(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】車両用遠隔操作装置
(51)【国際特許分類】
G05D 1/00 20060101AFI20221207BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
G05D1/00 B
H04Q9/00 301B
(21)【出願番号】P 2018239563
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】秋田 晃
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-272835(JP,A)
【文献】特開平06-274223(JP,A)
【文献】特開昭56-123015(JP,A)
【文献】特開2018-123000(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0336785(US,A1)
【文献】実開平04-136008(JP,U)
【文献】実開昭63-026140(JP,U)
【文献】実開昭63-129632(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を遠隔操作可能に構成される携帯機と、
前記車両に対する前記携帯機の位置を特定可能に構成される位置特定部と
、
前記携帯機に対する操作に基づいて前記車両を制御するように構成される制御部とを備え
、
前記制御部は、前記車両の進行方向に位置する進行領域を複数の区域に分割するように特定する構成であり、
前記複数の区域は少なくとも1つの進行許可区域を含み、
該進行許可区域が、前記車両に対して正面に位置すると共に進行方向に延びる正面区域となっており、
前記制御部は、前記携帯機が前記進行許可区域内に位置する場合に、前記車両を進行させるように構成されている、
車両用遠隔操作装置であって、
前記車両用遠隔操作装置は、前記車両が走行する道の幅方向の側方端を特定するように構成されており、
前記制御部は、前記道の側方端を特定できる場合には、前記道の側方端に対応した前記正面区域の幅方向の側方境界を設定し、かつ前記道の側方端を特定できない場合には、前記車両の幅方向の側方端に対応した前記正面区域の側方境界を設定するように構成されている、車両用遠隔操作装置。
【請求項2】
前記位置特定部が、前記車両及び前記携帯機間の距離を取得可能に構成され
、
前記制御部は、前記携帯機が前記正面区域内に位置する場合に、前記位置特定部により得られる前記車両及び前記携帯機間の距離の取得値を、進行方向にて第1距離以上かつ該第1距離よりも大きな第2距離以下で維持すべく前記車両を前記正面区域内にて進行させるように構成されている、請求項1に記載の車両遠隔駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記携帯機が進行方向にて前記車両に対して前記第2距離よりも大きな第3距離以上離れるように位置する場合に、前記車両を停止させるように構成されている、請求項2に記載の車両用遠隔操作装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記携帯機が進行方向にて前記車両に対して前記第1距離よりも接近するように位置する場合に、前記車両を停止させるように構成されている、請求項2又は3に記載の車両遠隔駆動装置。
【請求項5】
前記携帯機が、該携帯機にて生じる加速度を検出可能に構成される加速度検出部、又は該携帯機の移動速度を検出可能に構成される速度検出部を有し、
前記制御部は、前記携帯機の加速度の検出値が一定の閾値以上である場合、又は前記携帯機の移動速度が一定の閾値以上である状態が一定期間継続した場合に、前記車両を停止させるように構成されている、請求項1~
4のいずれか一項に記載の車両用遠隔操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機を用いて車両を遠隔操作可能に構成される車両用遠隔操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯機を用いて、自動車等の車両をその外部から遠隔操作する車両用遠隔操作装置が普及してきている。車両用遠隔操作装置は、主に車両を所定のスペースに確実に駐車をさせるために利用されており、このような車両用遠隔操作装置は、ユーザが携帯機を操作することによって車両を移動させるように構成されている。
【0003】
車両用遠隔操作装置はまた、上述のような駐車の用途に限らず、ユーザが車両外部で作業をするときに車両をユーザの移動に追従させるように構成されることがある。このような車両用遠隔操作装置の一例としては、携帯機と車両との相対位置を検出し、検出された相対位置関係を維持しながら携帯機の移動に対して車両を追従移動させるための移動経路を算出し、かつ車両を算出された移動経路に沿って駆動させるように構成される車両用遠隔操作装置が挙げられる。(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記車両用遠隔操作装置の一例においては、算出された移動経路の実際の状況に関わらず、車両は移動経路に沿って移動する。かかる車両は、例えば、ユーザが農地にて作業をする場合には農道を上記移動経路に沿って走行する。しかしながら、多くの場合、農道は整地となっている一方で、農道周辺の土地は不整地となっており、さらに、農道と農道周辺の土地との境界は明確でない。そのため、上記車両用遠隔操作装置の一例において、例えば、ユーザが農道周辺の不整地に位置する場合、車両が不整地に進入し、その結果、車両がスタック、脱輪等するおそれがある。
