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特許7189480フラックスコートボール及びその製造方法
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  • 特許-フラックスコートボール及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】フラックスコートボール及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/14 20060101AFI20221207BHJP
   B23K 35/40 20060101ALI20221207BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20221207BHJP
   B22F 1/102 20220101ALI20221207BHJP
   B22F 1/065 20220101ALI20221207BHJP
   B23K 35/26 20060101ALN20221207BHJP
   C22C 12/00 20060101ALN20221207BHJP
   C22C 13/00 20060101ALN20221207BHJP
【FI】
B23K35/14 Z
B23K35/40 340F
B22F1/00 R
B22F1/102
B22F1/065
B23K35/26 310C
B23K35/26 310A
C22C12/00
C22C13/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022019052
(22)【出願日】2022-02-09
【審査請求日】2022-05-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】白川 文香
(72)【発明者】
【氏名】岩本 博之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 茂喜
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝司
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/114798(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/118611(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/071971(WO,A1)
【文献】特開2008-272779(JP,A)
【文献】特開2014-008506(JP,A)
【文献】特開2019-072724(JP,A)
【文献】特開2017-170480(JP,A)
【文献】特開2007-115857(JP,A)
【文献】特開2005-254246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/14
B23K 35/40
B22F 1/00
B22F 1/102
B22F 1/065
B23K 35/26
C22C 12/00
C22C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部と、前記コア部を被覆するシェル部とを備えたフラックスコートボールであって
前記コア部は、ソルダボール又は銅核ボールからなり、
前記シェル部は、活性剤及び樹脂成分からなる群より選択される少なくとも一種を含有するフラックス層からなり、
前記フラックスコートボールに占める、前記シェル部の含有割合は、0.2質量%以上5質量%以下であり、
前記コア部表面に存在する酸化膜の厚さを意味し、SiO 換算値である酸化膜厚が3nm以下であり、
さらに、真球度が0.990以上である、フラックスコートボール。
【請求項2】
前記フラックスコートボールの直径から、前記コア部の直径を差し引いた後、2で除することにより求める前記フラックス層の厚さが0.10μm以上2.0μm以下であり、
前記コア部の直径は、30μm以上295μm以下である、請求項1に記載のフラックスコートボール。
【請求項3】
前記フラックス層の表面粗さ(Ra)が2.0μm以下である、請求項1又は2に記載のフラックスコートボール。
【請求項4】
前記活性剤が、少なくとも有機酸を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のフラックスコートボール。
【請求項5】
前記有機酸が、グルタル酸、ジグリコール酸、マロン酸、クエン酸、ピメリン酸、アジピン酸及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項に記載のフラックスコートボール。
【請求項6】
コア部と、前記コア部を被覆するシェル部とを備えたフラックスコートボールであって
前記コア部は、ソルダボール又は銅核ボールからなり、
前記シェル部は、活性剤及び樹脂成分からなる群より選択される少なくとも一種を含有するフラックス層からなり、
前記フラックスコートボールに占める、前記シェル部の含有割合は、0.2質量%以上5質量%以下であり、
前記フラックス層の表面粗さ(Ra)が2.0μm以下であり、
前記コア部表面に存在する酸化膜の厚さを意味し、SiO 換算値である酸化膜厚が3nm以下である、フラックスコートボール。
【請求項7】
前記フラックスコートボールの直径から、前記コア部の直径を差し引いた後、2で除することにより求める前記フラックス層の厚さが0.10μm以上2.0μm以下であり、
前記コア部の直径は、30μm以上295μm以下である、請求項に記載のフラックスコートボール。
【請求項8】
前記活性剤が、少なくとも有機酸を含む、請求項6又は7に記載のフラックスコートボール。
【請求項9】
前記有機酸が、グルタル酸、ジグリコール酸、マロン酸、クエン酸、ピメリン酸、アジピン酸及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項に記載のフラックスコートボール。
【請求項10】
コア部と、前記コア部を被覆するシェル部とを備えたフラックスコートボールであって
前記コア部は、ソルダボール又は銅核ボールからなり、
