(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】採取角膜を保存するためのカートリッジの形態の医療デバイス
(51)【国際特許分類】
A01N 1/02 20060101AFI20221207BHJP
A61F 2/14 20060101ALI20221207BHJP
A61L 27/36 20060101ALN20221207BHJP
【FI】
A01N1/02
A61F2/14
A61L27/36 100
(21)【出願番号】P 2020552128
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2018084918
(87)【国際公開番号】W WO2019115754
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-11-04
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507237956
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ジャン・モネ
(73)【特許権者】
【識別番号】520212233
【氏名又は名称】サントル オスピタリエル ユニヴェルシテル
【氏名又は名称原語表記】CENTRE HOSPITALIER UNIVERSITAIRE
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】ゲン、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】チュレ、ジル
(72)【発明者】
【氏名】エルベピン、パスカル
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-512492(JP,A)
【文献】米国特許第05789240(US,A)
【文献】独国特許発明第102014222547(DE,B3)
【文献】仏国特許出願公開第02965254(FR,A1)
【文献】特表2008-518034(JP,A)
【文献】特表2004-526467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A61F
A61L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
採取済みの角膜組織(3)を保存可能にするアセンブリを内蔵するカートリッジの形態の医療デバイスであって、
当該デバイスが、
少なくとも部分的に透明なベース(11)と、
少なくとも1つの側壁(12)と、
角膜組織を収容および固定するための手段と、
前記ベースに対向する、前記側壁の開口を覆うための透明蓋(C)と、
保存流体(41)を収容する保存区画(24)と、
当該保存区画(24)の上流に配置され、圧縮加圧ガスを注入するためのデバイス(43)に接続されるように意図された、少なくとも1つの入口端子(21)であって、
前記加圧ガスが、
前記保存区画(24)に収容された前記保存流体(41)を、前記保存チャンバに送り込むこと、および
前記保存流体(41)を、所定の圧力に保つことを可能にする、入口端子(21)と
を備え、
前記デバイスは、使用時に、前記ベース(11)と、前記側壁(12)と、前記蓋(C)とが、角膜組織の上皮側保存チャンバおよび内皮側保存チャンバを画定するように構成され、
前記デバイスは、前記保存チャンバの上流に、
前記保存区画(24)の上流にあり、制御圧縮ガス注入デバイス(43)に接続されるように意図された、少なくとも1つの制御端子(22)と、
前記端子(21,22)の下流にあり、前記加圧圧縮ガスが前記保存区画(24)に流れることを可能または防止するように前記制御圧縮ガスにより操作される、空圧操作スイッチングシステム(26)と
をさらに備える
ことを特徴とする、デバイス。
【請求項2】
前記保存区画(24)の上流に、前記入口端子(21)で注入される前記圧縮加圧ガスをフィルタリングするためのフィルタ(433)をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記保存流体(41)が前記保存区画(24)に直接収容され、ここで、前記入口端子で注入され、フィルタリングされた前記圧縮加圧ガスが前記保存区画(24)に直接導入され、前記保存流体(41)と混合されることを特徴とする、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記デバイスが、前記保存区画(24)内に収容された膨張可能ボールをさらに備え、前記保存流体が、前記保存区画(24)内に収容された柔軟容器(42)内に収容され、前記加圧圧縮ガスを注入することにより、前記膨張可能ボールの膨張が誘発され、もって前記ボールの壁が、前記柔軟容器(42)の壁に押し付けられ、前記保存流体(41)の前記保存チャンバへの放出が生じることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記保存流体を循環させるための経路(23)と、前記圧縮ガスを循環させるための経路(23)とをさらに備え、これら経路(23)が本体を削って形成されるものである、請求項1から4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記デバイスが、前記保存チャンバ(1)の下流に回収保存部(25)をさらに備え、前記スイッチングシステム(26)が、当該回収保存部(25)の上流に設けられ、かつ前記保存チャンバ(1)内の前記保存流体(41)の流量を制御可能なものである、請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記スイッチングシステム(26)が、少なくとも1つの前記制御端子(22a、22b、22c、22d)に注入される制御圧縮ガスにより空気圧制御される少なくとも1つの弁を含み、各バルブが、少なくとも1つの前記制御端子(22a、22b、22c、22d)に制御圧縮ガスが適用されないときは閉じていることを特徴とする、請求項1から6に記載のデバイスの特徴が組み合わせられたデバイス。
【請求項8】
膨張バルーンをさらに備え、当該膨張バルーンの手動操作により、前記保存区画内の、ひいては前記保存チャンバ内の圧力が上昇することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記入力端子(21)および前記制御端子(22)は、前記デバイスがドッキングステーション(6)に差し込まれると、前記注入デバイス(43)に接続された結合手段に自動的に接続されるように、前記デバイス上に配置されてなる、請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記デバイスの外周に、当該デバイスを、ドッキングステーションの支持構造(6)のラックに差し込み可能とするガイド手段をさらに備える、請求項9に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドナーから採取された人間または動物の角膜組織の、保存、および/または品質管理(撮像、微生物学的分析等)、および/または処置のための医療デバイスの一般的技術分野に関する。この角膜組織は、角膜そのものと、それを囲むその周辺強膜毛様領域とにより構成される。
【0002】
このように保存された角膜組織は、角膜移植または、体外実験に使用可能である。
【0003】
本発明は特に、以下を備える角膜組織保存デバイスの技術分野に関する。
・角膜組織を収容および固定するための手段
・角膜組織を保存するための1つ(または複数)の流体(液体または気体)を循環させるための手段
【背景技術】
【0004】
角膜組織を保存するためのデバイスは既に各種提案されている。
【0005】
米国特許第5,789,240号公報は、目の前眼房を模した、角膜組織保存用デバイスを開示している。このデバイスでは、角膜組織の両側に、保存流体が殺菌循環できない。両側とは即ち、角膜組織の上皮側および内皮側の両方である。さらに、デバイスの壁は透明ではない。したがって、角膜組織の撮像や、レーザー切断処置を、デバイスを開くことなく実施することができない。これらの結果、角膜組織の寿命は短く、角膜移植への使用に好適ではない。
【0006】
WO2014/140434号公報は、これら欠点を解消する角膜組織保存デバイスを開示している。
【0007】
WO2014/140434に係るデバイスは以下を備える。
・第1の部位(中間要素と称される)を有する採取角膜を収容するための手段。同手段は、角膜の直径に合わせた孔を有し、孔は円形溝と、採取角膜を収容するように意図された筐体を形成する縁とに囲まれる。筐体は、デバイス内に配置される際、採取角膜の適切な中心配置を保証するもので、手術室でデバイスを開いた際に、採取角膜を安定状態に維持可能とする
・第2の部位(「内皮蓋」と称する)を有する固定手段。同手段は、角膜の直径に合わせた孔を有する。採取角膜の強膜毛様領域を、中間要素の円形溝に押し込むことで、採取角膜を封入するように意図された縁により孔が囲まれる
・採取角膜を収容および封止する手段。同手段は、角膜を囲う強膜毛様領域を封止固定する。これにより、個別の内皮側チャンバおよび上皮側チャンバが画定される。内皮側チャンバ内の過圧により、保存媒体は、上皮側チャンバ内で循環可能である。
【0008】
WO2014/140434に記載の保存デバイスは、様々な利点を有し、角膜組織の長期保存を可能にする。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、その可搬性、扱いやすさ、および信頼性を向上しながら、これらに関連した製造コストを最適化するために、WO2014/140434に開示のデバイスを改良することを目指すものである。
【0010】
具体的には、本発明の目的は、以下の特性を有する医療デバイスを提供することである:
