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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】攪拌型調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 43/046 20060101AFI20221207BHJP
【FI】
A47J43/046
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019003105
(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公開番号】P2020110325
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】小林 美緒
(72)【発明者】
【氏名】舩橋 昂広
【審査官】松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-109785(JP,U)
【文献】特開2001-271796(JP,A)
【文献】実開昭50-59381(JP,U)
【文献】実公昭46-15386(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0263419(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 42/00 - 44/02
H02K 9/00 - 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器内の内容物の攪拌を駆動するモータと、
前記モータを収容する第1のケースと
を備え、
前記モータは、
前記第1のケース内の第1側面側に配置されている第1巻線部と、
前記第1のケース内の前記第1側面側に対向する第2側面側に配置されている第2巻線部と、
前記第1巻線部と前記第2巻線部との間に配置されている回転部と
を有し、
前記第1のケースには、前記モータの作動時に前記第2巻線部よりも温度の低くなる前記第1巻線部側に、前記モータ周辺の空気を排出する第1排出口が設けられている、攪拌型調理器。
【請求項2】
前記第1のケースを外側から覆っている第2のケースをさらに備え、
前記第1のケースと前記第2のケースとの間に形成される空間には、前記第1排出口から排出される空気の流れの下流側に、前記空気の流入を遮断して前記空気の流れる方向を変える第1壁部が設けられている、
請求項1に記載の攪拌型調理器。
【請求項3】
前記第2のケースには、前記第1壁部によって流れの方向が変更された空気が排出される第2排出口が設けられている、請求項2に記載の攪拌型調理器。
【請求項4】
前記第2のケースの外周には、前記第2排出口から排出される空気の流れの下流側に、前記空気の流入を遮断して前記空気の流れる方向を変える第2壁部が設けられている、請求項3に記載の攪拌型調理器。
【請求項5】
前記第2壁部の少なくとの一つは、側面視において、前記第1壁部と対応する位置に形成されており、
前記第1壁部と対応する位置に形成されている前記第2壁部を間に挟んで前記第2排出口とは反対側には、第3排出口が形成されており、
前記第3排出口の開口面積は、前記第2排出口の開口面積よりも小さい、
請求項4に記載の攪拌型調理器。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌型調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
ミキサー、フードプロセッサーなどの攪拌型調理器は、野菜や果物などを用いてジュースやスープを作ったり、野菜、果物、食肉などの食品を粉砕混合したりするのに好適に用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、回転駆動手段としてのモータMを備えたミキサー本体1と、カップ台2と、ミキサーカップ3と、蓋体4とから構成されているミキサーが開示されている。ミキサー本体1は、底部側の径が大きく、上部側の径が小さい、円錐台形状の合成樹脂製ケーシング内の中央部にモータMを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-135730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような攪拌型調理器において、使用時の動作音をできるだけ小さくすることへの要求が高まっている。そこで、攪拌型調理器の本体部に収容されたモータの動作音ができるだけ外部に漏れないようにするために、モータを複数のケースで覆うことが検討されている。しかし、モータを複数のケースで覆うと、モータの動作時に発生する熱を外部に逃がすことが難しくなる。モータからの排熱がケース内に留まると、ケース内の温度が上昇し、モータを含む本体部内の各種部品へ悪影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
