O)CF、(CSi〔N(CH)C(=O)CF、CSi(CH)〔N(CH)C(=O)CF、(CSi〔N(CH)C(=O)CF、C11Si(CH)〔N(CH)C(=O)CF、C13Si(CH)〔N(CH)C(=O)CF、C15Si(CH)〔N(CH)C(=O)CF、C17Si(CH)〔N(CH)C(=O)CF、C19Si(CH)〔N(CH)C(=O)CF、C1021Si(CH)〔N(CH)C(=O)CF、C1123Si(CH)〔N(CH)C(=O)CF、C1225Si(CH)〔N(CH)C(=O)CF、C1327Si(CH)〔N(CH)C(=O)CF、C1429Si(CH)〔N(CH)C(=O)CF、C1531Si(CH)〔N(CH)C(=O)CF、C1633Si(CH)〔N(CH)C(=O)CF、C1735Si(CH)〔N(CH)C(=O)CF、C1837Si(CH)〔N(CH)C(=O)CF、(CHSiN(CH)C(=O)CF、CSi(CHN(CH)C(=O)CF、(CSi(CH)N(CH)C(=O)CF、(CSiN(CH)C(=O)CF、CSi(CHN(CH)C(=O)CF、(CSi(CH)N(CH)C(=O)CF、(CSiN(CH)C(=O)CF、CSi(CHN(CH)C(=O)CF、(CSiN(CH)C(=O)CF、C11Si(CHN(CH)C(=O)CF、C13Si(CHN(CH)C(=O)CF、C15Si(CHN(CH)C(=O)CF、C17Si(CHN(CH)C(=O)CF、C19Si(CHN(CH)C(=O)CF、C1021Si(CHN(CH)C(=O)CF、C1123Si(CHN(CH)C(=O)CF、C1225Si(CHN(CH)C(=O)CF、C1327Si(CHN(CH)C(=O)CF、C1429Si(CHN(CH)C(=O)CF、C1531Si(CHN(CH)C(=O)CF、C1633Si(CHN(CH)C(=O)CF、C1735Si(CHN(CH)C(=O)CF、C1837Si(CHN(CH)C(=O)CF、(CHSi(H)N(CH)C(=O)CF、CHSi(H)N(CH)C(=O)CF、(CSi(H)N(CH)C(=O)CF、CSi(H)N(CH)C(=O)CF、CSi(CH)(H)N(CH)C(=O)CF、(CSi(H)N(CH)C(=O)CF、CSi(H)N(CH)C(=O)CF、CFCHCHSi〔N(CH)C(=O)CF、CCHCHSi〔N(CH)C(=O)CF、CCHCHSi〔N(CH)C(=O)CF、CCHCHSi〔N(CH)C(=O)CF、C11CHCHSi〔N(CH)C(=O)CF、C13CHCHSi〔N(CH)C(=O)CF、C15CHCHSi〔N(CH)C(=O)CF、C17CHCHSi〔N(CH)C(=O)CF、CFCHCHSi(CH)〔N(CH)C(=O)CF、CCHCHSi(CH)〔N(CH)C(=O)CF、CCHCHSi(CH)〔N(CH)C(=O)CF、CCHCHSi(CH)〔N(CH)C(=O)CF、C11CHCHSi(CH)〔N(CH)C(=O)CF、C13CHCHSi(CH)〔N(CH)C(=O)CF、C15CHCHSi(CH)〔N(CH)C(=O)CF、C17



CHCHSi(CH)〔N(CH)C(=O)CF、CFCHCHSi(CHN(CH)C(=O)CF、CCHCHSi(CHN(CH)C(=O)CF、CCHCHSi(CHN(CH)C(=O)CF、CCHCHSi(CHN(CH)C(=O)CF、C11CHCHSi(CHN(CH)C(=O)CF、C13CHCHSi(CHN(CH)C(=O)CF、C15CHCHSi(CHN(CH)C(=O)CF、C17CHCHSi(CHN(CH)C(=O)CF、CFCHCHSi(CH)(H)N(CH)C(=O)CF等のN-メチル-N-アルキルシリルトリフルオロアセトアミド、あるいは、上記N-メチル-N-アルキルシリルトリフルオロアセトアミドの-N(CH)C(=O)CF基を該-N(CH)C(=O)CF基以外の-N(CH)C(=O)R(Rは、一部又はすべての水素元素がフッ素元素に置き換えられていてもよい炭素数が1~6のアルキル基)に置き換えたものなどが挙げられる。また、上記化合物の-N(CH)C(=O)Rのメチル基部分を、水素基、エチル基、プロピル基、ブチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等に置き換えた化合物が挙げられる。なお、上記一般式[1]のケイ素化合物としては、市販のものを用いることができる。例えば、N-メチル-N-トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド〔(CHSiN(CH)C(=O)CF〕であれば、東京化成工業株式会社製のものを用いることができる。
【0029】
撥水性付与効果の観点から、上記一般式[1]のR基が、一部又はすべての水素元素がフッ素元素に置き換えられていてもよい炭素数が1~4のアルキル基、又は水素基が好ましく、炭素数が1~4のアルキル基、又は水素基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0030】
撥水性付与効果の観点から、上記一般式[1]のR基が、全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられたアルキル基が好ましく、該アルキル基の炭素数は1~4がより好ましく、特に炭素数は1が好ましい。
【0031】
また、上記一般式[1]において4-a-bで表される-N(R)C(=O)R基の数が1であると、上記保護膜を均質に形成できるのでより好ましい。
【0032】
また、上記一般式[1]においてbが0であると、後述の保護膜形成後の洗浄において撥水性を維持しやすいため好ましい。
【0033】
さらに、上記一般式[1]のR基は、2個のメチル基と1個の直鎖状アルキル基の組合せであると、上記保護膜を均質に形成できるのでより好ましい。さらに、R基は、3個のメチル基が好ましい。
【0034】
上記一般式[2]のケイ素化合物の具体例としては、CHSi(OC(=O)CF、CSi(OC(=O)CF、CSi(OC(=O)CF、CSi(OC(=O)CF、C11Si(OC(=O)CF、C13Si(OC(=O)CF、C15Si(OC(=O)CF、C17Si(OC(=O)CF、C19Si(OC(=O)CF、C1021Si(OC(=O)CF、C1123Si(OC(=O)CF、C1225Si(OC(=O)CF、C1327Si(OC(=O)CF、C1429Si(OC(=O)CF、C1531Si(OC(=O)CF、C1633Si(OC(=O)CF、C1735Si(OC(=O)CF、C1837Si(OC(=O)CF、(CHSi(OC(=O)CF、CSi(CH)(OC(=O)CF、(CSi(OC(=O)CF、CSi(CH)(OC(=O)CF、(CSi(OC(=O)CF、CSi(CH)(OC(=O)CF、(CSi(OC(=O)CF、C11Si(CH)(OC(=O)CF、C13Si(CH)(OC(=O)CF、C15Si(CH)(OC(=O)CF、C17Si(CH)(OC(=O)CF、C19Si(CH)(OC(=O)CF、C1021Si(CH)(OC(=O)CF、C1123Si(CH)(OC(=O)CF、C1225Si(CH)(OC(=O)CF、C1327Si(CH)(OC(=O)CF、C1429Si(CH)(OC(=O)CF、C1531Si(CH)(OC(=O)CF、C1633Si(CH)(OC(=O)CF、C1735Si(CH)(OC(=O)CF、C1837Si(CH)(OC(=O)CF、(CHSiOC(=O)CF、CSi(CHOC(=O)CF、(CSi(CH)OC(=O)CF、(CSiOC(=O)CF、CSi(CHOC(=O)CF、(CSi(CH)OC(=O)CF、(CSiOC(=O)CF、CSi(CHOC(=O)CF、(CSiOC(=O)CF、C11Si(CHOC(=O)CF、C13Si(CHOC(=O)CF、C15Si(CHOC(=O)CF、C17Si(CHOC(=O)CF、C19Si(CHOC(=O)CF、C1021Si(CHOC(=O)CF、C1123Si(CHOC(=O)CF、C1225Si(CHOC(=O)CF、C1327Si(CHOC(=O)CF、C1429Si(CHOC(=O)CF、C1531Si(CHOC(=O)CF、C1633Si(CHOC(=O)CF、C1735Si(CHOC(=O)CF、C1837Si(CHOC(=O)CF、(CHSi(H)OC(=O)CF、CHSi(H)OC(=O)CF、(CSi(H)OC(=O)CF、CSi(H)OC(=O)CF、CSi(CH)(H)OC(=O)CF、(CSi(H)OC(=O)CF、CSi(H)OC(=O)CF、CFCHCHSi(OC(=O)CF、CCHCHSi(OC(=O)CF、CCHCHSi(OC(=O)CF、CCHCHSi(OC(=O)CF、C11CHCHSi(OC(=O)CF、C13CHCHSi(OC(=O)CF、C15CHCHSi(OC(=O)CF、C17CHCHSi(OC(=O)CF、CFCHCHSi(CH)(OC(=O)CF、CCHCHSi(CH)(OC(=O)CF、CCHCHSi(CH)(OC(=O)CF、CCHCHSi(CH)(OC(=O)CF、C11CHCHSi(CH)(OC(=O)CF、C13CHCHSi(CH)(OC(=O)CF、C15CHCHSi(CH)(OC(=O)CF、C17CHCHSi(CH)(OC(=O)CF、CFCHCHSi(CHOC(=O)CF、CCHCHSi(CHOC(=O)CF、CCHCHSi(CHOC(=O)CF、CCHCHSi(CHOC(=O)CF、C11CHCHSi(CHOC(=O)CF、C13CHCHSi(CHOC(=O)CF、C15CHCHSi(CHOC(=O)CF、C17CHCHSi(CHOC(=O)CF、CFCHCHSi(CH)(H)OC(=O)CF等のトリフルオロアセトキシシラン、あるいは、上記トリフルオロアセトキシシランの-OC(=O)CF基を、該-OC(=O)CF基以外の-OC(=O)R(Rは、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていてもよい炭素数が1~6のアルキル基)に置き換えたものなどが挙げられる。なお、上記一般式[2]のケイ素化合物としては、市販のものを用いることができる。例えば、トリメチルシリルトリフルオロアセテート〔(CH