・角膜組織のより長期保存が可能
・角膜組織の品質の向上。
【0011】
この目的のため、本発明は、採取済みの角膜組織を保存可能にするアセンブリを内蔵するカートリッジの形態の医療デバイスであって、
当該デバイスが、
・少なくとも部分的に透明なベースと、
・少なくとも1つの側壁と、
・角膜組織を収容および固定するための手段と、
・前記ベースに対向する、前記側壁の開口を覆うための蓋と、
・保存流体を収容する保存区画と、
・当該保存区画の上流に配置され、圧縮加圧ガスを注入するためのデバイスに接続されるように意図された、少なくとも1つの入口端子であって、
前記加圧ガスが、
前記保存区画(24)に収容された前記保存流体を前記保存チャンバに送り込むこと、および
前記保存流体を、所定の圧力に維持することを可能にする、入口端子と
を備え、
前記デバイスは、使用時に、前記ベースと、前記側壁と、前記蓋とが、角膜組織と共に、上皮側保存チャンバおよび内皮側保存チャンバを画定するように構成され、
前記デバイスは、保存チャンバの上流に、
・前記保存区画の上流にあり、制御圧縮ガス注入デバイスに接続されるように意図された、少なくとも1つの制御端子と、
・入口および制御端子の下流にあり、加圧ガスの前記保存区画への流れを可能または防止するように、前記制御圧縮ガスにより操作される、空圧操作スイッチングシステムと
をさらに備える
ことを特徴とする、デバイスに関する。
【0012】
角膜組織を保存するための様々な要素(保存流体のための保存区画、端子、制御装置など)を内蔵した取り外し可能なカートリッジによると、取り扱いが容易になり、可搬性が向上する。スイッチングシステムが制御ガスで制御されることにより、カートリッジの製造コストも抑えられる。
【0013】
本発明の医療デバイスの、好ましい、非限定的要素を以下に挙げる:
・デバイスは、保存区画の上流に、入口端子で注入される圧縮加圧ガスをフィルタリングするためのフィルタをさらに備えていてもよい;
・保存流体は、保存区画に直接収容されていてもよく、ここで、入口端子で注入され、フィルタリングされた圧縮加圧ガスは保存区画に直接導入され、保存流体と混合される;
・デバイスは、保存区画内に収容された膨張可能ボールをさらに備えて、保存流体は、同じ保存区画内に収容された柔軟容器内に収容され、加圧圧縮ガスを注入することにより、膨張可能ボールの膨張が誘発され、もって前記ボールの壁が、柔軟容器の壁に押し付けられ、保存流体の保存チャンバへの放出が生じる;
・デバイスは、保存流体を循環させるための経路と、圧縮ガスを循環させるための経路とを備え、これら経路は本体を削って形成されることが好ましい;
・デバイスは、保存チャンバの下流に回収保存部を備え、スイッチングシステムは、回収保存部の上流に設けられ、かつ保存チャンバ内の保存流体の流れを制御可能である;
・スイッチングシステムは、少なくとも1つの制御端子に注入される制御圧縮ガスにより空気圧制御される少なくとも1つの弁を含み、各バルブは、少なくとも1つの制御端子に制御圧縮ガスが適用されないときは閉じている;
・デバイスは、膨張バルーンをさらに備えていてもよく、当該膨張バルーンの手動操作により、保存区画内の、ひいては保存チャンバ内の圧力が上昇する;
・入力端子および制御端子は、デバイスがドッキングステーションに差し込まれると、注入デバイスに接続された結合手段に自動的に接続されるように、デバイス上に配置される;
・デバイスは、その外周に、当該デバイスを、ドッキングステーションの支持構造のラックに差し込み可能とするガイド手段をさらに備える。
【0014】
本発明に係るデバイスのその他利点および特徴は、非例示的な例として示されるいくつかの異なる実施形態を参照にした説明から明らかになるであろう。説明には以下の添付図面を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】デバイスの内皮側チャンバおよび上皮側チャンバの概略図である。
【
図2】差し込み式カートリッジの形態の一体型医療デバイスの概略図である。
【
図5】
図2から
図4に示すカートリッジを複数収容するように適用されたドッキングステーションの概略図である。
【
図6】カートリッジ形態の一体型医療デバイスの2つの別の実施形態を示す機能図である。
【
図8】スイッチングシステムを示す、カートリッジの概略断面図である。
【
図9】内皮側チャンバおよび上皮側チャンバをより詳細に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図を参照にして、デバイスの各種例を以下に説明する。これら異なる図において、同じ要素には、同じ参照符号が付される。
【0017】
1.
デバイスについての一般的情報
1.1.
システムの全体的構造
図1を参照にして、デバイスの保存チャンバ、具体的に上皮側チャンバおよび内皮側チャンバが示されている。これら保存チャンバ1は、以下のように画定される。
・採取された角膜組織が一方側に配置される。
・デバイスのベース11(
