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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】建造物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20221207BHJP
   E04D 1/30 20060101ALI20221207BHJP
   E04D 13/16 20060101ALI20221207BHJP
   E04B 7/18 20060101ALI20221207BHJP
   E04B 1/70 20060101ALI20221207BHJP
   E04B 1/684 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
E04B1/94 G
E04D1/30 601P
E04D13/16 D
E04B7/18 B
E04B1/70 E
E04B1/684 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018171552
(22)【出願日】2018-09-13
(65)【公開番号】P2020041373
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】河上 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】西村 健
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-162290(JP,A)
【文献】特開2006-284066(JP,A)
【文献】特開平08-068178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E04D 1/00-3/40,13/00-15/07
E04B 7/00-7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物であって、
棟に沿って形成された通気口を有する屋根部材と、
前記屋根部材から下に延びるとともに、前記通気口と交差する方向に沿って形成された壁部材と、
前記屋根部材との間に上下方向の隙間が形成された状態で、前記壁部材に上から重なる領域において前記通気口を上から覆う通気口被覆部と、
前記壁部材と前記通気口被覆部との間の前記壁部材に上から重なる領域において、前記壁部材の上面から前記通気口を通じて前記通気口被覆部の下面までの範囲に設けられた少なくとも1つの障壁と、を備える、建造物。
【請求項2】
請求項1に記載の建造物は、2枚の前記障壁を有し、
前記壁部材は、前記棟に沿う方向に間隔を空けて互いに対向する2枚の壁板を有し、
前記各壁板の上から重なる領域に、前記各障壁が設けられている、建造物。
【請求項3】
前記障壁は、
前記屋根部材の上面から前記通気口被覆部の下面まで延びる上側障壁部と、
前記上側障壁部から前記通気口を通じて前記壁部材まで延びる下側障壁部と、を有する請求項1または2に記載の建造物。
【請求項4】
請求項3に記載の建造物は、
前記上側障壁部を構成するための下側部材および上側部材と、
前記屋根部材における前記通気口の縁部に設けられる瓦と、を備え、
前記下側部材は、前記屋根部材に取り付けられているとともに、前記屋根部材の上面から上に延びる第1の障壁部を有し、
前記上側部材は、前記通気口被覆部と、前記通気口被覆部から側方に延びて前記瓦の一部を上から覆う瓦被覆部と、前記瓦と前記瓦被覆部との間に設けられ、前記瓦の上面と前記瓦被覆部との間の水の流通を規制する規制部と、前記通気口被覆部から前記第1の障壁部と水平方向に重なる位置まで延びる第2の障壁部と、を有する、建造物。
【請求項5】
請求項4に記載の建造物は、
前記棟が延びる方向において前記上側部材および前記下側部材の両側で、前記屋根部材における前記通気口の縁部に取り付けられた固定部と、前記固定部から前記瓦の上まで延びて前記屋根部材との間で前記瓦を挟持する挟持部と、を有する挟持部材と、
前記棟に沿って延びるとともに、前記挟持部を上方および前記棟の側方から覆う被覆部材と、を有し、
前記上側部材および前記下側部材は、前記被覆部材によって上方および前記棟の側方から覆われている、建造物。
【請求項6】
前記下側部材は、
前記屋根部材における前記通気口の縁部に取り付けられる取付け部と、