前記シェル部は、活性剤及び樹脂成分からなる群より選択される少なくとも一種を含有するフラックス層からなり、
前記活性剤が、グルタル酸、ジグリコール酸、マロン酸、クエン酸、ピメリン酸、アジピン酸及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸からなる群より選択される少なくとも一種の有機酸を含み、
前記フラックスコートボールに占める、前記シェル部の含有割合は、0.2質量%以上5質量%以下であり、
前記コア部表面に存在する酸化膜の厚さを意味し、SiO 換算値である酸化膜厚が3nm以下である、フラックスコートボール。
【請求項11】
前記フラックスコートボールの直径から、前記コア部の直径を差し引いた後、2で除することにより求める前記フラックス層の厚さが0.10μm以上2.0μm以下であり、
前記コア部の直径は、30μm以上295μm以下である、請求項10に記載のフラックスコートボール。
【請求項12】
ボール全体の径が30μm以上300μm以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載のフラックスコートボール。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のフラックスコートボールの製造方法であって、
ソルダボール又は銅核ボールと、活性剤及び樹脂成分からなる群より選択される少なくとも一種を含有するフラックス材料と、を加熱しつつ振盪撹拌する乾式処理工程を有し、
前記乾式処理工程における前記加熱の温度条件は、前記フラックス材料の融点マイナス35℃以上、融点マイナス5℃以下である、フラックスコートボールの製造方法。
【請求項14】
前記乾式処理工程において、
前記フラックス材料に対する、前記のソルダボール又は銅核ボールの質量比を1~10として、
前記のソルダボール又は銅核ボールと、前記フラックス材料と、を加熱しつつ振盪撹拌する、請求項13に記載のフラックスコートボールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックスコートボール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
はんだバンプ形成方法には、めっき法、ペースト印刷法、ボール搭載法などがあるが、それぞれ一長一短があるとされる。
これらの中で、ボール搭載法は、球状小型のはんだボールを電極上に直接搭載し、リフローによってバンプにする方法であり、他の方法に比べて、バンプを高くできる、バンプ高さのばらつきを小さくすることができる等の利点がある。一方、ボール搭載法は、ウェーハ全面に、はんだボールを搭載する必要があり、そのはんだボールの数は非常に多くなるため、歩留まり向上が問題となる。
【0003】
ボール搭載法によるはんだバンプ形成は、まず、ウェーハ上の電極上に、メタルマスクを介してフラックスを塗布する。次に、フラックスが塗布されたウェーハ上の電極上に位置合わせして、はんだボールを搭載する。次に、はんだボールを搭載したウェーハをリフローすることで、はんだボールを溶融させることにより、はんだバンプが形成される。
【0004】
小型情報機器の発達により、搭載される電子部品では急速な小型化が進行している。電子部品では、小型化に伴い、接続端子の狭小化や実装面積の縮小化が求められる。はんだバンプ形成においては、狭ピッチパターン上に、フラックスを安定的に印刷することが難しくなってきている。
これに対して、はんだボールの表面に予めフラックスを被覆した、フラックスコートボールが提案されている。例えば、球状小型のはんだボール表面に、液状フラックスを塗布し乾燥させて作製されたフラックスコートボールが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-119291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のフラックスコートボールでは、その製造の際、はんだボールに液状フラックスを塗布し乾燥させた際に、凝集を生じやすい問題がある。また、従来のフラックスコートボールにおいては、ウェーハに対する濡れ性の点で、更なる向上が必要である。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、ウェーハに対する濡れ性が高められたフラックスコートボール;ボールの凝集が生じにくく、簡便な方法であるフラックスコートボールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、以下の手段を採用する。
【0009】
[1] コア部と、前記コア部を被覆するシェル部とを備え、前記コア部は、ソルダボール又は銅核ボールからなり、前記シェル部は、活性剤及び樹脂成分からなる群より選択される少なくとも一種を含有するフラックス層からなり、酸化膜厚が3nm以下であることを特徴とする、フラックスコートボール。
【0010】
[2] さらに、真球度が0.990以上である、[1]に記載のフラックスコートボール。
【0011】
[3] 前記フラックス層の厚さが0.5μm以上2.5μm以下である、[1]又は[2]に記載のフラックスコートボール。
【0012】
[4] 前記フラックス層の表面粗さ(Ra)が2.0μm以下である、[1]~[3]のいずれか一項に記載のフラックスコートボール。
【0013】
[5] 前記活性剤が、少なくとも有機酸を含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載のフラックスコートボール。
【0014】
[6] 前記有機酸が、グルタル酸、ジグリコール酸、マロン酸、クエン酸、ピメリン酸、アジピン酸及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸からなる群より選択される少なくとも一種である、[5]に記載のフラックスコートボール。
【0015】
[7] ボール全体の径が30μm以上300μm以下である、[1]~[6]のいずれか一項に記載のフラックスコートボール。
【0016】