図1に部分的に図示)と、少なくとも1つの側壁12と、蓋Cが他方に配置される。
【0018】
ベース11は全体、または蓋Cに対向する領域が、照射光を透過する材料製であることが好ましい。
【0019】
蓋Cは、以下のいずれから成ってもよい。
・透明材料製の「一般的」蓋(ベースに対向する、側壁12の上開口を覆う被覆壁と、周囲締結手段とを含む)
・圧平蓋:例えば、角膜組織のレーザー切断またはその撮像用
・トレパレーション蓋:角膜組織の機械的トレパレーション用
・用途に合わせたその他任意の種類の蓋
【0020】
ベース11と蓋Cが透明であることで、全体に亘った視覚的アクセスが可能となる(検査用の全体的な視覚的アクセス)
【0021】
図1に示す実施形態において、保存チャンバは、円筒形を有する。しかし、保存チャンバは、用途に合わせてその他形状であってもよい(例えば、平行六面体、卵形等)。
【0022】
ベース11、側壁12、および蓋Cは、2つ以上の部位として形成されてもよい。
【0023】
例えば、第1の実施形態において、ベース11と側壁12が一体形成されている。この場合、採取角膜に対する視覚的検査が可能となるように、ベース11が透明となっており、透明な蓋Cが、上開口を閉じるための独立した部位となる。
【0024】
第2の実施形態において、蓋Cおよび側壁12は一体に形成され得る。
【0025】
最後に、第3の実施形態において、ベース11、側壁12、および蓋Cは、組み立てられる3つの独立した部材となってもよい。これら異なる実施形態では、ベース11は、側壁12から、径方向外側に延在する周囲フランジ122と協働するように意図された、挟持手段111を備える。
【0026】
挟持手段111は、ベース11に略垂直に延在し、互いに反対側に配置される、2つ(またはそれ以上の)スプリングバック弾性(例えば形状記憶)タブを備えてもよい。ベース11が3つ以上の弾性タブを備える場合、これらは側壁12を囲むように、ベース11の異なる位置に等間隔に分散されてもよい。弾性タブが等間隔に分散することで、側壁12の周囲全体に亘って略均等な力を加えることが可能となる。
【0027】
各弾性タブは、その自由端に、引掛リップが設けられてもよい。各引掛リップは、水平面(ベース11に対して平行)に延在する。当然、挟持要素111は当業者に公知のその他任意の種類のものであってもよい。
【0028】
各弾性タブは、引掛リップの反対方向に(閾値を超える)力が加わると、弾性タブが破壊可能となるように、脆弱領域を含むことが可能であることが有利である。これにより、例えば角膜移植処置のために角膜組織を取り出す際に、側壁12が容易に取り外せるようになる。
【0029】
特定の実施形態では、弾性タブが脆弱領域を有さなくてもよいことが、当業者には明らかであろう。即ち、このような実施形態では、例えば、角膜が適切に中心配置されなかった場合、サンプリング時に蓋Cが取り外しおよび交換可能となるように、弾性タブを(破壊することなく)離間するように動かすことができる。
【0030】
1.2.デバイス構成
デバイスは、角膜組織を収容する保存チャンバと、保存区画から回収保存部へと保存流体を循環させるための流体用アセンブリとを有するカートリッジである。全ての要素は相互依存し、不可分であって、本体内に成形される。
【0031】
例えば、カートリッジは平行六面体形状であってもよく、以下を備えてもよい。
・カートリッジ2の外側に開口する1つ(または複数)の入力接続端子21であって、1つ(または複数)の加圧ガス源に接続される、ドッキングステーション6(
図5を参照して後述する)の結合手段に接続されるように意図される、入力接続端子21
・カートリッジ2の外側に導出される1つ(または複数)の制御接続端子22であって、ドッキングステーション6への接続手段に接続されるように意図される、制御接続端子22
・(医療用パウチ型容器内に収容され得る)保存流体を収容するハウジングを形成する保存区画24
・保存チャンバ1から、ユーザ液体を回収するように意図される回収保存部25
・保存チャンバ内の保存流体の流量、保存チャンバの加圧、および保存流体循環等を制御するための、1つ(または複数)の変形可能弁を有するスイッチングシステム26
・カートリッジ2内で、以下の間に延在する(保存流体またはガス用)循環経路23
- 1つまたは複数の入力接続端子21と、保存区画24との間
- 保存区画24と、保存チャンバ1との間
- 1つまたは複数の制御接続端子22と、スイッチングシステム26との間
- 保存チャンバ1と回収保存部25との間
・従来の配管(接続部、結像部、チューブの長さ、チューブの多孔性、特にガスを伴う配管等)に関する問題を避けるため、上記経路23は、カートリッジ自体の本体を削ることで形成されることが好ましい。
【0032】
保存中の採取角膜の追跡可能性を保証するため、各カートリッジが識別(RFID)タグを備えることが可能であることが有利である。
【0033】
各カートリッジはさらに、膨張バルーンを備えてもよい。膨張バルーンの手動操作により、ドッキングステーション6からカートリッジ2が取り外される際に、圧力が上昇し、保存チャンバの第1加圧が生じる。
