(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】金属材料を製造するための方法及び設備
(51)【国際特許分類】
C25C 7/06 20060101AFI20221207BHJP
C25C 1/12 20060101ALI20221207BHJP
G01B 11/02 20060101ALI20221207BHJP
G01B 11/25 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
C25C7/06 301Z
C25C1/12
G01B11/02 Z
G01B11/25 Z
(21)【出願番号】P 2019203358
(22)【出願日】2019-11-08
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】500483219
【氏名又は名称】パンパシフィック・カッパー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】511285440
【氏名又は名称】株式会社セイコーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】行里 武英
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 邦男
(72)【発明者】
【氏名】長尾 諭
(72)【発明者】
【氏名】上野 明
(72)【発明者】
【氏名】新村 稔
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-105429(JP,A)
【文献】特開2010-122225(JP,A)
【文献】特開2002-148195(JP,A)
【文献】特開2005-337857(JP,A)
【文献】特開2009-014520(JP,A)
【文献】特開2003-202216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 1/00- 7/08
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料を製造するための方法であって、前記方法は、
電解精錬によって、カソード表面に金属材料を析出させる工程と、
前記カソードの揺動を防止する工程と、
前記カソードの揺動を防止したまま、前記析出した金属材料の表面を、3D計測装置を用いて前記カソードの両面側から計測する工程と、
前記計測後も引き続き前記カソードの揺動を防止したまま、前記計測する工程が実施される場所と同じ場所にて、前記析出した金属材料を前記カソードから剥離する工程と、
を含み、
前記3D計測装置が、構造化光法非接触方式による光学測定装置である、該方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、前記計測する工程が、所定の光のパターンを投影することを含む、該方法。
【請求項3】
請求項2の方法であって、投影する光のパターンが、縞模様を含む複数パターンがあり、0.5mm~3.5mm単位で対象物を計測できる、該方法。
【請求項4】
請求項2又は3の方法であって、1枚の金属材料の計測につき、前記光のパターンを前記金属材料表面に投影する期間が100msec以下である、該方法。
【請求項5】
請求項2~4いずれか1項に記載の方法であって、前記計測する工程が、暗室内で計測することを含み、且つ、少なくとも前記光のパターンを投影している間、暗室内の照明をオフにすることを含む、該方法。
【請求項6】
請求項5の方法であって、前記計測する工程後、暗室内の照明をオンにする工程を更に含む、該方法。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の方法であって、
前記方法は、3D計測装置から得られた画像データを解析して突起物を検出する工程を更に含む、該方法。
【請求項8】
請求項
7の方法であって、前記検出する工程は、前記金属材料表面の凹凸が最も少ない部分を基準として、突起物の高さを計測することを含む、該方法。
【請求項9】
金属材料を製造するための設備であって、
前記設備は、電解槽と剥ぎ取り装置と3D計測装置とを備え、
前記電解槽は、表面に金属材料を析出させるためのカソードを備え、
前記3D計測装置は、測定装置と投影機とを備える、構造化光法非接触方式による光学測定装置であり、
前記3D計測装置は、前記析出させた金属材料の表面を計測し、
前記剥ぎ取り装置は、前記析出した金属材料を前記カソードから剥離する、
該設備
であって、
前記設備は、前記カソードの揺動を防止することが可能なように構成され、
前記設備は、前記3D計測装置による計測が前記カソードの揺動を防止したまま行われるように構成され、
前記設備は、前記計測後も引き続き前記カソードの揺動を防止したまま、前記計測が実施される場所と同じ場所にて、前記析出した金属材料を前記カソードから剥離するように構成される、
設備。
【請求項10】
請求項
9の設備であって、前記投影機が、所定の光のパターンを投影する、該設備。
【請求項11】
請求項