そこで、本発明では、モータを収容する本体部内の温度上昇を抑えることのできる攪拌型調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面にかかる攪拌型調理器は、容器と、前記容器内の内容物の攪拌を駆動するモータと、前記モータを収容する第1のケースとを備えている。前記モータは、前記第1のケース内の第1側面側に配置されている第1巻線部と、前記第1のケース内の前記第1側面側に対向する第2側面側に配置されている第2巻線部と、前記第1巻線部と前記第2巻線部との間に配置されている回転部とを有している。前記第1のケースには、前記モータの作動時に前記第2巻線部よりも温度の低くなる前記第1巻線部側に、前記モータ周辺の空気を排出する第1排出口が設けられている。
【0008】
上記の構成によれば、モータ周辺の空気を排出する第1排出口が、第2巻線部よりも温度の低くなる第1巻線部側に設けられていることで、より温度の高い第2巻線部周辺で空気を滞留させた後、第1巻線部側に設けられた第1排出口から空気を排出させることができる。そのため、より温度の高い第2巻線部をより効率的に冷却することができ、モータ全体の温度上昇を抑えることができる。
【0009】
上記の本発明の一局面にかかる攪拌型調理器は、前記第1のケースを外側から覆っている第2のケースをさらに備えており、前記第1のケースと前記第2のケースとの間に形成される空間には、前記第1排出口から排出される空気の流れの下流側に、前記空気の流入を遮断して前記空気の流れる方向を変える第1壁部が設けられていてもよい。
【0010】
また、上記の本発明の一局面にかかる攪拌型調理器において、前記第2のケースには、前記第1壁部によって流れの方向が変更された空気が排出される第2排出口が設けられていることが好ましい。
【0011】
上記の構成によれば、第1排出口から第2のケースへ排出された空気は、第1壁部によってその流れの方向が変更され、第2排出口へと導かれる。これにより、第1排出口から第2のケース内の空間に流入した空気をより短い経路で第2排出口から第2のケース外へ排出させることができる。したがって、モータ周辺の熱をより効率的に外部へ排出させることができる。
【0012】
上記の本発明の一局面にかかる攪拌型調理器において、前記第2のケースの外周には、前記第2排出口から排出される空気の流れの下流側に、前記空気の流入を遮断して前記空気の流れる方向を変える第2壁部が設けられていてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、第2壁によって第2排出口から排出される空気の流れを規定することができる。
【0014】
上記の本発明の一局面にかかる攪拌型調理器において、前記第2壁部の少なくとの一つは、側面視において、前記第1壁部と対応する位置に形成されており、前記第1壁部と対応する位置に形成されている前記第2壁部を間に挟んで前記第2排出口とは反対側には、第3排出口が形成されており、前記第3排出口の開口面積は、前記第2排出口の開口面積よりも小さいことが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、第1排出口から排出された空気の大部分を、より開口面積の大きな第2排出口から排出させることができる。また、第3排出口の開口面積を適宜調整することで、第3排出口から排出される空気の量を所望の量に設定することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の一局面にかかる攪拌型調理器によれば、モータ周辺の空気を効率的に外部へ排出し、モータを収容する本体部内の温度上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態にかかるミキサーの外観構成を示す斜視図である。
図2図1に示すミキサーの本体部の外観構成を示す側面図である。
図3図2に示す本体部の内部構成を示す断面図である。
図4】ミキサーの本体部内に備えられているインナーケースの外観を示す斜視図である。
図5】ミキサーの本体部の底面部分を示す平面図である。
図6】ミキサーの本体部内に備えられているインナーケースおよびモータケースを示す断面図である。
図7】ミキサーの本体部内に備えられているインナーケースの外観を示す斜視図である。
図8】ミキサーの本体部内に備えられているモータケースの外観を示す斜視図である。
