(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
H04N 13/363 20180101AFI20221207BHJP
H04N 13/346 20180101ALI20221207BHJP
H04N 13/398 20180101ALI20221207BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20221207BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20221207BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20221207BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20221207BHJP
H04N 13/128 20180101ALI20221207BHJP
【FI】
H04N13/363
H04N13/346
H04N13/398
H04N5/74 Z
G02B27/01
G09G5/00 510B
G09G5/00 550C
B60K35/00 A
H04N13/128
(21)【出願番号】P 2019509648
(86)(22)【出願日】2018-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2018011334
(87)【国際公開番号】W WO2018180856
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2017073257
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【氏名又は名称】福田 充広
(72)【発明者】
【氏名】山田 範秀
(72)【発明者】
【氏名】橋村 淳司
(72)【発明者】
【氏名】丹内 修
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】菅原 和弘
【審査官】佐野 潤一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/103418(WO,A1)
【文献】特開平04-175094(JP,A)
【文献】特開2011-170186(JP,A)
【文献】特開2008-180759(JP,A)
【文献】特開2016-176983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 13/00
H04N 5/74
H04N 9/31
B60K 35/00
B60R 1/00
B60R 21/00
G02B 27/01
G02B 30/00
G03B 35/00
G09G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示素子に表示されている画像の虚像を投影する投影光学系と、
検出領域内に存在するオブジェクトを検出するとともに、前記投影光学系から前記オブジェクトまでの距離を目標距離として検出するオブジェクト検出部と、
前記投影光学系からの虚像の投影距離を周期的に変化させる投影距離変更部と、
前記目標距離が前記投影距離と略一致するタイミングで、前記検出されたオブジェクトに対して前記投影光学系によって虚像として関連情報像を付加する像付加部と、
を備え、
前記投影光学は、第1投影光学系または第2投影光学系を含み、
前記第1投影光学系は、前記画像の中間像を形成する第1光学系と、前記中間像の位置に配置される拡散スクリーンと、前記拡散スクリーン上の像を再結像する第2光学系と、前記再結像された像を前記虚像に変換する虚像投映光学系とを有し、
前記第2投影光学系は、前記画像の中間像を形成する第1光学系と、前記中間像位置近傍に配置される拡散スクリーンと、前記拡散スクリーン上の像を前記虚像に変換する虚像投影光学系とを有し
前記投影光学系が前記第1投影光学系を含む場合に、前記投影距離変更部は、前記第2光学系の少なくとも一部を周期的に光軸方向に移動させて、前記虚像の投影距離を周期的に変化させ、
前記投影光学系が前記第2投影光学系を含む場合に、前記拡散スクリーンを周期的に光軸方向に移動させて、前記虚像の投影距離を周期的に変化させる、ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記投影距離変更部は、前記投影距離を連続的に変化させる、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記投影距離変更部は、前記投影距離を段階的に変化させる、請求項1及び2のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記オブジェクト検出部は、前記オブジェクトとして、移動体及び人を検出する、請求項1~3のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記オブジェクト検出部は、3次元計測器を有する、請求項4に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
