(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20120101AFI20221207BHJP
【FI】
G06Q10/06
(21)【出願番号】P 2021160141
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2021-10-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】316014906
【氏名又は名称】株式会社FRONTEO
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 悠一
(72)【発明者】
【氏名】久光 徹
(72)【発明者】
【氏名】蓮子 和巳
【審査官】加舎 理紅子
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-519957(JP,A)
【文献】特開2021-117966(JP,A)
【文献】特開2014-235723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の企業に対応する複数のノードであって、企業の産業分類を含む企業に関する属性が付与されたノードが、製品の提供元企業及び提供先企業を対応付けた取引関係を示す複数のリンクで接続された、サプライチェーンネットワークを取得する、サプライチェーンネットワーク取得部と、
前記サプライチェーンネットワークに対して、1つ以上の仮想ノードを追加することにより、前記仮想ノードを含むサプライチェーンネットワークを生成する、仮想ノード追加部と、
前記仮想ノードを含むサプライチェーンネットワークにグラフ埋込み手法を適用することにより、前記複数のノードのそれぞれに対応する、前記複数のノードの特徴量をそれぞれ示す、複数のベクトル表現を算出する、ベクトル表現算出部と、
を含
み、
前記仮想ノードは、前記サプライチェーンネットワークに含まれるノードにより示される企業の産業分類を示し、
前記仮想ノード追加部は、前記複数のノードのそれぞれに付与された前記属性に含まれる前記産業分類に基づいて、前記複数のノードのそれぞれと追加した前記仮想ノードとをリンクによって接続することにより、前記仮想ノードを含むサプライチェーンネットワークを生成する、
情報処理システム。
【請求項2】
請求項
1において、
前記複数のベクトル表現を用いて、前記複数のベクトル表現にそれぞれ対応する前記複数のノード間の関連度を算出する、関連度算出部をさらに含む、情報処理システム。
【請求項3】
請求項
2において、
前記仮想ノードを含むサプライチェーンネットワークに含まれるノードにより示される複数の企業のうちのいずれかを選択する選択操作を受け付ける入力受付部をさらに含み、
前記関連度算出部は、前記選択操作により選択された企業のノードに対応付けられたベクトル表現と、他の企業のノードに対応付けられたベクトル表現を用いて、前記選択操作により選択された企業のノードと、前記他の企業のノードとの関連度を算出する、
情報処理システム。
【請求項4】
情報処理システムが、
複数の企業に対応する複数のノードであって、企業の産業分類を含む企業に関する属性が付与されたノードが、製品の提供元企業及び提供先企業を対応付けた取引関係を示す複数のリンクで接続された、サプライチェーンネットワークを取得し、
前記サプライチェーンネットワークに対して、1つ以上の仮想ノードを追加することにより、前記仮想ノードを含むサプライチェーンネットワークを生成し、
前記仮想ノードを含むサプライチェーンネットワークにグラフ埋込み手法を適用することにより、前記複数のノードのそれぞれに対応する、前記複数のノードの特徴量をそれぞれ示す、複数のベクトル表現を算出する、
処理を行
い、
前記仮想ノードは、前記サプライチェーンネットワークに含まれるノードにより示される企業の産業分類を示し、
前記情報処理システムは、前記複数のノードのそれぞれに付与された前記属性に含まれる前記産業分類に基づいて、前記複数のノードのそれぞれと追加した前記仮想ノードとをリンクによって接続することにより、前記仮想ノードを含むサプライチェーンネットワークを生成する、
情報処理方法。
【請求項5】
情報処理システムに、
複数の企業に対応する複数のノードであって、企業の産業分類を含む企業に関する属性が付与されたノードが、製品の提供元企業及び提供先企業を対応付けた取引関係を示す複数のリンクで接続された、サプライチェーンネットワークを取得し、
前記サプライチェーンネットワークに対して、1つ以上の仮想ノードを追加することにより、前記仮想ノードを含むサプライチェーンネットワークを生成し、
前記仮想ノードを含むサプライチェーンネットワークにグラフ埋込み手法を適用することにより、前記複数のノードのそれぞれに対応する、前記複数のノードの特徴量をそれぞれ示す、複数のベクトル表現を算出する、
処理を実行させ
、
前記仮想ノードは、前記サプライチェーンネットワークに含まれるノードにより示される企業の産業分類を示し、
前記情報処理システムに、前記複数のノードのそれぞれに付与された前記属性に含まれる前記産業分類に基づいて、前記複数のノードのそれぞれと追加した前記仮想ノードとをリンクによって接続することにより、前記仮想ノードを含むサプライチェーンネットワークを生成する、
処理を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サプライチェーンの分析に関する種々の手法が知られている。サプライチェーンとは、製品の原材料・部品の調達から、製造、在庫管理、配送、販売、消費までの一連の流れをいう。例えば非特許文献1には、サプライチェーン上で関連性の高い企業を抽出する手法として、コミュニティ分類を用いた手法が開示されている。また、例えば非特許文献2には、サプライチェーン上の企業のチョークポイント性を評価するために、媒介中心性指標を評価指数として用いる手法が開示されている。さらに、非特許文献3には、コミュニティ分類を用いたサプライチェーン分析の手法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Newman, Mark EJ. "Analysis of weighted networks" Physical review E 70.5 (2004): 056131.
【文献】White, Douglas R. and Stephen P. Borgatti. "Betweenness centrality measures for directed graphs" Social networks 16.4 (1994): 335-346.
【文献】Takayuki Mizuno, Takaaki Ohnishi, and Tsutomu Watanabe, “Structure of global buyer-supplier networks and its implications for conflict minerals regulations” EPJ Data Science 5, Article number 2 (2016), <URL : https://doi.org/10.1140/epjds/s13688-016-0063-7>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に開示されたコミュニティ分類という手法では、サプライチェーン上の複数の企業が同一のコミュニティに属するか否かを示す二値指標により、関連性の高い企業が抽出される。しかしながら、コミュニティ分類では、この二値指標により企業が分類されるため、コミュニティの境界に位置する企業の関連性を高い精度で評価することは難しかった。また、コミュニティ分類では、サプライチェーンネットワークを示すグラフ構造に含まれない、例えばドメイン知識などの要素を、分類に用いることはできなかった。非特許文献2に開示された媒介中心性指標を用いた手法では、媒介中心性指標の性質により、サプライチェーンネットワークの末端のノードを評価できないという問題があった。
【0005】
また、サプライチェーン上における企業同士のつながりを示すリンクは、企業が実施する事業に関連する本質的なものと、事業と関連のない非本質的なものとが混在している場合がある。しかしながら、従来の分析手法でこれらを区別することはできなかった。そのため、従来の分析手法では、本質的なリンクと非本質的なリンクとが同等に扱われ、企業同士のサプライチェーンの実態を適切に反映できないという問題があった。
【0006】
本開示のいくつかの態様によれば、より実態に即したサプライチェーン分析を実行可能な、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムなどを提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態は、複数の企業に対応する複数のノードであって、企業の産業分類を含む企業に関する属性が付与されたノードが、製品の提供元企業及び提供先企業を対応付けた取引関係を示す複数のリンクで接続された、サプライチェーンネットワークを取得する、サプライチェーンネットワーク取得部と、前記サプライチェーンネットワークにグラフ埋込み手法を適用することにより、前記複数のノードのそれぞれに対応する、前記複数のノードの特徴量をそれぞれ示す、複数のベクトル表現を算出する、ベクトル表現算出部と、を含む、情報処理システムに関係する。
【0008】
本開示の他の一形態は、複数の企業に対応する複数のノードであって、企業の産業分類を含む企業に関する属性が付与されたノードが、製品の提供元企業及び提供先企業を対応付けた取引関係を示す複数のリンクで接続された、サプライチェーンネットワークを取得する、サプライチェーンネットワーク取得部と、前記サプライチェーンネットワークを、前記複数のリンクを複数の新たなノードとし、前記複数の新たなノードのそれぞれに対して、前記サプライチェーンネットワークにおける前記複数のノードと前記複数のリンクとの関係に基づいて定められる、産業分類に関する情報を含む新たな属性を付与するとともに、前記新たなノードを、前記サプライチェーンネットワークにおける前記複数のノードと前記複数のリンクとの関係に基づいて定められる新たなリンクで接続することによって生成したリンクネットワークに変換する、ネットワーク変換部と、前記リンクネットワークにグラフ埋込み手法を適用することにより、前記複数の新たなノードのそれぞれに対応する、前記複数の新たなノードの特徴量をそれぞれ示す、複数のベクトル表現を算出する、ベクトル表現算出部と、を含む、情報処理システムに関係する。
【0009】
本開示のさらに他の一形態は、情報処理システムが、複数の企業に対応する複数のノードであって、企業の産業分類を含む企業に関する属性が付与されたノードが、製品の提供元企業及び提供先企業を対応付けた取引関係を示す複数のリンクで接続された、サプライチェーンネットワークを取得し、前記サプライチェーンネットワークにグラフ埋込み手法を適用することにより、前記複数のノードのそれぞれに対応する、前記複数のノードの特徴量をそれぞれ示す、複数のベクトル表現を算出する、処理を行う、情報処理方法に関係する。