【0006】
このような実情を鑑みると、車両用遠隔操作装置においては、車両の周辺状況に応じて車両を適切に遠隔操作可能とすることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述のような課題を解決するために、一態様に係る車両用遠隔操作装置は、車両を遠隔操作可能に構成される携帯機と、前記車両に対する前記携帯機の位置を特定可能に構成される位置特定部と、前記携帯機に対する操作に基づいて前記車両を制御するように構成される制御部とを備え、前記制御部は、前記車両の進行方向に位置する進行領域を複数の区域に分割するように特定する構成であり、前記複数の区域は少なくとも1つの進行許可区域を含み、該進行許可区域が、前記車両に対して正面に位置すると共に進行方向に延びる正面区域となっており、前記制御部は、前記携帯機が前記進行許可区域内に位置する場合に、前記車両を進行させるように構成されている。前記車両用遠隔操作装置は、前記車両が走行する道の幅方向の側方端を特定するように構成されており、前記制御部は、前記道の側方端を特定できる場合には、前記道の側方端に対応した前記正面区域の幅方向の側方境界を設定し、かつ前記道の側方端を特定できない場合には、前記車両の幅方向の側方端に対応した前記正面区域の側方境界を設定するように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
一態様に係る車両用遠隔操作装置においては、車両の周辺状況に応じて車両を適切に遠隔操作できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る車両用遠隔操作装置を適用した車両と、当該車両用遠隔操作装置の携帯機を保有するユーザとを概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る車両用遠隔操作装置を適用した車両と、同装置の電子キーと模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る車両用遠隔操作装置の構成図である。
【
図4】
図4は、本実施形態において特定される進行領域の複数の区域を模式的に示した平面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態において、携帯機を保有するユーザが正面区域内で携帯機の操作を開始した操作開始状態で表示された撮像部の画像を模式的に示す説明図である。
【
図6】
図6は、本実施形態において、
図5の操作開始後に、携帯機を保有するユーザが正面区域内で進行方向に移動した状態で表示された撮像部の画像を模式的に示す説明図である。
【
図7】
図7は、本実施形態において、
図6のユーザの移動後に車両が正面区域内でユーザに追従した状態で表示された撮像部の画像を模式的に示す説明図である。
【
図8】
図8は、本実施形態において、携帯機を保有するユーザが遠位区域に位置する状態で表示された撮像部の画像を模式的に示す説明図である。
【
図9】
図9は、本実施形態において、携帯機を保有するユーザが近位区域に位置する状態で表示された撮像部の画像を模式的に示す説明図である。
【
図10】
図10は、本実施形態に係る車両用遠隔操作装置の制御方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態に係る車両用遠隔操作装置について以下に説明する。本実施形態に係る遠隔操作装置を適用する車両は自動車とする。しかしながら、遠隔操作装置は、自動車以外の車両にも適用することができる。特に、遠隔操作装置は、軌道上を走行する車両以外の車両に適用されるとよい。
【0011】
本実施形態においては、遠隔操作装置は、車両前方に進行する車両の遠隔操作をするように構成されている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、遠隔操作装置を、車両後方に進行する車両の遠隔操作をするように構成することもできる。なお、
図1、
図2、及び
図4においては車両前方を矢印Xにより示す。
【0012】
「遠隔操作装置の概略」
図1~
図9を参照して、本実施形態に係る遠隔操作装置の概略について説明する。
図1及び
図2に示すように、遠隔操作装置2は、ユーザUが携帯可能であり、かつ車両1を遠隔操作可能に構成される携帯機である電子キー3を有する。電子キー3は車両1から切り離されている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、携帯機は電子キー以外であってもよい。例えば、携帯機は、携帯電話機、スマートフォン、スマートウォッチ等のようなウェアラブルコンピュータ等とすることができる。
【0013】
図3に示すように、遠隔操作装置2は、車両1に対する電子キー3の位置を特定可能に構成される位置特定部4を有する。位置特定部4は車両1に搭載される。遠隔操作装置2はまた、ユーザUの電子キー3の操作に基づいて車両1を制御するように構成される制御部5を有する。制御部5もまた車両1に搭載される。ユーザUは、車両1に搭乗する搭乗者であるとよく、さらに、ユーザUは、車両1を運転するドライバであるとよい。
【0014】
一例として、位置特定部4及び制御部5のそれぞれは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、入力インターフェース、出力インターフェース等の電子部品と、かかる電子部品を配置した電気回路とを含むように構成されるとよい。しかしながら、位置特定部及び制御部のそれぞれは、これに限定されない。
【0015】
