IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社サタケの特許一覧

特許7189502穀物乾燥装置、および、穀物乾燥装置における座標設定方法
<>
  • 特許-穀物乾燥装置、および、穀物乾燥装置における座標設定方法 図1
  • 特許-穀物乾燥装置、および、穀物乾燥装置における座標設定方法 図2
  • 特許-穀物乾燥装置、および、穀物乾燥装置における座標設定方法 図3
  • 特許-穀物乾燥装置、および、穀物乾燥装置における座標設定方法 図4
  • 特許-穀物乾燥装置、および、穀物乾燥装置における座標設定方法 図5
  • 特許-穀物乾燥装置、および、穀物乾燥装置における座標設定方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】穀物乾燥装置、および、穀物乾燥装置における座標設定方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 25/00 20060101AFI20221207BHJP
   F26B 9/06 20060101ALI20221207BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20221207BHJP
   B65G 1/04 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
F26B25/00 K
F26B9/06 D
B65G1/00 521B
B65G1/04 537Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018247027
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020106240
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100167243
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 充
(72)【発明者】
【氏名】生田 長三郎
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-017823(JP,A)
【文献】特開2008-044732(JP,A)
【文献】特開2013-086939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 25/00
F26B 9/06
B65G 1/00
B65G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物乾燥装置における座標設定方法であって、
乾燥対象の穀物を収容するための複数の箱と、
前記複数の箱のうちの一つの箱を選択的に保持する保持機構を有し、該保持機構によって保持される前記一つの箱を搬送する搬送部と、
前記複数の箱をそれぞれ格納可能に区画された複数の格納室であって、前記複数の箱を出し入れするための複数の開口を有する複数の格納室を備える乾燥機本体と、
を備える穀物乾燥装置を用意する工程を備え、
前記乾燥機本体は、前記複数の開口が形成された面を備え、
前記面は、前記複数の格納室にそれぞれ対応付けられた複数の基準マーカを備え、
前記保持機構は、前記保持機構と、前記複数の基準マーカのうちから選択された一つの基準マーカと、を所定の位置関係を有するように位置整合させるための補助を光学的手法によって行う位置整合補助部を備え、
前記方法は、さらに、
前記位置整合補助部を使用して、前記保持機構と前記選択された一つの基準マーカとが前記所定の位置関係を有する整合位置まで前記保持機構を移動させる工程と、
前記選択された一つの基準マーカに対応付けられた前記格納室に前記一つの箱が格納され、かつ、前記所定の位置関係が維持された状態で、前記保持機構によって前記一つの箱を保持する保持動作を行う工程と、
前記保持動作が適正であると判断される場合に、前記整合位置に対応する座標を、前記選択された一つの基準マーカに対応付けられた前記格納室に前記一つの箱を格納するとき、および、前記選択された一つの基準マーカに対応付けられた前記格納室から前記一つの箱を取り出すときに前記保持機構がとるべき位置を表す目標座標して設定する工程と