【0010】
本開示のさらに他の一形態は、情報処理システムが、複数の企業に対応する複数のノードであって、企業の産業分類を含む企業に関する属性が付与されたノードが、製品の提供元企業及び提供先企業を対応付けた取引関係を示す複数のリンクで接続された、サプライチェーンネットワークを取得し、前記サプライチェーンネットワークを、前記複数のリンクを複数の新たなノードとし、前記複数の新たなノードのそれぞれに対して、前記サプライチェーンネットワークにおける前記複数のノードと前記複数のリンクとの関係に基づいて定められる、産業分類に関する情報を含む新たな属性を付与するとともに、前記新たなノードを、前記サプライチェーンネットワークにおける前記複数のノードと前記複数のリンクとの関係に基づいて定められる新たなリンクで接続することによって生成したリンクネットワークに変換し、前記リンクネットワークにグラフ埋込み手法を適用することにより、前記複数の新たなノードのそれぞれに対応する、前記複数の新たなノードの特徴量をそれぞれ示す、複数のベクトル表現を算出する、処理を行う、情報処理方法に関係する。
【0011】
本開示のさらに他の一形態は、情報処理システムに、複数の企業に対応する複数のノードであって、企業の産業分類を含む企業に関する属性が付与されたノードが、製品の提供元企業及び提供先企業を対応付けた取引関係を示す複数のリンクで接続された、サプライチェーンネットワークを取得し、前記サプライチェーンネットワークにグラフ埋込み手法を適用することにより、前記複数のノードのそれぞれに対応する、前記複数のノードの特徴量をそれぞれ示す、複数のベクトル表現を算出する、処理を実行させる、プログラムに関係する。
【0012】
本開示のさらに他の一形態は、情報処理システムに、複数の企業に対応する複数のノードであって、企業の産業分類を含む企業に関する属性が付与されたノードが、製品の提供元企業及び提供先企業を対応付けた取引関係を示す複数のリンクで接続された、サプライチェーンネットワークを取得し、前記サプライチェーンネットワークを、前記複数のリンクを複数の新たなノードとし、前記複数の新たなノードのそれぞれに対して、前記サプライチェーンネットワークにおける前記複数のノードと前記複数のリンクとの関係に基づいて定められる、産業分類に関する情報を含む新たな属性を付与するとともに、前記新たなノードを、前記サプライチェーンネットワークにおける前記複数のノードと前記複数のリンクとの関係に基づいて定められる新たなリンクで接続することによって生成したリンクネットワークに変換し、前記リンクネットワークにグラフ埋込み手法を適用することにより、前記複数の新たなノードのそれぞれに対応する、前記複数の新たなノードの特徴量をそれぞれ示す、複数のベクトル表現を算出する、処理を実行させる、プログラムに関係する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る情報処理システムを含むシステムの構成例である。
【
図2】
図1のサーバシステムの詳細な構成例を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図1の端末装置の詳細な構成例を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図1の情報処理システムにより実行される処理の概略を示すフローチャートである。
【
図5】サプライチェーンネットワークの一例を示す図である。
【
図6】
図1の情報処理システムにより実行される第1の分析処理のフローチャートである。
【
図7】仮想ノードを含むサプライチェーンネットワークの一例を示す図である。
【
図8】
図1の情報処理システムにより実行される第2の分析処理のフローチャートである。
【
図10】仮想ノードを含むリンクネットワークの一例を示す図である。
【
図11】所与の企業のノードに入るリンクと当該ノードから出るリンクとの関連度を示す分布図である。
【
図12】重み付きネットワークの一例を示す図である。
【
図13】経路長ごとの流量の順位付けの結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。図面において、同一又は同等の構成要素には同一の符号を付し、同一又は同等の構成要素に関する説明が重複する場合は適宜省略する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された内容を限定するものではない。また、実施形態で説明される構成の全てが、必ずしも本開示の必須構成要件であるとは限らない。本開示で説明する機能を発揮する限りにおいて、実施形態で説明される構成は、適宜省略されてもよい。
【0015】
1.システム構成例
図1は、一実施形態に係る情報処理システム10を含むシステムの構成例である。本実施形態に係るシステムは、サーバシステム100と端末装置200とを含む。ただし、情報処理システム10を含むシステムの構成は必ずしも
図1に限定されず、例えば一部の構成を省略したり他の構成を追加したりするなどの種々の変形実施が可能である。例えば、
図1では端末装置200として、端末装置200-1と端末装置200-2との2つが図示されているが、端末装置200の数はこれに限定されない。また、構成の省略が追加などの変形実施が可能である点は、後述する
図2及び
図3においても同様である。
【0016】
本実施形態の情報処理システム10は、例えばサーバシステム100に対応する。ただし、本実施形態の手法はこれに限定されず、サーバシステム100と他の装置を用いた分散処理によって、本明細書で説明する情報処理システム10の処理が実行されてもよい。例えば、本実施形態の情報処理システム10は、サーバシステム100と端末装置200との分散処理によって実現されてもよい。以下、本明細書では、情報処理システム10がサーバシステム100である場合の例について説明する。
【0017】
サーバシステム100は、1つのサーバであってもよいし、複数のサーバを含んで構成されていてもよい。例えば、サーバシステム100は、データベースサーバとアプリケーションサーバとを含んで構成されていてもよい。データベースサーバは、後述するサプライチェーンネットワーク121などを含む、種々のデータを記憶する。アプリケーションサーバは、後述する
図4、
図6及び
図8などを用いて説明する処理を実行する。なお、ここでの複数のサーバは、物理サーバであってもよいし、仮想サーバであってもよい。また、仮想サーバが用いられる場合、当該仮想サーバは、1つの物理サーバに設けられてもよいし、複数の物理サーバに分散して配置されてもよい。このように、本実施形態におけるサーバシステム100の具体的な構成は、種々の変形実施が可能である。
【0018】
端末装置200は、情報処理システム10を利用するユーザによって使用される装置である。端末装置200は、PC(Personal Computer)であってもよいし、スマートフォンなどの携帯端末装置であってもよいし、本明細書で説明する機能を有する他の装置であってもよい。
【0019】
サーバシステム100は、例えばネットワークを介して端末装置200-1及び端末装置200-2と通信可能に接続される。以下、複数の端末装置を互いに区別する必要がない場合、単に端末装置200と表記する。ここでのネットワークは、例えばインターネットなどの公衆通信網であるが、LAN(Local Area Network)などであってもよい。
【0020】
本実施形態の情報処理システム10は、例えば公開情報を用いて、対象に関するデータの収集、分析などを行うOSINT(Open Source Intelligence)システムである。ここでの公開情報は、広く公開されており、合法的に入手可能な種々の情報を含む。例えば公開情報は、有価証券報告書、産業連関表、政府の公式発表、国や企業に関する報道、サプライチェーンデータベースなどを含んでもよい。また、公開情報は、SNS(Social Networking Service)において送受信される種々の情報を含んでもよい。例えばSNSは、テキストまたは画像などを投稿可能なサービスを含み、本実施形態における公開情報は、当該テキストまたは画像、あるいはそれらに対する自然言語処理または画像処理などの結果を含んでもよい。
【0021】
サーバシステム100は、公開情報に基づいて、様々な属性を含むノードを生成する。1つのノードは、所与のエンティティを表す。ここでのエンティティは企業である。ノードに付与される属性は、公開情報に基づいて決定される情報であって、企業の名称、国籍、事業分野、産業分類、取引先及び取引品目などの種々の情報を含む。エンティティを表すノードが企業である場合、企業の産業分類を含む企業に関する属性が、ノードに付与される。なお、ここでの属性は、売り上げ、従業員数、株主及び出資比率、ボードメンバーなどを含んでよい。本実施形態では、属性のうち、少なくとも産業分類がノードに対して付与される。産業分類は、産業の種類をその性質ごとに分類したものである。産業分類として、例えば産業分類コードが用いられてよい。産業分類コードは、産業をいくつかに分類し、各分類結果に「01」等のコードを割り当てた情報である。
【0022】
所与のノードの属性に、他のノードとの関係性を含む属性がある場合、当該所与のノードと他のノードとが、向きを有するリンクによって接続される。例えば、例えば、所与の企業が、他の企業に対して何らかの取引製品を提供(売却)しているとする。この場合、他の企業に対応するノードと、所与の企業に対応するノードとの間が、製品の売買関係(流通関係)を表すリンクによって接続される。ここでのリンクは、影響を与える側から受ける側への方向を有するリンクであり、例えば何らかの製品を売る側から買う側への方向を有するリンクである。つまり、製品の提供元企業及び提供先企業を対応付けた取引関係が、リンクにより示される。
【0023】
本実施形態の手法では、サーバシステム100は、複数のエンティティ(例えば企業)を表す複数のノードが、取引関係を示す複数のリンクで接続されたネットワークである、エンティティネットワークを取得する。リンクは方向を有するため、エンティティネットワークは有向グラフである。サーバシステム100は、エンティティネットワークに基づく分析を行い、分析結果を提示する処理を行う。例えば、端末装置200は、OSINTシステムが提供するサービスを利用するユーザによって使用される装置である。例えばユーザは、端末装置200を用いて何らかの分析を情報処理システム10であるサーバシステム100に依頼する。サーバシステム100は、エンティティネットワークに基づく分析を行い、分析結果を端末装置200に送信する。本実施形態におけるエンティティネットワークは、狭義にはサプライチェーンを表すサプライチェーンネットワーク121である。以下、本実施形態では、エンティティネットワークがサプライチェーンネットワーク121であるとして説明する。
【0024】
図2は、サーバシステム100の詳細な構成例を示す機能ブロック図である。サーバシステム100は、例えば