図4に示すように、制御部5は、車両1の進行方向、すなわち、車両前方側の前進方向に位置する進行領域Aを複数の区域に分割するように特定する構成となっている。これら複数の区域は、少なくとも1つの進行許可区域Bと、少なくとも1つの進行禁止区域Cとから成る。少なくとも1つの進行禁止区域Cは、少なくとも1つの進行許可区域B外に位置する。
【0016】
制御部5はまた、電子キー3が複数の区域のうち進行許可区域B内に位置する場合に、車両1を進行させるように構成されている。その一方で、制御部5は、電子キー3が進行禁止区域C内に位置する場合には、車両1を停止させるように構成されている。
【0017】
さらに、遠隔操作装置2は次のように構成されるとよい。
図3に示すように、位置特定部4は、車両1及び電子キー3間の距離を取得可能に構成される。
図4に示すように、1つの進行許可区域Bは、車両1に対して正面に位置すると共に進行方向に延びる正面区域Dとなっている。
図4~
図7に示すように、制御部5は、電子キー3が正面区域D内に位置する場合に、位置特定部4により得られた車両1及び電子キー3間の距離の取得値tを、進行方向にて第1距離t1以上かつ第2距離t2以下で維持すべく車両1を正面区域D内にて進行させるように構成されている。第2距離t2は第1距離t1よりも大きい。特に、距離は、車両1の進行方向端1a、すなわち、前端1aと電子キー3との間にて定められるとよい。
【0018】
図4において、車両1に対して第1距離t1離れた位置に実線により近位境界D1を示し、車両1に対して第2距離t2離れた位置に一点鎖線により中間境界D2を示し、車両1に対して後述する第3距離t3離れた位置に実線により遠位境界D3を示す。一例として、第1距離t1は、約0(ゼロ)mより大きくかつ約3m以下とすることができ、第2距離t2は、約5m以上かつ約10m以下とすることができる。しかしながら、第1及び第2距離t1,t2は、これに限定されない。
【0019】
また、
図4においては、車両1及び電子キー3間の距離は、後述する撮像部7の一点を基準とした距離として設定されている。そして、進行領域Aは、撮像部7によって撮像可能な範囲にて定義されている。そのため、進行領域Aは略扇型形状となっている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、車両及び電子キー間の距離は、車両幅方向に延びる直線と定義した車両の前端を基準とした距離として設定することもできる。この場合、車両の前端に対して前方に位置する領域のすべてを、進行領域として定義することができる。また、撮像部7は、車室1dの車両前方側の部分に配置されるとよい。しかしながら、撮像部は、これに限定されない。例えば、撮像部は、車両の前端、サイドミラー等に配置されてもよい。
【0020】
例えば、
図4及び
図5に示すように、電子キー3を保有するユーザUが、正面区域D内にて車両1及び電子キー3間の距離の取得値tを第1距離t1以上かつ第2距離t2以下とする範囲内に位置する状態で、車両1の遠隔操作が開始され、その後、
図4及び
図6に示すように、ユーザUが、矢印J(
図6にて示す)のように、正面区域D内にて距離の取得値tを第2距離t2よりも大きくするような位置に移動すると、
図4及び
図7に示すように、車両1は、矢印K(
図7にて示す)のように、距離の取得値tを第1距離t1以上かつ第2距離t2以下に維持するようにユーザUに追従する。なお、
図5~
図7においては、正面区域Dの近位境界D1、中間境界D2、及び遠位境界D3を仮想線により示す。
【0021】
さらに、
図4及び
図8に示すように、制御部5は、電子キー3が進行方向にて車両1に対して第3距離t3離れるように位置する場合に、車両1を停止させるように構成されている。第3距離t3は第2距離t2よりも大きい。一例として、第3距離t3は、約60m以上かつ約100m以下とすることができる。しかしながら、第3距離t3は、これに限定されない。なお、
図8においては、正面区域Dの近位境界D1、中間境界D2、及び遠位境界D3を仮想線により示す。
【0022】
図4及び
図9に示すように、制御部5は、電子キー3が車両1に対して第1距離t1よりも接近するように位置する場合に、車両1を停止させるように構成されている。正面区域Dは、近位境界D1と、進行方向にて車両1に対して第3距離t3離れて位置する遠位境界D3との間で延びる。なお、
図9においては、正面区域Dの近位境界D1、中間境界D2、及び遠位境界D3を仮想線により示す。
【0023】
図4に示すように、遠隔操作装置2は、車両1が走行する道Wの幅方向の左側方端W1及び右側方端W2を特定するように構成されている。なお、左側及び右側は、それぞれ、車両1の前方を向いた状態での左側及び右側とする。
【0024】
制御部5は、道Wの左側方端W1を特定できる場合には、道Wの左側方端W1に対応した正面区域Dの幅方向の左側方境界D4を設定し、かつ道Wの左側方端W1を特定できない場合には、車両1の幅方向の左側方端1bに対応した正面区域Dの左側方境界D5(仮想線により示す)を設定するように構成されている。また、制御部5は、道Wの右側方端W2を特定できる場合には、道Wの右側方端W2に対応した正面区域Dの幅方向の右側方境界D6を設定し、かつ道Wの右側方端W2を特定できない場合には、車両1の幅方向の右側方端1cに対応した正面区域Dの右側方境界D7(仮想線により示す)を設定するように構成されている。
【0025】
図3に示すように、電子キー3は、この電子キー3にて生じる加速度を検出可能に構成される加速度検出部である加速度センサ3aを有し、かつ制御部5は、電子キー3の加速度の検出値pが一定の加速度閾値p0以上である場合に、車両1を停止させるように構成されている。例えば、加速度閾値p0は、約0(ゼロ)m/s