を備える方法。
【請求項2】
請求項に記載の方法であって、
前記保持動作が適正でないと判断される場合に、前記保持機構の位置を前記整合位置から試行的に変更して前記保持動作を行うことを繰り返すことによって、前記一つの箱を適正に保持できる前記保持機構の位置を見付け、該見付けた位置に対応する座標を前記目標座標として設定する工程を備える
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥調製施設などの穀物処理施設では、搬入された穀物の一部がサンプル穀物として抽出され、自主検定装置に供給される。自主検定装置では、穀物の計量、脱ぷ、選別などが行われ、整粒および屑粒の計量データから歩留まりが計算される。サンプル穀物は、このような自主検定装置に供給される前に、サンプル穀物乾燥装置において、水分測定され、その水分測定結果に基づいて乾燥される。こうして乾燥された穀物が自主検定装置に供給される。
【0003】
かかるサンプル穀物乾燥装置として、例えば、下記の特許文献1に記載の装置が知られている。この装置は、サンプル穀物を収容するための複数の箱と、これらの箱を格納する複数の格納空間と、これらの箱のうちの一つを選択的に保持するロボットと、を備えている。このロボットによって、格納空間に対して箱が出し入れされる。このように箱の出し入れを行う際のロボットの停止位置を表す目標座標は、サンプル穀物乾燥装置の動作を制御する制御装置のメモリに予め記憶されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-41653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなサンプル穀物乾燥装置において、計算値を用いて目標座標を設定すると、装置または箱の寸法精度によっては、ロボットを目標座標に停止させても、格納空間に格納された箱とロボットとの位置関係が適正にならず、その結果、箱の保持動作を適正に行えないことが生じ得る。このような場合には、装置の実際の寸法に応じて、目標座標を試行的に微調整する必要がある。具体的には、ロボットの位置を試行的に変更して、変更後の位置で箱の保持動作を適正に行えるか確認する作業(以下、試行作業とも呼ぶ)を繰り返し行うことによって、箱の保持動作を適正に行えるロボット位置を見つけて、その位置に対応する座標を目標位置として設定する必要がある。
【0006】
一般的に、サンプル穀物乾燥装置は板金による組立品であるので、その筐体には製造段階で歪みが生じ得る。計算値を用いて設定された目標座標には筐体の歪みが反映されていないので、計算値を用いて設定された目標座標は、本来設定されるべき目標座標から、少なくともこの歪みの分だけずれることになる。このような歪みが生じると、計算値を用いて設定された目標座標と、本来設定されるべき目標座標と、の差が大きくなることから、試行作業の負荷が大きくなる(つまり、試行回数が増える)。このようなことから、筐体に歪みが生じても、目標座標設定作業の負荷増大を抑制できる技術が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
本発明の第1の形態によれば、穀物乾燥装置が提供される。この穀物乾燥装置は、乾燥対象の穀物を収容するための複数の箱と、複数の箱のうちの一つの箱を選択的に保持する保持機構を有し、保持機構によって保持される一つの箱を搬送する搬送部と、複数の箱をそれぞれ格納可能に区画された複数の格納室であって、複数の箱を出し入れするための複数の開口を有する複数の格納室を備える乾燥機本体と、搬送部によって複数の箱を複数の格納室にそれぞれ格納するとき、および、搬送部によって複数の箱を複数の格納室からそれぞれ取り出すときに保持機構がとるべきそれぞれの位置を表す座標を複数の格納室ごとに目標座標として設定する座標設定部と、を備えている。乾燥機本体は、複数の開口が形成された面を備えている。面は、複数の格納室にそれぞれ対応付けられた複数の基準マーカを備えている。保持機構は、保持機構と、複数の基準マーカのうちから選択された一つの基準マーカと、を所定の位置関係となるように位置整合させるための補助を光学的手法によって行う位置整合補助部を備えている。座標設定部は、複数の格納室のうちから選択された一つの格納室において、予め計算により求められた目標座標である計算目標座標に対して位置整合補助部を使用して補正して得られた座標を目標座標として設定する。