Si-OC(=O)CF〕であれば、東京化成工業株式会社製のものを用いることができる。
【0035】
撥水性付与効果の観点から、上記-OC(=O)R基のRは、全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられたアルキル基が好ましく、該アルキル基の炭素数は1~4がより好ましく、特に炭素数は1が好ましい。
【0036】
また、上記一般式[2]において4-c-dで表される-OC(=O)R基の数が1であると、上記保護膜を均質に形成できるのでより好ましい。
【0037】
また、上記一般式[2]においてdが0であると、後述の保護膜形成後の洗浄において撥水性を維持しやすいため好ましい。
【0038】
さらに、上記一般式[2]のRは、2個のメチル基と1個の直鎖状アルキル基の組合せであると、上記保護膜を均質に形成できるのでより好ましい。さらに、R基は、3個のメチル基が好ましい。
【0039】
上記一般式[3]のケイ素化合物の具体例としては、CHSi〔OC(CH)=NSi(CH、CSi〔OC(CH)=NSi(CH、CSi〔OC(CH)=NSi(CH、CSi〔OC(CH)=NSi(CH、C11Si〔OC(CH)=NSi(CH、C13Si〔OC(CH)=NSi(CH、C15Si〔OC(CH)=NSi(CH、C17Si〔OC(CH)=NSi(CH、C19Si〔OC(CH)=NSi(CH、C1021Si〔OC(CH)=NSi(CH、C1123Si〔OC(CH)=NSi(CH、C1225Si〔OC(CH)=NSi(CH、C1327Si〔OC(CH)=NSi(CH、C1429Si〔OC(CH)=NSi(CH、C1531Si〔OC(CH)=NSi(CH、C1633Si〔OC(CH)=NSi(CH、C1735Si〔OC(CH)=NSi(CH、C1837Si〔OC(CH)=NSi(CH、(CHSi〔OC(CH)=NSi(CH、CSi(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、(CSi〔OC(CH)=NSi(CH、CSi(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、(CSi〔OC(CH)=NSi(CH、CSi(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、(CSi〔OC(CH)=NSi(CH、C11Si(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、C13Si(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、C15Si(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、C17Si(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、C19Si(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、C1021Si(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、C1123Si(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、C1225Si(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、C1327Si(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、C1429Si(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、C1531Si(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、C1633Si(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、C1735Si(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、C1837Si(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、(CHSiOC(CH)=NSi(CH、CSi(CHOC(CH)=NSi(CH、(CSi(CH)OC(CH)=NSi(CH、(CSiOC(CH)=NSi(CH、CSi(CHOC(CH)=NSi(CH、(CSi(CH)OC(CH)=NSi(CH、(CSiOC(CH)=NSi(CH、CSi(CHOC(CH)=NSi(CH、(CSiOC(CH)=NSi(CH、C11Si(CHOC(CH)=NSi(CH、C13Si(CHOC(CH)=NSi(CH、C15Si(CHOC(CH)=NSi(CH、C17Si(CHOC(CH)=NSi(CH、C19Si(CHOC(CH)=NSi(CH、C1021Si(CHOC(CH)=NSi(CH、C1123Si(CHOC(CH)=NSi(CH、C1225Si(CHOC(CH)=NSi(CH、C1327Si(CHOC(CH)=NSi(CH、C1429Si(CHOC(CH)=NSi(CH、C1531Si(CHOC(CH)=NSi(CH、C1633Si(CHOC(CH)=NSi(CH、C1735Si(CHOC(CH)=NSi(CH、C1837Si(CHOC(CH)=NSi(CH、(CHSi(H)OC(CH)=NSi(CH、CHSi(H)OC(CH)=NSi(CH、(CSi(H)OC(CH)=NSi(CH、CSi(H)OC(CH)=NSi(CH、CSi(CH)(H)OC(CH)=NSi(CH、(CSi(H)OC(CH)=NSi(CH、CSi(H)OC(CH)=NSi(CH、CFCHCHSi〔OC(CH)=NSi(CH、CCHCHSi〔OC(CH)=NSi(CH、CCHCHSi〔OC(CH)=NSi(CH、CCHCHSi〔OC(CH)=NSi(CH、C11CHCHSi〔OC(CH)=NSi(CH、C13CHCHSi〔OC(CH)=NSi(CH、C15CHCHSi〔OC(CH)=NSi(CH



、C17CHCHSi〔OC(CH)=NSi(CH、CFCHCHSi(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、CCHCHSi(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、CCHCHSi(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、CCHCHSi(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、C11CHCHSi(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、C13CHCHSi(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、C15CHCHSi(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、C17CHCHSi(CH)〔OC(CH)=NSi(CH、CFCHCHSi(CHOC(CH)=NSi(CH、CCHCHSi(CHOC(CH)=NSi(CH、CCHCHSi(CHOC(CH)=NSi(CH、CCHCHSi(CHOC(CH)=NSi(CH、C11CHCHSi(CHOC(CH)=NSi(CH、C13CHCHSi(CHOC(CH)=NSi(CH、C15CHCHSi(CHOC(CH)=NSi(CH、C17CHCHSi(CHOC(CH)=NSi(CH、CFCHCHSi(CH)(H)OC(CH)=NSi(CH等の化合物、あるいは、上記化合物の-OC(CH)=NSi(CH基を該-OC(CH)=NSi(CH基以外の-OC(CH)=NSi(R(H)3-g基(Rは、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1~18の1価の炭化水素基)に置き換えたものなどが挙げられる。また、上記化合物の-OC(CH)=NSi(R(H)3-g基のメチル基部分を、水素基、エチル基、プロピル基、ブチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等に置き換えた化合物が挙げられる。なお、上記一般式[3]のケイ素化合物としては、市販のものを用いることができる。例えば、N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド〔(CHSiOC(CF)=NSi(CH〕であれば、東京化成工業株式会社製のものを用いることができる。
【0040】