10の設備であって、投影する光のパターンが、縞模様を含む複数パターンがあり、0.5mm~3.5mm単位で対象物を計測できる、該設備。
【請求項12】
請求項
10又は
11の設備であって、1枚の金属材料の計測につき、前記光のパターンを前記金属材料表面に投影する期間が100msec以下である、該設備。
【請求項13】
請求項
10~
12いずれか1項に記載の設備であって、
前記設備が暗室と制御器を更に備え、前記暗室内に、前記測定装置と前記投影機とが備えられ、
少なくとも前記光のパターンを投影している間、前記制御器によって、前記暗室内の照明がオフに制御される、該設備。
【請求項14】
請求項
13の設備であって、前記計測後、前記制御器によって、前記暗室内の照明をオンに制御される、該設備。
【請求項15】
請求項
9~
14のいずれか1項に記載の設備であって、
前記設備は、情報処理装置を更に備え、
前記情報処理装置は、前記3D計測装置から得られた測定データを解析して突起物を検出する、該設備。
【請求項16】
請求項
15の設備であって、前記検出は、前記金属材料表面の凹凸が最も少ない部分を基準として、突起物の高さを計測することを含む、該設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属材料を製造するための方法及び設備に関する。より具体的には電解精錬により金属材料を製造するための方法及び設備に関する。
【背景技術】
【0002】
電気銅は、電解精錬によって製造される銅材料である。例えば、粗銅をアノード側に設置し、ステンレス板をカソード側に設置する。そして、電流を供給することにより、アノードから銅が溶解し、溶解した銅がカソード側に析出する。一定量以上析出した後、カソード側の板を電解槽から引き上げる。次に、カソード側の板表面に析出した銅をスクレイパーによって剥ぎ取る。剥ぎ取った後の銅板に対して、検査が行われ、その後、製品として出荷される。
【0003】
理想的には、銅板表面は、なめらかで、突起物(コブ)がないことが好ましい。しかし、現実的には、様々な要因により、銅板表面に突起物が発生する。従って、出荷する前に、銅板の表面に対して作業員が目視による検査を行う。しかし、検査対象となる銅板は大量にあるため、作業員の負担が大きく、突起物の存在を見逃す危険性も高い。
【0004】
そこで、検査作業を自動化する試みが行われてきた。例えば、特許文献1では、3Dカメラなどで銅板を撮影すること、撮影イメージに基づいて粒銅の存在等を検出すること、そして、銅板の等級を判定することが開示されている。
【0005】
特許文献2では、特許文献1と同様銅板を撮影することが開示されている。さらには、特許文献2では、小塊の大きさと個数に応じて、銅板の等級を判定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-105429号公報
【文献】特開2010-122225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
突起物サイズは、大きい物もあれば小さい物もあり、小さい突起物では、サイズ1cmを下回るような小さい物もある。製品管理以外に操業管理にも用いる場合には、このような小さなサイズのコブを早期に発見し、情報として管理できることが望ましい。
【0008】
銅板表面の突起物の検出及び発生個所の特定をする方法として特許文献1のようにレーザーを用いた3D計測方法がある。しかし、特許文献1の方法では、撮影された画像全体からの解析を行っている。このような方法では、小さな突起物を検出し、突起物情報を管理することは困難である。
【0009】
そこで、本開示では、小さい突起物を検出する方法及び設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが検討した結果、1cm以下の凹凸を検出できる構造化光法を採用することを見出した。構造化光の原理による測定方法は、三角測量の原理を利用し、照射する光のパターンが、対象物の形状によって歪められることを利用する。また、構造化光の原理による測定方法は、特許文献1のように面全体をとらえるのではなく、銅板上の各ポイントの3次元座標を生成する(例えば分解能数ミリ×数ミリで)。これにより、各突起物の詳細な特徴を把握することが可能となった(例えば、突起物の高さ、形状、発生個所等)。
【0011】
本発明は、上記知見に基づいて完成され、一側面において、以下の発明を包含する。
【0012】
(発明1)
金属材料を製造するための方法であって、前記方法は、
電解精錬によって、カソード表面に金属材料を析出させる工程と、
前記析出した金属材料の表面を、3D計測装置を用いて前記カソードの両面側から計測する工程と、
前記析出した金属材料を前記カソードから剥離する工程と、
を含み、
前記3D計測装置が、構造化光法非接触方式による光学測定装置である、該方法。
【0013】
(発明2)
発明1の方法であって、前記計測する工程が、所定の光のパターンを投影することを含む、該方法。
【0014】
(発明3)
発明2の方法であって、投影する光のパターンが、縞模様を含む複数パターンがあり、0.5mm~3.5mm単位で対象物を計測できる、該方法。