【0009】
かかる穀物乾燥装置によれば、保持機構によって格納室に対して箱を出し入れする際に保持機構がとるべき位置の目安として基準マーカを設けておけば、以下のようにして、目標座標を設定することができる。具体的には、まず、一つの格納室について、位置整合補助部を使用して保持機構と、当該格納室に対応付けられた基準マーカと、を光学的手法により位置整合させる。その状態で、当該格納室に格納された箱を保持機構によって保持する保持動作を行う。この保持動作によって箱を適正に保持できた場合、オペレータがユーザインタフェースを介して目標座標設定指令を入力する。これにより、現在の保持機構の位置が、保持機構によって箱の出し入れを行う際の保持機構の目標座標として設定される。一方、上記の保持動作によって箱を適正に保持できなかった場合、保持動作を改善できると考えられる方向に保持機構の位置を試行的に変更する。そして、保持機構によって再度、保持動作を行う。この保持機構の位置の変更と保持動作とを、箱を適正に保持できるようになるまで繰り返し、箱を適正に保持できた時点の保持機構の位置が目標座標として設定される。かかる手順によれば、複数の開口が形成された面に基準マーカが設けられているので、穀物乾燥装置の製造時において当該面に歪みが生じていても、基準マーカの位置には、その歪みが反映されている。したがって、面の歪みによる目標座標のずれを試行的に補正する必要がなくなる。このため、計算値を用いて目標座標を設定し、試行作業によって目標座標を修正する従来手法と比べて、歪み分のずれを補正しなくても済む分だけ、試行回数を減らすことができる。その結果、面に歪みが生じても、目標座標設定作業の負荷増大を抑制できる。
【0010】
本発明の第2の形態によれば、第1の形態において、位置整合補助部は、保持機構と、複数の基準マーカのうちから選択された一つの基準マーカと、を所定の位置関係となるように位置整合させるための補助データを光学的手法によって取得し、座標設定部は、補助データに基づいて目標座標を設定する。かかる形態によれば、保持機構と、選択された一つの基準マーカと、を容易に位置整合させることができる。
【0011】
本発明の第3の形態によれば、第1または第2の形態において、位置整合補助部は、面に向けてレーザ光を照射して、選択された一つの基準マーカを光学的に検出するレーザセンサを備えている。かかる形態によれば、保持機構と、選択された一つの基準マーカと、を容易に位置整合させることができる。
【0012】
本発明の第4の形態によれば、第3の形態において、穀物乾燥装置は、レーザセンサが選択された一つの基準マーカを検出するまで保持機構を試行的に移動させるように搬送部を制御する制御部を備えている。かかる形態によれば、保持機構と、選択された一つの基準マーカと、を自動的に位置整合させることができる。
【0013】
本発明の第5の形態によれば、第1の形態において、位置整合補助部は、面に向けてレーザ光を照射するレーザポインタを備えている。かかる形態によれば、簡易な構成を使用して、目視かつ手動操作で、保持機構と、選択された一つの基準マーカと、を位置整合させることができる。
【0014】
本発明の第6の形態によれば、第1ないし第5の形態のいずれかにおいて、複数の基準マーカは、複数の格納室の各々に箱が格納されたときでも箱と重畳することなく露出される位置に設けられる。かかる形態によれば、格納室に箱を格納した状態で、保持機構と、選択された一つの基準マーカと、を位置整合させることができる。このため、保持機構と、選択された一つの基準マーカと、を位置整合させるまでは格納室を空にしておき、その後、箱を格納室に格納するといった作業が必要ない。したがって、位置整合動作の後、速やかに箱の保持動作を行うことができ、目標座標設定作業を効率的に行うことができる。
【0015】