撥水性付与効果の観点から、上記一般式[3]のR基が、一部又は全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていてもよい炭素数が1~4のアルキル基が好ましく、メチル基又はトリフルオロメチル基がより好ましく、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0041】
また、撥水性付与効果の観点から、上記一般式[3]のR基は、3個のメチル基が好ましい。
【0042】
また、上記一般式[3]において4-e-fで表される-OC(R)=NSi(R(H)3-g基の数が1であると、上記保護膜を均質に形成できるのでより好ましい。
【0043】
また、上記一般式[3]においてfが0であると、後述の保護膜形成後の洗浄において撥水性を維持しやすいため好ましい。
【0044】
さらに、上記一般式[3]のR基は、2個のメチル基と1個の直鎖状アルキル基の組合せであると、上記保護膜を均質に形成できるのでより好ましい。さらに、R基は、3個のメチル基が好ましい。
【0045】
また、上記表面処理剤が、上記(I)として、
上記一般式[1]のaが3で、Rが水素元素で、Rが炭素数1~6の含フッ素アルキル基である少なくとも1種のケイ素化合物(I-1)と、
上記一般式[2]のcが3で、Rが炭素数1~6の含フッ素アルキル基である少なくとも1種のケイ素化合物(I-2)とを含有するものであると、
当該表面処理剤に水が混入した場合であっても、被処理体表面に対する撥水性付与効果を安定的に維持しやすいため、より好ましい。
上記表面処理剤は、あらかじめ原料として別々に準備しておいたケイ素化合物(I-1)とケイ素化合物(I-2)を、上記(II)とともに上記(III)に溶解させて得ても良いし、反応によってケイ素化合物(I-1)とケイ素化合物(I-2)を生成する原料を混合することで得られるものであっても良い。
例えば、原料として1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザンと無水トリフルオロ酢酸を用いると、上記ケイ素化合物(I-1)としてN-トリメチルシリルトリフルオロアセトアミドを、上記ケイ素化合物(I-2)としてトリメチルシリルトリフルオロアセテートを生成することができるため、この反応を利用してケイ素化合物(I-1)とケイ素化合物(I-2)を併用する表面処理剤を得ることができる。
【0046】
上記(I)~(III)の総量100質量%に対して、(I)の濃度が、0.1~35質量%であると、被処理体の表面に均一に保護膜を形成しやすくなるため好ましい。0.1質量%未満では、撥水性付与効果が不十分となる傾向がある。また、35質量%を超えると、被処理体の表面を侵食したり、不純物として被処理体表面に残留したりする懸念があること、またコスト的な観点から見ても好ましくない。さらに好ましくは0.5~30質量%、より好ましくは1~20質量%、特に好ましくは1~9質量%である。
【0047】
(II)成分について
上記一般式[4]で示される含窒素複素環化合物、上記一般式[5]で示される含窒素複素環化合物、及び、イミダゾールは、上記一般式[1]の-N(R)C(=O)R基、上記一般式[2]の-OC(=O)R基、及び、上記一般式[3]の-OC(R)=NSi(R(H)3-g基と被処理体の表面との反応を促進するものであり、それ自身が保護膜の一部を形成するものであってもよい。
【0048】
上記一般式[4]で示される含窒素複素環化合物は、Rが、炭素数が3の2価の炭化水素基であり、R10が、炭素元素及び/又は窒素元素と、水素元素からなり、炭素数と窒素数の合計が3~5で、環を構成しない炭素元素が存在してもよい2価の有機基であることが好ましく、また、調液後に不溶解物が生じがたいという観点から、25℃1気圧で液体であることが好ましく、その具体例としては、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン 、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン等が挙げられる。
【0049】
上記一般式[4]で示される含窒素複素環化合物としては、市販のものを用いることができ、入手が比較的容易であるという観点から、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(例えば東京化成工業株式会社製)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(例えば東京化成工業株式会社製)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(例えば東京化成工業株式会社製)等を用いることができる。
【0050】
上記一般式[5]で示される含窒素複素環化合物は、R11が、炭素数が1~4のアルキル基、又は、トリメチルシリル基であり、R12、R13及びR14が水素基であることが好ましく、その具体例としては、N-メチルイミダゾール、N-エチルイミダゾール、N-プロピルイミダゾール、N-ブチルイミダゾール、トリメチルシリルイミダゾール等が挙げられる。
【0051】
また、調液後に不溶解物が生じ難いという観点から、上記一般式[5]で示される含窒素複素環化合物は25℃1気圧で液体であることが好ましく、例えば、N-メチルイミダゾール、N-エチルイミダゾール、N-プロピルイミダゾール、N-ブチルイミダゾール、トリメチルシリルイミダゾール等が好ましい。
【0052】
上記一般式[5]で示される含窒素複素環化合物、及び、イミダゾールとしては、市販のものを用いることができ、入手が比較的容易であるという観点から、イミダゾール(例えば東京化成工業株式会社製)、N-メチルイミダゾール(例えば東京化成工業株式会社製)、N-エチルイミダゾール(例えば東京化成工業株式会社製)、N-プロピルイミダゾール(例えば東京化成工業株式会社製)、N-ブチルイミダゾール(例えば東京化成工業株式会社製)、トリメチルシリルイミダゾール(例えば東京化成工業株式会社製)等を用いることができる。
【0053】
上記(I)~(III)の総量100質量%に対して、(II)の濃度が、0.05~10質量%が好ましい。0.05質量%以上であれば反応促進効果(ひいては撥水性付与効果)を発揮しやすいため好ましい。10質量%以下であれば、被処理体表面などを浸食し難く、不純物として被処理体表面に残留し難いため好ましい。また、有機溶媒に溶解せずに不均質な表面処理剤になるということも起こり難いため好ましい。該濃度は0.07~5質量%がより好ましく、0.1~2質量%がさらに好ましい。
【0054】
(III)有機溶媒について
上記表面処理剤において、上記(I)及び(II)は、(III)有機溶媒に溶解している。表面処理剤が有機溶媒を含有することにより、スピンコート法や浸漬法等による被処理体の表面処理が容易になる。
【0055】
有機溶媒としては、上記(I)及び(II)を溶解でき、且つ、被処理体の表面(例えば、基板の表面(無機パターン、樹脂パターン等))に対するダメージの少ないものであれば、特に限定されずに従来公知の有機溶媒を使用することができる。
【0056】
上記有機溶媒は、例えば、炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類、含ハロゲン溶媒、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒、ラクトン系溶媒、カーボネート系溶媒、多価アルコールの誘導体のうちOH基を持たないもの、N-H基を持たない窒素元素含有溶媒、シリコーン溶媒、テルペン系溶媒などの非プロトン性溶媒、チオール類、あるいは、それらの混合液が好適に使用される。この中でも、炭化水素類、エステル類、エーテル類、含ハロゲン溶媒、多価アルコールの誘導体のうちOH基を持たないもの、あるいは、それらの混合液を用いると、被処理体に撥水性保護膜を短時間に形成できるためより好ましい。なお、上記(I)及び(II)の溶解性の観点からは、上記有機溶媒としては非極性溶媒の含有量が少ないものほど好ましく、上記有機溶媒として非極性溶媒を用いないものが特に好ましい。
【0057】
上記炭化水素類の例としては、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、n-テトラデカン、n-ヘキサデカン、n-オクタデカン、n-アイコサン、並びにそれらの炭素数に対応する分岐状の炭化水素(例えば、イソドデカン、イソセタンなど)、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、ベンゼン、トルエン、キシレン、(オルト-、メタ-、又はパラ-)ジエチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、ナフタレン等があり、上記エステル類の例としては、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸i-ペンチル、酢酸n-ヘキシル、酢酸n-ヘプチル、酢酸n-オクチル、ぎ酸n-ペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸i-プロピル、酪酸n-ブチル、n-オクタン酸メチル、デカン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル、アジピン酸ジメチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル等があり、上記エーテル類の例としては、ジ-n-プロピルエーテル、エチル-n-ブチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、エチル-n-アミルエーテル、ジ-n-アミルエーテル、エチル-n-ヘキシルエーテル、ジ-n-ヘキシルエーテル、