【0015】
(発明4)
発明2又は3の方法であって、1枚の金属材料の計測につき、前記光のパターンを前記金属材料表面に投影する期間が100msec以下である、該方法。
【0016】
(発明5)
発明2~4いずれか1つに記載の方法であって、前記計測する工程が、暗室内で計測することを含み、且つ、少なくとも前記光のパターンを投影している間、暗室内の照明をオフにすることを含む、該方法。
【0017】
(発明6)
発明5の方法であって、前記計測する工程後、暗室内の照明をオンにする工程を更に含む、該方法。
【0018】
(発明7)
発明6の方法であって、
前記方法は、カソードの揺動を防止する工程を更に含み、
前記計測する工程が、前記カソードの揺動を防止する工程の後、且つ、前記剥離する工程の前に行われる、該方法。
【0019】
(発明8)
発明1~7のいずれか1つに記載の方法であって、
前記方法は、3D計測装置から得られた画像データを解析して突起物を検出する工程を更に含む、該方法。
【0020】
(発明9)
発明8の方法であって、前記検出する工程は、前記金属材料表面の凹凸が最も少ない部分を基準として、突起物の高さを計測することを含む、該方法。
【0021】
(発明10)
金属材料を製造するための設備であって、
前記設備は、電解槽と剥ぎ取り装置と3D計測装置とを備え、
前記電解槽は、表面に金属材料を析出させるためのカソードを備え、
前記3D計測装置は、測定装置と投影機とを備える、構造化光法非接触方式による光学測定装置であり、
前記3D計測装置は、前記析出させた金属材料の表面を計測し、
前記剥ぎ取り装置は、前記析出した金属材料を前記カソードから剥離する、
該設備。
【0022】
(発明11)
発明10の設備であって、前記投影機が、所定の光のパターンを投影する、該設備。
【0023】
(発明12)
発明11の設備であって、投影する光のパターンが、縞模様を含む複数パターンがあり、0.5mm~3.5mm単位で対象物を計測できる、該設備。
【0024】
(発明13)
発明11又は12の設備であって、1枚の金属材料の計測につき、前記光のパターンを前記金属材料表面に投影する期間が100msec以下である、該設備。
【0025】
(発明14)
発明11~13いずれか1つに記載の設備であって、
前記設備が暗室と制御器を更に備え、前記暗室内に、前記測定装置と前記投影機とが備えられ、
少なくとも前記光のパターンを投影している間、前記制御器によって、前記暗室内の照明がオフに制御される、該設備。
【0026】
(発明15)
発明14の設備であって、前記計測後、前記制御器によって、前記暗室内の照明をオンに制御される、該設備。
【0027】
(発明16)
発明15の設備であって、
前記測定装置による測定は、前記カソードの揺動を防止した後、且つ、前記金属材料を剥離する前に行われる、該設備。
【0028】
(発明17)
発明10~16のいずれか1つに記載の設備であって、
前記設備は、情報処理装置を更に備え、
前記情報処理装置は、前記3D計測装置から得られた測定データを解析して突起物を検出する、該設備。
【0029】
(発明18)
発明17の設備であって、前記検出は、前記金属材料表面の凹凸が最も少ない部分を基準として、突起物の高さを計測することを含む、該設備。
【発明の効果】
【0030】
上記発明は、一側面において、3D計測装置が、構造化光法非接触方式による光学測定装置である。これにより、小さいサイズの突起物を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】一実施形態における構造化光のパターンを示す。上の図は、投影する前の状態を示し、下の図は投影した後の状態を示す。
【
図3】一実施形態において、縞模様の繰り返し単位のサイズの定義を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、発明を実施するための具体的な実施形態について説明する。以下の説明は、発明の理解を促進するためのものである。即ち、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0033】
1.対象金属
本開示で対象とする金属は、電解精錬の対象となる金属であれば特に限定されない。例えば、金属は、Cu、Zn、Ni、Te、Zn、Pb、及びAgから選択される金属であってもよい。特に、本開示の発明において有用となるのが、Cuである。以下では、Cuを具体例として、本開示の実施形態を説明する。以下で説明する実施形態(電気銅を製造するための設備、及び電気銅を製造するための方法)は、Cuに限定されず、上述した他の金属にも応用可能である。
【0034】
2.電気銅を製造するための設備
一実施形態において、本開示は、電気銅を製造するための設備に関する。
図1に設備の概要を示す。該設備は、少なくとも以下を備える。
電解槽、
剥ぎ取り装置、及び
3D計測装置。
【0035】
3D計測装置は、測定装置と投影機とを備える構造化光法非接触方式による光学測定装置である。
【0036】