図2に示すように、処理部101と、記憶部102と、通信部103と、を含む。
【0025】
本実施形態の処理部101は、下記のハードウェアによって構成される。ハードウェアは、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むことができる。例えば、ハードウェアは、回路基板に実装された1又は複数の回路装置や、1又は複数の回路素子によって構成できる。1又は複数の回路装置は例えばIC(Integrated Circuit)、FPGA(field-programmable gate array)等である。1又は複数の回路素子は例えば抵抗、キャパシタ等である。
【0026】
また処理部101は、下記のプロセッサによって実現されてもよい。本実施形態のサーバシステム100は、情報を記憶するメモリと、メモリに記憶された情報に基づいて動作するプロセッサと、を含む。情報は、例えばプログラムと各種のデータ等である。プログラムは、サーバシステム100に、本明細書で説明する処理を実行させるものを含んでよい。プロセッサは、ハードウェアを含む。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等、各種のプロセッサを用いることが可能である。メモリは、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリであってもよいし、レジスタであってもよいし、ハードディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)等の磁気記憶装置であってもよいし、光学ディスク装置等の光学式記憶装置であってもよい。例えば、メモリはコンピュータによって読み取り可能な命令を格納しており、当該命令をプロセッサが実行することによって、処理部101の機能が処理として実現される。ここでの命令は、プログラムを構成する命令セットの命令でもよいし、プロセッサのハードウェア回路に対して動作を指示する命令であってもよい。
【0027】
処理部101は、例えば、サプライチェーンネットワーク取得部110と、ネットワーク変換部111と、仮想ノード追加部112と、ベクトル表現算出部113と、関連度算出部114と、重み付きネットワーク生成部115と、流量算出部116と、判定部117と、入力受付部118と、提示処理部119と、を含む。本実施形態において、処理部101は、第1の分析処理及び第2の分析処理の一方または双方を実行する。第1の分析処理及び第2の分析処理の詳細については、後述する。
【0028】
サプライチェーンネットワーク取得部110は、サプライチェーンネットワーク121を取得する。例えばサプライチェーンネットワーク取得部110は、公開情報に基づいてサプライチェーンネットワーク121を作成してもよい。公開情報は、製品の提供元企業及び提供先企業を対応付けた取引関係情報を含む。サプライチェーンネットワーク取得部110は、作成したサプライチェーンネットワーク121を、記憶部102に記憶する。ただし、サプライチェーンネットワーク121の作成は、本実施形態に係る情報処理システム10とは異なるシステムにおいて行われてもよい。この場合、サプライチェーンネットワーク取得部110は、当該異なるシステムから作成結果を取得する処理を行ってもよい。
【0029】
サプライチェーンネットワーク取得部110は、例えば
図5を用いて後述するように、企業間の取引関係に基づいて、複数の企業に対応する複数のノードが接続されたネットワークを、サプライチェーンネットワーク121として取得してもよい。
【0030】
ネットワーク変換部111は、サプライチェーンネットワーク121を、リンクネットワーク122に変換する。リンクネットワーク122は、サプライチェーンネットワーク121における複数のリンクのそれぞれを、複数の新たなノードとするネットワークである。リンクネットワーク122における新たなノードには、新たな属性が付与される。新たな属性は、サプライチェーンネットワーク121における複数のノードと複数のリンクとの関係に基づいて定められる。新たな属性は、例えば、産業分類に関する情報を含んでよい。例えば、サプライチェーンネットワーク121における所与のリンクを示す、リンクネットワーク122における所与の新たなノードに対しては、当該所与のリンクで接続された複数のノードのそれぞれに付与された産業分類の組合せが、新たな属性として付与される。つまり、この場合、新たな属性に含まれる産業分類に関する情報は、産業分類の組合せである。
【0031】
リンクネットワーク122における新たなノードは、新たなリンクにより接続される。新たなリンクは、サプライチェーンネットワーク121における複数のノードと複数のリンクとの関係に基づいて定められる。言い換えれば、新たなリンクは、変換前のサプライチェーンネットワーク121におけるリンク同士の関係に基づいて決定される、向きを有するリンクである。従って、リンクネットワーク122は有向グラフである。リンクネットワーク122は、第2の分析処理において使用される。ネットワーク変換部111は、作成したリンクネットワーク122を、記憶部102に記憶する。
【0032】
仮想ノード追加部112は、サプライチェーンネットワーク121またはリンクネットワーク122に対して、1つ以上の仮想ノードを追加する。例えば、仮想ノード追加部112は、第1の分析処理において、サプライチェーンネットワーク121に対して、サプライチェーンネットワーク121に含まれるノードにより示される企業の産業分類を示す1つ以上の仮想ノードを追加する。仮想ノード追加部112は、サプライチェーンネットワーク121における複数のノードのそれぞれに付与された属性に含まれる産業分類に基づいて、複数のノードと、追加した仮想ノードとを、向きを有するリンクによって接続する。具体的には、仮想ノード追加部112は、所与の産業分類が付与されたノードと、当該所与の産業分類を示す仮想ノードとを、リンクによって接続する。このようにして、仮想ノード追加部112は、仮想ノードを含むサプライチェーンネットワーク121を生成する。
【0033】
仮想ノード追加部112は、例えば、第2の分析処理において、サプライチェーンネットワーク121に含まれるノードにより示される企業の産業分類に基づいて定められる1つ以上の仮想ノードを追加する。ここで追加される仮想ノードは、サプライチェーンネットワーク121のリンクで接続されたノードのそれぞれに付与された属性に含まれる産業分類の組合せを示すノードであってよい。つまり、仮想ノードは、2つ以上の産業分類の組合せを示すノードであってよい。仮想ノード追加部112は、リンクネットワーク122における複数の新たなノードのそれぞれに付与された新たな属性に含まれる産業分類に関する情報に基づいて、複数の新たなノードのそれぞれと追加した前記仮想ノードとをリンクによって接続する。具体的には、仮想ノード追加部112は、所与の産業分類の組合せが付与された新たなノードと、当該所与の産業分類の組合せを示す仮想ノードとを、リンクによって接続する。このようにして、仮想ノード追加部112は、仮想ノードを含むリンクネットワーク122を生成する。
【0034】
ベクトル表現算出部113は、サプライチェーンネットワーク121またはリンクネットワーク122に対して、グラフ埋め込み手法を適用することにより、ベクトル表現を算出する。
【0035】
第1の分析処理では、ベクトル表現算出部113は、サプライチェーンネットワーク121にグラフ埋め込み手法を適用することにより、サプライチェーンネットワーク121における複数のノードのそれぞれに対応する、複数のノードの特徴量をそれぞれ示す、複数のベクトル表現を算出する。仮想ノード追加部112によって仮想ノードを含むサプライチェーンネットワーク121が生成されている場合、ベクトル表現算出部113は、仮想ノードを含むサプライチェーンネットワーク121にグラフ埋込み手法を適用することにより、複数のベクトル表現を算出する。
【0036】
第2の分析処理では、ベクトル表現算出部113は、リンクネットワーク122にグラフ埋め込み手法を適用することにより、リンクネットワーク122における複数の新たなノードにそれぞれ対応する、複数の新たなノードの特徴量をそれぞれ示す、複数のベクトル表現を算出する。仮想ノード追加部112によって仮想ノードを含むリンクネットワーク122が生成されている場合、ベクトル表現算出部113は、仮想ノードを含むリンクネットワーク122にグラフ埋込み手法を適用することにより、複数のベクトル表現を算出する。
【0037】
ベクトル表現算出部113は、ベクトル表現を算出するに際し、公知のグラフ埋め込み手法を用いることができる。例えば、ベクトル表現算出部113は、グラフ埋め込み手法として、node2vecという手法を用いることができる。この手法では、ベクトル表現算出部113は、グラフ構造(本実施形態におけるサプライチェーンネットワーク121またはリンクネットワーク122)の所与のノードを起点として、ランダムウォークによってリンクをたどって形成されるシーケンスデータの集合を生成する。そして、ベクトル表現算出部113は、生成したシーケンスデータの集合に対してskip-gramという手法を適用し、各ノードの特徴量を抽出することによって各ノードのベクトル表現を算出する。ただし、node2vecはグラフ埋め込み手法の一例に過ぎず、ベクトル表現算出部113は他の公知のグラフ埋め込み手法を用いてベクトル表現を算出してもよい。
【0038】
関連度算出部114は、ベクトル表現算出部113によって算出された複数のベクトル表現を用いて、複数のベクトル表現にそれぞれ対応する複数のノード間の関連度を算出する。関連度算出部114は、例えば、関連度としてコサイン類似度を算出してよい。コサイン類似度は、2つのノードの類似度を、当該2つのノードのベクトル表現同士がなす角度に基づいて示す指標である。2つのノードが類似するほど、コサイン類似度は1に近い値となり、2つのノードが非類似であるほど、コサイン類似度は0に近い値となる。
【0039】
第1の分析処理では、関連度算出部114は、ベクトル表現に基づいて、サプライチェーンネットワーク121における複数のノード間の関連度を算出する。後述する入力受付部118において、サプライチェーンネットワーク121のノードが示す企業のうちいずれかを選択する選択操作を受け付けた場合、関連度算出部は、選択操作により選択された企業のノードと、他のノードとの関連度を算出してよい。
【0040】
第2の分析処理では、関連度算出部114は、ベクトル表現に基づいて、リンクネットワーク122における複数の新たなノード間の関連度を算出する。
【0041】
重み付きネットワーク生成部115は、第2の分析処理において、重み付きネットワーク123を生成する。重み付きネットワーク123は、リンクネットワーク122における新たなリンクに対して、重み値を付与したネットワークである。重み値は、関連度算出部114が算出した関連度に基づいて、重み付きネットワーク生成部115が算出してよい。つまり、重み付きネットワーク生成部115は、関連度算出部114が算出した関連度に基づいて重み値を算出し、算出した重み値を新たなリンクに対して付与することにより、重み付きネットワーク123を生成する。重み付きネットワーク生成部115は、作成した重み付きネットワーク123を、記憶部102に記憶する。なお、重み付きネットワーク生成部115が実行する重み値の算出方法の詳細については、後述する。