ジ-n-オクチルエーテル、並びにそれらの炭素数に対応するジイソプロピルエーテル、ジイソアミルエーテルなどの分岐状の炭化水素基を有するエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルパーフルオロプロピルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロヘキシルエーテル、エチルパーフルオロヘキシルエーテル等があり、上記ケトン類の例としては、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、シクロヘキサノン、イソホロン等があり、上記含ハロゲン溶媒の例としては、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロシクロペンタン、パーフルオロシクロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼン等のパーフルオロカーボン、1、1、1、3、3-ペンタフルオロブタン、オクタフルオロシクロペンタン、2,3-ジハイドロデカフルオロペンタン、ゼオローラH(日本ゼオン製)等のハイドロフルオロカーボン、メチルパーフルオロイソブチルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロイソブチルエーテル、アサヒクリンAE-3000(旭硝子製)、Novec7100、Novec7200、Novec7300、Novec7600(いずれも3M製)等のハイドロフルオロエーテル、テトラクロロメタンなどのクロロカーボン、クロロホルム等のハイドロクロロカーボン、ジクロロジフルオロメタン等のクロロフルオロカーボン、1,1-ジクロロ-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン等のハイドロクロロフルオロカーボン、パーフルオロエーテル、パーフルオロポリエーテル等があり、上記スルホキシド系溶媒の例としては、ジメチルスルホキシド等があり、上記スルホン系溶媒の例としては、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2-ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホン等があり、上記ラクトン系溶媒の例としては、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ヘキサノラクトン、γ-ヘプタノラクトン、γ-オクタノラクトン、γ-ノナノラクトン、γ-デカノラクトン、γ-ウンデカノラクトン、γ-ドデカノラクトン、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサノラクトン、δ-オクタノラクトン、δ-ノナノラクトン、δ-デカノラクトン、δ-ウンデカノラクトン、δ-ドデカノラクトン、ε-ヘキサノラクトン等があり、上記カーボネート系溶媒の例としては、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート等があり、上記多価アルコールの誘導体のうちOH基を持たないものの例としては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールジアセテート、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラプロピレングリコールジアセテート、ブチレングリコールジメチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールジアセテート、グリセリントリアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート等があり、上記N-H基を持たない窒素元素含有溶媒の例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジイソプロピル-2-イミダゾリジノン、トリエチルアミン、ピリジン等があり、シリコーン溶媒の例としては、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン等があり、テルペン系溶媒の例としては、p-メンタン、ジフェニルメンタン、リモネン、テルピネン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン等があり、上記チオール類の例としては、1-ヘキサンチオール、2-メチル-1-ペンタンチオール、3-メチル-1-ペンタンチオール、4-メチル-1-ペンタンチオール、2,2-ジメチル-1-ブタンチオール、3,3-ジメチル-1-ブタンチオール、2-エチル-1-ブタンチオール、1-ヘプタンチオール、ベンジルチオール、1-オクタンチオール、2-エチル-1-ヘキサンチオール、1-ノナンチオール、1-デカンチオール、1-ウンデカンチオール、1-ドデカンチオール、1-トリデカンチオール等がある。
【0058】
また、上記有機溶媒は、上記(I)及び(II)の溶解性の観点から、多価アルコールの誘導体のうちOH基を持たないものが好ましい。上記多価アルコールの誘導体のうちOH基を持たないものの具体例としては、上述の列挙化合物等が挙げられ、その中でも、環境負荷が小さいという観点から、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートが好ましく、特にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
【0059】
本発明の表面処理剤は、安定性をさらに高めるために、重合禁止剤や連鎖移動剤、酸化防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0060】
また、上記表面処理剤の出発原料中の水分の総量が、該原料の総量に対し2000質量ppm以下であることが好ましい。水分量の総量が2000質量ppm超の場合、上記ケイ素化合物や(II)成分の効果が低下し、上記保護膜を短時間で形成しにくくなる。このため、上記表面処理剤の原料中の水分量の総量は少ないほど好ましく、特に500質量ppm以下、さらには200質量ppm以下が好ましい。さらに、水の存在量が多いと、上記表面処理剤の保管安定性が低下しやすいため、水分量は少ない方が好ましく、100質量ppm以下、さらには50質量ppm以下が好ましい。なお、上記水分量は少ないほど好ましいが上記の含有量範囲内であれば、上記表面処理剤の原料中の水分量は0.1質量ppm以上であってもよい。従って、上記表面処理剤に含まれるケイ素化合物、(II)成分、有機溶媒は水を多く含有しないものであることが好ましい。
【0061】
また、上記表面処理剤中の液相での光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定における0.2μmより大きい粒子の数が該表面処理剤1mL当たり100個以下であることが好ましい。上記0.2μmより大きい粒子の数が該表面処理剤1mL当たり100個超であると、パーティクルにより、被処理体にダメージを誘発する恐れがありデバイスの歩留まり低下及び信頼性の低下を引き起こす原因となるため好ましくない。また、0.2μmより大きい粒子の数が該表面処理剤1mL当たり100個以下であれば、上記保護膜を形成した後の、溶媒や水による洗浄を省略又は低減できるため好ましい。なお、上記0.2μmより大きい粒子の数は少ないほど好ましいが上記の含有量範囲内であれば該表面処理剤1mL当たり1個以上あってもよい。なお、本発明における表面処理剤中の液相でのパーティクル測定は、レーザを光源とした光散乱式液中粒子測定方式における市販の測定装置を利用して測定するものであり、パーティクルの粒径とは、PSL(ポリスチレン製ラテックス)標準粒子基準の光散乱相当径を意味する。
【0062】
ここで、上記パーティクルとは、原料に不純物として含まれる塵、埃、有機固形物、無機固形物などの粒子や、表面処理剤の調製中に汚染物として持ち込まれる塵、埃、有機固形物、無機固形物などの粒子などであり、最終的に表面処理剤中で溶解せずに粒子として存在するものが該当する。
【0063】
また、上記表面処理剤中のNa、Mg、K、Ca、Mn、Fe、Cu、Li、Al、Cr、Ni、Zn及びAgの各元素(金属不純物)の含有量が、該表面処理剤総量に対し各0.1質量ppb以下であることが好ましい。上記金属不純物含有量が、該表面処理剤総量に対し0.1質量ppb超であると、デバイスの接合リーク電流を増大させる恐れがありデバイスの歩留まりの低下及び信頼性の低下を引き起こす原因となるため好ましくない。また、上記金属不純物含有量が、該表面処理剤総量に対し各0.1質量ppb以下であると、上記保護膜を被処理体表面に形成した後の、溶媒や水による該被処理体表面(保護膜表面)の洗浄を省略又は低減できるため好ましい。このため、上記金属不純物含有量は少ないほど好ましいが、上記の含有量範囲内であれば該表面処理剤の総量に対して、各元素につき、0.001質量ppb以上であってもよい。
【0064】
2.表面処理体の製造方法について
本発明の表面処理体の製造方法は、被処理体の表面に上記本発明の表面処理剤を接触させ、当該被処理体の表面を処理するものである。
【0065】
本発明の表面処理方法における処理対象である基板の表面とは、基板自体の表面のほか、基板上に設けられた無機パターン及び樹脂パターンの表面、並びにパターン化されていない無機層及び有機層の表面を意味する。
【0066】