前記取付け部から立ち上がり、前記縁部に沿って延びるとともに前記第1の障壁部に接続される立ち上がり部と、を有する、請求項4または5に記載の建造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、棟に沿って通気口が形成された切妻屋根と、当該通気口の上部に設けられたカバーと、棟に沿って隣接する2つの部屋を区画する界壁と、を有する建造物が従来から知られている。
【0003】
前記通気口は、屋根の上下での通気を許容し、前記カバーは、当該通気口からの雨水等の浸入を抑制する。また、界壁は、床から屋根の下面まで延びている。
【0004】
特許文献1に記載の建造物の一室で火災が生じた場合、炎や火の粉が、屋根の下面に達し、通気口およびカバーを経て屋外に噴出または飛散するおそれがある。
【0005】
ここで、特許文献2には、屋根の棟に沿って形成された通気口(開口部)を有する建造物において、建造物内部で火災が発生した場合に火の粉を含む空気が外に排出されないようにするため、通気口に防火ダンパーを配置することが開示されている。当該防火ダンパーは、熱膨張部材を備え、熱を感知すると熱膨張部材が膨張して屋根の上で通気口を覆う。
【0006】
特許文献1に記載の建造物の通気口に、特許文献2に記載の防火ダンパーを配置すれば、建造物の一室で生じた炎や火の粉が、通気口およびカバーを経て屋外に噴出または飛散する可能性は低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-213832号公報
【文献】特開2003-328470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載の防火ダンパーは、屋根の棟の上方に配置される。そのため、特許文献2に記載の建造物において、界壁上に防火ダンパーを配置したとしても、一室で生じた炎や火の粉が防火ダンパーと界壁との間を通じて隣室に噴出または飛散し、建造物内で延焼するおそれがある。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、屋根の上下での通気を許容しつつ、一室で生じた炎や火の粉の隣室への噴出または飛散を抑制することが可能な建造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、種々検討した結果、上記目的は、以下の発明により達成されることを見出した。
【0011】
本発明の一局面に係る建造物は、棟に沿って形成された通気口を有する屋根部材と、前記屋根部材から下に延びるとともに、前記通気口と交差する方向に沿って形成された壁部材と、前記屋根部材との間に上下方向の隙間が形成された状態で、前記壁部材に上から重なる領域において前記通気口を上から覆う通気口被覆部と、前記壁部材と前記通気口被覆部との間の前記壁部材に上から重なる領域において、前記壁部材の上面から前記通気口を通じて前記通気口被覆部の下面までの範囲に設けられた少なくとも1つの障壁と、を備える。
【0012】
上記の建造物は、通気口被覆部および壁部材に加えて、壁部材の上面から通気口被覆部の下面までの範囲に設けられた障壁を備える。そのため、壁部材によって区画された隣接する2つの部屋では、通気口被覆部および屋根部材の下面まで、通気口を通じた換気が独立して保たれる。また、一方の部屋で生じた火災に起因する炎や火の粉は、障壁によって他の部屋への噴出または飛散が抑制される。
【0013】
したがって、屋根の上下での通気を許容しつつ、一室で生じた炎や火の粉の隣室への噴出または飛散を抑制することができる。
【0014】
上記の建造物は、2枚の前記障壁を有し、前記壁部材は、前記棟に沿う方向に間隔を空けて互いに対向する2枚の壁板を有し、前記各壁板の上から重なる領域に、前記各障壁が設けられていてもよい。
【0015】
この態様では、2枚の壁板とその間の空間を含む、壁部材全体と同じ厚さを有する障壁を用いる場合に比べて、障壁を軽量かつ簡単な構成とすることができる。
【0016】
上記の建造物において、障壁は、前記屋根部材の上面から前記通気口被覆部の下面まで延びる上側障壁部と、前記上側障壁部から前記通気口を通じて前記壁部材まで延びる下側障壁部と、を有していてもよい。
【0017】
この態様では、建造物に通気口を有する屋根部材を設けた後、通気口を通じて壁部材まで延びる下側障壁部を設け、屋根部材の上側に上側障壁部を設けることにより、障壁を設けることができる。そのため、障壁を比較的容易に設けることができる。
【0018】
上記の建造物は、前記上側障壁部を構成するための下側部材および上側部材と、前記屋根部材における前記通気口の縁部に設けられる瓦と、を備え、前記下側部材は、前記屋根部材に取り付けられているとともに、前記屋根部材の上面から上に延びる第1の障壁部を有し、前記上側部材は、前記通気口被覆部と、前記通気口被覆部から側方に延びて前記瓦の一部を上から覆う瓦被覆部と、前記瓦と前記瓦被覆部との間に設けられ、前記瓦の上面と前記瓦被覆部との間の水の流通を規制する規制部と、前記通気口被覆部から前記第1の障壁部と水平方向に重なる位置まで延びる第2の障壁部と、を有していてもよい。