本発明の第7の形態によれば、穀物乾燥装置が提供される。この穀物乾燥装置は、乾燥対象の穀物を収容するための複数の箱と、複数の箱のうちの一つの箱を選択的に保持する保持機構を有し、保持機構によって保持される一つの箱を搬送する搬送部と、複数の箱をそれぞれ格納可能に区画された複数の格納室であって、複数の箱を出し入れするための複数の開口を有する複数の格納室を備える乾燥機本体と、搬送部によって複数の箱を複数の格納室にそれぞれ格納するとき、および、搬送部によって複数の箱を複数の格納室からそれぞれ取り出すときに保持機構がとるべきそれぞれの位置を表す座標を複数の格納室ごとに目標座標として設定する座標設定部と、座標設定部に目標座標設定指令を入力するためのユーザインタフェースと、を備えている。乾燥機本体は、複数の開口が形成された面を備えている。面は、複数の格納室にそれぞれ対応付けられた複数の基準マーカを備えている。保持機構は、保持機構と、複数の基準マーカのうちから選択された一つの基準マーカと、を所定の位置関係となるように位置整合させるための補助を光学的手法によって行う位置整合補助部を備えている。座標設定部は、複数の格納室のうちから選択された一つの格納室に関して目標座標設定指令が入力されたときの保持機構の位置を表す座標を選択された一つの格納室のための目標座標として設定する。
【0016】
かかる穀物乾燥装置では、保持機構の位置の変更と保持動作とを、箱を適正に保持できるようになるまで繰り返し、箱を適正に保持できた時点で、オペレータがユーザインタフェースを介して目標座標設定指令を入力することにより、現在の保持機構の位置が目標座標として設定される。第7の形態によれば、第1の形態と同様の効果を奏する。第7の形態に第2ないし第6のいずれかの形態を適用することも可能である。
【0017】
本発明の第8の形態によれば、穀物乾燥装置における座標設定方法が提供される。この方法は、乾燥対象の穀物を収容するための複数の箱と、複数の箱のうちの一つの箱を選択的に保持する保持機構を有し、保持機構によって保持される一つの箱を搬送する搬送部と、複数の箱をそれぞれ格納可能に区画された複数の格納室であって、複数の箱を出し入れするための複数の開口を有する複数の格納室を備える乾燥機本体と、を備える穀物乾燥装置を用意する工程を備えている。乾燥機本体は、複数の開口が形成された面を備えている。面は、複数の格納室にそれぞれ対応付けられた複数の基準マーカを備えている。保持機構は、保持機構と、複数の基準マーカのうちから選択された一つの基準マーカと、を所定の位置関係を有するように位置整合させるための補助を光学的手法によって行う位置整合補助部を備えている。この方法は、さらに、位置整合補助部を使用して、保持機構と選択された一つの基準マーカとが所定の位置関係を有する整合位置まで保持機構を移動させる工程と、選択された一つの基準マーカに対応付けられた格納室に一つの箱が格納され、かつ、所定の位置関係が維持された状態で、保持機構によって一つの箱を保持する保持動作を行う工程と、保持動作が適正であると判断される場合に、整合位置に対応する座標を、選択された一つの基準マーカに対応付けられた格納室に一つの箱を格納するとき、および、選択された一つの基準マーカに対応付けられた格納室から一つの箱を取り出すときに保持機構がとるべき位置を表す目標座標して設定する工程と、を備えている。
【0018】
本発明の第9の形態によれば、第8の形態において、この方法は、保持動作が適正でないと判断される場合に、保持機構の位置を整合位置から試行的に変更して保持動作を行うことを繰り返すことによって、一つの箱を適正に保持できる保持機構の位置を見付け、見付けた位置に対応する座標を目標座標として設定する工程を備えている。第8および第9の形態によれば、第1の形態と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態による穀物乾燥装置の概略正面図である。
図2】格納室と保持機構とを示す概略斜視図である。
図3】サンプル箱を示す概略斜視図である。
図4】保持機構を示す概略斜視図である。
図5】格納室にサンプル箱を格納した状態を示す図である。
図6】目標座標設定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の一実施形態による穀物乾燥装置10の概略正面図である。穀物乾燥装置10は、乾燥調製施設などの穀物処理施設に設置される。穀物処理施設では、搬入された穀物のうちの一部がサンプル穀物(以下、単にサンプルと呼ぶ)として抽出される。サンプルは、穀物乾燥装置10で水分測定され、その測定結果に基づいて乾燥された後、シュート110およびホッパ120を介して自主検定装置100に供給される。