[8] ソルダボール又は銅核ボールからなるコア部と、活性剤及び樹脂成分からなる群より選択される少なくとも一種を含有するフラックス層からなり、前記コア部を被覆するシェル部と、を備えたフラックスコートボールの製造方法であって、ソルダボール又は銅核ボールと、活性剤及び樹脂成分からなる群より選択される少なくとも一種を含有するフラックス材料と、を加熱しつつ振盪撹拌する乾式処理工程を有することを特徴とする、フラックスコートボールの製造方法。
【0017】
[9] 前記乾式処理工程において、前記フラックス材料に対する、前記のソルダボール又は銅核ボールの割合(質量比)を1~10として、前記のソルダボール又は銅核ボールと、前記フラックス材料と、を加熱しつつ振盪撹拌する、[8]に記載のフラックスコートボールの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ウェーハに対する濡れ性が高められたフラックスコートボール;ボールの凝集が生じにくく、簡便な方法であるフラックスコートボールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】フラックスコートボールの一実施形態を示す断面図である。
図2】実施例1のフラックスコートボール、及び比較例1のフラックスコートボールの外観を示す写真である。
図3】実施例2~5の各フラックスコートボール、及びソルダボールのみの外観を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図を参照しながら、本実施形態のフラックスコートボールについて詳細に説明する。尚、以下の図面においては、図を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0021】
(フラックスコートボール)
本発明の一態様に係るフラックスコートボールは、コア部と、前記コア部を被覆するシェル部と、を備える。
かかるフラックスコートボールにおいて、前記コア部は、ソルダボール又は銅核ボールからなる。前記シェル部は、活性剤及び樹脂成分からなる群より選択される少なくとも一種を含有するフラックス層からなる。
かかるフラックスコートボールにおいては、酸化膜厚が3nm以下である。
【0022】
<第1実施形態>
図1は、フラックスコートボールの一実施形態を示す断面図である。
図1において、フラックスコートボール100は、球形状のコア部110と、コア部110の全体を被覆するシェル部120とを備える。
【0023】
・フラックスコートボール100の酸化膜厚について
本発明において、フラックスコートボールの酸化膜厚とは、コア部表面に存在する酸化膜の厚さを意味し、SiO換算値である。
コア部表面に存在する酸化膜の厚さ(コア部表面の酸化膜厚)は、以下のようにして測定する。
測定試料であるフラックスコートボールを、アセトン中で20分間の条件で超音波洗浄する。次に、オージェ電子分光法により、前記超音波洗浄後の測定試料表面を測定する。
例えば、分析装置として、オージェ電子分光分析装置(アルバック・ファイ株式会社製のPHI700など)を用いる。分析条件として、加速電圧10kV、電流値10nA、分析径20μmに設定する。
【0024】
フラックスコートボール100においては、コア部110表面の酸化膜厚が3nm以下であり、好ましくは2.5nm以下であり、より好ましくは2.0nm以下である。
コア部110表面の酸化膜厚が、前記範囲の上限値以下であれば、ウェーハに対する濡れ広がりが良好となり、濡れ性が高められる。
コア部110表面の酸化膜厚は、小さい値ほど、酸化膜が薄いことから好ましい。コア部110表面の酸化膜厚の下限値は、例えば0.5nmとされる。
【0025】
・フラックスコートボール100の径について
本発明において、フラックスコートボールの径とは、フラックスコートボール全体の径、すなわち直径を意味し、図1中の「R100」に相当する。
フラックスコートボール100の径(R100)は、例えば、30μm以上300μm以下であり、35μm以上200μm以下でもよいし、40μm以上150μm以下でもよいし、45μm以上100μm以下でもよい。
フラックスコートボール100の径(R100)が、前記範囲であることで、パターンの狭ピッチ化の要求への対応が容易となる。
【0026】
・フラックスコートボール100の真球度について
フラックスコートボール100の真球度は、例えば0.990以上である。
フラックスコートボール100の真球度が0.990以上であることで、はんだバンプの高さを、より均一な高さに調整することが容易となる。
【0027】
フラックスコートボールの真球度は、以下のようにして求める。
測定試料であるフラックスコートボール500個について、その直径を長径で除した際に算出される算術平均値を求める。この算術平均値が、上限値である1.000に近いほど、フラックスコートボールの形状は真球に近いことを意味する。
測定試料の長径の長さ、直径の長さは、例えば、株式会社ミツトヨ製のウルトラクイックビジョン、ULTRA QV350-PRO測定装置によって測定することができる。
【0028】
・フラックスコートボール100における質量比の関係について
フラックスコートボール100に占める、コア部110の含有割合は、例えば95質量%以上であり、96質量%以上99.8質量%以下でもよいし、97質量%以上99.7質量%以下でもよいし、98質量%以上99.6質量%以下でもよい。
フラックスコートボール100に占める、シェル部120の含有割合は、例えば5質量%以下であり、0.2質量%以上4質量%以下でもよいし、0.3質量%以上3質量%以下でもよいし、0.4質量%以上2質量%以下でもよい。
フラックスコートボール100に占める、コア部110及びシェル部120の含有割合が前記範囲であると、一定量のフラックスが確保されて、ウェーハに対する濡れ性をより高められる。
フラックスコートボール100に占める、コア部110及びシェル部120の含有割合は、フラックスコートボール100をアセトンで洗浄処理し、その後、乾燥処理を行い、洗浄処理前の質量と、乾燥処理後の質量とから求めることができる。
【0029】
・フラックスコートボール100の表面粗さについて
本発明において、フラックスコートボールの表面粗さとは、フラックス層の表面粗さ(Ra)を意味する。
フラックスコートボール100の表面粗さ、すなわちフラックス層120の表面粗さ(Ra)は、例えば、2.0μm以下であり、好ましくは1.8μm以下であり、より好ましくは1.6μm以下である。