【0019】
ここで、一般に、屋根部材に対する瓦の位置は、建造物ごとに変動することが多い。また、上側障壁部の寸法は、屋根部材に対する瓦の位置によって変動する。そのため、上側障壁部を一体とする場合には、作業現場において、屋根部材および瓦の位置が確定した後、これらの位置に応じた寸法の上側障壁部を作製する必要がある。しかし、この態様では、第1の障壁部と第2の障壁部とが重なる部分を有し、この重なる部分の大きさは、建造物において設けられた屋根部材に対する瓦の位置に応じて変動する。そのため、作業現場において屋根部材および瓦の位置に応じた寸法の第1の障壁部および第2の障壁部を作製する必要がない。
【0020】
さらに、この態様では、上側部材に設けられた規制部によって、雨水等の水が通気口に向かって瓦の上面を伝わるのを抑制することができる。
【0021】
上記の建造物は、前記棟が延びる方向において前記上側部材および前記下側部材の両側で、前記屋根部材における前記通気口の縁部に取り付けられた固定部と、前記固定部から前記瓦の上まで延びて前記屋根部材との間で前記瓦を挟持する挟持部と、を有する挟持部材と、前記棟に沿って延びるとともに、前記挟持部材を上方および前記棟の側方から覆う被覆部材と、を有し、前記上側部材および前記下側部材は、前記被覆部材によって上方および前記棟の側方から覆われていてもよい。
【0022】
この態様では、通気口の壁部材の上方の部分および壁部材の上方以外の部分の双方を共通の被覆部材によって覆うことができる。
【0023】
上記の建造物において、前記下側部材は、前記屋根部材における前記通気口の縁部に取り付けられる取付け部と、前記取付け部から立ち上がり、前記縁部に沿って延びるとともに前記第1の障壁部に接続される立ち上がり部と、を有してもよい。
【0024】
この態様では、屋根部材と瓦との間に水が浸入しても、この水が通気口に浸入するのを立ち上がり部によって抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、比較的単純な構成の障壁によって、隣接する各部屋における通気口を通じた換気を保ちつつ、一方の部屋から隣の部屋への炎や火の粉の移動を抑制することが可能な建造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る建造物の概略平面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る建造物の棟部分の構造を示す斜視図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る建造物の図1のIII-III線での断面図である。
図4図4は、図3の断面図において棟包み取付金具を省略した図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る建造物の界壁の棟周辺部の棟包みを省略した平面図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係る建造物の界壁の棟周辺部の正面図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係る下側部材の斜視図である。
図8図8は、本発明の一実施形態に係る上側部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態に係る建造物について図面に基づいて説明する。
【0028】
図1は、本実施形態に係る建造物の概略平面図である。図2は、本実施形態に係る建造物の棟部分の構造を示す斜視図である。図3は、本実施形態に係る建造物の図1のIII-III線での断面図である。図4は、図3の断面図において棟包み取付金具を省略した図である。図5は、本実施形態に係る建造物の界壁の棟周辺部の棟包みを省略した平面図である。図6は、本実施形態に係る建造物の界壁の棟周辺部の正面図である。
【0029】
以下の説明では、図1の右方向を+X方向、左方向を-X方向、上方向を+Y方向、下方向を-Y方向とし、図1の紙面と直交する方向で、紙面手前方向を+Z方向(鉛直上向き方向)、紙面奥行き方向を-Z方向(鉛直下向き方向)として説明する。また、+X方向および-X方向を総称してX方向、+Y方向および-Y方向を総称してY方向、+Z方向および-Z方向を総称してZ方向という。X方向とY方向とZ方向とはそれぞれ直交する。
【0030】