前記関連情報像は、前記オブジェクトを囲むフレーム枠又は前記オブジェクトに隣接する指標である、請求項1~5のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虚像の投影位置を可変としたヘッドアップディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車用のヘッドアップディスプレイ(以下HUD(Head-Up Display)とも称する)装置は、虚像を運転者からある一定の距離に生成するのが一般的であり、表示内容は、車速、カーナビ情報等に限られていた。そもそもHUDを車に搭載する目的は、運転者の視線移動を最小限に抑えることで、より安全な運転を支援するものであるが、安全運転支援という意味においては、上記のような表示内容だけでは不十分であり、例えば前方の車、歩行者、障害物等をカメラその他のセンサーで検知し、HUDを通して運転者に事前に危険を察知させて事故を未然に防ぐようなシステムの方がより好ましい。こういったシステムを実現するには、車、人、障害物等に対して枠状の危険信号を重畳させて表示させることが考えられる(例えば特許文献1参照)。しかしながら、運転者から虚像までの距離が一定だと運転者の眼の位置がずれた場合、実物と危険信号との位置関係がずれてしまい、ズレが過度となった場合、運転者が誤認してしまうという課題がある。
【0003】
なお、虚像の表示距離を変化させるHUD装置として、走査型の像形成手段と、拡散スクリーンと、投影手段と、拡散スクリーン位置を変える可動手段とを備え、拡散スクリーン位置を変化させることで虚像の奥行き方向の投影位置を変化させるものが公知となっている(例えば特許文献2、3参照)。これらのHUD装置は、車の速度に伴って人間が注視する距離が変わることを鑑み、虚像の表示距離を近づけたり遠ざけたりして、運転者の視線移動を少なくするもの(特許文献2)であったり、3D表示を行う目的のもの(特許文献3)であったりして、車、人、障害物等のオブジェクトに対して虚像の表示位置を調整しようとするものではない。
【0004】
また、例えば車、人、障害物等のオブジェクトに対して虚像の表示位置を重ねる、またはその近傍に表示させて運転者に危険を伝えるといった目的でHUD装置を使用する場合、運転時の危険という事象は視線の遠近に関係なく存在するものであるため、遠距離にも近距離にも同時に危険信号を表示できることが好ましい。そのためには、拡散スクリーンを高速駆動し、それと同期させた映像を像形成手段によって生成することで、人間の目には同時に表示されているかのように見せることが考えられる。しかしながら、走査型の像形成手段では、高フレームレートでの表示切り替えに対応することが難しいため、複数距離に虚像を同時に表示させる構成には向いていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-127160号公報
【文献】特開2009-150947号公報
【文献】特開2008-180759号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、実物のオブジェクトに対して奥行き方向も含めた配置関係で虚像として関連情報像を付加することができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【0007】
上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映したヘッドアップディスプレイ装置は、画像表示素子に表示されている画像の虚像を投影する投影光学系と、検出領域内に存在するオブジェクトを検出するとともに、投影光学系からオブジェクトまでの距離を目標距離として検出するオブジェクト検出部と、投影光学系からの虚像の投影距離を周期的に変化させる投影距離変更部と、目標距離が投影距離と略一致するタイミングで、検出されたオブジェクトに対して投影光学系によって虚像として関連情報像を付加する像付加部と、を備える。上記投影光学は、第1投影光学系または第2投影光学系を含む。前者の第1投影光学系は、画像の中間像を形成する第1光学系と、中間像の位置に配置される拡散スクリーンと、拡散スクリーン上の像を再結像する第2光学系と、再結像された像を虚像に変換する虚像投映光学系とを有する。後者の第2投影光学系は、画像の中間像を形成する第1光学系と、中間像位置近傍に配置される拡散スクリーンと、拡散スクリーン上の像を虚像に変換する虚像投影光学系とを有する。投影光学系が第1投影光学系の場合に、投影距離変更部は、第2光学系の少なくとも一部を周期的に光軸方向に移動させて、虚像の投影距離を周期的に変化させ、投影光学系が第2投影光学系の場合に、拡散スクリーンを周期的に光軸方向に移動させて、虚像の投影距離を周期的に変化させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1Aは、第1実施形態のヘッドアップディスプレイ装置を車体に搭載した状態を示す側方断面図であり、
図1Bは、ヘッドアップディスプレイ装置を説明する車内側からの正面図である。
【
図2】ヘッドアップディスプレイ装置を構成する投影光学系等の具体的な構成例を説明する拡大側方断面図である。
【
図3】
図2に示す光学系の変形例を説明する図である。
【
図4】中間像の位置の変化を具体的に例示する図であり、投影距離の変化を概念的に説明する図である。
【
図5】ヘッドアップディスプレイ装置の全体構造を説明するブロック図である。
【
図8】
図8A及び8Bは、
図4に示す中間像の位置又は投影距離の変化に関する変形例を説明する図である。
【
図9】
図9A~9Cは、
図4に示す中間像の位置又は投影距離の変化に関する変形例を説明する図である。
【
図10】第2実施形態のヘッドアップディスプレイ装置を説明する図である。
【
図11】第3実施形態のヘッドアップディスプレイ装置を説明する図である。
【
図12】
図12A及び12Bは、拡散スクリーンの構造を説明する図である。
【