図9】ミキサーの本体部内に備えられているインナーケースの外観を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0019】
本実施形態では、攪拌型調理器の一例であるミキサー1を例に挙げて説明する。但し、本発明にかかる攪拌型調理器は、ミキサーに限定されず、フードプロセッサーなどであってもよい。
【0020】
(ミキサーの全体構成)
まず、本実施の形態にかかるミキサー1の全体構成について説明する。図1には、ミキサー1の外観を示す。ミキサー1は、主として、本体部11と、カップ部(容器)12とで構成されている。本実施の形態においては、本体部11に対してカップ部12が着脱可能に構成されている。
【0021】
図2には、カップ部12が取り外された状態の本体部11の外観を示す。図3には、本体部11の内部構成を示す。図3は、図2に示す本体部11のA-A線部分の断面図である。本体部11の外面は、主に、本体カバー31、土台部32、および透明カバー33で構成されている。
【0022】
本体カバー31は、略角錐台形状を有している。本体カバー31の一側面には、操作部34が設けられている。使用者が操作部34を操作することで、ミキサー1の攪拌動作を開始させたり停止させたりすることができる。また、本実施形態では、ミキサー1は、通常運転モード(低速回転モード)とパワフル運転モード(高速回転モード)という、モータの回転速度が異なる2つのモードでの運転が可能である。使用者は、操作部34を操作することで各運転モードに設定することができる。
【0023】
土台部32は、本体カバー31の下に位置している。土台部32は、ミキサー1の底面部分を構成している。
【0024】
土台部32の一側面には、吸気口37が設けられている。吸気口37から本体部11の内部へ空気が送り込まれ、この空気によって、内部のモータ50(図3参照)が冷却される。土台部32の吸気口37が形成されている箇所には、底面カバー36が取り付けられている。また、吸気口37の形成位置には、モータ50への通電を復帰させるためのリセットボタン45が配置されている。
【0025】
また、土台部32内には、電源コード35が引き出し可能な状態で収容されている。電源コード35が土台部32の内部に収容されている状態では、図1に示すように、電源コード35の先端のプラグ部分のみが、土台部32の一端部から露出している。
【0026】
透明カバー33は、本体カバー31の上に配置されている。透明カバー33は、略円錐台形状を有している。透明カバー33の内側に、意匠性が高い金属や樹脂などのシート状部材を配置することで、ミキサー1の美観を向上させることができる。なお、別の実施態様では、透明カバー33は、設けられていなくてもよい。この場合は、本体カバー31によって本体部11の側面全体が構成される。
【0027】
透明カバー33の内側には、モータ50の駆動力をカップ部12側のカッターへ伝達するための係合部材56が配置されている(図3参照)。ミキサー1を使用する際には、カップ部12の底部を透明カバー33の内側に嵌め込み、カップ部12側の係合部材(図示せず)を、本体部11側の係合部材56と連結させる。
【0028】
カップ部12は、略円筒形状の容器である。カップ部12の本体部分は、プラスチック樹脂、ガラスなどで形成されている。カップ部12の本体部分は、透明の材料で形成されていることが好ましい。
【0029】
カップ部12の内部の底面には、カッター(図示せず)が設けられている。カッターは、カップ部12の底面を貫通するシャフトに連結されており、シャフトの回転に連動して回転する。これにより、カップ部12内の内容物を攪拌したり、粉砕したり、混合したりすることができる。シャフトは、カップ部12および本体部11にそれぞれ設けられた係合部材を介して、本体部11内のモータ50の回転軸53と接続される。
【0030】
カップ部12は、取っ手21を有している。本実施形態では、取っ手21は、片持ちタイプであって、取っ手21の上部がカップ部12の上部と一体的に繋がっている。
【0031】
カップ部12の上面には、蓋22が取り外し可能な状態で取り付けられる。
【0032】
(本体部の内部構成)
続いて、本体部11の内部の構成について説明する。
【0033】
本体部11内には、主として、モータ50、モータケース(第1のケース)61、インナーケース(第2のケース)71、およびサーキットプロテクタ(モータ保護部)40などが備えられている。
【0034】
モータ50は、カップ部12内の内容物を攪拌、粉砕などするためのカッターの回転動作を駆動する。モータ50は、ステータ51、回転軸53、およびロータ54などを有している。
【0035】