2よりも大きく、かつ約19.6m/s
2未満とすることができる。しかしながら、加速度閾値p0は、これに限定されない。また、加速度検出部は加速度センサに限定されない。
【0026】
なお、電子キーは、この電子キーの移動速度を検出可能に構成される速度検出部である速度センサを有してもよく、かつ制御部は、電子キーの移動速度の検出値qが一定の速度閾値q0以上である状態が一定の速度超過期間r継続した場合に、車両を停止させるように構成されていてもよい。例えば、速度閾値q0は、約0(ゼロ)m/s(約0(ゼロ)km/h)よりも大きく、かつかつ約4.17m/s(約15km/h)未満とすることができる。速度超過期間rは、約0(ゼロ)sec(秒)よりも大きく、かつ約t/q0sec(車両1及び電子キー3間の距離の取得値tを速度閾値q0によって割った値)未満とすることができる。しかしながら、速度閾値q0及び速度超過期間rは、これらに限定されない。また、速度検出部は、速度センサに限定されない。
【0027】
「遠隔操作装置の詳細」
遠隔操作装置2は詳細には次のように構成されるとよい。
図2及び
図3に示すように、遠隔操作装置2は、電子キー3と無線通信可能に構成される複数のアンテナ6を有する。遠隔操作装置2のアンテナ6と電子キー3とは、少なくとも1つのアンテナ6を介して互いの間で電波を送受信できるように構成されるとよい。具体的には、アンテナ6は、電子キー3に向けて電波(以下、必要に応じて「携帯側受信電波」という)を送信し、かつ電子キー3はかかる携帯側受信電波を受信する。また、電子キー3は、この携帯側受信電波に対応する電波(以下、必要に応じて「携帯側送信電波」という)を送信し、かつアンテナ6はかかる携帯側送信電波を受信する。
【0028】
複数のアンテナ6は、車両1の水平面内で車両1の周方向に互いに間隔を空けるように配置される。さらに、複数のアンテナ6は、車両1の車室1dを取り囲むように配置されるとよい。なお、
図2においては、一例として、遠隔操作装置2が4つのアンテナ6を有し、4つのアンテナ6が、それぞれ、車両1の前方、右側方、左側方、及び後方に配置されていることが示されている。
【0029】
図1、
図3、及び
図4に示すように、遠隔操作装置2は、進行領域Aの情報(以下、必要に応じて「進行情報」という)を取得可能な進行情報取得部として構成された撮像部7を有する。進行情報取得部は車両1に搭載される。なお、進行領域Aは地面に沿って定義される。撮像部7は進行領域Aを撮像可能に構成されており、言い換えれば、撮像部7は進行領域Aの画像(以下、必要に応じて「進行画像」という)を取得可能に構成されている。撮像部7はカメラとなっている。しかしながら、かかる撮像部はカメラ以外とすることもでき、例えば、撮像部は、ソナー、LiDAR(Light Detection and Ranging)等とすることもできる。また、進行情報取得部は、撮像部以外であってもよい。例えば、進行情報取得部は、GPS(Global Positioning System)衛星を介して得た車両の位置情報と地図情報とに基づいて進行領域を認識可能なGPS認識部として構成されてもよい。
【0030】
図3に示すように、遠隔操作装置2はまた、車両1の速度を検出可能な車速検出部として構成される車速センサ8を有する。車速センサ8は車両1に搭載される。
【0031】
「電子キーの詳細」
電子キー3は詳細には次のように構成されるとよい。
図2に示すように、電子キー3は、車両1と無線通信可能に構成される。電子キー3は、上記遠隔操作に加えて、車両1におけるキーレスエントリ、スマートエントリ(登録商標)、キーレススタート等を可能とするように構成されている。かかる電子キー3には、車両1のID(Identification Data、識別情報)と同一のIDが付与されている。
【0032】
電子キー3は、ユーザUが上記遠隔操作を実行する状態と遠隔操作を禁止する状態とを切り換えできるように構成される切換操作部3bを有する。切換操作部3bが遠隔操作を実行とする状態に設定されているときに、車両1が所定の条件下で自動的に進行方向に移動する。電子キー3はまた、ユーザUが車両1を進行させるように指示可能に構成される進行操作部3cを有する。
【0033】
切換操作部3b及び進行操作部3cはボタンとなっている。一例として、ユーザUが進行操作部3cを操作している間、例えば、ボタンである進行操作部3cを手によって押している間に、車両1が進行し、かつユーザUが進行操作部3cを操作していない間、例えば、手をボタンである進行操作部3cから離している間に、車両1が停止するとよい。しかしながら、本発明はこれに限定されず、切換操作部及び進行操作部の少なくとも一方をジョイスティック、ロッカスイッチ、スライドスイッチ等とすることもできる。
【0034】
図3に示すように、電子キー3は、この電子キー3の位置情報を発信するように構成される位置情報発信部3dを有する。位置情報発信部3dは、複数のアンテナ6を介して車両1の位置特定部4と無線通信可能に構成される。電子キー3は、切換操作部3bの操作に基づく指示を無線送信するように構成される切換指示送信部3eを有する。電子キー3は、進行操作部3cの操作に基づく指示を無線送信するように構成される進行指示送信部3fを有する。
【0035】
電子キー3は、加速度の検出値pが加速度閾値p0以上であるか否かを判定する加速度判定部3gを有する。電子キー3はまた、加速度の検出値pが加速度閾値p0以上である場合に、車両1を緊急停止させる指示を車両1に無線送信するように構成される緊急指示送信部3hを有する。なお、加速度判定部は車両、特に、車両の制御部に設けられてもよく、この場合、制御部は、無線通信によって加速度センサから加速度の検出値pを取得し、かつ制御部は、加速度の検出値pが加速度閾値p0以上である場合に車両を緊急停止させるとよい。