また、必要に応じて、測定装置によって測定されたデータを処理するための情報処理装置を設けてもよい。或いは、必要に応じて、照明、測定装置、投影機等を制御するための制御器を設けてもよい。或いは、必要に応じて、投影機による光の投影状態を良好にするため、暗室を設けてもよい。
【0037】
電解槽は、アノードとカソードを備え、電気を加えることで、電解液中の銅を、カソード表面に板状に析出させる。1つの電解槽に複数のアノードとカソードが交互に配置される。一定時間カソードに銅を析出させた後、複数のカソードはまとめてクレーン等で引き上げられ、移載機を通して、剥ぎ取り装置まで移動する。
【0038】
カソードが剥ぎ取り装置まで移動するまでの間に、析出した銅板の表面に突起物があるかどうか目視で検査を行ってもよく、必要に応じて手動で突起物を剥ぎ取る作業を実施することができる。
【0039】
移載機によって移動している間は、カソードは、吊り下げられた状態で移動する。従って、吊り具を中心にカソードが揺動した状態で移動する。そして、剥ぎ取り装置に到達した後は、揺動した状態から固定された状態にされ、スクレイパー等によって、カソード表面に析出した銅板の剥ぎ取りが行われる。典型的には、カソードの両面に銅板が析出するため、剥ぎ取りはカソードの両面で行われる。
【0040】
カソードが電解槽から引きあげられて、銅板の剥ぎ取りが行われるまでの間に、析出した銅板の表面の状態を測定する。このため測定装置を備える。上述したように、典型的には、カソードの両面に銅板が析出するため、測定装置は、カソードの一方の面だけでなく、他方の面も測定できるよう2台設けてもよい。
【0041】
また、測定装置とともに、投影機を設ける。これにより、所定の模様を銅板の表面に投影することで、銅板の表面状態の変化を検出しやすくすることができる。
【0042】
投影機で投影している間は、周囲を暗くすることが望まれる。従って、暗室を設けることが好ましい。また、測定を行っているとき以外は、作業員が剥ぎ取り作業を目視で監視できるよう照明設備を設けることが好ましい。従って、照明設備のオンオフの切り替えと、測定装置及び投影機のオンオフの切り替えとを連動させるために、制御器を設けてもよい。例えば、測定装置及び投影機を用いて銅板の表面を測定している最中は、制御器によって照明設備をオフにすることができる。そして、測定が終了した後は、制御器によって照明設備をオンにすることができる。
【0043】
剥ぎ取り装置によって、銅板が剥ぎ取られた後は、別途移載機によって移動させ、所望の形状に成型し、重量を測定したり、結束したりして、最終的に出荷される。
【0044】
次項では、これらの設備を用いた方法について説明する。
【0045】
3.電気銅を製造するための方法
一実施形態において、本開示は、電気銅を製造するための方法に関する。前記方法は少なくとも以下の工程を含む。
・電解精錬によって、カソード表面に電気銅を析出させる工程、
・析出した電気銅の表面を、3D計測装置を用いてカソードの両面側から測定する工程、及び、
・析出した電気銅をカソードから剥離する工程。
【0046】
析出させる工程は、前項で述べたように、電解槽がアノードとカソードを備え、これらに電気を加えることで、電解液中の金属イオン(例えば、銅イオン)を、カソード表面に板状に析出させる工程である。
【0047】
剥離する工程は、前項で述べたように、スクレイパー等によって、カソード表面に析出した金属材料(例えば、銅板)の剥ぎ取りを行う工程である。
【0048】
以下では、測定する工程について詳述する。
【0049】
3-1.銅板の表面を測定する場所
測定する場所は、カソードが電解槽から引きあげられて、銅板の剥ぎ取りが行われるまでの間の場所であれば、特に限定されない。しかし、好ましくは、銅板の剥ぎ取りが行われる場所で測定を行う。
【0050】
この理由は以下のとおりである。カソードが電解槽から引きあげられて、銅板の剥ぎ取りが行われるまでの間、カソードは吊り下げられた状態で移動する。この際に、吊り具を中心としてカソード板が揺動する。銅板の表面の突起物が大きい場合には多少揺動しても測定に支障はないが、小さいサイズの突起物を検出する場合には、問題となる。特に構造化光法の場合には、静止した状態で測定を行う必要がある。しかし、測定の度に、カソードの移動を止めてしまうのは生産効率を下げることになる。一方で、剥ぎ取り装置によって剥ぎ取りを行う際には、カソード板を固定する必要がある(換言すれば、揺動を防止する必要がある)。従って、このタイミングで測定を行えば、カソードの移動を止める頻度を最小限にすることができる。以上の理由から、カソードの揺動を防止する工程の後、且つ、剥離する工程の前に測定が行われることが好ましい。
【0051】
なお、剥離する際には、スクレイパーを挿入しやすいように、カソードに対してパンチングを行う。従って、パンチングを行う直前に測定を行うことが更に好ましい。
【0052】
3-2.測定装置
測定するための装置は、3D測定装置である。即ち、測定対象である銅板表面の三次元形状を検出できる測定装置である。
【0053】
三次元形状を検出できる測定装置には、光切断法に従った装置、又は、構造化光を利用した装置等があげられるが、本開示の一実施形態では、構造化光を利用した装置を用いる。
【0054】
3-3.測定周期