ステータ51は、モータ50の外側部分に設けられている。ステータ51には、巻線が取り付けられている。本実施形態では、パワフル運転時に通電される高速回転用巻線と、通常運転時に通電される低速回転用巻線とを有している。これにより、モータ50は、通常運転モード(低速回転モード)とパワフル運転モード(高速回転モード)という、2種類の回転速度で動作可能となっている。
【0036】
本実施形態では、回転軸53を中心として互いに対向する2つの位置に巻線が取り付けられている。これら2つの位置の巻線のうち、一方の側(図3では右側)を第1巻線部51aと呼び、他方の側(図3では左側)を第2巻線部51bと呼ぶ。
【0037】
回転軸53およびロータ54は、ステータ51の内側に設けられている。高速回転用巻線または低速回転用巻線に電流が流れると、ロータ54は、回転軸53を中心に回転する。回転軸53の上方端部には、モータ50の駆動力をカップ部12側へ伝達するための係合部材56が取り付けられている。
【0038】
モータケース61は、モータ50を収容している。モータケース61は、例えば、プラスチック樹脂で形成されている。図8には、モータケース61の外観を示す。モータケース61は、略円筒形状の容器の開口部を下方に向けた状態で土台部32に対して取り付けられている。これにより、土台部32に形成された吸気口37から本体部11内に入った空気は、図3中矢印で示すように、モータケース61内に流入し、上昇する。モータケース61内に流入した空気によって、モータケース61内のモータ50は冷却される。
【0039】
モータケース61の側面には、モータケース61内の空気を外部へ排出する第1排出口62が形成されている。第1排出口62は、モータケース61の上方であって、モータ50の設置位置に対応する箇所に形成されている。本実施形態では、第1排出口62は、第1巻線部51aが配置されている側に形成されている。これは、モータ50の作動時に第1巻線部51aの方が第2巻線部51bよりも温度が低くなるからである。
【0040】
このような第1排出口62が設けられていることで、モータ50の冷却に使用された空気をモータケース61の外部(具体的には、インナーケース71の内部)へ排出させることができる。これにより、吸気口37からモータケース61内に流入した空気を効率的に利用してモータ50の冷却を行うことができる。また、モータ50を冷却したことによって温められた空気を第1排出口62から外部へ排出させることができる。
【0041】
なお、第2巻線部51bが配置されている側のモータケース61には、開口部は形成されておらず、壁部61aとなっている。これにより、モータ50の作動時に第1巻線部51aよりも温度の高い第2巻線部51b側からは、モータケース61内の空気が外部へ排出されることなく、一旦第2巻線部51b周辺で空気が滞留する。その後、第1巻線部51a側の第1排出口62から外部へ空気が排出される。そのため、より温度の高い第2巻線部51bをより効率的に冷却することができると考えられる。
【0042】
インナーケース71は、モータケース61を外側から覆うように配置されている。インナーケース71は、例えば、プラスチック樹脂で形成されている。図4および図7には、インナーケース71の外観を示す。インナーケース71は、容器の開口部を下方に向けた状態で土台部32に対して取り付けられている。
【0043】
上記の構成により、モータケース61の外側には、インナーケース71で囲われた空間が形成される。すなわち、本体部11内には、モータケース61およびインナーケース71の二重構造が形成され(図6参照)、この二重構造のケースの内部にモータ50が収容される(図3参照)。これにより、モータ50の動作音が外部へ漏れることを抑えることができる。したがって、静音性に優れたミキサー1を提供することができる。
【0044】
モータケース61の第1排出口62から排出された空気は、このインナーケース71で囲われた空間(すなわち、第1ケースと第2ケースとの間に形成される空間)内に流入する。なお、モータケース61の第1排出口62から排出された空気は、モータケース61の外周面に形成されている第1リブ(第1壁部)63によって、その流れの方向が変更される(図8参照)。
【0045】
インナーケース71の側面には、第2排出口72aおよび72bが形成されている。本実施形態では、第2排出口は2つ設けられている。但し、第2排出口の数は、2個に限定されない。第1排出口62からインナーケース71で囲われた空間内に流入した空気は、第2排出口72aおよび72bからインナーケース71の外側へ排出される。
【0046】
また、インナーケース71の側面には、さらなる空気の排出口として、温風排出口75が形成されている(図4参照)。温風排出口75は、後述するように、モータからの排気熱をサーキットプロテクタ40へ向けて排出するための開口部である。