建造物1は、X方向に延びる棟3に沿って通気口5が形成された寄棟の屋根2と、棟3に沿って隣接する2つの部屋を区画する界壁(壁部材)4と、通気口5を上(+Z方向)から覆う通気口被覆ユニット7と、を備える。
【0031】
図2に示すように、屋根2は、棟3に沿って形成された通気口5が形成されるようにY方向に離間し、通気口5からY方向の両側に向かって下向きに傾斜する2枚の野地板11と、それぞれの野地板11における通気口5の縁に沿って互いに対向するように設けられた添え板12と、野地板11の上面および添え板12の通気口5の反対側の面を覆い、野地板11を防水するアスファルトルーフィング14と、を有する。
【0032】
添え板12は、野地板11の上縁に取り付けられる取付け部12aと、取付け部12aから立ち上がる立ち上がり部12bと、を有する。添え板12は、立ち上がり部12bによってアスファルトルーフィング14を通気口5の縁で立ち上がらせ、通気口5への雨水の浸入を抑制する。添え板12には、例えばアルミニウム板等の金属板を用いることができる。
【0033】
また、屋根2は、アスファルトルーフィング14上で瓦桟15に引掛けられるように設けられた瓦16と、野地板11との間で瓦16を挟持する挟持部材13と、を有する。
【0034】
挟持部材13は、通気口5に沿って間欠的に設けられた複数組の固定部13a、遊動部(挟持部)13bおよびボルト13cと、通気口5の両側に沿って延びる一対の下地板13dおよび水密材13eと、を有する。
【0035】
固定部13aは、両方の野地板11における通気口5の縁部に固定された一対の固定片と、各固定片の通気口5側の端部から立ち上がる一対の立ち上がり部と、各立ち上がり部の上部同士を連結し水平方向(Y方向)に延びる連結部と、を有する。遊動部13bは、固定部13aの連結部の上方からY方向の両側(通気口5から離れる方向)に向かって瓦16の上方まで延びる。ボルト13cは、固定部13aの連結部に設けられた雌ねじと螺合し、遊動部13bが固定部13aに対してZ方向に移動可能な状態で、固定部13aと遊動部13bとを連結する。固定部13aと添え板12とが重なる部分では、添え板12が固定部13aの上に設けられる。
【0036】
下地板13dは、添え板12の立ち上がり部12bと接した状態で通気口5のY方向両側でX方向に沿って互いに平行に延びている。下地板13dの上面は、通気口5から離れるに従って下向きに延びる傾斜を有する。また、下地板13dは、遊動部13bが嵌まり込む窪みを上面に有する。
【0037】
水密材13eは、下地材13dの下面に設けられている。
【0038】
挟持部材13のボルト13cを締め付けることにより、下地板13dおよび水密材13eは、野地板11との間で瓦16を挟持する。なお、瓦16は、ビス15aによっても、瓦桟15とともに野地板11に固定されている。固定部13a、遊動部13bおよびボルト13cには、例えば金属を用いることができ、下地板13dには、例えば木材を用いることができる。
【0039】
さらに、屋根2は、通気口5のY方向両側で下地板13dを覆う棟捨て水切り21と、両方の棟捨て水切り21の上面にまたがり、X方向に間欠的に設けられた棟包み取付金具22と、棟捨て水切り21および棟包み取付金具22を上方および側方から覆うようにX方向に延びる棟包み(被覆部材)24と、を備える。
【0040】
棟捨て水切り21は、通気口5のY方向の両側でX方向に沿って互いに平行に延びている。各棟捨て水切り21は、下地板13dの上面および側面を覆った状態で下地板13d上に支持される上段部21aと、上段部21aから瓦16の上面に向かってY方向外側に延びる下段部21bと、下段部21bの下面に設けられた規制部21cと、を有する。上段部21aは、下地板13dの上面に沿って傾斜する。規制部21cは、下段部21bによって瓦16の上面に押し付けられている。これにより、規制部21cは、瓦16の上面と下段部21bとの間の水の流通を規制し、例えば瓦16の上面の雨水が風によって下段部21bの下側を通って通気口5側へ流通するのを抑制する。棟捨て水切り21の上段部21aおよび下段部21bには、例えばアルミニウム板等の金属板を用いることができ、規制部21cには、例えばエチレンプロピレンゴムを用いることができる。
【0041】
棟包み取付金具22は、一方の棟捨て水切り21の上面に沿って延びる部分と、他方の棟捨て水切り21の上面に沿って延びる部分と、を有する。また、棟包み取付金具22は、ビス22aによって棟捨て水切り21とともに下地板13dに固定されている。棟包み取付金具22の上面には、図2に示すように、弾性および遮水性を有する材料からなるシーリング23が設けられている。
【0042】
棟包み24は、棟捨て水切り21の上段部21aに沿って設けられた天板24aと、天板24aの両側の下端から下向きに延びる側板24bと、を有する。