【0034】
1.3.ドッキングステーション
デバイスは、カートリッジ2として、保存チャンバ1とその周辺部材が一体的となっていることで、例えば保存チャンバを所望の温度、調整可能圧、そして管理された空気(特に、N2、O2、CO2の割り合い)に保つことを可能にするドッキングステーションにおいて、取り扱い、保存がしやすくなっている。この一体構成はさらに、特にガス用回路と、(1つまたは複数の)保存流体を分離し、(配管を介さず)端子によりこれらを接続することで、医療デバイス内の無菌性を向上する。
【0035】
説明のため、
図5に例示的なドッキングステーションを示す。ドッキングステーション6は、その内部空間を設定温度に保つための、温度調整手段を収容する。
【0036】
このドッキングステーション6は、例えば市販の保存オーブンである。ドッキングステーション6の内部空間は、それぞれ1つのカートリッジ2を収容するための、ラックを含む支持構造を備える。
【0037】
各ラック7は、対応するカートリッジ2に対して、ガス供給を可能とするため、入力および制御端子21、22に接続されるように意図される接続手段を有する。ラック7内へとカートリッジを挿入することで、接続手段が入力端子に接続可能となる。各ラック7は、カートリッジの有無を確認する手段、および/またはRFIDタグに対する読み取り/書き取り手段をさらに有してもよい。
【0038】
ドッキングステーション6はさらに、各カートリッジ2に供給される圧縮空気またはガスを生成する、ダイアフラムポンプまたはその他システム等の、注入デバイス43を含む。
【0039】
ドッキングステーションは、圧力調整制御手段と、スイッチングシステム26の空気圧切替順次制御手段とを有する。これら監視および制御手段は、全てのカートリッジ2に共通で、各カートリッジ2が挿入される各ラック内の接続手段を介して、カートリッジに直列に割り当てられる。これにより、ドッキングステーション6内に存在する各カートリッジ2内の圧力調整と、保存流体流を共用化できるという効果が得られる。
【0040】
ドッキングステーション6は、パーソナルコンピューター、タブレット、または当業者に公知のその他任意の制御ユニット等の遠隔制御ユニットに(有線または無線)接続可能である。
【0041】
ドッキングステーション6内に挿入されたカートリッジ2は、圧力及び流体流が調整された、長期保存モードとなる。カートリッジ2がドッキングステーション6から取り外されると、流体流が止まり、統合スイッチングシステム26が有利に、その内部回路内で保存流体を独立して加圧可能にする。これは、結果的な重量および容積低減と併せて、カートリッジの可搬性を極めて向上し、ある地点から別の地点へと持ち運び可能とする。
【0042】
次に、本発明に係るデバイスの異なる複数の要素について、より詳細に説明する。
【0043】
2.保存チャンバ
2.1.角膜組織固定手段
デバイスは、角膜組織3を、上皮側が蓋13に対向して延在するような、定位置に固定するための手段14を備える。
【0044】
図9を参照すると、固定手段は、角膜組織3と共に、それぞれ「内皮側チャンバ」4および「上皮側チャンバ」5と称される保存チャンバを画定する。
【0045】
具体的には、固定手段は以下を備える。
・ベース11が固定され、角膜組織3を収容することを意図したベース141
・ベース141上の定位置に角膜組織3を保持する可撓性保持リング142
内皮側チャンバ4および上皮側チャンバ5は、それぞれ少なくとも以下の3つのポートを有し得る。
・保存流体注入用の入口ポート
・保存流体排出用の出口
・チャンバに対して、流体検体(例えば分析用)の抽出、または追加物質の注入を行うための、作業用ポート
【0046】
2つのチャンバ4および5の入口および出口ポートは、角膜組織を理想的に保存するため、保存流体を循環および入れ替え可能とするものである。
【0047】
上皮側チャンバ5内に注入される保存流体の組成が、内皮側チャンバ4内に注入される保存流体の組成と異なり得ることが有利である。
【0048】
2.1.1.ベース
ベース141は、カートリッジベースである。ベースは、上縁143(ベース11に対向)で角膜組織を収容するように意図された中央開口部を有する。中央開口部の直径は、角膜の直径(通常は、直径9から13ミリの間)と略等しいことが好ましい。
【0049】
ベース141の上縁143の表面(即ちベース11に対向)は、角膜組織3の湾曲に沿うように湾曲してもよい。具体的には、上縁143の表面は、円錐台形または円環状であってもよい。
【0050】
角膜組織3は、その周辺強膜毛様領域が、上縁143に接触するように、ベース141上に配置されるように意図される。
【0051】
ベース141はさらに、(少なくとも)1つの入口ポートと、(少なくとも)1つの出口ポートとを有する。入口および出口ポートは、内皮側チャンバ4内に保存流体41を流入可能にする。その壁は以下により画定される。