【0042】
流量算出部116は、重み付きネットワーク生成部115が算出した重み値を用いて、重み付きネットワーク123上のフローにおける流量を算出する。ここで、フローは、重み付きネットワーク123において、所与の1つの新たなノードから、他の1つの新たなノードまでをたどる新たなリンクの経路をいう。流量算出部116は、重み付きネットワーク123で取りうる全てのフローの流量を算出してもよく、特定の新たなノードに関するフローの流量を算出してもよい。また、流量は、所与のフローにおける取引関係の量を示す指標である。より具体的には、流量は、当該所与のフローの終点のノードに対する起点のノードの取引関係の値を示す。流量は、新たなリンクに付与された重み値に基づいて算出される。流量の算出方法の詳細については、後述する。
【0043】
判定部117は、流量算出部116が算出した流量に基づいて、サプライチェーンネットワーク121またはリンクネットワーク122における重要リンクを判定する。重要リンクは、製品を提供する上で重要な役割を果たすリンクである。また、判定部117は、サプライチェーンネットワーク121に含まれる1つ以上の企業のチョークポイント性を判定する。チョークポイントは、もともと、二つのコミュニティを結ぶ経路上にあって、そのノードがなくなると接続が絶たれるか、互いを接続する経路の長さが大きく増えるノードを表す。判定部117は、流量算出部116が算出した流量から、重要リンクまたはチョークポイント性を算出することができる。例えば、判定部117は、流量算出部116が算出した流量に対して、所定の演算を行ったり、流量または所定の演算の結果を比較したりすることにより、重要リンクまたはチョークポイント性を判定することができる。
【0044】
なお、判定部117は、重要リンクとチョークポイント性との一方のみを判定してもよく、双方を判定してもよい。また、判定部117は、重要リンクに代えて、または重要リンクとともに、重要ノードを判定してもよい。重要ノードは、例えば重要リンクにより接続されるノードである。本実施形態では、判定部117は、重要リンクとチョークポイント性との双方を判定するとして、説明する。
【0045】
入力受付部118は、情報処理システム10を利用するユーザによる選択操作を受け付ける処理を行う。ここでの選択操作は、サプライチェーンネットワーク121に含まれるノードにより示される複数の企業のうちのいずれかを選択する操作を含む。ユーザは、例えば端末装置200の操作部250に対して、選択操作を行う。この場合、選択操作の情報が端末装置200からサーバシステム100に送信され、入力受付部118は、送信された選択操作を受け付ける。なお、ユーザは、サーバシステム100が含む不図示の操作部に対して選択操作を行ってもよく、この場合、入力受付部118は、サーバシステム100の操作部に対する選択操作を受け付ける。入力受付部118が選択操作の入力を受け付けると、例えば、関連度算出部114は、第1の分析処理において、選択操作により選択された企業のノード対応付けられたベクトル表現と、他の企業のノードに対応付けられたベクトル表現を用いて、選択操作により選択された企業のノードと、他の企業のノードとの関連度を算出する。
【0046】
提示処理部119は、処理部101による第1の分析処理及び/または第2の分析処理の処理結果を、ユーザに提示する提示処理を行う。提示処理部119は、例えば処理結果を表示画面に表示させるための処理を実行する。表示画面は、例えば端末装置200の表示部240に表示される。例えば提示処理部119は、表示画面を生成し、通信部130を介して当該表示画面を端末装置200に送信する処理を行う。また、表示画面そのものを送信するものには限定されず、提示処理部119は、表示画面を生成可能な情報(例えばマークアップ言語等)を送信する処理を行ってもよい。ただし、表示画面は、端末装置200以外の機器で表示されてもよい。例えば、表示画面は、サーバシステム100が備える不図示の表示部に表示されてもよい。また、提示処理部119による提示処理は表示処理に限定されず、音声等を用いた出力処理を含んでもよい。
【0047】
記憶部102は、処理部101のワーク領域であって、種々の情報を記憶する。記憶部102は、種々のメモリによって実現が可能であり、メモリは、SRAM、DRAM、ROM、フラッシュメモリなどの半導体メモリであってもよいし、レジスタであってもよいし、ハードディスク装置等の磁気記憶装置であってもよいし、光学ディスク装置等の光学式記憶装置であってもよい。
【0048】
記憶部102は、例えばサプライチェーンネットワーク取得部110が取得したサプライチェーンネットワーク121を記憶する。記憶部102は、例えばネットワーク変換部111が生成したリンクネットワーク122を記憶する。記憶部102は、例えば重み付きネットワーク生成部115が生成した重み付きネットワーク123を記憶する。また記憶部120は、有価証券報告書、産業連関表等の公開情報を記憶してもよい。また記憶部120は、産業分類コード124等を記憶してもよい。産業分類コード124は、上述したように、産業をいくつかに分類し、各分類結果に「01」等のコードを割り当てた情報である。その他、記憶部102は本実施形態の処理に係る種々の情報を記憶可能である。
【0049】
通信部103は、ネットワークを介した通信を行うためのインターフェイスであり、例えばアンテナ、RF(radio frequency)回路、及びベースバンド回路を含む。通信部103は、処理部101による制御に従って動作してもよいし、処理部101とは異なる通信制御用のプロセッサを含んでもよい。通信部103は、例えばTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)に従った通信を行うためのインターフェイスである。ただし具体的な通信方式は種々の変形実施が可能である。
【0050】
図3は、端末装置200の詳細な構成例を示す機能ブロック図である。端末装置200は、例えば
図3に示すように、処理部210と、記憶部220と、通信部230と、表示部240と、操作部250と、を含む。
【0051】
処理部210は、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むハードウェアによって構成される。また処理部210は、プロセッサによって実現されてもよい。プロセッサは、CPU、GPU、DSP等、各種のプロセッサを用いることが可能である。端末装置200のメモリに格納された命令をプロセッサが実行することによって、処理部210の機能が処理として実現される。
【0052】
記憶部220は、処理部210のワーク領域であって、SRAM、DRAM、ROM等の種々のメモリによって実現される。
【0053】
通信部230は、ネットワークを介した通信を行うためのインターフェイスであり、例えばアンテナ、RF回路、及びベースバンド回路を含む。通信部230は、例えばネットワークを介して、サーバシステム100との通信を行う。
【0054】
表示部240は、種々の情報を表示するインターフェイスであり、液晶ディスプレイであってもよいし、有機ELディスプレイであってもよいし、他の方式のディスプレイであってもよい。操作部250は、ユーザ操作を受け付けるインターフェイスである。操作部250は、端末装置200に設けられるボタン等であってもよい。また表示部240と操作部250は、一体として構成されるタッチパネルであってもよい。
【0055】
2.処理の流れ
2.1 全体フロー
図4は、
図1の情報処理システム10により実行される処理の概略を示すフローチャートである。
【0056】
まず、サプライチェーンネットワーク取得部110は、サプライチェーンネットワーク121を取得する(ステップS101)。上述のように、サプライチェーンネットワーク取得部110は、公開情報に基づいてサプライチェーンネットワーク121を作成してもよい。
【0057】
図5は、サプライチェーンネットワーク取得部110が取得するサプライチェーンネットワーク121の一例を示す図である。
図5では、各ノードが円形の図で示されている。また、
図5において、ノードを接続する矢印は、リンクを示している。
図5では、企業A1から企業A8までの8個のノードが示されている。企業A1及び企業A2のノードには、それぞれ企業A5に向かうリンクC1及びリンクC2が接続されている。企業A3及び企業A4のノードには、それぞれ企業A6に向かうリンクC3及びリンクC4が接続されている。企業A5及び企業A6のノードは、それぞれ企業A7に向かうリンクC5及びリンクC6が接続されている。企業A7のノードは、企業A8に向かうリンクC7が接続されている。各リンクを示す矢印は、取引関係を示している。例えば、リンクC1は、企業A1から企業A5に製品が提供されていることを示している。つまり、リンクC1は、企業A1が製品の提供元企業であり、企業A5が製品の提供先企業であることを示している。
【0058】
情報処理システム10は、ステップS101でサプライチェーンネットワーク121を取得すると、サーバシステム100において、第1の分析処理を実行する(ステップS102)。第1の分析処理は、サプライチェーンネットワーク121のノードに着目した分析処理である。第1の分析処理において、サーバシステム100は、サプライチェーンネットワーク121における各ノードのベクトル表現を算出し、ベクトル表現を用いてノード間の関連度を算出する。第1の分析処理の詳細については、後述する。
【0059】
また、情報処理システム10は、サーバシステム100において、第2の分析処理を実行する(ステップS103)。第2の分析処理は、サプライチェーンネットワーク121のリンクに着目した分析処理である。第2の分析処理において、サーバシステム100は、サプライチェーンネットワーク121における各リンクを新たなノードとするリンクネットワーク122を生成し、リンクネットワーク122における各新たなノードのベクトル表現を算出し、ベクトル表現を用いて新たなノード間の関連度を算出する。第2の分析処理の詳細については、後述する。
【0060】
サーバシステム100は、第1の分析処理と第2の分析処理とのうち、少なくとも一方を実行してよい。情報処理システム10は、第1の分析処理と第2の分析処理との双方を実行してもよい。情報処理システム10は、第1の分析処理と第2の分析処理との双方を実行する場合、これらの分析処理を順に実行してもよく、これらの分析処理を並行して同時に実行してもよい。
【0061】
情報処理システム10は、提示処理部119により、第1の分析処理及び/または第2の分析処理を実行すると、処理結果をユーザに提示する提示処理を実行する(ステップS104)。提示処理の詳細については、後述する。
【0062】
2.2 第1の分析処理のフロー
図6は、
図1の情報処理システム10により実行される第1の分析処理のフローチャートである。
【0063】