【0043】
棟包み24は、棟包み取付金具22の上面に設けられた支持部22bによって棟捨て水切り21とZ方向に隙間を空けた状態で支持されている。また、棟包み24は、側板24bの内面の下端部に設けられた被係止部24dによって棟包み取付金具22の下端に設けられた係止部22cに係止される。
【0044】
複数の棟包み24を通気口5の上部にX方向に並べて設ける場合、隣接する棟包み24のX方向の端部を、棟包み取付金具22の上部において互いに接するようにまたは一部が重なるように設けるとともに、棟包み24の下面をシーリング23に接触させ、棟包み24の端部から通気口5方向への雨水の浸入を抑制する。
【0045】
界壁4は、図3および図4に示すように、野地板11の下面から下(-Z方向)に向かって建造物1の床面(不図示)まで延びるとともに、通気口5と交差する方向(Y方向)に沿って形成されている。野地板11の下面を支持する母屋11aは、界壁4を貫通した状態で棟5に沿った方向(X方向)に延びている。
【0046】
また、界壁4は、図5および図6に示すように、X方向に並んで所定の間隔を空けて設けられた2枚の壁板4a,4bを有する。壁板4a,4bには、例えば石こうボード等を用いることができる。
【0047】
ここで、添え板12、下地板13d、水密材13eおよび棟捨て水切り21は、通気口5に沿ってX方向に間欠的に複数設けられている。X方向に隣り合う添え板12、下地板13dおよび棟捨て水切り21の間隔は、界壁4の厚みに対応しており、当該間隔の設けられる位置は、界壁4の少なくとも一部に上から重なる位置である。X方向に隣り合う添え板12、下地板13d、水密材13eおよび棟捨て水切り21の間には、通気口被覆ユニット7が設けられている。言い換えると、通気口被覆ユニット7のX方向の両側には添え板12、下地板13dおよび棟捨て水切り21が設けられている。通気口被覆ユニット7は、下側部材31と、上側部材35と、を備える。
【0048】
図7は、下側部材の斜視図である。下側部材31は、図3図7に示すように、通気口5の両側の野地板11にまたがって両野地板11上に設けられた基部32と、基部32のX方向両側の端部から+Z方向に延びる突出部31aと、を有する。基部32は、通気口5に対してY方向側の野地板11に沿って設けられた部分と、-Y方向側の野地板11に沿って設けられた部分と、を有し、これらの両部分は通気口5に沿って稜線を形成するように連結されている。
【0049】
下側部材31は、X方向の中心を通りX方向に垂直な面を対称面として面対称な形状を有する。突出部31aも、+X方向側と-X方向側とで上記対称面に対して面対称な形状であるため、+X方向側の突出部31aについてのみ説明する。
【0050】
+X方向側の突出部31aは、基部32上に立設されているとともに稜線の両側にわたってY方向に延びる第1の障壁部34と、第1の障壁部34のY方向の両端から基部32の+X方向の端面まで延びる立ち上がり部33と、を有する。立ち上がり部33は、基部32の稜線を通りY方向に垂直な面を対称面として対称に設けられている。これらの立ち上がり部33の互いに対向する面同士の間隔は、通気口5を挟んで対向する添え板12の立ち上がり部12bの互いに逆を向く面同士の間隔と同じかそれよりも大きい。
【0051】
下側部材31を+Z方向から見て、基部32の突出部31aに囲まれた部分には切り欠きが設けられている。基部32は、第1の障壁部34に挟まれた部分32aによって、通気口5の界壁4に重なる部分を上から覆う。下側部材31には、例えばガルバリウム鋼板(登録商標)等の金属板を用いることができる。
【0052】
ここで、X方向に隣り合う添え板12のX方向の間隔をaとする。また、下側部材31の2枚の第1の障壁部34の互いに逆を向く面同士の間隔をb、+X方向および-X方向の立ち上がり部33のX方向の長さをそれぞれcとする。図6には、間隔a、間隔bおよび長さcを示している。本実施形態では、間隔a、間隔bおよび長さcは、下記(1)式を満たす。
b≦a<b+2c …(1)
【0053】
これにより、下側部材31を添え板12に外側から嵌合させる際には、下側部材31のX方向両側の突出部31aは、添え板12の立ち上がり部12bによって誘い込まれ、下側部材31を野地板11の上面の所定の位置に容易に設けることができる。間隔a、間隔bおよび長さcは、下記(2)式を満たすことが好ましい。この場合、下側部材31のX方向の位置にかかわらず添え板12から突出部31aが外れることがなく、安定して嵌合させることができる。
b≦a<b+c …(2)
【0054】