図13】第4実施形態のヘッドアップディスプレイ装置を説明する図である。
【
図14】第5実施形態のヘッドアップディスプレイ装置を説明する図である。
【
図15】
図15A及び15Bは、変形例のフレーム枠及び指標を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る第1実施形態のヘッドアップディスプレイ装置について説明する。
【0010】
図1A及び1Bは、本実施形態のヘッドアップディスプレイ装置のうち画像表示装置100を説明する概念的な側方断面図及び正面図である。この画像表示装置100は、例えば自動車の車体2内に搭載されるものであり、描画ユニット10と表示スクリーン20とを備える。画像表示装置100は、描画ユニット10中の後述する表示素子11に表示されている画像情報を、表示スクリーン20を介してドライバーUN向けに虚像表示するものである。
【0011】
画像表示装置100のうち描画ユニット10は、車体2のダッシュボード4内であってディスプレイ50の背後に埋め込むように設置されており、運転関連情報等を含む画像に対応する表示光HKを表示スクリーン20に向けて射出する。表示スクリーン20は、コンバイナーとも呼ばれ、半透過性を有する凹面鏡又は平面鏡である。表示スクリーン20は、下端の支持によってダッシュボード4上に立設され、描画ユニット10からの表示光HKを車体2の後方に向けて反射する。つまり、図示の場合、表示スクリーン20は、フロントウインドウ8とは別体で設置される独立型のものとなっている。表示スクリーン20で反射された表示光HKは、運転席6に座ったドライバーUNの瞳HT及びその周辺位置に対応するアイボックス(不図示)に導かれる。ドライバーUNは、表示スクリーン20で反射された表示光HK、つまり車体2の前方にある虚像としての投影像IMを観察することができる。一方、ドライバーUNは、表示スクリーン20を透過した外界光、つまり前方景色、自動車等の実像を観察することができる。結果的に、ドライバーUNは、表示スクリーン20の背後の外界像又はシースルー像に重ねて、表示スクリーン20での表示光HKの反射によって形成される運転関連情報等の関連情報を含む投影像(虚像)IMを観察することができる。
【0012】
ここで、表示スクリーン20をフロントウインドウ8と別体で構成しているが、フロントウインドウ8を表示スクリーンとして用い、フロントウインドウ8内に設定した表示範囲に投影を行って、ドライバーUNが投影像IMを観察できる構成としても構わない。この際、フロントウインドウ8のガラスの一部領域の反射率をコート等によって変更することで、反射領域を確保することができる。また、フロントウインドウ8での反射角度が例えば60度程度であれば、反射率が15%程度確保され、特にコートを設けなくても透過性を有する反射面として用いることができる。これら以外に、フロントウインドウ8のガラス中にサンドイッチする構成で表示スクリーンを設けることもできる。
【0013】
図2に示すように、描画ユニット10は、表示素子11を含む虚像型の拡大結像系である本体光学系13と、本体光学系13を動作させる表示制御部18と、本体光学系13等を収納するハウジング14とを備える。これらのうち本体光学系13と表示スクリーン20と組み合わせたものは、投影光学系30を構成する。
【0014】
本体光学系13は、表示素子11のほかに、表示素子11に形成された画像を拡大した中間像TIを形成する結像光学系15と、中間像TIを虚像に変換する虚像形成光学系17とを備える。
【0015】
表示素子11は、2次元的な表示面11aを有する。表示素子11の表示面11aに形成された像は、結像光学系15のうち第1光学部分15aで拡大されて拡散スクリーン15cに投影される。この際、2次元表示が可能な表示素子11を用いることで、拡散スクリーン15cに対する投影像の切り替え、つまり表示スクリーン20越しに虚像として表示される投影像IMの切り替えを比較的高速とできる。表示素子11は、DMD(Digital Mirror Device)やLCOS(Liquid Crystal On Silicon)等の反射型の素子であっても、液晶等の透過型の素子であってもよい。特に、表示素子11としてDMDやLCOSを用いると、明るさを維持しつつ画像を高速で切り替えること(高速の間欠表示を含む)が容易になり、虚像距離又は投影距離を変化させる表示に有利である。なお、表示素子11は、30fps以上、更に望ましくは60fps以上のフレームレートで動作する。これにより、異なる投影距離に複数の投影像(虚像)IMをドライバーUNに対して同時に表示されているように見せることが可能になる。特に、90fps以上で表示の切り替えを行う場合、DMDやLCOSが表示素子11の候補となる。
【0016】
結像光学系15は、固定焦点の第1光学部分15aと、拡散スクリーン15cと、可変焦点の第2光学部分15bとを備える。第1光学部分15aは、表示素子11の表示面11aに形成された画像を拡散スクリーン15c上に拡大投影し、第2光学部分15bは、拡散スクリーン15c上に投影された画像を再度拡大投影して中間像TIを形成する(中間像TI自体は、表示素子11の表示動作が前提となる)。拡散スクリーン15cとしては、例えば摺りガラス、レンズ拡散板、マイクロレンズアレイ等を用いることができる。第2光学部分15bは、光学素子として可動レンズ15fを含む。可動レンズ15fは、後述する配置変更装置62によって光軸AX方向に移動可能になっており、かかる可動レンズ(光学素子)15fの光軸AX方向への移動に伴って第2光学部分15bの焦点距離が増減し、結像又はフォーカス位置としての中間像TI(表示素子11の表示が動作していなければ、必ずしも表示としての中間像は形成されないが、中間像が形成されるであろう位置も中間像の位置と呼ぶ)の位置も光軸AX方向に移動させることができる。第2光学部分15b等のレンズ構成にもよるが、例えば可動レンズ15fを虚像形成光学系17側に移動させることで、中間像TIの位置を虚像形成光学系17側に移動させて、投影像IMまでの虚像距離を減少させることができる。また、可動レンズ15fを表示素子11側に移動させることで、中間像TIの位置を表示素子11側に移動させて、投影像IMまでの虚像距離を増加させることができる。