まず、仮想ノード追加部112は、サプライチェーンネットワーク121に対して仮想ノードを追加することにより、仮想ノードを含むサプライチェーンネットワーク121を生成する(ステップS111)。
【0064】
図7は、仮想ノードを含むサプライチェーンネットワーク121の一例を示す図である。仮想ノード追加部112は、ステップS111において、例えば
図5で示したサプライチェーンネットワーク121に含まれるノードにより示される企業の産業分類を示す仮想ノードを追加する。例えば、
図5のサプライチェーンネットワーク121において、企業A1、企業A2、企業A3及び企業A4に対して、産業分類B1という属性が付与されているとする。この場合、仮想ノード追加部112は、産業分類B1を示すノードを、サプライチェーンネットワーク121に追加してよい。また、例えば、
図5のサプライチェーンネットワーク121において、企業A5及び企業A6に対して、産業分類B2という属性が付与されているとする。この場合、仮想ノード追加部112は、産業分類B2を示すノードを、サプライチェーンネットワーク121に追加してよい。さらに、例えば、
図5のサプライチェーンネットワーク121において、企業A7及び企業A8に対して、産業分類B3という属性が付与されているとする。この場合、仮想ノード追加部112は、産業分類B3を示すノードを、サプライチェーンネットワーク121に追加してよい。仮想ノード追加部112は、サプライチェーンネットワーク121に含まれるノードにより示される企業の産業分類のうち、一部のみを仮想ノードとして追加してもよく、全部を仮想ノードとして追加してもよい。例えば、ここで説明した例では、仮想ノード追加部112は、産業分類B1、産業分類B2及び産業分類B3のうち、一部のみを仮想ノードとして追加してもよく、全部(ここでは3つ)を仮想ノードとして追加してもよい。ここでは、
図7に示すように、産業分類B1、産業分類B2及び産業分類B3の全部が、仮想ノードとして追加されるとして説明する。
【0065】
仮想ノード追加部112は、ステップS111において、サプライチェーンネットワーク121における複数のノードのそれぞれに付与された属性に含まれる産業分類に基づいて、複数のノードと、追加した仮想ノードとを、向きを有するリンクによって接続する。具体的には、仮想ノード追加部112は、所与の産業分類が付与されたノードと、当該所与の産業分類を示す仮想ノードとを、リンクによって接続する。例えば、
図7の例では、企業A1、企業A2、企業A3及び企業A4に対して、産業分類B1という属性が付与されている。そのため、仮想ノード追加部112は、
図7に破線の矢印で示すように、企業A1、企業A2、企業A3及び企業A4を示す各ノードから産業分類B1を示すノードに向かうリンクによって、企業A1、企業A2、企業A3及び企業A4を示す各ノードと、産業分類B1を示すノードとを接続する。また、
図7の例では、企業A5及び企業A6に対して、産業分類B2という属性が付与されている。そのため、仮想ノード追加部112は、
図7に破線の矢印で示すように、企業A5及び企業A6を示す各ノードから産業分類B2を示すノードに向かうリンクによって、企業A5及び企業A6を示す各ノードと、産業分類B2を示すノードとを接続する。さらに、
図7の例では、企業A7及び企業A8に対して、産業分類B3という属性が付与されている。そのため、仮想ノード追加部112は、
図7に破線の矢印で示すように、企業A7及び企業A8を示す各ノードから産業分類B3を示すノードに向かうリンクによって、企業A7及び企業A8を示す各ノードと、産業分類B3を示すノードとを接続する。このようにして、仮想ノード追加部112は、ステップS111により、
図7に示すような、仮想ノードを含むサプライチェーンネットワーク121を生成する。
【0066】
なお、第1の分析処理では、必ずしも仮想ノードが追加されなくてもよい。仮想ノードが追加されない場合、ステップS112以降の処理は、仮想ノードが追加されていない、もとのサプライチェーンネットワーク121に基づいて実行される。仮想ノードが追加される場合、例えば
図7に示すように、企業を示すノードと、ノードに付与された産業分類を示すノードとが、リンクによって接続される。そのため、第1の分析処理のステップS112によるベクトル表現の算出において、企業を示すノードと、ノードに付与された産業分類を示すノードとを接続するリンクの影響が反映されることにより、ベクトル表現の精度が向上する。
【0067】
次に、ベクトル表現算出部113は、サプライチェーンネットワーク121にグラフ埋め込み手法を適用することにより、サプライチェーンネットワーク121に含まれる各ノードについて、ノードの特徴量を示すベクトル表現を算出する(ステップS112)。ここでは、仮想ノード追加部112により、仮想ノードを含むサプライチェーンネットワーク121が生成されているため、ベクトル表現算出部113は、当該仮想ノードを含むサプライチェーンネットワーク121にグラフ埋め込み手法を適用する。
【0068】
ベクトル表現算出部113は、グラフ埋め込み手法として、例えばnode2vecという手法を用いることができる。具体的には、ベクトル表現算出部113は、仮想ノードを含むサプライチェーンネットワーク121の所与のノードを起点として、ランダムウォークによってリンクをたどって形成されるシーケンスデータの集合を生成する。例えば、
図7の例では、ベクトル表現算出部113は、企業A1を示すノードを起点として、ランダムウォークによってリンクをたどって形成されるシーケンスデータの集合を生成する。そして、ベクトル表現算出部113は、企業A1を示すノードを起点としたシーケンスデータの集合に対してskip-gramという手法を適用し、企業A1を示すノードの特徴量を抽出することによって、企業A1を示すノードのベクトル表現を算出する。ここで、所与の企業iを示すノードのベクトル表現をv
iと記載する。すなわち、企業A1を示すノードのベクトル表現は、v
A1と表される。ベクトル表現算出部113は、企業A2から企業A8を示すノードについても、同様にシーケンスデータの集合を生成し、skip-gramを適用することによって、ベクトル表現v
A2からv
A8を算出する。
【0069】
ベクトル表現算出部113によりベクトル表現が算出されると、関連度算出部114は、ベクトル表現を用いて、ノード間の関連度を算出する(ステップS113)。関連度算出部114は、例えば、関連度としてコサイン類似度を算出する。具体的には、所与の企業iを示すノードと企業jを示すノードとのコサイン類似度wijは、次の式(1)により算出される。
【0070】
【0071】
関連度算出部114は、ステップS113において、サプライチェーンネットワーク121に含まれる企業を示すノードの全ての組合せについて、コサイン類似度wijを算出してよい。
【0072】
次に、入力受付部118が、サプライチェーンネットワーク121に含まれるノードにより示される複数の企業のうちのいずれかを選択する選択操作の受け付けると、関連度算出部114は、選択操作により選択操作により選択された企業のノードと、他の企業のノードとの関連度を算出する(ステップS114)。例えば、選択操作により、企業A1が選択されたとすると、関連度算出部114は、企業A1の企業ノードと、他の企業のノードとの関連度を算出する。なお、ここでは、関連度算出部114は、ステップS113において、サプライチェーンネットワーク121に含まれる企業を示すノードの全ての組合せについてコサイン類似度wijを算出しているため、ステップS114において、ステップS113で算出したコサイン類似度wijのうち、企業A1に関連するコサイン類似度のみを抽出する処理を実行してもよい。
【0073】
ステップS114の処理により、情報処理システム10は、ユーザが望む企業に関する情報を抽出し、出力することが可能になる。
【0074】
第1の分析処理フローによれば、情報処理システム10は、グラフ埋め込み手法を適用することによってノードのベクトル表現を算出し、ベクトル表現を用いてノード間の関連度を算出する。このように、情報処理システム10は、ノード間の関連度を数値化することができるため、その数値の大小により、ノードにより示される企業同士の関連性を評価できるようになる。このようにして、従来よりも、より実態に即したサプライチェーン分析を実行できるようになる。
【0075】
一例として、ある半導体製造を事業として行う半導体製造企業が、半導体製造装置を製造装置メーカから購入し、社員食堂用の食材を食品関連企業から購入しているとする。この場合、サプライチェーンネットワークでは、製造装置メーカ及び食品関連企業を示すノードと、半導体製造企業を示すノードとが、リンクにより接続される。このようなサプライチェーンネットワークにおいて、半導体製造企業、製造装置メーカ及び食品関連企業のノードのベクトル表現を算出し、これらの関連度を算出することにより、事業と関連する実質的なリンクを判定することができる。例えば、半導体製造企業を示すノードのベクトル表現と製造装置メーカを示すノードのベクトル表現との関連度が、所与の閾値以上である場合、情報処理システム10は、半導体製造企業を示すノードと製造装置メーカを示すノードとを接続するリンクが、事業に関連する本質的なリンクであると判定することができる。一方、半導体製造企業を示すノードのベクトル表現と食品関連企業を示すノードのベクトル表現との関連度が、所与の閾値未満である場合、情報処理システム10は、半導体製造企業を示すノードと食品関連企業を示すノードとを接続するリンクが、事業に関連しない非本質的なリンクであると判定することができる。このようにして、情報処理システム10は、実質的なリンクを自動的に判定することができる。これにより、より実態に即したサプライチェーン分析を実行できるようになる。
【0076】
2.3 第2の分析処理のフロー
図8は、
図1の情報処理システム10により実行される第2の分析処理のフローチャートである。
【0077】
まず、ネットワーク変換部111は、サプライチェーンネットワーク121をリンクネットワーク122に変換することにより、リンクネットワーク122を生成する(ステップS121)。
【0078】
ネットワーク変換部111は、サプライチェーンネットワーク121をリンクネットワーク122に変換する際に、サプライチェーンネットワーク121のリンクを、リンクネットワーク122における新たなノードとする。
図9は、リンクネットワーク122の一例を示す図である。具体的には、
図9は、
図5のサプライチェーンネットワーク121を変換することにより生成されるリンクネットワーク122を示す図である。
図9では、新たなノードが四角形の図で示されている。また、
図9において、新たなノードを接続する矢印は、新たなリンクを示している。
【0079】
図5に示すように、サプライチェーンネットワーク121は、リンクC1からリンクC7までの7個のリンクを含む。ネットワーク変換部111は、これらのリンクC1からリンクC7までの7個のリンクを、
図9に示すように、それぞれ新たなノードとする。
図5及び
図9に示す例では、
図9における新たなノードXiは、
図5におけるリンクCiに対応する。例えば、