図3および図4に示すように、下側部材31が野地板11の上面に設けられた状態では、アスファルトルーフィング14は、基部32に沿って基部32の上面に設けられた部分と、立ち上がり部33の通気口5と反対側の面に沿って+Z方向に延びる部分と、を有する。基部32の上面のアスファルトルーフィング14の上には、瓦桟15および瓦16が設けられている。なお、添え板12の立ち上がり部12bと下側部材31の立ち上がり部33との間には、アスファルトルーフィング14は設けられていない。
【0055】
図8は、上側部材の斜視図である。上側部材35は、図3図6および図8に示すように、通気口5を上から覆う通気口被覆部36と、通気口被覆部36から側方(Y方向)に延びて瓦16の一部を上から覆う瓦被覆部37と、瓦16と瓦被覆部37との間に設けられた規制部39と、通気口被覆部36から-Z方向に延びる2枚の第2の障壁部38と、を有する。
【0056】
2枚の第2の障壁部38は、それぞれ界壁4の壁板4a,4bに上から重なる領域に設けられている。第2の障壁部38は、いずれも通気口被覆部36から第1の障壁部34と水平方向(X方向)に重なる位置まで-Z方向に延びる。また、第2の障壁部38は、それぞれ、2枚の第1の障壁部34で挟まれた内側の領域に設けられている。第2の障壁部38は、第1の障壁部34に接していてもよい。
【0057】
通気口被覆部36は、野地板11との間に上下方向(Z方向)の隙間が形成された状態で、界壁4に上から重なる領域および界壁4のX方向の両側の領域において通気口5を上(+Z方向)から覆っている。
【0058】
通気口被覆部36は、界壁4に上から重なる領域では、基部32の第1の障壁部34に挟まれた部分32a、および突出部31aに囲まれた部分の上から通気口5を覆っている。また、界壁4のX方向の両側の領域では、突出部31aに囲まれた部分の上から通気口5を覆っている。
【0059】
通気口被覆部36は、X方向両側の端部と当該各端部に近い方の第2の障壁部38との間の部分で、通気口5の両側の下地板13dの上面およびY方向外側の側面に接している。これにより、通気口被覆部36は、下地板13dの途切れた部分の端部およびその近傍を包むように覆うとともに、下地板13dを覆った部分において下地板13dに支持される。
【0060】
瓦被覆部37は、通気口被覆部36から瓦16の上面に向かってY方向外側に延びる。規制部39は、瓦被覆部37の下面に取り付けられ、瓦被覆部37によって瓦16の上面に押し付けられている。これにより、規制部39は、瓦16の上面と瓦被覆部37との間の水の流通を規制し、例えば瓦16の上面の雨水が風によって瓦被覆部37の下側を通って通気口5側へ流通するのを抑制する。規制部39は、例えばエチレンプロピレンゴムを用いることができる。また、上側部材35の規制部39以外の部分には、例えばガルバリウム鋼板(登録商標)等の金属板を用いることができる。
【0061】
通気口被覆部36および瓦被覆部37のX方向に垂直な面による断面の大きさは、棟捨て水切り21のX方向に垂直な面による断面の形状と同じかそれよりも小さい。そのため、本実施形態に係る建造物1では、棟包み24は、棟捨て水切り21および挟持部材13を+Z方向およびY方向の両側から覆っているのと同様に、上側部材35および下側部材31を+Z方向およびY方向の両側から覆っている。
【0062】
建造物1は、界壁4の上面から通気口5を通じて通気口被覆部36の下面までの範囲に設けられた障壁6を備える。障壁6は、野地板11の上面から通気口被覆部36の下面まで延びる上側障壁部と、上側障壁部から通気口5を通じて界壁4まで延びる下側障壁部8と、を有する。通気口被覆ユニット7は、上側障壁部を構成するためのものであり、上側障壁部は、第1の障壁部34および第2の障壁部38によって構成される。
【0063】
下側障壁部8は、界壁4の上面から通気口5を通じて第1の障壁部34の下面までの範囲に設けられている。下側障壁部8は、第1の障壁部34および基部32と、壁板4a,4bのそれぞれとの間の、壁板4a,4bに上から重なる領域において、壁板4a,4bの上端と、野地板11の上端と、第1の障壁部34および基部32の下端と、で囲まれた隙間に埋設されている。下側障壁部8は、例えばロックウール等の不燃材からなるものとすることができる。
【0064】
次に、本実施形態の建造物1において、界壁4によって区画された一室で火災が発生した場合に炎や火の粉(以下「炎等」という。)が隣室へ噴出、飛散するのが抑制される仕組みについて説明する。
【0065】
図3図6を参照して、界壁4によって区画された一室で火災が発生した場合を考える。本実施形態の建造物1において、下側部材31、上側部材35および下側障壁部8の1つでも欠けた場合には、上昇気流に伴って界壁4に沿って上昇した炎等は、通気口5または野地板11と棟包み24との間の空間を通じて、界壁4を挟む隣室に向かって噴出、飛散する。