本発明の表面処理体の製造方法は、被処理体の表面をシリル化処理することにより表面処理体を得るものであり、その処理の目的はいかなるものであってもよいが、その処理の目的の代表的な例として、(1)基板等の被処理体の表面を疎水化し、例えばフォトレジスト等からなる樹脂パターン等に対する密着性を向上させること、(2)基板である被処理体の表面の洗浄中に、基板の表面の無機パターンや樹脂パターンのパターン倒れを防止することが挙げられる。
【0067】
上記(1)について、被処理体の表面に上記本発明の表面処理剤を接触する方法としては、従来公知の方法を特に制限なく使用することができ、例えば、上記本発明の表面処理剤を気化させて蒸気とし、その蒸気を被処理体の表面に接触させる方法、上記本発明の表面処理剤をスピンコート法や浸漬法等により被処理体の表面に接触させる方法等が挙げられる。
フォトレジストの膜である有機層の形成に使用される基板が被処理体である場合、表面処理剤の接触は有機層の形成前に行うのがよい。
このような操作により、被処理体の表面がシリル化されて、被処理体の表面の疎水性が向上する。被処理体が基板であり表面処理剤により処理された基板を用いる場合、基板表面が疎水化されることにより、例えばフォトレジスト等に対する基板の密着性が向上する。
【0068】
上記(2)については、無機パターンや樹脂パターンを形成した後の洗浄操作を行う前に、被処理体である基板の表面に対して上記本発明の表面処理剤を接触させてもよい。
【0069】
通常、基板の表面に無機パターンを形成した後には、SPM(硫酸・過酸化水素水)やAPM(アンモニア・過酸化水素水)等の水系洗浄液により、パターンの表面を洗浄するのが一般的である。また、該洗浄後に基板表面に保持された水系洗浄液を該水系洗浄液とは異なる洗浄液(以降、「洗浄液A」と記載する)に置換してさらに洗浄してもよい。上記洗浄液Aとは、有機溶媒、該有機溶媒と水系洗浄液の混合物、それらに酸、アルカリ、界面活性剤のうち少なくとも1種が混合された洗浄液を示す。
また、基板の表面に樹脂パターンを形成した後にも、水や活性剤リンス等の洗浄液により現像残渣や付着現像液を洗浄除去するのが一般的である。
【0070】
上記基板表面に、液体状態の上記表面処理剤や洗浄液を保持できる洗浄装置を用いるのであれば、該基板の洗浄(表面処理)方式は特に限定されない。例えば、基板をほぼ水平に保持して回転させながら回転中心付近に液体を供給して基板を1枚ずつ洗浄するスピン洗浄装置を用いる洗浄方法に代表される枚葉方式や、洗浄槽内で複数枚の基板を浸漬し洗浄する洗浄装置を用いるバッチ方式が挙げられる。なお、基板表面に液体状態の上記表面処理剤や洗浄液を供給するときの該表面処理剤や洗浄液の形態としては、該基板表面に保持された時に液体になるものであれば特に限定されず、たとえば、液体、蒸気などがある。
【0071】
上記洗浄液Aの好ましい例の一つである有機溶媒の例としては、炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類、含ハロゲン溶媒、スルホキシド系溶媒、ラクトン系溶媒、カーボネート系溶媒、アルコール類、多価アルコールの誘導体、窒素元素含有溶媒等が挙げられる。
【0072】
本発明の液体状態の表面処理剤は、上記の水系洗浄液や洗浄液Aを該表面処理剤に置換して使用される。また、上記の置換した表面処理剤は、該表面処理剤とは異なる洗浄液(以降、「洗浄液B」と記載する)に置換されてもよい。
【0073】
上記のように水系洗浄液や洗浄液Aでの洗浄の後に、該洗浄液を液体状態の表面処理剤に置換し、基板に該表面処理剤が保持されている間に、該基板表面に上記保護膜が形成される。本発明の保護膜は、必ずしも連続的に形成されていなくてもよく、また、必ずしも均一に形成されていなくてもよいが、より優れた撥水性を付与できるため、連続的に、また、均一に形成されていることがより好ましい。
なお、基板に表面処理剤を保持させる時間は1~120秒間が好ましい。
【0074】
表面処理剤は、温度を高くすると、より短時間で上記保護膜を形成しやすくなる。均質な保護膜を形成しやすい温度は、10℃以上、該表面処理剤の沸点未満であり、特には15℃以上、該表面処理剤の沸点よりも10℃低い温度以下で保持されることが好ましい。上記表面処理剤の温度は、基板に保持されているときも当該温度に保持されることが好ましい。なお、該表面処理剤の沸点は該表面処理剤に含まれる成分のうち、質量比で最も量の多い成分の沸点を意味する。
【0075】
上記のように保護膜を形成した後で、基板表面に残った液体状態の上記表面処理剤を、洗浄液Bに置換した後に、乾燥工程に移ってもよい。該洗浄液Bの例としては、水系洗浄液、有機溶媒、水系洗浄液と有機溶媒の混合物、又は、それらに酸、アルカリ、界面活性剤のうち少なくとも1種が混合されたもの、並びに、それらと表面処理剤の混合物等が挙げられる。上記洗浄液Bは、パーティクルや金属不純物の除去の観点から、水、有機溶媒、又は水と有機溶媒の混合物がより好ましい。
【0076】
上記洗浄液Bの好ましい例の一つである有機溶媒の例としては、炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類、含ハロゲン溶媒、スルホキシド系溶媒、アルコール類、多価アルコールの誘導体、窒素元素含有溶媒等が挙げられる。
【0077】
また、本発明の表面処理剤により基板表面に形成された保護膜は、上記洗浄液Bとして有機溶媒を用いると、該洗浄液Bの洗浄によって撥水性が低下しにくい場合がある。
【0078】
基板表面に上記保護膜が形成されることによって撥水化されている。そして、該保護膜は、液体が基板表面から除去されるときも基板表面に保持される。
【0079】
基板表面に上記保護膜が形成されたとき、該表面に水が保持されたと仮定したときの接触角が85~130°であると、フォトレジスト等からなる樹脂パターン等に対する密着性の観点や、パターン倒れが発生し難い観点から好ましく、90~130°となることがより好ましい。
【0080】
次に、上記表面処理剤により保護膜が形成された基板表面に保持された液体を、乾燥により該基板表面から除去する。このとき、基板表面に保持されている液体は、上記表面処理剤、上記洗浄液B、又は、それらの混合液でも良い。上記混合液は、表面処理剤と洗浄液Bを混合したものや、表面処理剤に含まれる各成分が該表面処理剤よりも低濃度になるように含有されたものであり、該混合液は、上記表面処理剤を洗浄液Bに置換する途中の状態の液でも良いし、あらかじめ上記(I)~(III)を洗浄液Bに混合して得た混合液でも良い。基板表面の清浄度の観点からは、水、有機溶媒、又は、水と有機溶媒の混合物が好ましい。また、上記基板表面から液体が一旦除去された後で、上記基板表面に洗浄液Bを保持させて、その後、乾燥しても良い。
【0081】
なお、保護膜形成後に洗浄液Bで洗浄する場合、該洗浄の時間、すなわち洗浄液Bが保持される時間は、上記基板表面のパーティクルや不純物の除去の観点から、1~60秒間行うことが好ましい。上記基板表面に形成された保護膜の撥水性能の維持効果の観点から、洗浄液Bとして有機溶媒を用いると、該洗浄を行っても基板表面の撥水性を維持し易い傾向がある。
【0082】
上記乾燥によって、基板表面に保持された液体が除去される。当該乾燥は、スピン乾燥法、IPA(2-プロパノール)蒸気乾燥、マランゴニ乾燥、加熱乾燥、温風乾燥、送風乾燥、真空乾燥などの周知の乾燥方法によって行うことが好ましい。
【0083】
上記乾燥の後で、さらに保護膜を除去してもよい。撥水性保護膜を除去する場合、該撥水性保護膜中のC-C結合、C-F結合を切断することが有効である。その方法としては、上記結合を切断できるものであれば特に限定されないが、例えば、基板表面を光照射すること、基板を加熱すること、基板をオゾン曝露すること、基板表面にプラズマ照射すること、基板表面にコロナ放電すること等が挙げられる。
【0084】
光照射で保護膜を除去する場合、該保護膜中のC-C結合、C-F結合の結合エネルギーである83kcal/mol、116kcal/molに相当するエネルギーである340nm、240nmよりも短い波長を含む紫外線を照射することが好ましい。この光源としては、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、エキシマランプ、カーボンアークなどが用いられる。紫外線照射強度は、メタルハライドランプであれば、例えば、照度計(コニカミノルタセンシング製照射強度計UM-10、受光部UM-360〔ピーク感度波長:365nm、測定波長範囲:310~400nm〕)の測定値で100mW/cm以上が好ましく、200mW/cm以上が特に好ましい。なお、照射強度が100mW/cm未満では保護膜を除去するのに長時間要するようになる。また、低圧水銀ランプであれば、より短波長の紫外線を照射することになるので、照射強度が低くても短時間で保護膜を除去できるので好ましい。
【0085】
また、光照射で保護膜を除去する場合、紫外線で保護膜の構成成分を分解すると同時にオゾンを発生させ、該オゾンによって保護膜の構成成分を酸化揮発させると、処理時間が短くなるので特に好ましい。この光源として、低圧水銀ランプやエキシマランプなどが用いられる。また、光照射しながら基板を加熱してもよい。
【0086】
基板を加熱する場合、400~1000℃、好ましくは、500~900℃で基板の加熱を行うことが好ましい。この加熱時間は、10秒~60分間、好ましくは30秒~10分間の保持で行うことが好ましい。また、当該工程では、オゾン曝露、プラズマ照射、コロナ放電などを併用してもよい。また、基板を加熱しながら光照射を行ってもよい。
【0087】
加熱により保護膜を除去する方法は、基板を熱源に接触させる方法、熱処理炉などの加熱された雰囲気に基板を置く方法などがある。なお、加熱された雰囲気に基板を置く方法は、複数枚の基板を処理する場合であっても、基板表面に保護膜を除去するためのエネルギーを均質に付与しやすいことから、操作が簡便で処理が短時間で済み処理能力が高いという工業的に有利な方法である。