図9における新たなノードX1は、
図5におけるリンクC1に対応する。従って、
図5のサプライチェーンネットワーク121を変換して生成されるリンクネットワーク122は、新たなノードX1から新たなノードX7までの7個のノードを含む。
【0080】
ネットワーク変換部111は、リンクネットワーク122における新たなノードのそれぞれに対し、新たな属性を付与する。新たな属性は、例えば、サプライチェーンネットワーク121におけるリンクが接続するノードの産業分類の組合せとすることができる。例えば、
図5に示すサプライチェーンネットワーク121において、リンクC1は、企業A1のノードと企業A5のノードとを接続している。企業Aの産業分類はB1であり、企業A5の産業分類はB2である。この場合、ネットワーク変換部111は、新たなノードX1に対して、産業分類B1及びB2の組合せを、新たな属性として付与する。同様の方法で、新たなノードX2、新たなノードX3及び新たなノードX4には、新たな属性として、産業分類B1及びB2の組合せが付与される。また、新たなノードX5及び新たなノードX6には、産業分類B2及びB3の組合せが付与される。サプライチェーンネットワーク121におけるリンクが接続するノードの産業分類が1つである場合には、当該1つの産業分類のみが、新たな属性として付与されてよい。例えば、リンクC7は、企業A7のノードと企業A8のノードとを接続しているが、企業A7及び企業A8の産業分類は、いずれもB3である。この場合、新たなノードX7には、産業分類B3が付与される。
【0081】
また、ネットワーク変換部111は、新たなノードを、サプライチェーンネットワーク121における複数のノードと複数のリンクとの関係に基づいて定められる新たなリンクで接続する。ネットワーク変換部111は、サプライチェーンネットワーク121における複数のノードと複数のリンクとの関係に基づいて、新たなノードを新たなリンクで接続する。例えば、
図5に示すサプライチェーンネットワーク121において、リンクC1及びリンクC2はノードA5に向かうリンクであり、リンクC5はノードA5から出るリンクである。この関係に基づき、ネットワーク変換部111は、リンクC1及びリンクC2にそれぞれ対応する新たなノードX1及びX2から、それぞれ新たなノードX5に向かう新たなリンクZ1及びZ2で、新たなノードX1及びX2と新たなノードX5とを接続する。新たなリンクZ1及びZ2は、サプライチェーンネットワーク121におけるノードA5に対応するものと考えることができる。同様に、ネットワーク変換部111は、リンクC3及びリンクC4にそれぞれ対応する新たなノードX3及びX4から、それぞれ新たなノードX6に向かう新たなリンクZ3及びZ4で、新たなノードX3及びX4と新たなノードX6とを接続する。新たなリンクZ3及びZ4は、サプライチェーンネットワーク121におけるノードA6に対応するものと考えることができる。同様に、ネットワーク変換部111は、リンクC5及びリンクC6にそれぞれ対応する新たなノードX5及びX6から、それぞれ新たなノードX7に向かう新たなリンクZ5及びZ6で、新たなノードX5及びX6と新たなノードX7とを接続する。新たなリンクZ5及びZ6は、サプライチェーンネットワーク121におけるノードA7に対応するものと考えることができる。このようにして、
図9に示すような、有向グラフとしてのリンクネットワーク122が生成される。
【0082】
次に、仮想ノード追加部112は、ステップS121で生成されたリンクネットワーク122に対して仮想ノードを追加することにより、仮想ノードを含むリンクネットワーク122を生成する(ステップS122)。
【0083】
図10は、仮想ノードを含むリンクネットワーク122の一例を示す図である。仮想ノード追加部112は、ステップS122において、サプライチェーンネットワーク121に含まれるノードにより示される企業の産業分類に基づいて定められる仮想ノードを追加する。例えば、仮想ノード追加部112は、
図9で示したリンクネットワーク122に含まれる新たなノードに付与された産業分類の組合せを示す仮想ノードを追加する。具体的には、上述したように、新たなノードX1、X2、X3及びX4には、産業分類B1及びB2の組合せが付与されている。この場合、仮想ノード追加部112は、
図10に示すように、産業分類B1及びB2の組合せを示すノードY1を、リンクネットワーク122に追加してよい。また、新たなノードX5及びX6には、産業分類B2及びB3の組合せが付与されている。この場合、仮想ノード追加部112は、
図10に示すように、産業分類B2及びB3の組合せを示すノードY2を、リンクネットワーク122に追加してよい。さらに、新たなノードX7には産業分類B3が付与されている。この場合、仮想ノード追加部112は、
図10に示すように、産業分類B3を示すノードY3を、リンクネットワーク122に追加してよい。仮想ノード追加部112は、新たなノードに付与された産業分類の組合せのうち、一部のみを仮想ノードとして追加してもよく、全部を仮想ノードとして追加してもよい。例えば、ここで説明した例では、仮想ノード追加部112は、産業分類B1及びB2の組合せ、産業分類B2及びB3の組合せ、並びに産業分類B3、のうち、一部のみを仮想ノードとして追加してもよく、全部(ここでは3つ)を仮想ノードとして追加してもよい。ここでは、
図10に示すように、産業分類B1及びB2の組合せ、産業分類B2及びB3の組合せ、並びに産業分類B3の全部が、仮想ノードとして追加されるとして説明する。
【0084】
仮想ノード追加部112は、ステップS122において、複数の新たなノードのそれぞれに付与された産業分類に関する情報(つまり産業分類の組合せ)に基づいて、複数の新たなノードのそれぞれと追加した仮想ノードとを、向きを有するリンクによって接続する。具体的には、仮想ノード追加部112は、所与の産業分類の組合せが付与された新たなノードと、当該所与の産業分類の組合せを示す仮想ノードとを、リンクによって接続する。例えば、
図10の例では、新たなノードX1、X2、X3及びX4に対して、産業分類B1及びB2の組合せが付与されている。そのため、仮想ノード追加部112は、
図10に破線の矢印で示すように、新たなノードX1、X2、X3及びX4のそれぞれから、産業分類B1及びB2の組合せを示すノードY1に向かうリンクによって、新たなノードX1、X2、X3及びX4とノードY1とを接続する。また、
図10の例では、新たなノードX5及びX6に対して、産業分類B2及びB3の組合せが付与されている。そのため、仮想ノード追加部112は、
図10に破線の矢印で示すように、新たなノードX5及びX6のそれぞれから、産業分類B2及びB3の組合せを示すノードY2に向かうリンクによって、新たなノードX5及びX6とノードY2とを接続する。さらに、
図10の例では、新たなノードX7に対して、産業分類B3が付与されている。そのため、仮想ノード追加部112は、
図10に破線の矢印で示すように、新たなノードX7から、産業分類B3を示すノードY3に向かうリンクによって、新たなノードX7とノードY3とを接続する。このようにして、仮想ノード追加部112は、ステップS122により、
図10に示すような、仮想ノードを含むリンクネットワーク122を生成する。
【0085】
なお、第2の分析処理では、必ずしも仮想ノードが追加されなくてもよい。仮想ノードが追加されない場合、ステップS123以降の処理は、仮想ノードが追加されていない、もとのリンクネットワーク122に基づいて実行される。仮想ノードが追加される場合、例えば
図10に示すように、サプライチェーンネットワーク121のリンクに対応する新たなノードと、産業分類に基づいて定められる新たなノードとが、リンクによって接続される。そのため、第2の分析処理のステップS123によるベクトル表現の算出において、サプライチェーンネットワーク121のリンクに対応する新たなノードと、産業分類に基づいて定められる新たなノードとを接続する新たなリンクの影響が反映されることにより、ベクトル表現の精度が向上する。
【0086】
次に、ベクトル表現算出部113は、リンクネットワーク122にグラフ埋め込み手法を適用することにより、リンクネットワーク122に含まれる新たなノードのそれぞれについて、ノードの特徴量を示すベクトル表現を算出する(ステップS123)。ここでは、仮想ノード追加部112により、仮想ノードを含むリンクネットワーク122が生成されているため、ベクトル表現算出部113は、当該仮想ノードを含むリンクネットワーク122にグラフ埋め込み手法を適用する。
【0087】
ベクトル表現算出部113は、グラフ埋め込み手法として、例えばnode2vecという手法を用いることができる。具体的には、ベクトル表現算出部113は、仮想ノードを含むリンクネットワーク122の所与の新たなノードを起点として、ランダムウォークによって新たなリンクをたどって形成されるシーケンスデータの集合を生成する。例えば、
図10の例では、ベクトル表現算出部113は、新たなノードX1を起点として、ランダムウォークによって新たなリンクをたどって形成されるシーケンスデータの集合を生成する。そして、ベクトル表現算出部113は、新たなノードX1を起点としたシーケンスデータの集合に対してskip-gramという手法を適用し、新たなノードX1の特徴量を抽出することによって、新たなノードX1のベクトル表現v
X1を算出する。ベクトル表現算出部113は、新たなノードX2からX7についても、同様にシーケンスデータの集合を生成し、skip-gramを適用することによって、ベクトル表現v
X2からv
X7を算出する。
【0088】
ベクトル表現算出部113によりベクトル表現が算出されると、関連度算出部114は、ベクトル表現を用いて、新たなノード間の関連度を算出する(ステップS124)。関連度算出部114は、例えば、関連度としてコサイン類似度を算出する。コサイン類似度は、上述した式(1)により算出される。関連度算出部114は、ステップS124において、リンクネットワーク122に含まれる新たなノードの全ての組合せについて、コサイン類似度wijを算出してよい。
【0089】
ここで、上述したように、リンクネットワーク122の新たなノードXiは、サプライチェーンネットワーク121のリンクCiに対応する。そのため、リンクネットワーク122の新たなノード間の関連度を算出することは、サプライチェーンネットワーク121のリンク同士の関連度を算出することと考えることができる。関連度算出部114は、算出した新たなノード間の関連度に基づいて、サプライチェーンネットワーク121のリンク同士の関連度を示す分布図を生成してもよい。例えば、関連度算出部114は、サプライチェーンネットワーク121における所与の企業を示すノードに向かう(つまり当該ノードに入る)リンクと、当該ノードから他のノードに向かう(つまり当該ノードから出る)リンクとの関連度を示す分布図を生成してもよい。
【0090】
図11は、所与の企業のノードに入るリンクと当該ノードから出るリンクとの関連度を示す分布図の一例である。
図11は、所与の企業のノードに入るリンクと当該ノードから出るリンクとのコサイン類似度の分布を示す図である。