【0017】
虚像形成光学系17は、結像光学系15によって形成された中間像TIを表示スクリーン20と協働して拡大し、ドライバーUNの前方に虚像としての投影像IMを形成する。虚像形成光学系17は、少なくとも1枚のミラーで構成されるが、図示の例では2枚のミラー17a,17bを含む。
【0018】
可動レンズ15fに付随して設けられた配置変更装置62は、可動レンズ15fや中間像TIを光軸AXに沿って所望の位置に移動させる投影距離変更部であり、投影光学系30から虚像である投影像IMまでの投影距離を周期的に変化させるためのものである。配置変更装置(投影距離変更部)62は、可動レンズ15fの光軸AX方向への移動を可能にする可動機構64と、可動機構64を介して可動レンズ15fを光軸AX方向に所望の速度で往復移動させる駆動部65とを有する。駆動部65として例えばモーターを使用する場合、モーターにかかる負荷を低減するため、可動機構64に可動レンズ15fの往復動又は振動を容易にするバネを組み込むことが望ましい。配置変更装置62によって可動レンズ15fを光軸AXに沿って移動させることで、虚像形成光学系17によって表示スクリーン20の背後に形成される虚像としての投影像IMと観察者であるドライバーUNとの距離を大きく、又は小さくすることができる。このように、投影される投影像IMの位置を前後に変化させるとともに、表示内容をその位置に応じたものとすることで、投影像IMまでの虚像距離を変化させつつ投影像IMの表示内容を変化させることになり、一連の投影像としての投影像IMを3次元的なものとすることができる。
【0019】
可動レンズ15fの移動速度は、虚像としての投影像IMが複数個所又は複数虚像距離に同時に表示されているかのように見せることができる速度であることが望ましい。例えば、投影像IMが遠距離、中距離、及び近距離の3段階で順次投影されるものとして、表示素子11に90fpsで表示を行わせると、各距離(例えば遠距離)の投影像IMは、30fpsで表示の切り替えが行われることになり、中距離、及び近距離の投影像IMが並列的に行われかつ切り替えが連続的なものとして認識される。この際の可動レンズ15fの移動速度は、表示素子11の表示動作と同期するように設定される。可動レンズ15fの移動速度は、表示素子11の動作速度である30fps以上に対応する必要があり、バネ機構を用いる他に、例えば多数のレンズを円周上に配置したホイールを光軸AXに平行な中心軸の周りに回転させ、多数のレンズを順次光軸AX上に配置することで、多数のレンズを高速で切り替える構造とすることができる。
【0020】
図2に示す投影光学系30の場合、観察者であるドライバーUNの目が移動した際の観察可能である範囲(つまりアイボックス)を大きくするためにリレー光学系の倍率を高くして拡散スクリーン15cのサイズが大きくなっても、拡散スクリーン15cを移動させなくて済み、移動機構が大掛かりにならないという利点がある。
【0021】
図3は、
図2に示す投影光学系30の変形例を説明する図である。結像光学系115は、表示素子11に形成された画像を拡大投影して中間像TIを形成する。結像光学系115は、光学素子として可動レンズ15fを含む。可動レンズ15fは、
図2の場合と同様に配置変更装置162によって光軸AX方向に移動可能になっており、かかる可動レンズ(光学素子)15fの光軸AX方向への移動に伴って結像光学系115の焦点距離が増減し、結像又はフォーカス位置としての中間像TIの位置も光軸AX方向に移動させることができる。この場合、結像光学系115内に中間像は形成されていない。
図3に示す光学系では、結像光学系115の結像位置又はその近傍に光軸AX方向に移動する光学素子である拡散スクリーン16を配置している。拡散スクリーン16は、配置変更装置162に設けたガイド部164と駆動部65とによって光軸AX方向に移動可能になっており、結像光学系115によって形成され中間像TIとともに移動する。つまり、拡散スクリーン16は、可動レンズ15fと同期して動作し、移動する中間像TIの位置にこの中間像TIと同期して配置される。
図3に示す投影光学系30は、中間像を一度結ぶだけの構成なので、移動レンズを少ない枚数で構成する等して移動機構の大型化を抑制すれば、光学系の小型化が図れる。
【0022】
図4は、可動レンズ15fの移動に伴う中間像TIの位置の変化を具体的に例示する図である。可動レンズ15fは、光軸AX方向に沿って正弦波状の経時パターンで往復移動しており、中間像TIの位置も、表示素子11が連続表示を行っている場合、図示のように光軸AX方向に沿って正弦波状の経時パターンで往復移動する。つまり、中間像TIの位置は、可動レンズ15fの移動に伴って連続的に変化する。この結果、図示を省略するが、投影像(虚像)IMの位置も、スケールは異なるが、中間像TIの位置と同様に光軸AX方向に沿って往復移動し、投影距離を連続的に変化させることができる。ここで、表示素子11は、連続表示を行うものでなく、表示内容を切り替えつつ間欠的な表示を行うものであるから、中間像TIの表示位置も正弦波状の経時パターン上における離散的な位置となる。図示の例では、中間像TIの光軸AX上の位置のうち、3点を表示位置P1~P3としている。ここで、表示位置P1~P3は、表示素子11に表示動作を行わせるタイミングでの中間像TIの位置に対応する。つまり、表示素子11は、間欠的に表示動作を行っており、各表示位置P1~P3で2回の表示が行われるので、可動レンズ15fの1周期で計6回の表示が行われる。