【0088】
基板をオゾン曝露する場合、低圧水銀灯などによる紫外線照射や高電圧による低温放電等で発生させたオゾンを基板表面に供することが好ましい。基板をオゾン曝露しながら光照射してもよいし、加熱してもよい。
【0089】
上記の光照射、加熱、オゾン曝露、プラズマ照射、コロナ放電を組み合わせることによって、効率的に基板表面の保護膜を除去することができる。
【実施例
【0090】
以下、本発明の実施形態をより具体的に開示した実験例を示す。なお、本発明はこれらの実験例のみに限定されるものではない。
【0091】
本発明では、表面処理剤の調液時における原料の溶解し易さと該表面処理剤で被処理体(以降、単に「ウェハ」とも表記する)を表面処理した際の撥水性付与効果について、評価を行った。なお、実施例及び比較例において、接触角を評価する際にウェハ表面に接触させる液体としては、水系洗浄液の代表的なものである水を用いた。
【0092】
ただし、表面に微細な凹凸パターンを有するウェハの場合、該凹凸パターン表面に形成された上記保護膜自体の接触角を正確に評価できない。
【0093】
水滴の接触角の評価は、JIS R 3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」にもあるように、サンプル(基材)表面に数μlの水滴を滴下し、水滴と基材表面のなす角度の測定によりなされる。しかし、パターンを有するウェハの場合、接触角が非常に大きくなる。これは、Wenzel効果やCassie効果が生じるからで、接触角が基材の表面形状(ラフネス)に影響され、見かけ上の水滴の接触角が増大するためである。
【0094】
そこで、実施例及び比較例では上記表面処理剤を表面が平滑なウェハに供して、ウェハ表面に保護膜を形成して、該保護膜を表面に微細な凹凸パターンが形成されたウェハの表面に形成された保護膜とみなし、種々評価を行った。なお、実施例及び比較例では、表面が平滑なウェハとして、表面が平滑なシリコンウェハ上にSiO層を有する「SiO膜付きウェハ」を用いた。
【0095】
以下に、評価方法、表面処理剤の調液、表面処理剤を用いた表面処理体の製造方法、及び評価結果を記載する。
【0096】
〔評価方法〕
(A)調液時の原料の溶解時間
液温を25℃に維持した状態で表面処理剤の原料を混合して、目視にて原料の全量が溶解するまで撹拌した時間(溶解時間)を計測した。当然ながらこの溶解時間は短いほど原料が溶け易いため好ましい。
そこで、25℃において、攪拌30秒以内で原料が溶解した場合は合格とした。なお後述の表中で、攪拌5秒超、30秒以内で原料が溶解した場合を○と表記し、攪拌5秒以内で原料が溶解した場合を「特に溶解性に優れる結果」として◎と表記した。
一方、攪拌を継続すれば原料が溶解するものの撹拌に30秒超要する場合を△と表記し、攪拌を1時間超継続しても原料の全量が溶解できない場合を×と表記して、いずれも不合格とした。
【0097】
(B)ウェハ表面に形成された保護膜の接触角評価(撥水性付与効果の評価)
保護膜が形成されたウェハ表面上に純水約2μlを置き、水滴とウェハ表面とのなす角(接触角)を接触角計(協和界面科学製:CA-X型)で測定し、85°以上を合格とした。
【0098】
[実施例1]
(1)表面処理剤の調液
表面処理剤の原料の、
(I)N-メチル-N-トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド〔(CHSiN(CH)C(=O)CF〕(東京化成工業株式会社製、以降「MSTFA」と記載する場合がある)と、
(II)イミダゾール(東京化成工業株式会社製、以降「Im」と記載する場合がある)と、
(III)有機溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(東京化成工業株式会社製、以降「PGMEA」と記載する場合がある)とを、表1に示す含有量となるように、液温を25℃に維持しながら混合したところ、約15秒間の撹拌にて原料の全量が溶解した溶液状態の表面処理剤が得られた。
【0099】
(2)シリコンウェハの洗浄
エッチング処理によるパターン形成後の被処理体に見立てた、平滑な熱酸化膜付きシリコンウェハ(表面に厚さ1μmの熱酸化膜層を有するSiウェハ)を1質量%のフッ酸水溶液に室温で10分浸漬し、純水に室温で1分、2-プロパノール(iPA)に室温で1分浸漬した。
【0100】
(3)表面処理剤によるシリコンウェハの表面処理
上記洗浄後のシリコンウェハを、上記「(1)表面処理剤の調液」で調液した表面処理剤に室温で20秒浸漬し、iPAに室温で1分浸漬した。最後に、シリコンウェハをiPAから取出し、エアーを吹き付けて、表面のiPAを除去した。
【0101】
上記(B)に記載した要領で評価を実施したところ、表1に示すとおり、表面処理後の接触角は86°となり、良好な撥水性付与効果を示した。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
[実施例2~19、比較例1~89]
表1、2に示すように、表面処理剤の原料の(I)や(II)の種類や質量%濃度を変更して、それ以外は実施例1と同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。
なお、表中で、
「N-MeIm」はN-メチルイミダゾール(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「N-EtIm」はN-エチルイミダゾール(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「N-BuIm」はN-ブチルイミダゾール(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「DBN」は1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(東京化成工業株式会社製) を意味し、
「DBU」は1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「MTBD」は7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「TMS-Im」はN-トリメチルシリルイミダゾール(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「TMS-TFA」はトリメチルシリルトリフルオロアセテート〔(CHSi-OC(=O)CF〕(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「BSTFA」はN,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド〔(CHSiOC(CF)=NSi(CH〕(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「Tet」は1H-テトラゾール(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「5-MeTet」は5-メチルテトラゾール(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「Tri」は1,2,4-トリアゾール(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「BzoTri」は1,2,3-ベンゾトリアゾール(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「Pyr」はピラゾール(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「2-MeIm」は2-メチルイミダゾール(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「4-MeIm」は4-メチルイミダゾール(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「TFAcIm」は1-(トリフルオロアセチル)イミダゾール(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「3-Mer-1,2,4-Tri」は3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「5-MeBzoTri」は5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「5-AminoTet」は5-アミノ-1H-テトラゾール(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「Tet-1-AcOH」は1H-テトラゾール-1-酢酸(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「Tet-5-AcOH」は1H-テトラゾール-5-酢酸(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「5-Mer-1-MeTet」は5-メルカプト-1-メチルテトラゾール(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「5-BnTet」は5-ベンジル-1H-テトラゾール(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「5-PhTet」は5-フェニルテトラゾール(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「5-pTolTet」は5-(p-トリル)-1H-テトラゾール(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「5-Mer-1-PhTet」は5-メルカプト-1-フェニル-1H-テトラゾール(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「5-MeThiTet」は5-(メチルチオ)-1H-テトラゾール(Sigma-Aldrich社製)を意味し、