フラックス層120の表面粗さ(Ra)が、前記範囲の上限値以下であれば、フラックスコートボール100の真球度が高まる。
フラックス層120の表面粗さ(Ra)は、低い値ほど、フラックス層120表面の平滑性が高いことから好ましい。フラックス層120の表面粗さ(Ra)の下限値は、例えば0.5μmとされる。
【0030】
フラックスコートボールの表面粗さは、以下のようにして求める。
測定試料であるフラックスコートボール表面、すなわちフラックス層表面の粗さを、レーザ顕微鏡によって、所定の範囲で測定する。例えばレーザーテック株式会社製などのコンフォーカル顕微鏡を用い、対物レンズの倍率を50倍に調整し、z軸上における測定ピッチを0.1μmとして、任意の3個のフラックスコートボールの表面粗さ(Ra)を測定する。そして、それらの算術平均を求める。
【0031】
≪コア部≫
フラックスコートボール100において、コア部110は、ソルダボール又は銅核ボールからなる。
コア部110の径(R110)は、例えば、30μm以上295μm以下であり、30μm以上250μm以下でもよいし、40μm以上200μm以下でもよい。
なお、コア部110の径(R110)は、コア部110の直径を意味し、ソルダボール又は銅核ボールの直径に相当する。
【0032】
コア部110を構成するソルダボールの材料としては、例えば、Sn、Snを主成分とするはんだ合金が挙げられる。Snを主成分とするはんだ合金におけるSnの含有量は、はんだ合金の総量に対して、例えば5質量%以上であり、10質量%以上でもよいし、40質量%以上でもよい。
はんだ合金としては、例えば、Sn-Ag合金、Sn-Cu合金、Sn-Ag-Cu合金、Sn-In合金、Sn-Pb合金、Sn-Bi合金、Sn-Bi-Ag-Cu合金等が挙げられる。
はんだ合金には、任意の合金元素を添加することができる。この合金元素としては、例えば、Ag、Cu、In、Ni、Co、Sb、Ge、P、Fe、Ga等が挙げられる。
【0033】
コア部110を構成する銅核ボールとしては、銅ボール表面に、めっき処理を施したものが挙げられる。めっきの組成は特に制限されず、めっき処理は、同一の又は異なるめっきの組成で複数回の処理が施されたものでもよい。例えば、銅ボール表面に、拡散防止のバリア層であるNiめっき処理を施し、そのNiめっき表面に、さらにSn-Ag-Cu合金をめっき処理したものが挙げられる。
【0034】
≪シェル部≫
フラックスコートボール100において、シェル部120は、活性剤及び樹脂成分からなる群より選択される少なくとも一種を含有するフラックス層からなる。
フラックス層120の厚さ(T120)は、例えば、0.10μm以上2.0μm以下であり、0.15μm以上1.5μm以下でもよいし、0.20μm以上1.0μm以下でもよいし、0.25μm以上0.80μm以下でもよい。
フラックス層120の厚さ(T120)が、前記範囲の下限値以上であると、一定量のフラックスが確保されて、ウェーハに対する濡れ性をより高められる。一方、前記範囲の上限値以下であると、フラックスコートボール100の凝集が生じにくくなる。
【0035】
シェル部120を構成するフラックス層は、活性剤及び樹脂成分からなる群より選択される少なくとも一種を含有し、必要に応じてこれら以外の成分も含有してよい。
活性剤としては、要求される特性に応じて適宜選択することができ、例えば、有機酸、アミン等が挙げられる。
有機酸としては、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等の有機カルボン酸;脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸等の有機スルホン酸が挙げられる。
アミンとしては、アゾール類、グアニジン類、アルキルアミン化合物、アミノアルコール化合物が挙げられる。
樹脂成分としては、要求される特性に応じて適宜選択することができ、例えば、ロジン、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペンフェノール樹脂、スチレン樹脂、変性スチレン樹脂、キシレン樹脂、変性キシレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル-ポリエチレン共重合樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0036】
上記の中でも、シェル部120を構成するフラックス層は、コア部の酸化抑制、濡れ性付与の点から、少なくとも活性剤を含有することが好ましい。
ここでの活性剤は、コア部110への被覆性の点から、有機酸及びアミンからなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、少なくとも有機酸を含むことがより好ましい。
シェル部120を構成するフラックス層は、少なくとも有機酸を含む層であることが好ましく、例えば、有機酸のみからなる層、有機酸と樹脂成分とを含む層、有機酸とアミンとを含む層、有機酸と樹脂成分とアミンとを含む層などが挙げられる。
ここでの有機酸は、有機カルボン酸であることが好ましく、脂肪族カルボン酸であることがより好ましく、グルタル酸、ジグリコール酸、マロン酸、クエン酸、ピメリン酸、アジピン酸及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸からなる群より選択される少なくとも一種であることが特に好ましい。
【0037】
フラックス層が含有する成分は、1種単独でもよいし、2種以上でもよい。
フラックス層中の活性剤の含有量は、フラックス層の全体に対して、例えば10質量%以上100質量%以下である。
フラックス層中の樹脂成分の含有量は、フラックス層の全体に対して、例えば0質量%以上90質量%以下である。
【0038】
シェル部120を構成するフラックス層は、活性剤及び樹脂成分以外の成分(任意成分)を含有してもよい。
この任意成分としては、例えば酸化防止剤、着色剤等が挙げられる。
【0039】
以上説明した第1実施形態によれば、ウェーハに対する濡れ性が高められたフラックスコートボール100を提供することができる。