【0036】
電子キー3は、この電子キー3に電力を供給するように構成される電源部3iを有するとよい。なお、電源部3iは、電池、充電池等であるとよい。しかしながら、電源部はこれに限定されない。
【0037】
さらに、電子キー3は、電源部3iの残容量v(%)が所定の残容量閾値v0以下であるか否かを判定する残容量判定部3jを有する。上記緊急指示送信部3hは、電源部3iの残容量v(%)が所定の残容量閾値v0以下である場合に、車両1を緊急停止させる指示を車両1に無線送信してもよい。例えば、残容量閾値v0は、約0(ゼロ)%よりも大きく、かつ約10%未満とすることができる。しかしながら、残容量閾値はこれに限定されない。
【0038】
電子キー3は、車両1の停止をユーザUに報知するように構成される報知部3kを有するとよい。より具体的には、報知部3kは、車両1の通常停止及び緊急停止の少なくとも一方をユーザUに報知するとよい。報知部3kは、スピーカからの音、ランプの点灯、電子キー3の振動等によってユーザUへの報知を行うとよい。なお、報知部は、電子キーの代わりに、又は電子キーに加えて車両に設けられてもよい。
【0039】
「位置特定部の詳細」
位置特定部4は詳細には次のように構成されるとよい。
図2及び
図3に示すように、位置特定部4は、電子キー3の位置情報発信部3dにより発信される電子キー3の位置情報として、それぞれ複数のアンテナ6により受信される複数の携帯側送信電波間の強度差と、同複数の携帯側送信電波間の到達時間差と基づいた三角測量法によって、電子キー3の位置を算出するように構成される。
【0040】
具体的には、車両1及び電子キー3間の距離と、車両1に対する電子キー3の方位とが算出されて、算出された距離及び方位に基づいて電子キー3の位置が算出されるとよい。なお、各アンテナ6における携帯側送信電波の到達時間は、そのアンテナ6における携帯側受信電波の送信時刻と、そのアンテナ6における携帯側送信電波の受信時刻とに基づいて定められるとよい。なお、位置特定部4は、車両1及び電子キー3のIDが互いに一致する場合に、電子キー3の位置を特定するとよい。
【0041】
しかしながら、本発明はこれに限定されず、位置特定部は、GPS衛星及び車両の遠隔操作装置のアンテナを介して、電子キーの位置情報発信部から無線送信される電子キーの位置情報を取得し、かつ電子キーの位置を特定するように構成されてもよい。この場合、電子キーはGPSを搭載し、かつアンテナがGPSアンテナであるとよい。なお、上述のように携帯機は電子キー以外であってもよく、例えば、携帯機は、GPSを搭載した携帯電話機、スマートフォン等とすることができる。
【0042】
「制御部の詳細」
制御部5は詳細には次のように構成されるとよい。
図3及び
図4に示すように、制御部5は、撮像部7により取得された進行画像上で進行領域Aを複数の区域に分割するように構成される進行領域特定部11を有する。進行領域特定部11は、少なくとも1つの進行許可区域Bと、少なくとも1つの進行禁止区域Cとを設定する。さらに具体的には、進行領域特定部11は、それぞれ正面区域D、遠位区域E、近位区域F、左側方区域G、及び右側方区域Hを設定するように構成される正面区域設定部11a、遠位区域設定部11b、近位区域設定部11c、左側方区域設定部11d、及び右側方区域設定部11eを有する。
【0043】
ここで、
図4に示すように、左及び右側方区域G,Hは、それぞれ正面区域Dに対して左及び右寄りに位置する。左及び右側方区域G,Hは、車両幅方向にて正面区域Dに隣接する。左及び右側方区域G,Hの遠位境界G1,H1は、進行方向にて正面区域Dの遠位境界D3と略一致する。左及び右側方区域G,Hの近位境界G2,H2は、それぞれ、撮像部7によって撮像可能な範囲の車両幅方向の境界と略一致している。しかしながら、本発明はこれに限定されず、左及び右側方区域の近位境界は、進行方向にて正面区域の近位境界又は車両の前端と略一致してもよい。
【0044】
遠位区域Eは、正面区域D並びに左及び右側方区域G,Hの遠位境界D3,G1,H1に対して進行方向の遠位寄りに位置する。近位区域Fは、正面区域Dの近位境界D1に対して進行方向の近位寄りに位置する。近位区域Fは、進行方向にて車両1の前端1aと正面区域Dとの間に位置する。遠位区域Eは進行方向にて正面区域D並びに左及び右側方区域G,Hに隣接する。近位区域Fは進行方向にて正面区域Dに隣接する。
【0045】
進行領域Aは、それぞれ正面区域D、左側方区域G、及び右側方区域Hである3つ進行許可区域Bと、それぞれ遠位及び近位区域E,Fである2つの進行禁止区域Cとから成る。また、進行領域Aは、少なくとも2つの進行許可区域Bを有するとよい。この場合、少なくとも2つの進行許可区域Bは、少なくとも1つの自動進行区域B1と、少なくとも1つの操作進行区域B2とを有する。なお、左及び右側方区域は進行禁止区域とすることもできる。
【0046】
詳細は後述するが、
図4~
図7に示すように、電子キー3が自動進行区域B1内に位置する場合には、車両1は正面区域D内で電子キー3、特に、電子キー3を保有するユーザUに追従するように進行する。また、電子キー3が操作進行区域B2内に位置する場合には、ユーザUによる電子キー3の進行操作部3cの操作によって、車両1が正面区域D内で進行する。進行領域Aは、正面区域Dである1つの自動進行区域B1と、それぞれ左及び右側方区域G,Hである2つの操作進行区域B2とを有する。
【0047】
さらに、
図4~
図7に示すように、正面区域Dは、道Wが進行方向にて直線状に延びる場合に設定されると好ましい。そのため、例えば、