「Sac」はo-スルホンベンズイミド(サッカリン)(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「iOx」はイソオキサゾール(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「TMS-DMA」はN-(トリメチルシリル)ジメチルアミン(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「HMDS」は1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(東京化成工業株式会社製)を意味し、
「TDACP」は2,2,5,5-テトラメチル-2,5-ジシラ-1-アザシクロペンタン(Gelest社製)を意味し、
「HMCTS」は2,2,4,4,6,6-ヘキサメチルシクロトリシラザン(東京化成工業株式会社製)を意味する。
【0105】
実施例1~19では、表面処理剤の調液時の溶解時間がいずれも30秒以内と短く、得られた表面処理剤を用いると、被処理体(ウェハ)表面に優れた撥水性を付与することができた。
【0106】
これに対し、本発明の表面処理剤とは(II)成分が異なる比較例1~63に係る組成では、原料を混合後30秒超攪拌を継続しないと不溶解成分が溶解しない(比較例1,2,4,6,7,9,10,12~16,18~20,22,23,25,27,28,30,31,33,35~37,39~41,43~46,48,49,52,54,56~58,60~62)、または、原料を混合後1時間撹拌を継続した後も溶け残った不溶解成分が目視で確認され(比較例3,11,17,24,32,34,38,51,53,55,59)、あるいは、溶解時間は30秒以内と短いものの撥水性付与効果が劣る結果(比較例5,8,21,26,29,42,47,50,63)であり、本発明の表面処理剤よりも劣るものであった。
【0107】
また、本発明の表面処理剤とは(I)成分が異なる比較例64~68に係る組成(それぞれ、特開2017-063179号公報の実施例1~9,22,23の表面処理剤に対応する組成)では、溶解時間は30秒以内と短いものの撥水性付与効果が劣る結果(比較例64~68)であり、本発明の表面処理剤よりも劣るものであった。
【0108】
また、本発明の表面処理剤とは(I)成分及び(II)成分がともに異なる比較例69~89に係る組成(それぞれ、特開2017-063179号公報の実施例15,16,19~21,34,35,38~51の表面処理剤に対応する組成)では、原料を混合後30秒超攪拌を継続しないと溶解しない(比較例72,73,75,77,78,83)、原料を混合後1時間撹拌を継続した後も溶け残った不溶解成分が目視で確認され(比較例69~71,74,79~82,84~88)、あるいは、溶解時間は短いものの撥水性付与効果が劣る結果(比較例76,89)であり、本発明の表面処理剤よりも劣るものであった。
【0109】
なお、(II)として25℃1気圧で液体状態であるN-MeIm、N-EtIm、N-BuIm、DBN、DBU、MTBD、TMS-Imを用いた実施例2~8(実施例10~16)に係る表面処理剤は、(II)として25℃1気圧で固体状態であるImを用いた実施例1(実施例9)に係る表面処理剤に比べて溶解時間が5秒以内と非常に短く、原料の溶解時間の短縮の観点でより優れたものであった。また、撥水性付与効果の観点から、(II)としてDBN、DBU、MTBD、N-MeIm、N-EtIm、及び、N-BuImからなる群から選択される少なくとも1つを用いることが好ましく(実施例2~7、13~15)、特に、(II)としてDBN、DBU、及び、MTBDからなる群から選択される少なくとも1つを用いることがより好ましいことが確認された(実施例5~7、13~15)。
また、上記(I)としてBSTFAを用い、上記(II)としてDBNや、DBUや、MTBDを用いた、実施例17~19は、撥水性付与効果、及び、原料の溶解時間の短縮の観点でより優れたものであった。
【0110】
[実施例A-1]
(1)表面処理剤の調液
表面処理剤の原料の、
(I)ケイ素化合物(I-1)のN-トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド(Karl Bucher社製)〔(CHSiN(H)C(=O)CF〕(以降「TMS-TFAcA」と記載する場合がある)、及び、ケイ素化合物(I-2)のTMS-TFAと、
(II)Imと、
(III)PGMEAとを、表3に示す含有量となるように、液温を25℃に維持しながら混合したところ、約15秒間の撹拌にて原料の全量が溶解した溶液状態の表面処理剤が得られた。
【0111】
(2)表面処理後の接触角維持率の評価
上記表面処理剤を用いて、実施例1と同様にシリコンウェハの洗浄及び表面処理を行い、上記(B)に記載した要領で評価を実施したところ、表3に示すとおり、表面処理後の接触角は88°となり、良好な撥水性付与効果を示した。この表面処理後の接触角評価を、水添加なし(水添加量0.00質量%)の場合の基準接触角とした。
次いで、上記表面処理剤に、それぞれ、表面処理剤の総量に対して0.01質量%、0.02質量%の水を添加し、25℃で1分間撹拌した後の表面処理剤を用いて、上記と同様にシリコンウェハの表面処理を行い、さらに表面処理後の接触角評価を行った。それぞれの接触角を、上記基準接触角を100とした場合の相対値(表面処理後の接触角維持率)として表3及び図1に示す。
【0112】
【表3】
【0113】
[実施例A-2]
(1)表面処理剤の調液
(I)の原料として、HMDS、及び、無水トリフルオロ酢酸〔CFC(=O)-O-C(=O)CF〕(東京化成工業株式会社製、以降「TFAA」と記載する場合がある)と、
(II)Imと、
(III)PGMEAとを、液温を25℃に維持しながら混合し、
HMDSとTFAAが下記反応式に示すように反応し、ケイ素化合物(I-1)としてTMS-TFAcAを、上記ケイ素化合物(I-2)としてTMS-TFAを生成することで、
(I)ケイ素化合物(I-1)のTMS-TFAcA、及び、ケイ素化合物(I-2)のTMS-TFAと、
(II)Imと、
(III)PGMEAとを、表3に示す含有量含む表面処理剤を得た。
なお、約15秒間の撹拌にて原料の全量が溶解した溶液状態の表面処理剤が得られた。
(CH3)3Si-N(H)-Si(CH3)3 + CF3C(=O)-O-C(=O)CF3
→ (CH3)3SiN(H)C(=O)CF3+ (CH3)3SiOC(=O)CF3
【0114】
(2)表面処理後の接触角維持率の評価
実施例A-1と同様の手順で表面処理後の接触角維持率を評価した。結果を表3及び図1に示す。
【0115】
また、参考として、(I)としてTMS-TFAのみを用いた、すなわちケイ素化合物(I-1)とケイ素化合物(I-2)を併用しない組成である、実施例9に係る表面処理剤を用いて、実施例A-1と同様の手順で表面処理後の接触角維持率の評価を行った。結果を表3及び図1に示す。
【0116】
上記の結果から明らかなように、本発明の表面処理剤が、上記(I)として、
上記一般式[1]のaが3で、Rが水素元素で、Rが炭素数1~6の含フッ素アルキル基である少なくとも1種のケイ素化合物(I-1)と、
上記一般式[2]のcが3で、Rが炭素数1~6の含フッ素アルキル基である少なくとも1種のケイ素化合物(I-2)とを含有するものであると、
当該表面処理剤に水が混入した場合であっても、被処理体表面に対する撥水性付与効果を安定的に維持しやすいため好ましい。
【0117】
[実施例A-3、A-4、10]
(II)としてN-MeImを用いた以外は上記の実施例A-1、A-2と同様に、表面処理剤の調液を行い、表面処理後の接触角維持率の評価を行った。
また、参考として、(I)としてTMS-TFAのみを用いた、すなわちケイ素化合物(I-1)とケイ素化合物(I-2)を併用しない組成である、実施例10に係る表面処理剤を用いて、実施例A-1と同様の手順で表面処理後の接触角維持率の評価を行った。結果を表3及び図2に示す。
【0118】
[実施例A-5、A-6、13]
(II)としてDBNを用いた以外は上記の実施例A-1、A-2と同様に、表面処理剤の調液を行い、表面処理後の接触角維持率の評価を行った。
また、参考として、(I)としてTMS-TFAのみを用いた、すなわちケイ素化合物(I-1)とケイ素化合物(I-2)を併用しない組成である、実施例13に係る表面処理剤を用いて、実施例A-1と同様の手順で表面処理後の接触角維持率の評価を行った。結果を表3及び図3に示す。
【0119】
上記の結果から明らかなように、(II)の種類を変えた場合であっても、
本発明の表面処理剤が、上記(I)として、
上記一般式[1]のaが3で、Rが水素元素で、Rが炭素数1~6の含フッ素アルキル基である少なくとも1種のケイ素化合物(I-1)と、
上記一般式[2]のcが3で、Rが炭素数1~6の含フッ素アルキル基である少なくとも1種のケイ素化合物(I-2)とを含有するものであると、