図11に示す分布図において、横軸はコサイン類似度の値を示し、縦軸は各コサイン類似度の値を取るリンクの組合せの数を示す。なお、
図11に示す分布図の例は、必ずしも
図9に示すリンクネットワーク122に基づく分布を示すものではない。
【0091】
コサイン類似度は、所与の新たなノードと他の新たなノードとが類似するほど1に近い値となり、非類似であるほど0に近い値となる。従って、
図11に示す分布図では、コサイン類似度が1に近いほど、入るリンクと出るリンクとが、より類似していると言える。
【0092】
図11に示す分布図は、例えばベクトル表現算出部113により生成されてよい。ベクトル表現算出部113は、例えば、生成した分布図を、端末装置200に表示させてもよい。分布図を表示させる処理は、
図4のステップS104で実行されてもよい。分布図を提示することにより、例えば、ユーザは視覚的に関連度の分布を理解することができる。
【0093】
次に、重み付きネットワーク生成部115は、リンクネットワーク122の新たなリンクに対して重み値を付与した重み付きネットワーク123を生成する(ステップS125)。重み付きネットワーク生成部115は、ステップS125において、まず、新たなリンクのそれぞれについて重み値を算出する。重み付きネットワーク生成部115は、関連度算出部114が算出した関連度に基づいて、新たなリンクのそれぞれについて重み値を算出することができる。重み付きネットワーク生成部115は、例えば、関連度を示すコサイン類似度wijを、そのまま重み値として決定してもよい。重み付きネットワーク生成部115は、例えば、コサイン類似度wijに対して所定の数理的処理を施して重み値を算出してもよい。
【0094】
例えば、重み付きネットワーク生成部115は、所与の新たなノードに向かう新たなリンクの重み値の合計が1となるように、当該所与の新たなノードに向かう新たなリンクのそれぞれについての重み値を算出してよい。このとき、新たなリンクのそれぞれの重み値は、コサイン類似度wijに比例するように決定されてよい。つまり、重み付きネットワーク生成部115は、所与の新たなノードに向かう新たなリンクの重み値の合計が1となり、かつ、新たなリンクのそれぞれの重み値がコサイン類似度wijに比例するように、新たなリンクの重み値を算出してよい。具体的には、重み付きネットワーク生成部115は、新たなノードiと新たなノードjとを接続するリンクの重み値w′ijを、次の式(2)により算出することができる。
【0095】
【0096】
例えば、新たなノードX7に向かう新たなリンクZ5のコサイン類似度wX5X7と、新たなノードX7に向かう新たなリンクZ6のコサイン類似度wX6X7との比が、1:4である場合、重み付きネットワーク生成部115は、上記式(2)を用いて、リンクZ5の重み値w′X5X7を0.2と算出し、リンクZ6の重み値w′X6X7を0.8と算出する。重み付きネットワーク生成部115は、リンクネットワーク122の全ての新たなリンクについて、重み値w′ijを算出する。
【0097】
なお、重み値は、ここで説明した算出方法に限られず、他の算出方法で算出されてもよい。例えば、ここでは、新たなリンクのそれぞれの重み値は、コサイン類似度wijに比例するように決定されると説明したが、これに限られず、例えばコサイン類似度wijの二乗に比例するように決定されてもよい。重み値は、関連度に基づく他の適宜の方法で算出されてよい。
【0098】
重み付きネットワーク生成部115は、算出した重み値を、新たなリンクのそれぞれに付与することにより、重み付きネットワーク123を生成する。
図12は、重み付きネットワークの一例を示す図である。
図12に示すように、重み付きネットワーク123では、リンクネットワーク122の新たなリンクのそれぞれについて、算出した重み値w′
ijが付与されている。
【0099】
そして、流量算出部116は、重み付きネットワーク123上のフローの流量を算出する(ステップS126)。流量算出部116は、重み付きネットワーク123における重み値を用いて、流量を算出する。流量算出部116は、予め定められた所定の演算式を用いて、流量を算出してよい。例えば、流量は、フローにおける新たなリンクに付与された重み値の積として算出されてよい。ここで、本明細書では、所与の1つの新たなノードN1から他の1つの新たなノードN2までのフローの流量を、「新たなノードN2に対する新たなノードN1の流量」と表現する。
【0100】
例えば、新たなノードX5から新たなノードX7までのフローの流量を算出する場合、つまり、は、新たなノードX7に対する新たなノードX5の流量を算出する場合、流量算出部116は、新たなノードX5から新たなノードX7までのフローにおける新たなリンクに付与された重み値の積を算出する。このとき、フローの最も下流側にある新たなリンクX7の流量を1として、重み値を算出してよい。新たなノードX5から新たなノードX7までのフローにおけるリンクは、新たなリンクZ5のみである。そのため、新たなノードX7に対する新たなノードX5の流量は、リンクZ5に付与された重み値であるw′X5X7となる。この流量は、新たなノードX7に対する新たなノードX5の取引関係を示す指標を表す値である。
【0101】
例えば、新たなノードX7に対する新たなノードX1の流量を算出する場合、流量算出部116は、新たなノードX1から新たなノードX7までのフローにおける新たなリンクに付与された重み値の積を算出する。
図9から理解されるように、新たなノードX1から新たなノードX7までのフローにおけるリンクは、新たなリンクZ1及びZ5である。この場合、新たなノードX1から新たなノードX7までのフローの流量は、リンクZ1に付与された重み値であるw′
X1X5と、リンクZ5に付与された重み値であるw′
X5X7との積となる。つまり、新たなノードX7に対する新たなノードX1の流量は、w′
X1X5×w′
X5X7と表される。この流量は、新たなノードX7に対する新たなノードX1の取引関係を示す指標を表す値である。
【0102】
例えば、新たなノードX7に対する新たなノードX2の流量を算出する場合、流量算出部116は、新たなノードX2から新たなノードX7までのフローにおける新たなリンクに付与された重み値の積を算出する。
図9から理解されるように、新たなノードX2から新たなノードX7までのフローにおけるリンクは、新たなリンクZ2及びZ5である。この場合、新たなノードX2から新たなノードX7までのフローの流量は、リンクZ2に付与された重み値であるw′
X2X5と、リンクZ5に付与された重み値であるw′
X5X7との積となる。つまり、新たなノードX7に対する新たなノードX2の流量は、w′
X2X5×w′
X5X7と表される。この流量は、新たなノードX7に対する新たなノードX2の取引関係を示す指標を表す値である。
【0103】
なお、新たなノードN2に対する新たなノードN1の流量は、新たなノードN1に向かう新たなリンクによって新たなノードN1と接続された新たなノードの、新たなノードN2に対する流量の和となる。例えば、
図12に示す例では、新たなノードX5は、新たなリンクZ1及びZ2により、それぞれ新たなリンクX1及びX2と接続されている。この場合、新たなノードX7に対する新たなノードX5の流量w′
X5X7は、新たなノードX7に対する新たなノードX1の流量w′
X1X5×w′
X5X7と、新たなノードX7に対する新たなノードX2の流量w′
X2X5×w′
X5X7との和となる。
【0104】
また、新たなノードN1から新たなノードN2へのフローが複数存在する場合、新たなノードN2に対する新たなノードN1の流量は、複数のフローのそれぞれの流量の和となる。例えば、新たなノードN1から新たなノードN2へのフローが、第1のフローと第2のフローのように、2つ存在する場合、第1のフローにおける流量と第2のフローにおける流量との和が、新たなノードN2に対する新たなノードN1の流量となる。
【0105】
流量算出部116は、重み付きネットワーク123で取りうる全てのフローの流量を算出してもよい。また、流量算出部116は、重み付きネットワーク123における、特定の新たなノードに関するフローの流量を算出してもよい。例えば、流量算出部116は、新たなノードX7に関する全てのフローの流量を算出してもよい。例えば
図9に示す例では、新たなノードX7に関するフローは、新たなノードX1、X2、X3、X4、X5及びX6のそれぞれを起点とし、新たなノードX7を終点とする、合計6個のフローが存在する。
【0106】
判定部117は、流量算出部116がステップS126で算出した流量に基づいて、重要リンクまたはチョークポイント性を判定する(ステップS127)。例えば、判定部117は、サプライチェーンネットワーク121またはリンクネットワーク122における重要リンクを判定する。判定部117は、流量算出部116が算出した流量のうち、流量が所定の閾値以上となるフロー上に位置するリンクを、重要リンクと判定してよい。例えば、新たなノードX1から新たなノードX7までのフローの流量が所定の閾値以上であるとする。この場合、判定部117は、このフロー上に位置するリンクZ1とZ5とを、重要リンクと判定してよい。この場合、リンクZ1及びZ5は、それぞれサプライチェーンネットワーク121における企業A5及び企業A7を示すノードに対応するため、判定部117は、企業A5及び企業A7を示すノードを重要ノードと判定してもよい。また、判定部117は、このフロー上に位置する新たなノードX1、X5及びX7を重要ノードと判定してもよい。この場合、新たなノードX1、X5及びX7は、それぞれサプライチェーンネットワーク121におけるリンクC1、C5及びC7に対応するため、判定部117は、リンクC1、C5及びC7を重要リンクと判定してもよい。判定部117は、重要リンクまたは重要ノードとして判定されたリンクまたはノードを、チョークポイント性が高いリンクまたはノードと判定してもよい。
【0107】
判定部117は、例えば、流量を用いた所定の演算を行い、その演算結果を使用して重要リンクまたはチョークポイント性を判定してもよい。つまり、判定部117は、演算結果を重要リンクまたはチョークポイント性を判定するための判定指標として用いてよい。例えば、判定部117は、所与の第1の新たなノードを起点とし、所与の第2の新たなノードが終点となるようなフローの流量の和を算出してよい。判定部117は、この算出結果である流量の和を、当該所与の第1の新たなノードと当該所与の第2の新たなノードとに関する判定指標とする。判定部117は、他のフローについても同様に流量の和を算出してよい。判定部117は、例えば算出した判定指標同士を比較することによって、その大小から、重要リンクまたはチョークポイント性を判定してよい。例えば、流量の和が所定の閾値より高いフローを構成するリンクを重要リンクと判定したり、当該フローのチョークポイント性が高いと判定したりしてよい。
【0108】
判定部117は、リンクネットワーク122における新たなノードの流量に基づいて、サプライチェーンネットワーク121における重要ノードを判定するための判定指標を、企業ごとに算出してよい。判定部117は、判定指標に基づいて重要ノードを判定してもよい。例えば、