図3に示すように、制御部5は、進行情報、特に、進行画像に基づいて道Wが進行方向にて直線状に延びるか否かを判定するように構成される道形状判定部12を有するとよい。
図4に示すように、進行領域特定部11は、道Wが進行方向にて直線状に延びると道形状判定部12が判定した場合に、進行画像上で進行領域Aを複数の区域に分割するとよい。なお、本発明はこれに限定されず、進行領域は、道が進行方向にて湾曲するように延びる場合において、道の曲率に応じて曲がった複数の区域に分割することもできる。
【0048】
図3及び
図4に示すように、制御部5は、道Wの左側方端W1及び右側方端W2を特定するように構成される道端特定部13を有する。道幅特定部13は、撮像部7により取得された進行画像上にて道Wの左側方端W1及び右側方端W2を認識するように構成される。なお、道Wの左及び右側方端W1,W2のそれぞれは、道W自体の幅方向の縁、道W上に表示される分離帯又は走行帯の標示線であるとよい。しかしながら、道幅特定部は、道の幅と車両の幅と車両の幅方向の位置とに基づいて道の左及び右側方端を推定してもよい。
【0049】
図4に示すように、正面区域設定部11aは、道端特定部13が道Wの左側方端W1を特定できる場合には、道Wの左側方端W1に対応した正面区域Dの幅方向の左側方境界D4を設定し、かつ道端特定部13が道Wの左側方端W1を特定できない場合には、車両1の幅方向の左側方端1bに対応した正面区域Dの左側方境界D5(仮想線により示す)を設定するように構成される。また、正面区域設定部11aは、道端特定部13が道Wの右側方端W2を特定できる場合には、道Wの右側方端W2に対応した正面区域Dの幅方向の右側方境界D6を設定し、かつ道端特定部13が道Wの右側方端W2を特定できない場合には、車両1の幅方向の右側方端1cに対応した正面区域Dの右側方境界D7(仮想線により示す)を設定するように構成される。
【0050】
図3及び
図4に示すように、正面区域設定部11aは、上述のように定義される遠位、近位、左側方、及び右側方境界D1,D3~D7を設定し、これによって、正面区域Dを設定する。遠位、近位、左側方、及び右側方区域設定部11b~11eは、正面区域設定部11aにより設定された正面区域Dとの位置関係に基づいて、それぞれ遠位、近位、左側方、及び右側方区域E~Hを設定する。
【0051】
図3に示すように、制御部5は、電子キー3の切換指示送信部3eから切換操作部3bの遠隔操作の実行指示が送信されたか否かを判定するように構成される切換判定部14を有する。切換判定部14は、少なくとも1つのアンテナ6を介して切換操作部3bの指示を取得する。この場合、少なくとも1つのアンテナ6は切換操作部3bの指示を無線受信する。しかしながら、本発明はこれに限定されず、切換判定部は、上記アンテナとは別途に設けられた少なくとも1つの別のアンテナを介して、切換操作部の指示を取得してもよい。
【0052】
図3及び
図4に示すように、制御部5は、位置特定部4により特定された電子キー3の位置が進行領域特定部11により特定された進行許可区域B内にあるか否かを判定するように構成される位置判定部15を有する。特に、位置判定部15は、切換操作部3bの遠隔操作の実行指示が送信されたと切換判定部14が判定した場合に、上記判定を実行するとよい。
【0053】
位置判定部15は、電子キー3の位置が自動進行区域B1内、特に、正面区域設定部11aにより設定された正面区域D内にあるか否かを判定するように構成される第1位置判定部15aを有するとよい。位置判定部15は、電子キー3の位置が操作進行区域B2内、特に、それぞれ左及び右側方区域設定部11d,11eにより設定された左及び右側方区域G,Hのいずれかの内にあるか否かを判定するように構成される第2位置判定部15bを有するとよい。第2位置判定部15bの判定は、電子キー3の位置が自動進行区域B1内にないと第1位置判定部15aが判定した場合に実行される。しかしながら、第1位置判定部の判定が、電子キーの位置が操作進行区域B2内にないと第2位置判定部が判定した場合に実行されてもよい。
【0054】
制御部5は、電子キー3の位置が進行許可区域B内にあると位置判定部15が判定した場合に、車両1を自動的に進行させるように構成される進行指示部16を有する。進行指示部16は、電子キー3の位置が自動進行区域B1内、特に、正面区域D内にあると第1位置判定部15aが判定した場合に、車両1を自動的に進行させるように構成される第1進行指示部16aを有する。
図3~
図7に示すように、制御部5は、第1進行指示部16aが車両1を進行させている状態で、車両1及び電子キー3間の距離の取得値tを進行方向にて第1距離t1以上かつ第2距離t2以下で維持するように構成される距離調節部17を有する。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第1進行指示部は、電子キー3の位置が自動進行区域内、特に、正面区域内にあると第1位置判定部が判定した場合に、ユーザが車両との関係で正面区域内に留まるように車両を自動的に進行させてもよい。
【0055】
さらに、
図3及び
図4に示すように、進行指示部16は、電子キー3の位置が操作進行区域B2内、特に、左又は右側方区域G,H内にあると第2位置判定部15bが判定した場合に、ユーザUによる電子キー3の進行操作部3cの操作によって車両1を正面区域D内で進行させるように構成される第2進行指示部16bを有する。第2進行指示部16bは、少なくとも1つのアンテナ6を介して、電子キー3の進行指示送信部3fから進行操作部3cの車両1の進行指示を取得する。この場合、少なくとも1つのアンテナ6は進行操作部3cの指示を無線受信可能に構成される。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第2進行指示部は、上記アンテナとは別途に設けられた少なくとも1つの別のアンテナを介して、進行操作部の車両の進行指示を取得してもよい。