第1実施形態に係るフラックスコートボール100は、コア部110と、コア部110を被覆するシェル部120とを備える。コア部110は、ソルダボール又は銅核ボールからなり、ウェーハ上の電極と、半導体パッケージの電極とを電気的に接合する。シェル部120は、活性剤及び樹脂成分からなる群より選択される少なくとも一種を含有するフラックス層からなり、リフローの際に、コア部110表面の酸化膜、及び電極表面の金属酸化膜を除去して、コア部110と電極との濡れ性の向上を図る。
第1実施形態に係るフラックスコートボール100は、その酸化膜厚(すなわち、コア部表面に存在する酸化膜の厚さ)が3nm以下とされている。この酸化膜厚3nm以下というのは、コア部を構成するソルダボール又は銅核ボール単体の酸化膜厚とほぼ同程度である。このように、酸化膜厚が薄く制御されているため、フラックスコートボール100によれば、ウェーハに対する濡れ性が高められる。
【0040】
<その他実施形態>
上述した第1実施形態は、コア部110を被覆するシェル部120を、単層のフラックス層からなる構成として説明したが、その構成に限定されず、コア部110を被覆するシェル部が多層のフラックス層からなる実施形態としてもよい。この実施形態によれば、複数のフラックス層の各層に、異なる効果を持たせることができる。
【0041】
上述した第1実施形態に係るフラックスコートボール100では、シェル部120がコア部110の全体を被覆する、として説明したが、その説明内容に限定されず、シェル部がコア部110の一部を被覆する実施形態としてもよい。例えば、フラックスコートボールを電極上に直接搭載した際、シェル部がウェーハ上の電極に少なくとも接するように、コア部110の一部を被覆しているシェル部を備えた実施形態でもよい。
【0042】
本発明の一態様に係るフラックスコートボールは、ボール搭載法によるはんだバンプ形成に有用なものである。かかるフラックスコートボールによれば、はんだバンプ形成においては、狭ピッチパターン上に、フラックスを安定的に供給することができる。
【0043】
(フラックスコートボールの製造方法)
本発明の一態様に係るフラックスコートボールの製造方法は、ソルダボール又は銅核ボールからなるコア部と、活性剤及び樹脂成分からなる群より選択される少なくとも一種を含有するフラックス層からなり、前記コア部を被覆するシェル部と、を備えたフラックスコートボールの製造方法である。
かかるフラックスコートボールの製造方法においては、ソルダボール又は銅核ボールと、活性剤及び樹脂成分からなる群より選択される少なくとも一種を含有するフラックス材料と、を加熱しつつ振盪撹拌する乾式処理工程を有する。
【0044】
上述した実施形態のフラックスコートボール100は、前記一態様に係るフラックスコートボールの製造方法を使用して製造することができる。
コア部110に使用されるソルダボール又は銅核ボールのボール径(直径)は、例えば、30μm以上295μm以下であり、30μm以上250μm以下でもよいし、40μm以上200μm以下でもよい。
コア部110に使用されるソルダボール又は銅核ボールとしては、上述した≪コア部≫の説明の中で例示したものが挙げられる。
フラックス材料には、例えば粉末状のものを用いることができる。粉末状のフラックス材料としては、その粉体の集団の全体積を100%として累積カーブを求めたときの50%粒子径が100μm以上1000μm以下の粉末状のものを用いることが好ましい。
フラックス材料としては、上述した有機酸、アミン、樹脂成分についての説明の中で例示したもの等が挙げられる。
【0045】
<乾式処理工程>
乾式処理工程では、ソルダボール又は銅核ボールと、活性剤及び樹脂成分からなる群より選択される少なくとも一種を含有するフラックス材料と、を加熱しつつ振盪撹拌する。
ソルダボール又は銅核ボールと、フラックス材料との混合比率は、所望とするフラックス層の厚さ、ソルダボール又は銅核ボールのボール径に応じて適宜調整すればよい。
例えば、ボール径が30μm以上100μm以下である場合、前記フラックス材料に対する、前記のソルダボール又は銅核ボールの割合(質量比)は、ボール/フラックス材料=1~10とすることが好ましく、1.5~7.5とすることがより好ましく、2~6とすることがさらに好ましい。
かかる質量比が、前記の好ましい範囲の下限値上であれば、フラックス材料がボール全体を容易に被覆でき、一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であれば、フラックス層が厚くなりすぎることが抑制される。
【0046】
乾式処理工程における加熱の温度条件は、フラックス材料の融点に応じて設定することが好ましい。加熱温度が高すぎると、振盪撹拌を行う容器の内壁にボールが固着するおそれがあり、一方、加熱温度が低すぎると、フラックス材料によるボール表面の被覆が不充分となるおそれがある。
かかる加熱の温度条件としては、フラックス材料の融点マイナス35℃以上、融点マイナス5℃以下とすることが好ましく、フラックス材料の融点マイナス25℃以上、融点マイナス10℃以下とすることがより好ましい。
乾式処理工程における振盪撹拌の操作は、前記の温度条件で加熱しつつ行うことが好ましい。あるいは、振盪撹拌の操作前に、予備加熱をしておき、その後、振盪撹拌の操作を行うことが好ましい。予備加熱は、例えば、前記のかかる加熱の温度条件と同じ温度条件で行うことができる。
【0047】
乾式処理工程における振盪撹拌の操作は、遠沈管等の任意の容器に、フラックス材料と、ソルダボール又は銅核ボールとを投入する。その後、使用するフラックス材料に適した温度で加熱を行いつつ、所定のストローク数で容器の振盪撹拌を行う。
ストローク数及び撹拌時間は、それぞれ、適宜調整すればよい。ストローク数は、500spm(strokes per minute)以上4000spmとすることが好ましく、1500spm以上2500spmとすることがより好ましい。撹拌時間は、10分間以上120分間以下が好ましく、30分間以上90分間以下とすることがより好ましい。
【0048】
以上説明した、一態様に係るフラックスコートボールの製造方法によれば、乾式工法を採用しているため、加熱しつつ振盪撹拌する操作後であっても、ボールの凝集が生じにくく、分散状態の良好なフラックスコートボールを製造することができる。
加えて、かかるフラックスコートボールの製造方法は、固体の材料同士を振盪撹拌する操作を要するだけであり、湿式工法における溶媒除去のような操作が不要であり、簡便な方法である。
【0049】