【0021】
穀物乾燥装置10および自主検定装置100の動作全般は、制御装置130によって制御される。制御装置130は、本実施例では、所定のプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータである。制御装置130は、インストールされたプログラムを実行することによって、座標設定部131および制御部132としても機能する。座標設定部131および制御部132の機能については後述する。制御装置130は、ユーザインタフェースとしてキーボード133を備えている。
【0022】
図1に示すように、穀物乾燥装置10は、投入・排出部20と乾燥機本体30と搬送部50と、を備えている。投入・排出部20は、サンプルを収容するためのサンプル箱40を挿入可能な挿入口21,22,23,24を備えている。投入・排出部20の内部には、サンプルの水分測定を行うための水分測定装置(図示省略)が配置されている。
【0023】
乾燥機本体30は、図2から最もよく分かるように、サンプル箱40を格納するための複数の格納室31を備えている。複数の格納室31は、複数のサンプル箱40をそれぞれ格納可能に区画されている。乾燥機本体30の面33には、格納室31に対してサンプル箱40を出し入れするための開口32が形成されている。開口32は、格納室31ごとに設けられている。図1では、格納室31の各々にサンプル箱40が格納された状態を概略的に示している。
【0024】
搬送部50は、複数のサンプル箱40のうちの一つのサンプル箱40を選択的に保持するための保持機構60を備えている。保持機構60は、アクチュエータ(図示省略)によってガイドレール(図示省略)に沿って鉛直方向および水平方向に並進可能に構成される。また、保持機構60は、水平方向に延びる回転軸線を中心として回転可能に構成される。これにより、保持機構60は、保持しているサンプル箱40内に収容されたサンプルをサンプル箱40から排出することができる。
【0025】
かかる穀物乾燥装置10の基本動作について説明する。まず、搬送部50は、格納室31に収容されている空のサンプル箱40を保持機構60によって保持し、当該サンプル箱40を挿入口21に挿入する。このとき、このサンプル箱40には、ダクト25を介してサンプルが供給される。次いで、搬送部50は、サンプルが収容されたサンプル箱40を挿入口21から取り出して、挿入口22に挿入する。そして、搬送部50は、サンプル箱40を投入・排出部20の内部において回転させて、サンプル箱40内に収容されたサンプルを排出する。排出されたサンプルは、投入・排出部20内に設置された水分測定装置に供給される。水分測定装置では、投入されたサンプルの一部について水分が測定される。
【0026】
次いで、搬送部50は、空になったサンプル箱40を挿入口22から取り出して、挿入口23に挿入する。このとき、サンプル箱40には、水分測定装置から排出されるサンプルが供給される。次いで、搬送部50は、サンプル箱40を挿入口23から取り出して、空いている格納室31に収容する。
【0027】
格納室31に収容されたサンプル箱40内のサンプルは、水分測定装置での測定結果に基づいて、適切な水分になるまで乾燥される。本実施形態では、穀物乾燥装置10では、ヒータ(図示省略)によって加熱された空気が背面から格納室31に供給されることによって、乾燥が行われる。複数の格納室31の各々には、加熱空気を格納室31内に導入するためのファン(図示省略)が設置されている。このため、格納室31ごとに乾燥を行うことができる。なお、穀物乾燥装置10は、上述の形態に限らず、任意の方式の乾燥装置であってもよい。
【0028】
次いで、搬送部50は、乾燥が完了したサンプルを収容しているサンプル箱40を格納室31から取り出して、挿入口24に挿入する。そして、搬送部50は、サンプル箱40を投入・排出部20の内部において回転させて、サンプル箱40内に収容されたサンプルを排出する。排出されたサンプルは、シュート110およびホッパ120を介して、自主検定装置100に供給される。
【0029】