【0023】
図5は、ヘッドアップディスプレイ装置200の全体構造を説明するブロック図であり、ヘッドアップディスプレイ装置200は、その一部として画像表示装置100を含む。画像表示装置100は、
図2に示す構造を有するものであり、ここでは説明を省略する。
【0024】
ヘッドアップディスプレイ装置200は、画像表示装置100のほかに、環境監視部72と、主制御装置90とを備える。
【0025】
環境監視部72は、検出領域内に存在するオブジェクトを検出するオブジェクト検出部であり、前方に近接して存在する移動体や人、具体的には自動車、自転車、歩行者等をオブジェクトとして識別し、オブジェクトの3次元的な位置情報を抽出する3次元計測器を有する。これにより、オブジェクトの3次元的認識によって関連情報像の3次元的表示が可能になる。また、環境監視部72により、移動体や人に対して虚像の関連情報像を付加することになり、移動体や人の存在をヘッドアップディスプレイ装置200のドライバーUN等に知らせることができる。環境監視部(オブジェクト検出部)72は、3次元計測器として、外部用カメラ72aと、外部用画像処理部72bと、判断部72cとを備える。外部用カメラ72aは、可視又は赤外域において外界像の撮影を可能にする。外部用カメラ72aは、車体2内外の適所に設置されており、ドライバーUN又はフロントウインドウ8の前方の検出領域VF(後述する
図6参照)を外部画像として撮影する。外部用画像処理部72bは、外部用カメラ72aで撮影した外部画像に対して明るさ補正等の各種画像処理を行って判断部72cでの処理を容易にする。判断部72cは、外部用画像処理部72bを経た外部画像からオブジェクト画像の抽出又は切り出しを行うことによって自動車、自転車、歩行者等のオブジェクト(具体的には、後述する
図6中のオブジェクトOB1,OB2,OB3参照)の存否を検出するとともに、外部画像に付随する奥行情報から車体2前方におけるオブジェクトの空間的な位置を算出し3次元的な位置情報として記憶部72mに保管する。判断部72cの記憶部72mには、外部画像からオブジェクト画像の抽出を可能にするソフトウエアが保管されており、外部画像からオブジェクト画像を抽出する動作時には、記憶部72mから必要となるソフトウエアやデータが読み出される。判断部72cにより、例えば得られた画像内の各オブジェクト要素の形状、大きさ、色等から、オブジェクト要素に対応するオブジェクトが何かを検出することができる。その際の判断基準は、予め登録されている情報とのパターンマッチングを行ってマッチングの度合からオブジェクトが何かを検出する方法等がある。また、処理速度を高める観点で、画像から車線を検知し、その車線内にあるターゲット又はオブジェクト要素について、上記の形状、大きさ、色等からオブジェクトの検出を行うこともできる。
【0026】
外部用カメラ72aは、図示を省略しているが、例えば複眼型の3次元カメラである。つまり、外部用カメラ72aは、結像用のレンズと、CMOS(Complementary metal oxide semiconductor)その他の撮像素子とを一組とするカメラ素子をマトリックス状に配列したものであり、撮像素子用の駆動回路をそれぞれ有する。外部用カメラ72aを構成する複数のカメラ素子は、例えば奥行方向の異なる位置にピントを合わせるようになっており、或いは相対的な視差を検出できるようになっており、カメラ素子から得た画像の状態(フォーカス状態、オブジェクトの位置等)を解析することで、検出領域に対応する画像内の各領域又はオブジェクトまでの目標距離を判定できる。
【0027】
なお、上記のような複眼型の外部用カメラ72aに代えて、2次元カメラと赤外距離センサーとを組み合わせたものを用いても、撮影した画面内の各部(領域又はオブジェクト)に関して奥行方向の距離情報である目標距離を得ることができる。また、複眼型の外部用カメラ72aに代えて、2つの2次元カメラを分離配置したステレオカメラによって、撮影した画面内の各部(領域又はオブジェクト)に関して奥行方向の距離情報である目標距離を得ることができる。その他、単一の2次元カメラにおいて、焦点距離を高速で変化させながら撮像を行うことによっても、撮影した画面内の各部(領域又はオブジェクト)に関して奥行方向の距離情報である目標距離を得ることができる。
【0028】
また、複眼型の外部用カメラ72aに代えて、LIDAR(Light Detection and Ranging)技術を用いても、検出領域内の各部(領域又はオブジェクト)に関して奥行方向の距離情報を得ることができる。LIDAR技術により、パルス状のレーザー照射に対する散乱光を測定し、遠距離にある対象までの距離や拡がりを計測して視野内のオブジェクトまでの距離情報やオブジェクトの拡がりに関する情報を取得することができる。さらに、例えばLIDAR技術のようなレーダーセンシング技術と画像情報からオブジェクトの距離等を検出する技術とを組み合わせるような複合的な手法、つまり複数のセンサーをフュージョンさせる手法によって、オブジェクトの検出精度を高めることができる。
【0029】