かかるフラックスコートボールの製造方法においては、乾式工法を採用しているため、酸化膜厚(コア部表面に存在する酸化膜の厚さ)を薄く制御することが容易であり、ウェーハに対する濡れ性が高められたフラックスコートボールを安定的に製造することが可能である。
【0050】
また、かかるフラックスコートボールの製造方法においては、振盪撹拌する操作を採用しているため、シェル部を構成するフラックス層を、均一な厚さに制御することが容易であり、真球度を高められやすく、ボールとしての性能向上を図りやすい。
【0051】
上述した一態様に係るフラックスコートボールの製造方法は、乾式処理工程を有する製造方法として説明したが、その実施形態に限定されず、乾式処理工程に加えてさらに任意の工程を有する実施形態でもよい。任意の工程としては、例えば、シェル部120を構成する第1フラックス層上に、さらに、第2フラックス層を形成する工程が挙げられる。この実施形態によれば、コア部110を被覆するシェル部が多層のフラックス層からなるフラックスコートボールを製造することができる。
【実施例
【0052】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
本実施例において、フラックスコートボールの製造の際に使用した、コア部及びシェル部のそれぞれの材料を示した。
【0054】
コア部の材料として、以下に示す球形状の金属ボールを使用した。
ソルダボール(C-1):Sn99.3質量%とCu0.7質量%との合金からなるソルダボール、径(R110)63μm。
ソルダボール(C-2):Sn96.5質量%とAg3.0質量%とCu0.5質量%との合金からなるソルダボール、径(R110)100μm。
ソルダボール(C-3):Sn43質量%とBi57質量%との合金からなるソルダボール、径(R110)100μm。
銅核ボール(C-4):銅ボール表面に、Sn-3Ag-0.5Cuめっき処理を施した銅核ボール、径(R110)220μm。
ソルダボール(C-5):Sn96.5質量%とAg3.0質量%とCu0.5質量%との合金からなるソルダボール、径(R110)300μm。
ソルダボール(C-6):Sn99.3質量%とCu0.7質量%との合金からなるソルダボール、径(R110)44μm。
【0055】
シェル部の材料として、以下に示すフラックス材料を使用した。
フラックス材料(S-1):グルタル酸(融点95℃)、50%粒子径314μm
フラックス材料(S-2):ジグリコール酸(融点144℃)、50%粒子径335μm
フラックス材料(S-3):マロン酸(融点135℃)、50%粒子径362μm
フラックス材料(S-4):クエン酸(融点153℃)、50%粒子径288μm
フラックス材料(S-5):ピメリン酸(融点106℃)、50%粒子径254μm
フラックス材料(S-6):アジピン酸(融点152℃)、50%粒子径325μm
【0056】
<フラックスコートボールの製造(1)>
(実施例1)
円筒状の遠沈管(直径4cm、長さ12cm)に、全体積を100%として累積カーブを求めたときの50%粒子径が314μmの粉末状のフラックス材料(S-1)1.2gと、ソルダボール(C-1)6gとを投入して密閉した。
次いで、フラックス材料(S-1)とソルダボール(C-1)とを投入した前記遠沈管に対して、温度75℃で5分間の予備加熱を行った。予備加熱の温度条件は、フラックス材料(S-1)の融点マイナス20℃に設定した。
次いで、予備加熱後の前記遠沈管を、温度75℃に加熱しつつ、前記遠沈管の長軸方向に振盪撹拌の操作を60分間続けた。ここでの加熱の温度条件は、予備加熱の温度条件と同様に、フラックス材料(S-1)の融点マイナス20℃に設定した。また、振盪撹拌の操作は、2000spm(strokes per minute)にして行った。
次いで、振盪撹拌の後、室温(23℃)まで冷却することにより、ソルダボール(C-1)からなるコア部と、グルタル酸の層(フラックス層)からなり、コア部の全体を被覆するシェル部と、を備えたフラックスコートボールを得た。
【0057】
(比較例1)
アセトンに、フラックス材料(S-1)を溶解させて、グルタル酸濃度が100g/Lの溶液を調製した。
次いで、前記溶液に、ソルダボール(C-1)6gを浸漬し、室温(23℃)で1時間の撹拌を行った。
次いで、撹拌後のソルダボール(C-1)を、前記溶液から取り出し、乾燥させてアセトンを揮発除去することにより、ソルダボール(C-1)からなるコア部と、グルタル酸の層(フラックス層)からなり、コア部の全体を被覆するシェル部と、を備えたフラックスコートボールを得た。
【0058】
<評価(1)>
上記で得られた実施例1のフラックスコートボール、及び比較例1のフラックスコートボールについて、外観、フラックスコートボールの径(R100)及びその標準偏差、フラックスコートボールの真球度及びその標準偏差、フラックス層の厚さ(T120)、フラックスコートボールに占めるシェル部の含有割合、フラックスコートボールの酸化膜厚、フラックス層の表面粗さ(Ra)、フラックス層の剥がれにくさ、フラックスコートボールの濡れ性、製造直後のボールの分散状態をそれぞれ評価した。
各評価の詳細を以下に記載した。
【0059】
[外観]
図2は、実施例1のフラックスコートボール、及び比較例1のフラックスコートボールの外観を示す写真である。
図2から、実施例1及び比較例1のフラックスコートボールのいずれも、コア部であるソルダボール(C-1)全体が、グルタル酸の層(フラックス層)で被覆されていること、が確認できる。
実施例1のフラックスコートボール表面の方が、比較例1のフラックスコートボール表面に比べて、平滑性が高いことが確認された。
【0060】
[フラックスコートボールの径(R100)及び真球度]
フラックスコートボールの径(R100)及び真球度は、CNC画像測定システムを使用して測定した。具体的には、株式会社ミツトヨ製のウルトラクイックビジョン、ULTRA QV350-PRO測定装置を使用した。
この測定装置により、フラックスコートボールの長径の長さ、直径の長さをそれぞれ測定し、500個の各フラックスコートボールの直径を長径で除した値、の算術平均値を算出して、真球度を求めた。値が上限である1.000に近いほど真球に近いことを表す。
また、500個の各フラックスコートボールの直径、の算術平均値を算出して、径(R100)を求めた。