図3は、サンプル箱40の概略斜視図である。図3に示すように、サンプル箱40は、格納室31に収容されたときに外部に露出する露出面41を備えている。サンプル箱40は、さらに、サンプルを収容するための収容室42を露出面41の後方に備えている。図3に示されるように、収容室42は、略矩形形状を有しており、その上方が全面的に開口している。
【0030】
図3に示されるように、露出面41は、露出面41と収容室42とが重なる方向から見て、露出面41の外縁が収容室42の外縁よりも外側に張り出しており、フランジ状に形成されている。格納室31に収容室42が完全に格納されたとき、格納室31の開口32は露出面41によって完全に塞がれる。
【0031】
図3に示されるように、露出面41は、その略中央に箱開口44を備えている。箱開口44は、露出面41をその厚み方向に貫通している。本実施形態では、箱開口44は、略矩形形状に形成されている。この箱開口44は、後述するように、保持機構60によってサンプル箱40を保持するために使用される。
【0032】
図4は、保持機構60の概略斜視図である。保持機構60は、搬送部50のうちの水平方向および鉛直方向に並進可能な部材に、ベース51を介して取り付けられる。保持機構60は、二つのチャック部61a,61bを備えている。チャック部61a,61bは、同一の形状および大きさを有しており、上下対称に配置されている。このチャック部61a,61bは、アクチュエータによって互いに離れる方向、および、互いに近づく方向に移動可能に構成されている。本実施形態では、この移動可能方向は、鉛直方向である。
【0033】
かかる保持機構60によってサンプル箱40を保持する動作について説明する。まず、チャック部61a,61bの一部分(水平方向に突出した部分)が、サンプル箱40の箱開口44に挿入され、その後、チャック部61a,61bが矢印A1,A2で示されるように互いに離れる方向に移動する。その結果、箱開口44を形成する露出面41の内側縁部45(図3参照)がチャック部61a,61bと鉛直方向に当接する。チャック部61a,61bが互いに離れる方向にさらに移動しようとすると、チャック部61a,61bは、内側縁部45を鉛直方向外向きに反対方向に押圧する。これによって、サンプル箱40は保持機構60によって保持される。
【0034】
このような保持機構60によってサンプル箱40を保持して格納室31に格納するとき、および、格納室31に格納されたサンプル箱40を保持機構60によって保持して、当該格納室31から取り出すときは、保持機構60は、そのときにとるべき位置を表す目標座標に移動される。目標座標は、穀物乾燥装置10の製造時に予め設定され、制御装置130のメモリに記憶される。この目標座標は、水平方向の座標値と、鉛直方向の座標値と、を有している。
【0035】
この目標座標を設定する方法について以下に説明する。図2に示すように、乾燥機本体30の面33には、複数の基準マーカ34が設けられている。基準マーカ34は、格納室31と同じ数だけ設けられており、格納室31の各々と1対1の関係で対応付けられている。本実施形態では、基準マーカ34は、当該基準マーカ34に対応付けられた格納室31の下方の中央部に設けられている。
【0036】
基準マーカ34は、本実施形態では、面33から突出する突起部である。ただし、基準マーカ34は、任意の形態で実施することができ、例えば、光学的特性(例えば、色、反射率など)が他の領域と異なる部分であってもよい。このような光学的特性が異なる部分は、塗料やシールなどで形成されてもよい。
【0037】
また、図4に示すように、保持機構60は、その下方にレーザセンサ62を備えている。レーザセンサ62は、チャック部61a,61bと干渉しない位置に設けられている。レーザセンサ62は、図2に示すように、乾燥機本体30の面33にレーザ光63を照射して、基準マーカ34を光学的に検出する。具体的には、本実施形態では、基準マーカ34が突起部によって形成されているので、面33上の基準マーカ34が存在する領域とレーザセンサ62との距離は、面33上の基準マーカ34が存在しない領域とレーザセンサ62との距離よりも小さくなる。レーザセンサ62は、この距離の違いを判別することによって、基準マーカ34を検出することができる。レーザセンサ62には、時間計測式、三角測定式など任意の方式を採用可能である。
【0038】