・デバイスのベース11
・ベース141
・保持リング142
・角膜組織3
【0052】
2.1.2.保持リング
保持リング142は、側壁12に対して垂直に内方に延在する。
【0053】
保持リング142内の孔は、楕円形または円形であってもよい。円形孔の場合、保持リング142の内径は、角膜の直径(通常は、直径9から13ミリの間)と略等しく、ベース141の中央開口部と略等しいことが好ましい。したがって、角膜組織3の強膜は、保持リング142の内縁144に接触するように意図されている。
【0054】
保持リングは、上縁143の外径に沿うように、弾性変形により屈曲可能なように、可撓性材料製であることが有利であり、縁143の外形は角膜組織の湾曲に相補的である。これも、保持リング142が強膜毛様領域のあらゆる凹凸を吸収可能となることに寄与する。即ち、圧縮度合いを上げるか下げることで、採取角膜3と、保持リング142との間の接触領域における力による支持および封止の調整が保証される。
【0055】
保持リング142は、側壁12に取り付けるか、側壁12に取り外し可能に設けてもよい。例えば、
図9および10に示す実施形態では、側壁12の内側は、内方に延在する環状境界部121を有する。環状境界部121は、側壁12がベース11上に組付けられた際に、保持リング142をベース141に対して押し付けることを意図している。
【0056】
当然、環状境界部121は、側壁12の内側に配置され、そこから径方向内側に延在する複数の突起に置き換えられてもよい。
【0057】
2.1.3.動作原理
固定手段14の動作原理は以下のとおりである。
【0058】
角膜組織3が、角膜組織3の内皮側がベース11と対向するように、ベース141上に配置される。角膜組織3の周辺強膜毛様領域が、ベース141の上縁143に接触する。
【0059】
保持リング142が角膜組織3上に配置され、内縁144が角膜組織3の周辺強膜毛様領域に接触する。
【0060】
デバイスの側壁12がベース11上に組付けられる。具体的には、側壁12が挟持手段111間を並進移動する。周囲フランジ122が引掛リップを乗り越える際に、形状記憶スプリングタブは元のポジションから外側に移動する。
【0061】
ベース11に近づく際に、側壁12の環状境界部121は、保持リング142をベース141に押し付けやすい。側壁12の並進移動は、保持リング142のベース141への並進移動を含み、これにより角膜組織3が定位置に固定される。
【0062】
保持リングが螺旋状(例えば、保持リングがねじ込まれるような場合)ではなく、直線的(即ち、保持リング142がベース141に向かって並進)であることで、角膜組織3が定位置に固定される際に、捻れてしまうリスクが抑えられる。これは、このように保存された角膜組織の使用可能性を向上するものである。実際、角膜組織が捻れると、角膜組織内に皺がついてしまい、このような折り目は、細胞および角膜組織3の劣化を加速する。
【0063】
縁が、周囲フランジ122が引掛リップの下で延在する位置に到達すると、弾性タブは、それぞれ元の姿勢に戻り、これにより引掛リップが周囲フランジ122に押圧力をかけることで、側壁をベース11に押し付ける。
【0064】
強膜毛様領域が、ベース141の上縁143と、保持リング142の内縁144との間で圧縮され、これにより、角膜組織3が定位置に保持される。側壁12をベース11に組み付けるのに挟持手段を使用することで、異なる医療デバイス間で、強膜毛様領域にかかる圧縮力が一定になることが保証される。
【0065】
これにより、デバイス内に角膜組織を挿入する動作が繰り返し可能になり、デバイスの使用に不慣れな操作者によっても容易に実行可能となる。
【0066】
上述の動作原理は、保持リング142が側壁12に取り付けられていない医療デバイスについて、説明されたものであることが理解されよう。保持リング142が側壁12に取り付けられた医療デバイスの場合、保持リング142と側壁12を配置する各工程は、同時に実行されることが、当業者には明らかであろう。
【0067】
2.2.保存流体供給
角膜組織が配置され、保存流体の循環が開始すると、角膜組織は角膜移植または体外実験に使用されるまで数週間保存可能となる。
【0068】
採取角膜の保存期間を延ばすために、保存流体が使用される。
【0069】
保存流体のデバイスへの供給管理は、以下の要素のセットにより保証される。
・カートリッジ2側の要素:
- 1つ(または複数)の加圧ガス源に接続するように意図された、(1つまたは複数の)入口接続端子21と、(1つまたは複数の)制御端子22
- 保存流体用の筐体を形成する保存区画24。保存流体は、区画24内に直接収容されるか、区画24内に配置された(例えば、医療用パウチ式)容器内に収容される
- 保存チャンバ1から、ユーザ流体を回収するように意図された回収保存部25
- 保存流体循環制御用のスイッチングシステム26
- カートリッジ2内へと延在する循環経路23
・ドッキングステーション6側要素:
- 入力および制御端子への接続用の結合手段