当該表面処理剤に水が混入した場合であっても、被処理体表面に対する撥水性付与効果を安定的に維持しやすいため好ましい。
【0120】
[実施例2-1、2-2]
表4に示すように、(I)~(III)の総量に対する(II)の濃度をそれぞれ15.0mmol/100g、97.4mmol/100gに変更して、それ以外は実施例2と同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表4及び図4に示す。
【0121】
【表4】
【0122】
[実施例5-1、5-2]
表4に示すように、(I)~(III)の総量に対する(II)の濃度をそれぞれ15.0mmol/100g、97.4mmol/100gに変更して、それ以外は実施例5と同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表4及び図4に示す。
【0123】
[比較例6-1、6-2]
表4に示すように、(I)~(III)の総量に対する(II)の濃度をそれぞれ15.0mmol/100g、97.4mmol/100gに変更して、それ以外は比較例6と同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表4及び図4に示す。
【0124】
[比較例7-1、7-2]
表4に示すように、(I)~(III)の総量に対する(II)の濃度をそれぞれ15.0mmol/100g、97.4mmol/100gに変更して、それ以外は比較例7と同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表4及び図4に示す。
【0125】
(II)としてN-MeImを用いた実施例2、2-1、2-2においては、(I)~(III)の総量に対する(II)の濃度が、2.4mmol/100g、15.0mmol/100g、97.4mmol/100gと増大するにつれて接触角が、94°、97°、99°と向上する傾向を示した。またこのような(II)の濃度の増大に関係なく溶解時間はいずれも◎と良好な結果であった。なお、図4中でそれぞれのプロットの付近に括弧書きで溶解時間の結果を記している。
【0126】
同様に、(II)としてDBNを用いた実施例5、5-1、5-2においては、(I)~(III)の総量に対する(II)の濃度が、2.4mmol/100g、15.0mmol/100g、97.4mmol/100gと増大するにつれて接触角が、93°、96°、98°と向上する傾向を示した。またこのような(II)の濃度の増大に関係なく溶解時間はいずれも◎と良好な結果であった。
【0127】
一方、(II)として2-MeImを用いた比較例6、6-1、6-2においては、(I)~(III)の総量に対する(II)の濃度が、2.4mmol/100g、15.0mmol/100g、97.4mmol/100gと増大するにつれて接触角が、72°、79°、78°と向上する傾向を示すものの、溶解時間はそれぞれ、△、△、×と(II)の濃度の増大に伴って悪化する傾向であった。
【0128】
(II)として4-MeImを用いた比較例7、7-1、7-2においても、(I)~(III)の総量に対する(II)の濃度が、2.4mmol/100g、15.0mmol/100g、97.4mmol/100gと増大するにつれて接触角が、85°、89°、84°とやや向上する傾向を示すものの、溶解時間はそれぞれ、△(溶解時間:約3分間)、△(溶解時間:約10分間)、△(溶解時間:約30分間)と(II)の濃度の増大に伴って悪化する傾向であった。
【0129】
以上の結果から、本発明の表面処理剤は、(I)~(III)の総量に対する(II)の濃度が広い範囲にわたって、優れた撥水性付与効果を発揮できるとともに、調液時に原料を短時間で溶解できることが確認された。よって、本発明の表面処理剤においては、(II)の濃度を自由に選択することができ、特に、反応促進効果(ひいては撥水性付与効果)から0.05質量%以上、被処理体表面などを浸食し難く、不純物として被処理体表面に残留し難い観点から10.0質量%以下という好適な範囲を選択することができる。
一方で、本発明の成分(II)に該当しない含窒素複素環化合物を用いると、溶解性が劣り、当該含窒素複素環化合物の濃度が増大するほど溶解性が悪化することが確認された。
【0130】
[実施例2D、2D-1、2D-2]
表5に示すように、有機溶媒をn-デカン/TPGDME-43に変更した以外は、それぞれ実施例2、2-1、2-2と同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表5及び図5に示す。ここで、n-デカン/TPGDME-43は、(I)~(III)の総量に対するトリプロピレングリコールジメチルエーテル(東京化成工業株式会社製、「TPGDME」と記載する場合がある)の濃度が43質量%である、n-デカン(東京化成工業株式会社製)とTPGDMEの混合溶媒を意味する。
【0131】
【表5】
【0132】
[実施例5D、5D-1、5D-2]
表5に示すように、有機溶媒をn-デカン/TPGDME-43に変更した以外は、それぞれ実施例5、5-1、5-2と同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表5及び図5に示す。
【0133】
[比較例6D、6D-1、6D-2]
表5に示すように、有機溶媒をn-デカン/TPGDME-43に変更した以外は、それぞれ比較例6、6-1、6-2と同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表5及び図5に示す。
【0134】
[比較例7D、7D-1、7D-2]
表5に示すように、有機溶媒をn-デカン/TPGDME-43に変更した以外は、それぞれ比較例7、7-1、7-2と同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表5及び図5に示す。
【0135】
(II)としてN-MeImを用いた実施例2D、2D-1、2D-2においては、(I)~(III)の総量に対する(II)の濃度が、2.4mmol/100g、15.0mmol/100g、97.4mmol/100gと増大するにつれて接触角が、94°、95°、96°と向上する傾向を示した。またこのような(II)の濃度の増大に関係なく溶解時間はいずれも◎と良好な結果であった。なお、図5中でそれぞれのプロットの付近に括弧書きで溶解時間の結果を記している。
【0136】
(II)としてDBNを用いた実施例5D、5D-1、5D-2においては、(I)~(III)の総量に対する(II)の濃度が、2.4mmol/100g、15.0mmol/100g、97.4mmol/100gと増大するにつれて接触角が、93°、94°、95°と向上する傾向を示した。またこのような(II)の濃度の増大に関係なく溶解時間はいずれも◎と良好な結果であった。
【0137】
一方、(II)として2-MeImを用いた比較例6D、6D-1、6D-2においては、(I)~(III)の総量に対する(II)の濃度が、2.4mmol/100g、15.0mmol/100g、97.4mmol/100gと増大するにつれて接触角が、75°、79°、83°と向上する傾向を示すものの、溶解時間はそれぞれ、△、×、×と(II)の濃度の増大に伴って悪化する傾向であった。
【0138】
(II)として4-MeImを用いた比較例7D、7D-1、7D-2においても、(I)~(III)の総量に対する(II)の濃度が、2.4mmol/100g、15.0mmol/100g、97.4mmol/100gと増大するにつれて接触角が、82°、84°、87°と向上する傾向を示すものの、溶解時間はそれぞれ、△(溶解時間:約5分間)、△(溶解時間:約15分間)、△(溶解時間:約50分間)と(II)の濃度の増大に伴って悪化する傾向であった。
なお、有機溶媒としてPGMEAを用いた前述の比較例7、7-1、7-2の場合に比べて、有機溶媒として非極性溶媒のn-デカンを含む「デカン/TPGDME-43」を用いた比較例7D、7D-1、7D-2の場合は、いずれも溶解時間がより長いことがわかる。このことから、上記(I)及び(II)の溶解性の観点からは、上記有機溶媒としては非極性溶媒の含有量が少ないものほど好ましいと言える。上記の傾向は、他の実施例、比較例においても確認された。
【0139】
本発明の成分(II)に該当しない含窒素複素環化合物を用いると、有機溶媒として非極性溶媒であるn-デカンを含む「デカン/TPGDME-43」を用いた場合も、溶解性が劣り、当該含窒素複素環化合物の濃度が増大するほど溶解性が悪化することが確認された。また、表4と表5との比較、及び図4図5との比較から、有機溶媒を極性溶媒のPGMEAから非極性溶媒のn-デカンを含む「デカン/TPGDME-43」に変えると溶解性がより悪化する傾向が確認された。
【0140】
一方、本発明の表面処理剤は、有機溶媒として非極性溶媒であるn-デカンを含む「デカン/TPGDME-43」を用いた場合であっても、(I)~(III)の総量に対する(II)の濃度が広い範囲にわたって、優れた撥水性付与効果を発揮できるとともに、調液時に原料を短時間で溶解できることが確認された。よって、本発明の表面処理剤においては、(II)の濃度を自由に選択することができ、特に、反応促進効果(ひいては撥水性付与効果)から0.05質量%以上、被処理体表面などを浸食し難く、不純物として被処理体表面に残留し難い観点から10.0質量%以下という好適な範囲を選択することができる。
以上のことから、本発明の表面処理剤は、有機溶媒の極性に大きく依存せず、優れた撥水性付与効果を発揮できるとともに、調液時に原料を短時間で溶解できるものである。
図1
図2
図3
図4
図5