基準マーカ34が、光学的特性が他の領域と異なる部分によって形成される場合には、その光学的特性を検出できるセンサが用いられてもよい。例えば、基準マーカ34が、他の領域と色が異なる部分によって形成される場合には、レーザセンサ62に変えて、色の違いを検出可能な光電センサが使用されてもよい。
【0039】
図6は、目標座標設定処理の手順を示すフローチャートである。この手順は、制御装置130を使用して半自動で行われる。目標座標を設定するためには、まず、制御装置130は、複数の格納室31のうちの一つを選択する(ステップS110)。次いで、制御装置130は、選択した当該格納室31に対応する所定位置に保持機構60を移動させる(ステップS120)。この所定位置は、選択された格納室31に対してサンプル箱40を出し入れする際に保持機構60がとるべき位置として計算によって求められた位置である(以下、この位置の座標を計算目標座標とも呼ぶ)。計算目標座標は、予め制御装置130のメモリに記憶されている。
【0040】
次いで、制御装置130は、この移動した位置において、レーザセンサ62によって基準マーカ34が検出されたか否かを判断する(ステップS130)。この判断の結果、基準マーカ34が検出されていなければ(ステップS130:NO)、制御装置130は、制御部132の機能として保持機構60を試行的に移動させて、基準マーカ34を検出する(ステップS140)。この処理は、例えば、保持機構60を水平方向または鉛直方向に座標点一つ分だけ移動させ、基準マーカ34が検出されるか否かを判断する動作を、所定の座標点(例えば、初期座標点から±5の座標点の範囲)の範囲内で、基準マーカ34が検出されるまで繰り返すことによって行われる。
【0041】
保持機構60と基準マーカ34とが所定の位置関係を有する(具体的には、保持機構60が、レーザセンサ62によって基準マーカ34が検出される位置と同一の鉛直平面上の位置にある)ように保持機構60と基準マーカ34とが位置整合されているとき、保持機構60は、計算目標座標が表す位置に対して面33の歪み分が補正された位置にあると言える。逆に言うと、基準マーカ34は、面33に歪みが生じていなければ、計算目標座標に保持機構60を配置したときにレーザセンサ62によって基準マーカ34が検出される位置に設けられている。
【0042】
このようにして基準マーカ34が検出されると(ステップS130:YES、または、ステップS140)、制御装置130は、選択された格納室31にサンプル箱40が格納され、上述の所定の位置関係が維持された状態で、保持機構60によって、当該サンプル箱40の保持動作を行う(ステップS150)。本実施形態では、図5に示すように、基準マーカ34は、格納室31にサンプル箱40が格納されたときでもサンプル箱40の挿入方向に見て基準マーカ34とサンプル箱40(より具体的には、露出面41)とが重畳しない位置に設けられている。このため、ステップS140までは格納室31を空にしておき、ステップS150においてサンプル箱40を格納室31に格納するといった作業が必要ない。換言すれば、基準マーカ34が検出された後、速やかにステップS150を実施できる。したがって、目標座標設定処理を効率的に行うことができる。
【0043】
次いで、オペレータは、ステップS150での保持動作が適正であったか否かを目視によって判断する(ステップS160)。より具体的には、オペレータは、チャック部61a,61bがサンプル箱40の内側縁部45と正しい位置で係合し、サンプル箱40を保持できているか否かを判断する。
【0044】
判断の結果、保持動作が適正でなければ(ステップS160:NO)、制御装置130は、保持機構60の位置を変更し、変更した位置において再度、保持動作を行う(ステップS170)。より具体的には、オペレータは、ステップS160での目視確認の結果を考慮して、保持機構60の位置をどの方向にどれだけの距離だけ移動させれば、保持動作が適正になるかを予測し、その方向および距離(座標点の数)を、キーボード133を用いて制御装置130に入力する。これに対して、制御装置130は、入力された方向に、入力された距離だけ保持機構60を移動させ、その後、再度、保持動作を行う。そして、オペレータは、再度、ステップS160の判断を行う。このようにして、ステップS160,S170は、保持動作が適正であると判断されるまで試行的に繰り返し行われる。
【0045】