図5のサプライチェーンネットワーク121では、リンクC1及びC2が企業A5を示すノードに向かうリンクである。
図9のリンクネットワーク122では、新たなノードX1及びX2が、それぞれリンクC1及びC2に対応する。判定部117は、新たなノードX1の流量と新たなノードX2の流量の和を算出し、これを企業A5の判定指標としてよい。判定指標の値が所与の閾値以上である場合、元のサプライチェーンネットワーク121における企業A5を示すノードが重要ノードであると判定してよい。
【0109】
判定部117は、リンクネットワーク122におけるフローの経路長ごとに、企業の判定指標を順位付けしてもよい。フローの経路長とは、フローに含まれるリンクの数である。例えば
図9の例では、新たなノードX1から新たなノードX5までのフローの経路長は、このフローに新たなリンクZ1が含まれているため、1である。同様に、例えば、新たなノードX2から新たなノードX5までのフローや、新たなノードX5から新たなノードX7までのフローの経路長も、1である。例えば、新たなノードX1から新たなノードX7までのフローの経路長は、このフローに新たなリンクZ1及びZ5が含まれているため、2である。仮に、特定のノードから他のノードへのフローが複数ある場合、判定部117は、当該複数のフローの経路長のうち、最短の経路長を、当該特定のノードから他のノードへのフローの経路長としてよい。
【0110】
図13は、経路長ごとの判定指標の順位付けの結果の一例を示す図である。判定部117は、
図13に一例として示すように、経路長ごとの企業の判定指標を順位付けしてよい。なお、
図13に示す順位付けの例は、必ずしも
図5に示すサプライチェーンネットワーク121及び
図9に示すリンクネットワーク122に基づく順位付けを示すものではない。
図13に示す例では、経路長(つまりフローが含むリンクの数)が1であることを示す経路長1と、経路長が2であることを示す経路長2と、経路長が3であることを示す経路長3とについて、順位付けの結果が示されている。
図13において、「企業名」の列には、例えば企業を示す名前などの企業を一意に特定する情報が含まれ、「判定指標」の列には、判定指標を示す数値が含まれている。
図13を参照すると、経路長1の場合、企業1という企業名の判定指標が0.9で最も高く、企業2という企業名の判定指標が0.8で2番目に高い。経路長2の場合、企業5という企業名の判定指標が0.81で最も高く、企業6という企業名の判定指標が0.64で2番目に高い。このように、判定部117は、経路長ごとに判定指標を順位付けしてよい。判定部117は、順位付けの結果に基づいて、重要ノードを判定してよい。例えば、判定部117は、経路長ごとに、判定指標が高い上位の企業を重要ノードと判定してよい。
【0111】
第2の分析処理フローによれば、情報処理システム10は、サプライチェーンネットワーク121をリンクネットワーク122に変換し、リンクネットワーク122から重み値を付与した重み付きネットワーク123を生成し、重み付きネットワーク123上のフローの流量を算出する。リンクネットワーク122における新たなノードは企業同士の取引関係を示すため、第2の分析処理では、取引関係を示す新たなノードに着目した分析を実行できる。そして、第2の分析処理では、流量算出部116が重み付きネットワーク123上のフローの流量を算出する。この流量は、取引関係を示す新たなノードの関連度に基づいて算出される重み値に基づいて算出されることから、取引関係の関連性が反映されている。そのため、流量を算出することにより、企業同士の取引関係の関連性を数値的に評価できるようになる。このようにして、従来よりも、より実態に即したサプライチェーン分析を実行できるようになる。
【0112】
再び、第1の分析処理でも挙げた、半導体製造企業と、製造装置メーカと、食品関連企業との例に基づいて説明すると、第2の分析処理では、製造装置メーカ及び食品関連企業を示すノードと、半導体製造企業を示すノードとが、それぞれリンクにより接続される。第2の分析処理では、これらのリンクを新たなノードとするリンクネットワークが生成され、リンクネットワークにおけるフローの流量が算出される。例えば、製造装置メーカを示すノードと半導体製造企業を示すノードとを接続するリンクを新たなノードとしたフローの流量が所与の閾値以上である場合、情報処理システム10は、半導体製造企業を示すノードと製造装置メーカを示すノードとを接続するリンクが、事業に関連する本質的なリンクであると判定することができる。一方、食品関連企業を示すノードと半導体製造企業を示すノードとを接続するリンクを新たなノードとしたフローの流量が所与の閾値未満である場合、情報処理システム10は、半導体製造企業を示すノードと食品関連企業を示すノードとを接続するリンクが、事業に関連しない非本質的なリンクであると判定することができる。このようにして、情報処理システム10は、実質的なリンクを自動的に判定することができる。これにより、より実態に即したサプライチェーン分析を実行できるようになる。
【0113】
2.4 提示処理
提示処理部119は、第1の分析処理及び/または第2の分析処理を実行すると、処理結果をユーザに提示する提示処理を実行する。提示処理部119は、第1の分析処理及び/または第2の分析処理の処理過程または処理結果に関する多様な情報を提示することができる。例えば、提示処理部119は、
図5に示すようなサプライチェーンネットワーク121を提示したり、
図9に示すようなリンクネットワーク122を提示したり、
図12に示すような重み付きネットワーク123を提示したりしてよい。提示処理部119は、
図8に示すような、選択された企業のノードと他の企業のノードとの関連度を示す分布図を提示してもよい。提示処理部119は、
図13に示すような、経路長ごとの流量の順位付けの結果を提示してもよい。また、提示処理部119は、選択操作により選択された企業に関連する情報を抽出して提示してもよい。例えば、提示処理部119は、ネットワーク中から、選択操作により選択された企業に関連するフローを抽出して提示してよい。提示処理部119は、選択操作により選択された企業と他の企業とのフローにおける流量や判定指標を提示してよい。提示処理部119が提示処理を行うことにより、情報処理システム10を利用するユーザは、情報処理システム10による処理結果を知ることができる。
【0114】
情報処理システム10は、第1の分析処理と第2の分析処理との少なくともいずれかを実行してよい。ただし、第1の分析処理はサプライチェーンネットワーク121のノードに着目した分析処理であり、第2の分析処理はサプライチェーンネットワーク121のリンクに着目した分析処理であることから、第1の分析処理と第2の分析処理とは、異なる観点からサプライチェーンを分析するものである。そのため、情報処理システム10は、第1の分析処理と第2の分析処理との双方を実行することにより、より多角的な視点からの分析結果を得ることができる。
【0115】
3.変形例
上記実施形態では、第2の分析処理のステップS122において、仮想ノード追加部112が、リンクネットワーク122に対して仮想ノードを追加することによって、仮想ノードを含むリンクネットワーク122を生成すると説明した。しかしながら、第2の分析処理において、仮想ノードは、必ずしもリンクネットワーク122に対して仮想ノードを追加しなくてもよい。例えば、第2の分析処理において、仮想ノード追加部112は、ステップS121でリンクネットワーク122を生成する前に、サプライチェーンネットワーク121に対して仮想ノードを追加することによって、仮想ノードを含むサプライチェーンネットワーク121を生成してもよい。
【0116】
この場合、仮想ノード追加部112は、第1の分析処理のステップS111と同様の処理を、第2の分析処理のステップS121の前に実行してよい。すなわち、仮想ノード追加部112は、サプライチェーンネットワーク121に対して、サプライチェーンネットワーク121に含まれるノードにより示される企業の産業分類を示す1つ以上の仮想ノードを追加してよい。仮想ノード追加部112は、サプライチェーンネットワーク121における複数のノードのそれぞれに付与された属性に含まれる産業分類に基づいて、複数のノードと、追加した仮想ノードとを、向きを有するリンクによって接続してよい。
【0117】
このように、第2の分析処理において、仮想ノード追加部112がサプライチェーンネットワーク121に対して仮想ノードを追加した場合、ネットワーク変換部111は、ステップS121において、仮想ノードを含むサプライチェーンネットワーク121を、リンクネットワーク122に変換してよい。この場合、第2の分析処理において、ステップS122は実行されてもよく、実行されなくてもよい。ステップS122が実行される場合、仮想ノード追加部112は、ネットワーク変換部111により生成されたリンクネットワーク122に対して、仮想ノードを追加することにより、仮想ノードを含むリンクネットワーク122を生成する。ステップS122が実行されない場合、ベクトル表現算出部113により、ネットワーク変換部111により生成されたリンクネットワーク122における新たなノードのベクトル表現が算出される。
【0118】
上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本実施形態の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また情報処理システム、サーバシステム、端末装置等の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0119】
10…情報処理システム、100…サーバシステム、101…処理部、102…記憶部、103…通信部、110…サプライチェーンネットワーク取得部、111…ネットワーク変換部、112…仮想ノード追加部、113…ベクトル表現算出部、114…関連度算出部、115…重み付きネットワーク、116…流量算出部、117…判定部、118…入力受付部、119…提示処理部、121…サプライチェーンネットワーク、122…リンクネットワーク、123…重み付きネットワーク、124…産業分類コード、200,200-1,200-2…端末装置、210…処理部、220…記憶部、230…通信部、240…表示部、250…操作部
【要約】
【課題】より実態に即したサプライチェーン分析を実行可能な、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムなどを提供する。
【解決手段】情報処理システムは、複数の企業に対応する複数のノードであって、企業の産業分類を含む企業に関する属性が付与されたノードが、製品の提供元企業及び提供先企業を対応付けた取引関係を示す複数のリンクで接続された、サプライチェーンネットワークを取得する、サプライチェーンネットワーク取得部と、前記サプライチェーンネットワークにグラフ埋込み手法を適用することにより、前記複数のノードのそれぞれに対応する、前記複数のノードの特徴量をそれぞれ示す、複数のベクトル表現を算出する、ベクトル表現算出部と、を含む。
【選択図】
図4