【0047】
インナーケース71の外側へ排出された空気は、第2リブ(第2壁部)73aおよび73bによって流れの方向が変更され、本体カバー31内の空間を通り下方へ流れる。そして、本体部11の下方の土台部32の底面に形成されている最終排気口38から本体部11の外へ排出される。図5に示すように、最終排気口38は、土台部32の底面の外周に沿って、約半周にわたって複数個形成されている。
【0048】
このようにして、モータ50の作動中に、本体部11内に外部からの空気を取り込み、モータケース61内でモータ50の周囲を通過させた後、インナーケース71および本体カバー31の内部を通って、本体部11外へ空気を排出させるという空気の流れが形成される。このような空気の流れが形成されることで、比較的温度の低い外部の空気を本体部11内へ取り込み、この空気を用いてモータ50を冷却してモータ50の温度上昇を抑えることができる。
【0049】
なお、モータ50を冷却することによって、モータ50から発生した熱は、モータ50の周囲の空気に伝達される。これにより、モータ50の周囲の空気は温められる。この温められた空気を、モータ50の排気熱と呼ぶ。
【0050】
サーキットプロテクタ40は、モータ50が過負荷状態となったときにモータ50への通電を遮断し、モータ50が故障することを防止するモータ保護部の役割を果たしている。モータ50は、例えば、カップ部12内に被調理物を入れすぎたり、氷などの硬い被調理物をカップ部12内に入れたりした状態でモータ50を作動させたときに、カップ部12内のカッターの回転が阻害された場合などに発生する。
【0051】
サーキットプロテクタ40は、モータ50が回転不能になった際に、モータ50に流れる過電流に起因する自己発熱(温度上昇)を検知して、検知温度が所定温度よりも高くなったときに、モータ50への通電を遮断する。
【0052】
なお、本発明の別の実施態様では、モータ保護部をワンショットサーモスタットで構成することもできる。ワンショットサーモスタットは、モータに過電流が流れたことが原因となって発生するモータそのものの温度上昇を検知して、検知温度が所定温度よりも高くなったときに、モータへの通電を遮断する。
【0053】
図4に示すように、サーキットプロテクタ40は、本体部11内の土台部32上に配置されている。サーキットプロテクタ40は、インナーケース71の外側のモータ50からの排気熱が及ぶ場所に配置されている。言い換えると、サーキットプロテクタ40は、モータ50からの熱を排出するための空気の送出経路内に配置されている。
【0054】
本実施形態では、サーキットプロテクタ40は、温風排出口75の近傍に配置されている。サーキットプロテクタ40は、吸気口37から本体部11内へ流入し、最終排気口38から流出する空気の流れにおいて、温風排出口75のすぐ下流側に配置されていると言うこともできる。
【0055】
これにより、モータ50の周囲を通過することで温められた空気を、サーキットプロテクタ40へ向けて吹き出すことができる。このように、温風排出口75は、モータ50からの排気熱をサーキットプロテクタ40(すなわち、モータ保護部)へ送出する送出機構の一例である。
【0056】
サーキットプロテクタ40が、温風排出口75のすぐ下流側に配置されていることで、モータ50によって温められた後にインナーケース71内を通った空気を、サーキットプロテクタ40へ排出させることができる。これにより、モータ50からの排気熱によって、ミキサー1が稼働している間のサーキットプロテクタ40の周辺の温度を30~40℃程度に保持することができる。
【0057】
サーキットプロテクタ40が自己発熱による温度の上限値を検知してモータ50の通電を遮断するまでの時間は、サーキットプロテクタ40の周囲の温度によって変動する可能性がある。本実施形態では、運転中のモータ50から排出される熱を用いてサーキットプロテクタ40周辺の温度を上昇させておくことで、モータ50の運転状態にかかわらず(すなわち、正常運転か異常運転(過負荷状態の運転)かによらず)、サーキットプロテクタ40周辺の温度変化を小さくすることができる。
【0058】
これにより、自己発熱によってモータ50の過負荷状態を検知するサーキットプロテクタ40の検知性能を適度な状態に維持し、サーキットプロテクタ40の検知精度の低下を抑えることができる。したがって、サーキットプロテクタ40の動作を安定させることができる。
【0059】
(サーキットプロテクタの構成)
ここで、サーキットプロテクタ40の具体的な構成について説明する。
【0060】