1枚のカソードを測定するのにかかる周期は、3秒以下であることが好ましい。この理由として、カソード板を入れ替えて、銅板を剥がし、更に別のカソードに入れ替えるまでにおおよそ3秒程度かかることがあげられる。すなわち、3秒以下であれば、測定する工程が挿入されたとしても、従来の作業工程よりも時間が増加することを避けることができる。
【0055】
3-4.構造化光法
構造化光法によって銅板の表面を測定することができる。構造化光法とは、測定対象に対して、所定のパターンの光を投影する(
図2)。
図2では水平方向の縞模様を投影しているが、垂直方向の縞模様であってもよいし、斜め方向の縞模様であってもよいし、一定の間隔でドットを投影してもよい。また、投影する模様は、1種類に限定されず、複数種類の模様を所定の順序で投影し、各々の模様ごとに測定を行ってもよい。複数種類の模様を投影することのメリットとして計測値の正確度の向上があげられる。
【0056】
典型的には、縞模様については、位相シフト法に従った模様であってもよい。即ち、
図2に示したように模様のコントラストが明確な濃淡ではなく、濃淡状態がサイン波で表されるような模様を利用してもよい。そして、位相をずらした状態で複数の模様を準備し投影してもよい。
【0057】
縞模様の繰り返し単位は、0.5mm~3.5mmであることが好ましい(より好ましくは0.8mm~1.2mm)。これにより、小さいサイズの突起物の検出が可能となる。なお、縞模様の繰り返し単位は、1つの縞模様部分の幅と、縞模様以外の1つの部分の幅の合計を意味する(
図3)。
【0058】
3-5.投影時間
上記の様に構造化光法で測定する場合、投影する時間(複数の模様を投影する場合には投影する時間の合計)は、100msec以下であることが好ましい(より好ましくは80msec以下)。理由としては、上述したように1枚のカソードを測定するのにかかる周期は3秒以内であることが好ましく、その3秒以内にカソード板を入れ替えたり、銅板を剥がしたりする時間も必要であるからである。従って、数秒を1回の周期としたときに、実際に測定するのに割り当てることができる時間はさほど多くない。
【0059】
上記方法で測定することにより、直径が1cm以下の突起物を検知することができる。好ましくは、直径5mm以下、更に好ましくは直径3mm以下の突起物を検知することができる。下限値は特に限定されないが、典型的には直径0.5mm以上、好ましくは1mm以上である。
【0060】
3-6.照明の制御
上記方法で測定する際には、照明設備のオンオフを適切に切り替えることが好ましい。カソードから銅板を剥がす際は、制御室から目視などにより状況を確認しながら行うことが多い。従って、通常時は、照明設備をオンにすることが好ましい。一方で、上記方法で測定する際には(即ち、少なくとも光のパターンを投影している間は)、銅板に投影した光のパターンを鮮明に測定できるようにする目的で、照明設備をオフにすることが好ましい。また、外部から光が入ることを防止するため、暗室内で測定することが好ましい。所定の制御器を導入することで、照明設備のオン/オフを切り替えることができる。また、照明設備のオン/オフに連動して、測定装置による測定及び投影機による投影を行うよう、制御器が測定装置及び投影機を制御することができる。従って、計測後は、暗室内の照明をオンにすることができる。
【0061】
4.測定データの解析
測定装置によって測定された測定データは、所定の情報処理装置(例、サーバー等)に送信され保存される。そして、情報処理装置によって、突起物の検出に関する解析を行うことができる。
【0062】
測定データから突起物を検出するための手段は特に限定されず、公知の画像解析手段(画像解析ソフトなど)を使用してもよい。例えば、測定データから検出される物体の直径及び高さについてあらかじめ判定基準を設定し、当該判定基準を超えた物体を突起物とみなしてもよい。
【0063】
また、測定データと、当該測定データ内に突起物の存在を記した別の測定データとを学習用データとして用意し、機械学習させることで、突起物を検出してもよい。
【0064】
銅板の表面には、細かい皺が存在する可能性があり、小さいサイズの突起物を検出する際には、誤検出が生じないよう、皺と突起物とを区別することが好ましい。好ましくは、画像データに対して、銅板表面の凹凸が最も少ない部分を基準として、高さを計測する。そして、閾値等を設定しておき、当該閾値を超える場合には、突起物と判定するようにしてもよい。
【0065】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明してきた。上記実施形態は、本発明の具体例に過ぎず、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上述の実施形態の1つに開示された技術的特徴は、他の実施形態に適用することができる。また、特記しない限り、特定の方法については、一部の工程を他の工程の順序と入れ替えることも可能であり、特定の2つの工程の間に更なる工程を追加してもよい。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定される。