オブジェクトを検出する外部用カメラ72aの動作速度は、入力の高速化の観点で、表示素子11の動作速度以上である必要があり、表示素子11の動作速度30fps以上の場合、これと同等かこれより早くする必要がある。外部用カメラ72aは、例えば120fpsより高速、例えば480fpsや1000fpsといった高速動作によってオブジェクトの高速検出を可能にするものが望ましい。また、複数センサーをフュージョンさせる場合、その全てのセンサーが高速である必要は必ずしもなく、少なくとも複数センサーの内1つのセンサーは高速である必要があるが、それ以外は高速でなくても構わない。この場合、高速のセンサーで検出するデータを基本としながら、高速でないセンサーのデータで補完するという使い方で、センシング精度を上げるといった方法を用いてもよい。
【0030】
表示制御部18は、主制御装置90の制御下で投影光学系30を動作させて、表示スクリーン20の背後に虚像距離又は投影距離が変化する3次元的な投影像IMを表示させる。
【0031】
主制御装置90は、画像表示装置100、環境監視部72等の動作を調和させる役割を有する。主制御装置90は、例えば表示制御部18を介して配置変更装置62を適宜動作させることによって、投影光学系30による投影像IMである虚像の投影距離を周期的に変化させる。つまり、主制御装置90等は、投影像IMである虚像の奥行き方向に関する投影位置を周期的に変化させる。この場合、投影位置を周期的に往復移動させる過程の適宜の位置でオブジェクトに対して関連情報像を付与することができる。また、主制御装置90は、環境監視部72によって検出したオブジェクトの空間的な位置に対応するように、投影光学系30によって投影されるフレーム枠HW(
図6参照)の空間的な配置を調整する。すなわち、主制御装置90は、環境監視部72から受信した表示形状や表示距離を含む表示情報から、投影光学系30に表示させる投影像IMを生成する。投影像IMは、例えば表示スクリーン20の背後に存在する自動車、自転車、歩行者その他のオブジェクトに対してその奥行き位置方向に関して周辺に位置するフレーム枠HW(
図6参照)のような標識とすることができる。以上のように、主制御装置90は、表示制御部18と協働して像付加部として機能し、検出されたオブジェクトまでの目標距離が投影距離と略一致するタイミングで、検出されたオブジェクトに対して投影光学系30によって虚像として関連情報像を付加する。関連情報像は、例えばオブジェクトを囲むフレーム枠HW又はオブジェクトに隣接する指標である。この場合、フレーム枠HWや指標によって移動体や人の存在を知らせることができる。
【0032】
本実施形態のような構成で、関連情報像の表示を高速に実施して、オブジェクトと同時、又は、略同時性を持って観察者が関連情報像を3次元的表示として見られるようにするためには、検知、認識・判断等の処理、表示のそれぞれを高速とする必要がある。それによって、実際のシーンに存在するオブジェクト又はターゲットに関連情報像を重ねるような表示を行う際に、表示の遅れ(レイテンシー)がなくなって、観察者又はドライバーUNが表示又は虚像を見る際の違和感が低減され、事故回避等の運転動作を迅速に行うことが可能となる。
【0033】
図6は、具体的な表示状態を説明する斜視図である。観察者であるドライバーUNの前方は観察視野に相当する検出領域VFとなっている。検出領域VF内、つまり道路及びその周辺に、歩行者等である人のオブジェクトOB1や、自動車等である移動体のオブジェクトOB2が存在すると考える。この場合、主制御装置90は、画像表示装置100によって3次元的な投影像(虚像)IMを投影させ、各オブジェクトOB1,OB2,OB3に対して関連情報像としてのフレーム枠HW1,HW2,HW3を付加する。この際、ドライバーUNから各オブジェクトOB1,OB2,OB3までの距離が異なるので、フレーム枠HW1,HW2,HW3を表示させる投影像IM1,IM2,IM3までの投影距離は、ドライバーUNから各オブジェクトOB1,OB2,OB3までの距離に相当するものとなっている。なお、投影像IM1,IM2,IM3の投影距離は、離散的であり、オブジェクトOB1,OB2,OB3までの現実の距離に対して正確に一致させることはできない。ただし、投影像IM1,IM2,IM3の投影距離と、オブジェクトOB1,OB2,OB3までの現実の距離との差が大きくなければ、ドライバーUNの視点が動いても視差が生じにくく、オブジェクトOB1,OB2,OB3とフレーム枠HW1,HW2,HW3との配置関係を略維持することができる。
【0034】
図7Aは、
図4に対応し、
図7Bは、
図6中の投影像IM3又はフレーム枠HW3に対応し、
図7Cは、
図6中の投影像IM2又はフレーム枠HW2に対応し、
図7Dは、
図6中の投影像IM1又はフレーム枠HW1に対応している。
図7A~7Dより明らかなように、投影像IM1は、中間像TIが表示位置P1にあるときに表示素子11の表示面11aに形成される表示像に対応し、投影像IM2は、中間像TIが表示位置P2にあるときに表示素子11の表示面11aに形成される表示像に対応し、投影像IM3は、中間像TIが表示位置P3にあるときに表示素子11の表示面11aに形成される表示像に対応する。中間像TIの移動を基準とする1周期でみた場合、まず表示位置P3に対応する投影像IM3又はフレーム枠HW3が表示され、次いで表示位置P3に対応する投影像IM3又はフレーム枠HW3が再度表示される。そして、表示位置P2に対応する投影像IM2又はフレーム枠HW2が表示された後、表示位置P1に対応する投影像IM1又はフレーム枠HW1が表示される。その後、表示位置P1に対応する投影像IM1又はフレーム枠HW1が表示され、表示位置P2に対応する投影像IM2又はフレーム枠HW2が表示される。以上の1周期が視覚的に短ければ、投影像IM1,IM2,IM3の切り替えが非常に速くなり、観察者であるドライバーUNは、フレーム枠HW1,HW2,HW3を奥行きがある画像として同時に観察していると認識する。