- 圧縮ガスを使用して、流体41を流し、スイッチングシステム26を制御する注入デバイス43
【0070】
このような要素のセットにより、内皮側チャンバ4および/または上皮側チャンバ5内で、保存流体の循環および交換が可能になる。この要素のセットはさらに、内皮側チャンバ4内を継続的に過圧状態とするように、内皮および上皮側チャンバ4および5の内圧を可変とする。この過圧状態は、角膜の内皮側で生理的に生じる圧力に相当し得る。或いは、ユーザが選択したその他任意の圧力に相当し得る。
【0071】
カートリッジ2の区画24は、それぞれのチャンバに対応する2つの異なる保存流体を含むことが有利である(例えば、区画24の異なる区域に収容されるか、区画24内に収容された各医療用パウチ型容器内に収容される)。これにより、内皮側チャンバ4内を循環する保存流体の組成と、上皮側チャンバ5内を循環する保存流体の組成が異なる(例えば、保存流体+調整された組成のガスN2、O2、CO2の混合)。したがって、それぞれの細胞種類(内皮および上皮)に対して適した保存媒体を提供することが可能となる。
【0072】
注入デバイス43は、保存区画24およびスイッチングシステム26内へと加圧ガスを注入可能とする。注入デバイス43はドッキングステーション6内に収容され、カートリッジ2の接続端子21,22を介してカートリッジ2に接続可能である。注入デバイス43は、例えばガス圧縮機、圧縮ガスカートリッジ、または圧縮空気系への接続である。これにより、次の2種類の異なる圧力を生成可能となる:スイッチング要素432(弁等)を介して、内皮側チャンバを加圧することを意図した調整圧力、および、接続部22を介して、流体スイッチング要素26を制御することを意図した動作圧力。
【0073】
カートリッジ2とは個別に、(WO2014/140434に記載のローラポンプの代わりに)圧縮ガス注入デバイス43を使用することは多くの利点がある。
【0074】
具体的には以下が挙げられる:
・保存チャンバが一体化されたカートリッジ2の重量およびサイズ減、
・カートリッジ2の寿命増(ローラポンプ使用時のホース摩耗が避けられるため)、
・ポンプからの発熱減(圧縮ガス注入デバイスよりも、ローラポンプのモータの発熱量が大きい)、
・保存流体流および圧力制限の「躍度」を抑制、
・(1つまたは複数の)チャンバ内の圧力および流量をより精確に調節、
・加圧循環のエネルギー効率向上、
・上皮側チャンバを、内皮側チャンバと異なる保存流体に曝すように、上皮側チャンバ内の独立流体回路を実現しやすくする、
・移植組織の光学的測定用器具が使用可能になるように(例えば、光干渉断層方またはスペキュラーマイクロスコピーによる、角膜厚測定、またはドナーの屈曲矯正手術による光学収差の検出)、角膜組織の品質向上、および/またはそれを撮像しやすくするため、採取角膜3をガス流(空気または、酸素および/または二酸化炭素濃縮により制御された雰囲気等であって、上皮側チャンバにガス(例えば空気)を充填することにより得る)に断続的に曝しやすくする、
・外部環境による汚染のリスクを抑制、
・角膜組織保存に必要な全ての要素をデバイス内に一体的に設けることで、デバイスの可搬性を向上(採取地から角膜バンク、または角膜バンクから手術室)。
【0075】
加圧ガスは、保存流体41を、保存チャンバに送り込むのに使用される。
【0076】
2.2.1.「
接触式」流体供給
図6は、「接触式」流体供給用に、保存流体41が直接保存区画24内に収容された実施形態を示す。
【0077】
この場合、注入デバイスからの圧縮ガスは、区画24内に直接導入される。これにより、保存流体41を内皮側チャンバ4内へと送り込む(この構成では、ガスと流体の混合)。この手法の利点は、ガスと保存流体との間の交換を可能とすることである(例えば、二酸素および/または二酸化炭素の濃縮)。
【0078】
図6に示す実施形態では、カートリッジ2は、入力端子21および制御端子22と、保存区画24との間に、スイッチング要素432およびフィルタ433を有する。
【0079】
この実施形態では、動作原理は以下のとおりとなる。注入デバイス43が以下を提供する:
・保存区画24に注入されるよう意図された、入口端子21を介して圧力が調節された圧縮加圧ガス
・スイッチング要素432の開閉を制御するのに使用される、制御端子22を介した圧縮制御ガス。
【0080】
スイッチング要素432は、保存区画24内への加圧ガスの注入を制御する。具体的には、圧縮制御ガス(空圧式制御を実現)が、制御端子22aに適用される。これにより、圧縮加圧ガスが入口端子21を介して注入され、保存区画24内に広がることができる。
【0081】
フィルタ433は、注入デバイス43からの圧縮加圧ガスを、区画24内に導入される前に殺菌する。保存区画内に注入された加圧ガスは、保存流体41を内皮側チャンバ4内へと押し込む。内皮側チャンバ4内に含まれていた媒体(例えばデバイスが閉じている場合は空気)は、上皮側チャンバ5に向かって排除される。
【0082】
2.2.2.