サーキットプロテクタ40は、パワフル運転モード(高速回転モード)におけるモータ50の異常(すなわち、過負荷)を検知する第1検知部41と、通常運転モード(低速回転モード)におけるモータ50の異常を検知する第2検知部42とを有している。第1検知部41は、その上方に2つの端子部41aを有している。第2検知部42も、その上方に2つの端子部42aを有している。
【0061】
第1検知部41および第2検知部42の内部には、感熱スイッチであるバイメタルが備えられている。第1検知部41内のバイメタルと、第2検知部42内のバイメタルとは、動作温度が互いに異なっている。
【0062】
また、サーキットプロテクタ40には、各検知部41および42に対するリセットスイッチ46および47が設けられている。
【0063】
第1検知部41に対する第1リセットスイッチ46は、第1検知部41の下部に設けられている。第1リセットスイッチ46は、第1検知部41が動作してモータ50の通電が遮断されたときに、その電気回路を復帰させるためのスイッチである。
【0064】
第2検知部42に対する第2リセットスイッチ47は、第2検知部42の下部に設けられている。第2リセットスイッチ47は、第2検知部42が動作してモータ50の通電が遮断されたときに、その電気回路を復帰させるためのスイッチである。
【0065】
各リセットスイッチ46および47の下方には、両方のリセットスイッチに作用するリセットボタン45が設けられている。図7に示すように、リセットボタン45の押圧部は、土台部32の底面から下方に向かって露出している。
【0066】
なお、サーキットプロテクタ40の過度な温度上昇を抑えるために、温風排出口75の開口面積は、インナーケース71に形成されている他の排出口(すなわち、第2排出口72aおよび72b)の開口面積よりも小さくすることが好ましい。また、モータ50が配置されているモータケース61内から最終排気口38までに空気の送出経路において、温風排出口75は、第2排出口72aおよび72bよりも下流側に配置されていることが好ましい。これにより、サーキットプロテクタ40に対して適度な量の温風を送ることができる。
【0067】
(モータケース内の空気の排出経路について)
続いて、モータケース61内の空気を本体部11外へ排出する排出経路について、図3図8、および図9などを用いて説明する。図9には、モータケース61からインナーケース71へ排出され、さらにインナーケース71外へ排出される空気の流れを矢印で示す。
【0068】
上述したように、本実施形態にかかるミキサー1の本体部11の内部は、モータ50の動作音が外部に漏れるのを抑えるために、モータケース61とインナーケース71との二重構造となっている。このような構成により、ミキサー1の静音性を向上させることができる。その一方で、本体部11内の空気の循環が不十分となり、モータ50周辺の空気がモータケース61内に滞留しやすくなる。そのため、ミキサー1の稼働中にモータ50から発生する熱がモータケース61内にこもりがちになり、モータ50の巻線の温度が許容される上限値(例えば、180℃)よりも上昇してしまう可能性がある。
【0069】
そこで、ミキサー1の本体部11内には、底面に設けられた吸気口37からモータケース61内に流入した空気を、モータ50の周囲に適切に循環させながら外部へ排出させる排出経路が設けられている。モータ50の動作中、モータ50の周囲の空気は、モータ50の回転方向に対して接線方向に流れる。この流れの方向に沿って、本体部11内では、吸気口37から最終排気口38へと向かう空気の循環経路(排出経路)が形成される。
【0070】
図3に示すように、吸気口37から本体部11内に流入した空気は、モータケース61内を上昇する。モータケース61内を上昇した空気は、モータ50の第1巻線部51aが配置されている側に形成されている第1排出口62から、モータケース61の外へ排出される。なお、モータ50の作動中、ロータ54を間に挟んで互いに対向する位置に配置されている第1巻線部51aと第2巻線部51bとの間には、加熱温度に差が生じる。本実施形態では、第1巻線部51aの方が第2巻線部51bよりも温度が低くなる。第1排出口62は、温度のより低い第1巻線部51a側に配置されている。
【0071】
そして、温度のより高い第2巻線部51b側には、空気の排出口は形成されておらず、壁部61aとなっている。これにより、モータ50の作動時に第1巻線部51aよりも温度の高い第2巻線部51b側からは、モータケース61内の空気が外部へ排出されることなく、一旦第2巻線部51b周辺で空気が滞留する。その後、第1巻線部51a側の第1排出口62から外部へ空気が排出される。
【0072】