【0035】
以上において、中間像TIの表示位置を正弦波状の経時パターンで変更しているが、中間像TIの表示位置は、正弦波状の経時パターンに限らず、鋸歯状の経時パターンで変更することができ(
図8A)、三角波状の経時パターンで変更することができる(
図8B)。これらの場合も、投影像IMの投影距離を連続的に変化させることになる。
【0036】
中間像TIの表示位置は、階段状の経時パターンで変更することができる(
図9A及び9B)。階段状の経時パターンで変更する場合には、中間像TIの表示位置が段階的に変化しないで、増減を複雑にした場合を含む(
図9C)。これらの場合、投影像IMの投影距離を段階的に変化させることになる。これらのパターン以外にも、表示位置をP1→P3→P2→P4→P5の繰り返し等、距離変化が単調に増加、減少するわけではないが周期的に変化している状態や、例えば表示位置をP1からP5までの距離変化の一往復の時間やパターンが各往復で異なるが、複数回の往復で周期的にそれらが変化しているといった状態も、周期的な変化と言えるものである。
【0037】
以上で説明した第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置200によれば、配置変更装置(投影距離変更部)62によって投影距離を周期的に変化させつつ、像付加部(主制御装置90及び表示制御部18)によって目標距離が投影距離と略一致するタイミングで検出されたオブジェクトOB1,OB2,OB3に対して投影光学系30によって虚像として関連情報像としてのフレーム枠HW1,HW2,HW3を付加するので、オブジェクトOB1,OB2,OB3に対して3次元的に対応させて投影距離の変動周期で関連情報像を付加することができる。なお、フレーム枠HW1,HW2,HW3は、奥行き方向に立体的に表示されており、観察者の視点がアイボックス内でずれてもフレーム枠HW1,HW2,HW3がオブジェクトOB1,OB2,OB3に対して位置ずれしない、又は位置ずれしにくくなっている。
【0038】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置について説明する。なお、第2実施形態のヘッドアップディスプレイ装置は第1実施形態のヘッドアップディスプレイ装置を変形したものであり、特に説明しない事項は第1実施形態と同様である。
【0039】
図10に示すように、画像表示装置100に設けた結像光学系215は、表示素子11に形成された画像を拡大する。この際、結像光学系215の像側のF値が比較的大きく設定されており、結像光学系215の結像位置(つまり中間像の結像予定位置又はその近傍)に光軸AX方向に移動する光学素子である拡散スクリーン16を配置している。ここで、拡散スクリーン16の移動範囲が結像光学系の焦点深度内で設定されていれば、拡散スクリーン16上に形成される中間像TIの像は、拡散スクリーン16が結像光学系215の結像位置から移動した際のボケが観察者から見て気にならない程度となり、比較的鮮明なものとなる。拡散スクリーン16は、配光角を所望の角度に制御した拡散板であり、例えば摺りガラス、レンズ拡散板、マイクロレンズアレイ等が用いられる。
【0040】
制御部としての主制御装置90及び表示制御部18は、配置変更装置(投影距離変更部)262を介して、拡散スクリーン16の位置を周期的にシフトさせることで、中間像TIの位置を周期的にシフトさせて投影距離を周期的に変化させつつ、表示素子11に形成する画像を投影距離に応じたものとする。具体的には、配置変更装置(投影距離変更部)262を構成するガイド部264と駆動部65とによって拡散スクリーン16を光軸AX方向に往復移動させることで投影距離を周期的に変化させる。このように、投影距離を周期的に変化させつつ、主制御装置90及び表示制御部18によって目標距離が投影距離と略一致するタイミングで、環境監視部(オブジェクト検出部)72によって検出されたオブジェクトにOB1,OB2,OB3に対して、画像表示装置100によって虚像として関連情報像としてのフレーム枠HW1,HW2,HW3を付加する。このような構成とすることで、結像光学系215内に焦点を可変とする機構を設けなくても虚像の投影位置を可変とできて、簡素な構成で投影位置を可変とできるので、装置の小型化に望ましい構成と言える。
【0041】
中間像TIについては、像のボケ量又はフォーカスずれが少ない方が望ましい。一方で、中間像TIの位置を大きく変化させることで、これらによって形成される投影像(虚像)IMの奥行き方向の投影位置差を確保し3次元的な表示範囲を広くすることができる。この観点で、結像光学系215は、下記の条件式(1)を満たすことが望ましい。
0.8≦2×F×P×m2/δ≦1.2 … (1)
ただし、値Fは、結像光学系215の表示素子11側のFナンバーを表し、値Pは、表示素子11の画素ピッチ[mm]を表し、値δは、所望の虚像距離範囲を得るために必要な拡散スクリーン移動量[mm]を表す。 上記条件式(1)の値2×F×P×m2/δは、焦点深度の利用率といったものであり、上記条件式(1)を満たす範囲とすることで、拡散スクリーン16の移動範囲内の各位置でフォーカスずれを少なくすることができるため、所望の虚像距離範囲において鮮明な虚像表示とすることができる。