非接触式流体供給
図7に、「非接触」式流体供給用に、保存区画24内の容器42に保存流体41が収容された実施形態を示す。容器42は、2枚の可撓性または柔軟なシートが重ねられて、外周部分で溶着された、医療用パウチから成ってもよい。
【0083】
保存区画24はさらに、加圧ガスを収容する膨張可能ボールを収容する。この膨張可能ボールは、膨張すると、容器42の壁の外面に圧力をかけることを可能とする。これにより、保存流体41を内皮側チャンバ4に送り込む(この構成では、ガスおよび流体は混合しない)。
【0084】
図7に示す実施形態では、カートリッジ2は、端子21,22と、保存区画24との間にスイッチング要素432を有する。
【0085】
この実施形態では、動作原理は以下のとおりとなる。注入デバイス43が、圧縮ガス(加圧および制御用)を、入力および制御端子22に供給する。
【0086】
スイッチング要素432(圧力センサにより制御)は、加圧ガスの保存区画24への注入を制御する。具体的には、制御圧縮ガス(空気圧制御を実現)が、制御端子22aに適用され、圧縮加圧ガスが入口端子21を介して注入され、保存区画24に広がることが可能となる。
【0087】
圧縮加圧ガスが、膨張すると容器42の壁に押し付けられやすい膨張可能ボール内に導入される。
【0088】
このようにして、容器42に対して膨張可能ボールが圧力をかけることで、保存流体41の内皮側チャンバ4への排出が促される。
【0089】
2.2.3.スイッチングシステム
注入デバイス43はさらに、制御端子22b、22c、22dを介して、制御圧縮ガスをスイッチングシステム26に供給する。この制御ガスは、スイッチングシステム26の制御に使用される。
【0090】
図8は、内皮側チャンバ4および上皮側チャンバ5内の保存流体の流れと圧力を制御するためのスイッチングシステム26の例を示す。
【0091】
スイッチングシステム26は、(制御端子22b、22c、22d内に注入される制御ガスによって)空気圧制御される弁V1、V2、V3から成る。
【0092】
これら弁V1、V2,V3は、空気圧により変形可能なエラストマ弁から成ってもよい。これら弁V1、V2,V3は、パイロット圧がなければ閉じているという特性を持つ。これにより、カートリッジ2をラック7から取り外された状態で圧力下に維持できる。
【0093】
弁V1、V2、V3は、5つの工程で実施される手順で動作される。
【0094】
第1の(いわゆる初期)工程では、3つの弁V1、V2、V3が閉じた状態で静止しており、スイッチングシステム26を通じて液体が流れることができない。
【0095】
第2のステップでは、注入デバイス43が制御ガスを制御端子22b、22Cに放出する。第1および第2の弁V1、V2が、制御ガスの作用により開く。これにより、保存媒体が、第1の弁V1を介して第2の弁V2に入ることができる。
【0096】
第3のステップでは、注入デバイス43は制御端子22bに対する制御ガスの放出を停止する。第1の弁が閉じ、第2の弁V2の空き空間に、ある量の保存流体が封入される。
【0097】
第4のステップでは、注入デバイス43が制御ガスを制御端子22dに放出する。第3の弁V3が開き、第2の弁V2に収容された流体が解放される。
【0098】
第5のステップでは、注入デバイス43は制御端子22cへの制御ガスの放出を停止する。第2の弁V2が閉じ、その内部の空き空間に収容されていた流体が、第3の弁V3に排出される。
【0099】
そして初期ステップに戻ると、第3の弁V3が閉じて、その内部の空き空間内に収容された流体が、上皮側チャンバ5に向かって排出される。
【0100】
このサイクルが完了すると、1つの弁の空き空間(特に、第2の弁V2の空き空間)に等しい容積の流体が移動する。したがって、第2の弁V2の空き空間と、この手順の繰り返し頻度により、カートリッジ2内の流体の流れが決定される。
【0101】
結論
本発明は、WO2014/140434に記載のバイオリアクタの動作、角膜組織の皮質、さらに撮像を向上し、その用途を密閉容器内での角膜レーザー切断および角膜トレパレーション等の新たな機能に適用範囲を拡大するものである。
【0102】
a.上述のデバイスは、角膜組織の保存寿命を延ばす。さらに、保存された角膜組織の品質を向上する。
具体的には、固定手段の配置、特に保持リング142のベース141に対する並進移動により、角膜組織3の捻れ、したがって皺がつくことが防止される。
さらに、側壁12をベース11に組み付けるために、挟持手段111が存在することで、角膜組織に常に圧縮力が働くことが保証される。これにより、角膜組織配置動作を、異なる医療デバイス間で再現可能となる。
【0103】
b.上述のデバイスは、角膜組織3の撮像品質も向上するものである。
具体的には、圧平蓋13が、窓131の並進移動用の手段を備えることで、平坦化時に、角膜組織3が捻れるリスクを低減する。この捻れは、角膜組織3の撮像品質を下げる可能性がある。
【0104】
c.最後に、上述のデバイスは、角膜組織3の、特に例えば角膜移植手術時のデバイスからの取り出しに関して取り扱い性を向上する。
【0105】
角膜組織3の取り出しに関して、弾性タブに脆弱領域を設けている。したがって、脆弱領域に破断閾値を超える強さの力をかけると、弾性タブは破壊可能である。これにより、移植手術処置中に、側壁12を容易に外して、角膜組織3を取り出し可能にできる。
【0106】
本明細書に記載の新たな教示および利点から大きく外れない範囲で、上述の医療デバイスに、多々変化を加えることが可能であることが理解されよう。したがって、そのような変更は全て、添付の請求の範囲に含まれるように意図される。