【0056】
さらに、制御部5は、進行指示部16、特に、第1又は第2進行指示部16a,16bが車両1を進行させている状態で、車速センサ8により検出される車速の検出値を徐行速度領域内で維持するように構成される車速調節部18を有する。一例として、徐行速度領域は、約0(ゼロ)km/hよりも大きくかつ約1.5km/h以下とすることができる。しかしながら、徐行速度領域は、これに限定されない。
【0057】
制御部5は、電子キー3の位置が進行許可区域B外、すなわち、進行禁止区域C内にあると位置判定部15、特に、第1及び第2位置判定部15a,15bが判定した場合に、車両1を停止させるように構成される停止指示部19を有する。例えば、
図8に示すように、停止指示部19は、電子キー3が進行方向にて車両1に対して第3距離t3離れるように位置する場合に、車両1を停止させる。また、
図9に示すように、停止指示部19は、電子キー3が車両1に対して第1距離t1よりも接近するように位置する場合に、車両1を停止させる。
【0058】
さらに、
図2及び
図3を参照すると、停止指示部19は、緊急指示送信部3hからの緊急停止指示を取得した場合に、車両1を緊急停止させることができる。停止指示部19は、少なくとも1つのアンテナ6を介して、緊急指示送信部3hからの緊急停止指示を取得する。この場合、少なくとも1つのアンテナ6は、緊急指示送信部3hからの緊急停止指示を無線受信するとよい。しかしながら、本発明はこれに限定されず、停止指示部は、上記アンテナとは別途に設けられた少なくとも1つの別のアンテナを介して、緊急指示送信部からの緊急停止指示を取得してもよい。
【0059】
なお、停止指示部19はさらに次のように構成されてもよい。停止指示部19は、進行操作部3cの操作指示が車両1を停止させる指示であると切換判定部14が判定した場合に、車両1を停止させてもよい。停止指示部19は、車両1と電子キー3又はユーザUとの間に障害物が認識された場合に、車両1を停止させてもよい。例えば、障害物としては、農具、荷物、木の枝、車両1以外の停止車両、動物、ユーザU以外の人間等が挙げられる。
【0060】
停止指示部19は、車両1と電子キー3又はユーザUとの間に窪地が認識された場合に、車両1を停止させてもよい。停止指示部19は、車両1に対向して走行する対向車が検知された場合に、車両1を停止させてもよい。停止指示部19は、電子キー3の位置を特定できなくなった場合に、車両1を停止させてもよい。停止指示部19は、車両1の異常が発生した場合に、車両1を停止させてもよい。例えば、車両1の異常としては、ガス欠、バッテリ異常、通信異常、センサ異常等が挙げられる。
【0061】
停止指示部19は、車両1が急勾配の坂道に差し掛かった場合に、車両1を停止させてもよい。例えば、急勾配の角度は約5度以上であるとよい。しかしながら、かかる角度は、これに限定されない。停止指示部19は、車両1がこの車両1の許容積載重量を超えるような過積載である場合に、車両1を停止させてもよい。停止指示部19は、車両1にユーザU以外の人間が乗り込んだ場合に、車両1を停止させてもよい。停止指示部19は、車両1の走行輪がスリップした場合に、車両1を停止させてもよい。
【0062】
さらに、制御部5は、停止指示部19が車両1を停止させた状態にて、上述のように停止指示部19が車両1を停止させた条件がすべて解消され、かつユーザUが電子キー3の進行操作部3cを操作した場合に、車両1を進行させるように構成されるとよい。
【0063】
「遠隔操作装置の制御方法」
図10を参照して、本実施形態に係る遠隔操作装置2の制御方法の一例について説明する。最初に、車両1を停止状態とする(第1停止ステップS1)。電子キー3の切換操作部3bが、車両1を停止させる条件のすべてが解消されると共に車両1の遠隔操作を実行する状態となっているか否かを判定する(第1切換判定ステップS2)。切換操作部3bが車両1の遠隔操作を実行する状態でない場合(NO)、停止維持ステップS1に戻る(第1停止ステップS1)。
【0064】
切換操作部3bが車両1の遠隔操作を実行する状態である場合(YES)、電子キー3の位置を特定する(位置特定ステップS3)。進行領域Aを、進行許可区域Bの自動及び操作進行区域B1,B2と進行禁止区域Cとに分割するように特定する。具体的には、進行領域Aを、自動進行区域B1である正面区域Dと、操作進行区域B2である左及び右側方区域G,Hと、進行禁止区域Cである遠位及び近位区域E,Fとに分割するように特定する(進行領域特定ステップS4)。
【0065】
電子キー3が正面区域D内に位置するか否かを判定する(第1位置判定ステップS5)。電子キー3が正面区域D内に位置する場合(YES)、電子キー3を保有するユーザUの移動に追従するように車両1を自動的に進行させる(第1進行ステップS6)。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第1進行指示部は、電子キー3の位置が正面区域内にあると判定した場合に、ユーザが車両との関係で正面区域内に留まるように車両を自動的に進行させてもよい。さらに、電子キー3が正面区域D内に位置しない場合(NO)、電子キー3が左又は右側方区域G,H内に位置するか否かを判定する(第2位置判定ステップS7)。
【0066】