【0042】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置について説明する。なお、第3実施形態のヘッドアップディスプレイ装置は第1実施形態又は第2実施形態のヘッドアップディスプレイ装置を変形したものであり、特に説明しない事項は第1実施形態等と同様である。
【0043】
図11に示すように、画像表示装置100において、結像光学系215の結像位置(つまり中間像の結像予定位置又はその近傍)に光学素子である拡散スクリーン316が回転体19aとして設けられている。拡散スクリーン316である回転体19aは、配置変更装置(投影距離変更部)362に設けた回転駆動装置364に駆動されて一定速度、略一定速度、又は周期変化する速度で回転する。回転体19aは、複数の拡散領域16a~16dを有する。これらの拡散領域16a~16dは、光軸AX方向に関する位置が異なっているが、回転体19aの回転に伴って結像光学系215の結像位置)に順次配置される。
【0044】
図12Aは、拡散スクリーン316及び配置変更装置(投影距離変更部)362を説明する側方断面図であり、
図12Bは、拡散スクリーン316を説明する正面図である。拡散スクリーン316である回転体19aは、光軸AXに平行に延びる回転軸RXが通る軸部19dと、軸部19dに支持されて回転軸RXの周りに配置される4つの支持体領域19eを有する支持体19fと、各支持体領域19eに保持されて光軸AXに垂直な方向に延びる4つの拡散領域16a~16dとを有する。回転駆動装置364は、軸部19dを介して回転体19aを回転させる。回転駆動装置364は、台座及び支柱を有する支持部材19j上に固定されている。
【0045】
回転駆動装置364によって軸部19dを回転させることで、支持体19fも回転軸RXの周りに回転する。結果的に、4つの拡散領域16a~16dが光軸AX上に順次移動し、各拡散領域16a~16dは、光軸AXを横切るように移動する。この際、拡散領域16a~16dの中心が光軸AXを横切るように配置関係が調整され位置決めがなされている。正面から見て軸部19dが例えば時計方向に回転する場合、拡散領域16a~16dの順番で光軸AX上に配置される。表示素子11における画像の表示は、間欠的であり、拡散領域16a~16dが光軸AX上に配置されているタイミングとなる。
【0046】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置について説明する。なお、第4実施形態のヘッドアップディスプレイ装置は第1実施形態又は第2実施形態のヘッドアップディスプレイ装置を変形したものであり、特に説明しない事項は第1実施形態等と同様である。
【0047】
図13に示すように、本体光学系13は、虚像形成光学系17によって、表示素子11に形成された画像を直接虚像に変換する。
【0048】
制御部としての主制御装置90及び表示制御部18は、配置変更装置(投影距離変更部)462を介して、表示素子11の位置を光軸AX方向に周期的に往復移動させることで投影距離を周期的に変化させつつ、表示素子11に形成する画像を投影距離に応じたものとする。
【0049】
〔第5実施形態〕
以下、第5実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置について説明する。なお、第5実施形態のヘッドアップディスプレイ装置は第1実施形態のヘッドアップディスプレイ装置等を変形したものであり、特に説明しない事項は第1実施形態等と同様である。
【0050】
図14に示すように、第5実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の場合、フロントウインドウ8の運転席正面に設けた矩形の反射領域8dの内側にスクリーンとしての表示スクリーン520が貼り付けられている。
【0051】
〔その他〕
【0052】
以上では、具体的な実施形態としてのヘッドアップディスプレイ装置200について説明したが、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置は、上記のものには限られない。例えば、第1実施形態において、画像表示装置100の配置を上下反転させて、フロントウインドウ8の上部又はサンバイザー位置に表示スクリーン20を配置することもでき、この場合、描画ユニット10の斜め下方前方に表示スクリーン20が配置される。また、表示スクリーン20は、自動車の従来のミラーに対応する位置に配置してもよい。
【0053】
上記実施形態において、表示スクリーン20の輪郭は、矩形に限らず、様々な形状とすることができる。
【0054】
図2に示す結像光学系15や虚像形成光学系17は、単なる例示であり、これら結像光学系15及び虚像形成光学系17の光学的構成については適宜変更することができる。
【0055】
図15Aに示すように、関連情報像RIとしてのフレーム枠HWは、オブジェクトOB全体を囲むものに限らず、複数の部分からなるものとすることができる。また、
図15Bに示すように、関連情報像RIは、オブジェクトOBに隣接して表示される指標SHであってもよい。
【0056】
また、可動レンズ15fについては、液体等を封入した可変焦点レンズに置き換えることができる。
【0057】
以上では、環境監視部72によって車体2の前方に存在するオブジェクトOBを検出し、画像表示装置100にオブジェクトOBの配置に対応するフレーム枠HW1,HW2,HW3といった関連情報像を表示しているが、オブジェクトOBの有無に関わらず、通信ネットワークを利用して付随的な運転関連情報を取得し、このような運転関連情報を画像表示装置100に表示させることができる。例えば死角に存在する車、障害物等を警告するような表示も可能である。