各巻線部51aおよび51bが配置されている側に排出口をそれぞれ形成する構成では、モータケース61内に入り込んだ空気がモータの冷却に十分に利用されることなく外部へ排出されてしまうため、モータの温度が十分に下がらないと考えられる。これに対して、本実施形態のように、第1巻線部51a側にのみに空気の排出口を形成する構成では、モータケース61内に入り込んだ空気を、モータ50の冷却に十分に利用することができる。したがって、より温度の高い第2巻線部51bをより効率的に冷却することができ、モータ50全体としての温度上昇を抑えることができる。
【0073】
第1排出口62からモータケース61の外へ排出された空気は、その後、インナーケース71内(具体的には、インナーケース71の内側とモータケース61の外側との間の空間)に流入する。モータケース61の外周面には、第1排出口62の近傍に第1リブ63が形成されている(図8参照)。
【0074】
上述したように、モータ50の動作中、モータ50の周囲の空気は、モータ50の回転方向に対して接線方向に流れ、この流れの方向に沿って空気の循環経路(排出経路)が形成される。本実施形態では、図8に示すように、第1排出口62から排出された空気は、第1リブ63が形成されている側に流れる。もし、第1リブ63が形成されていなければ、第1排出口62から排出された空気は、モータケース61の外周面に沿って、らせん状に流れる。そのため、本体部11の外へ排出されるまでの空気の排出経路が長くなる傾向にある。
【0075】
しかし、本実施形態にかかる構成では、第1排出口62から排出される空気の流れの下流側に第1リブ63が形成されていることで、第1リブ63によって空気の流れが遮断され、空気の流れが反対方向に変更される。すなわち、第1リブ63は、らせん状に流れる空気の流れを遮って空気の流れる方向を変更させるための部材である。
【0076】
さらに、インナーケース71の外周面には、第1リブ63によって流れの方向が変更された空気が排出される第2排出口72aおよび72bが設けられている(図7参照)。図7には、図8に示すモータケース61を覆うように配置されているインナーケース71の外観を示す。図7および図8は、同じ方向から見たときのインナーケース71およびモータケース61の外観を示している。また、図9には、モータケース61に形成されている第1リブ63と、インナーケース71に形成されている第2排出口72aとの位置関係を示している。
【0077】
これらの図に示すように、第2排出口72aは、第1リブ63にぶつかった空気が即座に導かれる方向に対応して形成されている。これにより、第1排出口62からインナーケース71内の空間に流入した空気をより短い経路で第2排出口72aからインナーケース71外へ排出させることができる。
【0078】
また、インナーケース71の外周面に形成されているもう一つの第2排出口72bは、第1リブ63によって方向が規定された空気の流れのさらに下流側に位置している。第2排出口72bからは、より上流側に位置する第2排出口72aから排出しきれなかった空気(例えば、図9中の破線の矢印で示すもの)が排出される。
【0079】
なお、インナーケース71の外周面には、第2排出口72aおよび72bから排出される空気の流れの下流側に、空気の流入を遮断して空気の流れる方向を変える第2リブ73aおよび73bが設けられている。
【0080】
具体的には、第2排出口72aから排出される空気の流れの下流側に第2リブ73aが設けられている。図9に示すように、モータケース61とインナーケース71との二重構造において、第2リブ73aは、側面視において第1リブ63と対応する位置に配置されている。これにより、第2排出口72aから第2リブ73aの一方の側に沿って排出された空気は、第2リブ73aの他方の側へ流入することが阻害される。
【0081】
また、第2排出口72bから排出される空気の流れの下流側に第2リブ73bが設けられている(図7参照)。これにより、第2排出口72bから第2リブ73bの一方の側に沿って排出された空気は、第2リブ73bの他方の側へ流入することが阻害される。
【0082】
以上のように、第1排出口62からインナーケース71内へと流出した空気の流れは、第1リブ63によって規定され、第2排出口72aおよび72bからインナーケース71外へ流出した空気の流れは、第2リブ73aおよび73bによって規定される。
【0083】
第2排出口72aおよび72bからインナーケース71外へ排出された空気は、第2排出口72aおよび72bの下方に位置する最終排気口38から本体部11の外へ排出される。
【0084】
以上の構成により、モータ50から発生した熱を含んだ空気は、モータケース61およびインナーケース71の二重構造内を比較的短距離の経路かつ短時間で通過し、本体部11外へ排出される。したがって、モータ50内の熱を効率的に外部へ逃がすことができ、モータ50およびモータケース61内の温度上昇を抑えることができる。
【0085】