電子キー3が左又は右側方区域G,H内に位置する場合(YES)、電子キー3の進行操作部3cが操作されている間に車両1を進行させる(第2進行ステップS8)。電子キー3が左又は右側方区域G,H内に位置しない場合、すなわち、電子キー3が遠位又は近位区域E,Fに位置する場合(NO)、車両1を停止させる(第2停止ステップS9)。電子キー3の報知部3kが、車両1の停止をユーザUに報知する(報知ステップS10)。上述した第1進行ステップS6、第2進行ステップS8、又は報知ステップS10の後、電子キー3の切換操作部3bが車両1の遠隔操作を実行する状態となっているか否かを再び判定する(第2切換判定ステップS11)。
【0067】
電子キー3の切換操作部3bが車両1の遠隔操作を実行する状態となっている場合(YES)、位置特定ステップS3に戻る。電子キー3の切換操作部3bが車両1の遠隔操作を実行する状態となっていない場合、すなわち、切換操作部3bが車両1の遠隔操作を禁止する状態となっている場合(NO)、再び第1停止ステップS1に戻る(リターン)。
【0068】
以上、本実施形態に係る遠隔操作装置2において、制御部5が、車両1の進行方向に位置する進行領域Aを複数の区域に分割するように特定し、複数の区域は少なくとも1つの進行許可区域Bを含み、制御部5は、電子キー3が進行許可区域B内に位置する場合に、車両1を進行させる。そのため、進行許可区域Bが、車両1を走行可能とするように整備された整備道、例えば、整地された農道、舗装された道路等に設定され、かつ電子キー3を保有するユーザUが当該進行許可区域Bに位置する場合、車両1を、移動するユーザU、すなわち、電子キー3に対して安定的に追従させることができる。特に、ユーザUは通常、車両1が走行してきた整備道に車両1を停止させた状態にて車両1の外部で作業を行うので、このような作業時において、車両1を、移動するユーザU、すなわち、電子キー3に対して安定的に追従させることができる。さらに、電子キー3を保有するユーザUが進行許可区域B周辺の不整地に位置する場合には、車両1が当該不整地に進入することを確実に防止でき、ひいては、車両1がスタック、脱輪等することを確実に防止できる。よって、車両1の周辺状況に応じて車両1を適切に遠隔操作できる。
【0069】
本実施形態に係る遠隔操作装置2においては、制御部5は、電子キー3が正面区域D内に位置する場合に、車両1及び電子キー3間の距離の取得値tを、進行方向にて第1距離t1以上かつ第2距離t2以下で維持すべく車両1を正面区域D内にて進行させる。そのため、電子キー3を保有するユーザUが正面区域D内に位置する場合、車両1をユーザU、すなわち、電子キー3から適切な距離離しながら、車両1をユーザUに対して安定的に追従させることができる。さらに、ユーザUが正面区域D内で進行する場合において、ユーザU及び車両1間に障害物が介在するようにユーザU及び車両1間の距離が離れ過ぎることを防止できるので、車両1をユーザUに対して安定的に追従させることができる。
【0070】
例えば、正面区域Dが整地された農道である場合において、車両1に対して第3距離t3以上離れている区域は、農道の湾曲等のために不整地である可能性が高い。これに対して、本実施形態に係る遠隔操作装置2においては、電子キー3が車両1に対して第3距離t3以上離れている場合には車両1を停止させるので、車両1が当該不整地に進入することを確実に防止でき、ひいては、車両1がスタック、脱輪等することを確実に防止できる。
【0071】
本実施形態に係る遠隔操作装置2においては、電子キー3を保有するユーザUが車両1に対して第1距離t1よりも接近する場合には、車両1を停止させる。そのため、ユーザUが車両1と接近し過ぎることによって圧迫感を感じることを防止でき、ひいては、ユーザU及び車両1間の距離を適切に維持することができる。
【0072】
例えば、正面区域Dが整地された農道である場合において、正面区域Dの側方境界D4~D7よりも道幅方向外方寄りの側方区域G,Hは不整地である可能性が高い。これに対して、本実施形態に係る遠隔操作装置2は、道Wの側方端W1,W2を特定し、制御部5は、道Wの側方端W1,W2を特定できる場合には、道Wの側方端W1,W2に対応した正面区域Dの側方境界D4,D6を設定し、かつ道Wの側方端W1,W2を特定できない場合には、車両1の幅方向の側方端1b,1cに対応した正面区域Dの側方境界D5,D7を設定する。車両1が走行しない側方区域G,Hを、道Wの側方端W1,W2を認識できるか否かに関わらず適切に設定することができる。従って、車両1が当該不整地に進入することを確実に防止でき、ひいては、車両1がスタック、脱輪等することを確実に防止できる。
【0073】
本実施形態に係る遠隔操作装置2においては、制御部5は、電子キー3の加速度の検出値pが一定の加速度の閾値p0以上である場合、又は電子キー3の移動速度の検出値qが一定の移動速度の閾値q0以上である状態が一定の速度超過期間r継続した場合に、車両1を停止させるように構成されている。そのため、例えば、電子キー3を保有するユーザUが転倒した場合、同ユーザUが急に立ち止まった場合、同ユーザUが車両1に接近するように急に走り出した場合、同ユーザUが車両1から離れるように急に走り出した場合、同ユーザUが電子キー3を落とした場合等のように、電子キー3を保有するユーザUが急激に動作を変化させる事態が生じた場合に、安全を期すべく、車両1を停止させることができる。
【0074】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0075】
1…車両、1b…左側方端、1c…右側方端、2…遠隔操作装置、3…電子キー(携帯機)、3a…加速度センサ(加速度検出部)、4…位置特定部、5…制御部
W…道、W1…左側方端、W2…右側方端
A…進行領域、B…進行許可区域、D…正面区域、D4,D5…左側方境界、D6,D7…右側方境界
t…距離の取得値、t1…第1距離、t2…第2距離、t3…第3距離