【0066】
一方、下側部材31、上側部材35および下側障壁部8が揃っている場合には、炎等は、上昇気流に伴って界壁4に沿って上昇した後、通気口5において下側障壁部8に沿って上昇し、さらに第1の障壁部34および第2の障壁部38に沿って上昇した後、通気口被覆部36、下側部材31の立ち上がり部33および添え板12の立ち上がり部12bによって+X方向に導かれる。そのため、炎等の界壁4を挟む隣室への移動が抑制される。このとき、界壁4の両側の部屋では、通気口5を通じた換気が独立して保たれる。
【0067】
さらに、本実施形態の建造物1において、屋根2に降り注いだ雨水が通気口5に流れ込むのが抑制される仕組みについて説明する。
【0068】
例えば、風を伴って雨水が瓦16の上面を伝って通気口5に向かって流れた場合には、規制部21cおよび規制部39によって、雨水が棟捨て水切り21または瓦被覆部37と瓦16との間に浸入するのが抑制される。雨水が棟捨て水切り21または瓦被覆部37と瓦16との間に浸入したとしても、下地板13dおよび水密材13eによって、雨水が通気口5に到達するのが抑制される。棟捨て水切り21の下段部21bまたは上側部材35の瓦被覆部37に乗り上げた雨水は、上段部21aまたは通気口被覆部36によって通気口5から離れる方向に導かれる。
【0069】
瓦16の隙間から野地板11方向に落下した雨水は、アスファルトルーフィング14によって野地板11に浸透するのが抑制される。アスファルトルーフィング14上に落下した雨水が風によって通気口5方向に流れた場合、瓦桟15、添え板12の立ち上がり部12bおよび基部32によって、通気口5への雨水の浸入が抑制される。
【0070】
本実施形態の建造物1では、界壁4が有する壁板4a,4bのそれぞれに障壁6を設けている。そのため、壁板4a,4b同士の間の空間を含めた界壁4全体の厚さにわたる厚さを有する障壁6を設ける場合に比べて、軽量かつ簡単な構成で障壁6を設けることができる。
【0071】
また、本実施形態の建造物1では、障壁6は、下側障壁部8と、上側障壁部を構成する第1の障壁部34および第2の障壁部38と、を有する。そのため、通気口5を有する野地板11を設けた後、下側障壁部8を設け、その後第1の障壁部34および第2の障壁部38を有する通気口被覆ユニット7を設けることにより、障壁6を設けることができる。そのため、下側障壁部8と上側障壁部とが一体である場合に比べて容易に障壁6を設けることができる。
【0072】
本実施形態の建造物1では、さらに、通気口被覆ユニット7は、下側部材31と上側部材35とによって構成されている。ここで、一般に、野地板11に対する瓦16の位置は、建造物1ごとに変動することが多い。そのため、通気口被覆ユニット7を構成する下側部材31と上側部材35とが一体に設けられている場合、作業現場において野地板11および瓦16の位置が確定した後、これらの位置に応じた寸法の通気口被覆ユニット7を作製する必要がある。しかし、本実施形態の建造物1では、下側部材31の第1の障壁部34と上側部材35の第2の障壁部38とがX方向に重なる部分を有し、この重なる部分の大きさは、建造物1において設けられた野地板11に対する瓦16の位置に応じて変動する。そのため、本実施形態の建造物1では、作業現場において設けられた野地板11に対する瓦16の位置に応じた寸法に、第1の障壁部34および第2の障壁部38の大きさを調整する必要がなく、あらかじめ用意した下側部材31および上側部材35をそのまま使用することができる。
【0073】
(本実施形態の変形例)
界壁4は、1枚の石こうボードからなるものであってもよい。この場合、障壁6も1箇所に設ければよい。
【0074】
上側部材35および下側部材31は、一体に形成されていてもよい。また、上側部材35および下側部材31に加えて下側障壁部8も、一体に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 建造物
3 棟
4 界壁(壁部材)
4a,4b 壁板
5 通気口
6 障壁
8 下側障壁部
11 野地板(屋根部材)
13 挟持部材
13a 固定部
13b 遊動部(挟持部)
13d 下地板(挟持部)
13e 水密材(挟持部)
16 瓦
24 棟包み(被覆部材)
31 下側部材(上側障壁部)
31a 突出部
32 基部
33 立ち上がり部
34 第1の障壁部(上側障壁部)
35 上側部材(上側障壁部)
36 通気口被覆部
37 瓦被覆部
38 第2の障壁部(上側障壁部)
39 規制部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8