なお、本実施形態では、第1リブ63は、モータケース61の外周面に形成されているが、他の実施形態では、インナーケース71の内周面に第1リブ63と同様の役割を果たすリブが形成されていてもよい。また、本実施形態では、第2リブ73aおよび73bは、インナーケース71の外周面に形成されているが、他の実施形態では、本体カバー31の内周面に第2リブ73aおよび73bと同様の役割を果たすリブが形成されていてもよい。
【0086】
なお、インナーケース71の外周面には、第2排出口72aおよび72bの他に温風排出口(第3排出口)75が形成されている。温風排出口75は、第1リブ63を間に挟んで第2排出口72aとは反対側に形成されている(図9参照)。これにより、第1排出口62から排出された空気は、温風排出口75への行く手が第1リブ63によって阻まれ、反対側へ回り込んだ後に温風排出口75へと導かれる。
【0087】
第1排出口62から排出された空気は、温風排出口75の方へ向かうまでの間に、その大部分が第2排出口72aおよび73bからインナーケース71外へ排出される。そして、残った少量の空気が、温風排出口75からインナーケース71外へ排出される。
【0088】
上述したように、温風排出口75の近傍には、サーキットプロテクタ40が配置されている。したがって、モータ50の周囲を通過することで温められた空気の一部は、温風排出口75からサーキットプロテクタ40へ向けて吹き出される。これにより、サーキットプロテクタ40の周囲を適度に温められた状態に維持することができ、サーキットプロテクタ40の検知精度の低下を抑えることができる。
【0089】
ここで、温風排出口75の開口面積は、第2排出口72aおよび73bの開口面積よりも小さいことが好ましい。これにより、インナーケース71内の空気の大部分を第2排出口72aおよび73bから排出し、モータ50の周辺を効率的に冷却することができる。
【0090】
(まとめ)
以上のように、本実施形態にかかるミキサー1は、主として、カップ部(容器)12と、カップ部12内の内容物の攪拌を駆動するモータ50と、モータ50を収容するモータケース(第1のケース)61とを備えている。モータ50は、第1巻線部51aと、第2巻線部51bと、ロータ(回転部)54とを有している。第1巻線部51aは、モータケース61内の第1側面側に配置されている。第2巻線部51bは、モータケース61内の前記第1側面側に対向する第2側面側に配置されている。ロータ(回転部)54は、第1巻線部51aと第2巻線部51bとの間に配置されている。モータケース61には、モータ50の作動時に第2巻線部51bよりも温度の低くなる第1巻線部51a側に、第1排出口62が設けられている。
【0091】
上記の構成によれば、モータ10周辺の空気をモータケース61の外へ排出する第1排出口62が、第2巻線部51bよりも温度の低くなる第1巻線部51a側に設けられていることで、より温度の高い第2巻線部51b周辺で一時的に空気を滞留させた後、第1巻線部51a側に設けられた第1排出口62から空気を排出させることができる。そのため、より温度の高い第2巻線部51bをより効率的に冷却することができる。より温度の高い第2巻線部51bを優先的に冷却することで、モータ50全体の温度上昇を抑えることができる。これにより、モータ50および各種部品を収容する本体部11内の温度上昇を抑えることができる。
【0092】
また、本体部11内の空気の排出経路には、第1排出口62の他に、第1リブ63、第2排出口72aおよび73b、並びに第2リブ73aおよび73bなどが備えられている。これにより、モータ50周辺の空気を、最終排気口38へ向けて効率的に導く経路が規定される。したがって、モータ50周辺の空気を効率的に外部へ排出し、本体部11内の温度上昇をさらに抑えることができる。
【0093】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した異なる実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
1 :ミキサー(攪拌型調理器)
11 :本体部
12 :カップ部(容器)
31 :本体カバー
32 :土台部
40 :サーキットプロテクタ
50 :モータ
51 :ステータ
51a :第1巻線部
51b :第2巻線部
53 :回転軸
54 :ロータ(回転部)
61 :モータケース(第1のケース)
62 :第1排出口
63 :第1リブ(第1壁部)
71 :インナーケース(第2のケース)
72a :第2排出口
72b :第2排出口
73a :第2リブ(第2壁部)
73b :第2リブ(第2壁部)
75 :温風排出口(第3排出口)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9