そして、保持動作が適正であると判断されると(ステップS160:YES)、オペレータは、キーボード133を用いて目標座標設定指令を入力する。これに対して、制御装置130は、座標設定部131の機能として、現在の保持機構60の位置に対応する座標を、ステップS110で選択した格納室31のための目標座標として設定する(ステップS180)。設定された目標座標は、制御装置130のメモリに記憶される。
【0046】
こうして、一つの格納室31について目標座標が設定されると、制御装置130は、ステップS110において全ての格納室31を選択したか否かを判断する(ステップS190)。判断の結果、全ての格納室31を選択していなければ(ステップS190:NO)、処理はステップS110に戻る。すなわち、制御装置130は、全ての格納室31について目標座標が設定されるまで、ステップS110~S180を繰り返す。こうして全ての格納室31について目標座標が設定されると(ステップS190:YES)、目標座標設定処理は終了となる。
【0047】
以上説明した穀物乾燥装置10によれば、穀物乾燥装置10の製造時において乾燥機本体30の面33に歪みが生じていても、基準マーカ34の位置には、その歪みが反映されている。したがって、レーザセンサ62が基準マーカ34を検出した保持機構60の位置を、保持動作が適正に行えるか否かの判断の開始点にすれば、面33の歪みに起因する、計算目標座標と実際に設定されるべき目標座標とのずれを試行的に補正する必要がなくなる。このため、計算値を用いて目標座標を設定し、試行作業によって目標座標を修正する従来手法と比べて、歪み分のずれを補正しなくても済む分だけ、目標座標を設定する際の試行回数を減らすことができる。また、位置整合を補助するための補助データ(本実施形態では、レーザセンサ62による検出データであり、例えば、レーザセンサ62に代えてカメラが設けられる場合には、カメラによって撮像された撮像データ)を光学的手法によって取得して、保持機構60と基準マーカ34と、を所定の位置関係となるように位置整合させるので、位置整合を容易に行うことができる。また、制御装置130は、保持機構60を試行的に移動させて、レーザセンサ62によって基準マーカ34を自動的に検出するので、オペレータの負担が軽減される。
【0048】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0049】
例えば、レーザセンサ62に代えて、保持機構60および基準マーカ34を、それらが所定の位置関係を有するように位置整合させるための補助を光学的手法によって行う任意の位置整合補助手段が採用されてもよい。例えば、位置整合補助手段は、面33に向けてレーザ光63を照射するレーザポインタであってもよい。この場合、オペレータは、レーザ光63の照射状況を目視確認しつつ、キーボード133を用いて、レーザ光63の照射位置が基準マーカ34と重畳するように保持機構60を移動させてもよい。
【0050】
あるいは、位置整合補助手段は、カメラであってもよい。この場合、カメラによって取得される画像において、特定の画素のところに基準マーカ34が位置しているときに、基準マーカ34と保持機構60とが位置整合していると判断されてもよい。
【0051】
また、保持機構60は、上述したチャック方式に限らず、任意の形式を採用可能である。例えば、上記の特許文献1に記載されているような、電磁石を利用する形式であってもよい。
【0052】
上述した目標座標設定処理は、穀物乾燥装置10の製造時に限らず、穀物乾燥装置10の使用段階で定期的に行われてもよい。こうすれば、製造後に面33に歪みが生じても、目標座標を、その歪み分を補正した新たな目標座標に設定し直すことができる。
【符号の説明】
【0053】
10…穀物乾燥装置
20…投入・排出部
21,22,23,24…挿入口
25…ダクト
30…乾燥機本体
31…格納室
32…開口
33…面
34…基準マーカ
40…サンプル箱
41…露出面
42…収容室
44…箱開口
45…内側縁部
50…搬送部
51…ベース
60…保持機構
61a,61b…チャック部
62…レーザセンサ
63…レーザ光
100…自主検定装置
110…シュート
120…ホッパ
130…制御装置
131…座標設定部
132…制御部
133…キーボード
図1
図2
図3
図4
図5
図6