上述のようにして求めた、フラックスコートボールの径(R100)及びその標準偏差、並びに、フラックスコートボールの真球度及びその標準偏差を表1に示した。
【0061】
[フラックス層の厚さ(T120)]
フラックス層の厚さ(T120)は、上記で求めたフラックスコートボールの径(R100)から、ソルダボール(C-1)の径(R110)63μmを差し引いた後、2で除すること(片側の層の厚さを算出)により求めた。この結果を表1に示した。
【0062】
[フラックスコートボールに占めるシェル部の含有割合]
フラックスコートボールに占めるシェル部の含有割合は、フラックスコートボールをアセトンで洗浄処理し、その後、乾燥処理を行い、洗浄処理前の質量と、乾燥処理後の質量とから求めた。この結果を表1に示した。
アセトンでの洗浄処理は、フラックスコートボールを、室温(23℃)のアセトン中に30分間浸漬して行った。乾燥処理は、室温下で行った。
シェル部の含有量=フラックスコートボールの洗浄処理前の質量-乾燥処理後の質量
シェル部の含有割合(質量%)=シェル部の含有量/フラックスコートボールの洗浄処理前の質量×100
【0063】
[フラックスコートボールの酸化膜厚]
フラックスコートボールの酸化膜厚は、コア部表面に存在する酸化膜の厚さ(コア部表面の酸化膜厚)を、以下のようにして測定することにより求めた。
測定試料であるフラックスコートボールを、アセトン中で20分間の条件で超音波洗浄した。次に、分析装置としてオージェ電子分光分析装置(アルバック・ファイ株式会社製のPHI700)を用い、前記超音波洗浄後の測定試料表面を、下記分析条件にて測定することにより、酸化膜厚を求めた。この酸化膜厚はSiO換算値である。この結果を表1に示した。
分析条件:加速電圧10kV、電流値10nA、分析径20μmに設定。
【0064】
[フラックス層の表面粗さ(Ra)]
フラックスコートボールの表面粗さ、すなわち、フラックス層の表面粗さ(Ra)は、以下のようにして測定することにより求めた。
測定試料であるフラックスコートボール表面、すなわちフラックス層表面を、コンフォーカル顕微鏡(機種名:OPTELICS C130、レーザーテック株式会社製)で測定した。対物レンズの倍率を50倍に調整し、z軸上における測定ピッチを0.1μmとして、任意の3個のフラックスコートボールの表面粗さ(Ra)を測定し、それらの算術平均を、真の算術平均粗さとして採用し、フラックス層の表面粗さ(Ra)を求めた。この結果を表1に示した。
【0065】
[フラックス層の剥がれにくさ]
各例のフラックスコートボールについて、フラックス層の剥がれにくさを、以下の試験方法により評価した。この結果を表1に示した。
【0066】
試験方法(1):円筒状の遠沈管(直径4cm、長さ12cm)に、フラックスコートボール5gを投入して密閉した。次いで、このフラックスコートボールを投入した前記遠沈管を、室温(23℃)で、前記遠沈管の長軸方向に振盪撹拌の操作を60分間続けた。振盪撹拌の操作後のフラックスコートボールの表面状態を、顕微鏡により観察した。
【0067】
試験方法(2):円筒状の遠沈管(直径4cm、長さ12cm)に、フラックスコートボール100個と、ソルダボール(Sn96.5質量%とAg3.0質量%とCu0.5質量%との合金からなるソルダボール、直径0.6mm)100個とを投入して密閉した。次いで、これらのボールを投入した前記遠沈管を、室温(23℃)で、前記遠沈管の長軸方向に振盪撹拌の操作を60分間続けた。振盪撹拌の操作後のフラックスコートボールの表面状態を、顕微鏡により観察した。
【0068】
[フラックスコートボールの濡れ性]
各例のフラックスコートボールについて、フラックスコートボールの濡れ性を、以下のFCボール濡れ広がり試験により評価した。この結果を表1に示した。
本評価におけるFCボール濡れ広がり試験は、ホットプレート上に、150℃で1時間焼き銅板を置き、その銅板上にフラックスコートボールを搭載し、窒素雰囲気でリフローした。リフロー条件は、ピーク温度250℃、昇温速度1℃/secに設定した。リフロー後、濡れ広がった状態のボールの径(ボール広がり径)を測定した。この測定を、フラックスコートボール10個について行い、その平均値を求めた。
濡れ広がった状態のボールの径(ボール広がり径)が、大きい値ほど、濡れ性は良いとされる。
【0069】
[製造直後のボールの分散状態]
製造直後のボールの分散状態について、実施例1の場合には、振盪撹拌の操作後のフラックスコートボールの分散状態を評価した。比較例1の場合には、アセトンを揮発除去した後のフラックスコートボールの分散状態を評価した。この結果を表1に示した。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示す結果から、本発明を適用した実施例1のフラックスコートボールは、比較例1のフラックスコートボールに比べて、ボール広がり径が大きい値であり、銅板に対する濡れ性がより高められていることが確認された。
【0072】
加えて、実施例1のフラックスコートボールの製造では、その製造直後、ボールが凝集することは無かった。一方、比較例1のフラックスコートボールの製造では、その製造直後、一部のボールが凝集していた。
また、実施例1のフラックスコートボールは、密閉容器内で、粉末状のフラックス材料(S-1)とソルダボール(C-1)とを加熱しつつ振盪撹拌することにより製造されている。このように、実施例1のフラックスコートボールは、湿式処理に比べて簡便な方法である乾式処理によって製造することが可能であることも確認された。
【0073】
<フラックスコートボールの製造(2)>
(実施例2~4)
フラックス材料(S-1)を、フラックス材料(S-2)、フラックス材料(S-3)、フラックス材料(S-4)へそれぞれ変更した以外は、実施例1のフラックスコートボールの製造方法と同様にして、実施例2~4の各フラックスコートボールを得た。
予備加熱の温度条件、振盪撹拌の際の加熱の温度条件は、何れの実施例においても、フラックス材料の融点マイナス20℃に設定した。すなわち、実施例2では124℃、実施例3では115℃、実施例4では133℃に設定した。
振盪撹拌の操作は、何れの実施例においても、実施例1と同様にして行った。
【0074】
(実施例5)
ソルダボール(C-1)をソルダボール(C-6)へ変更し、また、フラックス材料(S-1)をフラックス材料(S-5)へ変更した以外は、実施例1のフラックスコートボールの製造方法と同様にして、実施例5のフラックスコートボールを得た。
予備加熱の温度条件、振盪撹拌の際の加熱の温度条件は、フラックス材料であるピメリン酸の融点マイナス20℃、すなわち、実施例5では86℃に設定した。振盪撹拌の操作は、実施例1と同様にして行った。
【0075】
(実施例6)
円筒状の遠沈管(直径4cm、長さ12cm)に、全体積を100%として累積カーブを求めたときの50%粒子径が314μmの粉末状のフラックス材料(S-1)1.2gと、ソルダボール(C-2)6gとを投入して密閉した。
次いで、フラックス材料(S-1)とソルダボール(C-2)とを投入した前記遠沈管に対して、温度132℃で5分間の予備加熱を行った。予備加熱の温度条件は、フラックス材料(S-1)の融点マイナス20℃に設定した。
次いで、予備加熱後の前記遠沈管を、温度132℃で、前記遠沈管の長軸方向に振盪撹拌の操作を60分間続けた。ここでの加熱の温度条件は、予備加熱の温度条件と同様に、フラックス材料(S-1)の融点マイナス20℃に設定した。また、振盪撹拌の操作は、2000spmにして行った。
次いで、振盪撹拌の操作後、室温(23℃)まで冷却することにより、ソルダボール(C-2)からなるコア部と、グルタル酸の層(フラックス層)からなり、コア部の全体を被覆するシェル部と、を備えたフラックスコートボールを得た。
【0076】
(実施例7)
フラックス材料(S-1)を、フラックス材料(S-6)へ変更した以外は、実施例6のフラックスコートボールの製造方法と同様にして、実施例7のフラックスコートボールを得た。
予備加熱の温度条件、振盪撹拌の際の加熱の温度条件は、フラックス材料であるアジピン酸の融点マイナス20℃、すなわち、実施例7では165℃に設定した。振盪撹拌の操作は、実施例6と同様にして行った。
【0077】
(実施例8~10)
ソルダボール(C-1)を、ソルダボール(C-3)、ソルダボール(C-4)、ソルダボール(C-5)へそれぞれ変更した以外は、実施例1のフラックスコートボールの製造方法と同様にして、実施例8~10の各フラックスコートボールを得た。
予備加熱の温度条件、振盪撹拌の際の加熱の温度条件は、何れの実施例においても、フラックス材料であるグルタル酸の融点マイナス20℃、すなわち、実施例8~10ではいずれも75℃に設定した。振盪撹拌の操作は、何れの実施例においても、実施例1と同様にして行った。
【0078】
(実施例11)
ソルダボール(C-1)をソルダボール(C-2)へ変更し、また、全体積を100%として累積カーブを求めたときの50%粒子径が314μmの粉末状のフラックス材料(S-1)の投入量を、3gへ変更した以外は、実施例1のフラックスコートボールの製造方法と同様にして、実施例11のフラックスコートボールを得た。
予備加熱の温度条件、振盪撹拌の際の加熱の温度条件は、フラックス材料であるグルタル酸の融点マイナス20℃、すなわち、実施例11では75℃に設定した。振盪撹拌の操作は、実施例1と同様にして行った。
【0079】
(実施例12)
ソルダボール(C-1)をソルダボール(C-2)へ変更し、また、全体積を100%として累積カーブを求めたときの50%粒子径が314μmの粉末状のフラックス材料(S-1)の投入量を、10gへ変更した以外は、実施例1のフラックスコートボールの製造方法と同様にして、実施例12のフラックスコートボールを得た。
予備加熱の温度条件、振盪撹拌の際の加熱の温度条件は、フラックス材料であるグルタル酸の融点マイナス20℃、すなわち、実施例12では75℃に設定した。振盪撹拌の操作は、実施例1と同様にして行った。
【0080】
<評価(2)>
上記で得られた実施例2~12のフラックスコートボールについて、外観、フラックスコートボールの径(R100)及びその標準偏差、フラックスコートボールの真球度及びその標準偏差、フラックス層の厚さ(T120)、フラックスコートボールに占めるシェル部の含有割合、フラックスコートボールの酸化膜厚、フラックス層の表面粗さ(Ra)、フラックス層の剥がれにくさ、フラックスコートボールの濡れ性、製造直後のボールの分散状態 をそれぞれ評価した。
各評価の詳細については、上記<評価(1)>で記載した説明と同様である。これらの結果を、図3及び表2~4に示した。
【0081】
[外観]
図3は、実施例2~5の各フラックスコートボール、及びソルダボールのみの外観を示す写真である。
図3から、振盪撹拌する乾式処理工程において、加熱の温度条件の適正化により、コア部である金属ボールを、各種フラックス材料で被覆することが可能であること、が確認できる。
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
表2~4に示す結果から、本発明を適用した実施例2~12のフラックスコートボールは、いずれも、ボール広がり径が大きい値であり、銅板に対する濡れ性がより高められていることが確認された。
【0086】
加えて、実施例2~12のフラックスコートボールの製造では、何れの場合も、その製造直後、ボールが凝集することは無かった。
また、実施例2~12のフラックスコートボールは、密閉容器内で、粉末状のフラックス材料とソルダボールとを加熱しつつ振盪撹拌することにより製造されている。このように、実施例2~12のフラックスコートボールは、いずれも、湿式処理に比べて簡便な方法である乾式処理によって製造することが可能であることも確認された。
【符号の説明】
【0087】
100 フラックスコートボール、110 コア部、120 シェル部
【要約】
【課題】ウェーハに対する濡れ性が高められたフラックスコートボール;ボールの凝集が生じにくく、簡便な方法であるフラックスコートボールの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、コア部110と、コア部110を被覆するシェル部120と、を備えるフラックスコートボール100を採用する。コア部110は、ソルダボール又は銅核ボールからなり;シェル部120は、活性剤及び樹脂成分からなる群より選択される少なくとも一種を含有するフラックス層からなり;フラックスコートボール100における酸化膜厚が3nm以下であることを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3